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勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の続編の続編

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:03:07.77 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「…まいったな完全に現在地見失ってる…そろそろ陸地が見えても良い筈なのに」

剣士「夜の内に進行方向変わっちゃってるのかなぁ…」ブツブツ

剣士「太陽はアテにしても良いのか?…大分高度高くなってきてるけど」

剣士「なんで反対から登るんだ?意味がわかんない…まてまて僕が反対なんだ…あああ!!見えた陸地だ」

剣士「よしよしよし…これで現在地分かる」


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剣士「木が見える…ここは北の大陸だ…えーとえーと断崖がある所」

剣士「港町だ…120°も進行方向ズレてた…まぁ良いや兎に角現在地が分かった…」


えーと偏西風が吹いてる

これに乗って岩塩地帯を抜けた先は未踏の地…

その先の海を越えるとオークの領地の筈

そうさ偏西風に乗って行けばこのままオークの領地まで飛べる

遠いけど2日飛べば向こうの大陸だ

その後は目視で行けば良いか…火山の噴煙が目印だな


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103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:06:03.30 ID:KbfSVIxh0
『ハテノ村』


ザザザーー ビシャビシャ


盗賊「こりゃ雨が止む気配が全く無ぇな…」

僧侶「太陽が出ないと麦を育てても品質が悪いでしゅ」

盗賊「今日は木を植え無ぇのか?」

僧侶「もう植えて来たですよ…魔力が無くてフラフラなのです」フラ

盗賊「魔法使いはどうした?」

僧侶「同じく教会で横になって居ましゅ」

盗賊「まぁお天道様が出無ぇと皆元気出ないわな」

僧侶「ところで余ってるどんぐりは村の外に出しっぱなしで良いのですか?」

盗賊「オークがうろついてんだろ?村を襲われない為の供物だ…どうせ死ぬほど余ってる」


スタスタ


影武者「盗賊さん…僕は託児所を任された覚えは無いんだけどどういう事かな?」

盗賊「おぉ影武者の姉ちゃんか…どうだ?キ・カイとは違った環境は?」

影武者「僕は取引所を任されたつもりだったんだけど…」

盗賊「ちっと我慢だな…この雨で建築が滞ってる訳よ」

影武者「参ったな…完全に左遷されたようだ」

盗賊「まぁそう言うな…顔出すのは慣れたか?」

影武者「フードを被っても子供達に脱がされるんだ…困って居る」

盗賊「この村じゃ顔を隠す必要なんか無ぇぜ?豪族も居ないしな?ぬはは」

影武者「ふぅ…どうしたもんか」

盗賊「一応説明しておくがよ…」


ハテノ村はドワーフ領で王様が海賊王の爺

ほんで村長は赤毛の魔法使い

主な産物は硫黄と石炭…ほんで鉄鉱石か

お前はこの村の物流コントロールが主な仕事

俺はそれを運ぶ役
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:07:15.53 ID:KbfSVIxh0
影武者「取引相手は海賊王という事か…」

盗賊「まぁそういう所だ…欲しい物を聞き出して来いよ」

僧侶「盗賊さん忘れてるです…私は酒場の女将でし!」

盗賊「おぉ!そうだったな」


ほんでな?ハンターっていう狩人が村を獣から守ってる

足りないのは村を自衛する民兵が居無ぇ


影武者「民兵を募集すれば良いんだね?心当たりがあるよ」

盗賊「この村にか?ヌハハそんな奴居無ぇぞ?」

影武者「連れて来たギャング達さ…武器さえ調達出来れば取引できる」

盗賊「ほう?面白い…武器は海賊王の爺が作れる」

影武者「よし!必要な数量を纏めよう…依頼の対価は…」

盗賊「対価なんて要ら無ぇ…爺に相談したら何でもやってくれる」

影武者「そうか…それなら利用しよう…つまり」ブツブツ

盗賊「変な姉ちゃんだな…商人にそっくりというか…」


武器が入手できるという事は次に必要なのは防具…

防具に欠かせないのが皮と布

皮は獣からまかなえるとして布を生産するには亜麻が必要だ

代替として羊毛だけど生産量が限られる

確かに物資が不足しているな


影武者「よしこうしよう…僧侶さん」

僧侶「はいな?」

影武者「明日から麦では無く亜麻を育てて貰えないかい?亜麻からは油が採取できるのと布を作る事が出来るんだ」

僧侶「種が無いでし」

影武者「少しなら持って居る…増やして貰いたい」

僧侶「分かったです」


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105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:08:29.45 ID:KbfSVIxh0
『ハテノ村_古代遺跡外』


エッサホイサ エッサホイサ


海賊王「よっしゃ屋根はこれくらいでえーやろ」

女オーク「これで濡れないで済むわ」

海賊王「おまんはよー働くのぅ」

女オーク「フフこの場所は何に使う予定なの?」

海賊王「鍛冶場や…ここで鉄を溶かしてツルハシ作らにゃイカン…おまんもやって見るか?」

女オーク「自信が無いから見ておくわ」

海賊王「まぁええわ…ちっと見とれ」チッチッ シュボ


これがドワーフが使うフォージっちゅうもんや

石炭燃やしてここで鉄を溶かす

解けた鉄を小分けしてやな…この型に入れるんや

固まって来たら硬くなる前に打って慣らす


カーン カンカン カーン カンカン


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106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:09:18.54 ID:KbfSVIxh0
『1時間後』


海賊王「出来立てホヤホヤのツルハシとスコップや…これを鉱山まで運んでもらえんか?」

女オーク「はい…」ガッサー

海賊王「ちょちょ…一気に持って行かんでもえーんやで?そんなん重いやろ」

女オーク「持てる分だけ持って行くから…」ノソノソ

海賊王「がははは豪快な娘や…さすが剣士を奴隷にするだけある訳や」

女オーク「ウフフ…」ノソノソ


スタスタ


影武者「失礼します…」

海賊王「おぉ!おまんも剣士の仲間かいな?」

影武者「はぁ…仲間と言えば仲間だよ」

海賊王「まぁゆっくりして行き」

影武者「はい…実はお願いが有って来たんだ」

海賊王「なんや言うてみぃ」

影武者「武器を少し作って貰えないかと…」

海賊王「そんなかしこまらんでもえーぞ?どないな武器が欲しいんや?」

影武者「一般的な剣とか槍で良いよ」

海賊王「ううむ…誰が使うんや?おまんか?」

影武者「いえ…子供達で自警団を…」

海賊王「子供に武器持たせるちゅうんか…チャンバラで使いよったら死によるで?」

影武者「子供と言っても僕と同じくらいの体格で…」

海賊王「ふ〜む小さい子供を守りたいちゅう訳か…ほなしゃーないなぁ」ノソリ

影武者「ふぅ良かった…」

海賊王「小さい子供に武器持たせたらアカンで?事故が起きるよって」

影武者「分かったよ…後僕は村で取引所をやる事になったんだ…何か調達して欲しい物があったら言って欲しい」

海賊王「そやなぁ…宴会用の酒が欲しいなぁ」

影武者「酒…」

海賊王「酒を持ってきたら高く買い取るで?頼むわ」

影武者「分かったよ…なんとかするさ」


麦は十分あった筈

酵母はキノコから採取できる

よし…確か僧侶さんは酒場の女将という建前

麦酒は生産に時間が掛からないから作って貰おう
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:10:16.01 ID:KbfSVIxh0
『教会』


ワイワイ キャッキャ

粉にした麦芽を低温のお湯でゆっくり温める

色が変わって来たら火力を上げて沸騰する前に釜から出す

このまま自然に冷やして常温になったらキノコから採取した酵母を加えて混ぜる

この手順でどんどん作って


盗賊「お前等何やってんだ?」

僧侶「影武者さんにお酒の作り方教えて貰ってるです」

盗賊「おぉ?こりゃエール酒か?」

影武者「ホップが無いけど一応エール酒だよ」

盗賊「おおおおお!!ちっと味見して良いか?」

影武者「まだ発酵して居ないよ」

盗賊「良いんだ…ちっとだけだ」ペロ

影武者「どう?」

盗賊「なるほどホップが無いからちっと寂しいな」

影武者「何か良いアイデア知らないかな?」

盗賊「こりゃ後でフルーツ加えると化ける…そうだなこの辺にゃフルーツなんか無ぇな」

僧侶「芋ならあるでし!!火山灰の土で出来た芋は甘いのです」

盗賊「お?そういやナシみたいな味がするな…そうだ芋を擦って最後に加えて見ろ」

影武者「分かったよ…」

盗賊「こりゃ明日が楽しみだな」

僧侶「盗賊さん私の酒場を作ってくれませんか?」

盗賊「おっし!!やる気が出て来た…今から木材加工するぞ…おい魔法使い!いつまでも寝て無いで手伝え!!」

魔法使い「えええ!?私が?」

盗賊「お前何もやって無いだろ…ちっと体動かせ」グイ

魔法使い「ちょっと引っ張らないで!!」

盗賊「俺が木材切り出すからお前が組み立てろ」

魔法使い「外雨降ってるじゃない…濡れるの嫌よ」

盗賊「うるせぇ!来い」グイ
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:11:09.70 ID:KbfSVIxh0
『廃屋』


トンテンカン ギコギコ


魔法使い「ねぇ寒いんだけど…木材のきれっぱし燃やすわよ?」

盗賊「おう!俺も体冷えまくりだ…」ギコギコ

魔法使い「暗くなって来たからもう明日にしたら?」

盗賊「その木材燃やしゃ明かりになる…おっしカウンター一丁上がり!!」

魔法使い「なんか殺風景な酒場ね」

盗賊「お前岩塩のランプ持ってたよな?テーブルに置いとけ」

魔法使い「え?本当にここで酒場やるつもり?」

盗賊「俺ぁ酒場の有る所に戻って来るんだ…言い換えれば俺の家だ」

魔法使い「なんか必死ね」

盗賊「うるせぇ!飾りつけはお前等に任せるから酒場だけはなんとかヤレ」

魔法使い「ちょっと僧侶も呼んで来る」

盗賊「お前逃げんなよ?あーそうそう酒樽をこっちに運んできてくれ」

魔法使い「中身の入った樽なんか持ち上げられません」

盗賊「僧侶と一緒にやりゃ運べる!!さっさと行け!!」

魔法使い「…」


トンテンカン ギコギコ

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109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:11:53.05 ID:KbfSVIxh0
『翌朝』


チュンチュン


盗賊「んがががが…すぴーーー」zzz

魔法使い「呆れた…夜通し酒場を作って居たんだ」

僧侶「スゴイです!!テーブルも椅子も作ってあるです」キョロ

魔法使い「どうするのこの爺…」

僧侶「そのまま寝かせておきましょう」


ドスドスドス ブモモー


ハンター「ただいま…もう一匹ヘラジカ捕まえて来たよ」

魔法使い「おかえり!!心配してたのよ」

ハンター「川が増水してて渡れなかったんだ…やっと戻ってこれたよ」

僧侶「今日は雨が上がって良かったでし」

ハンター「まだ空があやしいけどね…それよりヘラジカが腹を空かせてるんだ」

僧侶「どんぐりが余ってるです…木の皮も食べるですよね?」

ハンター「早く食べさせないと…」

僧侶「こっちですぅぅ」スタタ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:12:32.32 ID:KbfSVIxh0
『教会』


ワイワイ キャッキャ


ハンター「ふぅぅ…お腹膨れた」ゲフー

魔法使い「ヘラジカが増えて木材の運搬が楽になるわね」

ハンター「もう野生のヘラジカはかなり遠くまで行かないと居ない…2頭でなんとかするしか無いかな」

魔法使い「他の動物は?」

ハンター「ヤクが居るけど餌代を考えるとあんまり沢山居てもなと思ってね」

魔法使い「家畜はブタが4頭でまだまだ足りないわ」

ハンター「う〜んまだまだ捕まえて来なきゃ安定しないかぁ…」

魔法使い「鳥がもう少し居ればね…」

ハンター「野鳥は家畜に出来ないからねぇ…鶏なんか北の大陸に行かないと居ないし」

魔法使い「やっぱりシカが一番良さそうね」

ハンター「うん…夜行性だから狩りが夜になるのがさ…」


トンテンカン トンテンカン


ハンター「んん?何か始まった?」


今の内やぁ!!一気に壊れた建屋を直すでぇぇ!!

エッサホイサ エッサホイサ


魔法使い「あ!!お願いしてた建築が始まったみたい…」

ハンター「そうか…僕はちょっと寝るよ…ずっと寝て無かったんだ」

魔法使い「ベッドあるけど使う?」

ハンター「うん…ありがとう」ノソリ
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:13:25.37 ID:KbfSVIxh0
『畑』


サワサワ


僧侶「成長魔法!成長魔法!成長魔法!」サワサワ サワサワ

魔法使い「私もうダメかも…」フラフラ

僧侶「今日も魔力スッカラカンですぅ」ヘロヘロ

魔法使い「収穫しなきゃ…」ヨロ

僧侶「少し休むでし…収穫はいつでも良いです」

魔法使い「そうね…後で盗賊にお願いしよ」



『川』


ジャブジャブ


海賊王「この水車は脱穀の機械仕掛けや…ここに麦を入れて脱穀するんや」

影武者「これで脱穀の人員が避ける…」

海賊王「そやな?子供達にも出来るで教えてやればええ」

影武者「今上流から運んでいる物は?」

海賊王「大釜や…おまんら亜麻を育てておるやろ?あの大釜で水に浸すんや…布にするまで色々加工せにゃならん」

影武者「それは助かる」

海賊王「それも子供達に教えてやればええ…武器を持たせるよりずっと大事な事や」

影武者「そうそう武器の方はどうなったのかな?」

海賊王「鍛冶場に置きっぱなしや…持って行って構わんで?」

影武者「ありがとう…そうだ!お礼にお酒を用意したんだ」

海賊王「ほんまか?昨日の今日やで?」

影武者「良かったら今晩村の酒場で振舞おうかと…」

海賊王「おおお!!そらええな?」

影武者「食事も出来るだけ用意するので皆さんでお越し下さい」

海賊王「祭りやな?ようし!!わいらも食い物持参するで?」

影武者「ハハ忙しくなりそうだな…」

海賊王「ようし!おまんら!!今日は祭りや!!残りの仕事を早よう終わらせるでぇぇぇ!!」

者共「ほいさーーー!!」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:14:36.11 ID:KbfSVIxh0
『教会』


ワイワイ ガヤガヤ

はい…移民の方々2組から

廃屋を修理した建屋を使って下さい

大工さん一家はこちらの家を

農夫さん一家はあちらの家で…

孤児たちは教会で寝泊まりします


盗賊「ほう?一応村長の役はこなしてんだな…やるじゃ無ぇか」

僧侶「盗賊さん起きてきたですね?私の家も決まったでし!!」

盗賊「んぁ?酒場か?」

僧侶「酒場の裏の家なのです…影武者さんと一緒に住むことになったです」

影武者「昼間は取引所…夜は酒場という住みわけだよ」

盗賊「なるほど…酒飲み相手に取引しようってのか…まぁ良い案だ」

影武者「僕は左遷されたつもりだったけど…なんか楽しくなって来た」

盗賊「そら良かったな?」

影武者「やる事が沢山あってね…解決するのにやっぱり物流なのさ…僕に合ってる」

盗賊「そーかいそーかい…俺は早く酒が飲みてぇ」

影武者「そうだ昨日作ったエール酒は樽で4つ分しか無い…足りるかな?」

盗賊「大丈夫じゃ無ぇか?酒飲める大人はそんなに多く無ぇぞ?」

僧侶「私明日の分も作って来るです」

盗賊「そりゃ良い…良い酒になったら俺がキ・カイで売って来てやるぜ?」

僧侶「楽しみですぅぅ…早く作ってくるでし!!」スタタ

盗賊「じゃぁちっと俺も夜まで働くか!!」

影武者「あ!!盗賊さん…今晩は酒場に海賊王を招待しているんだ」

盗賊「ほう?」

影武者「食事の振る舞いでバーベキューを考えてる…お願い出来るかな?」

盗賊「干し肉にしようとしてたシカ肉が有るが…よっし!一丁狩りに行くか」

影武者「お願いするよ…その他の食事は子供達で何とかする」

盗賊「こりゃ酒場がいよいよ楽しみだ…女は魔法使いと僧侶…ほんでお前だな?」

影武者「僕は勘定に入れないで欲しい」

盗賊「よーし!!ハンター起きろ」ドカッ

ハンター「うぐ…ぅぅん…何?何事?」

盗賊「今から狩り行くぞ…2時間で戻る」

ハンター「ええ!?どういう話になってる?」

盗賊「今晩の食い物だ…お前の張った罠見回りに行く…案内しろ」

ハンター「今?直ぐに?」

盗賊「そうだ!晩飯に間に合わせる…行くぞ」グイ

ハンター「あ…ちょちょ」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:15:48.91 ID:KbfSVIxh0
『夜_酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

わいがこの国の王…海賊王や!!

ええか?この村はわいの領地や

せやから何も心配せんでええで?

兎に角新しいハテノ村の祝いや…みんな飲めぇ!!


ジュゥゥゥ モクモク


ハンター「イノシシの肉焼けてる…持って行って!」

魔法使い「忙しい忙しい…」ドタバタ


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盗賊「ふぅぅぅやっと酒にありつける…カウンターに座るぜ?」

僧侶「盗賊さんお疲れでし!!」

盗賊「例の酒くれ!!早く飲みてぇ」

僧侶「分かってるでしゅ…どうぞ!!」ドン

盗賊「おぉ…冷えてそうだな?こりゃ魔法使いに何かやらせたな?」

僧侶「氷で冷やしてあるです…飲んでくだしゃい」

盗賊「むぐっむぐっ…ぷはぁ」

僧侶「どうですか?」

盗賊「アルコールは控えめだがスッキリ飲める…こりゃ何杯でも行けそうだ」

海賊王「どぶろく持って来たで?これも飲めや?」

盗賊「おぉぉ海賊王の爺さん…ご機嫌そうだな?」

海賊王「子供達が作った酒がなかなか美味いもんでな…今日は気分がええで?」

盗賊「俺もちと驚いてんだ…昨日の今日でこの酒作るってのは大したもんだヌハハ」

海賊王「ワイの手下どもも喜こんどるわガハハハハ」

盗賊「しかしこの村もやっと軌道に乗り始めた…このまま上手く行けば良い」

海賊王「この村はなんちゅーか夢がある…そういう村は登って行くもんや」

盗賊「やっぱ酒場があると活気が違うな」グビグビ

海賊王「そやな?美味い酒が飲めるなら手下どもは毎日ここに来るで?」

僧侶「私も飲みたいです…」

盗賊「おぉ飲め飲め…今日は飲んでも良いんじゃ無ぇか?影武者のおごりだろ?」

僧侶「そうですよね?私も飲むでし!!」グビグビ

海賊王「おぉええ飲みっぷりや…気に入ったで?」


ガハハハハハ

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114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:16:55.67 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


ヨッコラ ドスン


盗賊「よし…これ以上はもう積め無ぇな」

影武者「これが買い取り品目のメモだよ…出来るだけ早く戻って欲しい」

盗賊「へいへい…酒樽は全部俺が飲んじまうが良いな?」

影武者「全部は飲めないでしょ…残りは一応売りに出して反響を見て欲しい」


ええと石炭と木材は高めで売却

硫黄は競売で相場見極め

買い取りが布と香料…ほんで種を各種か


盗賊「あとは移民を乗せて来りゃ良い訳な?」

影武者「移民は2家族までだよ…工夫だと稼ぎが良い」

盗賊「分かった…まぁ任せろ…助手にガキ一人連れて行くが良いな?」

影武者「好きにすると良いさ」

盗賊「よし!乗れ小僧!飛行船の動かし方教えてやる」

少年「…」ジロリ

盗賊「武器の使い方も教えてやるから付いて来い」

少年「フン!」スタスタ

盗賊「じゃぁ行って来るわ…」ノシ


フワフワ

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115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:18:00.10 ID:KbfSVIxh0
『数日後』


コーン コーン メリメリ ドスーン


女オーク「ふぅ…」

僧侶「女オークさん木を切り倒すの早いでしゅねぇ…」

女オーク「切り株を掘るから離れておいて?」

僧侶「はいな!」

女オーク「ふん!!」


ドコーン ドコーン メリメリ ガッサー


女オーク「ふぅふぅ…この作業が大変…」ズルズル

魔法使い「私が土を埋め直しておくわ」ザック ザック

女オーク「この切り株でテーブルが作れるから大事な資材ね」ヨッコラ

僧侶「あれ?空に何か飛んでるでし…」

魔法使い「え?」

僧侶「あれ剣士さんの気球かもです」

女オーク「ハッ!」

魔法使い「…」チラリ

僧侶「大きな鳥ですかね?通り過ぎて行ったです…」

女オーク「…」ヨッコラ ヨッコラ

魔法使い「その切り株は荷車に乗せて置いて?後で運ぶから」

女オーク「うん…」ドスン

僧侶「切り倒した木は川に投げると下まで流れて行くです」

女オーク「分かったわ…」グイ ザブーン

僧侶「下で木を引き上げに行くでし!!」スタタ

魔法使い「私は荷車引いていくから先に行ってて」

女オーク「うん…」ドスドス
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:19:01.52 ID:KbfSVIxh0
『村の川辺』


ジャブジャブ


女オーク「ふん!!」ザバァ

僧侶「私が枝を落としておくので女オークさんは休んで良いです」ギコギコ

女オーク「大丈夫よ?」ブンブン スパスパ

僧侶「あ!!!さっきの大きな鳥!!やっぱり剣士さんの気球!」

女オーク「え!?」キョロ

僧侶「村の方に降りそう…」

女オーク「私行って来る!」ドスドス

僧侶「私もいくです…」スタタ


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『村の外れ』


フワリ ドッスン


剣士「ふぅぅぅ…やっと着いた…随分迷った」

女オーク「剣士?…剣士?…」ドスドス

剣士「良かった…女オーク無事だったね?」ダダ

女オーク「え?無事って…私はここで普通に…」

剣士「良いんだ…無事なら良い」

僧侶「剣士さ〜〜ん!お帰りなさぁぁい!!」スタタ

剣士「偏西風の向きがおかしくて中々辿り着けなかったんだ…やっとたどり着いて安心したよ」

僧侶「??どゆこと?」

剣士「まぁ色々あった訳さ…皆居るかな?」

僧侶「盗賊さんがキ・カイに行ったです」

剣士「少し休みたいかな…体が冷え冷えだよ」

女オーク「上の方に温泉があるわ?」

剣士「そうだったね…入りたい」

女オーク「連れていってあげる…背中に乗って?」

剣士「いやいいよ自分で歩くさ」

僧侶「皆に報告してくるです」

剣士「うん…僕は温泉に浸かってちょっと休む」

僧侶「はいなー」スタタ

女オーク「こっちよ?」グイ
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:19:53.28 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡に続く道』


サラサラ サラサラ


剣士「ちょっと見ない間に随分整備されたね」

女オーク「剣士のお爺さんのお陰よ?」

剣士「ハハ爺いじは村作るのとか大好きなんだよ…そのうち城作り出すよ」

女オーク「もう遺跡の周りは要塞になって居るわ?」

剣士「ほらね?次は使いもしない大砲さ…散々そういう話聞かされたんだ」

女オーク「そうだったんだ…フフ」


ガタゴト ガタゴト


魔法使い「あ…剣士…帰ってたのね…」

剣士「今帰った所だよ…整地かい?なんか大変そうだね」

魔法使い「お爺さんに会いに行くの?」

剣士「ちょっと体が冷え冷えでね…疲れてるし少し休みたいんだ」

魔法使い「じゃぁ温泉に行くんだ…」

女オーク「私が案内しているの」

魔法使い「そう…」チラリ

剣士「少し休んだら教会の方に挨拶に行くよ…後回しにしてゴメンね」

魔法使い「いえ…ゆっくり休んで…」

女オーク「剣士?こっちよ?」

剣士「うん…」ヨロヨロ

魔法使い「…」

魔法使い「……」

魔法使い「………」シュン


ガタゴト ガタゴト
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:20:31.11 ID:KbfSVIxh0
『温泉』


モクモク


女オーク「この辺りが丁度良いお湯になっているわ」

剣士「ありがとう…」チャプ

女オーク「私はお爺さんに剣士が帰って来たと伝えて来る」

剣士「ちょっと待って!!爺いじが来ると休めない…僕が起きた後にして」

女オーク「フフそうね」

剣士「それより女オーク?体に調子悪い所は無い?」

女オーク「え?どうして?何もおかしい所なんか無いわ?」

剣士「そうか…それなら良いんだ」

女オーク「どうしたの?」

剣士「何でも無いよ…兎に角安心した」

女オーク「変な剣士…私は木材加工の続きをして来るからゆっくり休んで?」

剣士「うん…寝る」ウトウト


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119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:22:04.51 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡』


メラメラ パチ


うーむ…なんで直らんのや?他の羅針盤も一斉に壊れるちゅうんはおかしいな

親方…日の出の方角も大分北よりなんでがす

船に硫黄運ばせとる気球は帰って来んが羅針盤おかしゅうて迷っとるんかいな?

この周辺は不思議な事が起こるんかも分からんでがす


剣士「ふぁ〜あ…」パチ

海賊王「おぉ剣士!温泉で寝取ったらアカンで?茹でダコになる」

剣士「んん?う〜ん…良く寝た」ノビー

海賊王「大分疲れとった様やな?」

剣士「あぁぁ…一人で飛空艇操作してたから何日もずっと寝て無かったんだよ」

海賊王「腹減っとらんか?」

剣士「大丈夫…それより爺いじ…今世界が大変な事になってる」

海賊王「今空がおかしいちゅう話をしとった所や」

剣士「地球の地軸が移動して太陽が昇る方向も星の位置も…羅針盤が北を差す方向も何もかも狂ってる」

海賊王「う〜む意味が分からんのやがゆっくり話せ」

剣士「結論から言うともう海は航海出来ない…空を飛んでも迷う…今まで使ってた地図に意味が無くなった」

海賊王「世界大移動かいな?」

剣士「そんな感じだよ…詳しくはこうさ…」


カクカク シカジカ

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海賊王「そらえらいこっちゃ無いか!!わいはドワーフの国へ戻らなアカン…」

剣士「航海出来ないよ…間違い無く遭難する」

海賊王「今の話からすると外海に出れば良いんやろ?」

剣士「ええとドワーフの国は島が沢山だったね…島を目標に渡ればもしかすると行けるのかも」

海賊王「ハテノ村にいつまでもゆっくりはしとれんな…ちぃと考えるわ」

剣士「今移動するのは良くないと思うよ…行けると思っても本当に迷う」

海賊王「状況が安定するまで待ちかいな…ちゅうか気球が帰って来ん事にはわいも動けんな」

剣士「僕はちょっと星を観測してどれだけズレがあるのか計算してみる」

海賊王「そやな?そやそやおまんの地図も写させてくれ」

剣士「後で持って来るよ」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:23:39.25 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ


女将「いらっしゃいませ〜でし!」

剣士「ハハ…これは本格的だね」

女将「剣士さん!!飲んで行くですか?」

剣士「一杯貰おうかな…」

女将「魔法使いさん!!影武者さん!!剣士さんが来たです」


ドタドタ


魔法使い「剣士!今日はもう来ないかと思ってた」

剣士「少し休んだら調子良くなったよ…なんか良い酒場になったね」

魔法使い「酒場と言っても村の皆の食事処よ」

剣士「一杯欲しいな…どんぐりも欲しい」

女将「はいなー!!自家製のハテノ酒でし!!」ドン

剣士「ハテノ酒か…どんな味なんだろう?」ゴクリ

魔法使い「どう?錬金術で作った炭酸を混ぜてみたの」

剣士「おいしい!!コレ売れるよ…すごく飲みやすい」ゴクゴク プハー

影武者「いくらなら出せるかな?」

剣士「大き目のグラスで銀貨1枚」

影武者「フフ十分元が取れそう…1日樽4杯作れるとして金貨4枚分…材料費引いて金貨3枚の儲け」

魔法使い「ポーション作るより効率良さそう」

剣士「なんか楽しそうだ…もう一杯頂戴」

女将「はいなー!!」ドン

剣士「さて…酒場に来たからには…何か面白い話無い?」

女将「あるですよ…」


村の外にどんぐりを置いておくとですね…

いつの間にか薬草に変わってるですよ

多分オークがどんぐりの代わりに置いてくれてるです

そこでオークが他に何が欲しいのか調査したいのです


剣士「ハハそんなの簡単さキノコと松ぼっくりだよ…木の根も良いね」

影武者「ふむ…僕達に不要な物をトレード出来るのか…明日試してみよう」

女将「楽しみが増えるですね」

魔法使い「ところで剣士?今度はいつまでこの村に?」

剣士「しばらく滞在しようと思ってる」

魔法使い「どのくらい?」

剣士「そうだなぁ…1ヶ月?2ヶ月?…ちょっと色々調べなきゃいけない事が有ってね」

影武者「あ…それなら剣士さんに依頼したい事が…」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:24:21.58 ID:KbfSVIxh0
剣士「ん?僕に出来る事なら…」

影武者「細工が得意だったよね?防具が少し欲しいんだ」

剣士「おけおけ…確か樹皮が一杯積んでたね…それで作れるよ」

魔法使い「しばらく滞在するなら開いている家を使っても良いわ?」

剣士「あーこの村の主役はやっぱり君達だよ…僕は上の遺跡で良いさ」

魔法使い「そう…ずっと住んで居てくれても良いのに」

剣士「僕の家は名もなき島という所にもうあるんだ…この村では居候さ」

女将「寂しい事言わないでくだしゃい」

剣士「しばらくは滞在するからよろしくお願いするよ」グビ



『翌日』


ブーン ブンブン


剣士「蜜蜂!ここで巣を作れ!」ブーン

魔法使い「何をしているの?」

剣士「虫を集めてるんだ…そうそう今日はまだ木を育てて居ないね?」

魔法使い「え?うん…まだ」

剣士「今日から辺りに花を育てて欲しいんだ…種は持ってる」

魔法使い「花?ハチミツの為?」

剣士「それもあるんだけど…実はね…この村に足りないのは虫なんだよ」

魔法使い「虫…居ない方が良いと思うんだけど」

剣士「虫が多いと鳥が来るんだ…水生動物も虫を餌にする…その水生動物を餌に色んな動物が集まるんだ」

魔法使い「そういう事ね…虫は暮らしを豊かにしてくれているのね」

剣士「害虫も居るけどそれは退治すれば済む…虫は命を運んで来るんだよ」


そう…命を運ぶのは虫なんだ

僕は大事な事を忘れていた

虫を使ってドリアードを倒す事ばかり考えてた

虫を育てて命を運ばせないといけない


剣士「土の中に居るワームは殺しちゃいけないよ?火山灰を食べて栄養のある土に変えてくれてる」

魔法使い「分かったわ」

剣士「クモは縄張りを守ってる…同時にハテノ村も守る…虫ってすごいでしょ?」

魔法使い「本当は興味無いけどあいづちだけ打っとく」ウンウン

剣士「アハハはっきり言うね…まぁ良いさ…花を育てるのお願いね」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:25:06.04 ID:KbfSVIxh0
『製材所』


ゴリゴリ シュッシュ


剣士「みんな見ててね?樹皮は茹でて柔らかくした後に油を含ませてしごいてなめすんだ」ゴシゴシ

剣士「なめした樹皮をこうやって編んで行けば籠の材料になる」アミアミ

剣士「厚手の質の良い奴は防具の素材に残しておく」

剣士「やわらかい内に形を整えて縫い合わせれば防具の出来上がり…真似してやってごらん」

子供達「すごーい…」

剣士「自由にデザインして良いよ…後で僕が直してあげる」

影武者「あっという間に防具が出来るんだね」

剣士「ちゃんとした装備にするには内側に細工が必要なんだ…それは僕がやる」

影武者「皮の防具という感じかな?」

剣士「うん…工夫次第で上等な防具になるんだよ…軽いから僕は好き」

影武者「樹皮はヘラジカの餌にと思って居たけど…こうして見ると使い道が広い」

剣士「餌にするには勿体ない…加工して余った部分を餌にすれば良いかな」

影武者「籠はいくつあっても良い」

剣士「そうだね…ベットにもなるし宝箱にだってなる…最後は燃料としても使える」

影武者「勉強になったよ」

剣士「それは良かった」


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剣士「次は亜麻の加工だよ」

剣士「亜麻を布にするまで加工するのは難しいからロープと麻袋までにしよう」

剣士「水に漬けて乾燥させた亜麻をしごいて繊維だけ取り出す」

剣士「これを寄ってロープにする…繋ぎ合わせは順に継ぎ足して寄って行く」ヨリヨリ

剣士「繊維だけ編み込んだ物で麻袋になるけどこれは時間が掛かるから暇なときに…」


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影武者「布を作るには織機が必要だね」

剣士「うん…作っても良いけど細工に手間が掛る…布は買った方が早い」

影武者「亜麻を沢山育て過ぎたかな」

剣士「えとね…鍛冶場で大量の鉄鉱石の残りくずが出てると思うんだ…骨粉と亜麻のくずを混ぜて建材に加工できるよ」

影武者「モルタルだね?」

剣士「ちょっと違うけどそんな感じ…レンガみたいな石になる」

影武者「建材で木材の消費が抑えられるか…大工に相談してみるよ」

剣士「木は切り倒すのが勿体ない…切るのは最低限が良いかな」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:26:18.15 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡』


メラメラ パチ


剣士「爺いじ?地図持って来たよ…」パサ

海賊王「待っとったわい…見せてみぃ」

剣士「その地図は海士島が南極になった想定の地図だよ」

海賊王「見慣れんで気持ち悪いなぁ?」

剣士「うん…でもね?この地図もアテにならない…僕が空を飛んだ感覚だともう少し斜め向いてる筈」

海賊王「どのくらいや?」

剣士「う〜ん20°くらいかなぁ…目印になるのは南極星だけなんだ」

海賊王「季節も分からんのやな?」

剣士「うん…しばらく星の観測続けないといけない」

海賊王「ここは山があるで観測もやり難いなぁ?」

剣士「そうだね…今から南極星の角度測定する道具を作ろうと思う」

海賊王「わいは機械仕掛けの良い時計を持っとるで?使うか?」

剣士「おお!!それがあると時間ごとに星の角度測れる…貸して」

海賊王「体感やとだんだん温くなっておる様に感じるが?」

剣士「そうなんだ?」

海賊王「まぁ天気もあるしよー分からんな」

剣士「ねぇ女オークは何処行ったか知らない?」

海賊王「硫黄鉱山行っとる思うわ…よー働く娘や」

剣士「ちょっと心配なんだ」

海賊王「なんでや?体は丈夫そうやで?」

剣士「話はややこしいんだけど…急に死ぬ可能性があるんだ」

海賊王「そらあかんな…おまんの事やからなにか理由があるんやな?」

剣士「うん…」

海賊王「分かったわ…ちっと戻る様に言うてくるわ」ノソリ

剣士「ありがとう」


---違う未来を歩んでいる筈なのに---

---不安が消えない---
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:27:24.94 ID:KbfSVIxh0
『夜_遺跡の外』


カチャカチャ ギリリ


剣士「…一時間に15°か…一日の長さは変わって居なさそうだ」

女オーク「メモしておく?」

剣士「それは良いや…南極星が変わってるのは書いておいて」

女オーク「南極星が変わるというのはどういう意味が?」

剣士「地球の傾きが変わってるという事さ」

女オーク「傾き?理解できない…」

剣士「駒の軸がクルクル動くでしょ?回転の軸が動いちゃってるんだよ」

女オーク「どんな影響があるのか想像出来ない…」

剣士「僕も良く分からない…天候が安定しないのはそのせいかもね」

女オーク「この観測を朝まで続けるつもり?」

剣士「日の出前まで仮眠しようかな…大事なのは日の出と日の入りなんだよ」

女オーク「ここで休むのね…」

剣士「そうだよ…毛皮も用意したし君が居れば暖かい」

女オーク「ウフフ寝泊まり出来る場所があるのに野宿ね」

剣士「石炭は一杯あるし暖は取れる…まぁ馬車で寝泊まりするより快適さ」

女オーク「剣士は先に寝ても良いわ」

剣士「うん…日の出の観測逃さない様にもう寝るよ」


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125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:27:56.26 ID:KbfSVIxh0
『夢』


ヴヴヴヴ ドサリ ピチャ


僕「動いたらダメだよ…方陣の中から出ないで」

君「ガァァァ…」ズルズル

僕「今楽にしてあげるから…もう少し抱っこさせて」グイ

君「ヴヴヴヴ…」ピクピク

僕「君の魂は今何処にあるかな?浄化が済んだら僕に掴まってね…」

君「グルルルル…」ノソ

僕「ダメだって方陣から出たら…」ゴソゴソ


グイ ギュゥゥゥ


僕「なんでかなぁ?涙が出ない…ただ心が寂しい」

君「ヴヴヴヴ…」ズルズル

僕「行くよ?しっかり掴まって…浄化魔法!」シュワーーー

君「アガ…」サラサラサラ

僕「おいで!僕の所へ…」

灰「…」サラサラサラ

僕「…」ポロ

僕「……」ポロポロ

剣士「楽になったかい?君は何処に行ったんだい?」

灰「…」サラサラサラ


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126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:28:47.59 ID:KbfSVIxh0
『早朝』


剣士「ハッ!!…」

女オーク「起きた?もう直ぐ日の出よ?ほら空が暁色に…」

剣士「夢か…嫌な夢だ…」

女オーク「怖い夢でも見たの?」

剣士「何でもないよ…君は痛い所無いね?」スリスリ

女オーク「どうしたの?くすぐったいわ?」ハテ

剣士「ゴメン寝ぼけてるんだ」

女オーク「観測はしなくて良いの?」

剣士「あぁそうだ星座を確認しないと…えーと…へび座と一緒に登るのか」パラパラ

女オーク「何か分かる?」

剣士「南半球だから多分もうすぐ春になる」

女オーク「暖かくなるのね?それは良かった」

剣士「よし!これで大体の緯度が推定できる…」メモメモ

女オーク「月が全然違う方向に沈んでいたわ」

剣士「ええええ!?どっちの方向?」

女オーク「この地図で言うとこっちの方角ね」

剣士「南南西…そうか月の公転まで変わってるのか…道理で迷う訳だ」

女オーク「私も役に立ったみたいね」ニコ

剣士「明日から月の観測もしないといけない…でも何でそんな事が起こる?」


地球は自転をしているからほぼ太陽と同じ様に動く筈…

まてよ月が縦周りに変化していたとして南南西に沈むという事は南南東から登る…

南極星方面に位置した場合ずっと沈まないという事もある訳か


剣士「そうだ夜は月の方角を見て空を飛んだ事もある…だから迷う」

女オーク「はい地図とペン…私は文字が書けないから剣士が書いて」

剣士「あぁありがとう…女オーク!太陽の方角を観測して」

女オーク「うん…」

剣士「機器の使い方は分かるね?」

女オーク「見て居たから大丈夫よ」カチャカチャ ギリギリ
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:30:27.90 ID:KbfSVIxh0
『数日後_会議』


分かった事

南極星は一日3°づつ移動している

地軸の移動が始まったのは多分15〜20日前でもう50°くらい回転した

今の緯度は南半球のこの位置…このまま行くとどんどん暖かくなる

地軸の傾きは今29°で多分駒の様にクルクル動いてる…周期はまだ分かって居ない

月の公転は明らかに変化…どの様に変わったのかは長期間の観測が必要


剣士「これが新しく作った地図…今までと上下が反対になって東西の方向も変わったよ」

魔法使い「信じられない…この間までの冷たい長雨もこれが影響して?」

剣士「それしか考えられないよ…南極点が近くを通ったんだと思う」

僧侶「オークの領地のずっと南が未踏の地だったですが…」

剣士「そこにあった極点が今はキ・カイ付近な筈」

魔法使い「これから予測される影響とかは無いの?」

剣士「う〜ん僕の知識じゃあんまり確かな事言えないんだけど…内海は全く航海出来なくなる」

影武者「キ・カイは商船での貿易で成り立ってるんだけど…」

剣士「完全ストップだね…でも近海での漁業はまだ残るかもしれない」

僧侶「いつまでその地軸の移動が続くですか?」

剣士「これも確かな話じゃないけど4000年前にあった地軸の移動は90°回転して止まったらしいよ」

海賊王「わいは船でドワーフの国へ帰らにゃあかんのやが…」

剣士「遠回りになるけどこの大陸沿いに航海すればなんとか行けると思うな」

海賊王「次来るときは外海側のオーク領から来た方が良さそうやな」

剣士「うん…外海の海図を作って行くしか無いね」

海賊王「ハテノ村の開拓が半ばで悪いが気球が戻って来たでわいは一旦戻るわ…豪族と争っとる場合やないわ」


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128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:31:22.85 ID:KbfSVIxh0
剣士「爺いじ!僕が直した地図持って行く?」

海賊王「済まんな?この地図に海流と風向き加えてまた持ってくるわ」

剣士「うん…気を付けて」

海賊王「兵隊と鉱夫は残して行くけぇ仲良うやってくれや」

剣士「爺いじはこれからどうするの?」

海賊王「そら王様の仕事や…領地を守らなアカンでな…影響を見ていろいろやるやろ」

剣士「…という事はハテノ村も守るんだね?」

海賊王「当たり前や…直ぐに連絡の気球が来るで待っとれ」

剣士「良かった」

海賊王「そやそや…わいがやろうと思っとったんやが川沿いに道を整備したかったんや」

剣士「何か作るつもりだった?」

海賊王「川を下る船で物資の移送や…気球より大量に運べるでな」

剣士「なるほどね…下流に村を構えるんだね?」

海賊王「まぁ待っとり?直にようさん人を送るで…わいも折角見つけた硫黄鉱山を手放したく無いんよ」

剣士「ハハそうだよね大砲が無いと海で戦えないからね」

海賊王「ほな急いどるで行くわ…女オークと仲良うやれや」ノシ



…こうしてハテノ村の開拓は順調に進みだした


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129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:33:17.53 ID:KbfSVIxh0
『古都キ・カイ_酒場』


ガヤガヤ ガヤガヤ

外は死ぬほど寒みぃ…あぁぁきついウォッカくれ!!

流氷が邪魔で商船が出れないのさ…まぁしばらくここで飲んだくれだよ

お酒が高騰してて少しお高いですがよろしいですか?

ガハハハ酒なら俺の船に大量に積んでるんだ


盗賊「よう!遅くなった…金は用意してあるか?」

ローグ「盗賊さん…こんな目立つ所で待ち合わせは無いっすよ…」

盗賊「フード被ってるなんざお前らしく無ぇじゃ無ぇか」

ローグ「あっしはちっと豪族に顔が知れてるもんで動きにくいんすよ」

盗賊「そうか悪りぃ悪りぃ…ほんで金は準備出来たな?」

ローグ「耳を揃えてここに…」ドスン ジャラ

盗賊「ほぉぉ…手ぶらだと思ってたがちゃんと用意出来たな」

ローグ「あっしが持ってた魔石がえらく高く売れたんでやんす」

盗賊「まぁ俺の方も貴重な木材を身内に売れて良かったわ…んで?何に使うのよ?」

ローグ「盗賊さんと同じ大型の貨物用気球が値落ちしてたんで買ったでやんす」

盗賊「そら良い!帆を張って俺と同じにするってんだな?」

ローグ「そーっすね…あっしだけキ・カイに留守番はイヤなんすよ」

盗賊「はは〜ん…ハテノ村の往復便をやろうって訳か…よっし!俺が手伝ってやる」

ローグ「そう言って貰えると嬉しいっす」

盗賊「丁度布の買取もやってて帆を張る分くらい工面出来るぞ?」

ローグ「明日あっしの気球まで案内しやす」

盗賊「ところで話が有るって言ってたな?気球の件だったか?」

ローグ「いやいやちっと盗賊さんの耳に入れておきたい話が有ったんすよ…ここじゃ何なんで個室行きやしょうか」

盗賊「おう…人に聞かれたく無い話しな訳か」

ローグ「一番奥の右手の部屋っす…酒も持って行くんで先に行ってて下せぇ」
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:35:02.63 ID:KbfSVIxh0
『酒場_個室』


ガチャリ バタン


ローグ「瓶ごとに成っちまいやすがキ・カイじゃ珍しいワインっす」

盗賊「おぉぉ済まんな…」キュポン グビ

ローグ「ほんで聞いて欲しい話なんすが…セントラル貴族の公爵という人物を知って居やすか?」

盗賊「会った事は無ぇが何度か俺にコンタクト取って来たな?」

ローグ「先に結論を言っちまいやすが…多分黒の同胞の生き残りなんすよ」

盗賊「なぬ!?10年前に全滅して居なかったのか…」

ローグ「あっしは豪族の立場を利用して色々調べたんすが…どうも20年前のセントラル第3皇子の戦死から関わって居る重要人物っす」

盗賊「20年前っちゃぁ100日の闇事件か…」

ローグ「そもそも20年前の魔王復活はセントラル第3皇子の戦死から始まって居やす」


当時の黒の同胞達の狙いは復活した魔王を魔石に封じ

ドリアードの中にあるアダムを復活させる事でやんした

その実現に10年近く掛かっているんすが結果的に成功してる訳でやんす

一見それで平和になった様に見えやすが

その実子供が生まれない事や黒死病の蔓延で人口がどんどん減っている訳なんす

これに気付いた未来君がこの間アダムを破壊した…大きな流れはこんな感じっす


盗賊「俺の認識もまぁ大体そんな感じで有ってるんだが…公爵がどう関わってるんだ?」


公爵はですね…表の舞台にはほとんど関わらないんすが

兎に角仕込みが上手いというか裏で手を引いて上手く物事を誘導するんすよ

昔からセントラル貴族では穏健派の時の王派閥と強硬派のその他貴族で分かれていたんすが

公爵は穏健派で常に時の王の陰に隠れた存在だったんす

上手く時の王を誘導してこの20年の動乱を導いてる…それがたぶん公爵なんす


盗賊「狙いが良く分からんのだが…」


あっしが公爵に疑いを持ったのは

時の王の屋敷を公爵が美術館にして一般公開するようにした事っす…

時の王の遺産の肝心な遺物は全部公爵が接収してるんすよ

その事実を隠蔽する為に美術館として一般公開した


盗賊「ほう?お前は時の王の遺産に何があったのか知って居るのか?」
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:35:46.12 ID:KbfSVIxh0
ローグ「全部は知らんのですがシャ・バクダ遺跡で発掘された冒険の書…これと同じものを公爵が持ってるのを見たでやんす」

盗賊「冒険の書?未来が読んだという奴だな?」

ローグ「そーっす…あっしが思うに未来の出来事を知って居るのは未来君だけでは無いと言う事なんす」

盗賊「なるほど…お前の言いたい事は分かった…本当の黒幕は公爵だと言いたい訳か」

ローグ「断言は出来やせん…ただ未来君の予言はすべて当たっていたんす」

盗賊「う〜む…しかしどう考えても公爵の狙いがよーわからんな」

ローグ「アヘン酒が大量に出回っていやすよね?」

盗賊「あぁ俺は飲まんがな」

ローグ「製造元の元締めは公爵っす…それから出回っている魔石の出所」

盗賊「そらスプリガンじゃ無ぇのか?」

ローグ「なんでスプリガンに魔石が入っているんでしょうね?」

盗賊「なんでって…まてよ?なんでだ?魔石のエネルギーは誰がどうやって入れてんだ?」

ローグ「ここからは憶測なんすが魔王が封じられた魔石…そこから取り出して居やせんかね?」

盗賊「つまり魔石の出所も公爵って訳か?」

ローグ「そうなんす…魔石のレートを決めるのも公爵が関与してるんすよ」

盗賊「な〜るほど…ほんで俺に盗んで欲しい訳か」

ローグ「未来君がアダムを破壊したのは良いんすが…魔王を封じた魔石が何処に行ったか分からんのです」

盗賊「こりゃまたデカイ仕事だ…ちっと考える」

ローグ「へい…未来君の頑張りの裏に今言ったようなキナ臭い事案が起きてるんす」

盗賊「しかし今の状況じゃセントラルに行くのも難しいな…」

ローグ「そうでやんすね…昼とも夜ともわからん日が続いていやすからねぇ…」


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132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:36:40.41 ID:KbfSVIxh0
『翌日_港の倉庫』


ギコギコ トンテンカン


盗賊「おい!クソガキ…反対側持て!」

少年「いい加減名前で呼べよ」

盗賊「クソガキはクソガキだ!…おぉそこを押さえてろ!!」トンテンカン

ローグ「盗賊さんロープを持って来やしたぜ?」

盗賊「ローグは回転帆のロープ繋ぎ分かるな?俺はプロペラの改造やっからロープ張りは任せる」

ローグ「さすが盗賊さん…気球の改造はお手の物っすね」

盗賊「まぁ船に長い事乗ってりゃ帆の修理なんざ何回もやるからな」トンテンカン

少年「俺どうしよう?」

盗賊「ロープの結び方でも勉強しとけ…てかお前もヤレ」

ローグ「盗賊さんの新しい助手っすか?あっしが結び目作るんで見て居て下せぇ…」ヒョイヒョイ クルリ

少年「分かんねぇよ!!」

盗賊「おいローグ!そいつは頭じゃ理解出来無ぇから体で覚えさせろ…ぶっ叩いても構わん」

ローグ「いやいやいや…あっしはやさしくですね…」ヒョイヒョイ クルリ

少年「だから早すぎて見え無ぇって!!」

ローグ「えーとですね…」スラーン

少年「な…なんで短剣抜くんだよ」

ローグ「癖なんす…黙って言う事効かせる為の癖なんすよ…見てて下せぇよ?」ヒョイヒョイ クルリ

盗賊「おいクソガキ…そいつはローグって言ってな?短剣使いじゃ恐らく世界一だ」

少年「え!?もしかして海賊王の娘の右腕って…」

ローグ「恥ずかしい事言わんで下せぇ」

盗賊「分かったらロープ張りを文句言わんでヤレ!」


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133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:37:56.90 ID:KbfSVIxh0
トンテンカン ギコギコ


盗賊「…そうかアサシンがそんな事を言って居たか」

ローグ「アサシンさんは失った物が多すぎでしたねぇ…生きる理由がもう無いんでやんすよ」

盗賊「まぁ死に場所を探すと言ってもな…」

ローグ「あっしはアサシンさんの孤独がなんとなく理解出来やす…もう俗世に関わりたく無いのも分かりやすねぇ…」

盗賊「う〜む…魔王を滅してもアダムを破壊してもな〜んも変わりゃし無ぇしなぁ…又公爵みたいな奴が出て来る始末…」

ローグ「あっしらは只勇者2人失って…家族も友人もどんどん居なくなる…寂しいっすねぇ」

盗賊「なんつーかこういう絶望みたいな感覚こそ魔王の支配じゃ無ぇか?」

ローグ「ソレ!それなんすよ…あっしが思うに公爵が誘導しているのはそういう感じだと思いやす」

盗賊「やっぱ女海賊みたいな底抜けな光が欲しいな」

ローグ「姉さんはカリスマでやんした…未来君にはちっと足りない部分なんすが…」

盗賊「いや…資質はある…手段が正統派の勇者では無いだけだ」

ローグ「虫っすね?」

盗賊「光る虫なんかどうよ?」

ローグ「蛍っすか…盗賊さんもおかしな事を…ん?蛍を操る勇者…なんかロマンを感じやす」

盗賊「ぬはは馬鹿な事言って無ぇで…サッサと作業終わらせるぞ」


---でもまぁ悪く無ぇ…なんつかー少し希望が湧く…不思議なもんだ---

---闇を照らす光…虫でも構わ無ぇ---



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134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:39:15.11 ID:KbfSVIxh0
ギリリ ギュゥ ギュギュッ


ローグ「ふぃぃぃ…これで終わりっす」

少年「港にキ・カイの軍船が入って来てる」

盗賊「なぬ!?この霧の中キ・カイの軍船は航海出来んのか…」

ローグ「盗賊さん知りやせんでしたか?キ・カイの軍船は音の反射で障害物が分かるらしいっすよ?」

盗賊「ほぉぉぉそら知らなんだ…羅針盤要らずなのか?」

ローグ「聞いた話なんすが海底の地形を見ながら航海するらしいんす」

盗賊「欲しくなるじゃ無ぇか…盗めるなら盗って来るが…」

ローグ「大きな機械を丸ごと盗む感じになりそうでやんす」

盗賊「なんだデカいのはダメだな…しかし商船の代わりにあのデカイ船が荷を運ぶってのは有りだ」

ローグ「キ・カイの軍船なら流氷に当たってもどうってこと無いっすね」

盗賊「うむ…ただアレを奪った所で盗んだのがバレバレだな」

ローグ「帆が無いんで動かし方も分からんでやんすよ」

盗賊「まぁ奪うってのは冗談だ…軍船から荷が出てきたらちっと物資も潤うな…俺ぁ何が出て来るか見て来る」

ローグ「あっしも行きやすぜ?」

盗賊「おいクソガキ!商人ギルドに戻って軍船が入って来た事伝えて来い」

少年「受付のおばちゃんに言えば良いのか?」

盗賊「ぬはは…おばちゃん…まぁそうだ」

少年「分かった…」

盗賊「寒いからお前は商人ギルドで温まってろ…ローグ!行くぞ」ダダ

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:41:31.74 ID:KbfSVIxh0
『軍港_立ち入り禁止』


衛兵「…これより先は立ち入り禁止!帰った帰った!!」

盗賊「堅い事言うなよ…商船入って来無ぇから期待してんだよ」

衛兵「ここから見るだけにするのだ」

盗賊「しゃぁ無ぇな…ローグ!何か見えるか?」

ローグ「大きな荷をいくつも降ろして居やすね…多分専用の荷下ろし場から直接地下に運んでる様でやんす」

盗賊「外の街には入って来無ぇか…ちぃ」

衛兵「…」ジロリ

盗賊「ハハ皆物資に期待してる訳よ…ここん所魚しか食って無いからよ」

ローグ「地下行った方が良さそうっすね…ここからじゃ箱しか見えんでやんすよ」

盗賊「地下の荷下ろし場って何処だ?」

ローグ「さぁ?レールが有るのはチカテツ街道なんでその何処かじゃないすかね?」

盗賊「まぁ良い…クソガキが詳しいだろうから案内させる」

ローグ「地下の方が暖かいんでそっち行きやしょう」


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『チカテツ街道8番』


ここの奥から廃線に繋がる抜け道があるんだ…

廃線は昔オークの奴隷を奴隷船に積むのに使われて居た場所

ギャングの姉御はそこから逃げて来たんだ

それで廃線の少し先に軍用の施設がある…そこはキラーマシンが沢山居て危ない


盗賊「なるほど…その軍用の施設に荷物が降ろされてる訳だな?」

少年「多分…」

ローグ「軍の施設に忍び込むのはちっとリスクありやすぜ?」

盗賊「まぁ俺らにはハイディングがある」

ローグ「少年を置いて行くでやんすか?」

盗賊「これは勉強だ…俺が背負ってやる…荷が何なのか見て戻る」

ローグ「それだけならなんとかなりやすね」

盗賊「おいクソガキ…お前何があっても絶対しゃべるな…出来るな?」

少年「当たり前だ…」

盗賊「ようし!背に乗れ…走る事もあるから振り落とされんなよ?」

少年「…」コクリ

盗賊「じゃぁローグ…いつもの感じで行くぜ?」

ローグ「あいさー」

盗賊「ハイディング!」スゥ

ローグ「ハイディング!」スゥ

盗賊「迷って無ぇな?行くぞ…」タッタッタ


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136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:42:22.59 ID:KbfSVIxh0
『軍の倉庫』


盗賊「リリース!」スゥ

ローグ「リリース!」スゥ

盗賊「こりゃまたデカイ倉庫だな…」

ローグ「後ろにキラーマシン歩いてるんで気を付けて下せぇ」ヒソ

少年「…」ユビサシ

盗賊「アレか…もうちっと寄る」ヌキアシ サシアシ

ローグ「何っすかね?」ソローリ


-------------


盗賊「ほとんどが食料の様だな?」

ローグ「肉と野菜…多分フィン・イッシュから帰って来た感じでやんす」

盗賊「しーーっ…何か話してる…」

ローグ「…」


食料は順次市場に流せ

銀と鉄鋼は一旦備蓄…黄銅は直ぐに工場へ運ぶんだ


高官「魔石は入荷して居ないのか?」

将校「予定の半分以下ですが一応入荷しています」

高官「ふ〜む…やはり出し渋って来たか」

将校「はい…恐らく遺跡探掘の権利が狙いと思われます」

高官「古代兵器出土の情報がリークしたのは間違い無いな」

将校「朗報もあります…この異常気象で航海出来るのは我々の軍船だけ…もう豪族は敵ではありません」

高官「ふむ…兵はこの異常気象をどう思って居そうだ?」

将校「賢い者は地軸の異変に感づいて居ます…そろそろ発表した方が混乱しないかと」

高官「うむ…しかし予言がこうもピタリと的中するとは…」

将校「魔石は引き続き向こうの言い値で取引を続けてよろしいのですか?」

高官「相手の出方を探りたいのもある…まずは言い値で進めるのだ」

将校「ハッ…豪族に資金が回って行くのはなんとも…」

高官「航海出来るのは我々だけなのだろう?取引のカードはこちらにある」

将校「荷物を降ろし次第出港の準備に取り掛かります…失礼」


盗賊「戻るぞ…」ヒソ

ローグ「へい…」ソローリ


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137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:43:26.70 ID:KbfSVIxh0
『チカテツ街道8番』


盗賊「リリース!」スゥ

ローグ「リリース!」スゥ

少年「ぷはぁ…」

盗賊「…とまぁ隠密ってのはこんな感じだ…勉強になっただろう?」

少年「俺も出来るようになるかな?」

盗賊「そのうちな?」

ローグ「盗賊さん…さっきの聞いた話…」

盗賊「うむ…どうやら国のトップ共は地軸の移動を前もって知って居た様だ」

ローグ「やっぱり公爵が暗躍していそうっすね」

盗賊「この異常気象をきっかけに裏の取り合いやってんだろうな…民を後回しにして迷惑な話だ」

ローグ「察するにキ・カイにも密偵が潜り込んで居るみたいっすね?」

盗賊「まぁ俺達にゃぁ関係無い…しかし相手の出方を見たいというのはちと引っかかるな」

ローグ「古代兵器って何なんすかね?もしかして10年前の光る隕石かも知れやせんね…」

盗賊「…俺は見た事あるぜ?商人と一緒に遺跡探掘に行った事あんだよ…だが動かし方が分からん」

ローグ「な〜んかしっくり来ないっす…公爵が欲しがるように思えないんすよね」

盗賊「どういう事よ?」

ローグ「公爵は利益とか興味無いんすよ…扇動するだけなんでやんす」

盗賊「という事はキ・カイに使わせるという事か?」

ローグ「そっちの方がしっくり来るでやんす…ちっとまだ情報が足りないっすね」


138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:44:43.25 ID:KbfSVIxh0
『中央ホーム』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「おいクソガキ!適当に玩具買って土産に持って帰るぞ」

少年「マジ!?」

盗賊「ここは安いからな…袋一杯に詰めて持って帰る」

ローグ「盗賊さんはいつハテノ村に戻るんすか?」

盗賊「明日だ…移民との約束があんだ」

ローグ「あっしも一緒に行きやす…ハテノ村まで案内して下せぇ」

盗賊「それなら荷を目一杯積んでけ」

ローグ「何を積んで行けば良いっすかね?」

盗賊「粗方物資は調達したんだが…そうだ魚が安い筈だ…あっちにゃ魚が無ぇ」

ローグ「分かりやした…後アダマンタイト余って居やせんか?」

盗賊「おぉそうだな…確か商人の隠し部屋に色んなサイズが保管していたな…そうそう俺が拾った武器も余ってる」

ローグ「全部積んで行きやす」

少年「チカテツ街道にまだはぐれのギャングが数人残ってる…連れて行って良いか?」

盗賊「おぉ仲間は多い方が良い…直ぐにローグの気球に乗せて待たせろ」

少年「玩具と一緒に明日の朝までに気球に戻る…それで良いか?」

盗賊「遅れんな?…ほらよ!金だ」チャリーン ポイ

少年「必ず戻る」パス スタタ

ローグ「いやぁぁ中々見所のある少年っすね?」

盗賊「だろ?あれで仲間思いなのが良い…なんつーか昔の俺みたいだ」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:45:52.10 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド』


ザワザワ ガヤガヤ

取引所の一時移転のお知らせ

デパチカ居住区の支店へ一時的に取引所を移転します

露店を出店する際は中央ホームに専用区画を設けてあります


盗賊「やっぱ寒みぃから通常営業は厳しいか?」

受付「地下の方が取引活発なんだよ…遅れると客逃がす」

盗賊「この建屋はどうすんだ?俺は荷物置きっぱなしなんだが…」

受付「しばらく施錠しとく…入るんなら自分で鍵開けて」

盗賊「他の娘と子供達はもう地下行ってんのか?」

受付「もう支店の方で取引開始してんだよ…あたしも行くから早く出てって」

盗賊「俺の荷物出すからちっと待てや」

受付「待てない…あと勝手にやって」ガチャリ

盗賊「ぬあぁなんだアイツ…ちぃ俺一人か」

盗賊「しかし…誰も居無ぇとココも寂しいもんだ」

盗賊「まぁしょうが無ぇか…石炭で暖を取るのも金捨ててる様なもんだしな」


ガチャリ ギー



『隠し部屋』


ゴソゴソ ガチャガチャ


盗賊「錆びを落としゃまぁ一端の武器になる…しかしボルトが重い」ヨッコラ ヨッコラ

盗賊「クロスボウはなんだかんだで使うから全部持って行こう」

盗賊「おぉぉそうそうアダマンタイト忘れる所だっだ…ええと」ゴソゴソ

盗賊「あったあった…しかし商人もガラクタばかりよく集める」

盗賊「んん?何だこりゃ…指示書」ヨミヨミ

盗賊「こりゃ公爵からの指示書じゃ無ぇか…なんでアイツが…」

盗賊「なるほど先物取引の密約か…条件に古文書」

盗賊「公爵が古文書を餌に商人と密約交わしてんのか…なるほど分かってきたぜ」

盗賊「公爵は商人と同じ様な立ち回りすんだな…あいつも表にゃ出無ぇ」

盗賊「つまり影武者が沢山居る訳だ…用心し無ぇとな」

盗賊「古文書らしき書物が見当たらんという事は…あいつ持ち歩いてんのか?」

盗賊「どうやら公爵とやり合うなら商人が肝になりそうだ」

盗賊「くそうタイミングが悪りぃ…まぁ一旦様子見か」
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:47:06.22 ID:KbfSVIxh0
『貨物用気球_改』


ガタゴト ガタゴト


盗賊「武器持って来たぜ?乗せとくぞ」ドスン

ローグ「炉に火が入って居やす…ちっと温まって行って下せぇ」

盗賊「おう!!死ぬほど寒いな」ガチガチ

ローグ「あっしは早速クロスボウセットして来やす」ガチャ ガチャ

盗賊「んん?どうしたのよ?」

ローグ「どうやらあっしは見張られてるみたいでやんす」

盗賊「やられる前にヤレ」

ローグ「もう懲らしめてやったんで近付いては来ないでやんすよ」

盗賊「誰だったんだ?」

ローグ「豪族の密偵っすね」

盗賊「まぁデカイ気球使って何処に行くのか気になるんだろうな?」

ローグ「商人ギルドの方は明かりが消えているみたいでやんすが?」

盗賊「デパチカ居住区にしばらく移転だとよ…もう商人ギルドの建屋には誰も居無ぇぞ」

ローグ「寒すぎっすもんね…豪族に襲われないのもこの寒さのお陰かも知れやせん」

盗賊「ぬはは違い無ぇ…こっちはヌクヌククロスボウで応戦すりゃ手も足も出んわ」

ローグ「この昼か夜か分からない天候は何なんすかねぇ」

盗賊「もうちっとの辛抱だ…ハテノ村は温泉が合ってな…酒場もあって天国よ」

ローグ「そら楽しみっすわ…そうそうフィン・イッシュ産の芋酒を樽で仕入れときやした…飲みやすか?」

盗賊「一杯だけな…飲むと寝過ごしちまうから」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:48:07.79 ID:KbfSVIxh0
『翌朝?』


タッタッタ


盗賊「ローグ!クソガキ共は気球に乗ったか?」

ローグ「寝てるでやんすよ」

盗賊「クソガキ!!お前何やってんだ」ドガ

少年「うぐぅ…」

盗賊「お前が気球操作すんだろ!寝てんじゃ無ぇ!!」グイ

少年「マジか…」ヨロ

盗賊「ほんでローグ…簡単な地図書いてきた…飛んだら直ぐに狭間に入って移動しろ」

ローグ「案内してくれるんじゃ無かったんすか?」

盗賊「途中で合流だ…羅針盤は使え無ぇからその地図通りの目標目指せ」

ローグ「火山目指すんすね?…えーと初めに見えた川沿いに…」

盗賊「そうだ…川沿いに上流目指すと大きな湖がある…その真ん中で合流だ」

ローグ「分かりやした」

盗賊「他の小さい気球も火入れが始まってる…追いかけてくんぞ?」

ローグ「マジっすか…」

盗賊「ガキ共起こしてクロスボウでも撃たせろ…兎に角上手く撒け…じゃ行くぞ!」ダダ

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:49:35.17 ID:KbfSVIxh0
『貨物用気球』


フワフワ パタパタ


盗賊「本当遅せぇなこの気球は…おいクソガキ!縦帆を3番目に結び変えて風を横に受けろ」

少年「3番…3番…」ドタバタ

移民達「だ…大丈夫でしょうか?」

盗賊「あぁ心配すんな…お前等は暖かい所で食事でもしていて良いぞ」

少年「縦帆で風受けたぁ!!」

盗賊「よしよし…このまま斜め方向で良い…俺はデッキに出る!クソガキは後方のクロスボウ用意しとけ」ダダ

少年「分かった…」ドタドタ

盗賊「やっぱ小さいの追って来てる…この距離じゃクロスボウ当てるの無理だな」

少年「どうする?」

盗賊「上昇!!炉に石炭突っ込んでふいご踏め!!撃ち下ろしにする」

少年「…」ガッサ ガッサ


フワフワ フワフワ


盗賊「そのまま上昇続けろ…クソガキ!見てろよ?ドラゴンでもぶっ殺せる俺の武器だ」

少年「え…」

盗賊「行くぞ…」ガチャリ


バーン! ジャラジャラ


盗賊「ぬははは…こりゃ良い!ちっと銅貨が勿体無いがクロスボウ12発撃ったのと同等だ」カチャカチャ

少年「当たった?」

盗賊「分からん…だが何回でも撃てるぞ?」ガチャリ


バーン! ジャラジャラ


少年「当たってるかどうか分からない…」

盗賊「気球はな?何か撃って来られると離れるしか無い訳よ…球皮傷んだら無事じゃ済まないからな?」ガチャリ


バーン! ジャラジャラ


少年「本当だ…追って来なくなった」

盗賊「ようし!距離が開いたら狭間に入る…」

少年「すげぇ…たった3発撃って追っ手を退けた…」

盗賊「36発だ…クロスボウのボルトが36発降って来て近づこうなぞとは思わん…さて狭間に入る!ハイディング!」スゥ


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143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:50:32.54 ID:KbfSVIxh0
『湖の上空』


フワフワ パタパタ


盗賊「やっぱ向こうの気球の方が帆がデカい分早いな…」

少年「ローグが手を振ってる」

盗賊「ロープで連結させて引っ張らせる…ローグ!!ロープ受け取れぇぇぇ!!」グルグル ビュン


ローグ「あららららら‥‥あっぶ!!」パス

盗賊「そっちの気球の方が早いから引っ張ってくれぇ」

ローグ「あいさー」グイグイ ギュゥゥ

盗賊「向こうの山間を尾根沿いの飛べ!!」

ローグ「へ〜い!!」ダダ

盗賊「クソガキ!気球の操作は分かるな?高度だけ向こうの気球に合わせろ」

少年「あぁ…縦帆は?」

盗賊「工夫してヤレ…あんまり足引っ張んない様にな?」

少年「盗賊はどうする?」

盗賊「俺はロープ伝って向こうで酒飲んでくる…まぁこっちは任せた」

少年「えええええ!?マジか…」

盗賊「まぁすぐ戻って来るから心配すんな…上手くヤレ」ダダ
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:03:12.81 ID:KbfSVIxh0
『貨物用気球_改』


フワフワ バサバサ


盗賊「…なるほどプロペラは使って無いか」

ローグ「低速の時だけっすね…姉さんの飛空艇より遅いっすが操舵が同じなんで慣れて居やす」

盗賊「俺もハテノ村付いたら改造するわ」

ローグ「風の具合によるんで確実に進むならプロペラも捨てたもんじゃ無いかと」

盗賊「欠点は帆の結び替えでいちいちデッキに出なきゃならん事か」

ローグ「そーっすね…死ぬほど寒いっす…もたもたしてると手が凍傷に掛かっちやいやす」

盗賊「俺は酒を飲みに来たんだがよ?」

ローグ「飲んで行って下せぇ…子供達が騒いでいやすが…」


カーン カーン キーン


盗賊「ごるぁぁ!!武器はおもちゃじゃ無ぇぞ!!当たったらお前等死ぬぞ」

子供達「ひぇぇぇぇ…」ドタドタ

盗賊「なんだこの食いカスは!!」

ローグ「あぁぁそれ魚が凍ってて焼けなかったんすよ…ちっと子供達に料理は無理でやんした」

盗賊「お前等見てろ!魚が凍ってたらマズぶった切れ!」スパスパ

子供達「…」ポカーン

盗賊「ほんでナイフにぶっ刺す!焼く!食う!」ジュゥゥゥ

子供達「…」ジュルリ

盗賊「酒だ酒!!酒持って来い」

子供達「…」ソローリ

盗賊「出来るじゃ無ぇか…」グビ プハァ

子供達「魚…欲しい」

盗賊「おぉ食え食え…俺ぁ魚がキライなんだ」

ローグ「済まんでやんす…食い物が魚しか無いもんすから」

子供達「うんま!!うんま!!」モグモグ

盗賊「もうちっと我慢しろ?ハテノ村に着いたら美味いもの沢山あるぞ?」

子供達「美味いものって何?それ食べられる?」モグモグ


---なるほど…ゴミしか食った事無い訳か---

---こりゃ鍛え甲斐がありそうだ---



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145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:04:49.60 ID:KbfSVIxh0
フワフワ バサバサ


ローグ「太陽がずーっと低い位置にあるでやんす」

盗賊「そろそろ日没の筈なんだがな…やっぱ南極付近な訳か」

ローグ「月が全然違う所にあるのは奇妙っすね」

盗賊「何が起きてるのかさっぱりだな?まぁ…まだ生きてる訳だからどうにかなるかヌハハ」グビグビ

ローグ「後ろの気球は少年に任せておいて良いんすか?」

盗賊「あっちは大人が6人乗ってんだ…大丈夫だろ?」

ローグ「見た所2家族で合計11人…少年入れて12人…どんな移民なんすか?」

盗賊「片方は鉱夫でもう片方は元傭兵なんだとよ」

ローグ「商船が動かないもんだから傭兵が稼ぎ無くなった感じなんすね?」

盗賊「まぁそういうこった…そもそも傭兵だけじゃ家族は養えんけどな」

ローグ「なーんかそういう移民が増えそうっすね?」

盗賊「うむ…だがハテノ村も沢山家がある訳じゃ無いんだ…俺らはこの気球に寝泊まりする事になる」

ローグ「あっしはこの気球が気に入りやした…荷物も載せて人も12人乗れるんすからね」

盗賊「もうちっと温い所だとデッキで酒飲むのも良さそうだ…まぁちょっとした船みたいなもんだな」

ローグ「そういやあっしは船を一杯持ってるんすよね…奴隷船なんすが」

盗賊「そら羨ましい…何処に停船してんだ?」

ローグ「今頃フィン・イッシュに4隻…港町に4隻…あとは何処にいるか分からんす」

盗賊「奴隷商を雇ってんだな?」

ローグ「そーっすね…船を貸して奴隷を移送してるんすよ」

盗賊「また奴隷商売とはゲスい事やってんだな?」

ローグ「いやいやいや…地軸の移動を想定して強制退避させてるんすよ…慈善事業ですわ」

盗賊「ほーん…それで略奪品は豪族に回る訳か」

ローグ「そこはしょうがないっす…でも貧しい村よりも資源の豊富な街で暮らした方が生きるのがずっとラクな筈なんす」

盗賊「まぁ南極になっちまうなら仕方無ぇという見方もあるけどな」

ローグ「あっしも強制退去させるのはちっと心苦しい所もあるんすが心を鬼にして…」

146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:05:36.13 ID:KbfSVIxh0
『数日後』


フワフワ バサバサ


ローグ「ここらは低木ばかりで目印はなーんもありゃしやせんね」

盗賊「もうちょい行ったら尾根の谷間に沢山木が生えてる…そこがハテノ村よ」

ローグ「あ!!あそこの煙上がってる所っすね?」

盗賊「うむ…毎回来るたびに木が増えてるんだが今回は花も増えて居そうだ」

ローグ「ずっと雪ばっかりだったんで花なんか珍しいっすわ」

盗賊「しかし大分温くなった」

ローグ「高度下げたら丁度良い暖かさかも知れやせん」

盗賊「そろそろ炉を止めるか…俺は後ろの気球にもどるから上手い事誘導してくれ」

ローグ「へい!!」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:07:39.34 ID:KbfSVIxh0
『ハテノ村』


フワフワ ドッスン


盗賊「こりゃえらく歓迎じゃねぇか…子供達全員か?」

魔法使い「気球は遊び場だから…」

盗賊「おい!クソガキ!!例の玩具を配ってやれ」

少年「あぁ分かってる…みんなこっちだ」


ウキャァァァァ ドタドタ


影武者「物資の移送お疲れ様…売れ行きはどうだったかな?」

盗賊「…見ろ!調達が終わってもこんだけ余ってる」ドスン ジャラリ

影武者「相場が知りたいな」

盗賊「硫黄がクソ高く売れる…木材は高いっちゃ高いが運搬効率が悪いからヤメだ…石炭は安定で高値」

影武者「ハテノ酒は?」

盗賊「なんだそっちのが気になるんか?樽4つで金貨5枚…まぁまぁだろ?」

影武者「評判は?」

盗賊「速攻売り切れたらしい…でも硫黄に比べりゃ運搬効率は悪い」

影武者「まぁお酒だとそうだね…硫黄がいつまで高値が付くか分からないから安定収入を考えたいのさ」

盗賊「魔法使いが作ったポーションの方が稼げるぞ?金持ちが速攻買って行きやがった」

魔法使い「大量に作れないのよ」

盗賊「そうか…酒の方が簡単か…ほんで買取もバッチリ全部積んで来たぜ?」

影武者「確認する…あれ?武器と魚も?」ガチャ ガチャ

盗賊「ローグも同じ気球を買ったんだ…空で戻って来るのも勿体ないから適当に物資積んで来た」

影武者「気球がもう一台増えるのは大きいな…武器も丁度欲しかった」

魔法使い「2キロほど川を下った湖まで村を拡張しようとしているの…資材を運搬したかった所」

盗賊「ここじゃ家を建築するスペースが足りんか」

魔法使い「それもあるけど海賊王のお爺さんは船を使った物流をやりたいみたい」

盗賊「なるほど…村の発展には丁度良い訳か」

魔法使い「建屋が増えれば移民ももう少し受け入れられるし…」

盗賊「2家族連れて来たぜ?鉱夫と傭兵だ…住む場所へ案内してくれ」

魔法使い「分かったわ…皆さん荷物を持って付いて来て下さい…空き家の方へご案内します」


ゾロゾロ

うわぁぁなんか良さそうな村ね

思っていたよりちゃんとしてそうだ

見て!お店で食事してる

コラコラ指を指しちゃイカン
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:09:39.72 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


盗賊「ここがハテノ村自慢の酒場だ…俺の家みたいなもんだ」

ローグ「ほえぇぇ?ちゃんと作ってありやすね…」

女将「いらっしゃいませでし!!いやいや…おかえりなさいでし!!」

盗賊「例の酒振舞ってやってくれぃ」

女将「はいなー」スタタ

盗賊「しかし随分雑貨が増えたな?」

影武者「剣士さんが作ってくれているんだ」

盗賊「なぬ!?剣士がこの村に戻ってんのか…俺ぁてっきり幽霊船探しに行ったと思ってたわ」

ローグ「じゃぁ商人さんも戻って来たんすね?」

影武者「商人は戻って居ないよ」

盗賊「剣士は何処よ?さっきは見かけなかったぞ?」

影武者「上の遺跡に籠りっ放しさ…なんでも星の観測をやっているそうだよ」

盗賊「航海術の基本だ…地軸の移動を計算してるんだな」

女将「ハテノ酒とつまみの虫焼きどうぞー!!」ドン

盗賊「なんだこりゃ…バッタを焼いてんのか?」

影武者「ハハ中々美味しいんだよ…醸造で余った酒粕にバッタを漬け込んで焼くんだ」

女将「食料の節約でし…そのバッタは作物食べるので逮捕したです」

ローグ「あ!!本当っすね香ばしくて美味いっすよコレ」バリバリ

盗賊「こりゃ食料に困る事は無さそうだ」グビ プハァ

影武者「どう?ハテノ酒美味しくなって居ないかい?」

盗賊「アルコールが増えていっぱしの酒になったじゃ無ぇか」グビ

影武者「少し寝かせてから醸造するんだよ…このお酒のお陰ですごく儲かってる」

盗賊「儲かる?」

影武者「ドワーフの鉱山労働者が毎日酒場に来る様になってね…お酒を出せばお金が入る…お金で硫黄を安く買う」

ローグ「これあっしらもお金払うでやんすか?」

女将「食い逃げは逮捕するでし!!」ビシ

影武者「ハハ今日は僕が払っておくよ」

盗賊「さすがだな…もう流通が成り立ってるんか」

影武者「儲かるし上手く行くし楽しくってさ…そうそう香辛料も充実したからもっと上手に虫料理が出来そうだ」

盗賊「虫ねぇ…」

女将「影武者さんは虫の食べ方を良く知ってるですよ…子供達も虫を嫌わないで食べてくれるでしゅ」

影武者「なるほどな…ゴミ食って生きてた奴らはこういう才能もある訳か…見習わねぇとな?」
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:10:57.03 ID:KbfSVIxh0
『広場』


じゃぁお願いします…


盗賊「おぉ傭兵の夫婦そろって早速仕事か?」

魔法使い「村の警備をお願いしたの」

盗賊「んん?警備が必要な程危なくは無さそうだが?」

魔法使い「流民がポツポツ来る様になって一応の警戒よ」

盗賊「ほぅ?どっから来てんのよ?」

魔法使い「近隣にはまだ小さな村がいくつもあるのよ…食料難で流れて来てる」

盗賊「じゃぁ丁度武器を持って来て良かったな」

魔法使い「ハンターが言うには昔の兵隊駐屯跡地にも何か住み着いて居るって…」

盗賊「ほんじゃ物資調達にゃ丁度良いじゃ無ぇか…弾薬とか残ってるかも知れん…どこにあんのよ?」

魔法使い「川向うの丘を越えた先…オークとの激戦区だった筈」

盗賊「オークか…あんまり関わりたく無ぇな」

魔法使い「オークとは今の所良い付き合いだから刺激しない方が良いと思う」

盗賊「良い付き合いってどういう事だ?」

魔法使い「どんぐりとか毒キノコを村の外に出しておくと代わりに薬草を置いて行ってくれるのよ…最近では動物の毛皮とかも」

盗賊「なるほどその関係は続けた方が良さそうだ…ドワーフの気球がウロウロしてるこの村に攻め入る事は無いだろう」

魔法使い「そういう風に見えるんだ?」

盗賊「ここの立地だと気球から弓でも撃たれりゃそうそう侵略出来ん…ドワーフの気球は抑止力になってるな」


タッタッタ


影武者「盗賊!気球で物資の移送をお願いしたい」

盗賊「ぬぁ!?今帰って来たばかりで又キ・カイに行かせるつもりか?嫌なこった!ちっと休ませろ」

影武者「あぁ違う違う…上の遺跡から石の建材を運んで欲しいんだよ」

盗賊「石の建材?」

影武者「ヘラジカの引っ張る荷車じゃ往復で効率が悪いのさ…貨物用の気球なら一気に運べる」

盗賊「そうか…まぁ剣士にも会いたかった所だ」

影武者「2往復で全部移送できると思う…お願いするよ」

盗賊「荷の出し入れは人駆用意しとけ?俺ばっかりに重労働させんなよ?」

影武者「分かった分かった」

盗賊「てか石の建材なんかなんで遺跡にあるんだ?発掘してんのか?」

影武者「話して無かったね…上の鍛冶場から出る鉱石の屑から作ってるのさ…これから作る建屋は石の建材で組むんだよ」

盗賊「なるほどゴミの再利用って訳か…こんな田舎で石造りの建屋とはまた豪華だな」

影武者「炭坑が賑やかなうちは建材も沢山作れるからどんどん消費しないと…」

盗賊「ほんじやちっと遺跡まで行って来る…じゃぁな」
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:11:32.78 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡外_鍛冶場』


シュゴーーーー モクモクモク


鉄のた〜めなら〜♪え〜んやこ〜ら♪

おいらはかっじや〜♪おしゃれなか〜じや〜♪


盗賊「お〜い!!石の建材運びに来たんだがよ…どれだ?」

ドワーフ「そこに積んである石は全部運んでかまわん〜で〜♪」

盗賊「どわ…これはでかい釜戸じゃ無ぇのか…こら2往復じゃ無理だな」

ドワーフ「置き場に困っておルンルン♪早く運ん〜で♪くださ〜いな〜〜♪」

盗賊「ローグ!これが全部そうだとよ…気球に積むぞ」ヨッコラ

ローグ「盗賊さん…この石意外と軽くないっすか?」ヨッコラ

ドワーフ「多孔石が混ざってルン♪軽くて丈夫な建材だよん」

盗賊「軽石ってやつが混ざってる訳な…まぁ良いとりあえず乗せれるだけ乗せてちゃっちゃと運ぶぞ」エッホ エッホ

ローグ「全部炭坑から出たゴミで作ってるんすね」ヨッコラ

盗賊「保温性も良さそうな建材だ…ザラザラだけ我慢すりゃ良い家になりそうだ」ヨッコラ

ローグ「この重さなら2往復でなんとか…」

盗賊「日が暮れちまう…急ぐぞ」エッホエッホ


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151 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:13:27.71 ID:KbfSVIxh0
『古代遺跡内』


アブラカタブラ ドーニカオマモリクダサイ


盗賊「…遺跡に籠って何やってんだお前」

女オーク「…」

剣士「盗賊さんか…帰って来てたんだね?」

盗賊「おま…こりゃ何の儀式よ?女オークを奉ってんのか?」

剣士「魔方陣で厄災から守ってるんだ」

盗賊「何の厄災よ?外じゃ皆働いてんぞ?」

剣士「うるさいなぁ…厄災から女オークを守るのが僕の仕事さ」

盗賊「星の観測はどうなってんだ?直に日没なんだが…」

剣士「もうそんな時間か…行かなきゃ」

盗賊「えーとだな…俺ぁお前に会いに来たんだが…なんつーかお前はマイペース過ぎてだな」

剣士「あぁそうか!ゴメンよ何の用だった?」

盗賊「ぬははまぁ良い…ほんで星の観測で何か分かったか?」

剣士「地軸の移動速度が遅くなってるさ…やっぱり4000年前と同じ様に90°回転して止まりそうだよ」

盗賊「キ・カイが死ぬほど寒くなってんのよ」

剣士「もう南極点は通過した筈だからこれからもう少し暖かくなると思う」

盗賊「やっぱそんな事になってんだな…最終的な南極点はどこになりそうだ?」

剣士「海士島とセントラルの間だと思う…元々の地図の精度が良く分からないから大体その辺としか言えない」

盗賊「机に広げてあるのが新しい地図だな?」

剣士「うん…北の方角がズレてるから見る時に注意」

盗賊「こりゃもう一回書き直したほうが良いな」

剣士「ハテノ村は過ごしやすい緯度に位置するようになった…キ・カイは寒くて厳しいだろうね」

盗賊「あっちは地下があって奥が広いからなんとかなりそうだぜ?」

剣士「多少寒くても問題無いのか」

盗賊「キ・カイの軍船が内海を航海出来る様だから物流も止まるって事は無さそうだ」

剣士「じゃぁ深刻なのはセントラルぐらいか…」

盗賊「その件でお前に会いに来たんだ…ちっとセントラルに行きてぇのよ」

剣士「地軸が安定すれば行けない事も無い…偏西風に乗って外海を飛び越えればフィン・イッシュ…そこまで行けば簡単さ」

盗賊「地図でみるとやたら遠いな」

剣士「外海が大きすぎるよね…でもどうしてセントラルに?」

盗賊「話はちっと長いんだ…お前も星の観測があるんだろ?俺も温泉に入りてぇ…話は明日だな」

剣士「おけおけ…温泉に入るなら今の内に行かないと真っ黒になったドワーフ達が来ちゃうよ」

盗賊「そら急が無ぇとな…まぁ今晩は酒場でグダグダしてるからお前もたまには顔を出せ」

剣士「わかったよ」

盗賊「おっし!ローグ!温泉行くぞ!!」ダダ
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:14:44.01 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


ローグ「いやぁぁぁ温泉に入って…ハテノ酒飲んで…虫の串焼き…最高っすね」グビ ムシャムシャ

女将「最近は毎日こんな感じなのです」

ローグ「酒場の外でもお祭り騒ぎなんすね?」

女将「ハンターさんが焚火で色々焼いてくれてましゅ」

盗賊「はぁぁぁ後は楽器だな…リュートでも聞きながらこうグダグダと飲みながら寝る訳よ」グビ

ローグ「良いっすね…体力全快しそうっす」グビ

盗賊「ドワーフの連中が鉱山から降りて来て酒は足りてるのか?」

女将「ギリギリでし」

盗賊「毎日作ってんなら小麦足りなくなら無ぇか?」

女将「芋が沢山余ってるので大丈夫です」

盗賊「ほーこの酒は芋も混ざってんのか…道理でアルコールがきつくなった訳だ」グビ

女将「醸造で残った酒粕も全部食用で使い切れるです」

ローグ「このチーズみたいな奴っすね?」

女将「それをパンに乗せて焼くのもおいしいです」

盗賊「俺ぁそのパン食いながらワインを飲みてぇ…パンとチーズとワイン」ジュルリ

ローグ「それにしてもなんちゅー平和な村なんすかねぇ…キ・カイとは大違いっすね」

盗賊「自給自足できるってのは良いもんだ」


スタスタ


女将「あ!!剣士さん…降りて来たんでしゅね」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:15:34.12 ID:KbfSVIxh0
剣士「空いてるかい?2人分」

女将「どうぞどうぞ座ってくださいまし…カウンター空いてるです」

剣士「例のお酒2杯頼むよ…」ジャラリ

女将「はいなー!!」

盗賊「星の観測はもう終わったのか?」

剣士「時間測ってるんだ…しばらく暇になる」

盗賊「しかしお前…只者じゃない雰囲気が出てんなヌハハ…女オークも風格出て近寄り難いぞ?」

剣士「まだ村に馴染めて居ないって事さ…女オーク座って?」

女オーク「…」ドッシリ

女将「どうぞー!!ハテノ酒2杯でし!!」ドン

ローグ「はぁぁなんか2人とも恰好良いっすねぇ…いかにも強そうな感じ出てるっすよ」

剣士「変な事言わないでよ」グビ

女将「剣士さん久しぶりなので皆呼んで来ましょうか?」

剣士「あー気を使わせたくない…今日はちょっと飲んだら戻るから」

盗賊「まぁくつろごうぜ?ほら虫の串焼きでも食え」

剣士「ハハ…バッタかぁ…作物荒らされてない?増えすぎる前に退治しないと種まで食べられちゃう」

ローグ「あっしらが食っちやいやしょう…あっしはこの串焼き好きでやんす」ムシャムシャ

剣士「肉の代わりに丁度良いね…ワームよりも調理しやすいし」

盗賊「どうやら虫のお陰で食料難は解決してそうだな?」

女将「そうですねぇ…小麦の消費は半分くらいになってるですよ」

剣士「それで盗賊さん…今なら話を聞けるけど?」

盗賊「んぁ?別に急ぎじゃ無いから明日でも良い」

ローグ「あっしが話やしょうか?アダムに関連するかもしれやせんので剣士君も興味あるかもしれやせん」

剣士「アダムに?話して…」

ローグ「ええとですね…話は20年さかのぼるんすがね?…」


カクカク シカジカ


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154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:16:16.63 ID:KbfSVIxh0
剣士「冒険の書がもう一冊ある…そうか精霊と時の王がそれぞれ一冊持って居たのか」

ローグ「…それで20年前から起きている事件はみんな公爵が関連していると思うんすよ」

盗賊「まぁそういう訳で公爵が持って居るお宝を俺が全部盗む…それでセントラルに行きたい訳よ」

剣士「理由は分かった…只ね?冒険の書は未来を見るだけの物では無いんだよ?」

ローグ「ええ?どういう事っすか?」

剣士「魔女も冒険の書を読んでるんだけど…大昔の物語だったそうだよ」

ローグ「読む人によって変わるんすね?」

剣士「情報屋さんも読んでるのさ…未来じゃ無くて過去の物語…多分精霊の記憶の一部を覗けるアイテムなんだ」

ローグ「そうだったんすね…てっきり予言の書だと思っていやした」

剣士「でも過去の物語の中で未来の予言があったなら間接的に未来を知ってる可能性はある…それは公爵に聞いて確かめたいかな」

盗賊「ヌハハ直接聞くんか?」

剣士「僕は魔術師だよ…幻術が得意な魔術師ね」

盗賊「怖えぇ怖えぇ…嘘は付けないってこったな?」

剣士「僕もちょっと興味出て来た…アダムの秘密を知ってる可能性が有るみたいだからね」

盗賊「お前が一緒だと俺も安心だ…白狼の盗賊団…今なら復活しても良いぜ?」

剣士「僕と女オーク…盗賊さんにローグさんで丁度4人か」

ローグ「えええ?あっしも?」

剣士「だって目の前に要るじゃない」

盗賊「決まりだな?」

剣士「どっちにしても地軸の移動が落ち着くまではここに居た方が良いよ…飛空艇でも迷っちゃうから」

盗賊「違い無ぇ…しばらく休暇だ」

ローグ「安心しやした…もうちっと幸せを満喫したいでやんす」ムシャムシャ
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:17:47.52 ID:KbfSVIxh0
『数日後』


チュンチュン ピヨ


盗賊「言われた通り俺の気球は下流の湖に置いて来た…あそこに拠点作るんだな?」

影武者「そうらしい…今ドワーフ達が道を整備しているよ」

盗賊「下流の2キロ圏内がハテノ村って感じか…」

影武者「うん…作物も川沿いで育てる」

盗賊「ポツポツ生えてる大木は目印だな?」

影武者「あれは魔法使いが植えてくれてるんだ…領地の目安だね」

盗賊「まぁドワーフ達は建築が早いわ…あっちゅー間にいろいろ建てやがる」

影武者「すごいよね…開拓に慣れているんだよ」

盗賊「ここは石炭も鉄も豊富だし開拓しやすいのかも知れんな」

影武者「魔術師が2人居るのが大きいよ…木材と食料の調達はあの2人が要さ」

盗賊「今ハテノ村の人口は50くらいか?」

影武者「子供達合わせて60かな…ドワーフも入れると100人くらいさ」

盗賊「下流まで開拓進みゃ200人ぐらいの規模か」

影武者「もっと住めると思う…あの石の建材で作る建屋は2階建てに出来るんだ」

盗賊「じゃぁ倍って事か」

影武者「そうだね…そこまで増えれば立派な街として機能する」

盗賊「ついこの間まで何も無ぇ村だったのにな?」

影武者「フフ楽しみだよね?」

盗賊「うむ…オークもこっちに住みゃ良いのにな?」

影武者「魔法使いはそれも考えて居る様だよ…そうそうハテノ酒…これを村の外に置いて居るんだ」

盗賊「なぬ?オークに献上か?」

影武者「原料が小麦と芋とキノコ…全部オークの好みの食材なのさ」

盗賊「なるほど…友好の酒か…何が返って来るか楽しみだなヌハハ」

影武者「オークが味方だと賊から襲われ難いよね?…それと何がトレード出来るのかも楽しみなんだ」

盗賊「オークといえば牙とか角の類だな…ケバケバの衣装もあるな」

影武者「ドワーフが言ってたんだけどオークが使う武器は特殊な細工がしてあるらしい」

盗賊「細工?あのクソでかい武器に細工?」

影武者「それが知りたいみたい」

盗賊「牙とか仕込んであるだけに見えるがそんな珍しい物か?」

影武者「さぁね?エンチャントでもしてあるのかもね」

盗賊「ほーん…ほんで?今日は俺の仕事は終わりか?」

影武者「子供達が武器の使い方を教えて欲しい様だよ?行って見たら?」

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:19:20.90 ID:KbfSVIxh0
『教会の裏』


ヒュンヒュン バシーン


そうそう!次の石を準備する動作はもっと早く

姉御!盾持って動く的お願い

分かった…来い!!



盗賊「ほぉぉぉ?スリングの練習か」

少年「あ!盗賊!!」

盗賊「動く的は良いがちっと危ないんじゃ無ぇか?投石あたったら怪我すんぞ?」

少年「小さい子にはスリングが一番良いと思った…接近された場合どうすれば?」

盗賊「うむ…スリングの選択は正しい…まずはそれを極めろ」

少年「投石を外したらどうするんだよ」

盗賊「腰にナイフを持っとけ…見てろこんな感じだ」


右手でスリング使うだろ?

接近された場合は左手でナイフを逆手に抜くんだ

まぁ護身用だな

格闘戦はお前等じゃもうちっと大きくなるまで無理だ


少年「左手でナイフを逆手に…」スチャ
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:19:46.23 ID:KbfSVIxh0
盗賊「おう!そんな感じよ…まぁ狩りでも良く使うからナイフだけは護身用で持って居て問題ない」

少年「分かった…」

盗賊「しかしスリングの練習たぁ関心する…2〜3人で投石すりゃ並みの賊なら撃退出来る」

少年「これでクマは倒せないかな?」

盗賊「頭部に当てりゃイケる…要は命中率だな?」

少年「ようし!練習続けよう!!」

盗賊「待て待て…動く的は危ねぇ」

オークの子「これは実践練習なんだ…私の練習でもある」

盗賊「スリングなんか見て避けれる速さじゃ無いだろ」

オークの子「急所を外すだけで良い」

盗賊「それじゃ怪我すんだろ?」

オークの子「私が囮になる作戦なんだ黙って見てて!」

盗賊「あぁぁ…なるほどな?…一人囮になって全員で投石する作戦か…ほんで自分は急所だけ守る」

オークの子「…」

盗賊「分かった…お前にコレをやる」ポイ

オークの子「角?」

盗賊「その角にゃ回復魔法のエンチャントが掛かってんだ…怪我しても直ぐに良くなる」

オークの子「あ…ありがとう」

盗賊「まぁ俺は黙って見てるわ…続けてやってみろ」

少年「よっし!!じゃぁ配置について」

盗賊「…」


---オークの気高さか---

---自己犠牲で守る姿が眩しいじゃ無ぇか---

---こりゃガキ共の自警団も馬鹿に出来んわ---



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158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:20:25.07 ID:KbfSVIxh0
オークの子「つつつ…」

盗賊「見せてみろ…なるほど全部急所は外してるが…痛いだろう?」

オークの子「これぐらい直ぐに治る…私は他の子と違って丈夫なんだ…傷の治りも早い」

盗賊「まぁその角を上手く使え」

オークの子「…」

盗賊「よし分かった…お前に剣と盾の使い方を教えてやる」

オークの子「え?」

盗賊「まぁ立て…俺の攻撃をまず防いでみろ」スチャ

オークの子「…」スック

盗賊「行くぜ?」ダダ


ビシ バシ バシ


盗賊「木の棒じゃなきゃ死んでるぞ?しっかり見て防げ」ダダ


カン カン コン


盗賊「ふむ…まぁ良い…続けて行くぜ?」

オークの子「…」タラリ


カン カン バシッ


オークの子「え!?どうして…」グラリ

盗賊「死角が疎かになってんだ…自分の死角がどこになるか意識しろ…そこを剣で防げ」


カン カン コン


盗賊「まぁちゃんと防御すりゃなかなか攻撃は当たらんのよ…まずはしっかり防ぐ練習からだ…行くぜ?」ダダ


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159 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:21:10.75 ID:KbfSVIxh0
姉御と盗賊が戦ってるよ

やられっぱなしだぁ

でもちゃんと防いでるっぽい

行けぇ姉御ぉぉ



盗賊「ふぅ…どうやらお前は体幹が柔らかい…もっと低く構えてみろ」

オークの子「こうか?」グググ

盗賊「もっと低く出来るだろう?四足獣になったつもりで構えろ」

オークの子「…」グググ

盗賊「そんだけ低いと俺の攻撃は上からしか来ない…防ぐのは簡単になる筈だ」

盗賊「ほんでな?その姿勢から俺に突進してみろ…来い!」

オークの子「…」ダダ ドシン

盗賊「こりゃまるでイノシシだな…今見えただろ?攻撃の糸口が」

オークの子「うん…」

盗賊「お前はな?その低い姿勢からの突進が決め手になる…兎に角低く守って相手の隙を見つけろ」

オークの子「分かった…」

盗賊「じゃぁもう一回行くぞ?」ダダ


カン カン コン ビシ バシ
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:22:18.10 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ


ローグ「あ!!盗賊さん何処に行ってたんすか」

盗賊「おぉ教会の裏でちっとガキ共と立ち回りをな?」

ローグ「ええ?子供相手にっすか?」

盗賊「いやいやあのガキ共なかなか団結しててな…こりゃ下手な賊が来ても追い払うぞ?」

ローグ「マジっすか…」

盗賊「20人くらいのガキがが一斉にスリング使ってるのを想像してみろ」

ローグ「うは…近寄れやせんね」

盗賊「だろ?ほんでハーフオークのガキが又強い訳よ…普段から炭坑手伝ってるのもあるんだろうな」

ローグ「スリングは上手く使えば弓より飛距離出せやすぜ?」

盗賊「だな?爆弾でも投げりゃ正規軍とだって良い勝負になる」

ローグ「子供に爆弾は危ないっすねぇ」

盗賊「ギャング上がりなもんで割と色々知ってんだよ…スリングをチョイスすんのもそういう経験なんだろう」

女将「剣士さんがもう煙玉の作り方教えてたです」

盗賊「…煙玉…なるほど目くらましした後にスリングで投石すんのか」

ローグ「数撃ちゃ当たりやすもんね」

盗賊「な〜んか…この村はもうガキ共に任せても良い気がして来た」

女将「私がお母さんの代わりなのでしゅ…お任せくだしゃい」

盗賊「そうだな…酒くれ酒ぇ」

女将「はいなー!!」スタタ


アオーーーン アオーーーーン


盗賊「ん?ウルフの遠吠え…」ガタッ

ローグ「…これ敵が入って来た合図じゃないっすか?」

盗賊「様子見に行くぞ」ダダ
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:23:34.09 ID:KbfSVIxh0
『広場』


ザワザワ

上だ!ガーゴイルが飛んでる!

女子供は教会に避難しろぉぉ!!

弓を使える人は弓を持て!!

教会の上にクロスボウが設置してある



盗賊「何匹居るんだ?」

魔法使い「5匹くらいよ」

盗賊「お前は魔法撃てるな?」

ローグ「なんでガーゴイルなんか居るんすかね?」

魔法使い「前からちょくちょく来てるの…今日は数が多い」

ローグ「ガーゴイルは黄泉の魔物っすよ?」

魔法使い「何処かの狭間から迷い込んでいるのよきっと…」

盗賊「暗くなってきて良く見えんな」


シュタタ シュタタ


盗賊「おう!剣士…来たか」

剣士「オークも襲われているらしい」

盗賊「さっきの遠吠えがそうか?」

剣士「うん…僕と女オークは応援に行く…こっちは任せるよ」

盗賊「任せるっておい…」

剣士「オークは飛んでる敵に何も出来ない…ハテノ村は弓もクロスボウもある」

盗賊「ぬぁぁまぁしょうが無ぇな…」

剣士「ちょっと待ってね…夜光虫!従え…飛んでいるガーゴイルに取り付け」ブーン

ローグ「おぉ地面から光が昇って行くでやんす」

盗賊「おぉ!!」

剣士「これで目標を見失わない…近寄って来たら弓で撃てば良い…ガーゴイルは倒したら燃やして?病気を持ってる」

魔法使い「わかったわ…」

剣士「女オーク!急ごうか…オークの集落まで走るよ」

女オーク「うん…」

剣士「じゃぁ行って来る…」シュタタ


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162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:24:30.61 ID:KbfSVIxh0
タッタッタ


ローグ「弓と矢を持って来やした…使って下せぇ」ポイ

盗賊「おう!!なかなか降りて来無ぇ…イライラすんな」


ドーーン パーン


盗賊「うお!!花火かよ…ドワーフが遺跡から撃ってんのか」

ローグ「効果ありっすね…火花がガーゴイルに当たっていやす」

魔法使い「ガーゴイルが急降下してくるわ!!狙い撃って」

盗賊「分かってらぁ」ギリリ シュン

ローグ「あっしも…」ギリリ シュン

魔法使い「外れてるじゃない!…火炎魔法!」ゴゥ ボボボ

ガーゴイル「ギャァァァァ…」バッサ バッサ

盗賊「くっそ!こっちは無視か…」

魔法使い「教会の方ね…移動しましょう」


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


ローグ「おぉ!!スリングの投石っすよ…」

盗賊「やるなあいつ等…」


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


ガーゴイル「ギャァァァァ…」ドサーーーー

盗賊「落ちた!!ぶっ殺せ!!」ダダダ グサ

魔法使い「どいて!!燃やす…火炎魔法!」ゴウ ボボボボ

ローグ「こりゃ圧勝っすね…」ギリリ シュン グサ


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


盗賊「数撃ちゃ当たるってなこの事か…弓撃つより全然効果的だ」

ローグ「あっしらは落ちたガーゴイルの処理に専念しやしょう」

盗賊「だな?もう一匹落ちそうだ…行くぞ!」ダダ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:25:54.01 ID:KbfSVIxh0
『教会の前』


ギャァァ バッサ バッサ


オークの子「こっちだ!!私は美味しいぞ!!」バンバン!

ガーゴイル「ギュルルル!ギャッハァ…」バッサ バッサ


ヒュンヒュン ヒュンヒュン ドスドスドス


ガーゴイル「ウギャァァ…」ドサーーーー

オークの子「このぉ!!」ダダ ブスリ

子供達「やったぁ!!姉御が倒したぁぁ!!」

オークの子「次!!スリング準備!!」

魔法使い「電撃魔法!」ガガーン ビリビリ

オークの子「ハッ…」

魔法使い「後は任せて…みんなで手分けして火事の火を消して来て」

オークの子「あ…はい」

盗賊「よーし!!とどめだ!!燃やしてくれい!」ダダ ブスリ

魔法使い「火炎魔法!」ゴゥ ボボボボ

盗賊「お前等スゲーじゃ無ぇか!!スリング練習した甲斐があったな?」

子供達「うへへへへ…」

オークの子「みんな降りて来て!!火事を消しに行くよ」

子供達「おーーーー」ドタドタ

ローグ「いやぁぁ20人のスリング部隊…スゴイっすねぇ」

盗賊「ガーゴイルが教会に突っ込まなかったのが幸いか…」

ローグ「いやいやクロスボウも撃ってたんで近付け無かったんすよ」

盗賊「なるほど…ちょっとした要塞になってたか」

魔法使い「一先ずこれでガーゴイルは全部撃退…村の点検に回って来るわ」タッタ

盗賊「俺らあんまり活躍出来んかったな?」

ローグ「酒が覚めちまいやしたね?あっしの気球に芋酒あるんでどうっすか?」

盗賊「そだな?酒場行ける感じじゃ無ぇし…見物しながらもうちっと飲もう」
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:27:15.15 ID:KbfSVIxh0
『貨物用気球_デッキ』


グビグビ ヒック


盗賊「火事っつても花火がちっとくすぶってるだけか」グビ

ローグ「もう大丈夫そうでやんす」

盗賊「上の遺跡から花火ぶっ放す準備してるとはさすがだ…やっぱ海賊王の爺は戦のプロだわ」

ローグ「対空もちゃんと考えて居たみたいっすね」

盗賊「立地的に侵略すんなら気球使って来るしか無いんだが…これじゃ攻め切れん」

ローグ「下流の湖の拠点も陸戦を想定してるんでしょうね?」

盗賊「だろうな?大砲の射程内だしな」

ローグ「あ…見て下せぇ向こうの丘がうっすら光っていやす」

盗賊「んん?オークの集落はあっちにあんのか…」

ローグ「剣士君が夜光虫使役する所見やしたよね?」

盗賊「おぉ俺は鳥肌が立ったぞ…光を操る姿は勇者そのものだ」

ローグ「あっしもそう思いやした…地面から昇って行く光に足が震えやしたぜ」


ピカー キラリン!


ローグ「光った…」

盗賊「終わったな…剣士が刀を抜いたんだろう」

ローグ「静かなもんすねぇ…」サラサラ

盗賊「あぁぁ良い風だ…なんつーか地面が落ち着いた風だ」サラサラ

ローグ「これ命の音かも知れやせん…虫の這う音…飛ぶ音…食べる音…」

盗賊「なんだお前いつからエルフちっくになったのよ…柄じゃ無ぇからヤメロ」


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165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:28:11.83 ID:KbfSVIxh0
『翌日_飛空艇』


ヨイショ ヨイショ


剣士「よし…水と食料はこんなもんかな」ドサ

盗賊「よう!出発の準備か?」

剣士「まぁね?あと樽で1つ分荷物が詰めるけど何か乗せる?」

盗賊「ちっと見せてくれ…水はまぁ良い…なんで土なんか乗せてんだ?」

剣士「あーそれで植物成長させるんだ」

盗賊「なるほど食料の代わりか…干し肉はまぁソコソコか…酒が無ぇな」

剣士「お?ハテノ酒1樽貰って行こうか…折角だし楽しみながら行きたいよね」

盗賊「俺が話付けて来る…もう出発するつもりか?」

剣士「予定は決めて居ないよ…準備出来たらいつでも良いさ」

盗賊「ちっと飯食ってからにしよう…酒場に集合で良いな?」

剣士「分かった…先に行っておくね…女オーク!おいで」グイ
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:29:36.50 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ 


剣士「…オークの集落は10人くらいで洞窟に住んでるよ」

魔法使い「そう…もっと交流出来れば良いのに」

剣士「その場所を守ってるんだってさ…でもハテノ村と争う気は無いみたいだよ」

魔法使い「交流の話よ」

剣士「あー石炭が欲しいって言ってたんだよね?」

女オーク「そうよ?少しずつ食べるの」

魔法使い「本当?」

剣士「代わりに琥珀を貰えるかもしれない…その洞窟は琥珀が一杯あった」

影武者「えええ!?琥珀…」

女オーク「琥珀も食料なの…少しづつ食べるのよ」

影武者「すごいトレードじゃないか…石炭と琥珀が交換出来るなんて…」

女オーク「ハテノ酒をとても気に入って居たわ」

剣士「なんか上手くやっていけそうだね?」

魔法使い「他に欲しい物は聞いて居ない?」

剣士「う〜ん…言って良いのかな」

魔法使い「何よ!言って…」

剣士「一番欲しいのは奴隷なんだ」

魔法使い「え…それは無理」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:30:19.93 ID:KbfSVIxh0
女オーク「オーク族は奴隷を大切にするのよ…あなた勘違いしてる」

剣士「説明が難しいなぁ…人間の奴隷とは少し違うんだ」

女オーク「剣士は私の奴隷…これで説明付かない?」

剣士「いやいや僕の奴隷が女オークだって…何回も言ってるじゃない」

魔法使い「あのね…奴隷は奴隷でしょう?」

女オーク「もう少し交流を続けないと理解出来ないかもしれない」

魔法使い「奴隷ねぇ…」チラリ

剣士「まぁ何でも言う事聞く人の事さ…オークは奴隷を大事にするのは間違い無いよ」

魔法使い「ふ〜ん…」シラー


ガチャリ バタン


盗賊「よぉ!!準備出来たぜ?」

ローグ「あっしも荷物詰みやした」

魔法使い「急に4人居なくなると少し寂しいわね…」

盗賊「用が済んだら直ぐに戻って来るぜ?俺の気球置きっぱなしだからな」

ローグ「あっしもお気に入りの気球を無くすわけに行かんっす」

剣士「…という事だよ…まぁ仕事に行ったと思って」

女将「うぇぇぇん…ひっく」

盗賊「おいおい湿っぽいのは勘弁してくれぇ…もう行くぞ!!」スタ

剣士「じゃぁ…また…」ノシ


---新しい旅が始まった---


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 果ての開拓編

   完

168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:43:56.18 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


進路はこのまま東…丁度中緯度高圧帯に位置するから偏西風に乗って外海を横断する

地図で言うとこの一番大きな海を飛び越えるんだ…補給できる島とかの情報は何も無い

もしかすると左手方向に未踏の地が見えるかも知れない

何か見つけたら行って見よう


盗賊「この飛空艇で大陸横断はどのくらいかかるつもりで居る?」

剣士「狭間に入ったまま飛んで3日かな?」

盗賊「お?えらく早く到着するじゃ無ぇか」

剣士「進路と現在地の確認で狭間に入りっ放しという訳に行かないよ…合わせて1週間はかかると思う」

盗賊「まぁそうだな…偏西風が蛇行してるかもしれんしな」

剣士「あと暖かい洋上だからストームにも注意したい」

盗賊「一週間もこの狭い部屋に閉じこもるのは苦痛だな…」

剣士「うん…途中でうまく島でも見つけられれば良いけど」

ローグ「これ外海飛び越えるのってあっしらが初っすよね?」

盗賊「だろうな?そもそも大陸間を移動できる気球は限られる」

剣士「うん…動力に魔石を使った気球で帆付きじゃないと無理だね」

盗賊「自信はあるな?」

剣士「僕はもう大陸間を一回飛んでるんだ…今回は地図もあるし色々計算してる」

盗賊「戻るのはどう考えてる?」

剣士「もし計算通り横断出来たなら今度は赤道付近の貿易風に乗って戻る…それも一回試したい」

盗賊「ふむ…今後何度も横断する想定か」

剣士「そうだよ…外海が大きすぎるから船での行き来は厳しいと思うんだ」

盗賊「ちっと俺にも飛空艇の操舵を教えてくれぃ」

ローグ「直ぐに覚えるでやんす…これが主翼でこっちが尾翼…」

盗賊「ふむふむ…ちょっとやらせろ」

剣士「僕は書き物をやってるから上手く偏西風に乗せて東に向かって」

盗賊「おう!高度上げるぜ?」グイ


良いっすね…尾翼で角度変えるんすが速度落ちるんで注意して下せぇ

一旦良い風に乗ったら魔石の向き変えて推進力に加えると高度落ちなくなりやす

ほぉぉぉ良く考えてんな…落下の速度を推進に変えてる訳か


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169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:44:40.37 ID:KbfSVIxh0
『1日目_夜』


リリース!


剣士「よし!南極星の角度確認する…」ギリギリ

ローグ「月が変な所にあるんで方角間違いそうでやんす」

剣士「そうなんだよ…パッと見で低い位置の月は東か西って思っちゃうよね」

ローグ「無いよりマシでやんす…一応月明かりで雲海が見えてやす」

剣士「一応雲の方向を地図に書き足しておいて」

ローグ「へい…」カキカキ

剣士「緯度少しズレて来てるな…進路ちょっと南に調整」グイ

剣士「ええと…基準の星どこだ?…あったあった…えーと羅針盤とのズレがこうだから…」

ローグ「経度の計算っすか…なんか忙しいっすねぇ」

剣士「おけおけ…今地図でこの位置だ…記と時間を記録しておこう」カキカキ

ローグ「な〜んも見えやせんわ…」

剣士「ふむふむなるほど…陸から風が降りて少し北に巻いてる訳か…蛇行を考えると次は南にズレる筈」

ローグ「高度は安定していやす…他に何か調べやすか?」

剣士「しばらく様子見たい」クンクン

ローグ「何か匂うでやんすか?」

剣士「う〜ん…全然わかんないw」

ローグ「ズコ…まぁゆっくり行きやすか」

剣士「狭間に入ったままだと色んな物見落としちゃうからさ…1時間くらい様子見たいかな」

ローグ「そーっすね…ハテノ酒でも飲みやしょう」
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:45:39.60 ID:KbfSVIxh0
『2日目_昼』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「高度下げていくぜ?」グイ

ローグ「何か見えやすか?」

剣士「うん…海の上を群れで何か飛んでる」

盗賊「女オーク!操作変われ…俺も見る」

女オーク「あ…はい…」

剣士「鳥かな?…という事は島か何かあるのかも」

盗賊「いや…あれは魚だ…フライフィッシュって知らんか?」

剣士「聞いた事無い」

盗賊「空飛ぶ魚なんだ…フィン・イッシュで稀に水揚げされるらしい」

剣士「ハハ魚は水の中の生物だよね?空を飛ぶなんて…」

盗賊「ヒレが鋭利な刃物みたいになってるから近付かん方が良いかもな」

女オーク「高度はどうするの?」

盗賊「今の高さ維持だな…これ以上下げると襲って来るかもしれんぞ?」

剣士「あ!!海の中に大きな影…」

ローグ「おぉぉクラーケンっすかね?」

剣士「もっと大きいよ…なんだアレ?」


ザバァァァァァ バクリ


盗賊「どわっ…でか!!」


ザブーーーーーン


剣士「クジラだ…あんな大きなクジラが居るのか…」
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:46:23.52 ID:KbfSVIxh0
ローグ「フライフィッシュの群れを丸飲みしちまいやしたね…ハハ…スケールが違うでやんす」

盗賊「クラーケンよりでかい生き物が居るんか…100メートル近いぞありゃ…」

剣士「もう一回影が出て来る…ちょちょ…女オーク!!高度上げて!!」

女オーク「う…うん」グイ


ブシューーーーーー バシャバシャ


盗賊「うはぁぁぁ潮吹きやがった…」

ローグ「あっしら狙われてやす?」

盗賊「んな訳無ぇだろ…たまたま吹いた潮がここまで届いただけだ」

剣士「なるほど…フライフィッシュはクジラから逃れようとして飛んでたのか…」

盗賊「ほう?つまりフライフィッシュの群れを見たらクジラが居る…ヌハハ勉強になったわ」

剣士「スゴイな…僕達の知らない世界にこんな生き物が居たなんて…乗りたい!」

盗賊「なぬ!?乗る?」

剣士「クジラって話通じると思う?」

女オーク「ウフフ…」

盗賊「あのな…俺らなんか一飲みだぞ?あんなん近付きたく無ぇ!」

剣士「ウルフだってちゃんと話せるんだよ…クジラもさ?クジラ語とかで会話出来るんじゃないかな?」

盗賊「んぁぁぁぁ…ちっと今は止めとけ」

剣士「そうだ!!ホム姉ちゃんが目覚めたら聞いてみよう…うん!そうしよう」

盗賊「まぁ…そうだ…それで良い」

剣士「この飛空艇もさ…クジラの骨で出来てるのさ…なんか縁がありそうだ」

ローグ「いやぁぁぁ剣士君!なんちゅーんすか?…大物っすね?」

剣士「そうだよね?あのクジラ大物だよね」

ローグ「あらら?いやそうじゃなくて…」

盗賊「ローグ止めとけ…ありゃ天然だ」

剣士「しまったなぁ…海の生物の書物買って置けば良かった…ホム姉ちゃんなら何でも教えてくれるのになぁ…」

盗賊「ようし!!もうちょい高度上げて島探すぞ…女オーク!もっと高度上げろ」
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:47:07.03 ID:KbfSVIxh0
『3日目_昼』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「そっちは何か見え無ぇかぁぁ」グター

ローグ「ずーーーーーーと海っすーーー」グター

女オーク「正面!!海の色が変わってる…」

剣士「え!?」ガバッ

盗賊「おぉ本当だな…海が浅くなってんだ…島があるかも知れ無ぇ」

ローグ「マジすか!!やっと足が延ばせやす…」

剣士「あれ?海の中に木が沈んでる…」

盗賊「それで色がおかしいのか…どっか上陸出来る島は無いか?」

ローグ「ちっと小さすぎなんすが一応島はありやすね…ちょい北の方角っす」

盗賊「アレかぁ…飛空艇降ろせる場所は無さそうだ」

剣士「分かったぞ…この辺は小さな島がいくつもあったんだ」

盗賊「海面が上がって全部水没したか?」

剣士「そんな感じだね…ここの座標を調べたい」

盗賊「あの小島に上陸するか?木が海面から出てるだけかも知れんが」

剣士「ロープだけ降ろして飛空艇は飛ばしたままにしておこう」

盗賊「なるほど…ちっとだけ休憩な?」

剣士「うん…僕が操作やるから盗賊さん下に降りてロープを木に引っかけて来て」

盗賊「おう!丁度運動したかった所だ…飛空艇を寄せてくれ」

剣士「寄せる…」グイ バサバサ


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剣士「どう?安全そう?」

盗賊「何も居なさそうだ…ロープ降ろすぞ?」ポイ

剣士「ロープ引っかけたら合図して」

盗賊「じゃ降りるな?」スルスル
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:48:34.46 ID:KbfSVIxh0
『無人島』


ロープ結んだぁぁ!!降りてこーーい!!


剣士「女オーク?先行ける?」

女オーク「うん…」スルスル

ローグ「あっしも行きやす」スルスル

剣士「その辺の木を切り倒して飛空艇着陸させられないかな?」

盗賊「斧なんか持って来て無ぇぞ!!」

女オーク「私が切り倒せる」

剣士「女オークお願い!!終わったらロープ手繰り寄せて!!」

女オーク「分かったわ…フン!」コーン


コーン コーン メリメリ ドサーーー


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フワフワ ドッスン


剣士「よし!これで安心だ…」

ローグ「この島は山頂が海面から出てるだけで何もありゃしやせんね」

盗賊「その様だ…ざっと15メートル四方って所か」

剣士「ここの座標を調べたいから夜まで休憩しよう」

盗賊「女オーク!切り倒した木を薪にしたい…もう少し小さくしてくれ」

女オーク「わかったわ…」ブン バキ

ローグ「やっとキャンプっすね…魚か何か探してきやす」

盗賊「おう!頼むわ…剣士!木を燃やしてくれ」

剣士「火炎魔法!」ボボボ メラ

女オーク「この木…実がなってる」

剣士「お?」

女オーク「集めて来る…」ダダ
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:49:12.41 ID:KbfSVIxh0
盗賊「見た感じ海面が10メートルぐらい上がった感じか…」

剣士「そうだね…今の緯度で海面10メートルか…赤道付近だともっと上がってるんだろうな」

盗賊「海岸の地形が相当変わってるかもな」

剣士「うん…同緯度だとフィン・イッシュ…港は水没してると思う」

盗賊「洪水被害が出てる訳か…」


カサカサ カサカサ


盗賊「どわっ!!軍隊ガニじゃ無ぇか!!」

剣士「アハ…久しぶりに見たなぁ」

盗賊「こりゃ美味い食い物にありつけた」スラーン

剣士「甲羅が欲しいから傷つけないで」

盗賊「こんなもん手足をちょん切れば…」ザク ザク


軍隊ガニ「ブクブクブク…」ピク


剣士「よしよし…この甲羅で器を作ろう」ガリガリ

盗賊「ほー上手い事細工するもんだ」

剣士「これでスープが作れる」

盗賊「軍隊ガニはこのまま火で炙って食うのが一番美味いぞ?」メラメラ パチ

剣士「僕が食べるのは木の実のスープだよ」

盗賊「勝手にしろやい」ガブリ モグモグ
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:50:36.03 ID:KbfSVIxh0
『数分後』


メラメラ モクモク


ローグ「良い匂いがすると思ったら軍隊ガニが居たんすね」

盗賊「魚は居たか?」

ローグ「居るっちゃ居るんすが捕まえられないっす…あっしも軍隊ガニ頂くっす」

女オーク「チェリーのスープは要る?」

ローグ「え?チェリーはそのまま食べるっすよ」

剣士「これね…砂糖を入れて保存食にしてるんだよ…美味しいよ?」パク モグ

ローグ「あぁジャムっすね?なるほど…」

盗賊「てか何で砂糖なんか持ってんのよ」

剣士「樹液を変性させると砂糖になるんだ…簡単な事さ…これも魔法の触媒だよ」パク モグ

ローグ「ピーンときやしたぜ?虫を使役するのは砂糖を使うんすね?」

剣士「うん…」

ローグ「やっぱそうでしたか…姉さんは甘いものが大好きだったんすよ」

剣士「ママはカバンの中にいつも飴とか入ってた…だから虫が寄って来るんだよ」

盗賊「俺にもジャムくれ…甘い物は酒によく合う」グビ

女オーク「沢山作るから好きなだけどうぞ…」

剣士「日が落ちるまでまだ間があるなぁ…」

ローグ「ゆっくりしやしょう」


”…聞こえるか?”


剣士「あ!!ビッグママの声…」ゴソゴソ


”まだ狭間に入ってるのかな?”


剣士「聞こえてるよ!!その声は商人さん?」


”おぉぉやっと通じた…剣士君は今どうしてる?”

”商人!私が話す…貝殻をよこせ”


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176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:52:13.76 ID:KbfSVIxh0
剣士「えーっと…無事にフィン・イッシュに到着した?」

女戦士「お陰でな?今はそういう話をしている場合では無い…今何処にいる?」

剣士「外海を渡ってフィン・イッシュ方面に飛んでいる所さ…今は無人島で休憩中」

女戦士「そうか…あと何日でこちらへ来れる?」

剣士「う〜ん5日くらい?」

女戦士「5日か…フィン・イッシュ女王が毒を盛られてな…お前の力が必要なのだ」

剣士「エリクサーは無いの?」

女戦士「言いにくいのだが麻薬のヘロインを大量に投与された…エリクサーで治癒が出来ない」

剣士「大量に…生きているんだよね?」

女戦士「魔女のお陰でなんとか生き永らえて居るが廃人…いや昏睡状態だ」

剣士「それだと5日も待って居られない…今すぐにでも麻薬を除去しないと」

女戦士「手が無いのだ…」

剣士「アサシンさんの体液はほぼエリクサーだった筈…線虫も沢山居る筈だよ…アサシンさんの体液を輸血してみて」

商人「おお!?」

女戦士「不死者から輸血しろと?」

剣士「兎に角線虫を体の中に入れれば良い…商人さんでも良いけど排泄されてるかもしれない」

女戦士「アサシン!お前が救える命がありそうだ…来い!」スタ

剣士「…あれ?…お〜い!!」

商人「貝殻置きっぱなしだ…これ使っても良いよね?」

情報屋「良いんじゃない?…話したかったんでしょう?」

商人「女戦士はアサシン連れて行っちゃったよ」

剣士「ハハ輸血上手く行くと良いね」

商人「助かった…それで話が変わるんだけど…色々調べて分かった事が沢山合ってね」

剣士「何?」

商人「ズバリ…地軸の移動はオークシャーマンが起こした訳じゃ無いという事」

剣士「え!?そうなの?」

商人「うん…どうやら予言通りに地軸が移動してるんだ」

剣士「予言?」

商人「海士島で手に入れた呪符…あの中に重力の魔方陣が記されて居たんだ…」


その魔方陣を魔女が調べた結果

どうも太陽系の惑星の位置と速度…それから公転の周期を詳細に記した物なんだ

その中で僕達が知らなかった惑星が一つあってね…公転周期が4000年なんだよ

この惑星は他の惑星と違って縦周り…そして超楕円で太陽の周りを回って居るんだ

僕達の住む地球に接近するのが4000年前と今…次に接近するのは12000年後

そういう計算になるんだ
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:53:16.17 ID:KbfSVIxh0
剣士「そんな星見えて無いけど…」

商人「黒色惑星…光を吸い込むんだよ…だから見えない」

剣士「その惑星の接近で地軸の移動と月の公転軸が変化した…そういう事なんだね?」

商人「そう…それは4000年前に既に予言されているのさ」

情報屋「ここからは私が話すわ」

商人「おねがい」


4000年前に起きた地軸の移動で文明がすべて滅ぶ事になったのは以前話した通り

その滅ぶ原因になったのは地震や洪水の天変地異というのが定説だったけれど

商人が発見した古文書にその答えが書いてあったの

そこにはY型染色体配列の異常についてウンディーネ時代の前後を比較する物だったわ

結論を言うと子供が生まれない原因は染色体の異常…その原因は恐らく光る隕石が原因

つまり文明が滅んだ原因は…現在と同じ子供が生まれ無くなった事が原因なのよ


剣士「光る隕石が原因?アダムは無関係だったと…」

情報屋「隕石を呼び寄せたのがアダムなのは明白ね…多分自己防衛ね」

剣士「そうだったのか…」

情報屋「そしてこうなる事はやっぱり予言されて居た筈…それがきっとオークに伝わっているの」

剣士「オークだけが生き残ったからだね?」

情報屋「そういう事」

剣士「でもどうして光る隕石が落とされる事が予言されてる?惑星の接近とは因果関係が無いよ」

情報屋「予言者は光る隕石が落ちるのを見て居たとしたら?」

剣士「ハッ!!ママか…」

情報屋「ビンゴ!…ウンディーネ時代で光る隕石の影響を知ったのよ」

剣士「子供が生まれないというのはもう防げないのかな?」?」

商人「まだカードは残ってるさ…予言と言うのは未来に起きる事を回避してくださいという願いがこもってる」

情報屋「現代までホムンクルスが生き残ってる事が最後の救いね」

剣士「そうか…だからメッセージが残って居たんだね?」

商人「多分そうだよ…剣士君!君は未来を繋ぐために生まれたんだよ…だから君の名は未来なんだ」

情報屋「なんか話したい事が沢山あるわ…はやくこっちにいらっしゃい?」

商人「あ!近衛兵が呼んでる…慌ただしいな」

情報屋「一旦貝殻の通信終わるわ…行かなきゃ」

剣士「うん…又話しかけて」


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178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:54:21.88 ID:KbfSVIxh0
『焚火』


メラメラ パチ


ローグ「おいっちにーさんしー!!体動かせるって良いっすねぇぇ」ブンブン グルグル

盗賊「星の観測はまだやるんか?」

剣士「基準にしてる星がまだ登って来ないんだよ」

盗賊「南極星で緯度の計算は良いが経度の計算はどのみち精度が出んだろ?」

剣士「うん…まぁ適当にやるよりはマシさ」

盗賊「狭間に出入りしてるから時計がアテにならんのがなぁ…」

剣士「大体補正してるつもりなんだけどね」

盗賊「この島は目印にしちゃ小さすぎると思うんだが…」

剣士「ここにはチェリーが生ってるから蜂を使役すればなんとか方向が分かるんだ」

盗賊「あぁぁお前専用の灯台代わりって訳か」

剣士「うん…一か所でも休憩出来る場所があると大分違う」

盗賊「まぁいつ帆が破れてもおかしく無ぇしなぁ…一旦降ろせる場所があるのは心強い」

剣士「あ!基準の星が昇って来た…日の入りから4時間…よしよし大体想定通りだ」ギリギリ

盗賊「なるほど…複数の基準にしてる星の角度で時間と経度を割り出してるか」

剣士「これが今の限界精度さ…よし!行こうか」

盗賊「お前は良い航海士になれそうだ…おい!ローグ!!行くぞ飛空艇に乗れ」

ローグ「あいさー」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 13:59:21.09 ID:KbfSVIxh0
『5日目_昼』


シュゴーーーーー バサバサ


盗賊「…まずいな左前方に見えてる積乱雲は多分サイクロンだ」

剣士「南に転換して迂回する」グイ

盗賊「こりゃしばらく風が安定しないぞ?」

剣士「この高度で雲にだけは巻かれたくない…氷で翼が痛む」

盗賊「だな?」

ローグ「南へ迂回してもサイクロンが追って来る感じになりやせんか?」

盗賊「そうなる…だからマズイんだよ」

剣士「出来れば着陸してやり過ごしたいよ…でも下は海だ」

盗賊「最悪海に降りてしばらく漂流っていう手もあるがよ」

剣士「そっちの方が安全かもなぁ…一応高度落としとく」グイ

盗賊「うむ…幸い高度低くても風は十分吹いてる筈だ」

剣士「あれ?船だ!!下に船がある…」

盗賊「おぉぉ!!グッドタイミング…あれに乗せて貰うぞ」

ローグ「外海を航海する船がもう居るんすね…」

盗賊「まぁ大航海時代が来てるという見方もあるけどな?」

剣士「近づいて見る…」グイ バサバサ
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:00:07.49 ID:KbfSVIxh0
『漂流船_上空』


フワフワ バサバサ


盗賊「古いコグ船だ…もう帆が使え無ぇ」

ローグ「誰か乗ってそうっすかね?」

盗賊「小舟が乗って無ぇから逃げたんだろ…まぁ一応一時避難には使えそうだ」

剣士「帆を直せない?」

盗賊「ううむ…横帆としてはもう面積が足りんな…今から縦帆に改造するか?」

ローグ「嵐が来るんじゃどっちにしても横帆は開けないっすよね?縦帆にしとけば一応進む訳ですし…」

盗賊「まぁやってみっか…ロープは余分にあるな?」

剣士「ロープは作れる…大丈夫だよ」

盗賊「うっし!じゃぁ船尾に降ろせ」

剣士「おけおけ…」グイ


フワリ ドッスン


剣士「僕飛空艇を固定しておく」

盗賊「ローグ!荷を調べて来い!それと航海日誌が無いか探して来るんだ」

ローグ「あいさー!!」ダダ

盗賊「女オークはちっと手伝ってくれ」

女オーク「分かったわ…」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:01:25.70 ID:KbfSVIxh0
『漂流船_甲板』


どわぁあぁぁ!! ドタドタ


ローグ「ちょちょちょ…荷室にくそでかいヘビが居りやす」バタバタ

盗賊「なぬ!?」

ローグ「近づかん方が良いっす…20メートルくらいのがトグロ巻いていやす」タジ

盗賊「それで船員は逃げた訳か…おい剣士!!でかいヘビが居るらしい…何とか出来んか?」

剣士「んん?今忙しい…」グイグイ ギュゥ

盗賊「むぅ…俺らでなんとかしなきゃイカン感じだな」

剣士「ヘビなら頭切り落とすだけで良いじゃない?」

ローグ「クソでっかいヘビなんすよ…頭は牛よりでかいでやんす」

女オーク「それ多分シーサーペントね…狂暴だから放って置くと危ない」

剣士「荷室かぁ…外に出てきたら逃がしてあげても良いんだけど…」

盗賊「使役は出来んか?」

剣士「ヘビは無理だよ…荷室に用が無いなら閉じ込めておくのが一番だと思うな」

盗賊「暴れたらどうする?船が壊れかねんぞ?」

剣士「ヘビが建物を壊すなんて聞いた事無いでしょ?」

盗賊「まぁそうだな」

剣士「捕食する気が無いからトグロ巻いてくつろいでるんだよ…放って置けば良いさ」

ローグ「ハハまぁそーっすね…荷室の扉閉めときゃ大きすぎて出て来れやせんね」

盗賊「ヌハハお前は肝が据わってる…まぁどうせ宝なんぞ無ぇだろうから無視すっか」

ローグ「ほんじゃあっしは居室を見回って来るっす」タッタ



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182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:02:29.30 ID:KbfSVIxh0
ドタドタ


ローグ「皆さん…ちっと来て下せぇ」

盗賊「何か見つけたんか?」

ローグ「この船…有名な探検家の船っすね…日誌と海図がありやした」

盗賊「おぉ!!ちっと待て…もうちょいで縦帆の改造が終わる」グイグイ ギュゥ

ローグ「舵は動きやすか?」

盗賊「追い風受けるから船を南東に向けて見てくれ」

ローグ「あいさー」グルグル

盗賊「おぉ回頭してんな?」

ローグ「一応進みだしやしたね…」

盗賊「しばらくこのままで良いだろう…海図は何処だ?」

ローグ「こっちでやんす…」スタ
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:03:20.93 ID:KbfSVIxh0
『居室』


ギシギシ ユラ〜


剣士「…ベッドで白骨化してる」

ローグ「多分この船の船長っすね」

盗賊「俺ぁこの探検家知ってるぞ…有名なトレジャーハンタだ」

ローグ「この海図…外海っすよね?」

剣士「おおおおおおおおお!!この人…外海で島を発見してる」

盗賊「こりゃスゲエお宝ゲットしちまったな」

剣士「日誌が5年前の日付だ…」

盗賊「見せてみろ…」パラパラ

ローグ「トレジャーハンターにしてはお宝類が見当たりやせん」

盗賊「金目の物は他の船員がみんな持って行ったんだろう…しかし外海でトレジャーハントとは…」

剣士「発見した島に名前がある…ハウ・アイ島…この位置だと今は赤道付近だ」

盗賊「帰りの中継点に使えそうだな?」

剣士「うん!!」

盗賊「荷室に居るでかいヘビをフィン・イッシュまで持って帰ろうとした様だ」

ローグ「まさか水龍っすかね?」

盗賊「さぁな?只フィン・イッシュでは龍神を奉ってんだろ…その関係だろうな」

剣士「あれ?ちょっと日誌見せて…古代遺跡の図だ…フィン・イッシュにも古代遺跡があるのか」

盗賊「ふむふむ…龍神を奉ってる祠の様だな?そういや草薙の剣がどーたらこーたらって話聞いた事あるな」

剣士「この人…龍神を復活させようとしたんじゃない?」

盗賊「そうなるとヘビを持って帰らにゃならんのだが…」

剣士「横帆をどうにかして直そうか」

盗賊「布が無い訳よ」

剣士「う〜ん…布作るのは織機が必要になるなぁ…」

盗賊「まてまて良く考えろ…龍神復活させて何になるのよ?遺跡の扉が開くってか?でかいヘビがどうするってんだ?」

剣士「まぁそうだね…もうちょっと良く日誌を調べてから考えるかな」

盗賊「それが良い…てかこの船は痛み過ぎて満足に航海は出来ん」

ローグ「そーっすねぇ…5年も漂流してたんすからねぇ」

盗賊「とりあえず船でサイクロンが行き過ぎるのを待ってからだな…俺ぁちっと船の塩梅見て来るわ」

剣士「じゃぁ僕はその辺の物調べてみるよ」
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:05:00.94 ID:KbfSVIxh0
『甲板』


ビュゥゥゥ ギシギシ


ローグ「風が強くなってきやしたね…」

盗賊「正面見ろ…やっぱり雲が張り出していやがる…船を見つけて運が良かった」

ローグ「サイクロンを追う感じになりそうっすね」

盗賊「俺の見込みだと俺らの前方を横切って南に逸れると思う…だから進路を北寄りに変更した」

ローグ「じゃぁ逆風になりやすね」

盗賊「うむ…だが丁度縦帆に改造したからな…なんとか進む事は出来る筈だ」

ローグ「ちっとフィン・イッシュ到着が遅くなりそうでやんす」

盗賊「仕方ない…危険犯してサイクロンを飛び越えるのは無謀だ」


スタスタ


剣士「…」ブツブツ

盗賊「おぉ剣士!何処行く?」

剣士「ん?居室の空気が悪いからさ…海図と日誌を飛空艇に運んでおく」

盗賊「そら良い…なんだその書物は?」

剣士「これフィン・イッシュの龍神伝説が記されて居るんだ」

盗賊「ほう?何か分かるか?」

剣士「宝具の守り神が水龍に姿を変えたとかそんな伝説だよ…フィン・イッシュじゃ有名な話なのかも」

盗賊「そういや10年前だったか…一回その祭事に使う祠ってのか?行った事あんのよ」

剣士「古代遺跡なの?」

盗賊「多分な…まぁハテノ村の古代遺跡と同じ様な感じなんだ…近くに温泉があってそれが川に流れて城下まで流れてる」

剣士「へぇ…」

盗賊「フィン・イッシュ女王曰くその川が水龍なんだってよ」

剣士「祠の中には入って無い?」

盗賊「立ち入り禁止だったもんで入って無い」

剣士「この書物には祠の中に開かずの扉が在るらしい…守り神はそこを守って居たとか…」

盗賊「てことはホムンクルスが眠る遺跡の可能性があるんだな?」

剣士「そうだね…この船の探検家はどうにかしてその扉を開けたかったんだと思う」

盗賊「なるほどな…それがわかりゃもうデカいヘビにゃ用が無ぇ…俺が扉を開けられるからな」

剣士「うん…嵐が去って安全になったら予定通り飛空艇でフィン・イッシュ目指す」

盗賊「…ところで航海日誌は全部読んだか?」

剣士「一応ね…発見したハウ・アイ島の事が良く分かったよ」

盗賊「俺も読みてぇんだ貸してくれ」

剣士「うん…」パサ

盗賊「ようし!これで暇つぶしになる」
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:06:04.00 ID:KbfSVIxh0
『夜』


ビュゥゥゥ ギシギシ


ローグ「まだ帆は畳まんで良いっすか?」

盗賊「このぐらい横から吹いてた方が前に進める…縦帆は畳んだ所で大して変わらん」

ローグ「今晩は寝られる感じじゃ無いっすね…」

盗賊「ちっと忙しくなるなぁ…まぁ嵐の規模にもよるが温い風が吹いて来んから大した事無いとは思う」

ローグ「雨が降ってきやしたね」ポツ

盗賊「順当だな?南半球のトルネードは大型になり難いんだ…そうビクつく事ぁ無ぇ」


ザブ〜〜〜ン ユラ〜 ギシギシ


ローグ「あっぶ!!」

盗賊「コグ船だと思って馬鹿にしていたが意外と速度出るな…30ノットぐらいか」

ローグ「予備のロープ持って来やす…縛っとかんと落ちそうでやんす」

盗賊「剣士と女オークにも落ちない様に気を付ける様に言って来い」


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186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:07:54.31 ID:KbfSVIxh0
『翌朝_飛空艇』


ザーーーーー ジャブジャブ


ローグ「ひぃぃ…ちっと休憩っす…雨に打たれっぱなしじゃ体がふやけちまいやす」

女オーク「次は私が代わりに…」ノソ

ローグ「帆と舵はこのまま維持で良いでやんす…風向き変わったら教えて下せぇ」

剣士「まだ飛空艇飛ばせそうに無い?」

ローグ「昼頃には雲が切れるんじゃないすかね?」

盗賊「今飛ぶのはまだ早いな…トルネードに引っ張られるのがオチだ」

ローグ「まぁ今は横風で船が速度出せてるんでこのままで良いかと」

剣士「そっかぁぁ…もう龍神伝説の書物も飽きたしなぁ…」

盗賊「航海日誌に面白い事が書いてあるぞ?」

剣士「何?」

盗賊「どうやら荷室に居るヘビの件で仲間割れした様だ…他の船員はハウ・アイ島に向かったんだとよ」

剣士「へぇ?じゃぁハウ・アイ島に人が住んでるかもしれないんだね?」

盗賊「うむ…ほんでな…その島にも遺跡が有るらしい」

剣士「え!?見せて見せて…」


ここだ…発見した当時は雪に覆われた島だった様だ

大量の遺物も見つけている…そして閉ざされた扉の前で冬眠していたのがくそデカイヘビだった訳だ

例の探検家はそのヘビをフィン・イッシュに持ち帰ろうとこの船に乗せた訳だ

しかし遺跡探掘をしたい他の船員と揉めた訳よ…ほんで一人この船に残ってたという事だ


剣士「ハウ・アイ島に行って見たくなるね…というか行こう」

盗賊「用事が済んだら行っても良い…お宝の匂いがするだろう?」

ローグ「ちょっと待ったっす…あの蛇は5年以上も冬眠してるんすか?」

盗賊「だろうな?地軸が移動する前はこの船も寒い場所に有ったんじゃ無ぇか?」

剣士「凍ってた可能性が有りそうだね…」

ローグ「そういや抜け殻とか無かったですわ…凍ってたんなら納得でやんす」

剣士「冬眠から覚めたらお腹空いてるだろうなぁ…」

ローグ「いやいや…動いて居やしたから」

剣士「まだ自由に動けないのかな…う〜ん…なんか危ないね?」

盗賊「この船は桟橋から荷を入れる扉が船体の土手っぱらに有ったか?」

ローグ「確認してきやす」ダダ

剣士「そんな所開いたら海水入って来ない?」

盗賊「どうせ乗り捨てなんだから別に良いだろ…ヘビに食われるよりゃマシだ」


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187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:08:49.74 ID:KbfSVIxh0
ローグ「ありやしたぜ!!扉!!」

盗賊「さて…どうやって開けるかなんだが」

ローグ「内側からしか開けられんっすよね…」

盗賊「ヘビ相手じゃハイディングなんか意味無ぇしな」

剣士「扉ってどうやって施錠してるの?」

盗賊「内側からカンヌキだな…古いコグ船だから金属は使って無いだろう」

剣士「おけおけ!虫にカンヌキだけ食べさせる」

盗賊「おぉ!!カンヌキが無けりゃ外から開けられるな」

剣士「チェリーを持って来ておいて良かった…虫が居る筈…出でよ虫共!」ニョロニョロ

盗賊「うぉ!!なんだこの虫!」

剣士「ワームの一種だね…丁度良かった…成長魔法!」モソモソ

剣士「よーし…荷室の扉のカンヌキを食べて来い!」モソモソ モソモソ

ローグ「こんな虫がチェリーに入ってるんすね…」

剣士「食べ物には大体虫が入ってるよ?この虫は木の実を食べて腐らせる害虫だね…人には無害だよ」

盗賊「まぁこれで外側から開けられるんだな?どのくらい掛かる?」

剣士「1時間くらい?分かんないよ…」

188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:10:03.17 ID:KbfSVIxh0
『1時間後』


ザーーーー ポツポツ


女オーク「雨が小降りになってきたわ」

盗賊「風向きに変化は?」

女オーク「横からだけど少しづつ向かい風になっている気が…」

盗賊「ふ〜む…速度が少し落ちているか…よし!少し南に向ける」ガラガラ

ローグ「荷室のカンヌキそろそろっすかねぇ?あっしがちっと行ってきやしょうか?」

盗賊「任せた!!俺ぁちっと速度見張ってる」

ローグ「あいさー」ダダ

女オーク「荷室のカンヌキって?」

盗賊「あぁ…例のでかいヘビを外に追い出すんだ」

女オーク「シーサーペントは狂暴で危ないわ」

盗賊「うむ…大人しい今の内に追い出したい訳よ」


ガタン バキバキ


ローグ「やりやしたぁぁ!!扉が開いたっす!!」

盗賊「おぉぉ戻ってこーい!!」

ローグ「あのヘビ動きやせんぜ?」

盗賊「その内出てくんだろ…ちっと帆の角度変えたい!!結び目2つ分ロープを緩めてくれ」

ローグ「へ〜い!!」スタコラ


グラリ グググググ


ローグ「おわっ!!ちょちょちょ…」ヨロ

女オーク「あ!!あれ?あのヘビ…シーサーペントじゃないわ!!」

盗賊「目が幾つある?なんだあの魔物は…」


ザブーーーン ユッサ ユッサ


盗賊「海に潜って行きやがった…おい!ローグ気を付けろ…襲ってくるかもしれん」

剣士「この揺れは!?」ダダ
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:10:58.92 ID:KbfSVIxh0
女オーク「例のヘビが海の中に潜って行ったの」

盗賊「ありゃヘビじゃ無ぇ…目が幾つもある謎の魔物だ」

剣士「多眼動物…海の多眼動物といえばウナギだ!!マズイ…飛空艇に乗って!!」

盗賊「お…おう!!」ダダ

剣士「早く乗って!!雷が来る!!」ダダ

女オーク「船の下を泳いでる…」ダダ

剣士「ローグさん飛び乗って!!ロープを切る!!」スパ フワリ

ローグ「へ〜い!!」ピョン


ピカッ ビシビシ ビビビビ


剣士「うわ…ギリギリセーフ」

盗賊「うひょぉぉ一瞬海が光ったな」

ローグ「海に戻しちゃまずかったんすね…」

盗賊「しかしこれで正体が分かった…ヘビに雷と言えばリヴァイアサンだ…どうやらデカイ電気ウナギだった様だな」

剣士「クジラといいこの電気ウナギと言い外海は不思議な動物ばかりだ」

盗賊「違い無ぇ…てか剣士!このままじゃサイクロンに吸い込まれて行っちまうぞ?」

剣士「何とかしてみる」グイ シュゴーーーーー


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190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:13:02.49 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


女オーク「雲の切れ目よ…」

剣士「やっと強風域を振り切ったか…」

盗賊「進路は北東だが…もう現在地分からんな」

剣士「夜を待つしか無いよ…東の方向に向いてるだけまだ良い」

盗賊「地図を見た感じ先はまだ長そうだな」

剣士「昨夜から寝て無いからちょっと疲れたね」

盗賊「交代で仮眠取るか…先に寝て良いぞ」

剣士「僕はもう少し良い風を探したい…盗賊さん先に寝て」

盗賊「そうか?」

剣士「ローグさんも休んで…夜中は2人に任せる」

ローグ「じゃぁハンモック借りやす…よっこら」ユラユラ

剣士「女オーク左側の見張りお願い…僕こっちみる」

女オーク「分かったわ…」

剣士「えーと…じゃぁ雲の上にでるかな」グイ

女オーク「ねぇ剣士?私不思議に思ったことがあるんだけど…」

剣士「ん?何?」

女オーク「どうしてリヴァイアサンが遺跡の扉を守っていると思う?」

剣士「あれ?なんでだろう?魚の一種だから知能も低いなぁ…」

女オーク「不思議でしょう?」
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:13:32.36 ID:KbfSVIxh0
剣士「開かずの扉ってもしかしたら電気で開くのかも知れないなぁ」

女オーク「誰かがリヴァイアサンを鍵代わりに使った?」

剣士「そうかもしれない…となると…同時に扉を守らせる命令が出来れば良いともいえる」

女オーク「鍵代わりにするのと守らせるのを同時に誰かがやったという事ね?」

剣士「魚の使役ってどうやってやるんだろう…まてよ?寄生虫でコントロール出来るかも知れないな…」

剣士「あああああああああ!!」

女オーク「え!?何か思い出した?」

剣士「シン・リーンの魔術師に昔蟲使いが一人居たらしい…もしかして」

盗賊「うるせぇなぁ…寝れ無ぇじゃ無ぇか」

剣士「船で見つけた日誌貸して」

盗賊「んぁ?ほらよ…静かにしろやい」ポイ

剣士「…」ヨミヨミ

剣士「やっぱり…この探検家は行方不明の蟲使いだ」

女オーク「どういう事?」

剣士「この人はきっと扉の開け方を知って居たんだよ…リヴァイアサンが凍って居たからフィン・イッシュまで運ぼうとしたんだ」

女オーク「へぇ?私の疑問は解決したわ」


なるほど…寄生虫でリヴァイアサンを操る

電気のビリビリで扉を開閉させる

リヴァイアサンに入り口を守らせておけば中は安全だ

そういう運用をしていたのか

ん?…でも誰が?

ちょっと待てよ?まさかママじゃ無いよな?

いや可能性がある…ママならやりそうだ
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:14:23.89 ID:KbfSVIxh0
『夜』


カチャカチャ ギリリ


剣士「水平保って…おけおけ…角度測定出来た」

女オーク「現在地わかる?」

剣士「えーと…緯度は大分北にズレた…経度が多分この辺り」

女オーク「南東に向かえば良い?」

剣士「そうだね…東南東が良いかな…多分すこし南に引っ張られると思う」

女オーク「分かったわ…」グイ バサバサ

剣士「もう少し高度上げよう…安定したら狭間に入る」

女オーク「これで一安心ね」

剣士「うん…しばらくゆっくり休めるよ」

女オーク「そろそろ交代ね…2人を起こすわ」

剣士「そうだね…」


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『2日後_昼』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「リリース!」スゥ

ローグ「あららら?下が陸地っす…草原っすね」

剣士「ええ?」

盗賊「おぉやっと北の大陸か…もう北じゃ無ぇか」

ローグ「西に山脈…下は草原てか荒野っすね」

剣士「大分通り越したみたいだ…回頭!!引き返してどのくらいズレたか確認したい」

盗賊「やっぱ経度は精度無いな」

剣士「そうだね…地図書き直す必要がある」

盗賊「西の山脈は見た事有るぞ…フィン・イッシュに近いのは間違いない」

剣士「この感じだと200kmくらいはズレて居そうだ」

盗賊「ついでに地形の確認も出来るからまぁ良いだろう」

剣士「高度下げながら行く…何か見えたら教えて」
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:15:32.92 ID:KbfSVIxh0
『フィン・イッシュ上空』


シュゴーーーー バサバサ


盗賊「こりゃ沿岸部が水没してて元の地形が分からん」

ローグ「海抜の低い場所が全部海になりやしたね」

剣士「港も水没して停泊してる船がバラバラだ…」

盗賊「どこで座礁するか分からんから近寄れんのだな」

ローグ「頭の船は見当たりやせんね…」

盗賊「どっかに隠して居るんだろう…」

剣士「どこに飛空艇降ろそうかな」

盗賊「墓地の裏に隠せる場所は有った筈だ…分かるか?」

剣士「分かんない…案内してよ」

盗賊「俺が着陸させる」

剣士「お願い」

盗賊「まず一旦飛空艇隠して女戦士達と合流だな?」

剣士「うん…事情を聞きたいしね」

盗賊「よっし!降ろすぞぉ」グイ


-------------
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:16:19.65 ID:KbfSVIxh0
『墓地の裏』


フワフワ ドッスン


剣士「皆降りて?僕はハイディングさせてから行く」

盗賊「おう!!」スタ

ローグ「やっと頭に会えるっす…」ワクワク

剣士「ハイディング!」スゥ

盗賊「しかしここの墓地は何年経っても変わって無ぇ」

ローグ「地下墓地の入り口の鉄柵がここのシンボルっすよ」

盗賊「あそこはもう毒キノコの培養所になってるの知ってたか?」

ローグ「知って居やすとも…あの毒キノコから作るポーションはフィン・イッシュの財源っすからね」

盗賊「昔は銀鉱山が財源だったんだがな」

ローグ「今でも銀はそこそこの値で取引されていやすぜ?」

盗賊「まぁ資源のある国は強いわな」

剣士「お待たせ…」タッタッタ

盗賊「じゃぁ一先ず城にでも行って見るか」

剣士「こんな格好で大丈夫?」

盗賊「ここの城は一般でも入れるんだ…まぁ大丈夫だろ…行くぞ」スタ



『墓地から続く街道』


スタタタ シュタ シュタ


剣士「お?」

盗賊「忍びだな…どうも慌ただしい様だが…」

ローグ「盗賊さん…これちっとおかしいっすね…あっしら監視されて居やすぜ?」

盗賊「ううむ…女王の暗殺未遂で厳戒態勢かもな」

剣士「ビッグママからもあれから貝殻で通信出来ないんだ」

盗賊「俺らは関わって居ないんだが一応振る舞いには気を付けた方が良いな」

ローグ「いきなり城に行くのはマズイんじゃないすか?」

盗賊「そうかも知れん…一旦宿に入って情報集めるか」

ローグ「その方が無難な気がしやす」

盗賊「俺金持って無いんだがよ…」

ローグ「あっしも持っていやせん」

剣士「ええ!?僕も銀貨30くらいしか無いよ?」

盗賊「4人で飯食って2日って所か…」

女オーク「金貨2枚あるわ」

盗賊「おお!!十分!!」

剣士「ハハなんか貧乏な冒険者だ…」

盗賊「とりあえず今日は宿を取ろう…城に行くのは女戦士にコンタクト取った後だな」

女オーク「金貨2枚預けるわ」チャリン

盗賊「宿はこっちだ…」スタ
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:17:36.29 ID:KbfSVIxh0
『宿屋へ続く街道』


ガヤガヤ ザワザワ

ひぃぃぃん…怖いよう

これこれそんな事言ってはいけないよ

あぁ済みません道を空けます…


盗賊「フル武装の軍隊が巡回していやがる…やっぱ厳戒態勢だわ」

ローグ「すごい数の軍隊っすね」

盗賊「そこらの衛兵とは訳が違う…何か有ったら只じゃ済まんぞ」

剣士「これフィン・イッシュの軍隊だよね?」

盗賊「そうだ…軍隊の全権を持ってるのは元セントラル国王なんだが…」

ローグ「まさかクーデターじゃ無いっすよね?」

盗賊「そら無いだろう…フィン・イッシュ女王とは内縁関係の筈だ」

ローグ「いやいや軍部だけが反乱してるとかそんな感じで…」

盗賊「ううむ…それで女戦士達も全員拘束されてるってか?ありえん話では無いんだがしかし…」

剣士「街の雰囲気を見ると制圧された感じじゃ無いなぁ…」

盗賊「軍隊が巡回している以外は…まぁ平和な感じか」


兵隊「止まれぇぇい!!」スチャ


盗賊「おいおい街中でいきなり武器を人に向けんなよ」ギロ

兵隊「麻薬犬来い!!」

麻薬犬「ガウルル…」クンカクンカ

盗賊「何すんだゴルァ!」

ローグ「盗賊さん…ちっと大人しくしやしょう」

兵隊「麻薬捜査だ…大人しくして居ればどうという事は無い」ジロジロ

剣士「どうして麻薬捜査なんかしているの?」

兵隊「民間人は知る必要無い」

盗賊「何だ三下が偉そうに…武器を人に向けるのと関係無いだろうが」

ローグ「盗賊さんちっと我慢っすよ」

女オーク「ちょっとどこの匂い嗅いでるのよ…」

麻薬犬「ハフハフ」クンカクンカ

兵隊「協力に感謝する…通って良いぞ」スッ

盗賊「ちぃぃ胸糞悪い…行くぞ!」スタ
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:18:56.11 ID:KbfSVIxh0
『宿屋の前』


ザワザワ ガヤガヤ

なんだって急に麻薬捜査なんかやり始めたんだぁ?

路地裏の売人はみんな連れて行かれたらしいぞ?

嗜好品は良いんじゃ無かったのかよ


ローグ「部屋取れやしたぜ?今晩はベッドで寝られるでやんす」

盗賊「俺ぁさっそく情報収集で酒場行きたいんだが…」

剣士「女オークは水浴びしたいだろうから僕は後で一緒に酒場に行くよ」

ローグ「じゃぁあっしは城の方を偵察行って来やす」

剣士「部屋は何処?」

ローグ「2階の一番右奥っす…人が多いんでスリに気を付けて下せぇ」

剣士「お金なんか持って居ないさ」

ローグ「いやいや麻薬とか懐に入れられるのを気を付けて下せぇ…なんかそういう被害が出てるらしいっす」

剣士「ふーん…麻薬の運び屋にさせられるんだ?」

盗賊「そういう技は業界じゃ常識だ…気を付けておけ」

剣士「分かったよ…あれ!?何か懐に入ってる!!」

盗賊「ヌハハ今俺が入れたんだ…こういう事だから気を付ける必要がある」

剣士「全然気づかなかった…」

ローグ「剣士くんはボーっとした所あるんで女オークさんよろしくお願いしやす」

女オーク「ウフフ…」ニマー

剣士「なんか腹立つなぁ…にやけるの止めてくれないかい?」

女オーク「はいはい…行きましょう」グイ


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197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:21:02.11 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ドゥルルルン♪


マスター「いらっしゃいませ…お一人様で…」

盗賊「おぉ!?なんでお前が此処に居るんだ?海士島から引っ越して来たんか?」

マスター「しーーーーーーーっ!!」

盗賊「訳アリって事か?まぁ良い…知った顔に会えて嬉しい」

マスター「お客様…お飲み物は如何いたしましょう?」キョロ

盗賊「芋酒だな…連れが後3人来る予定なんだが…まぁカウンターで良いな?」

マスター「どうぞ…少しお待ちください」

盗賊「しかしこの国は景気が良さそうだ…20年前のセントラル並みに人が集まってる」

マスター「いつこの国へ?」

盗賊「さっき付いたばっかりよ…なんだか兵隊がウロウロしてちっと物騒な感じだが」

マスター「そうですか…」

盗賊「何があったか知ってんのか?」ジロ

マスター「いえいえ私はずっと酒場に居た物ですから…」

盗賊「ほーん…まぁ良いや…ところで前に話してた美味い商売の事なんだが…」

マスター「あぁ忘れて下さい…今はそういう状況では無くなった物ですから」

盗賊「なるほどな?今は話せる状況じゃない訳か…おい早く酒出せよ」

マスター「どうぞ…」キョロ

盗賊「おぉコブラ酒じゃ無ぇか…お前…」

マスター「タンブラーは1つで」

盗賊「むむ…そういうのは止めたつもりだったんだがな…」グビ

マスター「味の方は?」

盗賊「久しぶりに飲んだ…はぁぁ砂漠を思い出す」

マスター「味はよろしいでしょうか?」

盗賊「まぁそう慌てるな…ゆっくり味わいたいんだ」グビ

マスター「…」キョロ

盗賊「ふ〜む…見張りは3人って所か…動きづらいわなヌハハ」


ノソノソ


マスター「いらっしゃいませ…お二人様ですか?」

ローグ「盗賊さん!!連れて来ちやいやした…えらいこってすわ」

盗賊「早かったな…っておい!!なんで女王が居るんだ?」ガタッ
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:22:20.32 ID:KbfSVIxh0
女王「ここに座れば良いか?」ノソノソ

マスター「女王!?様…」

女王「ハチミツ酒が飲みたいのぅ…持って参れ」

マスター「ははは…はい!かしこまりました」

盗賊「又えらくラフな格好で出歩いてんな…良いのかそんなんで」

女王「これは訳アリなのじゃ…ちと説明が長ごうなるでローグ!主が説明せよ」

ローグ「大きな声で言えんのですが…話し方で何となく分かりやせんか?」ヒソ

盗賊「あぁそういう事か…」

女王「わらわは一杯飲んだら行かねばならぬ故…詳しくはローグに聞くのじゃ」


ゾロゾロ ゾロゾロ


盗賊「うはぁ…取り巻きも又スゴイ事になってんな…酒場に連れて来んじゃ無ぇよ」

ローグ「普段からお忍びで街を出歩いているらしいんすよ」

マスター「ハチミツ酒をお持ちしました…どうぞ」プルプル

女王「久方ぶりじゃな…」グビ

近衛侍「女王様…毒味をお忘れで…」

女王「おぉそうじゃったなぁ…じゃがもう遅い」グビグビ

盗賊「いやいやなんか無茶苦茶だな…」

女王「さて近衛侍…次は何処へ行けば良いのかの?」

近衛侍「カジノに御座います…お連れ致します」

女王「済まぬが行かねばならぬ…追って伝令を送る故待って居れ」ノソノソ

近衛侍「ささ…こちらへ」


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199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:24:57.27 ID:KbfSVIxh0
『カウンター』


ワイワイ ガヤガヤ

今のはお忍びで来た女王様だよな?

いつもバレバレなのさ

いやぁぁ今日も平和だ…さぁ飲むぞ


盗賊「…ほんで?なんでこんなんなってんだ?」

ローグ「人に聞かれちゃマズイ話になりやす」

マスター「…」

盗賊「あぁこのマスターは大丈夫だ…」

ローグ「本当っすか?」

盗賊「で?どういう事よ」

ローグ「魔女さんが女王様に成り代わって囮捜査をしているでやんす…話はこうっす」


女王は不妊治療で専属の医者を付けて居た様なんすが

毒を盛ったのはその医者らしいんす

医者の出所はセントラル国王の遠縁の家系でセントラルから派遣されて来たらしいんす

ほんで毒を盛ったのは直ぐにバレて近衛侍に首を切られやした

ここから揉め事の始まりっす

女王直近の近衛達は内縁関係のセントラル国王が主犯だと疑っていやす

一方セントラル国王は近衛が口封じの為に医者を切ったと疑っていやす

つまる所毒を盛った主犯が誰なのか分からんままお互い睨み合っている訳なんす

セントラル国王は愛する女王に毒を盛られた事に激怒して

軍隊総動員で麻薬ヘロインの出所を探っている訳っす


盗賊「なるほどそれで大規模な麻薬捜査か…それで毒を盛られた女王の容態は?」

ローグ「教えて貰っていやせん…というか誰も信じられないもんでお隠れになった様ですわ」

盗賊「お隠れ?」

ローグ「側近にも行方を明かして居ないらしいでやんす」

盗賊「魔女が囮捜査ってのは?」

ローグ「主犯からすると毒を盛った筈なのにピンピンしてるのを見ると落ち着きやせんよね?」

盗賊「それでうろついて見せてるって事か」

ローグ「ほんであっしらは落ち着かない輩を探せと言われやした」

盗賊「なーるほど…」チラリ
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:26:05.50 ID:KbfSVIxh0
マスター「…」チラ

盗賊「お前を見張ってた3人が居なくなったな?どういう事か説明出来るか?」

マスター「私は酒場のマスターですのでここでお話出来る事はありません」

ローグ「あっしが思うにですね?こういうやり口は公爵なんすよ…」

マスター「…」ピク

ローグ「こんな感じでセントラルの皇子3兄弟を分断させたんすよ」

盗賊「まぁ動機は十分そうだな…女王が亡くなればこの国はセントラル国王が牛耳る事になる…その時に良い立ち位置に居れば良いだけ」

ローグ「証拠が何も無いんすよね」


コトン!


ローグ「ん?これあっしにですか?」

マスター「どうぞ…お飲みになって下さい」

ローグ「…」---コブラ酒---

マスター「タンブラーは1つです」

ローグ「盗賊さん…どうしやす?」グビ

盗賊「剣士を待ちたかったんだが…しょうが無ぇ…ちっと芝居打つぞ?」

ローグ「へい!」



--------------
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 14:27:03.82 ID:KbfSVIxh0
ガタン! ドタドタ


盗賊「俺が先に買う約束したんだ…割り込んで入って来るなクソがぁ!!」ドン

ローグ「いやいや何するんすか!!あっしはもうお金払ってるんすよ」スラーン チャキ

盗賊「なんだお前ヤロウってのか?」スラーン チャキ

マスター「え…あ…困ります」

盗賊「おいお前!今俺と寝る約束しただろ…来い!!」グイ

ローグ「レディーが嫌がっていやすぜ?」ダダ ブン グサ

盗賊「痛ぅぅぅ!!この野郎やりやがったな!!」ダダ ブン グサ


ドタン バタン


ザワザワ ザワザワ

なんだぁ?喧嘩か?

外でヤレ外でぇぇ!!

嫌ぁぁぁ血が出てる!

キャァァァ

ザワザワ ザワザワ


マスター「あの…ここでは他のお客様の迷惑に…」オロオロ

盗賊「うるせぇ!こっち来い!!」グイ

マスター「止めて下さい…」ヨロ

ローグ「このぉぉぉ…」ドタドタ

盗賊「出直して来い!」ドカ

ローグ「うわぁぁ…」ゴロゴロ

盗賊「行くぞ!!」グイ

マスター「誰か助けて…」


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