奈緒「晶葉から借りたゲームでもやるかー」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 00:54:24.68 ID:6zqvFsTL0
■前スレ
奈緒「さーて、晶葉から借りたゲームでもやるか……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491146376/

【安価】奈緒「そろそろ今日も晶葉から借りたゲームやるかぁ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491487007/

奈緒「よし、今日も晶葉から借りたゲームでもやるか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1494423792/

奈緒「もうこんな時間か……晶葉から借りたゲームでもやるか」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1501074498/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1507132464
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 00:55:15.52 ID:6zqvFsTL0
――夜、奈緒の部屋

奈緒「22時かぁ、そろそろやるか」

奈緒「セーブデータをロードして、と……」カチッ

奈緒「ん、ロード画面が変わったような? おお、SDサイズのダイオウカーと通信中の文字が……」

奈緒「晶葉も妙なところで手が込んでるな……昨日は芳乃が出てきてあやめとか翠とかと致してなんやかんやになったんだったっけ」

奈緒「ロード終わったか。よし、それじゃやるかぁ……」


――――
――
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 00:55:47.42 ID:6zqvFsTL0
――???


『世界の守護者……どすか?』

『そう、世界の守護者……力を受け継ぐ者。あなたには、その力があるのよ』

『それも……私たちとは比べ物にならない程の、途方も無い大きな力が』

『……なして、うちなんやろうか』

『どうして、とは?』

『そないなこと言われても、いきなりやし……でも――』



『昨夜、オランダ西海岸に出現した地球外生命体ですね。ヨーロッパ連合による迎撃作戦が成功して、現地では本日明け方から被害者の救助活動に取り掛かっているようで――』



『ヨーロッパのほうでは、また出たのね。日本はそこまでの被害は出ていないけれど、先月は久しぶりにこっちでも地球外生命体が出現したわね』

『……痛い思いも、怖い思いも……そんなんしたらあかん……うちだけやなくて、だぁれも』

『貴方は、それでいいのかしら?』

『声、聞こえるんどす。たまにやけど』

『声?』

『世界の為に……できることをやりなさい、うちやないと、できひんことがある、言うて……』

『うちやないとできひんことなら、やりたいなぁって……それで、みんなが幸せになるなら……』

……
…………
………………
……………………
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 00:56:27.59 ID:6zqvFsTL0
――早朝、ブラックパールガーデン、屋敷(紗枝の部屋)

紗枝「……」

紗枝(……6時半……珠美はんの声、聞こえへんし、今日は寝とるんやろなぁ)

紗枝「……もう、起きないと――」

バサッ……


P『動くな!』


紗枝「……ほんまに、すかん人やわ」


……
…………
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 00:56:56.44 ID:6zqvFsTL0
――屋敷(居間)

ガラッ!

紗枝「……だぁれも起きてへん……はて?」

紗枝「机の上に朝ご飯……」



ガラガラガラッ!


紗枝(玄関の閉まる音……)カサッ


『今日は全員朝早いから飯作っておいたからな。俺は別件で城のほうに戻ってるから、時間までに飯食って準備して来てくれよ』


紗枝「あの人の書置き……」ピクッ!

ガラッ!

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 00:57:33.49 ID:6zqvFsTL0
歌鈴「ふわぁ……あふぁぁ……んぁ、紗枝ちゃん、おはよう……」

紗枝「……おはようさんどす、歌鈴はん」

歌鈴「今日はみんな学校休み……ふぁ、あれ? 朝ごはん……」

紗枝「それなら、あの人が……」

タタタタッ!

歌鈴「あぁー! この朝ご飯、Pさんのごはんっ♪ いつものお味噌汁の横に冷奴が並べてあってー」

歌鈴「あっ、鰤の西京焼きも、美味しそう……紗枝ちゃん、珠美ちゃんたちまだ寝てますけど、朝ご飯食べちゃいますか?」

紗枝「うちは……」

歌鈴「あっ、私ご飯よそってきますね! 大丈夫ですよ! 朝から転んだりしませんからっ!」タタタタッ!

紗枝「……」ハァ……



歌鈴「ああああああああ!?」ズザザザザザザッ!!



……
…………
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:00:49.05 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(指令室)

翠「あの……大丈夫ですか?」

P「うん……うん……」

楓「目、しょぼしょぼしてませんか?」

P「昨日、一晩中偉そうな奴に付き合わされた……」

パシュンッ!

千秋「誰が偉そう奴、かしら?」

P「いまここに来た奴」ゴシゴシ

美優「そ、そんなに大変だったんですか……?」

千秋「まったく……貴方、あれだけ気持ちよさそうにしておいて……」

楓「監視カメラの映像記録を見た感じですと……千秋ちゃんからおねだりしてばかりですね」カタカタカタッ!

千秋「なっ……!?」

翠「あの、今日は朝からスケジュールが詰まっているので、この時間に集合だったはずなんですけど……」

P「そうだぞー……そして俺はどっかのタイミングで寝たい」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:02:11.62 ID:6zqvFsTL0
千秋「コホンッ、それじゃあ夜の報告から聞くわ。開発室との連携はどうなったのかしら?」

P「んー……とりあえずブロッサムディーヴァは全機体、データの同期取ってる最中。フレームの調整作業もあるし、ツクヨミヒメはやっぱり一番時間が掛かるらしい」

千秋「完了予定は?」

P「晶葉は、ブロッサムディーヴァはそんな掛からないとは言ってたな。メインフレームはそこまで大きく変更してないって言ってたし」

P「ただ同期取った後のテストはそれなりに掛かりそうとも言ってた。作業の見通しは同期取り終わってから出すらしい」

千秋「そう。それなら午後にはもう一度、開発室の進捗確認をしましょうか。翠さんのほうは?」

翠「桜霞ですね。8時過ぎには城を出て赤坂に向かいます。テレビ局につきましたらそのまま現場入りしますので、CM用の撮影が一通り済んだ後は、代々木の撮影現場に向かいますので」

P「桜霞じゃないぞー、春霞だぞー」ゴシゴシ

翠「今日のお仕事はまだ4人じゃありませんか?」

美優「春霞?」

P「皆の新しいユニット名です……ふわぁ」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:03:18.50 ID:6zqvFsTL0
翠「芳乃ちゃんをユニットメンバーに入れたいっていうお話になっていまして、5人ユニットになってからはそちらの名前になる予定なんです」

P「いやー、ずっと桜霞って名前がしっくり来てなかったけど、ユニット名切り替えるタイミングも丁度良いしよかったよかった」

楓「どうしてしっくりこなかったんですか? いつもはしっぽりとしてますけど」

P「んー……まあ、色々ですよ。色々」

千秋「それじゃあ、今日の桜霞の付き添いは翠さんのほうでお願い。彼は開発室に引っ張られて徹夜明けだし、少し休ませておかないと」

P「眠いまま車走らせたらホントあの世まで走りそうになるからな……」

翠「わかりました。何かあった時の為に、電話に出られるようにして頂けると助かります」

P「ああ、そこは気を付けておくよ」

千秋「それじゃ解散しましょう。楓さんと美優さんは彼から作業の引継ぎを、翠さんは今日1日桜霞のことをお願いね」

楓「はーい」

……
…………
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:03:54.77 ID:6zqvFsTL0
――午後、東京、赤坂、テレビ局(撮影スタジオ)

「セットの入れ替え終わりましたー! 桜霞の準備お願いしまーす!」

珠美「次の撮影で最後ですね」

歌鈴「これ終わったら、次の撮影場所かぁ……」

紗枝「よいしょっ……お仕事やし、うちらもきばってやらへんと後で翠はんも――」グラッ……

ガシッ!

紗枝「……」

あやめ「……大丈夫でありますか、紗枝殿」

歌鈴「さ、紗枝ちゃん大丈夫ですか!? ちゃんと足元見ないと転んじゃいますよ!」

珠美「いえそんな、歌鈴殿じゃありませんし……」

紗枝「……なんもあらへんよ。あやめはんが支えてくれはったもん」

あやめ「何事も無いようあれば、早く撮影に入りましょうか」

紗枝「せやせや、お仕事終わらせて、はよお屋敷に帰りまひょ。あやめはん、おおきに」

タタタタッ

あやめ「……」


……
…………
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:05:32.07 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(開発室)

晶葉「同期作業については、ブロッサムディーヴァは予定通り終わる。問題はツクヨミヒメだな」

千秋「ヤタノカガミを停止させる必要があるのが一番の問題ね。あとは、地球に降ろして、再度打ち上げるのも」

晶葉「これまでのデータからツクヨミヒメを継続して稼働させる手もある。とはいえ、運用効率が大幅に落ちる可能性も高いが」

麗奈「いっそ宇宙でやれば?」

晶葉「それじゃ地上がガラ空きだろう。ヨーロッパにでも声をかけるか?」

麗奈「……無理ね。今のあっちの装備じゃそこらへん飛んでる蜂1匹すら倒せないわよ」

晶葉「破壊者の行動にも徐々に変化が見えている現状、やはり地上を手薄にするのは得策ではない。奴らに辿り着かれたら終わりだろう?」

千秋「そうね……とりあえず現状は分かったわ。開発室はこのまま作業を続けて頂戴」

千秋「ツクヨミヒメについては、最悪……代替案として用意していた手段に移ることも、視野に入れましょう」

晶葉「……分かった。それについては、私からは何も言うことはない」

麗奈「……」


……
…………
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:08:23.43 ID:6zqvFsTL0
――午後、ブラックパール城(食堂)

P「寝すぎた……いや、それでも寝足りないか……腹減ってるのに飯があんまり食えないなぁ……」ズルズルッ

周子「じゃそれもらっていーい?」

P「これ油揚げじゃないぞ。芋天だぞ」

周子「あたし芋天好きやし?」

P「油揚げじゃないのか……ていうか芋天取られたら俺の天ぷら蕎麦がただの蕎麦になるんだけど」

周子「なんで油揚げなん?」

P「いや、狐って油揚げ好きだろ?」

周子「え、別に……」

P「あ、そう……で、何か用か?」

周子「んー? いやね、何か暇そうにしてたからさー」モグモグ

P「暇っていうか疲れてるんだよ……ここ最近休みも少ないし」

周子「暇なら面白い話してあげよっかー?」

P「疲れたって言ったはずなんですが……」

周子「いいじゃんいいじゃん。あたしも退屈だしさー、それにそれに、聞いておいて損はない話かもしれないよー?」

P「ふーん……じゃあ話してみてくれ」

周子「おー、それじゃあねー……」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:09:49.51 ID:6zqvFsTL0


『昔むかし、ずーっと昔。1つの世界がありました』

『その世界は、いつからか世界を壊そうとする不届き者の大魔王が現れて、本当に世界を壊し尽くす寸前まで暴れていました』

『だけど世界は、13人の英雄と5人の協力者によって救われました。めでたしめでたし』



P「……終わり?」

周子「ん? まだあるよ」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:10:47.89 ID:6zqvFsTL0
『と、思いきや……英雄たちは不届き者の大魔王を倒すことができませんでした』

『どうしたものかと、英雄たちは3人の神様に相談をしました』

『何処でもない場所にいる神様を探すのは一苦労で、呑気に欠伸をしていた神様は英雄たちに言いました。手伝ってやるから今の世界をコピーして新しい世界を作って逃げてしまえ、と』

『ところがどっこい、英雄たちの力は神様の想像を遥かに上回り、新しい世界を1つだけ作るつもりが、自分たちでも数えきれないほどの世界が生まれてしまいました』

『とはいえ新しい世界が出来たことに変わりはなかったから、とりあえず良しとした英雄たちは、生き残ったヒトたち全てを抱えて新しい世界へと移住しました』

『その後もなんだかんだ、しっちゃかめっちゃかありましたが、新しい世界に移ったヒトたちはようやく平和な世界に生きることができるようになりました。めでたしめでたし』


P「……終わり?」

周子「終わり。どーだった?」

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:11:58.61 ID:6zqvFsTL0

P「どうって……何の昔話かは知らんけど、元の世界はどうなったんだよ」

周子「元の世界かー。元の世界はね、新しい世界に行かなかった、残ったお気楽者たちで楽しくやってるんだよ」

P「じゃあ、大魔王は?」

周子「どっか行ったよ。うん、どっか行った」

P「あ、そう……随分適当だな……」

周子「だって仕方ないよね。大魔王も頑張って逃げたヒトたちを追いかけて、ようやく見つけたと思ったらめちゃくちゃ大勢の新しい英雄たちにボコボコにされちゃったんだから」

P「新しいって、話続いてるのか」

周子「そだよ。新しい英雄もね、えーっと……ボインボインしたのとか、元魔王とか、普通を極めたのとか、1000年も粘った頑張り屋とか、希望の光とか、魔法少女とか、いろいろいるんだよ」

P「バラエティ豊かだな。番組作れるぞそれ」

周子「でしょでしょ? 面白かった?」

P「イマイチかな」

周子「あちゃー、ウケなかったかー」

P「ちょっとスケールがデカすぎるからな。さてと……それじゃ開発室行くか。それじゃあな」ガタッ!



周子「……ふーん」


……
…………
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:12:54.00 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパール城(開発室)

パシュンッ!

P「悪い、遅くなった」

晶葉「おお、Pか。別に問題ないぞ、昨日は同期作業の準備に付き合わせて色々無理させたからな」

千秋「気にしなくていいわよ、晶葉さん。ここでは貴重な男手だもの。好きに使って頂戴」

P「……」

千秋「な、なによ貴方、その目は」

P「どこかの誰かさんが邪魔しなければもっと早く終わったはずなんだが」

千秋「い、いいでしょ別に、少しくらいは!」

晶葉「そういう話は他所でやってくれ。とりあえず、今は同期作業が完了するまで待ち状態だ。他の仕事があるならそっちに手付けていいぞ」

麗奈「暇なら桜霞のとこに行ってくればいいじゃないの。どうせ暇でしょ」

P「暇じゃないんですよ……まあそっちも仕事だし、翠に任せたままにするのは悪いな……」

千秋「……」クイッ、クイッ

P「……それじゃ桜霞の現場行ってこよ」

麗奈「しっかり働きなさいよ」

……
…………
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:13:31.50 ID:6zqvFsTL0
――東京、代々木、某施設(撮影現場)

「場所移動しまーす!」


歌鈴「ふー……ここのカット難しかったぁ」

珠美「歌鈴殿、噛み過ぎでは……」

あやめ「それでもここまでの撮影の中では、一番NGが少なかったですね」

翠「さて、みなさん場所移動なので荷物を……」


P「おーい」


歌鈴「あ、Pしゃん!」

珠美「ほら噛んだ」

あやめ「お疲れ様です、P殿」

P「おう、皆もお疲れ様」

翠「お疲れ様です。Pさん、開発室のほうは?」

P「待ち状態になったからこっち来たよ。楓さんも美優さんも手空いたから自分の仕事戻ったし」

翠「そうですか。後の時間はこちらに?」

P「まあそこは……今は何やってたんだ?」

翠「はい、次の撮影が外の広場なので、出る準備をしてますが……」

P「順調か……そういえば、紗枝は」

歌鈴「紗枝ちゃんですか? えーっと……あ、いた、紗枝ちゃーん」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:14:26.57 ID:6zqvFsTL0
紗枝「……はぁい?」

P「おう、頑張ってるか?」

紗枝「……」フイッ

P「すみません、お仕事なのでせめて返事して頂けると私も助かるんですけど……」

紗枝「……なんもあらへんし、あんさんに見られとると逆に怖いわぁ」

P「そんなことないよー、怖くないよー……」

紗枝「おんなじとこにおると、いつうちも手ぇ出されるかわからへん」

P「そうですか……」

翠(まるで信用されてない……)


紗枝「はぁ……ほんまに、撮影も移動やし時間もかかってえらいのに……」ハァ……

P「よーし翠、ちょっとみんな集めて待機しといてくれ。ちょっとディレクターさんのところに挨拶しに行くから」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:14:56.56 ID:6zqvFsTL0
翠「……ああ、分かりました。それならこちらは声が掛かるまで待機していますね」

紗枝「……」ムッ

P「悪いな。少し待っててくれ」タタタタッ!


紗枝「あん人、自分から声掛けきて……」

あやめ「さて……となれば少し休憩しておきましょう。撮影中は休憩もありませんでしたし」

歌鈴「会議室の椅子って借りていいのかなぁ?」

珠美「元の場所に戻しておけば大丈夫じゃありませんか?」ガタッ!

紗枝「……せやね、少し休憩しまひょか」

あやめ「ええ、無理せずに行きましょう」

……
…………
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:15:32.73 ID:6zqvFsTL0
――数時間後、夜、ブラックパールガーデン、ブラックパール城(指令室)

千秋「それで、どうだったのかしら?」

P「やっぱり、そろそろ限界って感じはしてたな。無理もないとは思うけど」

ポコポコポコポコッ

翠「紗枝ちゃんのバイタルデータ……そうですね。ダイオウカーの初回戦闘からこれまで、一人だけ刻印の回復もしないままですから」ピッ、ピッ

千秋「彼女は他の3人とは比べ物にならない程の刻印の力を持っているわ。とはいえ、ここまで刻印を消耗し続けるだけになると……」

P「前回の戦闘はあやめにキャリアーの負荷分散を受け持ってもらったからな……紗枝にはバレなかったみたいだけど」

ポコポコポコポコッ

P「……」

翠「とはいえ、何度も負荷分散をしてもらうわけにはいきません。珠美ちゃんもあやめちゃんも、高負荷には耐えられませんし」

翠「モーショントレースで刻印の消耗が激しい歌鈴さんも、キャリアーの稼働率が下がればそれだけ負荷が上がります」

P「せめて何かの手段で、刻印を回復させてあげられればいいんだけど」

ポコポコポコポコッ
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:16:13.80 ID:6zqvFsTL0
翠「そうですね……紗枝ちゃんはPさんのことを、あまり好ましく思っていないようですし……刻印の譲渡も難しいですね」

千秋「勿体ないわね」

P「俺はツッコミは入れないからな」

ポコポコポコポコバスッ!

P「ぶっ……で、芳乃ちゃんは何でその丸めた新聞紙で俺を叩き続けてるんだ?」

芳乃「ほほー?」

P「いやほほーでなくてね……人を叩いちゃダメって教わってるでしょ」

芳乃「ですがー、周子殿がそなたは叩かれると力を発揮できると言っておりましたのでー」

P「叩かれてパワーが出るって俺はマゾか何かかよ」

芳乃「ですがー、わたくしもー、そなたをこうして叩きたいと思う気持ちがあるのでしてー……」

P「え、やだ俺この子にまで嫌われてるの……」

翠「何かしたんですか?」

P「いや特に何も……というかお菓子取られたり叩かれたりで俺は被害を受けている側なんだけど」

千秋「何はともあれ、ダイオウカーの起動にはブロッサムディーヴァ全機の起動が必要不可欠。開発室には……頑張ってもらうしかないわね」

P「そうだな……俺も、手が空いているときはそっちの仕事に張り付いておくよ」


……
…………
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:17:13.25 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパールガーデン、屋敷(居間)

歌鈴「お腹いっぱい……ごはん、食べすぎちゃったかも……」ケプッ

紗枝「たくさん食べへんと、大事なときにお仕事もできひんし、月読命姫も動かせへんよ?」カチャカチャッ!

歌鈴「うー……でも食べ過ぎて太っちゃうと、衣装着れなくなるし……あ、わ、私もお皿洗うの……」

紗枝「休んでええよ。あとちょっとやし」

歌鈴「う、うん……」


『それでは、次のニュースです。東京都渋谷区に出現した地球外生命体、政府軍の大型起動兵器による迎撃作戦が――』


歌鈴「……私たちの活躍、政府軍のやったことにされちゃってるんだよね」

紗枝「せやなぁ」

歌鈴「……」

紗枝「……」カチャカチャッ……

歌鈴「……紗枝ちゃん、嫌じゃないんですか?」

紗枝「なして?」

歌鈴「だって、頑張ったのは私たちなのに、全然知らない人たちの手柄になっちゃって……」

歌鈴「私たちだけじゃなくて、千秋さんや、翠さん、楓さん、美優さん、晶葉ちゃん……それに、Pさんだって頑張って……」

紗枝「あの人なら、別にええんとちゃう?」

ジャーッ……
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:18:12.19 ID:6zqvFsTL0
歌鈴「……紗枝ちゃん、前からそうなのかなーって思ってたけど……Pさんのこと、あんまり好きじゃない……よね?」

紗枝「……」

キュッ!

紗枝「……すかん人や」

歌鈴「ど、どうして……? Pさん、とっても良い人で……私たちにも、優しくして……」

紗枝「そんなことあらへん」

歌鈴「え……?」

紗枝「いい加減で、適当なことも言いはる。うちらが体張って戦っとるのに、うちらのことを食い物にしとる」

歌鈴「そ、そんなことないですよっ! Pさん、忙しい時でも私たちのアイドルのお仕事も見てくれて、どんなに危なくても、私たちと一緒に戦ってくれて……そ、それに、私たちが苦しい時は……」

紗枝「おかしいやろ! うちら、命がけで戦って……それなのに、あの人はうちらのこと食い物にして……」

紗枝「あの人だけやない、歌鈴はんも、珠美はんも、あやめはんも……あの人に食い物にされて、へらへらして……!」

歌鈴「ち、違います! わ、わたしゅい……私は……戦って、辛くて、苦しくて……」

歌鈴「でも、Pさんが傍にいてくれて、私のことを、助けてくれて……温かくて……Pさんだから、いいなって、思ったから……」

歌鈴「紗枝ちゃんは、Pさんのこと……優しい人、私たちを守ってくれる人って、思ったことないんですか?」

紗枝「……」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:18:54.57 ID:6zqvFsTL0
シュッ!

あやめ「お二人とも、そこまでです」

歌鈴「はわっ!?」ビクッ!

紗枝「あやめはん……」

あやめ「夜分に騒ぐと、床に就いている珠美殿が起きてしまいます。あまり騒がぬよう」

歌鈴「ご、ごめんなしゃい……」

あやめ「歌鈴殿、思うことはわかりますが、わたくしたちとて、P殿に手を差し伸べられて悦びを覚えているのも事実です。それは否定できないかと」

あやめ「そして紗枝殿、確かにP殿に対して良い印象を持たれていない理由も分かります。傍から見ると、P殿とわたくしたちの関係は少々歪でしょう」

あやめ「ですが、P殿がわたくしたちに尽くしてくださっているのは、決して己の為ではないかと」

あやめ「常にわたくしたちのことを考え、自身の危険を顧みず行動してくれています。少なくとも、わたくしはそう思っていますが」

紗枝「……それが、すかんって言うとるんや」

あやめ「……」ピクッ


……
…………
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:19:23.40 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパールガーデン、ブラックパール城(指令室)

翠「後は、今後春霞として芳乃ちゃんをユニットに加えてからで……」

P「こればっかりはやってみないとな」


芳乃「……」



千秋「……芳乃ちゃん?」

P「ん、どうした?」

翠「何かありますか?」

芳乃「……」

千秋「芳乃ちゃん、どうしたの? 芳乃ちゃん」

芳乃「……ほほー」


ビビビビビッ! ビビビビビッ!


26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:19:55.92 ID:6zqvFsTL0

P「警報!?」

千秋「このタイミングで……翠さん!」

翠「はい! 宙域……ヤタノカガミが起動しています! スクリーンに表示……破壊者です!」

千秋「城内警報を! オペレーターの2人にも連絡をして!」

翠「わかりました!」カタカタカタッ!

P「晶葉、麗奈! 破壊者が出たぞ、ブロッサムディーヴァはどうなっている!?」ピピピッ!

晶葉『まだストライカーとキャリアーの同期作業が完了していない。この状態で出撃させると作業のやり直しだぞ』

P「んなこと言ってる場合じゃないだろ! 麗奈はどこ行った? 出れるのか?」

晶葉『レイナならもう格納庫に走っていったよ。桜霞の出撃準備もあるだろうが、お前も急げよ』

P「黒川千秋!」ガタッ!

千秋「観測結果は転送するわ! 貴方と芳乃ちゃんは先行して出撃を!」

P「行くぞ芳乃ちゃ……ってもういないのか」


……
…………
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:20:25.08 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパールガーデン、屋敷(居間)

翠『Pさんは麗奈さんと先行して破壊者の迎撃に出ています。桜霞のみなさんもお願いします!』

あやめ「承知」ピッ!

歌鈴「こ、こんな時間に破壊者が……い、急がないと!」

あやめ「歌鈴殿」

歌鈴「ふぁっ!? ふぁい!」ビクッ!

あやめ「珠美殿がまだ寝ています。起こして連れて行かなければ」

歌鈴「あっ、そ、そうだった……た、珠美ちゃーん!」タタタタッ!


歌鈴「ああああああああっ!?」ズザザザザザザッ!!


あやめ(また転んで……)チラッ

紗枝「……」

あやめ「……紗枝殿、次の出陣、問題はないのでしょうか?」

紗枝「っ!?」ピクッ!

あやめ「わたくしたちは、一人でも窮地に陥れば全員が危険な状況になります。それに、わたくしだけではありません。P殿も以前から気付いて――」

紗枝「……はよ行かへんと」

あやめ「……では、いざ!」シュッ!

……
…………
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:21:00.68 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパール城、カタパルト(機体内)

P「麗奈、最初に行っておくけど俺は夜戦なんて初めてだぞ」ピッ、ピッ!

麗奈『あっそ』

P「はい……いや、何かアドバイスが欲しいんです」

麗奈『んなこと言われてもね……アンタ、自分のやることは分かってるんでしょう?』

P「……ああ、そりゃあ分かってるさ」

麗奈『レイナサマは面倒見てやんないわよ。ガキのお守りなんて、アンタの仕事なんだから』

P「もうちょっとこう、協力してくれてもいいのでは……身内が危ないってのに」

麗奈『うっさいわね。ちょっと晶葉、破壊者はどうなってんの!』

ピピピッ!

晶葉『ヤタノカガミの初期解析が出た。映像データ出すぞ』

ピピッ!
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:21:53.61 ID:6zqvFsTL0
P「ん、なんだこれ? 触手? タコ?」

麗奈『イカじゃないの?』

晶葉『暫定コードはクラーケンだ。お前たちはコイツの下半身を見てタコだのイカだの言ったと思うが』

P「パスタって感じもするな」

晶葉『何でもいい。下半身から無数に伸びている配線のような物が見えるが、太さも様々だが恐らく情報収集用の端末の一種であると考えらえる』

P「情報収集……」

晶葉『前回の破壊者、トールの行動と合わせると何かしらの手段でこちらとの戦いを学習しているのは間違いない。こいつの配線は恐らくそれの一端だろう』

P「下半身のほとんどは配線……法術の力も下半身全体に集中しているだろうな……」

麗奈『んじゃこっちのデータ抜かれる前に全部切り落とすわよ』

P「無茶苦茶な……」

麗奈『無茶でも何でもやる! ほら、行くわよ!』

P「……まあ、そうだな。出撃するぞ!」


……
…………
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:22:21.12 ID:6zqvFsTL0
――ブラックパール城(指令室)

美優「タケミカヅチ、2機とも出撃しました。ブロッサムウイングも出撃済です」カタカタカタッ!

楓「タコみたいな破壊者ですね」

周子「イカじゃない?」

ピピピッ!

晶葉『その会話はさっきPと麗奈でやったからもういいぞ』

楓「あ、はい」

千秋「法術の力はやはり下半身全体に広がっているのかしら?」

晶葉『そうだな。前回のトールが胴体……上半身、今回のクラーケンが下半身全体だ。やはり敵の特性は変化しつつ、より強力になっている』

周子「次に来るヤツは全身がすごい奴とかありそうだねー」

楓「今のうちに国外避難の準備を……」

千秋「冗談を言っている場合じゃないわ。翠さん、桜霞の準備は?」

翠「全員、ツクヨミヒメとブロッサムディーヴァに搭乗中です。順次出撃させます」

千秋「……頼むわよ、みんな」


……
…………
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:23:16.57 ID:6zqvFsTL0
――東京、千代田区(戦闘区域)

クラーケン「……」シュルッ……シュルルル……


P「やばいわアイツ、こんなところに落ちてくるなんて、確かに日本の情報収集しにきてるわ……」

麗奈『東京なんてどこもビジネス街みたいなもんでしょ……まあ、地面に配線を張り巡らせてるわね』

ギュンッ!

P「ていうかいつも東京のどっかで戦ってたな……地面に根張ってるなら動きも鈍くなっているはず……やるか!」

麗奈『よっし行くわよ!』ガションッ!

P「ミサイルで頭部を狙う……いけっ!」ボシュシュシュッ!

クラーケン「……!」ビシュルルルッ!!

ドガガガガガガガァンッ!

麗奈『チッ、デカい足がミサイルを叩き落したわね』カタカタカタッ!

P「器用なことしやがるな……」

麗奈『P、データ送ったわよ。いまヤツが出してきた足、下半身に8本あるわ。まるでタコ足ね……』
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2017/10/05(木) 01:23:47.31 ID:6zqvFsTL0
P「細い配線でデータ抜き取ってる間は、太い足は守りに移ってるわけか。どうしたもんか……ん?」

麗奈『何よ』

P「いや、そういえばアイツ、情報収集っていうけど実際何のデータ探してるんだろうなって。俺たちのデータってわけじゃなさそうだし……」

麗奈『……』

P「いやでも、トールのときはまっすぐ城に向かってきてたし……」

麗奈『……』

ピピッ!

芳乃『でしてー』ズドォンッ!

ドガァンッ!!

クラーケン「!」

P「おお芳乃ちゃん。また先に来てもらって悪いな」

芳乃『それが使命でしてー』ギュンッ!!

麗奈『そうね。ほら、さっさとやるわよ。ここでアタシたちが仕事した分、あのバカたちが楽できるのよ』

P「そうだな……!」ギュオオオオッ!

……
…………
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