ギャルゲーMasque:Rade 美穂√

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109 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/29(月) 17:53:29.82 ID:hw0GLBXPO




李衣菜「あー、遊んだね!」

加蓮「疲れたー……帰るのダルくない?」

まゆ「はぁ……折角Pさんと一緒に来たのに、悩殺アピールチャンスが全然ありませんでした……」

美穂「まゆちゃん」

まゆ「冗談ですよぉ」

智絵里「うぅ……身体が重いです……」

一日泳ぎ尽くして、体力が底を尽きそうな夏の夕方。

流石にみんな疲れたのか、そろそろ帰るムードになっていた。

一応十九時までは開いてるらしいが、既に人はかなりまばらだ。

P「人が少なくて良かったな。割と好き勝手泳げたし」

李衣菜「もう十七時まわったし、そろそろ帰る?」

まゆ「十七時でまだ少ししか空が赤くないのが、夏って感じがしますよねぇ」

加蓮「ねえ李衣菜、この後夕飯行かない?」

李衣菜「おっけー、取り敢えず着替えて出よっか」

智絵里「あっ、ご一緒して良いですか?」

李衣菜「もちろん。お昼食べる時間無かったからお腹ペコペコだよもう」

まゆ「まゆもご一緒しますよぉ。寮の門限があるので、途中で抜ける事になるかもしれませんが」
110 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/29(月) 17:53:57.25 ID:hw0GLBXPO


美穂「……あ、あれ?わたし、貴重品ロッカーの鍵無くしちゃった……?」

P「ん、まじで?係りの人に落ちてなかったか聞きに行くか」

美穂「そ、その前にPくん!い、一緒に探してくれませんか?」

P「構わないぞ」

まゆ「…………それでは、まゆ達は先に行ってますから。合流出来そうなら来てくださいね?」

そう言って、美穂以外がシャワールームに向かって行った。

P「んじゃ、探すか。それで見つからなかったら係りの人に何とかして貰おう」

美穂「……ごめんなさい。ええと……共有シャワールームの前で、待ってて貰えませんか?」

P「おっけー」

美穂に言われた通り、共有シャワールームに向かう。

更衣室にも一応シャワールームはあるが、こっちは子連れ等の複数人での使用を前提としている為そこそこ広い。

ロッカーの鍵の紛失って、確か罰金あったよな……

そんな事を考えていると、美穂が此方へ向かって来ていた。

美穂「お、お待たせしましたっ!」

そう言って顔を真っ赤にする美穂は、さっきとは違い白いビキニを身に付けていた。

P「……だ、大胆な水着だな……」

今日来た面子の誰よりも、一番大胆な水着な気がした。

真っ白なビキニって、良い。

美穂「その……本当は、鍵を失くしちゃったなんて嘘で……Pくんに、この水着姿を見て欲しくって……」

P「……凄く、良いと思う。可愛いぞ」

そんないじらしさも含めて、美穂が可愛かった。

美穂「恥ずかしくって、一応持ってきただけだったんですけど……やっぱり、見て欲しかったから……」

夕日に照らされて、より一層真っ赤になる美穂。

そんな表情が堪らなく愛おしい。

美穂「もう少しだけ……二人で、遊んで行きませんか?」

P「……おうっ!」

もう殆ど人の残っていないプールで。

俺たちは、思う存分夏を満喫した。

111 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:02:53.71 ID:r0nzCQQSO

それから大体一ヶ月と少し。

美穂の勉強に付き合い、期末テストを乗り越え。

模試を受けたり、文化祭の出し物を決めたり。

美穂とデートして、幸せな時間とか肌とか唇とか肌とかを重ねたりとかして。

忙しくも楽しい日常は、あっという間に流れーー

ちひろ「ーーなので、皆さん浮かれ過ぎない様に。タバコやお酒もぜっったい断って下さいね?」

七月下旬、最後のHR。

明日から楽しい毎日が待っている生徒達は、誰一人千川先生の話を聞いていなかった。

まぁ、小学生の頃から何度も聞かされた様な注意事項だし。

ちひろ「それでは、二学期に元気な皆さんと会える事を願って……はい、さようなら」

みんな「さようならー」

千川先生が教室から出て行く。 一学期が、完全に終わる。

……さあ、夏休みだ。

P「っしゃおらぁ!遊び行くぞ!!」

加蓮「夏!ポテト!海!ポテト!」

李衣菜「この後みんなでカラオケ行かない?」

美穂「良いですねっ!早速行きましょう!」

まゆ「まゆの美声を聞かせてあげますよぉ!」

みんなテンションマックスだ。

そりゃそうか、夏休みだし。

智絵里「えっと、この後用事があって……終わってから参加してもいいですか?」

李衣菜「ん?もちろん!着いたら部屋の番号ラインで送るから」

P「今は……十二時半か。それじゃみんな、十三時半くらいに駅前の時計のとこに集合で」

美穂「……はいっ!」

李衣菜「了解っ!」

加蓮「おっけー」

まゆ「かしこまりますよぉ」

誰一人配られた宿題の山に目を向けないのが実に高校生らしくて良い。

夏休み初日はこうでないと。

鞄に置き勉していた教科書を全部突っ込み、重たい荷物を引きずって家へと走る。

P「ただいまー姉さん」

文香「お帰りなさい、P君。随分と機嫌が……あぁ、夏休みでしたか」

大きく溜息を吐く文香姉さん。

そうか、大学生はまだ夏休み先か。

P「みんなとカラオケ行ってくるから」

文香「夜はどうしますか?」

P「多分二十時くらいには帰って来ると思う」

文香「では、私もそれくらいを目処に戻って来ます。それまでは大学生の図書室でレポートを書いていますので」

P「あいさ」

荷物を部屋に放り投げて、さっさと私服に着替える。

昼飯は……面倒だし抜いていいだろう。 そんなにお腹空いてないし。

そんな事より早く遊びに行きたかった。
112 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:03:24.49 ID:r0nzCQQSO


P「いってきまーす」

文香「羽目を外し過ぎないように、ですよ」

炎天下の中、暑さなんて気にせず駅へと走る。

吹き抜ける風が心地よい。

いや、暑い、めっちゃ暑い。

五分と経たず汗だっくだくになってくる。

なのに何故だか走るのを止める気にはならない。

替えのシャツ持って来てよかった。

P「っふぅー……早く着き過ぎた」

スマホの時計を確認すれば、まだ十三時前だった。

こっから三十分以上も外で立ってるのはしんどいし、かといって喫茶店で時間を潰すには短過ぎるな……

まゆ「あ、Pさん。早い到着ですね」

P「ん、まゆももう着いてたのか」

微笑みながら、此方に駆け寄ってくるまゆ。

正確な名称の分からない、ピンクの薄手のワンピースに身を包むまゆはとても可愛かった。

まゆ「楽しみで、ついつい急ぎ過ぎちゃいました」

P「分かる。俺もそんな感じだよ」

まゆ「……外で待つには、少し暑過ぎますね」

P「だなー……そこの喫茶店で待つ?」

まゆ「はい。そうしましょう」

駅前の時計が見える位置にある喫茶店に、二人で入る。

カランカランと鳴るベルと、空調の効いた冷たい風が心地良い。

店員「っしゃせー」

P「禁煙二人で。窓際の席って空いてますか?」

店員「しゃー」

店員に案内され、窓際の二人席に着く。

ふぅ……涼しい。

まゆ「Pさんは何にしますか?」

P「昼食べてこなかったし、サンドイッチとコーヒーのセットにしようかな」

まゆ「ふふっ、まゆと一緒ですね」

注文を終えて、一息吐く。

この先からなら待ち合わせの場所がよく見えるし、のんびりしていて大丈夫そうだ。
113 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:03:55.08 ID:r0nzCQQSO


まゆ「一学期……あっという間でしたね」

P「だなー。楽しかったから尚更早く感じたわ」

まゆ「最近、どうですか?」

P「どう、って……どういう事?」

まゆ「美穂ちゃんと、という事です。仲良く恋人生活を送れてますか?」

P「あー……まぁ、うん。多分、かなり」

ラブラブ恋愛生活を出来るぞ!なんて流石に言えないな。

まゆ「そうですか。なら、良かったです」

P「良かった……?」

まゆ「だって、Pさんと美穂ちゃんの仲が上手くいってなかったら……まゆ、横取りしたくなっちゃいますから」

P「残念ながら俺たちはファンデルワールス力よりも強い力で結ばれてるよ」

まゆ「それ、結合の中で一番脆い力ですよぉ……」

P「ん、違った。共有結合だ」

まゆ「カップルが言うと説得力が違いますねぇ」

P「SNSでカップル共有アカウントとか作るかな」

まゆ「既に廃れた文化ですが……」

ふぅ、と。

一息ついて、まゆは更に聞いてきた。

まゆ「なら……智絵里ちゃんとは、どうですか?」

P「ん?俺と智絵里ちゃん?」

時折距離が近いなと思う事はあるけど、それでも友達と言えるくらいの距離な気がする。

少なくとも、プールに行った時の様な事はされていない。

と、言うか。

そういう事にしておかないと、美穂を困らせてしまう。

P「……まぁ、友達だと思ってるよ」

まゆ「……いえ。美穂ちゃんと、智絵里ちゃんです」

P「そういえば、どうなんだろう」

あんまり二人が喋ってるところって見ない気がする。

俺と美穂、俺と智絵里ちゃんでそれぞれ話す事はあっても、三人で話す事は滅多に無いし。

美穂は結局、智絵里ちゃんに何て言ったのだろう。

特に相談されなかったけど、どうなったんだろうな。
114 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:04:32.05 ID:r0nzCQQSO


店員「お待たせしましたー」

注文したコーヒーとサンドイッチが届いた。

……うん、サンドイッチ美味い。

まゆ「Pさん、サンドイッチ好きですよね」

P「まぁな、昔はずっとパンばっか食べてたし。ほら、昔から朝食自分で作ってたんだけど、それだと米炊く時間無いんだよな」

まゆ「あ……ごめんなさい」

P「いいよいいよ。ふぅ……一回涼しい場所入ると、出るの億劫になるよな」

まゆ「このまま夜まで、二人でお話しするのも吝かではありませんが」

P「ま、今日はみんなではしゃごうよ。折角の夏休みなんだし」

まゆ「ふふっ、そうですね……Pさんはそう言う方ですから」

コーヒーカップを傾ける。

熱い、でもまゆの前だしカッコつけて優雅に飲む。

ピロンッ

『李衣菜ちゃんと一緒です。もう直ぐ着きます』

P「……ん、もうすぐ美穂達も着くっぽいな」

まゆ「ですねぇ。コーヒーを飲み終えたら、のんびり出ましょうか」

115 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:04:59.22 ID:r0nzCQQSO



駅前の時計の方を見る。

……ん、加蓮着いてるじゃん。

キョロキョロと他に誰か来てないか探してる様だ。

ピロンッ

『鷺沢、もう着いてる?』

『今喫茶店で時間潰してたとこ。直ぐ行くよ』

P「っし、行くか。会計は俺が持つからいいよ」

まゆ「お言葉に甘えさせて貰います。お礼に今度、みんなでPさんの家でお食事するときに腕を振るいますから」

会計を済ませて外に出る。

あっつ、めちゃくちゃあっつ。

P「おーい、加蓮」

水色のシャツに短過ぎる白いパンツ姿の加蓮は、こっちを向いて手を振って来た。

……大丈夫?そんなに肩出して足出して。日焼けするぞ?

ってかシャツ上の方なんか透けてない?そう言うデザイン?

加蓮「あ、やっほー鷺沢。隣のソレは何?」

まゆ「ソレじゃなくて連れですよぉ」

P「二人して早く着き過ぎちゃったから、そこの喫茶店で涼んでたんだ」

まゆ「アツアツでしたよぉ」

P「コーヒーがな。ってかやっぱバレてたか」

加蓮「随分楽しそうじゃん。美穂に言いつけちゃうよ?」

P「じゃあ楽しくなかった」

まゆ「あの」

P「で、多分そろそろ美穂達も来るはずなんだけど……」

李衣菜「おまたせーみんな」

美穂「お待たせしました、みなさん」

あぁ、美穂まで肩出して。

ピンク色のフリル付きとかめちゃくちゃ、めっっちゃくちゃ可愛いけど日焼けするぞ。

P「んじゃ、全員揃ったしカラオケ向かうか」


116 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:05:26.68 ID:r0nzCQQSO




美穂「ーーいつも、その笑顔を、ずっと!私だけに向けてねっ!」

李衣菜「……可愛いなぁ、美穂ちゃん」

美穂「ふぅ……どうでしたか?わたし、この歌がとっても好きなんですっ!」

P「うん、上手いしめっちゃ可愛いかったぞ」

美穂「え、えへへ……」

俺に向けての想いを歌に乗せたんだとしたら、もうとんでもなく可愛い。

可愛らしさに即死効果が付いているくらいだ。

李衣菜「さーて、何点かな?」

ピピピピピッ、と画面に数字が映し出された。

画面『百万ドルの笑顔です』

P「分かってるじゃないか、この採点機」

美穂「ひゃ、百万ドルって……」

まゆ「何百万点満点なんでしょうねぇ」

李衣菜「そもそも点数なの?これ」

加蓮「私何歌おっかなー」

まゆ「ラジオ体操第二なんてどうですか?」

加蓮「じゃあまゆ踊ってよ」

李衣菜「次の曲は……エヴリデイドリームだって。誰が歌うの?」

まゆ「まゆですよぉ。まゆの想いを込めて、全力で歌いますよぉぉ!」

気合い入ってるな。
117 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:05:53.37 ID:r0nzCQQSO



可愛らしいイントロが流れ出すのと同時、まゆがマイクを構える。

まゆ「大好きなあの人に向けて、心を込めて歌います。聞いてください……佐久間まゆで、エヴリデイドリーム」

加蓮「斬新。イントロをバックに語り出した」

李衣菜「新しいカラオケの楽しみ方だね」

歌詞が始まるのとピッタリに、まゆが前説を終える。

凄く完璧なタイミングで凄いけど、ずっとこっち見られると恥ずかしいし画面見ようよ。

歌詞は、とても可愛らしいラブソング。

アイシテルが片仮名なのが若干怖かったが、概ね恋する女の子の歌だった。

まゆ「私のこと……大好き、って……」

まゆは終始ずっとこっちを見て歌っていた。

歌詞全部暗記してるの凄いな。

あと美穂もずっとこっちガン見してた。

いや、違うからな?浮気とかじゃないからな?

まゆ「ふぅ……ご清聴、ありがとうございました」

美穂「とっても上手かったと思いますよ、まゆちゃん」

まゆ「面白いくらい声が平坦ですねぇ……どうでしたか?Pさん」

P「え、あぁうん。上手かったと思うよ、かなり」

美穂「加蓮ちゃん、早くラジオ体操第二を歌って空気を変えて下さい」

画面『高得点です。まるで本人の様な歌いっぷりでした』

P「……いや点数出せよ」

まゆ「Pさん、さっきはそんな事言ってなかったじゃないですかぁ……」

李衣菜「でも上の音程バー出てくるだけでも歌いやすいよね」

美穂「まゆちゃん一回も画面見てませんでしたけどね」

美穂、それを俺の方見ながら言わないでくれ……
118 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:06:20.38 ID:r0nzCQQSO


加蓮「さてと……それじゃ、私の番だね。いくよ、みんなっ!」

ラジオ体操第二の音楽が流れ始めた。

心の底から踊りたくねぇ……

P「……俺ドリンクバー行ってくるわ。誰かお代わり欲しかったら持ってくるけど」

美穂「あ、ならわたしは烏龍茶でお願いします」

李衣菜「私は麦茶で」

まゆ「なら、まゆもご一緒します」

加蓮「私メロンソーダとコーラとオレンジジュースで」

まゆ「全部混ぜればいいんですかぁ?」

加蓮「思考が小学生レベルだね、まゆは」

ドキっとする。

実は俺も同じ事考えてたから。

みんなのカップを持って、一旦部屋から出る。

ドリンクバーでは、うちの高校の制服の奴等が並んでいた。

P「やっぱみんな来るよなぁ」

まゆ「今日から長期休暇ですからねぇ」

P「楽しいなぁ……友達増えて」

ドリンクを注いでいると、智絵里ちゃんがやって来た。

智絵里「あ……お待たせしました」

P「お、もう用事は終わったの?」

智絵里「はい。他のみんなは……?」

まゆ「もう歌い始めてますよ。一緒に部屋に戻りましょうか」

部屋に戻ると、李衣菜がロックっぽい曲を熱唱していた。
119 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:06:48.18 ID:r0nzCQQSO



美穂「あ……こんにちは、智絵里ちゃん」

智絵里「……こんにちは、美穂ちゃん」

加蓮「……五人、揃っちゃったね……」

まゆ「……ですねぇ……」

美穂「ついに……この時が……!」

画面『69点。色々とブレてます』

李衣菜「えっ、私音程もっと合ってたってば!」

P「いや音程かなりSin波だったぞ……で、五人揃うと何かあるのか?」

加蓮「バスケが出来るね」

まゆ「まゆ達五人が力を合わせれば、向かう所敵なしですよぉ」

智絵里「えっと……五人しかいないなら敵がいないのは当たり前じゃ……」

美穂「と言うのは冗談で……最近女子高生の間で流行の、あの歌が丁度歌えるんです」

李衣菜「マイクは二個しかないけどね」

残念な事に、俺は女子高生の流行りに詳しくはない。

加蓮「よしっ、送信っと」

まゆ「まぁコレですよねぇ」

智絵里「あ……この曲、わたしもとっても好きです」

美穂「何度もMVを見てたら、振り付けまで少し覚えちゃいました」

李衣菜「この真ん中の無限記号がロックでカッコいいよね」

オシャレなイントロが流れ出す。

なんだか凄く火サスとか昼ドラで流れて来そうな曲調だ。

まゆ「聞いて下さい、Pさん。佐久間まゆで……」

加蓮「あ、私も歌うんだけど。北条加蓮で」

美穂「五人で歌うんですから、もっと上手く繋いで下さい。小日向美穂と……!」

李衣菜「あ、私もやる流れ?多田李衣菜と……!」

智絵里「え、えっと……緒方智絵里で……!」

「「「「「Love∞Destiny」」」」」


120 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:07:16.35 ID:r0nzCQQSO



加蓮「ふー……かなり歌ったね」

P「もう十九時か。そこそこいい時間だな」

李衣菜「みんなは夕飯どうするの?」

美穂「わたしは門限があるので……」

まゆ「まゆもそろそろ帰らないといけません」

加蓮「なら私も帰ろっかなー」

智絵里「わ、わたしはまだ時間はあるけど……」

李衣菜「なら、何処かで食べてかない?」

智絵里「え、李衣菜ちゃんが払ってくれるんですか……?!」

李衣菜「おっ、今日一のいい笑顔」

加蓮「え?李衣菜の奢り?ならまだ帰らなくていいかな」

李衣菜「ちょっとちょっと、私そんな手持ちないんだけど!ねぇP、どう?助けてくれたりしない?」

P「悪いな、俺は帰って夕飯作んないと」

文香姉さんにも帰るって伝えてあるし。

あ、食材も軽く買ってから帰るか。

P「んじゃ、また適当に集まって遊ぼうな」

加蓮「じゃあねー」

まゆ「ふふっ、お疲れ様でした」

カラオケから出て、それぞれバラバラに散って行く。

P「あ、俺夕飯の食材買ってから帰るから」

まゆ「それじゃ美穂ちゃん。二人で帰りましょうか」

美穂「うん。じゃあね、Pくん」

P「じゃあな、美穂、まゆ」

スーパーに入って、特売のものを買い込む。

お一人様二つまで……美穂とまゆに付き合って貰えば良かった。



121 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:07:43.42 ID:r0nzCQQSO



まゆ「今日は、とっても楽しかったですね」

美穂「そうだね……うん!またみんなで行こうね!」

まゆちゃんと二人で、夏の夜道を歩きます。

美穂「門限さえなければ、李衣菜ちゃん達とお夕飯一緒に食べられたんだけどな……」

……ううん、きっと、門限なんて無くても。

わたしは、行ってなかったと思います。

だって、その食事の場には……

まゆ「ねえ、美穂ちゃん。聞きたい事があるんですけど……」

美穂「え?なに?」

まゆ「……美穂ちゃんは、Pさんの事が好きですか?」

美穂「……え?急にどうしたの?」

まゆ「少し気になっちゃったんです。美穂ちゃんは、本当にPさんの事が好きなのかな?って」

そんな質問の答えなんて、決まり切ってます。

美穂「もちろん。わたしは、Pくんの事が大好きだよ?」

まゆ「……そう、ですか。そうですよね」

美穂「それが、どうかしたの?」

まゆ「いえ、Pさんも美穂ちゃんの事を好きだと言っていたので」

美穂「え、えへへ……て、照れちゃうな……」

まゆ「はい、だから」

これからも応援してくれるのかな、なんて。

そんな風に、気楽に考えてたから。
122 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:08:09.72 ID:r0nzCQQSO



まゆ「Pさんと、別れて下さい」

美穂「…………え?」

そんなまゆちゃんの言葉に、頭が空っぽになりました。

美穂「……わ、別れて、って……ど、どういう事?」

まゆ「そのまま言葉通りですよ?Pさんとのお付き合いを終わらせて下さい、という意味です」

美穂「な、なんで……そんな事……」

まゆちゃんは、わたしの事を応援してくれてたのに……

まゆ「本当は言いたく無かったんですけどね。美穂ちゃんから別れを告げるのが、きっと一番楽に済むでしょうから」

美穂「ま、待って!ど、どうしてそんな事言うの?!まゆちゃんは……まだPくんの事を……」

まゆ「はい、好きですよ。振られはしましたが、嫌われた訳ではありませんから。諦めないのは当然だと思いませんか?」

美穂「だ、だからって、そんな事言わないでよ……わたしたち」

まゆ「友達、ですか?そうですねぇ。美穂ちゃんならそう言うと思ってました」

美穂「…………まゆちゃんは、わたしの事を……」

……友達だと思ってくれてなかったの?

まゆ「大切な友達だと思ってますよ。だから素直に身を引きましたし、今まで応援してきた訳ですから」

美穂「なら……なんで?どうして今……」

まゆ「美穂ちゃん。まゆは、Pさんに迷惑を掛けたく無いんです。困らせたく無いんです……そして、Pさんを困らせる様な人に、Pさんの側に居て欲しく無いんです」

まゆ「それはもちろん……恋人の美穂ちゃんであっても、例外ではありません」

美穂「わ、わたしが……迷惑?そんな……わ、わたしだって、Pくんに迷惑掛けちゃう様な事はしたくないし、してないよ……?」

まゆ「……ねえ、美穂ちゃん」

まゆ「本当に……本気で、何も迷惑を掛けてないと思ってるんですか?」
123 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:08:51.93 ID:r0nzCQQSO



わたしは、何も言えませんでした。

後ろめたい事なんて全く無いって言えば、それは嘘になっちゃいますから。

まゆ「そうですね、では……智絵里ちゃんについて、お話を聞かせて貰います」

ドキッ、と。

心臓が跳ね上がりました。

ずっと避けて来た、ずっと逃げて来た部分に触れられそうになって。

美穂「ま、まゆちゃん!そのお話は今度にしませんかっ?」

まゆ「……美穂ちゃん、まゆを失望させないで下さい。奪うつもりなら、いつだって出来たんですよ?」

まゆ「それでもこうして真正面から切り出しているのは、美穂ちゃんとこれからもお友達でいたいからです」

まゆ「そもそも、どの道このまま何もせずにいたら……遠からず、終わっていた事なんですから」

美穂「……まゆちゃんは、何を知ってるの?」

まゆ「Pさんの事ならなんでも知ってるって、以前教えませんでしたか?」

まゆ「美穂ちゃんが智絵里ちゃんにきちんと伝えられていない事も。これからも出来るだけ避けて直接は伝えずに、なぁなぁにして流していくつもりだった事も。自分さえ我慢して、智絵里ちゃんがPさんに接触するのを見て見ぬ振りすれば、友達でいられると思っている事も」

まゆ「Pさんが智絵里ちゃんからの接触で内心困っている事も。それでも美穂ちゃんに止められているせいで本気では怒れずにいる事も。美穂ちゃんに確かめようにも美穂ちゃんが話を逸らすから、困らせない為に踏み込めずにいる事も」

まゆ「美穂ちゃんが恋人である自分を選んでくれると信じて、Pさんはずっと待っている事も……全部、把握しています」

Pくんはいつも笑ってたけど、内心では困ってたんだ……

そんな事に、大好きな人の事なのに、わたしは気付かなくって……

美穂「ど、どうしてそこまで……」

わたしですら、Pくんの考えてる事をそこまでは知らなかったのに。

まゆ「好きな人の為に本気で色々と行動するのは、おかしいことですか?それとも、美穂ちゃんにとって……恋人は普通の友達の少し延長程度だと思っているんですか?」

美穂「そ、そんな事ないもんっ!大好きだから離れたくないし、だから告白したんだもんっ!」

まゆ「……離れたくないから、ですか……まあ、知ってはいましたが」
124 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:09:37.73 ID:r0nzCQQSO



まゆ「……それ、友達でいいんじゃないですか?」

美穂「…………え?」

まゆ「だから、早く別れて下さい。そしたらまゆがPさんとお付き合いしますから」

まゆ「でしたらお約束しますよ。まゆとPさんが結ばれても、美穂ちゃんが以前と同じ距離の関係でいられる事を」

まゆ「美穂ちゃんがPさんとお話しするのを、美穂ちゃんがPさんの側に居ようとするのを、まゆは邪魔しません」

まゆ「……どうですか?美穂ちゃんのご要望に応えられていると思いますけど」

美穂「いやっ……そんなの……」

そんなの、頷ける筈が無いから。

わたしは、Pくんの事が大好きだから。

まゆ「はぁ……まゆに対してはきちんと言えているんですけどねぇ」

まゆ「他の女の子とお友達でいたいから、裏切る様な事はしたくないから。そんな理由で燻っているのは分かりますし、美穂ちゃんが悩んでいる事も分かりますが……」

まゆ「恋人と友達なんて、秤にかけるまでもなく……大切な方なんて、決まってるんじゃないですか?」

まゆ「なのにまだどちらにも傾いてないという事は、美穂ちゃんにとって……Pさんはただの友達って事じゃないんですか?」

まゆ「それとも、友達も恋人も重みは同じですか?その程度の想いなんですか?一人きりしかいない恋人なのに、その他大勢と同じ扱いですか?」

美穂「わ、わたしは……」

まゆ「さて、話を戻しましょうか。このまま続けられれば、きっと壊滅的な事が起きる日は来ない……そう考えているんですよね?」

まゆ「そしてそれは、おそらく智絵里ちゃんも同じです」

まゆ「美穂ちゃんが友達という枷によって動けずにいる事を、智絵里ちゃんも分かっています。友達以上恋人以下の関係を続けて、美穂ちゃんがPさんを諦める日を待っているんです」

まゆ「下手に距離を詰め過ぎると、流石にPさんも本気で拒絶するでしょうからねぇ」

まゆ「……どちらも許せません。Pさんに迷惑を掛けている事も……現状維持でこのままの関係を続けられると、本気で思っている事も」
125 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:10:18.23 ID:r0nzCQQSO



美穂「で、でも……わたしがPくんを諦める日なんて……」

まゆ「……やっぱり分かってたんですね。甘いです。有り得ません」

まゆ「……まゆが、そんな状態を見て何もしないと思うんですか?」

まゆ「そうでなくとも、この状態をずっと続けていればPさんはいずれ智絵里ちゃんを拒絶するでしょう」

まゆ「これ以上美穂ちゃんを困らせたくないから、と」

まゆ「でもそれは本来美穂ちゃんが言うべき事ですよね?そうでなくとも、美穂ちゃんがPさんに余計な事を言わなければとうに済んでいた事なのに」

まゆ「そして、美穂ちゃんが自分を優先してくれなかった事を引き摺ります。更にそれで智絵里ちゃんと美穂ちゃんの交友が途絶えてしまったら、より一層重く引き摺るでしょう」

まゆ「そんな思いを背負ったままの恋愛なんて、長くは続きません」

まゆ「きっと美穂ちゃんも、とっても辛いでしょうし」

まゆ「……それはよろしくありませんねぇ。Pさんが辛い思いをしてしまいます」

美穂「も、もし……わたしが、Pくんと別れたら……」

そんな未来を選びたくはないけど。

それでももし、そうするしかないとしたら……

まゆ「智絵里ちゃんはPさんに告白するでしょうね。そして振られます。智絵里ちゃんは一歩だけ踏み込み過ぎたんです……一瞬とは言え、本気で拒絶される様な事をしてしまっていますから」

まゆ「そもそも、自分と恋人の別れの原因になった女性と付き合えますか?」

まゆ「そしてそこで、まゆが告白すれば……きっと、まゆはPさんと付き合う事が出来たかもしれないんですが……」

まゆ「…………Pさんにとって一番辛いのは……美穂ちゃんと別れる事ですから……」
126 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/30(火) 19:11:37.21 ID:r0nzCQQSO


まゆ「……なあなあで、最終的に破滅を迎えるよりはましだと思ってはいますが、まゆが自分から選べる選択肢ではありませんでした」

美穂「まゆちゃんは……」

まゆ「……まゆは、美穂ちゃんと友達でいたい。それは紛れも無い本心です。本気で思っています。そして、Pさんの事も本気で想っているから、美穂ちゃんに嫌われるのを覚悟でこうして真正面から向き合っているんです」

まゆ「……ねえ、美穂ちゃん。Pさんの事が本気で好きなら……ちゃんと、選んであげて下さい。智絵里ちゃんと友達でい続ける事が出来ないと思っているなら……もう少し友達を信じてあげて下さい」

まゆ「それとも、信じる事が出来ない様な友達の為に恋人を選ばないんですか?」

まゆ「そんなの……まゆ、美穂ちゃんを許せなくなっちゃうから……」

そんなまゆちゃんの声は、震えていました。

美穂「……まゆちゃん……」

まゆ「……最後に、美穂ちゃんの為に……まゆがただの悪役になってあげます」

まゆ「このままでい続けるなら……美穂ちゃんとはもう友達ではいられません。そしてまゆからPさんに全てを伝えます。本気で美穂ちゃんからPさんを奪います。もし付き合えても、美穂ちゃんと会話なんてさせません」

まゆ「……さあ、美穂ちゃん。もうするべき事なんて、すぐに決まるんじゃないですか?」

まゆ「……まゆの想いを……まゆの覚悟を、決断を……お願いだから、無下にしないで下さい……」

そう言って、まゆちゃんは去って行きました。

まゆちゃんは、本気でぶつかってくれて。

わたしとPくんの為に、嫌われるのを覚悟で、背中を押してくれて。

……なのに、わたしはまだ迷ってるなんて……

それでも、智絵里ちゃんに全てを伝えるのが怖くて。

智絵里ちゃんとお友達でいられなくなっちゃうのが怖くて。

わたしは、ずっと立ち竦んでいました。


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/30(火) 20:12:48.55 ID:OynHQtXHO
これまゆ攻略順固定されてて最後にしか攻略できないヒロインな気がして来た
128 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:35:43.51 ID:s+Vwk4lp0


夏休みも数日が過ぎて、八月に入った。

ここ数日、何もせずに一日を溶かしている気がする。

美穂とデートに行ったりとか、他の誰かと遊びに行ったりとかせず、一日家で本を読んでいるだけ。

なんだか虚無過ぎる。

美穂からはあんまりラインが来ないし、それとなく誘ってみたデートの誘いも素気無く断られていた。

……俺、嫌われたりしてないよな?

P「……大丈夫だよな?」

ちょっと不安になる。

ブーン、とスマホに通知が入った。

……智絵里ちゃんからか。

最近は、智絵里ちゃんとラインで話す事が多い。

割と結構な頻度で向こうから話しかけてくる。

そんな智絵里ちゃんとの会話は楽しいっちゃ楽しいが、美穂の事を考えると若干後ろめたい気持ちになった。

『良かったら、明日のお祭り一緒に行きませんか?』

そう言えば、明日は神社の夏祭りか。

李衣菜や加蓮やまゆも一緒なのかな。

智絵里ちゃんには申し訳ないけど、一旦返事は保留させて貰って。

美穂に夏祭りの誘いを送ってみる。

『おーい美穂、明日暇だったら一緒にお祭り行かないか?』

けれど、しばらく既読は付かなかった。

まぁ、そんな時もあるか。

文香「すみません、P君……荷物を運びを手伝って頂けないでしょうか……?」

P「ん、おっけ」

本を運びながら、らしくもないが少し考えてみる。

美穂は、もしかしたら。

まだ、悩んでいるんだろうか。

文香「……心ここに在らず、といった表情ですね」

P「ちょっと考え事しててさ」

文香「……ふふ、らしくもないですね」

酷い。いや自分でもそう思うけど。
129 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:36:11.26 ID:s+Vwk4lp0


文香「……美穂さんとの事ですか?」

P「ん?分かるの?」

文香「……最近、来ていませんでしたから……何かあったのかと」

P「なんて言えば良いんだろうな……こう、人間関係って難しいなぁって」

文香「……そう、ですね……特に恋愛絡みとなると、より一層難しいと思いますが……」

P「姉さんはそういう経験あるの?」

文香「…………本での知識のみですが、何か?」

P「ごめん……」

文香「謝られる方が辛いのですが……」

ごほん、と。

文香姉さんはワザとらしい咳をついて。

文香「……取り敢えず、動いてみてはどうでしょうか?悩んだり考えたりするのは、それからでも遅くないと思います」

P「……そうだな、うん。一回きちんと話すか」

作業を終えて部屋に戻ると、美穂からラインが返ってきていた。

『誘ってくれてありがとうございます』

お、久し振りにデート出来そうだ。

智絵里ちゃんには悪いけど、そっちは断るか。

『十七時に神社前で大丈夫ですか?』

『あ、その前に時間あったりしない?』

『はい、大丈夫です。Pくんの家に行けばいいですか?』

『いやいいよ、十六時くらいにそっち行くから』



130 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:36:43.66 ID:s+Vwk4lp0



お祭り当日の十六時ジャスト、俺は寮の前に来ていた。

まゆ「あ、Pさん。こんにちは」

P「ん、ようまゆ。これからお祭りか?」

寮から出てきたまゆは、浴衣姿だった。

……いいな、浴衣って。

まゆ「Pさんは、美穂ちゃんと二人で行くんですよね?」

P「うん、その予定」

まゆ「そうですか。それは良かったです」

P「良かった……?」

まゆ「そう言えば、十八時くらいから雨が降るみたいですよぉ」

P「マジか、なら今日はそんな長くは遊べそうにないな」

まゆ「でも、明日も明後日もありますから」

P「財布の中身が保つかなぁ……」

まゆ「それでは、まゆは李衣菜ちゃん達との待ち合わせがありますから」

P「んじゃ、また神社で会ったら」

まゆ「はぁい。また後でお会いしましょう」

まゆが神社の方へ向かっていった。

……そういえば、浴衣の時もリボンは外さないんだな。
131 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:37:10.67 ID:s+Vwk4lp0



美穂「……お、お待たせしましたっ!」

P「お。久しぶり、美穂」

少しして、美穂も寮から出てきた。

……浴衣姿!浴衣!非常に良ろしい。

可愛いなぁ。うん、めっちゃ可愛い。

美穂「ど、どうでしょうか……っ?」

P「すげー可愛いと思うぞ!」

美穂「え、えへへ……ありがとうございます」

P「……それで、少し話したい事があるんだけどさ」

美穂「……ごめんなさい。その……最近は、全然会えなくて……」

P「いや、いいんだけどさ。いやよくないわ、すげー会いたかったんだぞ」

美穂「……あ、会いたかった……えへへ。う、嬉しいです……っ!」

恥ずかしそうに頬を染める美穂。

そんな仕草が、浴衣も相まってめちゃくちゃ可愛い。

P「だから、何かあったのかな、ってさ」

美穂「その……色々と、気持ちの整理がつかなかったので……」

P「気持ちの整理……?」

やっぱり、何か悩んでいたんだろうか。

美穂「で、でもっ!もう大丈夫です!」

P「そっか、なら良かったよ」

美穂「もう、決まりましたから。今日会ったら絶対に……ちゃんと言うんだ、って……」

P「……美穂がそう言うなら良いけど……何かあった時は相談してくれてもいいんだぞ?」

美穂「……はい、ありがとうございます。もう、大丈夫ですから」

何があったのかを、何を悩んでいたのかを。

結局俺は、聞くことが出来なかった。

まぁ大丈夫って言われてしまったんだから信頼するしか無いが。

P「んじゃ、行くか!」

美穂「はいっ!」

二人並んで神社に向かう。

繋いだ手は、とても熱かった。

132 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:37:43.09 ID:s+Vwk4lp0



P「うおー、凄い熱気だな」

美穂「す、凄いですね……」

神社は人で溢れかえっていた。

手を離して巡ったらすぐにでも逸れてしまいそうだ。

ずらりと並んだ屋台には、魅力的な食べ物と祭特有の高い値札。

そんな祭りの渦の中に飛び込もうと、鳥居を潜った時だった。

李衣菜「ん、やっほーP、美穂ちゃん」

加蓮「あ、鷺沢じゃん。元気してた?」

李衣菜達がこっちへ向かって来た。

美穂の表情が、一瞬険しくなる。

美穂「久し振り、李衣菜ちゃん達」

まゆ「Pさぁん!浴衣姿のまゆですよぉ!」

P「うん、さっき見たぞ」

加蓮「……ふっ」

まゆ「加蓮ちゃん、今笑いましたか?」

加蓮「え、何の事?」

李衣菜「はいはい、下らない事で喧嘩しないの」

加蓮「でもほら、祭りと喧嘩は江戸の花って言うじゃん?」

まゆ「ここは江戸ではありませんよぉ」

李衣菜「だからまゆちゃんも煽らないの」

騒がしい三人だなぁ。

そのまま三人はまた祭りの中へと戻って行った。
133 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:38:10.12 ID:s+Vwk4lp0



智絵里「あ……こんにちは、Pくん」

P「ごめんな智絵里ちゃん、誘ってくれたのに」

智絵里「……いえ、大丈夫です。それよりも、折角会えたから……その、一緒に遊びませんか?」

P「悪いけど、今日は」

美穂「ねえ、智絵里ちゃん」

俺の言葉は、美穂に遮られた。

珍しく、美穂がかなり真剣な口調になっている。

智絵里「……なんですか、美穂ちゃん」

智絵里ちゃんの声のトーンも、かなり低い。

美穂「……え、えっと……今日は、わたしとPくんの……二人でのデートだから……」

智絵里「……デート、なんですか?」

美穂「う、うん……だから、えっと……」

智絵里「……Pくんは、嫌ですか?わたしが、一緒に遊ぶのは……」

P「俺は……」

俺としては、今日は美穂と二人きりで遊びたかった。

嫌っていう訳じゃないけど、だから今日は……

美穂「……ち、智絵里ちゃんっ!」

智絵里「……なんですか?美穂ちゃん……わたしの邪魔をしないで下さい」

美穂「じゃ、邪魔なんて……そうじゃなくってね?今日はわたしとPくんの二人で」

智絵里「応援、してくれましたよね?」

美穂「……っ!で、でも!わたしは……」

P「二人とも落ち着けって。智絵里ちゃん、悪いけど今日は」

美穂「Pくん!それ以上言わないで下さいっ!」

再び、美穂に遮られた。
134 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:38:36.22 ID:s+Vwk4lp0



美穂「ちゃんと言うって決めたもん……わたしが、ちゃんと……」

智絵里「……ずっと逃げてたのに、ですか?」

美穂「で、でもっ!今日こそは、って……」

智絵里「わたしの事を避けてたのに、ですか?」

美穂「……わ、わたしは……」

智絵里「……もっと早くに、言ってくれれば良かったのに」

美穂「っ!」

P「お、おい美穂っ!」

美穂が走って道を戻って行った。

俺も走って追いかけようとして……

智絵里「……Pくん。追い掛けないでくれませんか……?」

智絵里ちゃんに、服の裾を掴まれた。

P「……ごめん、智絵里ちゃん」

智絵里「……そう、ですか……」

優しく振り解いて、俺は走った。

多分寮に帰ろうとしているんだろう。

全力で走って、美穂を追った。


135 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:39:19.18 ID:s+Vwk4lp0





寮の近くの信号を超えたところで、美穂の後ろ姿が目に入った。

そのまま全力で走って、ようやく肩に手が届いて。

少し強い力で肩を掴んで引き止める。

P「おい美穂、どうしたんだよ……」

美穂「……離して下さい……っ!」

息が上がっているのは、走ったからだけではないだろう。

震える声を聞いて、俺は我に帰った。

P「……すまん」

肩から手を離して、一歩下がる。

美穂「……ぁ……ごめんなさい……」

P「悪い、強く掴んじゃって」

美穂「だ、大丈夫です……」

P「……なぁ、何があったんだ?」

美穂「……言えません……Pくんには……」

……若干どころじゃなく凹むな、その言葉は。

美穂「……今日はもう、帰りませんか?」

P「……明日は、一緒にお祭り行けるか?」

美穂「……それは……」

P「俺は美穂と一緒にデートしたいからさ。よかったら……色々と聞かせてくれよ」

美穂「……ダメです。絶対に言えません」

P「…………まだ、迷ってるのか」

美穂「っ……!」

反応で、大体察した。

美穂はまだ、智絵里ちゃんにきちんとは伝えてなかったんだ。

そして、だからこそ。

まだ迷っている、という事実のせいで俺に話せずにいたんだ。
136 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:39:48.76 ID:s+Vwk4lp0


P「……なぁ、美穂」

美穂「ごめんなさい……っ!わ、わたし……Pくんの事が大好きなのに……なのにっ!」

P「……いいよ、もう。そんな事はさ」

俺と智絵里ちゃんの何方を選ぶか、なんて、そんなの間違ってる。

そもそも片方しか選べない訳じゃないんだから。

まぁ俺としては俺の事を優先して欲しかったりはするが。

そんな事よりも、ずっと。

美穂の悲しそうな顔を見ている方が、よっぽと辛かった。

P「……頼むよ、美穂。俺は何言われたって気にしない……いや気にはするけど何でも受け止めるから。だから、全部話してくれ」

美穂「で、でも……わたしは、Pくんの事を……」

P「美穂……頼む。何言われようが絶対嫌いになんてならないから。俺を……信じてくれ」

美穂「…………はい」

美穂は、少しずつ。

ようやく、話してくれた。

智絵里ちゃんに、ずっと言えなかった事。

これからも言わずに、この状況を続けようとしていた事。

智絵里ちゃんとは会わない様に避けていた事。

まゆと話して、今のままじゃダメだって気付いた事。

そして今日こそ、智絵里ちゃんにきちんと打ち明けようとしていた事。
137 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:40:31.92 ID:s+Vwk4lp0



美穂「智絵里ちゃんは、気付いてはいます。でも……わたしが言わなければ……それで、このままでいられるから……」

P「……でも、今日ちゃんと言おうとしてたんだろ?」

美穂「はい……そのつもりでした。でも……言えなくて……」

P「……そっか。ごめん、俺が余計な事を言おうとしちゃって」

美穂「い、いえ……Pくんは悪くありません……わたしがちゃんと伝えようって思って、なのに……」

P「……確かに俺悪くないな」

美穂「っぅ……うぅぁ……」

P「ごめんごめんごめん!いや誰が悪いとかじゃなくてさ!!」

美穂「わたし……っ!言えないよ……言える訳ないもんっ!言おうとしたのに言えなかったんだもんっ!!」

美穂「怖いよ……嫌われちゃったらどうしよう……友達でいられなくなっちゃったら!わたしはっ!」

美穂「……智絵里ちゃんと友達でいたいのに……っ!」

P「……成る程な」

美穂の気持ちは分かった。

どれほど悩んでいたか、どれほど不安だったか。

もっと早くに、無理やりにでも聞いておけば良かった。

そしたら、ここまで美穂が悩む事も無かったのに、

……さて。

P「なあ美穂。あのさ……もうちょっと、信じてみたらどうだ?」

美穂「Pくんの事を、ですか……?」

P「それもだけど……友達を、さ」

ぽつり、と。雨が降ってきた。

美穂の浴衣が濡れちゃうから、もうまどろっこしいのは無しだ。

思った事全部、真っ直ぐそのまま伝えよう。
138 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:41:07.80 ID:s+Vwk4lp0


P「智絵里ちゃんは傷付くかもしれないけどさ……それでも、友達でいてくれるって信じてみようよ」

美穂「友達で……?」

P「なにも、伝えたら嫌われちゃう、友達でいられなくなっちゃうって決まった訳じゃないだろ?」

美穂「……そうだけど……」

P「ならさ、全部伝えた上で。それでも友達でいて欲しいって、そう言えばいいさ」

美穂「……断られちゃったら……?」

P「ならその時考えればいい。少なくとも、何も言わずにいるよりはよっぽどいいだろ」

もしこのまま何も言わず、なあなあにして今の関係を維持したとして。

それで美穂が傷付いていくなんて、そんなの俺が嫌だった。

雨がどんどん強くなる。

でも、それでも。

今、きちんと美穂に伝えなければ、って。

そう、思ったから。

P「……それと、一人で言う必要は無いんだよ」

美穂「……え?」

P「俺からもちゃんと伝えるから。お願いするから。俺だって嫌だよ、折角出来た友達を失くすなんて。美穂が友達を、俺のせいで失くすなんて」

美穂「……いいの……?」

P「ダメな訳無いだろ!俺の大切な人が困ってるのに何もしないなんて、そんなの嫌に決まってるだろ!」

美穂「……ありがとうございます……」

P「だから……頼れよ。もっと頼ってくれよ。幸せだけじゃなくて、辛い事だって分け合おうよ」

美穂「……なら……お願いしても、いいですか?」

震える声で、泣きそうな表情で。

それでも真正面に、俺に向かう美穂。

P「……何をだ?ちゃんと、言ってくれ」

美穂「わ、わたしが……智絵里ちゃんに、きちんと伝えるから……」

美穂「Pくんと付き合ってるって事も。智絵里ちゃんと、これからも友達でいたいって事もっ!」

美穂「だから……Pくんもっ!一緒に側に居て下さい……っ!」

ようやく、言ってくれた。

それが、とても嬉しかった。

P「……ああ、もちろん」

美穂からのそんな言葉に。

俺も、目頭が熱くなった。
139 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:41:33.97 ID:s+Vwk4lp0



美穂「……っ、あ……あぁぁぁぁぁっ!ずっと、ずっと悩んでたんですっ!怖くて!決められなくて!覚悟が出来なくて!!」

美穂「ごめんね、Pくんっ!ちゃんと、もっと信頼して!きちんと話してれば……っ!」

美穂を抱き締めて、震える身体を撫でる。

頬が濡れているのは、雨のせいにしてあげよう。

P「……さ。明日は、一緒にお祭り行けそうか?」

美穂「……はい。その時に、必ず」

P「ならよし。風邪引くなよ、帰ってあったかくしとけよ」

よくよく考えたら、わざわざ寮の前で話す必要も無かったな。

P「それじゃ、また明日」

美穂「……はい。また明日ね、Pくん」

美穂と別れて、家まで走る。

かなり激しい雨に打たれているが、それもなんだか心地良かった。

P「ただいま、姉さん」

文香「……おかえりなさい、P君。海で泳いできたんですか?」

P「そんな感じ、ダイビングしてた」

文香「きちんと、服を脱いでから泳いで下さい……」

まぁ、恋のダイビングする時はちゃんと全裸だから。

いや言わないけどさ。

文香「……シャワーを浴びたら如何ですか?」

P「うん、そのつもり」

熱々のシャワーを浴びて、部屋に戻る。

濡れたカーテンとプリントがお出迎えしてくれた。

……窓、閉めてくの忘れてたなぁ……

掃除して、ベッドに寝っ転がる。

思った以上に色々と疲れてたのか、俺の意識はあっという間に薄れていった。

140 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:42:03.29 ID:s+Vwk4lp0


土曜日、お祭り二日目の正午。

俺は智絵里ちゃんにラインを送った。

今日、全てを伝える為に。

『今日お祭り行くよな?』

『はい、行きます』

『悪いんだけど、その前に話出来たりしない?』

『大丈夫です』

『十六時に鳥居前で』

『分かりました』

面白いほどの淡白なやり取りだ。

いや面白くは無いんだが。

あ、あとまゆにも会っておこう。

お礼とか色々と言いたいし。

『おーい、まゆー』

『まゆですよぉ』

『まじか』

『まじですよぉ』

『今暇だったりしない?』

『まひですよぉ』

『まひ?』

『ひまです。間違えました』

『んじゃ、そっち行くわ』

『まちますよぉ』

なんだこのやり取り。面白いな。

P「姉さん、出掛けてくるわ」

文香「……あら、どちらに?」

P「寮行ってくる」

文香「お祭りではないのですか?」

P「あ、もちろん。その後お祭り行くから、夕飯は作れないから」

文香「……外出禁止とさせて頂きます」

P「夕飯の食材無いよ?」

文香「鎖国は今より終わりです。さあ、P君……貿易をお願いします」

そんな会話をして、俺は寮へと向かった。

141 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:42:48.73 ID:s+Vwk4lp0


寮の前では、浴衣姿のまゆが待っていた。

P「よう、まゆ。昼から浴衣で暑くないのか?」

まゆ「こんにちは、Pさん。暑いです、褒めて下さい」

P「耐久力と忍耐力あるな」

まゆ「浴衣姿を、ですよぉ……」

P「……なあ、まゆ」

少し真面目に話そうとする。

それだけで、まゆは全てを察した様だ。

まゆ「……いえ、お礼なんて要りません」

P「いや、そう言うなって」

まゆ「でないと……まゆも、辛くなっちゃいますから」

P「……そうか、悪かったな」

まゆ「はぁ……まゆも、自分で選んだとは言え随分な貧乏くじを引きましたねぇ」

P「大凶か?」

まゆ「いえ、大吉ですよぉ。Pさんのお役に立てたんですから」

P「……明日はさ、みんなでお祭り楽しもうな」

まゆ「……はい、楽しみにしています」

P「それと、うん。浴衣似合ってるぞ。凄く綺麗で可愛い」

まゆ「……はぁ。まったく、Pさんは乙女心を分かっていませんねぇ」

P「悪いな、男なもんで」

142 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:43:14.56 ID:s+Vwk4lp0


まゆ「あ、Pさん。一つだけ、お聞きしていいですか?」

P「なんだ?」

すーっと息を吸い込んで。

最高の笑顔をこちらに向けて。

まゆ「まゆと、お付き合いしてくれませんか?」

あぁ、本当に。

まゆには頭が上がらないな。

P「出来ないな、俺は美穂の事が大好きだから。それでも、これからも友達でいてくれないか?」

まゆ「はい、もちろんです」

P「……簡単だけど、難しいなぁ」

まゆ「ですねぇ。さ、Pさん。これからも頑張って下さいね」

P「あぁ、また後でか明日な」


143 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:43:41.96 ID:s+Vwk4lp0



夏の十六時は、まだ明るい。

空の色は青く、眩しい太陽はまだまだ沈んでくれそうにない。

P「……どうだ?美穂」

美穂「……はい、大丈夫です。Pくんが、手を握ってくれていますから」

鳥居の前で、手を繋いだ美穂とそんなやり取りをする。

これから言わなきゃいけない事は、きっと凄く辛いし勇気がいると思うけど。

それでももう、美穂は震えていなかった。

智絵里「……こんにちは、Pくん、美穂ちゃん」

美穂「……来てくれてありがとう、智絵里ちゃん」

智絵里ちゃんが、来てくれた。

もう全部分かっているんだろうに、それでも来てくれた。

それが、本当に嬉しくて……辛かった。

智絵里「……二人で、待ってたんですね」

美穂「うん、だって……恋人だもん」

智絵里「……羨ましいです……とっても」

そんな智絵里ちゃんの目は、既に溢れそうなほど潤んでいて。

それでも、ここに居てくれて……

美穂「……ねえ、智絵里ちゃん」

智絵里「……はい、なんですか……?」

美穂「……ねぇ、智絵里ちゃん。わたし、謝らないといけないんだ」

智絵里「そう……ですか……」

美穂「……初めてPくんの家で遊んだ日の事。お互いの恋が上手くいくといいね、って。わたし、智絵里ちゃんの好きな人がPくんって知らなかったから」

美穂が、大きく息を吸って。

握り締めた手を、更に強くして。

そして、言葉にした。

144 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:44:19.29 ID:s+Vwk4lp0


美穂「……ごめんね、智絵里ちゃん……っ!わたしたち、付き合ってるんです……っ!!」

智絵里「……そう、ですよね……はい、知ってました」

美穂「応援したのに、わたしが……それを、謝りたかったの」

智絵里「……やっと、言われちゃったんですね」

美穂「うん……言っちゃった」

智絵里「ずっと、このまま……そんな風に思ってたのは、わたしだけだったのかな……」

美穂「このままじゃいられない、って……そう気付いたんだ」

智絵里「……そう、ですよね。美穂ちゃんからしたら……」

美穂「ううんっ!わたしだけじゃない!きっと、誰も幸せにはなれないからっ!!」

智絵里「……美穂ちゃんにとって……わたしは……」

美穂「智絵里ちゃんは……わたしにとって……っ!」

智絵里「迷惑、だったよね……もう、一緒に居たくないよね……」

美穂「大切なっ!お友達だからっ!!」

美穂の声が、大きく響いた。

智絵里ちゃんが驚いているのは、声の大きさか、それともその言葉にか。

美穂「ずっと言いたかった!言えなかった!だって、最初にこんな風にしちゃったのはわたしだからっ!わたしが、向き合おうとしなかったから!!」

智絵里「……ううん、美穂ちゃんだけじゃないです……」

美穂「逃げ続けて、本当にごめんね!わたしが、もっと……強かったら……っ!」

智絵里「……どうして、今日は……逃げてくれなかったんですか?」

美穂「大切な恋人の為だから!大切なお友達の為だから!!」

美穂「これ以上逃げてたら……きっとわたしは、どっちも失ってたと思うの」

美穂「そんなの嫌だもん!Pくんと恋人でいたい!でも、智絵里ちゃんと友達でいたい!どっちかなんて選びたくない!!」

美穂「したたかだと思うけど!ワガママだと思うけど!!それでも!わたしにとって、どっちも大切なものだから!!」

美穂「だから……っ!お願いだから!これからも!わたし達と友達でいて!いさせてっ!!」
145 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:44:59.09 ID:s+Vwk4lp0


智絵里「……美穂ちゃんは、強いね……」

美穂「強くなんかないよ。ずっと逃げてたんだもん、でも今は……こうして、支えてくれる人がいるから」

一瞬此方に視線を向ける美穂。

その瞳は、涙で潤みながらも強い視線を放っていた。

P「……智絵里ちゃん、俺からも頼む。これからも……俺たちと、友達でいてくれないか?」

智絵里「……振られ……ちゃったんですね……」

P「あぁ、恋人が既にいる。大切な人がもういる。そして……その上で、智絵里ちゃんとは友達でいたいんだ」

智絵里「……わたしにとって、美穂ちゃんとPくんは……とっても、大切なお友達です」

智絵里「……そんな二人に、そうやって頼まれちゃったら……」

智絵里「……断れる訳……無いじゃないですか」

美穂「……ありがとう、智絵里ちゃん」

智絵里「……本当は分かってたんです……美穂ちゃんが、とっても辛い思いをしてるの……それでも、諦められなくって」

智絵里「まだ大丈夫、これくらいなら大丈夫って……そんな風に、美穂ちゃんが何も言わないのをいい事に、わたしは……」

智絵里「……そんな、わたしなのに……友達でいても、いいんですか……?」

智絵里ちゃんは、今日呼び出されて。

友達でいられなくなるかもしれない、と。

そこまで、覚悟してたのか。

それでも止まれなかった程の強い想いだったのに、それでも来てくれた事が。

本当に、嬉しかった。

146 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:45:36.68 ID:s+Vwk4lp0



美穂「……ねえ、智絵里ちゃん」

智絵里「……っ……うぅ……ごめんね、美穂ちゃん……」

美穂「……良かった……うぁぁぁっ!本当にっ!ありがとうっ!うぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」

智絵里「っうぅぁ……美穂ちゃん……っ!ごめんね……ほんとに、ごめんね……っ!」

美穂「怖かったよぉ!智絵里ちゃんに、に、嫌われちゃうなんてっ!本当に……っ!ずっと怖かったの!不安だったの!!」

智絵里「ごめんなさい……っ!わたしが……っ!ぁぅっ!」

美穂「もっと早くに言えればよかったのに!もっと信じればよかったのに!!わたしがっ、弱いせいで……っ!!」

智絵里「あぁぅぅぅぁっ!わたしもっ、弱いからっ!諦める勇気が無かったからっ!!」

美穂「っうぅぅぁぁぁんっ!ごめんねっ!遅くなってっ!向き合えなくってっ!!」

美穂が、智絵里ちゃんに抱き付いて泣きじゃくった。

智絵里ちゃんも、美穂を突き放す事なく泣き続けた。

ようやく二人とも向き合えて、本当に良かった。

李衣菜「……」

P「……ん?李衣菜?」

気付けば、鳥居の裏に李衣菜が立っていた。

そこは、美穂と智絵里ちゃんからは見えない位置で。

李衣菜「……そっか、うん。良かったね、全部済んだみたいで」

P「李衣菜は知ってたのか?」

李衣菜「私だって、全部じゃないけど気付いてたからね。美穂ちゃんが悩んでたのも、智絵里ちゃんが諦め切れなかったのも」

そう言えば、李衣菜は智絵里ちゃんと修学旅行の部屋が同じだったのか。

その時に、話を聞いていたのかもしれない。

李衣菜「ま、私は頼って貰えなかったんだけどね。そういうのは何も言われてない私が口出しするものじゃないし」

P「頼られた俺が羨ましいか?」

李衣菜「まさか、それこそPがやるべき事でしょ」

P「それもそうだな」

李衣菜「でも……良かった。私、一年生の時からずっと美穂ちゃんの事応援してたんだ」

P「そうだったのか」

李衣菜「そうだったんだよ。ま、そろそろ私は去らないとね。二人とも泣き止むんじゃない?」

P「……ありがとな、李衣菜」

李衣菜「お礼はいいから、美穂ちゃんの事ちゃんと幸せにしてあげてよ?」

P「もちろん。言われなくてもそのつもりだよ」

李衣菜が、二人からは見えないように離れて行った。

147 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:46:04.85 ID:s+Vwk4lp0


智絵里「……あの、Pくん……」

P「ん?なんだ?」

智絵里「……えっと……色々と迷惑かけちゃって、ごめんなさい……」

P「……俺こそ、ごめんな。凄く自分勝手な事言って」

智絵里「い、いえ……それでも、やっぱり……友達でいて欲しいって言われて、嬉しかったですから」

そんな智絵里ちゃんの表情は、既に笑顔に変わっていた。

涙の跡は、まだ残っているけれど。

それもすぐに、夏の暑さに消えてゆきそうで。

P「……明日は、みんなで一緒に遊ぼうな」

智絵里「……っ!……はい……っ!」

頷いて、また涙が溢れ落ちて。

それでも、笑顔で。

そんな智絵里ちゃんと、これからも友達でいられる事が嬉しかった。

智絵里「……また、明日。楽しみにしてますから」

そう言って、智絵里ちゃんは帰って行った。

P「……良かったな、美穂」

美穂「……うん。本当に、良かったです……」

抱き付いて、胸に顔を埋めてくる美穂。
148 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:46:36.35 ID:s+Vwk4lp0


そんな美穂の頭を撫でた所で、ようやく俺は気付いた。

まゆ「…………」

加蓮「…………」

まゆと加蓮が、物凄いジト目でこっちを見ている事に。

P「……な、なぁ美穂。少し離れてみたりしないか?」

美穂「……ダメ、です……離れたくないです。もうちょっとだけ、このままで……」

加蓮「……泣かせたの?」

まゆ「泣かせてますねぇ」

美穂「えっ?!加蓮ちゃん?!まゆちゃん?!」

美穂が飛び跳ねて、頭を俺の顎にぶつけた。

とても痛い。

まゆ「……見せつけてくれますねぇ」

加蓮「何があったの?喧嘩?痴話喧嘩?」

まゆ「加蓮ちゃんは喧嘩関連以外の単語を知らないんですかぁ?」

加蓮「思考が短絡的過ぎて言い返す気すら起きないんだけど」

まゆ「思考放棄してる加蓮ちゃんよりはマシですよぉ」

美穂「あ、あわわわわわ……だ、抱き付いてるところを見られちゃってたんですね……」

P「良いんじゃないか?今日は俺と美穂の二人きりでのデートなんだから」

美穂「で、ですよねっ!もう一回!もう一回抱き着こうと思いますっ!ぎゅ、ぎゅーーっ!!」

加蓮「……うぇ、早くしょっぱいポテト食べたい」

まゆ「お塩撒いてあげますよぉ。はい、鬼はー外、鬼はー外」

加蓮「なんでまゆは塩持ち歩いてるの?!」

まゆ「実はただの砂ですよぉ」

元気な二人だなぁ。

周りからの視線が痛い。

P「……美穂。やっぱりそろそろ離さない?」

美穂「一生離しませんっ!」

P「周りの人見てるから。みんなが見てるから。注目されてるから」

美穂「……Pくんが抱き締めて、わたしを隠して下さい」

P「俺だけ恥ずかしいやつじゃん」

まあ、それでも。

これで心置き無くお祭を楽しめる。

やっと、ようやく。

俺たち二人きりの夏祭りは始まった。


149 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:47:03.09 ID:s+Vwk4lp0



……筈だった。

加蓮「ねえ鷺沢!ポテト!ほら見てポテト!」

まゆ「Pさぁん!どこですかぁ?」

李衣菜「ひゃっほーう!見て見て!射的でギターのピック落としたんだ!」

P「……なんで着いてくるんだ」

美穂「ふ、二人っきりの筈だったのに……」

加蓮「あ、気にせずいちゃいちゃしてて良いよ。私達は冷やかすだけだから」

まゆ「Pさぁん!きゃっ、せっかく引いた大吉のおみくじを落としちゃいましたぁ……!」

李衣菜「まゆちゃーん!こっちこっち!」

……とても、五月蝿い。

俺と美穂が手を繋いで歩く、その1メートル程後ろがとても騒がしい。

そして、智絵里ちゃんは……

智絵里「……っ!……っ!」

ドンッ!ドンッ!!

神社の太鼓体験コーナーで、無表情で太鼓を叩いていた。

まるで鬱憤を晴らすかの様に激しい音が聞こえてくる。

時折とても良い笑顔で此方を見てくるのが非常にこう、うん。

美穂「せ、せっかくのデートが……」

P「ま、明日こそ二人っきりでさ」

李衣菜「ひゅーひゅー」

まゆ「させませんよぉ。明日はみんなで回る約束ですからねぇ」

150 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:47:34.72 ID:s+Vwk4lp0


P「……難しそうだな。仕方ない……っ!」

美穂「きゃっ!」

繋いだ手を少し強く引き、祭りの喧騒を駆け抜ける。

加蓮「あっ、逃げた!」

まゆ「まゆからは逃げられませんよぉ」

李衣菜「まゆちゃんそっちじゃない!逆逆そっちお手洗い!」

逃げるが勝ちだ、俺たちに静かにいちゃいちゃさせろ。

人混みをかき分けて、神社の境内に辿り着いた。

これでしばらくは見つからないだろう。

そして、ここなら……

美穂「……えへへ、二人っきりですね」

P「だな。あとそろそろな筈だけど……」

美穂「何がですか?」

美穂がそう言ったのと、ほぼ同時に。

ドンッ!と。

空に、大輪の花が打ち上がった。

P「ここなら、花火が見やすいからな」

美穂「わぁ……とっても綺麗……」

ぱちぱちと空に弾ける光に、美穂の顔が照らされる。

そんな美穂の横顔は、とても綺麗で……

151 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:48:42.01 ID:s+Vwk4lp0


美穂「っ?!」

どうしてもしたくなって、唇を軽く重ねるだけのキスをした。

美穂「……もう、Pくん……」

P「ごめん、あまりにも綺麗でさ」

美穂「花火が、ですか?」

P「美穂がだよ」

美穂「……あ、ありがとうございます……っ!」

ようやく、何かに悩むことなく恋に溺れられる。

頭を空っぽにして、美穂との日々を詰め込める。

美穂「……ねえ、Pくん」

P「ん?なんだ?」

そう聞き返そうとして。

ちゅっ、と。

俺の唇は、美穂の唇に塞がれた。

美穂「えへへ……ええと、これからもきっと、いっぱい迷惑かけちゃったり頼っちゃう事はあるかもだけど……」

P「どんと来い。それ以上に迷惑かけてやるから」

美穂「わたしの想い、受け止めて下さい!」

P「俺でよければ、いつだって」

美穂「はい……っ!Pくん!」

打ち上げられた花火なんて目に入らないくらい。

目の前の美穂の笑顔は、キラキラと輝いていた。

美穂「これからもずっと!わたしのこと、見てて下さいねっ!」



美穂√ 〜Fin〜



152 : ◆TDuorh6/aM [saga]:2018/01/31(水) 02:49:09.62 ID:s+Vwk4lp0
以上です
お付き合い、ありがとうございました
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/31(水) 06:56:10.87 ID:esN/aDgy0
乙でした
残りの√も頑張ってください
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 11:31:33.28 ID:LsHUcZFLO

サブヒロインルートはちひろさんか文香か
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 15:13:39.57 ID:myamFSq7o
投下終わったその日に限定SSRとはたまげたなぁ……
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/31(水) 21:18:07.93 ID:DIhnY8rSo
おつおつ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 01:33:38.62 ID:pWMW9UlV0
ルート終わったあとにLove∞Destiny聴いたら見えないはずのエンディングロールが見える……
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/01(木) 12:06:41.41 ID:8WIzWhop0
運営が読んでるかと思った乙
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