まゆり「トゥットゥルー!」岡部「・・・え?」

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243 : [saga]:2018/06/11(月) 23:48:44.55 ID:I+t0YjPI0
まゆり「あはははは!」


まゆり「そんなこと、信じろっていうのオカリン?まゆしぃに?あっはははは!」


まゆり「あっはははは」





まゆり「ふ、ふ……」







まゆり「……」








まゆり「…………」













まゆり「……早く帰ってきてくれなきゃ……殺すから」
244 : [saga]:2018/06/11(月) 23:50:13.87 ID:I+t0YjPI0
岡部「ああ。必ず帰ってくる」


まゆり「……」


岡部「では、もう行くぞ」


まゆり「待ってオカリン」


岡部「なんだ?」


まゆり「白衣。汚れてるよ?」



言われて見ると、骨の折れた左腕が出血し、俺の白衣は血まみれだった。

さらに泥などが真っ白な生地に色濃くこびりつき、とても見れたものではない。



岡部「あぁ……まぁ仕方あるまい。用事が全て済んだら、新調するとしよう」


まゆり「はい」



まゆりが自分のバッグを探り、取り出したのは、なんと俺のまっさらの白衣だった。
245 : [saga]:2018/06/11(月) 23:52:07.23 ID:I+t0YjPI0
岡部「なっ!なぜお前が俺の白衣を持っている!?」


まゆり「ラボにあったの、ナイショでもってかえっちゃったのです。ごめんね、オカリン?」


岡部「むぅ……ま、まぁ一枚減っているのに気づいていなかった訳ではないがなぁぁー、フハ、フハハハ」



まゆり「それがあるとね、ちょっとだけ安心してねむれるの」


岡部「?」


まゆり「夜になるとこわくて、ほんとにこわくって、がまんしてても、どうしてもねむたくなっちゃうのです。 でもそれをだきしめてると、オカリンが横にいてくれる気がしてちょっとだけ安心するんだよ」


まゆり「結局夢はみちゃうんだけど……泣きながら起きたときにそれをだきしめると、オカリンが守ってくれる気がして、ちょっとだけ、安心、するんだよ」



まゆり「オカリン、ぜったい帰ってくるよね…………?」
246 : [saga]:2018/06/11(月) 23:56:40.77 ID:I+t0YjPI0
まゆり。

まゆ、り、


まゆり…………!




岡部「……心配か?ならば何度でも言ってやる。俺は、必ず帰ってくる。絶対にお前を救ってやる。」


まゆり「うん……。わかった。じゃあこれは、オカリンに返すね。オカリンがぜったい帰ってきて、まゆしぃをたすけてくれるって、信じてるから……」



俺は血まみれの白衣を脱ぎ、まゆりから真っ白な白衣を受け取った。










まゆり「……いってらっしゃい。」



岡部「……いってきます。」
247 : [saga]:2018/06/11(月) 23:59:27.32 ID:I+t0YjPI0
秋葉原某所――――

鈴羽「おじさん!」


岡部「鈴羽」


鈴羽「大丈夫だったの!? どこも刺されたりとかしてない!?」


岡部「問題ない。それより奴らの動きは?」


鈴羽「大丈夫だよ。完全に巻いて、アイツらぜんぜん違うところ探してるから。やっぱり着地場所、変えといて正解だったね」


岡部「そうか。ならば急ぐぞ。問題は、未来に到着してからだ」


鈴羽「うん。未来ではポイントから離れすぎた場所には着地できない。奴らと近距離に着地せざるをえないからね」


岡部「そうなると、ハチ合う可能性が高い……いや、必ず接触するだろう。厄介だな」


鈴羽「だいじょーぶ!それはあたしがどうにかするよ!」
248 : [saga]:2018/06/12(火) 00:02:24.26 ID:5fxE77DU0
岡部「お前が一手に引き受けるのはリスクが高すぎる。別の方法を考えよう」


鈴羽「……おじさん」

鈴羽はため息がちにこちらを見た。


岡部「な、なんだ」


鈴羽「まだわかってないみたいだね」


岡部「どうしたというのだ鈴羽、急に……」


鈴羽「おじさんが言ってるリスクっていうのは、あたしのリスクでしょ?」


岡部「ああ。もちろんだ」



鈴羽「そんなことは考えなくていいよ。あたしに全部リスクが来ておじさんにノーリスクなら、こんなにいい作戦はない。そうでしょ?」


岡部「しかしそれではお前が!」


鈴羽「おじさん!!」
249 : [saga]:2018/06/12(火) 00:08:48.67 ID:5fxE77DU0
鈴羽「おじさんはあたしのこと、信じてくれてる?」


岡部「も、もちろんだ。俺はお前に全幅の信頼を置いて」


鈴羽「じゃあ、あたしは何のために過去に来たんだと思う?皆の悲しむ顔を笑顔に変えるために、何をしに来たんだと思う?」


岡部「お前は、ディストピアのある未来を変えに――――」


鈴羽「ちがうっ!!」



鈴羽「ちがうよ、ちがうんだよ、おじさん……」

鈴羽「あたしは、未来を変えに来たんじゃない!そんなこと、あたしにはできない!」


鈴羽「だってそうでしょ?それならおじさんの手を借りずに一人で過去へ跳んでるよ!ッ悔しいけど、悔しいけど……あたしにそんな力は無い!!」


鈴羽「助けに来たんだよ!! オカリンおじさん! 君を助けに来たんだよ!!」


鈴羽「未来変革の鍵が椎名まゆりである以上、未来を変えることができるのは君しかいないんだよ!!」



鈴羽「それが何!?たかが付き添いのあたしなんかのリスクを気にして!! 本当に大事なことを、見落として!!」


岡部「……!」


鈴羽「はぁ、はぁ、……覚悟をして、おじさん」




鈴羽「未来を変えられるのは、君だけなんだよ…………!」
250 : [saga]:2018/06/12(火) 00:10:50.78 ID:5fxE77DU0
鈴羽の迫真の説得に、思わずたじろぐ。


つまり鈴羽の意味するところは――――局面において、自分を見捨てろ。


こういうことだ。




だができるのか。俺に。

鈴羽を見捨てて、新たな世界線に到達して、それで俺は満足できるのか。



いや……良く考えたら、それは今までずっとやってきたことではないか。

他人を散々辛い目に合わせて、俺はこの世界線にたどり着いたのではないか――――
251 : [saga]:2018/06/12(火) 00:12:50.90 ID:5fxE77DU0
まゆりを助ける。

そのためだけに俺は、幾多の人々の願いを断ち切った。

だが、そのためMr.ブラウンや萌郁にまゆり、そして紅莉栖の命が助かった。

それも、……事実なのだ。



岡部「……ッ」




もう俺には、何が正しいのか分からなかった。



鈴羽「おじさん」


鈴羽は車を止めて、小さく震える俺の右手を手にとった。


岡部「な、何をしている……。俺たちには時間が、」


鈴羽「聴いて。おじさん」
252 : [saga]:2018/06/12(火) 00:16:20.86 ID:5fxE77DU0
鈴羽「オカリンおじさん。おじさんが気に病むことなんか、何にもないんだよ」


岡部「何を言ってる。俺は、多くの願いを失わせた。夢を持たせるだけ持たせておいて、最後には奪ったんだ……」

鈴羽「そうだよ。今自分で言ったじゃん!」


岡部「え……?」








鈴羽「『夢』なんだよ。『願い』なんだよ。本来は、無かった……無くて当然のものだったんだよ」


鈴羽「秋葉留未穂の父親は、飛行機事故で死亡している。漆原るかは、仕草は女のコにしか見えない」


岡部「……だが、男だ」


鈴羽「そう。そして椎名まゆりは、17歳の時点で死亡することは無い。牧瀬紅莉栖も、18歳の時点で死亡することは無い。それら全てを狂わせているのは……」



岡部「タイム、マシン……」



鈴羽「そう。」
253 : [saga]:2018/06/12(火) 00:30:41.59 ID:5fxE77DU0
鈴羽「わかるよね、おじさん。」

岡部「……」



鈴羽「今ここにいる……こうしてあなたと話しているあたしも、『夢』なんだよ。本来あってはならないもの」


岡部「……お前は夢などではない。幻などでは、ない!! お前が一体何度、一体何度……俺を……助けてくれたことか!!お前がいなければ、俺は」


鈴羽「ちがう。橋田鈴羽は、今から7年後に生まれてくる」


鈴羽「それが正常な未来。SG世界線。……あたしは歪な存在。消えてゆく運命じゃなければ、みんなが笑えない」
254 : [saga]:2018/06/12(火) 00:48:57.97 ID:5fxE77DU0
鈴羽は……

なぜ、平気なのだろう……


SG世界線を目指す。

その目的のためには、自分が必ず消えなければならないのに。



お前が過ごしてきた十余年は、俺から見れば歪かもしれないが、


お前にとってはかけがえのないものだというのに……。





いや。

本当は、平気ではないことくらい……分かっている。


けれど、分かっていてもお前の、

その仮初めの強気に縋らずにはいられない!!



だってそうだろう?



俺は今から、お前を消すのだから。


7年後に生まれてくるはずの鈴羽と、今目の前で俺と話しているお前は、違う。

生まれた場所も、環境も、経験も、思想も、意思も、すべて異なる。


そんなお前のすべてを。培ってきたその存在のすべてを!!

今から抹消しようとしている!!

そんな男をなぜお前は!!!!






笑顔で励ますことが、できるんだ……?
255 : [saga]:2018/06/12(火) 00:56:08.43 ID:5fxE77DU0
鈴羽「あたしを見捨てて。何があっても、振り返らないで。まゆりさんの心を変えるまでは」


岡部「……」


鈴羽「おじさん?」






岡部「わかッた!わかった、わかったよ、わかった……!」


岡部「俺はお前を見捨てる。そのすべてを否定して、SG世界線へ跳ぶ!!」

岡部「それでいいんだろう。それがお前の望みでもあるのだからな。フゥーーハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!!!!」

鈴羽「……おじさん」















鈴羽「泣くなよ。」
256 : [saga]:2018/06/12(火) 00:57:02.53 ID:5fxE77DU0
休憩
257 : [saga]:2018/06/14(木) 21:06:57.31 ID:HnDfFZYM0
再開
258 : [saga]:2018/06/14(木) 21:09:24.11 ID:HnDfFZYM0
その後、俺たちは山中に着地させたタイムマシンへ向けて三十分ほど車を走らせた。


その間はお互い、全く口をきかなかった。


俺は夢のように流れていく夜景を、ただ眺めることしかできなかった。


この景色を見るのも、これが最後になるかも――――ふとよぎったそんな考えを、すぐに振り払う。


すぐに、戻ってこれる。


その時は皆笑顔だ。





そうやって俺は、独り戦士の顔した鈴羽から逃げていた。
259 : [saga]:2018/06/14(木) 21:13:57.59 ID:HnDfFZYM0
鈴羽「着いたよ」


岡部「……ああ」


鈴羽「おじさん、やることは分かってるよね?」


岡部「俺は未来に着いたと同時にまゆりに会いにいき、あいつの心を変える。そしてお前は、ラウンダーをひきつける」

鈴羽「完璧。じゃあタイムマシンに乗る前に……」ゴソゴソ



岡部「なんだ、それは」



鈴羽はポケットから丸い卵型の機械を取り出した。


鈴羽「父さんの開発した未来ガジェットだよ。これのもう一方はラボに置いてるから、もし紅莉栖さん達がまだ中にいれば……」


岡部「!」
260 : [saga]:2018/06/14(木) 21:22:54.89 ID:HnDfFZYM0
ラボ――――


紅莉栖「……」


ダル「ふー。あいつら、行ったみたいだお」


紅莉栖「そう」


ダル「うん」


紅莉栖「…………」





紅莉栖「……別にショック受けたりなんてしてない!!」

ダル「うおっ!なんぞ急に」


紅莉栖「岡部が何も言わずに行っちゃったことに対してショック受けたりなんて」


ダル「おお……」


紅莉栖「うるさい!」


ダル「理不尽すぎだろ常考」

紅莉栖「なんでそんな、平然としてるの」


紅莉栖「もう、あえ、ないのに……ッ」



ダル(牧瀬氏のマジ泣きキタコレ!)


ダル(とかいったらマジで殴られそうだからやめとこ)


ダル(「岡部がいなくなってせいせいしたわ!」とか言い出さないとこ見ると、素でかなりショック受けてんなぁ……)

261 : [saga]:2018/06/14(木) 21:25:45.77 ID:HnDfFZYM0
ダル「ん?」


ダル(牧瀬氏の泣き声でかきけされかけてるけど、なんか鳴ってる)


ダル「僕の携帯じゃないな。牧瀬氏、けいた…」


ダル「ってテーブルにあるじゃん。じゃあ何なんだろ」


ダル「…………奥だ」










ダル「なんぞこれ。ちっちゃいメカ。鳴ってる……」


ダル「まさか、このボタン押したら」





岡部『誰だ?ダルか?』



ダル「オカリン!?」





紅莉栖「!!!!」
262 : [saga]:2018/06/14(木) 21:36:52.97 ID:HnDfFZYM0
紅莉栖「ノスタルジアドライブッ」


ダル「ぐわあああああああっ!?」



岡部『ちょっなっ……ダル!? まずいぞ鈴羽!まだラウンダーの残党がっ』

紅莉栖「岡部!!!???」


岡部『のわああああっ』


紅莉栖「ふー、ふー!」


岡部『紅莉栖……?』


紅莉栖「あんた、なんで……!」

岡部『待て紅莉栖、落ち着け。確かに何も言わずに行ったのは悪かった!』


紅莉栖「私がどれだけ心配したと思ってんのよ!? もう会えない、話も出来ないと思って私がどれだけっ」


岡部「何を言っている!?俺はすぐに帰ってくるのだから心配などする必要も無いッなぜならこの鳳凰院凶真に不可能はっ」


紅莉栖「うるさいっ!!!!」


岡部「はい」


紅莉栖「黙って聞きなさいっ……」


岡部「はい。」
263 : [saga]:2018/06/14(木) 21:43:40.83 ID:HnDfFZYM0
紅莉栖「私は一度あんたのことを諦めた!まゆりを不幸にしてまで、私は幸せになれないって!」

紅莉栖「でもダメ!!今分かったの!私はどうしてもあんたを諦めることができない!!だから、だから」


紅莉栖「私、自分勝手なお願いするわ!!私はあなたを、愛しているから!!どの世界線にいたって、そんなのありえないって、科学的におかしいって否定されたって……この想いだけは、変えようの無い事実だから!!」


紅莉栖「岡部!まゆり救って!!そしてSG世界線で、しっかりと私を抱きしめて!!」


紅莉栖「お願い……!」
264 : [saga]:2018/06/14(木) 21:46:17.74 ID:HnDfFZYM0
岡部『……!』



岡部『ふっ』


岡部『ふふふっ……』



岡部『フハハ……何を言っているのか、この天才HENTAI少女め……』


岡部『もう、後悔しても遅いぞ!覚悟していろっ、お前がどれだけ嫌がっても!どれだけ俺を拒んでも!』


岡部『お前をっ抱きしめてやるからなッ……必ず!』


紅莉栖「……うんっ!」


ダル「……グスッ」








紅莉栖「橋田……これ」


ダル「うん」




ダル「も、もしもし」



鈴羽『もし、もし……とうさん?』
265 : [saga]:2018/06/14(木) 21:49:08.38 ID:HnDfFZYM0
ダル「!あ……」

鈴羽。






だ、ダメだ、色んな、言いたかったことが頭の中で、ぐちゃぐちゃになって……声を聴いただけでこれだ、僕は……


いっぱいあるのに。オカリンを助けてくれたこと、前の世界線で何も言えなかったこと、謝りたい……くそっ何も、まとまらない、何もっ



いや、もう、それなら







ダル「鈴羽」


もう、ひとつでいい


鈴羽『はい……』



ダル「鈴羽……!」



今度こそ。



鈴羽『はい……!』





















ダル「がんばれ……!」
266 : [saga]:2018/06/14(木) 22:06:35.15 ID:HnDfFZYM0
鈴羽『………!』


鈴羽『うん……!』











ダル「……切れちゃった」


紅莉栖「ぐっ、ぐすっ、うぅ」




ダル「届いた」





やっと届いた――――











ダル「……がんばれ」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 22:08:43.14 ID:EV9h8UIfO
蘭子「混沌電波第172幕!(ちゃおラジ第172回)」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528712430/
268 : [saga]:2018/06/14(木) 22:12:02.75 ID:HnDfFZYM0
秋葉原某所――――


ラウンダー1「鳳凰院様」


岡部(未来)「どうした」


ラウンダー1「これだけ秋葉原全域を探しても見つからないということは、彼女らは既に過去へ跳んだものと思われます」


岡部(未来)「……」


ラウンダー1「我らも一刻も早く過去へ跳んで、彼女らを待ち伏せした方が良いかと」


岡部(未来)「そうかもしれんな。貴様らがノロマなおかげで、大助かりだ」ガッ


ラウンダー1「あっ……」


岡部(未来)「総員に伝えろ。各自持ち場へ戻れ。タイムマシンで過去の牧瀬紅莉栖たちが存在した時点のアメリカへ跳べ」


ラウンダー1「……了解。各自持ち場へ戻れ――」







あそこから全てが始まった。そんなことは、言われなくても解っていた。


だから跳んだ。ラボを出て、タイムマシンを自分で開発してからは何度も何度も――――期待に胸を膨らませて。
269 : [saga]:2018/06/14(木) 22:16:26.41 ID:HnDfFZYM0
やっと終わるって思った。


本当に辛かったんだ。

まゆりがおかしくなってから皆もおかしくなって、それに耐えきれなくて、俺はラボを出た。


タイムマシンを開発するために。



もう一度……あの楽しかった頃に戻りたかった。




岡部(未来)「……」





でもダメだった。


過去の俺にバレないように未来を変えようとしたが―――俺にはまゆりが壊れる原因がわからなかった。


独りで、途方もない時間考えた。仮説を立てては跳んだ。



だが……ッ





変わらない。変わらないんだ



どうしても変わらないんだ…………!








ラウンダー1「鳳凰院様、準備が完了いたしました」


岡部(未来)「ああ。いくぞ」







だから俺はもう、





現在を変えることに決めた。







岡部(未来)「長かった……本当に長かったが、決着をつける」


岡部(未来)「このクソッタレな過去に、今日でさよならだ」
270 : [saga]:2018/06/14(木) 22:19:12.89 ID:HnDfFZYM0
イムマシン内――――

鈴羽「あともう少しで着くよ」



岡部「ああ。時間との勝負だ。しかし鈴羽、お前はどうやって過去の俺に接触するのだ?」


鈴羽「もちろんお母さんにのせてってもらうよ。すいませーん!って言って、ヒッチハイクだねっ」


岡部「そうか……それは二重で驚くだろうな過去の俺も」


鈴羽「おじさんはなんにも考えずにまゆりさんのところへダッシュでいって、未練を断ち切ってくること! それさえすればきっと大丈夫だよ!」


岡部「そうだといいがな」



あくまでも仮説。しかしチャンスは一回だ。

尻すぼみするのも、仕方がないと言え…


岡部「んぐっ」



そんなことを考えていたら、鈴羽に鼻をつままれた。




鈴羽「リラックスリラックス! だーいじょーぶ、なんとかなるって!」


岡部「……そうだな」






これから死ぬかもしれないのに、俺を気遣ってウインクができるお前に、




7年後、ちゃんとお礼を言いたい。
271 : [saga]:2018/06/14(木) 22:27:23.09 ID:HnDfFZYM0
ガコンと、タイムマシンが激しく揺れた。


鈴羽「着いた……」


岡部「あ……」


鈴羽「いくよおじさん!」


岡部「あ、ああっ」



タイムマシンの扉が開いた。

ラウンダーがいないのを確認して、鈴羽は勢い良く飛び出していく。




鈴羽「じゃあねっおじさん! また、7年後っ!」


鈴羽は笑顔でこちらに手を振った。


俺は何も言えず、手を振りかえして、雷ネットの会場へと走り出した。
272 : [saga]:2018/06/14(木) 22:28:20.92 ID:HnDfFZYM0
休憩
273 : [saga]:2018/06/20(水) 23:17:28.94 ID:QJwYwtJJ0
再開
274 : [saga]:2018/06/20(水) 23:24:35.58 ID:QJwYwtJJ0
岡部「ハァ、ハァ、……」



まゆりはどこだ。



雷ネット会場は広い。ただ闇雲に走っていては見つけられない。


俺は一度立ち止まって頭を回した。



思い出せ。


今は昼飯時……まゆりはどこにいた?




岡部(しまった……!)



この時間、俺は会場の店で猫耳メイドの格好をした紅莉栖を茶化していたのだ。


よってまゆりとは別行動――――




岡部「くっそ、俺のバカめ……!」



ラウンダーはまだ来ていないのだろうか。


鈴羽は引き付けると言ったが、全員はきっと無理だろう。


奴等が何人いるか俺は知らないが、そのうち何人かはこちらへ来て俺をとらえようとするはずだ。




心臓の音が痛いくらい大きくなり、冷や汗が流れる。




急がないと。急がないと。
275 : [saga]:2018/06/20(水) 23:26:23.43 ID:QJwYwtJJ0
怖い。

俺が捕まれば全てが終わりだ。

なのに、足がガクガクして力が入らない。


時間が無い。はやく、はやく――――!




「ねー、あれコスプレ?」



コスプレ!!


側にいた日本人がそう言ったのが、確かに聞こえた。



そうだ、コスプレだ。


コスプレを見せるために、まゆりはルカ子と一緒にお立ち台に行っているのだ!

あれはかなり反響を呼んだと言っていたから、雷ネット以外で人が集まっていて、シャッター音の絶えない場所へ行けばいい!


パァ、と目の前が明るくなった気がした。


しかし、そんな気分は次の一言で消し飛んだ。









「そうね……でもなんか恐くない?軍人みたい」










ラウンダーだ。
276 : [saga]:2018/06/20(水) 23:32:30.62 ID:QJwYwtJJ0

間違いない。



何人ものラウンダーが、人混みの中で俺を探している。

白衣を脱いで身をかがめる。


左腕に激痛が走ったが気にもならない。


バレたら終わりだ。


しかし幸運なことに、ラウンダーとは逆方向にルカ子の姿が見えた。




しめた――――。


俺が足早にお立ち台に近付くと、側にいたまゆりが手を振った。



まゆり「あーっ!オカリ」



岡部「しっ!出るぞ」


まゆり「えー?」








るか「ま、まゆりちゃ、え、どこいくの、えええ……」
277 : [saga]:2018/06/20(水) 23:38:32.81 ID:QJwYwtJJ0
足早に雷ネット会場から離れ、歩いて五分ほどにある公園のベンチに腰を下ろした。



岡部「飲むか」


買ったジュースの缶を渡す。


まゆり「わ、ありがとーオカリン」




まゆりは、元気だった。


目にクマが少しだけついているが、俺のいた時間ほどじゃない。



岡部「クマができているぞ。眠れなかったのか?」


嬉しくて、逆にそんなことを尋ねてみる。



まゆり「んー?……まゆしぃ、ちゃんと寝たよ?」






はっと、気づく。



今日の……この日の前日は、俺がまゆりをはねのけた、あの夜の日ではなかったか。


このクマは、まさか俺があの日、まゆりを拒絶したから眠れなくて……?



良く見ると、かすかに目も赤く腫れている。



岡部「あ……」


そして今日の夜、俺は紅莉栖と付き合うことになったとラボメンの皆に報告するのだ






幸せいっぱいのその笑顔で。





岡部「う、ああ……!」


まゆり「オカリン?」
278 : [saga]:2018/06/20(水) 23:41:58.59 ID:QJwYwtJJ0
吐き気がした。

俺はなんて、なんて――――ッ



岡部「う、」


まゆり「オカリン、大丈夫?」


まゆりが背中をさすってくれる。



まゆり「もし昨日のことでなやんでるなら、そんな必要、ぜんぜんないのです……まゆしぃ、気にしてないよ」


岡部「!」



涙が出そうになるのを必死にこらえる。

俺は本当に、バカ野郎だった。


何で気付かなかったんだ!?

まゆりはもう、今の時点で、こんなに苦しんでいたのに……


まゆり「オカリン」


岡部「ふ、ふふ。すまないなまゆり、もう、もう大丈夫だ。少し取り乱しただけだ」


まゆり「ほんと?」


岡部「……まゆり」














岡部「俺のこと、好きか」
279 : [saga]:2018/06/20(水) 23:57:40.71 ID:QJwYwtJJ0
まゆり「……? オカリン?」


岡部「答えてくれ、まゆり。俺のことが好きなのかどうか」


まゆり「……」




まゆり「まゆしぃ、好きだよ。オカリンのこと」


まゆり「でもね。もしオカリンがまゆしぃのこと好きだったとしても、それはとってもとってもうれしいことだけど……だけど」



まゆり「それはきっと、まゆしぃの好きとはちがうのです。」


まゆり「だからまゆしぃは、もうオカリンのこと好きでいたくない」









まゆり「……辛いから」
280 : [saga]:2018/06/21(木) 00:22:53.56 ID:BeltT/WJ0
岡部「そうか」


まゆり「うん」


岡部「……まゆりは俺のこと、好きなのか。くくくくッ」


まゆり「そ、そんな言い方してないよ……。好きでいたくないって言ったのです」


まゆり「だってオカリンは、紅莉栖ちゃんが好きなんでしょ?」



岡部「……ああ、そうだな…………」




俺はこの時間に出発する前、まゆりに「お前に関わらなかった世界線も存在した」と言った。


しかしそんなものは……真っ赤な嘘だ。


まゆりに見せられたどの世界線においても……岡部倫太郎は存在した。



α世界線で17歳の生涯を終えてしまうまゆり。


そんなまゆりと、俺は必ずどこかの時点で出逢っていた。



幼稚園で。


小学校で。


中学で。


高校で。




死にゆくまゆりの側には、いつも俺がいた。
281 : [saga]:2018/06/21(木) 00:26:37.30 ID:BeltT/WJ0
信じられない。


そんなことがあり得るのだろうか。


幾百、幾千を超える世界の中でただのひとつも、俺とまゆりが出逢わない世界線は無い。


そして彼女の、俺を想う強さが――――苦しくて。嬉しくて。





もう、分からない 。


こんな自分の気持ちにもケリをつけられない、弱い弱いこの俺が、まゆりに強くなれなどと言えるのか?


そんなこと、言える筈がない。







自分の中で、何か大切なものが急速に萎えしぼんでいくのを感じた。
282 : [saga]:2018/06/21(木) 00:31:23.14 ID:BeltT/WJ0
岡部「なんでだろうな」


岡部「なんで俺はこんなに……」


まゆり「オカリン? 大丈夫?」


岡部「運命が、重い」


岡部「重い重い重い重い重すぎる!重すぎるんだ!!なんで、俺なんだ!」


まゆり「オ、オカリン」


岡部「俺はただ、普通に……ラボメンの皆と過ごしたい、仲良く、いつまでも、楽しく……。それだけ、本当にそれだけなのに、それだけなのに、なんでだろう。それはとても難しいんだ」












岡部「俺だけ。」











岡部「ぅ、ぅ、ぅ、ううううわああああああああああああ」


まゆり「だめ!オカリン!!」
283 : [saga]:2018/06/21(木) 00:35:34.38 ID:BeltT/WJ0
まゆり「ま、まゆしぃは分からないけど、ダメだよ!落ち着いて!」


岡部「な、なぜリーディングシュタイナーなど持ってしまったのだろう?それさえなければ俺は、皆と同じように俺は、」


まゆり「オ、オカリン。なに言ってるの」


岡部「ああああぁぁぁぁ」






???「あのー、発狂してるとこ悪いんだけど、至急この車に乗って欲しい件」


まゆり「だ、だぁれ?」




???「あぁ、ちょっと事情があってマスクとサングラスと帽子は取れないんだけど、この声でわからん?」


まゆり「もしかして……」






まゆり「ダルくん?」


岡部「!」



岡部「ダ、ダル……?」








ダル(未来)「久しぶり。……オカリン、まゆ氏。」
284 : [saga]:2018/06/21(木) 00:36:01.82 ID:BeltT/WJ0
休憩
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 23:17:10.61 ID:q88f3CthO
いいねえ
286 : [saga]:2018/06/23(土) 22:55:11.52 ID:iNE4LDsT0
再開
287 : [saga]:2018/06/23(土) 22:59:19.51 ID:iNE4LDsT0
岡部「ダル……?」


ダル(未来)「一応はじめましてになるかな。君はこの時点より未来からきたんだろ?」


岡部「う、う、」


岡部「嘘だ!!」


ダル(未来)「お、……」



岡部「お前はSERNのッ…そうでなければラウンダーのまわしものだっ! もし本物のダルだと信じて欲しいなら、しっかりと顔を見せろ!!」


まゆり「オカリン、でもダルくんの声だよ……」


岡部「声など変声機を使えば誰にでも真似できるッ! さあ顔を見せろよ!……見せろ!!」


ダル(未来)「…………」


岡部「どうした!できないのか! できないのなら……俺はお前をダルだとは認めない!!」



ダル(未来)「同じ眼をしてる」


岡部「何!?」






ダル(未来)「僕らの時代のオカリンと」



岡部「!な……」
288 : [saga]:2018/06/23(土) 23:03:15.47 ID:iNE4LDsT0
ダル(未来)「悪いけど顔は見せられない。……今はね」


ダル(未来)「僕が僕だと証明してくれるものは今となっちゃ、これしかない。ずっと着けてたから……もうボロボロになってしまったけど」


岡部「それは……」




ラボメンバッジ――――。





岡部「――――いや、そんなもの、いくらでもコピーは」


ダル(未来)「そんなものよばわりするな」


岡部「!」


ダル(未来)「オカリンが作って僕らにくれたこのバッジを、そんなものよばわりするな」


ダル(未来)「僕はラボメンNo.003であることに誇りを持っている!」


ダル(未来)「どんなに笑われたって、あれがお遊びだったって、あの日々は僕の宝物なんだ」



ダル(未来)「……力を貸してくれよ。昔のオカリン。頼みがあるんだ」


岡部「俺に、何をしろと言うのだ……」




ダル(未来)「……鈴羽はこの世界線で命を落としたら、もう生まれてくることができない」
289 : [saga]:2018/06/23(土) 23:05:48.39 ID:iNE4LDsT0
鈴羽は死ぬ。


少なくともこの世界線では、奇跡が起きない限り、間違いなく。


そしてヤツがラウンダーを引き付けている間に、俺はまゆりの気持ちにふんぎりをつけさせ、それと同時に世界線変動。世界は救われる。それが俺たちの作戦。



ダル(未来)「鈴羽は気付いていないけど」


ダル(未来)「僕達はずっと未来から鈴羽の動きを観測していた。計画は、順調だった」


岡部「!?ならばお前たちが未来から原因を究明すれば良かったではないか!!」


ダル(未来)「僕達は長年、何がなんだかわからなかった。オカリンとまゆ氏は突然おかしくなって、僕や牧瀬氏もおかしな夢に苦しまされて、気づけばラボはバラバラさ」



ダル(未来)「やっと、やっとここまで来た。仮説を立てては議論を戦わして、ついに原因はリーディングシュタイナーの突発的発生だと解った」


岡部「そうだ!ならば――――」


ダル(未来)「落ち着けって、オカリン」


岡部「んぐっ……」



ダル(未来)「へへ、なんかこのやりとりも懐かしいな」
290 : [saga]:2018/06/23(土) 23:08:30.49 ID:iNE4LDsT0
ダル(未来)「少し冷静になって考えてみろよオカリン。僕達は確かに原因を突き止めた。でもそれは、更なる闇に踏み込んだだけだったんだ」



岡部「……! 原因、の、原因」


ダル(未来)「そう、原因の原因だ。一番大切なのは結局それだった」



ダル(未来)「《椎名まゆりのリーディングシュタイナーは何故突発的に発生したか―――?》」


まゆり「ダル君、さっきから何のこといってるのかな」


まゆり「りぃでぃんぐしたいなーってなぁに?」



ダル(未来)「」パン



まゆり「はうっ」プシュッ ドサ




岡部「まゆりぃぃーーーー!?ダルおまおまおまおま何をッ!!」


ダル(未来)「ちょっ、こっちくんなってオカリン!只の麻酔銃麻酔銃! まゆ氏が余計なこと知っちゃったら困るっしょ!?」

岡部「だからっておまっ」


ダル(未来)「いいから、車に乗れよ!説明はそれからする







ダル(未来)「時間が、無いんだ、時間が……」
291 : [saga]:2018/06/23(土) 23:11:49.99 ID:iNE4LDsT0
岡部「ダル、お前車ちゃんと洗っておけよ。なんかベタベタしたものがついているぞ」


ダル(未来)「借り物だからね。所有者がよっぽど激しいプレイでもしたんでない?」


岡部「あほか……」





車中――――



岡部「くっ、少し飛ばしすぎではないか」


ダル(未来)「鈴羽とラウンダーがカチ合うのはまだ先だけど、何しろ結構距離があるからね」


岡部「……で、さっきの話の続きだが」



ダル(未来)「ああ。とにかく原因の原因を究明しなきゃってことになって、牧瀬氏と色々考えたんだけど、まあわかるわけないよな。思い出すにしても限界があるし」


岡部「それはそうだな。というかお前、まさかずっと紅莉栖と一緒にいるのか」

ダル(未来)「お?」

岡部「……」


ダル(未来)「お?お?」


岡部「……」





ダル(未来)「気になる?気になる?」



岡部(うぜぇ……)
292 : [saga]:2018/06/23(土) 23:15:47.74 ID:iNE4LDsT0
岡部「まあ紅莉栖に限ってそんなことあるはずが」


ダル(未来)「甘いな……甘ェよオカリンッ金平糖かよてめえはッッ!?」


ダル(未来)「大人 なんだぜ……?牧瀬氏も、そして、この、僕、も……」


岡部「な、なぁ〜にを言っておるのかさぁ〜ぱりわからんなー我が右腕よ」



ダル(大人)「……」



岡部「……」





ダル(未来)「まぁいいや、話に戻ろうか」


岡部「いやちょっ、」


ダル(未来)「ん?」



岡部「ぐ……何でもない!話せ!」


ダル(未来)「KOWAAAAI」


岡部「だまれ!」

ダル(未来)「……」 

岡部「話せ!」

ダル(未来)「どっちだよ」
293 : [saga]:2018/06/23(土) 23:32:35.63 ID:iNE4LDsT0
ダル(未来)「原因の原因の究明は、率直に言えば無理だった。僕達は過去のこの時点では、完全に部外者だったから」



ダル(未来)「じゃあもう過去を諦めて、現在のオカリンを説得しようって牧瀬氏は提案したんだ。僕もそれに同意した。……でもその頃にはもう、オカリンは大きな力を持っていて、普通に会えるような相手じゃなかった」


岡部「では結局会えずじまいなのか?今まで?」



ダル(未来)「いや。……一度だけ。会ったと言っていいのか、とりあえず僕とオカリンの最後の接触は、もう10年も前になる」

ダル(未来)「雨の日だった。何度アポを取っても会えないから、直接会って話をしようと決めた」


ダル(未来)「強行手段さ」



ダル(未来)「どこぞの大物と会談をするっていう予定を押さえて、僕と牧瀬氏はそのホテルの前で待ち伏せした。屈強そうな男に囲まれて出てくるオカリンを見るなり、僕は傘を捨てて飛び出したんだ」


ダル(未来)「後ろの方でかすかに牧瀬氏の待って、って声が聞こえたけど関係なかった。もう僕はやりきれなくなってた。それでボディーガードが止めるのも構わずに、オカリン、て叫んだんだ」



岡部「っ……」



ダル(未来)「オカリンはこっちを見たよ。でもあれは」








ダル(未来)「仲間に向ける眼じゃなかった」
294 : [saga]:2018/06/23(土) 23:51:50.59 ID:iNE4LDsT0
ダル(未来)「愕然として、動けなくなったよ。オカリンは構うな、って一言呟いて車に乗って行ってしまった。びしょ濡れになって、ワケわかんなくて、泣きそうになった。けど泣けなかった」


岡部「何、故……」


ダル(未来)「………」





ダル(未来)「牧瀬氏が、泣かなかったから」


ダル(未来)「一番辛いはずの牧瀬氏が泣かなかったから、僕も泣くワケにはいかなかった。ホントは泣いても良かったんだ、あの子は。泣いて当然だった。けど、絶対に泣かなかった。代わりに一言、『タイムマシンを作りましょう』って言ったんだ」


岡部「……!」


ダル(未来)「その日から僕達のタイムマシン製作は始まった。色んな人に支援してもらって、ついに一台のタイムマシンを完成させた。オカリンはこの時間に全ての元凶があると踏んで何度もここにきたらしいけど、僕達は少し時間をずらして、最高の味方に手伝ってもらおうと考えた」




ダル(未来)「つまり君さ」
295 : [saga]:2018/06/23(土) 23:57:31.66 ID:iNE4LDsT0
岡部「そして、鈴羽をこちらによこしたという訳か」

ダル(未来)「自分が行くときかなくてね」


ダル(未来)「ただひとつ……問題が発生してしまった」


岡部「鈴羽が死ぬ、という話か?」


ダル(未来)「そう。君と鈴羽がタイムマシンを発動させた途端、世界干渉率がとんでもない数値を叩き出してね。ここはそれほど重要な世界線ってことなんだろうけど」


岡部「それはつまり、ここでの結果が他の世界線にも影響を及ぼす可能性が高いということか」


ダル(未来)「ああ。だから、鈴羽がここで死んでしまったら、たとえオカリンが世界線が変動したとしても」


ダル(未来)「そこに鈴羽はいないかもしれない。そこでオカリンにひとつ質問」


ダル(未来)「シュタインズゲートに鈴羽は必要だよな?」


岡部「当たり前だ」




ダル(未来)「……………………。」




ダル(未来)「……ならよかった。僕の選択は正しかった」


岡部「ラボメン全員が揃って初めてハッピーエンドに決まっているだろう」





ダル(未来)「……そうだね」
296 : [saga]:2018/06/24(日) 00:11:46.54 ID:CfrM6QXz0
休憩
297 : [saga]:2018/07/05(木) 22:02:38.81 ID:jgW2yuZi0
再開
298 : [saga]:2018/07/05(木) 22:11:43.89 ID:jgW2yuZi0
ダル(未来)「僕達、ホントにアホだったよなー、昔は。君にとってはつい最近のことなのかもしれないけど」


岡部「どうした、急に?」


ダル(未来)「なんだか懐かしくなってさ」


岡部「俺がバカなことを言い出したとき、お前は文句をいいながらも必ずついてきてくれる」


岡部「……感謝はしているぞ」


ダル(未来)「Fuuuuuuuuu!鏡越しからでもわかるぜ、オカリンがタコみたいに真っ赤なのが!」


岡部「な、なっとらんわ!」


ダル(未来)「フゥーハッハッハッハッ!!」


岡部「き貴様、それはマッドサイエンティストの称号を与えられた者のみに許される、」


ダル(未来)「よーし、なんとか間に合いそうだね」


岡部「聞けい!!」
299 : [saga]:2018/07/05(木) 22:12:25.55 ID:jgW2yuZi0
ダル(未来)「いやー、ホントに良かったよ。時間は待っちゃくれないからね」


ダル(未来)「僕が生きている間に、君たちを送り届けられた」










・・・・・
・・・・
・・









岡部「え?」
300 : [saga]:2018/07/05(木) 22:13:38.10 ID:jgW2yuZi0
岡部「……ダル?」


ダル(未来)「使命は全うできた」



岡部「何を言ってる?ダルおま…」















岡部「お前」













岡部「なんだその手は」
301 : [saga]:2018/07/05(木) 22:16:23.04 ID:jgW2yuZi0
ダル(未来)「……うん」



ダルの手は緑色のかたまりになり、ぼたたっと膝の上に落ちた。




ダル(未来)「時間切れみたいだね」



岡部「は……あ、わ、訳がわからん。ワケがわからない!どういうことだ!?説明しろダル!」



俺はもう、目の前で起きたことに対して頭を回転させることができず、ただ、ただすがるようにダルへ質問を投げつけた。



わからない。


何が起こった?


説明してくれ。




……ただひとつ、頭の中で点灯している予感がある、









ダル、お前、





お前…………!
302 : [saga]:2018/07/05(木) 22:20:43.38 ID:jgW2yuZi0
ダル(未来)「心残りは二つある」



岡部「待て、ちょっと待て」



ダル(未来)「ひとつはもちろん、オカリンを僕たちの手で救えなかったこと」

岡部「待て。やめろ、ちょっと待て!」

ダル(未来)「もうひとつは、」


岡部「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



ダルはどうやってここへ来た?


決まってる。タイムマシンだ。


だがタイムマシンは俺と鈴羽が使った……


そして、目の前のダルの形状……


まさか、


そんなことが可能なのか――?







岡部「ダル、お前、」




岡部「カーブラックホールを無理やり抜けてきたのか……!?」
303 : [saga]:2018/07/05(木) 22:23:30.01 ID:jgW2yuZi0
ダル(未来)「……」


岡部「さっきお前は、タイムマシンは一台といった」



岡部「タイムマシンはもう一台作ってたんだな?」



岡部「お前はもうひとつの……つまり完成してない方のタイムマシンに乗って、ここへ来たんだな……?」




ダル(未来)「……牧瀬氏は、止めたよ」


ダル(未来)「いや、牧瀬氏だけじゃない。みんな止めた」



ダル(未来)「けど、ただ黙って娘が死んでゆく様を見ているだけなんて、できると思うかい」



ダル(未来)「なぁオカリン!!できると思うかい!!」





車は止まった。


ダルは座席を離れ、俺の胸ぐらをぐっと掴んだ。



帽子も、サングラスも、何もない。



そこには、もうほとんど緑色に変色したダルの顔があった。


そしてその眼からは、確かに緑色ではない涙が流れていた。
304 : [saga]:2018/07/05(木) 22:27:01.20 ID:jgW2yuZi0
ダル(未来)「あの子を過去に送り出すのもほんとうは辛かった!!でもあの子は笑顔で承諾してくれた。研究ばかりで家庭を蔑ろにし続けた僕のために!!幼いころ自分を可愛がってくれた君のためにぃ!!」


ダル(未来)「また皆が仲良くなれるならって……!!」



ダル(未来)「オカリン」




ダル(未来)「君ともっと、分かり合いたかった」


ダル(未来)「僕がもう少し君を分かっていれば……こんなことにはならなかった!」


ダル(未来)「すまない……すまない……ッ」



胸ぐらを掴む、ダルの手が落ちて、俺の膝の上にべたりとついた。




岡部「カ…………が」





岡部「バ、カ野郎が」



岡部「……お前は、どうなるんだよ!!?」
305 : [saga]:2018/07/05(木) 22:31:46.08 ID:jgW2yuZi0
岡部「ここは他世界干渉率が高いんだろう!? お前が死んだらどうなるんだよ。シュタインズゲートにお前がいなくなったらどうするんだよォ!!」


ダル(未来)「…………」


鈴羽を助けるため、


自分が消えるリスクを負うなんて――――



ダル(未来)「大丈夫。きっとまた逢える」


岡部「ソースは!」


ダル(未来)「そんな気がするからだ」



岡部「バカか!」


ダル(未来)「ははっ」


ダルは涙でぐしゃぐしゃの顔で、目を細めた。




ダル(未来)「鈴羽に、まだ愛していると伝えてない」


ダル(未来)「ずっとずっと……、どれだけ世界線が変わっても。君のことが大切だと、言葉にして伝えていない」





ダル(未来)「オカリン、頼めるかな?」
306 : [saga]:2018/07/05(木) 22:40:36.84 ID:jgW2yuZi0
岡部「取るなよダル……それは俺のセリフだろう」


ダル(未来)「家族に伝えてくれ、愛していると(キリッてヤツだお☆」


岡部「自分で、言え」





ダル(未来)「じゃあ……またな。オカリン」


岡部「ダル、……ダル!待て、待ってくれ!!いくな!」


岡部「いかないでくれ!!こんなに……こんなに助けてもらったのに!! 俺はまだ何も、お前に……!!」


ダル(未来)「こまけぇこたぁいいんだよ。だって僕ら、友達だろ?」


岡部「ダ、ル……」


岡部「俺は、俺は誇るぞ」


岡部「お前というスーパーハカーを右腕に持てたことを、俺は誇りに思うぞ!!」


ダル(未来)「オカリン……」




ありがとう…………。



















バシャッ
307 : [saga]:2018/07/05(木) 22:42:53.17 ID:jgW2yuZi0
休憩
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/06(金) 02:15:53.19 ID:htzrpZRno
一気に読んだわ引き込まれる
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 05:18:55.83 ID:Vq6dCqrt0
更新きてた
いいぞ〜
310 : [saga]:2018/07/09(月) 15:22:20.49 ID:OKy4FB2B0
再開
311 : [saga]:2018/07/09(月) 15:27:21.32 ID:OKy4FB2B0
まゆり「ん……」


岡部「まゆり。起きたか」


まゆり「んん……オカリン……?あっ、お、おはよう」


岡部「ああ。着いたぞ、まゆり」


まゆり「ええ?ここ、どこだろ…」

まゆり「オ、オカリン!白衣ビショビショだよ?まゆしぃのハンカチあったかな……」


岡部「いいんだ。拭かなくて」


まゆり「え?」



岡部「いいんだ」


岡部「さぁ、降りるぞまゆり。オペレーション・スクルド・リバース……最終段階だ」


まゆり「おりるぞってオカリン、ここ、道路のど真ん中だよー?」








着いたぞ。ダル。



みんなが行きたくて、行きたくて、仕方なかった場所。
312 : [saga]:2018/07/09(月) 15:35:02.86 ID:OKy4FB2B0
鈴羽「この時代のおじさんには身を隠してもらった、紅莉栖さんへはあたしが未来ガジェットで連絡を取った……これで時空が捻じ曲げられるリスクは回避!」


鈴羽「あとは過去のおじさんがうまくやってくれるのを祈るだけ」



鈴羽「ね?おじさん♪」






岡部(未来)「…………」


岡部(未来)「奴には無理だ。俺がこれまで何回跳んだと思ってる」


岡部(未来)「まゆりのもとへはラウンダー1を既に張らせてある。今頃とっくに捕まって2010年に帰っているはずだ」


鈴羽「…………」


岡部(未来)「お前も」



岡部(未来)「もう、動くな」チャキ
313 : [saga]:2018/07/09(月) 15:52:45.20 ID:OKy4FB2B0
鈴羽「やめてよ、そんなもの向けるの」


岡部(未来)「……鈴羽」


岡部(未来)「俺と共に、未来へ帰るんだ。お前の駄々にはもう十分付き合った」


鈴羽「それはできない相談だよ。オカリンおじさん」


岡部(未来)「……何故だ」


鈴羽「まだおじさんを、救ってない……!」





岡部(未来)「……もう、やめろ」


岡部(未来)「もうやめろ!」


岡部(未来)「ワケのわからないことをいうのは、もうやめてくれ!! お前も、ダルも、紅莉栖も……!」


鈴羽「ワケのわからないこと?」


岡部(未来)「そうだ。いつまでもこどものようなことを言って……本気で世界線の向こう側にいけると信じている」


岡部(未来)「俺が一度それに成功したのは!! 未来のお前が助けにきてくれたからだ!俺の力じゃないんだ!」


鈴羽「助けに来てるよ?」


岡部(未来)「!?」


鈴羽「おじさん、あたし、助けに来てるよ……!今も!」


岡部(未来)「……ッ!」
314 : [saga]:2018/07/09(月) 16:07:05.62 ID:OKy4FB2B0
岡部(未来)「フ、フフ、鈴羽よ」


岡部(未来)「期待を……最悪な形で裏切られたことはあるか?」


鈴羽「……」


岡部(未来)「それはもう……ひどい気持ちになるぞ?」


岡部(未来)「己の一生が歪んでしまうくらいには、な」


鈴羽「おじさん……」


岡部(未来)「一生をともにしたいと思っていた仲間たちが……狂っていくのをみたことがある、か?…………ッ」


鈴羽「……おじさんッ」


岡部(未来)「………辛いぞ?」


--------------------------------------------------------------------------------------------------------------――――-----------------------

「オカ……リン、たす、けて、オカ……」


「まゆり!!まゆりーーーーッ!!紅莉栖!!どう、すれば…まゆりが!」


「おか、べ……なにこ、れ、あたまが」


「なんぞこれ……なんだよ、これ、オカリィ、ン」


「紅莉栖、……ダルッ!!リーディングシュタイナーが……!誰か……誰か!!」

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「おかべさ……じゃなかった、きょうまさ、」


「り、んたろうさん…………? あれ、ぼく、どうしたんだろう、すみません、ぼく」


「ルカ子……」


「パパ………!パパ………!どうして、どうして………!」


「フェイリス……!」


----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------―






岡部(未来)「……………………」




岡部(未来)「つらいんだぞ…………」
315 : [saga]:2018/07/09(月) 16:10:43.54 ID:OKy4FB2B0
岡部(未来)「………………」


岡部(未来)「すべてを見た俺が、変わらないと言っているんだ」


岡部(未来)「……従え」


鈴羽「…………」






「フゥ――――――ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」







岡部(未来)「……な、」




「そんな奴の言うことに耳を傾ける必要はないぞォォ?鈴羽アアアア!!」












岡部「所詮俺だ。」
316 : [saga]:2018/07/09(月) 20:18:47.97 ID:EmPJBuLj0
鈴羽「おじさ…それにまゆ姉さんも!どうやってここにきたの?」


岡部「フン。その程度狂気のメァッドサイエンティストたるこのほーーおーーいん凶真には些末事よッ。助けに来てやったぞ感謝しろ、未来の俺よ」


岡部(未来)「バカな……!奴め、ここで、裏切ったというのか」


岡部(未来)「誰が一体…」


岡部「ダルだよ」


岡部(未来)「……?」



岡部「未来から来た橋田至が、俺をここまで連れてきてくれた」


岡部「……命を懸けてな」



岡部(未来)「…………」


岡部(未来)「え?」



岡部(未来)「え……」



岡部「見ろ。こんな姿になってまで俺を助けてくれた、そしてお前を助けようとしてくれていた親友を」


岡部「ダルは最期のひとときまで、お前を救えなかったことを悔やんでいた!!」


岡部(未来)「う、うそだ。ダル……ウソだよな?」




岡部(未来)「ダルが、死んだ……!?」
317 : [saga]:2018/07/09(月) 20:22:15.55 ID:EmPJBuLj0
岡部「ダルは死んだ。」


鈴羽「!! とう、さん……?」


岡部(未来)「あ、ぐうう、うそだ、うそだ、うそだ!!!ダルがここに来れるはずがない!!」


岡部「奴は未完成のタイムマシンに乗ってきた。カーブラックホールを無理やり抜けて、あいつの体は半ゲル化し、辛うじて人間の形を保った」


岡部「しかし長くは持たなかった。俺にすべてを託して、あいつは笑って逝った」




岡部「見ろ!!!眼を背けるのは、俺が許さない!!俺たちのために歴史から消えるリスクも厭わず、命を投げ出してくれた親友の最期を!!」



岡部「この白衣こそが、ダルの生きた証なんだ……!!」
318 : [saga]:2018/07/09(月) 20:29:12.34 ID:EmPJBuLj0
岡部(未来)「そんな、はず……あるか、ダル、」


岡部(未来)「すべて終わったら、またみんなで、いっしょに」


岡部「鈴羽よ」


鈴羽「あ……」


岡部「お前の父親の最期の言葉を伝えておこう」


岡部「ずっとずっと、どれだけ世界線が変わっても……お前のことを愛している」


岡部「そう伝えてくれと、最期に頼まれた」



鈴羽「……」



鈴羽「なに、かっこつけてんの、とうさん……」





鈴羽「そんなのいいから、……生きていてよ!!バカぁ!」



岡部「……」


岡部(伝えるべきことは、すべて伝えた。あとはもう、作戦を遂行するだけだ)



岡部(ダル。お前がしてくれたように、俺も命を懸けよう)



岡部(すべて救って……俺も救われてみせる!!)
319 : [saga]:2018/07/09(月) 20:32:13.76 ID:EmPJBuLj0
休憩
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 21:34:53.03 ID:UuYz0ZQio
熱いぜ
321 : [saga]:2018/07/13(金) 20:07:47.01 ID:RnCv3Fi10
岡部「仕方のないことだろう?」


岡部(未来)「……?」


岡部「お前は己の理想郷を作り出すために必死でやってきた。多少の犠牲は厭わない、とでもいうように、平気な顔をしていればいいではないか」


岡部「何故そんなにも苦しむ?」


岡部(未来)「……ッ」


岡部「ダルを助けたいならば、ターニングポイントはいくらでもあったはずだ。だがお前はすべて見過ごした」


岡部「そのせいでダルは死んだ」


岡部「お前が殺したも、同然だ」




岡部(未来)「……何も知らないくせにッ偉そうなことをほざくなァ!!」



322 : [saga]:2018/07/13(金) 20:08:27.03 ID:RnCv3Fi10
再開
323 : [saga]:2018/07/13(金) 20:13:36.57 ID:RnCv3Fi10
岡部「知ることはできん。しかしもし俺がおまえだったとしても」


岡部「お前のようにはならん。軟弱者め」


岡部(未来)「!フフ、そうか」



岡部(未来)「俺の過去を、体験してもか」
324 : [saga]:2018/07/13(金) 20:24:57.18 ID:RnCv3Fi10
岡部(未来)「教えてやる。」




奴が笑ったかと思うと、それは途端にやってきた。



岡部「…………ぐ、ううぅぅッッ!!!!」


流れ込んでくる。

奴の、いや俺の、これから体験するはずだった悲しみ!苦しみが!!


だがこれは、想定内だ。俺の本当の狙いは――――



岡部「まゆり!!」


まゆり「お、かり……」


岡部「大丈夫か!!」


まゆり「まゆしぃ、あたまへんになっちゃったのかな……?」


まゆり「オカリンがね、悲しいの。オカリンはここにいるのに……」



まゆり「オカリン、あのひとはだぁれ……?」


岡部(未来)「…………」
325 : [saga]:2018/07/13(金) 20:38:44.25 ID:RnCv3Fi10
岡部(未来)「……フン。しばらくは立つこともできまい」


岡部(未来)「最後のチャンスだ。まゆりを連れて現代に帰れ。残りわずかなラボのひとときを楽しむがいい」


岡部(未来)「俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真。最後の、一縷の望み……ディストピアをこれから完成させる」


岡部(未来)「………ダルのためにも!! 俺はやらねばならない!!こい、鈴羽!!未来へ…」





岡部「違うな」


岡部(未来)「……手を離せ」


岡部「知っているはずだ。鳳凰院凶真は……まゆりを救うために生まれた」





岡部「まゆりは未来で、どうしている」


岡部(未来)「!!」
326 : [saga]:2018/07/13(金) 20:48:20.55 ID:RnCv3Fi10
岡部「答えろ。俺が知りたかったのはその一点だ」


岡部「さっきのリーディングシュタイナーで……まるでフィルターでもかけられたかのように、まゆりの存在だけ感知することができなかった!!」


岡部(未来)「……だまれ……もう、だまれよ……」


岡部「……ひとつだけわかることがあるんだ、未来の俺よ」








岡部「お前はまゆりを救えていない。そして、救うことも本当は、あきらめている。」


鈴羽「おじさん……!」



岡部「……何が鳳凰院凶真。お前はただの、」






岡部「哀れな岡部倫太郎だ。」












岡部(未来)「だ、まれぇぇぇええええぇええぇえぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
327 : [saga]:2018/07/13(金) 21:04:58.98 ID:RnCv3Fi10
岡部(未来)「撃てないと、思っているのか!!?さっき言ったはずだ、最後のチャンスだと!!不意にしたのはお前だ!!!!」


鈴羽「………ッ!」


岡部「鈴羽、銃を下げろ」


鈴羽「なにいってんの、おじさん!おじさんが死んだら」


岡部「いいから下げろ。オペレーション・スクルド・リバースは最終段階に入っているのだ。すべては俺の掌の上だ!フハハァ!」


岡部「計画、通り」ニヤ


鈴羽「おじさん!?頭おかしくなったの?」


岡部「覚えておけ。鳳凰院凶真は、いついかなる時でもユゥゥーモアを忘れないのだっ」


岡部「……お前の仕事は終わった。あとは俺に任せろ。鈴羽」


鈴羽「……信じるよ?」


岡部「ああ。信じろ」







ラウンダー1「鳳凰院様っっ!!!!」



岡部(未来)「!!きさま……」
328 : [saga]:2018/07/13(金) 21:14:25.03 ID:RnCv3Fi10
休憩
329 : [saga]:2018/07/17(火) 22:05:50.69 ID:zKuIraUv0
再開
330 : [saga]:2018/07/17(火) 22:06:42.81 ID:zKuIraUv0
ラウンダー1「どうか、動かないでください」


岡部(未来)「……誰に銃を向けているのか、わかっているのか?」


ラウンダー1「鳳凰院様……」



ラウンダー1「岡部倫太郎を撃つということが……どういうことかお分かりでしょう」


ラウンダー1「干渉率の高いこの世界で過去の自分を絶命させると、歴史から自分を葬り去りかねない」


ラウンダー1「それはあなたという存在が元から無かったことになるということ!……あなたが消えたら我々はどうすればいいのですか」


ラウンダー1「理想郷実現に命を尽くしてきた仲間を!! 自分勝手な感情ですべてを……! 不意にするおつもりですか!!!!」



岡部(未来)「フフ、フハハ」


岡部(未来)「前提が間違っているんだよお前らは……。いい機会だ。教えてやる」


ラウンダー1「!?」


岡部(未来)「理想郷は我らが組織のためにあるのではない。ラボメン……いや、まゆりのためにあるものだ」


ラウンダー1「!! なっ」



岡部(未来)「」ジャキッ
331 : [saga]:2018/07/17(火) 22:17:23.86 ID:zKuIraUv0
ラウンダー2「がっ」

ラウンダー3「ぐわッ」

ラウンダー4「う…」


岡部「!!仲間を撃った……だと」


ラウンダー1「な……にをォ!」


岡部(未来)「動くなァ!!!!!」


ラウンダー1「!」


岡部(未来)「本当のことを知ってしまったのだ……生かしておくわけにもいくまい」


岡部(未来)「だが安心しろ。これからも俺のそばにいるのなら、お前だけは助けてやる」


ラウンダー1「ぐ……」



岡部(未来)「お前も大事なラボメンの一人だからな……萌郁よ」



岡部「!」


鈴羽「桐生……萌郁?この人が!?」




萌郁「………」
332 : [saga]:2018/07/17(火) 22:28:32.24 ID:zKuIraUv0
岡部(未来)「萌郁……。お前は勘違いをしている……」


岡部(未来)「俺が望んだのは、まゆりと紅莉栖が無事に生きていくこと……それさえ叶うのならば」


鈴羽「!」

萌郁「……!」


岡部「……」



銃口が、



俺に向く。







岡部(未来)「岡部倫太郎は必要ない。」



まゆり「……ッオカリン!」
333 : [saga]:2018/07/17(火) 22:30:05.98 ID:zKuIraUv0
そう。



ラボが解散したあの日、










岡部倫太郎は死んだのだから――――。


























パンッ
334 : [saga]:2018/07/17(火) 22:51:47.85 ID:zKuIraUv0
萌郁「ぐっ…」


岡部「萌郁!!」


まゆり「萌郁さん!」


鈴羽「おじさん!!逃げて!!」


岡部「……」



岡部(未来)「なぁ……」












岡部(未来)「俺は、生まれてきちゃいけなかったのかな?」


岡部「……!」


まゆり「オカリッ…!」



来る。

数秒後。




奴は間違いなく、俺を撃つ。


まゆりには、庇わせない。








耐えろ、


岡部倫太郎。










死ぬまでの数瞬が、



お前の勝負だ。
335 : [saga]:2018/07/17(火) 22:57:53.53 ID:zKuIraUv0
岡部「俺は」








岡部「俺の名は岡部倫太郎。お前を助けに来た」









岡部(未来)「……………」







奴は驚いたような顔をしてから、あきれたように微笑むと、




少ししてから、俺を撃った。
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/18(水) 00:46:48.16 ID:OJ657dJyo
このSS前にも見た気がするんだがシュタゲSSだと再放送なのか別世界線の記憶なのか分からなくなる不思議
337 : [saga]:2018/07/18(水) 01:04:31.40 ID:LUM2ONJo0
休憩
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/18(水) 14:00:48.90 ID:VruCgcfgO
面白い
339 : [saga]:2018/08/06(月) 12:18:42.81 ID:ZVh+P9mv0
再開
340 : [saga]:2018/08/06(月) 12:19:29.70 ID:ZVh+P9mv0
乾いた破裂音とともに、俺の左脇腹から火が上がった。


岡部「ッっ…」


言葉も出ない。全身の力が抜け、俺は前のめりに倒れこんだ。


まゆり「オカリン!」


岡部「ま…ゆ、り」








岡部「まゆり、すまな、かった」


まゆり「え……」


岡部「守ってやれなか、った、ずっと、ずっと……ぐっ!」


口から……血が溢れる。時間がない。



まゆり「オカリン……なにいってるの、誰か、だれか、たすけて」

岡部「まゆり」








岡部「今日でお前を、人質から……解放する」
341 : [saga]:2018/08/06(月) 12:32:58.25 ID:ZVh+P9mv0
岡部(未来)「!」


まゆり「……!」


岡部「お前の、気持ちには、気づいていた……けど、怖くて、無視、してしまったんだ、」


岡部「お前があまりにも、やさしいのをいいことに……だか、ら」



岡部「もう、お前を、かい、ほう、する…」


まゆり「いやだよ、オカリン、そんなのいやだよ! ……おばあちゃんがいなくなって、オカリンまでいなくなったら、まゆし…」



岡部「ガハッ」ボタボタッ


まゆり「!!オカ、」




岡部「す、まな、かった…………」



まゆり「………!」



342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/08(水) 01:37:45.55 ID:40EZHSJd0
待ってた
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