女「私は鼻が効きますから」

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127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:22:19.77 ID:/LehkniF0
男「はっ!!」パチッ

男「え!?朝!!??」ガバッ

男「今何時だ!?」キョロキョロ

男「ヤバっ!!約束の時間10分前!!」

男「ヤバイヤバイ!!!服は……これでいいや!!」ガサガサ

男「せめて歯磨きだけでも速攻で終わらす!!」シャカシャカ

男「寝癖っ!!ダメだ時間がないっ!!もういいやこのままで!!」

男「あと5分っ……走れば間に合うか!?いや、間に合わせるっ!!」

男「急げ!!俺!!」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:24:52.36 ID:/LehkniF0
――――
――

男「女さんっ!!!」

女「あ、おはよう……って、どうしたの!!?」

男「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

男「はぁ、走って……はぁ、きた」

女「すごい汗!ちょっと待ってて!」ガサガサ

男「はぁ、はぁ、……?」

女「ほら、ジッとしてて」フキフキ

男「え……ハンドタオルで……ダメだ女さん、汚れちゃうよ」

女「何言ってんのよ……汗だくのままバスに乗るつもり?」フキフキ

男「そ、それは……」

女「いいから。はい!体の方は自分で拭いてね」スッ

男「あり、がとう……」

フキフキ フキフキ
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:25:50.22 ID:/LehkniF0
女「どうして走ってきたの?」

男「寝坊して、遅刻しそうだったから……」

女「呆れた……。連絡くれればよかったじゃない」

男「それは、そうだけど……」

女「あ〜髪もボサボサだし!あっちの水道のとこ行きましょう」

男「は、はい」

男(情けないし……カッコ悪いし……どうしようもないな……俺)ズーン
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:27:17.31 ID:/LehkniF0
女「はい、これで良しっと」

男「寝癖くらい自分でできたのに……」

女「私がやった方が早くて確実じゃない」

男「そうだけど……はぁ、自分が情けなくて嫌になる」ズーン

女「そう?変に格好つけてる人より自然体でいいと思うけど」

男「フォローありがとう」ズーン

女「全く……」

女「頼りになるんだか、ならないんだか」

男「あ、ハンドタオルありがとう。洗濯して返すよ」

女「別にそのまま返してくれて結構よ」

男「いや、でも……流石にこれは――」

女「じゃあ乾くまで持っててくれない?」

男「うん?いいけど」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:29:09.21 ID:/LehkniF0
男(ふぅ、汗も引いて落ち着いてきた)

男(改めて見ると……女さんの私服姿って新鮮だな)ジー

男(デニムのパンツに白いシャツ、薄いカーディガンを羽織ってて……特に目立った服装ではないけど)ジー

男(雑誌のモデルみたいに着こなしてて格好いいな)ジー

女「なに?」

男(身長はそんな高くないのにスタイル良く見えるのは小顔だからか?)ジー

女「ねぇ、なんなの?」

男(ていうかなんだこの髪型、可愛すぎるだろ)ジー

女「ねえってば!」グラグラ

男「あ、ごめん、女さんに見惚れてた」

女「へっ!?」

男「私服姿って初めてみたからさ」

女「……」

男「女さんって顔小さいし、スタイル良いから何着ても似合うんだろうなぁって」

女「……」

男「?」

女「男くんってたまにサラッと恥ずかしいこと口にするよね」
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:31:05.71 ID:/LehkniF0
男「いやいや、流石に照れ臭いことは言えないし、言わないよ」

女「そう?」

男「うん」

女「ふーん」

男「あ、てかその髪型どうやってやってんの?いつもそんなクルクルしてたっけ?」

女「これはコテで巻いてハーフアップにしてるだけで、そんなに難しい事はしてないよ」

男「コテ??え、じゃあココとかどうなってんの?」

女「これは……こうやって、くるりんってしてるだけ」サッサッ

男「うおぉぉ!すげぇぇ!」

女「そんなに驚くような事?」

男「だって初めて見たからさ!すごい可愛いし、普段と違う髪型の女さんも新鮮だし!」ニコニコ

女「…………」

男「?」

女「……」

男「あれ?俺、また変な発言した?」

女「別にしてないわ」

女「さ、もう行きましょう」

男「??」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:33:04.08 ID:/LehkniF0
――バス 車内

男「なんとか二人席を確保できたね」

女「……うん」

男「ちゃんと中和できてる?」

女「……うん」

男(?なんか様子がおかしいな)

男「どうかした?」

女「隣に座っただけで男くんの匂いに包まれてて……その……」

男「あ〜、走っていっぱい汗かいちゃったからかぁ」

女「……」

男「でもそれって他の人からしたら汗臭いんじゃ」

女「ううん……なんだろう、言葉にするのは難しいんだけど……」

女「それは平気だと思う」

男「??」

女「それよりも……もうちょっと近くで嗅ぎたい……だめ?」

男(そんな可愛くおねだりされたら)

男「いいよ」

男(って答えちゃうよなぁ)

女「じ、じゃぁ」スス

女「……」スンスン

女「!」

男「どうしたの?」

女「朝なのに放課後の時みたいな匂い!」

男(そ、それは喜んでいいのか?)
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:35:14.45 ID:/LehkniF0
女「また昨日みたいに止まらなくなったらどうしよう……」

男「あ、あはは、バスの中ではさすがに……」

女「ね、男くん……ちゃんと止めてくれる?」

男(う、上目遣いでお願いですか……)

男「エスカレートしそうになったら止めればいいんでしょ?」

女「うん」

男「じゃあ、どうぞ」

女「ん」スッ

男(首元に顔を近づけてきた。よかった鼻とかじゃなくて)

女「……」スンスン

男(てか女さん、俺の匂い嗅ぐとキャラ変わるよなぁ)

女「ん……んっ……」

スンスン クンクン

男「こ、声は少し抑えたほうが……」

女「ん……はぁ……」スンスン

男「…………」

女「……ん……男、くん……」スンスン

男(そ、そんな艶かしい声で俺の名前を囁かないでくれぇぇぇぇ!!!)

女「ん……んんっ……はぁ……」

スンスン クンクン

男(これ、もうそろそろ止めるべきか?)
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:37:01.43 ID:/LehkniF0
男「ね、女さん」トントン

女「?」

男「一旦ストップで」

女「……うん」ウル

男(綺麗なお目目が少し潤んでるのは気のせいですか?ていうかなんで見つめてくるんですか?)

女「男くん……」じー

男「な、なにかな?」

女「あ、あのね……」ウルウル

男「……」

女「もう少しだけ――」

男「ダメです。そもそも止めてと言ったのはアナタでしょうが」

女「う〜〜」

男「そんな目で見てもダメなもんはダメ」

女「だって首だけでこんないい匂いなのに、それが鼻だったらと思うと……」

男「ま、まさか、ココでそれをやるつもりだったの?」

女「ほんの一瞬だけ、ね?お願い」

男(おいおいおい、どうなってんだ!!)

男(キャラが変わるどころの話じゃない!)

男(完全にキャラ崩壊を起こしてるじゃないかっ!)
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:38:43.29 ID:/LehkniF0
男「女さん、落ち着きましょう」

女「……」ススス

男(!?俺の鼻にゆっくり近づいてきてる!強引にくる気か!)

男(だがそうはさせん!ギャラリーのいる中で鼻の匂いを嗅ぐ行為だけはダメだ!)

男「女さん」ガシ

女「む〜!!」

男「あとで思う存分嗅いでいいから、ここは我慢して」

女「あと……で?」

男「そう、あとで」

女「……むぅ」

男「その頃には今以上に熟成されている、そう思いませんか?」

女「熟成……」

男「お楽しみは最後に取っておいた方が格別かと」

女「……」

男(この場を取り繕うために何を言ってるんだ俺は)

女「それもそうね、一理あるわ」スッ

男(冷静になってるし!)

女「ふふっ」ニヤ

男(完全に獲物を捕食する目にっ!!)
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:40:41.90 ID:/LehkniF0
――ショッピングモール

女「着いた!」キラキラ

男「朝なのにかなり人いるね」

女「どっかの誰かさんの身支度で遅れちゃったからね」

男「う……、ごめんなさい」

女「ま、そのおかげでいい匂いになってるんだし問題ないわ」

男「ならよかった……のか?」

女「さ、行きましょう!」ウズウズ

女「〜〜♪」

男「女さんご機嫌だね」

女「当たり前でしょ?今まで来たくても来れなかったんだから」ウキウキ

男「例のハンカチがあれば大丈夫なんじゃないの?」

女「あれはあくまでもその場凌ぎよ。長時間は無理」

男「そうだったんだ」

女「それよりも全部回るのに時間足りるかしら……」

男「全部!?」

女「ん〜時間が惜しいわ、早くいきましょう!」

男「う、うん」
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:42:39.99 ID:/LehkniF0
女「ねぇ、なんで離れようとするのよ!」

男「だって、女の子と寄り添って歩くなんて……」モジモジ

女「この後に及んで何恥ずかしがってるのよ……それじゃ意味ないじゃない!」

男「そうはいっても……慣れてないし、恥ずかしいし」

女「空気清浄機としての役割を全うしなさい!」

男「別に近くにいるだけで中和できるでしょ?」

女「できてないから言ってるの!」

男「え?なんで……」

女「それに周りなんて他人よ、気にするだけ無駄」

男「でも、もし誰かに……」

女「あーもう焦ったいなぁ」グイッ

男「!!!」

男(え、なにこれ……俺の腕に女さんの腕が絡まって……)

男(恋人同士がよくやってるあの腕組み……)

女「あ!これ、いいかも!自然に男くんの匂いを嗅げる!」ぎゅっ

スンスン クンクン

男「あわわわわわ!!」

女「ん、……これ、いい……」ぎゅぅぅ

スンスン クンクン

男(俺の左腕に女さんが密着して……その崇高なお胸の膨らみがっ!!)

男(制服とは厚みが違ってその尊い感触がぁぉぁ!!)
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:44:32.74 ID:/LehkniF0
男「お、女さん、いくらなんでもこれは……くっつき過ぎじゃない?」

女「くっつかなきゃ嗅げないじゃない」

男「そうだけど……でも……」

女「全ては匂いを嗅ぐためよ。ある程度の犠牲は払うわ」

男(犠牲!?なんか酷くない!?)

男「むぅぅ……」

女「あのねぇ、私だって仕方なくしてるのよ?」

男(まぁ、犠牲ってハッキリ言ってたし)

女「この場で匂いを嗅げないことは死を意味するの、わかる?」

男「死!?」

女「まぁ、それは大袈裟かもしれないけど、私にとってはそれくらい辛い環境なの」

男「さっき言ってた中和できてないってどういう事?近くにいれば中和されるんだよね?」

女「そうね。そこだけは私の認識が甘かったわ」

男「?」

女「人とすれ違ったり風向きが変わると、貴方の香りも流されてしまうの」

男「あ、そうか……人が行き交う室内だと特に……なるほど」

女「それなら匂いの元を嗅ぐしかないじゃない。お分かり頂けたかしら?」

男「……」コクコク
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 16:46:08.63 ID:/LehkniF0
男「でもくっつき過ぎると、その……」

女「男くんは私にくっつかれると嫌?」

男「俺は全然いいんだけど、なんか女さんに対して申し訳ない気持ちになる」

女「そんなの一々気にしたらキリがないし、キブ&テイクの精神でいきましょ」

男「ギブ&テイク……」

女「私が男くんにギブできてるか疑問だけど、そこは多目にみてくれると助かるわ」

男(いやいやいや、十分過ぎるほど与えてくれてますよ!)

男「わかった!今日を楽しむために俺も協力は惜しまないことにする!」

女「ええ、ありがとう男くん!じゃあ早速……」ぎゅっ

スンスン クンクン

男(こちらこそありがとうございますっ!!)
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/23(火) 16:50:48.05 ID:/LehkniF0
一旦休憩で夜から再開します
思って以上に長くなってしまって申し訳ないです
暖かく見守って頂けたら幸いです
それでは
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:37:22.72 ID:/LehkniF0
――ショップ

女「あ!あった!」

男「財布……?」

女「大量に入荷してるって情報は本当だったのね!少し遅れちゃったから不安だったけど、残っててよかったぁ」

男「ああ、欲しかったのって財布だったんだ」

女「うん。期間限定のコラボ品!ショップに行かないと買えないから困ってたのよね」

男「コラボ品?」

女「ほら、ここ見てみて」

男「お?おぉ……さり気なくあの有名なキャラが」

女「そう!そのさり気なくがポイントなの!可愛いよねー」ぎゅっ

スンスン クンクン

男(ふっ、君の方が可愛いよ)

男(なんてセリフは流石に言えません)
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:38:50.24 ID:/LehkniF0
女「じゃあ、そろそろハンドタオル返してくれない?」

男「タオル?ああ、でもこれは洗って返したいんだけど」

女「いいから、返して」

男「??……はい」スッ

女「どれどれ……」クンクン

男「!?」

女「んー……ふむふむ」クンクン

男(俺の汗が染み込んだハンドタオルを……マジか……)

女「じゃ、買いに行ってくるからその辺で待ってて!」

スタスタスタ

男(身体とか脇とかも思いっきり拭いちゃったのに……いや、拭いちゃったからよかったのか?)

男(まさか、女さんの例のハンカチって……女さんの体臭を染み込ませた……?)

男(いやいや、まさか……でも俺が嗅いだとき……めちゃくちゃ照れてたよな……)

男(人工的じゃない匂い……)
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:40:03.72 ID:/LehkniF0
女「お待たせ!ってどうしたの?何か考えごと?」

男「女さん、そのタオルの匂いどうだった?」

女「うーん……妥協点かな。でもやっぱりこっちには敵わないね!」ギュッ

スンスン クンクン

男(ああ、俺は幸せ者だ……)

男(じゃなくて!!)

男「例のハンカチってもしかして……女さんの匂いを染み込ませたモノ?」

女「…………え?」

男「汗とか体臭とか」

女「違っ!!違わないけど!!違うの!!」

男「あ、ここじゃ迷惑だから、一旦お店の外に!」

女「う、うん」
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:41:27.95 ID:/LehkniF0
――

女「あ、あれは、色々な黄金比があって!」

男「黄金比?」

女「洗剤と柔軟剤の量とか!それを毎回寝るときに肌身離さずにくっつけて、数日経ってから完成するの!」

男「くっつける?」

女「うぅぅ……とにかく!そんな感じなの!」

男「体の匂いがするところ……くっつける……もしかして」

女「違う!!聞いてないけど、絶対違う!!」

男「じゃあどこに??」

女「首の後ろとか!……上半身……とか……」

男「上半身?」

女「うぅぅ」

男「…………」

男「そ、そんなに恥ずかしがることないよ!俺はすごくいい匂いだと思ったし」

女「だから恥ずかしいのよ!」

男「大丈夫、俺も匂い嗅がれるの恥ずかしいけど今じゃ慣れてきたし」

女「はぁ……もういいわ。次のお店行きましょう」グイッ

男「おわっ!」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:42:49.07 ID:/LehkniF0
男(服屋、靴屋、雑貨屋、また服屋)

男(つ、疲れた……まだ昼なのに……本当に全店舗回るつもりなのか?)チラッ

女「〜〜♪」ギュッ

男(まだまだ衰える気配は……ないな)

男(匂い嗅ぐ時とかテンション上がる時とか、腕に抱きついてくるし)

男(いいんだけどさ!全然いいんだけどさ!)

男(女さんは目を引くような美少女で)

男(俺は平凡を絵に描いたような男で)

男(なんでこいつが?って顔でたまに周りの視線が痛い)

男「女さん」

女「なぁに?」

男「ちょっと休憩しない?」

女「んー、そうね。ちょうどお昼だし、そうしよっか」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:44:01.96 ID:/LehkniF0
男「そういえば、ご飯の匂いとかは大丈夫なの?」

女「大抵の物は平気!あ、でもフードコートみたいに色んな食べ物の匂いが混じり合ってるのはちょっと……」

男「なるほど」

女「さっき通りかかったときヤバかったわ」

男「あー、だからずっと俺の匂い嗅いでたんだ」

女「うん」

男「女さんは好き嫌いある?」

女「基本的になんでもいけるわ」

男「ふーむ」

女「私、普段外食とかあまりしないから……どこかお勧めある?」

男「そうだなぁ……」

男「ではパスタなんて如何でしょう、お嬢様」

女「パスタ?あら、それはとても素敵ね!是非案内してちょうだい」

男「かしこましました」

女「ふふふ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:45:55.43 ID:/LehkniF0
――――
――

女「〜〜〜♪」ギュッ

クンクン スンスン

女「はぅ……」ギュッ

男(慣れねぇぇぇ!!もう結構長い時間この状況だけど!全っっ然!慣れねぇぇぇ!!)

男(なんだこの愛くるしい生き物は!!)

男(学校の奴らが知ったら卒倒するレベルだぞマジで!!)

女「パスタ!美味しかった!」

男「美味しかったね」

女「また食べに行きたい!」

男「そうだね」

女「〜〜♪」ギュッ スリスリ

男「……」

男(落ち着け、彼女は俺の“匂い”だけが目的なんだ)

男(勘違いしてはダメだ。俺は空気清浄機、人ですらない)

男(普段出来ないことが出来るようになって……)

男「そうか」

女「?」

男(当たり前のことができなかったんだ)

男(そりゃあテンションも上がるよな)

女「どうしたの?」

男「いや、次行こう次!」

女「?」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:54:10.18 ID:/LehkniF0
――――バス 車内

男(つ、疲れた……)

男(すっかり日も暮れちゃったな……)

男「女さん、今日は満足できた?」

女「……うん」ウトウト

男「結局全部回れなかったね」

女「……うん」ウトウト

男「眠たいなら肩貸すよ?」

女「……ん」ポトン

男「着いたら起こすから」

女「……ん……」

男「疲れたけど……楽しかったなぁ」ウトウト

男「やべっ、俺まで寝たらダメだ」パチンッ
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:55:38.73 ID:/LehkniF0
――――噴水公園 ベンチ

男「目、覚めた?」

女「うん。恥ずかしい姿見られちゃったわね」

男「ははは、それこそ今更な気がするけど」

女「ふふっ、そうね」

男「もうすっかり暗くなっちゃったけど……家まで送ろうか?」

女「……」

男「女さん?」

女「約束は?」

男「へ?」

女「思う存分嗅がせてくれるって約束!」

男「えぇぇぇ……」

女「楽しみにしてたのよ!」

男「モールで散々嗅いだからいいでしょ?」

女「その時はほとんど服の上からじゃない!」

男「もう時間も遅いし……熟成してるかわかんねいし」

女「時間が経つごとに貴方の匂いは素晴らしいモノになっていたわ」ウットリ

男「そうですか……」
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:57:43.90 ID:/LehkniF0
女「じゃ、ちゃっちゃと済ませるね!」ススス

男「いきなり鼻ですか!?」

女「ちょっと黙ってて」スッ

男「あうぅぅ」

女「……」スンスン

女「!!!」

男「ど、どう?」

女「しゅ、しゅごい……」スンスン

男(しゅごいって……)

女「はぁ……」クンクン

女「ん……だ、だめ」スンスン

男(だめなら止めればいいんじゃない!?)

女「……んん……はぁ……」クンクン

女「!!」バッ

男「ど、どうしたの?」

女「はぁ……すごい……すごいよ男くん……」トロン

男「え?」

女「ドキドキするの……男くんの匂い嗅いでると……」トロン
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 22:59:15.76 ID:/LehkniF0
男「お、女さん?」

女「男くん……」スッ

クンクン スンスン

女「あ……んっ……」

男(な、な、なにが起こってる!?こ、これじゃあまるで……!!)

女「はぁ……男……くん……ふわぁ……んっ」

スンスン クンクン

男(まるで発情してるみたいじゃないかっ!!)

女「どうしよう……男くん……」スンスン

男「と、とりあえず離れた方が……」

女「やだっ!だめっ!」ぎゅぅぅぅ

男「!?」

スンスン クンクン

男(父さん、母さん……僕は今とんでもない美少女に抱き付かれて鼻をクンクンされています)

男(信じられますか?僕は信じられません)
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:02:24.31 ID:/LehkniF0
女「ん……はぁ……んっ……」スンスン

男(なんか女さん……モジモジしてるし……)

女「ふわぁ……ん……あぁ……」クンクン

男(え、エロ過ぎる……)

男「女さん、そ、そろそろお終い」

女「まだ……ん、足り、ないよ……男くん……」スンスン

男(これ以上は俺がヤバいっ!!強引にでも引き離さなきゃ)

男「ごめんね!」グイッ

女「!?」

男「女さん、これ以上は……色々とヤバいよ!」

女「やだやだ!」グイッ

男「うわっ!?」バタン

男(ベンチに押し倒されて、その上に女さんが……!!!)

女「……はぁ……」スンスン

男「お、おんな……さん……」

女「おとこ、くん……」ウルウル

男(ヤバイ!ヤバイ!!ヤバイ!!!)

女「んっ……」スンスン

女「あっ……んんっ……」クンクン

男(鎮まれぇぇぇぇ!!血液よ!一箇所に集まるなぁぁぁ!!!)
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:04:10.72 ID:/LehkniF0
女「はぁ……んっ……あっ……」

スンスン クンクン

男(引き離そうにも無理に起き上がろうとすると女さんがベンチから落ちるかもしれないし!)

男「あ!」

女「……んんっ……」スンスン

男「女さん、人が!」

イッヌ「わんわん!」

女「!?」ガバッ

主婦「あ、す、すみません!ほら行くよイッヌ!」

イッヌ「わんわん!」

スタスタスタ

女「あ、あ……」

男「と、とりあえず……落ち着こうか」

女「う、うん」カァァァ
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:05:03.36 ID:/LehkniF0
――――


男「落ち着いた?」

女「う、うん……私、どうかしてた……」

男「……なんか日を追うごとに、激しくなってる気がする」

女「多分……気のせいじゃなくて、そうだと思う……」

男「遅い時間は匂いが濃いから、かな?」

女「それもあるけど……匂い嗅いでると……」

男「……」

女「ううん、なんでもない」

男「……今日は遅いしもう帰ろう。送るよ」

女「うん、ありがとう」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:05:58.97 ID:/LehkniF0
――自宅

男(うわぁ、足が棒だ)

男(それにしても……これ以上、女さんに匂いを嗅がせていいのだろうか……)

男(必要最低限で留めておいた方がお互いにいいと思う)

男(今日のアレは明らかにおかしかったし、あのまま止めてなかったら……)

男(ていうか……無理だ!!)

男(俺にはキャパオーバーだ!!なにもかも!!)

男(圧倒的に経験値が少な過ぎる!!)
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:07:06.18 ID:/LehkniF0
――朝 電車

ガタン ゴトン ガタン ゴトン

女「……」スンスン

男「……」

女「ん……」スンスン

男「……」

女「どうしよう……また……」スンスン

男「!!」

女「男……くん……」スンスン

男(本当どうしよう……)
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:08:52.21 ID:/LehkniF0
スタスタ スタスタ

男「女さん、大丈夫?」

女「うん……」

男「でも朝からスイッチ入るのなんて珍しいね」

女「スイッチ……言い得て妙ね」

スタスタ スタスタ

女「男くんの匂いを嗅いでるとね、途中でスイッチが入っちゃうの」

男「でもショッピングモールでは平気だったよね?」

女「あの時は……周りの目もあったし、ほとんど服の上からだったから……」

男「スイッチが入り辛い状況だったわけか」

女「うん。直接肌の匂い嗅いじゃうと……ダメみたい」

スタスタ スタスタ
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:10:40.03 ID:/LehkniF0
男「スイッチが入りそうになったら止めるとかは?」

女「それが、さっき電車内で分かったんだけど」

女「スイッチ入る間隔が短くなってる気がする」

男「!」

女「というより、男くんの匂いに敏感になってると言った方が正しいかな」

スタスタ スタスタ

男「それでも……また嗅ぎたいって思うの?」

女「…………」コクン

男「これじゃあ本当に薬物みたいだ」

女「…………」

女「責任……とってくれる?」

男「え……それってどういう――」

後輩「おっはよーございまーす!」

男「」ビクッ

女「あら、おはよう」

男「ビックリした……なんだ後輩か」

後輩「なんだってなんですか、なんだって」

男「言葉通りだよ」
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:14:19.78 ID:/LehkniF0
後輩「むぅ……なんで二人で登校してるんですか!」ボソボソ

男「俺と内緒話してると女さんに勘違いされるよ?」ボソボソ

後輩「!!」

女「………………」ジー

後輩「お、女先輩!」

女「はい?」

後輩「今日も男先輩とお昼ご飯食べるんですか?」

女「え?あれはあの日だけで普段は一人よ」

後輩「じゃあお昼ご一緒してもよろしいですか?」

男(おお!攻めるなぁ)

女「……申し訳ないけどお昼は一人で食べる主義なの」

後輩「そう、ですか……」

男(どんまい、後輩)

後輩「じゃあ男先輩でいいや!一緒に食べませんか?」

男「は?俺!?」

女「………………」

後輩「聞きたいこともありますし」

男「いや、でもなぁ」

女「あら、折角誘ってもらってるのに断る気?」

後輩「断る気ですか!?」

男「えぇぇぇ」
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:16:20.45 ID:/LehkniF0
――教室

友「ニイチャンよぉ、随分偉くなったもんだなぁ」ガシッ

男「なにがだよ」

友「両手に花で登校とはいい御身分だな、ええ?」

男「偶然だ、偶然」

友「そんな偶然あってたまるか!!」

男「色々あるんだよ」

友「だから!その色々を俺はまだ聞いていない!」

男「それは……プライバシーに関わることだから言えない」

友「まぁ今はいい。だが昼休み、覚悟しておけよ」

男「昼休み……」

友「たっぷり問い詰めてやるぜ……くくく」

男「……」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:18:28.68 ID:/LehkniF0
――昼休み

友「くくく……昼までの時間を有意義に過ごせたか?男よ」

男「あー、昼かぁ……悪いけど俺、先約があるから」

友「なに!?そんなのは許さんぞ!?女さん?また女さんなのか!!?」グラグラ

ガラガラ

後輩「失礼します!」

友「後輩ちゃん!?」

後輩「あ!先輩っ!」ヒラヒラ

男「じゃ、そういうことで」スク

友「どういうこと!!?」

女「………………」

友「おのれぇぇ打首じゃぁぁ!!」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:20:23.87 ID:/LehkniF0
――中庭

後輩「あの後、女先輩なにか言ってましたか!?」

男「あの後……ってなんだっけ??」

後輩「駅前で会った時です!!」

男「あ〜」

後輩「なにか言ってましたか!?」ズイ

男「後輩は俺のこと好き。って勘違いされた」

後輩「うわぁぁん!!やっぱりそうでしたか!一番恐れていた事態がぁぁぁ!」

男「ち、ちゃんと誤解は解いたよ?」

後輩「当たり前です!!」

後輩「でも本当に解けたんですか!?」ズイ

後輩「まさか私の気持ち話しちゃったんですか!?」ズイ

男「ち、近いっ!!」

後輩「むぅ……」スウ

男「後輩の気持ちは伏せてるから大丈夫だよ」

後輩「……」

男「さすがに俺でもそれくらいは心得てるつもりだ」

後輩「それなら、いいですけど……」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:21:55.37 ID:/LehkniF0
男「あのさ」

後輩「はい?」

男「なんで俺をお昼に誘ったの?それこそ誤解されるリスクがあると思うけど」

後輩「先輩にはどーーしても!確認しておきたい事があったんです!」

男「?」

後輩「先輩の気持ちです」

男「俺の、気持ち?」

後輩「先輩は……女先輩のことが好きなんですか??」

男「……それは……」

後輩「それは?」

男「上手く言えないけど、女さんの事はずっと手の届かない存在……一生関わることのない存在だと思ってたんだ」

後輩「わかります!!」

男「だから……好きっていうより憧れの気持ちの方が強いのかも知れない」

後輩「……」

男「恋愛感情を持つことすら恐れ多いというか」

後輩「ふーん。ま、そっちの方が私は都合がいいのでいいんですけどね」

男「うん」
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:22:53.39 ID:/LehkniF0
後輩「いずれ誰かに女先輩を取られても後悔しないんですか?」

男「あはは、そもそも俺は事前にハッキリ言われてるんだよ」

後輩「はい?」

男「そういう対象にならないし、今後もありえないって」

後輩「え……?」

男「だから妙な期待は持ってないよ」

後輩「…………」

男「女さんが将来どういう人を選ぶのかは凄い興味深いけどね」

後輩「…………」

後輩「ちなみにそれを言われたのはいつ頃ですか?」

男「女さんと親しくなる前かなぁ。でも最近の話だよ」

後輩「ふむ」

男「?」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:24:22.60 ID:/LehkniF0
後輩「先輩!」

男「ん?」

後輩「先輩は……見た目は普通ですけどよく見ると整った顔してるし、性格はなんでも受け入れてくれそうでチョロ……包容力があるし」

男「チョロって言ってたぞ」

後輩「先輩の良さを分かってくれる人がいつかきっと多分現れます!だから落ち込まないで下さい!」

男「褒めてんのか貶してんのかどっちだよ」

後輩「頑張って褒めてます!」

男「ああ!そりゃどうもありがとうね!」

後輩「……」

男「後輩の恋愛対象は……昔からその、同性だったのか?」

後輩「同性は女先輩が初めてですよ」

男「え?そうなの?」

後輩「はい!だから自分でも戸惑ってましたけど、今はもう吹っ切れてます!」

男「そうだったんだ、俺はてっきり……」

後輩「今まで好きになった人は皆男子です。彼氏だっていましたし」

男「なんという恋愛強者!!」

後輩「でも男の子っていつもエッチなこと考えてますよね?私は普通にお話して一緒に過ごせれば満足なのに」

男(うぐっ、耳が痛い)

後輩「そんな男子は即バイバイです!」

男「ははは」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:26:02.46 ID:/LehkniF0
後輩「男子に不信感を持ってる時に女先輩に出会いました」

男「……」

後輩「凛とした美しい姿に目が奪われて……最初は憧れだったんです。でも気付いたら好きになっていました」

男「なるほど」

後輩「先輩は女先輩のこと最初から諦めてるんですよね?」

男「うん、そうなるのかな」

後輩「じゃあ宣戦布告は撤回します」

男「あー、そんな事言ってたなぁ」

後輩「先輩を惚れさせる必要ないですもんね」

男「うむ。君には絶対惚れないから無駄なことはやめておきなさい」

後輩「むかっ!私こう見えてもモテるんですけど!?」

男「まぁ……可愛いし愛嬌もあるしモテるだろうなぁ」

後輩「!?」

後輩「な、な、なんですか急に!?」

男「え?」

後輩「べ、別に先輩に褒められても全然嬉しくないですから!」

男「褒めたっていうか、素直にそう思っただけだよ」

後輩「……」
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:28:35.58 ID:/LehkniF0
男「ま、それでも俺が後輩に惚れることはありえないけどね!」

後輩「ふーーーん」ニヤ

男「なんだよ」

後輩「そのわりには私が近付くと焦ってますよね?」ズイ

男「そんなことないぞ」

後輩「もしかして照れてるんですか?」ズイ

男「ち、ちが――」

後輩「私、可愛いんですよね?」ズイ

男「ほ、ほんとこれ以上は……」

後輩「これ以上なんですか?」ピトッ

男「!!!」

後輩「先輩の心臓、すごくドキドキしてますよ?」スッ

男「――!」パクパク

後輩「ね、先輩……私の心臓もドキドキしてるか確認してみますか……?」グイッ

男「うわぁぁぁ!」バッ

後輩「あっはははは!」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:30:00.23 ID:/LehkniF0
男「お、おまっ!冗談でもやって良い事と悪い事があるだろ!!」///

後輩「顔真っ赤だー!先輩ったらかっわいいー!」

男「赤くない!断じて赤くない!」///

後輩「ふふーん、先輩堕とすの案外楽勝かも」ニヤ

男「それとこれとは話が別っ!!」

後輩「でもこんな事されると少しは意識しちゃいません?」

男「む……そんなことは……ない」

後輩「人の気持ちなんてちょっとしたキッカケで簡単に動くんです」

後輩「だから……“ありえない”なんて事はないんです」

男「あ……」

後輩「なので先輩が私に言った絶対惚れないって言葉に訂正を求めますっ!!」

男「うーむ……でもなぁ」

後輩「もう先輩ったら、まだ足りないんですかぁ?」ズイ

男「わ、わかった!訂正しますから!!」

後輩「よろしい!」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:31:30.96 ID:/LehkniF0
――放課後

友「男よ、俺はこれからバイトがあるんだ」

男「うん?頑張ってね」

友「くっ、また男と話しができなかった!」

男「最近は……そうだね」

友「本当は女さんとか後輩ちゃんとかどうでもいいんだ……」

男「友……」

友「俺は……俺は……ただお前と!一緒に過ごしたいだけなんだっ!!」ガバッ

男「やめろ!気色悪いっ!」

友「なんで避けるんだっ!マイ・フレンド!」

男「やけにテンション高いな」

友「あ!わかる?」

男「うん」

友「今日バイトに新しく女の子が入るんだ。これがテンション上がらずにいられるかっ!」

男「単純な奴だな」

友「あはは!そういうわけでまた明日なっ!」

男「おう」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:33:21.15 ID:/LehkniF0
男(さて、俺も帰るかな)

男(女さんは……)チラッ

女「」バッ

男(ん?あれ?)

男(目を逸らされた?てかこっち見てた??たまたま?)

男「女さん」

女「なに?」

男「よかったら一緒に帰らない?」

女「……結構よ」

男「え?なにか用事でもあるの?」

女「いえ、特にないわ」

男「じゃあ一緒に」

女「……」

男「?」

女「あの子と帰るんじゃないの?」

男「あの子?友ならもう先に帰ったけど」

女「違う。ほらあの可愛い後輩の子と」

男「後輩?別に約束はしてないけど」

女「あらそう」

男「一緒帰ろ、女さん」

女「……」

男「女さん?」

女「ちょっと来て」

男「???」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:35:33.56 ID:/LehkniF0
――生活指導室

女「座って」

男「う、うん」ストン

女「……」スッ

スンスン クンクン

男(いきなり鼻の横の匂いを)

女「ん……」スンスン

男(大丈夫か?またスイッチ入ったら……)

女「……」スンスン

ピタ

男「?」

女「……」

男「どうしたの?」

女「……帰りましょう」

男「え?もしかしてあんまり匂いしなかった?」

女「ううん、そんな事ないわ」

男「???」

女「またスイッチ入っちゃうと嫌だし、程々にしなきゃ」

男「まぁそうだけど……」

女「ほら行きましょう」

男「んん???」
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:36:26.33 ID:/LehkniF0
――翌朝 教室

男(昨日に続いて今日も女さんの様子がおかしい)

男(今日の朝の電車も……いつもより控え目だったし)

男(返事もどこか素っ気ないというか……)

男(スイッチが入ることに戸惑っていたから本格的に匂い離れしようとしてるのかな?)

男(そうなると俺と女さんの接点は……)

男(……)

友「おーい、戻ってこーい!」

男「え?」

友「体育だろ?着替えてないのお前だけだぞ!」

男「あ、うん」

友「?」

友「変な奴」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:37:50.29 ID:/LehkniF0
――昼休み

男(女さん大丈夫か!?)

男(体育の後から例のハンカチをずっと当ててるし、顔色も悪い)

女「」スクッ

タタタ

男(やっぱり!!)

男(どうして俺を頼ってくれないんだ!?)

男(目すら合わせようとしない……余計なお世話なのか?)

男(いや、今はそんな事言ってる場合じゃないっ!!)
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:41:15.78 ID:/LehkniF0
――生活指導室

トントン

男「女さん、いる??」

トントン

男「開けるよ?」

ガチャガチャ

男「鍵が……いないのか?」

トントン

男「女さん!いるなら開けてくれ!」

カチッ

男(鍵が開く音!!)

ギィィ バタン

男「女さんっ!」

女「お、おとこくん……」ウル

男「やっぱり!大丈夫!?」

女「うぅ……平気だから……」

男「平気そうに見えないよ!ほら、早く匂い嗅いで!」

女「……」プイッ

男「なんで?辛いなら今すぐ――」

女「貴方は、空気清浄機なんかじゃない!」

男「…………え?」

女「男くんは一人の人間で、物じゃないの!」

男「え、ああ、うん。だけど!」
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:43:03.90 ID:/LehkniF0
女「本当は気軽に利用なんてしちゃいけないの!」

男「今更なにを……俺は気にしてないよ?」

女「私が気にする……」

男(え……これって……拒絶されてる……?)

女「だから放っておいて!」

男「でも!」

女「私は今まで一人でなんとかしてきた!」

女「ひと時の安らぎに身を委ねてたら、私はどんどん弱くなる!」

男「……それは……」

女「前までは耐えられた臭いも……今じゃ……」

男「そんな!まさか俺のせいで臭いの耐性が低くなってる!?」

女「それは……わからない……けど 」

男「けど?」

女「お願い、私の為を思うなら放っておいて……」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:52:48.73 ID:/LehkniF0
男「……わかった。女さんがそこまで言うなら今はそっとしておくよ」

女「ありがとう」

男「これ、体育の時に使ってた俺のタオル」スッ

女「……!」

男「……」

女「……」

男「女さん?」

女「朝もこれからは別々にしましょう」

男「!!?」

女「今まで苦労かけてごめんなさい」

男「な、なんでそんなことを!?」

女「自分勝手に男くんを振り回して……本当にごめんなさい」

男「なんで謝るの?俺は別に……」

女「ごめんなさい、男くん……ごめんなさい」

男(やめてくれ、謝らないでくれ……)

女「貴方の優しさに甘えてたけど、それじゃあダメなの」

男「え…………」

女「だからもう……」

男(やめてくれ……なんでいきなりそんなこと言うんだ……)

女「そして」

男(やめてくれ!それ以上は――)

女「今までありがとう。言葉に言い尽くせないくらい感謝してます」ペコ

男「おんな……さん……」

男(ああ……そうか、もう終わり、なんだ……)
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/23(火) 23:56:39.10 ID:/LehkniF0
――放課後

友「男っ!今日こそは一緒に帰るぞっ!!」

男「ああ」

友「へ?」

男「帰ろう」スクッ

友「え?あれ??」

スタスタ

友「お、男!?」

男「……」

友「どうした?何かあったのか?」

男「何もないよ」

友「何もなくないだろ?話くらいは聞くぜ?」

男「ごめん、今は話す気になれない」

友「……なるほど」

友「そうか……ま、すぐ忘れられるさ!気にすんな!」ポンポン

男「なんだよそれ」

友「どうせ女さんに振られたんだろ?」

男「……別にそういうわけじゃ……」

友「ははは!強がるなって!振られ慣れてる俺の目は誤魔化せないぜ?」

男「……」

友「女の傷は女でしか癒せない、ってよく言うだろ?早く次の相手をみつけるのが一番さ!」

男「……」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/06/24(水) 00:01:18.31 ID:/9lDkpLY0
一旦おしまいです
長々と失礼しました
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/24(水) 00:12:04.77 ID:k6d4skTDO
おつ
素になってる時の可愛い生き物っぷりがとても良い…
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/24(水) 00:26:39.71 ID:/9lDkpLY0
明日には完結すると思いますが、当初はこんなに長くする予定ではなかったです
力不足を痛感しています
ちなみにこのSSは“いい感じの女子に突如振られる”というよくある怪現象をコンセプトに作り始めたので、どういう結末にするか未だに迷ってます
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/24(水) 01:12:59.09 ID:vSQEPkLZ0
おつ
どんな形でも完結すればおけ
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:05:55.98 ID:/9lDkpLY0
――自宅

男(あ、早く風呂入らなきゃ!……って)

男(もう匂いを嗅がれることはないのか)

男(寝る前の筋トレも、朝早く起きることも)

男「……」ピッ

男「ははは、番号交換したけど……結局一度も連絡しなかったな」

男「……」

男(体育のあと、タオルを差し入れするくらいは……)

男(いやでも……女さんは放っておいてって言ってたな……)

男「はぁ……だめだ」

男「どうしても女さんの事ばっか考えてしまう」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:06:58.07 ID:/9lDkpLY0
男「おはよ」

友「お、最近早かったのに今日は遅いな」

男「早起きはやめたんだ」

友「ははーん」

男「余計な詮索はやめてくれ」

友「ははは!おかえり男!」ポンポン

男「うっせ」

男(女さんは……)チラッ

男(いつもと同じように読書か)

男(前までの日常に戻っただけだ)

男(平穏な日常に)
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:07:59.89 ID:/9lDkpLY0
友「男!帰ろうぜ」

男「ああ」

友「今日ゲーセン寄ってかない?」

男「いいね」

友「お前が付き合い悪い間に、俺は腕を上げたぞ?」

男「面白い、受けて立つ」

男(いつも通りの日常……それも悪くないよな)



男「おはよ」

友「おはよ!」

女「……」

男(いつも通りの日常)
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:09:40.72 ID:/9lDkpLY0
友「いや〜疲れた!!最近暑くってきたから体育の時間が苦痛だぜ」

男「そう、だね」

男(女さんは……)チラッ

女「」スクッ

タタタタタッ

男(ハンカチを口に当てたままどこかに……)

男(大丈夫かな)

男(……いや、俺が行ったところでまた……)
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:10:42.94 ID:/9lDkpLY0
男「帰ろうぜ」

友「今日バイトだわ」

男「マジか」

友「ははは!そーかそーか寂しいのか」

男「別にそんな事言ってないだろ!」

女「」スク スタスタ

男(前と同じような平穏な日常)


男「おはよう友」
友「おはようさん」

男「帰ろう」
友「おお、今日は――」

男(いつも通りの日常)
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:13:56.55 ID:/9lDkpLY0
――1週間後

男「……」ゴロン

男(どれだけの時間が経てば忘れられるんだ?)

男(時間が経つほど考えるのは女さんの事ばっかで)

男(同じ教室にいるのに話せない)

男(辛そうにしてるのに何も出来ない)

男(一緒に出かけたショッピングモールも今では遠い昔に感じる)

男「はぁ」ゴロン

男「女さんに会いたい」ボソ
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:17:05.81 ID:/9lDkpLY0
――放課後

友「男、帰ろうぜ」

男「ああ」

ガラガラ

後輩「失礼します!」

女「!」

友「あれは後輩ちゃん?」

後輩「すみません、男先輩お借りしてもよろしいですか?」

友「え?あ、別にいいけど……」

男「……」

友「そういえばお前、後輩ちゃんとも仲良かったよな」

後輩「ね、先輩!デートしませんか?」

友「!!?」

男「……」

友「あれぇ?男くぅん?どういう事かなぁ?」

後輩「先輩ってば聞いてます!?」

男「なんの用?」

後輩「だからデートですって!ね、行きましょう」グイッ

男「あーもう、わかったから引っ張るなって」

後輩「女先輩、男先輩お借りしますね」

女「!?」

男「女さんは関係ないから」

後輩「ふーん。ま、いいや!行きましょ」ギュッ

友「腕組みっ!?男てめー!羨ましいぞチクショー!!」

男「……」
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:19:01.94 ID:/9lDkpLY0
――――
――

男「もう腕はいいだろ」

後輩「え?いいんですか?男子ってこういうの好きっていいません?」ギュッ

男「そうみたいだな」

後輩「これは相当重症ですね」パッ

男「それで、わざわざ芝居までしてなんの用だ?」

後輩「デートです!」

男「はぁ……そういう気分になれないから」

後輩「どこか落ち着ける場所に行きましょうか、先輩」

男「……」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:20:35.29 ID:/9lDkpLY0
――公園

ギコ ギコ

後輩「あははっ久しぶりにやると楽しー!」

男「……」

後輩「先輩もどうですか?」

男「遠慮しておくよ」

後輩「ブランコ楽しいのに……よいしょっと!」ズサッ

男「……」

後輩「隣、失礼します」ストン

男「……」

後輩「最近、女先輩と一緒にいませんよね?」

男「やっと本題か……」

後輩「朝も昼も放課後も、一緒にいるのを見かけてません」

男「それは……あの期間だけが特殊だったんだ」

後輩「なにかあったんですか?」

男「何もないよ……元に戻っただけ」

後輩「ふーん」

男「……」
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:22:16.88 ID:/9lDkpLY0
後輩「先輩、ちょっといいですか?」

男「?」

後輩「ジッとしててください」

男「はい!?」

男(後輩が女さんみたいな事言うとは……驚いた)

後輩「この辺かな?」スッ

男「!!?」

後輩「……」スンスン クンクン

男「え、えぇ!?な、な、なんで……!!」

後輩「んー?よく分かんないなぁ」スンスン

男「ど、ど、どういう事だ!?」

後輩「どういう事って……こういう事ですよ」ニコ

男「えぇぇぇ……」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:23:59.26 ID:/9lDkpLY0
後輩「あれは、一週間くらい前の事です」

後輩「お昼休みの時に、ハンカチを口に当てて急いで生活指導室に入る女先輩を見ました」

男「あの時か……」

男(最後に会話した、あの日)

後輩「ほら、私って目が良いから離れてても良く視えるんです」

男「ああ、言ってたね」

後輩「なんだか具合が悪そうだったので心配になっているところに男先輩が慌てて後を追いかけて」

男「……」

後輩「悪意はなかったんですが、尋常じゃない様子だったので聞き耳を立ててしまいました。すみません」ペコ

男「いや、いいんだ。続けて」
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:26:37.36 ID:/9lDkpLY0
後輩「あの時の先輩、具合悪そうな女先輩に“匂いを嗅ぐ?”と言っていましたよね?」

男「」コクン

後輩「女先輩は、先輩に向かって“空気清浄機”とも言ってました」

男「ああ」

後輩「二人の会話を一部始終盗み聞きした私は、真っ先にあの日の動画を見返しました」

男「動画……!!」

後輩「全てのピースが噛み合うかのように、私の中の疑問は解決しました」

男「……」

後輩「あの時の動画に映った行動は、女先輩が男先輩の匂いを嗅ぐ行為……だったんですね?」

男「ああ、その通りだ」

後輩「やっぱり、そうだったんだ」

男「騙すような真似してごめん」

後輩「いえ、いいんです」

男「……」
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:28:29.24 ID:/9lDkpLY0
後輩「ここからは私の憶測になります」

男「うん」

後輩「女先輩は嗅覚が人よりも優れていて、他人の臭いが苦手なのでは?」

男「そうみたい、だね」

後輩「でも例外がいました」

男「……」

後輩「誰も寄せ付けず、人と距離を置いて過ごしてきた女先輩が唯一……普通に接する事ができた人物」

男「……」

後輩「それは……男先輩!アナタです!!」ビシッ

男「……」

後輩「今の名探偵みたいでカッコ良くないですか!?」

男「そうだね」

後輩「女先輩にとって、男先輩の匂いの恩恵は計り知れないものがあったと考えます。空気清浄機と呼ぶくらいですから」

男「うん」
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:30:48.85 ID:/9lDkpLY0
男「でも、もう俺の役目は終わったんだ」

後輩「そもそも!そこが納得いきません!!」

男「え?」

後輩「なんであの時、素直に身を引いちゃったんですか!?」

男「あの時……」

後輩「女先輩に“放っておいて”と言われてなんでその通りにしちゃったんですか!!?」

男「はあ!?女さんからああ言われたら従うしかないじゃないか!」

後輩「抱きしめて『俺がずっと側にいる』くらい言えないんですか!?」

男「相手の気持ちを無視してそんな事言えるわけないだろ!!」

後輩「相手の気持ちじゃないです!大事なのは自分の気持ち!前に先輩が私に言った事じゃないですか!!」

男「!!」
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:32:18.94 ID:/9lDkpLY0
後輩「そもそも、恋愛対象外って言われたのっていつでしたっけ?」

男「それは……親しくなる前……」

後輩「ずっと人を避けてきた女先輩のその言葉をいつまで鵜呑みにしてるんです?」

男「今後もありえないってハッキリ明言されたら誰だって身動き取れなくなるだろ!」

後輩「“ありえない”事がありえないんです!!」

男「あ……」

後輩「人の心は変わります!良い方向にも悪い方向にも」

男「そうか」

後輩「はぁ……しっかりしてくださいよ」

男「ご、ごめん」

後輩「情けない先輩に一つ、とても重要な事を教えてあげます」

男「重要な事?」
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:34:36.21 ID:/9lDkpLY0
後輩「なんで女先輩が男先輩を遠ざけたのか考えたことありますか?」

男「それは……独り立ちしたいから?」

後輩「やっぱり分かってなかったんだ……」

後輩「鈍感なのもそこまでいくと犯罪レベルですよ?」

男「うぐっ……じゃあなんでだよ!?」

後輩「あの日のお昼、私達はどこで食事をしましたか?」

男「中庭」

後輩「女先輩がいた場所は?」

男「生活指導室…………」

男「あっ!!」

後輩「私たちのやり取りを女先輩が見ていた可能性を考えなかったんですか!?」

男「でも……それって……それじゃあまるで!!」

後輩「ずっと孤独に生きてきた女先輩です。きっと初めての感情だったんだと思います」

男「…………」

後輩「悔しいけど私じゃダメなんです」

後輩「男先輩じゃないと……だから……」
199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:39:39.56 ID:/9lDkpLY0
男「ありがとう、後輩」

男「今すぐ行ったら迷惑……かな?」

後輩「はぁ……そんな大事なこと自分で考えて決めてください」

男「思い立ったが吉日、って言うしな……うん、行くよ」

後輩「はい」

男「本当にありがとう」

後輩「お礼はいらないです!その代わりなんでもお願い聞いてください」

男「ああ、ここまでしてくれた後輩の為だ。出来る範囲の事ならなんでもするよ!」

後輩「約束ですよ!じゃあ行ってあげてください!」

男「ありがとう!」
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:41:47.54 ID:/9lDkpLY0
――――

男「はぁはぁ」

男(情けない!自分の情けなさに反吐がでる!)

男(後輩にここまでしてもらってようやく気付くなんて!)

男(女さんの気持ちも、俺の気持ちも)

男「はぁはぁ、つ、着いた」

ポチポチ

男「頼む、出てくれ!」

プルルルル プルルルル

男「……」

プルルルル プルルルル

男「……」

プルルルル プルルルル

女『もし……もし?』

男「あっ!女さん!」

女『男くん……どうしたの?』

男「大事な話がある。とても、とても大事な話が」

女『え……でも』

男「今、女さんの家の前にいるんだ」

女『えええ!?』

男「待ってるから。それじゃあ」

プチ
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:43:09.89 ID:/9lDkpLY0
男(強引だったか?でも、ああでもしなきゃ出て来てもらえない可能性もあるし)

男(出てきてくれるのを信じて待つ。それだけだ)

男「……」

男「…………」

男「………………」

ガチャ

男「!!」

男「女さん……」

女「どういうつもり?急に家の前まできて」

男「よかった、出てきてくれた」

女「返事を待たずに切られたら出て行くしかないでしょ?」

男「これから少し時間をもらってもいいかな?」

女「それは……いいけど……ココじゃ落ち着かないわ」

男「そうなると……噴水公園は?少し歩くけど」

女「問題ないわ」

男「じゃあ行こう」

女「……」
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:44:37.13 ID:/9lDkpLY0
スタスタ スタスタ

男「時間は大丈夫?」

女「ええ。この時間はいつも一人だし……」

男「そうなんだ」

女「……」

男「……」

スタスタ スタスタ

男(あれ、いつ話せばいいんだ?歩きながら話すことでもないよな)

女「あ、そうだ」

男「?」

女「これ」スッ

男「体育の後に貸したタオル……」

女「その、返すタイミングが掴めなくて……遅くなっちゃったけどありがとう」

男「ううん、いいよ」

スタスタ スタスタ
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:46:28.73 ID:/9lDkpLY0
女「言っておくけどちゃんと洗ったからね!」

男「あはは、ありがとう!」

男「あ、本当だ。女さんの匂いがする」クンクン

女「別に何もしてないから!」

男「そうじゃなくて、女さんが使ってる柔軟剤の匂い」

女「そ、そういうことね」

スタスタ スタスタ

男(懐かしいなぁ、こうやって話すのも)

男(久しぶりなのにこの雰囲気はやっぱり落ち着くというか)

男(さっきまで緊張してたけど、女さんの顔を見て話しただけで解れるなんて)

男(単純だなぁ)

スタスタ スタスタ

女「着いた」

男「うん、向こうのベンチに行こう」

女「」コクン
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:47:48.74 ID:/9lDkpLY0
――噴水公園 ベンチ

男「電話でも伝えたけど大事な話があるだ」

女「…………」

男「まずは謝らせて」

女「え?」

男「ごめん、女さん」

女「ど、どうして……?」

男「女さんはその体質のせいで、ずっと苦労して生きてきた」

女「……うん」

男「女さんと仲良くなる前は、その事も知らずに勝手に女さんのイメージを作り上げてたんだ。周りと同じように」

女「周り……」

男「崇高な存在。孤高の存在。色んな呼ばれ方があるのは知ってた?」

女「うん」

男「俺もその一人。決して交わる事のない人だって思い込んでた」

女「……」
205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:50:04.77 ID:/9lDkpLY0
男「女さんにとって俺の匂いが癒しになると知ったとき、女さんの体質を知ったとき、俺は舞い上がってた」

男「あの女さんを俺が救うことが出来るんだ!ってね」

女「……」

男「その後、女さんがどれほど苦労して生きてきたか思い知らされるんだけど」

女「あのケンカした時のこと?」

男「うん」

男「あの時から、女さんは崇高な存在なんかじゃない、普通の女の子なんだって思うようになった」

女「……」

男「でも実際は……思てなかった。ほんのついさっきまで女さんを崇高な存在としてみていた」

女「ええ!?」
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:51:48.72 ID:/9lDkpLY0
男「女さんとは日に日に距離が縮まっていく実感はあった。少なくとも俺はそう感じていた」

女「うん」

男「でも心のどこかでブレーキをかけている自分もいて」

男「それは女さんを一人の女の子としてみていなかったから」

男「崇高な女さんに対して引け目を感じていたからなんだ」

女「そ、そんな……」

男「だからその事を謝りたい。ごめん」

女「……」

男「実はそれを気付かしてくれたのは後輩なんだよ」

女「あの子が!?」

男「うん」

男「はは、自分の情けなさに嫌気が差したよ」

女「……」
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/24(水) 23:53:39.43 ID:/9lDkpLY0
女「……」

男「でもそのおかげで自分の正直な気持ちに気付けたんだ」

女「……」

男「しかも不思議なことに気付いたらどんどん溢れてくる」

女「……」

男「ふぅ……」

男「よく聞いててね、女さん」

女「は、はい……」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:01:53.17 ID:ryF6UHI00
男「俺は女さんの事が好きだ」

女「……!!」

男「一人の女の子として、女さんの事が好きなんだ」

女「……」ジワッ

男「!」

男(女さんが涙を……)

女「うっ……ううう……」

男「言うの遅くなっちゃってごめんね、泣かないで女さん」

女「お、とこ……くん……うっ……うぅぅ」

男「些細な事で笑って、喜んで、驚いて、怒る女さんを近くで見ていたい」

女「うっ……ぐすっ……うぅ」

男「女さんが今まで出来なかった事、諦めてた事を側で見守りたい」

女「ぐすっ……うぅぅ……」

男「ダメかな?」

女「そ……そんなの……ぐす、男くんが、いなきゃ……うぅ……できない」

男「うん。だから俺と付き合ってくれない?」

女「ず、るい、よ……うぅぅ……断れない、じゃん……うぅ……ぐす」

男「しかも嗅ぎ放題の特典付きだよ」

女「ば、か……」ギュッ

男「!?」

女「お、とこ、くん……」ぎゅっ

男「大好きだ、女さん」ぎゅぅぅ

女「わ、わたしも、大……好き……」ぎゅぅぅ

男「ああ……ぐすっ……よかったぁ」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:03:45.93 ID:ryF6UHI00
――――

男「落ち着いた?」

女「うん……」スンスン クンクン

男「こんな時でも匂い嗅ぐんだ?」

女「うん……」スンスン クンクン

男「ははは」

女「……」パッ

男「あれ?もういいの?」

女「これからは……好きな時に嗅げるし……」カァァァ

男「おお……!」

女「なに驚いた顔してるのよ」

男「いや、破壊力が凄いなぁと」

女「なにそれ、ふふっ」

男「あっ!」

女「ん?」

男「俺が自分の気持ちを抑えてたのは女さんにも原因があるんだよ」ジト

女「え?私に?」
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:05:01.81 ID:ryF6UHI00
男「だって最初の頃に言ってたから」

女『私は貴方に対して好意はありません』
女『今後抱く事もありえません』
女『貴方が今後、私に対して特別な感情を持ってもそれには応えられません』

男「って」

女「そ、それは……!」

男「それは?」

女「だってその時は好きじゃなかったし……」

男「なかったし?」

女「まさか自分が人を……好きになるなんて思わなかったし」

男「ほうほう」

女「つ、付き合うなんて以ての外じゃない?」

男「なんで?」

女「私こんな体質だし、絶対面倒臭いじゃない」
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:06:54.92 ID:ryF6UHI00
男「女さんは自分の魅力に気付いてないの?」

女「魅力?外見は昔から言われてたから、理解してるけど、それくらいじゃない?」

男「その外見だけであらゆる障害を受け入れられるのが男の性ってやつなんだよ」

女「それはなんか嫌ね……見た目で寄ってくる人が一番嫌い」

男「あぁ……苦労してそうだもんなぁ」

女「まさか男くんも……私の見た目だけで?」ジト

男「見た目が魅力的なのももちろんあるよ!でもそれはあくまでもキッカケで!」

女「へぇ?」

男「俺が女さんを好きな要素の一つでしかない」

男「だって容姿も含めて女さんでしょ?」

女「男くん……」

男「今ではそのちょっと面倒くさい内面も愛おしいって思ってるよ」

女「!?」

女「面倒くさいってなにそれ!?普通そういうこと面と向かって言う!?むー!!」

男「あはは!さっき自分で面倒臭いって言ってたじゃないか」

女「あれは体質!性格なんて一言も言ってません!」

男「あはは、ごめんごめん」

女「もう!」
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:08:55.53 ID:ryF6UHI00
男「ところで女さんはいつから俺の事を意識してたの?」

女「えぇ!?私!?」

男「うん。聞かせて欲しいな」

女「私の場合は……」

男「うん」

女「少し話を変えてもいい?」

男「ん?」

女「実は男くんの匂いに気付いたのって結構前なの」

男「!?」

女「元々クラスの中にいる事は分かってたけど、それが特定できたのはって意味ね」

男「え、それっていつ頃?」

女「あの日は雨が降って湿気も多くて、私にとっては最悪な日だった」

女「しかも電車は遅延してて女性専用車両に乗れないくらい人が溢れてた」

男「遅延……それってかなり前じゃない?」

女「ええ」

女「なんとか乗った車両にクラスメイトの男子がいて、しかもその人は私が探し求めてた匂いの持ち主」

男「あの時か……ぎゅうぎゅう詰めで全然わからなかった」

女「貴方の目の前にいたけどね」

男「うそ!?」

女「でもそのおかげで雨の日の満員電車なのに、快適に過ごす事が出来たわ」
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:10:56.01 ID:ryF6UHI00
男「まさかその時から意識を?」

女「いえ、全然」

男「あ、そうですか」

女「もう一度匂いを嗅ぎたくなって、でも自分から話しかける勇気がなくてしばらく葛藤して過ごしてたわ」

男「結構長い間、葛藤してたんだね」

女「仕方ないじゃない……人との接し方がわからなかったから」

男「そうか。そうだよね」

女「匂いを嗅ぎたいって欲求が上回ったのかしらね、思わず呼び止めてしまったわ」

男「それが一番最初の日か……」

女「最初は匂いを嗅がれることに戸惑っていた貴方は、次の日以降……私を助けようとしてくれた」

男「余計なお世話かもって思ったけど……」

女「ううん、すごく助かったしすごくありがたかった。でもその優しさを素直に受け入れられない自分もいたの」
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:14:57.08 ID:ryF6UHI00
男「人に慣れてない故……か」

女「ええ。そして私は男くんの優しさに疑問を抱くようになって、私はつい感情的になってしまった」

男「あのケンカした日?」

女「うん」

女「男くんの事は徐々に意識してたんだけど、決定的に意識し始めたのは……やっぱりあのケンカした時からかな」

男「そうだったんだ」

女「あの時の男くん、なんて言ったか覚えてる?」

男「恥ずかしい言葉を色々吐いてたような気がする」

女「ええ。『今の女さんは一人なんかじゃない、俺がいるだろ!』って」

男「うわぁぁぁ!思い出さないで!」///

女「嬉しかった……あんな事言ってくれた人、男くんが初めてで」

男「女さん……」
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:16:34.10 ID:ryF6UHI00
女「恋愛感情をハッキリ自覚したのはショッピングモールに行った日の朝、貴方が遅刻してきた時よ」

男「えぇ!?嘘でしょ!?どこに惚れる要素があった!?」

女「ふふ、自分でも驚いたわ」

男「どういう事?聞かせて」

女「前日からショッピングモールに行ける事にワクワクしてたの、遠足前の子供のようにね」

男「うん」

女「服は散々迷ったあげくシンプルなものにした。男の子と出掛けるのなんて初めてで……でも気合い入れるのもなんだか恥ずかしいじゃない?」

男「ああ、それは凄いわかる」

女「でもせめて髪型だけはって思って」

男「あ!あれめっちゃ可愛かった!普段より大人っぽく見えて」

女「うん、それを褒めてくれた時に……自覚したの」

男「え?」

女「私はこの人にそう言ってもらう為にお洒落してたんだなぁって。可愛いって思われたいんだなぁって」

男「お、おおぉぉ!」

女「ふふ、改めていうと照れちゃうね」//

男「でもそれ以上に俺は嬉しいよ!今絶賛感動中!!」

女「ふふふっ」
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:17:53.60 ID:ryF6UHI00
男「あれ?でもモールで腕を組んだ時……匂いを嗅ぐためでイヤイヤだったんじゃ?」

女「匂いを嗅ぐためっていうのは確かにあったわ。でも好意もない人にそんな事するはずないじゃない」

男「えーでも犠牲だの仕方なくだの言ってたじゃないか」

女「う……あれは照れ隠しよ。でもくっつきたかったの!モールでテンション上がってたのもあるけど……思い返して家で悶絶したわ」

男「俺はてっきり勘違いするなよって釘を刺されたのかと……」

女「あら、私って誰でも腕を組むような軽い女に見えるのかしら?」

男「そんな事は御座いません」

女「ふふ……でもね、幸せな感情だけじゃなかった。戸惑いもあったの」

男「戸惑い?」

女「ええ、色んな事考えたわ」

女「男くんの行動が善意でくるものなのか、好意でくるものなのか分からなかったし」

女「このまま男くんに依存していくのも怖かった」

男「……」
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:18:56.04 ID:ryF6UHI00
女「そして休み明けの朝、後輩さんがお昼を誘ってきた日」

男「あー……」

女「後輩さんが男くんを好きなのかもってずっと思ってたの」

男「それは違うって前も言ったよね?」

女「ええ。男くんは否定してたけど、ほら貴方って鈍感だし」

男「ぐぬぬ……」

女「でもいい機会だと思った。私みたいな面倒な人間よりも、可愛らしい後輩さんの方が男くんも楽しいはずって」

男「だからあの時、お昼を後輩と二人で過ごさせようとしてたのか……女さんは俺に興味ないと思って軽くショックだった」

女「……」

男「……?」

女「ごめんなさい、男くん」

男「え?」

女「実はお昼の光景を覗き見しちゃったの」

男「あー…………うん」
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:19:47.63 ID:ryF6UHI00
女「楽しそうに二人で並んでる姿を見て……胸が締め付けられた」

女「後輩さんが男くんにくっついてるのを見て、呼吸が止まるほど苦しくなった」

女「嫉妬してる自分が酷く醜く思えて……男くんを拒絶してしまった」

男「……」

女「幻滅したでしょ?私は男くんが思ってる以上に面倒な女なのよ」

男「全然!むしろ嬉しくて飛び上がりそうな気分だよ」

女「え?だって私、醜く嫉妬して男くんを遠ざけて……」

男「それくらい俺を好きだってことでしょ?」

女「そ、それは……うん……」

男「なら、これ以上嬉しい事なんてないよ」

女「男くん……」
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:21:38.15 ID:ryF6UHI00
男「情けない事にそれに気付かせてくれたのは後輩なんだけど、ははは」ポリポリ

女「後輩さん……か」

女「むぅ……」ジト

男「?」

女「なんでお昼休みの時、後輩さんは男くんにくっついてたの?」ジト

男「あれは、向こうが俺をからかってきただけで深い意味はない!」

女「そのわりには貴方、鼻の下伸ばしてたけど?」ジト

男「ないない!そんな事あるわけないって!」

女「今日も後輩さんとデートしてたんでしょ?」ジト

男「あ、あれはデートじゃなくて……説教?」

女「腕組まれて嬉しかった?後輩さんって私より胸大きいもんねぇ」ジトーー

男「ぐ……俺は女さんと腕を組んだ時の方がドキドキしたし、嬉しかったよ」
220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:22:56.09 ID:ryF6UHI00
女「ふふっ」

男「え?」

女「私がこんな事思うなんて……自分でもビックリ」

男「ははは、良いと思うよ」

女「本当に?面倒くさくない??」

男「全然!!」

女「なら良かった……」

男「……」

女「……」

男「そういえば、ちゃんと返事もらってなかったよね?」

女「返事って?」

男「付き合っての返事」

女「それは……でも私も好きって伝えたじゃない」

男「そうだけど……まぁいいや!もう一度告白させて!そんでちゃんと返事ちょうだい!」

女「えぇ!?う、うん、いいけど……」
221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:25:50.99 ID:ryF6UHI00
男「では、ゴホン」

女「……」ドキドキ

男「俺は女さんのことが好きです」

女「うん」

男「ずっと大切にします」

女「うん」

男「だから俺と……付き合ってください」

女「はい、こちらこそよろしくお願いします」

男「女さんっ!」ギュッ

女「!!?」

男「ははっ、やっと堂々と抱き締めることができる」ギュッ

女「うん、私も同じ気持ち」ギュッ

男「二人でさ、色んなところ行こうよ」

女「うん」

男「女さんが行きたかった場所とか、やりたかった事とか、沢山しよう」

女「うん……いっぱい、あるよ?」ジワッ

男「女さんとならきっとどんな事も楽しめるよ」

女「ぐすっ……うん」
222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:27:16.79 ID:ryF6UHI00
男「ねぇ、女さん」

女「なに?」

男「大人になって、こんな事があったなぁって二人で話し合えたらさ」

女「……!!」

男「それってとても素晴らしい事だと思わない?」

女「うん……うん!」ポロポロ

男「愛想尽かされないように頑張るよ」ギュッ

女「うん」ポロポロ

男「だから、出来るだけ長く一緒にいれたらなって思う」

女「ぐすっ、そこは、ずっと一緒にいよう……でしょ」

男「あはは、それはちょっと重たいかなぁ……なんて」

女「重たくない……うぅぅ……重たくないよぉ……」

男「俺はずっと女さんの側にいたい。だからずっと一緒にいてくれ」

女「ううぅ……こちらこそ、ぐすっ……よろしくお願いします……」
223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:28:34.39 ID:ryF6UHI00
―――朝 電車

ガタンゴトン ガタンゴトン

男(うわぁぁぁああぁぁああぁぁ!!)

男(うわぁぁぁ!!女さんに会うの気まずいぃぃぃ!)

男(いや、嬉しいんだけどね!めちゃくちゃ嬉しいし、早く会いたいんだけどね!)

男(でも、恥ずかしいぃぃのぉぉぉぉ!!)

男(恋人になって初めての登校……うわぁ!うわぁぁ!!)

男(ぁああぁぁ!!昨日はその場の勢いでかなり恥ずかしい事を……おぉぉぉ!!)

『まもなく〇〇、〇〇でございます』

男「!」

男(女さんが……くるっ!!)
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:29:51.21 ID:ryF6UHI00
プシュー

男「!!」

女「!!!」カァァァ

男(ああ……)

男(ひと目見た瞬間恥ずかしさとか全部吹き飛んだ)

男(だってあの女が、俺以上に照れた表情を浮かべてるから)

女「お、おはよう、男くん」モジモジ

男「おはよう、女さん」ニコ

男(とりあえず今はこの幸せを存分に満喫しておこう)
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:31:17.25 ID:ryF6UHI00
――通学路

後輩「あ!先輩と女先輩っ!」

男「おはよ、後輩」

女「後輩さん……」

後輩「その様子だと上手くいったんですか!?」

男「それは……」チラッ

女「……」///

後輩「なんですかっ!!その甘酸っぱい雰囲気は!!」

男「うん、ありがとう後輩」

後輩「!!」

後輩「ライバルにアシストするなんて……私とした事が不覚でした」

女「え?ライバル?アシスト?」

後輩「あれ?男先輩、私の事話してないんですか?」

男「俺から言うのは違うと思って」

後輩「それでよく誤解が解けましたね……え?解けてますよね?」

女「??」
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/25(木) 00:32:52.44 ID:ryF6UHI00
後輩「女先輩!!」

女「は、はい!」

後輩「もしかして私が男先輩の事を好きだと思ってます?」

女「……」コク

後輩「今もですか?」

女「それは……」コクン

後輩「はぁ……もうお二人が付き合ってるからぶっちゃけますけど」

女「?」

後輩「私が好きなのは男先輩じゃなくて、女先輩!アナタです!!」ビシッ

女「えぇぇぇぇ!?」

男「でた、そのポーズ」

後輩「かっこ良くないですか?これ」ビシッ

男「ああ、うん、そだね」

後輩「なんですかその適当な相槌は!!」
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