【艦これSS】不器用を、あなたに。

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20 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/01(火) 10:20:12.52 ID:DdEdvpJ/O
山城「ふふ、あんたのそういう所は嫌いじゃないわ」

山城「それよりそろそろ姉妹のところに戻ってあげたら?」

山城「私が引き止めたわけでもないのに彼女達からさらにヘイトを買うなんて、全然大丈夫じゃないもの」

別卓から比叡や榛名が山城のことを、嫌悪を含むような目で見ている。霧島も眼鏡の反射光で分かりずらいが、よくは思ってなさそうだ。

金剛「ほんとに観察眼はスゴいんデスカラ。それじゃあ、よい1日を過ごすデース!」

金剛はニッコリ笑って席を立ち、姉妹の元へ帰って行った。
21 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/01(火) 10:22:28.27 ID:DdEdvpJ/O
山城「(よい1日を、ねぇ...。非番だし、独り部屋で虚しくぼーっとするか図書室に篭るかしかないのだけど)」

社交辞令を深く考えてしまった。
周囲の明るく朗らかな声で思考の渦から引き戻される。
声のする方をチラ見すれば、やはり金剛が楽しそうに姉妹艦や近くにいる他の艦娘と喋っているのである。

山城「(...山城であること自体は良いとしても、どうせ艦娘に生まれ変わるんならあんな風になりたかったわよね)」

山城「(まぁ、絶対口には出さないけれど)」
22 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/01(火) 10:23:13.53 ID:DdEdvpJ/O
山城はひっそりと羨望しながら目線を下に戻す。
食事は既に終わっていた。

山城「(さて、今日も今日とて欠陥だらけの不幸鑑らしい1日を過ごしましょうか)」

こうして嫌われ者は席を立つのであった。
23 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/01(火) 10:26:25.19 ID:DdEdvpJ/O
???「よくは聞き取れませんでしたが山城さんの真意を知れるヒントがありそうでしたね...」

そう遠くない別卓で今の2人の会話に聞き耳を立てていた者がいた事など、山城は知りもしない・・・
24 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/01(火) 10:27:58.47 ID:DdEdvpJ/O
今回はここまでです

初詣にでも行ってきます

書き溜めの半分を消費してしまったので今夜は投下できないかもです
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 10:42:12.53 ID:/kPldRvhO
Oh... 山城なにをしでかしたらこんなに嫌われるんや...
26 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:20:39.15 ID:Zv5BfKWRO
結局書き溜めをほとんど増やせてません...
とりあえずまた少し投下します
27 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:21:45.64 ID:Zv5BfKWRO
〜〜〜

12月9日 02:00 鎮守府廊下




暁「うぅ...」

暁「(響とか起こせば良かった...。お化けさん、ど、どうか今だけは...!み、見逃してください...!)」

暁「(トイレまであとちょっと!下向いてれば大丈夫...!下向いてれば大丈夫...!!)」


真っ暗な中、一人恐怖と戦いながら早足で
トイレを目指す暁の姿がそこにはあった。
28 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:22:57.46 ID:Zv5BfKWRO
暁「(川内さんが騒がない日に限ってトイレに起きるなんて...)」

いつも夜中に騒ぎ回る川内は今宵は姉妹艦と仲良く自室に居るらしい。

暁「(お化け...目の前にいたらどうしよう...怖いな...「暁?」 ひぅ!?」


目線を上げると、もうすぐそこまで迫っていたトイレの入口に、白い和服に身を包んだ、赤い目の、黒髪を長く垂らした女性がが居た。真っ暗闇の中じゃ幽霊と見間違いかねない。
29 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:23:42.50 ID:Zv5BfKWRO
暁「...山城さん?」

山城「またこんな所で会うとはね」

どうやら山城はトイレから出てきたところのようである。
30 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:25:30.99 ID:Zv5BfKWRO
暁「山城さんのその格好、心臓に悪いわよ...。2回目だから今回は大丈夫だったけど...」

実は4ヵ月程前、同じような形で2人は出くわしていた。
その時は山城を幽霊と勘違いした暁が気絶寸前になってしまい大変だったのだ。

暁「(とにかく山城さんでよかったわ!)」

暁「(でもトイレから出てきた所ってことは...また私1人よね...)」

まだ終わらぬ試練の存在に気づき、暁は意気消沈する。安堵も束の間、再び恐怖が思考を支配していく。すると予想外の言葉が山城から出てきた。
31 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:26:52.40 ID:Zv5BfKWRO
山城「...ねぇ、暁。ちょっとだけ喋っていかない?」

暁「喋る...?」

山城「あなたがトイレ終わるまで入口で待ってるから」

暁「わ、分かったわ!お喋りなら暁に任せてちょうだい!(これはラッキーね!山城ありがとう!)」

山城「付き合わせてごめんなさいね」

暗くてはっきりとまで見えなかったが、山城は微笑みをこちらに向けていた、ように見えた。
32 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:28:15.57 ID:Zv5BfKWRO
暁「(やっぱり山城さんだってホントはみんなと仲良く喋りたいのよ!)」

暁「(それにしても何喋るんだろう?あの山城さんが引き止めたくらいだし、話しにくい相談とかあるのかしら?)」

ホッとした気持ちと、山城とのお喋りが気になるモヤモヤを抱え、暁は個室のドアを開けたのだった。
33 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/02(水) 23:29:10.75 ID:Zv5BfKWRO
とりあえず投下はここまでです
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/03(木) 00:13:32.55 ID:BcJbs2CVo
おつ
35 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/03(木) 23:52:18.49 ID:KiRAgrnLO
こんばんは、相変わらず書き溜めが増えないゴミです

今晩も小出しに投下します
36 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/03(木) 23:55:55.00 ID:KiRAgrnLO



暁「待たせちゃってごめんなさい。それで、何をお喋りするの?」

山城「あぁ、その、大した話ではないのだけど。結論から言うと伝言を頼みたいのよ」

暁「伝言?」

山城「えぇ。今日、じゃなくてもう昨日ね、神通の進水日だったじゃない?」

暁「そうね、私も川内さんが開いてたお祝いパーティーに参加してきたわ!」

そう、今日は駆逐艦達も日頃からよくお世話になっている神通の進水日だった。
艦娘にとって進水日はいわば誕生日のようなものなので盛大に祝う。
鎮守府古参勢の神通ともなると慕っている人は特に多く、大勢の有志達によって夕食後に彼女のためのパーティーが開かれたのだ。
37 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/03(木) 23:57:28.71 ID:KiRAgrnLO
山城「あら、そうだったのね。実を言うと私は昨日は直接会わなくてね、お祝いとかしてないのよ」

山城「でも長い付き合いの同僚だし、おめでとうくらいは言っとこうと思ったのだけど...」

山城「...私、彼女からも嫌われてるしね。嫌いな相手が一日遅れでお祝いしてくるのも気まずいだろうし、あなたに代わりにさらっと伝えてもらおうと思ったのよ」
38 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 00:00:11.67 ID:RYPNVgDLO
暁「(あれ?そんなこと?)」

暁は拍子抜けした。そして少しだけ違和感を覚えた。

暁「(たしかに神通さんは2日がかりの遠征に出てて、昨日はみんなが夕飯を食べ終わった頃にようやく帰ってきたわ)」

そう、山城が神通に会わなかったという話自体はおかしくない。
それに、暁としては神通はむしろ他の川内型と同じように山城に理解がある側の人だと思うのではあるが、神通が山城の振る舞いをよく批判しているというのは事実だ。
39 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 00:00:53.19 ID:RYPNVgDLO
暁「(けど、私を引き止めてまでするほどの話じゃないわよね)」

暁「(なんたって、川内さんと那珂ちゃんさんは山城さんの味方っぽいし、明日2人にでも頼めばいい話...)」

山城「...暁?」

暁「ふぇ!?」

山城「その、別に軽いお願いなんだし、もしめんどくさいならいいのよ?」

山城「あなたに会うまでは川内にでも伝えてもらえばいいと思ってたし」

どうやら暁が引き受けるかどうかを悩んでいるように見えたようだ。そして見事に暁の考えていたことを口にした山城。
40 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 00:02:48.57 ID:RYPNVgDLO
暁「いや、そ、そうじゃないわ!」

暁「あのね、山城さん、神通さんは山城さんのこと、すごく嫌ってるとかじゃないと思うわ!」

暁「だからね、今回は私から伝言しておくけど、機会があったら神通さんに話しかけてみてもいいと思うの!」

誤魔化すために咄嗟に考えていることとは違うことを口にした。しかし今言った事自体は暁の本心である。
41 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 00:03:45.19 ID:RYPNVgDLO
山城「...そう。まぁ、機会があったらね」

暁「(私の考えすぎだったのかなぁ...)」

山城「じゃあ要件も伝えたし戻りましょうか。前も言った通り、私もこっちだから」

暁「そうね!」

2人は駆逐艦寮の奥の方を目指し歩く。
42 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 00:05:11.08 ID:RYPNVgDLO
山城の自室は本来は真逆の方向の戦艦寮である。しかし夜の静けさが好きな山城は、トイレのために起きてしまった夜などには、駆逐艦寮の端側の階段を降りて中庭に出て、そこらをぶらつきながら敷地を縦断して戦艦寮まで戻るのだ、と前回の時に教えてくれた。
その時暁は、だから同じく夜好きな川内さんは山城さんと仲がいいのか、なんて解釈をしてすごく納得したのだった。
もちろん電から話を聞いてからは、それだけが理由ではないと知っているのだが。

無言のまま、2人は暗闇を歩く・・・
43 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 00:07:11.33 ID:RYPNVgDLO
今回はここまで

SSを書くって大変ですね
全然書き溜めを蓄えられないです

不幸だわ...
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/04(金) 00:32:34.43 ID:SmRuOSoJo
おつおつ
頑張って
先が楽しみだから
45 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 23:46:42.70 ID:ClKm8+sSO
今晩は昨日よりさらに少ない投下量になっちゃいます
書き溜めが溜まったら一気に投下量増やせるんですけどね・・・

てなわけで投下開始です
46 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 23:52:36.76 ID:ClKm8+sSO
暁「(にしても、深刻な相談だと思ってたから、ついに暁も山城さんに頼られるようなレディーになれたのかって思ったのになぁ...)」

山城の斜め後ろで、暁は先程の出来事を振り返っていた。

“レディ”というのは暁が目指している理想の姿である。
お淑やかで、美しく、慕われていて、頼りにもなって・・・
いつかはレディになれたら、と暁は日頃から強く思っているのである。
47 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 23:54:02.23 ID:ClKm8+sSO
暁「(でも、喋っていかない?なんてあの山城さんから言われたら、期待しちゃうのも仕方ないわよね)」

そうやって内心舞い上がってしまった自身を慰めようとした時だった −
48 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 23:55:29.09 ID:ClKm8+sSO
暁「(...やっぱ変だわ!)」

暁「(じゃあ何であの時、最初から「伝言頼んでいいか」って言わなかったのかしら?)」

先程の違和感の正体に気づく。

暁「(そうよ!それにあの程度の伝言を頼むためだけに、わざわざ私がトイレを済ませるまで待っててくれたのも気になるわ。こんな寒いのに...)」
49 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 23:58:15.78 ID:ClKm8+sSO
天気予報では、昨日から特に冷え込みが厳しくなったと言っていた。本格的な寒波が到来してるんだそうな。

暁「(...!?)」

続けて暁はさらに大きな矛盾に気づく。
前を黙々と進む幽霊のような格好をした人物は、まさか後ろにいる少女が彼女のことをずっと考えているなど、露も知らないだろう。
50 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/04(金) 23:59:19.40 ID:ClKm8+sSO
しばらくして、暁はようやく納得のいく結論を導く。

暁「(もしかして...!山城さんは...)」

そう考えると、辻褄が合うのである。

暁「(どうしてこんな簡単なことに気づけなかったんだろう...)」
51 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/05(土) 00:00:29.90 ID:WoFj9c7TO
それは“嫌われ者の山城”という先入観が強すぎた故なのかもしれない。
それと同時に山城が現状を甘受しているというのも、この発見を妨げた原因であろう。

暁「(きっとみんなも、こういうところに気づけば...!)」
52 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/05(土) 00:02:19.20 ID:WoFj9c7TO
山城「...着いたわね」

暁「そ、そうね!」

暁が考え事をしている間に、早くも暁型の部屋の前に着いていたようだ。

山城「それじゃあ、おやすみ」

山城はそれだけ言うと、すぐにこちらに背を向け、歩みを再開させた。
それでもその短い言葉にはどこか優しさが篭っているようにさえ、暁には感じられた。
今だから、やっと、心の底からそう思えるのかもしれない。
53 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/05(土) 00:02:57.01 ID:WoFj9c7TO
暁「えぇ、おやすみなさい。......ありがとう、山城さん」

二言目は彼女に届いただろうか。
54 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/05(土) 00:04:24.69 ID:WoFj9c7TO
今回はここまでです

アニメ2期は時雨とか西村艦隊が重要な役で出るんじゃないか、なんて話が出てますね!
楽しみですね!!
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 00:07:48.85 ID:9dsXnKEFo
おつおつ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 01:39:11.35 ID:id5IWYE00
そしていっつもハブられる時雨の長女と。もう期待してないから良いけど
57 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:26:27.19 ID:KI4sEnEvO
昨日は投下できませんでしたが今日はします

別にその分ストックが増えたとかではないのですけども・・・
58 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:27:33.02 ID:KI4sEnEvO
暁はドアをそっと開け、妹達が寝静まる部屋に入る。
ドアを閉めその場に座り込み、ドアに片方の耳を当てる。

コツ...コツ......コツ............コツ...

しっかりと耳を澄ませば、遠ざかっていく足音が聞こえる。
59 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:29:04.63 ID:KI4sEnEvO
暁「(前回は私があぁなっちゃったから、負い目を感じたのか、山城さんは無条件でトイレの間付き添ってくれたわ)」

改めて、以前に今夜と同じような状況で山城と会った時のことを思い出す。

暁「(でも今回は私は驚かなかったし、そんな必要はなかった)」

足音はついに聞こえなくなる。
60 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:30:07.28 ID:KI4sEnEvO
暁「(それでも山城さんは、私が安心できるようにと、一緒に居ようとしてくれた...)」

暁「(その気遣いを隠すために、わざわざ大したことない伝言を頼んだんでしょうね)」

.........コツ......コツ...コツ...コツ...

また足音が聞こえ始め、こちらに近づいてくる。
61 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:32:18.11 ID:KI4sEnEvO
暁「(帰りだってそうよ。前の時は夏の暑苦しい夜だったから何も不思議に思わなかったけど...)」

コツ、コツ、コツ...

ちょうどその足音は、扉を隔てて暁の真横を通る。
62 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:32:56.11 ID:KI4sEnEvO
暁「(こんな冬の日にあんな格好で中庭に出るわけないわ。だから、山城さんがこっちに来る理由なんて何も無いのに...)」

...コツ......コツ............コツ...

先程のようにまた足音は遠ざかる。もっとも、今度は真逆の方向にであるが。
63 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:35:52.26 ID:KI4sEnEvO
暁「(...全ては怖がりの私のために。)」

暁はそっとドアノブをひねり、身一つ分だけドアを静かに開ける。廊下の先を窺えば“幽霊”が戦艦寮へ向かうのが見える。
皆から怖がられ、嫌悪される存在・・・
64 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:38:36.98 ID:KI4sEnEvO
暁は再びドアをそっと閉め、今度こそ寝床に向かう。

暁「(こんなことをする人が、本心で時雨たちに暴言を吐くはずがないわ...!)」

そう確信をした。

ふと右側の二段ベッドの下段で眠る末の妹を見れば、彼女は穏やかな顔をして眠っている。
65 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:44:52.69 ID:KI4sEnEvO
暁「(電、あなたがずっと言ってきた事はこういうことだったのね)」

周りからも奇異の目で見られてきた、電の必死な山城擁護。
姉妹艦である暁でさえ、そうまでする必要性は理解出来なかった。
それでも、真実の欠片を拾ってしまった今は、そうせざるにはいられない気分にさえなりそうだ。

明日この事を暁型で共有しよう。鎮守府全体ともなると先は長いのかもしれないが。
そう決心して暁は再び眠りに付くのだった。
66 : ◆eZLHgmSox6/X :2019/01/06(日) 23:47:04.92 ID:KI4sEnEvO
投下はここまでです

明日の夜にでも続き投下出来たらいいなぁ、なんて。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/06(日) 23:53:21.38 ID:WssSez8Qo
おつおつー
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 00:46:11.52 ID:xEn7kYJJO
これはまごうことなきレディですわ
69 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/08(火) 23:58:46.79 ID:g1x252iwO
そういやsagaを入れることを失念してました
まぁこれ入れたところでどうせ誤字るのであんま意味無い気もしますが・・・

続き投下します
70 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/08(火) 23:59:27.53 ID:g1x252iwO
−−−−−−
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那珂「はぁ...」

那珂「もぅ〜〜〜!!!なんでみんな那珂ちゃんのファンになってくれないの〜〜〜(泣)」

麗らかな日光に照らされながら、朝礼台の上で嘆く川内型末妹の姿がそこにあった。

那珂「歌だって結構いいと思うんだけどなぁ!那珂ちゃんの可愛さにマッチしてるいい曲だと思うんだけどなぁ!!!」

那珂「神通ちゃんもそう思うよね!?」

朝礼台の傍に置いた音響機材を片している姉妹艦に同意を求める。
71 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:02:12.50 ID:LspMO4cxO

神通はいつもなんだかんだで 妹の“アイドル活動”に付き添ってくれるのだ。普段は規律に厳しく皆から“鬼教官”なんて呼ばれているが、こういう所に彼女の優しさを感じる。
72 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:02:57.88 ID:LspMO4cxO

神通「私もいい曲だとは思いますよ」

那珂「だよねっ!!!」

神通「そのせっかくの曲をみんな聞いてくれないのは、那珂ちゃんがアイドルアイドルうるさすぎるからなのでは?」

那珂「」

同意を得て完全に舞い上がっていた那珂は、強烈なカウンターを受け言葉を失ってしまった。前言撤回、やはり神通は鬼かもしれない。
73 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:08:22.61 ID:LspMO4cxO
川内「神通...。那珂ちゃんの心を解体しちゃダメでしょ」

もう一人の姉妹艦が配線ケーブルを纏めながらツッコミを入れる。
彼女もまた、妹の閑古鳥が鳴くステージの手伝いをしていた。
夜戦好きの印象しかない彼女だが、実は妹や駆逐艦達の面倒見が良かったりする。また神通と共にこの鎮守府の古参であり、戦力と人格の両方の面で慕われている艦娘であることは意外な点である。
74 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:11:59.28 ID:LspMO4cxO

神通「まぁ半分冗談ですけど、那珂ちゃんは普段からもっと大人しくしてて欲しいといいますか...」

こめかみを指で押さえて呆れているような表情をして言う。

神通「あ、もちろん姉さんもですからね?」

川内「え、私もなの!?」

那珂「なんで自分は大丈夫だと思ったの...。川内ちゃんへのクレーム、私のとこに来るんだからね?」
75 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:12:50.52 ID:LspMO4cxO

ここで神通と那珂が指しているものは、もちろん川内の夜に騒ぎ出す習性についてである。
夜戦好きな川内は夜になるとハイテンションになる。それだけでなく、周りを巻き込んでまで夜間演習をしようとしたりするので、鎮守府に所属するあらゆる艦娘に大迷惑なのだ。
76 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:13:36.42 ID:LspMO4cxO
神通「それと駆逐艦まで付き添わせるのはやめてください。あの子たちは遠征やら戦術講義やらがあって毎日大変なんですから」

川内「じゃあ軽jy」

神通「当然、軽巡洋艦や他の艦もダメですからね」

川内「うぅっ...妹たちが厳しいよ...」

トホホ...と、あざとく嘆く川内。
77 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:18:51.15 ID:LspMO4cxO
川内「でも最近はクレームないでしょ?」

神通「そういえばそうですね」

那珂「あれ?なのに相変わらず夜騒いでるけど、もしかして川内ちゃん一人で夜戦でもしてるの?」

たしかに川内による夜間演習招集のクレームはここ1週間は聞いていない。その割には毎日夜に騒ぎながら外へ飛び出しているのだが。那珂の疑問は自然なものだった。

川内「そんな、一人でやる夜間演習なんてつまんなくて私でも飽きちゃうよ〜!」

川内「そうじゃなくって、お得意様が出来たんだよ!」
78 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:20:04.67 ID:LspMO4cxO
お得意様、と聞いて妹達は首を傾げてしまう。そんなに川内の夜戦に付き合うのを厭わないでくれる艦娘など居ただろうか?

神通「姉さんの夜戦に付き合うなんていう物好きな人がいるんですか?」

当然またもや沸いてくる素朴な疑問を声に出した神通。
79 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:21:29.36 ID:LspMO4cxO
川内「気になるぅ〜?」

川内は束ねた複数のケーブルを拾い上げながら、ニヤけた顔で2人を煽る。
神通の方を見れば、勿体ぶらないで教えてください、なんて表情をしている。

その時、彼女の視界にタイミングよく映りこんだ艦娘がいた。
それを認めた川内は、反射的にその方を指しながら声を上げた。
80 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:22:29.53 ID:LspMO4cxO

川内「あ!ちょうどあそこにいる!」

神通と那珂はそのお得意様とやらが気になり、すぐに川内の指した方向を探す。その先に見つけたのは、2人が思ってもみなかった人だった。
81 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:24:56.38 ID:LspMO4cxO
神通「えっ...山城さんなんですか...?」

那珂「(えっ、山城さんって...あの...)」

やはり驚きを隠せない。


那珂「...嫌われてる...戦艦だよね...?」
82 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/09(水) 00:25:57.02 ID:LspMO4cxO
本日はここまでです

また書き溜めを作らないと・・・
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/09(水) 00:33:41.26 ID:Ebfrgo4Go
おつおつの
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/09(水) 03:36:21.69 ID:ltGR0NTXO
いいですね〜
85 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:20:40.23 ID:Rk+RUbUMO
今日は寒かったですねぇ
明日も寒くなるんでしょうか

さて、ちょっと投下です
86 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:22:09.87 ID:Rk+RUbUMO
−−−
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1ヵ月程前、つまり那珂がこの鎮守府に着任した時、山城はすでに嫌われていた。というより、これは後から知ったことなのだが、ちょうど那珂の着任のわずか3日前に“事件”が勃発していたのだ。
87 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:24:00.11 ID:Rk+RUbUMO
那珂は艦時代に四水戦で指揮したこともあって、着任直後から村雨や夕立に歓迎された。そして自然に白露型達とよく話すようになると、すぐに彼女達が山城を憎んでいることに気づいた。それどころか、山城への憎悪の雰囲気は鎮守府の色々な所で見受けられたのだ。

もちろん他人事ではあるのだが、ここまで異常に嫌われているとなると気になって仕方がない。そこで那珂は着任して間もないうちに、遠慮気味にではあるが、皆が彼女を嫌う理由を夕立に聞くことにした。
88 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:25:22.59 ID:Rk+RUbUMO

夕立「アイツは...時雨の幸運が憎いのよ...」

すると夕立は、怒気をはらみながらも抑えたトーンで、ゆっくりと答えた。

夕立「自分が不運だからって、時雨の幸運に嫌味を吐いたの」

こみ上げ続ける怒りを懸命に抑えながら言葉を紡ぐ夕立。
その様子は可愛らしい語尾で元気に話してくれる普段の夕立とはあまりにかけ離れている。
89 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:26:26.22 ID:Rk+RUbUMO

夕立「しかもあのクソ戦艦は...他のかつての仲間たちにも暴言を吐いたわ」

夕立「私たち艦娘が1番大切にしている絆を、仲間ごっこと呼んで馬鹿にして...邪魔でしかない足枷ってほざいたわ...」

夕立の身体は小刻みに震えている。
90 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:27:55.22 ID:Rk+RUbUMO

夕立「そして最後には...ニヤけながらっ...!そんなに仲間ごっこが好きなら、スリガオ海峡で時雨が私の代わりに沈めば良かったわね、って!!」

夕立「時雨が誰よりもスリガオ海峡のことを気にしてるはずなのにっ!」

夕立「アイツはっ...!それを分かってながら嫌味を言った!!」

夕立「こんなクズを...憎まないでられるわけないっ...!!絶対に許さないっ...!!」
91 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:29:18.60 ID:Rk+RUbUMO
那珂はしばらく何も言うことが出来なかった。
嫌なことを思い出させてごめんね、とやっとのことで夕立に言った時には、彼女はすでに平静を取り戻しつつあった。

夕立「新しく来る人が事情を聞いてくるのは仕方ないし・・・」

夕立「むしろこっちこそ変な空気にしちゃってごめんなさい・・・っぽい」

そう言って夕立は苦笑する。
92 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:30:39.06 ID:Rk+RUbUMO

夕立「だからね、あまりアイツとは関わらない方がいいと思うっぽい」

語尾こそいつも通りに戻ったが、その口調にはナイフのような鋭い冷たさが残っていた。

そしてこれが、那珂がこの鎮守府の山城を一番最初に知った時であった。
93 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/11(金) 01:33:14.94 ID:Rk+RUbUMO
今回はここまでです

書き溜めを作るのでこれから投下頻度が一気に落ちそうです

なかなか大変です・・・
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/11(金) 01:36:21.20 ID:m+vK3O56o
おつおつ
まってる
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/21(月) 09:56:52.25 ID:oSIai5g7O
大変期間が空いてもうしわけないです
今夜あたりに少し投下しようと思います
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/21(月) 12:05:05.33 ID:WiWWpdp7o
待ったかいがあった
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/21(月) 18:53:49.14 ID:sWFAKILaO
10日くらいどうってことはないさ
楽しみです
98 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:21:56.52 ID:FHIWeP8+O
お待たせしました、投下します
99 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:22:36.27 ID:FHIWeP8+O


那珂「ねぇ、川内ちゃんと神通ちゃん」

川内「ん〜、な〜に?」

神通「何か相談ですか?」

夕立から山城の話を聞いたその日の夜、那珂は思い切ってその2人に山城の話を聞くことにした。
綺麗な姿勢で文庫本を読んでいる神通と、だらしなく寝っ転がりながらマンガを読む川内。このコントラストが川内型の日常風景だったりする。
100 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:23:37.92 ID:FHIWeP8+O

那珂「あのね、山城さんのことなんだけど...」

那珂がそう言うと、神通は読んでいた本に栞をはさみ、そっと閉じた。その顔を見れば表情が少し曇っている。
川内はちょっとだけ真面目な顔つきになってこちらを一目見た。が、一瞥しただけですぐに視線をマンガに戻してしまった。

那珂「...(川内ちゃんと神通ちゃんでさえ、あまり触れてほしくないんだね...)」
101 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:26:32.91 ID:FHIWeP8+O

なんとなく、そんな感じになるとは想像していた。人懐っこい夕立があんなにも憎悪の感情を剥き出しにしていたのだ。それに鎮守府のみんなが嫌っているとなると、いかに山城の吐いた暴言がショッキングなものだったかが窺える。

でも、だからこそ事の次第をより冷静に語ってくれそうな人の話を聞きたかった。そう思うのは、もちろん姉として2人を慕っているからであるし、また彼女らがこの鎮守府で山城に並ぶ古参勢だからということもある。
102 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:27:43.14 ID:FHIWeP8+O
せっかく私たちは人の姿で生まれ変われたのだ。それならば今度こそ誰も沈まずに、みんなで笑い合いながら戦いを終わらせたい。そのためにもなんとかこの状況を解決して、ギスギスした雰囲気を無くせないものか。

そういう願いが那珂にはあった。
103 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:30:29.15 ID:FHIWeP8+O
川内「で、那珂は山城さんの何が知りたいの」

目はマンガに向けたままで、川内が聞いてきた。
どうやら話はちゃんと聞いてくれているらしい。

那珂「山城さんは、艦隊の仲間に暴言を吐いたから嫌われてるんだよね...?」

神通「先日の件を知ってるんですね」

那珂「うん...。着任してからのここ数日ずっと気になってたから、さっき夕立ちゃんに聞いて教えてもらったの」

那珂「...すごい怒ってた。酷いこと思い出させちゃったな...」

自責の念に駆られて落ち込む那珂。その様子を見て神通は話を本題へ切り替える。
104 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:31:33.93 ID:FHIWeP8+O

神通「でも夕立さんから聞いたのならそれ以上に何を知りたいのですか?」

神通「彼女は山城さんが暴言を吐いた現場に居合わせていたわけですし、逆にその場に居なかった私の出る幕は無さそうですが...」

あっ、でも、と思いついたように零して神通は川内の方を見る。
105 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:32:33.31 ID:FHIWeP8+O
神通「姉さんはあの時もろに目撃してましたね」

那珂「川内ちゃんもその場に居たんだね」

川内「まーね」

那珂「それなら最初から夕立ちゃんじゃなくて川内ちゃんに聞いてれば良かったなぁ...」

那珂は再びしょんぼりとしてしまう。
すると今度は川内が口を開いた。

川内「...あえて私たちに聞きたいことがあるんだね?」
106 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:33:53.25 ID:FHIWeP8+O

彼女はマンガを閉じて起き上がった。どうやら真剣に話を聞くに値する、と感じてくれたようだ。

那珂「そうなの。私思うんだけど、本当に山城さんはそんな酷い人なのかな、って...」

那珂「だからね、この鎮守府で軽巡最古参の川内ちゃんと、2番目の神通ちゃんなら山城さんがどんな人か知ってるかなって思ったの」
107 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:35:11.96 ID:FHIWeP8+O

少し間を置いて、那珂は深呼吸をする。今から口にすることは、きっとこの鎮守府では決して歓迎されないことだろう。だからこそ、この2人には言うのだ。

那珂「ねぇ、山城さんは本当に仲間を邪魔だって思ってるのかな」

那珂「本当にずっと前からああいう人だったのかな」

那珂「みんなでずっと嫌い続けてていいのかな」



その疑問はとても斬新なものだった。
108 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:36:47.70 ID:FHIWeP8+O
先日の事件以来、そんなことを口にするものは居なかった。一部の“優しすぎる”と呼ばれる艦娘は、何か事情があるんだと言って擁護しようとはしていた。しかしその努力は無駄でしかなかった。

とはいえ、もちろん山城の言動に憤りを感じながらも、多くの人は最初は「どうして?」の気持ちを抑えきれずに彼女に問い詰めた。
疑問に思っていたという点は那珂と同じなのである。
109 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:37:59.45 ID:FHIWeP8+O

しかしそこに含まれる感情はあまりに違いすぎた。
信頼を踏みにじられた哀しみ、姉妹艦や仲の良い同僚を傷つけられた事への怒り、そんな考えを持つ山城自体への恐怖・・・

2人は少し黙りこんでしまった。しばらくして最初に沈黙を破ったのは川内だった。
110 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:38:43.84 ID:FHIWeP8+O

川内「なんとなく那珂の言いたいことは分かったよ」

川内「みんな事件のショックに振り回されて感情的になりすぎてないか、ってことだよね」

那珂「うん...」

那珂「山城さんが絶対悪いけど、それでも仲直りしようとしないでみんなで嫌い続けるなんて良くないよ...」

那珂は懸命に訴えた。それは着任してから感じ続けてきた形容し難い嫌な雰囲気への、精一杯の抵抗だった。
111 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:41:27.09 ID:FHIWeP8+O

川内「でもさ、那珂」

川内「山城さんはそれだけのことをしたんだよ?」

那珂「...うん、そうだね」

川内「那珂は優しいからさ、そう思えるのかもしれないけどさ」

川内「あの人が時雨に言ったことは許されないことだよ」

夕立とは違って一貫して落ち着いている川内。しかしその言葉の重みは夕立のと変わらず、強い感情が篭っていることが感じ取れる。
112 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:43:56.44 ID:FHIWeP8+O

神通「それに私達だって、何度も彼女に聞いたんですよ。どうしてあんなことを言ったのか、って」

神通「返ってくる言葉は毎度「あの時言ったことが全てよ」なんです」

神通「ですから、もうここ2、3日前からは誰も問い詰めなくなりましたね」

神通曰く、山城は本当にそう思っていたのだという。
那珂の思いは引き裂かれようとしていた。
113 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:46:10.00 ID:FHIWeP8+O
那珂「でも...!」

反論しようとしたが、すぐに川内にバトンが渡る。

川内「時雨はさ、初期の訓練から面倒見てるけど、本当に繊細な子なんだよ」

川内「どこか戦いを心底憎んで嫌ってそうで、でも自分が強くなって周りを守りたいと思ってて。」

川内「なのに自身の幸運で自分だけ無傷ななんて事が起きちゃう。その度に悔しさと悲しさと寂しさが混じったような複雑な顔をするの」
114 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:53:13.01 ID:FHIWeP8+O
神通「そういったところが日常生活をに反映されてるのか、時雨さんは極端に遠慮がちですよね」

川内「うん、私が話しかけてもどこか申し訳なさそうにするしね」

神通「それくらいデリケートな彼女を、トラウマを抉ってまで傷つけたんです」

神通「こんなの擁護する必要はないと思いませんか」

古参の2人でさえ、ダメだった。
やはりこの考え方が正しいのだろうか。

那珂「...そう...なのかな」

那珂は自信なさげに呟いた
115 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:58:33.43 ID:FHIWeP8+O
神通「まぁ、でも私はあの人は艦娘としてのスキルはかなり高いと思ってますよ。しょっちゅう被弾しますけど」

神通「なので任務の際は私情を持ち込まないで、彼女とも上手く協力するべきだとは思います」

川内「たしかにあの人は旗艦とか上手かったよね。冷酷だからか落ち着いてるし、艦隊メンバーの状況把握とか戦術理解はかなりのもんだよね。不運すぎるけど」

神通「ですので最初の疑問に答えるなら、山城さんは有能な艦娘ではありましたよ」

神通「ですが、ただそれだけです」

神通「私達は彼女の優しさを目の当たりにしたことがある、とかではないのです」

川内「そう。だからあの人のことは単に“酷いことが簡単に言えちゃう不幸戦艦”っていう認識でしかないよ」
116 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 01:59:53.59 ID:FHIWeP8+O
いつの間にか那珂が沈黙する側になっていた。だが那珂の理想はまだ完全に否定されたわけではなかった。
山城となんてまだ直接会話したことなんてない。それでも山城は、いや山城だけじゃなく艦娘は皆、きっと自分と同じはずだ。
だからまだ言うことは残っている。
117 : ◆eZLHgmSox6/X [saga]:2019/01/22(火) 02:00:56.52 ID:FHIWeP8+O
今回はここまでです
ほんと更新が遅くなって申し訳ないです
多分次回もまたこれくらい空くかもしれないですがご了承ください
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 07:00:08.07 ID:TzqLlarRo
おつお
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 23:15:51.22 ID:3yr76B5Y0
>>47
>内心舞い上がってしまった自身を慰めようとした時だった


舞い上がった気分を諌めるどころか利用して自慰に耽っちゃうレディー
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