国王「さあ勇者よ!いざ旅立t「で、伝令!魔王が攻めてきました!!」完結編

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88 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 10:06:55.12 ID:ib3C7KTz0


先代「ならん」


先代「この子を殺すことなど、許せるはずがない」

側近「親子の情に流されて、とるべき道を選びませんか。魔族にあるまじき事ですね」

先代「………」

玄武「いい加減にすっべ! 側近!」

鳳凰「我らが王を愚弄することは、我らを侮辱していることと同義。それ以上口を開くならば、それなりの覚悟をする事だな」

側近「…もう、ウンザリだ」

木竜「何?」

側近「邪神の気紛れに翻弄され、それを正す力も考えもない、この世界にはウンザリだと、言ったんですよ」

先代「………側近、お前」

側近「守る価値もない。ならばいっそ」

側近「僕の手で、壊してしまえばいい」




魔王《………!!》

炎獣《な、何を…》

炎獣《何を言ってるんだ、こいつ…!?》

氷姫《側近…!!》

氷姫《…この男、まさか…ここで魔族を裏切ったの!?》

89 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 10:07:51.18 ID:ib3C7KTz0

木竜「…やる、と言うのじゃな」ザッ

雷帝「翁…!」

木竜「構えよ、雷帝。この男は、今この時を持って」

木竜「我らの敵じゃ」ギロ

雷帝「…っ!」ジャキ…!

玄武「ちィ…!」ザッ

鳳凰「四天王全員を相手にして、勝ち目があると思うのかえ? 側近よ…!」


側近「ふっ」

側近「くっくっくっ…!」

側近「いいでしょう。今こそ試される時だ」


側近「この数百年、僕の生きた証を」




側近「その身に、刻むがいい――!!」









  ゴ  ッ











雷帝《そして私たちは》

雷帝《その戦いに》


雷帝《敗北した》



90 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 20:31:34.41 ID:kpo1ZONMO

雷帝「ぜっ…!!」

雷帝「はっ…!!」ドクン…


側近「散れッ!!」ズドンッ!

鳳凰「ぐがぁ…!!」


木竜「くっ!! 回復が間に合わぬ!!」

側近「…」ヒュ

木竜(!! 一瞬にして背後に――)

側近「弾き飛べ!!」ボンッ!!

木竜「がふっ!!」


雷帝「はっ…! はっ…!」ドクン…

雷帝(馬鹿、な…!!)ドクン…

雷帝(一体の魔族がここまでの力を有するなんて…!!)ドクン…!


側近「僕は」ゼェ…ハァ…

側近「僕は…!!」

側近「うおおおおおおおおおおっ!!」


先代「………側近…」ザッ

玄武「魔王様…ッ!! 下がっていてくれぇ!!」

先代「玄武…っ」

玄武「オラの全てをこの一撃に懸ける…ッ!!」

雷帝(駄目だ…!)

雷帝(このままでは…!!)



側近「来るがいいッ!!」

側近「玄武ッ!!」



玄武「受けてみるべッ!! 側近ッ!!」




玄武「――ぜああああぁああぁあぁああぁああああああぁああぁあぁああぁああああああぁああぁあぁああぁああ!!」




雷帝「玄武殿ぉっ!!」

91 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 20:32:24.50 ID:kpo1ZONMO





――ズンッ









玄武「かふ………っ」



側近「………」ズボッ…


ドサ………


側近「………」

側近「さようなら…玄武…っ!!」



雷帝「ば………」

雷帝「馬鹿な…!!」



雷帝《玄武殿の肉体を…側近の腕が撃ち抜いていた》

雷帝《鳳凰の大火炎も、翁のブレスも》

雷帝《奴の狂気とも言える攻勢の前に、僅かに届かない》

雷帝《怒りに任せて突撃した私も、側近の壮烈な反撃にあい、昏倒状態に陥る》

雷帝《そして、再び目を覚ました私が見たのは》



雷帝《――事切れた先代様と》




先代「」


女勇者「…これで」

女勇者「これで全てが終わった…?」



雷帝《その前に立つ、女勇者だった》



92 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 20:33:40.21 ID:kpo1ZONMO

炎獣《ど………》

炎獣《どういうことだよ、これ》

氷姫《…っ》

氷姫《先代様は、女勇者に破れ去った………。それだけが魔界で知られている、この日の出来事だった》

氷姫《けれど、これは…事実は、違う…!》

雷帝《………》

雷帝《おそらく、我々四天王が破れ去った後》

雷帝《先代様は、側近と戦った。そこに最悪のタイミングで――》

雷帝《女勇者の一行が、姿を現したのだ》

炎獣《側近が、先代様と四天王に反旗を翻して………その隙を、女勇者に突かれたっ…》

氷姫《まさか…》

氷姫《側近…この男…! 女勇者に与して、先代様を!?》

雷帝《………》

雷帝《奴が何を思い、こんなことを引き起こしたのか…今でも私には理解することは出来ない》

雷帝《奴の言動は異常だった。………しかし、奴の言葉の中にも事実と言えることが、ひとつだけ、ある》



雷帝《………"先代様の持つ邪神の加護が、先代様がご存命の間に魔王様へ継承されていた"》




魔王《………………》

93 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 20:47:06.92 ID:kpo1ZONMO

雷帝《魔王様…》

魔王《………本当のことなの?》


魔王《私が、お父様の加護を奪っていたの?》


雷帝《…》

魔王《………そうなのね》

雷帝《…前代未聞の、出来事でした》

雷帝《まだ赤子であるはずのあなたに、恐るべき加護の翳りが現れ始め…》

雷帝《側近は、あなたを殺すと、言い出しました》

魔王《………っ!》ギュッ

炎獣《お、おかしいだろ!? 何で魔王を殺すなんて話になんだよ!?》

氷姫《先代様が存命の間に邪神の加護が移り変わった…》

氷姫《………その現象が続いて先代様の力が弱まれば、女勇者に勝てないと思った?》

雷帝《女勇者に勝つため…? くくっ》

雷帝《奴が魔界の正義のために事を為そうとしたと? 奴はその手で、先代様までも手にかけようとしたのだぞ…!》

雷帝《奴の言動は矛盾していた…っ! 側近は既に、狂気に支配されていたのだ!!》

魔王《………いだ…》

氷姫《――え?》




魔王《――私の》



魔王《私のせいだ》



魔王《私のせいで、お父様は》





《赤毛っ!》

94 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 20:51:45.48 ID:kpo1ZONMO

金髪《赤毛っ!》


赤毛《………》スゥ…


三つ編《ど、どうなってるの、これ…!》

三つ編《赤毛の体が、薄れて、半透明になっていくっ!》

坊主《ねえっ!》ギュッ

雷帝《!》

坊主《た、助けてっ! このままじゃ赤毛がっ!!》

魔王《………っ!》

炎獣《くっそ! こんな時に…っ!》

氷姫《不味い…! 教皇に、存在を支配されかけてるんだ!》

魔王《…》グッ…!

雷帝《魔王様…っ》

魔王《――いまは》

魔王《懺悔の時じゃない…っ!》

魔王《まだ…!!》

魔王《まだ立ち止まれない………!!》

炎獣《魔王…》

氷姫《………あんた》

魔王《――急ごう、皆!》

魔王《まだ、考える時じゃないっ!》

魔王《私たちは》


魔王《進まなきゃ、ならない…!!》



95 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 20:53:02.84 ID:kpo1ZONMO



キラキラキラ…

教皇《…娘の存在が、完全にこちらのものになるまで》

教皇《もう、間もなくだ》

教皇《………》

教皇《しかし、邪魔ばかりが入る。あの子供ら…》

教皇《………あれは》

教皇《貴様の差し金だな………魔法使い!》



『………あはは、バレちゃいましたか』

魔法使い『面白い余興に、なったでしょう?』



教皇《――何のつもりだ…》

魔法使い『僕はただ…女神の意思にしたがっただけですよ』

教皇《戯れるな…! こんな茶番劇がそうであってたまるか!》

魔法使い『………貴方は、案外女神のことを…何も分かってないんですねぇ?』

教皇《何だと………?》

魔法使い『忘れたんですか? 僕らの女神が――』

魔法使い『とっても、慈悲深いお方だと言うことに』


96 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/21(土) 20:54:02.03 ID:kpo1ZONMO

教皇《何の慈悲になると言うのだ? まさか、魔族共に情けをかけるとでも言うつもりか?》

魔法使い『………やれやれ』

魔法使い『貴方はどうやら、下らない政治や欲求に傾き過ぎたようですね』

教皇《何…?》

魔法使い『時には、友と語らうことも…必要だったのですよ』

魔法使い『あの子達を見て…そうは思いませんか』

教皇《………貴様、何を言っている》

教皇《貴様は――》

教皇《一体、何を企んでいる…!》


キラッ


教皇《!》



《………かげ…!》

《………赤毛…っ!》


魔法使い『おや』

魔法使い『どうやら、彼らがやってくるようですよ』

魔法使い『最終決戦ですねぇ』

教皇《ち…!!》

教皇《――私は、敗れぬぞ》

教皇《貴様がどんな邪謀を弄しようとも》

教皇《私には、未来さえ見えているのだから…!!》




赤毛《………》フワァ



魔法使い『………だと、良いんですが、ね』



97 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/22(日) 05:15:34.28 ID:WmkNYsCJ0

三つ編《赤毛…!》

三つ編《無事でいて…っ!》

坊主《うぅ…赤毛…!》

金髪《今は、想うしかねぇ! 赤毛のことを!》

金髪《きっと会えるって、信じるんだ!!》



雷帝《…》

雷帝《私たちが………人間の子供に、助けられている》

氷姫《ほら、あんたもぼさっとしてんじゃないわよ!》

雷帝《!》

炎獣《まだお前の存在は、不完全なままだぜ! 記憶のピースが揃ってねぇ!》

炎獣《時間がねぇ! 教皇と対峙するまでに、一気にお前の記憶の扉を駆け抜けるぞ!》

雷帝《…》

魔王《雷帝…》

98 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/22(日) 05:17:05.13 ID:WmkNYsCJ0

雷帝《私は…》

雷帝《私の存在は、ただ魔王様をお守りするために》

雷帝《傍らに雷鳴剣が無くなった今でも、それは変わらない》

魔王《…雷帝》

雷帝《――行きましょう》

雷帝《それが必要だと言うのなら、私の過去などいくらでも白日に曝してくれる!》

雷帝《私たちは》

雷帝《ここで立ち止まるわけにはいかないのだから!》

炎獣《へへ! らしくなってきたぜ!》

氷姫《…そうこなくっちゃ、ね!》



雷帝《そうだ》

雷帝《あの戦いを生き延びた後、私達は………》





木竜「………どうやら、鳳凰は去ったようじゃ」

雷帝「…そう、ですか」

木竜「お主は行かぬのか?」

木竜「これから、魔界は暗黒の時代となる。人間の侵略…残り少ない資源の奪い合い」

木竜「誰もが自分の身を案じることしか出来んような、混沌の時に」

木竜「そんな時に、お主は」

木竜「その赤子のために、尽くせるのか? 得体の知れぬ加護を抱く、先代様の娘に」

雷帝「…」

雷帝「そう言いながら、翁も」

雷帝「ここに残っている。………そういうことではないですか?」

木竜「ほっほ! 言いおるわい」

木竜「いつまでも若造でいるわけでは、ないようじゃな?」

雷帝「………これは」

雷帝「私の、誓いですから」

99 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/22(日) 05:18:39.84 ID:WmkNYsCJ0

雷帝《私と翁は、多くの言葉を交わさずとも、お互いを信頼し合った。背を合わせて、魔王様のために戦った》

雷帝《…小さかった魔王様を見守りながら、私と翁は、ひたすら外敵を排除した》

雷帝《我々の抱える資源を狙う者。魔族も、人間の軍隊が押し寄せたこともあった》

雷帝《雷部の者からの反逆が起こったこともあった。しかしそれも》

雷帝《私ははね除けた》




雷帝「これは何の真似だ?」


「見ての通りですわ」

吸血鬼「我らが吸血鬼一族は、あなたを部の長と認めませんと、そう言っているんですの…!」

雷帝「………」

吸血鬼「そんな娘っ子のために、部の存続を懸けるような甘い判断をするトップに、私は従う気はありませんわ…!」

電龍「吸血鬼! てめぇ、調子こくんじゃねぇぜ…!」ギリ

雷帝「待て、電龍」ス…

雷帝「…それで、どうすると言うんだ?」

吸血鬼「――決闘ですわ」

吸血鬼「あなたを倒し、わたくしが部の長につき」

吸血鬼「いずれ来る強大な魔王の、四天王となりますの…!」

雷帝「………ふむ」

雷帝「いいだろう。受けて立つ」

電龍「え、ちょっ、部長!?」

雷帝(…覚悟の上の事だ。こんなことはいくらでも想定していた)

雷帝(上位魔族を部から失うのは少しばかり惜しいが、しかし――)


雷帝「それでも、力によって従え、力によって示すのが魔族」



雷帝「――気の変わらぬ内に、かかってこい」チャキ…

100 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/22(日) 05:19:56.34 ID:WmkNYsCJ0



雷帝《…だから、姫様と呼んでいたそのお方が、魔王になると言ったその時》

雷帝《私は、私が下してきたいくつもの判断が、正しかったことを思い知った》



魔王「私、魔王になる」

魔王「魔界に、秩序と尊厳を取り戻す」

雷帝「姫様…」

魔王「私自身が、そうしたいって」

魔王「そう思ったんだ」

木竜「………なるほどのう」

雷帝「姫様が」

雷帝「そう仰るのでしたら…」

木竜「うむ」

雷帝「我らは身命を賭して、役目に当たるのみです――」

魔王「………うん。ありがとう」


雷帝(姫様…)

雷帝(お強く、なられた)

雷帝(沢山の経験をしてこられたのだろう。沢山のことを、学んでこられたのだ)

雷帝(いつの間にか、私の知らない顔をなさるようになった)

雷帝(この方は、きっと…私が思っている以上の………)

魔王「………うっ…」ズキン…!

雷帝「! ひめさ――」

炎獣「姫。平気か」パッ

魔王「…うん。ありがと、炎獣」

炎獣「へへ。姫は俺がついてなきゃダメだからなー!」

魔王「ふふ。炎獣だって、私がいなきゃダメでしょ?」

炎獣「うがっ? そそそ、そうかぁ?」

魔王「うふふ」




雷帝「………」



雷帝《その時、私は無性に》

雷帝《自分の居場所を失ったような》

雷帝《そんな心持ちになった》

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/22(日) 05:20:26.08 ID:WmkNYsCJ0
ここまでです
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/22(日) 21:47:39.80 ID:J/6F9Y/Vo
次スレ立ってたのか気付かなかった

おつおつ
103 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 13:28:07.28 ID:vwTJGK6PO

炎獣《…雷帝。お、俺、その…》

炎獣《お前にそんな気持ちをさせてるなんて知らなくてよ…》

雷帝《…ふっ》

雷帝《何を勘違いしてるのか知らんが、お前が気にすることではない》

雷帝《お前はお前の足取りで、炎獣たらしめる為の居場所を手にいれた。私は最初、お前にそれが出来なければ斬るとまで言った男だ》

雷帝《よく、魔王様を支えたな》

炎獣《あ、ああ…。そー言われっと、照れるなぁ》

氷姫《…》

雷帝《それに、私の役割はすぐに見つかる》

雷帝《我々には内外に多くの敵が居た》






氷姫「…人間からの休戦協定?」

木竜「うむ。どうやら、ただの休戦に留まらず…人と魔族の和平を目指す、というのが建前のようじゃが」

氷姫「その為に、人間の王国の、建国の儀式に出ろって…? そんなもん誰が信じるのよ」

氷姫「どうせあの時みたいに裏切るつもりなんだ…!」

雷帝「…ふむ」

魔王「………けれど、今回の人間の王は今までのどの国王よりも態度が違う」

氷姫「た、確かにそうだけど。その使者が殺されてお仕舞いってこともあるのよ!?」

魔王「…」


冥王「どうなさるの? 子猫さん。あたくし人間なんてどうでもよろしいのだけど」

冥王「あたくしがこうして後援についている以上、言われるがまま生け贄を差し出すなんてあんまりにもお粗末な顛末は、頂けないわねぇ」

104 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 13:30:21.04 ID:vwTJGK6PO

木竜(後援などと言って、魔王城に居座っておるだけじゃろうが。全く、いつまでもでかい顔をしよって)

冥王「そもそも、人間と魔族の和平なんて聞いたこともなくってよ。魔王と勇者がいるっていうのに、そんなことが実現出来ると思いまして?」

魔王「…それは」

雷帝「――賭けてみる価値はある」

木竜「!」

冥王「…へえ?」

雷帝「例え、仮初めの和平だったとしても、我らの軍備を整えるだけの時間が稼げるのならば、やる価値はある」

雷帝「それに策略を巡らせるならば、魔王様の即位の直後にこうして話を持ちかけてくるのは、適当ではないはずだ」

雷帝「あちらも魔王様の急激な台頭に、その手腕から今までと違う未来を見越しているのかもしれない」

魔王「雷帝…」

冥王「おほほ! 可愛らしかったあの坊っちゃんが言うようになったこと!」

冥王「ですけれど、それって全部憶測に過ぎないんじゃなくって?」

冥王「それとも生け贄の使者に、お前さんがなるって、そう言うつもりかしら? 雷帝」

雷帝「私は構わない」

雷帝「いずれにせよ、今の人間の世を視察できるいい機会だ」

冥王「傲慢ねぇ…」クスクス

木竜「さて…いかがいたしますかな? 姫様」

魔王「………」

105 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 13:31:39.74 ID:vwTJGK6PO

雷帝(魔王様…)

雷帝(あなたは、和平の可能性を捨てていないのでしょう)

魔王「雷帝…」

雷帝(危険は承知の上です。魔王様が望むのであれば、私もその道を探して参ります)コク

魔王「………分かった。雷帝、お願いします」

雷帝「はっ!」



雷帝《けれど人間は》

雷帝《魔王様の思いを踏みにじって、卑劣な罠を張り巡らせ》

雷帝《建国の儀式の場で、電龍を――》



教皇「魔族よ!! 貴様らは女神の名の元に、裁かれよう!!」

教皇「巫女たちよ、その怒りの炎を此処に送れ!!」

戦士「ちょっと待て…!」

戦士「待ってくれッ…」

戦士「何をしているんだよ!!」

戦士「操られているのか!! なあ、そうなんだろう!!」

戦士「兄上ぇッ!! 」

兄「許せよ、戦士」

兄「――やれ」



電龍「へっ…へへ…」

電龍「俺は、無理っス、わ。部長…」

電龍「お、れ、もう動け、ないっス。置いてってください、よ」



雷帝《………電龍》

106 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 13:33:21.30 ID:vwTJGK6PO

雷帝《電龍は死を賭して私を救った。そうでなければ、私も死んでいた》

雷帝《そうまでして永らえる価値が自分にあったのか、私には分からなかった。けれど、思い悩む時間などありはしなかった》

雷帝《和平の道は閉ざされた》

雷帝《時を置かずして、人間は膨大な軍隊を送り込んでくることになる》

雷帝《不気味なほどに統率の取れた兵士達。人とは思えぬほど強力な魔法を使う魔術師》

雷帝《それまでの人間の軍とは一線を画す恐ろしい能力に、魔界大陸は危機に陥った》

雷帝《加えて、勇者が姿を現したとの情報が魔界に舞い込む》

雷帝《………私たちは、魔界を救うための作戦を打ち出した》



木竜「本当に宜しいのかのう? 姫様」

魔王「…爺。何度も皆で話し合った結果よ」

木竜「うむ…じゃがのう」

雷帝「魔王様と我々四天王による一点突破作戦。大軍の中央部を速攻をかけて崩し、殲滅。そのまま勇者撃破に向かいます」

氷姫「魔王が矢面に立つ以上、諸刃の剣ね。こちらも魔界の命を晒しているのと同じだもの」

魔王「むう。私は、そんなに頼りない?」

氷姫「そ、そうは言ってないわよ! あたしだって心配して言ってんの! あんたが敵の標的にされるかもしれないのよ?」

魔王「ふふ、ありがとう。でも、私にも覚悟は出来てる」

魔王「それに、頼れる四天王が増えたことだしね」

魔王「ね、炎獣?」


炎獣「おう!」

炎獣「つっても俺のやることは、変わらねえけどな!」

炎獣「魔王を、守る…!」

氷姫「…」

107 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 13:36:28.12 ID:vwTJGK6PO

炎獣「今の俺たちならそれが出来る。…氷姫」

氷姫「な、なによ」

炎獣「師匠の所に居た頃から、俺たちはまた強くなった。今なら自分の戦いを、自分で出来る」

炎獣「そうだよな?」

氷姫「…ふん。当然よ。今のあたし達なら」

氷姫「――何だってやってやれるわ」

炎獣「へへ! 氷姫ならそう言ってくれると思った!」ニカ

氷姫「へ、へらへらするな! タコ! ヘボ! ボケナスっ!」

木竜「ほっほっほっ。言うとくが儂とて若いもんだけにやらせとくつもりはないぞい!」

炎獣「じ、じいさん。あのブレスだけは、うかつにぶっ放さないでくれよ」

氷姫「ホントね。より研きかけちゃって、年寄りがどこに向かってんだか」

木竜「ほっほっほっ」


雷帝「姫様…宜しいのですね」

魔王「あ、また姫様って言った!」

雷帝「あ、し、失礼しました! 魔王様!」

魔王「くすっ…。いいの、雷帝」

魔王「私たちが選べる道はいつだって少なかった。今だって、それは変わらないのかもしれないけれど」

魔王「私も、いつまでも守られてばかりいるつもりはない」

魔王「王国軍と勇者を倒して…魔界を守る」

魔王「雷帝。あなたのことも、ね」

雷帝「魔王様…」


魔王「行きましょう」



魔王「必ず………勇者を倒す」




108 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 13:37:12.70 ID:vwTJGK6PO

冥王「…あら?」

冥王「もう出陣ではないのかしら? あたくしにわざわざ会いにいらしたの?」

雷帝「…」

雷帝「なぜ、我々に協力した?」

冥王「…おほほ。そう、そうですの」

冥王「結局答えが分からずに、その仏頂面をひっさげて今更のこのこ尋ねにいらしたのね?」

雷帝「………答えろ、冥王」

冥王「いやだわ。お前さんごときが頑張ってみたところで、あたくし微塵も怖くありませんのよ」

冥王「答える義理はありませんわ。とっとと行ってらっしゃいな。勇者討伐作戦とやらに」

冥王「また一段と強くなったのでしょう? …あなたたち」クスクス

雷帝「…」

雷帝「貴様が何を目論んでいようが、私達は必ずやり遂げる」

雷帝「せいぜい、高みの見物に精を出していろ」



冥王「…おほほ」

冥王「言われなくても、そのつもりでしてよ」ニヤァ


109 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 13:38:00.73 ID:vwTJGK6PO


雷帝《私たちは賭けた》

雷帝《四天王として、研鑽をつんだ己の力を信じて》

雷帝《私たちは、勇者までたどり着いてみせると誓いあった》

雷帝《そして私たちは………精強な王国正規軍を撃破することになる》

雷帝《敵の内部に潜り込み、内側から切り崩す。何かが間違えば死が待つ、決死の作戦》

雷帝《それでも私たちはやり遂げた》

雷帝《敵の指令部に直接攻撃を仕掛けた私が出会ったのは》

雷帝《あの日、王国建国の儀式の動乱首謀者。………電龍の、仇だった――》





王国兵「将軍閣下! 待避を!!」

王国兵「四天王が来ますッ、お早く…ぐあぁあっ!?」

バリバリッ!!

雷帝「…貴様が」

雷帝「人間の将か」



「これはこれは、どこかで見た顔だな」

兄「――あの時殺し損ねたのが、私の運の尽きというわけだ」

110 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 22:52:15.89 ID:L2B0drxD0

兄「なぜ、魔法感知をすり抜けて悠々とそんなところに立っている?」

雷帝「見くびるな。貴様らの小細工ごときで、我らの逆襲は止められない」

兄「…まさか測定限界を越える魔法の濃度を…?」

雷帝「それを知る暇もなく、貴様らは全滅するのだ」チャキ…

兄「………ふっ」

兄「くっくっく…」

雷帝「…!」

兄「はっはっはっは!!」

兄「………我ながら、滑稽だな!」

兄「あの日と同じことを、敵にしてやられたと言うわけか!」

兄「この技術を持ってしても…その上を凌ぐ能力を、貴様らが持っている…!」

兄「貴様はこの事を知っていたのか、教皇!!」

兄「どこかで見ているのだろう!! どうなんだ、魔法使いっ!!」

雷帝(こいつは何を言っている…?)

兄「世の破滅すら招きかねん地獄の使者共め!!」チャキ…!

兄「その力の真の意味すら知らず、命を刈り取り――そして貴様らは何も知らぬまま滅ぼされるのだ!!」

雷帝「…言いたいことはそれだけか?」

兄「はは…っ!!」

兄「私が只で死ぬと思うなよ………!!」

兄「我は………王国大将軍の息子!!」



兄「――勇者一行戦士の兄ぞッ!!」ジャキィッ!





兄「うおおおぉおおぉおおおッ!!」







111 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 22:55:38.97 ID:L2B0drxD0



ザザァン…?


魔王「…」

雷帝「魔王様…間もなく陸が見えて参ります」

魔王「そう…」

雷帝「海を越えれば、王国領港町。人間の王の座す王城まで、数える砦はひとつのみとなります」

炎獣「砦ったって、大したことないだろっ? 俺たち四天王と、魔王が居ればさぁ!」

雷帝「敵戦力の大部分はすでに壊滅したからな。そこまで心配はいらんと思うが」

氷姫「いよいよ…ってワケね」

炎獣「でも、それはそれで物足りないないよなー…これ以上の敵がいないなんてさ!」

氷姫「馬鹿言わないでよ。王国軍の本体を壊滅できるかどうかは、賭けだったんだから。あんなのはもうゴメンよ」

雷帝「ああ…。だがその甲斐あって、人類撃破の願望は目の前だ」

炎獣「おっ!」

炎獣「見えたぞ! 陸だっ!!」

雷帝「…さて、気を引き締めて参りましょう」

氷姫「そうね。人間が、まだどんな手を隠してるか分かったもんじゃないし」

木竜「そろそろ、前線崩壊の一報が人間の王の元へ届いていてもおかしくはないからのう」

炎獣「へへっ。強い奴がいるなら、ドンと来いだぜっ!」


魔王「――みんな」

魔王「ここまで、長い道のりだった」

魔王「けど、とうとう人間をここまで追い詰める事ができた」

魔王「あと少し…あと少しの間だけ」



魔王「私に、力を貸して…!」




112 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 22:56:42.80 ID:L2B0drxD0

雷帝《――そうして、あの港町で》

雷帝《私達の本当の戦いが始まったのだ》

魔王《雷帝》

雷帝《魔王様…。ようやく、私は辿り着いたのですね》

魔王《うん。私たちの、戦いの現実に》

炎獣《へへ。お帰り、雷帝》

雷帝《ああ…》

氷姫《遅いのよ、あんた》

雷帝《…すまん》

雷帝《ここから先は、私たちの記憶は一緒だ》

炎獣《そう、俺たちは一緒に戦い続けた》

氷姫《うん。…港町では未知の兵器を操る商人と》

炎獣《人類最強の武闘家ともやり合った》

魔王《多くの軍勢に、女神の加護を持った盗賊とも》

雷帝《そして》

雷帝《王国軍将軍…戦士と、魔法使いに扮した側近との戦いで》

雷帝《翁を失う》

雷帝《………それでも、我らは進んできた…!》

雷帝《だから!》

雷帝《もう、貴様のまやかしには乗せられんぞ! 教皇!!》




教皇《………》

113 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 22:58:24.48 ID:L2B0drxD0

教皇《魔王。そして魔王四天王》

教皇《なぜ、貴様らは人を滅さんとする?》


魔王《私たちは、人間を滅ぼそうとしているわけじゃない》

魔王《勇者を倒し、この争いに終止符を打つつもりでいるだけ》


教皇《魔王》

教皇《貴様はそうほざくが、一体幾つの命をその手で散らした?》

教皇《いくつの希望を壊し、いくつの友情を引き裂き、いくつの愛を奪い去った?》


炎獣《これは戦いだ》

炎獣《悲しみも沢山生まれた。傷つけたのは俺たちかもしれない》

炎獣《けれど、全てを乗り越えた覚悟を、俺はこの戦いでいくつもぶつけられてきた》

炎獣《その魂は哀れまれるようなものじゃない。魔族も人間も、それは変わらない!》


教皇《…戦いは神聖だったと?》

教皇《ふん。笑わせる》


氷姫《それはこっちの台詞よ》

氷姫《策略を巡らせ、争いを引き起こしたのは誰!?》

氷姫《どうせあんたみたいな腐ったお山の大将みたいのが、裏で糸引いたんでしょうがっ! 違う!?》

114 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 22:59:18.29 ID:L2B0drxD0

教皇《くっくっくっ》

教皇《はっはっはっはっ!》

魔王《…何がおかしいの》

教皇《戦いは私が引き起こした? お前達で戦いを終わらせる?》

教皇《驕るな、愚か者どもが》

教皇《何も知らぬ者が何を喚いても、ただのお笑い草でしかない》

教皇《貴様らは何も知らぬ…! 本当のまやかしが何かを!》

教皇《貴様らが何のために戦い、何のために生きているのかを!!》


教皇《貴様らは知らぬのだ!!》


魔王《…っ》

115 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:00:25.12 ID:L2B0drxD0

雷帝《魔王様》ス…

魔王《…、雷帝》

雷帝《言ったはずだ。教皇》

雷帝《私たちはもう、その手には乗らない》

教皇《くっくっくっ…! 私の言葉を虚妄だとでも言うつもりか!?》

雷帝《例え貴様が語ることが真実であったとしても》

雷帝《私たちはここで消え去る運命など、受け入れはしない》

教皇《…!》


雷帝《無様でも間違っていても》

雷帝《私たちは前に進む為にここにいる》

雷帝《それを、今の私たちは知っている!》

炎獣《ああ!》

氷姫《そういうこと!》

魔王《………》

魔王《教皇》


魔王《私たちは、あなたに屈しない!》

魔王《――ここで、あなたを越えていく!!》




116 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:20:16.35 ID:L2B0drxD0

教皇《黙れ》


教皇《黙れッ!!》

教皇《黙れッ!! 黙れッ!!》


教皇《貴様らに私を越えることなど出来ぬッ!!》

教皇《私は女神の体現者ッ!!》

教皇《貴様ら魔族に破滅をもたらす存在だッ!!》

教皇《人間の勝利は、既に決められているッ!!》

教皇《その未来は、女神によって記されているのだッ!!》


教皇《貴様らは、我が波動の前に粉々に砕け散るッ!!》

教皇《さあ!! 今こそ再び力を寄越せッ!!》


教皇《奇跡の僧侶よッ!!》



赤毛《………》フワァ…!




炎獣《来るぞ!!》

氷姫《ちぃ!!》

雷帝《構えろ!!》


魔王《私たちもぶつよう!!》

魔王《己の全存在をっ!!》

炎獣《ああっ!!》

117 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:21:31.09 ID:L2B0drxD0

赤毛《………》コォオオオオオオ…


魔王《赤毛ちゃん》

魔王《今、助けるから!!》


魔王《行くよ、皆っ!!》


炎獣《うおおおおおおっ!!》


氷姫《はああああぁっ!!》


雷帝《おおおおおおおおっ!!》




 ズ ン ッ !




三つ編《すごい…》

三つ編《これが、魔王さん達の戦い》

金髪《ボヤボヤしてられないぜ》

金髪《オレ達が、あの力を赤毛に届けるんだ!》

坊主《…うんっ!》

坊主《もう怖くないよ!!》

三つ編《行きましょう!!》

金髪《ああ!!》


118 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:24:06.83 ID:L2B0drxD0


三つ編《赤毛!》

三つ編《赤毛!!》

三つ編《赤毛っ!!》

三つ編《聞こえる!?》

三つ編《あなたを絶対に連れていかせたりしないっ!!》

三つ編《私の大事な、友達なんだからっ!!》



坊主《もう一度会いたいよ!!》

坊主《僕、赤毛に話したいこと、沢山あるよ!!》

坊主《もう一度!!》

坊主《笑ってよ、赤毛っ!!》



金髪《赤毛!!》

金髪《また皆で会うんだ!!》

金髪《オレ、言ったろ!!》


――金髪「秘密結社の仲間は、ずっと一緒だ! 学校を卒業しても、大人になっても、ずっと!」

――赤毛「ずっと一緒?」

――坊主「いいなあ、それ!」

――三つ編「…私、ずっと一緒にはいれないと思うよ。みんな、おうちの仕事も違うし」

――三つ編「大人になったら、会えなくなっていくんだよ」

――坊主「そおなの!?」

――金髪「バカだなぁ、三つ編は!」

――金髪「大事なのは、仲間ってことだ。毎日一緒にいれなくなっても、仲間でいるって覚えてれば」

――金髪「いつか、会うための力になるんだよ!」



金髪《仲間だってことを覚えていればっ!!》


金髪《また、会うための力になるんだ――!!》




  ゴ  ッ  !  !






119 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:25:21.15 ID:L2B0drxD0


教皇《ぐっ!!》

教皇《がぁっ!!》


教皇《なんだッ!?》

教皇《なんだこの力はッ!!》

教皇《なぜ、あの子供たちがッ、奇跡の僧侶と同じ力を持っている!!?》


教皇《なぜッ…!!》


教皇《なぜだぁァッ!!》






炎獣《うっ!! くっ!!》

氷姫《こっちも………っ!! キッツいわ!!》

雷帝《ぬう…ッ!!》


魔王《皆!!》

魔王《自分の存在を忘れないで!!》

魔王《存在を消してしまってはダメっ!!》

魔王《自分の思いを!!》

魔王《思い出すのッ!》



炎獣《お、れが…!》

炎獣《俺である…》


炎獣《思い出………!!》


120 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:34:38.07 ID:L2B0drxD0

鳳凰「………何の用だ?」

鳳凰「今さら、里心でも沸いたのか」

炎獣「………」

鳳凰「? き、貴様、まさか…」

炎獣「――鳳凰。俺はあんたを、倒す」

炎獣「あんたを乗り越えて、俺が四天王になる」

鳳凰「………くくくっ。はははは!!」

鳳凰「あの日の只の親殺しが、今度は恩人まで手にかけようと言うのか!? 笑わせる!!」

鳳凰「貴様ごときに、朕が倒せるものか!! 自惚れもそこまでにするがよい!!」



炎獣「それでも俺はやる」

炎獣「そう、決めたんだ………!」





炎獣《………そうだ》

炎獣《あの時、魔王のために、氷姫や爺さんや雷帝のために》

炎獣《生きようって、そう決めたんだ》

炎獣《それが俺の》

炎獣《生きる理由なんだって》

炎獣《俺、そそかっしいから、すぐ大事なこと忘れちまうけど》

炎獣《でも、俺が戻るべき場所は…ここなんだ!》


121 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:35:52.27 ID:L2B0drxD0

鳳凰「………何の用だ?」

鳳凰「今さら、里心でも沸いたのか」

炎獣「………」

鳳凰「? き、貴様、まさか…」

炎獣「――鳳凰。俺はあんたを、倒す」

炎獣「あんたを乗り越えて、俺が四天王になる」

鳳凰「………くくくっ。はははは!!」

鳳凰「あの日の只の親殺しが、今度は恩人まで手にかけようと言うのか!? 笑わせる!!」

鳳凰「貴様ごときに、朕が倒せるものか!! 自惚れもそこまでにするがよい!!」



炎獣「それでも俺はやる」

炎獣「そう、決めたんだ………!」





炎獣《………そうだ》

炎獣《あの時、魔王のために、氷姫や爺さんや雷帝のために》

炎獣《生きようって、そう決めたんだ》

炎獣《それが俺の》

炎獣《生きる理由なんだって》

炎獣《俺、そそかっしいから、すぐ大事なこと忘れちまうけど》

炎獣《でも、俺が戻るべき場所は…ここなんだ!》


122 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:36:57.41 ID:L2B0drxD0

魔王《そう!!》

魔王《私たちが、私たちである証明!!》

魔王《近い自分、遠い自分!! そしてお互いを思い合う気持ちを!!》

魔王《思い出すの!!》

魔王《繋ぎ止めて!! 自分をっ!!》




氷姫《あたしがあたしである証明…!》

氷姫《ねぇ…っ、魔王…!》

氷姫《あたしさ…っ》

氷姫《あたしね…!》


氷姫《まだ、あんたに謝ってないよ…っ!》


氷姫《ひどいこと言ってごめん…って、あの時のこと…!》

氷姫《あんたは気にしちゃいないのかもしれない。もしかしたら、覚えてないかも》

氷姫《それでもね、あたしは》

氷姫《ちゃんとこの戦いを生き延びて、それで、あんたに真っ直ぐ向き合って》

氷姫《ちゃんと、謝るまで…!》

氷姫《こんなところでっ!》

氷姫《終われない!!》


氷姫《それがちっぽけだけど、ずっと捨てきれない想い!!》

氷姫《そして――!》


123 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:39:10.53 ID:L2B0drxD0

雷帝《魔王様…!》

雷帝《私にとって、守るべき存在であった貴女が》

雷帝《いつの間にか、私を守るようになった》

雷帝《貴女がそうすれば、そうするほど私から遠い存在になっていくような気がした》


雷帝《貴女の隣には、炎獣がいる》

雷帝《――それでも私はここに立つ》

雷帝《この戦いが終わるまで》

雷帝《いや、終わって後も、ここは私の場所だ》

雷帝《仲間と、私が私である大事な》


雷帝《先代様。あなたが呪いと言った居場所は》

雷帝《私にとって、かけがえのないものになりました》


雷帝《私は》

雷帝《それを守るために闘い続ける…ッ!!》

124 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:42:53.74 ID:L2B0drxD0

魔王《皆の、強い波動を感じる…!》

魔王《炎獣の、氷姫の、雷帝の気持ち…!!》

魔王《それらを、あの子達が拡幅してくれている!!》

魔王《教皇!! あなたには!!》

魔王《私たちは倒せない!!》


教皇《ッ!!》

教皇《何故だ!!? 私はっ!!》

教皇《もはや女神そのものとも言える力を有しているのだぞ!!?》

教皇《奇跡の僧侶までもが、手の内にあると言うのにッ!!》

教皇《…私は…ッ!!》

教皇《私は負けられぬのだァッ!!》

教皇《魔王ッ!! 人に仇なす害虫めッ!!》

教皇《貴様みたいな者が居ては…ッ!! 人類に幸福は訪れぬのだッ!!》


魔王《…っ!!》

125 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:43:47.15 ID:L2B0drxD0

魔王《教皇…!!》

魔王《あなたは…!!》


教皇《クッ!! フハハッ!!》

教皇《魔王ッ!! 貴様は魔族という種を背負うには、あまりに粗末だッ!!》


魔王《っ…!》


教皇《現に今ッ!! 衝突の此の時ッ!!》

教皇《――貴様は迷っているッ!!》


魔王《!!》


教皇《私を消すことがッ!!》

教皇《勇者を倒すことがッ!!》

教皇《本当に正しいことなのかどうか、貴様には分からないッ!!》


教皇《"魔王"である自分が、正しい存在なのかッ!!》

教皇《貴様は思い迷っているのだッ!!》


126 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:44:38.87 ID:L2B0drxD0


教皇《私は負けぬッ!!》

教皇《負けぬぞッ!!》



ビリビリビリビリ…!!




魔王《くっ……!!》

魔王《彼の感情や記憶が雪崩れ込んでくる…っ!?》






教皇《うおおおおおおおおおッ!!》







「いよいよですよ」

「いよいよ、勇者と魔王の戦いが"はじめからはじめる"のです」




魔王《!!》

魔王《これは――》








魔法使い「台本通りですよ」

教皇「………魔族ですら思いのままか」

教皇「そら恐ろしくすらあるな」

魔法使い「何を今さら恐れているのです?」

魔法使い「ショーは、これからでしょう?」

魔法使い「いよいよですよ」

魔法使い「いよいよ、勇者と魔王の戦いが"はじめからはじめる"のです」

127 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:50:03.76 ID:L2B0drxD0


魔王《こ、これは………教皇の記憶》

魔王《あの時垣間見たものと同じ…!》

魔王《生々しい、追憶の断片…。互いの存在をぶつけあっている今、ひりひりとそれが伝わってくる!》

魔王《あれは、やはり私達を惑わすために見せた幻覚ではなかった………!!》




魔法使い「現段階で、後の魔王とその四天王がその顔ぶれを揃えました」

魔法使い「炎獣、氷姫、雷帝、木竜。彼らが、勇者討伐作戦と称して特攻をしかけてきます」

教皇「…それが、今回の魔王勇者大戦の幕開けとなるわけか」

魔法使い「ええ。一方で、間もなく王国の転覆に際して勇者一行は各々がその立場を自覚します」

魔法使い「それすなわち、商人、武闘家、盗賊、戦士、僧侶………ふふ、それに私もね」

教皇「…下らん芝居をうつものだな」

魔法使い「大事なことですよ、こういうことは。あなたも心しておいてくださいね」

魔法使い「武人の兄弟、戦士さんとその兄君の処理はあなたにかかっているんですから」

教皇「分かっている」

教皇「王家を裏切る戦士の兄に、見返りとして王国正規軍を任せてやれば良いのだろう」

魔法使い「ええ。彼はその役目を立派に成し遂げるでしょう」

教皇「くくく…。魔王と四天王に敗れる、という役目か」


魔法使い「…勇者に神託が下り、いざ旅立たんという時に、王国軍は敗れ去る」


魔法使い「そうして港町に迫る魔王と四天王を、商人さんが決死の覚悟で止めにかかる…」




魔法使い「………それが、この物語の始まりなのですから」






魔王《――ッ!!》




128 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:53:05.50 ID:L2B0drxD0


魔王《………な、何? これは》

魔王《まるで…まるでこの戦いが》


魔王《………仕組まれたものだった、ような………》


魔王《…いえ、それだけじゃない…!》

魔王《まるで全ての者の運命を思いのままにしてきたみたいな言い方だ…》

魔王《これでは――》



教皇「まあいい。"女神"の啓示の導きに準ずるまでだ」

教皇「勇者一行は順に死にゆく定めだが…」

教皇「魔王もまた、人類には勝てない」

魔法使い「………ええ」

魔法使い「彼女は、人類に勝利しないでしょう………」

教皇「勇者一行も、魔王と四天王も」

教皇「その生の全ては」

教皇「既に決められているのだから」




魔王《っ!!》


魔王《私達の生が…》

魔王《…決められて、いる………………》

魔王《………まさか》

魔王《私達の思い出も…》

魔王《………こんな………》

魔王《こんなことが》

魔王《本当に――》



《姫様》

129 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/28(土) 23:54:08.16 ID:L2B0drxD0

魔王《!》

魔王《あ………》

魔王《あなたは………》


《ほっほっ。しばらくぶりですのぉ》

《とは言っても、現実世界ではあまり時は経っておらんのでしょうが、の》


魔王《――…爺》


木竜《姫様》

木竜《微力ながら、お力添えに参りましたぞ》

130 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/29(日) 00:30:45.59 ID:z9q5tTPt0

木竜《心配召されるな。教皇とぶつかりあっている姫様の意識だけを、少しばかり拝借させてもらっておりますじゃ》

木竜《儂の語りかけは、姫様にしか聞こえませぬ》ホッホ

魔王《本当に、爺、なの…?》

木竜《はい。姫様の、爺ですじゃ》

木竜《酷く曖昧なこの世界で、真実を見極めるのは難しいことやもしれませぬが》

木竜《姫様は、感じ取っておられるでしょう》

魔王《………爺だ》

魔王《本物の、爺だ…!》

魔王《生きて、いたの…!?》

木竜《…》

木竜《姫様。またそのお心を傷つけてしまうかもしれませぬが…》

木竜《爺は、死んどりますじゃ》

魔王《…っ》

木竜《魔法使いの、あの時の一撃で、儂は死にました。…けれども、この魔壁の内側の世界で》

木竜《姫様や、炎獣、氷姫、雷帝が》

木竜《何度も儂のことを繰り返し思い出してくれたからのう。どうやら、この概念世界だけの身じゃが》

木竜《一時的に意識を持つことに成功したようなのですじゃ》


魔王《………爺》

魔王《それじゃあ………》


木竜《うむ。姫様達が、存在を完全に取り戻した今》

木竜《教皇を倒し、取り囲む魔壁を破って、この空間を脱出したその時――…この儂は、また跡形もなく消え去ってしまうじゃろうのう》


魔王《そんな…!!》


木竜《ほほっ。よいのです》

木竜《生命はその循環の定めには従わねばならん。儂は充分に生きた》

木竜《魔族の生は長い。それにどんな意味があるのか、儂のような愚か者はついぞ知ることは出来なんだが》

木竜《姫様に、それに先代様に。存分にお仕えすることが出来て、楽しかった》

木竜《それに最後に》

木竜《もう一度、姫様のお役に立つチャンスに恵まれたのじゃからのう》


魔王《爺…》

131 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/29(日) 00:31:53.30 ID:z9q5tTPt0

木竜《さて、姫様》

木竜《真実を目の当たりになさって、さぞお心の内は混乱の極みでありましょうな》

魔王《爺は…》

魔王《このことを知っていたの?》

木竜《…教皇と魔法使いが、"女神の啓示"と呼ぶものを通じて、この戦いにおける多くのことを掌握していた》

木竜《ふむ。儂もこの身になってみて、初めて知り申した》

木竜《儂を遣わした者が遣わした者じゃから、かもしれんがのう》

魔王《え…?》

木竜《姫様。おそらく彼奴らは、この戦いを…いや》

木竜《それに至るまでの儂らの歩みすら、その手の上に収めておりました》

木竜《一体、どれだけの時を、彼奴らの思惑のまま動いていたのか…。口惜しいことじゃが、推し量ることすら出来ませぬ》

魔王《…》

木竜《それを可能にしたのは―――おそらく彼奴らの"女神"ですじゃ》

魔王《女、神………。けれど、女神は…っ》

魔王《女神は、勇者に加護を手に与える役割を越えることはしなかったはず…! それは、魔王に加護を与える、邪神と同じ!》

魔王《その女神が、魔族を操るだなんて、そんなことがあり得るの…!?》

木竜《本来の女神であれば、不可能やもしれませぬのう》

木竜《しかし、彼奴らの女神は、それとはまた違う存在》

木竜《教皇と、魔法使い。彼奴らは、己の目的を果たすための絶対的な存在を、独自に創り上げたのですじゃ》

魔王《…!!》

木竜《その絶対的な存在は、"啓示"という形をとって教皇と魔法使いにとるべき道を示した》

木竜《教皇と魔法使いは、それに乗っ取ってこの戦いを影で支配してきた…というわけですのう》

132 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/29(日) 00:33:04.93 ID:z9q5tTPt0

魔王《………自らの手で、そんなものを創り上げたなんて》

木竜《うむ。信じがたいことじゃが、彼奴らはそれを成し遂げ》

木竜《絶対的なその存在を、"女神"と、呼んでおる》

魔王《………》

魔王《絶対的な存在…偽りの女神》

魔王《そんなものすら創り上げた彼らの前に………何も知らない私達のこれまでは》

魔王《彼らの思うがままだった…?》

木竜《…》

木竜《それは真実のひとつですじゃ。ですがのう》

木竜《全てがそうとも言い切れませぬ》

魔王《…どういうこと?》

木竜《啓示では、どうやら本来儂が命を落としたあの魔法使いとの戦いで》

木竜《姫様。あなたが敵の手にかかるはずじゃった》

魔王《!》

木竜《ところが、実際に果てたのは儂で、姫様は今こうして教皇と対峙してせめぎあうところまで、生き延びておられる》

木竜《全ての命運を握っていたはずの教皇は、今や姫様や四天王、そしてあの子供らの前に、追い詰められている》

魔王《…》

木竜《そうして過去に倒されるはずじゃった姫様が、ついにはこの真実にまでも辿り着いてみせた》

魔王《………運命が、狂った?》

魔王《何故――》

木竜《…》

133 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/29(日) 00:34:02.66 ID:z9q5tTPt0

木竜《時に》

木竜《儂が、こうして姫様に言葉を紡ぐまでの輪郭を持つ存在となりえたのは、ある者の助力がなくしては不可能なことじゃった》

魔王《…ある、者?》

木竜《一度死した儂を、わざわざ姫様の助けとするべく寄越そうとした者がおったんじゃ》

木竜《その者はそれだけでなく、奇跡の僧侶である赤髪の少女の力に対抗するために》

木竜《彼女と繋がりをもつ少年少女を魔壁の内側へ送り込み、姫様達とリンクをさせた》

木竜《そういう要素の全てが、教皇の描いていた筋書きを大きく裏切っていったのじゃ》


魔王《………全てを握っていた教皇を、出し抜いたということ?》

魔王《そんなことが出来る人物、って――》



木竜《そう》


木竜《魔法使いじゃ》




魔王《…ッ!!》

134 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/10/29(日) 00:35:14.66 ID:z9q5tTPt0


魔王《魔法…使い………っ!》

魔王《………何故、彼が私達の手助けを…!?》

魔王《だって、爺をその手にかけたのは》

魔王《魔法使い自身なのに…っ!!》


木竜《…魔法使い。奴は》

木竜《"側近"である頃から、何を考えているのかよう分からん魔族じゃった》

木竜《歴代魔王に仕えながら、勇者との戦いを生き抜き…齢はあれで、儂よりも重ねておる》

木竜《いつも一人、研究や考え事に沈んでいる、近づき難い男でのう。まるで世界の秘密に常に挑みかかるつもりでいるようで…》

木竜《………あやつに敗れた時…、先代様を失ったあの日》

木竜《あやつが、想像を絶するほど途方もなく研鑽を積み上げていたことを知った》

木竜《それは、狂気と言えるほどのものじゃ》

木竜《姫様》

魔王《…》

木竜《魔法使いに何が見えているのか》

木竜《みなは、それに追いつく必要があるのかもしれませぬ》

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/29(日) 00:35:43.07 ID:z9q5tTPt0
ここまでです
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/10/29(日) 03:37:13.04 ID:5j57rZcno
乙乙
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 21:31:04.78 ID:kfSpgEmDO

新スレ立ってたとは迂闊だった
138 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:33:49.09 ID:Pupo+1fL0

魔王《………》

魔王《うっ…!?》ズキッ

木竜《むっ、いかん》

木竜《姫様、まずは教皇を撃破なされよ!》

木竜《少ない時間の中で、考える頭を引き摺ってでも前に進まねばなりませぬ!》

魔王《………うぅっ…!》グッ…

木竜《――お辛いでしょう》

木竜《儂がその痛みを分かち合えた部分など一体いかほどだったのか》

木竜《けれども儂は、姫様が成したことを、裏切りなどとは思っておりませぬ》

魔王《っ!》

魔王《…爺、まさか》

魔王《あのことを…!!》

木竜《こういう体になったら、色々と分かるようになってのう。それでも儂は》

木竜《姫様は間違っておったと思いませぬ》

木竜《だから姫様》

木竜《己を信じて》

木竜《――――》



魔王《爺っ…!》











139 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:37:07.89 ID:Pupo+1fL0


炎獣《魔王ッ!! 魔王しっかりしろッ!!》

氷姫《魔王…ッ!!》

雷帝《魔王様ッ!!》


魔王《――…っ!》

魔王《皆…!》


炎獣《魔王…ッ!》パァ

雷帝《気を取り戻されましたか…!!》

氷姫《ったく!! こんな時にあんたは、寝坊助なんだから…!!》ニヤ

魔王《ごめん…!!》


魔王《――………教皇!!》


教皇《………!!》

教皇《まだ倒れぬか!!》

教皇《しぶとい女だ…ッ!!》



魔王《皆、聞いて!!》

魔王《個々で向かっても、教皇を撃ち抜くことは出来ない!!》

魔王《私たちの存在をひとつに集めて》

魔王《一気に、教皇を穿つッ!!》

140 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:38:39.04 ID:Pupo+1fL0

氷姫《オーケー!! やったろうじゃないの!!》

炎獣《っしゃあっ!! 今度こそぶっ倒してやるッ!!》

雷帝《足並みを揃えろ!! 気持ちをひとつに!!》

魔王《この戦いを乗り越えてきた私たちになら――!!》


魔王《出来るッ!!》


ゴォオオオッ!!



教皇《捻り潰してくれるわ!!》

教皇《我は森羅万象を導く存在ッ!!》

教皇《次元を生まれ返らせ光へ辿り着きしッ!!》

教皇《選ばれし生命なりッ!!》


教皇《さあッ!! 我が茫洋たる聖なる力を吸えッ!!》

教皇《奇跡の僧侶よッ!!》

教皇《そしてッ!!》

教皇《悪魔の子らを!!》

教皇《異端の進化を遂げた者共を!!》

教皇《排除せよッ!!!》





赤毛《………………》




ギュ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! !











――――フッ



141 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:40:11.55 ID:Pupo+1fL0

教皇《………………!!?》

教皇《何故、だッ!?》

教皇《どうなっているッ!?》

教皇《何故、吸い込んだ私の力を――》


教皇《解放しないのだ!!?》



赤毛《………………》



教皇《――まさか》

教皇《この小娘――》



教皇《自分の意思が、覚醒したのか!!?》








赤毛《………………》









142 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:41:36.27 ID:Pupo+1fL0

魔王《!!》

魔王《教皇の力が弱まったッ!!》


魔王《今だッ!!》



魔王《全力で》




魔王《ぶつかれッ!!!》







雷帝《う お お お お お お お お お ! ! 》


氷姫《は あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! 》


炎獣《ガ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! 》






教皇《――――ッ!!!!》










   ド   ッ   !   !















143 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:43:23.08 ID:Pupo+1fL0

















城下町
魔壁の周囲



赤毛父「………」

赤毛父(黒き壁………)

赤毛父(突如として娘を…。それに、教皇様や魔王らを覆い尽くした、この禍々しい壁)

赤毛父(この壁の内側で、何が起こってると言うんだ。………あの子は)

赤毛父(あの子は無事なのか)


「神よ………」

「…我らをお救い下さい」


赤毛父(壁の周囲には、沢山の人間が詰めかけて…祈りを捧げている)

赤毛父(何を祈るっていうんだ?)

赤毛父(この人知を越えた現象を目の当たりにして………)

144 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:44:49.26 ID:Pupo+1fL0

神父「もはや、祈ることしか出来ん」

赤毛父「! あんたは…」

神父「突然目の前に突きつけられる、論理の超越。神々の奇跡」

神父「人間はそれに対して余りにも無力だ」

神父「それは、人でなくとも、名も無き魔族にとっても同じなのかもしれん」

赤毛父「…神父さん」

神父「娘が心配か?」

赤毛父「………娘を心配しない父などいない」

赤毛父「ましてや多くの人々の運命を背負うような、大それたことをしようって馬鹿な娘を持てば、誰だって………」

赤毛父「誰、だって…」

神父「………」

神父「あの娘は言った。父や母を守りたいと。…それは自分で決めた事なのだ、と」

赤毛父「………」

神父「私は、人の意思ってものを信じてる」

神父「お告げだとか、運命だとか、そういうものは、人の意思の前に道を開ける」

神父「私はそう、信じている」

145 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:48:28.60 ID:Pupo+1fL0

神父「あの男は………教皇は」

神父「或いは、それに抗おうとしたのかもしれない。有事の時に、何も出来ずに終わらないために」

神父「世界の秘密にすら挑戦して、人々を守ろうとした」

神父「それが最初の思いだったはずだ…。時の流れは残酷だな」

神父「志を語り合う友でも居れば………或いは」

少年「友達なら居たよ」

少年「あの人にも」

神父「!」

神父「お前は………」

神父「………まさか…!」




少年「あなたは消えても」

少年「その思いの幾ばくかは、友達が受け継ぐよ」

少年「羨ましいな」

少年「…ありがとう、教皇」

少年「そして」




少年「さようなら」








146 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:50:24.06 ID:Pupo+1fL0



ドゴォン!!





「!? な、何だ!?」

「おい、見ろ!! あそこ!!」


赤毛父「壁が、壊れた…!!」

赤毛父「っ! 何か飛び出したぞ!!」

神父「あれは!!」

神父「教皇っ!!」







教皇「がっ…………!!!」


教皇「…………馬鹿な…………!!!」




教皇「…………何故…」





教皇「……………………だ………」

――スゥ…………





147 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/24(金) 23:53:17.04 ID:Pupo+1fL0

「き、消えた…!?」

「教皇猊下のお姿が………空気に溶けて、消え失せた………!!」

「い、いやああ! 不吉だわっ…!!」

「どうなってるんだ!?」

「まさか………敗れたのか」

「教皇様が…敗けた…っ!」


「――魔王に敗けた!!」





ウワアァァァ!

ヒィイィ…!



赤毛父「そ、そんな…」

赤毛父「それじゃ………あの子は………!!」

神父「…っ!」ギュゥ


148 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 08:28:52.97 ID:IVAMhd/C0


魔王《………………》


炎獣《………やったのか…?》


氷姫《…教皇を…倒した?》


雷帝《ああ》

雷帝《我々はやり遂げた》


雷帝《だが、何故》

雷帝《最後の瞬間、敵の攻撃が止んだんだ………?》


魔王《! 赤毛ちゃん!!》



赤毛《………………》

オォオォオォオォ…!



氷姫《な、何よこれ!? あの子、物凄い波動を抱えてるわ!!》

炎獣《ど、どうなってるんだ!?》

雷帝《まさか………!》


魔王《ええ…っ!》

魔王《最後の最後で、流れ込んでくる教皇の力を解放せずに、自分の中に押し留めたんだ…!!》

149 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 08:30:39.86 ID:IVAMhd/C0

氷姫《っ! そんな…!!》

炎獣《そんな事しちまったら、自分が波動に押し潰されちまうだろ!?》

雷帝《ああ…!》

雷帝《恐らくそれを分かった上で、あの子供は………!!》


魔王《このままじゃあ、赤毛ちゃんが消滅してしまうっ!!》


魔王《一体どうすれば――!》







木竜《ひとつだけ》

木竜《方法がありますぞい》

150 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 08:36:56.08 ID:IVAMhd/C0

雷帝《!!》

炎獣《じ…っ!!》

氷姫《ジーさんっ!!》


魔王《爺…!!》


木竜《ほっほっ》

木竜《どこまで出来るか分からんが、儂の最後の力で、出来るだけのことをしてみようかのう》


雷帝《翁…っ!》

木竜《なんちゅう顔をしとる、雷帝》

木竜《束の間の、再会じゃ。もちっと晴れ晴れしい顔は出来んのか?》

炎獣《爺さんっ!!》

氷姫《ジーさん…まさか…!》

木竜《うむ》

木竜《もはや魔壁は穿たれた。皆の存在は本当の肉体に戻るじゃろう》

木竜《しかし儂は、消え失せる運命じゃ》

木竜《今の儂は、皆の想い出で作られているような存在じゃからのう》

炎獣《そんなっ…!》

魔王《………爺…》



木竜《儂の力で、皆をあの子供達一人一人に作用させる》

木竜《子供達の結び付きで、あの娘の存在を波動の渦から救い上げる》

木竜《今度は皆が、あの子供達とリンクするのじゃ》


木竜《よいな》



151 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 08:39:37.31 ID:IVAMhd/C0


雷帝《翁》

木竜《…雷帝》

木竜《そう、自分を責めるな》

雷帝《…》

木竜《儂は満足してるんじゃ。死ぬ前の最後の仕事で、お前を見事甦らせることが出来て》

木竜《老いぼれから死んでゆくのが、正しい順序だしのう! ほっほっ!》

木竜《…儂はな。安心して逝けるよ。お前さんがおれば》

雷帝《翁…》

雷帝《…本当に》

雷帝《ありがとう、ございました………っ!》

木竜《儂の魂は、お前に継承された》

木竜《好きなように、やってみせい!》

雷帝《………はいっ…!!》



炎獣《爺さんっ! 俺…!》

炎獣《俺…!!》グスッ

木竜《炎獣………。お前には、過酷な道を歩ませたと思うとる》

木竜《すまんかったのう》

炎獣《馬鹿言うなよ! 俺は…っ》グスッ

炎獣《爺さんが居たから、自分の居場所を見つけられたんだっ!》

炎獣《なあ、爺さんっ! 俺、きっと守るからっ!》

炎獣《魔王のこと、守るから………!!》

木竜《ほっほっ》

木竜《頼んだぞい。炎獣…》

152 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 08:45:49.47 ID:IVAMhd/C0

木竜《氷姫》

木竜《少しは、素直になる気になった、って顔だのう》

氷姫《あーあ…っ。まったく、さ。年寄りは説教臭くって、やんなっちゃうわよ》

氷姫《………でも本当は》

氷姫《もっと口うるさく言われてやっても、良かったんだから…》

氷姫《なんで》

氷姫《なんで、死んじゃうかなぁ………!!》ポロポロ…

木竜《…すまんの》

木竜《と言っても、お前の事はあんまり心配しとらん》

木竜《――いつまでも、姫様の良き友であってくれ》

氷姫《はいはい》グスッ

氷姫《わーってるわよ》グィ…

木竜《ほっほっ》



魔王《爺…》

木竜《姫様》

魔王《…もう、爺ってば》

魔王《いつまでたっても、姫のままなんだから》

木竜《ほっほっほっ! 赤ん坊の頃からだからのう。いかんせん、癖でしてのう》

魔王《えへへ…》
153 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 08:50:35.03 ID:IVAMhd/C0

木竜《姫様の想い。伝わっておりました》

魔王《………》

木竜《姫様は、儂に何も返せなかったとおっしゃるが、とんでもない》

木竜《儂にとっては幼い姫様との日々は、まるで孫が出来たようで――》



魔王「あ、ちょうちょだ! じい、ちょうちょだよー!」パタパタ

木竜「ほっほっ。捕まえられますかな」


木竜「ひ、姫様! しかし…!」

魔王「えんじゅうと、ふたりであそびたいのー!」

魔王「じい、あっちいってて!」

木竜「ひ、姫様…!」ガーン



木竜《ほんに》

木竜《ほんに幸せな時間じゃった》

魔王《………爺》ポロ…

木竜《姫様の成長が、嬉しゅうて》

木竜《いつの間にかそれが儂の楽しみになっとった》



魔王「私、魔王になる」

魔王「魔界に、秩序と尊厳を取り戻す」

魔王「私自身が、そうしたいって」

魔王「そう思ったんだ」



木竜《姫様。儂は、姫様に生かされとったのかもしれん》

木竜《この歳で迎えた戦いも、そのおかげで前を向けたんじゃ》

魔王《………爺…っ》ポロポロ…

木竜《だから姫様………》

木竜《………》スッ


木竜《有難う御座いました》


魔王《爺ぃっ…!》


魔王《――いかないでよ!》


魔王《死んじゃやだよっ!》


魔王《本当は私、爺に話したいこと》


魔王《まだまだ沢山あるんだよっ!!》




154 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 08:54:42.19 ID:IVAMhd/C0



木竜《姫様》


木竜《悲しむ必要はありませぬ》


木竜《命は巡るもの》


木竜《儂も、その流れの一部になるだけですじゃ》


木竜《儂の想いは受け継がれ》


木竜《儂の血や肉は、世界をさすらう風に》


木竜《大地に芽吹く木々になって》



木竜《姫様を見守っておりますじゃ》



木竜《さて》


木竜《どうやら時間のようじゃ》






木竜《儂の最後の技》




木竜《受け取って、下され………》





―― ス ゥ………






魔王《――うわあああああ!!》








155 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 18:58:20.84 ID:IVAMhd/C0






赤毛《ねえ》

赤毛《ねえ、皆》




《ん…》

坊主《ここは…》

坊主《!》

坊主《皆、起きて!》

三つ編《んん…あれ?》

三つ編《あたし達、お兄さん達と一緒に戦って…》

金髪《…ここ、どこだ?》

金髪《真っ白で何も見えねーぞ》

坊主《あ、あそこ!》

坊主《赤毛がいる!》

金髪《っ!》

三つ編《赤毛!!》


赤毛《皆》

赤毛《…ありがとう》

赤毛《あたしを追いかけて、こんな所まで来てくれて》

156 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 18:59:50.01 ID:IVAMhd/C0

三つ編《赤毛! 良かった…っ!》

三つ編《赤毛が無事で、本当に!》

赤毛《三つ編…》

金髪《…赤毛。お前、すげーよ。一人で、あんなに頑張ってさ》

赤毛《ううん、一人じゃないよ》

赤毛《皆が居てくれたから、頑張れた。怖くても、我慢できた。皆にまた、会うんだって…。その一心で進めたんだよ》

赤毛《だから、ありがとう》

坊主《赤毛…》

157 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 19:00:59.42 ID:IVAMhd/C0

赤毛《今だってね。きっと魔王さん達の力のおかげなんだろうけど、皆のおかげであたしの体は取り戻せそうだよ》

赤毛《ちょっと無理しすぎちゃって…もうダメかな、なんて思ったんだけど》

坊主《ぶ、無事なんだよね! それなら良かったっ!》

坊主《もう、一緒に帰れるんだよね!? 僕たちの城下町に!》

赤毛《…》

金髪《…赤毛?》

赤毛《きっと、体は戻れると思う。物凄い癒しの力が、体を再生してくれたから》

赤毛《でもね》

赤毛《心は戻れるか、分からないの》

三つ編《…え?》

赤毛《教皇様の波動を取り込んだ時に、あの人の感情があたしの中で爆発したの》

赤毛《今でも、その悲しみの螺旋が私の中をぐるぐる回ってるんだ》

金髪《…な、なんだよ。それ…》


赤毛《気持ちが、ぐるぐるぐるぐる》

赤毛《消えたくない、勝ち残りたい、死にたくない…》

赤毛《ぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる………》

158 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 19:02:03.20 ID:IVAMhd/C0

坊主《あ、赤毛…!》

赤毛《これは、ね。多分…取り込んでしまったあたしが、向き合わなきゃいけないものなんだと思う》

赤毛《奇跡の力とか、神様の加護とか、そういうものじゃなくて》

赤毛《あたし自身が》

三つ編《………どうして?》

三つ編《どうして、赤毛がそんなことをしなくちゃならないの…?》

三つ編《帰ろうよ…! 私達の城下町にっ、あの秘密基地にっ!》

赤毛《三つ編…》

三つ編《赤毛が一緒じゃなきゃ、イヤよ!》

三つ編《私…私…っ!》

赤毛《…ありがと。でも…》

金髪《オレも一緒に引き受ける》

赤毛《え?》

金髪《赤毛だけが苦しいなんて、やっぱおかしいって!》

金髪《だったら、オレにもその苦しいのを、分けてくれ! このへんちくりんな世界なら、どーせそういうこと出来るだろ!?》

赤毛《金髪…》

金髪《一緒に苦しんで、一緒に帰ろう!》

金髪《トモダチだろ? オレたち》

159 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 19:03:25.43 ID:IVAMhd/C0

赤毛《ふふ。金髪らしいね》

金髪《な、なんだよ。笑うことねーだろ?》

赤毛《…すっごく嬉しいよ》

赤毛《ありがと》

金髪《お、おう。なんか、チョーシ狂うぜ》

金髪《赤毛は、憎まれ口叩いてるくらいじゃねーとよ》

赤毛《………》

赤毛《もう、私たちを包んでいた壁は、壊れてしまったから》

赤毛《私たちの心の繋がりも、これでおしまいなの》

金髪《………!》

坊主《そ、そんなっ》

赤毛《すぐに私たちは、元の肉体に戻るよ。だから魔法みたいなことも、もう出来ない》

赤毛《皆は目を覚ますけど…あたしは………》

三つ編《っ!》

赤毛《だから、こうやってお話し出来る時間が》

赤毛《最後のご褒美…かな》

160 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 19:05:01.47 ID:IVAMhd/C0

三つ編《………ひどい》

三つ編《ひどいよ、こんなの》

赤毛《でもね》

赤毛《例えあたしは目覚めることが出来なくても、皆としたこの冒険は、忘れないと思う》

赤毛《きっと、ずっと》

坊主《…っ》

赤毛《城下町を冒険してさ!》

赤毛《大人から逃げ回ったり…怖いことに立ち向かって》

赤毛《あの、魔王さん達の魔界の大冒険を、一緒に見て回って》

赤毛《皆で力を合わせて…戦ってさ!》

赤毛《すっごい冒険じゃない!?》

赤毛《あたし一度でいいから、こんな冒険してみたかったんだぁ…!》

金髪《赤毛…》

赤毛《皆も、大人になっても忘れないよね!?》

赤毛《ううん、きっと忘れられないよ! こんな素敵なこと!!》

赤毛《ああ、パパやママに話したら、何て言うだろう…!》

三つ編《………っ!》

161 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 19:06:36.20 ID:IVAMhd/C0

赤毛《…あ、えへへ》

赤毛《そっか。パパやママには話せないんだ》

赤毛《あたし、もう会えないから》

金髪《赤毛…っ》

赤毛《あ、やだなぁ。なんでだろ》

赤毛《泣かないでいようって、思ったのに》

赤毛《笑顔で皆とお別れしようって、決めてたのに》


赤毛《それなのに》ポロ…



赤毛《それなのに………!》ポロポロ…





坊主《…!!》

三つ編《赤毛…!》

金髪《…っ!》

162 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 19:07:55.05 ID:IVAMhd/C0

金髪《会えるっ!》

赤毛《…っ》

金髪《会えるよ、絶対!》

金髪《赤毛が全部と向き合いきった時に、きっと会えるっ!》

金髪《赤毛の父さんや母さんに、この冒険のことを話せるよ!!》

金髪《だから…!》

金髪《お別れなんて、言うなよっ!》


赤毛《き、金髪…》ポロポロ…


坊主《うん…っ》

坊主《僕たちには何も出来ないかもしれないけど》

坊主《でも、待ってる…!》

坊主《赤毛が目を覚ますのを、ずっと待ってるから!》

坊主《会えなくても、ずっと、ずっとずっとトモダチだから!》

坊主《こんな魔法がなくたって》

坊主《僕たちにの心の繋がりは無くならないよ!!》

163 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:33:13.42 ID:IVAMhd/C0

赤毛《うぅ…》ポロポロ…

赤毛《うううぅ…》ポロポロポロ…


三つ編《私たち》

三つ編《秘密結社の仲間でしょ?》

三つ編《仲間ってことを覚えていれば、例え離れていたって》

三つ編《また会うための力になるんだよ》

赤毛《三つ編…!》

赤毛《三つ編ぃ…!》ポロポロ

三つ編《…えへへ》グスッ

三つ編《あの時と、一緒だね…》

赤毛《………あはは…そうだね》グスッ

三つ編《絶対》

三つ編《絶対にまた会えるから》ギュッ

赤毛《…うんっ…》

164 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:34:11.16 ID:IVAMhd/C0

――フワァ…………


坊主《!?》

坊主《この風…外からの風だ…!》

金髪《な、なんだよ!? もう終わりかよっ!?》

赤毛《………そうみたい、だね》

三つ編《っ!!》

金髪《くそっ、なんだよ!!》

金髪《いつもいつも、世界は勝手だ!!》

金髪《オレたちの気持ちなんか無視して、勝手に進んでいくんだ!!》

赤毛《金髪》

金髪《あ、赤毛…》

赤毛《私は、もう大丈夫》

赤毛《一人でも、怖くないよ》

赤毛《皆の言葉のおかげ》


 ヒ ュ ウ ゥ ゥ ゥ ………



三つ編《か、体に感覚が戻っていく…!》

坊主《城下町の風だ…っ! 》

三つ編《町の匂い…体の温もり…》

三つ編《全部が、戻る――!》

165 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:34:56.64 ID:IVAMhd/C0

金髪《赤毛…!》


赤毛《…》ニコ


坊主《赤毛っ!》


赤毛《…。………》


三つ編《赤毛!!》

















赤毛「ありがと」







赤毛「忘れない」


















166 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:35:58.52 ID:IVAMhd/C0




















城下町

時計台の中



魔王「…」


魔王「ここは」



炎獣「…も…戻って来た…」

炎獣「のか…?」

氷姫「…うん」

氷姫「そうみたいね…」

氷姫「声も、元通りだ」

雷帝「………どうやら…我々は脱したようだな」

雷帝「魔壁を」

雷帝「…そしてここは」


魔王「………ええ」

魔王「この子達の………思い出の場所」




赤毛 三つ編 金髪 坊主「………」


167 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:37:02.13 ID:IVAMhd/C0

氷姫「ぐっすり、寝てるわね」

炎獣「ああ…」

雷帝「………」


魔王「………赤毛ちゃん」

魔王「あなたは、あの時…こんなに小さい体で」

魔王「教皇の波動を、たった一人で抱え込もうとしたのね」ソ…


赤毛「…」スヤ…


魔王「…ごめん、なさい」

魔王「私は、あなたを助けきれなかった………」

炎獣「…俺たちさ」

炎獣「この子に助けられてなきゃ、教皇を倒せなかったよな」

雷帝「ああ。…あの一瞬、自分を犠牲にしたこの少女のおかげで、我々は勝つことが出来た。それだけじゃない」

雷帝「この子供達の繋がりが、私達の存在を幾度も繋ぎ合わせたんだ…」

氷姫「人間の、この子が………」

氷姫「――人間は、打ち負かさなきゃいけない相手だと思ってた」

氷姫「でも、これでいいの? ………"勇者を倒す"。あたし達がすべきことって」

氷姫「本当に、そうなの…?」

168 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:38:12.45 ID:IVAMhd/C0

雷帝「教皇の言葉の数々は」

雷帝「必ずしも我々を惑わすためだけのものではなかったように、思う」

炎獣「あいつの言葉に、本当のことがあったってのかよ?」

雷帝「…奴は何かの真実にたどり着いていた。そうであればこそ、あそこまで強大な力を持ち得るに至ったのだろう」

氷姫「…あたし達ですら、敵わないほどの力。………女神の加護?」

雷帝「――魔王様」

雷帝「お聞かせ願えませんか。魔王様がこの戦いで辿り着いた真実を」

魔王「………うん」

魔王「私が知り得たのは、皆が教えてくれた過去と」

魔王「それを揺るがしかねない程の、恐ろしい力の存在」

魔王「それに、"魔法使い"が私たちに何をもたらしていたか………だったわ」





――
――――
――――――

169 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:39:18.47 ID:IVAMhd/C0

魔王「………」

炎獣「そ、んな…」

氷姫「…っ」

雷帝「………にわかには信じがたい」

雷帝「私達は、今まで奴らの思惑通りに動かされていた…それに我々四天王も、邪神の加護を持つ魔王様ですら」

雷帝「気づくことも出来ずに為すがままだった。………一体、いつから…?」

炎獣「あ、操られていたってのかよ…! 俺達ずっと!」

氷姫「………」

魔王「…雷帝、どう思う?」

雷帝「…」

雷帝「私達の全てを思うままに操る能力があるとして」

雷帝「教皇の発言の通り、その目的が魔王様…ひいては魔族の撃破なのであるとすれば、もっと分かりやすいやり方は幾らでもあったはずです」

雷帝「奴らは、我々の精神全てを支配下においている訳ではないと、私は思います。奴らが介入していたのは」

雷帝「私達の魔族の道においての、ターニングポイント。それは例えば」

雷帝「…虚無と海王による、氷部の壊滅の日」

氷姫「………っ」

氷姫「じゃあ、結晶花は…水精は………」

魔王「――彼らの計画のために、利用された」

170 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:40:32.27 ID:IVAMhd/C0

氷姫「………」

炎獣「氷姫…」

氷姫「そうまでして…」

氷姫「そうまでして私達をこの戦いに呼び寄せる理由は何…っ!?」

雷帝「…それは」

雷帝「この戦いの末に、王国軍の砦で消耗した私達の隙をついて、魔王様を倒す…という筋書きを実現するため、だろうな」

雷帝「我々四天王も、人間側のキーマンも、役者を一人も違えることなく、この戦いを迎えたかった」

雷帝「逆に、そこまで綿密に物語を動かさねば魔王様を討つことが不可能だと考えられていた、とも取れる」

炎獣「…でも、結局教皇は力ずくで俺達を倒しに来たぜ?」

雷帝「…我々が勇者一行と戦っている最中にさらなる技術の進歩を得て、勝利を確信していたか…」

雷帝「女神の啓示とやらがどんなものか知りようもない以上、想像することしか出来ん」

魔王「けれど結果として、教皇は私達に敗れた」

魔王「………そうするように仕向けたのは」


魔王「魔法使いだ」

171 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:42:59.84 ID:IVAMhd/C0

炎獣「…!」

氷姫「っ…」

雷帝「…我らを教皇に勝たせることが、奴にとって何らかのメリットがあるということになる」

魔王「………私が教皇に負けるのは、彼にとって不都合だった…?」

炎獣「あいつ…っ!」

炎獣「一体何がしたいんだよ!?」

炎獣「先代様を裏切って、赤ん坊だった魔王を殺そうとしたり!」

炎獣「爺さんを殺したりして…っ!」

炎獣「今度は俺たちの手助けだって!?」

炎獣「やってること、滅茶苦茶じゃねえか…!!」









ガタン…!


炎獣「!」バッ

炎獣「誰だ!?」ガシッ

172 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:44:01.38 ID:IVAMhd/C0

「ひ、ひい!」

「く、くそう…っ! こうなれば、死なば諸とも!」

炎獣「…なんだ、お前?」


「あ、赤毛さん達から離れなさい! でなければ許しませんよ!」

先生「先生は、先生ですからね! お、怒ると怖いですよぉ!」


氷姫「何よ、こいつ」

雷帝「人間か」

先生「な、なんですかっ! 人間で悪いですか! ここは城下町ですよ! 人間がいて当たり前です!」

雷帝「微々たる魔力は感じる…。が、どうやら戦闘能力はさほどでもなさそうだな」

先生「ちょっと、聞いてます!?」

炎獣「なんでぇ、脅かしやがって」

先生「おっ、脅かしたのはそちらでしょう!」

炎獣「あぁん? よくしゃべるな、お前」

先生「ひ、ひぃ」

173 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:46:06.02 ID:IVAMhd/C0

魔王「炎獣」

魔王「赤毛ちゃん達の事、彼に任せましょう。どうやら知らない間柄ではないようだし」

炎獣「分かったよ」パッ

先生「ほっ。あ、熱かった」

魔王「………私たちは、もう行きましょう」

氷姫「ええ…そうね」

先生「な、なんですか! やるならやったりますよ! 先生は、先生ですからねっ!」

炎獣「なあ、あんた」

先生「うわっ!? ゴメンナサイ!」

炎獣「この子達のこと」

炎獣「宜しく頼む」

炎獣「頼むよ…」

先生「…!?」

先生「…は、はい。頼まれました…。…って、何ですか!? 魔族のくせに!」

先生「頼まれるまでもありませんよっ! 先生は、先生ですよ!?」

先生「ねぇちょっと、聞いてます!?」

先生「おーい!?」



174 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:49:23.41 ID:IVAMhd/C0



炎獣「………なあ」

炎獣「俺達の戦いって、なんなんだ?」

炎獣「俺達四天王は、偽の女神に集められたって言うんなら…本当は違う四天王が揃うはずだったってかよ?」

炎獣「勇者一行も? …もう、わけわかんねえよ」

氷姫「魔法使いが、この魔王勇者大戦を引き起こした理由も、説明がつけられないわ」

雷帝「………そもそもの話をしてしまえば」

雷帝「大昔から続くこの"魔王勇者大戦自体の意味"を、私達は知らない」

雷帝「女神と邪神が争い続けているから。その代理戦争…ということは理解しているが、逆に言えば、それしか理解していないのだ」

魔王「………"多くの犠牲を払いながら戦い続ける理由"」

魔王「教皇は…それを知っていたのかな。それとも」

氷姫「――そんなものはひとつもない………そういうオチだったりしてね」

雷帝「理由などなかった…か。その可能性を否定しきれんのも不甲斐ないところだ。もしそうなのだとしたら…」

雷帝「その時、私達に選べる選択肢が残っているんだろうか」

炎獣「………もう、取り返しがつかない数の人間を」

炎獣「俺達は殺しちまった…」

175 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:51:08.08 ID:IVAMhd/C0

先生「………」

先生「…おかえりなさい」

先生「よく、頑張りましたね」

先生「皆…」

先生「そして、赤毛さん…」

先生「あなたは本当に、奇跡の僧侶となってしまった…」


赤毛「………」

176 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:53:00.92 ID:IVAMhd/C0

氷姫「あたし達は、勇者を倒すために今まで必死になってやってきたのよ?」

氷姫「それに意味がないなんて言われたら…なんて、そんな事。………考えたく、ないわよ」

魔王「…そうだね」

雷帝「…もう一人、警戒すべき相手がいる」

炎獣「え?」

雷帝「――冥王だ。奴は、もしかするとこの真実を知っていたかもしれん」

氷姫「! 冥王様が…?」

雷帝「…確証はないがな」

炎獣「で、でもよ…あの師匠が、人間の思惑通りにされるのを、黙って見過ごすとは思えないぜ」

雷帝「…確かに、それはそうだが…」

氷姫(冥王様…。…そういえば、あの時)


――氷姫《何、ですっ、て!?》

――教皇《お前は知らんのか? 何故貴様ら四天王がそこまで人間を圧倒できるのか》

――教皇《冥王が何故、魔王についてその側にいたか》

――教皇《その真実を》

――氷姫《…っ!!》

――教皇《お前は何も知らないのだな。無知なものが振るう大きすぎる力ほど、恐ろしいものはない》

――教皇《排除されるべきは………貴様らだ、四天王》


氷姫「………ねえ、魔王」

魔王「? どうしたの、氷姫」

氷姫「…」

氷姫「ううん…。何でもない」

魔王「…そう」

魔王(………)
177 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 22:54:44.76 ID:IVAMhd/C0

先生「赤毛さん」

先生「先生はあなたを救いたかった」

先生「あなたがこの戦いの犠牲者になることを、避けようとしたんです」

先生「…その為に、先生は方々手を尽くしました」

先生「金髪君達の想いの力を借りて、魔壁の内側に送り出しました」

先生「魔王側の勝利を確実にするために」

先生「死んでしまった木竜の思念にもお手伝いをしてもらいました」

先生「でも」

先生「あなたの心までは守れなかった」

先生「女神様も、酷いですね」

先生「やっぱり、犠牲が必要なんですか? …あなたの描く、ドラマには」

178 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 23:08:00.46 ID:IVAMhd/C0

炎獣「俺達には…何よりも先にふん捕まえて話をさせなきゃならない奴がいる」

雷帝「ああ」

氷姫「…そうね」

魔王「"魔法使い"」

炎獣「あいつの目的。それに、これまでしてきたことへのツケを」

炎獣「絶対に、払わせてやる…っ!」

雷帝「奴の思惑が見えればこの戦いの…いや、勇者と魔王の争いそのものの真理が見えてきそうな、そんな気がする」

魔王「………私達は」

魔王「すでに彼らの描いていたあらすじを逸脱した…!」

炎獣「ああ!」

炎獣「もう、好きなようには、させねえ…!」


炎獣「俺達は、俺達のもんだっ!」


氷姫「! 待って!」

氷姫「あ、あれは…」



氷姫「――一体、何?」

179 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 23:09:00.86 ID:IVAMhd/C0

先生「ツケを払わせてやる、ですか」

先生「あはは」

先生「参りましたね」

先生「………先生は」

先生「いえ」

先生「僕は」

先生「何がしたいんでしょうねぇ?」

先生「それはそうと魔王」

先生「それに四天王」












魔法使い「後ろが、隙だらけですよ?」








180 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 23:10:56.73 ID:IVAMhd/C0

雷帝「これは…」

雷帝「死体か?」

魔王「………うん」

魔王「そうみたいね」




大僧正「」




氷姫「ボロボロで、原形留めてないわ」

氷姫「物凄い魔法で、やられてる…」

氷姫(………この魔法の残り香)

氷姫(これ………)

氷姫(………もしかして!!)















魔法使い「死の波動よ」

魔法使い「敵を貫け」 ォ オ









炎獣 魔王 雷帝 氷姫 「!!!」


  ―― ゾ  ク  ッ




181 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 23:12:54.19 ID:IVAMhd/C0




雷帝(なんだこの膨大な魔力はっ!? いやそれよりも!!)


氷姫(矛先は魔王だ!! 結界を張って――こ、これ防ぎ切れるような力じゃない!!)


魔王(回避を――駄目だ、間に合わない!!)



雷帝(くっ、私が身代わりに――!!)





炎獣「っ」バッ




雷帝「!!」

魔王「炎じゅ――」

雷帝「――止せ、炎獣ッ!!」












 ド ス ッ




182 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 23:14:38.86 ID:IVAMhd/C0







炎獣「がッ」




炎獣「ふッ」














魔王「………………え」




魔王「………炎…獣………?」















炎獣「」


………ドサ…






















魔法使い「おや、死んだのは炎獣ですか」

魔法使い「まあいいでしょう」



魔法使い「――まずは一人目、ですねぇ」ニイィ



183 : ◆EonfQcY3VgIs [saga]:2017/11/25(土) 23:15:53.67 ID:IVAMhd/C0




【魔法使い】



184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/25(土) 23:16:27.45 ID:IVAMhd/C0
今日はここまでです
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 00:32:43.88 ID:FLDlGLybo
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 01:13:20.94 ID:WOrKrdLNo
あっけねぇ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/26(日) 21:47:13.61 ID:gX3yS1Dgo
魔法使いェ...
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