アスラン「頼りにしているぞ、シン」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 09:51:18.33 ID:+7Duy6Oh0
そういやルナマリアの尾行無かったな
177 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:01:48.17 ID:iButzoxC0
時間は、ディオキアでの休暇中、シンとルナマリアがステラという少女に出会った日まで遡る。
その日レイは、デュランダルに招かれ、宿舎内のVIPルームを訪れていた。

レイ「レイ・ザ・バレル、出頭いたしました」

デュランダル「入ってくれ」

部屋の主の了承を得て、木製のドアを押し開く。
出迎えたデュランダルの父親めいた表情を見て、レイの顔も自然と綻んだ。
178 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:04:07.22 ID:iButzoxC0
デュランダル「やあ、レイ。昨日はゆっくり話す時間もなくて、すまなかったね。さあ座ってくれ、なにか飲み物を用意しよう」

レイ「はい、ありがとうございます」

VIP専用の部屋だけあって、室内はエレガントな調度品で整えられている。
部屋を照らすシャンデリア。風格漂うアンティークのソファー。壁にかけられた絵画。宝石で縁取られた鏡。
だがレイの心になにより安らぎを与えたのは、室内装飾の美しさよりも、デュランダルが淹れた一杯のコーヒーだった。
上品な香り、ほどよい酸味と苦味が、戦いに疲れたレイの心に染み渡っていく。

レイ「とても美味しいです、ギル」

デュランダル「それはよかった」

こうして二人でコーヒーを飲みながら、とりとめのない話をする。
レイにとっては、この上なく幸せで大切な時間だった。
179 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:06:10.95 ID:iButzoxC0
デュランダル「ミネルバの活躍は報告で聞いているが、それだけでは味気ないだろう?レイの口から、色々と聞かせてほしい」

デュランダル「そうだな…例えば、アスラン。彼が加わったことは、ミネルバにとって良い影響を与えてくれただろうか?」

レイ「ええ。不器用な方ではありますが、不器用なりに部下とも向き合って、信頼関係を築いています」

レイ「アカデミーでは教官と衝突してばかりいたシンも、アスランには心を開いているようです」

レイ「私も、彼の篤実さは嫌いではありません」

デュランダル「そうか…ならばいいのだが」

デュランダルの常態とも言うべき微笑が、僅かに陰る。
そして、その変化に気づかないレイではなかった。

レイ「なにか、気になることでも?」
180 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:08:41.34 ID:iButzoxC0
デュランダル「…オーブの姫君がフリーダムによって攫われたことは、君も聞いているだろう?」

レイ「はい」

デュランダル「その後、彼らに目立った動きはない。このまま大人しくしてくれていれば、それでいいのだがね」

デュランダル「もし彼らが戦場に出てきたら…アスランは、一体どちらに付くのかな?」

レイ「アスランが、裏切ると…?」

デュランダル「想像もしていなかった、という顔だね。だが、彼は一度ザフトを裏切り、アークエンジェルに付いたこともある」

デュランダル「全く可能性が無いとは、言えないのではないかな?」

数秒の沈黙があった。その数秒の間に、レイは決断した。
彼にしては、少しばかり長い逡巡であった。

レイ「…であれば、アスランに監視をつけるというのは?」
181 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:10:27.49 ID:iButzoxC0
デュランダル「ふむ、監視…か」

レイ「そして、その役割には自分が適任であると考えます」

シンとルナマリアには任せられない、とレイは思った。能力的な問題ではなく、アスランの監視を続けるうちに、
知らなくていいことまで知ってしまう可能性があるからだ。例えば、今プラントにいるラクスの正体であるとか。

デュランダル「だが、君にそんな真似をさせてしまうのは、心苦しくもあるな」

レイ「少しでもギルの不安を取り除くことができるのなら、やらせてください。俺は、あなたの力になりたくて軍に入ったのですから」
182 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:11:43.96 ID:iButzoxC0
セイバーが飛び、キラたちが去ったあと、レイは撮影と録音のための機材を回収し、ここまで乗ってきた小型のジャイロへと向かう。

レイ「…ハァ」

思わず、溜息が漏れた。仲間を監視するという行為には、少なからず罪悪感が伴うものだ。
だが、それでも実行に移したのは正解だった。
彼らの会話を聞いていれば、アスランがギルに不信感を抱いたことは想像に難くない。
もしアークエンジェルに寝返るような素振りを見せれば、撮影した写真を証拠として処断を下すこともできる。

レイ「願わくば、これからも仲間でありたいと思うが…」

ギルに不利益をもたらすようなことがあるなら、そのときは自分が彼を撃たねばならない。
来たるべき、平和な世界のために。
183 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:12:59.25 ID:iButzoxC0
地球軍空母"ジョン・ポール・ジョーンズ"とオーブ艦隊は、ダーダネルスでの戦いのあと、
エーゲ海の地球連合軍基地に着艦し、船体とMSの補修に追われていた。

ネオ「うーん、やられたねえ」

研究員「幸い、アビスとガイアの損傷は軽微です。カオスも、次の戦いまでにはどうにか…」

ネオ「いや、やられたってのは、ロドニアのラボの件さ」

ネオ「閉鎖に失敗した挙句、事後処理の前にザフトに暴かれてしまうとはね」

研究所「スエズも慌てているようですが…しかし私たちにできることはありませんよ」

ネオ「ただ、無関係とも言えまい?ロドニアのラボは、スティングたちにとっては……」

研究員「彼らの耳には入らないように、他の者たちには言ってあります」

ネオ「助かる。特にアウルには聞かせたくない話だ」
184 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:14:30.39 ID:iButzoxC0
艦内の待機室でスティングとアウルがボードゲームに興じる横で、
ステラはいつものように、ボトルアクアリウムの中を泳ぐ魚を眺めていた。

ステラ「ろどにあ…の…らぼ…」

ふとステラが呟いた言葉に、スティングとアウルが手を止め、振り返る。

ステラ「って、なに?」

こてん、と首を傾げたステラに、スティングは呆れて苦笑する。

スティング「おいおい、マジかよ…」

アウル「ロドニアのラボって、僕たちが前にいたとこじゃんか」

ステラ「そうなんだ…」

スティング「そうなんだ…って、おまえも一緒だっただろうが。それで、ラボがどうしたって?」
185 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:15:53.82 ID:iButzoxC0
ステラ「さっき、ネオのところに行こうとして、話してるのが聞こえて…ザフトがラボにって…」

スティング「なっ…!」

アウル「なんだって!?」

スティングは訝しんだ。ザフトが、つまりは敵が関わっているということは、どう考えても良い話ではない。
そして、その件について自分たちがなにも聞かされていないというのは、つまり――。
そんなスティングの思索は、アウルの怒声によって遮られた。

アウル「ステラ!ザフトがラボにって、どういうことだよ!?」

ステラ「あわ、わ…」

血相を変えて詰め寄るアウルに、ステラはすっかり怯えてしまっている。
186 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:17:49.04 ID:iButzoxC0
スティング「アウル!落ち着け!」

アウル「スティング!なんでおまえは落ち着いていられるんだよ!?ラボには"母さん"が…!」

スティングに掴みかかっていた腕から力が抜け、アウルは糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
強制的に恐怖を思い起こさせ、エクステンデッドを抑制するための"ブロックワード"を、アウルは自ら口にしてしまったのだ。

アウル「かあ、さん…が…!…あ…あ…!」

スティング「この馬鹿!ああ、くそっ!しっかりしやがれ!」

アウル「母さんがぁっ!!"死んじゃう"じゃないかぁっ!!」

ステラ「!」

――死。
ステラにとっては、何よりも恐ろしい言葉だった。
だが、ディオキアの海で、ステラはその恐怖から解放された。
そのときのことを、ステラは片時も忘れたことはない。
187 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:18:40.66 ID:iButzoxC0
肩を震わせて、子供のように泣きじゃくるアウル。
ステラは、そんなアウルの髪を撫で、そっと肩に抱き寄せた。

ステラ「大丈夫…死なない…守る…」

アウル「ま、もる…?」

ステラ「うん…守る」

守るということは、死なないということだ。あたたかくて、やさしい言葉。
シンが自分にしてくれたように、頭を撫でながら、その言葉を言い聞かせる。

ステラ「守る…だから、大丈夫…」

アウル「かあ…さん…」

やがて、アウルが正気を取り戻し、顔を真っ赤にして振りほどくまで、ステラはずっとそうしていた。
188 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:21:25.67 ID:iButzoxC0
スティング「まったく、どうなることかと思ったぜ」

アウル「…うっせ」

スティング「ラボの件は、俺がネオに聞いてみる。おまえはステラと一緒に、部屋で大人しくしてろ」

アウル「……」

スティング「ステラも、いいな?」

ステラ「うん…」

スティングは待機室を出て、ネオのいるであろう指令室へと向かう。
その途中で、研究員や兵士たちとすれ違う。彼らから向けられる目が、スティングは大嫌いだった。
エクステンデッドよりも遥かに脆弱な連中が、何故そんな憐れむような目で俺たちを見るのだ。
だが今は、そんなことを気にしている場合ではないことも、スティングは分かっていた。
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 21:21:37.80 ID:fNRr88ox0
これは…スティングやアウルにも救済入るかな?
190 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:22:41.43 ID:iButzoxC0
ネオ「うーん、おまえたちには聞かせるつもりはなかったんだがなあ…」

スティング「教えてくれ、ネオ。あのラボに、なにがあったんだ?」

ネオ「ふむ……ま、聞かれてしまったのなら仕方ないか」

研究員「大佐!」

余計なことを言うな、と目で訴えてくる研究員を無視し、ネオは続けた。

ネオ「ロドニアのラボは、ザフトの襲撃を受けて壊滅した。以上」

スティング「……そうか」

ネオの言葉が本当かどうかは、スティングには分からなかった。
ただ、事態がもう手遅れで、自分たちの出る幕はないということだけは、その言葉の端から読み取ることができた。

スティング「わかった、アウルたちには俺から上手く言っておく。邪魔したな」
191 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:23:52.77 ID:iButzoxC0
スティングが指令室から出ていくのを確認し、研究員が口を開いた。

研究員「大佐が本当のことを話してしまうのではないかと思って、肝を冷やしましたよ」

ネオ「ま、あいつも俺が嘘をついたってことは、なんとなく気づいているだろうけどね」

研究員「えっ…?」

ネオ「上手く言っておくってのは、そういうことだろ?」

研究員「もしそうなら…ああも物分かりがいいと、かえって不安になりますが」

ネオ「軍人たるもの、ときには納得のいかないことも飲み込まなければならない…」

ネオ「あいつも、兵器から兵士になりつつあるのさ」
192 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/04/26(木) 21:25:12.18 ID:iButzoxC0
今回の更新はここまでです
前回アスランが尾行されている描写をしなかったのは、誰に尾行させるか迷っていたからでした
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 22:46:17.97 ID:4ONK/axgo
乙ー
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 22:46:40.82 ID:khtl71Ro0
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 22:52:23.77 ID:Kl1JypX7o
おつ
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/26(木) 23:01:04.08 ID:drGzCz7To

安定感ある
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 09:56:20.94 ID:ZkWYSk/L0
乙です
198 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:38:33.60 ID:svCzTigi0
ジョン・ポール・ジョンズのブリッジで、ネオはオーブ艦隊とミネルバの戦いを眺めていた。

ネオ「まったく、オーブ軍は本当によく働いてくれるなあ」

副官「我々地球軍に恭順の意を示すことが、国を守ることに繋がると考えているのでしょう」

ジブラルタルへ向かうミネルバをクレタ沖でオーブ軍に迎え撃たせ、自分たちはミネルバの索敵範囲外からチャンスを窺う。
我ながら卑劣な作戦だ、とネオは自嘲した。
だが、ドライでなければ"ファントムペイン"の司令官は務まらないのだ。
199 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:41:16.42 ID:svCzTigi0
インパルスはブラストシルエットで出撃し、その大火力で敵機を撃滅していく。
ハイネを欠いた今、ブラストの大火力でもなければ、敵の数に攻撃が追いつかなかった。
フォース以外のシルエットには飛行能力は無いが、ホバリングによって海上を移動することは可能だ。

アスラン「エネルギー残量には気をつけろよ、シン!オーブ軍の後ろには、例の地球軍空母が控えているはずだ!」

シン「オーブを盾にするような真似を…!どこまで卑劣なんだよ、地球軍は!!」
200 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:43:34.28 ID:svCzTigi0
思うようにいかない戦況に、ユウナは苛立ちを抑えきれずに喚いた。

ユウナ「んもう!ムラサメ隊はなにをしてるの!?」

トダカ「現在ババ一尉が隊を率いて、ミネルバに向かっています!」

うんざりしたように怒鳴るトダカや、反抗的な目で自分を見ている将校たちに、ユウナは舌打ちをした。
こいつらは、ダーダネルスの戦闘でカガリを撃てと命じたことを根に持っているのだ。
なんの力も持たない小娘が崇拝されて、オーブ再建の立役者たるセイラン家の僕が蔑ろにされるなんて、絶対におかしい。

ユウナ「艦の一隻ぐらい、さっさと堕としてみせろよ!この作戦が失敗したら、おまえのせいだからな!」

トダカ「……」
201 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:44:19.60 ID:svCzTigi0
ムラサメとM1アストレイの大群を相手に、インパルスとセイバーは手一杯の状態だった。
ミネルバの甲板で迎撃に当たる白と赤のザクの死角を狙い、ババ率いる別動隊のムラサメが突撃をかける。

ババ「小隊各機、俺に続けぇッ!!」

矢の如く加速するムラサメ。
一瞬遅れて反応したザクの攻撃は、それでもムラサメを一機、また一機と撃ち堕としていく。
だが、ババは振り返らない。身体を打ちひしぐGに耐えながら、ムラサメの加速をそのままにMSへと変形させる。
ビームライフルの銃口が、ミネルバのブリッジを捉えた。

ババ「やれる!」

トリガーを引こうとした刹那、ビームライフルの銃身が火を噴き上げた。

ババ「なに!?」
202 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:45:37.28 ID:svCzTigi0
唖然とするババの前に立ち塞がったのは、フリーダム。
オーブの守護天使として、伝説となった機体。

ババ「何故!?何故フリーダムが我らを撃つ!?」

ババを焦らせたのは、フリーダムの存在だけではない。
フリーダムが現れたということは、すなわち――。

カガリ「オーブ軍!ただちに軍を引け!」

ババはまたも、仕えるべき元首と仰ぐ少女に銃を向けなければならなかった。
203 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:49:03.90 ID:svCzTigi0
ネオ「アークエンジェルまで出てきたのなら、オーブだけにやらせておくわけにもいかんな…」

ネオ「カオス、アビス発進させろ!ガイアはフリーダムが来たときのために、迎撃準備しておけ!」

アークエンジェルの乱入を機に、地球軍も本格的に戦力を動かした。
状況は、まるでダーダネルスの戦いを再現したかのようだった。
204 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:50:14.58 ID:svCzTigi0
前回とは違い、今度は自分たちを救ってみせたフリーダムに、ミネルバのクルーたちは困惑するしかなかった。

アーサー「艦長…?」

タリア「なるほどね…どうやら彼らは、本当に戦闘を止めたいだけということのようだわ」

タリア「ただ、少なくともあれは味方ではない。本艦は前回、あれによって甚大な被害をこうむった!敵艦と認識して対応!」
205 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:52:15.63 ID:svCzTigi0
スティング「てめぇは俺がァッ!!」

前回の借りを返すべく、カオスがセイバーへと迫る。

スティング「この前のようには、やらせねえ!」

カオスのバックパックから、二機の機動兵装ポッドが分離する。
高出力のスラスターを内蔵して、大気圏内でのオールレンジ攻撃を可能とした兵器だ。
ポッドから発射されたビームの矢が、ミサイルの嵐が、セイバーの加速を阻む。

アスラン「チィッ!」

スティング「これでぇぇッ!!」

あの紅い機体は、この脚で真っ二つにしなければ気が済まない。
爪先に凶暴な光の刃をひらめかせ、カオスはセイバーに突進する。
206 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:53:44.73 ID:svCzTigi0
アスラン「ええいっ!」

咄嗟に、シールドをブーメランのように投げつけてカオスの体勢を崩し、
そのわずかな隙に、ポッドの射線から抜け出て間合いを詰める。

スティング「馬鹿な!?」

アスラン「終わらせる!」

カオスが反撃するよりも速く、セイバーの手に握られた光剣が一瞬の軌跡を描く。
推進部と下半身を切り裂かれたカオスは、コントロールを失ったポッドと共に海面へと落下していった。

アスラン「くそっ…何故こんなことになるんだ…!」

アークエンジェルを敵艦として認識せよとの指示は、当然アスランにも聞こえていた。
だが、ショックと受けている暇など無かった。カオスを退けようとも次から次へと敵機は襲ってくる。
戦いに徹することができなければ、今度はハイネのみならず、ミネルバが沈むのだ。
207 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 19:57:39.03 ID:svCzTigi0
カガリ「オーブ軍!今すぐ攻撃をやめろ!ミネルバを、敵でないものを撃ってはならない!」

懸命に訴え続けるカガリのストライクルージュに、一機のムラサメが肉薄した。
その手に握られたビームライフルの銃口が、ルージュを捉える。

こんな戦いが起きているのは、地球連合との条約に調印した自分のせいだ。
ならばいっそ彼らに討たれて、死んで詫びるべきなのではないか。
そんな思いが一瞬、カガリの頭の中を支配する。
208 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 20:00:21.16 ID:svCzTigi0
だが、ビームに貫かれて四散したのは、棒立ちになったルージュではなく、ムラサメの方だった。

カガリ「あ……!」

インパルスの精密射撃が、的確にムラサメだけを堕としたのだ。
ルージュのコクピットに、怒声が響く。

シン「なにを戦場で呆けているんだよ!この馬鹿っ!」

カガリ「お、おまえ…!?」

シン「さっさと自分のいるべきところに帰れ!でなきゃ、次はあんたを撃つ!」

カガリ「私の、いるべきところ……?」

答えは返ってこない。
インパルスは再び戦場に躍り込んでいく。
だが、それで十分だった。

カガリ「逃げるな…生きる方が、戦いだ!」

かつてアスランに言った言葉を、今度は自分に言い聞かせて、カガリはアークエンジェルへと帰還した。
209 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 20:02:44.87 ID:svCzTigi0
全周波で発信されていたシンの声は、当然地球軍の機体にも届いていた。
そして、それに反応したMSが一機。ジョン・ポール・ジョーンズの甲板で、警戒に当たっていたガイアだ。

ステラ「シン…?」

突き動かされるように、ガイアは駆けた。
ここが戦場であることなど、ステラには関係なかった。
シンに会いたい。
もう一度抱きしめてほしい。
その想いだけだった。
210 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 20:04:28.31 ID:svCzTigi0
シン「いなくなれって言ってるだろッ!!あんたもッ!!」

インパルスのブラストシルエットから繰り出される、ありったけのミサイル掃射。
フリーダムはそれを、頭部の機関砲と右手のビームサーベルで打ち払いながら間合いを詰める。
破壊されたミサイルの爆発が、インパルスの視界を埋め尽くす。

シン「くそっ、これじゃあ…!」

煙の中からフリーダムの右腕が伸びて、その手に握られたビームサーベルがインパルスの左腕を切り飛ばす。
衝撃がコクピットを揺さぶり、シンの身体の奥で、なにかが弾けた。

シン「いつもそうやって…やれると思うなァァッ!!」
211 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 20:05:41.57 ID:svCzTigi0
キラ「くっ!?」

凄まじい殺気に、キラは咄嗟に機体を反らした。
直後、インパルスのジャベリンが、恐ろしい速さでフリーダムの右腕を背中の翼ごと刺し貫いた。
あとコンマ一秒でも反応が遅れていたら、ジャベリンはコクピットを貫通していただろう。

キラ「こんな…!?」

腰部のクスィフィアスレール砲を撃ちこみ、インパルスを吹き飛ばす。
反撃を警戒しつつ、迅速にアークエンジェルへと後退する。
これ以上あの相手と戦い続ければ、どちらか、或いは双方が死ぬ。そう思った。
アスランがザフトにいる今、カガリのためにも、ここで堕とされるわけにはいかなかった。
212 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 20:07:46.94 ID:svCzTigi0
体勢を立て直したインパルスは、後退していくフリーダムを追うことはせず、ミネルバの防衛に徹する。
いかにフリーダムといえど、右腕と片翼を串刺しにされ、機体バランスを欠いた状態では、戦場を支配することなどできようもない。
考えるべきは、徐々にミネルバを包囲しつつあるオーブ艦隊への対処だ。

シン「ミネルバ!チェストフライヤーと、ソードシルエットを!」

素早く換装を終えたインパルスの胸部が、シンの瞳に宿る焔を映したように、紅く染め上がる。

シン「全艦叩っ斬る!!」

ソードインパルスの対艦刀が容赦なく振り下ろされ、瞬く間にオーブ艦の一隻が沈む。
二隻、三隻、四隻、凄まじい勢いで敵艦を撃滅していくインパルスが次に狙い定めるのは、オーブの旗艦タケミカヅチ。
その眼前に、一機の黒いMSが躍り出た。その機体、ガイアが一切の武装を解除して、無防備にコクピットハッチを開いたのだから、
シンが混乱して、インパルスが動きを止めるのは仕方のないことだった。

ガイアのパイロットが開いたハッチの上に立つのを見て、カメラの倍率を切り替える。
桃色のノーマルスーツを着たパイロットの姿が、モニターに大きく映し出された。

シン「嘘…だろ…なんで、君がっ!?」
213 : ◆kiXe9QcYqE [saga]:2018/05/01(火) 20:09:41.98 ID:svCzTigi0
今回はここまでとなります
ダーダネルスの戦闘でシンが空気すぎたけど今回は活躍させられたかな…
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 14:13:43.32 ID:VkJr35Tg0
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/07(月) 09:38:40.00 ID:M5AnDWVDO
乙 やっばりカオスガンダムは見せ場0だった
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/17(日) 23:35:16.49 ID:IuMzLPrhO
一ヶ月半過ぎたわけだが続きはまだ?
楽しみにしてるから早く続き来ないかな?
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/29(金) 04:53:02.65 ID:LGuKli9kO
あと二日で二ヶ月になるぞ
どうしたというのだ…
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/04(水) 15:19:00.17 ID:xqfR/tFI0
続き、待ってます…どうか…
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/11(水) 15:23:43.39 ID:QCjvNBn0O
書くのが無理そうで続けられないならエタるのも手よ
んで、お暇になったら再開すればいい。

何はともあれ楽しみにしてるんで、無理のない範囲でがんばってください
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/03(金) 16:58:11.62 ID:BaVF0cHd0
面白い
続き、待つ
108.35 KB Speed:0   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)