マリ「超特急デネブ?」結月「そうです」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/07/30(月) 23:06:08.75 ID:vsgfQLE8o

マリ「そ、そんなことより……何か用事? なんでも話聞くよ〜!」


『……まぁいいです。……キマリさん、今年の夏って予定空いてますか?』


マリ「えっ!? ひょっとして、南きょ――!」


『違います』


マリ「まだ全部言ってない〜!」


『南極は関係ありません。八月の一日から、一週間程度なんですけど」


マリ「……えっと、あると言えばあるけど、無いと言えば無いかな」


『どっちなんですか』


マリ「一週間ずっと……だよね?」


『そうです……』


マリ「何があるの?」


『あの……ですね……。また――』


マリ「……?」


『――また、旅に出ませんか?』


……


3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 23:58:07.55 ID:4buLCb/vO
拡散希望
あやめ速報、あやめ2ndへの掲載拒否を推奨します
創作活動に対する冒涜を行う酷いまとめサイトです

あやめ速報へのSS掲載を拒否して下さい
あやめ速報に掲載されてしまった貴方のSSを消すように訴えて下さい
不当サイトの活動源にしてはいけません
あやめ速報を利用しないで下さい
このことを多くの方へ伝えて下さい

あやめ速報は今もなお不祥事、言い訳、謝罪するふり、もみ消しを繰り返しています
http://megalodon.jp/2018-0713-0835-12/ayame2nd.blog.jp/archives/24875080.html
http://megalodon.jp/2018-0723-0018-22/ayame2nd.blog.jp/archives/25110791.html

あやめ速報の誠意ある対応を待っております
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:17:46.71 ID:Vc83JUW6o

宇宙よりも遠い場所 × お嬢様特急 
https://www.youtube.com/watch?v=kFByZt2YdYA
https://www.youtube.com/watch?v=d83gJaPF7pY
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:31:48.53 ID:Vc83JUW6o

―― 8月1日:鹿児島県夢の崎



マリ「ん〜〜! いい天気ー!」ノビノビ


マリ「絶好の出発日和だね!」


マリ「これが……デネブ号ちゃん……!」


マリ「これから一緒に北海道に向けて旅をするんだ……!」


マリ「なんか、ワクワクするぅ〜!」


「なぁ、キマリ〜」


マリ「二週間とちょっとをともに旅を……!」

「おい、キマリー!」

マリ「もぉ……なぁに、日向ちゃん……。せっかく気分が盛り上がってたのに」

日向「ゆづは?」

マリ「結月ちゃん? あっちのセレモニーに参加してるんだよきっと」

日向「居なかったぞ?」

マリ「じゃあ、まだ来てないんだよ。遅刻だね」

日向「さっき発車のアナウンスあったのにか……もう間に合わないだろ……」

マリ「それとも、車掌さんと打ち合わせしてるとか? 一日車掌だから」

日向「……この時間に姿が見えないっておかしくないか?」

マリ「それより、デネブちゃんにしっかり挨拶しようよ。
   私たちを運んでくれる大切な仲間なんだよ?」

日向「よろしくな。それじゃ、個室行ってくる」

スタスタスタ

マリ「仲間を蔑ろにする仲間は仲間じゃないよ!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:32:52.47 ID:Vc83JUW6o

パシャ


マリ「……?」


パシャ

「んー……、もうちょっとこう……」


マリ「あのお兄さん、デネブちゃんを撮ってる……?」


パシャ


マリ「なんであんな角度から……?」

prrrrrrrrrr


マリ「あ、いけないっ! 早く乗らないと!!」

テッテッテ


「やっべぇ!!」

ダダダダッ


マリ「よいしょ―っ!」

ピョン


マリ「セーフ!」


プシューゥ


マリ「……あのお兄さん、前の車両に乗ったのかな……?」


ガタン ゴトン


マリ「あ……」


ガタンゴトン


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「……始まったんだ」


マリ「私たちの旅が、また――」


マリ「始まったんだ……!」


……


7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:35:01.12 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「うん、出発したよ〜」


『気を付けてね、お姉ちゃん』


マリ「うん! 大丈夫だよ、だって……わくわくしてるもん!」


『その大丈夫っていう根拠もよくわからないけど……』


コンコン


マリ「あ、はーい。……それじゃ、お母さんによろしくね、リン」


『うん、また夜に電話してね』


マリ「分かってるよ。バイバイ〜」

プツッ


コンコン


マリ「はいはい〜、いま開けます〜」


ガチャ


マリ「あ、車掌さん」


車掌「失礼します。乗車証の確認をさせていただきます」


マリ「はい、どうぞ……。このピンバッチを見せればいいんですよね」

車掌「そうです。乗車中は必ず身に付け、各駅の駅員にも見える位置にお付けください」

マリ「はい、分かりました」

車掌「ご用の際は、気軽にお申し付け下さい。では、良い旅をお楽しみください」

マリ「はい、ありがとうございます!」


車掌「……」

スタスタスタ


マリ「綺麗な人だなぁ……」


日向「あまり説明されないんだな、キマリは」


マリ「説明?」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:36:28.57 ID:Vc83JUW6o

日向「私には色々と話を聞かせてくれたけどな。この列車の車両について、とか」

マリ「あぁ、うん。私も説明聞いたよ。発車する前に少し話したから」

日向「ふぅん……。っていうか、キマリ」

マリ「?」

日向「ゆづ、乗ってないぞ」

マリ「ウソ!? 乗り遅れちゃったの!?」

日向「違う。今日じゃないんだって、乗車するの」

マリ「へ?」

日向「明後日の広島から乗車するんだって車掌さんから聞いた」

マリ「……あ、そうなんだ」

日向「キマリはゆづから話聞いてただろー?」

マリ「いやぁ、発車前は忙しいから会えないって聞いてたから」

日向「あのなぁ……そういう大事なことは聞き漏らすなよぉ」

マリ「あはは……ごめんごめん」

日向「報瀬はその後だろ。……そうなると、私たちが始発から乗る意味ないわけだが」

マリ「そんなことないよ! せっかくなんだから、始発からのほうがいいじゃん!」

日向「……まぁいいけど。キマリ、暇なら車内探検しないか?」

マリ「うん、しようしよう!」

日向「それじゃあ――」

マリ「最初に行く車両は――」


日向「動力車!」

マリ「展望車!」


日向「真逆なんだけど」

マリ「気が合うね、私たち」


……


9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:38:03.32 ID:Vc83JUW6o

―― 動力車


日向「この列車の先頭車両がここか……」

マリ「あ、車掌室って書いてある」

日向「車掌さんに用事があるときくらいだな、ここに来るのは」

マリ「そうだね。あと勉強教えてもらったりとか」

日向「また他力本願か」

マリ「だって受験生だよ私たち……!」

日向「なんで崖っぷちって顔してるんだよっ」


……




―― 寝台車


日向「……で、ここが私たちの個室がある寝台車……と」

マリ「個室って結構広かったね」

日向「そうだなぁ……あの4人部屋よりはいいかもな」

マリ「船の4人部屋ね。あれはあれで楽しかったけど」

日向「そうだなぁ〜、うんうん」

マリ「なんて言うんだっけ、こういう個室部屋のこと」

日向「スィングルディラァックス」

マリ「はい」

日向「はいじゃないだろ」

マリ「シングルデラックスですね、はい」

日向「だから、はい、じゃないだろ! 言わせたろ、今!」

マリ「はい」


……


10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:39:41.21 ID:Vc83JUW6o

―― 売店車

 
日向「シャワー室もある売店車」

マリ「すごいね、至れり尽くせりだね」

日向「なにか記念になるもの売ってないかなー?」


店員「いらっしゃいませ」


日向「ここでしか売ってない、珍しいものってありますか?」

店員「それでしたら、こちら」

マリ「お?」

店員「20周年記念バッチになります」

日向「これは……鳥だな」

マリ「なんの鳥?」

店員「鵲ですよ」

マリ「カササギ……?」

日向「これが鵲かぁ〜」

店員「はい、夏の大三角形の一つです」

マリ「あれ? 大三角形は、アルタイルとデネブとベガ……」

日向「デネブがカササギなんだよ」

マリ「でもこれ、乗車証バッチは白鳥だよ? 白鳥なのにカササギ……?」

日向「あー……、一緒にしちゃったか」

店員「クスクス」

マリ「???」

店員「コホン。申し訳ありません、笑ってしまいました」

マリ「いえいえ」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:41:25.42 ID:Vc83JUW6o

店員「七夕伝説と星座を一緒にしてしまったみたいですね」

マリ「違うんですか?」

日向「違うな。星座はギリシャ神話が深くかかわっているけど、七夕は世界的な話じゃないから」

マリ「えー!?」

日向「そんなに驚くことか?」

マリ「だって、小さい頃から知ってる七夕の話だよ!?」

日向「じゃあ、キマリはギリシャ神話を知ってるのか?」

マリ「まったく知りません」

日向「だろ? 世界から見れば日本の行事なんてそんなもんだって。逆もまた然り」

マリ「えー……あんなにいい話なのに……。織姫と彦星の話は涙なしには語れない……」

日向「で、その天の川に橋となって二人を会わせたのがカササギだよ」

マリ「なるほど」

店員「お客様が身に付けている乗車証が白鳥ですね」

日向「はい、そうです」

店員「20年前に日本を縦断した列車の名前がヴェガになります」

マリ「ヴェガ?」


……


12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:43:02.96 ID:Vc83JUW6o

―― 1号客車


日向「店員さんから面白い話聞けたな。今度、報瀬とゆづにも教えてやろう」

マリ「ヴェガはハープが乗車証になってたんだね」

日向「今回は白鳥か……ふむ、いいねいいね」

マリ「テンション上がってきたね!」

日向「よーし、探検を続けるぞ、キマリ隊員!」

マリ「ラジャー!」

日向「で、だ。……一つ気になってたんだけどさ」

マリ「なに?」

日向「私らと歳の近い人って……いないのな」

マリ「そういえばそうだね。……いないね」

日向「こんなことしていいのか私たち!?」

マリ「今は今しかないからいいんだよ!!」

日向「特にキマリ! 受験勉強大丈夫かキマリー!」

マリ「付け足さないで! 日向ちゃんと一緒だから! ダイジョウブダカラ!」

日向「なんだよ一緒って」

マリ「一緒に居るからって意味」

日向「……報瀬も乗ったら勉強会しようか」

マリ「…………お願いします」ペコリ


……


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:44:24.15 ID:Vc83JUW6o

―― 2号客車


日向「客車ごとにシートの色が違うんだな」

マリ「自分がどこにいるのか色で把握できるようになってるんだね」


……




―― 3号客車

日向「ここは緑席かー」

マリ「それにしても、どんどん流れていくね、景色が」

日向「博多まであっという間だろうな〜」

マリ「次は阿蘇駅だよ」

日向「分かってるよ。夕方だろ、博多に到着するの」

マリ「着いたら何食べようかな〜?」


……


14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:45:37.70 ID:Vc83JUW6o

―― 4号客車


マリ「……あ」

日向「どうした?」

マリ「向こうから人が来るよ」

日向「先に通ってもらおう。キマリ、こっちに寄って」

マリ「あいよ」

日向「そういえば、キマリは乗り物酔いの薬、持ってきてる?」

マリ「そんなのいらねえぜ」

日向「どこからくるんだ、その自信は……」

マリ「だって――」


スタスタスタ

「……」


マリ「私はあの過酷な旅を終えたんだからな! 私たちはな!」

日向「なんのキャラだよ!」


「あの、ちょっといいかな、君たち」


マリ「はい?」

日向「?」


「少し話を聞かせてほしいんだけど……いいかな?」


マリ日向「「 話? 」」


……


15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:48:18.75 ID:Vc83JUW6o

―― 食堂車


「……で、注文は以上です」


店員「かしこまりました、少々お待ちください」


マリ「……」

日向「……」


「俺の名前は秋槻悟。適当に呼んでくれて構わないよ」


日向「歳はいくつですか?」

秋槻「いきなりそこを聞くんだ?」

マリ「大人ですよね」

秋槻「うん、まぁね。歳は今年で25だよ」

日向「私は18、こっちも18」

秋槻「じゃあ受験生だね?」

マリ「ワタシハ、マダ、17デス」

秋槻「?」

日向「現実逃避が趣味です。玉木マリです」

マリ「ソウデス、ワタシハマダ17サイノ、タマキマリデス」

秋槻「あぁ、そう……。まぁ、そうだね……うん。受験なんて言葉、もう出さないから」

日向「そうしてやってください」

秋槻「二人はどこまで行くの?」

マリ「東京までです。地元が群馬なので」

秋槻「夏休みを利用して旅行……と、いいねぇ。俺もしたかったなぁ」

日向「私は高校に通っていません」

秋槻「……どうして?」

日向「人間関係が面倒なので」

秋槻「なるほど」

マリ「……」

日向「……」

秋槻「二人で乗車?」

マリ「いえ、四人です!」

秋槻「そうなんだ……。俺の叔父もね――」

日向「……あの、ちょっといいですか?」

秋槻「う、うん? どうかした?」

日向「これって、なんです?」

マリ「?」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:50:47.07 ID:Vc83JUW6o

秋槻「これって……?」

日向「私たちを食堂車に連れてきて、根掘り葉掘り話を聞こうとしている……この状況」

秋槻「あー……、不安にさせちゃったかな」

日向「……」

マリ「話聞きたいってだけだよ?」

日向「……そうだけどさ」

秋槻「じゃあ、そうだな……俺も自己紹介をするよ」

日向「……」

秋槻「名前はさっき言ったか……。職業は……ライター関係ってとこかな」

マリ「製造会社に勤めているんですね」

秋槻「……ん?」

日向「ライターの製造販売、と勘違いしております」

秋槻「あ、あぁ……そっちじゃないよ。書き手のほう」

マリ「そっちだったかぁ」

日向「この列車に乗ってるんだからそっちしかないだろ!?」

秋槻「深読みするね、君は……」

マリ「じゃあ、旅行雑誌のライターさん?」

秋槻「ちょっと違うかな。……脚本家とか、演出家とか……そっちを目指してる」

日向「脚本家?」

秋槻「色んな人の話を聞いて、色んな人をみて、勉強してるってところ」

マリ「芸術家の卵……!」

秋槻「……大袈裟だよ、それは」

日向「……」

秋槻「……ごめん、不快にさせちゃった?」

日向「いえ、そこまでは」

マリ「食事、奢ってもらっちゃったからね、むしろラッキーだよね!」

秋槻「そう言ってもらえると助かるよ」

日向「この列車って、日本を縦断しますけど……秋槻さんはどこまで?」

秋槻「とくには考えてないんだよねぇ……。まぁ、時間はあるから最後まで行ってみようかなって」

日向「仕事は?」

秋槻「だ、だから……勉強中。……あ、一応就職はしてるよ? 仕事は無いけど」

日向「フリータ―?」

秋槻「だから、職には就いてるって……」

マリ「あ……♪」


店員「おまたせ致しました。プリンアラモードと、ジャンボパフェでございます」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:52:42.81 ID:Vc83JUW6o

マリ「キタ! プリン♪」

日向「って、でかッ!?」

秋槻「ご、50cmはあるね」


店員「それでは、ごゆっくりどうぞ」

スタスタスタ


マリ「いただきま〜す♪」

日向「いただきまーす」

秋槻「どうぞどうぞ」

マリ「パクッ」

日向「はむっ」


マリ「ん〜〜っ」

日向「お〜〜っ」


マリ日向「「 あま〜い!! 」」


秋槻「幸せそうでなにより」

マリ「いままで食べた中で3番目くらいの美味しさだよ!」

日向「1番にしとけ、キマリ。ここは1番にしとくもんだぞキマリ」モグモグ

マリ「そうだね、それじゃ1番で」モグモグ

秋槻「その会話、コックさんに聞かれたら怒られるよ?」

マリ「もぐもぐ」

秋槻「……食べるのに夢中で話できそうにないね」

日向「もぐもぐ……くぅ、食べても食べても底が見えない幸せ♪」

マリ「お兄さん、発車前にデネブちゃんを撮ってましたよね」モグモグ

秋槻「え? あぁ、見られてたんだ……。そうだよ」

マリ「変な角度から撮ってるな〜って」モグモグ

秋槻「車体と風景だけを撮りたくてね。まだマスコミがいたから苦労したよ」

マリ「甘いね!」

秋槻「え!?」

マリ「このとろけるような甘さ! 絶品だよ! やっぱり2番にしとくよ、日向ちゃん!」

日向「色んな意味で人の話聞けよ! 1番にしとけって言っただろ、あと秋槻さんの話も聞け!」

マリ「はい」モグモグ

秋槻「写真撮影の心得がなってないって言われたかと思った……」

マリ「もぐもぐ……。あぁ、もう無くなっちゃう」

日向「もぐもぐ……。あぁ、まだ底が見えない」

秋槻「……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:55:57.34 ID:Vc83JUW6o

マリ「お兄さんはヴェガって知ってます?」

秋槻「夏の大三角の一つの?」

マリ「そうじゃなくて……。超特急ヴェガのこと」

秋槻「うん、知ってる。20年前を走った列車のことだよね」

日向「もぐもぐ」

マリ「詳しく知ってたら教えて欲しいんです!」

秋槻「調べた程度の情報だけど、それでいい?」

マリ「うん」モグモグ

秋槻「超特急ヴェガは、今日と同じ日に北海道の稚内を出発し、
   15日間をかけて日本を縦断したんだ」

日向「もぐもぐ」

秋槻「稚内を出発後、順に札幌 青森 仙台 東京……
   終着駅は、さっき俺たちが出発した夢の崎駅だね」

マリ「ふむふむ」

日向「ということは、今回のデネブはその逆を進行するのか」

マリ「逆だったんだね」

秋槻「各都市を24時間停車。車内の設備はデネブとヴェガ同じ」

日向「ふぅん」

秋槻「ヴェガは北から南へ。デネブは南から北へ。……違いはそれだけみたい」

マリ「ううん、違うのは他にもある」

秋槻「?」

マリ「乗客だよ」

日向「……」

秋槻「……確かに。その通りだ」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 01:57:11.39 ID:Vc83JUW6o

マリ「ごちそうさまでした」

日向「これ、さっき売店で買ったんだけど」

秋槻「ピンバッチ?」

日向「20周年記念の限定品」

秋槻「それは急いで買わないと……」ガタ

日向「話は終わり?」

秋槻「うん、ありがと。……と、そうだ」

マリ「?」

秋槻「展望車に君たちの仲間になれそうな子がいるよ。……それじゃ」

日向「展望車?」

マリ「誰だろ……気になる!」ガタッ

日向「あ、ちょっと待て! まだ食べ終わってない〜!」

マリ「先行ってるね、日向ちゃん!」

テッテッテ


マリ「ごちそうさまでした!」

店員「あ、ありがとうございました……」


……


20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:01:16.51 ID:Vc83JUW6o

―― 娯楽車


ちゅどーん

 ばばばばばーん


マリ「お、おぉ……!」

店員「遊んで行かれますか?」

マリ「はい!」

店員「メダルゲームとビデオゲームが――」

マリ「あ、そうじゃなかった! すいません、また後で日を改めてきます!」

店員「は、はぁ……?」

マリ「ゲームしてる場合じゃないっ」


……


21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:02:19.05 ID:Vc83JUW6o

―― 展望車


マリ「お仲間は〜どこ〜?」


「……」


マリ「って、どんな人なのか聞いておけばよかったなぁ……」


「……」


マリ「おぉ……空が見える……。眩しいけどそこまで暑くない」


「……」


マリ「……あ」


「……?」


マリ「じー……」


「……」スッ


マリ「あの」

「……?」

マリ「お名前は?」

「え――?」


……


22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:03:53.79 ID:Vc83JUW6o

―― 阿蘇駅


マリ「う〜ん、いい景色〜」

「……」

マリ「ここね、本当は阿蘇駅じゃないんだよ」

「?」

マリ「デネブちゃんが通るから今日一日だけ特別に阿蘇駅になってるんだ〜」

「……」

マリ「って、車掌さんから教えてもらった」

「……そうなんだ」


「おーい、キマリ〜」


マリ「あ、日向ちゃーん」


日向「車内全部探しちゃったよ」

マリ「停車したから外に出てみようと思って」

「……」

日向「あ、その子が?」

マリ「うん、そう」

「?」

日向「私は、三宅日向。よろしくな!」

「は、はい……」

日向「というか、若いな!」

マリ「今年15になるんだって」

日向「ふぅん……って、中三かぁ」

マリ「若いっていいよねぇ」

「……っっ」

日向「困ってるだろぉ」

マリ「日向ちゃんが先に言ったんだよ」

日向「いや、言ってない」

マリ「若いって言った」

日向「言ってな――……いや、言ったな。そんなことより、名前は?」

「わ、私は……」

マリ「みこっちゃん」

日向「はい?」

マリ「みことちゃんだから、みこっちゃん」

日向「みこと、ね」

みこと「…………」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:04:49.56 ID:Vc83JUW6o

そよそよ


マリ「ん〜、ここではこんな風が吹くんだねぇ」

日向「風が運ぶのは空気だけではない。人の気持ちも乗せていくのである」

マリ「出た、名言!」

みこと「……誰のお言葉なんですか?」

日向「私!」

みこと「……」

マリ「困ってるでしょぉ?」

日向「フッ……。旅は人の心を運んで行く……、それはまるで風のようだ」

マリ「風と旅はどこか似ているね」

日向「そうだな……どこかで生まれて、どこかへ消えていく……」

マリ「儚いね」

日向「あぁ、儚い」


みこと「…………」


日向マリ「「 困ってるだろぉ(でしょぉ) 」」


日向「キマリが変なこと言うから」

マリ「日向ちゃんが変なこと言うから」


みこと「……」


マリ「う〜ん……笑わないね」

日向「というか、リアクションが無い……」


……


24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:06:26.49 ID:Vc83JUW6o

―― 1号客車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「動き出したよ」

日向「そうだな〜……まだまだ始まったばかりだ」

みこと「……」

マリ「みこっちゃんはどうしてこの列車に?」

みこと「……私の」

日向「?」

みこと「両親に勧められて……」

マリ「どこ出身なの?」

みこと「埼玉……」

日向「じゃあ、東京で降りるんだ?」

みこと「……うん」


スタスタスタ

秋槻「……あ、もう仲間になれたんだ?」


マリ「もちろん」フフン

日向「なんでしたり顔なんだよ」

みこと「……」

マリ「買えました?」


秋槻「うん、最後の一個だった。……それじゃ、ね」

スタスタスタ......


マリ「ういうい」

日向「もう売り切れたのかぁ、そんなに時間たってないのに」

みこと「……?」

マリ「記念のバッチが売られてたんだよ。私たちは一つでいいかなって」

日向「そうそう、4人で一つ」

みこと「4人……?」

マリ「あとで、結月ちゃんと報瀬ちゃんが乗って来るの。旅仲間だよ」

みこと「……」

日向「……ん?」

マリ「どうかした?」

日向「……なにか引っかかったんだけど……まぁいいや」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:07:59.12 ID:Vc83JUW6o

マリ「みこっちゃんは一人旅?」

みこと「……はい」

マリ「じゃあ寂しくなったらいつでも話しかけてね、私は……私たちはいつでもオッケーだから」

日向「その私たちには私も入ってるんだよな……。別にいいけど」

みこと「……」

マリ「あ……もしかして一人の方がいいのかな」

みこと「……そんなことは」

マリ「それならよかった」

日向「今は真新しい事ばかりだから新鮮で楽しいけど、
   それも慣れてきたら退屈するからな」

みこと「……」

マリ「無理に誘ったりしないから安心して。でも大体は無理に誘うから」

日向「それを矛盾という」

みこと「……」

マリ「やっぱりガイドブックは必要だよね、売店にあったかな」

みこと「……」コクリ

マリ「あ、あったんだ? じゃあ後で買いに行こう〜」

日向「そうだ、ゆづのことで気になってたんだけどさ、キマリ」

マリ「なに?」

日向「ゆづって、こういう……一日車掌ってやりたがらないと思ってたんだけど」

マリ「そう?」

日向「だって、アイドルみたいだし」

みこと「……」

マリ「うーん……」

日向「なんだか、妙に乗り気だったように思えてさ……気になってたんだよ」

マリ「なんか、話を聞いたって言ってた」

日向「話?」

マリ「そう、旅の話。……誰から聞いたのかは分からないけど」

日向「……そうか」

みこと「……ゆづきって人、アイドルなの?」

日向「……それは」

マリ「そうだよ」

日向「嫌がるだろ、そういう風に分けると」

マリ「大丈夫だよ。今は居ないから」

日向「適当だな、お前は……。まぁ、どちらかというと、女優かな」

みこと「……女優、アイドル……ユヅキ……結月? 白石結月?」

マリ「正解! よく分かったね!」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:09:15.89 ID:Vc83JUW6o

日向「フォロワー5万人の有名人だからな」

みこと「……」

マリ「デネブちゃんで一日車掌するんだって。だから私も誘われたんだ〜」

みこと「……」

日向「相変わらず反応が無いな〜。一応有名人だぞ! 朝ドラの友人役で出てるだろ!?」

みこと「……うん」

マリ「あの大物女優、飯山みらいと共演したんだよ?
   サインを貰ってきてって言ったら断られたけど!」

日向「私、そういうの嫌いです」フンッ

マリ「そう、こんな風に!」

みこと「……」

日向「まぁ、でも……私と報瀬とキマリの分、三枚貰うってのは……さすがにダメだよなぁ」

マリ「私のだけで良かったのに」ボソッ

日向「聞こえたぞ。抜け駆けするくらいの薄い友情なのか私たちは」

マリ「……」

みこと「……」

マリ「そんなことないよ!」

日向「今の間はなんだ!」

みこと「貰えなかったんだ……」

マリ「ううん、結月ちゃんは貰ってたよ」

みこと「?」

日向「『結月さんへ』って書いてあったな。それを自慢げに見せられたよ」

マリ「それからはもう大げんか。私のだー、私のだーってサイン色紙の奪い合いだ」

みこと「……」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:10:10.19 ID:Vc83JUW6o

日向「私の名前が書いてあるから私のなんですぅ!」

マリ「うるせぇぃ! そんなのはちっさい問題でぇぃ!」

日向「やめてください! やめてくださいぃ!」

マリ「離せぇぃ! そう簡単に渡してたまるかぁぃ!」

日向「ひぇぇ、あんまりですぅ!」

マリ「泣いたって無駄でぇぃ! とっとと諦めやがれぇぃ!」

みこと「……」

日向「どこ向かってるんだ、これ」

マリ「……博多」

日向「そうだな」

マリ「……」

日向「……」

みこと「……」

マリ「やっぱりラーメンだよね、博多と言えば」

日向「明太子じゃないか?」

みこと「今のは……なに……?」

マリ「なにが?」

みこと「小芝居?」

マリ「え? ん? 芝居?」

みこと「芝居じゃないの?」

マリ「柴犬?」

日向「見事に話が噛み合っとらんなぁ」


……


28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:11:04.17 ID:Vc83JUW6o


―― 売店車


マリ「ガイドブックください」

みこと「……」

店員「はい、どうぞ」

マリ「ほぉ、どれどれ〜」

ペラペラ

マリ「みこっちゃん、どこ行くか決まった?」

みこと「……ううん。よく知らないから」

マリ「じゃあ、一緒に観光行く? 日向ちゃんも一緒に」

みこと「……」

マリ「早めに行くとこ探そう」

みこと「……日向さんは?」

マリ「私に任せるって」


……


29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:12:18.65 ID:Vc83JUW6o

―― 4号客車


日向「ん〜……嫌な予感がする」


車掌「どうかなさいましたか?」


日向「あ、車掌さん」

車掌「心配事でしょうか?」

日向「聞かれましたか? いやぁ、キマリが……
   一緒に乗った相方が勝手に話進めてそうで」

車掌「と、いいますと?」

日向「次の観光地、私に相談も無しに決めてそうだなぁって予感がして」

車掌「まぁ」クスクス

日向「どこかお勧めスポットってありますか?」

車掌「そうですね……。中洲なんてどうでしょう」

日向「ナカス?」

車掌「西日本一の繁華街です」

日向「そっかぁ……。でも私たち、東京を知ってるからなぁ……なんちゃって」

車掌「旅先で、見知らぬ土地に来たと実感できる要素はいくつかありますが」

日向「?」

車掌「その気持ちを大きく占める要素の一つに方言……つまり、その土地の言葉があります」

日向「言葉……?」

車掌「馴染みのないイントネーション、言葉は同じなのに意味が全く異なったりとか……色々」

日向「…………」

車掌「一日の停車ですから、現地の人とのコミュニケーションは中々難しいことだとは思いますが――」

日向「それ面白そう!」

車掌「……」

日向「話しかけるのは無理かもだけど、聞き耳を立てるくらいはできる!」

車掌「くれぐれも」

日向「分かってますよ〜。盗み聞きはしませんって〜あはは」

車掌「それなら良かったです」

日向「他に、他にありますか? 実感できる要素!」

車掌「食べ物がそうですね。あとは、自動販売機なども面白いかもしれません」

日向「え、自動販売機? 飲み物?」

車掌「常識が土地ごとに違うのですから、販売されている飲み物も多少は違いますね」

日向「おぉー……例えば、プリンシェイクとか」

車掌「?」

日向「あぁ……車掌さんが知らないってことは、あれは地元でしか売られてない……!」

車掌「ふふ、そういうことです」


……


30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:13:19.38 ID:Vc83JUW6o

―― 3号客車


マリ「プリンシェイクは全国区だよ!?」

日向「……え、そうなの?」

マリ「そうなの!」

日向「だってキマリしか飲んでないじゃんあれ!」

マリ「じー……」

日向「どうすんだよ! 車掌さんに間違った情報教えちゃったよ!!」

マリ「訂正してきて」

日向「いや……でも、車掌さん知らなかったし」

みこと「……」

日向「みことも知らないだろ!? プリンシェイクっていう飲み物」

みこと「……」チラッ

マリ「……」コクリ

みこと「……知らない」

マリ「あれ?」

日向「いまアイコンタクト取らなかったか?」

みこと「嘘ついて話し合わせるより、本当のこと言った方がいいと思って」

マリ「あ、そうだったんだ……。私に話合わせてくれるのかと思ったよ」

日向「私もそう思ったよ」

みこと「……」

マリ「目標を立てよう」

日向「突然だな……なんの目標?」

マリ「この旅の目標!」

日向「いいだろう、言ってみたまえ」

みこと「……」

マリ「みこっちゃんは私たちと意思疎通できるようになること!」

日向「人の目標を勝手に……。まずは自分の目標を決める方が先だと思いまーす」

マリ「私はほら、勉強があるから……受験生だし」

みこと「……」


……


31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:14:38.12 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「うぅ……まさかこんなことになるなんて」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「揺れてる中で勉強なんて無理……!」

ガタッ

マリ「……むん!」


ガチャ


マリ「よし……!」


「おやおやキマリさん、どちらへ行こうというのですか〜?」


マリ「ギクッ」


日向「受験生だから勉強しなきゃいけませんよねぇ」

マリ「いやぁ、ちょっとシャワーを浴びに」

日向「こんな時間にぃ?」

マリ「……」

バタン


みこと「戻った……」

日向「な、私の言った通りになっただろ?」

みこと「……うん。数分で出てきた」


……


32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:15:11.79 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「……」

ガタンゴトン

 ガタン


マリ「あ……」


ゴトン


マリ「減速した!」


ガタン

 ゴトン


マリ「着いたんだ……!」


……


33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:16:27.56 ID:Vc83JUW6o

―― 博多駅


マリ「最初の停車駅、到着!!」

日向「キマリって、いつ勉強するつもりなんだ?」

マリ「博多に着いて最初の言葉がそれ?」

日向「いや、だってさ……列車で移動してるときは揺れててできないだろ?」

マリ「うん」

日向「着いたら着いたで観光だーって言うな?」

マリ「うん!」

日向「だから、いつ勉強するのかなって。親と約束したって言ってたのに」

マリ「寝る前にするよ。うん、もちろん」

日向「……」

マリ「嘘じゃないもん」

日向「……」

マリ「信じてよ〜!」

日向「別に、否定してないだろ」


秋槻「二人で観光?」


マリ「みこっちゃんを待ってます」

秋槻「……みこ……?」

日向「あー……、新しい仲間ですよ」

秋槻「あぁ、あの子の名前ね。さっそく仲良くなったんだ。いいね、若いって」

マリ「お兄さんの7年前を私たちは生きてます!」

日向「おぉ、名言っぽい!」

秋槻「……言われた方は傷つくんだけどね」


みこと「……?」


マリ「あ、来た」

日向「準備できたかー?」

みこと「うん」


秋槻「じゃ、観光楽しんでね」

スタスタ


マリ「はーい」

みこと「……あの人」

日向「あんまり知らないけど……まぁ、同じ列車に乗ったよしみってことで」

みこと「……」

マリ「よし、それじゃ海の中道へレッツゴー!」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:17:49.44 ID:Vc83JUW6o

日向「レッツゴー! ……って待てぇぇぃい!!」

マリ「……?」

日向「いやいや、キョトンとするな」

みこと「……?」

日向「お前もだよ! なんで私に相談もなく決めた!?」

マリ「日向ちゃんの気持ちに応えようと思って」

日向「私の反応はどうだ、みこと」

みこと「驚いてた」

日向「それは私の気持ちに応えられてないってことなんだよ」

マリ「大丈夫だよ、夏休みは21時までやってるから」

日向「だぁれが時間を気にしたかー!?」


車掌「どうかなさいましたか?」


日向「車掌さーんっ、やっぱりキマリが勝手に観光地決めてましたぁ〜」ウルウル

車掌「まぁ」


マリ「この時間ならウミホタルの発光実験に間に合うよ」

日向「やったー! 行こう行こう! 光の実験なんて楽しみだな〜♪」

みこと「……」

日向「ってならないからな、そんなマニアックなイベントで。
   イルカショーが無いなら私行かないぞ!」プンスカ

マリ「今から急げば間に合う!」

日向「じゃ、車掌さん、行ってきまーっす!」

車掌「行ってらっしゃいませ」

日向「ほら、行くぞみこと!」

みこと「……驚いたり泣いたり怒ったり笑ったり」

マリ「これが日向ちゃん」


……


35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:19:44.22 ID:Vc83JUW6o

―― 海の中道


日向「おぉ、これがウミホタル……!」

マリ「日向ちゃんっ、イルカショー!」

日向「思ったより神秘的だなぁ……」

みこと「……」

日向「綺麗だなぁ……みこともそう思うだろ?」

みこと「……うん」

日向「だよな……へぇぇ……ほぉぉ」

みこと「……」

日向「おぉ、ここからの角度もいいねぇ」

みこと「日向さん」

日向「これがさ……海の中に居るんだぞ……想像してみ?
   大きな大きな海の中をこの幻想的な光が漂う姿を」

みこと「……」

日向「海の大きさに比べれば、人間は小さな存在だけど」

みこと「……」

日向「この姿を想像して想いを深められるのもまた、人間だけなのだよ」

みこと「……」

日向「人間は小さい存在だけど、海のように大きな存在でもあるんだ」

みこと「キマリさん、行ったよ」

日向「は?」


……




『イルちゃん、ルカちゃんに盛大な拍手を〜〜!』


マリ「わぁー!」パチパチパチ


パチパチ

 パチパチパチ


子「あーんな高くジャンプしてたっ」

親「すごかったねぇ〜」


マリ「海の生き物の生命力ってすごいね……うんうん」ウンウン


日向「こら」


マリ「あ、日向ちゃん。イルカショー、もう終わっちゃったよ」

日向「だろうな……。イルカたちも一仕事終えたぜって感じで泳いでるもんな」

みこと「……」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:21:29.50 ID:Vc83JUW6o

マリ「はぁ〜、満足満足。……さ、デネブちゃんに戻ろうか」

日向「なんで置いてった?」

マリ「ずっと呼び掛けてたのに聞かないからだよ。ね、みこっちゃん」

みこと「うん」

日向「そりゃ、あれだけ幻想的な光に魅せられたら足は止まるよ。動かないってもんよ!」

マリ「いくらなんでも一時間はないよ。ないよ、一時間は……いくらなんでも」

日向「二回も言うな」

みこと「オットセイは、見た?」

マリ「私が来たときは終わってたよ」

みこと「残念だったね」

マリ「うーん……。私たち、アザラシ見てるから、そうでもないかな。イルカが可愛かったな〜」

みこと「アザラシ……?」


日向「あ、寄ってきたぞ、イルカ」


マリ「そう、アザラシ〜。並んで横になったんだ〜」

みこと「……?」


日向「きゅいきゅ〜い」

イルカ「キュイ」

日向「あはっ、可愛い〜」


マリ「日向ちゃ〜ん、親不孝通りはいいの〜?」


日向「どこだよそれ。中洲に行くんだぞ」

みこと「若者が集まってた場所って、ガイドに」

日向「過去形か」

マリ「まぁ、私みたいな親孝行者が行くところじゃないよね〜」

日向「そうだな〜。若者は何事にも勉強だからな〜。
   キマリのお母さんは心配事が少なくて安心だろうな〜」

マリ「もぉ、また勉強って単語出して。
   それ言えば私が大人しくなると思ったら大間違いだよ!」

日向「何言ってんだ。勉強ってのは単語を覚えることだけにあらず。
   人は生涯勉強する生き物なんだからな」

マリ「そっか……! そうだったんだ……!
   みんな勉強中なんだ! 良いこと言うね日向ちゃん!!」

みこと「テレビかなにかで聞いたことある」

日向「あ、バレた? 人生経験豊富な爺様が言っててさ感銘を受けたね私は」

マリ「なんだ……」


……


37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:23:25.00 ID:Vc83JUW6o

―― 中洲


日向「ふーむ……」

マリ「喉乾いたの?」

日向「いや、ちょっとね〜。珍しいモノを探して」

マリ「あ……!」

日向「マジか……!」

マリ「プリンシェイク!!」

みこと「……あ」


秋槻「ん……飲みすぎたか」


みこと「……」


ガシャン

マリ「ふふふ」

日向「買うなよ! 博多まで来て!」

マリ「だってぇ……買わずにはいられなくって」

日向「どうせ買うならこっちだろ、みかんジュース」

マリ「日向ちゃんが買いなよ〜。私はこれがあれば充分♪」

日向「あ、そ。……みことも飲むか? って、あれ?」

マリ「ぷはー、おいしかった〜。やっぱりこれだね」

日向「もう飲んだのかよ。それより、みことどこ行った?」

マリ「え?」


秋槻「すぅ……ふぅ……」

みこと「……」

秋槻「?」

みこと「……」

秋槻「あれ? 君、どこかで会った?」


日向「ちょっと! 相手中学生ですよ! いい年した大人がナンパなんて――」

マリ「お兄さんだ」

日向「なんだ、驚かすなよなぁ」

秋槻「……通りで見たことあるはずだよ」

みこと「具合悪そうだったから」

マリ「本当だ……。この人の多さに酔っちゃったんだね」

日向「そっか……。田舎から出てきてこの大都会の雰囲気に飲まれちゃったんだな……」

秋槻「酒に酔ってんの。……田舎から出てきて中学生をナンパって最低じゃないか、俺……」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:24:38.26 ID:Vc83JUW6o

マリ「お酒? アルコール?」

秋槻「そこの焼き鳥屋でね」

日向「おぉー、屋台だ! テレビで見たことある! もちろん入ったことはない!」

マリ「私もない! みこっちゃんは?」

みこと「ううん」フルフル

秋槻「橋の向こう側も賑わってるよ。
   行くなら早めの方がいいね、これから人も増えるだろうから」

日向「煙と匂いが凄いな〜!」ワクワク

マリ「何食べる? 何食べる!?」ワクワク

みこと「……おでん、焼き鳥、ラーメン?」

日向「全部食べるのかよ、みことは見かけによらず大食いだな〜」

マリ「それいいかも! でもちょっとずつにしよう!」

みこと「……うん」

秋槻「いや、もうそんな時間は……」

日向「あ、キマリ―、もうこんな時間ダゾー」

マリ「ホントウだー。追い返されちゃうカモ―」

秋槻「……」

日向「じー」

マリ「じぃー」

みこと「……」ジー

秋槻「そうだね……、責任者が居れば追い返されないかもね。何が食べたいの?」


……


39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:26:11.11 ID:Vc83JUW6o

―― 屋台


マリ日向「「 いただきまーす! 」」

みこと「いただきます」

秋槻「……酒の締めにラーメン……俺もいよいよって感じだなぁ」

日向「ずるずるっ」

マリ「ん〜〜っ」


日向マリ「「 おいしぃ〜〜 」」

秋槻「この光景、昼にも見たんだけど……まぁいいか」

みこと「……はい」

秋槻「……? 水?」

みこと「もう空だったから」

秋槻「あぁ、ありがとう」

日向「やっぱり屋台で食べるラーメンは一味違うな〜!」

マリ「うんうん……ずるずるっ」

みこと「もぐもぐ」

秋槻「ずるずる……ん、うまい」


……




日向「ごちそうさまでしたー」


店長「はいよ、またきんしゃい」


日向「また博多来た時に寄りまーす」

マリ「面白いね、博多弁って」

みこと「……うん」

日向「はぁ〜、おいしかった〜。ちゃんぽんっていいな!」

みこと「あの、お金……」

秋槻「え? いやいいよ、これくらい奢るって」

みこと「でも……」

秋槻「話聞かせてもらったから、お礼ってことで。そっちの二人もそうしたから」

日向「でもなんか悪いっちゃ。本当に奢ってもらってよかと?」

マリ「よかよ! 気にせんといてー」

秋槻「なんで君が言うかな……いいけど」

みこと「……」

日向「気にせんでよかー、じゃないのか?」

マリ「そっちっぽい」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:27:00.17 ID:Vc83JUW6o

みこと「……」

秋槻「社会人に気を遣わないくてもいいよ。
   まぁ、他人だったわけだし、難しいだろうけどさ」

日向「そうだな、お礼言ってないぞ、キマリ」

マリ「ごちそうさまでした、お兄さん」ペコリ

日向「ごちそうさま〜」

秋槻「うん」

みこと「……ごちそうさまです」

秋槻「はは、なんだか親戚の子を相手してるみたいで面白い」

マリ「あ、あそこからいい匂いが」

日向「秋槻おじさん、焼き鳥をお土産によかと?」

秋槻「もう時間も遅いし、列車に戻るよ!」

みこと「……」

マリ「怒られたよ、日向ちゃん」

日向「なんだよ、フリだったんじゃないのか、今の」

マリ「えー、チガウヨー」

秋槻「君たちの性格、よーく分かったよ」

日向「お礼と言っちゃなんだけど、ジュース奢っちゃる!」

マリ「じゃあ、私も〜」

みこと「……」


……


41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:46:38.85 ID:Vc83JUW6o

―― デネブ


マリ「それじゃ、おやすみなさ〜い」

日向「おやすみー」

みこと「……」ペコリ


秋槻「お休み」


テッテッテ

「シャワー浴びてさっさと寝よう、明日に備えて」

「あれ、勉強は?」

「ふぇぇぇ」

「……また、明日」

「おやすみ、みこっちゃん〜……ふぇぇ」

「泣くなよ。じゃあな、みこと〜」

「うん」


秋槻「ずっと元気だな……」


車掌「おかえりなさいませ」


秋槻「あぁ、車掌さん……こんばんは」

車掌「一緒に観光ですか?」

秋槻「いえ、中洲で会って……そこで一緒に夕飯を」

車掌「そうですか。なんだか嬉しいです」ニコニコ

秋槻「……俺もあの歳の頃ってあんなだったかなぁって思い返すんですけどね」

車掌「ふふ、女子と男子では違うものですよ」

秋槻「それもそうですね。……ところで、車掌さん」

車掌「はい?」

秋槻「これ、貰い物ですけど、どうですか?」

車掌「まぁ……。これがプリンシェイクですか」

秋槻「つぶ入りみかんと一緒に貰ってくれると助かります」

車掌「どうしたんですか、缶ジュースを三つも……?」

秋槻「あの子たちにお礼ってことで貰ったんですけど……みかんはともかくプリンは……」

車掌「よろしいんですか?」

秋槻「プリンはここじゃなくても飲めますからね」

車掌「本当はいけないんですが……お言葉に甘えて」

秋槻「どうぞどうぞ」

車掌「話を聞いて少し興味があったんです」

秋槻「それはよかった」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:47:48.23 ID:Vc83JUW6o

車掌「それでは、仕事がありますので、私はこれで失礼します」

秋槻「あ、車掌さん」

車掌「はい?」

秋槻「車掌さん、ヴェガに乗ってたんですよね」

車掌「はい」

秋槻「20年前も……ヴェガもこんな雰囲気だったのでしょうか?」

車掌「はい、そうですよ」

秋槻「……そうですか」

車掌「乗客は変わっても、人の心は変わらないものですね」

秋槻「……?」

車掌「人は何かを求めるから、旅に出るのでしょう」


……


43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:49:16.35 ID:Vc83JUW6o

―― マリの個室


マリ「……」カリカリ

マリ「……む」

マリ「公式、忘れちゃった……どこにあったかな」

ペラペラ

マリ「あったあった……」

マリ「……」カリカリ


日向「……」


マリ「……」チラッ


日向「……」


マリ「……日向ちゃん、参考書読むだけ?」


日向「んー」


マリ「……こほん」


日向「……」


マリ「……」スッ


日向「……キマリさん?」


マリ「……はい?」


日向「それ、違う参考書ですよね」


マリ「そうですね」


日向「数学の勉強に必要ですか?」


マリ「いいえ」


日向「……」


マリ「なんでバレたんだろ……本読んでるはずなのに……」


日向「手の動き止めてこっちの様子見るからだろ。怪しすぎて気になる」


マリ「……」


日向「集中しないと身に付かないぞー」


マリ「はーい」


日向「……」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/01(水) 12:55:55.96 ID:Vc83JUW6o

マリ「……」カリカリ


日向「……あのさ、キマリ」


マリ「ん〜?」カリカリ

日向「みことって、無理してるかな」

マリ「どうして?」

日向「あんまり喋らないし、反応も無いからさ、無理して一緒にいるのかなって」

マリ「日向ちゃん、気が付かなかった?」

日向「なにが?」

マリ「みこっちゃん、屋台で美味しそうに食べてたよ」

日向「それは知ってるけど」

マリ「心配?」

日向「んー……そうだなぁ。デネブに乗った理由って親に勧められたからだろ」

マリ「そう言ってたね」

日向「親の目も無いし、自由だー! 観光だー! ってキマリみたいにならないのかなって」

マリ「うーん……私、そんなにノビノビしてるかな」

日向「してるしてる」

マリ「みこっちゃんのことは気にしなくてもいいと思うよ」

日向「そうだな……。ちょっとお節介だったか」

マリ「そうじゃなくて。これから、だから」

日向「だな。旅はまだ始まったばかりだ……」スクッ

マリ「部屋戻るの?」

日向「うん。それじゃ、お休み」

マリ「また明日ね〜」

日向「勉強勉強ってしつこく言ってた私が言うのもなんだけど、あまり遅くまでやるなよ?」

マリ「そうだね、これでお終いにするよ」

日向「あともうちょっと頑張れよ……。あと、寝坊するなよ〜」

ガチャ

 バタン

マリ「うー……」


……




―― みことの個室


『フォローバックが止まらない〜♪』


みこと「……」


……


45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/03(金) 11:59:15.97 ID:Ziseypbso

―― 8月2日


日向「おはよー。よく眠れたかー?」


みこと「うん」

マリ「……」


日向「ふぁぁ……やっぱり二度寝はいいですなぁ」

マリ「……」

日向「って、どうした、キマリ?」

マリ「あのね、日向ちゃん……」

日向「う、うん……。なんか、テンション低いな……」

マリ「結月ちゃんのこと……なんだけど……」

日向「……うん……ゆづが……どうした?」

マリ「あの……」

日向「……ごくり」

マリ「どんな人なのって……みこっちゃんが」

日向「はい?」

みこと「……」

日向「深刻な面持ちで言うことか?」

マリ「どう説明したらいいかなって考えたら難しくて」

日向「とりあえず、朝ごはん食べに行くぞ」

マリ「……結月ちゃん……って、うーん……」

日向「なんでそんなことを? 明日乗って来るのに」

みこと「気になるから」

日向「ふぅん」


……


46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/03(金) 12:03:29.02 ID:Ziseypbso

―― 食堂車


店員「いらっしゃいませ」


日向「あれ、結構空いてる」

店員「皆様、もう出られましたよ」

日向「なんだ、私たちが遅かったのかぁ」

みこと「まだ9時なのに……」

日向「夕方ですよね、出発するの」

店員「そうですよ。お好きな席へどうぞ」

日向「奥の席に座るか」

みこと「うん」

マリ「うーん……」

日向「何を悩む必要がある?」

マリ「ちゃんと伝えないと、結月ちゃんの第一印象に関わるでしょ」

日向「テレビで見たことは?」

みこと「ある」

日向「それでいいと思う。テレビの印象とあまり変わらないからなー。
    そんなことより、注文だ」

みこと「洋食」

日向「キマリは?」

マリ「……うーん」

日向「モーニングの洋食二つと、和食一つでお願いします」

店員「かしこまりました」

日向「もう一度聞くけど、なんでゆづのこと知りたいんだ?」

みこと「話を聞いてたら、印象と違うから」

日向「そうかぁ?」

マリ「そうだ、分かった!」

日向「どした、急に……」

マリ「日向ちゃん、結月ちゃんの物まねしてよ」

日向「はぁ、しょうがないですね」

みこと「……始まった?」

日向「キマリさんはいつも唐突ですからね」

マリ「今日はこの姿を見て理解してくれればいいよ」

みこと「うん……」

日向「今日一日ずっとか!?」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/03(金) 12:05:04.26 ID:Ziseypbso

マリ「日向ちゃん好きだよね、結月ちゃんの真似するの」

日向「ずっとやってても面白くない。たまーにやるのがいいんだよ」

みこと「……」ジー

日向「や、やだ……そんなジッと見られると恥ずかしいですぅ……おほほ」

マリ「絶対に言わないよね、それ」

日向「そんなことより、今日は夕方までどうするか決めよう」

みこと「……」

日向「はやく決めて、キマリ」

マリ「それ、報瀬ちゃんでしょ」

日向「お、よく分かったな」

マリ「もぉ、真面目にやってよ」

日向「お前な……人の真似を真面目にやれってどうなんだ」

みこと「……」ジー

日向「分かったよ……」

マリ「スペースワールドは?」

日向「それはどういう観光地なんですか、キマリさん」

マリ「宇宙がテーマのテーマパークなんだって」

日向「私たちにぴったりな場所じゃないですか! キマリさん!」

みこと「……閉園してるよ」

マリ「ゑ!?」

日向「なにー!?」

みこと「……」

日向「あらやだ私ったらはしたない……おほほ」

マリ「閉園ってどういうことみこっちゃん!」

日向「どういうことなんですか、キマリさん!」

マリ「私が聞いてるの!」

みこと「言った通りだけど」

マリ「なんだ……宇宙に一番近い場所だったのに」ガッカリ

日向「残念ですね、キマリさん」

店員「おまたせしました、モーニングセットです」

日向「あ、来ましたよ、キマリさん」

マリ「なんでいちいち私の名前を呼ぶの?」

みこと「……」


……


48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:35:41.90 ID:fg1dRoV1o

―― 博多駅


日向「結局、行先も決まらず外に出てきましたが……どうするんですか、キマリさん」

マリ「私、行ってみたいところがあるんだよね〜」

日向「それはどこです、キマリさん」

マリ「屋久島」

日向「世界遺産ですか、いいですね。無理ですけど」

マリ「縄文杉が見たいんだ」

日向「無理だって言ってるじゃないですか」

みこと「太宰府天満宮は?」

日向「それはどこですか、キマリさん」

マリ「……太宰府天満宮にあるよ。なんか適当になってない、日向ちゃん?」

日向「もう飽きたんだよ! やーだー! もうやりたくなーい!」

みこと「……」


……


49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:39:55.31 ID:fg1dRoV1o

―― 太宰府天満宮・近辺


日向「おいしいな、これ」モグモグ

みこと「お昼、これでいいの?」

マリ「うん」モグモグ

日向「うちでやってる豚まんより豚まんだな」モグモグ

マリ「そだね」モグモグ

みこと「饅頭屋さん?」

日向「違うよ、バイト先のコンビニ」

みこと「キマリさんも?」

マリ「私は辞めたよ」

みこと「……日向さん、受験生なのに続けてていいの?」

日向「私、学校行ってないからな」

みこと「…………」

マリ「それでも合格判定Aだからすごいよね。去年の話だけど」

日向「おい、今年は下がったみたいな言い方するなよ。ちょっとドキッとしただろ」

みこと「どうして?」

日向「ん?」

みこと「どうして行ってないの?」

日向「みこともズバッと聞いてくるな……。パクッ」

マリ「ジューシィだねぇ、おいひぃ」

みこと「……」

日向「人間関係が面倒でなぁ……、ただそれだけ。……ふぅ、ごちそうさん」

マリ「飲み物何がいい? 買ってくるよ」

みこと「……」

マリ「お茶でいい?」

みこと「……うん」

日向「キマリが好きな物以外だったらなんでもいい」

マリ「分かった。あっちにドリアンジュースがあったよ、それにするね」

テッテッテ

日向「やめろぉーー!! キマリーー!!」

みこと「……」

日向「振り返らずにまっすぐ進んで行ったな……」

みこと「……」

日向「不安が無かったって言ったら嘘になる」

みこと「……?」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:42:12.22 ID:fg1dRoV1o

日向「その不安を消すために勉強しまくってた」

みこと「……」

日向「コンビニのレジで、私と同じ歳の子たちが友達と楽しそうにしてる――」


日向「それを見てて冷めていく自分に、これでいいのかって思うこともあった」


日向「そんな時だ。キマリたちがうちに来たのは」

みこと「……」

日向「無理して学校行ってたら、キマリたちが見えなかったかもしれないな」

みこと「見えない……?」

日向「その他大勢の女子高生の内の一人としてしか見れなかったってことだよ」

みこと「……」

日向「人生、どうなるか分からないもんだな。私の選択は正しいのかどうかは分からないけど、
   間違ってはいないって思える」

みこと「……」

日向「キマリたちと一緒に目指した『あの場所』が、私の宝だったりするのだよ」

みこと「あの場所……?」

日向「世界の端っこだ」

みこと「……」

日向「今言ったことはキマリたちには言うなよ? 言ったらお仕置きがまってるからなぁ、にひひ」

みこと「――……」

日向「あれ、おーい、聞いてるかー?」


マリ「買ってきたよ〜、はい、日向ちゃん」

日向「おー、ありが……なんだ、サイダーか」

マリ「えー?」

みこと「……たちって、キマリさんと……?」

日向「報瀬って奴と、しょっちゅう話に出てるゆづのことだ」

マリ「何の話?」

日向「南極の話」


……




―― 太宰府天満宮


日向「……」

マリ「この旅が――」

みこと「――……」


……


51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:48:57.71 ID:fg1dRoV1o

―― デネブ


日向「もう夕方か……今日はずいぶんとゆっくり周ったな」

マリ「だね〜、結局お参りして終わっちゃった」

みこと「ここ、来たことあるの?」

マリ「え、ないよ?」

みこと「駅の周り、知ってる風だった」

日向「あぁ、それはな、私とキマリは朝に周辺を走ったからだよ」

みこと「え……?」

マリ「体力づくり! してるの」

みこと「……どうして?」

日向「それはな――」


prrrrrrr


日向「うぉぉぉおおお!!」

ダダダダッ


マリ「あぁっ、待って!」

タッタッタ


みこと「……」

テッテッテ


日向「わぁぁぁああ、どいてどいてーッ!!」


「えっ? うわぁ!?」


マリ「日向ちゃん!」


ガッ


日向「うわっ……!」


日向「とっとっと……!!」


「あっぶねぇ!!」サッ


日向「ぐぬぅぅううう!!」


ゴンッ


日向「あいたぁ!?」


マリ「大丈夫!? 日向ちゃん!」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:49:55.79 ID:fg1dRoV1o

「……」


みこと「転ばなくて良かったけど……結構強く頭ぶつけたよ……」

日向「急には止まれないな……でも、だいじょうぶ、だいじょーぶ」ヒリヒリ


プシュー


「……危ないだろ、気を付けろよ」


日向「いやぁ、ごめんごめん……駆け込み乗車はよくないな……あはは」


「……ふん」

スタスタスタ......


みこと「なにあれ……」

マリ「日向ちゃん、車掌さんところ行こ?」

日向「大丈夫だって、これくらい」

マリ「赤く腫れてるから」

日向「えっ、本当に?」

みこと「……うん」


ガタン

 ゴトン

ガタンゴトン

 ガタンゴトン


……


53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:50:59.21 ID:fg1dRoV1o

―― 売店車


車掌「…………」


日向マリみこと「「「 ごめんなさい 」」」


車掌「まだ何も言っていません」

日向「い、いつもと雰囲気が違うなぁ……と思いましてぇ」

みこと「……空気が…」

マリ「ピリピリしています……」

車掌「見ていましたよ、走りこんで来るところを」


日向マリみこと「「「 ごめんなさい 」」」


秋槻「……何したの」

店員「3人が駆け込み乗車した際に、強く頭をぶつけたそうです……」

秋槻「え……? 見たところ大丈夫そうだけど……」

店員「だから、怒られているんです」

秋槻「あぁ、そうだね……。無事だったからこうなっているんだ」

店員「……はい」


車掌「三宅さんはこちらへ」

日向「いやっ、こんなのツバつけとけば治――」

車掌「こちらへ」

日向「ハイ」

スタスタスタ......



みこと「……」

マリ「……」ビシッ


「敬礼するな!」


秋槻「ちゃんとツッコミは入れるんだね……」



……


54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:53:12.46 ID:fg1dRoV1o

―― 1号客車


マリ「広島に着いたらカキが食べたいんだ」

みこと「好きなの?」

マリ「ううん、そうでもないけど……ただ、美味しいって話だから」

みこと「あたると大変だって聞くよ」

マリ「なにに?」

みこと「カキに」

マリ「誰かが投げるの?」

みこと「なにを?」

マリ「カキを」

みこと「?」

マリ「?」


秋槻「……」


マリ「どういうこと?」

みこと「……?」


秋槻「物理的にあたるんじゃなくて、食中毒にあたるってこと」

マリ「あー……うん、なるほど」

みこと「……」


日向「あれ、どうして秋槻さんが居るの?」

秋槻「次の広島で3人目が乗るって聞いてたから、ちょっと興味があってね」

日向「ふぅん……? 興味?」

マリ「あ、日向軍曹……じゃなくて、えっと2階級特進だから」

みこと「准尉……? 少尉?」

マリ「よく分かんないから、兵長でいいや。お帰りなさいませ」ビシッ

日向「降格してるんですけど、それ」

マリ「見事な戦いでした、お勤めご苦労様です」

みこと「殉職してるんじゃないの?」

マリ「生還したよ?」

みこと「?」

マリ「?」

秋槻「さっきから同じやりとりしてるよね」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:55:03.23 ID:fg1dRoV1o

日向「それで、興味があるって?」

秋槻「誰が乗って来るのかなって」

日向「?」

マリ「一日車掌の結月ちゃん。白石結月ちゃんだよ」

秋槻「へぇ、一日車掌やるんだ」

マリ「まぁね」

日向「分からないなぁ、どうしてキマリがしたり顔なのかぁ」

みこと「……」

日向「あ……! 勝手に殉職させないでください」

秋槻「どうしたの急に?」

日向「失礼ですよ、キマリさん」

マリ「結月ちゃんの真似」

秋槻「……」

みこと「……」

日向「強く生きますね!」

みこと「?」

秋槻「?」

マリ「?」

日向「しまった……急すぎたか」

マリ「あー、分かった。結月ちゃんの口癖だ」

日向「滑った……ぁぁ…恥ずかしいぃ」


……





―― 展望車


マリ「見てみて、夕陽が綺麗〜」

みこと「日向さん、一人にしていいの?」

マリ「たまには、自分を見つめなおす時間も必要なんだよ」

みこと「……」


……


56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:58:25.69 ID:fg1dRoV1o

―― 動力車


「……」


日向「あれ、さっきの……」


「……なんだよ」


日向「いえ、……なんでもないです」

秋槻「君も車掌さんに用があるの?」


「……はい。……今は居ないみたいです」


秋槻「そっか……。それなら反対の車両にいるんだね」

日向「ですね……。どうします?」

秋槻「別に急いでるわけじゃないから」

日向「うーん……私も急いでる訳じゃないけど……暇だから探してみようかな?」

秋槻「無理して探す必要も無いんじゃない? 車掌さんも忙しいだろうし」

日向「そういわれると……。さっきも迷惑かけちゃったし……」


「……」


秋槻「なら、一緒に探したら?」

日向「え?」

「え?」

秋槻「目的は一緒でしょ?」

日向「私はいいけど……」

「……」

秋槻「博多から乗ってきたんでしょ?」

「……はい」

秋槻「なら、ちょうどいいんじゃないかな。案内がてら」

日向「なーんで私がー?」

秋槻「機会があれば広島でもなにか御馳走しようかなって思うんだけど」

日向「承りました!」

「別にいいよ、自分で探すから」

秋槻「そう? それなら――」

日向「ほら、遠慮するなよ! 私に任せとけ!」

「な、なんだよ……急に張り切りやがって……!」

秋槻「先は長いだろうから仲良くした方がいいと思うよ。……余計なお世話だったら悪いけど」

「…………」

日向「どこまで行くの?」

「金沢……だけど」

日向「名古屋の次かぁ……ふぅん」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 17:59:29.02 ID:fg1dRoV1o

秋槻「それじゃ、軽く自己紹介をしとくよ。俺の名――」


pipipipi


秋槻「おっと、ごめん。また後で」

プツッ

秋槻「はい、秋槻です。……はい……はい、そうです。今、博多を出た所で――」

スタスタスタ......


「……」

日向「……」


「大村一輝」

日向「え? ……あぁ、私は三宅日向。よろしく」

一輝「……」

日向「案内するから、おいでおいで」

一輝「……」

日向「うひひ、秋槻さん、3人分で済むと思ってるだろうなぁ」

一輝「……大丈夫だったか?」

日向「え、なにが?」

一輝「頭……」

日向「あー、うん。あの後、車掌さんに手当してもらったから大丈夫」

一輝「……そうか」

日向「心配してくれたんだ?」

一輝「別に……」


……





―― 4号客車


日向「はい、こちら、座席が赤色になっておりまーす」

一輝「……」

日向「では、ここで問題です。1号客車の座席は何色でしょーか」

一輝「……青だろ」

日向「はい、せいかーい。次、参りまーす」

一輝「……」


……


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:01:30.21 ID:fg1dRoV1o

―― 娯楽車


マリ「ぬぉぉぉおお」

みこと「……危ない」

マリ「せいやぁぁああ」

みこと「上手……」

マリ「へへ〜、任せてよ」

ばばばばばーん



日向「と、このように、暇を持て余す若人たちには打って付けの施設もござーます」

一輝「……」


マリ「ぬぅぅぅおおおお」

みこと「……?」

日向「景色はいいのかよー。車窓を眺めるにはいい時間なんじゃないのかー?」

マリ「いぃぃやぁぁあああ……あ、セーフセーフ!!」

日向「聞いてないな」

みこと「……」

一輝「……車掌さんはどうなったんだよ」

日向「この次が展望車だから、そこにいるはず」

一輝「ん……」

スタスタスタ......


みこと「……案内してたの?」

日向「まぁそんなところ。おい、キマリー」

マリ「おっとっとぉ……とと……これくらい余裕――」

ちゅどーん

マリ「ああぁあぁああぁぁあああ!!! 気を抜いたらこれだよーもぉー!」

みこと「さっきよりは進んだよ」

マリ「今のボスを倒せばクリアだったのに……くぅやしぃぃ……。あ、日向ちゃん、居たんだ」

日向「この集中力を勉強にも活かせたらなー!!」

マリ「大声で言わないでよぉ……。遊びに集中するのは当然のことだよ」

みこと「……」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:07:56.28 ID:fg1dRoV1o

一輝「車掌さん、いなかったぞ」


日向「え、……あ、そう」

一輝「……」

日向「分からん」

一輝「……は?」

日向「どこに居るかさっぱり分からん!」ドンッ

一輝「なんだよそれ……」

マリ「どうしたの?」

日向「車掌さんを探して動力車から順に歩いてきたけどさ、居ないんだよ」

マリ「ひょっとして……」

日向「思い当たる節でもあるのか?」

マリ「神隠し……」ゴクリ

みこと「……食堂車の厨房……とか」

日向「そうか、それかもなー」


……




―― 食堂車


店員「さっきまで居ましたよ。料理長と少し話をしていました」

日向「やっぱりそこですれ違ったのか……」

一輝「じゃあ今度は……動力車に進めばいいんだな?」

日向「そうなるな」

みこと「……」

日向「……」チラッ

マリ「……」

日向「じゃ、行くかー」

マリ「何か言ってよ!」

日向「神隠しじゃなくてよかったよかった。車掌さん、やっぱり忙しいんだなー」

マリ「そういうのも傷つく」


……


60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:12:54.47 ID:fg1dRoV1o

―― 寝台車


日向「みことまで来なくていいんだぞ?
    いじけてるキマリの相手してくれればそれで」

みこと「……うん」

一輝「別に俺一人でもいいって」

日向「せっかくだから……あ、居た」

みこと「……」


車掌「この進行ルートになり……高崎から東京になります」

秋槻「あれ……? あの子ら、ここで降りた方がいいんじゃないですかね?」

車掌「東京まで行く理由があるのかもしれませんよ」

秋槻「意外と、停車駅を把握してないかもしれない……」

車掌「確認してみてはいかがでしょう」

秋槻「そうですね、聞いてみます」


日向「車掌さーん」


車掌「あら、噂をすれば」

日向「噂?」

車掌「いえ、なんでも……。どうかなさいましたか?」

日向「私じゃなくて、こっちが用があるそうです」

車掌「新しく乗車された方ですね」

一輝「あ……えっと、博多から乗りました、大村一輝です。これからよろしくお願いします」

車掌「はい、こちらこそよろしくお願いします。では乗車券を拝見します」

一輝「はい……どうぞ」


秋槻「まだ会ってなかったんだ?」

日向「食堂車ですれ違ってしまって」

みこと「……」


……


61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:14:37.91 ID:fg1dRoV1o

―― 展望車


日向「みことはなんで付いて来たんだ?」

みこと「あの人、なんだか失礼だったから」

日向「そうかぁ? 男子だからあんなもんじゃないかな」

みこと「態度が悪いと思う」

日向「そういや、秋槻さんには敬語だったな……。いくつなんだろな」

みこと「……」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「…………」


日向「黄昏て、どうした?」


マリ「……うん、ちょっとね、思い出してた」


みこと「……なにを?」


マリ「報瀬ちゃんと、広島に行った帰りの列車……。
   今と同じ風だったなぁって。景色は違うけど」


日向「物思いに耽る歳じゃないだろ」


マリ「次の広島はね、私が初めて旅した場所なんだよ」


みこと「……」


マリ「いろいろと考えてしまって、足を動かせない私を……報瀬ちゃんが引っ張ってくれた」


日向「……そうだったのか」


マリ「そうだよ。……新しい世界がそこにあった」


みこと「……」


……


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:16:11.03 ID:fg1dRoV1o

マリ「すぅ……すぅ……」

日向「寝るのかよ」

みこと「すぅ……すぅ」

日向「こっちもか」

マリ「……ん……すぅ……」

日向「朝早かったし、昼はずっと暑い中歩いてたからしょうがないか……ふぁぁ」

みこと「……すぅ……すぅ」

日向「ねむ……」


……




プシュー


日向「ふぁぁぁ……着いたか……」

みこと「……ぇ?」

日向「ん〜〜」ノビノビ

マリ「すやすや」

みこと「……着いたの?」

日向「着いたよ」

みこと「そうなんだ……」

マリ「すぅ……ぴぃ」

日向「晩御飯どうしようかな……」

みこと「キマリさん、着いたよ」

マリ「んー……ん? んん?」

みこと「広島に着いたよ」

マリ「ひ…ろ……しま……?」

日向「広島?」

マリ「広島ッ!?」

みこと「……うん」


……


63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:18:42.79 ID:fg1dRoV1o

―― 小郡駅


日向「いや、着いてないからな! まだ山口だからな!」

マリ「あー……びっくりした」

みこと「……」

日向「私もびっくりしたわ」

マリ「小郡駅じゃん」

日向「私もちょっと寝てたなー……頭がボーっとする」

みこと「日向さんが着いたって言うから」

日向「だーれが広島に着いたって言ったかー?」

みこと「…………」

マリ「あ、ちょっと複雑な顔してる〜」

みこと「間違えた……」

日向「うむ、素直に認めるなら良し」


秋槻「本当はここ、小郡駅じゃないんだけどね」


日向「はい?」

マリ「でも、あの駅名標には『小郡』って書いてあるよ」

秋槻「あれは今日だけ……デネブの為に用意された標なんだよ」

みこと「……?」

秋槻「君らが産まれてから……少し経った頃に改称されてるからさ」

日向「デネブの為にわざわざ用意したの? 凄いな……!」

マリ「じゃあ、デネブちゃんが通り過ぎたら撤去されちゃうんだ……」

秋槻「いや、夏が終わるまではそのままにするんだって」

マリ「……なんだ」

日向「がっかりするなー。いい話なんだからがっかりするなー、キマリー」

マリ「お兄さん、今日だけって言ったのにぃ」

秋槻「……ごめん。言ってから思い出した」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:19:27.72 ID:fg1dRoV1o

日向「ヴェガが通った頃はまだ、本当に小郡駅だったんだな……」

秋槻「そういうこと」

みこと「……」

マリ「そっか……! 20年前の今日……ヴェガはここにあったんだ!」

秋槻「いや……」

日向「北から南に縦断だから……小樽辺りじゃないか?」

マリ「……夕陽が沈むね」

日向「間違いを認めないな」

みこと「写真、撮る?」

マリ「いいね!」

日向「はい、お願いしまーっす!」

秋槻「……いいけどね」


日向「はい……お、ご、お、り」

マリ「り!」

みこと「……り」


カシャッ


……


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:21:26.91 ID:fg1dRoV1o

―― 売店車


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


マリ「ガイドブックください」

店員「はい、どうぞ〜」

マリ「ありがとうございます! よーし、調べるぞぉ!」

日向「これくらいの情熱を勉強――」

マリ「もみじ饅頭ぅ! もみじ饅頭だねぇぇ! みこっちゃんん!!」

みこと「う、うん」

日向「力強く遮られた……」

マリ「そういえば、車掌さんに聞きに行ったんでしょ? お勧めの観光地」

日向「みこと、私の役やれな?」

みこと「……?」

日向「車掌さん役は私がやるから。はい、スターット!」

マリ「再現するんだね」

みこと「……」

日向「ほら、やってみ?」

みこと「……お、お勧めのスポットを……教えてください……」

マリ「えっ!? こんなモジモジしながら聞いたの!? 日向ちゃんが!?」

日向「そんな驚くことか!?」

マリ「だって! えぇーー!?」

日向「というか、やってないから。ふっつうに聞いたから」

みこと「……」

マリ「だよね」

日向「『車掌さん、お勧めの観光地を教えてください!』」


日向「『そうですね、……お勧めの場所は……』」


日向「『わくわく、どきどき』」

マリ「はい、そこは嘘だと思います。日向ちゃんが『どきどき』とか言いませんから」

みこと「……」

日向「『お勧めは、自分で決めることです』」


日向「『えぇ〜、どうしてですかぁ〜』」

マリ「誰だろうね。第三の人物?」

みこと「……」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:23:16.51 ID:fg1dRoV1o

日向「『自分で決めて、自分で調べて、自分で足を運ぶ。
    その場所で何を感じるのか……期待以上でも期待以下でもどちらでも楽しめるものですよ。
    それが旅の醍醐味というものです』」

マリ「あぁ、分かる分かる」

日向「『そうなんですかぁ、車掌しゃんの言葉にぃ、日向、とぉっても感動しましたぁ……キラ☆キラ』」

マリ「噛んだね……車掌しゃん、だって」ププッ

みこと「多分、キャラづくりだと思う……」

日向「野次飛ばしてないでちゃんと聞けよ」

マリ「聞いてるよ、車掌しゃんの言葉は」

日向「うわ、性格悪ぅ」

マリ「悪いよ? 悪い?」

日向「悪いに決まってるだろー」

マリ「……あれ?」

みこと「……」

日向「どうした?」

マリ「そう返されると思わなかった」

日向「なんて返して欲しかった?」

マリ「ううん……別に、なんでもない」

みこと「よく分からない」

日向「そうだな。なんの話してるのか分からなくなったな」

マリ「観光地の話だよ!」

日向「明日は一日中停車してるんだったよな?」

みこと「うん」

マリ「カキでしょ、もみじ饅頭でしょ、あと何があったかな」

日向「あ、そうだ。喜べ、二人とも。秋槻さんにご飯奢ってもらう約束だ」

マリ「もぉ、またそんな勝手なこと言って」

日向「本当だって。善いことした後には良いことが待ってるんだからな」

マリ「いくらなんでも図々しいよ……ね、みこっちゃん」ペラペラ

みこと「さっきのページに、お好み焼きがあったよ」

マリ「あ、いいねぇ……本場だもんね。ここにしよう」

日向「連れてってもらう気満々じゃないか」


……


67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:26:41.18 ID:fg1dRoV1o

―― 展望車


日向「ここ好きだよな、キマリ」

マリ「うん、好き〜。景色が流れていくのがいいよね」

みこと「……」

日向「ご飯どうする? 食堂車で食べるしかないけど」

マリ「そうだね……。到着時間だと、お店閉まってるよね」

みこと「うん」

日向「あ、そうだ……近くのコンビニでさ、カップ麺買うのもいいんじゃないか?」

マリ「いいね、それ!」

みこと「……わざわざ?」

日向「そう、広島まで来てわざわざいつでも食べられるカップ麺を食べる。
    これが意外と美味いんだなー」

みこと「そうなの?」

マリ「普段と違うシチュエーションで食べる。これが新鮮で美味しいんだよ」

みこと「……そうなんだ」


……




日向「景色が流れてるんだろうけど、夜だからまったく分かりませんな」

マリ「……そんなことないよ」

日向「そう言いながら残念そうなんだけど」

みこと「……光」

マリ「?」

みこと「向こうに光があるでしょ」

日向「うん、あるな」

みこと「その光の下に……私たちを知らない人が生活をしているんだって」

マリ「……そうだね」

日向「ふぅん……」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:29:18.26 ID:fg1dRoV1o

みこと「お父さんとお母さんが、昔話してたよ」

マリ「……」

日向「深いな。知らない誰かがそこで当たり前のように生活してる……か」

みこと「うん」

日向「キマリも、前に同じこと言ったな」

マリ「……うん」

みこと「そうなんだ」

マリ「それって凄いよね」

みこと「うん、凄い」

マリ「世界は広いってことを教えてくれる」

日向「我思うゆえに、我あり」

マリ「ん?」

日向「人は、自分という存在を意識することで他人を発見できるのである」

マリ「また日向ちゃんの名言?」

みこと「デカルトだよね」

日向「みこと正解! キマリ、今日からゲーム禁止な」

マリ「なんでー!?」


……




日向「へぇ、仲いいな〜」

みこと「そうかな?」

マリ「うん、仲良いよ」

みこと「……」


秋槻「誰と誰が?」


日向「みことの両親が」

マリ「いいご両親だね」

みこと「……」

秋槻「よければ俺にも聞かせて欲しいな……。なんだか、気になるんだけど」

日向「テレビでさ、車窓の風景を流したり、街を散策するだけの映像が放送されてるでしょ?」

秋槻「あぁ、うんうん、あるね」

日向「みことのお母さんとお父さん、それが好きで二人で一緒に観てるんだって」

マリ「その映像を見て色々と想像して、会話が弾んだりしてるって」

秋槻「……」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:32:13.90 ID:fg1dRoV1o

みこと「……私は……いいのかどうか……よく分からない」

日向「みことにとってそれは当たり前だからだよ」

マリ「私たちから見て、それはいいことだと思う。うん、絶対ね!」

みこと「……秋槻さんはどう思います?」

秋槻「理想の夫婦だと思う」

みこと「……」

秋槻「二人は趣味が合うから……とか、それだけの感覚じゃなくて……なんて言えばいいのか……」

マリ「私たちじゃ知り得ない、二人の時間を共有してることが良いと思う!」

秋槻「そうそう、それ」

日向「7つ歳下の女子に言われてしまう演出家希望のフリーター……」

秋槻「う……」グサッ

日向「うひひ」

秋槻「だから、フリーターじゃないって……」

みこと「……」

マリ「みこっちゃんがいい子に育った理由がよく分かったよ」

みこと「……よく分からない」

マリ「そうだよね〜」

みこと「……」

マリ「我思うゆえに、我あり。だよ、みこっちゃん!」

みこと「……」

秋槻「……面白いこと言うね」

日向「最初に言ったの私〜」フフン


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


……


70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:33:41.98 ID:fg1dRoV1o

マリ「もう街中に入ってるよね」

秋槻「そろそろ減速しそうだ」

日向「お喋りしてたらあっという間だな」

みこと「うん」


ガタン

 ゴトン


日向「あ、減速した」

秋槻「それじゃ、明日の準備しようかな」

マリ「おやすみなさい〜」

みこと「……お休みなさい」

秋槻「……君たちはまだ寝ないの?」

日向「カップ麺が私たちを呼んでいる」

秋槻「……へぇ、そうなんだ。……でも、あまり夜更かししない方がいいと思うよ」

日向「親か!」

秋槻「観光に支障が出ると思って。まだ若いからそんなに気にしないかな」

みこと「……」

秋槻「それじゃ、お休み」

日向「明日、よろしく〜」


秋槻「……?」

スタスタスタ......


日向「首傾げながら行ったけど、忘れてないよな……」

マリ「それより、降りる準備しようよ。時間も時間だから」

日向「そうだな」

みこと「……」コクリ


……


71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:34:50.46 ID:fg1dRoV1o

―― 広島


プシュー


マリ「よっ」ピョン

シュタッ


マリ「広島、到着!」バッ


日向「キマリさーん、そこでポーズ取られたら邪魔でーす」

マリ「はい」

みこと「急ごう?」

マリ「はい、そうですね」

日向「駅の近くにコンビニがあるはずだぞ」


……




―― コンビニ


日向「ずるずる」

マリ「ずるずる」

みこと「……ずるずる」

日向「もぐもぐ」

マリ「もぐもぐ」

みこと「……もぐ……もぐ」


日向マリ「「 あれぇ? 」」


みこと「……?」

日向「おっかしいなぁ」

マリ「思ったより、普通のカップ麺の味だね」

みこと「ずるずる……」

日向「南極で食べたの、美味しかったよな……」

マリ「うん……。同じもの食べてるのに、なんで違うんだろ」

みこと「……もぐもぐ」

日向「暖かく感じたからか?」

マリ「そうかも……。ずるずる」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:36:34.35 ID:fg1dRoV1o

みこと「……あ」


ピンポーン


日向「いらっしゃいませー……って言いそうになるな」

マリ「いらっしゃいませー!」


一輝「!?」


マリ「ハッ!? しまった!」

日向「本当に言っちゃったよこの子……」

一輝「な、なんだよ」

マリ「つい、職業病で……」

一輝「……?」

日向「買い出しかー?」

一輝「歯ブラシを買いに、な」

みこと「……」

一輝「こんなとこでカップ麺かよ……良いご身分だな」

日向「ふぅ、やれやれ……あんなこと言ってますよキマリさん」

マリ「まったく、やれやれですな」

一輝「……な、なにがだよ」

日向「カップ麺を笑う者はカップ麺に泣くのである」

マリ「その通りである」ウンウン

一輝「意味が分からん」

みこと「歳、いくつ?」

一輝「は?」

みこと「言葉遣いが悪いよ」

一輝「そういうお前はいくつだよ?」

みこと「今年……17」

一輝「なんだ、タメじゃねえか」

マリ日向「「 えっ!? 」」

一輝「なんだよ?」

マリ「い、いえ……」

日向「なんでも……ない」

みこと「秋槻さんには丁寧に話してた。年上だからでしょ?」

一輝「普通はそういうもんだろ」

みこと「二人は、あなたより年上」

一輝「え!?」

日向「ふふん」

マリ「崇めたまえ」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/04(土) 18:38:49.99 ID:fg1dRoV1o

一輝「そっちはともかく……お前が?」

日向「なんだよ、悪いかよ。背はちっちゃくても心は大きな日向ちゃんだぞ」

マリ「そっちって、こっち?」

一輝「……マジかよ」

みこと「だから、二人には失礼な態度取らないで」

一輝「う……。そ、そんなの知らん!」

スタスタスタ......


一輝「……」


一輝「……これで」


店員「ありゃしゃっしたー」


一輝「……」

スタスタスタ......


日向「なんか、慌てて出て行ったな」

マリ「気まずそうだね」

みこと「……」

日向「それより、みことは中学生じゃなかったのか?」

マリ「それ、大事。どういうこと?」

みこと「今年15だよ。……あの人、態度悪いから……嫌だった」

日向「あ、そう」

マリ「みこっちゃんって、体育会系?」

みこと「……そうじゃないけど」

日向「旅先だから、そんなの気にしなくてもいいと思うけどな」

みこと「……」

マリ「早く食べて戻ろうよ。明日もあるんだから」

日向「そうだな。で、観光はどこ行くか決めたか?」

マリ「尾道ラーメンと海軍カレーが気になってるんだよね」

日向「またラーメンかよ……食べてばっかだな!」

みこと「厳島神社とか……」

日向「そこ行きたいんだな」

みこと「…………うん」

マリ「じゃあ、そうしよう」

日向「よし、今日はもう寝よう」


……


74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:45:11.19 ID:AUDLEXIxo

―― 8月3日


コンコン


「おーい、キマリ〜、起きろ〜」


マリ「うぇ……ぃ」


「走りに行くんだろ〜」


マリ「……うぇぁ」


「外で待ってるぞー」


マリ「……んー」


マリ「ふぁぁ……」


ピカッ ピカッ


マリ「ん……?」


マリ「……メッセージが……こんな朝早く……?」


マリ「……?」


マリ「えっ!?」


……


75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:46:46.20 ID:AUDLEXIxo

―― 広島駅・ホーム


「と、言うわけで、次の目的地は君の居る街だから待っててね!」


「はい、オッケーでーす」


「ありがとうございました〜」ペコリ


日向「……」パシャパシャッ


「あの、すいません、写真撮影は困ります」


日向「え、あ……すいません」


「あ、大丈夫です。その人は私の友達ですから」


「そうですか、失礼しました」


日向「すいませんでしたぁ」


「スタッフさんに迷惑かけないでください」


日向「あはは、ごめんごめん」パシャ


「勝手に撮らないでくれませんか?」


日向「友達だからオッケーだろ?」


「親しき中にも礼儀ありですよ」


日向「おー、いいねー、車掌服姿も可愛いよー、結月ちゃーん」


結月「思いっきり怪しい人物ですね……。スタッフさんに追い出してもらいますよ」

日向「やれるもんならやってみろ!」ドンッ

結月「はぁ……なにふんぞり返っているんですか。それで、キマリさんは?」

日向「キマリは報瀬を迎えに行った」

結月「え、報瀬さんって大阪からじゃなかったんですか?」

日向「朝に連絡があったんだよ。それより、早くカメラカメラ」

結月「後で渡します。なんでそんなにやる気なんです?」

日向「カメラがないと落ち着かないのだよ。なんていうのかな、芸術家魂というのかな」

結月「はいはい……」

日向「あ、そうだ……。旅仲間を紹介するよ」

結月「……はい?」

日向「えっと……あれ? さっきまでそこに居たんだけど……どこ行った?」


……


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:52:45.21 ID:AUDLEXIxo

―― 呉港


「それじゃ、またね」


「……はい。それじゃ」


「……」

スタスタスタ......


「…………」


……




―― 呉駅


「……」


ガタンゴトン

 ガタンゴトン


「…………」


ガタン
 ゴトン


プシュー


マリ「よいしょっ」


「……やっぱり来た」


マリ「えーっと……バスの方がいいかな……それとも走った方が……」


「もうすでに暑いから、走るのは止めた方がいいかも」


マリ「え……? あ……!」


「前に来た時と同じように、ここへ来るって思ってた」


マリ「報瀬ちゃん!」

77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:54:52.03 ID:AUDLEXIxo

報瀬「どうして来たの? 用事があるとしか言ってないのに」

マリ「そりゃ来るよ! だって、私の始まりはここから、ここから始まったんだから」

報瀬「……そう」

マリ「そうだよ。……それで、用事って?」

報瀬「吟さ――……隊長に逢いに……。ついでだったし」

マリ「隊長……って、吟さん? 帰ってたの!?」

報瀬「手続きがあるって。もう行ってしまったけどね」

マリ「…………」

報瀬「……?」


「……」サッ


報瀬「……???」

マリ「言ってよ! もっと早く言ってよ!」

報瀬「朝、連絡したでしょ」

マリ「遅いよ! この場所に居るとしか言ってないし!」

報瀬「……」


「……」


マリ「私だって逢いたかったのに……」

報瀬「ねぇ、キマリ……」

マリ「もういいよ……せっかくだから海軍カレー食べてこ?」

報瀬「私は別に……お腹すいてない」

マリ「せっかく来たんだから……! 朝ごはんもまだ食べてないんだよ〜!」

報瀬「……分かったから」

マリ「実は行くところ決めてあるんだ〜。行こ行こ」

スタスタスタ

報瀬「……うん」チラッ


「……」


マリ「でも、なんだか懐かしいな〜。まだ1年とちょっとしか経ってないのに」

報瀬「印象が強ければ、それだけ記憶に残るから」

マリ「ここもあまり変わってないね〜」

報瀬「1年しか経ってないからね」


「……」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:56:20.29 ID:AUDLEXIxo

報瀬「ねぇ、キマリ」

マリ「奢れ、なんて言わないから大丈夫〜」

報瀬「そうじゃなくて……あの子、キマリの知り合い?」

マリ「え?」


「……」サッ


マリ「……? どこに居るの?」

報瀬「いま、隠れた」

マリ「???」

報瀬「……」

スタスタスタ


報瀬「あなた、誰?」


「ッ!」ビクッ


マリ「そこに誰が居るの……って、みこっちゃん?」


みこと「……っ」


マリ「どうしたの? あ、海軍カレーが気になったんだ?」

みこと「しらせ……って人が……どんな人か……気になって……」

報瀬「私?」

みこと「……」コクリ

マリ「よく話に出てきたから、気になったんだね」

報瀬「それで、誰なの?」

マリ「旅仲間だよ」


……


79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 21:58:56.60 ID:AUDLEXIxo

―― デネブ


ピロリン♪

日向「なんだよ、キマリに付いて行ったのか」

結月「誰なんです?」

日向「中三の女の子。一人でデネブに乗ったんだって」

結月「そうですか……。仲がいいんですね」

日向「始発から一緒に居るからなぁ……。なんだかんだで……観光も一緒に……」

結月「どうしたんですか?」

日向「そういや、ずっと一緒に居るなと思って……。知り合ってそんなに時間経ってないのに」

結月「……」


「あ、見てっ、白石結月ちゃんよ」

「本当だ……きゃー、車掌服姿かわいい〜」


「白石結月だ……」

「うーわ、本物は違うな〜」


ざわざわ

 ざわざわ


日向「人が集まってきたな……。ゆづって本当に有名人だったんだな!」

結月「バカにしていますよね」


「白石さーん」


結月「あ、はーい。今行きまーす」

日向「まだ仕事?」

結月「そうです、これから打ち合わせが……。日向さんはどうします?」

日向「ゆづ、忙しそうだから……キマリたちと合流するよ」

結月「……」

日向「観光行って来るとしよう! ひゃー楽しみ〜♪」

結月「軽く殴りますよ」

日向「冗談だよ。私はずっと……ゆづの隣にいるから」キリ

結月「本当ですか?」

日向「やっぱり嘘! 退屈は嫌だから観光行く!」

結月「そう言うと思いました……。それでは、またあとで」

日向「今日は時間作れない?」

結月「打ち合わせで分かります」

テッテッテ


日向「遊びで乗ったわけじゃないからしょうがないか……」


……


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 22:04:05.19 ID:AUDLEXIxo

―― 厳島神社


マリ「日向ちゃーん! こっちこっち〜!」


「おー!」


報瀬「ふぅん……これが神社なんだ」

みこと「……」

日向「よぉ、報瀬〜」

報瀬「これが世界遺産……ね」

日向「無視するなよ!」

マリ「建物と後ろの自然が見事に融合……溶け合って……そんな感じで評価されたんだよ」

日向「もうちょっとうまく表現しような」

みこと「……」

報瀬「それにしても、人がいっぱいいる……」

マリ「世界遺産のパワーだね」

日向「いや、私には分かる。この土地のパワーが人を集めるんだ」

報瀬「なにそれ」

日向「あの山には神が宿っているから、人はそれに惹きつけられるのさ」

報瀬「逆じゃないの? 畏れ多いから神には近づけないでしょ」

日向「……難しいことは分からん!」

マリ「おいでおいで、って手招きしてる神様なんだよきっと」

日向「そういうことだぞ。報瀬はもうちょっと自由な発想をだな〜」

報瀬「日向も分からないって言ってたじゃない……」


みこと「……」



「キマリさ〜ん!」

テッテッテ


報瀬「あ……」

日向「あれ……?」

マリ「結月ちゃん!」


結月「はぁ……はぁ……わ、私も一緒に周ってもいいですか……っ」

マリ「もちろん! 久しぶりだね、結月ちゃん!」

報瀬「本当、久しぶり」

結月「そうです。2か月ぶりですね」

報瀬「そんなに前だっけ?」

マリ「そうだよ。時間が経つの早いよね」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 22:07:11.59 ID:AUDLEXIxo

日向「というか、ゆづ、仕事は?」

結月「夕方まで自由にしていいって。デネブに乗ったら結構自由な時間多いんですよ」

日向「仕事も限られるからな」

結月「そういうことです……ふぅ、暑い……」

報瀬「走ってきたの?」

結月「はい、日向さんに追い付こうと思って……」

日向「なんだ、連絡してくれれば」

結月「しました」

日向「……」

ピカッ ピカッ

日向「気付かなかった……。そうか、ここは神の領域だからなのか……!」

結月「?」

報瀬「日向は此処の神様に嫌われてるって話」

日向「なんでだよ!」

結月「あぁ……」

日向「納得するな!」

マリ「……あれ?」


みこと「……」


マリ「みこっちゃん、こっちおいでよ〜」

みこと「……うん」

結月「さっき言ってたの……この子ですか?」

日向「そう、デネブで知り合った旅仲間」

結月「……」

マリ「ほら、結月ちゃんだよ」

みこと「うん……」

マリ「挨拶挨拶〜」

みこと「初めまして……」

結月「はい、初めまして……白石結月です」

みこと「……」

報瀬「人見知りするタイプ?」

日向「多分、そんな感じだな」

結月「……」ジー

みこと「……っ」ササッ

マリ「どうしたの?」

みこと「み、見てるから……」

日向「ゆづ、みことがどうかしたのか?」

結月「い、いえ……なんでも」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/05(日) 22:09:47.87 ID:AUDLEXIxo

報瀬「それより、中入ってみない? 回廊を歩いてみたい」

マリ「私もそう思ってた! 行こう行こう!」

報瀬「なんだか、異次元に繋がってそう」

日向「ひねくれ者は現世に戻ってこれないらしいぞ」

報瀬「日向はここで待ってて」

日向「なんでだよ! 満場一致で報瀬だろ!?」

報瀬「私はひねくれてないから」

マリ「ほら〜、結月ちゃんの時間もあるんだからのんびりしてられないよ〜、行くよ〜」

スタスタスタ

みこと「……」サササッ

日向「キマリから離れたら消えてしまう妖怪か何かか」

結月「……磨けば光るかも」

報瀬「どうしたの、結月……?」

結月「……あ、いえなんでもありません」


……




マリ「広島の人って赤が好きなのかな」

報瀬「どうして?」

マリ「ほら、コンビニとかお店を赤色にしたところが多いでしょ?」

日向「野球ファンが多いんだろ」

結月「回廊も赤でしたからね」

みこと「……」

日向「それは関係ないだろ、ってゆづに突っ込むところだぞ」

みこと「……っ」

報瀬「困ってるでしょ」

結月「き、キマリさんが回廊出た後にあんなこと言うからです!」


……


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:38:30.11 ID:nLWK+N10o

―― 広島駅


マリ「弥山と屋久島ってどっちが凄いの?」

報瀬「どっちも」

日向「ちょっと小腹が空いたな〜」

結月「それでは、私は列車に戻りますね」

マリ「えっ、もう?」

結月「そろそろ戻らなくてはいけませんから」

マリ「え〜、残念〜」

日向「まぁ、次の都市でも一緒に周れるさ。そうだろ、ゆづ?」

結月「そうですよ……」

日向「さーて、私らはこれからお好み焼きパーティだっぜ♪」

結月「強く殴りますよ」

日向「まぁ、怖い」

報瀬「一言も話してないけど、大丈夫?」

みこと「……」コクリ

報瀬「……」

結月「あ、そうだ……。キマリさん、この子、預かっていいですか?」

マリ「え、みこっちゃん?」

みこと「……?」

マリ「うん、いいよー」

みこと「!?」

日向「おい、本人の意思を無視するな。どうしてだ、ゆづ?」

結月「この子、化けるかもしれません」

マリ「……」スッ

報瀬「宙を見て、どうしたの?」

日向「ひょっとして、月を探してるのか?」

マリ「うん……みこっちゃんはオオカミ娘だったのかー」

日向「どうなるか楽しみだな、好きにしていいぞー」

結月「それではまた後で。それじゃ、行くよ」グイッ

みこと「ちょっ……まっ」

報瀬「あ、喋った」

マリ「ふぇぇぇ……無視しないでぇ」


……


84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:47:27.04 ID:nLWK+N10o

―― 広島駅・駐車場


結月「あのぉ、さくらさん……居ますか?」


スタッフ「さくらさんなら、あの車だよ」


結月「そうですか、ありがとうございます」

みこと「……っ」

結月「こっちに来て」

スタスタスタ


みこと「な…なんで……」

結月「さくらさーん」


さくら「あら、結月ちゃん、それじゃ本番前にメイクしちゃうわね」


みこと「っ!?」

結月「いえ、それはまだ後で」

さくら「あら、それならなにか別用?」

結月「この子なんですけど、見て欲しいんです」

さくら「?」

結月「髪の量を減らして――」

さくら「何が言いたいか分かっちゃった。ふふ、腕が鳴るわぁ」

みこと「……ッ!?」

結月「よろしくお願いしますね」

みこと「!?!??」

さくら「うふふ、さぁ、こっちへいらっしゃい〜♪」

結月「それじゃ、リハーサル終わったら戻って来るから」

みこと「ま…待って……行かないで……結月さん……っ」

結月「安心して、さくらさん、心は乙女だから」

テッテッテ



さくら「要望があったら聞くわよぉ? うふっ」

みこと「――」


……


85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:54:12.11 ID:nLWK+N10o

結月「さくらさん、どうですかー?」

さくら「あら、戻ってきたわね」

結月「滞りなくリハは終わりま――」


みこと「……」


結月「……さすがですね、さくらさん」

さくら「私じゃないわよ。この子のルックスがあってこそよ」

みこと「……なんだか……落ち着かない」

結月「みことの両親は……」

みこと「……?」

結月「あ、いえ……なんでも」

さくら「次は結月ちゃんね、時間もないでしょ」

結月「その前に……。あの……その……」

みこと「?」

結月「その……勝手に……髪を切らせちゃって……。
    リハの途中で悪いことしたって気づいて……」

みこと「……さくらさん……聞いてくれたから」

結月「え?」

みこと「切ってもいいのか……って」

結月「……」

さくら「私とこの子の同意の許で切ったのだから、気にしなくてもいいのよ」

結月「……はい。……でも、ごめんなさい」

みこと「……ううん」


結月「……」

みこと「……」


さくら「さ、結月ちゃんはこっち」

結月「は、はい」


みこと「……」


……


86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:58:28.25 ID:nLWK+N10o

―― デネブ


みこと「……ん……やっぱり……」


秋槻「……あ」


みこと「……?」

秋槻「あ、いや……知り合いに似て……」

みこと「秋槻さん……今から……観光……?」

秋槻「なんだ、本人か……。また知らない子に声かけて不審者扱いされるかと……」

みこと「?」

秋槻「なんでもない。……雰囲気変わったね」

みこと「大人っぽく見えますか?」

秋槻「……え?」

みこと「17くらいに……見えますか……?」

秋槻「ど、どうだろうね」

みこと「……そうですか」

秋槻「大人っぽく見えるかどうかは分からないけど……似合ってるよ」

みこと「……」

秋槻「そう見られたいから、そうしたの?」

みこと「……ううん」

秋槻「それじゃ、どうして?」

みこと「自分が嫌だったから」

秋槻「……」

みこと「キマリさんの……友達が……来て……それで」

秋槻「展望車に移動しようか。今は人いないだろうから」

みこと「……うん」


……


87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/06(月) 23:59:56.80 ID:nLWK+N10o

―― 展望車


秋槻「自分を変えるために――……か」

みこと「……」

秋槻「君の決心を否定したいわけじゃないけど」

みこと「……っ」

秋槻「ゆっくりでいいと思うけどな」

みこと「でも……」

秋槻「デネブの運行は15日……。この2週間はきっと短い」

みこと「…………」

秋槻「その途中で彼女たちは降りていくから、焦るかもしれないけど……。
   その中で得たものは一生残るよ。それを焦って見落したらもったいない」

みこと「……」

秋槻「それに、あの二人は君の良さを知ってるから、それを大事にした方がいいと俺は思う」

みこと「……良さ? ……私に?」

秋槻「俺が酒に酔ってるとき、水をくれたでしょ。そういう気遣い、心配り。
   そういうことを自然と出来るってのは紛れもなく良いところだよ」

みこと「……」

秋槻「なんて、ごめん……説教臭かったな」

みこと「……」

秋槻「俺も協力するからさ」

みこと「……?」

秋槻「だから、君も協力して」

みこと「協力……?」

秋槻「いい旅になれるように、協力」

みこと「――……うん」

秋槻「よかった」

みこと「……」

秋槻「ところで、一人で戻ってきたの?」

みこと「……ううん。結月さんと」

秋槻「そうか……3人目が彼女だったな……」

みこと「……」ソワソワ

秋槻「それじゃ、話は終わりだね」

みこと「う、うん……それじゃ」スクッ

秋槻「……」

みこと「あ、ありがとうございました」ペコリ

秋槻「え……?」

みこと「……また」

テッテッテ


秋槻「……」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:02:01.02 ID:pNg+A1G5o

秋槻「……ふぅ」


車掌「どうかされましたか?」

秋槻「……いえ。……アドバイスになれたかなって」

車掌「気持ちは伝わったと思いますよ」

秋槻「……そうですかね。……なんだか、彼女の気持ちも否定しちゃったし」

車掌「まるで経験があるような言い方でしたね」

秋槻「分かりますか? 
   俺もあの子くらいの歳に思い切ったんですよね。髪を染めたりして」

車掌「まぁ」

秋槻「だから、ちょっと心配だったんですよ」

車掌「この旅は一人ではありませんから。きっと大丈夫ですよ」

秋槻「そうですね」

車掌「立ち聞きしてしまって申し訳ありませんでした」

秋槻「いえいえ! 
    俺も、正しいことなんて言えないですから。聞いてくれて助かります」

車掌「そう言っていただけると」

秋槻「大人になったから言えますけど……、あの子たちが羨ましいです」

車掌「……」

秋槻「デネブが走り続ける限り、日常を越えていられるんですから」

車掌「ふふ、嬉しい限りです」



……



89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:03:55.95 ID:pNg+A1G5o

―― 広島駅


報瀬「また戻ってきたけど……なにかあるの?」

日向「もうちょっと歩き回りたいんだけど〜、キマリ〜」

マリ「だって、みこっちゃんが心配で……」

日向「その割に、ゆっくりお好み焼き食べてたな」

マリ「美味しかったからね!」

報瀬「あの子って、無理して一緒に居るんじゃない?」

マリ「そうかな?」

報瀬「だって、あまり喋らないから」

日向「私も最初はそう思った」

報瀬「そうじゃないの?」

日向「無理してるかどうかは分からないけど、嫌だとは思ってないだろう、と思う」

報瀬「どうして?」

マリ「小さいところで私たちを気遣ってくれるんだよ。なんだかんだで一緒に居てくれるし」

日向「嫌だと思ってたらそういうことしないだろ?」

報瀬「……うん」

マリ「あれ、向こうに人だかりが出来てる……なんだろ?」


ざわざわ……

 ざわざわ……


報瀬「テレビでも来て……あ」

日向「ゆづの撮影だな」

マリ「あれ……? あれって……」


みこと「あ……」


マリ「違った……。みこっちゃんに似てるから間違えたよ」

日向「おい……」

報瀬「服を見て、服を……」


みこと「……っ」


マリ「みこっちゃん!?」

日向「ゆづが連れて行った理由はこれか〜」

報瀬「前髪切ったんだ……表情が見えると違うね」

日向「おぉ、顔が見えると雰囲気も変わるなぁ……」

みこと「……」

マリ「でも、みこっちゃんはみこっちゃんだよ」

日向「したり顔で言ってるけど、間違えたよな?」

報瀬「キマリは本当に……」

マリ「ほ、本当になに……?」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:06:29.07 ID:pNg+A1G5o

報瀬「……」

マリ「続き言ってくれないとどんどん傷ついていくよ……」シクシク

みこと「……結月さんに……お礼……言いたかったけど……」

マリ「あとで言えばいいよ」


一輝「……ちっ」


日向「お、どうした少年? 舌打ちなんかして」

一輝「駅に入れないだろ……邪魔だなアレ……」

マリ「あっちから迂回していけば入れるよ」

一輝「なんで俺が……」ブツブツ

スタスタスタ...


マリ「なんか機嫌悪いね」

日向「不良っぽいよな、アイツ」

みこと「……」

報瀬「今の人も知り合い?」

マリ「うーん……旅仲間?」

日向「仲良くはないけどな」

みこと「……ならなくていいよ」

マリ「そういうこと言わないの。ちゃんと仲良くしなきゃいけんばい」

日向「親か! そしていきなり広島弁!」

みこと「あ……」

報瀬「?」


さくら「私、こういう者です」

秋槻「はぁ……スタイリスト……ですか」

さくら「うふっ、いい男☆」ウィンク

秋槻「う……ッ」ゾクッ

さくら「この後、時間は空いていますか?」モジモジ

秋槻「忙しいので失礼します!」ダッ

タッタッタ

さくら「お待ちになってぇ〜ん!」

ダダダダッ


みこと「……」

日向「なんだ、今の?」

マリ「お兄さん、青ざめてたけど……どうしたんだろ」

報瀬「……」


……


91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:11:08.80 ID:pNg+A1G5o

―― 温泉


マリ日向「「 ふぅ〜、極楽極楽 」」

報瀬「おじさんみたい」

日向「旅の疲れを癒すにはやっぱりこれだなぁ。熱燗できゅっといきたいねぇ」

マリ「風呂上がりにきゅっとねぇ」

みこと「……」

報瀬「お酒は駄目でしょ」

日向「報瀬がおじさんみたいって言うからだろ。やらざるを得ないじゃないか」

報瀬「なによそれ」

マリ「ふぃ〜〜」

みこと「結月さんも……一緒ならよかったのに」

マリ「しょうがないよ〜。有名人だから〜」

日向「そうだぞ。だから、帰ったらどれだけ良かったか伝えてあげるんだ」

みこと「……うん」

報瀬「騙されないで。結月が悔しがるの見て笑う気だから」

日向「うひひ」

みこと「……」

日向「今度は個室……というか、貸し切りのとこで、ゆづも一緒にのんびりしようじゃないか」

みこと「……うん」

マリ「日帰りで温泉っていいよね」

報瀬「うん……。でも、列車に戻るのに日帰りって……変な感じ」

日向「あー、確かに」

マリ「あ、そうだ。明日どうしよっか、日向ちゃん」

日向「なにが?」

マリ「走るの」

報瀬「ここでも走ってるの?」

日向「知らない所を走るの面白いんだよ。朝の時間とか特にさ」

マリ「これから日常が始まるんだって空気がいいよね」

日向「な!」

みこと「……」

報瀬「それで、なにが気になってるの、キマリ」

マリ「デネブちゃん、明日の朝に出発でしょ」

日向「7時出発だって」

マリ「うーん……じゃあそんなに走れないね」

日向「そうだな。30分くらい走って戻ろう。乗り遅れたら大変だ」

マリ「分かった。報瀬ちゃんはどうする?」

報瀬「列車に慣れてないから……いい」

マリ「おっけー。みこっちゃんどうする?」

みこと「……え?」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:12:52.30 ID:pNg+A1G5o

日向「走らせる気か?」

マリ「聞いてみただけ。無理強いはしないけど、一緒にどう?」

みこと「……」

マリ「さっきも言ったけど、結構楽しいよ。走ろうよ、ね?」

報瀬「無理強いしてるから」

日向「みことは部活とか入ってるのか?」

みこと「うん……文化部」

マリ「図書部だ。壁際の席で佇んでいる姿が見えたね、私には」

みこと「ううん」フルフル

日向「どうして見えたんですかね?」

報瀬「妄想でしょ」

マリ「じゃあ吹奏楽部だ。コンクール目指してトランペット吹いてる姿が見えるね」

みこと「ううん」フルフル

日向「じゃあ、文芸部」

みこと「うん」

マリ「やっぱりね」

報瀬「なにがやっぱりね、なんだか」

日向「小説書いてんの?」

みこと「……うん」

日向「読ませて♪」

みこと「だ、ダメ」

日向「いいじゃないか! 人に読ませることで登場人物たちが活躍できるんだぞ!」

報瀬「じゃあ、運動は得意じゃない?」

みこと「……うん」

マリ「どうしたの?」

みこと「お父さんとお母さん、運動得意な方だから……どうして私は出来ないのかな……って」

マリ「運動音痴なんだ」

みこと「……うん」

日向「安心するがよい。ゆづもキマリも運動音痴なのだから」

みこと「……そうだんだ」ホッ

マリ「なんでホッとしたの?」

報瀬「まぁ、二人は出来なさそうではある」


……


93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:14:35.79 ID:pNg+A1G5o

―― デネブ・マリの個室


コンコン


マリ「ん?」


「キマリさん、私です」


マリ「結月ちゃん?」

ガチャ


結月「遅くにすいません。話があるので、失礼してもいいですか?」

マリ「うん、いいよ。どうぞどうぞ」

結月「……」

テクテク

マリ「勉強してたところだけど、大丈夫だよ。勉強の息抜きにちょうど良かったよ」

結月「……ふむ」

マリ「やっぱり勉強するのに体力は必要だね。たくさん勉強したからクタクタだよ」

結月「聞いてもいないのに勉強勉強……なるほど」

マリ「どうしたのかな? 勉強中だけど、話を聞くくらいの時間はあるよ」

結月「……この参考書で勉強してたんですよね」

マリ「そ、そうだよ」

結月「……」パシャッ

マリ「? なんで写真撮ったの?」

結月「リンに送るためです」

マリ「え?」

結月「頼まれたんですよ。勉強の内容を調べて欲しいって」ピッピッピ

マリ「やめて!」

結月「送りました」

マリ「……」


マリ「…………」


pipipi


マリ「ぎくっ」

結月「……」

マリ「うぅ……」ポチポチ


『南極北極だけじゃなく、数学日本史古文英語もね(笑顔のマーク)』


マリ「はやい……早すぎる……お母さんに伝わるの早すぎるっ!!」

結月「心中お察しします」

マリ「気力が無くなった……」ガクッ

結月「……」
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:17:34.70 ID:pNg+A1G5o

マリ「いいもんいいもん、報瀬ちゃんだけだもん。
   勉強勉強言わないの……私の味方は報瀬ちゃんだけだもん」

結月「そんなことよりですね」

マリ「そんなこと?! 私を追い込んだの結月ちゃんだよ!」

結月「みことのことなんですけど」

マリ「え? みこっちゃん?」

結月「私の勝手で、髪を切ってしまったんですよ……」

マリ「あぁ、うん。聞いてるよ」

結月「それで……なにか……変化というか……」

マリ「ううん、特に変化はなかったよ。昨日と同じみこっちゃんだった」

結月「……そうですか」

マリ「気にしてたんだ」

結月「……まぁ、はい……そうです」

マリ「外見が変わっただけで、中身は簡単に変わらないよ」

結月「……意外と、そうでもないんですよね」

マリ「?」

結月「自分の容姿が変われば……自分が特別だと気付いたら……
   中身が変わる人……居るんですよね」

マリ「そうなの?」

結月「……あ、いえいえ、なんでもありません!」

マリ「???」

結月「み、みことのご両親って……なんていうか……格好いい、綺麗って感じがしますよね!」

マリ「あぁ、分かる分かる。みこっちゃん、可愛いっていうか、美人系だよね。もちろん可愛いけど」

結月「ですよね!」

マリ「お母さん似かもしれないね。言ってたよ、髪の量が多いのお母さんも一緒だって」

結月「……そうですか」

マリ「私も母親似って言われる」

結月「でしょうね」

マリ「リンと連絡取ってるんだね?」

結月「私たちが南極に行ってる間、連絡取りあってたみたいですから。
   うちの母とキマリさんのお母さん……。そこから繋がったんですよね」

マリ「そっかそっか」

結月「キマリさん、覚えてますか、夏の始まりに連絡した時のこと」

マリ「?」

結月「ほら、『また、旅に出ませんか?』って私が聞いた時です」

マリ「うん、覚えてるよ。デネブちゃんのこと聞いたんだよね」

結月「少し説明したんですよね」

マリ「うん、『超特急デネブ?』って聞いてね」

結月「私が『そうです』って言っただけで、『乗りたい!』って」

マリ「列車の旅ってしたことなかったから、すごくワクワクしたんだ」
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/07(火) 00:19:35.05 ID:pNg+A1G5o

結月「それで……どうですか、2日過ぎましたけど」

マリ「すっごく楽しい!」

結月「……そうですか」

マリ「明日から楽しみ。だって、また4人になったでしょ、それに――」

結月「それに……?」

マリ「みこっちゃん、お兄さん、大村君」

結月「?」

マリ「まだ知らない誰かに会えるかもしれない。だから楽しみ!」

結月「――……」

マリ「これからが本番って感じだね」

結月「今まで助走だったわけですね」

マリ「そうだけど、そうじゃない。デネブちゃんと一緒に走ってきたから」

結月「難しいこと言いますね」

マリ「そうかな」

結月「まぁ、いいです。それより、明日からの仕事よろしくお願いしますね」

マリ「うん!」

結月「報瀬さんにはまだ伝えてないんですよね」

マリ「日向ちゃんが『黙っていた方がいい』って」

結月「私もそれは同意です」

マリ「なんで?」

結月「必ず断るからです」

マリ「……そうなんだ」

結月「それでは、私は個室に戻りますね」

マリ「もう話、終わり?」

結月「勉強の邪魔をしてはいけませんから」

マリ「……いいんだよ? もっと話しようよ」

結月「明日、私も一緒しますから、寝坊しないでくださいね」

マリ「……ふぁい」


結月「それでは、おやすみなさい」

ガチャ


マリ「うん、おやすみ〜」


バタン

マリ「……今日はもう寝よう」

pipipi

マリ「ん?」


『お姉ちゃん、勉強頑張ってね!』


マリ「ふぇぇぇ、寝ようとしたのバレてるぅ」


……


96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:28:58.84 ID:BmPgE/vWo

―― 8月4日


日向「ゴォール! 日向選手一着です! おめでとー! ありがとー!!」

報瀬「朝から元気ね」

マリ「はぁ……ふぅ……」

結月「ふぅ……ふぅぅ……」

日向「ほら、人があまりいないうちにストレッチしておくぞー」

報瀬「そうね……。人の目があると嫌だから」

マリ「まだ出発まで1時間あるから平気だよぉ」

結月「いえ、早めに戻りましょう」

日向「そうだな。ゆづが乗り遅れたら面白――……大変だからな」

結月「期待には応えませんので」

マリ「ふぁぁ……昨日も遅くまで勉強してて眠いよぉ……」

報瀬「確かに、知らない街を走るって面白いね」

日向「私たちの知らない場所で、知ることのない一日が始まる……なんか不思議な感覚だ」

結月「イッチニ、サンシー」

マリ「朝にはランニング、昼には目的地へ疾走、
   夜には勉強のリレー。充実した一日だね」

報瀬「勉強のリレーって?」

日向「触れてやるな。やたらと勉強してますアピールしてるから、
   感心して欲しいだけなんだよ」

結月「報瀬さん、車掌さんに挨拶しましたか?」

報瀬「うん、一応……」

結月「……そうですか」

日向「してないのか?」

結月「手続きをしただけっていうか……」

マリ「結構お世話になるから、ちゃんとしておこう!」

結月「そうですね。シャワー浴びたら行ってきます」

報瀬「それじゃあ、私も」

マリ「行こう行こう」

日向「キマリー、ちゃんと体ほぐしておかないと疲れが残るぞー」

マリ「もうちょっとやったほうがいい?」

日向「うん。距離は短めだからといって、甘く見ないこと」

マリ「わかった!」

報瀬「駅員さんにこれ、見せなきゃいけないんだよね」

日向「そうそう。バッチを見せないとデネブに戻れないからな」

結月「可愛いですね、これ」


……


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:30:42.28 ID:BmPgE/vWo

―― デネブ


報瀬「改めて、これからよろしくお願いします」

結月「よろしくお願いします」

車掌「はい、こちらこそよろしくお願いします」

結月「忙しいところ申し訳ありませんでした」

車掌「お気になさらず。それでは、列車の旅をお楽しみください。私はこれで失礼します」

スタスタスタ...

報瀬「出発してからの方が良かったかな……」

結月「そうですね……。でも、気にしなくてもいいって言ってくれましたから」

報瀬「……うん」

結月「綺麗な人ですね」

報瀬「うん」


……




報瀬「キマリが居ない……?」

日向「個室にも、どの車両にもいない」

結月「そのうち、ひょっこり現れるでしょう」

日向「そうだといいんだけど……いやーな予感がしてなぁ……」

報瀬「みことと一緒にいるんじゃない?」

日向「いや……それが……」

結月「あ、来ましたよ」


みこと「……」


報瀬「あれ、一人?」

日向「その様子だと居ないみたいだな……」

みこと「うん、いない……」

結月「えぇ……、出発まであと10分もありませんよ?」

報瀬「さ、探す?」

日向「ミイラ取りがミイラになりかねん……!」

みこと「……改札まで見てくる」

タッタッタ

結月「あっ、みこと!」

日向「私も見てくるから、二人は待ってて!」

タッタッタ

報瀬「……」

結月「なんか、緊迫してきましたね……」ハラハラ


……


98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:32:16.26 ID:BmPgE/vWo

―― 改札口


マリ「えー、えーっと……原爆ドームはどこだろ……」

外国人「hmm...」

マリ「広島電鉄……に乗ればいいんだよね……」

外国人「ヒロシマデンテツ?」

マリ「イエスイエス! ……多分」

秋槻「……どうしたの?」

マリ「あ、お兄さん……この人に原爆ドームの行き方を教えてたんだけど……」

外国人「Please tell me how to get to that Atomic bomb dome.」

秋槻「ふむ……。そうだ、観光ガイドじゃなくて、案内図で教えてあげたら分かりやすいんじゃない?」

マリ「あ、そっか……!」

外国人「?」

秋槻「俺が案内するから、君は戻って」

マリ「え、でも……」

秋槻「時間、無いよ」

マリ「あ、本当だ……!」

外国人「……」

秋槻「えーっと……Please come over here.」

外国人「Cheers!」

マリ「うー……ごめんなさい! アイムソーソーリー!!」

タッタッタ


「キマリ―!!」


マリ「あ、日向ちゃん!」


「なにしてんだよ! 急げ―!!」


マリ「うん!」

タッタッタ

「わぁ、やばいやばい!!」

タッタッタ


日向「なんか、並走してくる人がいるぞ」

みこと「……うん」


マリ「ひぃひぃ……!」

タッタッタ

「ぎゃー! 荷物が重ーい!!」

タッタッタ
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:34:10.21 ID:BmPgE/vWo

マリ「ん、んん?」

タッタッタ

「振ーりー回ーさーれーる―!」

フラフラ

マリ「デネブちゃんに乗るの!?」

「そうだけどー!?」

マリ「貸して!」

「え!?」

マリ「私も乗るから! 手伝ってあげる!!」

「任した!!」

マリ「よし! って、重ッ!?」ズシィ

「よっしゃー! 急げ―!!」

タッタッタ

マリ「振ーりー回ーさーれーる―!」

フラフラ

みこと「手伝う……!」

マリ「お願い!」

みこと「うぅ……」

マリ「ぐぬぅ……」

フラフラ

日向「そんな重いのか!?」

みこと「お、重たい……!」

マリ「な、なにが入ってるのこの鞄……!」

日向「私も持つ……! けど、掴むところがないから、みこと交代だ!」

みこと「う、うん!」

マリ「あ、楽になった! 日向ちゃんアマゾネスだ!」

日向「あとで軽く殴りますね!」

マリ「こんな時に結月ちゃんの真似するなんて……!」

日向「いいから走れー!!」

マリ「よっしゃぁぁ!!」

タッタッタ

みこと「……っ」

タッタッタ


「ほらー、急いで急いで! 乗り遅れるよー!!」


日向「誰の鞄のせいだー!?」


「あはは」


日向「あははじゃない!!」
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:37:12.85 ID:BmPgE/vWo

マリ「ひぃ、ひぃぃ……危なかった」

みこと「ふぅっ……ふぅ」

「ありがとね、3人とも、手伝ってくれて」

日向「いいけど……なにが入ってるの、これ」

「鉄アレイでしょ、砂袋でしょ……」

マリ「えぇー……」

みこと「……」

日向「そんな荷物ここに置いてけー!」

「ウソウソ、冗談だって」

報瀬「なにしてるの、早く乗って」

結月「遊んでる場合ですか」

「あ、テレビで見たことある! 車掌服カワイイー!!」

日向「いいから早く乗れ!!」グイッ

「おぉっと!」

マリ「……」

みこと「キマリさん?」

マリ「どーしよー……」

みこと「?」

マリ「お兄さんが……まだ来ない……」ウルウル

prrrrrrrrr


「ふぅ、一時はどうなることかと……良かった良かった」

結月「誰なんですか、この人」

「君の運命の相手さ」キラン

結月「……」

報瀬「ちょ、ちょっと狭いから……」

日向「客車移動するぞー」

「そうだね、ゆっくりと先のことを話そう。さ、行くよお姫様」

結月「……」

みこと「あ……!」

マリ「お兄さん……!」

日向「……?」

プシュー

マリ「ああぁあぁぁぁぁ!!」

みこと「…………」

ガタン

 ゴトン


マリ「どどどどどうしよう!! 乗り遅れちゃった!!」

みこと「……そんな」

日向「……」


……

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/08/10(金) 12:38:25.06 ID:BmPgE/vWo

―― 車掌室


日向「この人のせいで秋槻さんが乗り遅れました」

「よく分かりませんが、そうらしいです……すいません」

車掌「そうですか……」

マリ「ち、違うよ、私が困ってたから助けてくれて……」

日向「あ、そうなの? 間違えたよ、あはは」

「あははじゃないでしょ!?」

車掌「……」

「漫才やってる場合じゃないって。えっと……私、鳥羽栞奈って言います」

車掌「……」

日向「かんな……栞奈ね」

マリ「栞奈ちゃん歳いくつ?」

栞奈「高校三年生、17歳なのだよ」

日向「私たちと一緒だな」

栞奈「そうなんだ。これからよろしく〜」

マリ「よろしく〜」

車掌「……」

栞奈「えっとぉ……車掌さん?」

車掌「……失礼しました。それでは、乗車券を」

栞奈「はい、どうぞ」

日向「なんで改札に居たんだよ。あんな時間に」

マリ「始まりだな……って思って……改めて駅を見ておこうと思ってたから……」


……


802.74 KB Speed:0.2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)