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勇者「魔王は一体どこにいる?」の続編の続編の続編

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:43:36.01 ID:KbfSVIxh0
再び10年後…

魔女の下で修行を終えた僕は

一人旅に出る

始めの目的地はシャ・バクダ遺跡

遠回りをしながらも

幼き頃の友と再会を果たし

今やっと目的地へ辿り着こうとしていた

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3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:44:27.41 ID:KbfSVIxh0
『オアシス砦』


おい!誰か来たぞ

監視所の奴らじゃないか?


衛兵「止まれ!!お前達は何者か?」

剣士「監視所から書簡を届けに…これを」パサ

衛兵「ふむふむ…なるほど怪我人が出て人員が居ないのか…それで代わりに来たと…」

剣士「僕達は情報屋という人を尋ねに来たんだけどここに居るかな?」

衛兵「一先ず門の中に入れ…話は中で聞く」

剣士「うん…ありがとう」グイ 


ドスドス


女オーク「中は小さな町なんだ…」

衛兵「…えーそれで…情報屋を尋ねに来たと言う事だが…まずお前達は誰だ?」

剣士「えーと…どう伝えれば良いかな…シン・リーンの魔女の使いだと言えば信じて貰える?」

衛兵「おおお!!ではお前は魔術師か?」

剣士「うん…照明魔法!」ピカー

衛兵「やっとか!!やっとシン・リーンが要請に応じた訳か…ササこちらへ」

剣士「要請?何の話だろう?」

衛兵「聞いて居ないか?魔物が増えて対処し切れなくなっているのだ」

剣士「ゴメン何も聞かされて居ない」

衛兵「怪我人の治癒だけでも随分助かる」

剣士「それなら簡単だよ…どうすれば?」

衛兵「兵舎に怪我人が居る…流行り病も多い」

剣士「おっけ!任せて」

衛兵「案内する」スタ
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:45:06.34 ID:KbfSVIxh0
『兵舎』


ぅぅぅぅ…治療師はまだか

毒消しがもう無い…辛抱しろ


衛兵「おい!喜べ!魔術師が来たぞ!」

剣士「うわ…皆毒に掛かってるのか…どうして?」

衛兵「スプリガンとスライムだ…加えて最近はマンイーターという植物の魔物も発生している」

剣士「まとめて一気に治療するよ?驚かない様に?」

衛兵「回復魔法に驚くも何も…」

剣士「線虫!毒を食らえ!」ザワザワ ニョロリ


ワサワサワサ ニョロニョロ


衛兵「虫!!うわぁぁ」タジ

剣士「大丈夫…虫が全部毒を食べて体も癒すから」

衛兵「こ…これで治療は終わりか?」

剣士「うん!直ぐに良くなるから安心して?」


ぎゃぁぁぁ助けてくれぇぇ

ひぃぃぃ虫が…虫がぁぁぁ


衛兵「シン・リーンもまた特殊な魔術師を送って来る…」

剣士「ところで情報屋さんは何処に?」

衛兵「あぁそうだったな…残念だが入れ違いになっている」

剣士「ええ!!もしかして居ない?」

衛兵「随分前にシン・リーンの気球に乗って何処かへ向かった様だ…至急の事で行き先はわからん」

剣士「なんだ無駄足だったかぁ…困ったなぁ」

衛兵「なんなら砦に身を置いて戦力になって貰えると助かるのだが…」

剣士「用事があっていつまでも居る訳には行かないんだ」

衛兵「情報屋を訪ねる以外に用事があると?」

剣士「精霊樹に行きたいんだよ…場所が分からない…情報屋さんに聞こうと思ってたのさ」

衛兵「この辺りの事情を知らない様だな?」

剣士「事情というと?」

衛兵「精霊樹は遺跡の北西に位置するがエルフの許可が無いと立ち入れないのだ」

剣士「遺跡の北西ね…おけおけ」

衛兵「聞いて居るのか?エルフの許可が…ん?まさか魔女様の許可を得ていると?」

剣士「ハハ…まぁそんな感じかな」

衛兵「許可を得ているなら行っても構わんがくれぐれもエルフと揉め事だけは起こさない様に」

剣士「大丈夫だよ」

衛兵「森で野生の動物を倒すのは厳禁だ…クマが相手でも手を出さない様に」


ピーーーーーー ピーーーーーー


衛兵「敵襲だと!?まだ昼間だぞ!!話はここまでだ」ダダダ
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:45:41.02 ID:KbfSVIxh0
『中庭』


ガヤガヤ ドタドタ

閉門!!閉門!!

ダメだぁ!!撃つな!!


門番「北側にウルフ20頭…西側にも20頭ほどに囲まれてる」

衛兵「松明を用意しろ!!火で寄せ付けるな」ドタドタ


剣士「…参ったな門を閉じられちゃった」

女オーク「足止めね…」

剣士「今から精霊樹に行っても夜になるだろうから一晩待とうか」

女オーク「上…」

剣士「ドラゴンずっと旋回してるね…なんか思ったより慌ただしいなぁ」

女オーク「夏なのに雪も少しチラついてる」

剣士「寒くなりそうだね…宿はあるんだろうか?」

女オーク「寒さ凌ぐのは兵舎で良いのでは?」

剣士「折角だしベッドで寝たいよね」

女オーク「シたいの?」

剣士「ハハずっとシテ無いしね」

女オーク「ウフフ…」

剣士「あ!そうだ…どうして君が金貨持ってる?」

女オーク「剣士はお金に無頓着だからって商人が私に渡したの」

剣士「なんだ…そういう風に見られてたのか」

女オーク「お金ある?」

剣士「全部飛空艇に置いてきた」

女オーク「ほらね?」

剣士「ハハまさかお金が必要になるとは思ってなかったさ」

女オーク「私はお金の相場が分からないから心配…」

剣士「シカ一匹金貨2枚はちょっと高いかな…でもあの場合は仕方ない」

剣士「それで商人さんから幾ら貰った?」

女オーク「金貨10枚よ…残り6枚ね」

剣士「なんだケチだなぁ…色々協力した割に…」

女オーク「代わりに地図とか羅針盤を貰ったでしょう?」

剣士「まぁ良いや!宿を探そう」スタ
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:46:14.21 ID:KbfSVIxh0
『宿屋』


オンギャー オンギャー


婆「おやおや…定期便が来ていないのにお客とは珍しい…おぉよしよし」ユラユラ

女オーク「赤ちゃん?珍しい…」

剣士「本当だね…」

婆「騒がしくて済まないねぇ」オーヨシヨシ

剣士「宿空いてる?」

婆「食事の用意は無いが良いかね?」

剣士「寒さ凌げれば良い…一晩いくら?」

婆「一人銀貨5枚だよ」

女オーク「はい…」コロン

婆「あらま?金貨かね…お釣りが用意出来んのだがどこぞで銀貨に変えて来れんか?」

剣士「露店も商人も居なかったんだ…どうしようかな」

女オーク「もう良いじゃない?どうせ使い道無いのだし」

剣士「ハハお金に無頓着は君も同じじゃ無いか」

婆「釣りを用意出来んのは悪いでせめてコレを持ってお行き」ジャラリ ドスン

剣士「銀貨50とお酒かぁ…このお酒は?」

婆「サボテン酒だで?昔はサボテンが沢山あったのだが今はもう無いで貴重な酒なんよ」

剣士「おけおけ!思わぬ楽しみが増えたよ」

婆「ゆっくり休んで行きーな」

赤ちゃん「オギャーオギャー」ヒック


---子供は生まれる所では生まれるんだ---
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:46:45.57 ID:KbfSVIxh0
『部屋』


ガチャリ バタン


女オーク「質素なお部屋…」

剣士「さて!どっちが強いか勝負しようか」

女オーク「もう?ウフフ良いわ」


ドタン バタン ドスドス

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剣士「フフフ僕の勝ちだ!」

女オーク「ま…まだ…」ビク ビク


ザワザワ ザワザワ


剣士「外が騒がしいな…」

女オーク「逃げる気?」ガクガク

剣士「ちょっと様子見て来る…君は休んでて良い」ゴソゴソ

女オーク「まだ負けてないから…」グッタリ

剣士「行って来る!」スタタ
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:47:12.95 ID:KbfSVIxh0
『中庭』


ザワザワ ザワザワ

スライムが入り込んでる!

ダメだここで倒すな!毒が広がる

門が閉まってるんだどうしろってんだ

魔術師が居た筈だ探して来い


剣士「スライム…たった一匹でこの騒ぎか」

衛兵「居た!!良かった…我々ではスライムを焼けない!なんとかしてくれ」

剣士「分かった…火炎魔法!」ボボボボボ


スライム「プギャァァ…」メラメラ


衛兵「破裂するぞ?」

剣士「サンドワーム!従え!スライムを食らえ!」


モゾモゾ ズドーン バクリ


衛兵「サンドワーム…」タジ

剣士「大丈夫!驚かないで…サンドワームを操って居るから」

衛兵「そ…そうか…撃つなぁ!!サンドワームを撃つなぁ!!」

剣士「サンドワーム!地中に潜れ!」


モゾモゾ モゾモゾ


剣士「あと穴を埋めておけばもう戻って来ないよ」

衛兵「助かった…さすがシン・リーンの魔術師」

剣士「北の空で炎が…」

衛兵「アレはドラゴンのブレスだ…精霊樹に近付くスライムを焼いて居る」

剣士「エルフとドラゴンが戦って居る敵がスライム?」

衛兵「そうだ…エルフとドラゴンは精霊樹を守って居るのだ…敵はスライムにスプリガン…そしてマンイーター」

剣士「なるほど事情が読めて来た…この砦はサンドワームに守らせるから安心して」

衛兵「助かる…しかしサンドワームは我々の主食だ…どうすれば?」

剣士「好きにしたら良い…サンドワームは沢山居るから」

衛兵「ハハ良く分からんが兎に角感謝する」


分かって来たぞ

エルフとドラゴンはドリアードの浸食から精霊樹を守って居るんだ

彼らもドリアードと戦っている

そしてウルフは多分僕を迎えに来てるんだ

行かなきゃ
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:47:45.12 ID:KbfSVIxh0
『宿屋』


ガチャリ バタン


女オーク「聞こえていたわ?魔物が進入して来たのね?」

剣士「うん…女オーク聞いて?僕の友達が砦の外で僕を待って居る様なんだ」

女オーク「友達?こんな所で?」

剣士「君には言ってなかったけど…ずっと一緒に過ごして来たウルフが居るんだよ」

女オーク「ウルフ…それで砦が包囲されて居るのね?」

剣士「多分ね」

女オーク「迎えに行くのね?」

剣士「うん…少し離れて待っている様に話してくる」

女オーク「一人で平気?」

剣士「大丈夫…その方が動きやすい」

女オーク「分かったわ…」

剣士「ゴメンね?続きはまた今度」

女オーク「…いいわ」

剣士「じゃぁ行って来る」タッタ


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アオーーーン アオーーーーン
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:48:17.95 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


チュン チュン


剣士「よし!行こう…遺跡でウルフが待ってる」

女オーク「うん…昨夜は寝て居ないのでしょう?大丈夫?」

剣士「平気さ…君も寝ていない顔をしているよ」

女オーク「平気…癒されたから」

剣士「どんぐり食べる?」ポイ

女オーク「…」モグ


---------------


門番「開門!!開門!!」ガラガラガラ ガシャーン

衛兵「昨夜は世話になった…獣道から逸れると危ないから気を付けて」

剣士「もうウルフが来る事は無いから安心して良いよ?」

衛兵「ウルフも使役するのか?」

剣士「まぁね?」

衛兵「フフさすがシン・リーンの魔術師…協力に感謝する」ビシ

剣士「シカさん行くよ?お願い…」


ドスドスドス  
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:48:52.74 ID:KbfSVIxh0
『獣道』


チュンチュン ピヨ


剣士「昼間はうって変わって良い雰囲気の森だ」

女オーク「鳥が沢山…」

剣士「えとね?秘密があるんだよ?あの鳥たちは本当はトロールなのさ」

女オーク「本当に?」

剣士「パパに教えて貰った…トロールっていつも肩に鳥を乗せてるんだって」

女オーク「へぇ?トロールは見た事無いわ」

剣士「南の大陸には居ないもんね…そして夜にしか動かない」

女オーク「じゃぁ森の中にある大きな石は…」

剣士「多分トロールだよ…僕らの話声は全部聞こえてると思う」

女オーク「変なお話出来ないわね?」


グルルル ガウ


女オーク「え!?ウルフ?」

剣士「あぁぁコラコラ!遺跡で待っててって言ったじゃない」

ウルフ「ガウルルルル…」

剣士「え?あぁ僕の奴隷の女オークさ」

女オーク「剣士は私の奴隷よ…」

剣士「まぁどっちでも良いや…彼女強いんだよ?」

ウルフ「ウゥゥゥゥ…」

剣士「大丈夫だって!威嚇しないで?」

女オーク「ウルフとお話出来るんだ…」

剣士「付き合い長いからね…え?毒?そうか…みんな線虫欲しいんだね?おけおけ…向こうに着いたらやってあげる」

女オーク「ウルフたちも毒に?」

剣士「そうらしい…薬草を探すのに随分遠くまで行く必要があるみたい」

女オーク「ウルフも私達と同じなのね」

剣士「そうだよ?言葉が通じないだけで人間と仲良く出来ない…オークと同じだね」

女オーク「私がオークだって分かってる?」

剣士「匂いですぐに分かるさ…ウルフは人間よりずっと鼻が利く」

女オーク「それで直ぐに剣士を見つけたのね」

剣士「いづれこの森に来ると思って待ってたんだって」

女オーク「賢いわね」

剣士「人間と同じくらいにはね?…でもね?物を投げられると反射的に拾いに行く癖がある」

女オーク「フフ…」

剣士「あんまり遊ぶと噛まれるけどねw」

ウルフ「ガウルルルル…」ガブガブ

剣士「分かった分かった秘密にしとくから…」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:49:19.98 ID:KbfSVIxh0
『シャ・バクダ遺跡』


ウゥゥゥ ガルルルル


剣士「線虫!癒せ!」ザワザワ ニョロリ

ウルフ「ワオーーーン!」パタパタ

女オーク「喜んでるw」

剣士「さて…折角遺跡に来たからパパとママを最後に見た場所に行って見よう」

女オーク「この遺跡で最後を?…」

剣士「直ぐ近くなんだ…どこだっけな」

ウルフ「ガウガウ…」シュタタ

剣士「そっちか!全然景色が変わってる…」

ウルフ「ガウ…」ココホレワン

剣士「ここだ…この場所だ…」

女オーク「…」

剣士「…」スゥ


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13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:50:00.95 ID:KbfSVIxh0
『あの時』


僕「パパ?どうする気?」

パパ「未来…自分の次元を強く持て」

僕「え?どういう事?」

パパ「見ていれば分かる…言う事聞けるな?」

僕「ママも一緒に行っちゃうの?」

ママ「一緒に魔王を倒すからちゃんと見ていなさい」

僕「…うん」

パパ「女戦士!後は頼んだ…エルフ達!援護を頼む!行くぞ」シュタタ

ビッグママ「未来…意味がわかるか?」

僕「…」

ビッグママ「最後まで良く見て置け…勇者の宿命だ」

僕「パパ…ママ…」



パパとママが魔王を封じるのを

ほとんどの人が見ていなかった

こんなにもあっさりと物事が終わって

僕の心にポカンと穴が開いた

大きな変化は何も無いのに

只…目の前から消え去った

その後に光る夜が来た

その時

僕が始まった

僕の物語


---なんだろうこの違和感---
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:51:04.76 ID:KbfSVIxh0
『シャ・バクダ遺跡_地下』


学者「見学ですかね?」

剣士「昔ここに避難してた事があってね…近くまで来たから気になったんだ」

学者「ほう…そうでしたか…散らかって居ますが遺物には触らない様にお願いします」

剣士「うん…書物は読んでも?」

学者「考古学に興味がおありで?」

剣士「僕はシン・リーンの魔術師さ」

学者「これは失礼しました…ご自由にお読みください」

剣士「ありがとう…汚さない様にするよ」


-------------


女オーク「ここも思い出の場所なのね?」

剣士「あんまり良い思い出は無い…情報屋さんの行先が分からないかと思ってさ」

女オーク「難しそうな資料ばかりなのね…分かるの?」

剣士「ハハ全然分からない…」パラパラ


超古代史とウンディーネ伝説との関連

古代史と自転の変化による文明の崩壊と再構築

近代史における魔術介在による文明の変遷

人類行動の進化過程

食料生産と放牧の傾向

超高度AIの発見と発祥の考察


剣士「あれ?ホム姉ちゃんの事が書かれてる…こんな事まで研究してるんだ…へぇぇすごいな」


パサ ヒラヒラ


女オーク「何か紙が落ちたわ?」

剣士「この書物からだ…あ!!これ情報屋さんの日記だ」ヨミヨミ

女オーク「何の絵かしら…」

剣士「あ!!僕が書いた地図…そうだドリアード遺跡に行くつもりだった」


---慌てて地図を置き忘れた---

---その後どうしたんだっけ---


女オーク「あまり他人のプライベートを見ない方が良いのでは?」

剣士「…」ヨミヨミ

女オーク「ダメよそれ以上見たら」グイ

剣士「ちょっと待って大事な事が書いてある」


---おかしい---

---僕の記憶と日記に記された事実が噛み合わない---
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:51:41.26 ID:KbfSVIxh0
『勇者の像』


剣士「…」ボーーー

女オーク「どうしたの?さっきから顔色悪いわ?」

剣士「ううん…何でも無いよ」


スタスタ


剣士「誰か来る…」スチャ

女オーク「え!?」

エルフゾンビ「此処に居たか…勇者の子だな?」

剣士「エ…エルフゾンビさん?」

エルフゾンビ「如何にも…お前を数度しか見たことが無かったが…勇者に瓜二つだな」

剣士「ホッ…良かった…探さないで済んだ」

エルフゾンビ「精霊樹が呼んで居る…付いて来い」

剣士「え!?…精霊樹が僕を?」

エルフゾンビ「精霊樹に呼ばれる意味は分かるか?」

剣士「まさか…僕を勇者にするつもりだったり?」

エルフゾンビ「すでに勇者だ…導きを受けるのだ」

剣士「僕の勇者の眼はママが…」

エルフゾンビ「青い瞳の宿命はお前の母が背負った…それだけだ」

剣士「え?それだけって…」

エルフゾンビ「来い…」スタスタ

剣士「あ…女オーク!見学は終わりだ…付いて行こう」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:52:22.18 ID:KbfSVIxh0
『精霊樹』


サラサラ サラサラ


剣士「沢山のエルフに囲まれてる…」

エルフ「…」ジーーーー

剣士「!!?」

エルフ「…」ピク

剣士「君は…僕の夢に何度も…顔を良く見せて」ジロ

エルフ「…」ジーーーー

剣士「やっぱり…どこかで僕と会ってるよね?」

エルフゾンビ「ん?どうした?エルフの戦士と面識が有ったのか?」

エルフの戦士(お前があの時の蟲使いか?)

剣士「そうだよ僕は蟲使いだ…夢じゃ無かった…本当の出来事だったんだ」

エルフの戦士(元気そうで何より…額の傷はすっかり良くなった様だな?)

剣士「ずっと夢だと思ってた」

エルフの戦士(例の金属を取りに来たのか?)

剣士「金属?覚えていない…」

エルフゾンビ「再会して話をしたいだろうが時間が無い…先に精霊樹の導きを受けろ」

剣士「え…あぁそうだった…どうやって声を聞けば良いの?」

エルフゾンビ「目を閉じて感じろ…」

剣士「瞑想か…」スゥ


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17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:53:53.05 ID:KbfSVIxh0
『数分後』


剣士「…」パチ

エルフゾンビ「導きを聞いたな?」

剣士「ぁ…こ…これはどういう事だ?思い出せって何の事だろう…」

エルフゾンビ「混乱して居るのか?」

剣士「僕には森を統べる力が有ると…導きを思い出せって…何の導きなのか…」

エルフゾンビ「白狼の血脈も受け継いでいるのだ…その記憶の事では無いのか?」

剣士「僕が森を守るという事?」

エルフゾンビ「精霊樹は助けを求めているのだ…恐らくお前にしか出来ない」

剣士「命の種子は夜に運ばれる…闇に光を照らしてって…意味が分からない…どうすれば良いの?」

エルフゾンビ「それはお前が答えを見つける事だ…一つ分かるのは命の種子と言うのは精霊樹の花粉の事」

剣士「花粉は夜に運ばれる…闇に光…月の事か?」

女オーク「剣士?エリクサーの事は伝えた?」

剣士「うん伝えたよ…でも返事が無い」

エルフゾンビ「ほう?…察するにエリクサーを求めに来たな?」

剣士「うん…ホム姉ちゃんを蘇らせる為にエリクサーが樽で4〜5杯必要なんだ」

エルフゾンビ「なんだと?今何と言った!?ホムンクルスが蘇るだと…時代の節目はまだ先だと言うか!!」

剣士「えーと話しが掴めない…時代の節目って何?」

エルフゾンビ「お前はアダムという神が復活したのは知って居るな?」

剣士「うん…」


我々エルフはアダムと決別し精霊樹を主として生き永らえている

アダムは新たな森を構築し始め我々エルフは追い出されたのだ

精霊シルフが滅び新たなアダムという神の下

新時代を受け入れたつもりだがアダムはそれを許さなかった

精霊樹の森を侵食し始め我々は窮地に立って居る

その最中お前がこの森へ訪れ…今…精霊を蘇らせると言う


エルフゾンビ「分かるか?我々の敵はアダムだ…新時代はまだ来ていない」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:54:29.32 ID:KbfSVIxh0
剣士「僕が思って居る事と同じだ…やっぱりそういう事なんだね…」

エルフゾンビ「お前はそれを知りながらここに訪れたと?」

剣士「今は時期尚早だって僕の爺いじが言ってる」

エルフゾンビ「尚早?何故?」

剣士「あの光る隕石だよ…ミサイルって言ったっけ…あれを封じる事が出来るのはホム姉ちゃんだけ…あれ?違う」

エルフゾンビ「どうした?何が違う?」

剣士「違う違う!!思い出せってこういう事か…」

エルフゾンビ「一人で解決するな…話せ」

剣士「僕は光る隕石を回避する術をもう打ってる…その為に10年前に森に入った」チラ

エルフの戦士「…」ジーーーー


ズゴゴゴゴ ドーン


エルフゾンビ「むむ!!御所への通路を精霊樹が開いた…エリクサーの許可が出たらしい」

剣士「ああ…それは良かった」

エルフゾンビ「樽は持って来ているか?」

剣士「飛空艇に乗せてある…ここまで乗って来ても良い?」

エルフゾンビ「急げ…日が暮れると森の浸食が始まる」

剣士「女オーク!ここで待ってて?僕一人で走った方が早い」

女オーク「分かったわ…気を付けて」


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19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:55:47.96 ID:KbfSVIxh0
『1時間後』


フワリ ドッスン


剣士「飛空艇持って来たよ…」タッタッタ

エルフゾンビ「もうすぐ日暮れだ…今日はもう飛空艇で飛べないと思え」

剣士「戦いが始まるんだね?」

エルフゾンビ「この場所は比較的安全だから今晩はここに置いておくのだ」

剣士「分かった…急いでエリクサーを積む…女オーク!樽2つお願い」

エルフゾンビ「御所まで案内する」

剣士「エルフの戦士と話がしたい…案内は彼女にお願いしても良いかな?」

エルフゾンビ「そうか?エルフの戦士…案内をご指名だが行ってもらえるか?」

エルフの戦士(付いて来い…)スタ



『御所までの通路』


スタスタ スタスタ


剣士「記憶が確かじゃないけど…あの時はありがとう」

エルフの戦士(フフ…頭蓋が割れて良く助かった物だ…記憶の喪失は仕方あるまい)

剣士「ずっと夢の出来事だと思って居たんだ…君に再会出来て記憶が蘇ってきた」

エルフの戦士(お前はエルフの森で虫に命令を与えると言って居たな?)

剣士「うっすら覚えてる…」

エルフの戦士(お前のお陰で私達は今日まで生き永らえたとも言い換えられる)

剣士「どういう事?」

エルフの戦士(お前と別れてしばらくしてから虫達の行動が変化したのだ)

剣士「それは良かった」

エルフの戦士(それまでは虫も敵だったのが一転して虫はエルフを襲わなくなった…私はお前の力に震えたよ)

エルフの戦士(だがドリアードの浸食は想像を絶する速さで進行し…この有様だ…最後の砦の精霊樹をどうか守って欲しい)

剣士「なんか色々思い出して来たぞ…僕は記憶を無くしたんじゃなくて夢の中に仕舞っていた様だ」

エルフの戦士(精霊樹から導きを受けると言う事は何か託された筈…どうか実らせて欲しい…勇者殿)

剣士「うん…今導きを理解したさ」

エルフの戦士(さぁ到着だ…)
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:57:05.72 ID:KbfSVIxh0
『精霊の御所』


シーーン


エルフの戦士(エリクサーは中央の器の中だ…そこに例の金属も沈んで居る筈)

剣士「あ!!わすれてた…ソレだよソレ」

エルフの戦士(お前は生き絶え絶えでその金属をここに持ってくる様に私に伝えたのだ…何なのだ?)

剣士「有った…超高度AIユニット…そうだ僕が掘り起こしたんだ…これも現実だったか」

エルフの戦士(超高度AIユニット?)

剣士「分かって来たぞ…この森は森の声が聞こえるね?」

エルフの戦士(聞こえる)

剣士「精霊はこの森で生きてる…そうか…そういう事だったのか」


エルフの森で声が聞こえなくなったのは

声の役割をしていた精霊の伴侶という超高度AIユニットが停止したからなんだ

ホム姉ちゃんは今も森の声を使って上手に動物を導いてる

超高度AIユニットのあるべき場所は此処だ

これでドリアードの中に居るアダムと同じ条件…対等になってるんだ


エルフの戦士(導きの声だ…)

剣士「え?聞こえない…」

エルフの戦士(感じろ)

剣士「あぁそうか…え?母からの贈り物?なんでママから…」

エルフの戦士(私は体の震えが止まらない…精霊樹がお前に祈りの指輪を授けた…私はハイエルフに報告に行かねばならない)

剣士「いのりの指輪…あ!これか…」スッ

エルフの戦士(これから何が起こる?…いや私からでは差し出がましい)

剣士「これは僕を守る物…これが精霊の加護なのかな?…」

エルフの戦士(済まない…失礼する)シュタタタ


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21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 09:58:30.40 ID:KbfSVIxh0
『帰路』


ヨッコラ ヨッコラ


剣士「エリクサー満タンの樽2個背負うのはさすがに重いね」ヨイショ ヨイショ

女オーク「私の勝ちね?」ドスドス

剣士「体力はいつも君の勝ちさ」

女オーク「ところで…私はエルフの使う言葉が理解出来なくて話の全容が分からないのだけれど…」

剣士「話が長くなっちゃうんだけどさ…」


何処から話そうかな…

10年前にシャ・バクダの遺跡で冒険の書っていう書物を読んだんだ

そこに描かれて居たのは未来の予言…

僕はそれを変える為にエルフの森に行ったんだよ

そこで出会ったのがさっき居たエルフの戦士

まぁ色々あって僕は記憶を無くしたみたいでさ

今まで何かおかしいなぁって思いながら過ごして来たんだ

でも今日ここに来てエルフの戦士に再会したら色々思い出した

未来の予言を変えるのは多分まだ間に合う

何故なら変えるための仕掛けを10年前に終わらせてたからさ

そしてさっき精霊樹からいのりの指輪を授かった

この指輪はね…量子転移っていう魔法が封じられてるんだ

普通はその魔法を使ってこの世の理を超えた事をすると次元の狭間っていう所に迷ってしまう

でもこの指輪を使って同じ事をすると身代わりに砕け散ってくれる

つまり持って居る人を守るんだよ


剣士「理解できる?」

女オーク「…なんとなく」

剣士「簡単に言うと未来を無理やり変えると僕は次元の狭間に迷う…でもこの指輪が身代わりになって僕を守ってくれる」

女オーク「変えたい未来が何なのか分からないから…」

剣士「そうだろうね…僕も記憶が少し曖昧になってる…一つ言えるのは僕がこの世の理を破っても無事で居られるという事」

女オーク「そう…それなら安心した」

剣士「本当はね…勇者の青い瞳を持って居れば良かったんだ…でもそれはママが持って行っちゃった」


---だから指輪を残してくれたのかな---
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:00:18.47 ID:KbfSVIxh0
『精霊樹』


サラサラ サラサラ


エルフゾンビ「聞いたぞ?いのりの指輪を授かったそうな」

剣士「うん…大丈夫かな?エルフの秘宝だよね?」

エルフゾンビ「精霊樹の導きはエルフにとって絶対なのだ…問題無い」

剣士「ねぇエルフゾンビさん…戦いまで後どれくらい?」

エルフゾンビ「1時間程か…お前にも強力して欲しいと思って居た所だ」

剣士「それは良いけど…もし僕が今晩アダムを破壊すると言ったらどうする?」

エルフゾンビ「又突拍子の無い事を言う…そんな事が可能なのか?」

剣士「僕を信じてくれるかな?」

エルフゾンビ「まずどうやるのか話せ」

剣士「エルフ全員とドラゴンにも聞いて欲しい…そうだトロールにも」

エルフゾンビ「問題ない…森の声で全員に伝わる」

剣士「そっか…じゃぁ話すね」


僕は蟲使いだ…森に居るすべての蟲を使役する事が出来る

この蟲達に命令してドリアードを攻撃しようとすると

多分10年前と同じ光る隕石が飛んできてすべて焼かれてしまう

でも地面の中からだとどうだろう?光る隕石を自分には落とせない筈

僕は10年前…ワーム等の地生昆虫にドリアードの根を住処にする様に命令した

ダンゴムシにはドリアード内部で繁殖する様に命令して

今は大量の虫の巣窟になって居る筈

その蟲達を一斉に爆発させる…その威力は想像できない

それだけだと内部のアダムを破壊出来ない可能性があるから

僕はドリアード内部に侵入して直接アダムを破壊する準備もある

ママが作ったウラン結晶の爆弾

アダムさえ破壊してしまえばその他の蟲達を使ってダイダラボッチを起こせる

そしてすべてを食らい尽くす


エルフゾンビ「ドリアードに侵入するのはお前だけでは危険過ぎる」

剣士「そうだね…だからこうして話してるのさ…ドリアードの中での抵抗がどのくらいか分からない」

エルフゾンビ「今晩の戦いから人員を裂けと言って居るか?それは厳しい」

剣士「あと2人居れば良い…大勢だとかえって邪魔になる」

エルフゾンビ「2人か…」


エルフの戦士(私が行こう)ズイ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:00:55.68 ID:KbfSVIxh0
エルフゾンビ「ではもう一人は私という事になるか…しかし私達もギリギリの戦い」

剣士「あ!そうだ思い出した…マンイーターに苦戦しているよね?」

エルフゾンビ「う…うむ」

剣士「攻略法を教えるよ…弓矢でどんぐりを撃ち込んで成長魔法…これだけで干からびる」

エルフゾンビ「木にするのか…それは本当か?」

剣士「うん…これで地上戦は問題無い筈…2人の人員不足は補える」

エルフゾンビ「そうか…試してみる価値はありそうだな」

剣士「実はね…僕すごく自信がある…他にも色々出来るんだ」


サラサラサラ サラサラサラ


剣士「ほら?精霊樹は穏やかだよ?」

24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:07:07.36 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


剣士「乗って!直ぐに出る」

エルフゾンビ「フフ即行動か…詳しく聞く間もないな」スタ

エルフの戦士(…)キョロ

女オーク「扉閉めるわ」バタン


フワフワ シュゴーーーーー


剣士「シャ・バクダの廃墟の少し北から徒歩で行く…エルフゾンビさんドリアードの場所分かるかな?」

エルフゾンビ「おおよその位置は知って居るが詳しくは知らん」

剣士「おおよそで問題無いかな…現地の蟲達に案内させるから」

エルフゾンビ「それは結構…お前は初めて行くのだな?周辺は死の森となって居るが問題無いか?」

剣士「あー僕の情報が古いか…ケシの花が沢山咲く場所だと聞いてた」

エルフゾンビ「10年前の話だ…今は死の森に飲まれて毒の湿地帯になっている」

剣士「シャ・バクダ北から徒歩でどのくらいで行けそう?」

エルフゾンビ「私達の足で直線4時間という所だ…湿地を迂回して6時間だな」

剣士「…という事は攻略の開始は深夜…朝日が昇る頃には終わる筈」

エルフゾンビ「上手く行けば良いがな…」

剣士「内部での抵抗がどれだけあるか分からないんだけど何か知らない?」

エルフゾンビ「さぁな?誰も行った事が無い」

剣士「まぁなんとかなるか…エルフゾンビさんはパパと同じくらい強いって聞いたし」

エルフゾンビ「買い被るな…私は不死者で打たれ強いだけだ」

剣士「エルフの戦士さんは弓使いだったね?」

エルフの戦士(そうだ)

剣士「おけおけ…回復役は僕が出来るから余程行ける」

エルフの戦士(触媒は十分あるか?)ニヤ

剣士「アハハそういえば昔触媒無くてすごく困った気がする…今は沢山持ってるさ」

エルフゾンビ「しかし早いなこの飛空艇は…もうシャ・バクダの廃墟か」

剣士「うん…もう降りるよ…死の森の少し手前に降ろす」グイ


シュゴーーーー バサバサ
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:07:44.46 ID:KbfSVIxh0
『死の森_手前』


フワリ ドッスン


剣士「降りて…ウルフは飛空艇で留守番だよ…しっかり守ってね」

ウルフ「ガウガウ…」

エルフゾンビ「嫌な匂いだ…」プーン

剣士「もう線虫を掛けて置いた方が良さそうだ…線虫!」ザワザワ ニョロリ

エルフゾンビ「む…この虫は私にも効果が在るのか?」

剣士「毒を食らうんだけど…どうなんだろ?」

エルフゾンビ「腐敗は毒か?」

剣士「もしかすると腐敗が止まるかもしれない」

エルフゾンビ「エリクサー漬けが改善出来るなら大した発見になる」

剣士「効果はエリクサー飲むのとほぼ同じかな」

エルフゾンビ「フフ期待している」

剣士「よし!皆降りたね?飛空艇を狭間に隠す…」スゥ

エルフゾンビ「では私が先行する…付いて来い」シュタタ

剣士「ウルフ!留守番頼んだよ!!」シュタタ

ウルフ「ガウガウ…」フリフリ


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26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:08:26.97 ID:KbfSVIxh0
『死の森』


ポコポコ プシューー


剣士「見た事無い植物ばかりだ…いやキノコなのかな…」

エルフゾンビ「よそ見して居ると遅れるぞ」シュタタ

剣士「ニョロニョロの先っぽに目が在る…なんだアレ」シュタタ

女オーク「右前方に何か複数居るわ」ドスドス

エルフゾンビ「スプリガンだ…構ってる暇は無い…走れ」

剣士「お!!蝿虫!従え!」ブーン ブン ブン

エルフゾンビ「!!?使役か…フフそれは良い」

エルフの戦士(フフ…)

剣士「蝿虫!ドリアードまで案内しろ!」ブーン

エルフゾンビ「なるほど…私の案内より確実そうだ」


プシュー


エルフの戦士(胞子の散布が始まった…視界が悪くなるぞ)

剣士「…これは」

エルフゾンビ「見とれて居るのか?雪の様に見えるが猛毒の胞子だ…それが森まで飛来する」

剣士「こんなに多いのか…これを全部焼くんだ?」

エルフゾンビ「全部が飛来する訳では無い…ただ一つでも逃すとそこで発芽して浸食される…あっという間にな」

エルフの戦士(上空でアルラウネが南下を始めてる…始まるぞ)

エルフゾンビ「下を行く私達には見向きもせん様だ…このまま進め」シュタタ


--------------


エルフゾンビ「ドラゴンライダーが出張っているな…私達を見て居るか」

エルフの戦士(戦線が伸びると胞子を焼き逃すと言うのに…)

エルフゾンビ「ハイエルフはいのりの指輪の行方を気にしているのだ…仕方が無い」

剣士「そうか…アダムの懐だもんね」

エルフの戦士(…)ジロリ

剣士「なるほどね…君が同行を志願したのも同じ理由なんだね」

エルフの戦士(信用していない訳では無い…悪く思うな)

女オーク「前方左に見た事無い敵!!複数いるわ…何?」

エルフゾンビ「異形のスライムだ…触手を持って居る…多いな」

エルフの戦士(私に任せろ…先に行け)シュタ クルクル ピョン

エルフゾンビ「こっちだ!私に続け」シュタタ
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:09:18.65 ID:KbfSVIxh0
『死の森_深部』


ブーン ブンブン


剣士「爆ぜろ!」パーン ベチャ

異形のスライム「プギャーー」ドロドロ

女オーク「フゥ…フゥ…」

エルフゾンビ「直線で4時間と言ったが撤回する…この調子では6時間だ」

エルフの戦士(後方の敵は処理した…進め!)

剣士「蝿虫!先行しろ!」ブーン

エルフゾンビ「蝿が随分集まったな?」

剣士「スライムは蝿虫で処理するから進んで」

エルフゾンビ「そうだな…行くぞ!」シュタタ

女オーク「まだ居るわ!」

剣士「おけおけ!蝿虫行け!…爆ぜろ!」パーン ベチャ

エルフの戦士「続け!!」シュタタ


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28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:10:03.89 ID:KbfSVIxh0
『毒霧』


モクモク シュゥゥゥ


エルフゾンビ「この辺りの筈だ…しかしこの毒霧では視界が…」

剣士「毒霧で蝿虫が全部やられた…」

女オーク「他の敵が居ない…この毒霧はドリアードが?」

エルフゾンビ「恐らくな?」

剣士「狭間で隠してるらしいから毒霧も併せて誰も近づけない様にしてるんだね」

エルフゾンビ「どうする?狭間に隠れて居るものを探すのは虫の案内が無いと厳しい」

剣士「地中にワームが居る…ちょっと動かすよ…出でよワーム!我をドリアードへ導け!」


ドドドドド ズドーン


剣士「一匹動かした」

エルフゾンビ「この大きさのワームが無数に潜んで居るのか?」

剣士「そうだね…何匹居るのか見当もつかない」

エルフの戦士(フフ…10年の仕込みか)

剣士「ドリアードに気付かれたく無いから静かに行こう…進めワーム!」


モソモソ ズズズ


剣士「あっちだ…この辺は静かだね」スタスタ

女オーク「視界が悪いし不気味だわ…」キョロ

エルフゾンビ「深夜を回った…恐らく丑三つ時」

剣士「少し遅れたけど時間は十分さ…みんな覚悟は良いかな?」

エルフゾンビ「何を今更…」

剣士「ワームが狭間に消えた…ドリアードはすぐ其処だよ…行くよ?」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:11:23.55 ID:KbfSVIxh0
『食虫生物ドリアード』


アーングリ…


剣士「うわぁでか!!…派手な花だなぁ」

エルフゾンビ「情報屋から聞いた話と随分違うが…」

剣士「これ入り口って花びらの真ん中…かな?」

エルフゾンビ「中に入るには食われる必要があるのだな」

エルフの戦士(くぅぅ…臭い…燃やしてしまいたい)クラクラ

剣士「地面から出てるニョロニョロは触手かな?」

女オーク「この花…向こうの方にもあるわ」

エルフゾンビ「入り口は複数ある訳か…どうする?この大きさでは茎を切断するには無理がある」

剣士「まったく動く気配が無いから僕達に気付いて居ないんだろうね…どうしよっかなぁ」


プシューーー モクモクモク


エルフの戦士(うぅぅ…この匂いが…)クラクラ

剣士「アハハこいつゲップした」

女オーク「私達を虫だと思って匂いで誘って居るのよ」

剣士「それなら好都合…行って見よう」

エルフゾンビ「思い切りの良い選択だ…帰りはお前次第だぞ?」

剣士「大丈夫!!自信がある!!」

エルフの戦士(フフ…)

剣士「4人同時に花の真ん中に飛び込もう…多分ただの食虫植物だ」

エルフゾンビ「お前が合図しろ」

剣士「おっけ!!3…2…1…飛んで!!」ピョン


バクッ


剣士「アハハハ…想像通りでバカみたい…ドリアードって相当頭悪い」

エルフゾンビ「退路は無いぞ?」

剣士「こんなの爆弾で直ぐに穴開くよ…これ多分ね…今まで外敵に入られた事無いんだよ…だから守備がザルなんだ」

エルフゾンビ「なるほど…」


精霊樹はさぁ?外敵から身を守る為に森の声を使って動物たちやエルフに守って貰ってるのさ

ドリアードは毒の沼とか毒の霧で身を守った結果外敵が進入した事が無い

だから守りに工夫が無いんだよ

精霊樹と違う点は触手を使って能動的に動けるくらいなんじゃ無いかな?


剣士「これ思ったより簡単に攻略出来るぞ?」

エルフゾンビ「そうか?なら急ぐぞ」

剣士「明かりを付ける…照明魔法!」ピカー


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30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:12:30.90 ID:KbfSVIxh0
『喉部』


スタスタ


エルフゾンビ「壁面に小さな虫が大量に…」ワサワサ

剣士「ここで繁殖してるのさ…そういう場所は多分安全…ドリアードは大きな虫だけ捕食する感じだね」

女オーク「随分長い下り坂ね」

剣士「地図通りだよ…500メートルくらいの長い下り坂…その奥に胃部だ」

エルフゾンビ「抵抗が無いが…一応抜刀しておく」スラリ

剣士「僕達を虫だと思ってるだろうからしばらく何も起きないと思うよ」

剣士「この喉部を通過すると多分退路が次々閉じて行く仕組みさ…虫が戻って行かない様にね」

剣士「きっと感覚は足元にある」

女オーク「剣士の言うとおりね…後方の壁面が押し出して来てる」

剣士「胃部は何も無い広い空間…そこにもしかすると大型の虫が捕食されてるかもしれない」

エルフゾンビ「では胃液で浸されているかも知れんな」

剣士「うん…強い酸だろうから気を付けないとね」

エルフゾンビ「浸されている酸をどう気を付ける?」

剣士「あああ心配しなくて良い…変性魔法で酸の物質変換が出来るから問題ない…むしろ触媒が増えて嬉しい」

女オーク「なんかすべて剣士に良い条件になって来て居るわね」

剣士「そう思うよ…10年も待つ必要なんか無かった様に思う」

女オーク「奥が開けて来たわ…向こうが胃部ね?」

剣士「大きな虫が居るかもしれないから一応注意して」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:13:41.02 ID:KbfSVIxh0
『胃部』


ジャバジャバ シュゥゥゥ


剣士「思った通りだ…大きな虫が沢山」

エルフゾンビ「待て…何故虫の体が損傷しているのだ?バラバラになるまで虫同志が戦っているとでも?」

剣士「あれ?本当だね…なんでだろう?」


ググググ


女オーク「今来た道が塞がった…」

剣士「何か仕掛けが有るかもしれない…」キョロ

エルフの戦士(上だ…ひだ状の物が伸びて来る)

エルフゾンビ「あれに刻まれるか…」スチャ

剣士「消化の前に嚙み潰す器官ががあるのか…これマズいな」

エルフゾンビ「どうする?」

女オーク「身を隠す場所が無い!!今の内に先に進め無いの?」

剣士「核の有る場所はこの次の心臓に当たる部分…探す必要がある」

エルフの戦士(ひだが次々降りて来るぞ…)

剣士「どうするどうする?…ここで蟲を破裂させると巻き添え食らう…どうする?」

エルフゾンビ「戦うしかあるまい」スチャ

剣士「待って…どんぐりでクヌギの木を成長させられる…木の陰に隠れて!虫を爆発させる」

女オーク「ひだが動き始めたわ!」

エルフゾンビ「あれは触手だ!!目を持って居るぞ」

剣士「木に隠れて!!」チャキリ ターン ターン ターン ターン

剣士「成長魔法!」グングングン ワサワサワサ

剣士「木の陰に!!」

エルフゾンビ「回避!」シュタタ

エルフの戦士(…)シュタタ

女オーク「…」ダッ

剣士「ダンゴムシ!!爆ぜろ!!」パーン!

剣士「火炎魔法!」ゴゥ


チュドーーーーーーン  ドサドサドサ


エルフゾンビ「うぐぅ…木が持たん!!」ミシミシ


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32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:14:39.57 ID:KbfSVIxh0
『胃部_爆発後』


剣士「回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

エルフの戦士(つつつ…)

エルフゾンビ「爆発の程度は調整出来んのか!」

剣士「ゴメンこんなに破裂すると思って無かった」

剣士「皆耳は聞こえる?」

エルフの戦士(もう一度回復を…目がやられている)

剣士「回復魔法!」ボワー

女オーク「私も…耳がおかしい」

剣士「回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「これで内部に外敵が進入したと気付いた筈だ…何が来るか分からんぞ」

剣士「うん…急ごう…地図だと左奥の方だった…照明魔法で行き先を記すから走って」

エルフの戦士(何かの気配!!私は援護に回るから行って)

剣士「こっちだ!照明魔法!」ピカー

エルフゾンビ「なんだアレは…敵か?異形の生物…」

エルフの戦士(行って!!私が射撃する)ギリリ シュン


異形の生物「ジュルルル…」ピョン クルクル シュタ


エルフの戦士(早い…あの動きはエルフ!!どうして…)

エルフゾンビ「剣士!先に行け!!あの異形を足止めする」シュタタ

剣士「女オークこっちだ!!」グイ シュタタ
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:16:23.43 ID:KbfSVIxh0
『胃部_隔壁』


剣士「多分ここだ…どんぐりで無理やりこじ開ける」ツメツメ

女オーク「あの異形の生物…壁面から湧き出て来る…」

剣士「成長魔法!」グングングン メキメキ

剣士「開いた!!ぬぁぁ…又隔壁だ…」ツメツメ

女オーク「私も異形の足止めで戦う!!」ダダッ

剣士「成長魔法!」グングングン メキメキ

剣士「ぐぁぁぁ又隔壁…」ツメツメ


タッタッタ


エルフゾンビ「あの異形は手強い…武器は持って居ないが壁面からどんどん湧いて増える」

剣士「分かった…睡眠魔法を使う…エルフの戦士と女オークをお願い」

エルフゾンビ「寝たら起こせば良いのか?」

剣士「チチンプイプイ アブラカタブラ メスメライズ…広範囲睡眠魔法!」


モクモクモク


女オーク「ぁぁぁ…」フラフラ

エルフの戦士(ん!?)ボーー

剣士「2人を連れて来て守って…僕は隔壁こじ開ける…成長魔法!」グングングン メキメキ

剣士「くそぅ!!何枚あるのか…」

エルフゾンビ「エルフの戦士!しっかりしろ!…女オーク来い!」グイ

女オーク「…」フラフラ

エルフの戦士(…)ボー

エルフゾンビ「次の異形が壁から出て来る…キリが無いぞ?」

剣士「2人を隔壁の中に…爆弾を使うから耐えて」

エルフゾンビ「女海賊の爆弾だな?」

剣士「うん…さっきよりは小さいと思う…早く隠れて」

エルフゾンビ「想定外に抵抗が有ったな?」

剣士「やっぱり只の食虫植物じゃなかったね…ちょっと焦ってる」

エルフゾンビ「まだ手は残って居るな?」

剣士「有る…でも破壊力が今までの比じゃ無いから最後の手段にしてる」

エルフゾンビ「そうか…早い所後ろの奴を吹き飛ばして奥へ進もう」

剣士「よし隠れたね?行くよ?火魔法!」チリチリ ポイ


ピカーーーーー チュドーーーーーン パラパラ
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:17:26.45 ID:KbfSVIxh0
『隔壁の通路』


ペシペシ

エルフゾンビ「起きろ!!おい!!」ペシペシ

エルフの戦士(ハッ!!何が起きた?)

エルフゾンビ「睡眠魔法だ…オークの女を起こすのを手伝ってくれ」

エルフの戦士(私が眠るとは…今どうなって居る?)

エルフゾンビ「爆弾を使って異形の生物を倒したのは良いが土砂が入って退路が断たれた」

エルフの戦士(崩れたのか…)

エルフゾンビ「どうやらドリアードは爆発よりも高熱に弱い様だ」

エルフの戦士(この通路はこじ開けた隔壁だな?)

エルフゾンビ「クヌギの成長がねじ曲がって狭い通路になっているが身を隠すのに丁度良い」


メキメキメキ


剣士「やったぁ!!開けたぁぁ!!」

エルフゾンビ「女オーク!起きろ!」ユサユサ

女オーク「すぅ…」zzz

エルフゾンビ「仕方ない…背負うか」グイ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:18:52.08 ID:KbfSVIxh0
『核部』


剣士「見つけた!!アレだ…あのエリクサーの下に遣ってる機械がアダムだ」

エルフゾンビ「ここには敵が居ない様だ…どうなっているのか」スタスタ

剣士「きっと外敵を排除する為の守りは消化器官にあるんだよ…崩落したのが逆に良かった」

エルフゾンビ「私とエルフの戦士で見張りをやる…直ぐにアダムを破壊しろ」

剣士「そうだね…今すぐにやる…ああああああ!ここにはダンゴムシが入って来て無い」

エルフゾンビ「例の爆弾でやれば良いだろう」

剣士「エリクサーが邪魔だ」

エルフゾンビ「何とかしろ!他の出入り口が無いか見回って来る」シュタタ


えーとエリクサーは何に変性出来るんだ?

材料は何だっけ…クヌギの樹液と蒸留酒…松脂と…骨粉か

他の転換物…えーと…えーと物性値が分からない…計算すると時間が掛かる

だぁぁぁ液体にしかなりそうにない…まてまて…凍らせられれば個体になる

いや無理だアルコール値が高い…絶対零度なんか使えないし…どうするどうする?


剣士「そうだ!燃焼させれば良い…気化させる熱量をどうする?僕の魔法じゃあの量を気化させるのは無理…」

剣士「爆弾を使って散らす…これもダメだ…あの量を吹き飛ばすのは感覚的に無理だ」

剣士「くそう!これしか無いか…こんな所で量子転移なんか使いたく無かったけどコレしかない」


エルフゾンビ「剣士!奥にも何処かに繋がって居そうな通路がある…敵が来る前に早く破壊しろ!」


剣士「分かったよ…そこの通路に居て…僕もそっちに逃げるから」タッタッタ

エルフゾンビ「エルフの戦士!壁面から離れるんだ…微妙に動いている」

エルフの戦士「!!?」ズザザ

エルフゾンビ「剣士!!何をしている!!早くしろ」

剣士「いのりの指輪…どうか僕を守って!!量子転移!!」シュン


ザバァァァァ 


剣士「よしよし壁に穴が開いて液面が下がってる…機械が露出するぞ」

剣士「エルフゾンビさん通路の奥に走って!!爆破する!!火魔法!」チリチリ ポイ

剣士「走ってぇぇぇ!!3…2…1」


---未来---


剣士「え?」


ピカーーーーーー チュドーーーーーン


剣士「どわぁぁぁぁ…」ゴロゴロ


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36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:20:30.93 ID:KbfSVIxh0
『爆破後』


ズドドドドド


剣士「…」

剣士「……」

剣士「………」


エルフゾンビ「何をしている!!崩落に巻き込まれる…来い!」グイ

剣士「…」---今の声は…---

エルフの戦士(行き止まりだ…隔壁で閉じている)

エルフゾンビ「又閉じ込められたか…ええい!重い女め!!」ヨッコラ

女オーク「う〜ん…」パチ ムクリ

エルフゾンビ「剣士!又隔壁だ…こじ開けろ」

剣士「…」---パパだ---

エルフゾンビ「何を呆けている!」

エルフの戦士(見て!!隔壁が動いてる…これは開くぞ?)

エルフゾンビ「剣士!しっかりしろ!脱出だ…今は呆けている場合では無い」

剣士「え…あぁ…動転してた」

女オーク「何が起きているの?」

エルフゾンビ「お前は剣士の魔法で寝ていたのだ…説明している暇は無い…武器を持て」

女オーク「は…はい」スラーン

エルフの戦士(この通路…さっきの隔壁と同じ構造だ…全部開こうとしてる)

エルフゾンビ「…という事は別の胃部に繋がっている可能性がある」

エルフの戦士(正解…向こう側に異形の生物が見える)

剣士「見せて…本当だ…奥に見える」

エルフゾンビ「突っ切るか?」

剣士「そうだね…別の入り口があるならそこから上を目指そう…でも待って!ダンゴムシを破裂させるなら今がチャンス」

エルフゾンビ「入り口がまた崩壊しないか?」

剣士「隔壁が開き切ると身を隠す場所が無い…また爆破に巻き込まれたい?」

エルフゾンビ「なら早くやれ」

剣士「うん…すべてのダンゴムシ!爆ぜろ!」パパパパーン

剣士「火炎魔法!」ゴゥ


チュドーーーーン

チュドーーーーン

チュドーーーーン


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


剣士「すべてのワームに命ずる!ドリアードの根を食らい尽くせ!」


ズズーン グラグラグラ
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:21:20.47 ID:KbfSVIxh0
『隔壁の通路』


モクモクモク


剣士「煙が収まった…行けそうだ」

エルフゾンビ「走る!来い」

剣士「待って…まだ何か動いてる」クンクン

エルフの戦士(気配が増える…20以上…もっと居るかもしれない)

剣士「壁面から湧いてくるあの異形の生物はドリアード化した人たちかも知れない」

エルフゾンビ「アダムが居なくなりドリアード化で夢を見る意味が無くなったか…笑止千万」

剣士「ダンゴムシはもう使えない…爆弾は壁が崩落するから突破するしか無いね」


ズゴーーーン ズズズ


剣士「ワームが暴れてる…行けそうだよ!突破しよう」

エルフゾンビ「出るぞ…先行する!付いて来い!」シュタタ


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38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:22:40.79 ID:KbfSVIxh0
『胃部』


異形の生物「ぎょぎょぎょ…ぴょるぁぁ」ヨタヨタ

エルフゾンビ「さっきの異形とも違う…これは貴族が戻った姿だな?」ブン スパ

剣士「素早いのも居る…気を抜かないで」シュタタ スパ

異形の生物「きゃぁぁぁぁ…」ドタリ

剣士「ここダメだ…入り口が真上にある…天井から落ちるタイプだ」

エルフゾンビ「ええい!囲まれるぞ!!」

剣士「逆側だ!!排泄する器官から出られるかもしれない」

エルフの戦士(触手が伸びて来て居る…どうする?)

剣士「どうしても脱出が困難な場合はワームを使って突破する案がある…今は排泄器官に行って見よう」

エルフゾンビ「しかしどの方向か?」

剣士「消化液の流れて行く方向だよ…あっちだ!!付いて来て」ダダ


異形の生物「うぐぅぅ…居た…あれか…」ズルズル


エルフゾンビ「剣士!先に行け…私が時間を稼ぐ」

剣士「気を付けて!!」シュタタ

異形の生物「あ…兄者…何事かと思えば…又兄者が何かをしたね?…」

エルフゾンビ「何!?お前は…」

異形の生物「これは…どういう事なんだい?…ぐぅぅぅ何かしたよね?…兄者だよね?」

エルフゾンビ「私に弟は居ない…」スタ

異形の生物「又…僕を…置いて行く…どうして僕の前を行こうとするのさ…」

エルフゾンビ「人違いだ…私に構うな」---お前を救ってやりたかった…これが成れの果てか---

異形の生物「兄者!!兄者!!」ズルズル

エルフゾンビ「…お前はどうにか生きろ…さらば」シュタタ


異形の生物「ぅぅぅ何故…ドリアード化が解かれたんだ?…寒い…寒いぃぃ!!」


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39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:24:05.08 ID:KbfSVIxh0
『腸部』


ブシュ! ザクリ!


異形の生物「ほげぇぇぇ…いでぇぇぇ」バタバタ

エルフゾンビ「追っ手はこれで最後か?しかしキリが無い…」フゥ

エルフの戦士(更に地下深くに進んで居るが…これで出られると思うか?)

エルフゾンビ「厳しいだろう…だが異形が増え過ぎて居る…もう戻れん」

剣士「分かって来たよ…この器官は消化液を吸収する器官だ…虫の死骸は胃で全部吸収するんだ」

エルフゾンビ「…という事は行き止まりだな?」

剣士「恐らく…さて困ったなぁ」

エルフゾンビ「ワームを使った突破案はどうした?」

剣士「この辺はワームが入って来て居ない…つまり外側は土じゃ無くて岩盤だよ」

エルフゾンビ「引き返すしか無いと…」

エルフの戦士(ここを見ろ…床面の傷んだ部分へ消化液が流れて行っている)

剣士「ダンゴムシを爆発させて入った亀裂だろうね」

女オーク「そこに消火液が流れて行くだけの空間があると言う事だわ」

剣士「あと一個…爆弾がある…亀裂を広げて見ようか?」

エルフゾンビ「やるしか無いだろう…今更戻れん」

剣士「わかった…亀裂に爆弾を落としてみる…離れて伏せてて」

剣士「行くよ?火魔法!」チリチリ コロン


コロン コトン ヒュゥゥ チュドーーーーン


エルフゾンビ「うぉ!!足場が…」


ガラガラガラ ドサドサドサ


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40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:25:28.30 ID:KbfSVIxh0
『地下水脈』


サラサラサラ 


剣士「うぅぅ…回復魔法!」ボワー

剣士「皆どこ!?声を出して!!」

女オーク「こ…ここよ」ガラガラ

剣士「回復魔法!」ボワー

女オーク「ありがとう…無事でよかった」

剣士「エルフゾンビさんとエルフの戦士は何処だろう?」

女オーク「上ね…亀裂の中腹で引っかかってるみたい」

剣士「照明魔法!」ピカー


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エルフゾンビ「光だ…あそこだな…エルフの戦士!背に乗れ」

エルフの戦士(済まない…腕の怪我が酷い様だ…早く回復魔法が欲しい)ドクドク

エルフゾンビ「私も足を損傷した様だ…もう一度落下するから私をクッションにしろ」

エルフの戦士(急いでくれ…押さえても血が止まらない)ボタボタ

エルフゾンビ「行くぞ」ズルズル



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ヒュゥゥゥ ドサリ
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:26:29.13 ID:KbfSVIxh0
エルフゾンビ「ヴヴヴ…エルフの戦士に回復魔法を…失血死する」

剣士「あ!うん…回復魔法!回復魔法!回復魔法!」ボワー

エルフの戦士「ハァハァ…」グター

剣士「エルフゾンビさんも…回復魔法!」ボワー

エルフゾンビ「フフフフ…ハハハハハ…なんとかなったな?」

剣士「まだやらなきゃいけない事がある…森の虫達に命令をしなきゃいけない」

エルフゾンビ「そうか…中々に忙しい」

剣士「僕が想像していたよりもドリアードは大きくて頑丈だったんだ…ワームだけじゃ食い尽くせない」

エルフゾンビ「エルフの戦士…立てるな?」

エルフの戦士(なんとか…)ヨロ

エルフゾンビ「私の常備薬を一口飲め…精霊樹のエリクサーだ」

エルフの戦士(…)クイ ゴク

エルフゾンビ「この地下水脈の行先は想像つくか?」

剣士「エルフの森…」

エルフゾンビ「恐らくな?随分安全に行けそうでは無いか…直に夜明けだ…水脈を下るぞ」

剣士「女オーク…行こうか」スタ


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その夜

死の森の浸食が収まるかと思いきや

状況は一向に変化する事無く

むしろ異形の生物が徘徊するようになった

更には大人しかったドリアードが暴れ出し

無数の触手がうねり狂うその姿は

精霊樹の森から視認できるほど巨大であった

まだ戦いは終わらない…
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:27:47.98 ID:KbfSVIxh0
『数日後_精霊樹』


フワリ ドッスン


エルフゾンビ「戻ったか…虫とドリアードの様子はどうだ?」

剣士「蟲達が総攻撃するまで数日かかると思う…ドリアードは触手が何本ものたうち回ってた」

エルフゾンビ「あれだけ爆破されても弱らんとはな…」

剣士「こっちの様子は?」

エルフゾンビ「アルラウネの数が減って空中戦は優位だ…地上戦もどんぐりの成長作戦で優位…浸食は抑えられている」

剣士「死の森を少しづつ浄化しないとダメな様だね」

エルフゾンビ「この戦いはしばらく続きそうだが光明は見える…虫次第という所か」

剣士「戦いも気になる所なんだけど…僕もエリクサーを運ばないといけない」

エルフゾンビ「そうか…しばらく居て貰いたいのは山々だが…」

剣士「僕は他にもやらなきゃいけない事があってね…」

エルフゾンビ「引き留めるつもりは無い…お前は十分仕事をこなしたのだからな」

剣士「実はね…アダムを破壊する時にパパの声を聞いた気がしたんだ」

エルフゾンビ「…どういう事だ?」

剣士「それを調べたい…アダムの誕生に関わって居るかもしれない…」

エルフゾンビ「そういう話に精通しているのは情報屋だな…」

剣士「だから僕行くよ…蟲の事は心配しないで…ちゃんと命令通りに動いてるから」

エルフゾンビ「ふむ…期待している」


---引っかかる事がいくつかある---

---僕は明らかに歴史を変える行動をした筈なのに---

---いのりの指輪は砕けなかった---

---僕はまだ夢を見て居るとも考えられる---

---それを確認したい---
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:28:33.08 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


フワリ シュゴーーーー


女オーク「遺跡から何か盗って来たの?」

剣士「情報屋さんの書物を借りて来た…ちょっと歴史の勉強さ」

女オーク「そう…飛空艇での移動は退屈よね?」

剣士「そうそう…行き先はセントラルだよ…狭間に入って移動すれば到着は夜中かな」

女オーク「そういえばさっき気付いたのだけれど…太陽の高度が高い気がするわ」

剣士「え!!?」バタバタ バタン

女オーク「扉から落ちないでね?」


ビュゥゥゥゥ  バサバサ


女オーク「太陽の位置が高いでしょう?」

剣士「う〜ん…気のせいじゃない?」

女オーク「移動ばかりしているから分からなくなったのかも…適当な事言ってごめんなさい」

剣士「僕は書物読んで居るからセントラルまでの操舵お願い…もう狭間に入って良いよ」

女オーク「うん…まかせて」スゥ



シュゴーーーーーー バサバサ



---さて歴史の勉強だ---

---超古代…アダムとイヴの伝説---
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:29:19.01 ID:KbfSVIxh0
『その頃_暁の墓所』


分かった事を時系列で説明するわ…

約4000年前に起きた地軸の移動…この時に壊滅的な破壊が起きて人類はほぼ滅亡

その中で唯一生き残った種が耐環境性のあるオークの種族

それまで彼らは今で言う南の大陸に住んで居たの…恐らくウンディーネと共に

その後北の大陸へと進出を始めこの暁の墓所の東側…未踏の地で一時代を築いた

これが約3500年前…

そしてウンディーネはシルフと名を変え今で言うエルフの森に移り住む

そこでオークの遺伝子と類似したエルフを生み出した

エルフは魔法を巧みに操り森を拠点として繁栄する

エルフの協力を得た精霊シルフは森の北部にドリアードを生成して管理する者として小人のノームを生んだ

ここが約3000年前…

ノームの器用さを用い失われた古代技術を復活させた精霊シルフは

超高度AIを複製してアダムを復活させようとするが

魔王に乗っ取られて失敗し…再び世界は滅亡の危機

ここで危機を救うのがこの地の東に栄えたオーク達

彼らは呪術で虫を操りドリアードを封じる事に成功したがノームは滅びる

恐らく2500年程前ね…

一旦平和になった世界でエルフとオークはそれぞれに繫栄して時代を築く最中

その恩恵を受けたのが温暖な海付近に少しだけ残って居た人間達

彼らは環境の良いエルフの森周辺で新たな文明を築き始め力を付けた

そして事件が起きる…エルフが持つ祈りの指輪を奪い人間の魔術師が台頭

魔術によって人間達が急速な発展をして時の王の時代に至る

ここが約1700年前…

この時代に起きたのが北の大陸の東側に位置していたオーク達が滅んだ事

時の王と暁の使徒が手を組み東のオークを退けた

なぜか?
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:29:48.25 ID:KbfSVIxh0
情報屋「答えは勇者の刀…オーク達が宝具として所持していた刀を奪って聖剣エクスカリバーを生む為」

魔女「…ではオーク達が初めから勇者の刀を持っておったと言う事じゃな?」

情報屋「そう…ここからは憶測だけど勇者2人は4000年前よりさらに過去に遡ってオークに託したと思うわ」

魔女「つまりこの墓所にあった暁の使徒は勇者では無く他人じゃという訳か」

情報屋「多分勇者の命を受けた予言の守り人ね…不明な点が多いから確かな事は言えないわ」

魔女「黄昏の賢者について何も分からんのか?」

情報屋「ここから先は時の王の証言のまとめだから確証は無いけれど…」


暁の使徒と黄昏の賢者はどうも恋仲だったらしいわ

暁の使徒は人間の男…そして黄昏の賢者はオークの女

暁の使徒が東のオークを攻め立てる最中二人は関係を持った

処女を失った黄昏の賢者は力を失い

暁の使徒はオークを退け勝者となった

二人は駆け落ちをした形

そして黄昏の賢者はオークを裏切った形

その後暁の使徒は時の王と接触し協力関係を得る

でもこれに黄昏の賢者は猛反発して別れた

ここから第2期と呼ばれる魔王との戦いが始まる


魔女「黄昏の賢者はオークシャーマンの可能性が高かったな?」

情報屋「多分そうね」

魔女「ミイラとなった恋人を連れ去ったと言う事じゃが…何故じゃと思う?」

情報屋「分からない…蘇らせるとしても今になって何故?という疑問が残る」

魔女「わらわはこう思う…失った力を取り戻す為じゃ…死霊術に屍を食らう術が有るのじゃ」

情報屋「なるほど…話が通りそう…」

魔女「読めたぞよ?黄昏の賢者は3000年前と同じ様に虫を操りドリアードを封じたいのじゃ…力を求めて居る」

情報屋「南の大陸に居るオークがどうして?」

魔女「予言じゃ…予言に従って居るのじゃ」


よう考えてみぃ

勇者らは3000年前のドリアードがどういう惨状を生んだか知って居る

じゃからわらわ達の時代に復活したドリアードを再度封じるための予言を残したのじゃ


情報屋「そういう事ね…ドリアードをどう倒すのか私達は知ってる…それは伝説を通じた予言なのね?」

魔女「イカンな…このままでは未来が先走ってしまうな」

情報屋「未来君が蟲使いの道を選んだのも…」

魔女「勘でどうすれば良いか知って居るからじゃ…何年も前に未来は感じて居る…事の異常に」

情報屋「連絡取れないのがもどかしいわ」

魔女「先回りで待つしか無いのぅ…さてどうするか…」


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46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:30:35.72 ID:KbfSVIxh0
『セントラル海岸』


フワリ ドッスン


剣士「すっかり日が落ちた…ウルフは飛空艇で留守番だ」

ウルフ「ガウガウ…グルル」

剣士「女オーク!今から宿屋にいくけど武器は置いて行って」

女オーク「どうして?武器が無いと暴漢に…」

剣士「この国は武器の持ち込みが出来ないんだよ…ナイフならおけ」

女オーク「わかったわ」

剣士「じゃぁ行こうか!ウルフ!明日の朝には戻るから良い子にしてて」

ウルフ「ガウ!!」


タッタッタ


女オーク「急いでいるのね?」

剣士「うん…セントラルでちょっと確認したい事があるんだ…宿屋を取って直ぐに行動する」

女オーク「どうするの?」

剣士「泥棒みたいな事だよ…あ!そうそう君お金持って居たよね?」

女オーク「うん…」

剣士「ちょっと目立つ装備に変える」

女オーク「これで良いのに」

剣士「ダメなんだ…今から白狼の盗賊団の真似事してある人をおびき出すんだよ」

女オーク「ある人?」

剣士「僕が尊敬する人さ…まぁ良いから付いておいで」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:31:21.28 ID:KbfSVIxh0
『宿屋』


カラン コロン


店主「いらっしゃいませ…お二人様で?」

剣士「2階の角の部屋空いてるかな?」

店主「そのお部屋はお高いですがよろしいですか?」

剣士「いくら?」

店主「お二人で銀貨20枚です」

剣士「おっけ!」ジャラリ

店主「ではご案内致します…こちらへ」



『部屋』


ガチャリ バタン


剣士「先に水浴びしておいで?その後出かける」

女オーク「じゃぁ浴びて来るわ…」

剣士「ゆっくりで良いよ…泥棒にはまだ少し時間が早い」

女オーク「うん…じゃ…」ガチャリ バタン

剣士「…」


この宿のこの場所で

何度も同じ景色を見て居る

雑多の声がする町の一角

一人で窓をボーっと眺める


剣士「…」ファサ


こうやってフードを被って

隙間から見える世界

どうして落ち着くのか分からなかった

でも理解した…僕は次元の狭間に捕らわれ

何度も繰り返しこの風景を見て来た

この雑多な世界に慣れていたんだ

今…記憶が戻りつつある

僕がどうすべきかもう一度考え直したい
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:32:15.81 ID:KbfSVIxh0
『酒場』


ワイワイ ガヤガヤ

ねぇ聞いた?いつもここに来てたあの豪族…殺されたらしいわ?

ええ!?誰に?ヒソヒソヒソ…

お〜い!酒くれぇ!!

なんだよ良いだろパフパフさせてくれよ


マスター「いらっしゃいませ…お二人様で?」

剣士「うん…席は空いてなさそうだね」

マスター「カウンターでよろしければ」

剣士「おけおけ!えーとセントラル名産はエール酒だっけな…2杯お願い」

マスター「かしこまりました」

女オーク「剣士?用事があったのでは?」

剣士「そうだよ…ここで聞いてみるのさ」

マスター「エール酒をお持ちしました…どうぞ」

剣士「ありがとう…ところでマスター…ローグっていう豪族知らないかい?」グビグビ

マスター「ハテ?お知り合いですか?」

剣士「あぁぁ聞き方が悪かったなぁ…マスターも仕事だからそうそう個人の話なんかしないよね」

マスター「お客さん人が悪いですねぇ…ハハハ」

剣士「じゃぁ海賊王の娘を捕らえたんだ…懸賞金を何処で引き換えるか知らないかな?」

マスター「ご冗談を…あまり大きな声でその名を出すのは得じゃ無いと思いますよ?」キョロ

剣士「そっか…収穫無しだ…お代だよ」ジャラリ

マスター「ありがとうございます…」チラリ

剣士「女オーク行こう」

マスター「もしよろしければお連れ様のお顔を拝見させて頂いても?」

剣士「女オーク?見たいんだってさ?」メパチ

女オーク「…」ファサ

マスター「失礼いたしました…又のご来店をお待ちしております」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:32:59.90 ID:KbfSVIxh0
『路地』


ガヤガヤ ガヤガヤ


剣士「そんなに簡単に会える訳無いかぁ…」

女オーク「何だったの?」

剣士「あのマスターは多分ローグさんの事知ってるんだよ…トラブルを回避するのに知らない振りさ」

女オーク「ちがう海賊王の娘の話」

剣士「君の背格好が似てるからちょっと釣ってみたんだよ…動きがあるならもう追尾されてると思う」

女オーク「良いの?路地を悠々と歩いても」

剣士「あんまり良く無いね…そろそろ行こうか…そこの角を曲がったらハイディングするよ」

女オーク「わかったわ…」


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剣士「ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

剣士「迷って居ないね?貴族居住区の方に行こう…こっちだ」タッタ
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:33:56.42 ID:KbfSVIxh0
『貴族居住区_屋根上』


タッタッタ


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ

剣士「さて!!何処にいるのかな?」

女オーク「こっちの方は何処を見ても食事会なのね」

剣士「エルフは戦争中だというのにセントラルは呑気なもんだ…何も知らないで」


ワイワイ ガヤガヤ

魔石のレートを引き上げる?キ・カイにそんな資金ありますかね?

新型の気球でトレードを…ふぅむ…噂に聞く奴ですな

輸送の効率が上がるなら一度試してみる価値はありそうか…

では成立という事で…ハッハッハここは私が払いましょう

ワイワイ ガヤガヤ

俺ぁあの女が忘れられ無ぇ!

フィン・イッシュに行って農耕で稼ぐ

そして売られた女を買い戻すんだ

ワイワイ ガヤガヤ


剣士「どの円卓でも似たような話ばかりだ…やっぱり騒ぎ起こさないとダメかもなぁ…」

女オーク「ねぇ向こうのお屋敷から武装した人が何人も出て来てる」

剣士「本当だ…衛兵でも無いのにどうしたんだろう?」

女オーク「武器の所持は禁止じゃ無かったの?」

剣士「さぁ?偉い人だけは許可されてるんじゃないかな?」

女オーク「何か起こりそう」

剣士「面白そうだから隠れて見て居よう」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:34:50.55 ID:KbfSVIxh0
『貴族居住区_路地』


タッタッタ


こっちには居ない

一応各路地を封鎖する形を取って発見次第捕らえろ

服装か何か特徴は聞いて居ないのか?

聞かされて居ない…向かった方角が此方方面と言うだけだ

相手は2人だ…必ず捕らえるぞ!


剣士「フフ…これ僕達を探してるんだね」

女オーク「目星がついて良かったじゃない…あそこのお屋敷よ」

剣士「中に入ってみよう…ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

剣士「窓から入るよ…おいで」シュタタ
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:36:42.55 ID:KbfSVIxh0

『とある屋敷』


ピョン シュタッ


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ

剣士「しぃぃぃぃ…」

女オーク「…」



さぁ懸賞金を見せて貰おうか

それは海賊王の娘を捕らえたのを確認した後でやんすね

直に私の部下が連れて来る…まさか懸賞金の用意無しで掛けていた訳では無いだろうな?

何を言って居るでやんす…あっしの資金運用額を知らんのはあんさんの方でやんすよ

そうやっていつものらりくらりと…良いから懸賞金のありかを話せ

あんさん頭悪いんすねぇ…確認した後と言ってるでやんすよ帰って下せぇ

直に連れて来ると言っているだろう

あっしもそろそろ怒りやすぜ?


剣士「フフ面白そうだ…行こう」タッタ

女オーク「…」

剣士「お頭!例の女連れて来ました」

豪族「おぉ!!でかした!!」

ローグ「えええええええええ!!?」

豪族「さぁこれで分かっただろう?懸賞金をよこせフハハハハハハ」

ローグ「その声は未来君っすね?」

豪族「何を言っている!!この女が海賊王の娘だ!!見ろ…疑い様が無いだろう」

剣士「そうだ!!」

ローグ「もう一人は誰でやんすか?顔を見せて下せぇ」

女オーク「…」ファサ

豪族「フハハハハハハハ…落ちたな?頭取の座は俺が頂く!ハハハハハハハ」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:37:12.79 ID:KbfSVIxh0
ローグ「んん?どーこかで見た様な…見てない様な…」

豪族「とぼけるんじゃ無ぇ!!目ん玉ほじくって良く見ろ!!」

ローグ「あんさんと話して無いでやんす…もう帰って下せぇ」

豪族「何だとぉ!!懸賞金は渡さんとでも言うのか?」

剣士「あぁぁ…もう我慢できない」プルプル

豪族「あぁ我慢出来ん!その通りだ…雁首揃えて懸賞金を払って貰うぞ」ズイ

剣士「女オーク?この人黙らせてもらって良い?」

女オーク「わかった…」グググ

豪族「何をする…おい!放せ!!」ムググ

ローグ「あ!!奴隷だったオークの子っすね?いやぁぁぁ懐かしい…大きくなったっすね?どういう事なんすかコレ」

豪族「むががが…」ジタバタ

剣士「話は長いんだ…今日会いに来たのは訳が有ってね?」

ローグ「あっしも聞きたい事が山ほどあるっす…ちっと奥で座って下せぇ」

剣士「この人どうしよう?」

ローグ「外に放り出しといて下せぇ…構うの面倒くさいでやんすよ」

剣士「女オーク!放り投げといて」

女オーク「ふん!!」ポイ ゴロゴロゴロ ドターン

ローグ「いやいやいやビックリっすね…でも良くここが分かりやしたね?まぁまぁ座って下せぇ」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:38:24.03 ID:KbfSVIxh0
『ローグの屋敷』


ローグ「それでどういう訳であっしの所へ?」

剣士「アダムを破壊したと聞いたらどういう反応をするかと思ってね」

ローグ「マジっすか!!いつやったんすか?もう地軸の移動は起きんのですかね?」

剣士「地軸の移動…やっぱりか」

ローグ「え?10年後に地軸の移動があると予言したのは未来君っすよ?アダムを破壊したらもう大丈夫なんすかね?」

剣士「僕が予言…」

ローグ「未来君の予言は全部当たっていやしたよ…ケシの大発生やらスプリガンから魔石が出るやら」

剣士「そんな細かい事まで僕が言ったんだ…」

ローグ「覚えて無いんすか?未来君は未来から来たと言ってやしたよね?忘れたんすか?」

剣士「いつの間に忘れて居たみたい…全部夢の中の出来事と勘違いしてたんだ」

ローグ「いやいやいや…でもアダムを破壊したでやんすよね?いやぁぁあっしは信じていやしたよ」

剣士「記憶があいまいなんだ…だからローグさんに教えて欲しい…僕は何を予言したの?」

ローグ「幽霊船が壊された未来から来たと言ってたでやんす…詳しく話やしょうか」


カクカク シカジカ

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ローグ「…という訳であっしは今豪族の資金力を使って人流を促してるんすよ」

剣士「僕はいつの間に全部夢話だと思い込んでいたんだろう…」

ローグ「今思い出したなら良いんじゃないすかねぇ?」

剣士「もっと世界を変えられるチャンスは沢山あった筈…結局子供が生まれない10年間は経過してしまった」

ローグ「こっから盛り返しやしょう…アダムが破壊されたなら行ける筈っすよね?」

剣士「…そうだと良い」

ローグ「あっしのやって来た事を教えやしょうか?」

剣士「あぁそれ…気になるなぁ」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:39:39.93 ID:KbfSVIxh0
その土地に土着した民衆はなかなか移住しないんすよ

なもんで豪族達にちっと働いて貰って無理やり移動させるんす

ちっと強引なんすが奴隷商を上手く使って民衆のその後まで面倒見をやるんす

その結果シン・リーンもフィン・イッシュも人口が増えていやす

代わりに沿岸部は減っているんすが…移住した方が稼げる環境を整えて居やす

例えばシン・リーンで魔石の買取レートを高めにすると彼らにお金が回る

流通した魔石をキ・カイまで運んで経済を回すんす

商人さんがやって居るのと同じ事を豪族の資金力を使って強引にやってるんすよ


剣士「…道理でシン・リーンは冒険者で溢れているんだ」

ローグ「あっしが促した結果っすね…地軸の移動で沿岸部が済めなくなっても被害を受けるのは豪族だけっす」

剣士「僕は豪族を偏見の眼で見てたよ…」

ローグ「気にせんで良いでやんす…素行が悪いのはもう治らんのでそういう輩をコントロールする為に頭に懸賞金かけてるんす」

剣士「あぁ…そうそう話は変わるんだけど」

ローグ「何でやんすか?」

剣士「アダムを破壊する直前に僕を呼ぶ声を聞いたんだ…多分パパの声」

ローグ「アダムが勇者さんだったっていうオチっすか?また謎が深まりやすね?」

剣士「うん…どうしてアダムになって居たのか…調べたい」

ローグ「ロマンっすね…それは重要な秘密が有るに間違い無いっすよ」

剣士「今の所手掛かりは情報屋さんしか無いかな」

ローグ「時の王の屋敷に何かあるかも知れやせんぜ?今は美術館になっとるっす」

剣士「美術館…」

ローグ「古美術品って言うんすかね…古代の謎の道具とかあるらしいでやんす」

剣士「じゃぁ今行って来る」

ローグ「いやいや…あっしが案内出来やす…夜は警備に見つかるとエライ事になるっす」

剣士「明日行ける?」

ローグ「良いっすよ?あっしはアダムが破壊されて地軸の移動が無くなるならもう豪族なんて興味無いっすよ」

剣士「じゃ明日もう一回来ようかなぁ…」

ローグ「そんなそんな…まだ積もる話がありやす…今晩はここで休んで下せぇ
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:40:29.01 ID:KbfSVIxh0
カクカク シカジカ

アンナコト コンナコト

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剣士「ビッグママが魔女の修行を受けているって本当!?」

ローグ「あららら?聞かされて居ないんすか?」

剣士「僕も精神と時の門で修行をしてた…すぐそばに居たのか…」

ローグ「魔女さんも人が悪いっすねぇ…」

剣士「魔女はわざと遠ざけて居たんだ…分かって来たぞ…魔女は僕が未来から来たのを気付いて居たな?」

ローグ「どういう事なんすかね?」

剣士「僕が次元を崩壊させてしまうのを防いで居たんだ…魔女は時の番人…」

ローグ「アダムが破壊されて未来は変わったんすよね?」

剣士「…その筈…でもなぜか次元の崩壊は起きなかった」

ローグ「不思議な話なんすが結果良ければ気にせんでも良い気がしますがね?」

剣士「アハハそういう考え好きだよ…まぁそうなんだよ…結果的にアダムは倒せたし何もかも良くなる筈」

ローグ「後はゆっくり謎解きをして行きやしょう」


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57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:41:41.85 ID:KbfSVIxh0
『翌日_美術館』


チュン チュン ピヨ


ローグ「まだ開館前なんで貸し切りでやんす」

剣士「さすが豪族のお偉いさんだね」

ローグ「警備が付いて回りやすが気にしないで下せぇ」

剣士「うん…自由に見て良いんだね?」

ローグ「へい…割と広いんで迷わない様に」

剣士「大丈夫…ママと一回来た事あるし」

ローグ「そうだったんすね」

剣士「女オーク付いておいで」スタ

女オーク「沢山ある肖像画はもしかしてウンディーネ?」

剣士「ホムンクルスっていうお姉ちゃんだよ…多分ウンディーネと同じ人かな?」

ローグ「何かヒントは在りやせんかねぇ…」

剣士「時の王っていう人の時代は1700年くらい昔だったよね?」

ローグ「らしいっす…その国が栄えた時代なんでもっと前から生きていたかも知れやせん」

剣士「すごいなぁ2000年近く生きてるって想像出来ないなぁ…」

ローグ「エルフは400年くらいらしいっす…ドワーフも同じくらいなんで未来君も寿命は長いかも知れやせん」

剣士「爺ぃじは何歳なんだろう…」

女オーク「ここの画に描かれている…この紋様…」

剣士「んん?あーシン・リーンで良く見る紋様だね」

ローグ「姉さんが作った装飾品はこんな紋様が彫ってありやすね」

剣士「あれ?…」

ローグ「ちょっと待って下せぇ…シン・リーンの美術品には姉さんが使う紋様が多いっす…未来君の刀の鞘にも同じ紋様あるっすよね?」

剣士「え!?この鞘に…あ!!本当だ…これもしかしてママが先に?」

ローグ「姉さんがシン・リーンの紋様を真似たのかも知れやせんが…可能性はありそうっす」

剣士「待てよ待てよ…あのシン・リーンの壁画の彫刻…かなり特殊だった…普通の人には難しいけどママなら簡単だ」

ローグ「およよよ?新説っすね…あの壁画は姉さんが彫った可能性がありやすね」

剣士「でも飽きっぽいママがどうしてあんな大きな壁画を掘ったんだろう」

ローグ「ははーん…きっとこれっすね…」パサ
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:42:23.06 ID:KbfSVIxh0
剣士「え?」

ローグ「これは10年前に未来君の証言をあっしがメモした物でやんす」

剣士「あああ!!未来を知って居るから予言として残した…そういう事か…あの壁画は予言なんだ」

ローグ「未来にこんな事が起こるという事さえ残せば変えられる可能性もありやすよね?未来君の様に」

剣士「…そうかつまり暁の墓所の壁画も予言だ…良く見ておけば良かったなぁ」

ローグ「暁の墓所?なんか聞いた事ありやす…」

剣士「シン・リーンの東にある王家の墓所らしいよ…壁画が隠されてたんだ」

ローグ「もしかすると姉さんは世界中のあちらこちらに予言を残したかも知れやせん…こりゃまたロマンすねぇ」

剣士「ママの手掛かりが残って居そうなのは分かったけどパパとアダムの関係が繋がらない…」

ローグ「他に何か無いっすかねぇ…向こうの部屋には古美術品がありやすぜ?」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:43:32.06 ID:KbfSVIxh0
『向こうの部屋』


剣士「壺に食器…装飾品…う〜ん」

ローグ「何かの道具もありやすが…未来君は分かりやせんか?」

剣士「全然分からない…」

ローグ「手がかりは無さそうでやんす…」

剣士「時の王っていう人は2000年くらい前の人だとするとドリアードとは無関係だよ」

ローグ「ドリアードはもっと昔でしたかね?」

剣士「3000年前くらいらしい」


リン ゴーーーーン


剣士「鐘の音…」

ローグ「貸し切りは終わりでやんす…どうしやす?まだ見ていきやすか?」

剣士「興味を引く物が無い…もう良いや」

ローグ「未来君はこれからどうするでやんすか?」

剣士「う〜ん…急ぎの用事はもう無いんだけど…エリクサーを運んで居る最中なんだ」

ローグ「どこまで運ぶでやんすか?」

剣士「名も無き島だよ…商人さんがホム姉ちゃんを復活させようとしてるんだ」

ローグ「商人さんにもずっと会って無いでやんす…取引の件で話をしたいんすが」

剣士「今はキ・カイに居る筈…経由して送って行こうか?」

ローグ「気球で行くでやんすか?」

剣士「あ!飛空艇の事話して無かったね…新しく僕の飛空艇を作ったんだよ」

ローグ「さすが姉さんの血を引いていやすね…あっしにも見せて下せぇ」

剣士「ママの船より早いんだよ?」

ローグ「そらスゴイっすね…もう行きやすか?」

剣士「飛空艇でウルフを留守番させっ放しなんだ…早く戻りたいんだけど…」

ローグ「早速行きやしょう」

剣士「ローグさんは何も持って行かなくて良いの?」

ローグ「あっしはもう屋敷も何も要らんでやんす…豪族と付き合うのもウンザリして居やした」

剣士「ハハ…じゃぁもう行こっか」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:45:01.78 ID:KbfSVIxh0
『道中』


ガヤガヤ ガヤガヤ


剣士「ローグさんは商人さんとどんな取引を?」

ローグ「相場の話っすね…魔石のレートが変わるんすよ」

剣士「そんなに重要な事なの?」

ローグ「貴族の一人にちっと賢いのが居るんす…放って置くと富を独り占めする様になるでやんす」

剣士「ふ〜ん…魔石とどんな関係なの?」

ローグ「キ・カイはエネルギーが魔石に依存してるんでレートが大きく変わると戦争に発展しやす」

剣士「政治絡みなんだ…苦手だ」

ローグ「あっしは名家の出じゃないもんすから資金は動かせてもレートの操作にあまり介入出来んのでやんす」

剣士「ふ〜ん…」ハナホジー

ローグ「興味無さそうっすね?」

剣士「全然無い」

ローグ「こう言えば良いっすかね?もう魔石は売らないと言われたら言う事聞くしか無い…そういう事なんす」

剣士「…」


---エネルギーの供給が条件…供給を止めると脅されたら?---

---アダムと魔石の関係と同じか---

---そういえば魔王を封じたとされる魔石は何処に行った?---

---大事な事をすっかり忘れていた---


ローグ「どうしたでやんすか?急に黙りこくって?」

剣士「あ…いや何でも無いよ」

ローグ「キ・カイに魔石が流通しなくなったらどうなるんすかねぇ」

剣士「大丈夫だよ…向こうは石炭が豊富だし」

ローグ「石炭って又時代遅れな燃料っすね…」

剣士「馬鹿に出来ないよ?錬金術でダイヤモンドに変換出来る」

ローグ「ええ!?そうだったんすか?」

剣士「あとキ・カイの古代遺跡からウラン結晶も発掘されてるみたいだよ」

ローグ「なおさら商人さんと情報交換しないといけやせんね…それを奪いたいと思う輩は沢山いるでやんす」

剣士「なかなか平和にならないなぁ…」


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61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:45:51.72 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーーー バサバサ


ローグ「操舵のコツが分かってきやしたぜ?」

剣士「キ・カイまで任せたよ…僕は歴史の勉強だ」ヨミヨミ

ローグ「風に上手く乗れば逆風でも進むのがスゴイっすね」

剣士「落下を上手く使ってスピード乗せるんだよ…慣れれば勘で行ける」

ローグ「武器はクロスボウ2台すか…火力は姉さんの船が上なんすね」

剣士「あんまり戦闘を想定していないんだ…ボルトもちょっとしか乗って無い」

ローグ「外の視認性が悪いのがちっと不便すね」

剣士「そうだね…暇があったらもう少し改造してみる」

ローグ「いやぁぁ骨組みをクジラの骨で作ったのは考えやしたね…」

剣士「木よりも軽くて強度が高かった…だから大きな羽が作れたんだ」

ローグ「噂でキ・カイの気球の話をよく聞くでやんすが皆こんな感じで?」

剣士「軽量なのは同じかな…錬金術で木材を樹脂に変性してるんだ…木よりも軽くて丈夫」

ローグ「この胴体の部分っすよね?」

剣士「それそれ…卵の殻みたいになってるからスゴイ強度が高いんだよ」

ローグ「10年で進歩するもんすねぇ…」

剣士「キ・カイは色んな形の気球があって面白いよ」

ローグ「あっしは10年間南の大陸には行って無いんで楽しみっす」


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62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:46:42.04 ID:KbfSVIxh0
『古都キ・カイ』


フワフワ ドッスン


ローグ「門の外に降ろすのは何か理由が?」

剣士「豪族に狙われるんだよ…ほら女オークは背格好がビッグママに似てるじゃない?」

ローグ「顔は似てないでやんす…背が高いのは損っすね」

剣士「商人ギルドは場所知ってるよね?3人だと目立っちゃうから現地集合で良い?」

ローグ「良いっすよ…」

剣士「じゃ…向こうで…女オーク!ハイディングしながら行くよ!」グイ

剣士「ハイディング!」スゥ

女オーク「ハイディング!」スゥ

ローグ「あぁ姉さんを見て居る様でやんす…良い子に育ちやしたよ?姉さん…」タッタ


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63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 10:48:08.20 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド』


ガヤガヤ ガヤガヤ

はい!買取はこっち!競売はあっち!

商船の取引所は臨時で外に作ってありまぁぁす!

亜麻とシルクが値下がりしてる…

石炭の売りが好調だ…ウヒヒヒ


盗賊「奴隷商居無ぇかぁ!!大工に工夫!!大募集!!移民歓迎!!誰か居無ぇかぁぁぁ」

娘「爺じぃ!!ここは取引所だからそう言うのは外でやってよ!!」

盗賊「そんな簡単に集まら無ぇからここに来てんだよ!」

娘「邪魔邪魔!!シッシ!!」

盗賊「はぁぁどうすっかな…」

影武者「僕に任せておいてよ…地下の方に孤児の集まりが居るから話してみるよ」

盗賊「孤児!!おぉそれだ!!」

影武者「ギャングになっててスラムをうろついて居るんだ」

盗賊「スラムか…お前一人で大丈夫なのか?」

影武者「僕を誰だと思って居るんだい?取引なら任せ…」


ローグ「盗賊さん!お久しぶりでやんす…」


盗賊「ん?おおおおおおお!!ローグじゃ無ぇか…どうしたんだ?いつ来た!?」

ローグ「商人さんに会いに来たでやんす…盗賊さんも一緒だったでやんすね」

盗賊「商人なら下に居るぞ?連れて行ってやる」

影武者「困るなぁ…勝手にチョロチョロされるのは」ジロ

盗賊「まぁ堅い事言うな」

影武者「ダメだよ…僕はここを任されて居るんだ…僕の許可無しで勝手な事はしないで貰いたい」

ローグ「ちっと待って下せぇ…未来君もここに来る筈なんすが」

盗賊「なぬ!?未来も一緒か?なら上の大部屋で待って居た方が良さそうだな」

影武者「そうして貰えると助かる…商人には僕から伝えるよ」

盗賊「あー分かった分かった…ローグ!こっちだ来い」

ローグ「へい…いやぁ賑わって居やすねぇ…」

盗賊「ところでお前今まで何やってたのよ?」

ローグ「まぁ色々ありやしてね?」


アンナコト コンナコト

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64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:21:46.14 ID:KbfSVIxh0
『大部屋』


剣士「リリース!」スゥ

女オーク「リリース!」スゥ


盗賊「おぉ!来たか…ん?なんだそりゃ買い物して来たんか?」

剣士「触媒が不足してたから地下に行って来たんだ…良さそうな望遠鏡有ったから買ってきちゃった」

ローグ「あらら?な〜んか女オークさん…雰囲気代わりやしたね?」

女オーク「…」

剣士「変性魔法で少しキバを出した…肌色も少し褐色に…こっちの方が良いでしょ?」

ローグ「今まで未来君の魔法で変装していたんすね?」

剣士「人間っぽくしてたんだけどさ…やっぱりキバは少し出ていた方が良い」

盗賊「それにしても商人遅せぇな…」

ローグ「あっしには興味無いのかも知れやせんねぇ…」

剣士「あ!!ホム姉ちゃんが生きてたって伝えればすぐに来るかも」

盗賊「なぬ!!そりゃマジか…」

ローグ「あっしも今聞いたでやんすが…何処に居るんすか?」

剣士「精霊樹の森だよ」

ローグ「石造はどうなったんすか?」

剣士「話は商人さんが来てからの方が良いかも」

盗賊「おう!!ちっと急ぎで呼んで来るわ」ダダ


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65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:23:17.28 ID:KbfSVIxh0
『数分後』


ガチャリ ドターーーン!


商人「剣士君!!聞いたよ…ホムンクルスが生きていたんだってね?ハァハァ」

ローグ「速攻出て来やしたね…ハハ」

剣士「うん…ホム姉ちゃんの超高度AIユニットは10年前に僕が拾って精霊の御所に置いて来たらしい」

商人「らしい?」

剣士「僕は記憶を失って居たんだよ…話はこうだよ」


10年前…シャ・バクダ遺跡に避難していた時の事

僕は冒険の書を読んだんだ…


カクカク シカジカ

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剣士「…という訳でホム姉ちゃんは精霊樹になって森の動物や虫達に囲まれて生きているんだ」

商人「そうか…無事だったか…良かった」ポロポロ

剣士「体は失ったけど精霊樹になって葉っぱから風の音とか色んな事を感じてる筈」

商人「うんうん…」

剣士「今では森の声の主になって沢山の友達が居る筈」

商人「うんうん…それで良い…きっとそれが一番幸せな筈さ」

機械の犬「ワン!」

商人「精霊樹の森に行きたくなって来た…そうだホムンクルスの超高度AIの寿命は400年くらいだった筈」

機械の犬「ワン!」

商人「この機械の犬に入れた超高度AIユニットの寿命はあと5年程…それぞれ違う形だけどきっとこれが一番良い」

盗賊「ふ〜む…なるほどな…それで未来が行方不明になった後に御所で発見された訳か」

商人「剣士君…僕は精霊樹の森へ行きたい…ホムンクルスの傍に居たい」

剣士「あ〜今はちょっとダメかも…エルフが戦争をしてる」

商人「相手は?まさかドリアード?」

剣士「話にはまだ続きが有ってね…実はドリアードの中にあるアダムは僕が破壊して来た」

盗賊「どわっ!!マジか!!それを先に言え!!」

商人「えええ!?どういう事なんだい?」

剣士「もっと話は遡る…実は僕は未来から来てるんだ…未来に起こる事をもう変えて来た」

商人「ええと…話が掴めない」

剣士「こういう事だよ…」


カクカク シカジカ

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66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:23:49.31 ID:KbfSVIxh0
商人「…これは驚きだ…剣士君!君はこの世界が夢幻だと言っているのと等しい事を言って居る」

剣士「そうだよ…魔術で言う次元の繋がりは…おそらく夢幻のゆらぎだよ」

商人「じゃぁ今のこの瞬間も…精霊の記憶?いや…ホムンクルスの記憶?」

剣士「そう言い変える事が出来るかも知れない」

商人「ラヴ!君にこの質問をするのは酷かもしれないけどどうなんだい?」

機械の犬「クゥ〜ン」

商人「分からない…」

剣士「その答えを探すのが魔道なんだ…魔女は初めからそれを知って隠して居た」

商人「現実は何処にある?」

剣士「この次元も現実…別の次元も現実…それが量子で繋がっている…量子転移とはそれを超える魔法」

商人「平行世界か…」

盗賊「難しい話になって来たが…とりあえずアダムは破壊されて色々解決した訳だな?」

剣士「その筈…多分未来は変わった」

盗賊「あいつはどうなった?とち狂った第3皇子のヤローは?」

剣士「そんな人は見て居ないなぁ…僕はエリクサーに浸かった機械をママの爆弾で破壊した…それだけ」

盗賊「ふむ…破壊したってのは本当らしい…エリクサーに浸かっているなんぞ行った奴にしか知り得ん話だ」

剣士「アダムは破壊出来たけどその後ドリアードが暴れ始めて今エルフが戦って居る最中だよ」

商人「精霊樹は大丈夫そうかい?」

剣士「エルフゾンビさん曰く有利にはなってきているらしい」

商人「そうか…もう少し待つ必要があるのか…ところでエリクサーは?」

剣士「樽で4つ分持って帰って来たよ」

商人「僕にはまだ仕事が残って居るな…未来の為にホムンクルスを完成させないと」

剣士「え?」

商人「ホムンクルスは未来にメッセージを伝える為に生き延びて居るんだ…絶やしてはいけない」

剣士「あぁ勘違いした…僕の事かと思った」

商人「…」

剣士「??」

商人「剣士君…君のお母さんの女海賊は…もしかすると君へのメッセージをホムンクルスに託して居ないかな?」

剣士「え!?」

商人「女海賊はホムンクルスが現在まで生き延びている事を知って居る筈…だから古代遺跡に残って居たんじゃないかい?」

機械の犬「ワン!ワン!ワン!」

商人「正解だ…古代遺跡で見つけた外部メモリをラヴに一度挿入した…ラヴがそのメッセージを知って居る」

機械の犬「ワン!」

商人「聞くためにはホムンクルスを目覚めさせる必要がある」

剣士「聞きたい…」



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67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:24:22.88 ID:KbfSVIxh0
商人「エリクサーの買取は次の商船が入って来るまで待ちだよ…もう2〜3日かな」

剣士「うん…しばらくゆっくりしておくよ」

ローグ「商人さんあっしからもちっと話があるんすが?」

商人「何かな?」

ローグ「北の大陸からの魔石が流通していやすよね?レートが一気に変わるっす」

商人「へぇ?それは困るね…でも何で急に?」

ローグ「セントラルの貴族の中で公爵っていう奴を知りやせんか?」

商人「あぁ知って居るさ…古代遺跡発掘の出資元だね…彼が何か企んでいる?」

ローグ「多分キ・カイの利権を丸ごと狙ってるっすよ…何か凄い物を発掘していやせんかね?」

商人「詳しくは知らないんだ…まぁでも魔石流通が止まるとキラーマシンも動かない…機械の軍艦もだ」

ローグ「そういう事っス…丸裸なんすよ」

商人「利権の独り占めは豪族も黙って居ないんじゃないかな?豪族が魔石の流通に動くと思うけどなぁ」

ローグ「だからこうやって話をしてるんす…豪族をコントロールしているのはあっしとアサシンさんでやんす」

商人「アレ?もしかして豪族の頭取ってローグだったのかい?」

ローグ「言い忘れていやしたね…あっしは裏で豪族を操っていたっす」

商人「なんだそうだったのか…なかなか足が掴めなくて困って居たんだよ…そっちから来たんだね」

盗賊「おいおいおい…どういうこった!」

商人「そうだよローグ!困るんだよ豪族があちこちで勝手に動かれちゃ…武器の密輸しかり相場の介入しかり…」

ローグ「正確にはあっしだけじゃ無いんす…さっき言った公爵も上手く豪族を誘導してるんす」

商人「つまりこうだね?公爵が力を付けて来てローグの手に負えなくなってきている…」

ローグ「まぁそんな所でやんす…海賊王の娘に懸賞金を賭けて豪族を纏まらせないので精一杯なんでやんす」

商人「まぁ一つ分かったのは豪族はその頭取以下の一枚岩では無いという事だね」

ローグ「ハッキリ言ってバラバラっすね」

商人「公爵が利権を餌に纏め始めたという所か…」

盗賊「しかしローグ!豪族のせいでどんだけの村が焼かれたか分かってんのか!?」

ローグ「それにも訳があるんすが…」

商人「うーむ…これは話が長くなりそうだ…盗賊!影武者が単独で取引先に行くんだけど一緒に付いて行ってもらえないかな?」

盗賊「んぁ?俺は人相が悪いからダメだと本人に言われてんだが…」

剣士「僕が言って来ようか?ボディーガードだよね?」

商人「剣士なら安心だ…お願いできるかい?」

剣士「女オークはここで待って居た方が良さそうか…」

女オーク「私は水浴びしてゆっくりしておくわ」

剣士「うん…じゃぁ影武者さんの所に行って来る」

商人「助かる…それでローグ?話の続きなんだけど…」

ローグ「へい…あっしが豪族を動かしてやっていた事はですね…地軸の移動に備えて人の誘導が狙いだったんす…」


カクカク シカジカ

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68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:24:48.27 ID:KbfSVIxh0
『港にある倉庫』


スタスタ


剣士「影武者さん…肌の調子はどう?」

影武者「おかげで良くなったよ…髪の毛も生えて来たさ」

剣士「もうフードで顔を隠さなくても良いんじゃない?」

影武者「僕はねこのフードの隙間からしか世界を見たことが無いんだ…怖いんだよ」

剣士「怖いって…何が?」

影武者「僕の顔色を悟られるのがさ…フードの中で怯えた顔をしているのを知られたくない」

剣士「あーーーなんか分かるなぁ…僕も子供の頃からずっとフードの隙間から世界を見てた」

影武者「フフ…君も同じだったか」

剣士「なんだろうなぁ…フードに隠れてるのは顔だけなのに…どうして落ち着くんだろう」

影武者「世界を一歩引いたところから見て居る…そんな感じだよ」

剣士「アハハ…そんな2人が揃って歩いているのはおかしく見えるよね」

影武者「そうかい?」

剣士「僕影武者さんと意見が合いそうだ…でもね…君の笑った顔も見て見たい」

影武者「…」

剣士「どうして黙るのさ」

影武者「笑い方を知らない…笑えているのかも自信が無い…ゴメンねその期待には応えられない」

剣士「まぁ良っか!!かくれんぼしてるみたいでなんだか楽しいし」

影武者「そろそろ待ち合わせの場所だよ…君は黙って見て居れば良い…言葉を発したらダメだよ」

剣士「おけおけ!秘密の取引…ワクワクするなぁ」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:25:29.03 ID:KbfSVIxh0
『数分後』


スタスタ


豪族の男「…これはこれは闇商人さんよ…約束通り2人で来たな?」

影武者「…」タジ

剣士「…」ポカーン

影武者「密会の約束だった筈だね…どういう事かな?」

ごろつき「二ヒヒ…」ゾロゾロ

豪族の男「まぁまぁ…そう慌てんな…取引が無事に済めばそれで良いだろう?」

影武者「破談さ…剣士君…帰ろう」スタ

豪族の男「待て待て…ブツは用意しているんだ…これを見ろ」ドサリ

影武者「…」ジロリ

豪族の男「俺は例の物が手に入ればそれで良い…何処に隠してある?」

影武者「フフこの状況で取引が成立するとでも?」

豪族の男「おぉ分かった分かった俺は下がって後ろを向く…その袋は持って行け…ブツのありかさえ聞ければ俺はそのまま去る」

影武者「剣士君…その袋を持って帰ろう」

剣士「…」スッ ガサリ

豪族の男「さぁ教えろ…キラーマシンのパーツは何処に保管してあるんだ?」

影武者「2番倉庫B-14…剣士君行こう」スタスタ

剣士「…」スタスタ

豪族の男「グハハハハ…俺は去るが…後は知らん」

影武者「ハッ…まずい!!来た道に人が沢山居た…」

剣士(まだ喋っちゃダメ?)ヒソ

影武者「剣士君僕を守って…これは罠だ」

豪族の男「さぁて!!これでまともに取引出来るな?海賊王の娘を匿って居るだろう…後は言わんでも分かるな?」

剣士(やって良いの?)ヒソ

影武者「この窮地を脱出できるのであれば」ヒソ

豪族の男「さぁどうなんだ?この付近に居るのはみ〜んなごろつきだ!!どういう事か分かるな?」

剣士「…」チャキリ ターン


バチン!!


豪族の男「あだっ!!にゃろう…言う事聞く気が無ぇな!!」

剣士「…」チャキリ

豪族の男「その武器は海賊王の娘の武器…やっぱり匿っていやがったな!!ごろつき共!!やっちまえ!!」

ごろつき共「うぉぉぉぉ」ズドドド

剣士「影武者さん僕の懐に入って!」グイ

影武者「え!?」

剣士「ハイディング!」スゥ

豪族の男「消えた…あいつ!!白狼の一味だったのか…」

ごろつき共「あっちだぁ!!地下の方へ向かって居る!!」ズドドド

豪族の男「闇商人が白狼の仲間だったとは…くそう!追え!隠れ場所を突き止めろ!!」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:26:43.23 ID:KbfSVIxh0
『夕方_商人ギルド』


ザワザワ ガヤガヤ

おい白狼の盗賊団って知って居るか?

10年以上前の伝説の盗賊団だ

地下の方に隠れて居るらしい

こりゃ貴金属の被害が出そうだ…ヤべェ隠すぞ!

ザワザワ ガヤガヤ


盗賊「よう!!戻った様だな?何なんだこの騒ぎは…」

影武者「商人は何処へ?」

盗賊「上の大部屋でくつろいでる…何か有ったんだな?」

影武者「話はそこで…」


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71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:27:13.82 ID:KbfSVIxh0
『大部屋』


ガチャリ バタン


影武者「商人…取引は無事に終わったよ…でもマズい事になった」

商人「うんゴメンね…危険な取引を君に押し付けてしまって」

影武者「いえ…それは構わない…でも白狼の盗賊団と闇商人を紐づける結果になってしまって…」

商人「そろそろ潮時だとは思って居たんだ…海賊王の娘を匿って居るという噂も在ったしね」

影武者「どうしよう…このままだとキ・カイで行動するのは制限が出てしまう」

商人「しばらく身を隠すしか無いだろうね…盗賊と少し話をしたんだけど君にはハテノ村に行ってもらいたい」

影武者「ハテノ村…左遷ですか」

商人「そう言うのじゃない…ハテノ村で硫黄の取引所を新しく作りたいんだよ…そこを君に任せたいんだ」

影武者「商人はどうされるので?」

商人「考えてある…世間的に死んだ事にするのさ」

ローグ「簡単なこってすね…あっしが闇商人と海賊王の娘を捕らえた事にするだけっす」

剣士「アハハそれ名案だねぇ」

ローグ「あっしは豪族の中では名が通ってるんすよ…豪族達の目の前で商人さんに扮した剣士さんと女オークさんを捕らえるんす」

剣士「商人さんの姿に変性するのは簡単さ…面白い!やろうやろう」

ローグ「どこでやりゃ良いっすかね?」

剣士「こういうのはどう?地下街の一角に鉄の檻があるんだ…その中に2人入ってローグさんと盗賊さんでここまで移送する」

ローグ「しばらく檻の中でやんすがそれでも良いっすかね?」

剣士「ほら?昔さぁ…檻の中で過ごした事有ったよね?どんぐりだけ有ればそれでも楽しいんだ」

女オーク「ウフフ…」クス

ローグ「豪族達は頭悪いもんすからそれで絶対騙せやすね」

剣士「決まったら早速行こう…丁度豪族達を地下に撒いて来た所だし」

ローグ「盗賊さん良いっすかね?檻の鍵開けには盗賊さんの力が必要っす」

盗賊「ぬぁぁぁしょうが無ぇなぁ…茶番にゃ興味無いんだが…」

商人「まぁまぁ…ハテノ村へ移住する人の件は僕がなんとかするさ」

盗賊「ワイン一本貰ってくぜ?酒でも飲みながらじゃ無ぇとダルくてよう」グビグビ

剣士「悪党ズラもたまには役に立ちそうだね…豪族のごろつきにそっくりだよ」

盗賊「んだとぅ!!」

ローグ「じゃぁ行くでやんす…剣士さん檻まで案内して下せぇ」

剣士「うん!!付いて来て…」タッタッタ
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:28:50.50 ID:KbfSVIxh0
『チカテツ街道_廃線』


ドヤドヤ

街道の奥の方まで逃げてるかもしれん!

明かりを持ってこい!

この廃線に逃げ込んだので間違い無いな?

暗くて何も見えやしねぇ!明かりはまだか!?



盗賊「危なく見つかる所だったぜ…この奥に牢屋があるんだな?」

剣士「うん…多分もう使われてないよ」

ローグ「ありやしたぜ?こりゃ奴隷移送用の牢屋っすね…車輪が付いてるんで移送がラクっすよ」

盗賊「おぉ鍵開けるから待ってろ…」カチャカチャ カチン

ローグ「さささ…早く入ってくだせぇ」

剣士「ウフフわくわくするなぁ…女オークおいで」グイ

盗賊「ちっと戦闘音出して釣るか?」

ローグ「そうっすね…」

剣士「任せて!火炎魔法!火炎魔法!火炎魔法!」ゴゥ ゴゥ ゴゥ ドーン

盗賊「鍵閉めるぞ?」カチン

ローグ「檻を叩きやしょう」カーン カーン カーン


おらぁ!!掴まえたぞぉぉぉ

檻の中に入りやがれぇぇぇ

ここで会ったが100年目でやんす…大人しくお縄頂戴でやんすよ


剣士「フフフ女オーク!!トマト爆弾食らえぇ!!」ポイ ベチャ

女オーク「え!!ちょっと…水浴びしたばかりなのよ!」グイ

剣士「いてて腕を掴まないで…」

盗賊「おい!!武器は俺らが預かる…出せ」

剣士「ん…あ…はいコレ…刀とデリンジャー」ポイ

女オーク「剣士!?何個トマトを持って居るの?」

剣士「フフフ食らえ!!」ポイ ベチャ

女オーク「止めて…」グイ

剣士「あだだだ…力は君の方が強い…ずるいぞ!!」ドタバタ


盗賊「檻を押すぞ!!あんまり暴れんな!!」グイ ガタゴト

ローグ「お二人さん大人しくするでやんす…豪族達が来たでやんすよ」


豪族の男「…こりゃどういう事だ?なんで頭取がキ・カイに居る…」

ローグ「なんでもかんでも…あんさん達が海賊王の娘を捕らえるのに手間取ってるもんすからこうやって直々に動いてるんすよ」

盗賊「おい!!大人しくしろ2人共!!撃つぞ」チャキリ ターン


ドタバタ ドシン ドシン
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:29:58.64 ID:KbfSVIxh0
ローグ「あんさん達は信用出来んのですわ…公爵から何やら依頼もされて居やすよね?」

豪族の男「う…海賊王の娘を後回しにしていた訳じゃ無ぇ…なかなか捕まえられ無ぇもんだから…その」

ローグ「もう捕らえたんでやっとドワーフ達と交渉出来やす」

豪族の男「そっちの小さい方は闇商人だと知って居るのか?」

ローグ「闇商人にはちぃと拷問の必要がありそうっすねぇ…ニヒヒヒ」

豪族の男「懸賞金はこれでおじゃんという事か?」

ローグ「そうなりやすねぇ…まぁ豪族の皆さんには良く働いて貰ったもんすから…ドワーフ達から得た利権は分け前を分配しても良いっすね」

豪族の男「おぉぉ!!俺にも移送を手伝わせてくれ…しかしこいつ等仲間割れか?」


ドタバタ ドシン ドシン


盗賊「おい!!静かにしろぉ!」チャキリ ターン

豪族の男「その武器は取り上げたんだな?すげぇ見せてくれ」

盗賊「こりゃ俺の取り分だ触るな!!」チャキリ

豪族の男「ちぃぃぃクソう!!一歩遅かった…」

ローグ「幽霊船の中にはまだたんまりお宝がある筈でやんす…まだまだこれからでやんす」

豪族の男「おう!!強力させてくれぇ!!」

盗賊「ならよう…この廃線の奥にこいつらの隠れ家があるかも知れ無ぇんだ…探して来てくれ」

ローグ「ハハそーっすね…あっしらは海賊王の娘の移送で忙しいでやんすよ」

豪族の男「グハハハハハそういう事かい…まだまだ俺にも分け前が残って居たとはこりゃ抜かった…」

盗賊「待て!お前独り占めは許さんぞ?」

豪族の男「ここは共闘って行こうじゃ無ぇか…おいごろつき共ぉ!!行くぞ!!宝は目の前だぁぁ!!」ドタドタ

ごろつき「うぉぉぉぉ」ドタドタ

ローグ「…」

盗賊「んんん…アホだなあいつ等」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:31:17.37 ID:KbfSVIxh0
『地下入り口』


ガタゴト ガタゴト


移送されているの誰か知ってるか?

片方が海賊王の娘らしいわ

いやぁぁ血だらけじゃない…

もう一人は白狼の盗賊団の一人らしい

あれが伝説の…

こりゃ他の仲間が動き出したりしないか?


ザワザワ ザワザワ


ローグ「いやいや…噂の伝わる事の早いのなんの…」

盗賊「他の豪族共も慌てて地下に入って行きやがる」

ローグ「これは地下の大捜索になりやすぜ?」

盗賊「知った事か!!ちっと俺は馬持ってくるからローグはここで待っててくれ」

ローグ「あいさー」

盗賊「5分で戻る!!」ダダ

ローグ「剣士さん…見世物になって居やすが大丈夫でやんすか?」


ドタン バタン ギシギシ


剣士「はぁはぁ…もう分かった降参だ…もう悪戯しないから放して」グググ

女オーク「私の勝ちね…隠したトマトを出して」

剣士「こ…ここだよ」スッ

女オーク「本当に油断も隙も無いんだから…」

剣士「怒ってるの?」

女オーク「呆れているの…」

ローグ「剣士さん聞いていやすかね?見世物になってるんすが…」

剣士「あぁゴメン…どうして居れば良い?」

ローグ「2人共堂々とですね…一応2人共伝説の人物なんすがどうも威厳が無くてですね…」

剣士「ええと…つまり大人しくしていろって事だね?」

ローグ「そういうこってす…今日は檻から出せれないと思うんで大人しく休んでいて下せぇ」


パカラッ パカラッ ブヒヒ〜


盗賊「戻ったぜ?ローグ!手枷を持って来たから2人に付けて囚人らしくさせろ」ポイ ドサリ

ローグ「へい!!2人共済まんでやんす…鍵は外しておくんで一応つけるだけ付けて下せぇ」カチャ カチャ

剣士「手が込んでるねぇ…ハハ」

盗賊「まぁ一応な?見てる奴は見てるからよ…商人ギルド裏まで移送したら幌を被せてやる」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:32:40.92 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド裏』


ガタゴト ガタゴト ブヒヒ〜ン ブルル


盗賊「見物人が付いて来ていやがる…面倒だな」

ローグ「これじゃ下手に動けやせんね?」

盗賊「まず幌を被せるぞ…ローグ!反対側持て」バサバサ

ローグ「いきやすぜ?せ〜の!!」バサッ

盗賊「ローグどう思う?檻の中だがちっと危ないと思わ無ぇか?」グイグイ ギュゥ

ローグ「そーっすね…あっしとドワーフの交渉を邪魔したい輩が居るなら暗殺者が動くかも分からんす」

盗賊「やはりな…公爵つったっけ?息の掛かった豪族はどっかに紛れて居そうだな」

ローグ「あっしも身を隠さんと狙われるかも知らんでやんすねぇ」

盗賊「しゃぁ無ぇな…ちっと死体を2つ仕入れて来るか」

ローグ「宛てがあるでやんすか?」

剣士「待って待って…僕は変性魔法が使えるんだ…誰か身代わりになる人を檻の中に入れてくれたら交代するよ」

盗賊「お!?そりゃ良い…酒場に行きゃ素行の悪い豪族なんかいくらでも居る」

ローグ「決まりっすね?」

盗賊「そうだな…酒場にある樽に身代わりの豪族を入れてだな…ここまで運ぶ」

ローグ「樽ごと檻の中に入れて交代するんすね?」

盗賊「行けそうだな…よし!剣士…小一時間で戻って来るからそれまで自衛しろ」

剣士「おけおけ」

盗賊「ローグ来い!!樽を運ぶの手伝え」

ローグ「あいさー」タッタッタ
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:33:23.84 ID:KbfSVIxh0
『酒場裏』


こんな所に呼び出したからには落とし前付けてくれるんだろうな?

お前達は酒場でお痛が過ぎるんだちっと大人しく寝てろ

んだとゴルァ!!やんのかてめぇ!!


盗賊「ローグ!ヤレ!!」

ローグ「バックロロホルム!!」

ごろつき1「むぐっ!!」

ごろつき2「なっ…!!」

盗賊「殺しゃし無ぇ…寝てろ」グイ

ごろつき1「んむむ…」グター

ごろつき2「ふんが…」グター

ローグ「いやぁぁ強力な睡眠薬っすね…どこで手に入れたんすかコレ」

盗賊「そりゃ後だ…さっさと樽に入れて運ぶぞ」ゴソゴソ

ローグ「何か持って居やすか?」ゴソゴソ

盗賊「金貨と宝石を少しな…こいつら北方の海賊出身だな」

ローグ「本当っすね入れ墨入って居やすね」

盗賊「まぁ良い!盗る物盗ったら樽ん中入れて運ぶぞ」ヨッコラ ヨッコラ

ローグ「いやいやいや…なんか盗賊さんの真の姿を見た気がしやした」

盗賊「俺ぁこういうのから足は洗ったんだ…今は鍵開け専門よ…お前の方こそ隠密は慣れて居そうじゃ無ぇか」

ローグ「あっしは諜報専門っす…殺しはやりやせん」

盗賊「ケッ…行くぞ」ヨッコラ ヨッコラ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:34:51.96 ID:KbfSVIxh0
『商人ギルド裏の檻』


ヒソヒソ ヒソヒソ


ローグ「皆さんどいてくれやんす」ヨッコラ

盗賊「人の荷を勝手に覗くんじゃ無ぇ!どけゴルァ!!」ヨッコラ

ローグ「これは見世物じゃ無いんで皆さん何処かへ行ってもらえやせんかね?ちっと強引な感じになっちまいやすぜ?」

見物人「ひぃぃぃ」

盗賊「シッシッ…」ドスン

ローグ「よっこら…よっこら」ドスン

盗賊「おい!檻の中の2人…お前等の着ている物全部この樽の中に入れろ」

ローグ「海賊王の娘さんや…幌で見えない様になっているのはあっしからの気遣いでやんすよ?言う事聞くんでやんす」

盗賊「俺が中に入って身ぐるみ剝がして来る…ローグは見張って居てくれ…鍵開けるぞ?」カチャリ ギー

ローグ「樽を中に入れるでやんすよ?」ヨッコラ

盗賊「抵抗したらどうなるか分かってんだろうな?」チャキリ ターン

ローグ「ハイハイ皆さん囚人の身ぐるみを剥いでいるだけですんで解散!解散〜〜」


ヒソヒソ ヒソヒソ

あれが豪族の頭取?随分物腰が弱そうな…

海賊王の娘はえらいべっぴんと聞くが本当かえ?

どんな装備品を持って居るのか…

檻の中が光ってる…何なんだ?


盗賊「そうだ…大人しく脱いで樽の中に放り込め…ダメだ下着も全部だ!」

盗賊「武器を隠していやがったな!!だがもう必要無いヌハハ」

盗賊「ようし!大人しくしていた褒美に後で布っ切れは用意してやる」

盗賊「ヌハハ装備品はすべて回収したぜ?ローグ…運ぶぞ」

ローグ「檻に鍵を掛けるのを忘れんで下せぇ」

盗賊「おぉそうだった」カチャリ

ローグ「じゃぁ樽を運びやすぜ?はいはい皆さんどいて下せぇ」ヨッコラ ヨッコラ


ヒソヒソ ヒソヒソ

おぉぉ樽から装備品がはみ出して…

どんなお宝なのか
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:35:58.70 ID:KbfSVIxh0
『大部屋』


ヨッコラ ドスン


盗賊「もう出て良いぞ?」

剣士「…」ヒョコ

女オーク「…」ヒョコ

ローグ「子供の頃の2人に変身っすか…これで自由に歩けやすね?」

盗賊「そりゃ良いが変身した奴は女戦士の恰好をしているんだが…裸はやっぱマズいよな?」

剣士「マズいよ!ビッグママに知られたら怒るよ?」

盗賊「適当な着替えを持って行って来る」ダダ

ローグ「いやいやいや…それはあっしが行って来るっす…盗賊さんは待っていて下せぇ」ダダ

剣士「はぁぁぁぁ何か色々楽しかったなぁ」

盗賊「まぁこれで海賊王の娘を付け狙う奴も減るだろう」

剣士「あ!そうそう…見物している人の中にじっと観察している人が居たみたい」

盗賊「そうか…どのくらいか分かるか?」

剣士「2人かな?」

盗賊「ふ〜む…頃合いを見てあの2人を豪族に引き渡すってのも手だな」

剣士「地下に居た豪族の男かい?」

盗賊「うむ…あのアホは喜んでセントラルまで移送すんだろ」

剣士「ハハそんな感じだね」

盗賊「まぁ今日はもう遅せぇから明日ローグと商人に相談だな」

剣士「うん…僕は屋上に行って望遠鏡で星でも見て来るよ」

盗賊「裸は寒いから何か着て行け…女オークも乳は隠せ」

剣士「アハ…女オーク行こうか!!」スタタ


--------------
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:36:39.44 ID:KbfSVIxh0
『屋上』


ヒュゥゥゥ


剣士「南の大陸は冬だったね…やっぱ寒いなぁ」

女オーク「望遠鏡…見える?」

剣士「海にモヤが少し掛かってて月が綺麗には見えないけど一応見えるよ…見たい?」

女オーク「ここで望遠鏡を覗いた時の事覚えてる?」

剣士「え?そんな事あったっけ?」

女オーク「あの時は朝方…ここから剣士達は船を見て居たわ」

剣士「ああ思い出した…ビッグママの望遠鏡が倍率高すぎて使い物にならなかったんだ」

女オーク「私も望遠鏡を見たかったのよ」

剣士「そうだったのか…ゴメンよ気付かなくて」

女オーク「見せて貰える?」

剣士「良いよ…月が見えるよ」スッ

女オーク「ウフフこんな風に見えるのね…遠くの物がこんなに近くに…」

剣士「昔と同じ格好して…今…なんか不思議だね」

女オーク「今下に戻ったら過去に戻っていたりしてね」ニコ

剣士「…」


---そうだね…この町の匂いも雑多の音もあの時のままだ---

---寒いのも昔と変わらない---


女オーク「ねぇ剣士?月の高さが低い気がしない?」

剣士「え!?あぁ…そういえば低い…モヤに隠れ…え!!?」


---寒い---

---月が低い---


剣士「まさか…」ドタドタ

女オーク「どうしたの急に?」

剣士「南極星はどこだ?あぁくそうモヤが張ってて小さな星は見えにくい」ドタドタ


---早朝はモヤが少し引く---

---日の出の場所と星座で地軸のズレが確認出来る筈---


剣士「魔石と壺を持ってくる…そうだ毛布もだ」

女オーク「ここで夜明けまで過ごすつもり?」

剣士「大変な事に気付いた…確認しなきゃ」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:37:27.92 ID:KbfSVIxh0
『数日後_大部屋』


商人「…やっぱり確定かい?」

剣士「星座と暦の書物とも比較したさ…日の出日の入り共に一緒に見える星座が違う…間違い無いよ」

商人「どのくらいズレて居るんだい?」

剣士「今の所15°くらいだと思う…ただ毎日少しづつズレてるだろうから観測に意味が無い」

商人「君の予言だと海士島付近が南極になるんだったね?その影響がどう出るのか僕には想像できない」

剣士「商人さんは地図を書くのが得意だったよね?」

商人「まぁ普通の人よりはね」

剣士「今のうちに新しい地図を起こしておいた方が良い」

商人「君の証言通りだとすると南の大陸は上下逆さまになる…後は緯度と経度かい?」

剣士「海流も風向きも全部変わる…そう言うのを書き残さないといけない」


ガチャリ バタン


ローグ「帰りやした…ぅぅぅ寒ぶ」ゴシゴシ

商人「例の2人は上手く引き取って貰えたかい?」

ローグ「へい…セントラル監獄までの移送を喜んで引き受けてくれやした」

商人「それは良かった…これで豪族に付け狙われないで済む」

ローグ「それより何なんすか?2人で深刻そうな顔をして」

剣士「ローグさん…地軸の移動が始まって居るんだ…アダムを破壊するだけじゃダメだったみたい」

ローグ「ええええええ!!?そらマジっすか」

商人「そういう事らしい…だからこれからどうしようかと」

剣士「一つ…僕達にはハテノ村という逃げ道がある…僕の予測だと温暖な気候の良い土地に変化する」

商人「ハテノ村を開拓して避難民の受け皿にするのは良い案だ…それは継続して進めるとして…目下やる事」

剣士「早く名も無き島にエリクサーを運んでホム姉ちゃんを復活させないと…」

商人「エリクサーは今日到着する筈だよ」

剣士「こうしよう…僕の飛空艇には既に樽4つ積んでるからもう一つ樽を乗せるとなると女オークは連れて行けない」

商人「僕と剣士君だけで名も無き島に行こう」

剣士「女オークは盗賊さんと一緒にハテノ村に行ってもらう…多分そこが安全な筈」

ローグ「あっしはどうしやしょうね?」

商人「ここには商人ギルドもある…豪族の立場を利用してキ・カイにしばらく滞在して欲しい」

ローグ「あっしは又一人っすかトホホ」

商人「盗賊の飛行船で何度も往復する事になるんだ…直ぐに合流出来るさ」

剣士「僕はまだやらなきゃいけない事がある…幽霊船に行ってビッグママに会わなきゃ」

商人「居場所は分かるのかい?」

剣士「海士島付近で隠れて居る筈…早く避難させないと遭難する事になる」

商人「忙しくなるな…早く行動しようか」



---------------
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:38:34.60 ID:KbfSVIxh0
ガチャリ バタン


影武者「商人…エリクサーの樽…無事に入荷したよ」

商人「何処に置いてある?」

影武者「盗賊さんが此処まで運んでくれている」

商人「そうかありがとう…次の仕事はチカテツ街道に居るギャングの件…」

影武者「あぁぁ孤児たちを連れて来れば良いんだね?」

商人「盗賊とローグをボディーガードに連れて行って構わない…一応豪族には気を付けて」

影武者「ローグさんは良いけど盗賊さんは人相が悪い…取引に影響が出てしまうよ」

商人「そういうのも上手く使ってよ…彼は信頼できる」

影武者「…わかったよ」

商人「さて!僕は剣士君と一緒に名も無き島へ行く…あとは影武者!君は盗賊と一緒にハテノ村へ行くんだ」

影武者「序列を先に決めておいて貰いたい」

商人「盗賊にお金を払って居るのは僕さ…君は僕の影武者…つまり君の方が立場が上だよ」

影武者「じゃぁ僕の指示に従って貰う…それで良いね?」

商人「そうだよ…まぁ仲良くやってよ」

ローグ「影武者さんはどーも盗賊さんを毛嫌いしてるっすね?」

影武者「嫌いでは無いよ…只…僕のフードの隙間を覗いて来るんだ」

商人「ハハまぁ良いじゃ無いか…影武者にも守りたい自尊心があるのさ」

ローグ「ハハ〜ン…盗賊さんはズケズケと本質付いて来やすからね?そういう所っすね?」

影武者「ローグさん…もう行くよ」

ローグ「はいなーって盗賊さん置いて行くんすか?」

影武者「もう馬車が到着するんだ…行動は迅速に」スタスタ

ローグ「ヘイヘイ…」スタ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:39:34.68 ID:KbfSVIxh0
『馬車』


ブルル ヒヒ〜ン


盗賊「ぬぁ?まだ樽降ろして無ぇんだが…」

影武者「これからチカテツ街道に行くんだ…盗賊さんは僕を守るんだよ」

盗賊「おいおい…俺ぁそんな話聞いて無ぇぞ?」

影武者「盗賊さんの雇い主は僕さ…給金はもう貰っているよね?」

盗賊「貰ったっちゃ貰ったが俺も忙しい訳よ…移民を探さにゃイカン」

影武者「その移民を今から調達に行くのさ」

盗賊「お!?例のガキんちょだな?やっとやっる気になったか…」

ローグ「盗賊さ〜ん…あっしも一緒でやんす」タッタッタ

盗賊「おぉそうか!!影武者の姉ちゃんが無理やり連れて行こうとするもんだからよ」

影武者「僕は影武者だよ…姉ちゃんというのは止めて貰って良いかい?」ギロ

盗賊「エリクサーはここに置きっぱなしで良いのか?」

影武者「剣士さんが樽を運ぶ予定になって居るんだ…さぁチカテツ街道に行くよ」グイ

盗賊「そうか?まぁそう慌てなさんな…あんま気ぃ張ると肌に悪いぜ?」ヨタヨタ

影武者「…」ギロ

盗賊「おぉ悪りぃ怒らせちまったか?まぁ先ずな?俺より前を歩くな…後ろはローグに任せておけ」

影武者「チカテツ街道までは僕が先導する」

盗賊「待て待て…まだ地下は豪族がうろついてんだ俺に任せろ」

影武者「…」ギロ

盗賊「まぁしっかり守ってやっからガキ共をなんとか説得してくれ」

影武者「フン!よそ見して居ないで前を向いてよ」スタスタ

盗賊「俺は背中に目が付いてんだ転びゃしねぇよ!」ドテ

ローグ「あららら盗賊さん…」

盗賊「つぅぅぅ誰だこんな所にゴミ置きっぱなしの奴は…」

影武者「…」スタスタ

盗賊「待て待てこんな事もたまにゃある…な?そうツンケンすんなや可愛い顔が台無しだぞ?」

影武者「…」ギロ

ローグ「ハハ…なんか分かった気がしやす…」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:40:27.39 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


ヨッコラ ドスン


ウルフ「ガウガウ!」

剣士「女オーク…樽を運んでもらってありがとう」

商人「剣士!早く行こう」

剣士「ウルフは女オークを守って!…女オークはその姿であまり出歩かない様にね?」

女オーク「分かったわ…」

剣士「じゃぁ名も無き島に行った後はハテノ村に迎えに行くから待ってて」


フワリ


女オーク「気を付けて…」

剣士「大丈夫さ…すぐに戻るよ…じゃぁ」ノシ


シュゴーーーー バサバサ


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---------------

---------------


剣士「さて!!羅針盤がいつまでアテになるか…」

商人「僕には何も変わって居ない様に見える」

剣士「いや変わってるよ…偏西風が弱い」

商人「大分赤道から遠ざかってる?」

剣士「多分ね…正直どのくらいズレがあるのか分からない…陸地を見失わない様に飛ばないと…」

商人「地図と陸地の比較は僕がやる」

剣士「うん…ルートは陸沿いに少し迂回しながら…多分2日掛からない」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:41:18.45 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


シュゴーーーーー バサバサ


…今までの話を聞いて色々スッキリしてきたよ

この世界が夢幻で僕達皆夢幻の住人だったとしたなら

これまでの出来事がなるほどスッキリ収まる気がする

精霊の記憶の中に生き続ける人間達

精霊の記憶を蝕んで破壊しようとする魔王

それを阻止する為に記憶の書き換え権限を与えられた勇者

それらすべてが精霊の倫理観を構成しているんだ

僕はね…ホムンクルスに言った事が有る

君の中に僕が居る…それは君の心の一つまみだって

多分その通りなんだよ

僕ら一人一人の心は精霊の心その物なんだ

それが悪に染まらない様に僕らは戦って居るんだ


信心深い人たちは昔から精霊にお祈りしていたね


そう…感じて居たんだろうね…祈りは精霊の心に通じているって

今なら僕もそう思うよ…精霊樹にお祈りがしたい


ここに居るじゃない…機械の犬ってホム姉ちゃんでしょ?


あぁそうだったね…実はこの超高度AIユニットは世界中に沢山散らばって居るんだよ

その中に記された記憶全部にこの世界と同じだけの記憶が詰まってる

それを一所に纏めたのが精霊樹の森やエルフの森さ…オーブという形でね

君が見た冒険の書は僕達人間がその世界を覗けるアイテムだよきっと…


剣士「この世界が精霊の記憶だったとして…商人さんは現実は何処にあると思う?」

商人「う〜ん…もしかすると人類はとうの昔に滅んでいて精霊の記憶の中にだけ生きているのかもね」

剣士「現実の精霊の記憶は何処に?」

商人「神のみぞ知る…って所じゃないかな?」

剣士「パパとママは多分過去に遡って行った…そのずっと過去に現実が合ったとしたら?」

商人「僕達じゃ確認出来ない…ん?そうか君のママからメッセージが来てるかもしれないね」

剣士「それが言いたかった」

商人「気になるね…そのメッセージ」

剣士「でも今…一つ可能性を思いついた」

商人「何だい?言ってごらん」


この夢幻の世界を飛び出した一人は未来を全部見て来た筈だ

この世界がホム姉ちゃんのシミュレーションだったなら

未来を全部知って居るその一人は超高度AIとしてシミュレーションの精度が高い


商人「超高度AIがどうして急に出て来る?」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:41:51.90 ID:KbfSVIxh0
剣士「僕達はシミュレーションの中の住人…その中から飛び出したパパは超高度AIとして初めてのアダムに搭載された」

商人「ハハハ…君は又面白い仮説を立てるね」

剣士「実はね…アダムを破壊する直前にパパの声が聞こえた気がしたんだ」

商人「え!!?勇者の…」

剣士「もしシミュレーションの中だったとしたらそこから飛び出すのは記憶を持った倫理観…実体は無い」

商人「話は堂々巡りになるなぁ…その超高度AIを搭載したアダムがこの間まで居た…なぜ?」

剣士「現実世界がそのシミュレーションの通りに進んで来て居たとしたら?」

商人「ふむ…なるほど辻褄は合うな…シミュレーション精度が高かった訳か」

剣士「ふぅこういう事を話すのは楽しいけど証拠が何も無いのがね…」

商人「ホムンクルスが生前言ってたのは世界で始めの超高度AIはアダムでその複製としてホムンクルスが生まれたらしい」

剣士「ええと…環境保全用の超高度AIだっけな」

商人「そうそう…アダムには欠陥があったらしいんだ…だから後継としてアダムを改良して…」

剣士「欠陥?どんな?」

商人「工学三原則って知ってるかい?」

剣士「書物で読んだ事がある」

商人「アダムはそれを守らないから後に工学三原則を守る様に制限されたのがホムンクルスさ」

剣士「商人さん…パパはドワーフの血が流れて居ない…パパでは魔王に勝てないんだよ」

商人「未来君…」

剣士「僕が破壊したアダムも魔王の影響を受けていたと思われるよね?…欠陥品と言い変えられる」

商人「なるほど…倫理観がプログラムだったとして魔王の抗体を持たない倫理観だった訳か…それがアダム…辻褄は合う」

剣士「でも全部可能性の話…いくら話しても空しいなぁ」

商人「君とこういう話が共有できてうれしいよ…僕は変人扱いだから」

剣士「ママはどうしてるかなぁ…ここぞの逃げ足は速いから上手く逃げたのかな」

商人「だからメッセージが残って居るのかも知れないよ?」

剣士「うん…」



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86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:42:40.99 ID:KbfSVIxh0
商人「よし!海士島付近を南極にした場合の地図が出来た」

剣士「ほとんど書かれて居ないじゃない」

商人「未踏の地の地図は持って居ない…分かる範囲で書いたらこうなる」

剣士「シン・リーンとフィン・イッシュがほぼ同じ緯度か」

商人「ハテノ村もそうなる…地球の反対側になるけど」

剣士「こう見ると遠いね…」

商人「シン・リーンから未踏の地を飛べばハテノ村と近い…海を越える必要があるけど」

剣士「分かったぞそういう事か…オークシャーマンは未踏の地側から暁の墓所に来てたのか…」

商人「オークはもう外海を渡って居ると?」

剣士「オークはどんぐりがあれば食料が少量で済む」

商人「なるほど…僕達の知らない外海にもう進出してるんだ」

剣士「内海は寒冷化でほぼ航海不能になるとしたら幽霊船は早く外海からフィン・イッシュ目指した方が良い」

商人「名もなき島は…この位置なら氷に覆われる事は無さそう…ただ人が住むには厳しい環境になる」

剣士「島が見えて来たよ…良かった迷わないで来れた…着陸するから準備して」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:43:11.11 ID:KbfSVIxh0
『名もなき島_古代遺跡』


ウィィィン プシューーー ポコポコ


商人「錬金術で組み合わさる訳じゃ無いのか…」

剣士「ホム姉ちゃんの部品が組み合わさった…良いの?これで?皮膚が無い」

商人「皮膚の部品は無かった…もしかすると足りて居ないのかも…」

剣士「このままじゃ可哀そうだよ…」

商人「この手順を記録する」カキカキ メモメモ


通りで錬金術では完全なホムンクルスが造れない訳だ…

生体の完成は多分自己治癒だ


剣士「ゾンビみたい…」

商人「ちょっと思い違いが在ったみたいだ…錬金術ですぐに完成すると思っていたけど…」

剣士「時間が掛かるんだね?」

商人「多分…この状態から自己治癒で皮膚と毛髪が生成されるのはもう少し先だね」

剣士「どのくらい掛かるんだろう?」

商人「ラヴ!どれくらいかかるか分かるかい?」

機械の犬「クゥ〜ン」

商人「一晩間を置いて治癒の具合を見て見ないと推定出来ないな」

商人「でもどれだけ時間が掛かるにせよ…一先ず成功だ!」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:44:08.85 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


ポコポコ ポコポコ


剣士「商人さん!」ユサユサ

商人「ハッ…」パチ

剣士「書き物しながら寝てたんだw」

商人「ホムンクルスは!?」スタ

剣士「昨日のままだよ…あ!違うコレ神経かな?何か成長してる」

商人「よし!遅いけど確実に成長してる…よしよしこれで僕が居なくなってもホムンクルスは生き延びる」

剣士「生き延びるってどういう事?」


チャプン


剣士「ん?瓶の中にエリクサー?…そして外部メモリ」

商人「あぁぁそれに触らないで」

剣士「商人さんコレもしかして…」

商人「僕に何か有ってもこれで確実にホムンクルスが蘇る…まぁ保険さ」

剣士「どうしてそんな…」

商人「僕はね…君の予言を聞いてもしかしたらもうここに戻って来れない可能性を考えてる」

剣士「ママのメッセージはどうなるの?」

商人「蘇った後になるね…どれくらい掛かるか分からないけどいつまでも見て居る訳にも行かない」

剣士「う〜ん…残念だ」

商人「満を持して…剣士君!この部屋の扉を閉めて中の空気を抜けるかい?」

剣士「えーと…空気は窒素だから…アンモニアに変性させれば良いか…出来るよ」

商人「しばらく封印さ…これから転変地位で津波が来たっておかしく無い…この場所を守ろう」

剣士「どうすれば?」

商人「そうだな…この空き瓶の中に変性したアンモニアを入れられるかい?」

剣士「うん…」

商人「このテーブルの上に置いておく…ここにアンモニアが有るのは君しか知らない…つまり君はいつでもこの扉を開けるんだ」

剣士「あああなるほど…空気を抜いて酸化防止と施錠を兼ねて居るんだ」

商人「そういう事…そしてこの遺跡は他の人に見つからない為の工夫がいくつもある…相当安全な筈さ」

剣士「おけおけ!そういう事なら全部扉を閉めておく」

商人「次に来た時はホムンクルスと対面だよ…楽しみだね」

剣士「その間にやらなきゃいけない事をやって回るんだね?」

商人「そうだよ…さぁ扉を閉めて」ギー

剣士「じゃぁ空気を変性させる…変性魔法!」

商人「…」

剣士「おけ!空気が変性してアンモニアになった筈…瓶の中だ」

商人「よし…次は本棚で扉を隠して…」ズズズ

剣士「後は外の上開き扉を閉めて水で満たす…」

商人「行こうか…次はハテノ村だ」

剣士「うん…」タッタッタ
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:45:30.93 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


シュゴーーーー バサバサ


剣士「…ここからハテノ村へは1日くらい…このままだと盗賊さん達より先に到着する事になる」

商人「それがどうしたんだい?」

剣士「海士島まで1日半…霧が立ち込めてしまう前に先に行ったほうが良いと思う」

商人「モタモタしていると幽霊船と合流出来なくなるのか」

剣士「ハテノ村は陸地の地形を確認しながら行けば良いけど海士島だとそうは行かない」

商人「分かった…君の言う通りにしよう」

剣士「進路変更!」グイ バサバサ

商人「ところで剣士君…君は千里眼は使わないのかい?」

剣士「あまり覗き見はしない事に決めてるんだよ」

商人「まぁ一応は使えるんだね」

剣士「見てもあまり良い情報なんか得られないのさ…大体は見たくない事なんだ」

商人「幽霊船の現状を知るくらいは良いのでは?」

剣士「どうせ狭間の中…見えても船の中」

商人「なるほど…時間のムダになる訳か」

剣士「商人さん…僕嫌な予感がする」

商人「何だい?」

剣士「僕はアダムを破壊して未来を変えたつもりだった…でも地軸の変動は起き始めてしまった」

商人「…」

剣士「もしかすると未来は変えられないのかもしれない…だとすると幽霊船は沈んでしまう」

商人「アダムの破壊は大きな歴史の流れのほんの小さな事なのかもね」

剣士「僕の記憶では沈む幽霊船の中で大事な人を失った…また失うのが怖い」

商人「今からそれを変えに行くんじゃないのかい?」

剣士「そうだよ…そうさ…そうするしかない」


---僕は失いたく無かった---

---今度は絶対に失わせない---
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:46:27.86 ID:KbfSVIxh0
『海士島』


フワフワ ドッスン


剣士「灯台の光が見えて良かった…明日の朝まで迷う所だったよ」

商人「結果オーライ…さてもう夜だ…幽霊船の捜索は明日にして宿に入ろう」

剣士「やっぱり随分寒いね」

商人「ん?」


ヒソヒソ ヒソヒソ

公爵からの指示だ…これが前金の代わり…受け取れ

魔石…困ります急にそんな事言われても…常連さんとの付き合いもありますし

フィン・イッシュ行きの商船は明日の朝出港だ必ず乗れ

急すぎます…今そんな指示を貰っても準備も何も

その魔石で十分な筈だ…向こうの酒場にはもう話が行ってる…心配するな

ヒソヒソ ヒソヒソ


商人「…あの人は酒場のマスターだ…やっぱり密偵として雇われて居たのか」ヒソ

剣士「ん?本当だ…酒場には行った事あるよ」

商人「この感じだとフィン・イッシュにもセントラルから密偵が沢山送られて居る様だ」

剣士「冷戦か…今そんな事してる場合じゃ無いのに」

商人「セントラル国王が亡命してしまって居るからね…両国の摩擦は終わりそうに無い」

剣士「嫌な話だよ」

商人「こう言っちゃ悪いけど商売するには良い環境なんだ…」

剣士「宿屋に行こう」スタ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:47:33.04 ID:KbfSVIxh0
『宿屋』


ガヤガヤ ガヤガヤ


商人「…まいったな豪族が貸し切って居るらしい」

剣士「別にベッドじゃなくても良いさ…風が凌げれば僕は良い」

商人「納屋なら使って良いと言うけど…寒そうだな」

剣士「…」---同じ様な記憶がある---

商人「剣士…ここは他の人の邪魔になるから納屋で休もう」

剣士「うん…」---気付かない内に元の時流に戻ってる---

商人「こっちだ…ここは人が多くて落ち着けない」スタ



『納屋』


ガラガラ ピシャリ


商人「ここなら人目に付かないで落ち着ける」

剣士「…」

商人「しかし寒いなぁ」

剣士「…」ゴソゴソ

商人「どうしたんだい?さっきから黙りこくって…」

剣士「これ使って…火の魔石だよ…瓶か壺に入れて使えば良い」

商人「おぉ!!良い物持ってるじゃない…使わせてもらうよ」

剣士「…」---思い出せ思い出せ---


---10年目のもっとその前…---

---そうだ確か海士島で情報屋さんにバッタリ出会った---

---納屋で休んだ次の日---

---その時とは少し状況が違う---

---でも明日バッタリ情報屋さんと出会ってしまったなら---

---時流が戻されてるのがハッキリ分かる---


剣士「…」ギンギン
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:49:27.83 ID:KbfSVIxh0
『翌日』


ヒュゥゥゥ


商人「露店が始まり出した…少し食料を買って行こう」

剣士「あぁ…そうか飛空艇に食料はどんぐりとキノコしか積んで無かったね」

商人「そうだよ僕は君と行動してから何も食べてない…ペコペコさ」

剣士「そうだね…水も乗せて居なかった」

商人「雪で空腹を満たすのはもう懲り懲りだ…さてサッサと仕入れて出発しよう」

剣士「…」---どうなるか---



『露店』


ワイワイ ガヤガヤ

なんという事じゃ…この呪符をすべて見せよ

こりゃ良い客が来た…ほいほいコレが魔除け…コレが虫除け…コレが水除け…

主は何者じゃ?なぜこのような物が出回っておる?

ニヒヒヒヒ入手したルートは秘密ってもんでさ…さぁさぁ一枚銀貨50買って行くかい?

銀貨50!!?この紙切れが一枚銀貨50って高すぎるわ

構わぬ…わらわの私財ですべて買い占めても良い…じゃが今は手持ちがない故に…

ええと…ワインの買い入れでこれだけ残して…変えるのは16枚よ


剣士「魔女!!」---記憶と違う---

魔女「むむ?やはりこの島で待って居って正解じゃ…主を探して居ったのじゃ」

商人「情報屋も一緒か…探す手間が省けた」

魔女「これ商人!ここで売って居る呪符を全種類買うのじゃ…交渉は主に任せる」

商人「え…いや急にそんな事言われてもさ」

魔女「そして剣士!この様な場所で言うのも何じゃが…主は破門じゃ!二度とシン・リーンの魔術師を名乗るで無い」

剣士「え?なんで?」

魔女「わらわの親心じゃと思え…破門せねばわらわの手で主を処罰せねばならぬ…わらわにそれをやらせるな」

剣士「次元の入れ替え…」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:50:37.74 ID:KbfSVIxh0
魔女「主は理を超え次元の入れ替えを行って居るのは明白じゃ…魔術師の掟は知っておろう?」

剣士「それじゃ魔女…魔女は全部知って居たね?」

魔女「主の記憶を夢に封じたのはわらわじゃ…次元を崩壊させる可能性があったからのぅ」

剣士「じゃぁ魔女はずっと僕を監視してた訳だ…」

魔女「悪い言い方をすればそうじゃ…じゃがな?主の事は尊重しておる…じゃから破門じゃ!…自由にせい」

剣士「魔女!!僕は只…」

魔女「言わぬでも良い…主は自由じゃ…わらわの手の内からもう離れて良い」

剣士「くぅ…」ギュ

魔女「最後に一つ説いてやろう…量子転移は人の為あらず…うぬが為じゃ」


---理解した---

---誰かを助ける為に使ってはいけない---

---僕は女オークを助ける為に量子転移した---

---でも女オークは自分の死をすでに受け入れてた---

---死を受け入れた次元と---

---受け入れない次元が生じて歪んだ---

---それが次元の狭間---

---量子転移で人は救えない---

---死んだ人は蘇らない---
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:51:40.05 ID:KbfSVIxh0
『飛空艇』


ヨッコラ ドッスン


商人「これで最後だ…行けるよ」

剣士「うん…」

商人「破門されて凹んで居るのかい?」

剣士「それもあるけど…まぁ色々とね」

商人「魔女達の気球が空で待機してる…急いだ方が良いかな」

剣士「分かった…飛ぶよ」グイ


フワリ


商人「まぁあまり気に病む事も無い…魔女はあんな感じだけど君の為を思って言ってると思うよ」

剣士「分かってるさ…只僕は未来を知って居るから怖いんだよ」

商人「魔女の言い分も少し理解出来るよ…無理に変えると次元崩壊ってやつが起きるんだよね?」

剣士「うん…どこまで許されるのか分からないけど」

商人「それにしてもあの呪符…結局銀貨20までしか値下げ出来なかった…そんなに貴重な物なのかい?」

剣士「あれは古代魔術の魔方陣だよ…まだ解明されて居ないんだ」

商人「それで魔女が目の色変えてるんだ」

剣士「地軸の移動も多分古代魔術のせいだよ」

商人「ハハ…回って居る地球の向きまで変えられるって?」

剣士「まだ解明していないからなんとも言えない」

商人「地軸の移動ねぇ…大災害が起きそうな物だけど意外と静かなもんだ」

剣士「これからだよ…だから備えないと」


--------------
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:53:16.65 ID:KbfSVIxh0
『幽霊船』


フワリ ドッスン


剣士「ビッグママ!!」ダダ

女戦士「よく来たな?目を見せろ」

剣士「あぁぁ会いたかったんだ!」ギュゥ

女戦士「フフ大きくなった」

剣士「ローグさんに聞いたよ…ビッグママも魔女の修行をしていたんだね…どうして…」

女戦士「その呼び名はもう止めろ…女戦士で構わん…私を良く見ろ」ジロジロ

剣士「あぁぁママの眼だね?舐めても良いよ…爺いじも舐めた」

女戦士「私にそんな趣味は無い…そうだこの眼だ」ジーー

剣士「懐かしい匂いだ…ママと同じ匂い」クンクン

女戦士「フフ今日は一緒に寝るか?」


スタスタ


アサシン「久しぶりの再会で嬉しそうだな?」

剣士「アサシンさん…」

アサシン「狭間に入る前に進路を決めておきたいのだが…」

剣士「ハッ!!そうだった…フィン・イッシュだよ」

アサシン「フム…魔女と同じ意見だな…只船長は女戦士だ…フィン・イッシュで良いのか?」

女戦士「構わん…進路は北に向かって陸沿いにフィン・イッシュ」

剣士「あ!!ダメだよそれじゃ…それじゃフィン・イッシュに辿り着けない」

女戦士「他の航路を行けと?」

剣士「流氷を探して!流氷の進んでる先は外海なんだ…外海側からフィン・イッシュに行くんだ」

女戦士「外海の海図は無いぞ?」

剣士「良いから僕を信じて」

女戦士「フムまぁ良い…とりあえず北へ進路を向けて流氷を見つけ次第それに従おう」

アサシン「そろそろ2人抱き合うのは止めて貰えないか?目に痛い」

剣士「あ!つい…」ササ

アサシン「スケルトン共!働け!帆を開いて進路は北だ!」


カララン コロロン


剣士「ハハこの船はスケルトンが操作してるのか…」

アサシン「良く働くスケルトンだ…食料も水も要らん」

女戦士「剣士…とりあえず居室に入れ…話が聞きたい」

剣士「そうだね…情報交換だね」
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:55:03.74 ID:KbfSVIxh0
『居室』


カクカク シカジカ


女戦士「海の様子がおかしいとは思って居たが…それ程大事になろうとしているのか」

剣士「何日かけて地軸の移動が終わるのか良く分からないけどこの海は航海出来る海じゃ無くなるんだ」

アサシン「霧が出て来ているのはそのせいか」

剣士「霧はもっと濃くなるよ…1メートル先も見えない」

商人「これが新しく描いた地図…そしてこっちが今までの地図」

女戦士「フム…流氷は何処へ流れる?」

剣士「多分ここの海峡に向かうと思う…ここから外海に出て陸沿いにフィン・イッシュに行く」

女戦士「待て…その海峡は海流がきつくて普通は近づかん」

剣士「流氷と一緒にどうせ外海に流されるよ…外海に出てしまえば陸を右手に進むだけさ」

情報屋「羅針盤はもうアテにならない?」

剣士「うん…どっちの方向に進んでも羅針盤は北を差すようになる…それを当てにしてはいけない」

情報屋「方向を正しく示しているのは流氷な訳ね」

女戦士「外海からフィン・イッシュを目指すとなると長い航海になるな…安定して進めないと狭間にも入れない」

商人「この船が貨物船で良かった…食料は十分にある」

剣士「当面のやらなきゃいけない事は地軸の移動で環境が激変するからそれに備える」

女戦士「フフ…私達は何の為に行動しているのか」

剣士「今は難局を乗り越える為さ…これから何か起ころうとしてる」

アサシン「魔王は居なくなりアダムも破壊した…次は何が来る?」

剣士「僕は一つミスをしたよ…魔王を封じたとされる魔石は何処に行ったのか分からない」

商人「只の魔石になってると言うのは考えが甘いかな?」

剣士「行方が分からないから気持ちが悪いよ」

アサシン「…となるとフィン・イッシュで一旦落ち着くのは正解だろう…状況を見る必要がある」

剣士「うん…この船は無事にフィン・イッシュに辿り付いて欲しい」

女戦士「んん?引っかかる…剣士は一緒に行くのでは無いのか?」

剣士「僕は…僕はまだやる事がある」

女戦士「お前は一所に身を置くつもりは無いか…フフ」

剣士「ゴメン…今日はビッグママと一緒に寝て明日僕は行くよ」

女戦士「その呼び名は止めろと何度言わせるのだ?」

剣士「あぁ女戦士だっけ…照れくさいなぁ」モジモジ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:56:16.87 ID:KbfSVIxh0
『船首』


ザブン ユラ〜


情報屋「…確かに羅針盤が示す方角と太陽が沈む方角の辻褄が合わない」

商人「ゆっくり変化しているから誰も気付かないんだよ」

情報屋「これだともう現在地も分からないわね」

商人「それより魔女はずっと荷室に籠りっぱなし?」

情報屋「そうよ?何かの術を掛けるから近付くなって…」

商人「そうか…剣士は明日行ってしまうと言うのに」

情報屋「商人?あなたはどうするの?」

商人「僕はこの船に残る…まだ君と話足りない」

情報屋「あら?歴史の事でも?」

商人「まぁね…でも剣士をこのまま行かせて良いのかどうか…」

情報屋「魔女との事ね?」

商人「関係にヒビが入ったまま距離を置くのはどうかと…」

情報屋「魔女はこの間までずっと剣士の自慢ばかりだったのよ?」

商人「だったらなお更だ」

情報屋「魔女は剣士の事を認めて居るわ…すでに自分を超えているって言ってたもの…剣士を縛る呪縛を解いただけよ」

商人「う〜ん不器用というか何というか…」

情報屋「今までの子弟関係が消えて無くなる訳でも無いのだから気にしなくて良いと思うわ」

商人「剣士は少し落ち込んで居たよ…それっきり話をしていないよね」

情報屋「商人?あなた心配性になったのね?年を取ったせいかしら?」

商人「ハハそうかもしれない…年かぁ…久しぶりにバーベキュー食べたいな」

情報屋「今日買って来た材料があるわ?やりましょうか」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:57:49.63 ID:KbfSVIxh0
『甲板』


ジュゥゥ モクモク


商人「肉が食べれると思ったら海鮮ばっかりか…」モグモグ

情報屋「肉は中々手に入らないの…貴重だから少しだけ」

商人「剣士も食べなよ」

剣士「僕は少しで良いよ…」

商人「なんだ…食べてるの僕だけか」モグモグ

女戦士「私も少し頂く」ハムハム

アサシン「この船はなかなか食料が減らん」グビ プハァ

剣士「あ…そうだアサシンさん」

アサシン「んん?」

剣士「線虫!」ニョロリ

アサシン「なんだこの虫は?」

剣士「毒を食らう虫さ…その虫が体に居ると腐敗が止まるみたい」

アサシン「ほう?エリクサーが不要になると?」

剣士「エルフゾンビさんで実証済みだよ…喉の渇きは変わらないみたいだけど」

アサシン「奴に会ったのか…元気にしているか?」

剣士「精霊樹の森をエルフ達と一緒に守って居るよ…大変そうだった」

アサシン「クックック奴がエルフの仲間入りとはな」

剣士「今頃僕が呼んだ虫達がドリアードを食い漁ってる筈…エルフゾンビさんも少しはラクになる」

商人「10年前の夜に見たダイダラボッチ?みたいな事になってるのかい?」

剣士「その筈だよ」

アサシン「そうか…あの虫の大群がもう一度動いて居るのか」

情報屋「そういえば巨大なゴーレムも虫にやられていたわ」

剣士「酸を吐く虫のお陰さ…何でも腐食させるんだよ」

アサシン「これでやっと平和が来る…私は死に場所を探す必要がありそうだ」

商人「それはまだ早い…昨日聞いた話だとセントラルの貴族の一人…公爵という人物がフィン・イッシュに密偵を送って居るんだ」

アサシン「ほう?知った顔だ」

商人「どうもキナ臭い…物流の相場も不自然に操作されている」

アサシン「私は俗世を離れていたせいかそういう話に興味が湧かなくなってしまった」

商人「まぁこれから情報は集めれば良いさ」

アサシン「もうそういう話は聞き飽きた…静かにしておいてくれ」グビ


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99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:58:25.98 ID:KbfSVIxh0
『夢』


僕「ママ?今日はここで休むの?」

ママ「暗くなって目標物が見えなくなった…探索は明日やる」

僕「ふぁ〜あ」ムニャ

ママ「おいで…あんた寒いんでしょ?」

僕「僕は大丈夫だよ」

ママ「良いからおいで…」グイ

僕「ママ暑苦しいんだよ」モゾモゾ

ママ「こうしてるとママが温かいの」ギュゥ

僕「僕達ずーっとかくれんぼだね」

ママ「ごめんね…今度街に連れて行ってあげるから」

僕「本当?友達いっぱい居るかなぁ…」

ママ「早く寝なさい?」

僕「うん…ママの匂い」

ママ「ん?匂う?」クンクン

僕「いい匂い…」スゥ

ママ「フフ…」ギュゥ

僕「すぅ…すぅ…」zzz
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/11/20(土) 11:59:12.05 ID:KbfSVIxh0
『居室』


ギシギシ ユラ〜


剣士「ハッ!!」キョロ

剣士「ビッグママ?」キョロ

剣士「居ない…」



流氷に当たったか…

船体に傷が付いて居ないか調べて来る

まぁ見た所大きな氷山では無い…無事だろう

流氷は左方に流れて行ってる様だが?進路変えるか?」

うむ…流氷に沿って進めば又当たるリスクも減る

しかし狭間に入れんでは先が長いな

仕方あるまい…


剣士「…」---流氷を見つけたか---

剣士「…」---もう一回同じ夢見れるかな---

剣士「…」---寝よ---

剣士「すぅ」zzz
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/11/20(土) 12:02:04.32 ID:KbfSVIxh0
『翌朝』


ザブン ユラ〜


商人「ふぁ〜あ」ゴシゴシ

剣士「商人さん…この地図は貰って行くよ」

商人「あれ?剣士君…もう行くのかい?」

剣士「早く行かないと僕も迷っちゃう…それにこの船は居心地良すぎる」


タッタッタ


女戦士「居ないと思ったら…もう行くのか?」

剣士「ビッグママ…じゃなくて女戦士…僕は変えたい未来があるんだ…だから行く」

女戦士「そうか…これを持って行け」ポイ

剣士「貝殻…」

女戦士「これでいつでも会話出来る…もう無くすな?」

剣士「大事にするよ」

女戦士「フフ行って来い…そして必ず戻って来い」

剣士「大丈夫…事が済んだらフィン・イッシュに行く…約束さ」

女戦士「…」ノシ


フワリ バサバサ


商人「あぁぁ…あっという間に居なくなる」

女戦士「フフ妹の子だ…こうなるのは分かって居た」

商人「そういえばそうだなぁ…そっくりだなぁ」

女戦士「さて商人…大事な地図を持って行かれた…もう一度描け」

商人「う…そうだった」

女戦士「地図無しで航海は出来ん…特に外海側の地形を優先して書け」

商人「分かった書き直す…」


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