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唇学園生徒会 志希√
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1 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 10:59:06.54 ID:a2kTxmHJO
これはモバマスssです
かなりの独自設定があります
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1528423146
2 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:00:53.25 ID:a2kTxmHJO
奏「ーーと言うわけで……本日付で我が校『唇学園』の生徒会会長になった速水奏よ。ふふっ、よろしく」
ゔぉーっ!っと。
校庭中から拍手喝采が巻き起こった。
二月頭、まだ気温の上がりきらない寒い時期。
それでもこの校庭は、熱気に溢れかえっていた。
マンモス校である唇学園は、日本最多の生徒数を誇る。
だというのにその全ての生徒が彼女の当選を喜んでいるところから、速水奏という人物の人気が伺えた。
奏「数いる立候補者の中から私を選んでくれてありがとう。みんなの応援に心から感謝してるわ。期待に応えられる様、精一杯この学園に尽くすつもりよ」
生徒会会長というただ一つの席を狙っていた人物は、当然他にもいた。
けれど最終的にはその立候補者達すら速水奏に投票したらしい。
なんともまぁ圧倒的カリスマだ。
3 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:01:20.75 ID:a2kTxmHJO
奏「……けれどどうやら、一人だけ。投票に参加すらしなかった生徒がいるのよ……とても残念な事だと思うわ」
ちらりと舞台袖に視線を送ってくる速水奏。
先程全ての生徒が、と言ったが。
残念ながら実は一人だけ、速水奏に投票しないどころかそもそも投票すらしていない人物がこの学園には一人だけ存在した。
美嘉「……しとけば良かったのに。アタシ言ったよね?」
P「いや……転校したてで、まさかこんなにこの学園の生徒が積極的だと思わなくてさ」
美嘉「それも伝えた筈だけど?もしかしてP聞いて無かった?」
P「……言ってた気がする」
年が変わっての転校、一月という微妙な時期にこの学園に入学して来た俺はここまで生徒会選挙が大人気イベントだとは思っていなくて。
あと他に用事もあって、投票しに行かなかったのだ。
だって立候補者の事そんな知らないし……
確かに昔馴染みの友人だった美嘉から、再三選挙は取り敢えず速水奏に投票するようにって言われてた様な気もする。
さて、現在舞台上でスピーチを述べている生徒会会長速水奏。
そんな彼女を正面から見つめる生徒達。
では、俺は何処に居るかと言えば……
4 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:02:26.37 ID:a2kTxmHJO
周子「おなかすいたーん。奏ちゃん長くない?」
美嘉「一応いつもの半分くらいでって頼んではみたんだけど」
生徒会会計担当の塩見周子先輩が八橋を摘んでいる。
志希「突然奏ちゃんの髪が金髪に変わったら面白くなーい?」
美嘉「志希そのフラスコしまって?」
生徒会広報担当の一ノ瀬志希先輩が眠そうにフラスコ内の液体を撹拌している。
舞台袖という多分会長に一番近い場所で、彼女のスピーチを聞かされていた。
そんな二人の手綱を任されてんやわんやしているのが、俺の昔馴染み兼生徒会副会長担当の城ヶ崎美嘉。
美嘉以外の生徒会の面々はイスにダラーンと座っている。
そして俺は……
奏「そんな彼には、生徒会庶務をお願いする事にしたわ」
わぁーっ!!
歓声が上がる。
なんで……
なんで……こんな事になってしまったんだ。
絶対めんどくさいじゃん。
仕事押し付けられまくるの分かってるじゃん。
既に今日だけでどんだけの椅子を並べたと思ってるんだ。
せめて昨日のうちに言って欲しかった。
いやそうではない、任せるなよ。
生徒会選挙に興味が無くて投票しなかった奴を生徒会の椅子に着かせるなよ……
5 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:02:53.75 ID:a2kTxmHJO
今朝、登校と同時にハンカチを口元に当てられ意識を失い。
気付けば生徒会室の椅子に縛り付けられ。
何が何だか分からなかった俺は助かる為に目の前の書類にサインして。
気付いたら今度は生徒会庶務という椅子に縛り付けられていた。
奏「今すぐ辞めても良いけど、当然その件は全校生徒に公表されるわ」
志希「あたしの仕事増やして欲しくないし、辞めようとなんて考えないでね〜」
周子「おっ、雑用係増えたん?なら集会用の椅子並べといてーん」
美嘉「だから言ったのに……」
辞めたら多分学校中から居場所が消えるだろう。
まぁ興味が無かっただけで嫌って訳じゃ無いし良いか。
そう思って首を縦に振った俺が悪かった。
周子「じゃ、椅子の片付けよろしくねー」
志希「……んにゃ、眠い……生徒会新聞今週の分よろしく……」
美嘉「ごめんねP、アタシも手伝ってあげたいんだけど他にやる事あって」
思った以上に、雑に扱われていた。
凄い、出会って一日と経たないうちにここまでこき下ろされる間柄になれるなんて。
奏「ーーさて、話はこのくらいにしておこうかしら。そろそろ、みんなの唇も乾いてしまうでしょうし」
起立!気を付け!礼!!
全校生徒の礼を眺めながら、俺は思った。
…………なんでこの学園、こんなに唇に拘ってるんだ?
6 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:04:02.04 ID:a2kTxmHJO
P「ただいまー……あー、疲れた……」
大量の椅子をかたし終え、足を引きずって帰宅した。
今日だけで果たして何カロリー消費した事だろう。
文香「あら……お帰りなさい、P君」
フレデリカ「わぁお、へいへーい鷺沢ブラザー!こんばんはー?」
P「あ、こんばんはフレデリカさん」
従姉妹の文香姉さんとその友人の宮本フレデリカさんがレポートを書いていた。
おい文香姉さん、店は良いのか。
文香「さ、P君……夕飯の支度、お願いします」
P「了解。フレデリカさんも食べてきますか?」
フレデリカ「いいの?じゃーお言葉にスイートしちゃおっかなー?」
二人分も三人分も大して手間は変わらないし。
俺がこの鷺沢古書店に引っ越してきて早一ヶ月。
だんだんと、暮らしにも色々慣れ始めて来ていた。
そもそも小中学生の頃は結構な頻度で通っていたし。
まさか暮らすことになるとは思ってなかったけど。
文香「それと……食後に、送られてきた荷物の整理を手伝って頂きたいのですが……」
P「おっけー」
フレデリカ「わぁお……大量の段ボール。段ボールハウスでも作るのー?」
P「父さんと叔父さんが世界中から古書を集めて送ってくるんですよ」
俺の父さんと文香姉さんの父さんは昔から本が大好きで、まぁその影響もあって俺も文香姉さんも本が大好きだけど。
まさかここまでくるとは思わなかった。
ネット古書店をしていた俺の父さんが、文香姉さんの父さんを誘ったらしい。
世界に羽ばたいてみないか、と。
アホか。
それに乗った叔父さんも、アホか。
そしてその時の父さんの『お前に一人暮らしは無理だろうし、鷺沢古書店にお世話になれば良いじゃないか』という言葉のせいで俺はここにお世話になる事になった。
まぁ結構慣れた土地だから不便はないけど。
最初はやっぱり流石に女性との二人暮らしは抵抗が無かった訳じゃ無い。
7 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:04:29.14 ID:a2kTxmHJO
けれど……
フレデリカ「ねぇねぇ文香ちゃん、こないだプレゼントした化粧品使ってるー?」
文香「……えぇ、はい。もちろんです。贈り物はきちんと部屋のタンスを肥やしていますよ」
フレデリカ「絶対もっとキレイになれると思うんだけどなー?」
文香「よしんば私が綺麗な女性になれたとして……それで、書の面白さは増すのでしょうか……?」
なんというかうん、女性っていうよりも。
なんだろう……見た目は凄く綺麗なんだけど。
色々と、アレだったから、うん。
いいと思う、話しやすくて。
P「悪いけど運ぶの手伝ってもらっていい?」
文香「すみません……いま私は本を読んでいますので……」
フレデリカ「アタシもレポートとにらめっこしてる」
8 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:05:30.38 ID:a2kTxmHJO
ピピピピッ、ピピピピッ
朝が来た。
やだ。来てない。
布団を頭まで被れば真っ暗だし、まだ夜ってことにしよう。
莉嘉「おっはよーPくん!!」
P「っぼぁっ!!」
ズドンと、腹に物凄い衝撃を受けた。
痛い。とても痛い。
朝を否定する者への罰が些か重過ぎるんじゃないだろうか。
美嘉「まったく莉嘉、勝手に男子の部屋に入っちゃダメでしょ?」
そう言いながら美嘉も俺の許可を取らずに部屋に入って来た。
P「……おはよう美嘉、莉嘉」
美嘉「おはよ、昨日の疲れはとれた?」
P「まぁな、一晩寝れば。元々重い物運ぶのは慣れてるし」
美嘉「じゃ、今日も放課後生徒会室に来てね。色々と教えなきゃいけない事あるから」
P「なんていうかさ、みんな俺の扱いが雑過ぎない?」
美嘉「だってあんた庶務じゃん。雑用じゃん」
P「雑用係だからって雑に扱って良いわけじゃないと思うんだけど」
美嘉「まぁまぁ、アタシも出来る限りフォローしてあげるからさ」
莉嘉「むーっ!アタシも早く高校生になりたい!!」
小中の頃良く遊んでいた二人は、相変わらずやかましく楽しそうだ。
こっちに戻って来てからほぼ毎朝うちに起こしに来ている気がする。
P「で、そろそろ着替えたいから出てってくれると助かるんだけど」
莉嘉「アタシが手伝ってあげよっか?!」
美嘉「はいはい莉嘉、バカな事言ってないで出るよー」
二人が出てった後、さっさと制服に着替える。
さて、早く朝食の準備しないと。
文香姉さんが不機嫌な波動に飲まれてしまう。
9 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:06:09.21 ID:a2kTxmHJO
文香「おはようございます、P君」
リビングへ行くと、文香姉さんが調味料だけテーブルに並べて待っていた。
斬新な圧力の掛け方だ。
P「はいはい、今作るから待っててって」
美嘉「Pって結構料理出来るんだね。なんか意外かも」
P「父さんと二人で暮らしてたからな。高校入ってからはずっと自分で作ってたし」
適当にスクランブルエッグを作りつつトーストとベーコンとソーセージを焼く。
出来た。
P「姉さ……美嘉、悪いけど運ぶの手伝って貰えるか?」
美嘉「オッケー、うわ実に男子」
莉嘉「食物繊維0!」
P「パンって食物繊維含まれてたりしないのかな」
文香「……さ、頂きましょう」
みんな「いただきます」
朝食をつまみつつ、美嘉と今後について話す。
P「ところで俺さ、いつになったら生徒会から解放されんのかな」
美嘉「任期終えるまでじゃない?」
P「一年か……」
文香「……あら、P君は生徒会に入ったのですか……?」
P「まぁ、うん……色々と」
美嘉「安心して下さい、文香さん。アタシがついてますから!」
とても不安。
いやまぁ、美嘉がこう見えてしっかりした奴だって事は知ってるけど。
あの他のメンバーから助けてくれるとは思い難い。
10 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:06:36.30 ID:a2kTxmHJO
文香「……ところで美嘉さん。現在の生徒会に男子は……」
美嘉「……全員女子です」
文香「……ふむ……成る程……」
成る程?
何か荒事とかあるんだろうか。
文香「……まぁ良いでしょう。P君は少し、私以外の女性とも交流を持つべきかと」
美嘉「あの!!」
莉嘉「あーもーっ!アタシも高校入る!唇学園に転入するー!!」
美嘉「転入と言えばPはよくうちの高校に転入出来たよね。テスト難しくなかった?」
P「まぁまぁそこそこ。中学卒業してからこっち戻ってくるまで友達出来なくてずっと勉強してたんだよ」
美嘉「……うわぁ」
莉嘉「……Pくんかわいそー……」
うるせぇ。
いいだろ別に、ちょっと上手く馴染めなかったんだよ。
……うん。
小さい頃から美嘉や文香姉さんばっかと会話してたせいで男子と何話せば良いのか分かんなかったから……
P「んじゃ、そろそろ行くか」
美嘉「だねー、けっこー良い時間だし」
莉嘉「またねーP君!お姉ちゃん!文香さん!」
文香「片付け、お願いしますね?」
P「うっす」
11 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:07:05.09 ID:a2kTxmHJO
校門をくぐると、たくさんの生徒が行ったり来たり。
なんだか、やたら美男美女のカップルが多い気がした。
P「っていうか、この高校って異性との交友を大っぴらに認めてんだな」
美嘉「そこも人気の理由だしね。まぁ成績下がると強制離別させられるらしいけど」
腕組みながら校門で先生に挨拶してるカップルもいる。
なんともまぁメンタル強い事で。
にしても、やっぱり。
唇学園って名前はおかしいと思う。
校門にデカデカと彫られた唇の文字がジワジワくる。
モブ女子生徒「キャーッ!新生徒会長よー!!」
モブ男子生徒「うぉぉっ!朝からラッキーだぜ!!」
P「ん……?なんか向こうが騒がしいな」
美嘉「あ、奏が登校して来たみたい。見てわかる通り、すっごい人気なんだよね」
ハリウッド俳優が到着した空港みたいになってる。
大量の生徒に囲まれた速水さんが、その一人一人に丁寧に挨拶していた。
P「すげーなぁ」
美嘉「心がこもってないよ」
P「疲れそうだなーとは思ってる」
美嘉「それを苦とも思わないのも凄いとこだしね」
実際速水さんの歩き方は凄く綺麗だ。
校門から昇降口まで赤い絨毯が敷かれているのかと錯覚してしまうくらい。
12 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:07:31.32 ID:a2kTxmHJO
奏「……あら、おはよう美嘉」
美嘉「おっはよー奏。朝から大人気だね」
奏「からかわないで頂戴。朝から流れ星になるのも大変なのよ」
それをさらっと涼しい顔で言えてしまうって凄いな。
奏「それにしても……良い調子じゃない。進展はどうなのかしら?」
美嘉「そっちこそからかわないでってば。アタシは別にそういうつもりは無いし」
P「ん……?何かあるんですか?」
奏「同い年なんだから敬語は結構よ、鷺沢君。ま、そうね……放課後にでもお話しましょう?」
ウィンクされた。
あー成る程。
これは……やばいな、人気出る理由がよくわかるわ。
美嘉「……鼻の下伸びてる、P」
P「違う、鼻の下以外の顔のパーツが縮んだんだ」
大して交流の無かった俺相手にも今みたいなコミュニケーションを取れるなんて。
普通の男子だったら、いや男子に限らなくてもイチコロだろう。
綺麗な手を振りながら、速水さんは校舎内へと入って行った。
P「……で、なんかあんのか?」
美嘉「へっ?!あ、あぇーっと……放課後奏から聞いて?」
……何か隠されてる。
こいつ誤魔化すの下手だな。
美嘉「ほらほら、早くしないと遅刻しちゃうよ?」
P「……まぁ、良いか」
13 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:07:58.78 ID:a2kTxmHJO
美嘉「起立!礼!さようなら!」
クラスメイト「さようなら!!」
わいわいとクラスメイト達が帰って行く。
ま、俺は帰れないんだけど。
美嘉「それじゃP、生徒会室行くよ」
P「あいよー」
同じ教室でここ数週間過ごして分かったけど、どうやら美嘉も生徒達から大人気らしい。
一部の生徒からはカリスマと呼ばれているそうだ。
実際、なんだろう……実に流行の最先端系JKって感じはするし。
P「……今日はどんな雑務が待ってんのかな……」
美嘉「まぁまぁ、昨日はたまたま選挙結果発表だったからあれだっただけで、普段はそんな体力使う仕事は無いよ」
コンコン
美嘉「失礼しまーす」
P「失礼します」
生徒会室の扉を開ける。
昨日拉致された時は気付かなかったが、とんでもなく広くて綺麗な部屋だった。
14 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:08:30.97 ID:a2kTxmHJO
奏「あら、お疲れ様二人とも。今志希が出てるから少し待って貰えるかしら」
周子「おっ、逃げると思ってたのにちゃんと来たんだ。偉いねー週刊少年ジャプン読む?」
逃げると思われてたらしい。
にしても塩見先輩、生徒会室でなんつーもん読んでんだ。
周子「漫画や雑誌は持ち込み禁止だって思った?ざんねーん生徒会は特例で私物なんでも持ち込めるんよ」
だから生徒会に入ったと言わんばかりのドヤ顔をする塩見先輩。
なんだかとても気さくで良さげな先輩だ。
美嘉「ところで、志希が出たのって何分前?」
奏「三十分前くらいよ、多分どこかほっつき歩いてるわ」
美嘉「あと一時間は掛かりそうだし、先に始めちゃわない?」
一ノ瀬先輩もまた不思議な信頼をされてるな。
周子「今ええとこだからちょい待って。っあーここで来週に引っ張っちゃうかー……」
奏「周子ちゃん周子ちゃん、今真面目な雰囲気出す流れよ」
周子「……まぁ気楽に座りなよ新人君。床でもテーブルでも、なんならしゅーこちゃんの膝の上でも良いよ?」
P「床で結構です」
なんで椅子は用意されて無いんだろう。
美嘉「今は志希居ないし、志希の椅子使っちゃえば?」
奏「そうね、それじゃあ始めましょうか……」
一瞬にして、生徒会室に緊張した空気が流れ始めた。
あれだけふざけていた塩見先輩が漫画を置いて。
美嘉も、見たこと無いくらい真面目な表情をして。
そして……速水さんが、口を開いた。
15 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:09:22.15 ID:a2kTxmHJO
奏「…………誰が、カップルになるか……よ」
P「……………………」
…………は?
カップル?
この真面目な空気に現れて良い単語では無い。
いや待て、聞き間違えの可能性もある。
奏「……鷺沢君、我が唇学園の一大イベントと言えば何があるかご存知かしら?」
P「えっと……生徒会選挙ですよね……?」
奏「そう、貴方が唯一の不参加者である生徒会選挙。それと他にももういくつか、大きなイベントがあるのよ」
美嘉「それが……カップルコンテスト」
カップルコンテスト……
周子「略してカプコン」
カプコン……
奏「怒られるわよ周子。まぁそういう事で、カップルが必要なの」
カップルが必要なの……
生きてるうちで多分今後聞く機会は無いと思うそんな会話。
意味が分からない。
カップルコンテストが何なのかも、だから何故カップルが必要なのかも。
奏「……この学園の一大イベント『カップルコンテスト』は、その名の通りその年最高のカップルをコンテスト形式で決めるイベントよ」
へー。
美嘉「二月末に立候補カップルを集めてて、三月中旬にコンテストするんだ」
立候補カップルって響きがもう面白いんだけど、笑ったら殴られそうだ。
まぁ要するに、学校中のカップルから毎年一組名カップルを選ぶよーみたいなやつか。
16 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:09:52.29 ID:a2kTxmHJO
周子「まぁもちろん毎年毎年歴代の生徒会から参加したカップルが優勝してたんだけどねー……」
奏「困った事に……今の生徒会、男性が居ないのよ……」
美嘉「そこらへんって生徒会の沽券に関わるしさ、今年もグランプリ取らないと困るんだよね」
P「え、でも別に片方は生徒会の人じゃなくても良いですよね?誰かしらが彼氏と出れば……」
周子「まー今の生徒会のメンバーなら彼氏側がどんな人でも勝てそうだけどね」
美嘉「……あのねP、それが叶うならあんたを呼んで無いって」
周子「うんうん……お恥ずかしながら……」
奏「私から言うわ……」
ごほんっ、っと。
速水さんは、言った。
奏「……私達、誰も恋人いないのよ…………」
P「……………………」
あまりにも。
あまりにも、そっかーと言うしか無い理由だった。
17 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/08(金) 11:10:21.46 ID:a2kTxmHJO
周子「……何か言えよ」
P「……えマジですか?!うわめっちゃ意外……」
こんな美少女だらけで構成された生徒会なのに……
全員非リアとか……
周子「いやー奏ちゃんモテモテっぽそうに見えて誰からもアプローチされないんだよね。高嶺の花になり過ぎちゃってる感じ」
奏「周子だって色々あるじゃない、貴女ジャプンの続き気になり過ぎて告白の途中に本屋に行ったんでしょ?」
P「えっ美嘉もいねぇの?」
美嘉「あっははー……いないけど?!だから何?悪い?!」
そこまで言ってねぇだろ……
奏「だから鷺沢君。貴方に課された最優先の課題は……」
あぁ、うん。
なんとなく、その先の言葉を分かってしまった。
奏「……生徒会の誰かと、付き合って頂戴」
なんで……ほんと、なんで俺なんだ……
そんな感じで、俺の生徒会での本格的なお仕事は。
恋人作りとかいう絶対他の学校の生徒会には無い業務からスタートする事になった。
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/08(金) 12:58:31.71 ID:x7vF3iRTo
Masque:Radeの別時空かな
期待
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/08(金) 13:24:55.80 ID:SHnggrA60
ありゃ美人女教師のちひろ先生√は無かったのか乙
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/09(土) 02:27:55.02 ID:GS7Gz/Bh0
唇学園に何か既視感を抱いたと思ったら、笑ってはいけないにそんな高校があったからだ
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/09(土) 09:19:49.90 ID:CPDm4cixO
愛梨「さあ行こう、空の果 てへ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1519427437/
久美子「永遠のレイ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520033314/
伊織「誰が魔王サーの姫 よ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1520637298/
エミリー「修正…悪しき文 化ですね」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521241832/
奈緒「何で関西弁=恐竜やねん!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521850482/
常務「新制限を全て撤回。 白紙に戻す」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1522451692/
千夏「このTGはテックジーナスじゃないの?」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523058431/
礼子「大人の魅力で破滅さ せてあげる」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523661962/
フレデリカ「恋人は校庭のパラディオンだよー」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524265978/
海美「竜騎士の結束を見せちゃうよ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1524871125/
志保「茶運びといえばカラクリだよね!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1525475657/
茜「みんなで勝鬨を上げちゃおう!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526133608/
桃子「この金の城いい踏み台だね!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526686132/
美紗希「化学反応式も女子力よ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527292985/
小鳥「アリガトウワタシノデッキ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527896333/
柚「狩らせてもらうよ。キサマのぴにゃンバーズ!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1528498815/
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/09(土) 15:04:01.81 ID:AljiHq67O
私立唇西高校かな?
23 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:39:16.60 ID:OwqfzL+g0
P「……で、誰と付き合えば良いんですか?」
周子「しゅーこちゃんパース」
奏「私もパス」
美嘉「ならアタシもパスしとこっかな」
P「えぇ……」
誰かと付き合えとか言われたのに、全員に拒否された。
まぁ俺としてもこんな流れで誰かと付き合うとか不本意でしかないけど。
じゃあなんで呼ばれたんだってなる。
周子「そこはほら、鷺沢君の頑張りどこじゃない?」
奏「貴方が今月末までに、私達の誰かに付き合っても良いかもって思わせるのよ」
P「……えぇ……」
無理では?
明らかにみんな俺に対して興味無さそうだし。
美嘉「まぁまぁ、これから生徒会の仕事で一緒に行動する事になる訳だしその間にPも誰かに惚れるでしょ」
この流れだとそれも厳しそうな気がする。
ガチャ
志希「ただいま〜、志希ちゃんの凱旋だよ。ファンファーレは?」
奏「私からの労いの言葉で良ければ。お疲れ様、志希」
志希「志希ちゃんは今、と〜っても疲れている。美味しくて良い香りの飲み物を所望するよ」
周子「玄米茶ならあるよーん」
志希「んー……セーフ!ギリあたしの満足ゲージ一歩手前!」
P「それってアウトじゃ……」
志希「……ん?キミは……誰?って言うかなんであたしのイスに座ってんの?人間椅子希望?ヘンタイ行為は他所でやってくれる?」
P「あっすみません」
急いでイスから降りて床に体育座りした。
なんだこいつみたいな視線を向けられた。
嘘だろ。
俺、昨日一ノ瀬先輩に拉致られたのに。
貴女は拉致った相手を覚えてないのか。
奏「ごめんなさいね、鷺沢君。志希は興味無いものを長くは覚えて無いのよ」
ショックが増した。
暗に俺に対して興味が無いって言われてる様なもんじゃん。
一ノ瀬先輩とも付き合う事は難しそうだ。
24 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:40:10.75 ID:OwqfzL+g0
奏「志希、彼は鷺沢君よ。昨日貴女が拉致した子」
志希「へ〜カワイソウに」
なんて他人事、なんて平坦。
奏「ところで鷺沢君。貴方は私達全員の顔と名前と役職は一致しているかしら?」
P「あ、それなら大丈夫です」
速水さんが会長。
美嘉が副会長。
塩見先輩が会計。
一ノ瀬先輩が広報。
んで俺が庶務。
一年生二人の方がなんか重要っぽさそうな役職に就いてるんだな。
……あれ?
P「そう言えば、書記って居ないんですか?」
周子「いたよー2代前まで、とびっきり優秀過ぎたのが」
奏「それ以降の代は、常に空席にするって学園長が決めたらしいのよ」
へー、なんか凄い人がいたんだな。
奏「さて、鷺沢君。これから貴方は生徒会の庶務としての業務もこなして貰う訳だけど……差し当たって先ずは普段の雑務……業務を覚えて貰うわ」
雑務って言った。
色々面倒な事を俺に押し付ける気しかねぇ。
奏「それじゃ、志希に色々と案内して貰って頂戴」
志希「え〜……あたし今現在進行形でダルいナウなんだけどにゃ〜」
とんでもなくめんどくさそうな物を見る様な視線が心地悪い。
せめて美嘉か塩見先輩だったらこっちとしても話しやすかったのに。
P「えっと……すみません、お願いします……」
志希「イヤ」
心が折れそうだ。
奏「私からもお願いするわ。彼が色々覚えれば、後々貴女も色々と楽になる筈よ」
志希「はぁ〜〜……仕方ないか、お仕事だし……はぁぁぁぁ…………」
ため息がデカい。
息苦しくなってる俺の代わりと言わんばかりの量の酸素を消費している。
志希「言っとくけど、あたしの君への興味ゲージは0ケルビンだから」
冷たい視線と共に温度まで奪われた。
存在すらままならないらしい。
志希「……さっさと着いて来てよ、時間は有限なんだから。それともキミはあたしの時間まで盗むつもり?」
ふざけてた感じすらどんどん消えてく。
マジで嫌われているらしい。
俺、なんかしたかな……
にしても、時間まで……?
25 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:40:48.94 ID:OwqfzL+g0
P「あ、失礼しました」
礼をして生徒会室から出る。
現時点で、これから先上手くやっていける自信が五十割消し飛んでいた。
P「……えっと、その……一ノ瀬先輩」
志希「……は?」
振り返った一ノ瀬先輩の目付きでビビる。
けれどこんな事でへこたれていては多分この先ずっとビビりライフだ。
少しくらい強気で出ても良いんじゃないだろうか。
P「お言葉ですが一ノ瀬先輩、業務中なんだから少しくらいは」
志希「は?何ふざけた事言ってるの?」
P「ごめんなさい」
謝った。
判断を誤った。
無理だ、怖いものは怖い。
志希「……キミ、何を間違えたか分かってる?それ理解出来てないようなら謝られても困るだけなんだけど」
P「あー……失礼な事を言おうとして」
志希「そうじゃないよね?違うよね?朝に夕飯食べるくらい間違ってるよね?」
そんなにおかしな間違いをしていたのか俺は。
にしても、俺は何を間違えた?
生まれてくる世界だろうか。
志希「今キミ……ううん、さっきから。あたしの事なんて呼んだ?」
P「えっ?一ノ瀬先輩って……」
志希「…………世が世なら家庭裁判所な訳だけど、そこんとこ自覚ある?」
ある訳が無い。
家庭裁判所が設置されたのは昭和24年の1/1だけど、当時に一ノ瀬先輩と呼んでたら訴訟されてたんだろうか。
志希「…………この場にはあたしとキミしか居ない。何が起きても、何があっても、目撃者は一人もいない」
かつん、かつん。
一ノ瀬先輩がゆっくりとこちらへ向かって来た。
志希「……さ、キミの出がらし茶葉みたいな脳でも理解出来た?」
……殺される。
本気でそう思った。
一瞬で俺の意識を刈り取る薬品を持っていた一ノ瀬先輩だ、命を奪うくらい容易だろう。
逃げないと。
でも、足が震えて動かない。
少しずつ、一ノ瀬さんが距離を詰めて来て。
俺の制服が、強く握られて……
26 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:42:11.31 ID:OwqfzL+g0
志希「にゃっはっは〜!うぅぅぅんっ!うんうん!変わってないなぁPの匂い!」
胸元に、頭をグリグリされた。
P「…………は?」
甘い匂いがする。
何故女子はこうも良い香りがするんだろう。
ってそうじゃ無いそうじゃ無い油断するな俺。
頭のてっぺんからぴょこんと伸びたアホ毛部分で刺殺を図ろうとしているのかもしれないんだから。
志希「えっとね?あたしね、頑張ったんだよ?アメリカ行ってね?たくさんベンキョーしてね?気付いたらすっごいくらい凄くなれてね?」
P「……………………は?」
一ノ瀬先輩が頭良さそうな事は知ってる。
だからこそアメリカに留学経験があったとしても驚かないし。
だからこそ、それを今カミングアウトされても正直はいそうですかとしか言えないし。
だからこそ……なんで今それ言った?
冥土の土産的なやつだろうか。
志希「すっごく頭良くなれたから、Pに会いたくって帰ってきたんだ〜。でもPは引っ越しちゃってて、会えなくって毎晩お布団と枕濡らして寝てた」
P「……はぁ、なるほど」
志希「でもやっと会えて嬉しくってね?だからね?そのね?一ノ瀬じゃなくて、志希って呼んで欲しいなーなんて思っちゃってるんだけど〜……」
P「……あの、一ノ瀬先輩……」
志希「……呼んでくれない?ダメ?」
P「……志希」
上目遣いはズルい。
なんかもう全く何も分からないけどとりあえず志希と呼んでみた。
志希「何が間違ってたか分かった?」
P「……俺が、志希先ぱ」
志希「先輩も要らないから」
P「……志希の事を一ノ瀬先輩って呼んだ事です、はい」
志希「んもー、気付くの遅すぎ〜!でも許しちゃう、だってPだんもね〜?」
何が……
何が、ね〜なんだ……
分からない。
展開の急展開さに着いて行けない。
さっきからずっと置いてけぼりばっかりだ。
27 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:42:38.64 ID:OwqfzL+g0
志希「さっきはごめんね?久し振りできんちょーしちゃったって言うか、こー心臓が嬉しさで突然断熱圧縮しちゃったって言うか……」
P「……あの、えぇ……?」
志希「ねーねー、撫でて撫でて〜?あとぎゅ〜ってして?」
P「あ、はい……」
なんかよくわからないけどこれも生徒会の業務の一つなんだろう。
言われるがままに、一ノ瀬さんの頭に手を伸ばそうとして。
ガチャ
美嘉「……何してるの、二人とも」
生徒会室から、美嘉が出てきた。
P「あ、美嘉。あのさ」
現状を伝えようと思った瞬間、一ノ瀬先輩に突き飛ばされた。
志希「キミ、何手を伸ばしてきたの?気軽に触られる程あたしの頭と脳は安くないんだケド」
P「……えぇ……」
美嘉「なんか志希の方から抱き着いてる様に見えたよ?」
志希「錯覚錯覚、人の脳はひじょーに騙されやすいから。メカニズムの解説は必要?」
現状を解説して欲しい。
P「あの……」
志希「気軽に話し掛けないでくれる?」
P「……すみません、志希」
志希「一ノ瀬先輩でしょ?頭沸いてる?キミの脳の沸点は常温なの?」
志希って呼んだら怒られた。
さっきのは一体なんだったんだ……
美嘉「……見間違いかな。まぁいいや、アタシはもう帰るから。じゃねーP、志希」
P「お疲れー美嘉」
美嘉が帰って行った。
28 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:43:12.74 ID:OwqfzL+g0
当然残された俺たちは再び二人になる。
P「……一ノ瀬先輩」
志希「志希でしょ〜?もーさっき言ったばっかじゃん!忘れちゃったの?忘れん坊さんなの?あーもーっ!そんなとこも好き〜!!」
……あー分かった。
この人、あれだ。
多重人格ってやつだ。
志希「あれだけあたしの事バカにしてきたのにもーっ!それとも……」
突然。
一ノ瀬先輩の目が、ミシンの針みたいになった。
志希「……あたしの事、忘れてる?」
動けなくなった。
よく見たら足が軽く踏まれてる。
それだけで俺の身体は全く動かなかった。
わぁ凄い、まるで廊下に縫い付けられたみたい。
なんかの武術なんだろうか。
志希「……なわけ無いよね〜?Pがあたしとの約束忘れる訳無いもんね〜?」
P「も、もちろんです!全部覚えます!!」
志希「敬語もやめて?あたしとPの仲じゃん」
P「だよな!俺たちの仲だもんな!!」
何も覚えて無い。
だって多分初対面だもん。
俺たちの仲ってなんだよ、拉致の被害者と加害者の関係だよ。
志希「じゃーPにもんだーい!あたしの誕生日はー?」
知らんがな……
まあ適当に答えれば1/365で当たるか。
P「……1/365」
志希「1月は31日までしか無いんだけどにゃあ」
そらそうだ。
頼む、奇跡よ起これ……
奇跡が起きそうな日に全てを賭けろ……
P「……12月25日」
志希「ばかばか、それはイエスさんのでしょー?あ、でもあたしとの初めてはクリスマスがいいって事?ならあたしそれまで我慢するケド」
やばい。
とつもなく一ノ瀬先輩が重い。
体重じゃなくて、こう、色々と。
29 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:44:18.44 ID:OwqfzL+g0
P「……ご、ごめん!ちょっとド忘れしちゃってさ!あと364回チャンスくれない?!」
我ながらアホな事を言ってると思う。
これで閏年の2月29日だったらもう帰りに宝クジ買おう。
志希「んー、回答権は30回まで!あとヒントは5月ね?どー?これなら当てられそー?」
なんとも有情な情報と譲歩だ。
P「5月1日!」
志希「はずれー」
P「5月2日!」
志希「ちがーう」
P「5月3日!」
志希「はい次ー」
P「5月4日!」
志希「ねくすともあー!」
一つずつ候補を潰してゆく。
これでまぁどっかしらで当たるだろ。
……なんて考えは、甘かった。
P「……5月29日」
志希「はいラスト〜!」
回答権は残り1回。
残りの候補は30日と31日。
うっそだろ……まさかこれだけチャンスがあって外すなんて……
志希「どー?思い出せそー?」
思い出すも何ももう二択なんだけど。
っていうかそもそもこれだけ外してりゃ覚えてない事くらいバレてるだろ。
どっちだ……
流れ的に、このまま順番に30日って言ったらなんだか外れそうな気がする。
ここは……
30 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:44:59.01 ID:OwqfzL+g0
P「…………5月31に」
志希「なーんで順番通りに言わないかなー……」
P「ち……は違うな!そうだそうだ!30日だよ!!」
志希「うんうん!そーそー!あたしの誕生日は5月30日でした〜!」
P「だよな!良かったぁ覚えてて!!」
志希「はい、まぁPがどーせあたしの誕生日なんて覚えてないって事くらいは分かってたしそれが判明した訳だけど」
P「…………」
……まぁ。
バレるよな……
志希「そもそもあたし、Pに自分の誕生日教えた事無いし」
ならなんでクイズしたし。
志希「はぁ〜……ほんっとうに覚えて無いんだ」
P「その……すまん」
志希「そっか〜……ごめんね、P」
ポツリと呟いた一ノ瀬先輩は。
なんだか、とても悲しそうな顔をして。
志希「まいっか〜別に。そんなら今から1から始めよ?」
見間違いだったんだろうか。
また一瞬にして明るくなった。
P「ちなみに、俺達って昔会った事あったっぽいんだけどさ。どんな関係だったんだ?」
志希「夫婦」
P「ダウト」
志希「にゃっはは〜、流石に騙せないか〜」
いや、まぁ……年齢的に……
今だってまだ俺結婚出来ないし。
志希「それは〜……うーん、ヒ・ミ・ツ!思い出せないなら無理してまで思い出す必要は無いからね。あたしにとっては大切なタカラモノだけど、Pにとってはそうじゃ無かったみたいだし」
当時はあたしもバカだったし、なんて笑う一ノ瀬先輩。
31 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:45:25.84 ID:OwqfzL+g0
志希「で、だ。ここで本題だよワトソン君」
突然の推理パート。
志希「今回の一連の事件の被害者……仮にPと呼ぶとしよう」
まぁ、うん。
仮じゃなくても被害者俺だし。
志希「Pが何故生徒会に無理矢理加入させられたのか。先ずはそこから紐解いてゆかなければならないんだけど、キミは何処まで理解しているかい?」
P「えっと……カプコンに向けて、生徒会から一組カップルを輩出する為だよな?」
志希「そう!その為にPは被害者となった……うんうん、なんたる悲劇!生徒会の誰かしらに恋人がいたら、きっと彼がこんな道を辿る事は無かっただろうね〜……灰色の青春が生み出した被害者Pは、時代の流れの犠牲者と呼ぶに相応しい……」
なんでこんな演劇風なんだろう。
志希「しかし、だ。まだ彼の被害が少ないうちに救う事が出来るとしたら。救いの手を我々が差し伸べる事が出来るとしたら、キミはどーする?」
P「そりゃ助けたいよ」
ってか助けて欲しい。
志希「よーし!話は決まりだね!あたし達で彼を助けてあげよう!」
P「でもどうやって?」
志希「あたしたちがカップルになれば良いだけ。ここまで単純明快な解答なんて世界中を探してもそうそう無いんじゃない?」
P「なるほど!確かに俺が志希と付き合えば被害者Pはわざわざ生徒会の誰かと付き合う必要が無くなる!なんて分かりやすいってバカかおい」
果たして何も解決策は提示されなかった。
被害者P助かって無いじゃん。
救いの手を握ったと思ったら自分の反対側の手だった。
志希「まぁまぁどうどう。で、どう?悪くない提案だと思うんだケド」
P「えっ?いや、あの……」
志希「こー見えて、あたし結構好きな人につくしタイプだよ?」
つくしタイプ……植物なんだろうか。
32 :
◆x8ozAX/AOWSO
[saga]:2018/06/11(月) 17:46:01.71 ID:OwqfzL+g0
志希「なんならあたしの恋人になったらカップルコンテスト出場せずに済む様に話通してあげるけど」
P「まじで?!」
志希「だってあたしはめんどーだから出たくないも〜ん」
……いやそんな理由で付き合うってどうなんだ。
志希「ま、早目に返事くれると嬉しいかにゃ」
P「……少し考えさせて下さい」
ガチャ
奏「あら、二人ともまだ居たのね」
周子「生徒会室前で堂々とサボりとはしゅーこちゃんよりもメンタル強いねぇ」
奏「貴女は生徒会室内でもサボるじゃない」
周子「それで二人は何話してたん?」
P「あ、ちょっとカップルコンテストについて話してたんですよ。俺が志希と付き合う」
志希「とかいう世迷言を聞かされてただけ。ふざけてるの?ふざけてるんだよね?キミ。正気で言ってるなら病気だけど」
あ、人格変わった。
志希「しょーじきすっごく迷惑だし鬱陶しいから視界から消えて。業務内容は明日誰かに聞けば?」
奏「早速口説きにかかるなんて……鷺沢君、貴方なかなかのプレイボールなのね」
周子「まぁ暴投と言わざるを得ないけどね、志希ちゃん相手に出会って即告白とか」
志希「とっくに三振、さっさと他の誰かと交代して欲しいんだケド」
多分泣いても許される。
そんな感じで、この日は何も出来ずに終わった。
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/11(月) 19:08:07.33 ID:LyoiA1S+O
ツンデレの振れ幅がやばいな
伝説の書記は年齢的にフレちゃんかな?
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/12(火) 23:48:21.10 ID:ZFsF+JPV0
遊園地のバイキング(高速運行)並みだ
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[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
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