勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」

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1 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/01(金) 08:42:21.38 ID:xQeGs0RqO
切株の上に立てた薪を、斧で勢いよく断ち割った。乳色の朝靄に包まれた森に、澄み切った音が鳴り響く。平和。この二文字に尽きる。
木こりは額に浮かんだ汗を拭いながら、竹筒の甘い水を飲み干した。以前なら、こんな悠長に休むことなどできなかった。常に背後に魔物の殺気を感じつつ、斧を振るったものだ。

木こり「先代の勇者さまさまだな」

数年前、先代の勇者が魔王を倒した。世界中に蔓延る魔物は王の消滅と共に自裁を選び、魔物という種族そのものが消え失せたのである。
アルマリクの王は先代勇者に姉妹都市であるバルフを治めるバルフ候の爵位を与え、街道の整備や税制の見直しに着手したのだった。

木こり「さてと、そろそろ帰るとするべ」

割った薪を専用の一輪車に乗せて運んでいく。昨夜は雨だったらしい。ところどころ、ぬかるんだ道で足を取られた。丸太小屋に着くと薪を下ろし、乾燥したツルでひとまとめにした。

???「……なんです! ……ださい!」

木こり「ん? 何やら小屋の中から揉めている声がする。なんだ、坊主がやらかしたんか」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1512085341
2 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/01(金) 08:43:32.95 ID:xQeGs0RqO
妻と兵卒が激しく口論し合っていた。と言っても、兵卒が一方的にまくし立てているだけなのだが。鈍色の魚鱗鎧を見るに、アルマリクから派遣されてきた下級将校だろう。

木こり「あっしが主人です。将校様、税なら規定通り納めておりますだよ」

下級将校「規定通りだと? ははは、こは異なことをいふものかな。この紙を見るがいい」

下級将校が差し出した紙には、地方にある橋の改築作業を行うため、増税する旨がつらつらと書いてあった。
これまでの税制度に加え、人頭税、森林税から挙げ句の果てには排泄税や食事税、呼吸税などトチ狂った税が上がっている。

木こり「あ、ありえねぇ。嘘だろ……?」

下級将校「アルマリクは魔王との戦で多額の財を失った。歴史的建造物も、交通のための道路や橋も、修理するための人員もな」

下級将校「それゆえ、増税を余儀なくされたのだ。国家事業への投資。どうだ、これ以上に納得できる理由などあるまい」

木こり「ですが……あっしらの食い扶持が無くなってしまいます」

下級将校「やかましい。賄賂も無しに無駄口を叩くでない。そうだ、税を納めぬ不届者として貴様ら夫婦二人を打ちのめしてくれよう」

木こり「やめてくだせぇ! あっしはどうなっても構わねぇ。妻だけは打たないでくだせぇ!」

下級将校「ン〜、そう言われるとますます女を打ち据えたくなってきたぞ。よく見たら中々の美人ではないか。嬲りがいがありそうだ」

木こり「そ、そんなぁ……」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 09:01:35.64 ID:5IdXUmaMo
期待
4 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/01(金) 09:41:30.36 ID:xQeGs0RqO
ーバルフの街ー

妹「……っていう導入はどうかな? この後、木こりのお嫁さんが陵辱されながらも女の喜びに目覚めていくシーンなんだけど」

兄「いいと思うぜ。官能小説の書き出しにしては、ちょいと固すぎる感じもするがな」

妹「増税は本当の話だよ。先代勇者様が魔王を倒してから、急に税を上げ始めたんだ。そのせいで、街のみんなが苦しんでる」

兄「世に問う作品か。あんま過激な描写を入れると検閲に引っかかんぞ」

妹「大丈夫。いざとなったら、魔法学校の魔女先生に頼れば良いんだもんね」

妹は官能小説という名目で、王の政治を批判する風刺小説を書いていた。まだ十に満たない歳ながら、はっきりと国の問題を見据えている。
加えて難しい熟語や官能表現は、全て魔女先生から教えてもらったのだという。妹が尊敬する魔女先生とはどのような人間か、兄は実際に会って話をしてみたくなった。

妹「あ、お兄ちゃん。外に出るなら、魔女先生にこの原稿を届けてくれない?」

兄「はいはい」

妹「ごめん、あと昼ごはんも買ってきて。いつものベーコンレタスサンドイッチ。トッピングはブラックペッパーがいいな」

兄「了解。ちょっと待ってな」

虫喰いだらけの扉を開くと、陽の光が全身を優しく包み込んだ。石畳の街道を行き交う人々。その両側に並び立つ露店。饅頭を蒸す時の炊煙が雲ひとつない青空にたなびいている。
一見すると、長閑な田舎町のように思える。しかし、水面下で事は進んでいる。亡国への秒読みが始まっている。
兄は魔法学校への道を急いだ。
5 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/01(金) 18:17:58.94 ID:xQeGs0RqO
魔法学校では好きな講義を自由に取ることができる。決められた単位を取得すれば、上の学年に進級可能なのだ。それゆえ、飛び級する秀才童子がいたり、反対にいつまでも下級生のままの大人もいる。妹は前者だった。
昼休みの魔法学校は閑散としていた。各自、食事は自宅か外で食べるのである。玄関口で魔法軽減効果を持つスリッパに履き替える。

兄「変な靴が置いてあるな……。ひょっとして、魔女先生の靴か?」

地味目の靴が揃う中、ひとつだけ白く光り輝く靴があった。氷の塊を削って作った、アイスハイヒールだ。触ってみると、指が痺れるほど冷たい。謎の輝きは冷気によるものだった。
ホコリの舞う廊下を歩いてゆく。突き当りが魔女の魔術研究室だ。

兄「失礼します」

ドアを二回ノックしてから、兄は引き戸を開けようとした。しかし、開かない。鍵が掛かっているわけではない。何故だか不思議な力が働き、引き戸を動かなくしているのだ。
いつからいたのか、横合いから少女が顔を突き出してきた。

少女「魔女先生なら留守よ」

兄「留守?」

少女「そう、夕方なら空いてるわ」

兄「裸足で外出したわけじゃないよな」

少女「何言ってるの、当たり前でしょ。先生はアイスハイヒールを特に気に入ってらっしゃるのよ」

兄「そのアイスハイヒール、玄関に置いてあったぞ」

少女「え」

パチン。風船が弾け飛ぶような音と共に、少女の身体は霧となった。引き戸にかかっている謎の魔法も効力が消え去ったようだ。

兄「居留守かよ……。失礼します、魔女先生はいらっしゃいますか!」
6 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/01(金) 20:43:32.23 ID:xQeGs0RqO
白かった。髪も顔も服も、全てが新雪のように白かった。部屋の中央に深緑色のソファがあり、魔女はソファにもたれて眠っていた。
右の本棚も左の本棚も、怪しげな古文書や魔導書がぎっしり詰まっている。仄暗い研究室なだけに、魔女の輝きが異質な物のように思える。

魔女「うう……うーん……」

魔女が手探りでつばの広い帽子を取り、頭にかぶった。魔女帽も白い。

魔女「こんにちは、ボクを起こしたお馬鹿さん。一体何をしに来たのかな?」

頭から爪先まで、電撃のように快感がほとばしった。甘過ぎる声。脳がとろけそうだ。サキュバスが人間に化けているのではないのか。

魔女「ふーん。魔法かけておいたのに、入ってこれたんだ。まぁ、下級魔法だから継続時間も短いし、仕方がないか」

兄「魔女先生、妹に頼まれて原稿をお持ちしました」

魔女「ああ、キミがお兄さんね! よく話を聞いてるよ。新作できたんだね。楽しみ〜」

魔女は手を合わせて嬉しそうにぴょんぴょん跳ね上がった。跳ねるたびに、短いスカートが舞い上がる。なるほど、彼女の授業を希望する学生が多いわけだ。

魔女「あ、そうそう。キミね、先生なんてつけなくていいよ。敬語もよそう。お互いタメ口で……ねっ?」

兄「いいんですか? でも、どうして……」

魔女「なんとなく。この先、キミとはとて〜も深い仲になりそうだと思ってさ」

兄「あなたは不思議な人ですね」

魔女「よく言われる。逆にどこかしら不思議なところがないと、沢山の魔法は扱えないんじゃないかな」

話が頭に入ってこない。ガラスのごとく透き通った白い肌に、つい目が奪われてしまう。
魔女が小首を傾げた。その絶妙な角度! 微笑みも相まって、聖母が降臨したのかと奇妙な錯覚すら覚える。柔らかそうな胸に顔をうずめたくなる。良い香りがするに違いない。

魔女「どうしたの? 妹さんの原稿を届けてくれたんじゃないのかい? ボク、彼女の小説がとっても好きなんだ。早く読ませておくれよ」

兄「すみません、考えごとをしてました」

魔女「だから敬語はいいって」
7 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/02(土) 21:01:19.18 ID:vAzM7c8Y0
魔女に分厚い原稿を手渡した。官能小説の推敲を教師に任せるなど、世界のどこへ行っても耳にしない話だろう。
学校へ行く途中に自分もサッと目を通してみたが、当たり障りのないただの官能小説だった。
現在の国家体制を痛烈に風刺したと本人は息巻いていたが、言われなければ分からない。筆力が足りないのか、逆にそれとなく見せるほどの技巧なのか。

魔女「ふむふむ、なるほどね。やっぱりそうだ。ボクと妹さんの考えは完全に一致してる。怖いくらいに」

兄「考え?」

魔女「うん、教えてあげてもいいけどね……約束してほしいんだ」

魔女「ボクと一緒に、最期まで駆け抜けてくれるって」

兄「どういうことです」

そこで、魔女は深呼吸をした。目を開く。紫色の瞳が決意の光を帯びる。
思わず数歩、後ずさった。後ずさらずにはいられなかった。

魔女「アルマリクの王を、亡き者にする。そして、君主制ではない新たな国家を打ち立てる」

兄「叛乱、じゃないですか」

魔女「叛乱じゃない、革命と呼んでほしいね」

魔女「いいかい? アルマリクは根本から腐っている。賄賂、麻薬密売、人身売買なんてザラ。役人は民から搾り取った血税で宴に明け暮れ、上級貴族に気に入られようと媚びへつらう始末。キミは世の中をよく見たことはあるか? 確かに賑わっている街もあるよ。けれど、それは 一部だけ。田舎へ行けば木の根で飢えを凌ぎ、病の治療もロクに受けられない貧者がいる」

魔女「この国は、とっくに崩壊しているんだよ」

兄「俺にどうしろっていうんですか」

魔女「まだ頭の中が整理できてない感じだね……。よし、分かった。落ち着いたら、またボクの研究室へおいで。キミには考える時間が必要みたいだ」


8 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/02(土) 21:34:09.73 ID:vAzM7c8Y0
国に叛旗を翻す。勝手にやってくれとしか言いようがなかった。
魔女との約束。叛乱の計画に加わってほしい、という意味だったのかもしれない。
自分は争いを好まないし、妹を養っていかねばならない。

兄「そうだ、サンドイッチを買っていかないとな」

父母は魔王との決戦で死んだ。戦いに参加したわけではない。魔王の巻き上げた瓦礫に当たって死んだのだ。
バルフが戦場になっていなければ、勇者と魔王がいなければ、そもそも戦争がなければ両親を失わずに済んだ。
もし叛乱を起こせば、自分と同じように大切な人を失う子供が生まれるだろう。
重税を課す王は許せない、しかし立ち向かえば死者が大勢出る。

兄「17にもなって物事ひとつ自分で決められない、情けない男だよ。俺は」

露店でサンドイッチを二つ買い、家路を急いだ。
何やら騒がしい。野次馬が集まっているようだ。将校の魚鱗鎧も見える。
兵が来ているのか。

兄「何があったんです」

野次馬の一人に声をかけると、いきなり腕を掴まれて円の中央に引き出された。
妹が倒れている。彼女の手足には鉄の枷が嵌められていた。

兄「あんたら、どういう理由で俺の妹に乱暴しやがった!」

下級将校「貴様の妹を奴隷として隣国に売り飛ばす。税の滞納が長引いていたからな」

兄「税の滞納? 俺はちゃんと納めているぞ、何かの間違いだ!」

下級将校「ちゃんと納めている? ははは、嘘をつけ。この紙を見るがいい」

下級将校が差し出した紙には、地方にある砦の改築作業を行うため、増税する旨がつらつらと書いてあった。
これまでの税制度に加え、人頭税、森林税から挙げ句の果てには排泄税や食事税、呼吸税などトチ狂った税が上がっている。

兄「あ、ありえねぇ。嘘だろ……? 聞いてねぇぞ!」

下級将校「アルマリクは魔王との戦で多額の財を失った。歴史的建造物も、交通のための道路や橋も、修理するための人員もな」

下級将校「それゆえ、増税を余儀なくされたのだ。国家事業への投資。どうだ、これ以上に納得できる理由などあるまい」

兄「ふざけんなよ、クソ……!」
9 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/02(土) 22:09:27.48 ID:vAzM7c8Y0
下級将校「さて、お嬢さん。こっちに来てもらおうかな」

妹「いや! お兄ちゃん、助けて……!」

将校は妹を無理やり引き立たせると、鎖を強く引っ張った。

(連れていかれる。妹が連れていかれてしまう。取り戻すべきではないのか)

(斬るな、将校を斬れば大事になる。自分も妹もただではすまない。斬ってはいけない。今は耐えろ)

激情と理性、二つの感情がせめぎ合う。短剣の柄を握りしめたまま、固まっていた。
魔女の言葉が渦巻く。この国は腐っている。王も貴族も軍も全てが腐敗に満ちている。

妹「お兄ちゃん! やめて! ううう、うあああああん!」

下級将校「うるさいガキだ、口を閉じろッ!」ゴスッ

殴られたらしい。
妹の泣き叫ぶ声が、兄を呼ぶ声が聞こえなくなった。
それだけで十分だった。

兄「おい……お前」

下級将校「ん? まだ文句あるのか貴さ」ブシュッ

地を蹴り、将校の右目に短剣を突き立てる。噴き出す赤黒い血。痛みに転げまわる将校。
ついにやってしまった。野次馬にも見られた。もうこれまでのような暮らしは送れないだろう。
だが、不思議と肩の荷が下りたような気がした。胸の内にわだかまっていた不満が、綺麗さっぱり洗い落とされていく。

兄「こっちだ! 魔法学校へ行くぞ!」

妹「お兄ちゃん!」

妹の手を取り、昼下がりの路地裏を駆け出す。
自分が本当に望んでいたこと。

兄(魔女、あんたの話に乗っかるぜ。たった一人の家族を守るために!)
10 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/02(土) 23:04:26.17 ID:vAzM7c8Y0
研究室の扉を蹴破った。普通に開ければ良かったのだが、興奮と焦りのあまり足が出てしまったのだ。
魔女は鏡に向かって、くせ毛を整えている最中だった。

魔女「肚が決まったみたいだね。曇りのない、晴れ渡った空のような目をしている」

兄「……魔女、俺は戦争で両親を失った。だから怖かったんだ。共に暮らしてきた妹まで、戦争で失ってしまうのが」

兄「ついさっき、妹が奴隷として売り飛ばされそうになった。しっかり税を納めていたのに、国はどんどん新たな税を課して締め付けてきやがる」

兄「やっと理解したんだよ。結局、人間は誰しも死ぬまで闘い続けなきゃならない。与えられる平穏など、あるわけない。闘って闘って、勝ち抜いたその先に初めて平穏と呼べるものがある」

兄「国のこととか、新しい政治とか俺には難しい話は分からねぇ。でも、一緒に闘わせてくれ。妹を守るために」

魔女が振り向いた。
口元にはあるかなしかの笑みを浮かべている。

魔女「妹さん」

妹「は、はい!」

魔女「キミは幸せ者だよ。勇敢なお兄さんを持てて」

妹「ありがとうございます! 魔女先生から褒めてもらえた……やったぁ!」

魔女「それはそうと、勇者君」

兄「勇者?」

魔女「そう、キミのことだよ。お兄さん。キミの勇気には感服した。ありがとう。正直、怖気づいて逃げ出すかと思っていた」

魔女「ちょっとこっちに来なさい。鏡で自分の瞳を見てみるんだ。ボクがキミを勇者と呼んだ理由が分かるから」
11 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/03(日) 23:22:06.08 ID:Dt2XuTWJ0
鏡を覗き込んでみると、瞳の中に蒼白く光る五芒星があった。

魔女「それは勇者であることを示すペンタグラム。神様がキミを勇者として認めてくださった証だよ」

勇者「勇者になると、何かいいことがあったりするのか?」

魔女「大義ができる。叛乱に勇者の聖戦という意味を持たせられる。兵が集まりやすくなるだろうね〜」

勇者「それだけかよ。強力な魔法が撃てたり、剣の腕が上がったりすることは?」

魔女「本人次第。ま、そんなものさ。みんな勇者の力に夢を見ているみたいだけど」

魔女は一息つくと、グラスの水を飲み干した。

魔女「さて、まずは土台を安定させないとね」

勇者「土台?」

魔女「農作のための土地、商いのための都市、輸送するための糧道、それから軍の指針となる法の制定」

勇者「色々とやらなければならないことが、山積みなんだな。厳し過ぎんだろ……」

魔女「大丈夫、土地と都市については目処が立ってるんだ。ある程度の資源や賑わいがあって、王都アルマリクからも程よい距離の拠点」

勇者「そんな都合の良い場所などあるのか?」

魔女「あるとも。それはここ……バルフさ」

勇者「バルフったら、まだ先代勇者様が治めている街だろ。どうすんだよ」

魔女「奪う」

勇者「先代勇者様を追放して?」

魔女「追放するだけじゃ甘い。魔王を倒した名声で、すぐに力を盛り返してくるよ。ここは、いっそ殺してしまおう」

魔王を倒し、世界に平和をもたらした先代勇者。その首を斬り落とす。話が飛躍し過ぎていて、勇者は光景を全く想像できなかった。

魔女「ただ、バルフ候は腐っても元勇者。真っ向から斬り込むのは下策だろう」

勇者「暗殺?」

魔女「そう。友好的な関係を築いて、気を緩めたところを背後から刺し殺す方がいいかも」

勇者「でも、バルフ候に会うツテなんてあるのかよ。普通じゃ会わせてもらえないんだろ?」

魔女「そこは任せて。魔女の顔は広いからね」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/07(木) 22:31:08.84 ID:5XxIlBc30
期待
以前、別トリップでやってた?
13 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/11(月) 01:34:13.77 ID:ivHOYJAr0
バルフの郊外、竹林を進んだ先にその屋敷はあった。
敷地の四方を高い柴垣と塀で二重に囲み、玄関口の門構えはアルマリクの立派な城門にも引けを取らない。
屋敷の西側にはモザイク様式の土蔵が立ち並ぶ。
中には米や麦を始め、東西南北全ての地域から入手した食糧が蓄えられているのだ。
もちろん、賄賂として皇帝や高級役人に献上するための貴重品もあった。

大富豪「賄賂は好かんが、生き残るためなら何だって利用するさ」

大富豪は長い黒髪をそよ風になびかせながら、孔雀の羽根で作った扇を振った。
この世に生を受けて32年。金に生き、金に死ぬ。父親の生き方を目標として、がむしゃらに稼いできた。
西の商人から安価で仕入れた品物を、今度は東から来た商人に倍の値段で売りつける。これだけでも多くの財を成すことができた。
しかし、父親の築き上げた財と比べれば、足元にも及ばない。

そこで大富豪の特権を活かして、彼は『国家公認の密輸経路』を確立したのである。
世界各地の豊かな土地を買収し、獲れた作物を定期的に大富豪の蔵へ持ち運ぶ。
これは半ば違法行為のようなものであったが、関所の役人さえ大富豪は買収してしまったので、お咎めなど一切無しだった。

大富豪「今のバルフ候……元勇者が魔王を倒してから、この国は規制が緩くなった。いや、なりすぎていると言うべきか」

大富豪「密輸経路を手軽に生み出せるようになったのはありがたいが、他国の商人の干渉が激しくなっている」

大富豪「このまま何もせず指を咥えて見ているようでは、いずれ貴重な資源が野犬共に食い荒らされてしまうだろうよ」

使用人「ご主人様、魔女様がお目見えです」

大富豪「そうか。どういう用件か知らんが、客間に通せ」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/11(月) 09:04:25.56 ID:Ivh/A9Kfo
これは期待
15 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/12(火) 13:32:00.79 ID:MgU8F78y0
かつて先代勇者と共に世界を駆けた魔女。よく資金援助をしてやったものだが、魔王討伐という役目を終えた今、自分に何の用があるのか。客間に入ると、二人の少年少女を伴った魔女が、椅子に腰掛けていた。

魔女「久しぶりだね、大富豪」

大富豪「数年ぶりか。相変わらず美しいな。人間か妖精か、見ただけでは分からん」

魔女「キミはだいぶ老けた」

大富豪「世界が平和になってから、仕事が増えたのだ。皺の一つや二つ増えるだろうさ」

魔女の隣に座る少年と少女に目をやる。少年の瞳には、蒼白い五芒星が刻まれていた。

大富豪「新しい勇者を見つけたのか」

魔女「うん、意外とあっさりね。あとは伝説の聖剣を持たせて終わり。彼は真の勇者となる」

大富豪「聖剣の在り処は知っているだろう?」

魔女「知ってるよ。先代勇者様が大事に大事に身につけている剣。あれでしょ」

大富豪「盗むのか」

魔女「ううん、殺して奪い取るの」

大富豪「物騒だな。そうまでして新たな勇者を祭り上げて、お前は何をするつもりだ」

大富豪の前に、原稿の束が置かれた。勇者の妹が書いた風刺小説。思わず魔女を見る。

魔女「勇者の妹さんが書いた小説だ。彼女はボクやキミより何倍も世の真理が見えている。なぜ国はあるのか。なぜ民はあるのか」

魔女「これを読み終えた時、きっとキミはボクらに協力せずにはいられなくなるはずさ」
16 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/14(木) 10:16:54.85 ID:F+cKSKnpO
面白い。大富豪が最初に思ったのはそれだった。十歳に満たない少女にしては、やけに洗練された文を使う。涙を誘う場面や心打たれる場面もなくはない。しかし、全編を通して何やら引っかかるものがあった。

大富豪「……なるほどな。核心を突いている。そこは認めよう。ただ少し気になる点がある」

大富豪「なぜ官能小説をベースにしたのだ? 誰に向けて書いた?」

勇者の妹「より多くの人に読んでもらうため……です。『そういう描写』があれば、男達は目の色変えて飛びつくって、魔女先生が」

大富豪「魔女、いらんことを教える能力だけは一級品だな」

魔女「ふふッ、面目な〜い」

大富豪「国の改革を望むのは男だけではない。子供を育てる金のない女、貴族層から執拗ないじめを受ける庶民の子、労働に駆り出される老人。生きる環境も性格も違う民を、ひとつにまとめなければならんのだ」

大富豪「淫らな描写ばかり入れて、民が感動し涙を流すと思ったか。考えが甘い、甘過ぎる。この責任は指導した魔女、お前にあるぞ」

魔女「ええー、厳しいよ大富豪さん。せっかく身を削って書いてくれたのに」

勇者の妹「魔女先生、あたしは大丈夫です。自分の問題点が見えてきた気がします。やっぱりジャンルが偏っていたら読む人も限られてしまいますよね」

大富豪「妹さん、君は賢い。十分に推敲して再び持ってくるなら、写本の手配をしよう」

勇者の妹「写本?」

大富豪「君の小説が中綴じの本となり、世界中の人の手に渡る、ということだ」

魔女「そうすると、写本する場所や人が必要になるよね」

大富豪「問題ない。タシケントの北部に写本工場を建ててある。一部の富豪しか知らない、秘密の場所だ」

魔女「ああ〜、あそこか。大富豪も妙なところに目をつけるね。あそこ岩山と濁った川しかない荒地だよ?」

大富豪「だからこそ、国の目を欺きやすい」

勇者の妹「世界中の……人の手に……」

妹の瞳はキラキラと輝いていた。





17 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/14(木) 16:14:07.14 ID:hMtWC+MdO
勇者「大富豪さん、綺麗な人だったなぁ……。なんつーか、唐国の美女って感じ?」

魔女「アレは30を超えたオッサンだよ。まだ女装癖が治ってなかったみたいだけど」

勇者「え」

バルフの目抜き通りに面した食堂。勇者と魔女は向かい合わせに座っていた。二人きりで昼食を摂りに来たのだ。妹は大富豪の屋敷に暫く留まることとなった。
二階の窓からは通りを行き交う人々がよく見える。新たな税が課せられているにもかかわらず、不思議と町は活気に満ち溢れていた。

魔女「……大丈夫かい?」

勇者「大丈夫って何が?」

魔女「昼食を終えたらいよいよバルフ候の屋敷に乗り込むわけだけど、心は決まった?」

勇者「あ、ああ」

魔女「一度決めたら、もう後戻りはできないよ。沢山の血が流れる。想像を絶する程のね。キミの大切な人も、キミ自身も死ぬかもしれない。それでも、国に抗う覚悟はあるかい?」

勇者「戦争は嫌だ。でもこのまま我慢の日々を続けていても、意味はない。闘うか、死ぬか。選べと言われたら、闘うしかないだろ」

魔女「そうか、分かった。キミがそうなら、ボクも覚悟を決めるよ」

料理が運ばれてきた。白い麺が盛ってある大皿と椀がふたつ。椀には唐辛子をすり潰して作ったと思しき赤いスープが、旨そうな匂いを漂わせていた。箸でかき混ぜると、サイコロ大に切った野菜が浮かんでくる。

魔女「さぁ食べよう食べよう! 腹が減っては戦はできぬ! 勇者君、多めに取っていいからね」

勇者「魔女、聞きたいことがある」

魔女「ん? どうした?」

勇者「重税を課せられているのに、なぜバルフの町はこうも賑やかなんだ? 荒れる気配がないのは何故だ?」

魔女「どっかから援助を受けてるんじゃない? 税を免除する代わりに、店の売上20%をバルフ候に収めるとか」

勇者「マジか……」

魔女「ただの憶測だけどね。浪費しか脳のない元勇者に思いつくとは考えられないし。ホントだったら、余程の知恵者が側についていると見える」

勇者「攻略が難しくなったわけだ……」

魔女「何言ってんの、まだまだこれから。スープ冷めちゃうよ? 早く食べなよ〜」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/14(木) 17:01:16.60 ID:dGUKIfIDO

期待
19 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/15(金) 14:46:47.78 ID:sMyet7Na0
町から少し離れた小高い丘の上に、黄金色の宮殿が煌々と輝いていた。先代勇者の屋敷だ。

勇者「ついに先代勇者と対面する日が来るんだな……」

魔王を倒した人物。一生目にすることはないと思っていた、お伽噺の中の英雄。

魔女「ちょっとストップ」

勇者「いきなりなんだよ」

魔女「人を待っている」

勇者「人って誰だ? 二人で潜入するんじゃないのか?」

魔女「大富豪が潜入のスペシャリストを派遣したみたいでさ。何だかんだ手伝ってくれるんだよね、彼」

世間話に花を咲かせていると、十字路の角から茶髪の少女が手を振って駆けてきた。

間諜「魔女さん、勇者さん! 門の前で待ち合わせでしたよね。遅れてすみません」

魔女「お〜、間諜君! 安心して、ボク達もさっき来たばかりだから」

潜入のスペシャリスト。今回は薬師に化けて先代勇者と接触するらしい。
魔女と勇者が外部から付け入る隙を探すのと並行して、間諜が内部から先代勇者の体制を腐らせていくのだ。
先代勇者の傍に仕えているであろう『知恵者』を勇者側へと引き抜く。それが間諜に任せられた任務である。
相当難しい任務だが、大富豪が珍しく大枚をはたいて雇った間諜だ。雑な仕事はこなさないだろう。

勇者「その両耳に着けている銀色の装置は何なの?」

間諜「あ、えと、ヘッドフォンです。なんでも『壁に耳あり障子に目あり』を体現する魔道具らしくて」

勇者「へぇ〜。薬師という割には、ちょっとチャラい恰好な気もするけどな」

間諜「派手さであれば、魔女さんの方が圧倒的に勝ってますよ。全身真っ白で氷の靴なんて、予想の斜め上行ってますもの」

勇者「ま、そりゃそうだよな」
20 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/16(土) 17:26:38.03 ID:J5eINESa0
門をくぐり、花畑に挟まれた小道を歩く。
先代勇者の屋敷には二つの門があるのだ。
一つは花畑を鑑賞する小道へ繋がる門、もう一つは屋敷の中へ繋がる門。
最初の門は誰でも無料でくぐることができるが、二つ目は身分を証明するものが無ければ入れない。

魔女「この人は怪しくないですよーっていう通行証だよね。大富豪に一筆書いてもらったんだ」

魔女が丸い平板を取り出した。ミミズが張った跡ような文字がつらつらと書かれている。
勇者は字が読めなかった。寝る間も惜しんで稼いだ金を、妹の学費に注ぎ込んでいたからだ。
それでもいい、と勇者は思っていた。自分よりも妹の方が、学校を上手く活用できる。

間諜「勇者さん勇者さん、瞳の中に五芒星があるって本当ですか?」

勇者「あるよ、ほら」

あかんべえをしてみせると、間諜は顔を赤らめて飛び跳ねた。

間諜「きゃあッ、すごーい! ホントにあるんですねー! すごいです、勇者さん! 尊敬しますー!」

勇者「そんな珍しがるものかな?」

魔女「勇者は神から英雄の証を賜った人間からね。そりゃみんな珍しがるよ。ふふふ」

勇者「まだ、勇者になった実感がいまいち湧かないな」

魔女「うんうん、何かが足りないよね。勇者が佩くはずの聖剣。早く取り戻さなくちゃね。そのためにも頑張ってもらうよ、間諜君」

間諜「はい! 頑張りまーす!」

勇者(思ったより元気な娘だな……。薬師に化けるとか言ってるが、すぐに正体がバレてしまうんじゃないか?)






21 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/16(土) 17:56:44.30 ID:J5eINESa0
門番に通行証を見せ、第二の門をくぐった。くぐった瞬間、金色の光が全身を包み込む。眩しい。
壁が、床が、天井が、純金でできている。安っぽい金箔などではなく、一切混じり気のない純金。
一体どこの鉱山からここまで大量の金を掘り出したのか。掘り出すのにいくら費やされたのか。どれほどの民を酷使したのか。
勇者は周囲の純金が為政者の手垢で汚れた醜い物のように思えた。

魔女「キミの気持ちは分かる。でも、ここは笑顔を保たなくちゃダメ」

勇者「魔女、先代勇者様は随分と悪趣味なんだな。俺とは永遠に馬が合わなさそうだ」

そっと、魔女が勇者の手を握りしめた。

魔女「表面上は、馬を合わせなきゃいけないの。水でも飲んで一旦落ち着くかい?」

勇者「……ありがとう、魔女。少し驚いただけだ。純金なんて生まれて初めて目にしたもんでね」

間諜「ちょっとくらい削って持ち帰っても、パッと見じゃ分からなさそうですよね」

魔女「あははは、キミはどうしてそんな名案を思いつくのかな」

カツン、と硬い音が屋敷内に響いた。身をこわばらせる三人。誰かが来た。

先代勇者「久々の来客というんで、誰かと緊張していたら魔女、君だったのか」

でっぷりと太った男に、魔女は微笑みで返した。

魔女「やぁ、魔王を倒した勇者……いや、元勇者かな。今はバルフを治める町長様。出世したもんだよ」

22 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/16(土) 18:41:13.37 ID:J5eINESa0
応接間に通された。
大きなソファが二つ、水晶製のテーブルを挟んで置いてあった。ソファには既に小柄な男が座っていた。
手入れのなっていない金髪、目の下にくっきり浮かんだ隈、そして積み上げられた書類の山。
もしやこの少年が先代勇者の傍に仕えている『知恵者』なのか。

先代勇者「紹介しよう。これは私の下で軍師を務めている者だ。軍師と言っているが、条例の制定から治水工事の指揮監督までこなす、宰相のような存在だ。軍師には色々と教えてもらった。今の私があるのは、軍師のおかげだ」

勇者「14、5歳くらいですよね。その歳で、先代勇者殿を支えてきたとは。優秀な人材を持つあなたが羨ましい」

突然、軍師が顔を真っ赤にして机を叩いた。

軍師「客人、私は外見のことでつべこべ言われるのが最も嫌なのだ。こう見えて、私は35ですぞ。中年に片足を踏み入れた年齢だ。くれぐれも童子と間違えないで頂きたい」

先代勇者「嫌なら髭をたくわえればよいものを。すみませんな、融通の利かない堅物でして。おい、もう下がってよいぞ」

軍師「では、失礼致します……つゥッ……」

軍師は書物を抱えてそそくさと応接間を立ち去った。
間諜がこっそり耳打ちしてくる。

間諜「勇者さん。あの人、部屋を出て行く時に頭を押さえてましたよ。なんか病気持ちなんですかねー」

勇者「単なる寝不足じゃないの。あの調子だと、何日も徹夜していそうだし。愚王を支える裏方の苦しみってやつだ」
23 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/16(土) 19:49:21.84 ID:J5eINESa0
先代勇者「魔王討伐の命を受けて旅立ってから、何年が経っただろうか」

魔女「七年、くらいかな」

先代勇者「かつての仲間は息災か?」

魔女「それが全然情報が入ってこないんだよね。みんな簡単に死ぬようなタマじゃないから、元気にやってると思うんだけどなぁ」

七年前。
魔王討伐の命を受けた四人がアルマリクを出発した。
先代勇者、戦士、僧侶、魔女。短所をそれぞれ補い合っている、最高のパーティーだと言われていた。

先代勇者「そんでもって、巨悪は倒れた」

魔女「最後は戦士の一撃で決まったよね。それでキミが地団太踏んで悔しがって。僧侶なんかその場で座禅組みだしたりなんかして」

先代勇者「みんなで旅をしていたあの時が、一番辛かった。王から与えられたのは木の枝とわずかな銅貨。野宿は当たり前」

魔女「盗賊に荷を盗まれて、激流に流されて、灼熱の太陽にじりじり焦がされて、散々な目に遭った」

先代勇者「でも、一番楽しかった時だ。人生でね」

先代勇者の瞳がかすかに翳った。

先代勇者「過去に浸るのは後にして、今日はどんな用で来たんだ?」

魔女「良い薬師を見つけたから、紹介しにきたんだ。バルフ候なんて言ったら、激務に追われて大変だろうと思ってさ」

間諜「よろしくお願いします」

勇者は思わず間諜の顔を見た。
先程の元気な少女はどこへやら、一人の薬師が隣に座っていたのだ。
間諜は完全に、薬師に化けていた。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/16(土) 20:39:30.30 ID:Mw30Zv4SO
勇者、腐ってしまったがそれが間違いだと思ってるな
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 09:19:39.25 ID:gd53D+3DO
26 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/18(月) 20:49:44.78 ID:x6tdeWhGO
先代勇者「魔女、対魔族戦が終わってからバルフの町で魔法学校の教授になったんだってな? 順調か? 君の適当な性格だと、何だか心配だ」

再び先代勇者が話題を変えた。

魔女「そこら辺は流しでこなしてるよ。キミの言う通り、適当にね〜」

先代勇者「ハッハ、いかにも魔女らしい」

苦笑する先代勇者。彼が笑うと、ぽっこり膨らんだ腹がブルブル揺れる。

魔女「魔法学校繋がりで思い出したんだけど、これ読んでみてよ。ボクの教え子が執筆した官能小説」

先代勇者「官能小説? ……少年、君が書いたのかね? 見かけによらずだなぁ……」

勇者「違います。書いたのは俺の妹です。恥ずかしながら、俺は字が読めなくて。妹の小説も、ちょっとしか内容が分からないんです」

先代勇者「ふむ、面白そうだ。官能という点が気になるが。もう誰かに見せたのかね?」

魔女「大富豪にちょろっと読んでもらった。官能表現が余計だとかいちゃもんつけてたよ」

先代勇者「はは。脳内書庫が雅文学だらけのあの男に、良さが分かるわけないだろう」

魔女がソファから立ち上がった。

魔女「じゃあ、ボク達はこれで。感想は次に時でいいから」

先代勇者「泊まって行かないのか?」

魔女「泊まりたいのは山々だけど、ボクらも他にやることがある。忙しいのはキミだけじゃないからね〜」

先代勇者「そうか、それは残念だ」

魔女「薬師を置いて行くから、よろしく頼んだよ。じゃあね〜」
27 : ◆EpvVHyg9JE [sage]:2017/12/18(月) 20:51:47.03 ID:x6tdeWhGO
次に来た時だ
凡ミス多くてスマソ
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 23:01:56.24 ID:LdBLk2xDo
あ、そう。一生懸命頑張ってね
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/18(月) 23:12:36.73 ID:yGAD9twdo
期待してる
30 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/19(火) 00:22:08.25 ID:2ZsS7dc10
軍師「かつての仲間が訪れた程度のことで、私を呼びつけないで頂きたいものだ」

黄金の廊下を歩く、童子のような男が一人。軍師である。
頭の左側がズキズキと痛んでいる。内側から金槌で頭蓋骨を叩かれているような激しい痛みだ。
足取りがおぼつかない。今朝食べた人参の炒め物が、胃液に乗って喉元までせり上がってくる。不快極まりない。

軍師「うップ――――!」

軍師は厠に駆け込んで吐いた。膝をつき、便器に顔を寄せ、これでもかというほど吐いた。
吐き気は治まっても、頭の痛みは引かなかった。
長い袖で口元を拭い、再び書斎へ向かい歩き出す。ゆっくり休んでいる暇などない。
来月、王都アルマリクの国王がバルフへ視察に来る。
それまでに、どれだけ民の生活水準を上げることができるか。

軍師「私がやらねばならんのだ。私が」

魔族との戦争には勝った。恐ろしい魔王も封印した。
しかし、これは侵略戦争ではなく防衛戦争であった。
勇敢に闘った将校や民兵への恩賞となる土地がない。戦利品もない。
大富豪に協力してもらいその場は凌いだが、次また戦争があれば、バルフは崩壊する。

軍師「なぜバルフ候は贅沢三昧の日々を過ごしている!」

軍師「体裁ばかり気にする愚かな男。だが、表面上は魔王を倒した英雄だ。従わぬわけにもいくまい」

有能な文官をもう何十人も罷免した。自分も爪に火を灯すような生活を送っている。
だが、先代勇者が豪遊に耽っているせいで、軍師の努力も水の泡。
バルフの財政は火の車なのだった。
31 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/19(火) 17:02:44.65 ID:1cHfv/HrO
書斎の扉を開けると、煌びやかな世界とは一転、漆黒の闇が広がる。窓がない書斎では、火を灯さねば昼でも暗い。
ランタンを二つも灯すと、大分明るくなった。

軍師「やっと書斎に着いた……。さぁ、仕事だ。怠けてはいられんぞ。忙しい忙しい」

書類のひとつを手に取った。
アルマリクから新たに送られてきた300人の駐屯兵の資料である。名前、年齢、出自を始め性格や得意とする武器などが詳細に書かれている。この資料を元に、軍師は兵を本隊か別働隊か輸送隊か振り分けるのだ。

軍師「全員貴族の子息か……不作だな。無駄飯喰らいが300人も増えただけだ。まったく、陛下も何を考えておられる」

先代勇者「おいッ! 軍師、おるな!?」

息を弾ませて贅肉の塊が転がり込んできた。
くしゃくしゃになった原稿を握りしめている。

軍師「いかがなされた」

先代勇者は軍師の机に原稿を叩きつけた。積み上げられた本が、ドサドサと床に落ちる。

先代勇者「さっき魔女が私に渡していった小説なんだが、ちょっと目を通してみてくれ」

軍師「卿はこの小説をもう読み終えたのですか?」

先代勇者「いいや、まだだ。まず最初に君の感想が聞きたい。知恵者の意見は、参考になるからのう」

人の感想をそのまま使い回す魂胆だな。軍師はそう確信すると共に、肩を落とした。どこまで堕ちれば気が済むのだろう。

軍師(自分の意見を持たない主君に、誰が仕える。私は間違っているのではないのか? 道を踏み外しているのではないのか?)

腐っても元勇者。それだけが必死に働く軍師の唯一の支えだった。その支柱にも、そろそろ亀裂が入り始めている。

先代勇者「夕食の時間までに読んでおけ。私は妓館へ行く。留守番、任せたぞ」

先代勇者「それから、君の書斎はいつ来ても暗いな。純金を分けてやるから、壁と床を早く新調しなさい。よいな?」

軍師の返答も聞かず、先代勇者は足を踏み鳴らしながら書斎を去っていった。

軍師「え、えぇ……。真っ昼間から妓館……」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/19(火) 18:46:57.78 ID:tMimQiVio
おもしろい
33 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/20(水) 17:38:35.35 ID:zPAwmRea0
軍師は原稿を手に取り、流し読みした。
行き過ぎた徴税、軍と貴族の癒着、各地で横行している麻薬の密売。
なるほどと思わせる内容だが、それだけに稚拙な官能表現が目立ってしまう。

軍師「国の現状を痛烈に風刺したつもりなのだろうが、心に響くものはないな」

コンコン、と軽く扉をノックする音が聞こえた。

軍師「今度は誰だ」

入ってきたのは、茶色い髪を後ろに束ねた少女だった。
魔女の付き添いで訪れた少女だ。
太ももが見えるほど短いスカートに、軍師は眉をひそめた。
派手な服装の輩は大抵、ロクな女じゃない。何かしらの災厄を持ち込んでくる。

軍師(私の直感が外れたことはない。面倒事は御免こうむりたいものよ)

間諜「執務中に失礼します。今日から薬舗で働くことになりました、薬師と申します」

軍師「薬師? お前は薬を扱うのか」

間諜「主に漢方などを。東の大唐国に知り合いがいまして、調合について教えてもらったのです」

軍師「ひとつ、素朴な疑問があるのだが。お前が頭につけている魔道具、たしか……」

間諜「ヘッドフォンです」

軍師「そう、それだ。薬師に聴力を増大させる魔道具は必要なのか? 別にいらないだろう」
34 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/20(水) 17:50:06.06 ID:zPAwmRea0
間諜「感染症で耳と聴力を失いまして。魔道具がなければ、まったく無音の世界なのです」

間諜がヘッドフォンを取り、耳のあった場所を指差した。
真っ赤に爛れている。軍師は顔を背け、呻くように言った。

軍師「すまない、悪いことを聞いたようだったな。許してくれ」

ズキリ。
再び、内側から金槌を打ち付けられたような衝撃。

軍師「ウッ……」

間諜「頭が痛むのですか?」

軍師「右は何ともないが、左側が脈打つように痛む。見ての通り、仕事すらままならんくらいだ」

間諜「他に症状はございますか?」

軍師「吐き気がする……それに眩暈も。薬師、私の病は薬で治るものなのだろうな?」

間諜「ええ。時間はかかりますけど漢方で治りますよ。明日、お持ちしますね」

軍師「薬師。私はお前に二度、失礼を働いてしまった」

間諜「失礼?」

軍師「一つは魔道具について余計な詮索をしたこと。もう一つは最初、心の中でお前を軽蔑してしまったことだ」

間諜「いえいえ、この恰好じゃ驚かれるのも無理ありません。こちらこそ、軍師様に失礼を……申し訳ございませんでした」

間諜が退室した後、軍師はベッドに仰向けに転がった。
あれは本物の薬師なのか、それとも自分を暗殺しようとするアサシンなのか。
考えれば考えるほど、頭の痛みが激しくなってくる。
目を閉じ、大きく息を吐いた。

意識が暗闇に溶けるまで、そう時はかからなかった。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/20(水) 23:24:30.83 ID:nqT/0BwA0
あ、そう。一生懸命頑張ってね
まだ続けんの?
36 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/21(木) 00:44:33.07 ID:2xe7qRnY0
翌朝、薬師が白い粒の入った袋を持ってきた。

間諜「南方に呉茱萸(ごしゅゆ)という植物がありまして。それを乾燥させて磨り潰した薬です」

薬師の話によれば、側頭部の痛みは血流の乱れによるものだという。
過度のストレス、寝不足、栄養失調。その他諸々の悪条件が積み重なり血液の循環が悪くなったらしい。
ここ最近、すっかり睡眠時間がなかった。穀物の生産量や鉱山の記録を眺めていたら、いつの間に陽が高くなっていたことなど何度もある。

間諜「呉茱萸には鎮痛作用と共に、血液の循環を良くする効果もあるのです。どうぞ」

薬師は白い粒を湯の中に溶かし、差し出した。
杯を口に当て、ぐっと湯を飲み干す。
暖かい。身体が芯からポカポカしてくる。

軍師「少し気分が楽になった。これを毎日飲めばいいのだろう?」

間諜「朝、昼、晩、食後に一回づつ。一日に三回服用してくだされば、半月で治ります」

軍師「ありがたい。来月、アルマリクの王が町の視察に来るのだ。それまでに間に合いそうで良かった」

間諜「では、私はこれで失礼致します」

軍師「待ってくれ!」

背を向けた薬師に、軍師は思わず声をかけていた。

軍師「もし暇があれば、私の書斎に寄ってほしい」

話し相手が欲しかった。苦労を分かち合う仲間が欲しかった。
誰かに溜め込んだ憂いを吐き出したかった。
薬師はクスッと微笑むと

薬師「政治のことはまるで分かりませんが、私でよければ……」
37 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/21(木) 00:46:18.25 ID:2xe7qRnY0
最後の行、間諜が薬師になってしまった
凡ミススマソ
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/21(木) 02:25:14.75 ID:6cGrQTODO

まあ酷い誤変換で暫く悩まないとわからない様なモノとは違うから気にする必要無いんじゃないか?
39 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/21(木) 15:18:32.09 ID:a7EgKgA3O
その日から、軍師は様々なことを間諜に相談するようになった。彼女を敵のスパイだとは微塵も疑わず、軍事や政策を説明している。遠くまで見渡せるが、足元は照らせない。
軍師を灯台に喩えるなら、まさにそれだった。

軍師「民の意思を政策に反映させるためには、どうすればいい?」

間諜「大通りに投書箱を置く、というのはいかがでしょう」

軍師「それはもうやった。意見を書く人間がいないのだ。皆、生活に余裕がないのだと思う。異常な税が、資金援助の恩恵を打ち消してしまっている。廃屋も増え始めた」

間諜「では、その廃屋を取り壊して田畑にするのはどうですか? 資料を見てみたんですけど、廃屋だけで町の30%を占めているそうですよね」

軍師「まだ綺麗にすれば、人が住める家屋もある。全てを田畑に変えるのは早計だと思うが、やってみる価値はありそうだ」

数日後。

魔女「こんちわ〜」

魔女が少年を伴って屋敷に訪れた。先代勇者は軍師の感想をそのまま喋っていたが、細かいことを聞かれると、的外れな発言をしていた。

魔女「あ、とっつぁん坊や!」

軍師「誰がとっつぁん坊やだ!」

先代勇者「軍師、客人に失礼だろう。控えなさい」

魔女「薬師はどう? 仕事してる?」

先代勇者「軍師が偏頭痛に悩まされてるそうで、随分と世話になっているよ」

魔女「へ〜、あの子意外とやるねぇ」

主人と魔女が話し合っている間、軍師の視線は魔女の隣に座る少年に注がれていた。前から疑問に思っていたが、この少年は何者なのだ。魔女が二回も連れてきている。きっとただ者ではあるまい。

勇者「……」

少年と目が合う。五芒星。はっきり見えた。

軍師「なッ……!?」

五芒星と言えば、勇者であることを表す証だ。
ありえない。ありえるはずがない。

軍師(まさか、新しい勇者が誕生したとでもいうのか……?)

再び顔を上げた時、少年の瞳にあった五芒星は消えていた。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/22(金) 18:59:56.82 ID:1vBeVgct0
あ、そう。一生懸命頑張ってね
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/12/23(土) 10:59:18.79 ID:cwzCqxKgO
妙なファンが付いたな
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/12/23(土) 16:31:36.22 ID:UsUOyB0t0
面白い!次も期待して待ってます
乙!
43 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/26(火) 01:08:29.58 ID:8fDRK/Ah0
魔女との会談の後、先代勇者は久しぶりに狩りへ行こうと言い出した。
伴うのは軍師と薬師の二人だけという。すぐに三頭の馬が用意され、軍師は葦毛の馬に跨った。
馬は苦手だった。乗るのも兵の補助がなければ満足にできない。
少しでも駆けようものなら、馬首にしがみついて手綱をロクに取れない始末である。

先代勇者「裏の雑木林に丸々と肥えた鹿がいるのだ。射止めた者に金の杯を与えよう!」

金など見飽きている。
うんざりしながら、軍師は先代勇者の後について裏手から外に出た。
バルフの北には広い牧草地と雑木林が広がっている。狩猟にはもってこいの環境だった。

間諜「ハイヤッ! ヤアッ!」

薬師が一番前に躍り出た。予想以上に馬術が上手い。どこかで習っていたのか。
爽やかな風を切り、三頭の馬が緑の草原を駆ける。雑木林が見えた。木々の間に、鹿の斑点模様が揺れている。

先代勇者「軍師、弓を射てみよ!」

軍師「はい!」

鞍に提げた弓を取り、矢を引き絞った。指が赤くなっている。
痛い。千切れてしまいそうだ。
ようやく放ったヘロヘロ矢、見当違いの方向へ飛んでいき音もなく地面に突き刺さった。

先代勇者「ははは、やはり軍師に弓は難しかったかな? よし、次は私の番だ。薬師は最後に射よ」
44 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/29(金) 13:46:08.46 ID:sOpPte4i0
次に先代勇者が矢を放った。しかし、結果は軍師と同じだった。
馬を並べた軍師に苦笑で答える。

先代勇者「太ると昔のように弓を使えんな。こう見えて、現役時代は敵なしの弓使いだったのだが」

間諜「行きます」

それだけ言うと、薬師は馬腹を蹴って駆け出した。
背の矢筒から素早く矢を取り出す。弓の弦にかける。流れるような無駄のない動きだ。
薬師の放った矢は美しい弧を描き、鹿の左脚に吸い込まれていった。

先代勇者「おお、左脚に刺さったぞ! 惜しい!」

二の矢を番えようとした先代勇者を、薬師は片手で制した。

間諜「鏃にトリカブトの毒を塗っておきました。脳天に刺さらずとも、毒が回って死に至ります」

軍師「口から血泡が……。薬師、本当に死んでいるぞ」

先代勇者「薬だけでなく毒も扱えるのだな。恐れ入った」

間諜「トリカブトは毒にもなりますし、薬にもなります。使い方次第で、見せる顔が変わるのです。面白いとは思いませんか?」

先代勇者「君はまさしく、トリカブトのような女だ」

枯れ葉の絨毯に倒れた鹿の死体を見て、軍師は何故か不吉な予感に駆られた。
脚に刺さっただけで対象を殺す強力な毒。すでにバルフにも、毒は回り始めているのではないか。
気づいた時には、遅いのだ。
45 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/29(金) 19:42:53.60 ID:sOpPte4i0
狩りから数日後。自室にて。
まだ軍師の胸には、漠然とした不安が広がっていた。
薬師は本当に信頼できるのか。政治や軍事にとどまらず、個人的な相談にも乗ってくれた、心優しい薬師。

何より、片頭痛を治した恩人である。

しかし、薬師にしては異様なほど様々なことに精通している。
館の中で自分と真剣に政治談議を繰り広げられるのは、薬師だけだろう。
そこが怪しい。

軍師「私は――――」

何十人もの仕事仲間に別れを告げてきた。皆、良き友だった。
先代勇者の浪費と理不尽な課税からバルフの町を守るためだ。
もし、薬師がスパイだとしたら。
その仮面を剥いで、主君の前に突き出すことはできるのか。

軍師「……何を考えている。あの薬師がスパイなど、あるわけがない。そもそも、敵である魔族は滅びた。東にある大唐国も同盟を結んでいる。誰が間諜を送り込むのだ」

間諜「こんにちは、薬師です。入ってもよろしいですか?」コンコン

軍師「入れ」
46 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2017/12/29(金) 19:52:28.78 ID:sOpPte4i0
薬師が入ってきた。今日は茶色の髪を横に流している。
彼女は会うたびに、髪型を変えていた。
髪型の話から、自然と政治や地理の話に盛り上がっていくのだ。

間諜「軍師さん、顔色が悪いですよ。過度な労働はかえって効率が悪くなると、以前申し上げたはずですけど……」

軍師「違う。仕事量は減らした。別件で頭を悩ませている」

間諜「別件……と言いますと?」

軍師「先代勇者殿が夜な夜な、どこかへ出かけているようなのだよ」

間諜「どこかへ?」

軍師「うむ。宝物庫の方へ歩いていく姿を、昨夜見かけた。しきりに辺りを見渡して、注意を払っているようであったが」

間諜「御主人が何をなさっているか、知りたいのですか?」

軍師「町の将来に関わることだ。知りたいと思わぬ方がおかしい」

間諜「でしたら、私の補聴器をお使い下さい。壁の向こう側の物音まで聞き分けられる魔道具です。きっとお役に立つと思います」

薬師はヘッドフォンを外すと、卓の上に置いた。
怪訝な表情で声をかける軍師。薬師は彼の唇に人差し指を当て、パチリとウィンクしてみせた。
まるで『私は大丈夫です』とでも言うかのように。
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 04:37:06.66 ID:6LrzzisDO
乙&あけおめ
48 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/01(月) 19:32:14.99 ID:EN7XwCmTO
真夜中、仕事を終えた軍師は卓上のヘッドフォンと向かい合っていた。
静寂。たまにコツコツと使用人の靴音が聞こえるが、それ以外は完全な無音状態である。
扉の隙間をすり抜けて一匹の蛾が迷い込んできた。ランタンの明かりにつられたようだ。しかし、音はない。静寂。

間諜『その魔道具、実は聴力の調整が難しいんです。聞いてはいけないあんなことやそんなことが、四方八方からダダ漏れ……。くれぐれも、扱いには気をつけてくださいね」

軍師「薬師はああ言っていたが、そこまで酷いものだろうか。試しに、レベルを最大に合わせて聴いてみるとするか」

軍師は補聴レベルを最大の5にセットし、両耳に装着した。

『あいうえお〜かきくけこ〜さしすせそ〜』
『おい、やめろ! 俺がお前に何をしたっていうんだ! いきなりビンタは酷いだろう!』
『何をしたかですって? 自分の耳に聞いてごらんなさいよ、この浮気者!』
『眠いよぉ……』
『間諜、上手くやってるかな。なぁ魔女、あいつに任せて大丈夫なんだよな?』
『お頭、こんな町中に堂々と来ていいんですかい? バレやしませんかね』
『鉄門で待つ子分のためだ。黙って従え。見ろ、あれが先代勇者の館だぜ』
『酔っ払ってナニが悪ィんだよォ! あッ、やめ……くそおおおおおおおおおッ!!!』
『ちゃんと勉強して試験に合格しないと、立派な役人にはなれませんよ。ま、たまーに、身分が低いせいで苦渋を舐めることはありますけれどね。坊ちゃんには関係ないでしょ』
『急がねば、取引の時刻に遅れてしまう』

軍師「なんだ……これはッ……!」

一気に世界が開けた。狭くて暗い書斎から、急に町の大広場につまみ出されたような感覚。広場には大勢の人間がいて、それぞれが大きな声で唾を飛ばし合っている。
何より。

軍師「蛾の羽音がうるさい! 頭が割れそうだ。これはたまらん!」

安眠妨害には丁度いい。軍師はヘッドフォンを外すと、疲れ切った顔でレベルを2まで下げた。これなら、聞こえる範囲も絞られる。
49 : 【吉】 [sage]:2018/01/01(月) 20:28:36.60 ID:GoAPu4IHo
正月更新おつ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 21:24:08.31 ID:Sqb6T3Joo
51 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/02(火) 15:58:21.94 ID:dpYftc7o0
書斎を出た。
昼間は煌々と明るい黄金の廊下も、先代勇者の像も、陽が落ちれば忽ち鉱物に成り果てる。
色を失った世界を、軍師は一人歩いてゆく。
ぼんやりと光る明かりが見えたので、軍師は像の裏に隠れた。

軍師(誰だ……?)

廊下を歩いている内に、ロビーへ出ていたようだった。
玄関口から訪れた客人を、最初に迎える場所だ。

先代勇者『急げ急げ。遅れるわけにはゆかんのだ』

軍師(やはり先代勇者殿……どこへ向かっている?)

先代勇者が持つランタンの動きを見守る。
昨晩と同じく、彼は広間の中央にある階段を足早に上っていった。
突きあたりで左に曲がる。館の西側に向かっているのだ。

軍師(目的地は宝物庫か。自分の所有物を愛でるつもりなら、人の目を気にする必要もないだろうに)

ガチャガチャと宝物庫の鍵をいじる音が聞こえる。
急に足音が増えた。高いヒールの音だ。宝物庫に何かを運び込んでいるのかもしれない。

闇商人『誰にも尾けられなかったですか?』

先代勇者『ああ。それに宝物庫は完全な防音仕様だ。間違っても我らの会話が外に漏れることはない』

軍師(壁を通して聞こえているがな……)

52 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/02(火) 15:59:03.36 ID:dpYftc7o0
闇商人『二箱分でよろしいですね。ヒヒッ』

先代勇者『十分だ。金貨5000枚だったな? ここにある。持っていくがいい』

軍師は目を見開いた。
金貨5000枚と言えば、庶民が必死に50年働き続けて、ようやく手にできるか否かの金額だ。
税をかけてもバルフの財政が豊かにならないのは、先代勇者が裏で闇商人と取引をしているためだったのだ。

軍師(何の取引だ? 話せ、一体何の取引をしている!)グッ

闇商人『それでは、私はこれで……。存分にお楽しみくだされ。ヒヒッ』

先代勇者『いつもありがとう。お前には助かっている』

闇商人『こちらこそ助かっております。最近、ガンジャも取り締まりが厳しくなってきましてね。自由に商いができなくなっているのですよ』

先代勇者『私は最高のお客様、というわけだな』

闇商人『そういうことです。ヒヒッ』

軍師(ガンジャだと……?)
53 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/02(火) 20:54:11.50 ID:MhAvF7XnO
間諜「ガンジャ? あー、麻薬ですね。それ」

翌朝、事情を聞いた間諜は即答した。麻の花弁を乾燥させて作った麻薬を、ガンジャと呼ぶのだという。魔王を倒した先代勇者が、大麻の違法取引に手を染めている。

軍師「知りたくなかった。バルフ候は今までずっと、私を裏切っていたのだな」

間諜「軍師さん……」

軍師「私だけではない。バルフの町そのものを、陛下の懇意までも裏切っていた!」

拳で卓を思い切り殴りつけた。拭けども拭けども、目から涙が溢れ出す。自分が敬っていた先代勇者は、ちょっと世間知らずでも、町民想いの優しい英雄だった。
数年で、人はこうも変わるものなのか。

軍師「こんな体たらくでは、辞めていった仲間に申し訳が立たん……」

間諜「仕える主君を誤ったのです。本当に、気の毒だと思います」

軍師「そうだ。私は主君を選ぶ能力が無かった。よりによって、大麻に手を出す太ったババを引いてしまうとはな……」

間諜「あなたには道が二つ残されています。来週、アルマリク王のバルフ視察会がありますよね。そこで麻薬取引の件を暴露するか」

間諜「このまま目を瞑り、偽りの主君と共に滅びゆくか。どちらかです」

軍師「暴露するのは勇気がいる。場合によっては、私も捕縛されるやもしれん」

間諜「では、目を瞑るのですね? 遅かれ早かれ、バルフの主君は代替わりします。必ず。その時、あなたは先代勇者と一緒に罪人として首を斬られてしまうのですよ」

間諜「運命の分岐点です。先代勇者と共に死ぬか、私達と共に新たな世界を作るか」

軍師「薬師……お前、何者だ?」
54 : ◆EpvVHyg9JE [sage]:2018/01/02(火) 21:18:54.24 ID:MhAvF7XnO
地の文で薬師が間諜になっている部分がありますが、凡ミスなので気にしないで頂けると助かります
55 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/03(水) 17:46:46.83 ID:0y33kF5p0
―1週間後―

黄金色の魚鱗鎧を身に着けた軍隊が、堂々と町を練り歩く。
アルマリクの視察団が到着したのだ。先頭に立ち案内するのは、先代勇者と軍師である。
心なしか、先代勇者の顔は蒼ざめているように見えた。

隊列の中央には、白馬に乗った赤衣の男がいる。あれがアルマリクの王だろう。
身体こそ栗鼠のごとく小さいが、瞳は猛禽のごとく鋭い。
それゆえ、体躯に似合わぬ異様な覇気を放っていた。

王の後ろを進むのは側近だ。
アルマリクの宰相として、国王と共同統治を行っている。
白い羽根つきターバンと細長い顎髭が目立つが、その特徴が霞んでしまうほど、背が高かった。
ゆうに二メートルは超えている。
人間離れした背の高さは、王と異なる不気味な威圧感を周囲に与えていた。

好奇心旺盛なバルフの民も覇気に圧されたのか、建物の陰に隠れて見物しているようだ。

魔女「視察団、やっと来たね。王と側近の凸凹コンビ。厳しい峠越えご苦労さん。ご褒美に、面白いショーを見せてあげるよ」

食堂の二階である。勇者、魔女、間諜の三人は視察団の列を見下ろしていた。
卓上の皿に、串焼き肉が六本。剣を模した鉄串は、持ち手が螺旋状にねじれている。
勇者はねじれた持ち手を掴むと、一番上の鶏肉にかぶりついた。

勇者「あっつ! 水無い? 絶対口の中やけどするわ、これ」

隣に座る間諜が、すかさず冷水の注がれたコップを差し出す。

間諜「私の、まだ飲んでないんで使ってください!」

勇者「おー、ありがとう。よしよし」ナデナデ

間諜「勇者さんの手、あったかいです……むふふふふ」

魔女「緊張感の欠片もないね、ボク達。これから町を奪うのに」

勇者「今さら緊張しても無意味だからな。淡々と仕事をこなすだけさ」
56 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/03(水) 21:27:15.69 ID:0y33kF5p0
魔女「で、調略は上手くいったのかい?」

間諜「バッチリでーす! ぐんひひゃんはほふほっひははへふ! ほーはひへんふぁっふぁへふはは!」モグモク

勇者「肉を口に入れたまま喋るなよ。何言ってるんだ?」

魔女「軍師さんはもうこっち側。引き込むのが大変だった、かな?」

間諜「ビンゴ!」

一通り町を回った後、大広場にて先代勇者が王に対し感謝の意を述べる。その時が狙い目だ。
アルマリクの王に、集まった観衆に、麻薬の取引も含めて先代勇者が行った数々の悪行を暴露してやるのだ。
タイミングが重要だった。

勇者(かつての仲間を討つ。魔女にとっては辛い戦いになる)

勇者「魔女」

魔女「ん、どした?」

勇者「……作戦、成功させような」

魔女「既に水面下で戦争は始まってる。一度走り出したら、もう立ち止まれない。どんな手段を使っても、ボクはこの戦に勝ってみせる」

勇者「ああ」

間諜「私もです!」

魔女「じゃ、そろそろ行こう」

三人は同時に席を立った。魔女が左手を出す。間諜がその上に手を重ねた。最後に、勇者がそっと手を重ねる。

勇者「よーし、いっちょ叛乱でもするか!」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 00:49:08.46 ID:GAmWAbrDO
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/05(金) 14:40:13.46 ID:dxz5/zl/O
いい加減他人のSSにIDも変えずにレスするのやめてもらっていいですか?
あなたの言い分とかどうでもいいので向こうのSSに出張って来るのはやめてください
59 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/05(金) 15:45:31.84 ID:BvFy2ZQy0
手筈は整った。ガンジャはとっくに宝物庫から運び出している。
昨夜、薬師の紹介で大富豪の屋敷へ案内された。
薬師が本当は手練れの間諜であることも、耳が聞こえないのが嘘であることも、そこで知った。
それから、魔女が国家転覆のため密かに動き回っていることも。
驚いたものの、先代勇者に報告する気はなかった。
麻薬取引の現場を目撃してから、先代勇者に尽くそうという感情が綺麗さっぱり消えていたのだ。

軍師(バルフの民だけではない。国中の民が、上層部の贅沢三昧を支えるのに苦しみ喘いでいる。馬鹿げてはいないか。そう大富豪は言った。まったくだ。馬鹿げている。だが……)

軍師はちらと国王を一瞥した。軍師の視線に気づいた国王が、刺すような眼光で睨み返してくる。

国王(図に乗るでないぞ、小童。貴様ごとき鼠輩の考えることなど、余は見抜いておるのだ)

そう、釘を刺されたような気がした。逆らえば待つのは死。
この国王を相手に、叛旗を翻すのは無謀すぎる。
軍師は前を向き、手綱を握りしめた。
どれだけ強く握りしめても、震えは止まらなかった。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/05(金) 18:48:19.95 ID:jXG+ugNA0
61 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/08(月) 22:22:43.76 ID:EImb6bLy0
時計回りに町を巡り、視察団は大広場に辿り着いた。
演説台の周りは英雄の言葉を聞きにきた民衆と護衛のための守兵でぎっしり埋まっていた。
魔女と勇者も聴衆の中に交じっている。
白い魔女帽が目印だ。

国王「王都アルマリクから険しい山を越え、遥々この地まで足を運んできた」

挨拶が始まった。最初にアルマリクの王、側近。次に先代勇者、最期に軍師という順番である。
軍師は告発の機会が与えられたことを感謝した。

先代勇者「こんにちは。私は魔王を倒し、陛下より爵位を賜ってから精進に精進を重ね……」

先代勇者の挨拶が終わった。

軍師「……最初に、神に懺悔をする時間を頂きたい」

先代勇者が身じろぎするのが、視界の端に映った。無難な挨拶をするつもりだったのだ。懺悔と来ては驚くのも無理もない。

軍師「陛下、側近殿、ならびに広場に集まって下さった町民の皆様方。私がこれから語るのは、いずれも真実です。紛れもない事実」

ハーレムを作り、妾一人当たりに数千枚の金貨を与えていたこと。
異常なまでの課税を繰り返していたこと。
麻薬取引をしていたこと。
民の畑を取り上げ、自分専用の劇場を建設していたこと。
軍師は先代勇者の罪を列挙していった。全て打ち明けるには、夕方までかかるだろう。
それほどの過ちを、先代勇者は犯したのだ。

先代勇者「神聖な場であるぞ、軍師!」

先代勇者が立ち上がった。顔に引きつった笑みを貼り付け、用意された玉座に座る国王へ目を遣る。

先代勇者「証拠もなしに妄言を吐くでない。陛下、この者は感極まっておかしくなっているのです。どうか、お気になさらぬよう」

側近「感極まって主人の罪を告発する臣下がどこにいる。軍師殿、麻薬取引の証拠を提示せよ」

軍師「承知しました。おい、あれを持ってこい」

軍師は部下に命じて、ガンジャの入った箱を二つ運ばせた。
62 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/08(月) 23:54:07.82 ID:EImb6bLy0
先代勇者「なッ……!」

箱に刻まれた黒い羊の紋章を目にした途端、先代勇者は力が抜けたようにへたり込み、両手で頭を抱えた。

先代勇者「こんな大事な時に……何故だ、軍師! やめてくれ……やめてくれ……! もうやめてくれ……!」 

側近「ガンジャですな。大麻の花を乾燥させたものです」

さらにダメ押しで、間諜から預かったヘッドフォンを取り出す。

闇商人『誰にも尾けられなかったですか?』

先代勇者『ああ。それに宝物庫は完全な防音仕様だ。間違っても我らの会話が外に漏れることはない』

闇商人『二箱分でよろしいですね。ヒヒッ』

先代勇者『十分だ。金貨5000枚だったな? ここにある。持っていくがいい』

軍師「この太った男は、民から巻き上げた税を自らの贅沢に使うのみならず、国で禁じられている麻薬取引にまで回していたのです」

聴衆がざわめきだす。バルフの民にとって、先代勇者は英雄だった。
親は正義の象徴として子に語り、詩人は光の象徴として歌い、貴族は頼れる友人として持ち上げたものだ。

「……裏切り者が! 金返せ!」
「重労働で夫が死んだ。あんたに殺されたようなもんだよ」
「町が賑わってるからって、呑気していたのか! 豚野郎!」
「テメェの仕打ち、墓場まで持っていってやるよ」

先代勇者「ぐうッ……どうして、こんなことに……」

国王「とんだ一日になったのう、バルフ候。最後の最後にやらかしてくれたな。一応、弁明を聞いておこうか」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 02:41:10.74 ID:Nlp8TbvDO
64 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/11(木) 13:39:48.53 ID:JVufzibb0
肥った男はゆらりと立ち上がると、国王と側近を見据え、胸に秘めた思いを吐き出すように捲し立てた。

先代勇者「ここまでされては、弁明の余地もありません。私は、確かに闇商人と取引を行いました。軍師が述べたことも認めます」

側近「なぜ、このようなことをした? 民の姿が見えなかったのか?」

傍で聞いていた軍師は、思わず苦笑しそうになった。
好き勝手に振る舞う貴族を野放しにしている国王も、民を苦しめる点では先代勇者と大して変わらないではないか。
茶番過ぎる。

先代勇者「……恐ろしかったのです。魔王との最終決戦。戦場となったバルフでは、多くの民が死にました。落ちてきた瓦礫に潰され、炎に焼き尽くされ、魔物に襲われて」

先代勇者「私が殺したようなものです。たとえそれが戦禍によるものだとしても」

先代勇者「寝床につくと、死んでいった民の悲鳴、怨恨、呪詛が耳に響いてくるのです。勇者だと信じていたのに、なぜ救ってくれなかったのか。なぜ助けてくれなかったのか、と」

先代勇者「何ヶ月も放蕩に耽りました。遊ぶことで私は亡霊の責め苦から逃げていたのでしょう。幸いにも、陛下から頂いた金銀財宝は掃いて捨てるほどありましたから」

側近「そして最終的には違法薬物にまで手を出した……と」

国王が首を横に振り、かすかな声でつぶやく。

国王「魔王を倒した勇者が、逃げたか。非常に残念だ。かつての英雄を殺さねばならんとはな」

下された判決は、極刑。
両手両足に縄を縛り付け、馬で四方向に牽引する八つ裂きの刑だ。バラバラになった四肢は首と共に台に載せられ、三日間バルフの大広場に晒される。
死してなお、許されることのない罪。
意外にも、先代勇者の顔は穏やかだった。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 18:27:15.25 ID:4eFaevuDO

牛でなく馬とは優しいなww
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/11(木) 20:32:17.23 ID:GYg+nuUA0

漫画の知識であれだがイノサンで馬が引き裂いてた気がする
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/12(金) 02:37:07.44 ID:19itHCXDO
>>66
力 牛>馬
スピード 牛<馬
馬に比べて牛引きの刑は長い苦痛
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/13(土) 14:16:25.62 ID:MNwveyJco
馬だと一気に行くが牛だと速度が遅く力がさらに強いのでゆっくりと強力にひっぱられる
あとはわかるね
69 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/13(土) 23:09:52.15 ID:/JP3Jt5i0
先代勇者「……魔女。今度こそ、本当のさよならだ」

魔女「意外だね。もう少し悪あがきすると思っていたよ」

先代勇者「どこか心の片隅で自分に嫌気が差していたんだ。私は責任を取る。自らの命を以て、罪を償う。いや、死さえも逃げ道のひとつに過ぎないのかもしれない。最初から最後まで、駄目な男だった」

魔女は首を横に振った。

魔女「覚えてる? 海辺の町で、靴を片方無くした女の子に出会った時のこと。名前も知らないその子のために、キミは泥と埃まみれになってずっと靴を探し回ってた。新しい靴を買ってあげれば済む話なのに。戦士と僧侶も驚いていたよ」

勇者「まだレベルが一桁台の頃だったな。覚えてくれていたとは、驚いたぞ」

魔女「あんなに真っ直ぐで、誠実で、優しかったキミを誰が忘れたりするものか。今でもその本質は変わっていないと思ってる」

魔女「ただ、色々なものを背負い過ぎた。背負った物の重さに耐えきれず、自分を見失ってしまった」

先代勇者「私は、死ぬことで初めて自分を取り戻すのだな」

先代勇者「一足先に、酒場で皆を待つことにしよう。また四人揃ったら……あの時みたいに一緒に旅してくれるかな」

魔女「謝罪行脚、だね」

先代勇者「遅れたら置いてくぞ」

両手に枷を嵌めた先代勇者は、五人の兵に囲まれて大広場から離れていった。
詮議の後、刑を執行されるのだろう。
救国の英雄と称えられ、ありとあらゆる栄華を手にした男の、哀れな最期であった。
70 : ◆EpvVHyg9JE [sage]:2018/01/13(土) 23:13:18.90 ID:/JP3Jt5i0
六行目ミス
×勇者
○先代勇者
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/14(日) 22:26:02.90 ID:2Vjd0rrDO
72 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/15(月) 22:14:22.92 ID:fuyrxnpG0
国王「女神の加護を受けていようと、所詮は大工の息子。生まれついての卑しさだけは、抑えることができなかったようだな」

側近「陛下、上流貴族の中から後任を決めねばなりませぬ」

魔女「その必要はない!」

水を打ったように場が静まり返った。
涙を見せる者も、怒りを露わにする者も、興味本位で覗きに来た野次馬も、皆の視線が一斉に魔女の方へ注がれた。
先代勇者の仲間だったこの女が、次に何を話すのか。国王の挨拶よりも気になって仕方がないようだ。

魔女「さ、檀上に上がろう。こっからはキミの出番だよ」

勇者は魔女に手を引かれて、壇上に上がった。
玉座の前まで進む。
勇者と魔女が、玉座に座る王を見下ろすという絵になった。
近衛兵が二人に穂先を向ける。いつ突き殺されても、おかしくない。

勇者「今日から俺が、バルフの町を治める」

魔女「……とまぁ、そういうことになったんで。よろしく」

側近「ぶッ……無礼者! 陛下を見下ろすだけでも大罪だというのに、加えて自分が陛下と対等であるような物言い……万死に値する! 捕えよ! 先代勇者共々、引き裂いてしまえ!」

国王「落ち着け、側近。魔女も何か、思う所があるのだろう。しかし妙であるな。余が爵位を授けるのは、縁のあった者のみ。その者は、ただの町人ではないか」

魔女「ただの町人? 分かってないなぁ、彼の目をよく見てごらん」

国王「瞳の中に……五芒星……?」

魔女「そう、五芒星は勇者の証。新しい勇者が生まれたんだよ。数年ぶりにね。魔族は滅びた。当面の危機は去った。なのに、どうして邪を退ける勇者が生まれたんだろうね?」

魔女は暗に国王の政治を批判しているのだ。
神は悪政を断つために、英雄を遣わした。
魔女の意図を読み取ったのは、国王と側近だけだった。
殺気立つ側近とは対照的に、国王は静かに魔女を見つめていた。
73 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/15(月) 22:18:16.25 ID:fuyrxnpG0
国王「勇者の役割は、邪を退けるだけでない。国を繁栄させる、豊穣の使徒でもある。勇者よ、余は貴様が生まれたことに感謝しよう」

側近「陛下、あの者を勇者と認めてよろしいのですか!」

国王「瞳の五芒星を見せられた以上、認めぬわけにはいくまい。先代勇者が腰に佩いていた聖剣をここに持ってこい」

側近「あなた、この状況を愉しんでいますね? 新生勇者誕生という新たな出来事に心躍らせていますね? 厳しそうな顔をしていても、闘気で分かるんですよ、闘気で」

国王「おや、貴様には理解できんかな。さらなる刺激を、さらなる好敵手を求める武人の気質が」

側近「理解できませんな! ホレ、持ってきましたよ。これでいいんでしょ、これで。さっさと鞘から抜けばいい」

半ば押し付けるように、聖剣を渡された。
銀色の鞘に、山羊の紋章がひとつ。
頭上ではためく旗にも、同じ紋章があった。

国王「聖剣に相応しい男となれ」

勇者「ああ、きっとその時……」

国王「天がどちらに味方するか、分かる」

再び大広場が静謐に満たされた。誰もが固唾を飲み、勇者を見守っている。

勇者「……よし」

勇者は剣の柄を握りしめ、ゆっくりと引き抜いた。
溢れる光。高鳴る鼓動。刀身がまばゆい光に包まれている。
剣を頭上に掲げると、その輝きはさらに強さを増した。
天地をあまねく照らす伝説の聖剣。

「す、すげぇ……」

「伝説の聖剣、初めて見た……やっぱりあの子、本物の勇者様なんだ……」

「死ぬ前にもう一度聖剣を目にできて、わしも悔いがないわい」

誰かが拍手をした。

一つ、また一つと拍手の音が増えていく。

「「「勇者万歳! 勇者万歳!」」」

地が激しく震えた。
町全体がひとつの生き物となって、叫び、歌い、踊り、そして産声をあげた。
バルフという町は生まれ変わったのだ。

側近「ここまで歓声が沸くとは……。先代の統治はどれだけ腐っていたのでしょう。想像がつきませんな」

国王「民は勇者なら誰でも良いのじゃろうな。自分達の境遇が良くなるなら、鼻たれ小僧でも崇め奉る。その代わり、前と変わらなければ袋叩き。どう乗り切るか、見ものだな」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/15(月) 23:14:56.69 ID:T2KiNX2DO
75 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/16(火) 18:16:51.19 ID:HmufLlVDO
undefined
76 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/16(火) 18:19:26.48 ID:HmufLlVDO
歓声が落ち着いたところで、国王は重々しく口を開いた。

国王「勇者、貴様を二代目バルフ候に任ずる。ただし」

側近「なりませぬ! 勇者とは言え、どこの馬の骨とも知れぬ町人に爵位を与えては、上流貴族や高級役人の反感を買いますぞ。それに」

国王「貴様は黙っておれ。ただし、少しでも怪しい動きを見せれば即刻、爵位を剥奪し国外へ永久追放する。庶民が身分の差を越えて自治権を得るのだ。これくらいの条件をつけねば、王都の民が口を出してくるのでな。嫌だと言っても飲んでもらうぞ」

勇者「ああ、いいとも」

元より、爵位など捨てる気だった。
欲しかったのは、拠点となる都市だけだ。
勇者の意図は国王も見抜いていたらしい。
見抜いた上で戦を愉しむために、あえて勇者を泳がせているのだ。本気を出せば、叛乱軍の鎮圧など蟻を踏みつぶすのと同じだった。

国王「翌朝、発つ。各自、出立の準備をしておけ。これにて閉会」

側近「陛下、あなたの判断が正しかったのかどうか。私は心配でなりません。どうか、道を踏み違えませぬようお願い致しますぞ」
77 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/16(火) 18:21:05.19 ID:HmufLlVDO
国王が立ち去ると、観衆も波が引くように広場から離れていった。だが、熱気はまだ残っている。
壇上から降りた勇者に、間諜が真っ先に飛びついた。

間諜「カッコよかったです、勇者さん! 思わず見惚れちゃいましたぁ! いや〜、聖剣ってホントすごいですね〜!」

勇者「町の長になったはいいけど、国王と変な約束しちまった」

魔女「都市を奪ってしまえばこちらのものさ。勇者軍には大富豪という強力なパトロンがいる。キミだって立派な広告塔だ。どんどん人が集まるよ。いずれ、王国軍にも太刀打ちできるようになるはずさ」

軍師「甘いな」

棘を含んだ声。壇上で、軍師が腕を組んでいた。

軍師「バルフには足りない要素が多過ぎる。人が増えれば土地が無くなる。廃屋を改築すれば何とかなるが、それでも収容できるのは僅かだ。大富豪の蔵だって、無限に金が湧いて出るわけではない。物流の動きを把握する文官も足りん。兵も足りん、武器も足りん、物を運ぶ輜重車も船も足りん!」

間諜「今まで何やってきたんですかー? 軍師さんの脳も足りん」

軍師「なにッ、この小娘が。薬師だと騙していたこと、忘れたとは言わせないぞ」

間諜「えぇー……まだその話持ちだすなんてドン引きなんですけど……。あれはただの騙しじゃなくて、敵の懐に潜り込むための戦略的変装ですッ! あと軍師さんも見た目子供でしょー」

勇者「やめろ、間諜。軍師の言う通り国家と闘うには、今のバルフはあまりに小さい。ゼロからの出発だ。だから、お前達の力を貸してほしい。みんなで協力し合って、足りないところを埋めていこう」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 00:39:53.48 ID:9UNqp9H3o
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/17(水) 01:03:29.49 ID:C7IXfn8DO
80 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/19(金) 20:31:40.46 ID:J6JjSiGRO
夜。勇者は先代勇者の館から出ると、両手を上に突き出し、気持ちよさそうに背伸びした。そよそよと初夏の風が吹く。既に、あちこちの草むらで虫達の演奏会が始まっているようだ。

勇者「いつ聞いても飽きないな。虫の声は」

夕食の後、書斎で軍師と話し込んだ。戸籍の確認、資力調査、医療保険制度の刷新。先代勇者の治世と差別化を図るために、勇者も軍師も躍起になって様々な案を出し合った。

大富豪と間諜は陽が沈む前にバルフ郊外の屋敷へと戻った。大富豪が間諜に、ぜひ頼みたい仕事があるのだという。恐らく、タシケント北部の写生工場についてだろう。おおよその見当はついていた。

剣を鞘走らせる。風を切る音が鳴り響く。しかし、迷いはまだ断ち切れない。目の前に靄のごとく漠然と漂っている。魔女も軍師も大富豪も間諜も妹も、みな何かしらの才能がある。自分は才能などない。妹の学費を捻出するため実直に働いてきた平凡な少年だ。

国王『その者は、ただの町人ではないか』

国王の何気ない一言が、胸の奥に刺さった。なぜ神は自分を選んだのだ。主役に相応しい傑物なら、他にいくらでもいる。

例えば魔女。彼女の影響力は絶大だ。地方都市の教師で終わる人間ではない。魔女と共に闘った戦士や僧侶もいいかもしれない。彼らはなぜ勇者になれなかった? なぜ自分が? 

勇者の妹「おにーちゃん♪」

勇者「ああ……お前か」

勇者の妹「久しぶり。元気してた?」

勇者「まぁな。大役に抜擢されたこと以外は、変わりない。お前はどうだ、小説の方は書けたのか」

勇者の妹「うん、大富豪さんに見せてOKもらったよ。あとはタシケントでひたすら印刷するだけだって」

勇者「良かったな。立派な作家だ」

勇者の妹「……うん」

勇者「……」

勇者の妹「ちょっと散歩しない?」
81 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/20(土) 12:45:05.97 ID:/CUsXBBs0
二人は手を繋いで暗い夜道を歩いた。妹の手は温かった。
いや、自分の手が冷えていたのかもしれない。身体も、心も、冷えている。

勇者の妹「綺麗……」

丘に広がる花畑は月光の中で、神秘的な煌きを放っていた。
赤いドレスをまとったチューリップ。
儚げに揺れるカスミソウ。
青い調べを奏でるカンパネラ。
その中に佇む妹は、まるで花の精のようだった。

妹が仰向けに寝転がった。勇者も隣に横たわる。
しばらく二人は無言で、夜空の星々を見上げた。

勇者の妹「星の光にも、色々あるんだね」

勇者「星の光?」

勇者の妹「パッと強く輝いてすぐに消えちゃう星と、ぼんやりした光でも中々消えない星」

勇者「人生に近いものがあるな」

勇者の妹「そうだね。魔女さんは強く輝いて消えちゃう星。軍師さんと大富豪さんはぼんやりした星……かなぁ」

勇者「俺はどっちになるんだ?」

勇者の妹「どっちでもない。お兄ちゃんは太陽だよ。ずっと長く中心でみんなを照らし続ける太陽。きっとなれるよ。お兄ちゃんには人を惹きつける、不思議な魅力があるんだもの」

勇者「不思議な魅力、か。いまいち実感が湧かないけど、ありがとう。元気づけてくれたんだな」

勇者の妹「すごく怖い顔してたから……。もう大丈夫?」

勇者「ああ。お前に励まされて、少し気が楽になった」

勇者の妹「じゃ、あとでサンドイッチ買って」

勇者「バカ、何時だと思ってるんだ。また明日な」

勇者の妹「うん。おやすみ、私のお兄ちゃん」

妹の気配が消えた後も、勇者は花畑で星を眺めていた。
82 : ◆EpvVHyg9JE [saga]:2018/01/20(土) 13:11:25.22 ID:/CUsXBBs0
〜翌朝〜

先代勇者の首と手足が盆に乗って、卓の上へ運ばれた。
蠅が飛び交っている。どこに卵を産み付けようか、迷っているかのようだ。
腐りかけた肉の臭いにつられて、野犬も集まってきた。
その野犬を、そばに立つ兵が棒で追い払う。
あくまで晒し物、見せ物であるため、喰い荒らされたりしては困るのだ。

女「飲食店の前で死体を晒すかね、普通。あたしには勇者様の感性が分かりかねますよ。ねぇ、お頭」

女が吐き捨てるように言った。骨付き肉を掴む右手の指には、宝石の指輪がずらりとはまっている。
尖がった鼻や日に焼けた褐色の肌からして、出身地は南西の方であるのだろう。

男「よく見ておけ。人は死んだら魔族に化けるだとか、魂が抜けて天に昇るだとか、いい加減なことを言う輩がいる。そんなのは全部嘘ッぱちだ。何も無くなる。俺らが今喰ってるメシと同じ、ただの肉になるんだよ」

お頭と呼ばれた大柄な男は、ビールを豪快に飲み干した。
女と違って派手な衣装ではないものの、鍛え抜かれた肉体やもじゃもじゃの髭が人目を引く。

女「じゃあ、どっか別の世界に転生ってのも」

男「あるわけねぇだろ。ただの妄想だ」

女「なんだか、あの世に持っていけないんじゃ、いくら金をせしめても無駄な気がしますねぇ」

男「阿呆、俺らが金を奪うのは下の世代を生かすためだろうが。誰が自分自身のためと言った。さっさと喰え。鉄門に戻るぞ」

女「あーあ、収穫ナシなんて野郎共に顔が立ちやせんよ」

男「そういう日もある。いつも満たされた暮らしを送っていると、人は次第に慣れる。すると、少し生活水準が落ちただけで不平不満をぬかすようになる。面倒事はテメェも嫌だよな」

女「帰りに野ウサギ見つけたら、獲ってってもいいですかい?」

男「好きにしろ」
83 : ◆EpvVHyg9JE [sage]:2018/01/20(土) 13:13:46.45 ID:/CUsXBBs0
ここでプロローグは終了となります

勇者が魔女と一緒に旗揚げして、金持ちと頭脳を味方につけて、叛乱の拠点を奪い取った

という流れです
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 13:16:03.87 ID:BG+MdVIA0
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/20(土) 23:00:35.57 ID:k9S0HVK5o
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