マリ「超特急デネブ?」結月「そうです」

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:40:16.72 ID:BmPgE/vWo

―― 展望車


日向「それでは、ミーティングを始めます」

結月「よろしくお願いします」

報瀬「なんのミーティング?」

日向「話を始める前に、キマリ」

マリ「え……?」

日向「秋槻さんは次の大阪まで追いかけるって連絡があったんだから」

マリ「そうだけど……」

日向「下を向くな、前を見ろ! 私たちは進み続けるしかないんだからな!」

マリ「……そうだね……ごちそうになれなかったし」

日向「その仕打ちにしては酷いな」

マリ「ち、違うよ! 前向きになろうとして言っただけだから」

結月「誰なんですか? 昨日も聞きましたけど」

日向「始発から乗車した仲だな」

マリ「うん、あとでちゃんと謝ろう! プリンシェイクをお詫びに!」

日向「……」

報瀬「……日向?」

日向「え? なに?」

報瀬「急に静かになったから」

日向「……歩いてたな……と思ってさ」

報瀬「歩いて……?」

日向「いや、なんでもない。それじゃ、話を始める!」

報瀬「議題は?」

マリ「大阪の名物とはなにか、これしかないよね」

結月「それじゃありません」

報瀬「……?」

日向「まず初めに、私たちがデネブに乗った理由を聞かせてもらおう」

報瀬「キマリが商店街の福引で特賞を当てたからでしょ」

結月「そういうことにしたんですか」

マリ「うん」

報瀬「違うの?」

日向「よーく考えて欲しい、報瀬」

報瀬「?」

日向「私たちの町にだ、プレミアが付いたこの豪華列車の乗車券を、
   それも4枚も用意できるのかどうか」

報瀬「出来てるから、乗っているんでしょ?」

日向「報瀬、キマリを信じるその心はとても美しいよ」

マリ「……良心が痛むね」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:42:31.25 ID:BmPgE/vWo

結月「嘘なんですよ、それ」

報瀬「ウソ?」

日向「実は……ゆづの事務所が用意したんだ」

報瀬「ふぅん……」

結月「……」

報瀬「ん?」

マリ「……」

報瀬「ちょっと待って、嫌な予感がする……」

日向「そして、このカメラ!!」ドン

報瀬「あの時のカメラ……?」

日向「そう、あの時のカメラである」

報瀬「まさか……!」

日向「……」

報瀬「嫌だ! 降りる!!」

マリ「まだ詳しく説明してないのに!?」

報瀬「いーやーだー!!」

結月「ネット配信された南極での動画ですが、南極を紹介しているより、
   普段の私たちの会話を撮影した動画の方が再生数多いんですよね」

報瀬「なにそれ、聞いてない!」

日向「言ってないからな」

報瀬「ちょちょ、著しゃく権侵害だから!」

結月「どちらかというと、肖像権……ですね」

報瀬「いつ撮ってたの!?」

マリ「私が……撮ってたんだけど……そのまま置いて忘れてた映像があったの」

報瀬「なんでそんな酷いことするの!?」

マリ「だ、だから忘れてたんだよ……」

報瀬「ぐすっ……信じてたのに……キマリ……」シクシク

マリ「うっ……」グサッ

日向「いや、傷つく必要ないぞキマリ」

結月「そうですよ、黙ってたのは悪かったですけど……。
   プライベートな部分はカットしてますし、なにより好評でしたから」

報瀬「結果が良ければ過程はどうでもいいの?」

結月「うっ……」グサッ

日向「ゆづまでやられたか……仕方ない、私が説得するしかない」

報瀬「こんなの横暴よ、勝手すぎる! 私は断固として抗議するから!」

日向「お嬢さん、そんなこと言っていいんですか?」

報瀬「なによ、いいに決まってるでしょ」

日向「契約書、サインしましたよね」

報瀬「……!」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:45:36.51 ID:BmPgE/vWo

日向「お祖母ちゃんと一緒に、あなた……ちゃんと読みましたよね?」

報瀬「そ、それは……! というか、なによそのキャラ」

日向「ゆづの事務所がやったことぁ……法に触れてませんのですぜ?」

報瀬「人道に反する! 許されることじゃない!」

日向「なんか主張が大きくなってる気がするな……」

報瀬「契約って言うなら、もう終わってることでしょ!?」

日向「デネブに乗ってるんだからそんなこと言ってもしょうがないだろ!?」

報瀬「だからそれが横暴だって言ってるの!」


栞奈「もぐもぐ」


日向「じゃあ、報瀬はこの企画に乗れないって言うんだな」

報瀬「そう言ってるでしょ」

日向「まぁ、降りろとは言わないだろう。ゆづの事務所は」

報瀬「……」


栞奈「もぐもぐ」

みこと「……」


日向「……だけどだ」

報瀬「……」


マリ「あ、おいしいね、これ」

栞奈「売店にあったんだよね。限定ポテチ」

みこと「……」



日向「だけど……だ」

報瀬「……だけど、なに?」


マリ「あとで買ってこよう」

栞奈「残念、最後の一つなんだなぁ」


日向「報瀬を説得してるんだから協力しろよキマリ!」

マリ「日向ちゃんに任せた!」

栞奈「食べる?」

結月「いえ、これから撮影がありますので」


日向「栞奈、報瀬の代わりにやるか?」

栞奈「うん、やるやる」

報瀬「……」

日向「いいんだな、報瀬」

報瀬「……ぅ」

日向「私たちが後で映像を観た時、そこに報瀬は居ない――」

報瀬「分かった! やる、やるから!!」

日向「じゃ、決定〜」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:48:41.27 ID:BmPgE/vWo

栞奈「あれ、私は?」

結月「無かったことにしてください」

栞奈「ひどい、利用するだけ利用して……簡単に捨てるのね……!」

日向「うん」

栞奈「人道に反する! 許されることじゃない! 徹底抗議よ!」

報瀬「ま、真似しないで……」


みこと「……」

マリ「みこっちゃんも食べる? 残り少ないから食べておいた方がいいよ」

みこと「……あの人、もう打ち解けてる」

マリ「栞奈ちゃん? ああいう性格なんだろうね。日向ちゃんと気が合うみたい」モグモグ


報瀬「日向、台本書いて」

日向「日常会話が必要だって言ってるんだから台本いらないだろ」

結月「そうですよ、無い方がいいです」

報瀬「台本のある日常があっていいと思う」

結月「嫌ですよ、そんな日常……」

栞奈「あーっ!? もう無くなってる!」

マリ「おいしくて、つい……てへ☆」

みこと「……」


一輝「なんか、うるさいな……増えてるし」


栞奈「てへ☆ じゃなーい! どうしてくれんの?」

マリ「ご、ごめんなさい。代わりに夜食用に買ったおやつを」

栞奈「何味?」

マリ「プリン味!」

栞奈「却下」

マリ「そんなー……」


一輝「あのさ、秋槻さん知らないか?」

日向「え……」

マリ「あ……」

一輝「え、なに?」

報瀬「……」

結月「……」

みこと「……」

一輝「なんで急に黙るんだよ……?」

日向「そうか……知らないのか……」

マリ「もう……居ないんだよ」

栞奈「なんの話?」

報瀬「さぁ……?」

結月「また悪ノリしてる風にも見えますね」

みこと「……」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:53:26.94 ID:BmPgE/vWo

一輝「降りた……ってことはないだろ……?」

日向「乗ってないことが事実なんだ」

一輝「……そうか。……ご馳走になったお礼をしたかったんだけど」

日向「なぁにぃ……?」

一輝「ん……?」

結月「?」

一輝「あ……! 白石結月……!?」

栞奈「お、ここで再会とは運命だね」

マリ「え、そうなの?」

結月「い、いえ……知らない……はず……」


報瀬「というか、誰なの?」

みこと「見ての通り、失礼な人です」

報瀬「……ふぅん」


一輝「い、いやテレビで見たことあるだけで……一方的に知ってるだけで」

結月「そうですか」

一輝「なんか、変なコスプレしてる人いるなと思ったら……」

結月「な……!?」

マリ「似合ってるよ、結月ちゃん」

結月「こ、コスプレ……! 確かにそうですけど……そうですけど……!」

日向「今、仕事の打ち合わせしてるんで、
   サインなら地球が砕け散ってからにしてくれませんか」

一輝「断ってるだろそれ」

栞奈「あはは!」

報瀬「仕事……」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:55:03.47 ID:BmPgE/vWo

一輝「……えっと……なんの話してたっけ」

みこと「秋槻さんのこと」

一輝「あ、そうそれ……。居ないならしょうがない……」

日向「むぅ……今度絶対にご馳走になっちゃる!」

一輝「今度って……降りてないんだな?」

マリ「うん」

一輝「紛らわしい言い方すんなよ……!」

スタスタスタ...


栞奈「怒らせたね」

みこと「……」

マリ「結月ちゃん、列車に乗ってるときはずっと車掌服?」

結月「いえ、違います。仕事がある時だけです」

日向「じゃあ、さっそく撮るか、練習がてら」

マリ「よし来た!」

みこと「居ないよ」

日向「……よーし、カメラ回したぞー」

栞奈「私はね、常日頃、宇宙について考えているんだよ」

日向「おい、カメラ回ったからって面白いこと言おうとするなー」

結月「居ないって誰が……」

マリ「あ……報瀬ちゃんが居ない!」

日向「逃げたか……」


……



108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:56:19.25 ID:BmPgE/vWo

―― 3号客車


報瀬「……信じられない……こんな罠があったなんて」


報瀬「ハッ!?」


報瀬「……」ササッ


......テッテッテ

「探せ探せー! 報瀬を見つけた者には金一封、キマリの財布から出るぞー!」

「よっしゃぁぁ!」

「わー! やめてやめてー!」


報瀬「……」コソコソ


結月「乗客のみなさんに迷惑ですから、静かにしてくださいー!」

みこと「……本当に車掌さんになってる」

テッテッテ......


報瀬「ふぅ……」

「うふふ、賑やかでいいわねぇ」

報瀬「あ、すいません……連れが騒がしくしてしまって」

「いいのよぉ、若い子はこれで」

報瀬「……」

「あなたは行かないの?」

報瀬「静かな方が好きなので」

「ふふ、そう」


みこと「……」


報瀬「ヒッ!?」ビクッ


みこと「私しかいないよ」


報瀬「なんだ……驚かさないでよ」

「はい、二人とも、これをどうぞ」

みこと「……?」

報瀬「みかん? ……あ、冷たい」

「さっき売り子さんから買ったの。でも、私ひとりじゃ食べきれなくて」

報瀬「ありがとうございます。いただきます」

「さ、あなたもどうぞ」

みこと「……ありがとうございます」
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:58:00.48 ID:BmPgE/vWo

報瀬「お婆ちゃんは、おひとりですか?」

「ううん、お爺さんと乗車したのよ。今は個室で休んでるわ」

みこと「……」

報瀬「お二人で旅行ですか……。仲がよろしいんですね」

「うふふ、子供たちから還暦のお祝いにって、プレゼントされたの」

みこと「――……」

報瀬「素敵なプレゼントですね」

「私たち、若い頃からずっと忙しくてね……。子供たちと一緒に居る時間は少なかったんだけど……」

みこと「……」

「元気でいてくれればそれでいいって思っていたんだけどね……。だから、とっても嬉しいわ」

報瀬「……」

「あら、ごめんなさい……。こんな話……」

報瀬「とても感謝していると思います。……私の親も……そうですから」

みこと「……」

「そうなの?」

報瀬「自分のやりたいことの為に、家を空けていることが多くて」

「あらあら」

報瀬「だけど、そんな母が今では好きだって思えます」

「そう……それはとても素敵なことだわ」

報瀬「そう思えるのも……友達のおか……げ――!?」

みこと「?」


日向「嬉しいこと言ってくれるじゃないか……」グスッ

結月「報瀬さぁん……」グスッ

マリ「うぅ……」グスッ

栞奈「私のことをそんな風に……」グスッ


報瀬「あなたは違うから! さっき会ったばかりでしょ!?」


栞奈「いやぁ、ここは感動しておこうと思って」

報瀬「変に空気読まないで!」


「いいお友達にめぐり会えたのね」

報瀬「は……はい……」カァァァ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:59:26.96 ID:BmPgE/vWo

日向「お、顔が真っ赤ですなぁ」

結月「茶化さないでください、よけい照れるじゃないですか」

マリ「うぇぇぇん……報瀬ちゃぁぁん」


報瀬「トイレ! トイレ行ってくるから!」ガタッ


日向「おい! 花も恥じらう乙女が大声で言うことじゃないぞ!」


「お花摘んで来るからぁぁぁ!」

タッタッタ


栞奈「摘むっていうより毟ってきそうな勢いだねぇ」

日向「あはは! よし、追うぞー!」

結月「そこは放っておきましょうよ!」

マリ「そうだよ〜。追い打ち掛けちゃだめだよ」

みこと「……」

「あなた達から友愛の深さを感じるわ。
 ずっとそうであって欲しいって思ってしまうくらい」


マリ日向結月「「「 はいっ!! 」」」


みこと「…………」

栞奈「ちぇー……。ここで一緒に返事できないのが辛いとこだなー」


……


111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 13:01:27.30 ID:BmPgE/vWo

―― 展望車


結月「はい、ここが展望車です! 見てください、天井がガラス張りですよ!
   それに景色が広く見えるよう窓が大きく設計されています!」


ディレクター「今日の白石さん、ノリがいいねぇ」

さくら「なにか良いことあったのかしらぁ?」


日向「ゆづが仕事してるとこ見るの初めてだな」

マリ「そういえばそうだね」

報瀬「よくあんなカメラ向けられて平気でいられるよね……」

日向「はい、カメラ回った―!」

報瀬「……ッ!」シュッ

日向「消えた!? 忍者かよ!」

みこと「……こっち」

マリ「え? あ、椅子に隠れてた」

報瀬「なんでバラすの!?」


ディレクター「君たち、見学するなら静かにお願いね」

日向マリ報瀬「「「 すいません 」」」

みこと「……」


……


112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:15:55.45 ID:JIKGxwEno

―― 売店車


報瀬「わ、わー、売店があるー」

結月「なにか珍しいものありますか?」

報瀬「あー、これなんて珍しいんじゃないかなー、わーきれいー」

結月「……お菓子の包装紙がそんなに珍しいんですか。……それも、量産されてる商品」

報瀬「どんな味がするんだろー、わーきれいー」

結月「チョコ味です、書いてあるじゃないですか」

報瀬「あー、このキーホルダー、珍しー。わーきれいー」

結月「確かに珍しいですけど……。報瀬さんの目にはなんでも綺麗に映るんですね」

報瀬「うなぎのマスコットだー、わーかわいー」


店員「ナマズですよ」


報瀬「?」

結月「『なにが違うの?』って 顔しないでください」


一輝「……何やってんの? コント?」

日向「やっぱそう思うか……」

マリ「アドリブだよ」

一輝「え……!?」

みこと「台本通りにやってるみたい」

日向「だよなぁ……これじゃ本番なんて出来ない」

マリ「うん……」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:17:43.11 ID:JIKGxwEno

栞奈「そこで私の出番ですよ」

日向「いきなり出てきたな。……じゃ、やってみ?」

栞奈「よーし」

みこと「いいの?」

日向「報瀬の緊張を解くことができるかもしれない」

マリ「ものは試しだね」

一輝「……」


栞奈「へーい、そこのカワイイ彼女たちー、一緒にお茶しなーい?」

報瀬「……」

結月「……」

栞奈「あれ……!?」

日向「二人のテンション落としてどうすんだよ!?」

栞奈「じゃあ日向やってよ! 面白くできるんでしょ!?」

日向「嫌だよ、お前のせいでハードル上がってるだろ」


一輝「うるさいだけだな……。四バカ……」

スタスタスタ...

店員「いらっしゃいませ」

一輝「シャワー室空いてますか?」

店員「はい、空いてますよ」


マリ「あはは……四バカだって」

みこと「……」


……


114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:19:48.71 ID:JIKGxwEno

―― 展望車


みこと「さくらさん達、スタッフさんは個室ですか?」

さくら「違うのよぉ。各都市で宿とってあるからそこで泊まるの。
    都市間だけ乗車させてもらってるのよぉ」


報瀬「……みこと、よく話できるね」

結月「さくらさん、良い人ですよ。それより、四バカってなんです?」

日向「大村が言ってたんだよな」

マリ「うん」

日向「栞奈、報瀬、ゆづ、キマリの四人をバカって言ってるんだよ」

結月「えぇ?」

マリ「なんだってー!?」

報瀬「なんで私が!」

栞奈「私、テンション上がると自分でもよく分からないこと言っちゃうんだよね」

マリ「私じゃないよ、日向ちゃんだよ!」

日向「ちがーうだろ!?」

報瀬「栞奈、結月、キマリ、日向の四人でしょ」

マリ「なんでよ! 私、さっき大人しくしてたのに!」

日向「いやいやいや、報瀬はさっきのリハーサルで思いっきりバカやってたから」

結月「さくらさん、私たち四バカですって!」

さくら「あら、結月ちゃん嬉しそうねぇ」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:20:42.88 ID:JIKGxwEno

みこと「……栞奈さんと結月さんは決定?」

日向「あと報瀬もな!」

報瀬「おかしいでしょ!」

マリ「それはこっちのセリフだよ! 日向ちゃんも入れて四人、はい決定!」

栞奈「まぁまぁ、そんなことでケンカしないの」

日向「ほとんどおまえのせいだろ!」

マリ「そうだよ! なんでナンパしてるの!」

報瀬「そうだそうだ!」

結月「そうだそうだー」

栞奈「なにぃ、今度はこっちに集中砲火かよぉ」

みこと「……」


一輝「こっちでも騒いでるのか……。五バカだったな……」


日向「……」

報瀬「……」

結月「……」

栞奈「決定しちゃったね」

マリ「……うん」

みこと「……」


……


116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:28:17.05 ID:JIKGxwEno

―― 岡山駅


マリ「わっ、見て! 面白い噴水があるよ!」

日向「おぉー、変なの〜!」

報瀬「……うん、変」

結月「なんだか腹が立ちますね、あの人……人のことをバカって言うなんて」

みこと「うん……!」

マリ「みこっちゃんが力強く同意した……珍しい」

日向「まぁ、そんな怒ることじゃないだろ。気にするな」

報瀬「また言われたら?」

日向「この黄金の右手で日向ちゃんパンチをお見舞いしてやる!」

マリ「それよりどうするの? 全然撮影してないけど」

結月「そうですよ。今日の夜には方向性決めておかないと」

日向「そうは言ってもなぁ……。
   報瀬が普段通りに喋ってくれないと話にならないんだよなぁ」

報瀬「カメラを止めればいい」

日向「バカ」

報瀬「ば、バカにバカって言う方がバカなんです!」

結月「なんですでにテンパっているんですか……」

みこと「……」

マリ「みこっちゃん、いい案ない?」

みこと「……カメラを他に向けて喋るとか?」

日向「ん?」

報瀬「どういうこと?」

みこと「日常会話だけ撮りたいなら、映像に映ってなくてもいいから」

日向「あぁー、なるほど」

マリ「どういうこと?」

日向「報瀬にカメラを向けるとテンパるから、映さなければいいわけよ」

結月「……そうですね。好評だった動画は私たちの姿、映ってませんから」

報瀬「ラジオみたいにするってこと?」

みこと「そうすると、臨場感? がないから……映像は車窓を撮るだけで」

マリ「おぉー、いいねいいね! それならルックス関係ないし!」

日向「メガトンコークスクリューヘビースマッシュ日向ちゃんパーンチ!」

ドスッ

マリ「あ痛ぁッ!?」

結月「そういう番組、どこかで見たような……」

日向「要約すると、カメラは車窓を映して、私たちは勝手に喋ってるだけってことだ」

報瀬「……それなら」

マリ「やってみよう!」


pipipi

みこと「……?」

117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:34:31.66 ID:JIKGxwEno

日向「行き詰りそうだったところにいい案出したな」

マリ「みこっちゃん、私たちのディレクターに決定〜!」

結月「勝手に決めないでください。……でも、それもいいかもしれませんね」

報瀬「別の視点があって、助かるかも」

マリ「って、あれ?」

日向「向こうで電話してる」



みこと「うん、今岡山に着いたところだよ。……うん」


マリ「ほぉー……」

結月「どうしたんですか、変な声出して」

日向「……あんな表情のみこと、初めてみた」

報瀬「……」


みこと「……うん、変な噴水があって」


マリ「ふぅむ……誰なんだろ?」

結月「楽しそうな表情ですね」

日向「これは……ひょっとして」ゴクリ

報瀬「ひょっとして?」

日向「相手は……お、男……なんじゃなかろうか」

マリ「え!?」

結月「と、とということは……!」

報瀬「お父さん?」

日向「おバカ!」

マリ「かかかか、彼氏さん!?」

結月「……な、なるほど、あり得ますね……年頃ですから」

報瀬「まだ早いでしょ!」

日向「静かにしろー、大声出すなー」

報瀬「い、いやだって……まだ中三でしょ?」

マリ「真実の愛に、歳は関係ないんだよ」

結月「なにを急に悟っているんですか」

日向「なんか急に大人に見えるな……みことのヤツ……」

結月「私たちもそういう年頃なんですけどね……、一応」

報瀬「わ、私は……別に……ねぇ、キマリ?」

マリ「……なんで私に振るの?」
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:36:42.19 ID:JIKGxwEno


みこと「……どうしたの?」

日向「い、いやぁ、別にぃ?」

報瀬「電話の相手、誰?」

日向「直球かよ!?」

マリ「私は分かってるからね。みこっちゃんのこと応援してる」

結月「母親ですか」

報瀬「わ、私はまだ早いと思う! り、理由があるなら今度連れてきなさい!」

日向「おとんか!」

みこと「お母さんを?」

日向「へ?」

マリ「ほへ?」

報瀬「電話の相手、お母さん?」

みこと「……うん」

マリ「……なんだ」

結月「そんなオチだろうと思いました」

みこと「?」

報瀬「ごめん。三バカが勝手に話をややこしくしてしまって」

日向「おぉい!」

マリ「報瀬ちゃんも動揺してたのに!」

結月「そうですよ、私たち四人で四バカじゃないですか!」

日向「誇って言うことじゃないぞ、ゆづ……」


……


119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:40:25.36 ID:JIKGxwEno

―― 1号客車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「結月ちゃんと日向ちゃんは?」

報瀬「結月は撮影で、日向は見学してる」

マリ「向こうの撮影は順調みたいだね」

みこと「結月さんのノリがいいからスムーズに進むってスタッフさんが」

マリ「気合入ってるもんね」

報瀬「……気になってるんだけど、結月が仕事に乗り気なのって珍しいんじゃない?」

みこと「そうなの?」

マリ「うーん、どうなんだろ? いつも仕事に関してははプロ意識持ってやってるから」

報瀬「それはそうなんだけど……」

マリ「でも、日向ちゃんも似たようなこと言ってた。
   一日車掌ってアイドルがやることじゃないのかーって」

報瀬「アイドルがやるものとは決まってないと思うけど」

みこと「一日署長なら聞いたことある。警察とか」

マリ「んー……確かに」

報瀬「キマリ、何も聞いてないの?」

マリ「特には……」

みこと「旅の話を聞いたって、キマリさん言ってたよ」

報瀬「旅の話?」

マリ「あぁ……そうだった。それが理由なのかな?」

報瀬「誰から?」

マリ「分からない。『旅の話を聞いて、やってみたいと思ったんです』ってだけ」

みこと「結月さんがキマリさんを誘ったのは何時……?」

マリ「え?」

みこと「誘った時はまだ、一日車掌をすること決まってなかった……?」

マリ「うーん……?」

報瀬「みことは何が気になってるの?」

みこと「キマリさん達が乗車しなかったら……結月さん、この仕事引き受けなかったみたいに思えて」

マリ「あぁ……うん……んんー?」

報瀬「キマリは頭使わなくていいから」

マリ「みこっちゃん、難しいこと言わないでよ〜」

みこと「……」

報瀬「あとで本人に聞いてみたら?」

みこと「……うん、そうする」

報瀬「みことはどうして、デネブに乗車したの?」

みこと「お父さんとお母さんに勧められて……」

マリ「可愛い子には旅をさせよって言うもんね!」


……


120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:45:29.56 ID:JIKGxwEno

―― 寝台車


ディレクター「はい、オッケー」

結月「ありがとうございました」

「いえいえ、インタビューなんて初めてだから緊張したけど……うまく出来たかな?」

結月「全然問題ありません。ちゃんと受け答えしてくれましたから、話も進めやすかったです」

「そっか〜、よかった〜」

ディレクター「逆に結月ちゃんがフォローしてもらってる感じだったね」

結月「う……」

「あはは、そうなんだ〜。でも、ちゃんと出来てよかったよ〜。それじゃ、私はこれで」

ディレクター「ありがとうございました〜」

結月「ありがとうございました!」


日向「……」


ディレクター「それじゃ、休憩挟んであと一人撮ろう」

スタッフ「はい、わかりました。それでは10分休憩でーす」


日向「狭い中でよくやるなー」

結月「あの、日向さん」

日向「なに?」

結月「暇なんですか?」

日向「そうだけど」

結月「キマリさん達の所へ行ってください」

日向「邪魔だからどっか行けって言うのか! 横暴だ! こんなこと許され――」

結月「ジーっとみられると、なんだかやりづらいんですよ」

日向「最後まで言わせろー。なんだよ、やり辛いって?」

結月「いつもは茶化してるような目で見てるじゃないですか。なんで今は真面目に見てるんです?」

日向「茶化すような目ってなんだ」

結月「含み笑いしてるっていうか」

日向「日向ちゃんスマイルをニヤついてるって言うのか、失礼な……!」

結月「いいですから、気になってしょうがないんですよ」

日向「ディレクターさんにもダメ出しされてたくらいだもんなぁ」

結月「もぉー……!」

日向「あはは、ごめんごめん。ちょっと気になっててさ」

結月「なにがです?」

日向「ゆづ、この仕事に積極的だよなぁ、と思って」

結月「……」

日向「そのミニスカートだって、本当は嫌だろ?」

結月「うぅ……今だって恥ずかしくて死にそうです」

日向「……」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:48:21.21 ID:JIKGxwEno

結月「この仕事を引き受けるかどうか迷っているとき、旅の話を聞いたんですよ」

日向「誰に?」

結月「飯山みらいさんに、です」

日向「飯山みらい……? 旅とは縁のなさそうな人だけど?」

結月「日向さん達から見ると、そう見えるんですね」

日向「?」

結月「本人と直接話をしてみて、共演させてもらって思ったんです。
   見識がある、見聞が広いなぁって」

日向「……」

結月「それに、みらいさん、20年前に私と同じことしてたんですよ」

日向「同じこと?」

結月「20年前に、同じように発車した列車があって」

日向「ヴェガに乗ってたってことか?」

結月「え、……知っているんですか?」

日向「知ってる……。へぇ……ふぅん……」

結月「……どうしたんですか?」

日向「飯山みらいと話をして、迷いは無くなった?」

結月「そうです」

日向「キマリを誘ったのは、新しい旅を始めるため?」

結月「……そうです」

日向「キマリというか……私たちだな」

結月「わざわざ言い直さないでください……!」

日向「よしっ、車掌さんと話してくる!」

テッテッテ

結月「え……!? 見ていかないんですかー?」

「見られるの嫌なんだろー?」

結月「……それはそれで釈然としないっていうか」

さくら「あら、年相応にわがままなのねぇ。結月ちゃん」

結月「う……、居たんですか……聞かなかったことにしてくださぃ……」

さくら「うふっ☆」


……


122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:49:06.55 ID:JIKGxwEno

―― 動力車


栞奈「こんなとこで何してんのよー、純情少年」

一輝「別に、なにも」

栞奈「車掌さん美人だもんねぇ、うんうん、分かる分かる」

一輝「何が分かるんだよ」

栞奈「車掌さんに用事があるふりして、会いにきただけなんでしょ?」

一輝「なんでだよ……。こじつけ酷いぞ」


日向「なにしてるんだ、こんなとこで?」


一輝「変な女に絡まれててな……助けてくれ」

栞奈「失礼なヤツ!」

日向「車掌さんは?」

一輝「居ないけど」

栞奈「だから、ガッカリしてるの、この少年は」

日向「じゃ、反対側だな。サンキュー」

テッテッテ

一輝「あぁ……行ってしまった」

栞奈「あらら、もう目映りしちゃったのー?」

一輝「鬱陶しいなお前……!」


……


123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:53:43.40 ID:JIKGxwEno

―― 1号客車


マリ「それでね、出てきたのがザーサイだったの」

みこと「……!」

報瀬「そんなことってあるんだ……?」


日向「……」


マリ「あ、日向ちゃん」

日向「ザーサイがどうしたって?」

マリ「ううん、なんでもないよ」

みこと「……あり得ない」

報瀬「絶対にね」

日向「ザーサイがどうしたって!?」

マリ「大したことじゃないから気にしないで〜」

みこと「キマリさんだから経験できた?」

報瀬「そういう考えもある……かな」

日向「お願い! ザーサイがどうしたのか教えてくれー!」


……




―― 3号客車


日向「たくあんじゃなくて……ザーサイ……くっだらない……」

マリ「えー? 大したことじゃないって言ったのにー?」

日向「いや、あそこまで引っ張られたら気になるって……」

みこと「和食屋でザーサイだよ」

報瀬「中華屋じゃないんだから、それはおかしいでしょ」

みこと「うん」

日向「お前たち、世間知らずにもほどがあるぞ」

マリ「ところで、どうして車掌さんを探してるの?」

日向「聞きたいことがあってさ」


……


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:55:40.67 ID:JIKGxwEno

―― 食堂車


日向「そういや、お腹空いたなー」

マリ「ちゃんとご飯食べてないよね」

みこと「食べる?」

報瀬「でも、もうすぐ大阪着くから」

日向「でもなぁ、食堂車のご飯も美味しいからなぁ」

マリ「どうしようか迷うね」

みこと「……」


店員「あのぉ、ちょっといいですか、玉木さん、三宅さん」


日向マリ「「 はい……? 」」

報瀬「?」

みこと「?」


店員「お願いと言いますか、やめてほしいことがありまして」

日向「……」

マリ「……」

報瀬「なにしたの、二人とも」

日向「な、なにしたっけ……?」

マリ「え、えっと……あれとか……これとか……」

みこと「思い当たる節あるんだよね」

店員「食器を片付けるのを止めていただきたいのです……」

報瀬「?」

日向「ダメでした?」

店員「私たちの仕事ですので……」

報瀬「そんなことしてたの?」

マリ「ついやっちゃうんだよね……。自分のことは自分でって感覚失くしたくなくて」

店員「えっと……しょ、少々お待ちください……!」

テッテッテ

報瀬「店側からしたら、困るかも。気持ちは分かるけど」

みこと「奥へ入っていったよ」

日向「ま、まさか……料理長呼びに行ったんじゃなかろうか」

マリ「ど、どうしよう? 逃げていいかな、日向ちゃん……?」

日向「私が行くから、キマリはここで待っててくれっ」ダッ

マリ「待ったぁー!」ガシッ

日向「嫌だっ、離せっ!」ジタバタ

マリ「私が先にっ」

日向「いいや私がっ」

ジタバタ

 ジタバタ
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 01:58:46.02 ID:JIKGxwEno

報瀬「誰か来たよ」

日向マリ「「 はっ!? 」」

「こっちとしては有難いことなんだけどさ、他のお客さんに影響与えちゃってるから」

日向マリ「「 はい、すいません 」」

「いや、謝ることじゃないんだけどね」

みこと「料理長さん?」

料理長「あぁ、ここを任されてるよ」

報瀬「暴れてた二人が大人しくなった」

料理長「自分のことは自分で、って気持ちはすごく大切だけど」

マリ「さっき言ってた影響って……どういう?」

料理長「他のお客さんたちも、ここはセルフでって間違えちゃってさ」

日向「……そういうことですか」

料理長「ふーむ、困ったね」

マリ「迷惑ですか?」

料理長「迷惑じゃない。君たちが間違えてるわけじゃないからね。
     ただ、他の人たちを戸惑わせていることが後々問題になりかねないから」

みこと「……」

料理長「もう一度言わせてもらうけど、私としては、下げ膳を止めて欲しい」

マリ「私としては自分のことは自分でやりたいです。旅の途中であるなら、なおさらです」

料理長「君も?」

日向「はい」

料理長「そっちの二人も?」

報瀬「はい」

みこと「……」コクリ

料理長「そうか、分かった。こっちとしては、もう言わない」

店員「いいんですか?」

料理長「習慣でやってるのなら、止められたけど。
     それ以上の意志があるみたいだから、止められないよ」

マリ「ありがとうございます、料理長!」

料理長「礼を言われることでもないって。それじゃ」

スタスタスタ...

店員「……と、言うわけなので……よろしくお願いします?」

日向「はい。……お願いします?」

マリ「ぷふっ、このやり取り変だ」

店員「アハハ、確かに」

日向「すいません、わがまま言って」

店員「それはもう言いっこなしにしましょう。それでは、お食事になさいますか?」

マリ「はい! デザートをいただこうかと思います!」

みこと「……」

報瀬「……」


……


126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:00:14.33 ID:JIKGxwEno

―― 厨房


料理長「なんだ、また来たのか」

車掌「だって、ここが一番落ち着くから」

料理長「ヴェガの車掌さんの真似は大変だよな」

車掌「こんなに難しいなんて思わなかったよ」

料理長「お客さんの前でそのくだけた態度見せるなよ?」

車掌「分かってます〜。イメージを壊しません〜」

料理長「それが壊してるんだって……。やるなら隙を見せないくらいの気持ちでだなぁ」

車掌「それより、なにかあったんですか? 菜々子さんが表に出るの、珍しいですよね」

料理長「名前で呼ぶなっつの。……あの子たちが、下げ膳してることは聞いてるな」

車掌「え、そうなんですか?」

料理長「知らなかったのか。まぁ、そういうわけだから、止めさせたかったんだよ」

車掌「……」

料理長「だけど、止められなかった」

車掌「どうしてですか……?」

料理長「固い意志を見せられたから。なにか目指してるものがあるんだろうね」
 
車掌「……」

料理長「ほら、サボってないでさっさと仕事に戻りな」

車掌「はーい」

料理長「くれぐれも幻滅させることのないように」

車掌「はい、それでは失礼いたします」キリ

料理長「はいはい」

車掌「あ、そういえば……」

料理長「?」

車掌「お客様から聞いたことがあります。
   『自分のこと自分でやるんだね、私も見習うよ』と」

料理長「……ということは、少なくとも悪い影響は与えていない……とみていいのか」

車掌「その時はお願いしますよ、菜々子さん」

料理長「分かってるって。だから、名前で呼ぶなっての」


……


127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:02:19.81 ID:JIKGxwEno

―― 食堂車


日向「展望車まで見てきたけど、車掌さん居なかった」

マリ「え、また神隠し?」

みこと「……」

報瀬「ねぇ、二人とも」

日向「?」

マリ「なに?」

報瀬「私たちが食器を片付けていることで影響が出てるって言ってたでしょ」

日向「……」

マリ「うん」

みこと「……?」

報瀬「それで、後々問題が出るかもしれないって」

日向「……言ってたな」

マリ「……」

みこと「でも、了承してくれたよ」

報瀬「そうだけど、それは――」

日向「後々に出る問題は、店員さんや料理長に流れていくってことだ」

マリ「あ……」

みこと「……」

報瀬「それを受け止めるって言ってくれた事、忘れないで」

マリ「うん……!」

日向「そうだな。中途半端なことは絶対に出来ないな」

みこと「……」

マリ「そうだ、出来ることはやろう!」

日向「……なんだろ、嫌な予感」


……


128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:03:00.05 ID:JIKGxwEno

―― 厨房


店員「りょーりちょ〜〜」

料理長「なんだよ、変な声出して……。やること山ほどあるんだから気合入れな」

店員「そうじゃなくって〜〜」

料理長「あっちにある人参の皮むきやって」

マリ「人参ですね! わっかりました!」

店員「手を止めて話を聞いてください〜〜」

料理長「こっちは忙しいんだから要点を――」

マリ「えっと、ピーラーはどこかな」

料理長「な、なに!?」


……


129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/14(火) 02:05:06.55 ID:JIKGxwEno

―― 2号客車


マリ「追い出された……」

日向「当たり前だ」

結月「なにがあったんです?」

報瀬「まぁ、いろいろと」

みこと「……」

マリ「ピーラーなんて使うなって怒られたよ。
   あったのに使うなって……それで追い出すなんて厳しいよね」

日向「そういう問題じゃない」

結月「ピーラー……?」

みこと「キマリさんが手伝いたいからって、厨房に入っていったから」

結月「あぁ……またそんな非常識なことを」

マリ「いつもやってるみたいに言わないでよっ」

報瀬「私たち、止めたよね」

マリ「手伝えることいっぱいあると思ったから……忙しそうだったし」

結月「撮影始めませんか?」

日向「そうだな、どこで撮ろうか」

報瀬「……明日にしない?」

みこと「報瀬さん、明日も同じこと言いそう」

報瀬「ぎくっ」

日向「お、報瀬のことよく分かってるじゃないか」

結月「本当ですね」

マリ「私の話終わらせないで!?」

栞奈「日向〜」

日向「ん?」

栞奈「車掌さんを探してたみたいだったけど」

日向「それが、見つからないんだよ」

栞奈「今、車掌室にいるよ」

日向「え、いつの間に……。でも、急いでる訳じゃないからいいや。ありがと」


……


130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:10:24.01 ID:TlaqlvlZo

―― 展望車


マリ「やっぱりここだよね」

日向「そうだな。じゃあ、さっそく撮る?」

報瀬「台本は? 台本……」

結月「そうですね、使うにしても没にするにしても、編集が決めることですし、撮っちゃいましょう」

栞奈「これってギャラは出るの?」

日向「出ないぞ?」

栞奈「ふぅん……」

マリ「前の旅の宣伝みたいなものだから」

みこと「……前?」

マリ「そう、南極のね」

みこと「それって……」

栞奈「ギャラが出ないってことは自由だよね、私が出てもいいんだよね?」

報瀬「じゃあ、お願いしてもいいかな?」

栞奈「喜んで!」

報瀬「よかった……」ホッ

マリ「ディレクターみこっちゃん、どうしたらいいかな?」

みこと「え?」

日向「段取りだよ」

みこと「どうして私がディレクターなの?」

マリ「ノリで」

結月「軽い気持ちでやってくれていいから」

みこと「えっと……最初から?」

マリ「そうだよ」

みこと「最初は紹介が良いと思う」

日向「そうだな。私らのこと知ってる人が見てるとは限らないからな」

結月「では、この動画の流れも紹介しましょう」

マリ「じゃ、並ぼ並ぼ」

栞奈「るんるん♪」

結月「日向さん、この位置でいいですか?」

日向「あー、そこの一般人さん、出てくれませんかねー」

栞奈「カメラマンからの指示だよ、キマリ」

日向「あんただよ! なんで真ん中にいるんだよ! 報瀬、入れ替わって!」

栞奈報瀬「「 話が違う!! 」」

結月「二人が勝手に決めた話ですよね……」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:12:59.93 ID:TlaqlvlZo

マリ「のんびりしてると大阪着いちゃうよ」

みこと「……はい、スタート」

日向「まだ準備出来てないのにスタート入ったぞ!」

結月「もうちょっと時間をちょうだい?」

みこと「……」

報瀬「なんでこうなるんだろ……」

栞奈「私を使わない気だな……。こうなったら野次飛ばしてやろうか」

日向「や め ろ !」


……




結月「――そういうわけで、前以上に中身のないグダグダな内容になると思いますが、
   それでも楽しんでいただければ嬉しいです」

マリ「えへへ」

報瀬「よ、よろしく……オニガシマす……」


日向「……」ソワソワ


栞奈「……」

みこと「……オッケー?」

日向「よ、よし、オッケーだな」

マリ「報瀬ちゃん、鬼が島すって……」

報瀬「間違えたの! も、もう一回……やるのぉ?」

日向「なんでやり直しの要求しながら嫌がってるんだよ」

報瀬「だ、だって……」

結月「というか、日向さん……集中してませんでしたよね」

日向「そ、そうだっけ?」

マリ「うん、なんかそわそわしてた」

日向「か、栞奈がいつ間に入って来るかって……気が気じゃなくてさ……」

栞奈「そこらへんは弁えてるから」

日向「……」

マリ「あとは大阪到着まで観光地を吟味しようか」

報瀬「もう終わり?」

結月「そうですね、今日の分はこれでいいかと。あとは編集に任せましょう」

日向「じゃあ、観光地行きたいところを挙げていこ――」

みこと「それを撮ったらいいと思う」

マリ「……」

結月「……」

報瀬「……」

日向「……」

みこと「え?」

栞奈「いやぁ、見かけによらず仕事熱心なディレクターだ」

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:14:35.47 ID:TlaqlvlZo

……




「異人館でしょ、通天閣でしょ、海遊館でしょ、万博記念公園、あと通天閣に梅田空中庭園も行きたい」

「そんなに周れますかね」

「同じ場所二回行くの?」

「そうだ、忘れちゃいけないのがハーバーランド」

「無理ですよ、そんな数を観光なんて……24時間停車なんですから」

「大阪城は?」

「頑張れば行けるよ、頑張れば」

「また無計画ですね……観光地に着いてもちゃんと観て回れなければ意味が無いです」

「通天閣一回にして、大阪城かアメリカ村行きたい」

「そうだね、行くだけじゃなくて、名物も食べたい!」

「私、お好み焼き食べたいんですよね」

「ねぇ、大阪城……」


日向「……報瀬が相手にされてないっぽいんだけど」

栞奈「ぽい、じゃなくて、相手されてないでしょ」

みこと「声だけで分かるのかな」

日向「それが結構分かるみたいで、コメントも反応あるんだよな」

みこと「……3人とも特徴ある声してるから?」

日向「そうそう、そういうこと」

栞奈「私も観光の準備してこようかな」

日向「行くのか?」

栞奈「うん、それじゃーね〜」

スタスタスタ...

 ガタンゴトン


日向「もう着くな……私らも準備するか」

みこと「……」


……


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:28:11.23 ID:TlaqlvlZo

―― 大阪駅


シュタッ

マリ「着いた! 大阪!!」バッ

報瀬「ちょっとキマリ、そこに居ると邪魔」

マリ「はい、すいません」

日向「あっつ!!」

結月「うへぇ……」

みこと「午前中から30度超えてるって」

マリ「今だけ雨降らないかな」

日向「そんな都合のいいこと起こるわけないだろ?」

マリ「そうだけどぉ」

結月「みなさん、すぐに観光行きますか?」

報瀬「大阪城行ってくる」

日向「そんなに行きたいのかよ……こう言っちゃなんだけど、期待しすぎないように」

報瀬「?」

みこと「結月さんは、仕事?」

結月「うん……」

マリ「残念だよね」

結月「後で合流できそうなら電話しますね」

マリ「結月ちゃん、海遊館に行きたいんだよね」

結月「はい」

マリ「オッケー。そこに行けるようにしとくね」

日向「うーん……私もゆづと一緒に行くことにするよ」

報瀬「どうして?」

日向「ゆづを一人に……しておけないだろ……!」

結月「暑いからですよね」

日向「その通り! 正解者には日向ちゃんポイントが10くらい入りまーす!」

みこと「ポイント制なの?」

日向「そうだぞ、だから100ポイント溜まるまで頑張れ!」

報瀬「100ポイント溜まったらどうなるの?」

日向「考えてないけど、なにか贈呈しようと思う。肩たたき券とか」

マリ「いらないね」

一輝「採点の基準は?」

マリ「あ、食いついた」

日向「その時の私の気持ちで変わる」

一輝「気分次第かよ」

スタスタスタ...

結月「言うだけ言って去っていきましたね」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/15(水) 23:29:51.63 ID:TlaqlvlZo

日向「ゆづ、仕事はいつ終わりそう?」

結月「夕方くらいには。大阪駅の場面撮るだけですから」

報瀬「キマリとみことはどうする?」

マリ「うーん、どうしようかな」

日向「みことも私たちと夕方から行動しよう。熱中症が怖いからな」

みこと「……うん」

マリ「時間もったいないから、私は報瀬ちゃんと行くよ」

報瀬「うん」

栞奈「やぁやぁ、みんなは観光どこ行くの〜?」

マリ「大阪城だよ」

栞奈「そっか。私はまず通天閣に行ってくるよ。それじゃーね」フリフリ

スタスタスタ...

マリ「それじゃーねー」

みこと「私も、報瀬さんと一緒に」

日向「オッケー。ちゃんと水分補給しとけよー?」

みこと「うん」

報瀬「それじゃ、行こうか」

マリ「うん! レッツゴー!」

結月「それでは、また後で」

日向「うーん……やっぱり――」

結月「日向さん、夕方から一緒に行動するんですよね」

日向「はい」


……


135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:47:14.22 ID:TlaqlvlZo

―― 夕方・海遊館


日向「おーい、こっちこっち」

結月「……なんだか、元気ありませんね」


マリ「……」

報瀬「……」

みこと「……」


日向「一体どうした?」

マリ「報瀬ちゃんが……」

結月「どうかしたんですか?」

報瀬「どうして天守閣にあんなもの……もう城じゃないでしょあれ」

みこと「同じことずっと言ってる」

日向「報瀬はしつこいからな」

マリ「シロナガスクジラ楽しみだね、結月ちゃん!」

結月「はい?」

マリ「ん?」

結月「……すいません、なんて言いました?」

マリ「シロナ……ぁ……ェエザメ!」

報瀬「途中で気付いたみたい」

マリ「ィンェエザメ……そう、ジンベエザメ!」

結月「見苦しい言い直しですね」

マリ「頭の中で大きな生き物が泳いでいたから間違えたんだよー」

日向「だったら言い直さないで間違えたって言えばいいだろ」

マリ「結果的には間違ってない!」ドン

みこと「沖縄の水族館じゃないの?」

報瀬「なにが?」

みこと「ジンベイザメ」

マリ「ジンベエだよ」

日向「どっちにもいるぞ」

みこと「……そうなんだ」
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:48:40.06 ID:TlaqlvlZo

結月「美ら海水族館の方は、数頭泳いでいるそうですね」

報瀬「迫力ありそう」

マリ「どうせならそっち行こうよ」

日向「酷いこと言っていいか?」

マリ「ふぇぇ、言わないで〜」

日向「行けばいいだろ!!」

マリ「言わないでって言ったのに!」

日向「言わずにはいられなかった……許せ」

結月「あ、エリアマップがありますよ」

日向「日本……モンタレー……世界の生き物が居るのか。……あ」

マリ「ふぅん……」

報瀬「南極大陸……」

結月「へぇ、そういうのまであるんですね」

みこと「……」

日向「どれ……」

マリ「どのくらいのものか……」

報瀬「見に行こうか……」

ザッザッザ


みこと「……顔つき替わった」

結月「本場を知ってるからってすごい勝ち誇った顔……」


……


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/15(水) 23:52:11.79 ID:TlaqlvlZo

―― 南極大陸エリア


マリ「いいんじゃないかな、南極の雰囲気あると思うよ」

日向「あぁ、悪くないね」

みこと「ペンギンがいる」

報瀬「ふんっ……ふんー! やっぱりカワイイ!」

結月「って! まっすぐここに来ることないじゃないですか!」

みこと「木を見て森を見ず」

マリ「周りは海だけどね!」

日向「お、上手いね! 座布団一枚!」

結月「さっきまでの上から目線はなんだったんですか」

マリ「本物を知っている身としてはね……」

日向「人が創った南極大陸を見ておこうと思うものさ」

結月「うわー……人ってこうも悟ってしまうものなんですねぇ……」

マリ「冗談だよ、冗談。ちょっと言ってみたかっただけー」

報瀬「ふんーっ、ぺんッぎんっ」

みこと「……っ」

日向「報瀬、みことが引いてるから、ちょっと抑えような……?」


……




―― 写真撮影エリア


みこと「ペンギンと撮影って。報瀬さん、どう?」

報瀬「フッ」

みこと「鼻で笑った」

日向「本物と撮った私たちに、お金を払えですって、キマリさん」

マリ「その必要はないですわね」

結月「まだその目線ですか……」

日向「セレブ風に言ってみたですのよ」

マリ「お土産エリアに行こう? ぬいぐるみがあるって」

みこと「報瀬さん、買う?」

報瀬「私にはペンギンのぬいぐるみがあるから、別にいい」

マリ「あ! 報瀬ちゃん、いつ返してくれるの!?」


……


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:22:56.66 ID:9yYPGCGzo

―― 大阪駅


結月「可愛いですよね、ジンベエザメのぬいぐるみ♪」

日向「いまのゆづが一番可愛いよ」

結月「む……なんですか、今の言い方」

日向「なんで怒る!?」

報瀬「……今日はもう寝よう」

マリ「まだ早いよー」

日向「あれ、みことはどこ行った?」

マリ「たまに居なくなるよね」


「うーん……やっぱり君とは会ったことある気がする」

みこと「そうですか?」


マリ「あ……」

日向「ナンパされてるぞ!」

報瀬「えっ!?」

結月「ど、どうしますか!?」

日向「助けるに決まってるだろ!」

ピッピッピ

日向「報瀬、警察に連絡! 番号は打っておいたから、はいこれ!」ポイッ

報瀬「ゑッ!?」

日向「私はみことの安全を確保する!」

タッタッタ

報瀬「え、えっと、もしもし!」

ピンポンパンポーン

『八月三日の大阪府の天気は――』

報瀬「て、天気……!?」

マリ「……」


...タッタッタ

日向「ちょっと待ったー! まーたみことをナンパですかー!?」

秋槻「……次言ったら無視するからね」

日向「にゃはは」

みこと「さっき着いたって」

秋槻「一人旅は遠く感じたよ」

日向「ふぅん、私たちはあっという間だったけどな」

みこと「うん」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:31:06.90 ID:9yYPGCGzo

栞奈「おいっすー、何してんの、日向〜」


日向「特に何もしてないぞ〜」

栞奈「面白そうなこと言ってたけど〜」

秋槻「ひょっとして、デネブの新しい乗客……?」

栞奈「あれ、どうして分かったんですか?」

秋槻「俺は始発からの乗客で、彼女たちと親しそうだから」

栞奈「ふぅん」

日向「暇をつぶしてたとこだ」

秋槻「あのね、暇つぶしで俺の人生も潰そうとしないでね」

日向「あ、いいツッコミ!」

秋槻「冗談で言ってるんじゃないんだよ? さっきの周りの目って気づいてないでしょ」

日向「あれ、結構本気で注意されてる?」

栞奈「……ひどい、これでも私……一生懸命だったのにっ」

日向「くっ、大人って……私たちをいつも子供扱いしてっ」


「えー、なにあの人……」

「高校生だろ、あの子たち……」


みこと「注目されてるよ」

秋槻「これはいけないな……。俺は先に列車に戻ってるから」

栞奈日向「「 冗談冗談 」」

秋槻「だから、洒落にならないって……。崖っぷちにいる気分なんだから……」

一輝「他人の人生で遊ぶなよな」

みこと「いたんだ」

一輝「居ちゃ悪いかよ」

秋槻「……」

栞奈「顔色悪いよね」

日向「もうやめよう」

秋槻「そうしてくれると本当に助かる」

マリ「あ、あの……お兄さ――」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:32:46.93 ID:9yYPGCGzo


報瀬「ちょっと、日向!」

日向「ん?」

報瀬「私のこと弄んだでしょ!」

日向「……」ススッ

報瀬「なんでそんなことするの!? 私心配してたんだから!!」

日向「……」スススッ

報瀬「もう信じられない! 次こんなことしたら絶対に許さないから!」

秋槻「ちょっとちょっと、移動して俺が言われてるように仕向けないでくれる?」

日向「ばれたか」


「今度はあの子まで……?」

「あの人、何者なんだよ……」

ざわざわ

 ざわざわ


秋槻「……」

栞奈「あっはっは!」

一輝「笑いごとじゃないんだって……秋槻さんの顔色がどんどん白く……」


結月「ひ、日向さんっ、連れてきましたよっ!」


日向「え?」


駅員「誰だー! 中学生を軟派する奴ァーー!」


日向「え……」

栞奈「あっちゃぁ……」

一輝「……マジで洒落にならん……」

報瀬「え、え? なに?」

みこと「……」

マリ「結月ちゃん……」

結月「え、あれ? なんですか、この空気……?」


駅員「お前かぁ!!」

秋槻「――」


……


141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:34:49.15 ID:9yYPGCGzo

―― 駅事務室


駅員「まったく、限度ってものがあるでしょう」

秋槻「すいませんでした」

駅員「なにやってるんだかなぁ……」

秋槻「すいません……」

車掌「誠に申し訳ありませんでした」

駅員「車掌さんが出てくることはないでしょうに」

車掌「私の大切なお客様ですから……」

駅員「……」

秋槻「お騒がせして申し訳ありませんでした」ペコリ

駅員「もういいから、帰った帰った」

車掌「それでは、失礼します」

秋槻「……失礼します」


駅員「人騒がせな人たちだ……」ハァ


ガチャ


車掌「……あら」

秋槻「?」


マリ「お、お兄さん……」ウルウル

日向報瀬結月栞奈「「「「「 ごめんなさい!! 」」」」

みこと「ごめんなさい」ペコリ

一輝「……」

秋槻「い、いいから、頭上げて……。車掌さんのおかげでお咎め無しになったから」
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:35:48.39 ID:9yYPGCGzo

日向「私が悪いんです……調子に乗ってしまって」

報瀬「そうです、全面的に日向が悪いんです」

結月「本当にそうです。悪ノリばっかりして」

日向「う……っ」グサッ

マリ「ううん、元はと言えば私が……私が……? 私、なにしたっけ?」

みこと「おいて行ったよ」

マリ「あ、そうだった」ウッカリ

秋槻「あぁ、4人揃ったんだね……」

日向「……?」

報瀬「それで、誰なの、この人?」

栞奈「うん、誰?」

マリ「旅仲間だよ」

一輝「おまえ、初対面なのに悪ノリに付き合ったのかよ」

栞奈「面白そうだったから、つい、ね」

車掌「……」

日向「ん〜……?」

みこと「日向さん、どうしたの?」

日向「なんだろ、なにかが引っかかるな……」

秋槻「ふぅ……長い一日だった……」シミジミ


……



143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:38:54.47 ID:9yYPGCGzo

―― デネブ


車掌「それでは、私はこれで」

秋槻「すいませんでした。それと引受人になってくれて、ありがとうございました」

車掌「これっきりにしてくださいね」メッ

秋槻「……はい」

日向報瀬結月「「「 ごめんなさい 」」」

栞奈「すいませんでしたぁ!」

車掌「後で思い起こして、この件が笑い話になるような旅にしていただければと思います」

マリ「頑張ります!」

車掌「ふふ、それでは」

スタスタスタ...

みこと「怒られなかったね」

一輝「懐が深いな」

結月「メッ、されましたよ」

栞奈「されたね〜。一輝はされなかったけど……」

一輝「される理由がないだろ。残念そうな目で見るな」

日向「……」

秋槻「ふぅ……。俺はもう個室戻るから、それじゃ」

マリ「あ、あの……」

秋槻「……?」

マリ「すいませんでした!」ペコリ

秋槻「もう終わった話だから、気にしないで」

マリ「今回のことじゃなくて……私のせいで乗り遅れちゃったこと……」

秋槻「あぁ……うん」

マリ「私だけ乗ってしまって……」

秋槻「俺は大人だからさ、これくらいなんともないよ。……気にしないで」

マリ「……」

日向「……ふぅむ」

報瀬「私たちも、もう寝る?」

結月「でも、まだ早くありません?」

栞奈「私、列車に泊まるの初めてなんだよね〜」ワクワク

一輝「そういえば、栞奈って、今日の朝に乗車したんだよな……」

栞奈「そうだけど、なによ?」

一輝「……いや、別に」

みこと「馴染むの早いよね」

栞奈「そう? 始発から乗ってるように感じる?」

みこと「…………」

栞奈「どうして黙っちゃうの?」

みこと「言おうとしてたこと言われたから……」

栞奈「あっはっは、そっかそっか〜」
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:40:01.89 ID:9yYPGCGzo

報瀬「私たちより馴染んでいるよね」

結月「そうですね……」

日向「あ、分かった……!」

マリ「な、なにが分かったの?」

秋槻「……去るタイミング失ってたけど、それじゃあね」

日向「待って待って、秋槻さん!」

秋槻「え?」

日向「聞きたいことがあるんだけど、いいですか?」

秋槻「うん、……いいけど」

日向「んふっふ〜、僕に任せれば間違いないんだ。謎なんて簡単に紐解ける」

報瀬「なによ、そのキャラ」

結月「……私、知ってます」

栞奈「私も知ってる〜。探偵ドラマに出てくるヤツだよね」

一輝「あぁ、それか……。俺も知ってる」

マリ「わ、ワタシモシッテル」

結月「その動揺した声……キマリさん、知りませんね?」

マリ「探偵ドラマの主人公でしょ? 私たちの世代じゃ知らないのは時代遅れだよね」

みこと「主人公のライバルだよ。とても嫌な人物」

マリ「……そうそう、そっちそっち」

秋槻「それで……なにを知ってるの?」

日向「ここじゃなんだから、展望車へ。……くっくっく、あーっはっはっは〜」

報瀬「何がしたいの、日向は?」

マリ結月「「 さぁ? 」」


……


145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:42:13.14 ID:9yYPGCGzo

―― 展望車


日向「えー、謎が解けて……いや、謎って言うか、
   引っかかりが取れてテンション上がってしまった私、三宅日向ですが」

マリ「……」

日向「なぜかこうして、音頭をとっている次第で……、誠に遺憾であります」

マリ「なんで?」

日向「秋槻さんに話し聞きたかっただけだぞ、なんでみんな集まってるんだよ」

栞奈「だって、興味あるし。面白そうだし」

一輝「気になるな」

結月「そうですね、あのテンションの日向さんは中々見られませんでしたから」

報瀬「同じく」

みこと「…………」

秋槻「俺が一番気になるんだけどね」

日向「それはいいよ、だけどなんでお菓子やお飲み物もあるんだよ。パーティーか!」

マリ「そうだよ、これは、第一回、デネブに集まりし者たちの集い!」

結月「なんの決起集会ですか」

みこと「意味が被ってるよ」

栞奈「早く始めてよ、ポテチ開けちゃうよ?」

日向「じゃ、カンパーイ」

結月「あっさりですか!」

一同「「「 かんぱーい 」」」

結月「あ、か、かんぱーい」

報瀬「ごくごく……ふぅぅ」

栞奈「お、いい飲みっぷりだね!」

報瀬「買い出しで喉乾いてたから」

みこと「報瀬さん、オレンジとアップルがあるよ」

報瀬「アップルで」

みこと「はい、どうぞ」

報瀬「ありがとう」

マリ「お兄さん、お詫びの品です。お納めください」

秋槻「うん、ありがとう」

マリ「ささ、ぐいっと」

秋槻「え……」

マリ「?」

秋槻「あ、えっと……後で飲むから」

マリ「温くなると美味しくないですよ?」

秋槻「うん……んん……そうだね……」

マリ「ささ、ぐぃぃっと、一気に」

秋槻「…………」

一輝「あんな甘そうなの、一気飲みしろってか……」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:43:56.63 ID:9yYPGCGzo

栞奈「それにしても、さっきの似てなかったね〜」

報瀬「日向の物まね?」

栞奈「あーっはっはっは、こうでしょ」

結月「似てないです」

秋槻「もっと粘着的に笑うんじゃないかな」

栞奈「んふふ、アーッハッハッハ」

結月日向「「 似てる!! 」」

みこと「うん、そっくり」

栞奈「私、目覚めちゃったかな……」

一輝「モノマネ師に?」

栞奈「名役者にだよ!!」

秋槻「あはは、二人の息ぴったりだね」

栞奈「私たち、漫才の星になるって誓いましたから。な、相棒!」

一輝「バンドで武道館目指すんじゃなかったのかよ……?」

栞奈「方向性の違いで解散だバカモンー!」

みこと「方向が全然違う」

秋槻「あはは」

日向「いいぞいいぞ、もっとやれー」モグモグ

マリ「たこ焼き味ポテチって、想像通りの味だね」

結月「そうですね……もうちょっと冒険心のあるもの買えばよかったです」

日向「いや、美味しいだろこれ。無理に冒険しても後悔するだけだぞ。食べのに関しては」

みこと「うん」

報瀬「話はどうなったの?」

日向「おっと、忘れてた」

栞奈「一輝が参加するのって珍しいよね」

一輝「そうか?」

栞奈「個室に戻って、一人寂しく眠りに就いてる頃でしょ?」

一輝「昨日もこうやって集まってたけどな」

栞奈「へぇ〜、こんな宴会、毎晩やってるんだ? いいねいいね、明日も参加する!」

結月「そうなんですか?」

マリ「昨日……あったんだ、日向ちゃん」

日向「私は知らないな」

みこと「……」

一輝「明日はお前ひとり参加な。盛り上がれよ」

栞奈「意味のない嘘吐くな!! 誰が一人で騒ぐか!」

一輝「おまえが俺を根暗みたいに言うからだろ……!」

栞奈「なんだとぉ……?」

報瀬「そこの漫才コンビ、静かに」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:46:53.16 ID:9yYPGCGzo

日向「秋槻さん、私たちのこと知ってたでしょ?」

秋槻「え?」

日向「私、キマリ、報瀬、ゆづ、この4人のこと」

マリ「ん?」

報瀬「……?」

結月「……」

みこと「……」

栞奈「何の話?」

一輝「さぁな」

秋槻「……どうしてそう思うの?」

日向「最初に、キマリは4人で乗車するって言ったんだけど、そこにみことは入ってなかったでしょ」

秋槻「一緒に行動してなかったからね」

日向「確かに……。私とキマリが一緒で、みことだけ別行動って変だよなぁ」

みこと「……」

秋槻「…………」

栞奈「あれあれ、秋槻さん……顔色が悪いですね」

秋槻「……はい、知っていました」

栞奈「ふふ、犯人は認めた。これで事件解決だ」

日向「って、おい! 勝手に話終わらせるなよ!」

報瀬「事件だったの?」

マリ「……多分」

結月「知ってたってことは……あの『南極チャレンジ』のことですか?」

秋槻「うん、それを観てたから」

みこと「――!」

報瀬「ま、まだ配信されてるの……?」

結月「そうですよ。そんなに時間経ってませんからね」

マリ「ずっと残るんじゃない?」

報瀬「」

一輝「真っ白になったぞ」

栞奈「なに、そのなんとかチャレンジって」

みこと「……」

結月「私たち、4人は南極行ったんです。その時にレポートもしてたんですよね」

マリ「その動画が配信されてるんだよ」

日向「私が次に引っかかったのは、3人目が乗るって時、秋槻さんは『誰が乗るの』って聞いてきた。
   まるで『どっちが乗るの』って言ってるようだったから気になったんだ」

マリ「まだ推理パートやってる……」

栞奈「検索したら出てくる?」

結月「はい、出てきますよ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:48:46.04 ID:9yYPGCGzo

栞奈「えーっと、南極チャレンジ……っと」ポチポチ

報瀬「あ、ちょっと貸して?」

栞奈「え、うん……動画を出してくれるんだ?」

報瀬「バッテリーを取ってしまえば……!」

みこと「……」

報瀬「あ、ダメだ! 一体型で取れない! 使えてしまう!!」

栞奈「はい、返してねー」

一輝「出てきた。へぇ、結構あるな」

報瀬「むんっ」バシッ

一輝「あ」

コロンコロン...

一輝「ちょっ……なにを!?」

報瀬「あ、ごめん。つい」

一輝「ついってなんですか!」

栞奈「ん? なんで敬語?」

みこと「……私のじゃ、観れない」

結月「みこと、今時珍しいよね。通話だけなんて」

みこと「他の機能、要らないって思ってたから」

マリ「みこっちゃんらしいね」

みこと「……」

マリ「私の貸してあげ――」

報瀬「駄目だって言ってるでしょ、没収!」スッ

マリ「え!?」

報瀬「ほら、持ってきちゃダメでしょ」スッ

栞奈「そんな……」

一輝「良かった……、傷は付いてない」

報瀬「ここをどこだと思ってるの」スッ

一輝「そんなバカな……」

報瀬「結月も出して」

結月「……」スッ

報瀬「まったく、各自、旅が終わったら取りに来るように」

結月「学校ですか」

日向「そして、私たちに馴染んでいる栞奈を見ても4人目だとは思わなかった。
   報瀬を見て初めて『4人揃った』と、秋槻さんは言ったんですよ!」

秋槻「……うん」

みこと「……」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:50:25.67 ID:9yYPGCGzo

日向「ふぅ……。これで事件は解決……ん?」

報瀬「どうしよう、これ」

日向「なんで報瀬に電話が集まってるんだ?」

マリ「取り上げられた」

秋槻「……俺は、仕事があるから渡せないけど」

報瀬「……」

一輝「電話鳴ったら対応お願いしますね」

栞奈「……なんで、報瀬にだけ敬語?」

結月「私のは鳴ったら持ってきてください。要件聞いてくれればそれでいいですけど」

栞奈「鳴ったら、私のフリしてくれればそれでいいよ」

日向「事件性を疑われるぞ」

報瀬「通信を禁止に設定できませんか?」

秋槻「出来るだろうけど、肉親じゃないと許可できないよ」

報瀬「何か他にいい方法があるはず」

日向「諦めろよ……」

マリ「返して、報瀬ちゃん〜」

みこと「……」スッ

マリ「なんで差し出したの!? 必要ないよね?」

みこと「なんとなく……」

結月「仲間はずれが嫌なんだよね」

みこと「……」

結月「無反応……」

日向「無言の肯定ってやつだぞ、ゆづ」

栞奈「ふふふ、楽しいね、デネブ」

一輝「……まぁ、退屈はしないかな」

秋槻「君、本当に馴染むの早いよね」

栞奈「これが私の取り柄なんです」フフン

マリ「今日の朝だよね、栞奈ちゃんに出会ったの」

結月「そうなんですよね……すごい能力です」

報瀬「……」

日向「よーし、それじゃ改めて、デネブに集いし8人の自己紹介からいってみよー!」

栞奈「いぇーい!」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/29(水) 12:52:05.11 ID:9yYPGCGzo

日向「はい、三宅日向です! 乗車した理由は、お仕事の為です!
   でも観光がメインになります、よろしくお願いします!」

結月「仕事そっちのけで観光行くって宣言しましたね」

一輝「大村一輝です。高2です」

栞奈「つまらん! 次!」

結月「白石結月です。一日車掌しています」

栞奈「かわいい! 次!」

報瀬「小淵沢報瀬です。騙されて乗りました」

栞奈「あれは笑った! 次!」

秋槻みこと「「 えっと 」」

栞奈「被った! 次!」

日向「なんでだよ、言わせろよ!」

マリ「玉木マリです。キマリって呼んでください。趣味は――」

栞奈「鳥羽栞奈です」キリ

一輝「バカンナって呼んでください」

栞奈「うらー! タイガートルネードチョォォップ!!」

ドスッ

一輝「いってッ」

マリ「私の趣味、まだ言ってない……」

日向「おー、すごーいな」

結月「なにがです?」

日向「ほら、外見てみろよ。ここ、大阪駅のホームなんだよ」

報瀬「そういえば……、人いないから忘れてしまうよね」

秋槻「駅の端っこに停車しているからね、デネブは」

日向「ホームに停車している列車でこうやって宴会してるって凄いんじゃないか?」

マリ「確かに! それで、私の趣味は――」

みこと「3日前には知らなかった人たちと……」

日向「そうそう、そうなんだよ。私ら他人だったんだから」

結月「すぐそこでは日常があるんですよね」

日向「そう、ここだけが特別な空間で、非日常」

栞奈「それって……凄いことだよね! 駅のホームで宴会してるって!」

報瀬「だから、その話をしているの」

栞奈「すいません。話途中から聞いていたもので……」

マリ「それでね、私の趣味は――」

一輝「……」

秋槻「……」


……


151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:35:40.30 ID:LlWIaXwHo

―― 一時間後


栞奈「んっふっふ。僕の言うとおりにしていれば間違いないんだ。
    犯人逮捕に協力してくれるね?」

結月「そんなことで犯人は救われない」

栞奈「結月ちゃんさ、もうちょっと心込めて言ってみようか? 面倒くさがってない?」

結月「そんなことは」

一輝「本職の人にダメ出しするなよ」

マリ「へぇ〜、その探偵ドラマって原作があるんだ?」

報瀬「私も知らなかった」

みこと「うん、原作の方が私は好き」

秋槻「はは、大ファンみたいだね」

みこと「うん。一番最初のファンだから」

マリ「ファンクラブがあるんだね。
   作家さんにそういうのがあるなんて珍しいよね」

みこと「ないよ?」

マリ「みこっちゃん、ファンクラブ会員ナンバー1ってことじゃないの?」

みこと「違うよ?」

マリ「?」

みこと「?」

報瀬「日向が言ってた凸凹会話だ……」

秋槻「空中庭園にも行ってたんだ?」

日向「下から眺めただけだけどね……。誰かさんが『死んでも嫌ですッ』って言うから〜」

秋槻「ふぅん……? 誰だろ」

日向「あれ、似てなかったかな」

結月「本当に誰なんですかね……」ジー


日向「え、えー……、盛り上がっているところ申し訳ありませんが。
    これ以上、ここを使用していると車掌さんに迷惑かけそうなのでお開きにしたいと思います」


栞奈「えぇい、車掌さんがなんでぇーい! ジュースもっと持ってこーい!」

日向「さっき、迷惑かけたの忘れたのか?」

栞奈「あ、……忘れていました」

日向「それじゃ、短い間だろうとは思うけど、旅の間よろしくーってことで」

マリ「よろしくね、栞奈ちゃん、大村君、お兄さん、みこっちゃん!」

みこと「うん」

秋槻「よろしくね」

一輝「……よろしく」

栞奈「この出会いは、やっぱり運命だったんだね」

結月「まだなにも起こっていないのに結論付けるのが早いですね」

報瀬「……」
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:38:40.78 ID:LlWIaXwHo

秋槻「やっぱり、走ってでも乗ればよかったかな……」

日向「……」

マリ「もちろんですよ。駅と駅の一区間だけですけど、その間にいろんなことあるんですから!」

結月「話に聞くと、キマリさんのせいなのに……」

マリ「うぅ……そうだったね」

日向「……」

報瀬「どうしたの、日向?」

日向「え、いや……?」

報瀬「急に黙るから……何考えていたの?」

日向「いや……。秋槻さんがさ」

秋槻「え?」

日向「列車が出発するのに、歩いてたなって思って」

栞奈「?」

みこと「どういうこと?」

一輝「間に合わないから、諦めたってことですよね」

秋槻「……うん」

日向「そうだよな。……うん、なにが気になってるのか自分でも分からないや」

マリ「なにそれ〜」

結月「……」

報瀬「多分、私にも分かる気がする」

日向「そうなの?」

報瀬「今日の朝、キマリと栞奈は全力で走って、デネブに乗車した」

栞奈「……」

マリ「そうだね……。日向ちゃんとみこっちゃんも巻き込んじゃったけど」

報瀬「秋槻さんがどうこう、じゃないです」

秋槻「……」コクリ

報瀬「大人だから、必死になる必要はないってことじゃないかなって」

日向「……」

秋槻「必死になってなかった、ってこと……だね」

報瀬「さっきも言いましたけど、秋槻さんが――」

秋槻「うん、分かってる。ありがと」

結月「私たち、必死で一生懸命な大人を見てますからね。
   だから、日向さんが思うところがあるのも分かる気がします……」

みこと「……」

一輝「……」

栞奈「……」

日向「あ、ごめん! なんか変なこと言って!」

秋槻「……いや、気にしないで」

日向「……って、言っても……空気が……あはは」

報瀬「……私も……ごめんなさい」

秋槻「……」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:40:15.92 ID:LlWIaXwHo

マリ「私たちが経験したあの時間はみんなが一生懸命じゃないと生きていけない世界だった」

みこと「……」

マリ「私たちが経験しているこの時間はみんなが一生懸命じゃないと楽しめない世界だ」

秋槻「……」

マリ「そういうことだよね、日向ちゃん」

日向「う、うん……?」

栞奈「深いなぁ、良いこと言うね、キマリ」

マリ「そうかな?」

秋槻「……後になったら分かること、だね」

一輝「……」

結月「そういえば、どうしてキマリさん、乗り遅れそうになったんですか?」

報瀬「私も聞いてない」

日向「グラマラスでナイスバディな外国人女性に声かけられたって聞いた」

みこと「……」ジー

秋槻「ふぅん、そこだけ強調されてたんだ……」

マリ「胸が大きかったと思いました。綺麗な人だとも思いました」

結月「へぇ」

栞奈「男ってやつぁ……」

一輝「……ノーコメントで」

秋槻「ふぅん……」

マリ「あれ……?」

みこと「……」ジー

秋槻「俺が鼻の下を伸ばして道案内を引き受けたと……?」

マリ「そうは言ってないですよ〜」

秋槻「流れ的にはそうだったけどね」

マリ「もぉ、日向ちゃん!」

日向「私かよ!?」

秋槻「そうだ、写真撮ったんだよ。見る?」

結月「……え」

栞奈「……え」

報瀬「……え」

一輝「ドン引きしてますよ……」

マリ「見せて見せて、笑顔がチョーキュートだったよね」

みこと「……」

秋槻「ほら」

マリ「おぉ……」

みこと「……白いタンクトップ着てたんだ」

マリ「そうそう……、そうだよ」

日向「どれどれ……おぉ、こんなポーズ取ってたのかぁ」

一輝「陽気な人だ」

結月「……」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:41:48.39 ID:LlWIaXwHo

栞奈「いやいや、その女性を写真に撮るって……」

報瀬「……ない」フルフル

秋槻「いい思い出になったよ、俺にとってもね」

日向「そりゃそうだろうな〜。滅多に会えるわけじゃないし」

みこと「うん……また会えるといいよね」

秋槻「明日にでも、ね」

結月「……私にも見せてください」

マリ「ほら、ね、結月ちゃん」

結月「ぷふっ」

報瀬栞奈「「 ? 」」

結月「話が変だと思ったら……ぷふふ」

みこと「……両手挙げてるところが」

日向「おっと、皆まで言うな、みこと〜」

報瀬「……気になる」

栞奈「私にも見ーせて」

一輝「そろそろ時間だし、片付けて寝ましょうか」

秋槻「もうこんな時間か……そうだね、片付けよう」

報瀬「あ、あの……見せてください……」

栞奈「気になって眠れないんですよ!」

秋槻「明日、道頓堀に行ってみたら会えるよ」

報瀬栞奈「「 え? 」」

結月「ぷふふっ」

日向「いつまで笑ってるんだよ、ゆづ〜」

結月「だって……タンクトップ……ふふっ」

マリ「みこっちゃん、残ったお菓子、持って行っていいよ」

みこと「でも、食べないから」

マリ「じゃ、私が貰う! 夜食!」

日向「太るぞ」

マリ「それじゃ、日向ちゃんと別けるよ。それなら大丈夫」

日向「私も太らせる気か?」

一輝「……ずっと元気だな…」

みこと「あの、秋槻さん」

秋槻「?」

みこと「……あの、動画見せてもらってもいいですか?」

秋槻「今すぐ?」

みこと「……はい」

秋槻「……わかった。じゃ、はい」

みこと「……?」
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/10/22(月) 07:44:01.18 ID:LlWIaXwHo

秋槻「もう電話かかってこないだろうし、持ってていいよ。充電はしておいてね」

みこと「え……、いいんですか? プライバシーが……」

秋槻「仕事用じゃないから、コンプライアンスの問題もないし大丈夫」

日向「そういう意味じゃなくって……」

秋槻「分かってるって……コホン。
    観られて困るデータはないから。音楽だけだから入ってるの」

みこと「……」

マリ「じゃあ、私ので観る?」

みこと「いいの?」

マリ「いいよ。明日の朝、起こしてくれれば。目覚まし設定してるから」

みこと「……うん」

マリ「はい、どうぞ〜。あ、充電しておいてね」

みこと「ありがとう……キマリさん」

マリ「どういたしまして」

みこと「……あの、ごめんなさい、わがままいって」

秋槻「ううん、気にしなくていいよ」

報瀬「気になって眠れない……」

栞奈「明日って、どういうこと?」

一輝「行けば分かるって」

結月「ぷふふっ、タンクトップ……っ」

報瀬「気になる……!」

マリ「もぐもぐ……あ、これ美味しいね」

日向「片付けながら食べるな〜」


……


156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:32:41.13 ID:mha1Smx5o

―― 夜中・ホーム


秋槻「……」


みこと「秋槻さん?」


秋槻「ッ!?」ビクッ

みこと「……」

秋槻「ど、どうしたの……こんな夜中に……?」

みこと「外の空気を吸おうと思って……」

秋槻「あぁ、そうか……ビックリした……」

みこと「どうかしたんですか?」

秋槻「確かに、非日常だなって思って。こんな経験、味わえないよなぁってさ」

みこと「……」

秋槻「ほら、月が見える」

みこと「……うん」

秋槻「いつも見ている月なのに、まったく別物に見えてしまう。やっぱり旅っていいな」

みこと「……」

秋槻「って思ってたんだよ」

みこと「私も、相談に乗ってくれたから、聞きます」

秋槻「悩んでるように見える?」

みこと「……うん」

秋槻「あはは。……じゃあ、聞いてもらおうかな」

みこと「……」

秋槻「さっき、彼女たちに言われて気付いた。俺も大人になってしまったって」

みこと「……」

秋槻「なんでもできるはずなのに。何もできなくなった大人になってしまったって」

みこと「……」

秋槻「必死になるのがカッコ悪いって、心のどこかで思ってることに気づいたよ」

みこと「カッコ悪いの?」

秋槻「頑張ることは当たり前だけど、必死になることはそうそうなくなったからね」

みこと「……」

秋槻「でも、彼女が言ってた通り、必死に頑張れる大人もいるんだよね」

みこと「……」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:34:03.35 ID:mha1Smx5o

秋槻「そういう人たちに憧れてたはずなのに……って、ショックだったなぁ」

みこと「だから、無理にみんなのノリに合わせたの?」

秋槻「そう見えた? あれが俺の地だったのかもしれないよ?」

みこと「そうだったら、日向さんと栞奈さんと気が合うよね」

秋槻「あはは、そうだね。一緒に盛り上がってただろうね」

みこと「……」

秋槻「……やっぱり、同い年だったらって思うよ。今は一緒に盛り上がれないかな」

みこと「カッコ悪いから?」

秋槻「…………」

みこと「……」

秋槻「7つも歳が離れてるのに、ノリを合わせて盛り上がろうとするのはカッコ悪いな」

みこと「……」

秋槻「でも、旅の途中だしな……とも思ってる」

みこと「カッコ悪くてもいい?」

秋槻「うん、少しずつ……そう思えるように……いや、思いたいなって」

みこと「……難しい」

秋槻「余計なことばっかり考えてしまうのは、俺の性分か、大人だからか」

みこと「面倒くさいね」

秋槻「本当に、大人って面倒くさい。素直に楽しめる大人になりたいなぁ〜」

みこと「……」

秋槻「と、そんなこと考えてた。聞いてくれてありがとう」

みこと「いい旅にするように、って約束したから」

秋槻「……え?」

みこと「みんなでいい旅にしたいから」

秋槻「そっか……」

みこと「うん」

秋槻「……――ありがとう」


……


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:35:48.59 ID:mha1Smx5o

―― マリの個室


マリ「よいしょ、っと」


コンコン


マリ「ん?」

コンコン

「私だけど、キマリ……もう寝た?」

マリ「起きてるよ〜。ちょっと待ってて〜」


ガチャ


マリ「どうしたの、報瀬ちゃん?」

報瀬「話、いい?」

マリ「いいよ〜。入って入って〜」

報瀬「うん、ごめんね、いきなり」

マリ「気にしないで。適当に座って」

報瀬「……うん」

マリ「話って?」

報瀬「私、この列車に乗っても、大した経験にならないって思ってた」

マリ「……どうして?」

報瀬「あの旅を経験しているから、それ以上の旅にはならないだろうって思って」

マリ「……」

報瀬「だけど、根本的に間違ってたみたい」

マリ「……根本的?」

報瀬「船の旅と、列車の旅。中身が全然違ったから」

マリ「そうだね〜。船は目的地までずっと一緒だけど、
   列車は目的地着いて出会ったり別れたりだから」

報瀬「うん」

マリ「でも良かった、そう言ってくれたら、もう楽しめるよね」

報瀬「なんか、脅迫みたい。楽しまないといけない、みたいな」

マリ「当然だよ。だって、次に列車が走るの、20年後だよ?」

報瀬「決定、なんだ」

マリ「うん、決定〜」

報瀬「まぁでも、うん……楽しまないとね」

マリ「うん!」

報瀬「さっきまで日向とも話してたんだけどね」

マリ「?」

報瀬「日向も同じだったみたい。車掌さんの話聞いて、見方が変わったって言ってた」

マリ「そうなんだ……」
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:36:58.56 ID:mha1Smx5o

報瀬「キマリは東京まで行くんだよね」

マリ「うん。あれ、報瀬ちゃんもでしょ?」

報瀬「違う。私と日向は高崎まで」

マリ「えーーッ!?」

報瀬「ちょっと、声が大きいから……っ」

マリ「むぐっ」

報瀬「そんなに距離変わらないでしょ」

マリ「変わるよ! 一区間だけでも色々あるってさっき話してたでしょっ」

報瀬「隣に迷惑だから」

マリ「う、うん……」

報瀬「…………それでも」

マリ「それでも?」

報瀬「旅はいつか終わるから」

マリ「……」

報瀬「明日はどうするの?」

マリ「……なにが?」

報瀬「走るの?」

マリ「うん!」

報瀬「分かった。せっかくだから、私も一緒に走るよ」

マリ「うん。今日の朝も走る気なかったって言ってたよね」

報瀬「4人揃って走るの、滅多にないから……」

マリ「……そうだね」

報瀬「どうかした?」

マリ「なんか、今の報瀬ちゃん……いつもとちょっと違う」

報瀬「そう?」

マリ「いつも以上に落ち着いてる感じ」

報瀬「夜だからでしょ。眠たいし……」

マリ「そうだね。もう寝ようか」

報瀬「ごめんね、勉強の途中……に……邪魔……した……みたいで?」

マリ「ううん、寝るとこだった」

報瀬「……そう。……それじゃ」ピッピッピ

マリ「うん……。……ん?」


ガチャ

 バタン


マリ「なんでスマホ触ってたんだろ?」

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:38:51.31 ID:mha1Smx5o


―― みことの個室


ピピピピ


みこと「……あ」

ピッ


『お姉ちゃんが勉強頑張ってるって、結月さんから聞いたよ。さすがお姉ちゃん!』


みこと「押しちゃった……。どうしよう」


……


161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/06(木) 13:40:11.55 ID:mha1Smx5o

―― 8月5日


マリ「ぅぅん……雷おじさんが地下に閉じ込められてる」


コンコン

マリ「……ん?」

コンコン


「キマリさん、朝だよ」


マリ「……え、ぁ……みこっちゃん……?」


……


162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:12:10.86 ID:KmpP0qP0o

―― 大阪駅前:早朝


報瀬「暑い……」

日向「朝でこの気温かよ……」

結月「今日も暑い一日になりそうですね……」


「おはよ〜」


報瀬「あ、来た」

日向「遅いぞ〜……って、あれ?」

結月「みことも……?」


マリ「お待たせ〜」

みこと「……おはよう」


報瀬「おはよう……」

日向「その格好は?」

結月「一緒に走るってこと?」

みこと「うん……」

マリ「よし、行くよー! ぬぉぉぉぉおお!!」ダダダッ

報瀬「あ、ちょっと!」

日向「いきなり走るな!」

結月「みこと、ペースは自分で作れる?」

みこと「う、うん……付いて行くから」

日向「……」


……


163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:18:38.16 ID:KmpP0qP0o

―― デネブ


みこと「はぁ……はぁっ……はぁ」

日向「大丈夫か、みこと?」

みこと「うん……っ」

結月「顔が真っ赤……ほら、タオル」

みこと「ん……っ」

結月「濡らしておいたから、気持ちいいでしょ」

みこと「……うん」

マリ「ちゃんと水分補給しておいてね」

みこと「うん」

報瀬「はやくシャワー入ろう」

日向「そうだな、周りの目が気になる」

結月「奇異な目で見られてますね……当然ですけど」


……


164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:21:07.67 ID:KmpP0qP0o

―― 食堂車


マリ「うん、今日もワーニングが美味い!」

結月「なんですか、それ」

日向「和食のモーニング、略しただけ」

報瀬「じゃあ、洋食のモーニングは?」

マリ「モーニングでいいんじゃないの?」

結月「それ、和製英語ですよね……」

マリ「そうだったんだ」

日向「ヨーニングって言って欲しかったんだよな、報瀬?」

報瀬「なんで負けた気分になるの!?」

結月「キマリさんにあぁ言われたらそうなりますよね」

マリ「なんでー?」


みこと「……」

栞奈「確かに美味しい、料理長に拍手しないと」

一輝「伝えればいいだろ」

秋槻「あっちの席が気になる?」

みこと「うん……」

秋槻「そっか」


報瀬「日向、そのバッチ……」

日向「え? あぁ、これ?」

結月「どうしてもう一つ付けてるんですか?」

マリ「あ、鵲だ」

報瀬「カササギなの、それ?」

日向「これさ、デネブとヴェガを紡ぐ意味があるんだ」

報瀬「?」

マリ「20年前を走った列車があってね。
   その列車の名前がヴェガっていうの」

結月「ヴェガ……こと座ですね」

日向「20年の時を越えて、今を走るデネブと、あの時走ったヴェガを紡ぐ」

マリ「そういう素敵な意味が込められてるんだよ」

報瀬「どこで売ってるの?」

マリ「もう売り切れちゃったよ。私たち4人で一つ、それで十分だよね」

報瀬「ちょうだい」

日向「は?」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:23:43.33 ID:KmpP0qP0o

報瀬「私にちょうだい」

日向「子供か!」

結月「4人で、一つ……」

報瀬「それなら私が持ってても不思議じゃないよね」

日向「いや……私がお金払ったし」

報瀬「いくら?」

日向「待て待て、それを払うから私に持たせろって言うのか?」

報瀬「そうだけど」

日向「友情にひびが入ること言うなよ!」

報瀬「私が持っててもいいでしょ?」

日向「でも……開封したばっかだし……」

結月「4人の物というなら、私が持っててもいいってことですよね」

日向「参戦するか!?」

マリ「もう、静かに食べようよ……。うるかにしてください」

結月「もぉ、いつまで言うんですか!」

マリ「あははっ」


店員「他のお客さんに迷惑ですので、お静かに願います」ニコニコ


マリ報瀬日向結月「「「「 すいません 」」」」


みこと「……」

栞奈「盛り上がってるね」

一輝「なんで朝からあんなに元気なんだよ……すげぇな」

秋槻「もぐもぐ」


日向「なんか、謝ってばっかりだな……私たち」

報瀬「ちょっと落ち着いた方がいいよね」

マリ「本当だよ……もぐもぐ」

結月「ところで、今日はどこ行くんです? 出発は12時ですけど」

日向「午前中だけか。あまり遠くへ行けないな〜」

マリ「ハーバーランドは?」

日向「午前中だけだから、あまり 遠 く へ は 行 け な い な!」

マリ「遠いの?」

報瀬「神戸だよ?」

マリ「……遠いの?」

結月「あとで地図見てください」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:26:03.06 ID:KmpP0qP0o

報瀬「私は特に理由は無いんだけど、道頓堀に行ってみようかと思う」


栞奈「あ、はい! 私も報瀬に付いてく!」


報瀬「分かった。特に理由はないんだけどね」


栞奈「そうそう。別にタンクトップの人がいるとか、興味ないんだけどね」


結月「ぷふっ」

日向「ツボなのか、それ……?」

マリ「片道40分? 近い近い! 行ってくるね!」

報瀬「もう9時だよ?」

マリ「行って、観て回って戻ってきて……うん、行ける行ける!」

日向「やめとけ、昨日のこともあるんだから」

マリ「大丈夫だって! ね、お兄さん!」


秋槻「……」スッ


マリ「なんで顔を逸らすの!?」

日向「信用されてないんだろ」

マリ「あれ……?」


みこと「……」

栞奈「このヨーグルトさ、ブルガリアから直送してもらったんだって」

一輝「適当言うな。一応聞くけど、誰が言ってたんだよ?」

栞奈「私!」

一輝「秋槻さんはどこに行くんですか?」

秋槻「通天閣に行ってみようかな」

みこと「……」


マリ「みこっちゃん、あまり食べてないけど、食欲無い?」

日向「?」


みこと「……ぇ……うん……ちょっと……」


報瀬「顔色……悪くない?」

結月「……そうですね」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:28:33.87 ID:KmpP0qP0o


みこと「……部屋……戻って……っ」ガタ

一輝「大丈夫か……?」

栞奈「……」

秋槻「……」

みこと「う……うぅぅ……うぷ」

秋槻「ッ!」ガタッ

栞奈「わっ!」

みこと「ん……んんっ」

秋槻「捕まって!」ガシッ

みこと「ん――……ッ」ギュッ

秋槻「――!」

タッタッタ


マリ「おぉ、お姫様抱っこ!」

日向「言ってる場合か! 報瀬!」

報瀬「車掌さんとこ行ってくる!」

結月「私は厨房に行ってきます!」

日向「任せた! 行くぞキマリ!」

マリ「うん!」

タッタッタ


栞奈「……」ポカーン

一輝「……」ポカーン

栞奈「ハッ!?」

一輝「あ、嵐が過ぎ去ったみたいだな……」


……


168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:35:55.79 ID:KmpP0qP0o

―― みことの個室


みこと「うぅぅ……」

マリ「まだ気分悪い?」

みこと「……吐いちゃった…」

マリ「トイレに間に合ったんだから、セーフだよ、セーフ」

みこと「……でも」

マリ「?」

みこと「恥ずかしい…とこ……見せ…ちゃった……」

マリ「お兄さんに?」

みこと「……うん」

マリ「必死になって助けようとしてたから、気にしてないと思うけど」

みこと「……」

マリ「あとでお礼言おうね」

みこと「……うん」

マリ「ごめんね……」

みこと「?」

マリ「無理、させちゃったよね」

みこと「……無理……?」

マリ「日向ちゃんが言ってた。『ランニングの後、クールダウンさせてなかった』って」

みこと「……」

マリ「始発からここまで、緊張もあったから……その疲れが熱になって表れたんだよ」

みこと「……疲れてた……のかな……」

マリ「自分でも気付かないうちに、溜まってたんだと思う。車掌さんもそう言ってたでしょ?」

みこと「…………」

マリ「栞奈ちゃんも同じこと言ってたよ。珍しく真剣な顔だったなぁ」

みこと「栞奈さんが……?」

マリ「心配してるんだよ。ちょっと待っててね〜。今リンゴ剥いてあげるから〜」

シュルルルル

みこと「……上手」

マリ「こう見えても家の手伝いしてるからね!」

みこと「自分のことは自分で……?」

マリ「うん! 出来ることは増やしておかないと……ね」

みこと「……キマリさん」

マリ「あ、失敗した……。うん、なに?」

みこと「ハーバーランドは……?」

マリ「行かないよ?」

みこと「…………」

マリ「というか、止められたからね。ひどいよね、みんな」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:37:44.01 ID:KmpP0qP0o

みこと「……私も……行ってみたかった」

マリ「そっか……」

みこと「……ごめんなさい」

マリ「え?」

みこと「私のせいで……行けなくて……ごめんなさい……」

マリ「夜景がきれいなんだって」

みこと「……」

マリ「昨日の夜に行っておけば良かったね。太陽の塔見てもしょうがなかったね〜」

みこと「……キマリさん」

マリ「でも、報瀬ちゃんが面白かったよね。太陽の塔見て、『夜の通天閣って怖いよね』って」

みこと「……うん」

マリ「一瞬空気が止まったよね〜」

みこと「……」

マリ「みこっちゃん」

みこと「……?」

マリ「私が、観光行くのを我慢して、無理してみこっちゃんの看病してると思ってる?」

みこと「ちがうの……?」

マリ「そう言うだろうって、気を遣うだろうからって、日向ちゃんたち、出かけたよ」

みこと「……」

マリ「日向ちゃんは結月ちゃんの仕事の付き合いでまた万博公園に行ってね」

みこと「……」

マリ「栞奈ちゃんと報瀬ちゃんは道頓堀。大村君とお兄さんはどこ行ったか知らない」

みこと「……」

マリ「私は自分の意志でここに居るんだよ」

みこと「……どうして?」

マリ「南極ってね、とても厳しい世界なんだよね」

みこと「……」

マリ「だから、自分のことは自分で、最低限のことは自分でやらなきゃいけないんだ〜」

みこと「……」

マリ「私が、アマゾネスになろうとしてるのは……何かあった時、隣の人を助けるため」

みこと「……」

マリ「なんて言ったら、厳しさを理解してないって怒られるかもしれないけど……私はそうありたい」


マリ「誰かを失うなんて、絶対に嫌だから」


みこと「――……」


マリ「だから、今はみこっちゃんの側にいさせてよ」


みこと「……っ」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:39:58.94 ID:KmpP0qP0o


マリ「私がここにいるのは、その時誰かを助けられる為でもあるんだから、ね?」


みこと「……うん……っ」


マリ「多分、私だけじゃないんだよ」

みこと「……日向さんたちも……?」

マリ「話をしたわけじゃないんだけど……。私と同じかもしれないって思うな」

みこと「…………」

マリ「あ、ちょっと押し付けがましいかな……?」

みこと「ううん……同じ……だと……思う」

マリ「それならいいんだけど……。はい、うさぎさん!」

みこと「……ありがとう」

マリ「あ、食べられる?」

みこと「うん……」

マリ「よかった。タオル変えるね。結月ちゃんが厨房で借りてきてくれたんだよ」

みこと「……ありがとう、キマリさん」

マリ「いえいえ。どういたしまいて」


……


171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:43:10.42 ID:KmpP0qP0o

―― 出発時刻:デネブ


報瀬「……」ドンッ

栞奈「……」ドドンッ


一輝「なんであの二人、仁王立ちしてるんですか?」

車掌「さぁ……?」


―― 物陰


結月「どうして隠れるんです?」

日向「見ろよ、あの二人……」

結月「……なんで乗らないんでしょう」

日向「いかにも、怒ってますって雰囲気出してるだろ」

結月「風神雷神みたいです。……何かあったんですかね」

日向「いや……私たちがくだらないこと言ったから期待値高めに道頓堀行ったんだろう……」

結月「あぁ……タンクトッぷふっ」

日向「そうそれ。一夜引っ張って、あれを見た時の落胆たるやいやな」

結月「ガッカリしたんでしょうねぇ」

日向「したんだろうなぁ……あ」

結月「あぁ……秋槻さんが近づいて行きましたよ」

日向「まぁ、なんとかなるだろ。私たちは展望車から乗るぞ」

結月「はいっ」



―― デネブ


秋槻「どうしたの、しかめっ面で」

報瀬「会いましたよ、例の写真の人」

秋槻「……ん?」

栞奈「おやぁ? 覚えていらっしゃらない?」

秋槻「ごめん、なんだっけ?」

報瀬「道頓堀に行きました」

秋槻「あぁ……! あれね!」

栞奈「そう、あれです」

秋槻「いや、もっと早く気付くと思ってたからさ……」

報瀬「大人ってずるい」

栞奈「私も見てみたかったんですよ。グラマラスでナイスバディな外国人さんに!」

秋槻「そっか、残念だったね」

報瀬「……ん?」

栞奈「残念ってそんな簡単に片付けていいことでは……ありますけども!」

報瀬「……なにをコソコソと」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:45:21.09 ID:KmpP0qP0o

―― 4号客車


日向「よし、ここからみことの個室に行こう」

結月「あの二人は放っておくんですか?」

日向「ほとぼりが冷めるまでそうしておく」

結月「……分かりました」



―― 2号客車


結月「というか、コソコソしている必要あるんですか?」

日向「何言われるか分からないだろ? 『よくも騙したぬぁあああ!?』とかさ」

結月「それ、報瀬さんの真似ですか?」

日向「うむ」


報瀬「ふぅん」


日向「あー……、本日はお日柄もよく、絶好の観光日和でございますね〜」

報瀬「猛暑だけどね」

結月「……」スィー

日向「なんだよ! 気付かない方が悪いだろ!」

報瀬「騙したことには変わりない」

日向「ゆづはすぐに気づいただろ! な、ゆづ!? いなーい!」


―― ホーム


結月「ふぅ……。あ、キマリさん」

マリ「あれ、中に居たの?」

結月「いえ、戻ってきたばかりですよ。中にいたのは別の理由です」

マリ「ふぅん?」

栞奈「あのタンクトップの人、お前たちもグルだったのかぁ!?」

マリ「うん」

結月「そうですよ?」

栞奈「あっさりと認めたね、じゃあ許す」

秋槻「暑いのに元気だね……」

一輝「だから元気なんじゃないですか?」

秋槻「だとしたら危険信号だよ」

栞奈「だれの頭がのぼせてるって?」

一輝「おまえだ」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:47:24.56 ID:KmpP0qP0o

日向「おい、ゆづ! 置いてくなよ!?」

結月「もういいじゃないですか、何言われたって……」

日向「ワー結月ちゃんだ! スカート短くて足ながーい! チョーカワイイー!!」

結月「強く殴りますよ。二回ぐらい」

日向「何言われたって気にしないんじゃないのかー」

マリ「車掌服姿で戻ってきたの?」

結月「着替える暇なかったですからね。恥ずかしいですけど」

日向「ゆづの仕事はしっかり見届けて参りました!」ビシッ

栞奈「ご苦労様です!」ビシッ

マリ「あぁ、栞奈ちゃんっ、私のセリフなのにぃ」

結月「日向さん、私が炎天下の中で仕事してたのに、日陰で涼んでいましたよね」

日向「エ? ナンノコト???」

結月「かき氷食べてたって、さくらさんから聞いたんですけど」ズイ

日向「チカイデスワ、ユヅキサン???」

報瀬「そんなことはどうでもいいから、みことはどうなの?」

秋槻「……」

マリ「うん、気分は戻らないけど、食欲はあるみたいだから」

日向「熱は?」

マリ「まだ高いままかな。あ、でも平熱より少し上ってだけだから」

一輝「一応、栄養ドリンクとか買ってきたから。飲ませてやって」

マリ「ありがとう〜、あとで渡しておくね」

栞奈「お、優しいじゃん」

一輝「別に、そんなんじゃねえよ」

マリ「結月ちゃん、持って行っててくれる?」

結月「え? いいですけど……」

マリ「すぐ戻るから」

報瀬「ちょっと待って、どこ行くのキマリ?」

マリ「お土産買ってなかったから、駅の売店見てくる!」

テッテッテ

日向「待て待て待て待て!! ちょっと待てキマリーーーー!!」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:48:42.73 ID:KmpP0qP0o

秋槻「出発まで……あと、10分もないけど」

栞奈「よっしゃ! 私も行ってくるぜ!」

タッタッタ

結月「二次災害!?」

一輝「……中継地点まで見てくる」

タッタッタ

日向「大丈夫かよ……。私も見てくるな」

タッタッタ

報瀬「……秋槻さんは乗っててください」

秋槻「そうさせてもらおうかな……」


……


175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:51:38.22 ID:KmpP0qP0o

―― 11:58


一輝「急げ―!! 2分切ったぞ!」


ダダダダッ

栞奈「ひぃっ、ひぃぃっ」

日向「なんで時間無いのに選んだ!?」

栞奈「面白いキーホルダー多すぎるんだよぉぉぉおお!!」

マリ「ひぇぇええ!」

日向「キマリみたいに直感で買えばよかったろ!?」

栞奈「予算の都合上しょうがないっしょ!」


一輝「ケンカしてないで全力で走れよ!!」


栞奈「走ってますぅうう!!」


ダダダダッ
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:52:35.49 ID:KmpP0qP0o

―― デネブ


報瀬「急いで! 早く!!

結月「あ、あぁ……っ」ハラハラ


ダダダダッ


マリ「よし、間に合った!!」

日向「報瀬! ゆづ!!」

栞奈「どいてどいてー!」


ダダダダッ


マリ「セーーッフ!!」

日向「ふぅぅ……はぁぁ」

栞奈「ひぃ……ふぅぅ……いやぁ、スリルあって面白かったねぇ」


プシュー


報瀬「……本当に、何してるの」

結月「……」

マリ「でも、間に合った……!」

日向「そうそう……あれ?」

一輝「……」

栞奈「どうしたの、一輝」

一輝「時計、見てみ?」

栞奈「……12時2分」

日向「ッ!?」

マリ「……?」

結月「アウトです」


ガタン

 ゴトン



……


177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:53:29.10 ID:KmpP0qP0o

―― 動力車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


車掌「…………」


栞奈「窓ふきでもしましょうか?」

車掌「結構です」

日向「バカ……!」

栞奈「いや、だって……」

マリ「ごめんなさい……!」ペコリ

車掌「これで、何度目でしょうか?」

栞奈「二度目……?」

日向「いえ、三度目……です……」

栞奈「あ……私が乗る前にもやったのね……」

マリ「…………ごめんなさい」

車掌「……ふぅ」

日向「……」

栞奈「……」

マリ「……あの、お願いがあるんですが」

車掌「え……?」


……


178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:54:51.55 ID:KmpP0qP0o

―― 展望車


さくら「それで発車が遅れたのねぇ」

結月「はい……、秋槻さんが事情を話してくれたから車掌さんが時間に猶予をくれて」

報瀬「おかげで、乗り遅れずに済んだよね」

結月「助かりましたね」

さくら「そんな簡単なことじゃないのよ?」

報瀬「?」

さくら「ダイヤが乱れるとお客さんが困っちゃうでしょ。特に日本では」

報瀬「……?」

結月「大都市ではそうですよね……」

さくら「でも、粋なことするのねぇ。感心しちゃうわ、その人♪」

報瀬「これから、キマリは外出禁止にしよう」

結月「そうですね」


ピンポーン


さくら「あら、車内放送ね」

結月「発車前にも説明がありましたよね」

報瀬「車掌さん、可哀想に――」


『み、みなさんこんにちは、玉木マリといいます』


結月報瀬「「 え!? 」」


『発車が遅れたのは私のせいです。
 この場を借りてお詫びさせていただきます。ごめんなさい!』


結月「……」

報瀬「……」


『お土産に何買おうかって迷ってしまって……。――あ、それはどうでもいい?』


結月「日向さんが止めてるんですかね……」

報瀬「というか、この放送を止めてよ日向……」

さくら「うふ」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:56:09.47 ID:KmpP0qP0o

『え、えっと……とにかく、申し訳ありませんでした!』


『ゴンッ』


『はぅあ!』


ピンポーン


結月「今の音、なんです?」

報瀬「頭下げて、マイクにぶつけたんでしょ……」

結月「なんて定番な……」

さくら「これを聞いて怒る人いないでしょ。結月ちゃん、いい友達持ったわねぇ」

結月「はい!」

さくら「あら、いい返事」


……


180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 09:59:20.86 ID:KmpP0qP0o

―― 食堂車・厨房


車掌「もぅ……あの子たちったら……」

料理長「なんだよ、来て早々愚痴か?」

車掌「そうじゃないです。予想を超えてくるから対応に困ってるんです!」

料理長「それを愚痴って言うんだよ。それで、あの放送は?」

車掌「謝らせてくれって言ってきて。……お客様一人一人に謝りたいって言うんですよ」

料理長「それで車内放送か。まぁ、イベントがあれば乗客も喜ぶだろ」

車掌「旅行列車ですからね、お客様からのクレームはありませんでしたけど……」

料理長「駅長に何か言われたか?」

車掌「……はい。先ほど連絡がありました」

料理長「あっはっは、いい経験したじゃないか」

車掌「他人事だと思って」

料理長「トラブルなんてマニュアル通りにいかないことばかりだ。
     悩むのはいいけど、あの子らの前でその態度見せるなよ」

車掌「……」

料理長「本当に困ってるのか?」

車掌「あ、いえ……。私たちの時も車掌さんを困らせてたのかなって思って」

料理長「まぁそうだろ。でも、うまく対応してたぞ」

車掌「……そうですよね」

料理長「思い通りに行く旅なんてつまらないからな。そう思ったから放送を許したんだろ?」

車掌「そう……です」

料理長「私は悪くないと思ったよ。だから、自信持て、『車掌さん』なんだから」

車掌「……そうですね。今は、私が『車掌さん』なんですから」

料理長「話くらい聞いてやるから、また来いよ」

車掌「はい、ありがとうございます」


店員「りょーりちょー、注文入りまーす」


料理長「おいこら、なんだその気合の入らない声は」

店員「……すいません」

車掌「同い年の子たちが楽しそうにしてるから、羨ましいんですよね」

店長「車掌さん……分かってくれて嬉しい〜っ」キラキラ

料理長「はいはい、理解が足りない上司で悪かったね」

車掌「ふふ、それでは」

スタスタスタ...

店長「格好いいなぁ、車掌さん……本当、憧れるな」

料理長「はやくオーダーを言え!」


……


181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:01:49.09 ID:KmpP0qP0o

―― 展望車


マリ「それで、みんなを集めてどうしたの?」

日向「みことは?」

マリ「日向ちゃんが迎えに行ってる」

日向「私、ここに居るんですけど? 行けってことか?」

マリ「あ、栞奈ちゃんね。間違えちゃった〜」

日向「白々しいな」

栞奈「その栞奈ちゃんも此処に居るんだけどね」

日向「ゆづが行ったんだな」

報瀬「これ、限定コーヒーなの?」

マリ「うん、そうだよ」

報瀬「縦縞だ……」

栞奈「みんな、食べていいよ」

日向「面白い恋人?」

報瀬「白い恋人の……パクリ?」

栞奈「オマージュって言うんだぜ、お嬢さん」


結月「お待たせしました」

みこと「……」


日向「おー、顔色良くなったな」

みこと「……うん、薬飲んだら熱も下がって」

栞奈「良かった良かった」

マリ「私の寝ずの看病のおかげだね」エッヘン

結月「3時間くらいで威張らないでください」

みこと「うん、ありがとう……」

マリ「冗談だから、真に受けないで〜」

栞奈「うん、美味しい」モグモグ

結月「え、白い恋人……? じゃないですね」

栞奈「面白い恋人」

結月「ふぅん」

日向「この反応は道民の反感を買うってことか」

結月「勝手に北海道代表にしないでください」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:06:00.67 ID:KmpP0qP0o

マリ「それで、話は?」

日向「待って。ゆづ、大村と秋槻さんは?」

結月「見かけませんでしたよ?」

日向「そっか……」

栞奈「二人が居ないとダメな話?」

日向「まぁ、人数的にな」

マリ「なになに?」

日向「この旅の目標を考えてみました」

報瀬「目標?」

日向「それは……」

マリ「私たちと意思疎通が出来るようになること!」

結月「なんです、それ」

日向「キマリが勝手に決めたみことの目標だな」

みこと「うん」

報瀬「他人の目標を勝手に……。先に自分のを立てるべきだと思う」

マリ「同じこと日向ちゃんにも言われました」

栞奈「もぐもぐ……喉乾いたな」

日向「それでな、金沢で面白いイベントがあるのを見つけたんだよ」

マリ「祇園祭だっけ」

報瀬「それは次の京都ね」

結月「適当に覚えてますね」

みこと「金沢……?」

栞奈「なにかあったっけ? あ、ちょうどいいとこに」


一輝「……ん?」


栞奈「一輝〜、ちょっとジュース買ってきてよ〜」

一輝「ふざけんな」

スタスタスタ...


栞奈「アイツ、モテないね。こんな麗しき乙女に暴言吐くなんて」

結月「大体の人はそう思うと思いますよ」

みこと「なにがあるの?」

日向「金沢の片町ってとこでさ、大なわとび大会というものがあるんだよ」

報瀬「……そう」

マリ「むむっ!」ビビビ

結月「町内会の大会、とかじゃないんですか?」

日向「私もまだ規模とかは分からないんだけどさ、10人で参加できるんだ」

栞奈「ほぉ、それに参加したいと?」

日向「YES!」
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:09:14.16 ID:KmpP0qP0o

マリ「軽く電気が流れる感覚キタ……! 出よう!!」

報瀬「……言うと思ったけど。……誰が参加するの?」

日向「私、キマリ、報瀬、ゆづ、みこと、栞奈、大村、秋槻さん」

みこと「8人だよ……?」

報瀬「あと2人は?」

日向「車掌さんとか?」

結月「巻き込むつもりですか」

日向「他に知り合い居ないんだもん!」

マリ「……」ポチポチ

みこと「……?」

栞奈「……あの、さ」


一輝「ほらよ」


栞奈「?」

一輝「いや、飲み物欲しいって言っただろ……売店で買ってきたんだけど……」

栞奈「おー、ありがとー。気が利くじゃん! モテる男は違うね〜」

結月「さっきと言ってることが正反対ですね……」

日向「大村さ、金沢での予定空けておいてな」

一輝「……?」

報瀬「栞奈、さっき何か言いかけてなかった?」

栞奈「あぁ、うん……私さ、松本で降りるんだよね」

マリ「え!? そうなの!?」

日向「……そんな驚くことか?」

マリ「だって……!」

栞奈「そのなわとび大会……参加できないんだよね」

報瀬「なんで?」

栞奈「いや、だからね……松本で降りるから」

結月「???」

一輝「栞奈……おまえ、勘違いしてないか?」

栞奈「勘違い?」

日向「金沢の次が松本なんだけど……?」

栞奈「知ってた」

報瀬「じゃあ、なんで参加できないの?」

栞奈「持病の睡眠不足が……」

日向「特に問題ないわけだな」

栞奈「……はい」

一輝「やっぱり勘違いかよ」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:11:50.00 ID:KmpP0qP0o

みこと「キマリさん、どうして驚いてたの?」

マリ「……松本の次が高崎だから」

みこと「?」

日向「私と報瀬、そこで降りるんだよ」

結月「そうでしたね」

マリ「私とみこっちゃん、東京まででしょ」

みこと「……うん」

結月「私もですよ。忘れないでください」

マリ「忘れてないよ。うっかりだよ」

一輝「……」

栞奈「一輝は?」

一輝「……金沢」

日向「あ、そういえばそうだった」

結月「ということは、東京からこの列車、私たち誰も乗っていないんですね」

マリ「……」

みこと「……」

日向「なんか、想像できないな」

報瀬「そんな先のこと考えるより、その大会のこと考えるべきじゃない?」

栞奈「そうだね。作戦を練ろうか。まず最初に私が飛ぶでしょ」

日向「順番とかないぞ。全員一緒に跳ぶんだからな」

栞奈「なるほど、そういう方向ね。ということは、滞空時間を計算に入れつつ、
   金沢の重力と私たちの跳躍力も考慮していかなければならないわけだが」

報瀬「ごめん。悪いけど、ちょっと黙ってて?」

栞奈「……」

結月「バッサリですね」

一輝「そんな悲しそうな顔するなよ」

栞奈「……うん」

一輝「というか、その大会ってなわとび?」

マリ「そうだよ」

一輝「……俺も数に入ってるのか?」

栞奈「光栄に思いなさいよ〜? 
    こんな美少女とジャンプできる機会なんてそうそう無いんだからね」

一輝「復活早いなお前。……まぁ、考えとく」

マリ「考えとくじゃなくて、決定ね! 数が合わないから!」

結月「あと2人はどうするんです?」

マリ「私に考えがありまして。そこは任せてください」

みこと「だれ?」

マリ「お楽しみってことで」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:13:39.61 ID:KmpP0qP0o

日向「よし、じゃあ、全員参加でいいな?」

報瀬「いいよ。どうせ大した規模じゃないでしょ」

結月「そうですね。みんなで何かやるのも面白そうですし」

みこと「……秋槻さんの確認は?」

日向「まだだ」

マリ「私、声かけてくるね!」

テッテッテ

みこと「……」

報瀬「練習とかは?」

結月「ぶっつけ本番は無しですよ?」

日向「そこは相談だ」

栞奈「一輝、おにぎりが食べたい。食堂車行って――」

一輝「ふざけんな、マジで」

栞奈「分かったわよ! 私が行けばいいんでしょ!」ガタッ

一輝「なんでキレてんだよ!」

栞奈「一輝はいつもそうなんだから。あの頃から何も変わってない……」

スタスタスタ...

一輝「ちょっと待て! おまえと会ったの昨日の朝だぞ!?」

スタスタスタ...


結月「なんですか、あれ」

みこと「夫婦漫才……」

日向「まさにそれだな」

報瀬「本当に息が合ってるよね」


秋槻「……ケンカしてるんだか、漫才してるんだか」


日向「あ……」

結月「キマリさん、話したんですかね」

報瀬「聞いてみればわかるでしょ。……みこと?」

みこと「……ッ」

報瀬「顔赤いけど、大丈夫?」

みこと「……う、うんっ」
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:14:14.85 ID:KmpP0qP0o

秋槻「なにか話があるって聞いたけどなにかな?」

日向「キマリからなにも聞いてない?」

秋槻「……うん」

結月「日向さん、みことを個室へ連れていきますね」

日向「え?」

報瀬「体調が悪くなったみたいで」

日向「わかった……。大丈夫か、みこと?」

みこと「うん……っ」サササッ

結月「あ、ちょっと待って」

テッテッテ

報瀬「様子見てくる」

日向「うん、任せた」

秋槻「まだ良くなってないんだ?」

日向「さっきまで大丈夫そうだったけど……」

秋槻「……」

日向「それで、話というのが――」


……


187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:15:18.82 ID:KmpP0qP0o

―― 食堂車


マリ「えっと、店員さんのお名前は?」

店員「私?」

マリ「うん」

店員「私の名前は、宮城綾乃」

マリ「みやぎ……? ひょっとして沖縄の人?」

綾乃「そうだよ」

マリ「なんくるないさーだよね」

綾乃「それ、よく言われるよ。沖縄の方言ってそれがメジャーになってるみたいでさ」

マリ「あ、よく聞くとイントネーションが違う」

綾乃「あの、仕事中なので用事が無かったらお喋りはこれくらいでいい?」

マリ「ごめんなさい、邪魔しちゃって」

綾乃「ううん、気にしないでいいよ」

マリ「また後で話できる?」

綾乃「うん、いいけど。なにがある?」

マリ「じゃあ手短に。私たちとなわとび大会に参加して欲しいんだ〜」


……


188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:16:01.32 ID:KmpP0qP0o

―― 売店車


マリ「よし、綾ちゃんも参加決定……と、後は――」

店員「京都の観光ガイド、いかがですか?」

マリ「ください!」

店員「はい、どうぞ」

マリ「ありがとうございます」

店員「どこか行かれる場所はお決まりですか?」

マリ「祇園祭に行きたいなって」

店員「……そうですか」

マリ「よし、みんなで行こう」

店員「そういえば、先ほどお友達の三人が急いで通って行かれましたよ」

マリ「三人?」

店員「はい、あの中学生の子が慌てていた様子でした」

マリ「……そうですか、分かりました。行ってみます」


……


189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:19:12.24 ID:KmpP0qP0o

―― 寝台車


報瀬「あぁ、キマリ」

マリ「みこっちゃん、どうしたの?」

報瀬「具合が悪くなったみたいで、いま結月が看てくれてる」

マリ「そっか……。ぶり返したのかな」

報瀬「それ、観光ガイド?」

マリ「そうだよ、見る?」

報瀬「うん」

マリ「どうぞ」

報瀬「ありがと……。どこ行くか決めてるの?」

マリ「祇園祭」

報瀬「ふぅん」

マリ「みんなで、行こうね」

報瀬「人多くない?」

マリ「人が集まるから祭りになるのではなく、祭りだから人が集まるのである」

報瀬「うーん、20点」

マリ「低い……」


ガチャ


結月「あ、キマリさん……。報瀬さんも待っててくれたんですね」

マリ「みこっちゃんはどう?」

結月「大丈夫みたいですよ。中に入って話してみれば分かります」

マリ「そうだね。みこっちゃん、入るね〜」

スタスタスタ...

報瀬「やっぱりまだ回復してなかったんだ?」

結月「いえ……原因は別にあるような気がします」

報瀬「?」

結月「なんでもありません」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:20:29.63 ID:KmpP0qP0o

報瀬「というか、キマリ……部屋の扉開けっ放し……」

結月「もぉ、ちゃんとしてくださーい」


「あ、ごめーん」


秋槻「様子はどう?」


報瀬「大丈夫みたいです」

結月「……秋槻さんも様子を見に?」

秋槻「これを渡しに。お粥なんだけど――」


バタン!


報瀬「うわっ、びっくりした!」

結月「……」

秋槻「あ、ごめん、デリカシーが無かったね」

報瀬「そんな勢いよく閉めなくても……」

結月「まぁ、女の子の部屋ですからね」

秋槻「それでさ、これ料理長から」

報瀬「作ってくれたんですか?」

秋槻「車掌さんが栄養のあるの物をって相談してくれたみたいで」

報瀬「分かりました。食べさせます」

結月「……」ジー

秋槻「うん、よろしく……」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:21:10.46 ID:KmpP0qP0o

結月「……」ジー

秋槻「……な、なにかな」

結月「いえ、なんでも」

秋槻「それじゃ……」

スタスタスタ...

報瀬「冷める前に食べてもらおう」

コンコン

ガチャ

報瀬「うわっ、早いっ」

みこと「……中、見られた?」

報瀬「秋槻さんに?」

みこと「……」コクリ

結月「……」

報瀬「角度的に見えなかったと思うけど」

みこと「……」ホッ

キマリ「みこっちゃん、見た目元気そうなんだけど……勢いよく扉閉めたし」

結月「……なるほど」

報瀬「散らかってないし、変でもないよ?」

マリ「うん、見られても困らないよね」

みこと「……そうだけど」

結月「これだから、報瀬さんとキマリさんは……」ハァ


……


192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:22:06.10 ID:KmpP0qP0o

―― 3号車


栞奈「えっ、あの子、中学生なの?」

日向「うん、なぜか大村には17だと言い張るんだけどな」

栞奈「へぇ、どうしてよ」

日向「なんか、プライドがあるんだろ」

栞奈「……プライド、ねぇ」

日向「だから、あまり弄るなよ?」

栞奈「分かった。みことちゃんに関してはね」

日向「なんだそれ、大村に関してはイジるってか。……まぁ、栞奈の好きにしたらいいけど」

栞奈「というか、なんでみことって呼んでるの?」

日向「キマリがそう呼び始めたからだよ。本人も嫌がってないからいいかなって」

栞奈「ふぅん」

日向「って、話してる場合じゃない。京都はすぐ着いてしまう」

栞奈「あ、撮影ね? こっちの準備は出来てるよ」

日向「……」


……


193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:24:07.84 ID:KmpP0qP0o

―― 展望車


結月「またここですか?」

日向「ここが画的に自然なんだよ。な、プロデューサー」

みこと「……え?」

日向「まだ熱あるのか?」

みこと「ううん。いつの間に昇格したのかと思って」

日向「ナウだ」

結月「それ……死語ですよね」

栞奈「死語だね、日向は古いな〜。昭和か?」

日向「冷静に突っ込まれたらなんか腹立つな……!」

マリ「それ知ってるよ。ナウなギャングにバカウケ。だよね」

みこと「どういう意味?」

報瀬「今時の物騒な人たちが爆笑してるってこと?」

マリ「そういうこと!」

栞奈「あはは」

みこと「これを撮ればいいのに」

日向「そうだな、もう回すぞー?」

マリ「それでは始めてみますどすえ」

栞奈「いつでも来いどすえ」

結月「怒られますよ、京都以外の人たちにも」

マリ「全国を敵に回す発言だった!?」

報瀬「待って! 台本は!?」

日向「だから、無いって。栞奈は大人しくしててくれ」

栞奈「オッケー!」

日向「信用してるからな?」

栞奈「ふふふ」

日向「……なんかやる気だな。まぁいいや、みこと、合図して」

みこと「……スタート」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:26:44.57 ID:KmpP0qP0o


「つ、次は京都ですってー」

「あからさまな説明ですね……」

「京都弁ってかわいいよね」

「……」

「言葉が柔らかいですよね。私も好きです」

「結月ちゃん、言ってみてよ」

「……」

「えぇ……。じゃあ……、よ、よろしおすぇ……?」

「ん?」

「……」

「分からないんじゃないですか!」


日向「報瀬ー、喋れー」


「きょ、京都はどこ行くー?」

「清水寺に行ってみたいんですよね」

「行こう行こう」

「……」

「報瀬さんはどこ行きたいですか?」

「えっ!?」

「なんで驚いてるの……?」


みこと「油断してたよ」

日向「話題振ったら仕事終わったって顔してたな……」


「やぁやぁ、どーもどーも、鳥羽栞奈でーす」

「あ、栞奈ちゃん入ってきた……!」


日向「おい、こらー!」

みこと「駄目なの?」

日向「そりゃ……私たちの……動画だから……」

みこと「契約とかあるってこと?」

日向「どうなんだ、ゆづ?」

結月「この件での契約はないですよ。むしろ自由でいいそうです」

みこと「それなら、問題なし?」

日向「ふむ……そうだな……」

栞奈「発声練習はしてたし、かちゅゼツだって問題ないでしょ?」

日向「そこで噛むなよ!」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:28:42.65 ID:KmpP0qP0o

マリ「練習してたの?」

栞奈「あいうえお! かきくけこ! 百日紅!」

日向「誰がコイツをコントロールするんだ?」

結月「……」

マリ「……」

栞奈「自分のことは自分で、でしょ?」

日向「出来てないから言ってるんだよ……」

みこと「日向さんは?」

日向「え、私?」

みこと「配信された動画でも参加してたよね」

日向「それはそうだけど……」

マリ「決まりはないんだから、やってみようよ」

栞奈「キマリだけに!」

結月「ダメもとでやってみましょう。当たって砕けましょう」

日向「ポジティブなのかネガティブなのか……諦めてないか?」

結月「あれこれ決めていたら進まないからです。半分諦めてます」

日向「確かに……それもそうだな」

栞奈「あのさ、一つ決めた方がいいと思うことがあるんだよ」

マリ「なに?」

栞奈「無視をするのはやめよう、これは絶対に」

マリ「あ、分かる! 寂しくなるよね!」

日向「報瀬どこ行った?」

みこと「あっちでお婆ちゃんと話してる」


「楽しそうなことしてるのねぇ」

報瀬「みんな勝手なことばっかりするから、困ってしまって」

「自由にできることはいいことよ。でも、まとめ役も大変ね」

報瀬「本当に、自由気ままな連中をまとめるのも大変です。アハハ」


マリ「あんなこと言ってる……」

結月「あの方って、報瀬さんが言ってた……?」

日向「お子さんからプレゼントされたって人か」

栞奈「なにそれ?」


秋槻「気になる」


みこと「――ッ!」

日向「え、あぁ、……えっと」

秋槻「声かける気は無かったんだけど、気になってね」

マリ「還暦のお祝いに乗車をプレゼントされたって言ってた」

栞奈「いい話おすな」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/12/26(水) 10:29:57.29 ID:KmpP0qP0o

秋槻「詳しく話聞きたいな……」

結月「私もです……」

日向「秋槻さんはともかく、なんでゆづまで?」

結月「乗客のみなさんにインタビューしてるんですよ。乗車した理由を」

マリ「今だったらいいんじゃないかな、報瀬ちゃん通して」

結月「そうですね、行ってきます」

テッテッテ

秋槻「俺も付いて行こう」

スタスタスタ

マリ「私もー」

テッテッテ

栞奈「なんで秋槻さんが?」

日向「仕事で色々話聞きたいんだって」

栞奈「ふぅん……仕事、か」

日向「どした?」

栞奈「ううん、なんでもない……」

日向「……?」

みこと「……ふぅ」

日向「みこと、大丈夫か?」

みこと「え?」

栞奈「顔赤いよ?」

みこと「だ、大丈夫……うん」

日向「……」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


日向「観光地でもカメラ回すか……」

みこと「……」ジー

栞奈「金閣寺と銀閣寺とパール閣寺に行くけど、付いてこれる?」

日向「はいはい」

栞奈「流すのも禁止!」


……


197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:50:10.85 ID:d0w3nVrno

―― 京都


プシュー


マリ「よっ」

ピョン

マリ「第4の都市、到着!!」バッ

結月「キマリさん、そこでポーズ取られると邪魔です」

マリ「はい」

日向「今日もいい天気で最高だな! ひゃっほー!」

報瀬「自棄にならないで」

みこと「……ぅ、暑い」

マリ「大村君から帽子借りてきたよ」

みこと「?」

結月「野球帽ですね」

マリ「ほら、被って」

みこと「ううん、いい」

マリ「でも、熱中症が怖いでしょ?」

みこと「大丈夫だから」

報瀬「……」

日向「少しでも対策しないなら置いて行くぞー」

みこと「……」

結月「でも、嫌がってますよ」

マリ「うーん……」


秋槻「あぁ、居た居た」


マリ「?」

秋槻「ほら、帽子……って、もうあるんだ」

結月「麦わら帽子……?」

日向「えっ、それ女性用じゃ……?」

報瀬「そんな趣味が……」ゴクリ

秋槻「無いから。食堂車の店員さんに借りたの」

マリ結月報瀬日向「「「「 ホッ 」」」」

秋槻「よかった、疑惑が晴れて」

みこと「……っ」

秋槻「はい、暑さ対策は必ずね」

みこと「…………うん…」

秋槻「それじゃ」

みこと「……あ……ありが」

秋槻「お礼なら車掌さんに」

スタスタスタ...

みこと「……」ギュッ
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:52:26.03 ID:d0w3nVrno

報瀬「水も持ってるよね?」

みこと「うん」

結月「あ、似合う似合う」

マリ「白いワンピース買いに行こ! 絶対に似合うから!」

栞奈「あと、虫かごと虫取り網も!」

日向「ワンパク小僧にする気か!」

みこと「……」

報瀬「本人は乗り気じゃないみたいだから、却下ね」

マリ「う〜ん……惜しいなぁ」

栞奈「絶対に似合うと思うんだけどな〜」

結月「似合ってたまりますか。都会の真ん中で虫かごと虫取り網なんて」

日向「栞奈も一緒に行くか?」

栞奈「どこ行くの?」

マリ「祇園祭だよ、氷見でやってる」

栞奈「……ん?」

報瀬「……?」

結月「ひみ……?」

日向「調べてみる……」ポチポチ

みこと「祇園祭はもう終わってるよ」

マリ「え、だって……台風で延期になったって書いてあったよ」

みこと「ううん、京都の祇園祭は終わってるってこと」

マリ「そんなまさか」

結月「内心焦ってますよね」

報瀬「平静を装ってるけどね」

日向「氷見の祇園祭って、富山だろ……。それも終わってるし」

みこと「……」

マリ「………………」


マリ「…………」


マリ「……」


マリ「どんまい!」

栞奈「私は行きたいね、祇園祭。いや、行こうじゃないか」

一輝「行けるなら行けよ」

栞奈「なんでアンタは私に辛口なの?」

一輝「やってないって言ってるのに行きたいって言うからだろ」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:54:08.15 ID:d0w3nVrno

マリ「大村君、これありがとー」

一輝「あぁ……うん」

みこと「……」

一輝「なんだ、あったのか」

報瀬「借りたんだけどね」

一輝「それならいいですけど」

栞奈「貸して」

マリ「はい」

栞奈「……どうよ?」

結月「あ、似合う」

みこと「うん」

報瀬「意外と似合うね」

日向「栞奈、ボーイッシュだからな」

栞奈「これでパリコレ出たらどうなるかな、注目の的?」

一輝「そうだな、指さされて笑われるだろう」

栞奈「この!」ドカッ

一輝「痛っ」

結月「というか、なんでパリコレ……」

マリ「じゃあ、どこ行く?」

報瀬「祇園でいいんじゃない? 清水寺も近いでしょ」

日向「でも、暑くないか?」

結月「この気温ならどこも暑いですよ」

みこと「……私に気を遣わなくてもいいよ?」

マリ「何を言ってるの、熱中症を甘く見ないほうがいいよ」

みこと「……っ」

栞奈「強く言いすぎじゃない?」

日向「いや、キマリの言うとおりだ」

報瀬「対策はしてるし、私たちが気を付けていれば大丈夫でしょ」

結月「……そうですよ」

一輝「……」

マリ「今のみこっちゃんは平常な状態とは言えないんだからね」

日向「うん、無理するくらいなら観光はしないほうがいいな」

みこと「……でも」

報瀬「別に無理をさせるって話じゃないでしょ?」

結月「塩分の濃い飴も持っていますから」

マリ「それなら、涼しいところにしよう」

栞奈「海とか川とか? 川と言ったら、鴨川があるね」

マリ「もっとこう、涼やかな……目を閉じるとそこは……雪国でした、っていう」

栞奈「涼しい通り越して寒いでしょ」

マリ「イメージだよ、イメージ」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:55:55.28 ID:d0w3nVrno

栞奈「じゃあ、北極、かな」

マリ「涼しい通り越して痛いよ。寒いレベル超えたら痛いんだよ?」

栞奈「知ってるよーん」

一輝「バカなこと言ってる場合じゃないって」

マリ栞奈「「 え? 」」

みこと「……っ」

日向「まだ休んでいた方がいいだろ、
   今は大丈夫でも外に出たら歩いてるだけでも倒れる危険性があるんだぞ」

報瀬「だからそうならないように対策とってるでしょ。私たちも気を配るから」

日向「自分で無理だって思った時点でもう遅いってのは知ってるだろ」

報瀬「ここはそこまで警戒するほどの場所じゃない」

日向「そういうこと言ってるんじゃない」

報瀬「じゃあなに?」


栞奈「どうしたの?」

結月「みことを休ませたい日向さんと、観光に行かせたい報瀬さんで対立しているんです」

マリ「……」

一輝「止めないのか?」

マリ「二人が納得しないと意味が無いかなって」

一輝「……」


みこと「……っ」

日向「もし、もしだぞ。みことが倒れて、家に連絡がいったとしたら……両親がどう思うのか」

報瀬「……」

日向「……それだけは、あってはいけないって……思うんだよ」

報瀬「うん」

日向「だから、私は安全を最優先したい」

報瀬「分かった」

日向「報瀬は?」

報瀬「私は、出来るなら行動した方がいいと思ってる」

日向「……」

報瀬「デネブが停車している時間は24時間。たった24時間しかないから」

日向「そうだな」

報瀬「この時間を無駄にしてはいけないって思う」

日向「分かった」

報瀬「……」

日向「……」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2019/02/14(木) 23:56:44.78 ID:d0w3nVrno

みこと「やっぱり……私が……」

日向「みこと、私はなにも観光に行くな、とは言ってないぞ」

みこと「……っ」

報瀬「だからと言って、みことが遠慮したら何も解決しない」

みこと「どうすればいい……?」チラッ

マリ「え? あぁ……えっとぉ……」

結月「気温が下がる夕方から移動を始める……とか」

栞奈「まぁ、それが最善策かな?」

一輝「……」

マリ「うーん……安全に移動できればいいんだよね……」

報瀬日向「「 どうやって? 」」

マリ「簡単に答え出せたら言い合いになってないよ!」


秋槻「一つ、案があるんだけど」


みこと「……え?」

マリ「ん?」


……


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