ゴルゴ13「・・・喪黒福造?」(少女ファネット × 笑ゥせぇるすまん)

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1 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:46:34.86 ID:AAdftKuj0

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。
ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。
この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさびしい人ばかり。そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。
   いえいえお金は一銭もいただきません。お客様が満足されれば、それが何よりの報酬でございます。

    さて今回のお客様は・・・・・・。

    デューク・東郷(年齢不詳) 超A級スナイパー・ワンマンアーミー


    おっと間違えました。これは失礼。

    改めまして今回のお客様は・・・・・・。

    ファネット・ゴベール(14) サン・リュカ中学校第4学年

    【消えなかった記憶】

    オーッホッホッホッホ・・・・・・。 ご心配はいりません。フランス語くらい話せます・・・・・・」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1699368394
2 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:47:56.76 ID:AAdftKuj0
PART1 スランプの原因

ーーーフランス 某射撃場

大勢の女学生が見学している中、ファネットがライフルを構えている。

ファネット 「・・・」

ズキューン   ビシッ

ファネット 「!」

モブ女学生A 「ああ〜・・・」

実況 ≪・・・これはファネット選手、大きく外してしまったようです。最近はスランプ気味とも伝えられます≫

実況 ≪しかし執念でなんとか予選突破はなりました。本大会ではいつもの実力が発揮できるといいのですが≫

ファネット 「・・・」ションボリ

モブ女学生B 「ファネット先輩、最近は調子が上がらないようですわ」

モブ女学生C 「何かしらお悩みでも抱えてらっしゃるのかしら?」

モブ女学生D 「あまり詮索するわけにもいきませんが心配ですわね」

案内放送 ≪それではライフル競技大会予選会、これで終了いたします。お気をつけてお帰り下さい。忘れ物などなさいませんように≫
3 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:48:51.67 ID:AAdftKuj0
ーーー 射撃場 選手控室

ファネット (今の生活に不満があるのではない・・・ 両親は赤の他人の私をここまで育ててくれたし、何不自由していない)

ファネット (だが、あの時・・・ 十数年前のあの日、襲撃者から私を守ろうとベッドの下へ隠してくれた母の顔が・・・ 朧気になりつつある)

ファネット (完全にわからないことはないが・・・ それで覚えているといえるのだろうか)

ファネット (ああ、もし、もう一度でもはっきり見ることができたら! 瞼に焼き付けておけるのに!)

ファネット (だが決して叶わない夢物語だ・・・)
4 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:50:18.84 ID:AAdftKuj0
PART2 喪黒のフランス旅

ーーー射撃場からの帰り道


 おっさん、恵んでくれよ! 金持ちなんだろ!?

 いやはや困りましたねえ


ファネット (だれか強請られてるのね!)


ちんぴら 「俺たち今日の晩飯にも困ってんだぜ」

喪黒 「私もそんなに持ち合わせがないんですよ。見逃してくれませんかねえ」

ごろつき 「そんなこと言わないでくれよ〜 頼むよ〜」

ファネット (・・・ ・・・ ・・・私一人で勝てる相手ではない。だが見過ごすわけにもいかない)

ファネット (スーツ姿ね・・・ ならば・・・)

ファネット 「あなたたち・・・」

ちんぴら 「!」 ごろつき 「!」

ファネット 「その人、うちの病院の機材を担当してる営業マンなのよ。だから見逃してやってくれないかしら」

ちんぴら (ジャン・ミッシェル・ゴベール病院のファネット・ゴベールだぜ。厄介な奴に見つかったな)

ごろつき (この辺の不法移民はそろって面倒見てもらってるからな・・・ あいつらに睨まれたらやりにくいぜ)
5 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:51:40.66 ID:AAdftKuj0

ちんぴら 「・・・ そういやぁさっき炊き出しがあったなあ、素寒貧でも晩飯にありつけるぜ!」

ごろつき 「そういうわけで金はまた今度でいいや」

喪黒 「ホーッホッホッホ そうですか。それではまた」


喪黒 「いやいや助かりましたよマドモアゼル。聖なる怪物ファネット・ゴベールは流石ですねえ」

ファネット 「!?」

喪黒 「有名人ですから顔を見ればわかりますよ。お礼を申し上げます。私はこういう者です」

喪黒が名刺を差し出す。

 つ「ココロのスキマ、お埋めします 喪黒福造」
6 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:52:26.34 ID:AAdftKuj0

ファネット 「ココロのスキマ、お埋めします?」

喪黒 「実はですねぇ。私、人々のココロのスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ。フランスには知人が店を出したのでお祝いに来たんですがね」

喪黒 「まあつまり・・・ 精神的に満たされない人々に寄り添って解決策を提供するっていえば良いんですかねえ」

ファネット 「精神が充実するのは健康にも大事だわ・・・」

喪黒 「ファネット・ゴベールさん、貴女、最近はどうもライフル競技の成績が思わしくないようです。なにかしらココロのスキマがあるのではないですかあ?」

ファネット 「!」 ギクッ

喪黒 「いま助けていただいたお礼もしなくちゃいけないし、私で良ければ相談に乗らせてください。これ、知人の出した店の地図です」

喪黒 「もちろん未成年者が合法的に利用できるお店ですのでご安心ください。それでは気が向いたらどうぞ」

とても良くしてくれる養父母に、死んだ母親に会いたいと我儘を言うのも気が引けた。
学校の友達や病院の職員に言いたくなるものでもなかった。愚痴を聞いてくれる相手が欲しかった。
7 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:54:21.58 ID:AAdftKuj0
PART3 喪黒の解決策

ーーーBAR 魔の巣 フランス支店

ファネット「・・・ こんなところにお店があったのね。喪黒さんいるかしら」

BARと掲げられてはいるが昼間から開いているところから一般の飲食店でもあるのだと思った。
ファネットが入店して見渡す。なかなか上品な店だと感じた。
マスターに咎められなかったということは自分が利用できるというのは間違いなさそうだ。

喪黒 「おや、ファネット・ゴベールさん。お待ちしていましたよ。本日は私のおごりですから好きなものを注文してください」

ファネット 「あまり詳しくないのよ。未成年者でも飲めるものを見繕って下さらない?」

マスター 「」(喋らない)

喪黒 「ここに来たということは・・・ やはりココロのスキマがおありのようです」

ファネット 「絶対に他言無用にしてくださいね。私、今の両親の実の子供ではないんです。実の親は・・・ おそらく不法移民(イミグレ)。」

ファネット 「十数年前に不法移民たちが集まって働いてる酒場がモンマルトル西南部の繁華街にあったのよ。幼児だった私と実母ヘゲドゥシュ・スザナもそこにいた。」

ファネット 「ある夜、イミグレ同士の抗争で、強盗がその酒場『ハンガリー狂詩曲』を襲った。多くの人が撃たれて死んだわ。」

ファネット 「でも私は母がベッドの下に隠してくれて・・・ そして直後にあの方が・・・ ある人物が強盗団を撃ち殺して、私を病院へ連れて行ってくれた。」

ファネット 「そこがジャン・ミッシェル・ゴベール病院よ。そして院長ジャン・ミッシェル・ゴベールと看護師長イレーヌ・ゴベールが養父母になってくれた」

喪黒 「心中お察しします。お母様の御霊が救われますように。」
8 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:55:37.99 ID:AAdftKuj0

喪黒 「しかしゴベール夫妻は人格者と聞きます。目の前でお母様が撃たれたとしても、そのトラウマを克服する手助けをしてくれたのではないですか?」

ファネット 「トラウマとは少し違う。今の家族に不満があるわけでもないのよ。ただ・・・ 私を助けてくれた母が・・・ 母の記憶が薄まっている」

ファネット 「それがどうにも辛いのよ。もう一度だけでもはっきりと見ておきたい。不可能なこととはわかってるけど。」

喪黒 「なるほど・・・ 去る者は日々に疎し、と言います。おまけに当時のあなたは幼稚園児くらいですか。記憶が薄まるのも仕方ないことかもしれませんねえ」

喪黒 「しかし私なら力になれそうです・・・・ この鍵を差し上げましょう。これをそのへんのドアノブに差し込めばあら不思議。戻りたい過去の時代へ行けるのです」

喪黒 「帰ってきたら出発した時間に元通り。どうです便利なものでしょ。もちろんお金は一切いりません」

ファネット 「はあ・・・」 (困惑)

喪黒 「オーッホッホッホッホ。信じられないのも無理はありません。最初は私が案内しましょう。ついて来てください。」

喪黒は魔の巣から出て路地裏にドアを探した。ファネットも後を追う。
適当なドアのノブに喪黒がカギを差し込んで開けた。ただの仕切りであって建物の入り口ではなさそうだ。
ドアの向こうにも道が続いている。

喪黒 「ファネットさん、十数年前、200X年のパリへようこそ。それではお母様の働いていた酒場を探しましょうか」
9 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:56:38.42 ID:AAdftKuj0

PART4 追憶のパリ

200X年と言われてもすぐには信じられなかった。しかし街の様子を見て考えが変わった。
道行く人のスマホが旧式だ。売店に並んだ新聞の日付が過去のものだった。

ファネット 「確かにここは・・・ 200X年のようね・・・ ドッキリにしては手が込んでいる」

喪黒 「嘘は申しません。それではモンマルトル西南部のハンガリー狂詩曲へ参りましょうか」

喪黒 「ただ貴女の制服姿は目立っていけません。上着だけでも替えてもらいましょう」

服屋で適当なジャケットを購入してモンマルトル西南部へはバスで行った。
元の世界でも一度来たことのある繁華街に、ファネットは真新しいハンガリー狂詩曲のポスターを見つけた。

ファネット 「このポスターよ! 以前に見たのは色褪せていたけど・・・ これは貼ってすぐみたいね・・・・」

喪黒 「おお、確かにそのようです。ただし一つだけ約束していただきたいんですがね。決して過去を変えようとしないでください」

ファネット 「過去を変えようとする? ああ、タイムパラドックスのことよね」

喪黒 「まあそんなものですね。ですからお約束いただけますか? 冷たいようですが娘だと名乗り出たり撃ち殺されることを教えるのも絶対にダメです」

ファネット 「うう・・・・・・・ わかった。当たり障りのない話をするくらいなら大丈夫かしら。」

喪黒 「それくらいなら構いませんとも。それでは開店を待ちましょうかねえ。帰れば元の時間ですから」
10 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:57:47.40 ID:AAdftKuj0

ーーー夜 ハンガリー狂詩曲

不法移民が群れているような地域の酒場で中学生が夜中にうろついても誰も気にしない。
正当な身分証明書を持てない、存在していないはずの人々ばかりである。
それに喪黒がついていたので、ファネットを咎める大人はいなかった。

喪黒 「なるほどねえ。あの踊り子さんたちも知っていた顔ですか?」

ファネット 「一人一人は覚えていないけど・・・ かわいがってもらった記憶はかすかに残ってる・・・」

ファネット 「そしてあのバイオリン奏者が私の母親だわ・・・ 」

スザナ (〜♪ 〜〜♬ 〜♪)

喪黒 「話すくらいならいいですが、お約束をお忘れなく」

ちょうどスザナが休憩に入った。ファネットは感情を押さえつけながらスザナに話しかける。

ファネット 「貴女、バイオリンがお上手ね・・・」

スザナ 「・・・子供の来るお店じゃないですよ、マドモアゼル。こんな時間に良いんですか」

ファネット 「大丈夫よ。童顔ってよく言われるの。それにどうせ貴女と同じ不法移民だわ」

それから少しばかりとりとめのない話ができた。そのうちスザナの休憩が終わり、もう少し演奏を聴いて、閉店までそこにいた。
支払いは喪黒が済ませてくれた。店を出てからその辺のドアを開けて元の時代の魔の巣に帰った。まだ夕方にもなっていない。

ファネット 「本当にありがとうございます喪黒さん! 何とお礼をいえば良いのか! これは奇跡だわ!」

喪黒 「いえいえこれが私のボランティア活動ですから。言った通り代金は何もいりません。そのカギは貴女のものです。」

喪黒 「商品のモデルになれとか宣伝広告をしろとかそういうのも一切ナシです。しかし約束は必ず守ってください」

喪黒 「ああそれと・・・ 自分自身に会わないように、今度はもう少し後の日付に行くようになってます。同じ日には行けませんのでご注意を」

ファネット 「とにかく心から感謝するわ!」
11 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:58:40.26 ID:AAdftKuj0

PART5 期限が近づく

ジャン・ミッシェル 「ファネットは最近ご機嫌じゃないか。何か良いことがあったのかな」

イレーヌ 「さあ・・・ でも元気なことは良いことです」

喪黒と別れてからファネットは毎日200X年のモンマルトル西南部へ通った。
毎日ハンガリー狂詩曲に行くと歴史に影響するかもしれないと考えたので、近くの廃ビルから双眼鏡でのぞくことにした。
幸い、店内がよく見える場所を見つけた。  

ファネット (あははは、あれは幼いころの私じゃないの! 遊園地で買ってもらったおもちゃを大事そうに!)

ファネット (遊園地、か・・・ もう一回行きたかったわね・・・ 遊園地・・・ あの日も・・・)

ファネット (・・・ ・・・! まずい! もっと考えるべきだった。浮かれていた。この夢には期限があるのだ! 正確な日時は覚えていないが・・・)

ファネット (『今度はもう少し後の日付に行くようになってます。同じ日には行けません』ということは、つまり・・・)

ファネット 「あの惨劇の日まであと何日あるのだろうか!? 気配がないから今日ではなさそうだが、その日が来ればそれまでだ!」

ファネット 「今日は、今日は会っておかねば!」
12 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/07(火) 23:59:05.50 ID:AAdftKuj0
ーーー夜 ハンガリー狂詩曲

ファネット 「こんばんわ、スザナさん・・・」

スザナ 「あらこんばんわ、童顔さん。なにか悲しいことでもあったの?」

ファネット (ママは殺されるのよ! 早く逃げてちょうだい! )

ファネット 「ええと・・・ 実はね、私はもう貴女と会えなくなるのよ。だからお別れの挨拶を言おうと思って・・・」

ファネット 「言おうと、思って・・・」

スザナ 「それは・・・ 悲しいことね。でも生きていればいつかは別れが来るわ」

スザナ 「せっかくお友達になれたのにね・・・ よかったら娘にも会ってくれない?」

ファネット(私には会った記憶がない。忘れているだけかもしれないが、過去を変えてはならない。)

ファネット 「もっと悲しくなりそうだから遠慮しておくわ。娘さんにもよろしく言っておいてください。」

スザナ 「ええ、もちろんよ」

その日もファネットは閉店までハンガリー狂詩曲にいた。
13 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:00:08.51 ID:6FST64wN0

PART6 歴史は変えられなかった

ーーー数日後

ファネット 「今日だ、今日があの襲撃の日なのよ・・・ この寒気、得体のしれない気配・・・ 私には分かるわ」

スザナに別れを言った日の後も廃ビル通いは続いた。昨日はイミグレ同士のいざこざの噂を聞いた。
間違いなく数時間後に襲撃されるという確信があった。しかし何ができるというのか?

ファネット 「だが諦めるなどできない。何かできることはないか・・・ 何か・・・ 」

ファネット(あの方ならどうするだろうか・・・ )

ファネット(どうしよう・・・)

何もしてはならないということが理屈ではわかっていた。だがなにか裏技がないだろうか。
双眼鏡を覗きながら考えれば考えるほど焦燥感に駆られる。

ファネット 「ああ〜! あいつらは襲撃犯だわ、すぐ近くに来ているのに!」

ファネット(・・・・ということは、あの方も!?)

ファネット 「どこかにいるはずだ!」

考えがまとまるより先に廃ビルから飛び出る。すぐ近くにいるはずだ。
そして探しながら必死に考えを整理した。

ファネット (決して過去を変えようとしないこと、変えようとしてはいけない・・・ )

ファネット (変えようとしてはいけないと言うのなら・・・ あの日の夜にあったことを確実に起こそうとした?)

ファネット (だがそれでどうなるだろうか・・・  見つけた!)

ファネット 「ねえ、貴方はスザナの恋人でしょう。すぐにハンガリー狂詩曲へ行って下さらない?」

ゴルゴ13 「誰だお前は。」

ファネット 「すぐにハンガリー狂詩曲へ行って! 襲撃者がいるから気を付けて、拳銃を持っている!」

ゴルゴ 「お前は誰だと聞いているんだ。なぜそんなことを俺に教える。」
14 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:00:48.51 ID:6FST64wN0
ゴルゴに伝えるが早いかファネットは例の鍵でビルのドアを開けて元の時代へ帰った。
すぐさまゴルゴは後を追ったがカギがなければ単なる出入口に過ぎない。
完全に見失い、ゴルゴは面食らった。

ゴルゴ (あいつは誰だ? 俺とスザナの関係を知っている13〜15歳程度の少女だと?)

ゴルゴ (敵が俺を当惑させるためによこしたのか・・・? それにしてはやり方が不自然だ。)

ゴルゴ (俺を攻撃するつもりなら今だ・・・ だが誰も襲ってこない・・・ ハンガリー狂詩曲に罠を仕掛けたのか?)

ゴルゴ (それに今の少女、スザナの娘のヘゲドゥシュ・ジャネットの成長した姿だ・・・ そんなことはあり得ないのだが・・・)

ゴルゴ 「いずれにしても襲撃者の正体と目的は探らねばなるまい・・・」

この後ゴルゴは襲撃者を撃ち殺し、スザナを介錯し、ジャネットを病院へ連れてゆき、自分の血液を輸血して救命した。
ファネットは過去を変えることができなかった。元の時代に帰ったファネットは自身が変わらず存在していることからそのことを理解した。
喪黒の見せてくれた夢が終わったのだ。しかし母親の顔は瞼に焼き付いた。もう決して色褪せることはないだろう。
15 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:02:07.79 ID:6FST64wN0
PART7 夢の終わり

ジョニー 「じょ、嬢様? こんな時間に出歩いていていいんですか?」

ファネット 「ジョニーさん・・・」

ジョニー 「もう夜です! お嬢さんが出歩く時間じゃないですよ! お送りしますよ、嬢様」

ファネット 「あれ・・・? もう夜なのね・・・」


ーーー自宅

ジャン・ミッシェル 「ファネット、こんな時間までどこで何を・・・」

イレーヌ 「よっぽど警察に通報しようかと思いましたよ!」

ファネット 「ごめんなさい、お父様お母様・・・・ 私は・・・ お別れをきちんと言ってきたんです。」

ファネット 「お別れの挨拶だとわかってくれたわけではないけど・・・」

実母の死を回避できなかったことが悲しいやら悔しいやら、しかし心のどこかで歴史が変わらなかったことに安堵していた。
忘れかけた記憶を完全に取り戻したこともまた事実。ケリがついたという感覚もあった。

ファネット (時間を逆行することは誰にもできてはならない。思い出は懐かしむだけにしておくべきかもしれない)

ファネット (私の実母にはもう会えない。育ててくれた今の両親を大切にしよう……)

ジャン・ミッシェル 「まあなんだ・・・ 今日はもう遅いから寝なさい。話したくなれば話せばいい。お前が悪いことをするはずないからね。」


※ ジョニー・アセン:ファネットに助けてもらったことのある元無法者。現在は改心済み。
16 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:03:24.89 ID:6FST64wN0

PART8 代償

ーーー ジャン・ミッシェル・ゴベール病院の付近

喪黒 「オーッホッホッホ ファネット・ゴベールさん、考えましたねえ。これは約束を破ったといえるんでしょうか?」

喪黒 「襲撃者がヘゲドゥシュ・スザナさんを撃つより前にデューク・東郷さんが到着していれば・・・ 間違いなくスザナさんは助かったでしょう。」

喪黒 「だからこそファネットさんは間に合うようにと期待を込めて『”すぐに” ハンガリー狂詩曲へ行って!』なんて伝えたんですね」

喪黒 「しかし・・・ あの夜にデューク・東郷さんがどこに行くつもりだったのかは知らないわけです」

喪黒 「どこに行くかわからないから、史実通りにハンガリー狂詩曲に行くように促した。そう主張されたら歴史を変えようとしたと立証できません」

喪黒 「スザナさんを救ってほしいと頼んでいれば約束破りになるんですがねえ。襲撃者の情報なんてあってもなくてもデューク・東郷さんが勝つでしょうし」

喪黒 「タイムパラドックスもまあ何とかなる程度のもので良かったです」

喪黒 「カツアゲから助けてくれた恩もありますので、今回は元の時間に戻れなかった・・・ ということで手を打ちましょう。」

喪黒 「実のお母様を救えなかったことが新たなトラウマにならなきゃいいんですが、ま、大丈夫でしょ。流れている遺伝子が凡人とは違いますから」

ホーッホッホッホ・・・・



? 「・・・」
17 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:04:18.35 ID:6FST64wN0
PART9 似た者同士

ゴルゴ 「・・・」 シュボッ (葉巻に火をつける)

喪黒 「!」

ゴルゴ 「・・・」 フーーッ

喪黒 「・・・ ・・・いつからそこにいたんです?」

ゴルゴ 「答える義理はないな」

喪黒 「なぜそこにいるんですか?  ひょっとして私を撃つおつもりで?」

ゴルゴ 「お前を撃つ理由がない。お前はただ、俺とは赤の他人の女子中学生に束の間の夢を見せてやっただけだ」

ゴルゴ 「よって俺に敵対したということはできない。」

ゴルゴ 「質問への答えだが、疑問を解消したかったからだ。」

喪黒 「ほう、貴方にもわからないことがありますか」

ゴルゴ 「・・・あの夜、俺にハンガリー狂詩曲へ行くように言ってきた少女は、確かにヘゲドゥシュ・ジャネットだ。ただし成長していた」

ゴルゴ 「14歳程度の彼女があの日の夜に存在するはずがない。なぜそんなことが可能だったのか・・・」

ゴルゴ 「お前が絡んでいたというのなら、納得できた。俺の用事は終わりだ。」

喪黒 「ホッホッホ、いつの間にかいるんだから。冷や汗かきました。話は変わりますがね、私と貴方、よく似ていると思いませんか?」
 
18 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:05:41.19 ID:6FST64wN0

ゴルゴ 「・・・なんのことだ?」

喪黒 「ふふふ、どちらも困ってる人の求めに応じて人間離れした手段で問題を解決します。そして約束には厳しい。約束を守らぬ者には破滅あるのみです」

喪黒 「そしてどちらもファッショナブルでダンディーです」

ゴルゴ 「・・・・ ・・・・・ ・・・・・・」 (無表情)

喪黒 「これでも渾身のジョークなんですがねえ・・・ 申しあげておきますが私には貴方に差し上げる品物は何もありません」

喪黒 「貴方のココロにスキマなんてありませんし、『ギルティ!』なんて言われた日にゃ私が福次郎のお客になりたくなっちゃう」

喪黒 「お互い、関わり合いにならないのが一番かもしれませんねえ。それでは・・・ ホーッ ホッホッ・・・」 

ゴルゴに背を向けて喪黒は歩いていく。完全に見えなくなるまでゴルゴは目で追いかけた。
喪黒が見えなくなってから逆の方向へとゴルゴは歩いて行った。
19 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:07:26.07 ID:6FST64wN0
PART10 決めセリフ

ーーーパリ フランス

夜の大通りを喪黒が歩いている。

喪黒 「やれやれとんでもないスペシャリストがいたものです。肝を冷やしました。」

???(・・・! あいつ、あの体格に黒づくめのスーツ、中折れ帽子、ニヤついた顔、間違いない! ダルトワが目撃した奴だ!)

???(ファネット・ゴベールと接触したサラリーマン風の男・・・ ニュメロ・アンゼロシスとも何かしら関係があるのでは?)

ブサール(とにかく、今はひとりらしいな!)

ブサール 「なあ、ちょっとあんた、ちょいと話があるんだが・・・」

喪黒  「職務質問ですか? それならお断りしたいですね。これから一杯飲みに行きたいもので」

喪黒  「おまけに相手がパリ警視庁捜査介入部の腕利き:ファビアン・ブサール警部となればなおさらですねえ」

ブサール 「!? なぜ俺がBRIーPPだと知っている? やはりお前はニュメ、いや、ゴルゴ13の関係者なのか? 答えろ!」

喪黒  「やれやれ・・・」

 
 ド ― ― ― ン!!


ブサール 「うわぁ!? 」


///////////////////////////////////////////////////////////////
20 : ◆DCEejEYaj2 [sage saga]:2023/11/08(水) 00:08:24.55 ID:6FST64wN0

ブサール 「う、うーん・・・」

ブサール 「お、俺は何をしていたんだっけ・・・ ここは・・・」

ギドン 「ん、しっかりしてくださいよ警部。ジャン・ミッシェル・ゴベール病院へ爺さんを連行しに行くんでしょ? ここはその装甲車の中ですよ!」

ギドン 「ちょいとばかし仰々しい気もしますがね。まあ備えあれば患いなしって言いますからね」

ブサール 「そ、そうか。そうだったな。すまん、ちょっと立ち眩みしたらしい。」

ブサール 「連行だったな。抵抗されたら不法移民ネタをちらつかせるか・・・ 恨まれるな・・・」(Gの遺伝子 少女ファネット 第1話 いにしえのプロローグ)


喪黒が走り去る装甲車を眺める。どこかしら満足感のあるようにも見える。

喪黒 「やはり決め台詞がないと締まらないですね。これも偉大なるマンネリとでも申しましょうか」


オーッホッホッホッホ・・・・・・



※ ファビアン・ブサール警部:ゴルゴの手掛かりを得ようとファネットを監視している捜査官。ギィ・ギドンとピエール・ダルトワが子分の刑事。
            

END
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/11/08(水) 03:54:21.34 ID:1rAJLa+x0
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