【艦これ】提督「クソッタレな世界を」長門「生き残るために抗おう」【安価スレ】

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85 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 20:16:12.03 ID:9hewBosq0
>>84、まぁ確かにそうなんですけどね…。何分慣れてなくて…。次回から同時進行するべきか考えてみます。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 20:22:39.36 ID:jVs3VjQ60
シングルタスク了解ー
87 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 20:46:52.63 ID:9hewBosq0
三人の意見を纏めた紙を見て、ため息を吐く。

「霞と霧島の意見が重要だな…。金剛は気が楽になったっていう点では助かったけど…」

「…ンン?」

首を傾げる金剛。

「…ごめん霞。この意見は本当に重要だって分かってる。だけど、真実を知ってからでも遅くは無い…と思うんだ」

「ふん。あたしたちはあなたの指示に従うだけよ」

そう言う霞は、今も足柄に抱えられている。親子みたいで可愛らしい。

「あと金剛。結婚の件なんだけど…」

「…!」

見ただけでソワソワしているのが分かる。こんなダメ人間のどこがいいのか。と提督は思う。

「…まだ付き合ってもいないのに結婚はどうかと思うんだ。だから、ごめんなさい」

「Nooooooooooo!」

金剛、轟沈。

「あー…。というわけで、だ。霧島の意見を今回は最優先したいんだ。異論はあるかな?」

返答は沈黙。即ち肯定だった。

「…ありがとう。なら、長門と霧島、ヲ級以外は各自自由に行動してくれ」

その言葉を皮切りに、入渠する者、食事に移行する者、休憩する者に分かれる。

なお、金剛は比叡に抱えられていた。

「ふむ。霧島は発案者だから理解出来るが、なぜ私も選んだんだ?」

理由は一つ。連合艦隊の旗艦だからだ。だが、

「…いや、詮索するのは無粋か。光栄に思うよ」

「私も疑問かな。他にも上位の深海棲艦がいるのに私なんて」

「…他の人はまだ交流してないからさ。ちょっと怖いんだ」

こちらが、こちらに、何度も苦しめられた人もいる。だから、何をされるか分からない。それが怖かった。

「敵意を持ってるなら参加しないと思うけど…。まぁいっか」

「それだけ私が信頼されてるってことなのかな」

クスリ、と微笑むヲ級。その顔が、妙に色っぽくて提督は目を逸らしてしまう。

「ここで立っていては話が出来ませんし、執務室に行きませんか?」

「あ、ああ。そうだな」
88 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 21:26:02.90 ID:9hewBosq0
執務室に入り、椅子を三つ設置する。

左から長門、ヲ級、霧島の順番だ。

「俺が知っている情報は先ほど言った通りだ」

「ヲ級。君はどんな情報を知ってるんだ?」

ヲ級は指先を唇に当て、天井を眺める。思考しているのだろう。

「んー…。私が教えられたのは、人が私たちのテリトリーを侵したからって言ってたけど…」

「大本営の過失じゃねぇか!」

許容範囲を超えてしまい、つい叫んだ提督。

長門に手で座るように促され、慌てて椅子に座る。

「…まぁ、提督が怒る理由も分かるがな。私たちが戦っていた理由は、上層部の失態の尻拭いなのだから…」

正直、私も怒ってるよ、と長門は付け加える。

「………」

「だ、大丈夫か…?」

「大丈夫です」

全然大丈夫そうに見えない霧島。青筋を立てて、眼鏡にヒビが入っているのだから、当然だ。

「ん?待てよ。じゃあなんで俺は処刑されそうになったんだ?」

戦争の発端は理解出来た。しかし、処刑された理由が未だに分からない。

「それは…ゴメン。思い当たる節が無い」

「そうか…」

結局、理由は分からずじまいだった。

だが、原因が理解出来たのは大きな進歩だ。

「…これからどうするのか、が一番の問題だな。霞の意見に従って訓練を行うか…。それとも…」

根本的な問題は解決していないが、一歩前進した。


山城?大丈夫?安価よ?↓2
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 21:27:59.53 ID:uSyXCUwg0
フミィ
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 21:42:43.18 ID:8zTXggeL0
合同訓練
平行して深海組のことを知ろう
91 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 21:47:04.21 ID:9hewBosq0
あれ、>>87で一部の文が抜けてる…。詮索〜の前の、だが、の続きは『敢えて言わない』です。夕食を取ってくるので暫く空きます。
92 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 22:13:38.08 ID:9hewBosq0
済ませてきたので再開します。合同訓練に参加する艦娘と深海棲艦を、後ほど募集します(6名ずつ)。
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 22:19:48.08 ID:G47zqZum0
流石に怖いとか腑抜けた理由で深海側のリーダーに会わないとか言ってる場合じゃないぞ提督よ
副提督を頼むくらいの誠意を見せないと
94 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/05(日) 22:43:59.49 ID:9hewBosq0
「…いや、やっぱり霞の意見に従うか。上手くいけば、他の深海棲艦とも交流出来るかもしれない」

提督の言葉を聞いた長門と霧島は、合同訓練に参加する人を集めるために部屋を出た。

ヲ級も、そんな二人に釣られて部屋を出る。

「ふぅ…。何というか、今までの努力や結果を否定された気分だよ」

上層部の尻拭いのための戦争とはいざ知らず、罪滅ぼしのために軍属となった。

必死に勉学に励み、艦娘たちを率いて、地道に勝利を重ねてきた。

その努力は、水泡と帰した。

「でも…。なんでなんだろうな。それでも、死んでほしくないと思ってる自分がいる」

死んで当然のような人たちなのに、殺そうとは思えない。

「はぁ…。俺ほど軍人が向いてない人間はいないな」

――どうせなら、新聞記者や作家でも目指せば良かったかな。

そんなことを思っていたら、ドアが勢いよく開かれる。

「提督!準備が整ったぞ!」

「早すぎだろう…」

どんな手を使ったのか、僅か数分で長門は戻って来た。

だが、準備が整ったのなら自分も参加しなければ。

そう思い、提督は席を立つ。

「えっと…。誰が参加するんだ?」

その問いに、長門は意味深な笑みで返す。

「見てからのお楽しみ、か…」

言葉を聞いて頷いた長門は手を差し伸べる。

「どこで訓練をするのかな」

「上だ」

「姿を隠すんじゃなかったのか…」

「あちらからは有象無象のうち一つにしか見えんよ。時間だって夜だからな」

時計を見ると、針は9時を指していた。外も光が無いので、完全に夜だ。

「でも、夜だとよく見えないぞ。俺はただの人間だから」

その言葉を聞いた長門は、一つの双眼鏡を手渡してきた。

「強奪した双眼鏡を明石に改修させた。所謂暗視スコープだ」

提督は腹を括るしかなかった。今こそ、怖がる自分を御する時なのだ。

「提督は小さく縮こまってくれ。でないと、死んでしまうからな」

「えぇ…」

ただの人間の提督にとっては、海上との往復ですら命懸けだった。


↓1〜6に艦娘と深海棲艦をセットでお書きください。もし被ってしまった場合は最安価を投げます。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 22:46:32.10 ID:iW80n4fEo
レ級
夕雲
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 22:47:37.59 ID:8zTXggeL0
那珂ちゃん
軽巡棲鬼
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 22:49:54.35 ID:G47zqZum0
武蔵 南方
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 23:00:30.00 ID:PBJxVqU40
センダイ=サン
深海双子棲姫
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 23:02:46.66 ID:f17RGmOUo
長門
戦艦水鬼

しかし、深海側から見た海戦理由については、精査しなくて大丈夫かな?
深海からの上からの情報を又聞きしたのを信じるだけでは、陸上にいた時と同じことの繰り返しになりかねないと思う
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 23:09:01.82 ID:G47zqZum0
提督がヘタレすぎて中々突っ込んだことしたがらないから安価でリーダーに無理矢理会いにいかせるしかないんじゃないかなー
安価下
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/05(日) 23:29:20.25 ID:NBBWtD6+O
大鳳とソ級
102 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 01:05:11.20 ID:XQ8VroZ+0
>>100、書いてる自分が言うのも何ですが、思いっきりヘタレです本当にありがとうございました。

時間が掛かって申し訳ない…。
103 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 01:15:37.59 ID:XQ8VroZ+0
長門に抱えられて海上に出ると、そこには既に全員揃っていた。

「…長門を合わせて24人か。よく集めたな」

「そこは、まぁ色々とやったのさ」

メンバーは、左に夕雲、那珂、武蔵、川内、大鳳、レ級、軽巡棲鬼、南方棲戦姫、深海双子棲姫、戦艦水鬼、ソ級の11名。

右には、霧島、金剛、翔鶴、瑞鶴、鈴谷、熊野、陽炎、浦風、暁、響、雷、電の12名だ。

「連合艦隊同士で戦った方がいい訓練になると思ってな。つい張り切って集めてしまった」

「凄い…。凄いんだが…」

「目のやり場に困る人がいるんだよなぁ…。前隠して…」

首を傾げる南方棲戦姫。顔からして無自覚である。

「別に減るものじゃないいいでしょ?」

「こっちが困る…。本当に…」

「ふぅん…。じゃあ一応隠しておきましょう」

そう言って、ビキニを着る南方棲戦姫。最初からそうしてほしかった。

「川内は夜戦だから来た感が凄いな」

「分かる?やっぱ夜はいいと思わない?」

「…俺はそうは思えないな。いや、綺麗な星が見える分には好きだよ」

ムスッとした顔をする川内。好きとも言ってるんだから、別にいい気もするが。

「…よし、それじゃあ訓練を開始しようか。流れとしては…」

「ちょいちょいちょ〜い!待ったー!」

那珂が手を挙げて中断させる。

「那珂ちゃんそっくりな娘がいるんだよ!?アイドル二人とか凄いって思わないの!?」

「いや、全然」

「那珂ちゃんの存在が否定された気がする」

そう言われても、アイドルのことを全く知らないのだから仕方ない。

「アイドルとはなんだ?」

対する軽巡棲鬼は、アイドルそのものを知らなかった。

「提督…ふむ。元気そうで何よりだ」

「楽しそうだな…」

「ああ!かつて鎬を削った強者と肩を並べ戦えるなど、高揚せずにはいられんよ!」

拳を合わせて不敵に笑む武蔵。よほど楽しみにしているのだろう。

「まぁ、怪我しないように頼むよ…」

「歓談はそこまでにしてもらうよ。あくまで、私たちは訓練のためにここに来たのだからな」

「ルールは単純。ペイント弾を用いた模擬戦で、多く被弾させた側の勝利となる」

「勝った方には事前に伝えた通り、提督に好きなことを要求出来る。良識の範囲内で収めるようにな」

何か聞き捨てならない言葉が聞こえた気がした。

「最後に一つ。これは連携強化を図る訓練だ。双方、連携して行動するよう心掛けるように」

「それでは各自、配置につけ!30秒後に模擬戦を開始する!」

長門が言い終わると同時に、それぞれが固まって距離を開けていく。

そして、長門の砲撃を合図に模擬戦が始まった。


直下コンマで連携具合を判定します。基準は30、70となります。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/06(月) 01:17:04.22 ID:GrL7Hypno
てい
105 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 01:22:07.93 ID:XQ8VroZ+0
ゾロ目かぁ…。再判定とかした方がいいのかなぁ…。少し意見をお願いします。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/06(月) 01:43:42.86 ID:euW8wrAw0
そも30 70の意味がよくわからんからなんとも
低いほどA軍高いほどB軍有利、ゾロ目は何かいいことが起きますとか予めきちんと決めてから判定求めて貰わんとゾロ目出ただけで悩まれても正直こっちが困るんですがw
107 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 01:43:43.28 ID:XQ8VroZ+0
やっぱり、再判定は無しの方向で進めていきます。少々お待ちください。
108 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 01:46:55.15 ID:XQ8VroZ+0
>>106、あー…。確かにそうですね…。ゾロ目が出る可能性をそもそも考えていなかった大馬鹿ですハイ。

30より小さいなら、連携が取れてないので艦娘側が有利に。70より大きいなら、上手く連携が取れているので連合側が有利、となります。

とりあえず今回はそのまま進めます。グダグダですみません…。
109 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 02:13:58.79 ID:XQ8VroZ+0
「ちょっ…。こんなの制空権とか持ってかれるに決まってるじゃない!」

「瑞鶴!直上!」

「チッ!直掩機!迎撃に向かって!」

空を覆う無数の艦載機。どちらが制空権を有しているのか、それは歴然だった。

「主砲!敵を追尾し…!不味い!」

体を大きく逸らし、霧島は砲撃を回避する。

「ありゃ、外れたかぁ…。なら」

レ級の尻尾がうねり、レ級は歪んだ笑みを浮かべる。

「近づけばいいよなぁ!」

そして、高速で霧島に接近。尻尾で喰らおうとする。

「Shit!私を無視して霧島を落とせると思うなんてアマアマですネー!」

「んなぁっ!?」

金剛は、尻尾を横から抱きかかえてジャイアントスイングをする。

飛んで行った方向には――。

「ふごぉっ!?」

「あっ…。ごめん」

那珂がいた。そして見事に下敷きとなった。

「ありがとうございます。お姉さま」

「No problem。さぁ、ドカンと撃っちゃってくだサーイ!」

「では」

更に、狙いすました狙撃の如き砲撃がレ級を穿つ。

「うっそぉ!?これで実質轟沈判定!?」

今回は被弾数だけしか見ていないが、実際の模擬戦では既に轟沈判定が出ている。

しょぼくれたレ級は、尻尾に寄りかかる。

「むぇ〜…。こんなあっさりやられるかぁ…?ショックだわ…」
110 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 02:31:43.17 ID:XQ8VroZ+0
「うわぁ…。金剛さんたち凄いなぁ…」

「私たちも、いいところを見せなければなりませんわね」

頷いた鈴谷は、艦載機を発進。熊野は前進して、魚雷を放つ。

「きゃ!危ないわねぇ…」

艦載機の爆撃を間一髪避けた夕雲。

しかし、その場所は魚雷の射線上だった。

「あうっ…!もう、制空権を取れてても…。全然押されてるじゃない…!」

魚雷の直撃を受けながらも、後退していく夕雲。

しかし、間髪入れずに暁たちが急襲する。

「一人なんだ。狙われて当然だろう?」

「ご、ごめんなさい!なのです!」

「はぁ…。私が先行しすぎたのがそもそもの原因かしらねぇ…」

自戒の言葉と共に、夕雲は戦域ギリギリまで下がっていく。

「あれ、あんたもやられたのか?」

「ええ…。失敗しちゃったわ」

レ級は戦闘を眺めているが、夕雲は下を向いている。

「…駄目ね私。もう一度戦ってくるわ」

「いってら〜」

手と尻尾を振り、レ級は夕雲を見送る。

「…僕も戻るかな。流石に何も出来ないのは恥ずいし」

そしてレ級は、長門のところへと向かった。
111 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 02:43:32.62 ID:XQ8VroZ+0
銃弾が飛び交う中、長門は笑んでいた。

「ハハ!敵にして改めて思ったよ。素晴らしい連携だ。第六駆逐隊」

「あ、ありがとうございます!」

カチコチ固まりながら答える暁に、長門は主砲を発射。同時に距離を開ける。

「援護が必要かしら?」

背中合わせになる長門と南方棲戦姫。

「いや、問題ない。武蔵たちの救援を頼む」

「あらそう?なら私は失礼するわね」

そう言うと、南方棲戦姫は深海双子棲姫の方へと向かう。

深海双子棲姫は、武蔵と共に、金剛、霧島、五航戦、陽炎、浦風を相手にしていた。

「まったく…。本当に厄介な連携だ…!こちらはこちらで自由に動きすぎだ…ん…?」

暁たちが後退し、距離を大きく開ける。

「なんだ…?近距離の砲撃を警戒したのか…。…いや、あれは…!」

そして、大量の爆雷を海に投下する。

「きゃあぁぁぁぁ!」

それは、近くで雷撃のチャンスを窺っていたソ級を直撃した。

顔だけを出しているが、目尻に涙が浮かんでいる。

「うぅ…。今の空砲になってたの…?」

「なってたよ。私たちだって中身を確認してるからね」

「数が原因なのかしら…。ああ…耳が痛い…」

「ごめんなさい!張り切って投げすぎちゃったわ!」

そんなやり取りを見た長門は呟く。

「…戦闘にすらなっていないな…」
112 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/06(月) 02:56:50.42 ID:XQ8VroZ+0
「よっ、大丈夫か?」

無邪気に問うレ級に、長門は苦々しい顔で返答する。

「あと数十秒で終わるぞ…」

「…負けじゃない?」

「ああ。負けだ」

連合側は全員、ペイント弾でピンク色に染まっている。

それに対して、汚れが目立っていたのは武蔵、戦艦水鬼と肉弾戦を行った霧島くらいだった。

「いやはや、失敗だったよ。まさか、連携強化のための訓練で連携の恐ろしさを教えられるとはな」

「あれ反則でしょ。尻尾掴まれたら何も出来ないよ」

「艦爆を使えば良かったじゃないか」

あっ、と口を手で覆うレ級。

もう何も言えなかった長門は、ため息を吐く。

「これで連合艦隊旗艦を名乗っているのだからな…。情けないよ…」

「えーっと…。ご愁傷様…?」

右手で頭を抑える長門の肩を叩くレ級。

尻尾も悲しそうに項垂れていた。

「…連携って何だっけ」

小島から眺めていた提督は思う。

根本的な戦力差を帳消しにする艦娘たちの連携。

そして、深海棲艦が自由に行動をするせいで連携そのものが消滅している連合。

「こりゃ…。俺たちが付け入る隙があったわけだよ…」

大きな問題が発生し、頭を抱える提督だった。


今のメンバーの中で交流する艦娘か深海棲艦を↓1〜3で募集です。

※今回はこれで終了となります。次回予定は火曜日です。グダグダですみませんでした(土下座)。
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/06(月) 04:10:36.32 ID:DbW2ee5s0
武蔵
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/06(月) 08:15:47.91 ID:ino468qFo
南方
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/06(月) 09:14:22.04 ID:euW8wrAw0
戦艦水鬼
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/06(月) 15:40:12.59 ID:AHXk9LxL0
ゾロ目でぐうの音も出ない惨敗だし深海側も連携の大事さをよく理解して熱心に訓練・座学に勤しんでくれるでしょ
本番で露呈しなかっただけ良かった
117 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/08(水) 00:16:30.14 ID:i2qIE28h0
凄い遅れてしまった…。時間が無いので、書き溜めた分と少しだけ投下して今回は終わります。安価を投げるところまでは進める予定。
118 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/08(水) 00:17:14.33 ID:i2qIE28h0
「負けた…か。戦うことに固執していたのが原因だろうな。猛省せねば」

砂浜に座って黄昏る武蔵。てんで戦闘のことは分からない提督だが、今回の訓練では連携の差がモロに出ていたことは分かる。

だが、その原因は。

「…武蔵は悪くないよ。というより、悪い人は誰もいない」

深海棲艦だって、今まで味方とすら連携を取ってこなかっただろう。

そんな彼女らにいきなりそれを求めるなど、傲慢でしかなかった。

「慰めはいらないぜ。私にだって悪い部分はあるからな」

「…思い詰めないようにな」

まさか、と言い武蔵は笑う。

「それに、霞の狙いはここにあったのだろう」

「…なるほど。連携の重要性を認識させるのか」

ここまであっさりと負けたのだ。

彼女らだって、連携を取らなかったことが原因だと判断し、学ぶ意欲が湧いている。はずだ。

「彼女は素晴らしいよ。教官としての才がある」

――まったくだ。

過去に霞の助言を貰った時のことを思い出す。

確かに、口は悪く感じるかもしれない。だが、霞の指摘は的確だ。

言葉をよく聞けば、より良い司令官になってもらおう、という思いが汲み取れる。

「霞はただ厳しいだけだよ。俺にも、自分にも」

霞が見切りをつけた時。それが、本当の終わり。

罵倒されている間こそ、気に掛けられている、期待されている証拠なのだ。

「失望させないように頑張らないと、な」

武蔵は左手で提督の背中を叩く。

「提督こそ思い詰めすぎだ。もっと余裕を持て」

「ずっと気を張っていたら、いつかは限界を迎えるぞ?」

一瞬、提督の思考がフリーズした。

「…?どうした?何か変なところでもあったか?」

「…いや、大丈夫だ」

「ならいいがな」

――気を張るな、とか言われても、それ以外を知らないんだけどな。俺は。

その独白は、夜へと消えた。
119 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/08(水) 00:18:18.24 ID:i2qIE28h0
「スペック上は勝ってるはずなのに、何故か負けちゃうのよね」

いつの間にか傍によって、そう零した南方棲戦姫。

「…言い方は悪いけど、囲んで棒で叩けば、強い動物だって死ぬものさ」

「あ、何となく分かったわ」

分かってくれたか、と提督は安堵する。

「つまり、こっちももっと強ければいいのね」

――駄目だ。全然分かってない。

提督は内心、肩を落とす。

「…冗談よ。流石に、連携するべきだっていうことは分かってる」

ほっ、と提督は息を吐くが、南方棲戦姫は更に話を進める。

「だけれど。私はあなた達のことを知らないのよ。提督のことも」

「分からないのに、どうやって連携すればいいのかしら。教えてくれる?」

ずいっ、と顔を近づける南方棲戦姫。それに思わず、提督は目を逸らす。

「…何に怯えているの?失うこと?それとも、死ぬこと?」

違う、と提督は返すが、南方棲戦姫は納得していない。

「だったら、どうして怯えているのよ。私たちが怖いのならそう言えばいいじゃない」

「私たちだって脳無しってわけじゃないの。言ってくれれば、対応くらいはするわよ」

それでも、提督は目を逸らしたままだ。

「…過去に私たちを攻撃したのを気にしてるの?可愛らしいところがあるのね」

クスクスと笑う南方棲戦姫は、指先を提督の唇に当てる。

「別に、私たちはどうとも思ってないから安心して。最初からその気なら、既にあなたは肉塊になってる」

南方棲戦姫の目が紅く光る。

「…あなたがそれを望むのなら、今ここでしてあげるけど」

その言葉に、提督は首を横に振って答える。

――まだ死ねない。死んでしまったら、皆の覚悟が無駄になってしまう。

そんな提督の思いを汲み取ったのか、南方棲戦姫は手をどける。

「なら、私たちを信用でもいいからしなさい。でないとこれ、外すわよ?」

そう言って、南方棲戦姫は指先をビキニの紐に引っ掛ける。

「分かった。信じるから外さないで。そのままでいてくれ」

「言質取ったわよ」

そう言い残し、どや顔をしながら南方棲戦姫は去っていった。
120 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/08(水) 00:18:57.54 ID:i2qIE28h0
南方棲戦姫に弄ばれたような気分のまま、砂浜に座る提督。

そこに、一つの人影が近寄ってくる。

「あれが迷惑を掛けたようだな」

「あれ?…ああ、南方棲戦姫のことか。大丈夫だよ」

「そうか。ならいいのだが」

戦艦水鬼から、長門や武蔵と同じような雰囲気を感じていた提督だが、その雰囲気は実際にはもっと禍々しかった。

「隣。構わないか?」

「あ、ああ」

失礼する、と言って座り込む戦艦水鬼。その目は、水平線の彼方を見据えている。

広がる沈黙。なかなか開かない口。

話すことを諦めて沈黙に身を委ねていた提督だが、戦艦水鬼の発した言葉によってそれは中断される。

「貴様は性格が悪いな。態々惨敗させて、連携の重要性を考えさせるとは」

「…いや、このような言い方する必要は無かったな。失礼を詫びよう」

一礼をする戦艦水鬼に、提督は問い掛ける。

「…今回の訓練で、君が改善するべきだと思った点はある?」

「枚挙に暇がないな。特に、自由奔放に動く者が多すぎる。…言うまでもなくこちら側だ」

レ級と深海双子棲姫のことだろうか。

「…まあ、一番の問題点は我々の認識不足だな」

「今回の問題点は後日報告書を提出するから気にしなくていい。あの少女に渡した方がいいか?」

そうしてくれたら助かる。そう返すと、戦艦水鬼も了解した、とだけ発し、また無言となる。

無言の空間は、敵艦隊の接近を認識するまで続いた。
121 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/08(水) 00:19:33.91 ID:i2qIE28h0
海中に潜り、上手くやり過ごした一行は、鎮守府へと帰還する。

まず行ったのは、報告書の作成。

戦艦水鬼も出してくれるが、別視点から見た物もいるだろうと思い、作業に入っている。

日付は変わり、宿舎は消灯された。

鎮守府の中でも、執務室だけは淡い光に包まれている。

「…はぁ〜…。これでいい…かな…」

連合側の問題点と改善法を纏めた書類を計20枚。

コンピューターが無いから仕方は無いとはいえ、手書きはやはり疲れるものだ。

封筒に入れて、霞宛ての報告書類とだけ書いておく。

既に真っ暗になっている廊下を歩く。

深海にあるが故にかなり冷えており、靴音も反響して不気味な雰囲気を醸し出している。

誰もいないはずの厨房からはガサゴソ音が聞こえるが、無視して宿舎へと入る。

まだ、どこに誰がいるのか分からないので、虱潰しに捜そうと思ったら、そこに彼女は立っていた。

「…やっぱり、来ると思ってたわ」

「済まないな…。もっと早く終わらせれたら良かったんだが」

「もしもの話をしないで頂戴。ほら、よこしなさい」

霞の伸ばす手に、書類を掴ませる。

しっかりと受け取った霞は、踵を返しながら言う。

「確かに受け取ったわ。遅くまでお疲れ様。早く布団で休むことね」

その言葉を聞いた提督は微笑み、返す。

「霞こそ、お疲れ様」

しかし、既に霞は帰っていた。

自室へと戻り、布団に潜ったところで思い出す。

「今日、ご飯を食べてなかったな」


第一日 終
122 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/08(水) 00:46:19.24 ID:i2qIE28h0
思ったよりも体は空腹だったようで、突然、本当に突然目が覚めた。

糖分不足で重い頭を支え、よろめきながら食堂へと向かう。

しかし、食堂で朝餉と洒落こんでいるのはごく僅か。

首を傾げながらも、提督は配給を待つ。

「おはようございます。提督」

「おはよう…。うぅ…頭が重い…」

「食事をしていなかったんですから、当然です」

そう言いながらも、白飯をかなり多めによそう鳳翔。

今日の朝餉は白飯、味噌汁、焼き魚の三点セットだ。

シンプルだが、それがいい。

更に、鳳翔は小さなチョコレートを数粒、お盆に乗せる。

「糖分補給も重要ですから忘れないでくださいね」

「ああ…。気を付けるよ…」

軽く会釈をして、席へと座る。

「いただきます…」

両手を合わせ一言。そして、白飯を思い切りかき込む。

一日ぶりのマトモな食事に、胃が喜ぶどころか、一瞬戻しそうになる提督。

「ゲホッ…。少しずつ食べないと死にそうだな…」

一口一口、よく咀嚼して胃に収めていく。

「ご馳走様でした」

最後にもう一度手を合わせて、お盆を返却台へと持っていく。

相変わらずランプに照らされているだけの薄暗い鎮守府だが、光が無いよりは数百倍マシだ。

そう思いながら、風呂へと向かう。

――流石に、この時間から入浴してる人はいないだろう。

提督は温泉の方の浴場へと入っていった。


木曾だ。お前に最高の安価を与えてやる。↓2

※短いですが、今日はこれで終了となります。次回更新予定は金曜日です。お疲れ様でした。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 00:51:16.66 ID:uRiQ13Gv0
風呂に入ってるやつを指定して欲しいとか内容ちゃんと書こう

中枢
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/08(水) 00:56:33.98 ID:r39HYQwY0
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 01:02:44.42 ID:H7nOldB/0
おつ
南方(全裸)
126 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/10(金) 21:48:04.57 ID:Yvp/RfPU0
>>123、本当にそうですね…。反省…。今から再開デス。
127 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/10(金) 21:49:15.25 ID:Yvp/RfPU0
扉を横にスライドさせると、まずそこには脱衣所が。

壁に設置されている棚に置かれている、計四個のバスケット。

確認するが、そこには何も置かれていない。

「よし、のんびりと入れそうだ」

服を脱ぎ、綺麗に畳んでバスケットの端に揃える。

反対側の壁には丁寧に纏められたタオルがある。

それを一つ手に取り、浴室の扉を開ける。

「あら、意外と大胆な人なのね」

「失礼しました」

そう言って提督は扉を閉めようとするが、南方棲戦姫の手で阻止される。

深海棲艦に対して、提督…人間の力はあまりにも非力だ。当然、簡単に扉は開かれる。

「どうして逃げるのよぉ」

ジト目で提督を見る南方棲戦姫。提督はそっぽを向きながら返答する。

「異性と風呂に入ったことはないし、そもそもそういう関係じゃないだろう…」

「フフ…アハハ…!ウブで可愛いわホント…!」

口を押さえて笑う南方棲戦姫を尻目に、外に出ようとする提督。

しかし、呆気なく捕まってしまう。

「別にどうこうするつもりはないわ。ただ、話がしたかっただけなのよ」

「あなたのことが知りたいの。腹を割って話すには、ここはうってつけでしょ?」

それにしたって風呂は無いだろう、と思う提督。

だが同時に、ここまで純粋に、ただ自分のことを知るために行動する彼女を、避けるのは問題がある、と思った。

「…せめて、前とかは隠してくれ」

「肯定した、と考えていいのね?」

「それでいいよ…」

頭を抱え、体を洗いに行く提督と、上機嫌でタオルを取る南方棲戦姫。

提督のことを知るために歩み寄る南方棲戦姫。

行動におかしいにところがあろうとも、その心は真っ直ぐに――。
128 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/10(金) 21:49:42.75 ID:Yvp/RfPU0
提督は一度髪を濡らして、髪を洗う準備を終える。

その後ろに、南方棲戦姫は忍び寄る。

そして、手にシャンプーを取ろうとした提督の手を掴む。

「…何してるの」

「髪を洗ってあげようかなって」

「大丈夫だよ…。親切なのはありがたいけど、これくらいは自分で出来るから」

「つべこべ言わない。こういう時は言葉に甘えるものよ」

でも、と言おうとしたところで、提督は口を紡ぐ。

何を言っても、彼女が引き下がることは無いと思ったからだ。

「それじゃ失礼〜」

そう言って、南方棲戦姫は手を髪に潜り込ませる。頭皮に触れる指先のせいで、こそばゆい感じがする。

「短い髪ねぇ。男の子って皆こうなのかしら」

「…そうでもないかな。同期には長髪の男もいたから」

同期と言っても、数十人程度しかいなかったが。

「ふぅん…。恋バナとかはあるの?」

「…ないよ。…思えば、そんな浮ついたものとの縁はなかったな。ずっと勉強してた」

昔から要領が悪かったが故に、理解するまでに何回も、何十回も、反復して勉強をしていた。

そんな生活を続けていたらいつしか、娯楽や恋愛、友人といったものとの縁は一切無くなっていた。

「昔からそうだ…。俺はつまらない人間だった…。哀れなものだよ」

「悲しいわねぇ…。まぁ、過去は過去、今は今よ。これから楽しめばいいじゃない」

「…楽しみ方とか、分からないんだけどな」

――本を読んだりするのなら、俺は好きなんだけど。

終わったわよ、という声を聞き、感謝を述べる。そして、体を洗うために南方棲戦姫と距離を置く。

流石にそこまで関与する気はないのか、南方棲戦姫は湯船に浸かる。

「体を洗うなんて、結構汚れとか気にするタイプ?」

「体を洗って入らないと汚いだろ…。昨日は色々あって入れなかったし尚更だよ」

母親が病弱だったこともあって、その辺りには特に気を遣っていた。

清潔にしておけば、母親が体調を崩しにくくなると思って。

「…母さん…。どうしてるのかな…」

病弱な母は元気にしているのだろうか。

それとも――。

提督の心に不安がよぎる。

「…いや、もっと前向きに、だ。きっと元気にしてる。きっと…」

そう、暗示のように呟く提督を見て、南方棲戦姫は首を傾げる。

――母さんってどんなものなのかしら。

そんな疑問は、湯船に溶けて。


↓2に、何か聞きたいことがあれば記載してください。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 22:42:31.09 ID:lb+UhCk60
私らに慣れたらリーダーとあってちゃんと話しなさいよ?ヲ級に聞いたけど知りたいことあるんじゃないのと水を向ける
追撃で私明日から貴方のヒショカン?やるから早く慣れてねと力技で押し込む
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 22:47:36.70 ID:6xcf8inv0
131 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/10(金) 23:24:23.57 ID:Yvp/RfPU0
体を洗い終えた提督は、湯船に浸かって手足を伸ばす。

「ふぅ…。こうやってゆっくり風呂に入れたのは久しぶりだ」

「えぇ?あっちでもそんなに大変だったの?」

「皆が沈んでから…ずっと尋問を受けてたよ…」

苦々しい顔で提督は返答する。

「…ごめんなさい。辛いことを思い出させたようね」

「…いや、いいよ。どうせ過去のことだから」

――過去に囚われているあなたが言っても、説得力は無いのだけれど。

口から出そうになった言葉は、胸の中に押し止めて。

南方棲戦姫は、言おうと思っていたことを思い出す。

「そうだ。あなた、知りたいことがあるのよね?空母の子…ヲ級から聞いたんだけど」

「え?うん」

頷く提督を見て、南方棲戦姫は話を続ける。

「だったら私たちに早く慣れて、リーダーとちゃんと話をしないと」

「そっか…。そうだよなぁ…ん?」

頭を抱えていた提督は、不意に顔を上げる。

そこには、豊かな南方棲戦姫の胸が。

「あら、大胆ねぇ」

「ご、ごめん!」

慌てて別の方向を見る提督と、微笑を浮かべる南方棲戦姫。

「大丈夫よ。それより、何か気になったんでしょ?」

南方棲戦姫は、提督の発言を促す。

「ああ。リーダーが誰か。それがピンと来なくてな」

「それね。まぁ、仲良くなったら自然と分かるわよ」

再度頭を抱える提督。面白く思った南方棲戦姫は、更に追い打ちを掛ける。

「それと私、明日からヒショカン?をさせてもらうから。早く慣れるのよ〜」

そう言って、南方棲戦姫は風呂から出る。

「え!?秘書艦!?ちょっと待って!おーい!」

その叫びが、南方棲戦姫へと届くことは無かった。
132 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/10(金) 23:49:19.17 ID:Yvp/RfPU0
「南方棲戦姫が秘書艦かぁ…。でも、好意的なだけまだいい方なのかな…?」

彼女とは、深海棲艦の中でも、度々弄られることがあるとはいえ、概ね良好なコミュニケーションが取れている。

「まぁ、頑張って慣れていくしかないかな」

軽く伸びをして、湯船から体を出す。

冷水で体を少し冷ましてから、浴室を出る。

「ふぅ。いいお湯だった…。…あれ?」

タオルで体を拭いていると、着替えの隣に何かが置かれているのが見えた。

気になって近づいてみると、何かの正体が冷水が入ったコップだと分かった。

「…ありがとう」

――どういたしまして。

提督がそう言うのに合わせて、声がどこからか聞こえてきた気がした。

軍服に袖を通し、ボタンを留める。未だに、この全身を軽く締めているような感じには慣れない。

コップの水を飲み干して脱衣所を出るが、人気は入浴前よりも減っていた。

「どこかに出掛けているのかな…」

霞の案で、基本待機するよう言われていたはずなのに。

疑問が浮かぶ提督だが、それを頭の片隅に追いやる。

「…俺なんかよりもよっぽど利口な娘たちだ。何か考えがあるんだろう」

執務室に戻って何かしようと思ったが、現時点でやることは特にない。

完全に手持ち無沙汰になった提督は、頭を悩ませる。

「参ったなぁ…。前だったら攻略作戦のシミュレーションとかが出来たんだけど…」

この考えに行き着く時点で、自分がどうしようもないほどに社畜と化していることに気付く。

「…一度でもはっちゃけるべきだったのかな。自分がつまらない人間過ぎて悲しくなってきたよ」

鈴谷や漣たちのような柔軟な頭が欲しいと思った提督だった。


ぷっぷくぷぅ〜!安価だぴょん!↓2 どうするかをお書きください。
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 00:13:48.93 ID:0AenoOHL0
そういえばブラ鎮で酷使されてる艦娘らを保護してこちら側に引き込めないだろうか考察する
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 00:17:56.30 ID:7Lm59RjN0
食堂で注文取りでもしながら最後まで地上にいたと思われる間宮伊良湖に自分が連れ出された後何か動きがあったか尋ねる
長門がいたらどうやって鎮守府に侵入したのか聞く
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 00:19:47.52 ID:0AenoOHL0
そういえばブラ鎮で酷使されている艦娘らを保護してこちらに引き込められないだろうか考察する
今は潜伏期間だが計画を立てて下準備するぐらいはいけそうでは
確か天龍が遠征先でそうな子らを見たと言ってたような
一度天竜に聞いてみよう
136 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/11(土) 00:21:34.86 ID:uzPA2/tE0
長門がいるかの判定です。直下コンマが20以上なら成功となります。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 00:25:46.68 ID:P3ztUV710
まかせとけ
138 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/11(土) 00:49:31.13 ID:uzPA2/tE0
ふと食堂に戻ってみると、先ほどとは打って変わって賑わいを見せていた。

合計二百余名の艦娘、深海棲艦に対して、食堂側の人数は僅か三名。

全員が一度に来ることはあり得ないとはいえ、二割ほどが訪れるだけでも、凄まじい負担になるだろう。

「…何もせずに時間を浪費するくらいなら、だ」

提督は意を決して、厨房近くの受付に入る。

「鳳翔、受付と調理を同時に担当するのは大変だろう。受付くらいはさせてくれ」

「いえ、提督がこちらで働く必要は無いですよ」

「いやいや、こちらも手持ち無沙汰なんだ。頼む」

「ですが…」

こちらが引き受けようとすると、あちらがそれを阻止してくる。

同じようなやり取りが数十秒続いたが、突然終わりを迎える。

「鳳翔さーん!こちらの煮物をお願いします!伊良湖は今手が離せませんー!」

――ナイスゥ!伊良湖!

そんな魂の叫びが、提督の中でこだまする。

「あぅ…。すみません提督。少しの間だけお願いします…」

申し訳なさそうに頭を下げて、煮物の調理へと向かう鳳翔。

それを見送った提督は、顔を軽く叩いて気合を入れる。

「俺でも出来ることを、少しでも多くやらないとな」

――ただでさえ、ここにいる間は穀潰し同然なんだから。

第一波が過ぎ去るまでの一時間、提督はひたすら受付で応対をしていた。
139 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/11(土) 01:13:23.04 ID:uzPA2/tE0
「はぁ…。はぁ…。こんな作業を毎日フルでしてるなんて…。凄いな…」

「お疲れ様です提督。はい、お礼の間宮アイスですよ」

コトリ、と机に置かれた間宮アイス。

「あ、ありがとう…」

しかし、満身創痍になっている提督は口を付けることが出来ない。

「辛そうですね…。伊良湖で良ければマッサージいたしますよ?」

「いや…大丈夫…」

どう見ても大丈夫そうに見えない提督を心配する伊良湖。

なお、鳳翔は昼食用の仕込みのため、絶賛食材と格闘中である。

「でも、ここにこれて良かったわね。伊良湖ちゃん」

「はい。あの鎮守府にいても、楽しいことは無かったですから」

そう話している二人の表情は深刻だ。

「何かあったのか…?」

机に突っ伏したままの提督の質問に、二人は答える。

「はい。少なくとも、大将たちは残された資料や資源のことでずっと揉めてました」

「苛立ってたのか、ご飯にすら難癖を付けてきたんですよ…。おかげでご飯を作りたくなかったですもん…」

「それにセクハラ行為も度々行われましたね。まだ接触程度なのでマシな方でしたが」

「うわぁ…」

どこまで上層部は腐っているのだろうか。正直怒りが収まらない。

「でも、提督たちはいつも美味しそうに食べてくれますから、作ってて楽しいですよ」

「はい!ご飯は皆で楽しく食べるものですからね!利権争いをしながら食べるものじゃないですから!」

伊良湖の声に感情が異常なまでに篭っている。さぞかし酷い目に遭ったのだろう。

「…色々と大変だったんだな。そっちも」

「まぁ…。はい…」

「ほ、ほら提督さん!間宮さん特製の間宮アイス、早く食べないと溶けちゃいますよ!」

「あ、ああ。そうだな」

何か誤魔化された気がしないでもないが、詮索しない方がいいのだろう。

気持ちを切り替えて、器に丁寧に盛られたアイスにスプーンを沈める。

硬いようで軟らかい、絶妙な硬さのアイスは、口に入れた途端に溶けていく。

優しくも濃厚な甘さが口いっぱいに広がり、それほど主張するでもなく静かに消える。

控えめに言って、至高のアイスクリームだ。

「美味しいよ。ありがとう、間宮」

「いえいえ、喜んでくれたのなら、作ったこちらも嬉しいですよ」

微笑む間宮の顔を見ると、こちらまで気分が良くなってきた。
140 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/11(土) 02:02:52.46 ID:uzPA2/tE0
手助けは必要ないらしく、提督は厨房を出て食堂の椅子に座る。

すると、そこに二つのグラスが置かれる。

「…長門、まだ夜じゃないのにお酒は…」

「ここにいたら、昼も夜も無いよ」

「まぁ…そうだが…」

グラスにワインを注ぐ長門。その目はどこか、憂いているようで。

「…どうした?」

「いや…。何でもないよ。何でもない…」

そう言う長門の表情は、僅かに曇った。

踏み込まない方がいいと思った提督は、別の話題を振る。

「そういえば、間宮たちはどうやって連れてきたんだろうな」

「ああ…。大したことをしたわけではないが、多少強引に行かせてもらったよ」

「強引…?奇襲した…とか?」

長門は首を横に振る。どうやら違うようだ。

「同型の艦娘とすり替わって、隙を見て連れ出して来たんだ」

「すり替わった娘たちは…。うん、今頃深海棲艦になり果てているだろうな」

「犠牲者がいるのか…。…いや、俺を助ける時点で何人も死んでるんだ…。今更…か」

「提督が悔やむことは無い。手を汚すのは我々の仕事だよ」

その言葉を聞いた提督も、表情が曇る。

彼女たちにばかり、辛い思いをさせている自分が愚かで。

「…一応言っておくと、私たちも普通に街に潜入したりは出来る」

「気分転換でもしたければ、その娘と共に行けばいいよ」

暗い雰囲気を変えるためか、長門はあまり関係のないことを話す。

しかし、暗い雰囲気のままでいるのもよくないと提督は思い、その話に乗る。

「気分転換、か。そういうこととは縁が無かったからなぁ…。経験するのもアリ…なのかなぁ…」

「ああ。楽しむのも、重要なことだと思うぞ」

「では、私は所用があるのでな。失礼するよ」

そう言って長門は席を立ち、どこかに行く。

「…ワイン、一杯しか飲んでなかったな」

元々、彼女は酒を飲むタイプではない。何か嫌なことがあって、気を紛らわせるために飲んだのだろう。

「長門も長門で、抱えすぎな気がするんだよなぁ…」

お前が言うな。そんな言葉が聞こえた気がする。


はぁ…安価はあんなに蒼いのに…。↓2 自由安価です。誰とどうする、等自由にお書きください。

>>137、有言実行とはやりますねぇ!本日の更新はここまでとなります。次回更新は火曜日予定です。お疲れ様でした。
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 02:22:57.90 ID:0AenoOHL0
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 02:35:07.37 ID:IkmwhyOfO
皐月にかわいいねと慰めてもらう
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 13:14:37.76 ID:eI5ViheV0
うーん これかーちゃんまずいなあ
姿をくらませても反逆者の母として晒し者にされるだろうし、ことを起こすとなると人質にされる
救出しても病弱じゃ海底生活は無理だし陸に匿うあても病院の手配もできない
コミュ障だから頼れる同期もいなけりゃ致命傷レベルのヘタレだから見殺しにしたら後を追いかねない
無理だなこれw
144 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/15(水) 02:09:10.18 ID:yQImETQu0
>>143、そんな時の人海戦術!二百人くらいいれば陸地に家を建てて匿って看病も出来るはず!

あと、同僚とは必要最低限のコミュは取れるくらいには、コミュ力はあったりします。プライベートは…ナオキです…。

同僚は各鎮守府に派遣されている(設定の)ため、交渉は一応出来る…はずです。遅くなったけど安価を出すところまで進めるでヤンス。
145 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/15(水) 02:09:41.40 ID:yQImETQu0
長門が注いだワインに顔が映る。

その顔は、どこか落ち込んでいるようにも見える。

――なんで、こんな顔をしてるんだろうな。

そう思いながらワインに口を付けるが、少しだけ口に含んで終わってしまう。

「う。やっぱりワインは無理だな…。カシスソーダやジンジャーハイボールの方が美味しい…」

グラスを机に置き、その隣に倒れ込む。

グラスへと向けられる提督の視線。その先に、何かがやって来た。

「司令官?どうしたの?」

目をパチクリさせる皐月。その顔は無邪気なようにも見えて、心配しているようにも見えて。

どこかいたたまれなくなった提督は、何でもない、とだけ返す。

「そうは見えないけどなぁ」

皐月の呟いた言葉に、提督の体が僅かに跳ねる。それを見た皐月はクスリ、と笑う。

「何かあったんじゃないか。そうやって悩んでて、かわいいね」

皐月は、小さな手で提督の頭を撫でる。傍から見れば事案であるが、あいにく憲兵はここにはいないし、ここまで出動もしてこない。

「かわいい…か。そんな言葉は俺には似合わないと思うよ。男だし」

「ううん、かわいいよ。一人で悩んでる姿がさ」

――悩んでいるわけじゃない。

そう反論しようとしたが、言い返せなかった。

――じゃあ、なんで俺はあんな顔をしていたんだ?

一つの疑問が浮かび、思考を独占する。しかし、答えは出ない。

「辛い時は、誰かの胸を借りたら楽になれるんだって」

「…司令官、何だか辛そうだったから。ボクの胸で良ければ貸すよ?」

それは、悪魔の甘い誘惑。

受け入れてしまえば、戻れなくなるかもしれない罠。

だが、突き放す選択肢があったのに、提督は選べなかった。

断ったら、皐月に申し訳ない気がして。

そして提督は、その甘い誘惑を受け入れた。

「…ごめん皐月。少しだけでいいから…そのままで…」

「…うん、いいよ。ボクので良ければ、いくらでも」

――本当にかわいいよ。司令官。

皐月の微笑みは、どこか蠱惑的にも見えた。
146 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/15(水) 02:17:34.04 ID:yQImETQu0
「…大丈夫?まだ必要かい?」

「…いや、もう大丈夫だよ。ごめんな」

「ううん。役に立てたなら嬉しいや」

明るい笑みを浮かべる皐月。姿は変わっても、心は変わらない。

そんな当たり前のことなのに、それを改めて実感してしまう。

――長門や金剛たちだって、変わってなかったのに。どうしてそう思ってしまったんだろう。

疑問が一つ消えると、また新しい疑問が生まれる。

延々と続くいたちごっこは、思考を切り替えて終わらせる。

「んん?司令官はこのワイン飲まないの?」

「え?ああ。苦手だからね。ならなんで注いでるんだって話だけど」

「じゃあボクが飲むよ。いつもビールだし」

そう言って一息に飲み干す皐月。ワインはジュースじゃないんだぞ!

「っぷはぁ〜。こっちも美味しいかも」

「…それは良かった」

提督は、軽く皐月の頭を撫でる。幼い外見の駆逐艦相手にはついやってしまう。

夕立とかの例外もいるが。

「んっ…。もう少し強くしてもいいんだよ?」

「いや、これ以上強くしたら髪が崩れちゃうからさ。そういうのは嫌じゃないか?」

「ボクは、司令官のだったら全然いいけどね」

「そういうものなのかな?」

「そういうものなんじゃない?」

女性の思考はよく分からない。

首を傾げる提督に皐月は手を振って、宿舎へと帰っていく。

そんな二人を物陰から見ていた艦娘が一人。

「て…提督がLolita complexだなんて…!?」

アホ毛が揺れる。動揺している心を表しているかのように。


意外に優秀な安価ってよく言われるクマ。↓2 自由安価です。お好きなものをお書きください。

※今回はこれで終了となります。短くて本当に申し訳ございません…。次回予定は金曜日です。すみません…。
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 02:19:55.18 ID:jqe3on25O
やっぱり皐月ちゃんはかわいいね
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/15(水) 02:33:14.19 ID:+9EHKWR90
隠れて調査なら艦歴的に青葉、潜水艦ズか
長門と青葉、潜水艦たちを呼んで母親がマズイんじゃないかと不安を口にして調査の是非を相談
149 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/18(土) 22:41:22.90 ID:rtby05a50
書き始めようと思っていたら、寝落ちしてこんな時間になっていた…。本当に申し訳ないです…。今から投下していきます。
150 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/18(土) 22:42:06.65 ID:rtby05a50
グラスを厨房に返し、チョコレートを一粒つまむ。

風呂で、暗示するように言っていた言葉を思い出す。

『きっと元気にしてる。きっと…』

今の自分は、建前上では裏切り者、若しくはスパイだ。

――もしかしたら。

最悪の事態を想定してしまった提督の行動は早かった。

考えるよりも先に、体が動いた。

「提督ぅー。ちょっとイイですカ?」

壁からひょこっと顔を出して問う金剛に、提督は悲し気に返す。

「ごめん金剛。今は無理だ」

言葉が出ると同時に、提督は隣を走り抜ける。

「…もしかして、避けられてますかネ…?」

走り抜けた提督を見てそう呟いた金剛。

しかし、提督は焦った様子で鎮守府中を走る。

「…まぁ、大切なPalaverがあるなら優先させまショウ」

あれほど焦っているのなら、よっぽど重要なことがあるのだろう。金剛はそう考えていた。
151 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/18(土) 22:42:39.81 ID:rtby05a50
「ふむ…」

提督と別れてから宿舎に戻った長門は、霞から渡された書類に目を通していた。

「やはりネックは深海棲艦たちの認識か。連携を重要視している者は皆無に等しい…。このままでは少々厳しいかもな」

壁に吊るされた写真を見やる。

その写真は、初めて大規模作戦を突破した時の記念写真。

まだあどけない提督と、彼に飛びついている金剛が印象的だった。

写真の端で腕を組んでいる長門の顔つきは若干険しい。

「まったく…。あの頃の私がこうなるとは。夢にも思っていなかったよ」

壁掛け時計が示す時刻はヒトマルマルマル。即ち朝十時。

「兵器でしかないはずの私たちも、変わるものなのだな」

「心というのは、実に不思議なものだ…」

国のためではなく、ただ一人の人間のために命を懸ける。

そう変化した覚悟に、心に、長門は思いを馳せる。

「…その心の変化を心地よく思う私がいる。兵器失格だな。私は――」

――だが、それでいい。提督と共に歩めるならば。それで。

ワインが効いてきたのか、微睡みに誘われる長門。しかし――。

「すっすまない長門!ゼェ…潜水艦の娘たちと…。ハァ…。…あ、青葉を集めてくれないか…」

――息絶え絶えでそう言う提督の声で、長門の意識に掛かった靄が吹き飛ぶ。

「潜水艦たちと青葉を…?そこまで慌てているということは、余程の理由があるのか」

「ああ…。君たちに関係していることではないが…。俺にとっては本当に大切なんだ…」

提督の目を見た長門は頷き、部屋を飛び出す。

「二分お時間を頂戴する。執務室に必ずや連れて来よう」

「ありがとう…。長門…」

――提督が望むことなら、喜んでするさ。

その呟きは、長門の心の中で消えていく。
152 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/18(土) 22:43:12.16 ID:rtby05a50
再度執務室へと走って戻った提督は、机に項垂れる。

「ゼェ…。ゼェ…。走るのとか…久しぶり…すぎて…。ハァ…死ぬ…」

頭痛がする頭を押さえ、もう一つチョコレートを口にする。

「あと一粒か…。まぁ、気休め程度なんだがな…」

憲兵の手によって勾留されてから、満足な食事を摂れなかった提督の脳は、未だに糖分不足に悩まされている。

「これも数日の辛抱だ…。食事はマトモになったから、やがて頭痛は無くなるだろう…」

休憩を取るために目を閉じる提督の耳に、騒がしい声が入り込んでくる。

「提督!イクたちを呼んだのね?」

「はっちゃんたちに用があるって何なのでしょう…」

「ゴーヤたちはあっちでもあまり仕事無かったしねー。オリョールも水上艦で偶に行くくらいだったし」

「…ドイツ派遣は大変だったのね」

「青葉をお呼びということは…取材ですか?」

「皆、今は静かにしておこうか。提督にとっての一大事のようだ」

シン、と静まり返る執務室。提督は顔を上げて、暗い表情で話し出す。

「俺…今は裏切り者とかスパイってことになってるだろう?」

「ああ。それに加えて、陛下から受け賜わった艦隊を喪失した愚か者という称号も。…いや、裏切り者云々は当事者内で使われているだけか」

「つまり愚か者のクソ提督、というわけか…。間違ってないな。万年少佐だったし」

おそらく何らかの操作が行われていたのだろうが、そんなことはどうでもいいし、証明のしようがない。

「…話を戻すよ。そんな俺の姿が消えたわけだ。母さんにも監視の目が行っていてもおかしくない」

あちらが死んだと認識しているか、姿を消したと認識しているか。それは些細な問題だ。

重要なのは、海軍の顔に泥を塗った男の親族が監視されるか否か、だ。

スパイ行為に等しいことをしていたわけだし、艦隊を壊滅させてもいる。

この二つだけでも、泥を塗る行為としては申し分ないだろう。

「…確かに、な。つまり、母親の救出を依頼したい、と?」

「…そうじゃないよ。母さんは病弱だから、ここに匿っても設備等の問題で体調を崩しかねない」

「…心配なんだ。母さんが酷い目に遭っていないか。苦しんでないかって…」

提督の声が更に小さくなる。
153 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/18(土) 22:47:19.01 ID:rtby05a50
「…はぁ。提督は素直じゃないのね」

見ていられなくなったイクが、口を開く。

「要は、その母さんって人が心配だから調査してほしいってことなのね?」

「…ああ」

小さく頷く提督の頭をコツン、と叩いて、イクは胸を張る。

「イクたちは潜水艦。つまり、隠密行動のスペシャリストなのね!それくらい朝飯前なの!」

「そうだよ!提督の大切な人なら、助けたりする理由としては充分すぎるでち!」

「そういうことなら、青葉を呼ばれたのも納得です!」

快く引き受けてくれる彼女たちに、提督はただ感謝する。

「して、母さん様の特徴と住所をお教えいただきますか?」

「住所は――だ。特徴…というか、歳の割に幼く見えるよ。それに見た目も君たちに近い」

「…私たちに?」

頷いた提督は、考えるように言葉を紡ぐ。

「母さんは…たぶんアルビノなんだと思う。本人から聞いたことは無いんだけど…」

「もしアルビノだったとしたら、病弱なのも何となく…分かる」

「ふむ。先天性白皮症か。それは厄介だ」

腕を組む長門だが、続けて疑問をぶつける。

「年齢は?幼く見えると言っていたが」

「…四十過ぎ…のはず。見た目は真面目に、菊月とかと変わらない。というか、それよりもまだ幼い」

「…深海棲艦みたいだな」

それでも母さんは母さんだから、と返す提督に、長門は頭を下げる。

「…ふむふむ。了解しました。調査に向かいますね!」

「あっ!先越されちゃうのね!」

いの一番に飛び出した青葉と、それを追って走り出す潜水艦組。

捕まったりしないか心配だ。

「…私はもう失礼するよ。酒が回ったのか、少々眠くてな」

「…ああ。何度も頼って、すまないな」

「気にするな。私も、嫌な気はしていない」

静かに閉められる扉。それをずっと、提督は見つめていた。


第三安価…何してるの…?↓2 自由安価でごぜーます。
154 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/18(土) 23:49:08.18 ID:NCdyPdIs0
いなさそうなのでkskstです。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/18(土) 23:56:26.08 ID:sLTUxOMM0
さっきすっぽかした金剛の所に要件を聞きに行きがてらものすごく甘い茶を所望する
156 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 00:46:18.17 ID:0MW1USSF0
誰もいなくなった執務室を後にして、廊下を歩く。

外には神秘的な光景が広がっているはずだが、人間でしかない提督の目では、僅かに光が差していることしか分からない。

急いでいたとはいえ、先ほど声を掛けてきた金剛を放っておいてしまった。

そのことが申し訳なく思った提督は、金剛を捜しに行く。

一番人が多いであろう食堂に行っても、金剛はいない。

どうしたものかと頭を悩ませる提督。そんな彼に、一人の艦娘が声を掛けた。

「提督さん、そんなとこに突っ立って、何かあったん?」

「浦風か。いや…ちょっと金剛を捜していてな…」

小首を傾げて、下からこちらを覗き見る浦風。

提督の言葉を聞いて、浦風は開いた口を押さえる。

「…どうした?」

「あ、いやぁ…。金剛姉さんなら、風呂に少し前に入ってったんよ」

物騒なことを呟いていたことは、敢えて言わない。

「そうか…。しばらく待たないといけないかな」

「んー…。あ!ちょい待っとって!」

そう言って、小走りで浦風は走っていく。

待つこと数分。手にトランプを持って、浦風は戻って来た。

「待つなら、何か娯楽は必要じゃけんねぇ。うちとしては、おしゃべりしたいんだけど。気を遣わせるのも、どうかと思うてな」

「…お話くらいは大丈夫だけど」

どこか表情の暗い提督を見て、浦風は考え込む。

「うーん…。提督さん。ご飯、ちゃんと食べとる?」

今日は食べた、とだけ返す提督。

その言葉を聞いた浦風は、途端に不機嫌になる。

「…駄目じゃ!じゃけんそんな顔しとったんやね!」

ずいっ、と顔を近づける浦風は鬼気迫って見えた。

「ご飯は元気の源じゃ!ちゃんと食べてちゃんと寝る!そうせんと、何も出来んよ!」

「う…」

タジタジになる提督を見て、浦風の表情は申し訳なさそうになる。

「…まぁ…。昨日は色々あったけえしゃあないし、その前も…うん…。急にごめんね…」

「…ご飯を食べる時間はあったんだ。食べてなかった俺が悪いよ」

「ううん。悪いのはうちらじゃ」

「いや、俺の方だよ」

一進一退にすらならない、責任の押し付け合いならぬ請け負い合い。

そんな茶番も、やがて終わりを迎える。

「Mmm…。紅茶の茶葉が少なくて困るネー。…提督ぅ!?」

軽く上着を羽織っただけの金剛が、食堂へとやって来た。

「あ、金剛姉さんが来たけえ、うちはもう退散するね!」

猛ダッシュで宿舎へと走っていく浦風。ミニスカートなのは気にしていないのか。

「…すまないが前は隠してくれ。あと、少し話がしたいんだけど、時間はあるかな?」

「おOKOK。今からでも大丈夫ですヨー」

小走りで進む金剛の後を、提督はついて行く。
157 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 01:13:13.38 ID:0MW1USSF0
「少しだけWaitをお願いするネー」

頷いた提督は、部屋の外で待つ。

数分後、しっかりとおめかしをした金剛が扉を開ける。

「Sorry提督。もう入っていいヨー」

「失礼します」

丁寧にお辞儀をして、提督は部屋に入る。

テーブルには、一つのティーカップが。その中には、紅茶が入っている。

「これは提督の分だから、お好きに飲んでいいデスヨー」

「…金剛は飲まないのか」

「…茶葉が切れちゃいましてデスネ…」

物資補給という新たな問題が浮上したことに、提督は頭を抱える。

「…ああ。すまないが、砂糖をいっぱい入れてもらえるか?」

「もう入れてるヨー。どうせまたLack of sugarだと思ったからネー」

「ありがとう」

「You're welcome」

何気なく返す金剛はどこか、嬉しそうだった。

「…うん、美味しい。凄く甘くなってるけど、今はそれがありがたいよ」

「いつ来ても、私たちは歓迎するネー」

「…ああ。また来るよ。絶対に」

思えば、あちらにいた時もこんな会話をした気がする。

いつものように糖分不足で倒れかけて、紅茶を淹れた金剛たちがお見舞いに来たり。

その度に、手が空いたら部屋に向かうと約束したり。

あの時の日常が戻って来た感じがした提督は、思わず顔が綻ぶ。

「…杞憂でしたネー。あの時話をしなくて良かったデス」

その呟きに、提督が気づくことは無かった。

それが、金剛にとってはありがたかった。

「…さっきは何で呼び止めたんだ」

提督の問いに、満面の笑みで金剛は答える。

「何があっても、提督に対するBurning loveは止まらないって伝えたかっただけデース!」

今までに見たどの金剛よりも輝いて、美しく見えた。

そして、無意識に提督の口から言葉が零れる。

――俺にはもったいない娘だよ。本当に。

同じく、金剛もその呟きに気付くことは無かった。気付けなかった。


安価一触よ。心配いらないわ。↓1 またもや自由安価です。

※今回の更新はこれで終了となります。次回は日曜日…。つまり今日の夕方辺りとなります。昨日は本当に申し訳ございませんでした…。

ロリおかんっていいよね…。ではまた夕方にお会いしましょう。お疲れ様でした。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/19(日) 01:14:59.97 ID:jlDr1i440
乙です

>>135
159 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 21:43:55.83 ID:ue6ewgWs0
18時終業のはずが21時まで残業…うごごご。今から書いていきます。
160 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 22:48:00.61 ID:ue6ewgWs0
「紅茶、美味しかったよ。また飲みに来る」

「OK。今度は高級茶葉をPrepareしておくネー」

「はは…。それなら、補給線をどうにかして作らないとな」

「Yes!ConnectionをMakeしたり、補給艦を襲ったり、やることはたくさんネー!」

「…それだ」

「What?」

提督がそう発すると、金剛は首を傾げる。

なぜそれだ、と言ったのかが分からない。

「俺たちは、現時点では補給手段が皆無だ。金剛の言う通り、補給艦を強襲するくらいしかない」

「そこで、金剛が言ったコネ作りだ。上手くいけば、安定して物資を調達出来る。…上手くいけば、だけど…」

「もしFailedした場合、私たちの居場所が知られますネ…」

「………」

提督は無言になる。思いついたのはいいが、勝率が限りなく低いのだ。

何せ、提督たちの手札は全くない。精々、深海棲艦を利用出来ることと、隠密行動に長けていること。それくらいだ。

何か、糸口が見つからないか。必死に思案する提督の頭に、一筋の光明が差す。

「…前に天龍が意見具申してきたことがあったな…。もしかしたら、今でも…」

「提督?」

「すまん金剛、天龍に会いに行ってくる!」

また、提督は部屋をダッシュで飛び出す。

「…慌ただしい人ですヨー」

――でも、それだけ本気で向き合ってくれてるわけ、ですからネー。

開きっぱなしの扉に視線を向けながら、金剛は微笑んだ。
161 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/19(日) 23:40:52.68 ID:ue6ewgWs0
場所は変わって、たった十畳の広さの修練所。

剣を構える天龍と、槍を優しく持つ龍田。

部屋の片隅で、木曾が指を鳴らす。その合図を皮切りに、二人は距離を縮める。

「フッ」

天龍を放つ鋭い右薙ぎを、龍田はクルリ、と回転させた槍で受け止める。

「そぉれ」

同時に、槍を上に投げて肉薄。右の掌底を打ち込むが、上体を反らされて直撃はしなかった。

上体を反らす力を利用して、天龍はサマーソルトキックを仕掛ける。

しかし、龍田が素早くバックステップに転じたため、それも失敗に終わった。

「今日は白なのねぇ」

ようやく落ちてきた槍を掴み、クスクスと笑いながら龍田は言う。

「色を言うな。大したことじゃねえだろ」

「あらら。照れると思ったんだけどなぁ」

「ハッ。戦いの最中に照れてどうすんだ。そんなんで隙を見せるか…よっ!」

先ほどと同じく、天龍は突撃をして右薙ぎを。対する龍田は、槍を振り下ろす。

両手で剣を持ち、槍を往なす。そこに、龍田の回し蹴りが迫る。

「ビンゴ」

天龍は前屈みになり、床に両手を付ける。それを軸に、下から上へと、龍田よりもコンパクトな回し蹴りが入る。

「きゃ!」

シバータ。カポエラの技である。

咄嗟に反応した龍田は、腕をクロスさせて受け止めるが、片足だけでは支えきれず壁へと吹き飛ばされる。

「…俺の勝ち、だな」

「やぁん。負けちゃった」

壁に項垂れる龍田の首に、剣を添える。勝敗はここに決した。

「…次は俺だな」

剣を肩に掛ける木曾と、苦笑いをする天龍。

「いや、今日はもう終いだ。客人のようだぜ」

そう言って入口を見やる天龍に釣られ、二人も入口へと目を向ける。

そして、大きな音を立てて戸が開かれた。

「天龍!少し話せるか!?」

「ああ。まずは提督が落ち着いてから、な」

提督の息が落ち着くまで、天龍たちはしばし、休憩へと入った。
162 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 00:40:25.51 ID:riCwGc+W0
「…で、何用で態々ここまで来たんだ?」

壁にもたれ掛かりながら、ゼリー飲料(中身はただの水)を飲み干す天龍。妙にその姿が様になる。

「天龍が前に意見具申したこと。憶えているか?」

「あれか。もちろん憶えてるぜ」

右手で髪を掻き上げる天龍。どこか後悔しているようにも見える表情が、提督には辛い。

「まあ、あの時は作戦前だったから仕方なかったがな。それでも、見捨てるみたいでしんどかったよ」

「…すまないな。俺が戦力をしっかり増やしておけば、そっちにも割けたんだが…」

「おいおい。資源とかも考えたらあれ以上は無理だろうに。そう背負いこむなよ」

ポンポンと背中を叩く天龍。叩く音が大きいのと、背中が痛いのは気にしないことにして。

「まあ言いたいことは分かったよ。そいつらを助けたいんだろ?理由は色々あるんだろうが」

「俺は構わねえぜ。寝覚めが悪かったしな。今、その鎮守府が現存してるかは知らねえけど」

「…いや、やってくれるだけでも嬉しいよ」

「そりゃ重畳」

目を閉じた天龍は、静かに寝息を立てる。余程疲れていたのだろう。

「…訓練お疲れ様」

提督は上着を掛け、外に出る。

「あらぁ…?天龍ちゃんを置いて出ちゃうのぉ…?」

「…男の俺にどうしろっていうんだ…」

「おんぶしてあげればいいじゃない」

「…死ぬ」

「しょうがないわねぇ」

ひょいと天龍を抱える龍田。どこにそんな力があるのだろうか。

「女の子には、秘密が付き物よ?」

心を読む能力を持っている艦娘は、いったい何人いるのか。

少し気になった提督であった。


慢心しては駄目。全力で参りましょう。↓1 自由安価です。
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 00:43:09.83 ID:LFtToOcVO
母親の現状発覚
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 00:51:55.77 ID:xjrsMslo0
備蓄庫の視察をしつつ説得可能な提督の心当たりを考えてみる
慎重で疑り深い方が大本営の言動に疑念を持ってるかもだから望ましい
165 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 01:16:55.18 ID:riCwGc+W0
天龍を龍田が背負っている間、剣を持ってみようかと考えたが、艤装の一部なのでどうせ持てないと思い、手を戻す。

「しかし、天龍がここまで眠るのは初めてだ。提督がいて安心したのかもしれないな」

「まさか」

そんな他愛のない会話をしながら、宿舎に向かう。

食堂行きの廊下に差し掛かった辺りで、三人とは別れる。

薄着になったことで、肌寒くなった提督は蹲る。

「…深海だから水は冷たいし、当然だよな」

どうしたものかと思考する提督。深海に小さく瞬く光が、それに徐々に近づいていく。

「…なんだあれ」

一つ、二つ、三つ、四つと、数を増し、大きくなる。

「まさか…な。まさか…。早すぎるだろ…。流石に」

しかし、残念ながら、それは現実だった。

「青葉、ただいま戻りました!」

「うぅ、負けちゃったのね…」

「情報収集のプロフェッショナルに勝つのは無理でしたね」

「…怖いなぁ…。たった2時間くらいで、本土と往復も含めて情報収集を済ませてくるなんて…」

「むむ。引かれている気がします」
166 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 01:35:33.67 ID:riCwGc+W0
もう訳が分からない提督は、諦めたように話を聞く。

「…それで、どんなことが分かった?」

「えっとですね…。母さん様は本当に若く見えましたね。もしや二十歳なのでは?」

そんな年齢だったら、そもそも自分は産まれてないと心の中でツッコミを入れる。

「…冗談です。色々洗ったのですが、母さん様に接触する人はいませんでした。監視も今のところは全然」

「海軍や憲兵が出向いた記録や情報も無かったでち」

「…でも、少し苦しそうにしてたのね。何かの病気に罹ってるの?」

「…いや。普段から辛そうにしてたよ。…監視も無いということは、気にされてないのか?」

一縷の望みが出てくるが、現実的に考えると、それはないと分かってしまう。

「…ただ単に、衰弱死するとあちらが予想しているだけ、か。手を出すまでもないよな。正直…」

どれほど病弱なのかは、自分が一番知っている。それ故に、一々干渉しなくても、勝手に自滅すると分かっている。

そんな考えが出来る自分が恨めしくて、怒りがこみ上げる。

「…おそらく、海軍とかが母さんを狙うことは無いだろうな。なら、俺たちに出来るのは…」

「母さんを迎え入れられる設備を整えること。ですね?」

「…うん。ハチの言う通りだ」

最低でも、様々な医薬品は必須だろう。それと、無菌室というわけではないが清潔な場所。

あとは点滴類や介護食品も必要だろうか。

「地上に安全な場所があれば…。それが一番いいんだけど…」

中々消えず、積み重なっていく問題。だけど、処理していかないことには、何も始まらない。

「やれることはあるはずなんだ。それを積み重ねれば、きっと実を結ぶ日が来る」

「ですね!青葉も全力を尽くしますよー!」

「潜水艦組もやるでちよ!」

「おー!なのね!」


安価の中からこんにちわー!ゴーヤだよ。↓2 いつもの自由安価だゾ。

※本日の更新はこれで終了となります。次回更新予定は月曜日です。お疲れ様です(鳥海並感)。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 01:44:05.93 ID:xjrsMslo0
ksk
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 01:45:20.66 ID:3Op79M9F0
>>164
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 02:04:46.60 ID:xjrsMslo0
提督の健康管理って誰がやってたんだろ
明石?
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 09:02:09.95 ID:Riy1iau10


明石や大淀?
食事関係で鳳翔さんや萩風とかも声かけそう
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 11:34:24.90 ID:9IGdKMiK0
この場合用があるのは健康オタクじゃなく医師相当の資格持ちだよなあ
母親どころか提督まで病気アピの記述だらけ
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 13:51:42.09 ID:dUMUD/rS0
乙乙
面白そうなスレみつけたでち!
173 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 20:36:02.03 ID:LhMX+Ft60
>>169>>170、明石は医療機器の操作担当、大淀は簡単なバイタルチェックと血糖値測定の担当です。

実際に診療出来る艦娘は、残念ながら現時点ではおりません。

とはいえ、点滴といった簡単な処置なら提督を含めた艦娘全員が習得しています。深海棲艦は…(目を逸らす)。

鳳翔さんや萩風等といった料理上手な人は、偶に差し入れを送りに行ってました。

>>171、一応、提督自体は健康体です。小食な上、日頃の業務に時間が取られすぎて満足に食事が出来ない環境に在ったため、よく倒れかけてました。

母親の都合上、匿うなら医師系の方がいた方が安全です。不測の事態が想定されますので。

>>172、嬉しいレスをありがとうございます!これからも面白く出来るよう、精進します。

今から更新していきますです。今回で心当たりのある提督は、最大で三人ほど出す予定です。設定は作っていますが、要望があれば募集するかもです。

全てはコンマ神の導きのままに…。
174 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 21:07:54.25 ID:LhMX+Ft60
「では!私たちは入渠してきますね!」

敬礼をして、そそくさと退散していく青葉たち。提督も、手を振ってそれを見送る。

「金剛は、茶葉が無いと言っていたな…」

鎮守府全体の備蓄はどうなのか、確かめる必要がある。

もし、食料が少なくなっているとしたら、死活問題になり得る。

「備蓄庫はどこにあったかな…」

まだ鎮守府の構造を把握出来ていない提督は、ウロウロと廊下を往復する。

「提督?どうして廊下でウロウロしているの?」

「ん?…矢矧か。ちょっと迷ってるんだ…」

後ろから声を掛けられたので、提督は振り向く。そこには、矢矧が荷物を抱えていた。

「迷ってる…。ああね。まだ目が覚めて一日しか経ってないもの。当然よね」

「う…。早く憶えないと、皆に迷惑が掛かるよなぁ…」

「そうかしら。それで、どこに行きたいの?」

提督は矢矧に目的地を伝える。すると、矢矧は小さく微笑んだ。

「ちょうど、私も装備を置きに行くところだったのよ。ついてきて」

気を遣っているのか、ゆったりとしたスピードで歩く矢矧。

隣を歩きながら、段ボールから顔を出す魚雷を見て、質問をする。

「これは五連装酸素魚雷か?」

矢矧は首を横に振る。

「酸素魚雷じゃないわね。明石にも分からないそうよ」

「なんだそれ…」

「一発だけ、無人島に試射したの。その時の航跡には緑色の粒子が存在、直撃後は通信不良になったのよ」

普通の魚雷ではまずあり得ない現象だ。そもそも、魚雷内部は空気か酸素で満たされているのが普通のはずだ。

「…直撃後の空気中にも、粒子が散布されていたわね。まぁ、危険だし不明な装備だから、今から封印しに行くの」

「…それがいいよ。俺も、そんな装備が安全な物だとは思えない」

深海棲艦になったことで、開発する装備にも差異が生じているのだろうか。

少し気になるところではあるが、今はそれよりも優先するものがある。

思考を戻して、先に進んでいる矢矧の後ろを追う。
175 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 21:37:28.30 ID:LhMX+Ft60
矢矧の後を追い十分ほど歩くと、重々しい鉄の扉が二つ、眼前の壁に取り付けられている。

「んっ…。…ごめんなさい。扉、開けてもらえるかしら。横にスライドすれば開くから」

「分かったよ。…ふんっ!…むぐぐぐぐ…」

「…ごめんなさい。提督の力じゃ開けられない扉だったわ」

「だよなぁ…」

どう見ても、人間の力で開くものとは思えない。

提督の考えを肯定するかのように、上部に駆逐艦及び潜水艦の接触を禁ず、と書いてある。

矢矧は荷物を下ろし、扉を押す。扉はゆっくりと横に動いていき、中身が露わになる。

無造作に吊るされたランプの電気を点けると、壁一面に掛けられた装備が。

一つ一つにお札が貼られており、危険な物だと一目で分かるように配慮されている。

「…これでよし…っと」

魚雷にお札を貼り、壁に立て掛ける矢矧。軽く伸びをして、提督の方を向く。

「それで、どうしてここに用があったのかしら?」

「あー…。食料とかの備蓄を確認したいんだ」

「それなら、隣の備蓄庫ね。そっちは誰でも開けられるはずよ」

矢矧の言葉を聞き、もう一つの扉の前に立ち、提督は扉を押す。

先ほどとは打って変わって、あっさりと扉は動く。

備蓄庫の中には、大量の野菜と調味料、精肉が、種類毎に整頓されて置かれていた。

「…凄い量だな…」

「これでも、二週間分くらいしか無いのだけれど」

何百人も食事をするのだから当然ではあるが、これほどの量で二週間しか保たないとなると、実艦の間宮や伊良湖の凄さがよく分かる。

「米俵は…何個あるんだこれ」

奥のドアを開けた先には、部屋を埋め尽くすほどの米俵が安置されていた。

「…二週間は問題なし、と。その間に、補給線をどうにかしないとな」

紙に備蓄庫内の情報を書き留めながら、同期や先輩、後輩のことを思い出す。


直下コンマで人数を決定します。基準は30(一人)、60(二人)、90(三人)です。

↓1〜3で、提督の特徴とかを安価で募集するかどうかのアンケを取ります。協力いただければ幸いでヤンス。
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 21:41:38.63 ID:CTl92OIV0
我々だとお便利なチートキャラ出すからお任せで
進行も滞るし
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 21:58:46.88 ID:tZxEFvDi0
出来合いでいいけど候補から選ばせて欲しい
178 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 22:12:49.90 ID:LhMX+Ft60
では、候補の提督の簡単なキャラを幾つか書いておきます。↓2、3で安価です。番号と場所(サーバー名)をお書きください。

有能度は皆同じくらいです。ご自由にお選びください。自分は風呂と食事を済ませてくるので、23時頃に再開します。

1…控え目オドオド同期提督(女性)
2…武人系同期提督(女性)
3…子犬系後輩提督(女性)
4…明るい同期提督(男性)
5…兄貴系先輩提督(男性)
6…ベテラン系先輩提督(男性)
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 22:15:49.78 ID:xjrsMslo0
6
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 22:18:39.14 ID:xjrsMslo0
ごめんエンター押しすぎた
鯖は舞鶴
安価下
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 22:32:50.00 ID:tZxEFvDi0
3トラック
182 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/20(月) 23:23:11.99 ID:xy8Dbmf80
お待たせしました。再開前に、舞鶴所属の提督の番号を直下にお願いします。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 23:26:44.33 ID:xjrsMslo0
6
184 : ◆k5OCMHkyEc [saga]:2017/11/21(火) 00:19:59.03 ID:0xmzKd3S0
まず頭に浮かんだのは、トラック泊地に配属されている後輩。

勉強中によく顔を出しに来ては、クッキーを差し入れてどこかへと去っていく。

海軍兵学校に在籍していた時は、そんなことが何回もあった。

提督となった後でも度々合同演習を行い、お互いの艦隊の練度を上げてもいた。

『先輩みたいな人ばかりなら、戦争なんか起きないと思うんすよね〜』

無邪気にそう言った彼女の顔が、印象的だった。

今の彼女の階級は少将。

自分と違って優秀な子だ、と提督は心の中で自嘲する。

戦争そのものに疑念を抱いている彼女なら、こちらと共に戦ってくれるかもしれない。

そんな希望を抱くと共に、彼女も巻き込もうとしている自分に、提督は嫌悪する。

次に浮かんだのは、海軍兵学校で何度も指導をしてくれた、舞鶴鎮守府の中将。

彼の教えを受けたからこそ、今まで大規模作戦を突破することが出来たと言っても過言ではない。

提督に様々な兵法を教えた、偉大な人だ。

『普通の勝利を重ねること。それがどれだけ素晴らしいことかを知らない愚か者が多すぎる』

『戦争とは、その普通の勝利の積み重ねによって決まるものだ。決して忘れないようにな』

普通の作戦しか立てることしか出来ない自分に、自信を持たせた言葉。

それは今も、心の中で生きている。

――彼ほどに聡明な方なら、大本営のことを疑って、何かの準備を進めているかもしれない。

だが、本土にある舞鶴に、他の提督に悟られることなく接触すること。

これが一番難しい問題だ。

「少しずつ、堅実に進めていけばいい。そうすればやがて、大きな成果になるんだから」

鎮守府全体の方針も、少しずつ固まっていく。


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