【艦これ】漣「ギャルゲー的展開ktkr!」2周目

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1 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:35:37.79 ID:tODhHfXt0

前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1518277055/

まさかまさかの2スレ目突入。最終決戦をお楽しみいただければ幸いです。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1527957337
2 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:36:28.40 ID:tODhHfXt0

 あぁ、なんてよい日和でしょう。
 肌寒かった空気は沖合に出るにつれて暖かみを帯び、凪いだ水面は陽光を乱反射して輝いている。見渡す限り広がる海の青、そして空の蒼。水平線はひたすらにまっすぐ。鳴いているのはカモメか、それともウミネコか。
 ざざん、ざざんと足元に波。それは私の足元を濡らしはせずに、どこか遠くの岸まで運ばれていく。砕けた波濤の飛沫が少し踝にかかるかどうか、という程度で、火照ったいまの体にはそれくらいがちょうど心地よくもあった、

 なにより一面に深海棲艦の死体。

 掃海で、気分爽快。

 なんちゃって。

3 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:37:00.50 ID:tODhHfXt0

「……あぁ、加賀」

 視界の端に、青い、背の高い、すらりとした立ち姿。
 瞬きする間に消えたその影は、まぎれもなく私の嘗ての相棒。顔には翳が落ち切っていたので、どんな恨みがましい顔でこちらを見ているのか、これまで一度も見たことはなかった。

 ちょっと待っていてね。口の中で呟く。

「ちゃんと深海棲艦を殲滅してみせるから」

 過去は変えられない。
 ゆえに、悩みも悔やみも意味がない。

 勿論私だって人間なのだから、ふとした拍子に弱気の虫が顔を出してくることはあった。あのときああしていれば。こうしていれば。涙を流し枕を濡らした夜が一体何回あっただろう。
 黄昏がセンチメンタリズムを増幅させるのならば、独りの夜は化け物を生み出す。自らの心に救う暗鬼が好機と見て這い出ようと内側から扉を叩く。

 そんな生き方は、私はしたくなかった。

 過去に囚われて未来を捨てるのはごめんだった。

4 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:37:28.05 ID:tODhHfXt0

 加賀も本当に意地が悪い。それとも、まだコミュ障を引きずっているの? そんなに私が心配なら、今すぐにでも化けてでてきてもいいのに。
 それとも、やはり、骨の髄まで恨んでいる? それなら今すぐ化けて出てきてもいいのよ?
 どちらにしたって願うことは同じなのだから。

 これが常に私に付きまとってくれるのであれば、きっと日常の中に埋没していたに違いない。だけど加賀は、私の意識から彼女が消えたときにだけ、ちらりとその姿を見せる。ほんの一瞬だけ。日の出が水面を真っ白に染めるように。
 忘れてほしくないのか、忘れさせてやらない、なのか。

 ならば私は墓前に花を供えなければならない。深海棲艦の殲滅という名の花を。世界平和という名の花を。

 そうすれば、加賀も満足に――他のみんなも、安らかに眠れるはずだった。
 私も前を向いて生きていけるはずだった。

 深海棲艦は全員殺す。やつらがいなければみんなが死ぬことはなかった。諸悪の根源。全ての原因。

 海軍の人間も残らず敵だ。だけど殺しはしない。なぜあのとき助けに来てくれなかったのかを問い質す必要がある。真実如何では、防衛省を地図から消そう。

 私が道半ばで死ぬことだって正しい。

5 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:38:06.96 ID:tODhHfXt0

 私の立てた作戦で沢山のひとが死んだのならば、責任の所在は私にある。しかし私は、自分が悪いとはちいとも思っていなかった。否、考えるのをやめた。誰が悪いとか悪くないとか、反省したところで誰も帰ってこないのだから。
 トラックの艦娘はみんな死んで、生き残ったみんなも、在りし日の輝きに目を細めるだけの亡霊だ。

 だけど、それでも。
 たとえ亡霊になり果てたとしても。

 もし全てを成し得て、それでも私が生きているのであれば、それはきっと生きていてもいいということなのだ。

 全ての価値はあとからやってくる。帰納的に。演繹的にではなく。
 だから、生きているのならば、それは生きるべきであって、生きていくべき。誰かが承認の判子を人生に捺印してくれたと喜んで、わぁいと大きく万歳をして、胸を張って自慢げに、肩で風を切って歩けばいい。
 生きていてもいいのか、だなんて。自分に価値があるのか、だなんて。いちいち振り返ることではない。

 そんなのは自立から一番遠い生き方だ。

6 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:38:38.96 ID:tODhHfXt0

「さて、どうなるんでしょうね。私は」

 ぐずぐずに溶けていく死体の向こうに、ヲ級の姿が見えた。

 水面を蹴った。矢筒から五本抜く。赤赤青青緑。赤青緑を射掛けて射出、術式展開に伴って多種多様な文字が解け、数十機へ変換。
 砲弾が私のすぐそばを抜けていく。恐怖はない。どこかへ捨ててきてしまった。後悔とともに、この世から消失した。だってどちらも抱えたままでは生きていられやしないから。

 回遊魚は止まると死ぬのだという。泳ぐことによって鰓から酸素を取り込んでいるから、泳ぎ続けなければ息もできない。生きていけない。きっと彼らには恐怖も後悔もない。恐れを抱けば前に進めず、過去に囚われては立ち止まることに繋がる。
 それほど達観できればどれだけ楽になるだろう。

 ヲ級の艦載機とこちらの艦載機が空中でぶつかる。制空権の奪い合い。機体性能自体はあちらに分があるものの、練度、及び数ではこちらが勝っている。
 遠くから咆哮。リ級とル級、タ級。中々に重たい部隊。

 世界が溶けていく。

 矢を射る私こそが一矢だった。真っ直ぐに、どこまでも真っ直ぐに、深海棲艦を屠るためだけの純なる存在だった。

7 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:39:19.14 ID:tODhHfXt0

 敵艦載機の爆弾投下。爆炎、轟音、水柱。掻い潜って接敵。焦げ臭いにおいが鼻孔を衝く。艤装か、髪の毛か、可燃性の部分が燃えている――無視。無視だ、無視!
 走って走って走る。敵艦載機とこちらの艦載機がかち合う。火の粉。背後で、前で、数多の墜落。ぼちゃんぼちゃんと落ちる何かの隙間を縫う。私はとにかく走った。
 残りの二本を射る。指の腹が少し痛んだ。この動作を今日一日でどれだけ繰り返したろうか。百? 千?

 深海棲艦を殲滅まで、どれだけ繰り返せばいい?

 知るか!

 くだらない自問自答。右手の指が失われても左手がある。口がある。なんだったら足だろうが脇だろうがあるじゃないか。
 高速修復剤は万能でこそないけれど、多少なりともの欠損くらいなら効果があるというし、それこそ義手やら義足やら、選択肢はいくらでもある。

 そう、選択肢なんていくらでもある!
 だって私は生きているから! ちゃんと自分の脚で歩んでいるから!

 だから深海棲艦を殲滅するのだ、と矛盾した言葉を私は叫んだ。

8 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:40:12.48 ID:tODhHfXt0

 ヲ級が撃沈。耳元が熱い。触れてみれば髪の毛が燃えていた。海水を掬って鎮火。そのまま止まらない。ヲ級の体を盾にしながら三体へと突っ込む。
 二発の砲弾を受け止めて、ヲ級の体は千切れて弾けた。こうなっては最早用済み。投げ捨て、矢を番える。そうはさせじと敵が散開、私を取り囲む様に位置取りをずらしながら狭叉射撃。

 眼前にはリ級がいた。重巡洋艦の名に恥じぬ巨大な艤装を身に着け、黒々とした外観と、コントラストを強調する剥き出しの歯が、こちらをいつでも殺傷せしめんと目を光らせている。
 青。艦攻。放った魚雷はリ級に的中するも、装甲の問題なのか、大破には追い込み切れなかった。

 お返しとばかりに一際巨大な魚雷が顕現、禍々しさを発揮させながら私へと向かってくる。
 ぎりぎりまでひきつけ、回転するように避ける。


「術式展開ッ!」

 梵字が光の帯となって弾ける。弦から放たれた矢が一息で艦攻に、そのまま追撃。巨大な爆炎と閃光、時折立ち上る水柱に埋もれ、攻撃状況が見て取れない。
 背後で咆哮。ぞわりと怖気が走る。私は咄嗟に煙の中へと手を伸ばし、殆ど瀕死のリ級の首根っこを掴んだ。そして先ほどのヲ級と同様に、砲弾に対しての盾とする。
 なんとか防御は間に合う。あまりの破壊力に、堅牢な装甲を誇ったリ級は、既に胸から上だけになってしまっていた。

9 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:41:24.88 ID:tODhHfXt0

 タ級もル級も種別は戦艦クラス。装甲の硬さは折り紙つき。艦攻や艦爆を重ねれば、傷つけ撃沈させることはそう難しくはないだろうが、私の目的はこいつらではない。余計な時間をとられるのは煩わしかった。
 だが、捨てるという軟弱な道は選ばない。選べるはずがない。

「深海棲艦は殲滅します」

 一匹残らず逃がしておけぬ。

 攻撃機を展開。敵も学習をしているのか、頭上を簡単に許してはくれない。

 それでよかった。僅かにでも足止めできれば十分だった。

 距離を詰める。攻撃機が更なる展開を見せる。応射。巨大な砲弾が二つ――いや、三つ。回避しきれないと瞬時に判断、左腕を捨てた。
 肩口に衝突。瞬間、謹製の護法印が自動展開、なんとか被害の軽減に努めてはくれるものの、完全とは言い難い。ごぎり。いやな音が響くのは体の内側から。けれども痛みは不思議とない。痺れはあるが、まだ、指先も動く。直撃していれば半身をもっていかれていたと思えば恩の字。
 戦場では体の欠損など日常茶飯事だ。イベントで死んだ仲間のうち、五体満足だった者など数えるほどしかいない。誰もが皆、艦載機や攻撃機、砲弾に手足を捥がれ、あるいは頭を潰され……でなければ化け物に喰われる。

 恐れはない。

 まだ私は生きている。

 運命が、まだ生きていてもいいと教えてくれている。

10 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:41:55.97 ID:tODhHfXt0

 タ級もル級も種別は戦艦クラス。装甲の硬さは折り紙つき。艦攻や艦爆を重ねれば、傷つけ撃沈させることはそう難しくはないだろうが、私の目的はこいつらではない。余計な時間をとられるのは煩わしかった。
 だが、捨てるという軟弱な道は選ばない。選べるはずがない。

「深海棲艦は殲滅します」

 一匹残らず逃がしておけぬ。

 攻撃機を展開。敵も学習をしているのか、頭上を簡単に許してはくれない。

 それでよかった。僅かにでも足止めできれば十分だった。

 距離を詰める。攻撃機が更なる展開を見せる。応射。巨大な砲弾が二つ――いや、三つ。回避しきれないと瞬時に判断、左腕を捨てた。
 肩口に衝突。瞬間、謹製の護法印が自動展開、なんとか被害の軽減に努めてはくれるものの、完全とは言い難い。ごぎり。いやな音が響くのは体の内側から。けれども痛みは不思議とない。痺れはあるが、まだ、指先も動く。直撃していれば半身をもっていかれていたと思えば恩の字。
 戦場では体の欠損など日常茶飯事だ。イベントで死んだ仲間のうち、五体満足だった者など数えるほどしかいない。誰もが皆、艦載機や攻撃機、砲弾に手足を捥がれ、あるいは頭を潰され……でなければ化け物に喰われる。

 恐れはない。

 まだ私は生きている。

 運命が、まだ生きていてもいいと教えてくれている。

11 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:42:52.32 ID:tODhHfXt0

 飛び込む様にル級との距離を縮める。両手に備え付けられた、盾か、いっそ壁にも似た巨大な鉄塊。片方五門、両手合わせて十門の砲火。しかし既に十分距離を縮めている。効果的な円のさらに内側。
 敵の損傷は間近で見ればなおさらに軽微であるように思えた。嫉妬したくなるほどの性能差。いや、そもそも物理法則が違うかのような。

「でも」

 顔面を掴む。親指を眼窩へと突っ込んだ。
 ずぶりずぶりと飲み込まれ、黒い液体が指にまとわりつく。溢れ出す。

 眼と口腔内が柔らかくない生物はいまだ見たことがなかった。

 耳を劈くル級の雄叫び。こいつらにも痛みはあるのだろうか。ふとそんなことを思う。鉄塊ごと両腕を大きく振って、その反応はまるで激痛を堪えきれないかのようだが、良心が痛まないのは不思議なことだった。
 まぁ、良心なんてものがとっくのとうになくなっている可能性は高いけれど。

 私は一気に離脱して、艦爆を三本。空を覆い尽くすほどの飛行機の群れに、無防備なル級は今更気が付いたようだったが、どうしようもないことは世の中には沢山ある。
 過剰なほどの爆薬で一気に屠った。

12 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:44:06.37 ID:tODhHfXt0

 三体目、タ級が砲塔を向けるのと、私が矢を向けるのは、タイミング的にほぼ同時。
 不思議と体が重い。意識よりも一拍ずれて体が動く。なんとか初撃は回避して、カウンターで敵を魚雷の筵にしてやるけれど、本調子でないのは明らかだった。

 艤装からアラートが鳴る。あぁ、なるほどね。
 燃料の不足か。

 最低限の浮力は海からの力で賄える。ただ、動くとなると、途端に体がついていかない。意識ばかりが先行してしまい、危うく自らの脚に脚を引っ掛けそうになるのだ。
 嫌な予感がして矢筒に手を伸ばす。矢を摘まもうとした指先は二回空振り、三回目でようやく一本、その手にとった。艦載機も予備が少なくなっている。随分と用意したつもりでも、少し派手に戦いすぎたようだった。

 遠吠えが鼓膜を震わせる。

 影が五つ。いや、三つ、か。

 ヲ級改フラッグシップ。
 戦艦レ級。

 そして……。

「雷巡棲鬼、か」

13 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:45:01.50 ID:tODhHfXt0

 びりびりと来る重圧が刺激として脳を突き刺す。録画で見ていたときにも禍々しさは桁外れだったが、実際にこうして相対すると、振りまく黒い粒子がブラックホールのようにも思えてしょうがない。
 ここでの邂逅は地獄だった。そして同時に天国でもあった。状況は圧倒的な不利であるのに、けれど確かに私は最後の最後まで辿り着いたのだという見当違いの喜びが込み上げてきているのだ。

 海は静かに水を湛え、風を運ぶ。どくん、どくん、心臓が大きく打っている。象徴的な対比が私の内外にあって、今すぐに駆け出したくなる気持ちを抑えながら、さきほどとった一本を弦に番える。
 私はこいつらを殺すためにやってきている。この状況に何ら不備はない。

 死ねば運命。生き残ってもまた然り。

 どちらにせよ重畳。

「ふふっ」

 命が燃えていく音が聞こえる。

14 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:45:46.87 ID:tODhHfXt0

 こちらが飛び出すよりも先に、巨大な尾を持つ人型、レ級が突っ込んできた。話に聞いていたのと違わぬ狂った嬌声。殺意の塊。破壊の権化。理性などとうに無く、いや、そんなものは生まれたときから持っていなかったに違いない。
 ごぽり。あぶくの立つ音がして、レ級の羽織ったレインコートが奇妙に盛り上がる。そしてそこから生まれる悪鬼。空を飛び、一直線に私へ。

 火の雨が降る。私の肌を焼き、髪を燃やし、艤装を焦がす。

 大きく波を立てて急展開。尾の一撃をなんとか回避し、射た。数機の艦爆は、けれどヲ級の戦闘機によって阻まれる。
 足元から死が湧いて出た。太陽のような眩しさが足元から突き抜け、全身を飲み込む。それが敵の、雷巡棲鬼の雷撃であると理解した時には、既に私は空へと浮かんでいた。

 血の飛沫が見える。波濤の飛沫と交じり合って。

15 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:46:14.91 ID:tODhHfXt0

 吹き飛ばされながらも体は動く。矢筒に指を突っ込んで――激痛。見れば右手の人差し指と中指が、有り得ない方向にねじ曲がっていた。骨が露出していないのは不幸中の幸いだった。
 まだ大丈夫だと言い聞かせる。腕は二本ある。手も二本ある。指に至っては十本もあるのだから、代えが利かないわけがない。
 まだ戦えないわけがない。

 こんなところで死ぬわけにはいかない!

 景色が流れていく。意識が真っ白に染まっていく。
 矢を放ち、敵の砲撃を、魚雷を、艦載機を叩き落としながら、それでも確実に体積を減らしていく私の体。物理的な欠損。肉が、血液が、海の魚の餌となる。

 戦わずにはいられなかった。逃げた先に安寧などありはしないと、魂が知っていたのだ。それで過去から眼を背けて生きて、一体なにになるというのだろう。ならば未来を見据えて死ぬほうがいくらかマシだと思った。

 58は言っていた。今回の作戦は、電撃作戦でなくてはならないと。なるほど確かにそうだ。こちらに猶予はあまりなく、敵が待ってくれる保証はどこにもない。

 以上二つの理由から、いくら勝ち目のない戦いであったとしても、ここで敵を逃がす――敵から逃げる選択肢はあり得ないのだ。

16 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:49:23.96 ID:tODhHfXt0

「うぉおおあああああっ!」

 矢を射るには精神の統一が必要である。集中が何よりも大事だと、訓練所での師は口を酸っぱくして語っていた。射形が悪ければ当たらないなどとは、当時は妄言にしか思えなかったが、今更になってそんなことを思い出すなんて。
 今の私の咆哮は、理想からは全く遠い概念だった。指は折れ、弓はひしゃげ、矢の残りは少なく、満足に肉体はおっつかない。叫ばなければ矢一つ放てないなど「赤城」の名折れに他ならなかった。

 そうして、ついに弓すらも砕ける。弦すらも切れる。

 殆ど「終わり」という概念と同じ。雷巡棲鬼の放った魚雷、その盾となって、私の代わりに吹き飛んだそれ。心の半分がなくなってしまったかのような喪失感。

 踏み込んできたレ級が見境なく尾を振り回す。ヲ級の艦載機が巻き添えを喰って十数機爆炎を挙げるが、そんなことはお構いなし。私を殺すために一心不乱。
 回避は効かなかった。後ろへ跳びながら手を交差させ、来るべき衝撃に備えるが、質量の差は歴然としている。骨の軋む音とともに私は海面へと叩きつけられた。

 肺から空気が絞り出される。横隔膜が痙攣する。体が悲鳴を挙げている。

 私は矢をとった。
 口から流れる血を親指で拭い、手首に九字を書いた。

「こんなところで諦めていられないの」

17 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:50:13.20 ID:tODhHfXt0



「その気概は立派やけどな」

「このクソバカ女! 早く撤退するでちっ!」



18 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:51:45.64 ID:tODhHfXt0

 小柄な二つの影が私と敵の間に割って入った。

 空を埋め尽くさんほどの艦載機が飛ぶ。ぐるんぐるんと臙脂色の周囲を旋回しながら、最初はただの白い紙きれであったものが、次第に遠心力によって速度を上げ、空中に浮かんだ魔方陣の中へと突入、艦載機へと姿を変えている。
 概算でその数は五十。それら全てが爆撃機。

 指が鳴らされる。と同時に、全機爆弾投下。ヲ級の艦載機による妨害などものともせずに、巨大な火の玉が三体へと襲いかかった。

「……早いのね」

 口内の出血が酷く、きちんと言葉にできたかは自信がなかった。

 龍驤は私に冷たい視線を向け、無言で前を向いた。いまだ黒煙の立ち上る爆心地を。

 おかしかった。私はここまで辿り着くのに三十分以上、ともすれば一時間近くを費やしている。龍驤たちが私に追いつき、ここへ到着するまでには、あと十五分以上かかると踏んでいたのに。
 ここにいるのは龍驤と58の二人だけではない。視認できる範囲で、そう遠くない位置に、残りの十人ほどがこちらへ向かっているのが見えた。

「赤城が戦いすぎなだけ。ぺんぺん草も、生えてなかった」

「……海には生えないでしょう?」

「そうだよ。そういうこと」

 そういうことね。
19 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:52:51.28 ID:tODhHfXt0

 戦い続けてここまでやっとこさやってきた私と、深海棲艦の亡骸を眺めながらの龍驤たちでは、そりゃあ要する時間が違うわけで。
 そんなことにも気が付かないくらいに頭がおかしくなっていたのだ、私は。

「……来るわ」

 黒煙を巻き上げながらレ級が吶喊。狙いは最も近い位置にいた龍驤。
 しかし龍驤は巧みに爆撃を加えながら、尾が、砲火が、自身のすぐそばを通るように、それでいて決して被弾しないように、一定の距離を保っている。

「赤城さん!」

「うわ、ひどいっ……!」

 霧島、最上。そのさらに後ろには鳳翔や扶桑、雪風もいる。なんとあの大井まで!
 だがしかし、逆になぜか漣と響の姿が見当たらなかった。

「私のことよりも、今は」

 海風が黒煙を薙ぎ払う。ヲ級も雷巡棲鬼も、決して無傷ではなかったが、かといって行動不能に陥っているようには見えない。

「第一艦隊、全体を俯瞰しつつ援護! レ級はウチがひきつけとくから、ヲ級を中心に! 第二艦隊は適宜距離をとりつつ、雷巡棲鬼と戦闘開始! 魚雷だけには気を付けて!」

「わかりました!」

「うん!」

「はいっ!」

 各々が頷き艤装を構えた。

20 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:53:53.76 ID:tODhHfXt0

 背中へと手を回し、なんとか健在な薬指と小指の付け根で、筈の先を掴む。手首に描いた九字の効力は消えていないらしく、薄らぼんやりとした光が矢を包み込んでいた。

「その体ではもう戦えないでしょう!?」と鳳翔が叫ぶ。明らかに、そんな声を出し慣れていないような声音で、思わず笑ってしまった。

「赤城! 馬鹿なことを考えるんじゃねーでち!」

 何を言っているのかわからなかった。体はまだ動く。戦える。
 ここで逃げる? 目的を目の前にして?

「どうしてですか?」

「死に急いでどうするのさ!」

「もう私はとっくに死んでいるのです。あの日。泊地が壊滅した瞬間から」

 ……あぁ、58、あなたもわかっていないの?

 心臓が動いていて、代謝があれば、それで生きているとでも? それだけで生きていることになるとでも?
 誰も私から戦いを奪うことなんてできやしない。これは儀式だ。イニシエーションだ。
 私が私であるための。

 私が新しく命を吹き返すための。

「いままで散々、目的のためなら死んでもいいと吹聴しておいて、いざ土壇場になって言葉を翻すんですか?」

21 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:54:25.51 ID:tODhHfXt0

 死ぬつもりはなかった。けれど、逃げるつもりもないのだから、きっと私は死ぬだろう。
 わかっていても飛び込まなければならない修羅場が目の前には広がっていて、ある種私には、そこが宝の山にすら見えるのである。

「……命を粗末にしろ、と言ってるわけじゃないよ」

「苦しい言い訳ですね」

「龍驤! 赤城になんか言ってあげてよっ!」

「……」

 反応はなかった。レ級との戦いは熾烈を極めている。意識を割く暇なんてありはしない。

「58、あなたも加勢にいかないと。そんなに楽な戦いじゃあないわ。少なくとも、おしゃべりの余裕があるとは思えない」

「……58さん、行きます。赤城さんを絶対に」

 鳳翔は息を吸い込んで、決意とともに吐く。

「助けてあげてください」

 助ける? 助けるだなんて、まるで私が不幸のようじゃない。
 私にとって今が人生のハイライトなのだ。ターニングポイントなのだ。ここを乗り越えれば、私の人生は花開く。

22 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:54:51.30 ID:tODhHfXt0

「58、邪魔をしないで頂戴」

 おずおずと差し出された手を振り払い、私は雷巡棲鬼に向かっていった。右手には矢を一本だけ持ち、加速。水面を切り裂く。空気の境目を縫う。戦闘状況は既に開始されていて、神通と雪風の連携の隙間に、最上がクリーンヒットを狙っている。

 加賀の面影がちらついて消えた。

 吐息が熱い。

 58が私の名前を呼んでいる。

 だからなに?

「私はっ!」

 雷撃が私の体と意識を半分吹き飛ばす。
 手の感覚がない。矢を握っているのかどうかわからない。握っているはずだ。握っている。握っているに決まっているじゃない。
 私の想いはそんなに生ぬるいものじゃない!

23 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:55:45.99 ID:tODhHfXt0

 私はただ、良かれと思って、みんながどうすれば助かるか、幸せになるか、それを考えて、考えただけだったのに、後悔しても後悔してもしたりなくて、でもそんなことをしたって加賀は、みんなは、二度と戻ってくることはないのだから、死者に価値はなくて、生きている人間だけが世の中を、矮小な自らを変革できるからこその、責務、あぁそうだ、責務が、私には、やらねばならぬ大義が、どこかで死んだ誰かのために、あの日に死んだ私のために、

 生きよう。

 生きたい。

 生きねばならない。

 私はここで死ぬけれど。

 死んだとしても。

 龍驤ために。

 58のために。

 みんなのために。

 なにより私自身のために。

 矢の先端が雷巡棲鬼の胸へと触れる――

24 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:56:32.28 ID:tODhHfXt0

――よりも早く、浮遊している単装砲が、二発、私の体を貫く。

 口に血の味が満ちる。

 背中に海の冷たさを感じた。
 それどころか、重力さえも全身に感じて、ずぶ、ずぶ、ずぶり、緩やかに、だが確かに、背中から海の底へと落ちていっているようだった。
 違う。そんな例えは適切ではない。

 海の底が私を呼んでいる。それが正しい。

 夥しい数の無念の手が、暗い深海から伸びてきて、腕を、脚を、首を、掴んで離さない。

 龍驤と58と、……みんなが、何かを叫んでいる。私の名前を叫んでいるのだろうか? だったらどんなにいいことか。もしそうだったら、いいなぁ。
 自分勝手極まりないことだけれど、この満足感のまま意識を失えるのなら、最善にこそ程遠くても、なんて幸せな次善。この身には勿体ないくらい。

 ついに体がとっぷり沈む。呟こうとした言葉は泡になり、立ち上るばかり。

 さようなら、龍驤。またお酒を酌み交わしたかったわ。

 ……まだ呑みたいお酒は沢山あって、話したいことも沢山あったけれど。

25 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:57:04.36 ID:tODhHfXt0

 ……。

 ……。

 ……。

26 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:58:03.22 ID:tODhHfXt0

 あぁ――死にたくないなぁ。
 こんな今わの際で、そう思ってしまうだなんて。

 全国津々浦々の名産を食べ損なった。地酒もその大半を味わっていない。いい男性と結局交際できたことはなかったし、一人旅も計画だけ立てて終わってしまっている。
 龍驤にも、58にも、謝っていない。

 完敗だ。私は運命に負けたのだ。

 誰か、助けて。

 まだ生きたい。

 死にたくない。

 でも、これで、もう二度と、後悔したり、悩む必要から解放されるのだと思うと、それは、それで……。

 意識が白くなっていく。

 きっとこれが死だ。

 これこそが死――

27 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 01:59:21.84 ID:tODhHfXt0

* * *

「――なせねぇよっ!?」

 俺は絶対に離すまいと、力の限りに赤城を抱きしめた。

28 : ◆yufVJNsZ3s [saga]:2018/06/03(日) 02:00:21.83 ID:tODhHfXt0
―――――――――――――
ここまで

2スレ目突入。話がなげぇ!
これからもよろしくお願いします。

待て、次回。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 02:03:22.70 ID:mGFdOIS9o
新スレ建ってたんだな
おっつおっつ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 06:21:29.34 ID:xVmMcoNjo

もっと長くてもいいんだよ?
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 09:37:32.78 ID:jLKLllEpo
新スレおつ!
待つぞ!
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 15:12:35.36 ID:s27Rbr1No
おつ
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 17:22:27.05 ID:D3QAgpEA0
おつおつ
赤城が本当に苛烈過ぎるけど、辿り着けるのは流石だw
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 23:11:28.59 ID:RpsKQuSe0
お花畑赤城(咲いているのは彼岸花)
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 02:18:18.89 ID:Emlj3Pg60
おつう
36 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:14:25.34 ID:uH6ojaC40

 いてぇ、いてぇ、いてぇ!
 銃創が滅茶苦茶いてぇ!

 意識で視界が明滅する。奥歯を食いしばって何とか耐えようと試みても、口の隙間から苦悶の声が泡となって海面へとのぼっていく。酸素は重要だ、特にいま、俺のように素潜りをしている人間にとっては特に。

 海面。素潜り。
 そう、俺は今、身の毛もよだつ着衣水泳の真っただ中だった。

 濡れたシャツ、そしてトランクス。当然のごとく、俺は海へと飛び込む前に自らの衣服を手早く脱いでいる。大して面積の無いはずの上下は、けれど関節に触れているというたったそれだけの理由で、俺の運動を阻害していた。
 海軍の教練科目の中には水泳も勿論あった。銃を抱えたままの渡河や泳法も学んでいる。高を括ったわけではないが、赤城の救出は難しくないと、そう判断した上で俺は海に飛び込んだのだ。

 しかし、直前に、敵の流れ弾が俺の腕を掠めていった。掠めたとはいっても、そもそも威力や口径が対人を想定しているものではない以上、その被害は甚大。
 
 左上腕のちょうど真ん中あたりが大きく半月のかたちに抉れていた。

37 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:15:02.71 ID:uH6ojaC40

 断裂面は不規則でぐずぐずのミンチになっている。砕けた白いものは、恐らく骨だろう。腕は曲がりなりにも動くので、腱がやられているというわけではないのが奇跡だったが、このまま赤城と一緒に沈んでしまえば全てが意味を為さなくなる。
 血液は留まるところを知らずに海の中へと拡散していく。海水は生理食塩水の代用にはならない。早く止血をしなければ、死ぬ。

 俺は急ぎで体に鞭を打ち、呼び寄せられるように、吸い込まれるように、海の底へと降下している赤城へと手を伸ばした。
 うっすらと目が空いているようだったが、意識の消失は目前。目は虚ろ、助けを求めるように両手を前方に投げだし、長く艶やかな髪がほどけて広がっている。

「死なせねぇよっ!?」

 叫んだ言葉はごぼりごぼりという音へと変換される。それでも叫ばずにはいられないのは、痛みを紛らわせるなにかが欲しかったというのもあるし、それ以上にこいつに悪態の一つでもついてやりたかったからだ。
 少なくとも俺にはその権利があるような気がした。

38 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:16:17.72 ID:uH6ojaC40

 死なせるか。死なせるものかよ。

 赤城、お前は、お前が、どう思っているのかを俺は知らない。理解しようと歩み寄ったとしても、自らの作戦で仲間が大勢死んだその心情を、分かち合うには俺は力が不足している。
 だが、だから何もせずに見ているなんてことが、できるはずもない。赤城にはまだやるべきことがある。それを放棄して、放置して、沈まれては困るのだ。

 赤城、お前がどう思っていようとも、俺は知っている。お前にはまだ生きるべき理由がある。
 ここで死んでいい人間ではない。
 死ぬならせめて、58と龍驤、あいつらを、

「幸せにしてから死にやがれ!」

 ごぼごぼごぼごぼごぼり。
 大量の空気が口から出ていく。

 アホか、俺め。

 自虐しつつも、言ってやったぜという達成感もまた、ある。

39 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:16:55.47 ID:uH6ojaC40

 人生なんてのは往々にしてうまく行かないものなのだ。どんな選択肢を択んだとして、結局、十全に満足のいく結果になることのほうが珍しい。

 誰かのことを考えて、悩み続けた結果が響であり、雪風であり、神通だった。
 他人への共感は罪悪感となり、不安へと繋がる。それは後悔の念を惹起し脚を止める。未来を見据えることができなくなる。

 誰かのことを考えて、悩むことに倦んだ結果が赤城であり、龍驤であり、58だった。
 前向きと言えばいっそ聞こえはいいものの、換言すれば視野狭窄。自分の見たいものだけを見て、本当に大事なものが足元に転がっていても決して気づくことのない、どこにでもいるような衆愚の完成。

 こころない人間は、いつか彼女たちの話を聞いて、愚か者だと断ずるかもしれない。もっとうまいやりかたがあったはずなのに、自ら不幸に飛び込む大馬鹿者だと。
 外野はドヤ顔で他人を批評するのが大好きなのだ。自らには絶対に危害が及ばない安全地帯から、こっそりこちらを窺いつつ、目線があわない時を狙って石を投げてくる。人間の醜さを知り尽くしたというほどには俺は年輪を重ねていないけれど、その認識が間違っているとは思わない。

 それはとても業腹だった。
 精一杯、仲間のためを想って生きてきたであろう彼女たちが、死後に貶められるのは到底許容できることではなかった。

40 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:18:43.26 ID:uH6ojaC40

 伸ばされた赤城の手を掴もうとして、二度、するりと抜ける。さらに俺は強く泳いで、沈む赤城との距離を十センチ、たったそれだけ縮め、筋肉が千切れることも厭わずに限界まで腕を伸ばす。
 手首へと指がかかり、そのまま握る。引き寄せる。

 赤城からの反応はない。水の中ということもあり、重さは殆ど感じないが、そのままではただ揺蕩うだけである。俺は手首から肩へと腕を回す。

 絶対に離すまいと、力の限りに赤城を抱きしめた。

 抉れた部位に激痛が走った。
 それでも回した腕の力だけは緩めない。歯と歯の隙間、唇と唇の隙間、そんな僅かな間を空気は抜けていく。
 呼吸が苦しい。泳ぐことに集中しなければ、被弾箇所の激痛に意識が全て持っていかれる。

 赤城はこんな痛みにさえ何度も耐え、ここまでやってきたに違いない。
 それは尊敬に値するにふさわしく、それ以上に、敬意を払うにふさわしかった。同時に気の毒でもあった。
 独りで痛みに耐える海の上の、どんなに寒々しかったことか。

41 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:19:19.56 ID:uH6ojaC40

 頼んだぞ、龍驤。

 輝く海面が頭上に近づいたのを見て、俺はより強く、拳を握る。

「ぷはぁっ!」

 重力を感じる。俺は髪を振って張り付くそれらを吹き飛ばし、視界を確保。すぐに赤城の体を持ち上げ頭を海上へと出した。
 ぐったりとしている。瞼が開いていない。不自然に肌が白い。

「赤城! 赤城ッ!」

 呼びかけても反応はなかった。

「くそっ!」

 頬を張っても同じ。身震いひとつしない。
 一体どれくらい呼吸が止まっていた? 海水も飲んだか? 心肺停止からの蘇生は時間との勝負だと訓練校時代に教官から教わった。細かな時間までは覚えていないが、二次関数的に蘇生確率は低下し、文字通りに一分一秒を争うと。
 悪態をつく暇も惜しい。逡巡している余裕はない。

 俺は周囲を見回す。

「……よし」

 幸いにも、ボートは流されていないようだった。流れ弾にも当たっていない。エンジンがかかった状態で、停止している。
42 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:20:25.15 ID:uH6ojaC40

 それは俺の命綱だった。生命線だった。
 海に立てない俺が、艦娘、彼女たちと同じ目線で――同じ前線で、俺にできる何かをするための。

 あの夜、神通に誘われ、雪風に襲われた小屋。漁師の休憩所。
 ボートが係留してあったことと、小屋の中に鍵があったこと。それらに思い至るまで、さして時間はかからなかった。

 本当ならばもっとあとになる予定だった。武装など無論ついておらず、一発の被弾で航行不能になってしまう単なるボートに過ぎないのだから、龍驤たちが掃海したのちをゆっくりついていくつもりで考えていた。
 しかし、赤城の予想外の独断専行により、敵は軒並み薙ぎ払われていた。龍驤たちはほぼ敵に遭わずにこの海域までやってきたが、それは俺も同じ。
 だからこそ赤城を助けるのに間に合った。運命のいたずらとしかいいようがない。

 神通はあの夜俺に対して問うた。「こちらへ来ますか? 来られますか? その覚悟が、おありですか?」。挑発的な言葉に、覚悟を示す時が来たのだ。

43 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:21:05.24 ID:uH6ojaC40

 赤城の尻を肩に乗せ、ボートの縁に掴まる。そのまま転覆しないように細心の注意を払いながら、力いっぱいに体を引き上げ、赤城の体とともにもんどり打ちながらもボートの上へと帰還する。

 遠くでは艦娘たちが戦っている音が聞こえた。

 ならば、俺も俺の戦いをしなければならない。
 それに勝利しなければならない。

「赤城、悪い」

 あとでいくらでもぶん殴ってくれて構わないから。そう心で呟きながら、俺は赤城の服、その襟に手を入れて、大きく肌を露出させる。
 冷たい肌と、身に着けられていた下着が露わになる。首筋から鎖骨にかけて貼りつく髪の毛は、状況次第では扇情的だったのかもしれないが、今の俺の心はまるで動かない。

 心肺蘇生の手順は覚えている。あとは実践するだけだ。そう、落ち着いて、冷静に。

 手を組む。右手を下に、甲の側から左手をかぶせ、指と指を絡ませる。
 仰向けに寝た赤城の胸部、狙いは胸の中央。乳房と乳房のちょうど真ん中。
 垂直に、肋骨を折るくらいの力を籠めて。

 速く、絶え間なく、三十回。
 力をかけるたびに銃創から血が噴き出すが、知ったことか。

44 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:22:33.71 ID:uH6ojaC40

 そして、

「本当に悪い」

 命より純潔が大事というケースを想定するつもりはなかったが。
 大きく息を吸い込み、赤城の口に自分の口をあわせた。ゆっくりと一秒かけて息を吹き込み、それを二回、繰り返す。

 頼む。生きろ。眼を覚ましてくれ。
 俺は最早願うことしかできなかった。こんな素人の、応急処置的な蘇生法が、一体どれだけの効果があるだろう。それでも頼るものはそれしかないのだ。陸に戻って高速修復剤の溶液を希釈して……そんなことをしている間に赤城は死ぬ。確実に死ぬ。
 十割が、九割九分九厘になるだけでも、試す価値はあった。

「龍驤! 赤城、赤城が、くそっ、眼を覚まさねぇんだ!」

 誰か、こいつを助けてやってくれ。

『……ほうか』

 諦念に満ちた龍驤の声。
 その落ち着いた声が生来のものであるはずがなかった。努めてそういう声を出しているのだ。

 怒りではちきれそうだ。

45 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:24:22.14 ID:uH6ojaC40

「……最期の言葉がそれでいいのか」

『案外幸せそうな顔してるんやないの?』

 赤城の顔を見た。どうだろう。どっちでもあるように思えたし、どちらでもないようにすら思えた。

「幸せの中で死ねるなら、それでいい」

『ほうや』

「お前はそう言ったよな」

『言ったよ』

「それでいいのか?」

『くどいなぁ』

「本当に幸せなのか?」

『赤城のことは、うちにはわからん』

「お前のことだ、龍驤」

『……』

46 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:25:14.19 ID:uH6ojaC40

「赤城が死んで、龍驤、幸せの中で死ぬ未来が、お前にやってくるのか。
 きっと後悔するぞ。死ぬときに、ああしておけばよかったんじゃないか、そんな想いは付きまとう」

『知ったような口を利くおっさんやねぇッ!』

「だから俺は死んでねぇんだ。生きるために、俺はトラックに来た」

『っ……!』

「お前はお前の言葉に従う義務がある。じゃなけりゃ、お前が今まで信じてきたものはなんだったんだ?」

 幸せの中で死ねるならそれでいい。龍驤は常々それを言い続けてきた。
 なら、彼女自身はどうだ? そのお題目を掲げ続けて、結果として幸せに死ねるのか?
 もし龍驤自身が、その信念を貫くことによって不幸せな結末の中で息絶えることになるのならば、それは酷い矛盾だった。逆説的に、龍驤は、龍驤こそが、彼女自身を最も幸せにしなければならない。

 その責務から眼を背けることはできない。

『……』

 沈黙。

 俺が赤城に心肺蘇生を施す音だけが聞こえる。

『……赤城』

 優しい声音で、

『また旨い酒を呑みたかったなぁ』

47 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:26:00.04 ID:uH6ojaC40

 赤城の体が震えた。

 びくんと一瞬体が跳ねて、その口から大量の水が溢れて零れる。血の混じった赤い海水。
 口から零れた海水はまた赤城の気管へ侵入を試みるが、それを拒む様に――生きたいと希う赤城の体が、横を向いて、ひたすらにえずく。

「ぅ、ぐ、げほっ! えほ、かはっ! げ、ふ!」

 赤い海水がボートを汚した。呼吸と排水とがごちゃまぜになっているようで、吸っては咽せ、吐いては咳き込んで、どんどん自らの純度を高めていく。

「龍驤!」

 喜びを噛み締めている時間すらも惜しかった。この歓喜を独占するほど強欲になれるはずもない。

「赤城が!」

『……嘘やん? 嘘やろ?』

 嘘の方がよかったか? そんな意地の悪い考えがよぎったが、それを口に出すよりも早く、龍驤の言葉が通信に乗って流れてくる。

『……よかったぁ。よかったよぉ……』
48 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/06(水) 02:27:16.51 ID:uH6ojaC40
―――――――――――――――
ここまで。

短めで刻んでいく。
あと5話とか多分それくらい。もしかしたら刻んで10話くらいまで伸びるかも。
どちらにせよ今月中には完結かなー。

最後までよろしくお願いします。

待て、次回。
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 05:53:06.12 ID:N898HZgZo
やったぜ
ヒロインレースの修羅場まで書いてくれ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/06(水) 07:08:23.44 ID:gBYmHJVJ0
おつ
応援してます
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 08:48:57.54 ID:ey3lnWGP0
おつつ
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 09:32:28.81 ID:2OUILLc6O
おつ
待つぞ!
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 11:39:51.18 ID:eTGyulM7o
おっつおっつ
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/06(水) 12:32:44.04 ID:wvBzsKEsO
おつ!
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/06(水) 22:18:45.42 ID:5cgGXi4c0
おいついた乙
56 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:33:46.07 ID:g29J3/ci0

 あの世は煙草のにおいに満ち満ちていた。

 一面の花畑に私はいた。それだのに、思わず顔を顰めてしまう、このいやなにおいときたらなんだ。どこが発生源だ。
 と、あたりを見回して、ぎょっとする。

 私の周囲に何人も人影が立っている。そいつらは一切合財が黒で塗り潰されていて、しかも幼稚園児がクレヨンを使ったかのように、あらぬ方向へとはみ出しまくっていた。
 どこに関節があるのかわからないそいつらが、私をゆるゆる取り囲みながら手を伸ばす。私の手は二本しかないというのに。そんなに何本も、何十本も差し出されても、掴む手を悩んでしまうでしょう。

 赤城。赤城。赤城さん。

 私の名前を人影は呼ぶ。
 合点がいった。ここは所謂三途の河で、この黒い人影たちは奪衣婆なのだ。この先にある河を無事にわたることができれば、晴れて幽世に着くことができる。

57 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:34:17.39 ID:g29J3/ci0

 赤城。赤城さん。赤城さん。

 私の名前を人影は呼ぶ。
 しかしどうにもおかしな話だった。名を呼ぶその声、どうにも聞き覚えがあって、最初はてっきり加賀や吹雪や、私のために死んだものたちだと思っていた。私の罪の重さを率先して測りに来たのだと。
 だが、その声の主たちは、記憶が正しければ、まだ死んではいないはず。

 あるいは私が逝くよりも早く戦況が悪化し、軒並みレ級やヲ級や雷巡棲鬼に殺されたのかもしれなかった。それは考えたくもないことだった。龍驤があの場にはいる。その可能性は万に一つも有り得ないと知っていても。

 赤城さん。赤城。赤城。

 龍驤が、58が、みんなが、私の名前を呼んでいた。

 うっとりするほど懐かしい声。

 私はやはり、まだ死にたくないと思った。

58 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:34:46.36 ID:g29J3/ci0

 視界が一気に開ける。花畑は一瞬にして消失し、人影はいなくなり、そして……。

「赤城ッ!」

 あの男がいた。顔は近くにあり、私の名前を呼んでいる。うるさい。そんな大声を出さなくても、この至近距離だから伝わらないはずがないと言うのに。

「……あなたも死んだのね」

 遠路はるばるやってきたというのに、ご愁傷様。

「勝手に殺すんじゃねぇよ……」

 赤城さん。赤城。赤城さん。声が頭の中に響く。

『生きたか。生きて、くれたか』

 龍驤の声が震えていた。暗闇を照らす一筋の光明のような、その声。

「……私は」

 私は。

「生きているのね」

 生きてしまったのね。

59 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:35:15.69 ID:g29J3/ci0

 激しく咳き込んだ。喉が痛い。胸も痛い。爪先から指の先まで全てが痛い。心臓が早鐘を打っている。眩暈がして、前後不覚になって、上体を起こそうとするもそれすら叶わない。提督が咄嗟に私の手をとる。
 視界はおぼろげだった。体はぼろぼろだった。戦場にあって、完全に無力な生き物が、「赤城」の正体だった。

 そして身体の憔悴とは相反するように、思考だけが明瞭。

 なぜ、どうして提督が前線までやってきているのか、それはわからない。だが状況を鑑みるに、この男が私を助けたことは間違いないだろう。ボート。島民たちが共用していたもの。無断拝借してきたのかもしれない。

 そして、

『赤城!』

『赤城さん!』

『赤城さん!』

『赤城!』

 私を名前を呼ぶ、ただそれだけの行為に、一体どんな意味があるというのだろう。戦場において敵から意識を外すはあまりにも愚策。一喝してやらなければならない。

「本当に、あなたちは、どうして」

『よかったぁ!』

『よくねーって! 今後はもっとお淑やかにするでちよ!』

『……ゆっくり休んでいたほうが、いいんじゃないかしら?』

『そうですね。あとはこちらにお任せください』

――私にこんなにも優しいのだ。

60 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:35:57.05 ID:g29J3/ci0

「死にたかったか」

「……そんなはず、ないでしょう」

 呼吸でさえ辛いのだから喋るなどもってのほか。理解はしていても、言わなければならないことが、いまの私には沢山あった。

「でも、死んでもいいとは、思っていました。深海棲艦は殲滅します。その道中で死ぬことは、十分に有り得ることだから」

「死んでもらっちゃ困るんだよなぁ」

「死ぬか生きるかは結果に過ぎません。死ぬつもりはなかったけれど、いつか死ぬ覚悟で戦ってきました。そして私は生きている。……生きてしまった」

 自分を裏切ることはできない。私は生きている。つまり、私は生きていてもいいということなのだ。まだ。まだ、生きていてもいい。
 死んでもいい、というのは結果論だ。決して死にたいわけではない。そして、結果的に死ぬことを許容するのであれば、結果的に生きることもまた許容されていなければならない。ゆえに私は、この生の喜びを、きちんと噛み締める義務があった。
 いや、そんな論理的に――義務的に、感情を作る必要なんて。

 働く五感に涙が滲む。

「龍驤」

『なんやっ!』

 生きているからこそ、またこの声を聴くことができる。

「58」

『なにさっ!』

61 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:36:31.18 ID:g29J3/ci0

「あのね、その」

 口ごもる。伝えたいことが多すぎて、その巨大さに喉を通っていかないのだ。
 私たちの間には、確かに信頼があった。言葉を使わずとも伝わる綱のような何かがあった。それに甘んじていたことは明白で、元凶でもある。
 気づくべきだったのかもしれない。言葉は要らずとも、会話が必要であったことを。

 生きていた私は死に、死んでいた私さえも死んで、死んでいた私は生きている。

 生きているから。生きてしまったから。

 死んでいたままでは言えなかったことを。

「死ぬのってとても、とても苦しかったわ」

 いまだ指先には力が入らない。直射日光を浴びながらも、歯の根はがちがち噛みあわず、時折震えが走る。
 眼は依然少し霞んでいる部分もあるし、呂律の回らない瞬間だってある。太ももから下の感覚は希薄で提督に支えてもらってなんとか上体を起こしている。

「死なないで。お願い」

 弱弱しい声が出た。

『もちろん』

『あたりまえや』

 ……そうか。そうなのか。

「そうなのね」

 死なないというのは、もちろん、あたりまえの、ことだったのか。
 それさえも私は……。

62 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:37:44.48 ID:g29J3/ci0

 私は一気に弛緩してしまった。体力の問題なのか、それとも安堵で力が抜けたのか、それは定かではなかった。
 横になる。背中を提督の脚へと預けた。
 万が一のときのために、その最低限の体力くらいは確保すべき。口惜しいけれど、休息もまた肝心だ。

 視界に提督の顔が映る。妙に嬉しそうな顔をしていて、無愛想な顔には、それがあまりに不釣り合いに思えた。
 衣服から微かにあの世のにおいがする。

「提督」

「ん?」

「煙草はやめたほうがいいですよ」

63 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:38:13.92 ID:g29J3/ci0

* * *

 はだけた胸元。人工呼吸。赤城はこれ見よがしにけほけほと咳をしてみせる。
 そんな余裕があれば大丈夫そうではあるが。

「余計なお世話だ」

 俺は言って、誤魔化すために、少し赤城から視線を逸らした。

『おっさんもよくやってくれた! ほんま、ほんま感謝しとる!』

「間に合った。間に合って、なによりだ」

 全ては偶然の産物なのかもしれないが、いまはその偶然に感謝の意を捧げたい。

 赤城はぐったりしていた。意識はある。呼吸も荒いがはっきりしている。ただ体は冷え切っていて、体力も最早枯れ果てているのか、俺に全体重を預けていた。
 それでも、その顔は辛そうには見えなかった。満足感……なのだろうか。うっすらと笑っている。表情筋を動かすカロリーさえ残っていないようにも思えるが。

64 : ◆yufVJNsZ3s [saga ]:2018/06/07(木) 17:38:46.62 ID:g29J3/ci0

『58』

『なんでちか』

『赤城が死ぬなと』

『んな当たり前のこと今更言われても困るって。死ぬつもりなんて、いまもむかしもさらさらねーでちよ』

『ははは。楽しいなぁ。敵の親玉目の前にして、こんな楽しいだなんて、きっとウチの頭はおかしくなったんやな』

「龍驤、戦闘状況は」

 視界を共有する。
 抜けるような青空の下では、依然戦闘は続行していた。

 頭上では龍驤と鳳翔さんの放った艦載機が、ヲ級、レ級の放ったそれらと航空戦を繰り広げている。閃光とともに一機、また一機と消失していき、それでも機銃の嵐を抜けた艦爆や艦攻が果敢に敵を攻め立てる。

 扶桑がその巨大な砲塔をレ級へと向けた。耳を劈く轟音とともに撃ちだされた砲弾が、尾を根元から粉々に吹き飛ばす。まるでいつかのお礼参りといった具合に、扶桑の目には戦いの意志が宿っている。
 そこへ雪風と夕張が殴りかかっていった。巨大な尾は即座に再生、至近距離にいた雪風を襲うが、持ち前の身軽さで軽快にそれを回避。射出した魚雷は直撃、しかし損傷は軽微である。
 夕張が背後からレ級を蹴り飛ばし、ぐらついた体勢へ畳みかけるように砲火を浴びせかける。

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