櫻子「これからも一緒に」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/07(木) 16:55:03.10 ID:+EtVRVLso
このお話は


・向日葵「ずっと一緒に」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441552207/
(修正版→ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5770271 )


・櫻子「みんなで作る光のパズル」/向日葵「葉桜の季節」

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442140558/
(修正版→ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5773979 )
(修正版→ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5787825 )


の続きです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1504770902
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/07(木) 16:56:46.35 ID:+EtVRVLso
真夜中だった。

どこからか、声が聞こえる。

はっきりとしたものではなく、耳元でもぞもぞと、こぼれる吐息に乗せたようなくぐもった声。

熱く優しく私の脳に染み渡っていく、聞き慣れた声。


“ひまわり” って。


向日葵「んぇ……?」

「あっ」


向日葵「……え……っ」

「…………」

向日葵「……なに、してるんですの?」

「……いや、えっと……その……///」


声の主は、まさか私が起きるとは思っていなかったらしい。

残念ながら今夜の私の眠りはいつもより浅かった。季節はすっかり夏。日中の暑さには心の底から参るが、夜だって決して過ごしやすいものではない。

とにかく今年は暑いのだ。暑いので寝つきが悪い。ついさっきまで起きていたという意識がまだ残っている。

きっと時刻はまだ午前1時ほど。明日は何も用事がないので寝不足を心配する必要などはないのだが、特別にすることもないので、いつも通りの時間に身体を休めていた次第だった。

布団が恋しくなる寒い季節とは……あの頃とはもう違うということを、声の主はわかっていなかった。

いくら低血圧で、一旦スイッチが切れてしまえば再起動に時間がかかる私とはいえ、こうも暑い夜に至近距離で人のぬくもりを感じるとなれば暑苦しいことこの上ない。


向日葵「……鍵はどうしたんですのよ……かかっていたはずでしょう……」

「いや……それは向日葵が悪いんだよ? 今日夕方うちに来たとき落としてったんだよ、ほら」


そういうと、私が普段使っている自宅用の鍵をちゃりっとポケットから取り出した。

視界はおぼつかないが、わずかな月明かりを反射する鉄の光がきらきらと目に入った。どうやら本当に私が忘れてしまったものらしい。


向日葵「……だからって、こんな時間に返しに来ることないじゃない……」

「……ぃぃじゃんかぁ」


声の主……櫻子は暗闇の中で、口をちょこんと尖らせて小声で文句を言った。

そういう子供っぽいところ、本当に昔から変わってませんわね。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/07(木) 16:57:27.72 ID:+EtVRVLso
櫻子「明日から夏休みって考えたら、わくわくしちゃって眠れなくてさ」

向日葵「だとしても、家で大人しくしてなさいな……なんで私のところに来るんですのよ……半年前は言いそびれましたけど、軽く住居侵入罪ですわよ?」

櫻子「ちぇー……」

向日葵「……それとも、あのときみたいに……寝ている私を抱きしめて、寂しさを紛らわせたかった?」

櫻子「は、はぁ!?」どきっ

向日葵「ほんとあなたって、大胆なんだか奥手なんだか……」

櫻子「ち、ちがうもん! そんなんじゃないもん!///」

向日葵「しーっ! 静かにしなさい……! みんな寝てますのよ……」

櫻子「あ……ご、ごめん」


つい反論で大きな声を出してしまった櫻子は、慌てて口を押さえて壁の方へ目を向けた。

壁の向こう側では、小学生にあがって自分の部屋を持たせてもらえるようになった楓が寝ているのだ。


櫻子「…………」

向日葵「…………」


真夜中の静寂の中、言葉を続けることができなくなった櫻子は、ふたたび私の方へ向き直り、ふわりと穏やかな表情になった。

私も仰向けになったまま頭を枕に乗せ直し、ほんのりとした月光を背に映す櫻子を、薄目で静かに眺める。


櫻子「……向日葵」

向日葵「……なあに?」

櫻子「……私、うそついた。ごめんね」

向日葵「うそ?」

櫻子「うん。今の『ちがうもん』って、嘘だった……」


そういうと櫻子は、やんわりと倒れ込むように私の横に身体をうずめて……首元に顔をすり寄せた。


櫻子「懐かしいなあって思ってさ……こうして向日葵のところに来るの……///」

向日葵「……ほら、やっぱりそうだったんじゃないの」


……子供っぽいところは小さい頃と同じだが、そんな櫻子も高校生になって、変わったことがある。


こうして私に、素直に好意を向けてくれるようになった。


ついつい反射的に反発してしまうことはあっても……その後で本当の想いを伝えてきてくれるようになったのだ。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/07(木) 16:57:55.76 ID:+EtVRVLso
櫻子「どれくらいぶりだろ……たぶん、あの冬の日以来……かな」もぞもぞ

向日葵「……ほんとあなたって、夜になるとまた一段と素直になりますわよね……」

櫻子「……うるさいっ」

向日葵「まったく……少しだけこうしててあげますから……満足したら、帰りなさいね……?」

櫻子「うん……///」


向日葵「…………」すぅ


櫻子「……ひまわり……」

向日葵「……ん…?」


櫻子「明日から……夏休みだよ」

向日葵「……ん」


櫻子「……なにしよっか?」

向日葵「…………」


櫻子「……ねえ、聞いてる……?」

向日葵「…………」すぅ


櫻子「……ばか……///」もぞもぞ

向日葵(ふふ……)


櫻子の体温、櫻子の重み、櫻子の匂い、櫻子の髪のくすぐったさ。

夏の夜にとろけていく意識の中……とても心地いい櫻子の存在を全身で感じながら、眠りに落ちていく。


私の名前は古谷向日葵。

大室櫻子と同じ高校に通い……大室櫻子と付き合っている、高校二年生。
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