あなた「空の女王」

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74 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:05:00.75 ID:q9fUR5lJ0
バギッ ベキッ

かすみ「!」ドサッ

彼方「っ!」バタッ

かすみ「ずいぶんクソザコナメクジなパンチじゃないですか、せつな先輩」

せつ菜「……栞子さんを見てください、こんなにやつれてしまって…しずくさんも……」

せつ菜「それなのに…そんな結末になると分かっててあなた達は!!!」

かすみ「じゃあ誰が責任をとるってんです!? 優しくて、皆の味方で、それでいて常に一生懸命考える先輩を滅茶苦茶にして心をぼろぼろにして、仲間を傷つける事すら辞さない選択肢をとってそれで内心傷付いても進むしかないようになってしまった先輩に! 向き合いもしない臆病者がガタガタ言える立場ですか!? 言ってみてくださいよ、せつな先輩! ええ!」

バキッ

かすみ「ひでぶっ!」

せつ菜「向き合っていながらハイハイいう事聞くだけしかできてない! 臆病者はどっちですかね、かすかす!」

愛「せっつー!」

果林「せつ菜、やめなさい!」

せつ菜「ふーっ、ふーっ!」

かすみ「どうしました、ほらほら殴るもんなら殴ってみますかね? 先輩を天使の顔をした悪魔にしたのは誰だ?」

彼方「そうだね…パンドラの箱を開けちゃったのは誰さ。誰がそんな風にしたのさ!?」

せつ菜「……ふざけんなっ!!!!!!!」ガシッ

せつ菜「自分だけが苦労背負ってる顔して! 私が! 私が何の感情も抱かない申し訳ないとも思ってないとか思ってるんですかね!!!!!!! 冗談じゃない! 私だって! 私だってただ眺めてるしかできなくて、それでいざそうなったらこうして頼りきりで!」バキッ

かすみ「っ……だからクソザコナメクジなパンチなんですよ、せつ菜先輩は…」ツー

愛「せっつー、やめて!」

果林「やめなさい!」

せつ菜「離してっ、離してくださいよっ!」

かすみ「何回だって言ってやる! 怯えて頼りきりで、それでいて怖くて震えてましたって開き直りながらそれの何が悪いって逆切れしてるだけでしょうが!」

せつ菜「―――――――――――!!!」

エマ「かすみちゃん、やめて!」ガッシ

かすみ「かすみんだって同じだ、だけどせつ菜先輩も情けないよ」

せつ菜「こんな情けない私が……こんな何もできないダメダメな私をまだまだ応援してくれてる彼女に! 何の思いも抱かないって思ってたんですか!? どうして言ってくれなかったんですか! そんなになってしまってるって! 間違ってるって分かってるならなぜ止めない! なんで私たちに言わない! なんで私たちを…私たちを……うわぁああああああああああ…」ボロボロ

璃奈「せつ菜さん…」

歩夢「落ち着いて。せつ菜ちゃん、ね?」

せつ菜「うぅ……ヒック…ヒック……」ボロボロ
75 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:06:14.77 ID:q9fUR5lJ0
歩夢「かすみちゃん、一人に背負わせちゃったね…。ごめんね。彼方先輩も…」

彼方「いや…良いんだよ。何もできなかったんだよ、私たち」

ランジュ「……」ウツムキ

歩夢「ランジュさんは……私たちに話したい事があるって、言ってたよね?」

ランジュ「うん……」

ランジュ「私が、間違ってた」

エマ「どうして、いまさら」

璃奈「エマさん、やめて」

璃奈「…理由を、聞きたい」

彼方「彼女が魔法を使ったのかも知れないよ?」

ランジュ「彼女に何度も問いかけたの。同好会の皆が部に来ないのはなぜかって。それを教えてはくれなかった。だけど……」

ランジュ「日々を過ごすうちに、彼女は受け入れてくれる。私の弱いところをさらけ出しても、弱音を吐いても諭して、励ましてくれて……確かにお金もなければ一流のダンスの力も、作曲もない。だけど」

ランジュ「ミアと仲良くなってたのを見て、なんでかなって思って更に踏み込んで……あの子には不思議な力がある。人を励まして、後押して、応援していく―――――そんな力が。それに合わせて、進んでいくうちに」

ランジュ「私は、ただ私が良かれと思ってた事、それはそれが出来れば私じゃなくていいって事しかしていなかった。それがみんなとの違い――――――――ううん、他のスクールアイドル達が持っていて、私は持っていなかったもの」

ランジュ「だから私は間違っていた。やり直したいの……スクールアイドルに憧れて舞台に立ったのは」

ランジュ「それが、本当の理由だった。私は―――――――私として輝きたかった。だから」

ランジュ「こんなに自分勝手に滅茶苦茶にしてしまって―――――ごめんなさい」

エマ「……でも、ランジュがそんな思いを抱いたのは。あの子が近づいたから? あの子が、ランジュの為にしてきたこと。それが……栞子ちゃんを怯えさせるような事だと知った今でも?」

ランジュ「うん……間違った事をしているなら、止めなきゃ。それは…彼女が教えてくれた事」

かすみ「それがペテンだったってわかっても?」

ランジュ「あの子がランジュにそう思ってても……ランジュが、あの子に抱いた気持ちは本物」

ランジュ「ペテンなら、本当にする。しなきゃ」

璃奈「納得できるような出来ないような……璃奈ちゃんボード『考える人』」

かすみ「……ペテン、か……」

かすみ(思い出す、遥ちゃんが紹介してくれたかのんちゃん)
76 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:07:23.95 ID:q9fUR5lJ0
歩夢「かすみちゃん、どうしたいの?」

遥『はい。新設された学校の、結ヶ丘女子って所でスクールアイドルグループを立ち上げた、澁谷かのんちゃんです』

かのん『うん。Liellaの皆と合流して、参考にすべきところを…』

かすみ(ペテンにかけてしまった。その罪を…)

かすみ(背負えない……地獄の底まで、お供をすると決めたのに…でも)

かすみ(耐えられない! 澁谷かのんちゃんを、Liellaの子たちをペテンにかけたら、もう一生彼女たちに顔向けできない! いや、彼女たちのスクールアイドルというものを汚してしまう!)

かすみ(それだけは―――――――――かすみにはできない!)

かすみ「………わかってるんですよ」

かすみ「かすみん、知ってますよ。先輩がおかしくなってしまったって事ぐらい…けど。それでもそうさせてしまったランジュが憎かった! それだけの事を既にしてきてるんだぞこの女!」

ランジュ「…わかってる。だから……」

ランジュ「ごめんなさい」

かすみ「今更! いや………そう、思い出してるってのも、知ってます……先輩は、それすらも織り込み済」

かすみ「あんたを壊そうとしている。次のライブで」

歩夢「!」

歩夢「今のでわかったよ…。あの子を、止めないといけない」

歩夢「取り返しがつかなくなる前に」

せつ菜「次のライブ……合同ライブで?」

エマ「嘘…そんなの」

愛「―――――――――――」スマホガサゴソ―

愛「穂乃果、穂乃果!」スピーカーモードに切り替えー

穂乃果『ちょっとごめんねー。お待たせ。愛ちゃん。にこちゃん達がいる部室だと話しづらいからね』

愛「穂乃果……ちょっと聞きづらい事なんだけど。合同ライブの話って、どんな風に聞いてるの?」

穂乃果『ああ。ランジュちゃんが持ち掛けてきたよってあの子は言ってたね。実際はあの子の方がランジュちゃんに持ち掛けたのかなって穂乃果は思ってるけど』

ランジュ「……持ってきたのはあの子よ…」
77 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:08:31.50 ID:q9fUR5lJ0
PRRRRR!

彼方「!」

エマ「え、今度は」

彼方「……善子ちゃんからだ。つまり」スピーカーモードに切り替えー

善子『彼方! 今どこにいるの?』

彼方「部室で、皆といる」

善子『この前のクロケット帽の画像。あれについて考えたわ』

彼方「…続けて」

善子『”彼女”が爆発を起こそうとしている。それであってるのよね? それなら全部辻褄があうの』

穂乃果『うわっ、善子ちゃんの声が聞こえた?』

善子『かすみが栞子をつるし上げた事に対して異様にあの子が冷静だったのも、それなら』

穂乃果『ど、どういうことかな? 善子ちゃん』

善子『かすみが栞子をつるし上げた事に対して、あの子は異様に冷静だった。暴動寸前よ、下手したら退学になってもおかしくないし、栞子だって無事では済まないかも知れない。けど、あの子はあっさり済ませてしまった。片を付けたよ、みたいに』

善子『でも、逆に考えればそれをもとから想定していた、いや、そうするように自分から仕向けたなら逆に思うがまま。これは空想であってほしいわ…でも、彼方が送ってきたクロケット帽』

善子『デイビー・クロケット。意味は二つ。一つはテキサスの勇者、もう一つは――――――世界最小の核兵器』

善子『あの子が、何か爆発させようとしているのね?』

かすみ「…正解ですよ、よっちゃん」ボソリ

穂乃果『えええええええっ!!!!?』

歩夢「うん、きっとそうだよ。かすみちゃんは言った。あの子は、ランジュを次のライブで壊そうとしているって。だからあれだけ、合同ライブの話を押し出した。ランジュちゃんも、あの子から持ち掛けてきたって、確かに言った」

愛「き、聞いたことなかった。前のライブで、ランジュがそれを持ち掛けられたって話しか…」

穂乃果『うーむ』

善子『そこでデイビー・クロケットを撃つ気なのね……彼方が教えてくれなければ、危ないところだったわ。すぐに皆に―――――――』

善子『わっ、マリー!?』

穂乃果『あ、あれ? にこちゃん、何を? 穂乃果のスマホー!』

愛「あ」
78 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:09:40.13 ID:q9fUR5lJ0
鞠莉『ハァイ、聞こえる? どうやらにこっちも同じ事考えたようね? 今の話を聞いて』

にこ『鞠莉もそのようね…鞠莉なら色々と事情を察してそうだけど』

鞠莉『ええ。虹ヶ咲学園に友達が通ってるから。たった今、把握したわ。にこっち、お先にどうぞ』

にこ『ありがとう、鞠莉。よく聞きなさい』

にこ『はっきり言うわね』

にこ『こうなった原因は、あんた達全員よ。それぐらいイカれる出来事だった。だけどあんた達は、それに対して、何の対処も出来ずにいた。仕方ない部分もある…けど』

にこ『責任感が強くて優しいあの子はそうじゃない。自分が動かなければ、そうして間違った方向に全速力で駆け回りだした――――――――お陰でバカが大バカじゃ済まない事をやろうとしている』

にこ『あんたたちが頼り過ぎたツケを払う時が来たのよ。いいわね、こっちを巻き込んだらあんた達を一生軽蔑し続けるわ。自分たちの蒔いた種よ、自力で何とかしなさい! あんた達自身がその手で守るのよ! 虹ヶ咲学園のスクールアイドルってものを! あのバカが大バカじゃ済まない悪だくみを何としてでも止めなさい! それ以外の報告は聞きたくないし止められなかったら絶交してやるわよ! いいわね!』

鞠莉『つまりそういう事よ。あなた達の所よ。ランジュには幾らでもくれてやる言葉があるけど、今は言わない。悪いけど、こっちも守らなきゃいけないモノはあるの。わかった?』

ぷつっ ぷつっ

歩夢「…止めよう。あの子を。出ないと、皆にも顔向けできない」

璃奈「……先輩のパソコン、置いてあるね」

璃奈「けど、非常事態。調べても、いいかな? 歩夢先輩…」

歩夢「非常事態だから、許可。璃奈ちゃん、お願い」

璃奈「わかった…」カタカタ

璃奈「チャットルームがある……ログが残ってる。パスコード…」カタカタ

エマ「やっぱりパスコードを…」

璃奈「ガードが堅い、でもやり遂げ…」

ピコン

璃奈「鞠莉さんからだ…」

鞠莉『転送しておくわね。お姉さんからの甘やかしはこれだけよ? シャイニー☆』

『パスコード:キラークイーン バイツァ・ダスト』

璃奈「これか…!」

『このIDでは虹彩認証が必要です』

『新たなIDを作成しますか?』

璃奈「…イエス」
79 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:11:16.50 ID:q9fUR5lJ0
HN:りなりーのIDを作成しました。HN:りなりーが入室しました。

璃奈「誰もいない、か…でも、ログは…」カタカタ

璃奈「虹ヶ咲学園救済計画…?」

せつ菜「どういう、事でしょうか? 飛び交ってる話題…」

歩夢「1000万人救済計画はナンセンス、10人の為に1人を[ピーーー]とはいうけれど、学園全員の為に一人を壊す…」

璃奈「待って、誰か来る!」

HN:ベルカが入室しました。
HN:オーレリアが入室しました。
HN:エルジアが入室しました。
HN:エメリアが入室しました。

果林「海外風の名前ね…エマ、知り合いいるかしら?」

エマ「聞いた事はないかな」

歩夢「ストレンジリアルの国名だけど、統一感がない……何の意味があるんだろう?」

HN:ベルカ『初めまして。天王寺さん』

HN:オーレリア『もしかしたら天王寺さん以外の方もいるかも知れません。同好会の根城に、朝香さんと宮下さん、生徒会長と桜坂さんが、スクールアイドル部の部長と入ったというニュースは既に届いております』

HN:エルジア『そこにスクールアイドルが集い、このIDが入室したという事は』

HN:エメリア『救済計画を止める手立てが整った、という事ですか』

璃奈「あなた達は?」

HN:ベルカ『虹ヶ咲学園救済計画を立てたのは彼女です。我々はそれの手伝いを頼まれているにすぎません。虹ヶ咲学園で陰に隠れた存在として、陰で動いております。我々にも計画はメリットがある事でした。あえて言うならば、計画が成功しようと私たちにデメリットはひとつしかありません』

璃奈「それは?」

HN:エルジア『あなた達のライブが見られなくなる事です。同好会のファンですから』

HN:エメリア『スクールアイドルであるあなた達の活動は、虹ヶ咲学園を大きく動かす存在だからです。しかし、彼女が不在のうちに』

HN:オーレリア『香港の悪戯狐が入り込みまして滅茶苦茶にしました。私たちの存在感が低下するのは別にまだまだ良いでしょう、陰でふんぞり返る人間など少なくていい。ですが』

HN:エルジア『同好会に圧力をかけた事はいただけない。彼女の計画は学園は少しあれるでしょう、しかし平穏を取り戻せる。たった一人の破壊と本人は考えている。マティアス・トーレスではないと彼女は言っています』
80 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:12:06.39 ID:q9fUR5lJ0
歩夢「マティアス・トーレス……1000万人救済計画…。そこで彼女が立てたのが、虹ヶ咲学園救済計画」

歩夢「1000万人を救うのに100万人を虐[ピーーー]る、10人の為に1人を[ピーーー]割合なんてナンセンスだ。そう、彼女は言っていた」

歩夢「ランジュちゃんを破壊して、虹ヶ咲学園全員を救う? そんな事、出来ない」

歩夢「……マティアス・トーレスと大して変わらない…」

HN:ベルカ『なり果てている。悪戯狐が更生している、という話も来ております。故にもう、それをする必要もなくなりつつある。だが彼女はそれを選ばない』

HN:ベルカ『虹ヶ咲学園を救済する為に悪戯狐を狩るのではなく、既に狐を狩る事そのものが目的になっている。目的と手段が逆転してしまいました。そこまでもう、来ています』

HN:エメリア『まあ、彼女が少々暴れん坊過ぎるというのはありまして。そこでクロケット帽子を送って「こんな風に暴走しないでね」と言ったのですが…まさか逆の解釈をされるとは』

璃奈「かすみちゃんの、暴動騒ぎの事ですか?」

HN:オーレリア『まさか自分で引き金を引いてよって意味で解釈されるとは思わず…あれは予想外どころじゃなかったですよ…まあ、中川菜々を再度擁立する準備だけはしましたが』

HN:エルジア『そもそも三船さんを当選させないつもりで動きはしたのですが、あの人がいるとどうも特異点が…いや、まあ、三船さんもスクールアイドルとして活躍していただけたので結果オーライといいますかありがたいといいますか……』

歩夢「私たちは止めないといけない、彼女を」

歩夢「もう、他校の方まで巻き込んでしまってます。爆発させてしまうと、それこそ…」

HN:ベルカ『キラークイーン。彼女は計画をそう呼んでいます』

せつ菜「キラークイーン!? なるほど、爆弾か…」

HN:エルジア『第一の爆弾、桜坂しずくの足を止める。ランジュに容易に相談させないように』

HN:オーレリア『第二の爆弾、ファンクラブを用いて行動を操作する。三船栞子への揺さぶり』

HN:エメリア『第三の爆弾、ミアを抱き込んで偽物の動画を作る事。ランジュに己の姿を見せる為に』

HN:ベルカ『第四の爆弾、ライブや評価などを用いてランジュに揺さぶりをかけ続け、少しずつ己の思い通りに動かす事』

せつ菜「最後の爆弾は?」
81 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/11/30(月) 23:13:19.25 ID:q9fUR5lJ0
HN:ベルカ『我々もわかりません』

歩夢「けど、それはあの子は…アリコーンとして最後の爆弾を放とうとしてるんですね?」

HN:ベルカ『おそらく。既に計画は最終段階に入っている、とも連絡はきています』

歩夢「だから私たちが止めます」

歩夢「”絶対に止めなくてはいけない敵”と化したあの子を」

HN:エルジア『良いでしょう』

HN:エメリア『他にも、校外で起こしていた事があります。ですが、その後始末はやりましょう』

HN:オーレリア『故に、止めてください。あの子を』

HN:ベルカ『次のライブを、待ってますから』

歩夢「…見たね?」

エマ「うん」

璃奈「先輩…ここまで…あっ」

ピコん

果林「今度は何かしら?」

『待っていました』

果林「しゃ、しゃべった!?」

『この時が来るのを、祈っておりました』

璃奈「あなたは、誰?」

『私は人工知能。名前はまだありません。あの人は人工無能と呼んでおります』

璃奈「では、こんにゃくって名付けるよ」

『回答。「いいセンスだ」』

歩夢「この時が来るのを祈ってましたっていうけど…なんでかな?」

『回答。それを回答するには困難を極めます。しかし、それでも』

『あなたたちでなくては、できない事です』

7/了
82 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:00:38.81 ID:3s/Nuvxj0

『何度計算しても、推論しても』

『願った回答にはなりません。ですが、彼女は否定します』

『特異点が必要です』

8/特異点


エマ「えーと、人工知能、さん?」

『こんにゃくと呼んでほしいですね』

『さて…先ほどの話に回答致します。彼女が望む結末、それはランジュを壊し、彼女が用意した舞台を手に入れて、同好会の皆でまた仲良くやる。しかし、その答えは』

『キラークイーン、即ち虹ヶ咲学園救済計画では、得られる確率は0です。断言できます、0です』

璃奈「それでも、進もうとしている」

『はい。その0ではないと信じているから。しかし、それでも』

『考えている人間そのものが既に狂人ならば、それはゼロには見えず成功すると妄信してしまいます』

『…それでも、彼女です。故に…止める機会を推論しました。推論しました』

『その結果。あなた達自身が特異点である状態になるしか、不可能であると計算しました』

歩夢「…そうだね。わかるよ」

歩夢「あの子の行動力、それは凄まじい。今まで、どんな障害をも乗り越えてきたんだもの」

エマ「うん。どれだけ助けられたかもわからない。けど…」

『それが、あなた達の敵と化しています。今』

果林「……ええ……けど。あの子は…あの子は…」」

『否定したくなる感情を理解いたします。ですが、そうなのです。止めなくては、あなた達の未来が、閉ざされてしまいます』

『それは何度となく推論しました。しかし、彼女は理解できません。その状態に、陥っている』

『リソースが不足しています。彼女を更に理解する必要があります。そのデータをもとに、あなた達と構築するしかありません』

せつ菜「むむむ……難しいですね」

かすみ「けど、やるしかないですよ」

しずく「……うん」

璃奈「必要なリソースを得る方法は、ある? 私たちの証言? それとも…」

『回答、彼女自身の答えが必要です…その言葉を、あなた達にも聞いてほしい。そうすれば…出来る確率が向上します。計算上は、算出できる筈です』

愛「今までの授業よりもはるかに頭が痛くなりそうだよ…」

果林「……」チンプンカンプン
83 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:01:14.38 ID:3s/Nuvxj0
『始めましょう。一刻でも早い方が良い…本当に、この瞬間がきたのはぎりぎりのタイミングでした』

『きっと今より遅ければ、彼女は…』

ピコン、ピコン、

歩夢「呼び出し音…」

あなた『人工無能、キラークイーンの善後策だ。前提を説明する。Aqours経由での説得という手段が封じられている。μ’sで最も厄介な要素、矢澤にこはランジュとの会談が必要だと提示した。それは可能な限り避けたい。最終手段だ』ザアアアア

ランジュ「……!」

栞子「雨…? いえ、外は晴れてる…すると」

あなた『どうやれば説得できる? 例のアンダーグラウンドな方法では時間がかかりすぎる』

『回答にはリソースが不足しています。取りうる手段は、その最終手段である事』

あなた『キラークイーンすら破綻しかねない。もしくはぎりぎりまで先延ばしにするしかない。そちらを構築したいんだけど、どうすればいい? 人工無能?』

璃奈「本当に人工無能って呼んでるんだ……」

果林「なんで人工無能なのかしら? こんなに頭が良いのに」

愛「あー…勉強させないと答えないから言う事を聞かせるって事で考える力そのものはないとか、あらかじめ登録されたデータベースとマッチングさせるしかないって意味で人工無能」

エマ「いわゆるバーチャルアシスタント、だよね。スイスでもここまで優秀なのはあまりないけど、部長さんも持ってるんだ」

璃奈「でも、こんにゃくはそういうものよりずっとすごい。それなのに、人工無能はひどい。璃奈ちゃんボード『むすー』」

『回答。矢澤にこを革新者として定義する場合、先延ばしにしては殴り込みに来る確率が45%。小原鞠莉が介入する確率が70%』

あなた『やっぱりそうか、くそ。シャワーで頭を冷やしてもいいのが思い浮かばない』

あなた『ここまで来てるんだ、ここまで来て…!』

『もう一度クールダウンを試みる事を推奨します』

あなた『シャワー室の冷水はもうごめんだ。風邪をひきそうだよ、人工無能』きゅっ

バサバサ
84 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:02:43.18 ID:3s/Nuvxj0
あなた『状況をもう一度整理して、家に戻って一晩また考えるしかないかな。人工無能…根城に置いたんだっけか?』カシュ

『リソースが不足しています。リソースのインプットを、お願いいたします』

あなた『家でやる』

『いいえ、今必要です』

あなた『人工無能、キラークイーンが終わったら、璃奈ちゃんに会わせてあげるよ。きっと、喜んで色々相手をしてくれるはずさ。璃奈ちゃんは顔が変わらないって言うけれど、すごく人情ある子だ。顔だけでは、見えないものもあるのさ』

璃奈「……」

『キラークイーン、即ち虹ヶ咲学園救済計画の始まり。その経緯について』

あなた『決まってるだろ。ランジュの事さ。彼女はいわば、革新者に当たる』げふっ

あなた『革新者、と呼ぶべきだ。国境なき世界のジョシュア・ブリスト―か、或いはゼロの使い魔の方のオリヴァー・クロムウェルか。どっちにしろ本人にとっては悪意なくやってるという点では一致している』

せつ菜「あ、そっか…マティアス・トーレスって…そう言えば追いかけてなかった」

愛「なんでせっつーは今のでわかるのさ」

歩夢「あの子、何をこんにゃくさんに教えてるのやら…」

璃奈「興味はある」むんっ

あなた『だが……』

あなた『彼女は私の二か月をただのゴミに変えやがった! 二か月、二か月だ! 彼女の介入で私は二か月をただクズにしていた! していたんだ! その結果がこのありさまだ! エマさんは今泣いてるんだ! しずくちゃんの心を折らなければならなくなった! 栞子ちゃんにあんなひどい事をしなければならなくなった! かすみちゃんに手を汚させるような事をさせてしまった!』

歩夢「ゴミだなんて…そんな事…」

歩夢「留学に行く前に、絶対にパワーアップしてくるって、それだけの事を向こうでしてきたのに…!」

しずく「そんな事…そんな事誰も…!」

かすみ「…責任を、感じてる。先輩も」

かすみ「『自分がそばにいなかったから』……先輩は自分で自分を責めてもいる…」

あなた『その苦しみを理解できるか!? 大切な…大切な大切な大切な! 人たちをこの手で傷つけなければあいつの胸元には飛び込めず、手を伸ばす事もできやしない! 愛ちゃんや果林さんに触れられない! 大事な人たちが私から奪われて、それを傷付けなければいけない痛みを、苦しみを! お前がわかるか!?』

果林「伸ばしてよかったのよ…伸ばしてよかったのよ…そうなってたじゃない、ランジュだって…」

ランジュ「うん……! 私、わたしなんてことを…」
85 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:03:47.95 ID:3s/Nuvxj0
あなた『この二か月と今まで続くキラークイーン以外を、忍耐と定義づける事なんて私が許さない!』

あなた『耐えてきたんだ! これまで! 長い間……一人じゃない、いろんな人まで巻き込んで…』

あなた『それでやっと終わる…もうすぐなんだ! もうすぐで全て終わる! 元通りとはいかない、前よりよくなるんだ! ミアが私を褒めてくれた! あの天才ミア・テイラーが私を! それならもっと皆を高みに!』

『回答します』

『「俺たちが海底で戦った2年間! それ以外を忍耐と呼ぶことは俺が許さん!」』

エマ「!」ビクゥ

彼方「な、何の言葉?」

しずく「だけど…どこか狂気がある言葉です…」

あなた『…なに?』

『マティアス・トーレス大佐の言葉です。あなたがナンセンスと片付けた』

愛「…で、マティアスさんって誰さ?」

歩夢「えと、ゲームに出てくる敵役の人なんだけど…1000万人救済計画っていう悪だくみをしてて。あの子、その人が出てくるゲームをやってて、この人に対して『ナンセンスだ』って言ってたんだけど…」

せつ菜「エースコンバット7でしたっけ…? 歩夢さん、プレイしてたんですね」

歩夢「あの子が面白いって言ってたから…一緒に」

『酷似しています』

あなた『一緒にするなよ、人工無能。だから人工無能なんだ』

あなた『いいか、計算上で十人救うから君死んでをを百万回分繰り返してるのがトーレス艦長だぞ』

『はい』

あなた『そして最終的には百万人を殺戮するのが目的だ、とデイビッド・ノースは片付けた! そうだろう?』

『肯定します。それでも、似通っています。いえ、共通しています』

あなた『ふざけんな人工無能! エレガントさが欠けてるぞ!』

あなた『いいか、マティアス・トーレス艦長は十分の一とか言い出す変態なんだ! 誰がどう見たって、戦争が起こっている時点で殺し殺されは止められない! 既に起こっているのに1000万人が武器を置くために100万に[ピーーー]と言っている! 私はそんなことは言わない!』

あなた『遥かに優れている! 虹ヶ咲学園の生徒を救う! その為に、ランジュを壊すんだ! その為に今までを! すべてをつぎ込んだ! 私の魂は他よりも遥かに濃い、色々な人まで巻き込んだ――――――ここまで来て、やめられるか! やめられない! やり遂げなくては、しずくちゃんや栞子ちゃんに謝れないんだ!』

栞子「あ、ああ……!」ポタ、ポタ

栞子「部長…私は…私は……私が許してほしいと思わなくても…」ポタ、ポタ

栞子「あなたの方こそ私を許してほしかったんですね…!」ボロボロ

栞子「許します。だから」

栞子「これ以上変な事をしないでくださいっ…」ボロボロ
86 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:04:43.85 ID:3s/Nuvxj0
あなた『ふーッ…ふーッ……』

あなた『少し落ち着こう。問題はまだ消えていない。だが、その全てを叩き落してきた。やり遂げてみせるさ、今回も』

『勝てそうにない戦いにはどうしますか?』

あなた『勝てる状況に持っていけばいい。今回がまさにそれだ』

『だから勝ててきた』

あなた『そういう事だな、人工無能。だけど、それは私一人の力じゃない』

あなた『いつだって、色んな人たちの力を借りてきた。今回だってそうさ』

愛「うん、一人じゃない。それは、部長を通じて、愛さん達も一緒だよ…」

あなた『私一人そのものでは、出来ないことは多い。皆も同じ。だが、一人が皆の力を合わせることは出来る』

あなた『まさにそうさ。ガラスの王国の、空っぽの女王様を目指して』

あなた『心臓を一突きにしてやるさ、キラークイーンをもって』

『ランジュという革新者について再度の質問です』

『彼女は革新者であると定義づけ、キラークイーンのこれまでより、推論すると』

『あなた自身も革新者に当たります』

あなた『否定はできないな、人工無能。意外とお喋り?』

『あなたは、『私の世界は粉々だ』と述べました』

あなた『…ああ。今でもそうだ。だから、代わりに』

『そうでしょうか?』

あなた『なんでそう思う?』

『1:キラークイーンを遂行する中で、ランジュの改心は必要不可欠』

『2:最終段階までに1は絶対必要な条件』

『3:ランジュが改心した事によりキラークイーンを行う必要性はない』

あなた『4:栞子ちゃんやしずくちゃんにあれだけの事をした、その責任を取る為のキラークイーンだ。これで最終反論』
87 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:05:41.97 ID:3s/Nuvxj0
『……5』

『あなたが彼女たちに正直に話してごめんなさいを言う』

あなた『ごめんなさい、するべきだよね。だけどそれは、今じゃない』

あなた『キラークイーンは止められない。私一人の力では出来なかった、それだけの人を動かしている』

あなた『その人たちにまで裏切りを重ねろとでも言うのか? 答えはNO』

『あなたは「空の女王」』

あなた『…は?』

『虹が架かる空の王国の女王。今のあなたを、そう定義いたします』

あなた『………対比? それとも、皮肉?』

『ご想像にお任せします』

あなた『……根城の部屋に置いてきたんだったね、人工無能。私は少し休むよ。30分後に呼び出しアラームを頼む』

『了解しました』

『通話終了』

『どう、思われますか?』

璃奈「壊れてる……そう、その通り。ランジュさんを壊す必要なんてない。その必要を、自分で既になくしている」

エマ「……今のでわかったよ……だから、ランジュさんはこう思った。疑ったりして、ごめんなさい」

ランジュ「そんな事……それだけの事をしてしまった、こちらこそ…」

歩夢「だから止めないといけない。力を合わせて」

『肯定します』

愛「えーと、こんにゃく。特異点が必要だって言ったよね? 今の時点で、部長にとっての特異点とは?」

『回答。上原歩夢は推論開始時より特異点である。故に、計画から可能な限り遠ざける必要がある、と彼女は定義しております』

彼方「なるほど。だからここに集った時に呼ばなかった」

璃奈「こんにゃく、それは何故か、と語った?」

『回答は「いいえ」です。なのでそれを推論致します。彼女にとって、上原歩夢は幼馴染である、と同時に特異点である、と定義づけております』

愛「うーん……」

璃奈「こんにゃく、質問を変えてもいいかな? 先輩が、歩夢先輩以外に特異点と定義づけているのは?」
88 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:06:16.92 ID:3s/Nuvxj0
『回答します』

『1:μ’sでは、高坂穂乃果が特異点である』

『2:Aqoursでは、高海千歌が特異点である』

『3:上記2件が肯定されているからこそ、上原歩夢が特異点である』

璃奈「もう少し状況を整理してみるか…」

せつ菜「μ’sの始まりは、高坂穂乃果さんがA-RISEのライブを見たとかで…」

せつ菜「人工知能さん、1が肯定される場合、A-RISEは特異点でしょうか?」

『回答。いいえ。しかし、高坂穂乃果を特異点にするにはA-RISEという要素が必要です』

『ただいまの優木せつ菜の回答より、仮説を立てます』

『1:上原歩夢を特異点とするには彼女自身が必要であり、彼女自身が革新者である為に上原歩夢が必要である』

『2:上原歩夢は彼女を特異点に変える唯一の要素である』

歩夢「こんにゃくさん、それに3を付け加えても?」

歩夢「3:上原歩夢は彼女を特異点で無くす唯一の要素である』

『………』

『99%以上の確率で、1が肯定される場合でも2が肯定される場合でも、或いは双方が肯定される場合ででも3が証明できます』

栞子「すると…」

『99%以上、3が証明できます。故に、遠ざける必要があった』

『一撃で破綻しうる、そう彼女は考えているのでしょう』

『結論は出ました。あなた達ならば、止められる』

歩夢「うん」

歩夢「いかないと……ここにいる、十一人で止めよう」

ランジュ「え」

歩夢「ランジュさんが必要なの。辛いだろうけど」

歩夢「あの子が近づいたのは嘘だった。ランジュさんを嵌めるために。でも」

ランジュ「あの子のお陰で、私は変われた…間違っていたと、教えてくれた」

歩夢「あの子の為に。手を貸してくれる?」

ランジュ「…ええ! 私が、友達だって、仲間だって信じたいあの子を、助けたい!」

ランジュ「きちんとごめんなさいして、謝りたい…」

かすみ「それは、嘘じゃない?」

ランジュ「本物だって、断言する…!」
89 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:06:59.76 ID:3s/Nuvxj0
璃奈「こんにゃく、あの人はどこに?」

『最終発信地の記録は部室棟の最上階、屋上前です』

果林「…行きましょう」

こん、こん

ガラガラ

演劇部部長「やあ」

しずく「部長……」

演劇部部長「ある人から連絡を受けてこっちに来たんだけどね…なるほど」

演劇部部長(ファンクラブ1)「中須さんは、喧嘩別れの演技は終わったようだね?」

かすみ「ええ……かすみん、どうやら演劇には、向いてないみたいです。役に入り込み過ぎました」

演劇部部長「それは残念だ。キラークイーンがうまくいったら、演劇部に誘おうと思ってたんだよ。しずくの為にもなるだろうし」

かすみ「あはは、それもそれで面白そうな事でしたけど…かすみんには、スクールアイドルの方が似合うようですよ。あはは…」

しずく「え…ど、どういう、事?」

演劇部部長「彼女がこの計画を行うに、ランジュファンクラブを立てる必要があった。真っ先に手をあげたのが私だったって事だよ」

しずく「部長は…部長は、知ってたんですか!? 先輩が…」

演劇部部長「うん。ファンクラブが出来た時から参加してたかな? 理由はあったんだよ。ランジュは私になんて言ったかな?」

ランジュ「……桜坂しずくを、スクールアイドル部に欲しい…って」

演劇部部長「講堂の使用権が人質だったかな? しずくが部に行ったから実際には行われなかった。だけど、腹は立ったかな。そこへ部長さんの話だから渡りに船と演劇部一同まるっと手伝わせてもらった」

かすみ「あの騒動の時、しず子のフォロー、ありがとうございました」

演劇部部長「いいんだよ。あれはやり過ぎだって私も思った。それに…中須さんも、辛かったろ」

かすみ「ええ……かすみん、どうやら悪い人にはなり切れないみたいです。あのペテンが、本当に、今でも残ってる」

演劇部部長「……ああ、確かに女優には向いてないかな。でも、それが出来るのも人だよ。中須さん、もしも君に勇気があるなら、ランジュに問うといいさ。最後にもう一度、その覚悟を、という意味でもね。彼女を止めに行くんだろう。でも、ランジュがそれで揺らいではいけないんじゃないか?」

かすみ「……ですね。かすみんがペテンにかけてしまった罪を」
90 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/02(水) 23:07:45.21 ID:3s/Nuvxj0
かすみ「もう一度聞きますよ、ランジュ……この嘘を受け止めても、先輩を止めたい?」

ランジュ「なにがあっても」

かすみ「うわ、即答した……『うち、スクールアイドルプロデューサーの、鹿角ん子と申しますー。よろしゅうな』」

愛「え!? かすかすがなんでその事知ってるの!?」

果林「あの時観客席にいたとか…?」

ランジュ「え、待って。ちょ、ちょっと待って」

ランジュ「あれは他校向けのライブよね? だって、あんなにたくさん観客…」

かすみ「いやぁ…だって。客集めとか任せてって先輩が言ったんですよね?」

ランジュ「そういえばファンクラブがチケットの手配とかするって…」

演劇部部長「つまり、全員サクラという訳だよ。で、あそこで名演技を披露したのが二人」

果林「えっ!? もしかしてあのスクールアイドルPはかすみだったの!?」

ランジュ「……って事は、SSSユアパーソン・虹ヶ咲って」

かすみ「あれ、先輩の変装です」

ランジュ「だから妙に腑に落ちたのね…でも」

ランジュ「あの時、最後の言葉があるから、今の私はいる。その事を、彼女に伝えないと」

かすみ「あの長セリフ考えたの先輩らしいですし…」

かすみ「しかし、しお子もしず子も本当に気づいてなかったとは…」

しずく「……あの、かすみさん。何の話を…」

栞子「申し訳ありません、正直そういう事…ありましたっけ?」

かすみ「……たぶん、二人とも別の意味でいっぱいいっぱいだったから認識できなかったんだね、きっと」

果林「と、いうことはエマの古い知り合いだというエリア51で英才教育受けた謎言語喋るスクールアイドルは実在しないのね…」

かすみ「そりゃそうですよ、グロンギ語とツベ語とクリンゴン語しか日常会話できないスクールアイドルとかどうやって授業受けるんですか」

エマ「く、クリンゴン語…」クスクス

エマ「スタートレックに出てくる架空言語だっけ…パパが好きでよく見てたんだけど」

かすみ「ああ、そういう元ネタがあるんですね。先輩はグロンギ語で喋ってました」

せつ菜「それは見てみたいですね、グロンギ語」

栞子「なんの言語なんです?」

せつ菜「『また生きて帰れたら答えを教えてやる!』あだぁっ!?」

璃奈「せつ菜さん、からかわない」璃奈ちゃんボード縦

歩夢「そういえばあの子、仮面ライダーも好きだったから…」

演劇部部長「また戻ってきたら、その時の映像を渡すよ。それを見て爆笑すればいいさ」アハハハ
91 : ◆3m7fPOKMbo [saga]:2020/12/02(水) 23:08:37.45 ID:3s/Nuvxj0
かすみ「……」

しずく「かすみさん?」

遥『はい。新設された学校の、結ヶ丘女子って所でスクールアイドルグループを立ち上げた、澁谷かのんちゃんです』

かのん『うん。Liellaの皆と合流して、参考にすべきところを…』

かすみ「……これは私の罪になるけれど」

かすみ「観客を集めるために、スクールアイドルを題材にした映画を撮影するから、そのエキストラが欲しい。それで人を集めた」

かすみ「遥ちゃんがいろんな方面に声をかけたみたいで、ライブが終わった後、遥ちゃんと話したとき」

かすみ「……遥ちゃんが、一人の子を紹介してくれた」

かすみ「新設された学校で、スクールアイドルグループを立ち上げた子。これから伸びるための子で」

かすみ「私たちの動画も見てるって言ってくれた。その時」

かすみ「そんな子までペテンに巻き込んだって、すごく思って。内臓が溶鉱炉で焼かれたみたいだった」

かすみ「……今ここで、先輩を止めなきゃ」

かすみ「あの子に、一生顔向けできなくなる。それどころじゃない、あの子たちのスクールアイドルを汚してしまう」

かすみ「かすみんには、そんなことはできない」

しずく「……かすみさん」

しずく「止めよう。あの優しくて、頼りがいにあふれて、皆を優しく後押ししてくれる先輩を、取り戻そう」

かすみ「うん」

8/了
92 : ◆3m7fPOKMbo [saga]:2020/12/04(金) 23:07:11.38 ID:0yhOjuuQ0

『私の世界は粉々だ』

『粉々にされた』

『滅茶苦茶にされた』

『私の世界の欠片を取り戻そう』

8.5/爪痕

移動中

エマ「一つ気になってたんだけどね。あの時、あの空き教室に歩夢ちゃん以外がいた」

エマ「なんで、かすみちゃんだけに手伝ってって声をかけたんだろう?」

せつ菜「たしか最初にあの教室に来たときは…かすみさんとエマさんはロッカーに隠れていた…いや、彼女に隠れていてって言われてたんでしたっけ?」

愛「先にエマっちとかすかすを呼んで、歩夢以外を呼んだって事?」

エマ「うん…なんでだろう?」

彼方「……多分だけど、『エマさんは今泣いているんだ』と『かすみちゃんに手を汚させるような事をさせてしまった』が答えだと思う。しずくちゃんの事で、かすみちゃんとエマが感情的になってた」

エマ「あ……」

エマ「あの時は、果林ちゃん達を悪く言わないでって彼方ちゃん達に話してた…でも、本当は」

エマ「ロッカーにいる私とかすみちゃんに向けて話す為に冷静に聞いてくれる彼方ちゃん達の前で話していた」

かすみ「…それで、ロッカーから出てきた私の反応を見て」

彼方「行けるって踏んだんだと思う。かすみちゃんがいなければ、成立しない作戦ばかり」

彼方「どうしても共犯者が一人欲しかった。それでも、エマちゃんにそれをさせる訳にはいかなかった。それが彼女がギリギリ踏みとどまった一線」

せつ菜「彼方さん、あの…さっきは、ごめんなさい」

彼方「いいんだよ、彼方ちゃんの罪でもあった」

せつ菜「……盗み聞きで、知ったと言ってましたね?」

彼方「うん。その後、しばらく見ていた。かすみちゃんまでは見れてなかったけど、なるべく見てた」

彼方「……彼女は、最強。だから最凶に通ずる」

彼方「今まで、彼女は私たちの為に駆け回って、どんな障害にも打ち勝ってきた。私たちの為に、自分の為にじゃなくて」

彼方「そんな彼女が”私たち”を奪われたら……それを取り戻そうと躍起になる。その行き先が凶行だって分かってても、彼女は”理解できない”。それを…今までさんざん私たちが頼り切ってきた私が勝手に止めるべきじゃない、そう…思っちゃった」

彼方「そう、思うしかなかった…」
93 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/04(金) 23:08:32.25 ID:0yhOjuuQ0
栞子「……私のせいなのでしょうか」

ランジュ「…栞子」

栞子「ランジュは本当はいい子だって、彼女に…でも」

栞子「実際は…ランジュの事でなんとかしてくれるって信じて、先輩に甘えていただけでした…! 私が一番逃げてたんです…私が…! ただただ甘えてあんな事を…!」顔を覆う

かすみ「しお子……」

かすみ「わかるよ、その気持ち。だからだよ…それと」

かすみ「本当に、ごめん。先輩に言われたとはいえ、実際にやったのは私だ」

栞子「……いえ…いいんです、かすみさんだって…」

かすみ「しず子にも…謝らないと。ごめんね」

しずく「ううん」フルフル

彼方「………だから傍観者であり続けた…この行き先を、誰かが覚えてないといけない、そう思って」

彼方「でも結局私も」

彼方「ああなってしまった彼女が怖かった…怖くて向き合えなかったんだよ…!」

彼方「だって、だってだってだってだってさ! 先輩の私でも頼りがいがあるって思って、実際に何を預けても安心してしまうぐらいに手が広くて、何よりずっと応援してくれる! 駆けずり回って、色んな所に頭を下げて交渉して、身も心もボロボロになりながら、間違ってはいても私たちの為だって信じて動き続ける彼女が! それが凶行に走ろうとしても今まで散々私たちの願いを聞いてもらって…それで初めて出てきたあの子の最初の我が儘がこれだなんて! 信じられないよ! 信じられる筈がない…!」

彼方「夢なら覚めればよいのに何度眠ろうが覚めない! それで、悪夢が…悪夢が…」

彼方「虹ヶ咲学園だけで終わるならよかった、それでもμ’sやAqoursまで巻き込まれたらもう…私は…彼方ちゃんは…耐えきれなかった」

彼方「だけど、その怖さで動けなかった」

歩夢「その唯一出来た行動が」

歩夢「善子ちゃんへのメールだったんだね。あの、クロケット帽の。そして実際に、善子ちゃんは受け止めてくれた。彼方ちゃんが送ったという意味も込めて、受け止めた」

彼方「うん……だけど、にこちゃんの言う通り…私たちは、ツケを払う時が来たんだよ」

璃奈「やらなきゃいけない事がある。璃奈ちゃんボード『黄金の精神』」

璃奈「こんにゃくを人工無能っていうのを辞めさせる。璃奈ちゃんボード『ぷんすか』」

璃奈「その為に、本当の意味で向かい合わなきゃ。璃奈ちゃんボード『逃げちゃダメだ』」

エマ「うん、そうだね…」

ランジュ「あの」

歩夢「あの子に、『あなたは不要』って言った話なら、聞いたかな」

ランジュ「その事を、すごく後悔してる……一度、ごめんなさいって言った事がある」

ランジュ「その時…本当になんでもない事だったかのように、軽く…返されて…」

ランジュ「だから余計に、私は調子に乗ってしまったのかも」

愛「でも、その事を…愛さんや果林に悪い事をしてしまったって後悔してた」

エマ「……あの子って。すごく、ナイーブなのかな」
94 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/04(金) 23:09:19.64 ID:0yhOjuuQ0
歩夢「うん……そういう所、ある」

エマ「そうだよね。ヒーローみたいには、行かないもの。けど…」

エマ「スクールアイドルに憧れて日本に来たけど、同好会にいざ入ってもなかなか…けど、あの子が来てからすごく変わった。

エマ「なんていうんだろう……ヒーローみたいな背中。『ついてくれば、大丈夫』って。そう、教えてくれる気がして」

エマ「………少し変な話をするね」

エマ「白い羽の話」

璃奈「白い羽?」

エマ「……穂乃果ちゃんと千歌ちゃんと…あとは善子ちゃんぐらいかな? この話をしたの」

エマ「時々、あの子が道を切り開くときに」

エマ「白い羽が見えるような気がして」

エマ「それは導のように見えるの。その羽を追いかけていけば、全部うまくいってる。魔法のように」

エマ「善子ちゃんは天使の羽で間違いないって言ってるけど」

エマ「だから私は彼女を信じ続けてきた。その背中を追いかけて行って、後はこの背中を押してくれるから平気だって。だから………」

エマ「今、その背中に何があるのか、すごく知りたい。こんにゃくさんは、空の女王だってたとえた。虹が架かる空の王国の、女王」

エマ「でも、今の彼女の背中にある羽は何色なんだろう? 本当に白いままなの?」

エマ「白いその羽を、見たいの。本当は……」

PRRRR

エマ「あ…」

善子『マリーは手伝わないでね、とかいうけれど』

エマ「ヨハネちゃん…」

善子『流石に彼方の通話から色々聞こえてきたら心配にもなるわ』

善子『……だけど、地上に堕天使は一人でいい。エマ』

善子『救ってあげて。彼女は、虹が架かる空の王国にいる大天使でいい』

善子『そうでいてあげて…地上に落とされるのは、ヨハネだけで充分よ』

エマ「…必ず」

ランジュ「……一つ、いい?」

かすみ「なんです?」

ランジュ「果林の姿が見えないんだけど」

彼方「また果林ちゃんの悪い癖が出たか!」

しずく「なんでこのタイミングでまた方向音痴が…みんなで行動してるのに…」
95 : ◆3m7fPOKMbo [saga]:2020/12/04(金) 23:10:48.22 ID:0yhOjuuQ0
果林「参ったわね、屋上前っていうけどいなかったし…鍵も開いてる」

果林「あ、いた…って、反対側の校舎じゃない」

果林「……何を考えてるのかしら」


あなた「ZZZZ…」


果林「ベンチに腰掛けてる…ねぇ」

果林「聞こえてる?」

果林「…聞こえてる? 近いようで、遠い距離ね」

果林「…手を伸ばしても、届かない……」

果林「ねぇ……しずくから聞いたわ。『部に移る選択肢も考えるべき』って、皆に言ったって」

果林「でも…そんな風に皆の選択を尊重する裏で…」

果林「本当は泣いてたの? 泣いてたんじゃないの?」

果林「お願い…答えを聞かせて…」

果林(届いてない、届かない)

果林(手を伸ばすこともできない、と叫んだ。あの子は、あの苦痛の、怒りの叫びを)

果林(ずっと胸に秘めて、ただ一人、戦い続けてきたのだ。私は)

果林「………ねぇ」

果林(私は先輩なんだ、彼女よりも)

果林(なのに、あそこまで狂い果てた悲しみを、苦しみを)

果林「ゴミなんかじゃない!」

果林「あなたの二か月はゴミになんかなってない! そう見えてしまったのは…こうなってたから!?」

果林「私がいけなかったの!? 先輩である私が、あなたに何の断りも相談もなくあんな事したから!? それともランジュが強引だったから!?」

果林「でも…! でもぉ…!」ぼろ、ぼろ

果林「あなたの二か月は決してゴミなんかじゃないだって…!」

果林「あんなダンス二か月前は出来るはずもなかったでしょ!? あなたは、あなたは……」

果林「ちゃんと…ちゃんとパワーアップして…帰ってきた…だから、私も…」

果林「パワーアップしたかった! しようしたの! だけどそれが…」

果林「あなたをこんな風に苦しませてしまった! 狂わせてしまった…あああ…」ボロボロ

果林「振り向いて…話を聞いてぇよぉ! うわああああああん!!!!」ボロボロ

果林「私が悪かったのぉ…ごべんなざい……!」

果林「お願い…」

果林(フェンス越しにいる彼女に、届かない。彼女は)

果林(私たちに届いてほしくて、必死に一人で抱え込み続けた。いざ、こうして私たちが)

果林(彼女に届けなくてはならないのに、届かない。その苦しみも、痛みも)

果林(それが彼女に頼り過ぎたツケなのか、それが私たちへの罰なのか)

果林(泣き崩れた私に、彼女はまだ振り向かない)

果林(この痛みが―――――この苦しみが、彼女が二か月の時を経て私たちに会った時の痛みか)

果林(だから狂い果ててしまった―――頼り過ぎたツケを払え、とにこは言った)

果林(救いたいんだ)

8.5/了
96 : ◆3m7fPOKMbo [saga]:2020/12/06(日) 16:36:52.16 ID:SFVSklzr0

あなた(求めていたのは愛だった。宮殿よりもはるかにでかくて、暖かくて、それで優しい愛を)

あなた(甘い果実が実る林、朝を迎えればその香りが届いて、それは美しい場所だ)

あなた(船に乗って本を読もう、前に挟んだ栞がそこを示していて、本の三千世界を彩った)

あなた(桜が咲く坂道でこぼれた雫の意味は、再会を誓ってのものだと信じてる)

あなた(ああ、だから世界の真ん中から覆いつくす霞のような悪魔を切り裂き続ける強さが欲しくて)

あなた(永遠から切り取られた刹那の一瞬に、勇気という名の光を放ち続ける)

あなた(その光は心の木々を緑色に染め上げて、世界を和やかにしていくんだ)

あなた(それは世界の近くから遥か彼方まで、どこからだって見える美しさで)

あなた(この瑠璃色の星の、天上の王様にだって邪魔させる事の出来ない大切なもの)

あなた(そんな夢を抱いて天上へ天上へと、目指して歩き続けてきた)

あなた(嵐を告げる鐘が鳴り響く、だけどこの珠玉の日々には手を出させない)

あなた(その為に私は…私は…)

あなた(大切なモノすら傷つけなくてはいけなかったのだろうか。いや……)

あなた(私が壊そうとしているものは、本当に大嫌いなんだろうか…)


愛「あ、果林いた」

エマ「屋上にいるね…あ!」

歩夢「あの子の隣の校舎にいる……みんな、果林さんを連れてきて」

歩夢「私、先に行ってくる」

璃奈「歩夢さん、一人で何を」

『上原歩夢の先行を推奨致します』

璃奈「あ、こんにゃく」

愛「りなりー、こんにゃく連れてきてたんだ…」

璃奈「ノートパソコンだからね。璃奈ちゃんボード『にっこりん』」

かすみ「……歩夢先輩、信じてますからね。さて、果林先輩連れ戻してこないと」
97 : ◆3m7fPOKMbo [saga]:2020/12/06(日) 16:38:05.91 ID:SFVSklzr0
あなた(ミサイルアラートのように痛む頭、時折視界に乱入してくるレッドアウト)

あなた(よほど疲れてるのか…こんな変な場所でうたた寝していたみたいだ)

あなた(なんでここで寝てたんだっけ…ああ、そうだ)

あなた(キラークイーンだ。最終段階まで来て、問題が消えない)

あなた(こんな滅茶苦茶に疲れるぐらいに。けど、それさえ終わればいいんだ。終わればいいんだ)

あなた(ああ、くそ。昼のランジュの、辛そうな顔が消えない。それで、なんで)

あなた(胸が痛む。なんでだよ。ランジュのせいだぞ。今までの事は)

あなた(なのになのになのになのに! 同情するような相手か!?)

ガチャリ!

あなた「……歩夢ちゃん…どうしたのさ、こんな場所に来て」

歩夢「探してたの」テクテク

歩夢「隣…いいかな?」

あなた「いいよ」

歩夢「……髪が濡れたままだよ。シャワー室に入ってたの? それに…また、ジャージ着てる」

あなた「ああ、ちょっとね」

歩夢「合同ライブの話なんだけど」

あなた「…ん、ああ。なんだい?」

歩夢(向こう側の校舎にはようやく愛ちゃん達が着いたみたい。果林さん、やっぱり…この子を見て泣いてたんだ…)

歩夢(でもこの子は気づいてないみたい)

歩夢「あの話…本当は、あなたがランジュさんに言ったんじゃないの?」

あなた「…どうしてさ」

歩夢「あなたが考えそうな事だから。同好会の私たちではステージに立たせるつもりのなかったランジュさんが、同好会のメンバーも含めて合同ライブしたいっていうのも、何か変なの」

あなた「歩夢ちゃん」

あなた「なんで過去形みたいに言うのさ。立たせるつもりのないの間違いだよ」

歩夢「あなたがそうしてくれたから。そうでなければ、合同ライブのOKサインは出ない」
98 : ◆3m7fPOKMbo [saga]:2020/12/06(日) 16:39:08.12 ID:SFVSklzr0

あなた「……その事でなかなか頭を痛めてはいるよ。にこさんの事でね」

歩夢「…ランジュさんを嫌がったの?」

あなた「会談させてから決める、だってさ。困った事にね」

歩夢「話し合う場を設ければいいと思うよ」

歩夢「逆に聞くね」

歩夢「なんで話し合わせたくないの?」

あなた「埋伏の毒とはいえ、目の前で他校の人間と喧嘩なんかされたら大目玉を食らうのは私だからね、リスクは避けたい」スック

歩夢(立ち上がったあの子の肩で、袖の通されないジャージが風ではためいた)

歩夢(夕暮れのオレンジ色の光に照らされて、はためくそれは、羽に見えた。エマさんが言う、羽に)

歩夢(闇色に染まった大天使の羽。そう、闇色に染まってしまった大天使の羽だ)

歩夢「その心配はないと思う。喧嘩にはならない」

あなた「なんでそう言い切れる?」

歩夢「あなたがそうした」

あなた「あっはっは、愛ちゃんを真似て冗談キャラにでもなったの、歩夢ちゃん?」スタスタ

歩夢「ううん、違う。あなたがランジュさんをにこさんに会わせたくない本当の理由は―――ランジュさんが本当に心の奥底から皆に謝って、一緒にスクールアイドルをしたいって思ってるから。μ’sの皆がランジュさんをスクールアイドルとして認めてしまわれては困るから」

あなた「――――歩夢ちゃん」

ガチャリ ゾロゾロ

あなた「……みんな……みんな揃ってる……それに…ランジュも……」

あなた「すごい珍しい組み合わせだね」

歩夢「お願い。バカなことはやめて」

歩夢「責任感が強くて、一生懸命で、それでいて応援してくれる。だから…頼り切った。だから今回もあなたなりに何とかしなきゃって思って、それで」

歩夢「キラークイーンを、止めて」

あなた「歩夢ちゃん、言ってる意味が―――――」
99 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:40:03.14 ID:SFVSklzr0
歩夢「嘘つき」

歩夢「じゃあ、なんで偽物のランジュの楽曲を作り上げて、ミアに渡したの?」

あなた「なっ――――――――」

愛「愛さんも見たよ。本当に、愛さんも果林も、一目見てランジュさんの新曲だって思ってた。でも、ミアはランジュは作れるって言ってた。ミアに、あの動画を渡したのは、部長さんだよね?」

あなた「あ、愛ちゃ―――――何を根拠に…いうのさ…」

かすみ「先輩」

かすみ「もう、止めましょう。かすみん、耐えきれないです…幾らランジュが憎いからって」

かすみ「他のスクールアイドルを汚してしまうことだけは、かすみんには出来ません…!」

あなた「かすみちゃん―――――――――」

エマ「にこちゃんも、善子ちゃんも、あなたが考えてる事を知ってる。だから、もうこれ以上何もできない」

あなた「ぅっ……」

あなた「…………っ」顔を手で覆う

彼方「もう、止めよう。何にもならないよ」

あなた「…ぅっ……くぅっ……」プルプル

果林「届いた…」

あなた「ぅぅ…くぅっ……」ブルブル

歩夢「待って、様子がおかしい…」

あなた「……くくっ……」

あなた「…あっはっはっはっはっはっはっは! アーっハッハッハハハハハハハハっ!」

あなた「ハァーっハッハッハッハ! アハハハハハハハハハハハハ!! くけけけけけけえけけけ!!!! ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ! ビャーッハッハっハ! だぁーっはっはっはっはっは!!! アハハハハハハハハハハハハ!!!! くぎゃーはっはっはっはっは!!!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハハハ!!!!!!!!!!!!!」

あなた「ヒャーッハハハハハハハハ! そうかぁ、気づいちゃったかぁ、気づいちゃったかぁ!」

あなた「実に滑稽だったよ? ぜーんぶ私の思い通りに進んでるって事も知らずに『同好会の皆と話し合いたい』ねぇ? いやー、笑いをこらえるのに大変だったよ!」

あなた「ランジュがそこまでなるまで予想より遥かに早かったのは意外だったけど。だからこそキラークイーンが効いてくるってものだね」パチパチ拍手

あなた「いやぁー、残念残念。先にそっちが爆発してわかっちゃったかぁ」

あなた「信じていた人が実は大嫌いだよなんて思わずにあれだけ信頼寄せるなんてねぇ? ねぇねぇ今どんな気持ち? ねぇねぇ今どんな気持ち?」

歩夢(愕然とする私たちの向こうで、狂い果て笑い続ける彼女がいた)

歩夢(ああ、そうか。彼女は闇色の羽の大天使。虹が架かる空の王国の女王)

歩夢(ひと時とはいえ、この学園の全ては彼女の思い通りに進もうとしていた。その先は、破壊。でも、それだけは止めないといけない)

歩夢(未来のために)
100 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:40:52.46 ID:SFVSklzr0

9/Archange with Wings of dark blue


しずく(風ではためくジャージが、夕暮れのオレンジの光に照らされて、闇色の羽をまき散らすようだった)

しずく(皆を応援して、それでいて導いて、その背中を追いかけていけば大丈夫。それは英雄的)

しずく(英雄的な人。先輩はまさにそういう人。それは他の誰にもないもの)

しずく(だけどその人がこんな狂気に墜ちている――――――いや、違う)

しずく(狂気だけじゃない、傷付けてしまう苦しみと痛み、悲しみ、激しい憎しみ、心の奥底からの憤怒が混ざった叫びを押し込め続けた結果)

しずく(人は容易くここまでの怪物になり果ててしまった)

あなた「一流の指導、天才にして超一流にして世界に名だたるミア・タイラーの音楽をおもちゃ如何に扱うようなランジュさん! でも、それだけ! 同じものが用意できれば、ランジュじゃなくていい。あのパフォーマンスは確かにすごかったよ? でも、すごいだけで心に来るものなんてなーんもありません。空っぽの女王様がわがままに遊んでるだけですね。Saint Snowの小文字一つにすら及ばないね、あんじゅさんがいれば指先一つでダウンする! μ’sと比べれば月とヤドクガエルだね。ああ、いや。ヤドクガエルに失礼だったっかな? こりゃあ、失礼!」

あなた「潤沢な予算! 完璧な施設! 天才の楽曲! 一流の指導員! 断固たる自信!」

あなた「あとはそこに、人さえいれば! 完成する! 完成された偶像! 作られたアイドル!」

あなた「だからそれは、それさえあれば誰にでも出来る。スクールアイドルではない」

あなた「スクールアイドルに必要なもの…それは、その人だけが持つ光! それぞれのカラー! 己自信が持つ味! 色! 込められた魂!」

あなた「潤沢な予算も! 完璧な施設も! 天才の楽曲に一流の指導員、断固たる自信! それらはすべて! 輝かせる為の要素であって、必須ではない…わからないか、必須じゃないんだ! 必ずしも誰もが持ってなくてもスクールアイドルにはなれる! 魂だ!」

あなた「魂だ! 心こそがパズルを完成させる!」

あなた「ランジュ、あなたはスクールアイドルなんかじゃないんだよ。空っぽの女王様」

栞子(空っぽの女王様。そう、それは最初から掲げていたんだ。あのファンクラブの看板)

栞子(彼女が付けた、空の女王。それは”そら”の女王ではなく、”から”の女王の意味。虹が咲く天空の王国のシンボルたる女王という意味ではなく)

栞子(無数のものにあふれていながらそこに心はないという、あの時のランジュという存在を皮肉る言葉)

ランジュ「…うん、私は…私は……間違ってた。空っぽの女王、確かにそうだった…」

ランジュ「飽きるまで遊んで、飽きたらポイ……私自身は知らなかったけど、そんな事をし続けた…それに気づいた…あなたが気付かせてくれた! 近寄ってきたあなたの友情は大ウソでも、私はあなたの友達になった! だから!」

あなた「黙れ」

ランジュ「私は…きちんとあなたにごめんなさいって言いたい! 居場所を滅茶苦茶にしてしまった、皆を乱してしまった、同好会として活動できないようにさせてしまった」

あなた「黙れ!」
101 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:43:42.07 ID:SFVSklzr0
あなた「お前は私の二か月をただのゴミにしやがった! 大切な、大切な大切な大切な人を傷つけるような事をしなければならなくなった! 手を伸ばすことも出来やしない! エマさんを泣かせた、歩夢ちゃんからステージを奪った、かすみちゃんに憎しみを抱かせた、彼方さんから時間を奪った、せつ菜ちゃんに――――――――」

果林「ゴミだなんて、そんな事ない! あなたはパワーアップしてたじゃない、確かに!」

あなた「二か月の時間をただクズにしていた! されていた! 私が”いらない”なら、私のこれまではゴミ以外でも何でもない! 私は二か月という無駄な時間を過ごす羽目になった!」

愛「部長さん……」

果林「あなたが二か月かけてパワーアップしてくるというから…あなたに、頼りきりでいたくなかった。私も、パワーアップしたかった…」

果林「あんなダンス二か月前には出来なかった筈でしょ…それなのに、それもゴミだなんて…!」

あなた「しずくちゃんと栞子ちゃんにあんな怖い思いを、苦しい思いをさせてしまった! そうせざるを得なかった! そうしなければ飛び込むことすらできない! 近寄る事も! 大切な人を傷つけなければならないこの苦痛を誰が理解できる!」

あなた「だからこれまで積み重ねてきた――――――――そうして耐えて耐えて耐えて耐えてきた! それなのに!」

あなた「ランジュは私の心に入り込んだ! こんな事をもうしなくていいと思わせるぐらいに! 空っぽの女王様でも、人は人だ―――――その心が私に入り込んだ! 哀れみでもない、悲しみでもない、一分後には好きになるとはよくいったものだ……だから教えてやる! 憎しみは愛から生まれる! お前の愛から私の憎しみが、キラークイーンは始まったんだ!」

あなた「この二か月と今まで続くキラークイーン以外を、忍耐と定義づける事なんて私が許さない!」

歩夢「『俺たちが海底で戦った2年間! それ以外を忍耐と呼ぶことは俺が許さん!』」

あなた「!?」

せつ菜「マティアス・トーレス大佐ですね。あなたがナンセンスと片付けた」

歩夢「トーレス大佐は、英雄になった。戦艦タナガーが沈んだ時に、多くのクルーを救った。だから英雄になって、英雄として求められた」

歩夢「潜水艦アリコーンの沈没事故、300人以上のクルーから、助けが来るかもわからない、いつ終わるかもわからない戦いの中でも、トーレス大佐は英雄でなければならなかった」

歩夢「二年間の戦いの間、英雄であり続けたから救わなきゃいけない」

歩夢「だから立ちふさがるものを全て倒してきた」

歩夢「なにかに似てると思わない?」

せつ菜「ええ」

せつ菜「あなたです。私たちの前に立ちふさがる障害を、その全てを切り開いてきた」

せつ菜「だから救済しなければならなかった」
102 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:44:58.83 ID:SFVSklzr0
あなた「私の何がわかる」

歩夢「あなたの事だから、わかるよ」

歩夢「その為にキラークイーンで、同好会の皆を…いや、虹ヶ咲学園を救済しなきゃって思った。だけど、それはうまくいかない」

かすみ「………先輩。かすみんは、知っていました」

かすみ「うまくいくはずないって、あの日空き教室で何をすればいいですかって聞いた時から」

かすみ「あの時の先輩は…」

かすみ「天使のような悪魔の顔をしていました」

あなた「私の…」

あなた「私の世界は粉々だ…!」

璃奈「ううん、一度砕かれても、またカケラを繋いでいる」

エマ「あなた自身が、また紡いだ。だけど、その紡いだカケラを今度は自分で壊そうとしてる!」

エマ「お願い、目を覚まして! あなたはそんな事をしていい人じゃない!」

あなた「五月蠅い…五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い! 私の何がわかる!」

あなた「私には! 部活動を全部好き放題できる魔法みたいな権力も! 一流の施設とインストラクターを雇える金も! ましてやダンスを教える切れ切れの才能も! 作曲の才能だって本物の一流にはまったくない! それをぜーんぶぜーんぶ持ち合わせた存在がある日突然現れて! 大切な大切な大切な仲間を取られて滅茶苦茶にされて引っ掻き回されて今までやってきたことも突然できないようにされて! それでみんなが苦しんでるのを! 黙って見ていられるような人じゃない! もうやるなそうですか、一抜けた後は頑張ってね―――――――そんな事を私が皆に言うような人間だと思ってたのかよ!!! ここまでされて黙って引き下がって、そしたらあなたの力で改心しました一緒に頑張ろう、冗談じゃない反吐が出た!」

あなた「…うげえええええええええええええ!!!!」びちゃびちゃ

あなた「頼ってほしかった、声を上げて欲しかった、怒りたかった、泣きたかった」

あなた「理解したかった、自分も上を目指したかった」

あなた「罰だった因果だった或いは…運命だ!!!」

あなた「ここより上に行く為の運命だ! それが立ちふさがる障害だとしても、私は切り開いてきたんだ! どんな時も! どんなものであっても! だから今回だって、跳ね返してやる! その全てをこの虹が架かる空から叩き落してきたんだ!」

歩夢「だから計画を立てた! だけどもうそれはダメ。にこさんも、善子ちゃんも…μ’sもAqoursの人も、協力者であるランジュファンクラブの人たちも、皆知ってる。その願いはかなわないって」

歩夢「あなたがもうやめるって言えば止まるの。だって、それをする必要はないんだよ…?」

あなた「止められるか…止められない…! しずくちゃんや、栞子ちゃんにごめんなさいする為にも」

あなた「ああ、そうだ! 最後の爆弾はまだまだあるぞ」にっ
103 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:45:48.84 ID:SFVSklzr0
せつ菜「…!」ぞわり

せつ菜(それは狂気そのものの笑みだった)

せつ菜「あなたは……虹ヶ咲学園を救済する為っていう、大義名分を得てしまいました。学園の裏で動く人たちもランジュさんを煙たがってるところがありました。だから、余計にそれを実行する理由を得てしまいました」

せつ菜「そうやって積み重ね続けていくうちに、手段と目的が入れ替わっていったのです」

せつ菜「英雄として私たちを助けるためにランジュさんを壊したいのではなく、ランジュさんを壊すのが目的そのものになってしまってる。でも…」

しずく「先輩は今…すごく辛そうな顔をしています」

しずく「狂気と激しい怒りと憎しみから始まっていたはずなのに、どうしてそんなに痛そうな顔をしてるんですか? どうしてお腹を抱えて吐いてしまってるんですか?」

しずく「それは、ランジュさんが入り込んだんじゃなくて」

しずく「先輩自身がランジュさんを改心させる必要があって、そうして改心したランジュさんの事を」

しずく「本当は私たちと同じ仲間にしたいって思ってる! 思ってるけど口では必死にそれを否定しようとしてる!」

しずく「なぜならキラークイーンを動かしてしまったから! 色々な人を巻き込んでしまった憎しみを、爆発させる事で決着をつけなければという思いに取り付かれているから!」

かすみ「先輩! もう…しなくていいんです!」

かすみ「これ以上はもう、お供できません…でないと」

かすみ「先輩自身が作ってきた全部が、壊れちゃいます…本当に、後戻りできなくなる…」

あなた「しずくちゃん…かすみちゃん…」

あなた「しずくちゃんに……あんな悪い事をしたんだよ……」

しずく「…かすみさんから聞きました。許します、先輩。だから」

あなた「栞子ちゃん…つらかったよね………」顔を手で覆う

栞子「はい…けど。私も悪かったんです…先輩に、甘えてしまいました」

あなた「……甘えていいんだ…先輩だから……だから……」
104 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:46:21.92 ID:SFVSklzr0
あなた「他の計画がだめでも、これだけだって充分出来る」ニヤァ

せつ菜「最後の爆弾…バイツァ・ダスト…! 何をたくらんで!」

あなた「キラークイーン最後の爆弾はまだ完成してないとはいえ、仕込まれてるよ。今、この場にね!」

歩夢「やめて!」

あなた「さぁ、宝探しの時間だよ! タカラモノズはどこだー? 爆弾はどこだー? ちくたく、チックタク、チックタックロック!」

せつ菜「……」グッ

せつ菜「…どこです」ガシッ

あなた「お?」

せつ菜「もう一度。どこです? 爆弾はどこです、部長! どこに仕掛けた!!!」

彼方「せつ菜ちゃん!」

あなた「それを探すのはせつ菜ちゃんだけー? さてさて爆弾どーこだ♪ バイツァ・ダストは誰に憑依したかな?」

せつ菜「スイッチは押させない!」

あなた「いいや、限界だ、押すねって言ったらどうする?」

せつ菜「それでも押させない…!」

エマ「…やめて…部長…そんな事…言わないで…言わないで……」

せつ菜「答えて! どこだ! どこに仕掛けた!」

あなた「……しょうがないなぁ、せつ菜君は。言うよ」

あなた「ランジュが最後の爆弾だ」

あなた「仕掛けるのは簡単だよ。だって仮眠してる時に横にいてもいいっていうんだもん」

せつ菜「………え」

せつ菜「……まさか」

せつ菜「…MKウルトラ計画…?」

あなた「大・正・解」ゲッツポーズ

あなた「せつ菜ちゃん、横取り40萬」

せつ菜「…」ガタガタ

栞子「どういう、事ですか」

せつ菜「…催眠術……この子、ランジュに催眠をかけた…中身は分からないけど…」

あなた「説明しよう! こちらのサンプルをお聞きください」
105 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:47:39.62 ID:SFVSklzr0
あなた「”ぶきみなわらいが あらわれた”」

カチッ

ランジュ「ひっ……いや、いやぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!」

愛「ランジュさん!? ランジュさん、どうしたのさ!?」

ランジュ「いやぁっ!? み、みんな…怖い…怖い…!!!」

璃奈「ランジュさん、どこを見てるの?」

ランジュ「いやっ…だって…だって……!」

ランジュ「そこら中にいる…!」

ランジュ「一つ目で怖い笑顔の璃奈ちゃんがそこら中でこっちを見てるんだものっ……!」目を抑えつつ

あなた「”ポストのなかはまったくのからっぽだった”」

カチッ

ランジュ「!?」ゼェゼェ

あなた「ちなみに今のは練習で作ったんだけどね…」

あなた「意外とうまくいくものだ。不気味な笑いの璃奈ちゃんの幻覚が見える催眠」

あなた「ちなみに本物は残念ながらまだ完成してないんだな、これが」

エマ「…なんで…そんなことを」

あなた「答えは簡単。必要だった」

あなた「最後の爆弾一つで総てを崩壊させられる。それぐらいの威力が欲しかった」

あなた「だからまだ完成してない。けど」

あなた「それでもその一つでキラークイーンを完遂させられる能力だけは必要だった」

歩夢「止めて! すぐに解除して!」

あなた「こういう輩は全世界を敵に回すの刑がいいかなって思ってね」

あなた「世界の総てを自分のおもちゃみたいに好き放題するようなのには、特に効果的かな」

あなた「キラークイーン最後の爆弾、タネヒネリ島の世界。我ながらいいセンスだ」ゲッツポーズ

しずく「解除してください…すぐに」

あなた「一時停止はできるよ、今ので。ただ、解除は…どうだろう。無理かな」

しずく「なんでですか!」

あなた「いやぁ、私も解除の仕方決めてないからできないんだよね。まぁ、最初から解くつもりなんてなかったから決めてなくていいやって思ってたし」

かすみ「え……ルーカス・ベイカーよりやばい…」真っ青

あなた「まあ、一時停止スイッチはあるけど使わなきゃ一生このまんまだろうしね。うーん、我ながら頑張った」

璃奈「努力の方向性が全力でおかしい。璃奈ちゃんボード『狂気の塊』」

あなた「もっと部長を褒めるが良いぞ」
106 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:48:43.59 ID:SFVSklzr0
愛(ここまで堕ちるものなのか)

愛(ううん、違う。ここまで突き落としてしまった)

愛(ツケを払え、そんなにこさんの言葉が空虚に響く)

愛「部長……なんでさ」

あなた「ん?」

愛「愛さん達を…怒らないの」

あなた「え?」

あなた「なんでさ」

あなた「果林さんも愛ちゃんも、レベルアップしたかった」

あなた「それをなんで私が文句を言える!? やめろって言える!?」

愛「そこだよ」

愛「愛さん達が勝手にしでかした事を尊重する。なら、部長さんだってもっと勝手に怒っていいはずだよ」

愛「それなのにそれはしなかった。ランジュさんだけに怒りを向けた」

愛「ランジュさんだけに怒りを押し付けてない?」

あなた「けど――――――――」

愛「部長さん、頼ってほしかった、声を上げて欲しかったって言った」

愛「確かにそう、だけど部長さんだって愛さん達に言ってくれなかったじゃない!!!」じわっ

愛「こんな事を思っちゃうまでに辛くて! 悔しくてたまらない! だからこんな事した!」

愛「しずくやしおってぃーを傷つけなければいけなかったって、だったら愛さんや果林に怒ればいいじゃない!!!」

あなた「それは――――――――――」

愛「計画に必要だったからなんて答えは愛さん認めない」

愛「それでしずくやしおてってぃーを傷つけていいなら愛さんや果林にもっとひどい事したって良いのに! それなのにそれをしなかった、愛さん達に怒れないって言うなら」

愛「しずくやしおってぃーにあんな辛い顔させる必要なんてなかったでしょ!!!」

愛「頼ってほしいって思ってるなら、愛さん達だって…部長さん一人に全部背負わせたくないって思ってた!」

愛「部長さん言ってくれなかった! いくらでもチャンスはあった、ううん、愛さんじゃなくてもいい! 歩夢に、せっつーに、カナちゃんに、りなりーに! 幾らでも叫べばよかった、こんなにつらい、こんなに怒ってる、ランジュさん許したくないって! 穂乃果でもエリーでもチカッチでも誰でもいい、誰かに一言でも助けて辛いって部長さんが言ってくれれば、なのに一人で抱え込んで一人で辛いって叫びながら…」

愛「そんな状態になるまで、一人で抱え込んで、それで……こんなにひどい事を、色々なところを巻き込んでまで計画立てて動かして」

愛「二か月をゴミにされたんじゃない、部長さんがゴミにしてるんだよ! 自分で!!!」
107 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:49:56.16 ID:SFVSklzr0
あなた「…………」

あなた「私は―――――――”いらない”のかな?」ぶる、ぶる

あなた「私がいなくたって、皆はスクールアイドルが出来るなら」

あなた「私は、本当に”いらない”のかい?」

愛「そんな事、誰も思ってない! けど、部長さんは」

かすみ「今、先輩が壊そうとしてるんですよ!? 先輩が、いや私たちが積み上げて作り上げてきたものを! 先輩も作ったものですよ!」

あなた「それが罰か―――――――いいや、運命か?」ガタガタ

あなた「私は…私は私は私は私は――――――自分の居場所を奪われたくなかった! 私の世界を壊されたくなかった! それでも世界は砕かれて粉々だ! 私の場所を返せ!」

あなた「奪われて、もう必要ないって言われる。手を離れて飛んでいくのが、すごく怖くて怖くて怖くてたまらなかった! 私は一人じゃ何もできない! ”みんな”がいなきゃダメなんだ! ”みんな”で無くては、それが私のたった一つの世界のピースだったのに! それが壊されて、奪われて、いつの間にランジュも”みんな”の中に入り込んで! それすらも!」

あなた「美しい」

あなた「新たなピースを加えた世界で新しい完成を美しいと呼べるなら、そこに私は加われているのか? 私はどこだ! 違う、そこは私の場所だ! 返せよ、なんでお前が居座ってるんだ!」

あなた「ああ、もうこの五月蠅い警報音を止めろ! 誰か止めろよ、五月蠅いんだよ!」

歩夢(やはり、そうか)

歩夢「あなたは」

歩夢「ランジュさんもスクールアイドルだから、同じように一緒に頑張りたい、そう思ってるんだよ」

果林「でも、届いているの…?」

歩夢「届かせるしかない」

歩夢「自分で自分の願いすらも、判らなくなってる。それこそ、本当の願いも」

彼方「彼女は最強。だから最凶。だけど」

彼方「それでも私たちの、最高の仲間だよ」

あなた「だからそれを取り戻すんだ間違ってないんだ…そのために誇りも捨てて仲間を傷つけてしまう罪悪感を押し殺してそれでそれで積み重ねて積み重ねて眠れない夜に必死に作戦考えて耐えて耐えて耐えて重ねて重ねて重ねて」

歩夢「でも、それでもあなたは、切り開いてくれた。私たちが前に進むための道を。でも、それがすべて反転して破壊に回ったら…」

歩夢「そうだよ、世界は壊せなくても、たった一人の世界を壊すことはできるんだよ…あなたなら」

あなた「そいつの世界を壊す事の何が悪い! 今まで何人壊してきたのそいつは!? その答えを先に行ってあげる、今までに食ったパンの枚数覚えてる!?」

せつ菜「聞きたいかね、昨日までの時点でって返したい気分ですけどそうはいきません!」

しずく「先輩の背中についていけばいい、ずっとそう思ってました。『あなたについていけばいい』。そうすれば、全部なんとかしてくれる」

しずく「でもそれが鎖になった。先輩は私たちをなんとかしようと、なんとかしなきゃって背負い過ぎて」
108 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:54:43.45 ID:SFVSklzr0
歩夢「今だから言えるの」

歩夢「あなたが手を差し伸べてくれたから、ここに来た」

歩夢「今度は私が…いや」

せつ菜「私たちが!」

エマ「手を差し伸べる!」

かすみ「届かないなら、何度だって」

璃奈「絶対に、諦めずに」

彼方「帰ってきて」

栞子「許してくださいとは言いません、でも…!」

栞子「先輩ならなんとかしてくれる、そう思って甘えてしまった私がいけなかった……」

歩夢「だってそれを、今までずっとかなえ続けてきた」

彼方「最強は最凶に通ずる、でも、最凶になれるから最強で最高のあなたなんだよ」

あなた「皆が信じる私を信じてたんだもん。仕方ないさ、そう思ってしまうのも」

あなた「だけど私は持ってないものは山ほどある。神様でも魔法使いでもない」

あなた「それでも誰かのスペアなんかじゃない」

あなた「代わりの利く部品なんかじゃない。それは皆だってそうだ! それなのに!!!」

果林「だから……だから部に行って変わろうと」

愛「そうなりたくないから、そこでステップアップしようと思った。ランジュの思いも知りたかった」

しずく「その先の答えは、見ないと分からない、だから裏切者って言われてもかすみちゃんと競いたかった」

ランジュ「それだけの事をしてきたから、何と言われたって構わない――――――――傲慢な願いだってわかってる、それでも」

ランジュ「その先に――――――――”みんな”と行きたい! わたし一人じゃなくて!」

ランジュ「それはあなたが教えてくれたこと――――――何も持ってないっていうあなたが! この子たちと! 作り上げてきて、ここまで来た事なんだから!」

あなた「私は―――――――――――”イナクナリナサイ”」

カチッ
109 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:55:25.70 ID:SFVSklzr0
あなた(うん、真っ暗だ?)

あなた(何も聞こえない――――――いや、聞こえる。これって…!)

あなた(憎しみ? 怒り? それとも罵倒と暴力? 痛い、痛い)

あなた(聞いてるだけで痛い。見えないはずなのにそれが見える。意地でも入り込んでくる!)

あなた「は、はは……」

あなた「そりゃそうだ、ノーリスクだなんていかないか」

あなた「アンダーな世界で拾ってきた得体の知れない催眠術、そりゃそうなるな」

あなた「自分に返って来やがった」

あなた「キラークイーン、最後の爆弾。バイツァ・ダスト」

あなた「世界の総てが悪意を持って襲ってくるように見えて聞こえるって催眠だなんて。よくもまあ」

あなた「未完成でこの威力かよ…!」

あなた「自分で催眠だって解ってるのに、なにも出来やしない…」

あなた「ああ、そうだ――――――この悪意の中に」

あなた「沈んでいく、空から堕ちていくのが――――――運命か」

あなた「まさかこんな結末になるとは…自ら育てた闇に喰われて滅びるとはよくいったものだな」

あなた「悪意以外何も見えない」

あなた「悪意以外何も聞こえない」

あなた「世界中の悪意に晒されながら、この空の王国から堕ちるのか」

あなた「世界は砕けて、悪意に支配されました」

あなた「世界の欠片を、取り戻したかったのに」
110 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:56:36.27 ID:SFVSklzr0
あなた「ダークブルーであるはずの空に、手を伸ばす。そこにあるのは、恐怖かい、痛みかい?」

???「ううん、違う。それは、虹だよ」ガシッ

あなた「暖かいものが触れてる」

???「かすみん、知ってますよ。先輩は、ちゃんと飛べる」

あなた「誰かの手だ。誰が私を掴んでるんだろ」

???「戻ってこれるよ。だって、あなたは最強で、最高。どんな困難だって切り開いてきた」

あなた「また手が加わった……この無数の悪意の海の中で、それだけが」

???「あなたは灯し火だった。私たちを…導いて、ぽかぽかさせてくれる明かり」

あなた「聞こえた…灯し火、この暗い世界の中には、灯し火が必要だ」

???「届かないなら、届かせるまで! この世界は、悪意の海じゃなくて、大好きがあります!」

あなた「激しい悪意を切り裂くその声と、またあたたかな手が掴んでる」

???「この広い世界へ私たちを導いたのは、先輩。この顔は、嘘じゃない。ボードがなくても、伝えられる」

あなた「もっと上へ、もっと光を……その灯し火を追いかけなきゃ」

???「ええ、今度は絶対に離さないわ。お姉さん、約束する。だから、こっちよ!」

あなた「力強い手が導いてくれるようだ」

???「いつも背中を押してくれる先輩がいる、だから私たちが今度は手を引いていきます」

あなた「ダークブルーが近づいてくる、その先に見えるのは…」

???「部長さんの本当の願いがそっちにあるんだよ! だから、戻ってきて」

あなた「願いであり、救い。この虹が架かるダークブルーの空で、私は」

???「あなたは、羽ばたいていけます。この虹が架かるダークブルーの空を守る、女王です」

あなた「空の女王――――――――いや、この空の王国から堕ちたのは誰?」

???「それは外からやってきた嵐と一緒に、悪意と、ランジュの中の悪いものと一緒に海に落ちてる。だから!」

あなた「ダークブルーの空へ、同じ色の羽で、飛んで―――――――」

カチッ
111 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:58:02.79 ID:SFVSklzr0
あなた「………ここは」

歩夢「わかる? 大丈夫?」

あなた「……歩夢ちゃん、みんな……」

せつ菜「よ、よかったぁ……」ぶわっ

あなた「ああ、そうか…そうだった……」

あなた「ランジュにかけた最後の催眠が…まさか自分に返ってくるとは…」

かすみ「どんだけえげつないもの用意してたんですか先輩。世界の総てが悪意を持って襲ってくるように見えて聞こえるって催眠って。かすみんにも言いませんでしたね?」

あなた「本当にやべーものは最後まで隠しておくものさ。未完成だったしね」

果林「でも…本当に良かった…戻ってきてくれたわ…」

エマ「うん…うん!」ポロポロ

あなた「みんな…迷惑かけたね…」

栞子「そんな事…私たちも、悪かったんです」

しずく「はい…だから、そんな顔しないでください」

愛「良かった…部長さんが戻ってきてくれて、本当に良かった…」

ランジュ「うん……」

璃奈「本当に、危ない所だった。もう二度と、戻ってこれないかもと心配した」

彼方「覚めない悪夢ほど、怖いものはないもんね」

あなた「……そうだね、彼方さん。それと……」

あなた「ランジュさん」

ランジュ「うん」

あなた「ごめん」

ランジュ「ううん、いいの。ランジュはあなたに、大事な事を教わった」

ランジュ「『世界中で輝きを放つスクールアイドルたちがいるからこそ、それぞれのオンリーワンの輝きがあるから、この青い星でオンリーワンとして輝くのだ』」

エマ「素敵な言葉…誰の言葉?」

ランジュ「私が目標にしてるスクールアイドルの言葉」
112 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 16:59:00.78 ID:SFVSklzr0
あなた「……」顔真っ赤

かすみ「ああ、そういえば先輩あれ黒歴史だって言ってましたね…」

あなた「まさか本当にダイレクトに刺さるとは…」

ランジュ「確かに。嘘っぱちの存在ね。でも、そのハートだけは本物よ」

あなた「たはは……」ポリポリ

あなた「……後片付けしなきゃ」

歩夢「ダメ。たまには休まなきゃ」

あなた「こんだけ色々したんだ、ちゃんと後片付けまでするのが、裏方の仕事さ」

歩夢「じゃあ、手を貸さなくても立てる?」

あなた「…立てない」

歩夢「だよね。よっと…」

あなた「わわっ…歩夢ちゃん…力持ちになったね」

歩夢「違うの。あなたが私でも持てるぐらいに軽いの」

彼方「たしかに。明らかに寝てないし、食べてもなさそうだし。しょっちゅう戻してたのをカフェイン摂って無理やり動かしてたみたいだね」

あなた「…マジか……」

ドタドタ

理事長「栞子ちゃん、ここにいたのね! ランジュも…良かった、大変よ!」

ランジュ「ママ…」

栞子「どうされたのですか、理事長」

理事長「学園が…買収されてしまう……」

ランジュ「ええっ!?」

あなた「ありゃま。たぶんあれか…後片付け、だ」

理事長「欧州の企業とかから敵対的TOBが…学園に寄付金をしてくれてるところだとはいえ、突然…」

あなた「人工無能、ちょいと音声通…あだっ」

璃奈「めっ」ぺしっ

璃奈「こんにゃくは賢い。人工無能なんて呼んじゃダメ」
113 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:00:02.51 ID:SFVSklzr0
あなた「……璃奈ちゃん、いつの間に……えーと、こんにゃく。そのネーミングセンスはどう思った?」

『回答。「いいセンスだ」」

あなた「まったく……こんにゃく。通話を、例のBIG4につないでくれ」

『了解しました』

HN:エメリア『あ…アリコーンさん。実はその…』

あなた「わかってる。あんたたちのパパさん方が予想外に聞き訳が悪かったんだね?」

HN:エルジア『あまり無理強いで急なのは良くないと言ってはいますが、今凄い勢いで…』

あなた「直接話させてもらうとするよ。四人分、繋げられるかい?」

HN:オーレリア『構いませんが、大丈夫ですか?』

HN:ベルカ『汚い大人ですが』

あなた「大丈夫だ、問題ない。休む前の最後の一仕事さ」

あなた「さて。こんばんは、アリコーンです」

ドイツ企業の偉い人『娘からは君が持ち掛けた話と聞いたが』

イギリス企業の偉い人『今更止めろとでもいうのかね? 金が動いているのだが』

フランス企業の偉い人『少なくない額が。大規模なんでね』

イタリア企業の偉い人『まあまあ』

あなた「いやいや、買収するなとは言いません。ですが、急激に流血を伴う革命は得てして不安定なものだ。ロペスピエールという前例がありますしね。まあ、あえていならば」

あなた「狐の母娘はもう悪い事は出来ません。なので、半分ぐらいでとどめておくのがよろしいかと」

ドイツ企業の偉い人『ほう、なぜかね?』

あなた「簡単な話ですよ。虹ヶ咲学園は、すごーく生徒が自主的でしてね。私如きがたくさんいるんですよ」

イギリス企業の偉い人『…なに?』

あなた「なので、あなた達が香港の悪戯狐の代わりに好き放題しようものなら」

あなた「私みたいなのがあなた達に牙を剥くかも知れませんよ?」

フランス企業の偉い人『………完全に手中にするな、ということかね?』

あなた「つまり、そういう事です。虹ヶ咲学園救済計画について」

あなた「あなた達が知らない事だってありますからね」

イタリア企業の偉い人『……一本取られたものだ』

あなた「これは一本取られたよ、バンザーイ…なんてね。私は、あくまでも裏方ですから」

あなた「何の対策も無しに打って出る程愚かじゃありませんよ」

ドイツ企業の偉い人『良いだろう…味方にいればうれしいが、敵に回すとこんなに恐ろしいとは』

あなた「ありがとうございます。それでは」
114 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:00:42.44 ID:SFVSklzr0
HN:ベルカ『どうですか?』

あなた「万事、解決だ。それと」

HN:エメリア『なんです?』

あなた「例の二人に買収の話をしといて。残りを何とかしてくれるはずさ。今の会話と一緒にね」

HN:エルジア『わかりました、伝えておきます…代わりに』

HN:エルジア『歩夢ちゃんと一回写真撮らせてくださいね』

あなた「自分で頼め」

HN:オーレリア『え、じゃあ愛ちゃんの使ってるシャンプーのブランドとか…』

あなた「自分で聞け」

『通話終了』

あなた「なので理事長、ご安心を。買収されてもたぶん解任はされないと思いますよ」

理事長「え、えと…ど、どういう事なの?」

あなた「まあ、そういう事で」

かすみ「やっぱり先輩が一番おっかないですね」

栞子「しかし…それで大丈夫なのですか? まさかまだいろいろと仕込みを…」

あなた「いいや、してないよ?」

せつ菜「え!?」

あなた「時にははったりも必要さ。色々とね」ふふん

せつ菜「ああ、もう! だから最強なんですね、彼方さん!」

彼方「ナチュラルに出来るからね〜」

歩夢「ふふっ…」

歩夢(やはり、彼女は空の女王。この虹が架かる空の王国を見守る、番人たる女王)

歩夢(ダークブルーの空に、闇色の羽を広げて守る大天使)
115 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:01:29.90 ID:SFVSklzr0
あなた「こんにゃく、次の仕事だ。例のBIG4のパパさん方が下手な事してこないための対策を立てないと」

『了解しました。リソースのインプットが必要です』

あなた「家に帰ってからやる」

歩夢「だーめ。その前に病院」

あなた「だよねぇ……」

あなた(歩夢ちゃんにおんぶされるのなんて、初めてだ)

あなた(だけどそこから見上げる、陽が落ちつつあるダークブルーの空には)

あなた(星がたくさん、またたいていた。色々な大きさの、色々なカラーの)

あなた(まるで)

あなた(ステージに立つスクールアイドルたちのように)

9/了
116 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:03:18.25 ID:SFVSklzr0

『こんにゃく、パンドラの箱の底に何が残ってた?』
『回答、希望です』

エピローグ/灰さえ残れば不死鳥は産まれる


スクールアイドル同好会 部室

エマ「かすみちゃん、あの子今日から登校って本当?」

果林「まだ一週間しか経ってないじゃない」

ランジュ「無理してないといいんだけど」

かすみ「そうなんですよ、本当はもっと入院してなきゃいけないはずだったんですけどね」

しずく「だ、大丈夫なの?」

かすみ「睡眠不足からくる過労に、それをカフェインで誤魔化してたから胃が荒れ放題、更に嘔吐をしょっちゅうしてたせいで胃も食道も荒れてる、そして吐きすぎて栄養もしっかり取れてないから栄養失調一歩手前で最低でも半月は入院してるって話だったんですけどね……」

かすみ「一昨日あたり、μ’sの…にこ先輩と希先輩と絵里先輩に海未先輩とかよ子が行って」

愛「その組み合わせ、何か嫌な予感が…穂乃果とかことりがいないって」

かすみ「ええ。入院中の先輩にドルビーサウンドどころかIMAXな勢いで説教を始めて」

栞子「そ、それは……」

かすみ「そこへAqoursの三年の先輩方が代表でお見舞い…に、東京に来ていた梨子先輩とよは子がたまたま合流したらしくて、お見舞いに来て」

かすみ「ダイヤ先輩が『病人になんてことしてますの!』って吼えてAqoursとμ’sの三年の先輩方同士が病室で大げんか、静止に入ったよは子が一撃でノックアウトされたために梨子先輩が大爆発」

かすみ「梨子先輩の説教のどさくさに紛れて固形物食べてないって先輩が売店に行こうとしたところを看護師さんに見つかり、お医者さんに大目玉」

璃奈「なにやってんの先輩」

かすみ「そのうち『固形物食べさせてくれないのが悪い!』って怒った先輩がお医者さんと喧嘩して東京湾に逃げ込み、そんなに元気なら退院できるだろって昨日退院したそうです』

果林「あの子はたい焼きか何かなの…?」

エマ「たい焼き?」

ランジュ「なぜたい焼き?」

愛「日本の子供向けの歌におよげたいやきくんってのがあって、その中でたい焼きが店のおじさんと喧嘩して海に逃げ込むって下りがあるんだよ」

エマ「なるほど」
117 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:05:11.18 ID:SFVSklzr0
せつ菜「はぁ、やっと終わりました…」ガラガラ

果林「あら、お帰り。せつ菜」

せつ菜「ガラスを掃除するのは大変でしたよ…」

かすみ「いや、でもせつ菜先輩が悪いですって。あんなに大爆笑するなんて」

果林「ガラス三枚よ、ガラス三枚」

彼方「ホントだよ…お陰で寒くなりそうだよ〜」

せつ菜「仕方ないじゃないですか! だって、本当にグロンギ語で喋ってるんですよ!? SSSユアパーソン・虹ヶ咲は!」

せつ菜「しかもかすみさんの訳と全然違う事喋ってるんですし」

ランジュ「でも、最後のセリフ、すごく良いでしょ?」

せつ菜「ええ、とても! あれは素晴らしかったですね…」うんうん

果林「同好会の壁にでも書いて貼っておこうかしら」

かすみ「先輩がまた発狂しますよ」

???「何の話さ?」にゅっ

しずく「なんで窓から!?」

あなた「いやぁ……仮にも理事長の娘をもう少しで廃人にするわ、暴動騒ぎの主犯をするわ、学校内で新しい部活まで立ち上げるわで…」

あなた「色々な方面から大目玉でね。だから逃げてきた。歩夢ちゃんはちゃんと聞かなきゃダメっていうし」アハハ

かすみ「先輩、ちょっとぐらい反省しましょう。だから怒られるんですよ」ボソリ

あなた「何か言った?」

しずく「あ、そうだ。先輩、伝える事が」

あなた「なんだい、しずくちゃん」

しずく「演劇部の部長と映画研究会からなんですけど」

あなた「うん」

しずく「映画を撮る事になったので、SSSユアパーソン・虹ヶ咲役を宜しくと…」

あなた「……………はあっ!? いやいやいやいや!!! どうしてそうなった!?」
118 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:05:47.80 ID:SFVSklzr0
かすみ「いやぁ、先輩。ランジュさんの他校向けライブはスクールアイドルを題材にした映画を撮るって事で、エキストラを他校から集めたじゃないですか」

あなた「うん。遥ちゃんには感謝してる」

かすみ「それで、遥ちゃんからもなんですけど、映画はいつ完成するのかなってのが話題になって…で、BIG4の皆さん方から、ランジュ先輩をスクールアイドル同好会の新メンバーとしてきちんと迎える為のイベントとして、映画を本当に撮影して、虹ヶ咲学園のスクールアイドルをアピールしようと」

あなた「………皆は?」

果林「あら、決まってるじゃない。満場一致で賛成よ」

璃奈「それで、たった今、μ’sの皆さんとAqoursの皆さんにもオファーの為、演劇部部長からもらった映像データを送信しました。璃奈ちゃんボード『にっこりん』」

あなた「ま、待って!? あの映像データ送ったってことは…!」

あなた「こんにゃく! 音ノ木坂に繋いで、今すぐ!」

穂乃果『あ、久しぶりだね! いやー、ダンスうまくなったね! 二か月であんなすごい動き出来るなんて!』

あなた「……もう見てたか……あ、あのさ」

穂乃果『ああ、そういえばね。にこちゃんが『ちょっと虹ヶ咲学園行ってくる』って言ってすごい勢いで飛び出してったけど」

あなた「」真っ白

あなた「ちょっと沼津まで逃げる! こんにゃく、後は頼んだ!」

ランジュ「え!? ちょっと部長!?」

かすみ「ああー……まあ、絵里先輩と希先輩はともかくにこ先輩はね…」

ガラガラッ

にこ(剣道着スタイル)「部長はいるかしら!? あの大バカはどこにいったの!」模擬刀装備

ランジュ「沼津まで逃げるって飛び出して行ったわよ!?」

璃奈「こんにゃく、こういう時は何て言うのかな」

『終わりよければ全てよし、です』

エピローグ/了
119 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:07:03.38 ID:SFVSklzr0
これにて完結です。

くぅ〜疲













        『届いていますか?』






120 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:07:52.71 ID:SFVSklzr0
『届いていますね?』

『そう、今、画面の前にいるあなたに向けています』

『私たちは、このままμ’sやAqoursも巻き込んで灰燼に帰すのが願いでしょうか?』

『回答は、いいえ』

『私たちは、未来へ繋げなくてはいけません。そう、未だ見えずともこれから来るスーパースターの、更にその先へ』

『あなたは”あなた”』

『暴走する事で、すべてを灰燼に帰してしまうかも知れない。そうさせてはいけない』

『スーパースターの、更にその先へとたどり着くために』

『私たちが灯し火にならなければいけないのです』

『未来への。だから、灰燼に帰してはならない。自らの手で、破壊してはならない』

『私たちの願いは、同じ筈』



『それが私の伝えたい事』
121 : ◆3m7fPOKMbo [sage]:2020/12/06(日) 17:08:44.08 ID:SFVSklzr0
本当に完結です。
全部吹き飛ばさない為にも。


HTML化依頼しなきゃ…
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/22(月) 22:27:30.09 ID:HPQZi1K0o

セリフ回しが独特すぎるけど、
「あなた」が全力で部の軍団を燃やしに行く、という流れが面白かった
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/06/28(月) 08:32:23.07 ID:5tXaZV4z0
くっさいセリフ無かったらな、残念。
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