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ヴィクトリカ「久城……私も、君のことが大切だ」久城一弥「ヴィクトリカ……」
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以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage saga]:2020/10/06(火) 22:34:54.42 ID:e55HzmPuO
「うーむ……」
ここは新大陸。陽は沈み、辺りは真っ暗。
ニューヨークの街にひっそりと建つ古びたアパルトマンの一室にて、耳を澄ますと、何やら1匹の小さな仔狼が唸っているようだ。
「久城の奴め……どういうつもりだ?」
人語を口にするこの小さな仔狼の名は、ヴィクトリカ。新大陸に渡る際に姓は捨てたので、ただのヴィクトリカである。
「気持ち良さそうに寝息を立ておって」
端正に整った顔立ちはビスクドールを思わせるほどに人間離れしており、しかしその声は枯れていて、まるで老婆が話しているようにも聞こえる。無論、彼女はうら若き乙女だ。
ヴィクトリカは長い睫毛を重たそうにパサパサ瞬きして隣で寝息を立てる青年を見つめていた。彼は彼女のパートナー、久城一弥だ。
「ひとの気も知らずに……ぐーすかと」
「むにゃ……ふふっ。ヴィクトリカったらグリンピースが鼻の穴に入ってるよ。いくら嫌いだからってそんなところに入れたら……」
あられもない一弥の寝言に、ピキリと。
陶磁器のようなヴィクトリカのこめかみに血管が浮き出て、丸くて愛らしい額を縦断するように、深い深いシワが眉間に寄った。
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