阿良々木「忍野が怪談を解決して行く?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 05:17:36.51 ID:kXRWmwK70
※ちょっぴりホラーです

忍野「あぁ、と言うか解決するのは二の次で、本当の所は蒐集がメインなんだけれどね」

阿良々木「うーん、そう言われてもな。知っての通り、僕は交友関係が広い方じゃないから、そういう都市伝説みたいな話を耳にする事自体少ないんだよな」

忍野「まぁまぁ、そう難しく考えなくても、阿良々木君が昔体験した不思議話でも良いんだ。語るのは得意だろう?何か試しに語ってみてくれよ」

阿良々木「……まぁ、そう言うなら。まだ上の妹が小学生の頃の話なんだけれど」

阿良々木「当時はまだ、妹の道場通いに親がついて行ってたんだ。ただ、その日は仕事か何かで行けないから、代わりに僕が送迎係だった____」

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:19:05.15 ID:kXRWmwK70
火憐「なぁなぁ、兄ちゃん!多分そろそろ私、兄ちゃんと喧嘩しても勝てると思うんだ!」

阿良々木「そう言うことは身長で勝ってから言え」

火憐「え?何言ってんだ?もう私のが高いだろ?」

阿良々木「そんな訳あるか!僕はもう中学生だぞ!小学生の妹なんかに…」

火憐「ほれ」

阿良々木「目線が…僅かに上にあるッ!?」

火憐「や〜い、兄ちゃんのチービ!」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:20:07.41 ID:kXRWmwK70
阿良々木「くっ…そんな馬鹿な…!いや、だがまだだ!女子は男子より成長期が早いだけだ!」

火憐「うーん、でも私、将来的には180くらいまで伸びそうな気がするなー」

阿良々木「それは、それだけはないと断言しておこう。両親でさえ180はいっていないんだ」

火憐「いやぁ、でもさ、もうなんてーの?頭の中ではっきりイメージできるんだよねー。20p以上低い兄ちゃんを見下ろす将来が」

阿良々木「何故僕の将来が170未満という前提なんだ!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:21:17.89 ID:kXRWmwK70
忍野「ちょっとストップ」

阿良々木「うん?なんだ、まだ不思議な所は出てきてないと思うけれど」

忍野「うん、そうだね。不思議なくらい不思議までが遠いよ。この流れは今回の怪談に繋がるのかな?」

阿良々木「いや、この強さ談義があったせいで、僕たちはこの後、肝試しで肝っ玉の強さを比べようと言う話になるんだ」

忍野「強さ談義と言うか、阿良々木君の身長コンプレックスの発端を垣間見ただけの気がするけど…まぁいいや、続けてよ」

阿良々木「まぁ、当然その後の肝試しで不思議に出会うんだ」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:23:00.93 ID:kXRWmwK70
火憐「おぉ!ちょうどいい所に市民の森だぜ!」

阿良々木「ちょうどいいって、何にちょうどいいんだ?」

火憐「黄昏時の、薄暗い森なんて、やる事は一つしかないだろ?」

阿良々木「妙にワクワクしてる所悪いが、僕は嫌な予感しかしないぞ」

火憐「それに、肝試しには持ってこいの噂もあるし!」

阿良々木「…噂?」

火憐「この森に1人で入ると、烏に連れ去られるとか、異世界に飛んで帰って来られないとか…」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:24:12.93 ID:kXRWmwK70
阿良々木「ふーん、じゃあ、行ってらしゃい」

火憐「えぇ!?兄ちゃんは行かねーのかよ?」

阿良々木「いや、だってその噂が本当なら、2人で入ったって意味ないじゃん」

火憐「はっ!そ、そうか!解ったぜ兄ちゃん!不肖、この阿良々木火憐がこの森の安全性を確認するまで待っていてくれ!」

阿良々木「…安全確認されちゃったら、僕の肝試しにならないけどな」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:26:00.56 ID:kXRWmwK70
阿良々木「結局、その後1人ずつ入って無事に出てきたんだ」

忍野「うん?それはつまり、その森の噂が怪談だったって事で良いのかな?阿良々木君の語りにしちゃあ、随分とオチの弱い話だね」

阿良々木「そもそも僕は漫談家じゃないからな。と言うか、そうじゃなくて。この話には続きがあるんだよ」

忍野「肝試しでは何も起こらなかったのに?」

阿良々木「いや、確かに無事に出て来る事は出来たけど、何も起きなかった訳じゃ無いんだ」

阿良々木「出てきた後、『何だよこの森!本気で怖いじゃん!倒れた地蔵とかあるし!』って火憐ちゃんに文句を言ったんだ」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:27:26.37 ID:kXRWmwK70
忍野「火憐ちゃん…あぁ、大きい方の妹さんか」

阿良々木「……そしたらその大きい方の妹が『何言ってるんだ、兄ちゃん?地蔵なんて何処にもなかったぞ』と僕を見下ろしながら、物理的にも精神的にも見下ろしながら言ったんだ」

忍野「倒れた地蔵ねぇ…それは何とも怪談向きの話だね」

阿良々木「あぁ、ただ、決して一本道だった訳じゃないから、途中で違う道を通ったんだろう、と言うことでその時は納得したんだよ」

忍野「それで無くとも、夕暮れ時の薄暗い森の中なんて、見落としや見間違いの可能性はあるしね」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:28:49.45 ID:kXRWmwK70
阿良々木「でも、問題はここからなんだ。当時、既にファイヤーシスターズの前身的な活動をしていた妹達が、その地蔵の目撃情報が多数ある事を教えてくれたんだ」

忍野「それは、全員が目撃しているのかい?」

阿良々木「いや、ほとんど半々だって言ってたっけな。兎に角、見た人と見ていない人とが居たんだよ」

忍野「まぁ、半々だと言うなら、阿良々木君がさっき言ったように、ルートの違いなのかもね」

阿良々木「そう思って、僕も後日見に行って見たんだ。色々あったから、数ヶ月経っちゃってたけど。全部のルートを虱潰しに」

忍野「それで、地蔵は見つかったのかい?」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:30:21.15 ID:kXRWmwK70
阿良々木「いや、無かったんだ。それ以降、時折妹達の情報網を使って調べてもらっても、目撃情報はなかった」

忍野「はっはー。中々に興味深い話だったけれど、恐らく今回のケースに超常的な事は絡んでいないね。ま、話を聞いただけじゃ断定までは出来ないけど」

阿良々木「超常的な事は絡んでいない?全部物理現象としてあり得るって事か?」

忍野「勿論、全部がそうかは判らない。ただ、神出鬼没の地蔵については、そうだね。ほぼ100%間違いないと思うよ」

阿良々木「?地蔵以外に不思議な話があったか?」

忍野「何だい、阿良々木君。自分が語った内容も忘れてしまったのかな」

阿良々木「おい忍野、勿体ぶらずに教えてくれよ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:32:02.63 ID:kXRWmwK70
忍野「じゃあそうだね、まず地蔵の話をしよう。そこら辺にゴロゴロしているお地蔵様、どうして作られるんだろうね?」

阿良々木「え?そりゃ…それぞれ何かしらの由来なり霊験なりあるんじゃないのか?」

忍野「その通りだ。お地蔵様って一括りに言っても、様々な役割がある。珍しいモノだと、子宝地蔵なんてものもあるらしいよ。幼い頃、何も解らずに拝んでたもんだ」

阿良々木「どうでもいいけど、それが今回の話と関係あるのか?」

忍野「さっきの意趣返しかい?元気が良いねぇ、何か____」

阿良々木「それはもう聞き飽きた」

忍野「君は語るのは好きだけど傾聴するのは好きじゃないみたいだね。そんなんじゃ、大人になったら苦労するよ?」

阿良々木「それはお前の喋り方が回りくどいだけだ!」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:34:12.31 ID:kXRWmwK70
忍野「ま、いいや。それで、地蔵の話だけど、古くからあるものは、その場所の伝承を反映していたり、霊的に重要な場所を守ってたり、ってのもある」

忍野「けれど、新しく作られる場合、それは殆どが同じ理由なんだ」

阿良々木「新しく作られる場合…?」

忍野「事故の多発地域に置かれたりする。勿論、人々の恐怖を煽って速度を落とさせるとか、そう言った狙いもあるだろうけど」

忍野「どうなんだろうね、事故で身内を無くしたご遺族なんかは、どんな気持ちでそれを拝むのかな」

阿良々木「…供養の意味もあるのか」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:35:24.24 ID:kXRWmwK70
忍野「そして、今回のケース。さして深い森でもないし、聞いている限りでは車が出入りするような場所ではないんだろう?」

阿良々木「あぁ、市民の森って言うくらいだから、公園施設も兼ねてるんだ。だから、バイクでさえ入れないよ」

忍野「となると、事故が多発する場所とは考えにくい。つまり、役所や警察が、防止策として置いた地蔵ではなかった訳だ」

阿良々木「じゃあ、あれは…」

忍野「うん、ここまで言えば大体解るかな。遺族が置いた、供養のための地蔵だったんだろう」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:36:17.78 ID:kXRWmwK70
阿良々木「でも待てよ忍野、見えたり見えなかったりするのは、怪異現象じゃないんだろ?」

忍野「それについては、阿良々木君の予想通り、ルートの違いだろう」

阿良々木「じゃあ、唐突に消えた理由は?」

忍野「それは本当にその場からなくなったんだよ。勿論、地蔵が勝手にいなくなった訳じゃない。公的に、排除されたんだ」

阿良々木「…倒れていたから?」

忍野「この場合、それは関係ないだろうね。いや、あるのかな。倒れていたから誰かが役場に連絡したのかも知れない」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:37:37.00 ID:kXRWmwK70
忍野「兎に角、阿良々木君が地蔵を目撃した前後で、役場は地蔵の存在を知ったんだろう。公的な場に、私的に作られた地蔵を」

阿良々木「それで…役所が撤去したって事か?」

忍野「勿論、急にでは無かったはずだよ。阿良々木君がもう1ヶ月早く確認に行っていれば、撤去通知が貼られた地蔵に出会ったかもね」

阿良々木「成る程…。ん?ちょっと待てよ?確か最初に、全部が怪異と関係ないかどうか判らないって言ってなかったか?今の話だと、怪異の絡みようがない気がするんだけれど」

忍野「おいおい、君はちゃんと話を聴いていたのかい?聞くだけじゃ聴いた事にはならないんだぜ」

阿良々木「でも全部人為的な事で説明がついたような…」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:38:59.69 ID:kXRWmwK70
忍野「最初の噂と、そこにあった地蔵。これらから考えられる事はなんだと思う?」

阿良々木「最初の噂?」

忍野「全く、君は解説者泣かせだねぇ。勿論いい意味でだけど。これだけ鈍いと解説のし甲斐があって嬉し泣きしそうだよ」

忍野「そもそも阿良々木君が、その場所で肝試しをしようとしたのは何故だい」

阿良々木「あっ…」

忍野「『1人で入ると二度と出られない』と言う曰く付きの森だったんだろう?」

阿良々木「つまり、現実に行方不明者が出ているって事か?」

忍野「どうだろうね。地蔵を建てられている所を見ると、亡くなっていたのかもしれない」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:40:33.68 ID:kXRWmwK70
阿良々木「…怪異じゃないと良いな。人を死に追いやる様なレベルの怪異が、まだ居るなんて考えたくもない」

忍野「本当にそう思うかい?僕としては、まだ怪談であった方が救いがあると思うけどね」

阿良々木「人が死んでるかもしれないって言うのに?」

忍野「人が死んでいるかもしれないから、さ。考えても見なよ。怪異が絡まず、事故の起きない森で、人が死んでいた理由ってやつをさ」

阿良々木「自殺…か。確かにそれは、浮かばれないな」

忍野「はっはー!本当に君ってやつはお人好しだね。もう一つ、可能性があるだろう?」

阿良々木「それは____本当に考えたくないな」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 05:42:43.53 ID:kXRWmwK70
おしまい
題材と時間を頂ければ、も少し忍野くんに解決してもらいたいなぁと思っておりますが
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:02:39.54 ID:kXRWmwK70
忍野「さて、どうかな。一つ語った事で何か別の話を思い出したりとかはないかい」

阿良々木「うーん。無くはないんだけれど、これはさっきの話と比べると随分おとなしいと言うか、インパクトに欠ける話なんだが…」

忍野「何でも聴かせてくれよ。僕と阿良々木君の仲だ、話が詰まらなかったくらいで文句は言わないさ」

阿良々木「随分始めの方に文句言ってた気がするけどな…」

忍野「あれ?そうだったかな」

阿良々木「まぁいいや。これも、火憐ちゃんの道場に着いて行った時の事なんだけど」

忍野「同じ日に二回も不思議体験をしたのかい?何だか、ここ数年の君の不思議体験を彷彿とさせるね」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:03:31.44 ID:kXRWmwK70
阿良々木「いや、同じ日に、って訳じゃないんだ。僕の両親も職業柄多忙でさ、僕が送迎係を引き受ける事は少なくなかったんだよ」

忍野「成る程。まぁそれにしたっておかしな話だけどね。普通の人間は、一生に一度怪異に行き遭えば多い方なんだから」

阿良々木「それはまぁ、反省しているよ。手当たり次第って感じだったから。ただまぁ、今回の場合は、怪異とは違う気もするんだ」

忍野「怪しくない怪談、と言うのも変な話だね」

阿良々木「いや、怪しくはあるんだよ。普通に怪しい怪談だ。火憐ちゃんの所の道場ではないんだけど、近くに武道館があるんだ。三階建くらいの、結構デカイのが」

忍野「寧ろ武道館があるのに別個に道場を持ってるという、妹さんの通う所の方が凄い気がするけどね」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:04:17.93 ID:kXRWmwK70
阿良々木「その武道館の周囲と言うのが、また肝試しスポットになっていて」

忍野「この街の人達はよっぽど肝試しが好きなんだね。普通、一つの街に一つもあれば充分だろうに」

阿良々木「その内容と言うのが、武道館の外周を夜中に一周するとお化けに会う、なんてありふれたものだったんだ」

忍野「確かに、小学生でも思いつきそうなありふれた話だ」

阿良々木「それまでにも、何度も妹たちにせがまれて行ったことはあったんだ。ただ、その日はいつも右回りで行くところを、左回りで行ってみようと言う事になったんだ」

忍野「なんでいつもは右回りだったんだい?」

阿良々木「何で…?あぁ、確か左回りの方は柵があったんだよ。別段高いものじゃないから、乗り越えられなくはなかったけど」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:05:01.12 ID:kXRWmwK70
忍野「本当にそれだけかな。例えば、噂の中で右回りじゃないといけない、みたいな事は言及されてなかった?」

阿良々木「どうだろうな…。何分昔の事だから、正確には覚えていない」

阿良々木「兎に角、柵を越えて左回りルートで進んで行ったんだ。すると、半分くらい行った頃かな、誰かが座り込んで居たんだ」

忍野「それは女性かな、それとも男性?」

阿良々木「多分女性だったと思う。髪が長かったし」

忍野「おいおい、今の君がそれを言うかい」

阿良々木「体調を崩しているのかと思って、近寄ったんだ。そして『大丈夫ですか』と肩を揺すってみた」

忍野「君はそう言う所、昔からそのままだったんだね」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:05:56.05 ID:kXRWmwK70
阿良々木「その人は何も答えず、ゆっくりと立ち上がったんだ。思わず後ずさった僕を目で捉えると、走って追いかけてきた」

忍野「はっはー!何ともB級のスプラッター映画にありそうな展開だね」

阿良々木「笑っているけどな、忍野。当時は本気で怖かったんだからな」

阿良々木「それで、そのまま全速力で武道館の正面まで戻ると、その人は着いてこなかった。引き返してみても、居なかったんだ」

忍野「待ってくれ阿良々木君。引き返した?そんな怖い思いをしたのに君は引き返したのかい?」

阿良々木「…実は肝試しに参加したのは、僕達兄妹だけじゃなかったんだ。その武道館で武道を習っていた子達も何人か一緒だった」

阿良々木「でも正面に戻ってきた時、その内の1人が居なかったんだ」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:06:52.41 ID:kXRWmwK70
忍野「…神隠しにでもあった、と?」

阿良々木「いや、幸いにもその子は途中で転んだだけだったよ。地面に顔から突っ伏してたから、追跡者のその後も解らないってさ」

忍野「阿良々木君、君は先程から意識的にか無意識にか、その追跡者の正体が幽霊でないと断定しているね」

忍野「何か知っているのかな」

阿良々木「…見たことのある顔だった、気がしたんだ」

忍野「ま、男か女かも断定できない状態で、知り合いの顔を被せてしまうと言うのはない話でもない。ましてや、怪異なんてものは、どう観測されるか、によって変質したりもする」

阿良々木「つまり、アレは本当に幽霊だったって言うのか?」

忍野「そうだね、少なくとも今の話からすると、人間ではないと思うよ」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:07:50.06 ID:kXRWmwK70
阿良々木「確かに急に消えたのは不思議だったけど、何も周りに隠れる場所がなかった訳でもないし、そもそもそんな驚かすだけの怪異なんて…」

忍野「驚かすだけの怪異なんて、それこそ腐る程居るさ。寧ろそっちの方が多いくらいだ。君が今まで出会ってきた、人に害をなす怪異の方が希少なんだよ」

忍野「順番に考えていこうか。まず、何故その肝試しコースが右回りだったのか」

阿良々木「それはさっきも言っただろ。柵があったから…」

忍野「それは順序が逆なのさ。柵があったから右回りコースしかないんじゃなくて、左回りコースを封じるための柵なんだ」

阿良々木「それは同じ事じゃないのか?」

忍野「全然違うね。かつては左回りもあったんだよ、恐らくは。と言うか、元々左回りが肝試しには使われていたんじゃないかと思うよ」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:09:20.54 ID:kXRWmwK70
忍野「こんな話を知っているかな。背後に何かの気配を感じた時、左から振り向いてはいけない」

阿良々木「あぁ、聞いたことがある。確か左から振り返ると見えるんだっけか、幽霊が」

忍野「そう、その通りだ。そして、左に振り向く時と言うのは、人間は左右どちらに回るかな」

阿良々木「左に振り返るんだから、そりゃ左回りに…」

忍野「そう、左回り。お化けがでると噂のスポットで、見えやすい向きに回ったんだ。そりゃ出るよ」

忍野「ただ、今回のケースは、そこまで深刻なものじゃないよ。阿良々木君が知り合いの顔を見てしまったように、恐らく全員が違うものを見ているはずだ」

忍野「それは即ち、そこで亡くなった人の霊とかではないと言う事だ。自身の無念を伝えたいなら、自分の見た目を変えちゃあ意味がないからね」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:10:21.86 ID:kXRWmwK70
阿良々木「じゃあ、あの柵は…」

忍野「あぁ、あれは別に専門家の仕事とかそう言うことではないと思うよ。余りにも左回りでの目撃翌例が、目撃翌霊が多いから封鎖したってだけだろうね」

阿良々木「じゃあなんで右はそのままだったんだ?」

忍野「塞ぐ必要がないからさ。右回りじゃ見えないから。それと、両方塞いじゃったら、肝試しに来た人達はどちらかの柵を越えて行くだろうからね。敢えて空けていたと言うのもあるんだろう」

阿良々木「じゃあこの怪異については…」

忍野「うん、特に何もしないよ。何度でも言うけれど、怪異だからって何でもかんでも退治すればいいってものじゃないんだ」

忍野「その理論で行くと、僕は君や忍ちゃんでさえ退治しなければいけなくなるからね」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 15:13:23.81 ID:kXRWmwK70
おしまい
ありふれた怪談でもいいので
何か思いついたらネタをください
それまでは、思いつく限り書いていきます
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/03/30(金) 16:25:16.18 ID:kXRWmwK70
阿良々木「あ、こんなのもあったな」

忍野「お、どんなのかな?」

阿良々木「ちょっと時間は進むんだけれど、大学で一人暮らしをしているやつの話なんだが…」

忍野「阿良々木君大学生編か」

阿良々木「僕の話じゃない。そいつが住んでいるアパートは、どうも壁が薄いらしく夜中に歌っているとよく壁ドンや天ドンをされていたらしい」

忍野「一人暮らしで夜中に歌っているって…隣人からしたらそっちのがよっぽどホラーな気はするけどね」

阿良々木「あぁ、まぁ本人も気を付けてはいたらしいけれど、どうも気付くと歌っちゃう癖があったんだと」

忍野「なんだい、歌姫の幽霊にでも取り憑かれたって話かな」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 16:26:30.77 ID:kXRWmwK70
阿良々木「それは単にそいつの性質であって、不思議でもなんでもない!」

忍野「いやいや、歌が苦手な僕にとっちゃ充分不思議だけれどね。それで?」

阿良々木「まぁここまでならよくありがちな話なんだが、ある日、ふと友人に言われたらしい」

阿良々木「『この部屋、夏は涼しくて良いけれど、冬は外よりも寒いよな』って」

忍野「それはどちらも、『外気温より室温の方が低い』と取れるね」

阿良々木「そうなんだ。それで、ちょっと気になっちゃったらしく、あるお呪いを試みたんだ」

忍野「僕からすれば、安易にそう言うことをしない方が良いと思うけれど。それで、どんなお呪いだったのかな」

阿良々木「玄関を想像して、イメージの中で入口から順番に見て回る、というものだったらしいんだけど」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 16:27:28.78 ID:kXRWmwK70
忍野「あぁ、途中で何か見えた場合、そこには実際に何かが居る、ってヤツだね。ただこのお呪い自体は、成功率はそこまで高くない筈だ。それに、殆どの場合何もいないから、成功したのかどうかも判別できない」

阿良々木「あぁ、そいつも、何かが見えた訳じゃないらしい」

忍野「奇妙な言い方をするね、何も見えなかった、じゃなく何かが見えたわけじゃない、なんて」

阿良々木「そこなんだ。見えたわけじゃない。寧ろ見えなきゃいけないものが見えなかった。浴室だけは、どれだけ想像力を働かせても、真っ黒に塗りつぶされていたんだ」

忍野「浴室…そりゃまた怪談には持ってこいだね」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 16:28:31.18 ID:kXRWmwK70
阿良々木「まぁ、それでも何かの間違いだと思って忘れようとしたらしいけれど。家賃も安くてそこそこ広かったから」

忍野「因みに、どれくらいの部屋だったのかな」

阿良々木「八畳一間、キッチンありでセパレートタイプ。これで家賃は3万を切っていたらしい」

忍野「ははーん、成る程ね。いくら地方都市とは言え、いやど田舎だったとしても、その安さは中々無いだろうね」

阿良々木「ホームレスに家賃相場を説かれても釈然としないな…」

忍野「失礼だね、君も。僕だって中退したとは言え、大学生だった頃があるんだよ」

阿良々木「想像できないなぁ」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 16:29:33.52 ID:kXRWmwK70
忍野「ま、今と余り変わらない生活だったけれどね」

阿良々木「やっぱホームレスかよ!」

忍野「いやいや、住所不定じゃ色々面倒な所もあったからね。書類上の家はあったよ。ただ帰っていなかっただけで」

阿良々木「…話を戻すけど、そんな物件だったから手放すのは惜しいと考えたんだ」

阿良々木「何事もなく、時折叩かれる壁や天井に耐えながら一年が過ぎた。珍しく大家さんが管理人室に居たので、挨拶をしに行ったんだ」

忍野「何だか段々他人の話をしてる風じゃなくなってきたね」

阿良々木「いちいちらしいとか付けるのが鬱陶しくなっただけだ。僕の場合、怪異絡みだったらすぐに忍が気付くさ」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/30(金) 16:30:46.91 ID:kXRWmwK70
阿良々木「それで、大家さんは何故か上機嫌だったらしい」

忍野「さっそくらしいって付いてるけどね」

阿良々木「…」

忍野「ごめんごめん、悪かったよ。続けてくれ」

阿良々木「『どうかしたんですか』と訊ねると、『いやぁ、入居者が増えてね。ずっと空き部屋だったんだけど、君の隣。もう挨拶はした?』とにこやかに笑っていたんだと」

忍野「うん、別に今の所不思議はないね」

阿良々木「更に二階についても言及したらしい。二階はまだリフォームしてないからここ10年くらい誰も住んでいない、と言うことらしい」

忍野「因みに、その子の部屋は何処だったんだい?」

阿良々木「一階の角部屋だよ」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 16:31:45.38 ID:kXRWmwK70
忍野「いやぁ、これはこれは。マジモンの怪談話だね」

阿良々木「一応、その後気になって事故物件じゃないかとか調べたらしいんだけれど、何も出てこなかったらしい」

忍野「阿良々木君、その子はまだその部屋に住んでいるのかな。だとしたら早々に出て行く事をおススメするよ」

忍野「事故物件って言うのはね、確かに次の入居者に伝える義務があるけれど、あくまでも次の入居者に、なんだ。だから、一度誰かが入居した後は、事故物件として表示はされない」

阿良々木「でも、逆に言えば誰かが住んで問題なかったという証明にもなるんじゃないのか」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 16:32:54.23 ID:kXRWmwK70
忍野「どうだろうね。例えば、転勤や卒業などで引っ越した場合は、確かに何事もなかったと言えるだろうけど、何かが起きたから引っ越した、と言うケースもあるんじゃないかな」

阿良々木「でも、そんな部屋なら誰も住みたがらないんじゃ…」

忍野「その通りだ。誰だって、この僕だって進んで住みたいとは思わない。けれど、持ち主はそれでは困るんだよ。空き部屋にも維持費はかかるからね」

忍野「だから、事故物件として掲示する義務がなくなっても、家賃は事故物件の時のまま、なんてのは良くあるんだ」

忍野「空き部屋にしておくよりは、最低限維持費だけでも払ってもらった方が損は少ないから」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 16:33:58.70 ID:kXRWmwK70
阿良々木「それじゃあ、あの部屋は元事故物件だったという事になるのか?」

忍野「まぁ、そうだね。お呪いで風呂場が塗り潰されていたなら、そこで手首を切ったか、首を吊りでもしたのかもね。兎に角、理由もなく安い物件には気を付けないと」

忍野「いやでも、阿良々木君の場合なら、忍ちゃんの食事になっちゃうのかな。羨ましいとは思わないけれど。霊障を除いたって、人の亡くなった場所で生活なんて真っ平だしね」

阿良々木「もし、それでももし、安いからってだけで住み続けたら、アイツはどうなるんだ?」

忍野「うん?簡単な事さ。同じ末路を辿るだけだよ」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/30(金) 16:34:29.12 ID:kXRWmwK70
おしまい
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 16:36:07.56 ID:lMxaibPgo
おつおつ
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:22:14.40 ID:hubJQ1Qe0
阿良々木「今度は僕の体験談を思い出したよ」

忍野「へぇ、それは興味深いですね。是非聞かせてくださいよ」

阿良々木「まぁ、そうは言っても物心つく前の話だから、正確には両親から聞いた話を思い出した、と言うことになるんだけれど」

忍野「勿体ぶりますねぇ。いつから貴方は読者を意識して語る程、語り部に慣れてしまったんですか」

阿良々木「いつからかと言えば最初からだよ!って言うか、扇ちゃんこそいつからここに…」

忍野「嫌だなぁ、阿良々木先輩。最初からですよ。ここには初めから『忍野』と『阿良々木』の2人しか登場してないじゃないですか」

阿良々木「あれ、そうだっけ…?忍野は忍野でも中年のおっさんと話していた様な…」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:24:57.66 ID:hubJQ1Qe0
忍野「誰ですかそれ、そんな人心当たりがありませんねぇ」

阿良々木「曲がりなりにも君の叔父さんだろ……」

忍野「良いから早く聞かせてくださいよ、その怪談」

阿良々木「……まぁ良いか。それで、僕がまだ物心つく前、まだ一人っ子だった頃の話なんだけれど、当時から僕は友達が居なかったらしい」

忍野「それはそれは。2歳児の分際で『友達は要らない。友達を作ると、人間強度が下がるから』とか仰ってたんですか?」

阿良々木「流石にそんなことは言っていない!…あれ?正確な年齢まで言ったっけ?」

忍野「どうしたんですか、阿良々木先輩?今日は何時になく記憶が曖昧なんですね。先程仰ってましたよ?」

阿良々木「そうか…いや、まぁ続けよう」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:26:18.79 ID:hubJQ1Qe0
阿良々木「でもまぁ、2歳児の交友関係なんて、保育園にでも行っていない限り、殆ど親の交友関係に影響されるもんだから、その時の僕の交友関係の狭さで僕を責められても困る」

忍野「珍しいですね、阿良々木先輩が責任転嫁なんて。いつもなら背負う必要のないものまで背負おうとして、潰れちゃうのが貴方らしいのに」

阿良々木「そこまでのお人好しでは、断じてない」

忍野「本当にそうですかね?貴方はかつて、裸を見た女性を片っ端から娶って行かねば!という闘志に燃えていたではありませんか。具体的には高校3年の夏くらいに」

阿良々木「昔の僕ってそんなにとんでもないキャラだったか!?」

忍野「覚えてないと仰るんですか?私のあられもない姿まで見ておきながら。耳元であんなに甘い言葉を囁いてくれたのに?」

阿良々木「いや、それはない。そもそも夏にはまだ君は居なかったし、僕は扇ちゃんの素肌なんて顔面以外見たことがない」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:27:23.82 ID:hubJQ1Qe0
忍野「いやぁ、残念。ここで言いくるめられてくれたら、晴れて私も阿良々木ハーレムの仲間入りだったのになぁ」

阿良々木「そもそもそんなものを結成した覚えはない」

阿良々木「んで、続きだけど、そんな友達の居ない僕は、大抵庭で遊ぶか、居間で読書して居たらしい」

忍野「おぉ、庭と居間をかけてきましたか」

阿良々木「韻は踏んでるかも知れないが何もかかってないからな?」

忍野「DJ阿良々木ですか、成る程成る程、DJ撫子に対抗したわけですね」

阿良々木「……」

忍野「おっとすみません、これはデリケートな問題でしたね。気を付けます」

阿良々木「なぁ、本当に怪談聴く気あるのか?」

忍野「勿論ですとも!ただ、阿良々木先輩の軽妙な語口を聞いていると、どうしても饒舌になってしまうのですよ」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:28:30.23 ID:hubJQ1Qe0
阿良々木「はぁ、じゃあ続けるよ。そんな1人遊びばかりだった僕が、ある日急に自室で遊ぶようになったらしい。夕飯時には降りてくるから、引きこもりとかではなさそう、と余り心配はされていなかった」

忍野「まぁ、ご家族からしたら、今でも時折妹のヌイグルミ持ち出してセクハラしたり、自室で1人、影に向かって喋ってる痛い長男でしょうけど」

阿良々木「しかし、しばらくそんな日が続くと、放任主義の両親も、流石に気になったのか、何をしているのかと尋ねたんだ」

忍野「余り一人遊びが得意になられても将来が不安ですしね」

阿良々木「僕は満面の笑みでこう答えたそうだ。『友達と遊んでいるの』」

忍野「いやぁ……そっちの意味で怖い話ですかー。私としては怪異絡みの話が聞けると思っていたんですけど」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 23:30:58.77 ID:hubJQ1Qe0
忍野「怪しい奴の話、と言う意味での怪談だったんですねぇ。まんまと騙されました」

阿良々木「どういう意味だ」

忍野「だってあれでしょ、今の話って要するに、友達の居ない阿良々木少年が、寂しさを埋めるためにイマジナリーフレンドを作り出した、というお話でしょう?」

阿良々木「違う。扇ちゃん、君は一体僕を何だと思っているんだ」

忍野「愚か者ですよ」

阿良々木「……」

忍野「と言うのは冗談です」

阿良々木「…………」

忍野「冗談ですってばー。あー素敵だなー、こんな素晴らしい先輩と出会えるなんて私は何て幸せなんだろうなー」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:32:15.47 ID:hubJQ1Qe0
阿良々木「全てに心が篭っていないぞ!」

忍野「ま、それはそれとして。阿良々木先輩の妄想でない根拠はあるんですか?その時の事を、ご自身では覚えていらっしゃらないんでしょう?」

阿良々木「うん、確かに明確に否定できるかと言われれば難しいよ。そもそも『友達』が存在しなかった事を証明するなんて、悪魔の証明だ」

忍野「本当に友達が居なかった人が言うと皮肉みたいですね」

阿良々木「皮肉を言っているのは君だけどな!兎に角、提示できる根拠と言えば、現時点ではその『友達』が見えて居ないと言う事くらいだ」

忍野「本当にそうですかね?もしかしたら、阿良々木先輩が今友人だと思われている方々は軒並み貴方の妄想かも知れませんよ?」

阿良々木「そんな悲しい結末があってたまるか!」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:33:18.83 ID:hubJQ1Qe0
忍野「まぁ、ご友人方は存在したとしても、私と言う存在を生み出してしまった貴方に、イマジナリーフレンド説を完全に否定する事は出来ませんよ」

阿良々木「それは……」

忍野「それでももし、ポジティブな考え方をしたいのであれば、座敷童だったと言うことにでもしておきましょう」

阿良々木「おいおい、そんな適当な事で良いのかよ。仮にも暗闇の代役をやろうとしていた君が」

忍野「あれについては黒歴史ならぬ闇歴史なんで忘れてください。今はもうあそこまでの事はしていませんよ」

阿良々木「あそこまでじゃない事はしているんだな……」

忍野「あははははー」

阿良々木「笑って誤魔化すな!」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:34:23.06 ID:hubJQ1Qe0
忍野「座敷童にせよ、イマジナリーフレンドにせよ、昔から幼女と遊んでばかり居たんですね、阿良々木先輩は」

阿良々木「イマジナリーフレンドは男児かも知れないだろ」

忍野「嫌だなぁ、阿良々木先輩に同性の友達が出来るわけないじゃないですか」

阿良々木「……そう言えば居ないなぁ、同性の友達」

忍野「まぁ何にせよ、曖昧にしておく方が良いこともありますし」

阿良々木「うん?その口振りだと、君は正体を知っているのか?」

忍野「私は何も知りませんよ、貴方が知って……と、これはもう辞めたんでしたね。えぇ、ご推察の通り、私は貴方の初めての友達を知っています」

阿良々木「なら勿体ぶらずに教えてくれよ」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:35:40.76 ID:hubJQ1Qe0
忍野「言っちゃって良いんですかね、本当に。まぁ、他ならぬ阿良々木先輩が知りたいと仰るのであれば、お教えする事もやぶさかではありませんが」

阿良々木「何だよ、ここまで来て、やっぱ良いやと引きさがれるほど物分りのいい僕じゃないぞ」

忍野「その物分かりの悪さが今まで悲劇を引き起こして来たと、学んだのではなかったのですか?」

忍野「まぁ良いでしょう。今回の件で何か問題が起こるわけでもありませんし。結論から述べさせてもらいますと、二つの説は両立します」

阿良々木「えーっと……座敷童説と妄想説が?」

忍野「えぇ、正確には座敷童ではありませんが。怪異であると言う事でまぁ殆ど合致していると判断しましょう」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:36:51.03 ID:hubJQ1Qe0
阿良々木「つまり、僕の妄想が怪異化したと言うのか?」

忍野「その通りです。あれれー、こんな話を前にもどこかで聞きましたねー?」

阿良々木「名探偵ばりの態とらしい気付きをするな。……そこまで言われれば大体解ったよ」

忍野「そうでしょうとも。愚かな阿良々木先輩にも解るように解説してあげたんですから」

阿良々木「それにしても、僕の初めての友達は、こんなに性格の捻じ曲がった奴だったんだな」

忍野「お褒めに授かり光栄です。アレですね、人は自分にない物を求めるって言いますから、純真無垢だった頃の阿良々木少年は無意識に自分と真逆の存在を望んだのでしょう」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:37:42.86 ID:hubJQ1Qe0
阿良々木「でもそうなると、十数年も一体何をしていたんだ?」

忍野「一度は消滅したんですよ、妹さんが生まれて、その世話を焼くうちに寂しさは忘れられていき、私もまた忘れられました」

忍野「だから、私が貴方にした一連の出来事は復讐の意味もあったのかも知れませんね」

阿良々木「それは悪かった」

忍野「良いですよ、もう全然気にしてません。『僕の初めては扇ちゃんだ』と周囲の人に言ってくれるなら、全部丸っと許して差し上げましょう」

阿良々木「滅茶苦茶気にしているじゃないか……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/31(土) 23:39:36.68 ID:hubJQ1Qe0
おしまい
引き続きネタの募集は続けています
本音を言えば、色んな怪談を聞きたいが為にスレを立てましたので
ご助力頂ければと思います
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/31(土) 23:52:06.51 ID:pG77o5GZ0
物語シリーズとホラー映画呪怨のクロスオーバーがみたいです
呪怨の佐伯伽倻子vsあららぎ君、呪怨はバットエンドばっかりですが
あららぎ君ならハッピーエンドに変えてくれる筈
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/01(日) 15:48:47.87 ID:Rn4SrFKH0
伽倻子って殆ど喋らないですよね…
そうなると、要所要所で地の文が無いと厳しいので
ちょっと時間かかっちゃいますね
それでも良ければ何とかやってみますが
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:21:37.62 ID:pV04h44/0
呪怨を見たのが随分と昔でしたので
ちょっと曖昧だったり矛盾だったり
設定変わっちゃってたりとかあるかもしれませんが
そんな駄文で宜しければお付き合いください
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:22:37.66 ID:pV04h44/0
親の心子知らず、なんて言葉があるけれど、子供の立場から言わせてもらえれば、子の心親知らず、というのも成り立つのだと主張したい。
幸いにも僕の家庭では家族間の問題なんて、僕が落ちぶれた故の気まずさくらいのものだったけれど、両親にその心情が100パーセント理解出来ていたか、と言うと恐らくそんな事はないのだろう。
所謂「一般的な家庭」でこうなのだから、羽川や戦場ヶ原、老倉、神原、八九寺等、それぞれ家庭に問題を抱えていた彼女達は、果たして親にどの程度理解されていたのか、なんてお節介な事を考えてしまう。
親は子供を持つ時点で多くが大人だ。だから、子供を守る事ができる。子供を想っての行動が許させる。だが子供は、非力故に親を想っていても何も出来ない事もあるのだ。
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:23:21.87 ID:pV04h44/0
阿良々木「月火ちゃんが倒れた?」

火憐「そうなんだよ、兄ちゃん。どうにも、ムーンファイヤーの活動中に何かあったらしいんだけど…」

ある日、いつもの様に大学生の特権である惰眠を貪っていると、珍しく火憐から電話が入った。

阿良々木「何かあったって?ただ風邪を引いたとかじゃないのか?」

そう口にしてから、ふと不思議に思った。
月火が風邪?果たしてそんな事があるのだろうか。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:24:20.35 ID:pV04h44/0
吸血鬼の後遺症として、僕は傷の治癒速度と免疫力の上昇を実感してはいるが、同じ不死の怪異と言えども、彼女の場合と僕の場合ではその治癒スキルに若干の違いがある。
月火の治癒は、命に別状がある程早く治るのだ。逆に言えば、死ぬ危険がなければ、普通の人間と変わらない程度の治癒力しか見せない。
だから、風邪くらい引いてもおかしくはないと考えられなくも無いが。

火憐「いや、それはないだろ。十数年間一緒に過ごして来て、月火ちゃんが病床に臥す所なんて見た事がないぜ」

阿良々木「そうだよなぁ。僕も言いながら『それはねぇな』と思ったもん」

ならば。
ならば何故月火は寝込んでいるのか。
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:25:16.96 ID:pV04h44/0
ふっと、高校3年の夏休みが思い出される。あの時は月火ではなく、火憐だったが、似たような事があった。

火憐「なぁ、こんな事言いたく無いんだけどさ。またあの詐欺師がやってきたって可能性は……」

阿良々木「ないよ。それは、ない」

あの詐欺師は、もう僕たちの街には出入りしていないはずだ。

忍野「かかっ。しかしお前様よ、詐欺師との約束が守られているなんて保証はあるまい」

こちらも珍しく、昼間から起きていたのか、影の中から語りかけてくる。

阿良々木「ちょ忍、お前声聞かれたらどうするんだよ!」

携帯のマイクを抑えながら小声で話しかける。
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:26:13.67 ID:pV04h44/0
忍野「なんじゃ、別に良かろう。ちょっと友達が来てる、と言えば頭の悪い方の妹御なら納得するじゃろうて」

頭の悪い方の妹御って。
まぁ確かにそれで納得してしまいそうな、残念な一面はあるけれど、基本的には頭は良いはずだ。

火憐「おーい、兄ちゃん?聴いてんのかー?」

阿良々木「あぁ、悪い。それで、具体的には月火ちゃんの容体はどうなんだ?」

火憐「うーん、別に私は医者じゃねーから詳しくは解んないけど。多分、病院に行って何とかなる類のモノとは思えねぇな」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:27:42.72 ID:pV04h44/0
火憐は怪異の存在は知らない。けれどそんな言い方をすると言うのは、それは恐らく、自身の経験と重ね合わせているのだろう。
貝木泥舟によって、蜂の毒を移された時の経験と。

阿良々木「解った、取り敢えず何とか時間作って帰ってみるよ」

と言って電話を切った。
恩着せがましい言い方をしたが、正直大学生が時間を作るなんて然程難しい事でも無い。
そもそも余りまくっている時間をどう消費しようか悩む日があるくらいだ。

忍野「いや、お前様、そこは将来の為に勉強せぇよ」

阿良々木「母親みたいな事を言わないでくれよ」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:29:18.03 ID:pV04h44/0
阿良々木「で、忍。さっきの話、どう思う?」

忍野「まぁ、実際に見てみん事には解らんが、お前様の小さい方の妹御が寝込むほどの病魔となると、普通ではなかろうな」

阿良々木「やっぱりそうだよな…。でも、取り敢えず全快したりしていないから、死ぬ危険はないんだよな?」

そもそも全快したらそこで問題は消滅するのだから、この問いかけに特に意味は無いのかもしれないが、どうにも安心しておきたいという思いから口を突いて出た。

忍野「そもそも不死の怪異が死ぬなんて、ましてや吸血鬼の様な怪異と違って特に弱点のないしでの鳥が死ぬ事なんて、普通はあり得ん。出来るとしたらあの暴力陰陽師くらいじゃ」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:30:00.59 ID:pV04h44/0
阿良々木「なら一先ず安心だな…。大事をとって明日朝くらいに出るか」

忍野「じゃがそう安心し切られても困る。もし仮に何らかの怪異じゃったとして、しでの鳥の回復力を上回る何かを仕掛けていた場合、回復しては削られの生き地獄を繰り返しておる事になるぞ」

阿良々木「そんな事があるのか…?」

忍野「不死性にも抜け道が存在しておらねば、不死身退治なんぞ出来る人間はこの世に存在しておらんよ」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:30:45.78 ID:pV04h44/0
忍の忠告もあって、僕はすぐに家を出る事にした。
彼女が僕以外の人間を、例え僕の家族だったとしても、心配するのは珍しい。
いや、心配はしていないのかも知れないが、それでも忠告をしてくれる事自体異例なのだ。
それ故に、嫌な予感がしてしまう。
急いで実家に駆けつけると、僕は家の中に入れなかった。
こんな言い方をすると、何らかの怪異現象が家を覆っているのかと思われてしまうかも知れないが、単に物理的な要因だった。

阿良々木「こんな事ってあるかよ……」

玄関の扉に鍵がかかっていた。
その事自体は、妹達の防犯意識の高さを褒めるべき、良い事だ。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:31:48.97 ID:pV04h44/0
問題は、鍵が変えられており、その事を長男である僕は今初めて知ったという事だ。

忍野「かかっ。お前様、もう家族として数えられておらんのではないか?」

阿良々木「いや、いや!冗談なのは解るけど!このタイミングでそんな事を言われると泣きそうだからやめて!」

火憐「何だよ兄ちゃん、何玄関前で騒いでんだ。帰って来たなら早く入れよ」

阿良々木「なぁ、ここの鍵っていつ変わったんだ?」

火憐「あ?あぁ、そっか兄ちゃんは知らないか。兄ちゃんが出てってすぐくらいの頃、月火ちゃんが彫刻刀で鍵ぶっ壊したんだよ」

何やってんだアイツ。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:32:59.28 ID:pV04h44/0
火憐「あと兄ちゃんの部屋ら辺で床に彫刻刀ぶっ刺したり、下駄履いて大暴れしたらしい」

阿良々木「本当に何やってんだアイツ!」

火憐「その上千石ちゃんに罪をなすりつけようと嘘まで吐くから、取り敢えず殴っといた」

阿良々木「お前も何してんだ!」

火憐「お姉ちゃんパンチ!」

そう言って拳の素振りを披露してくれたが、それを見る限り月火に殴られた記憶は残っていないのではないかと思った。
これひょっとして、月火が頭のネジ飛んじゃってるのって、火憐に殴られすぎたからなんじゃねぇの。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/05(木) 04:34:08.91 ID:pV04h44/0
火憐「それで、月火ちゃんの事なんだけどさ……」

阿良々木「いや、待って待って。今の流れでシリアスに行かれても頭が追いつかないぞ!」

火憐「は?いいから聞けよ。頭に彫刻刀ぶっ刺すぞ」

怖いよ。そんな事、全盛期の戦場ヶ原でもしねぇよ。

火憐「まぁ、見てもらった方が早いか」

珍しくシリアスモードな火憐に圧されて、雑談もそこそこに月火の寝室へと向かう。
そこで寝かされていた彼女は、身動き一つせず眠っていた。

阿良々木「うん?なんか思ってたのと違うんだけど」

火憐「触ってみれば解るよ」
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