【オリジナル】男「没落貴族ショタ奴隷を買ったwwww」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

15 : ◆OfJ9ogrNko [sage]:2013/12/18(水) 01:19:30.98 ID:+YyZKnXG0
「名前は?」
 会場で名は叫ばれていたが、しかし落札に夢中で彼のプロフィールなど聞き逃していた。
「……話すことはない」
 勝気な目がタカシを見上げ、数十秒の時間を開けてそう言った。
「いいや、話してもらうよ。私は君を買った。私は君の主人だ」
「俺は買われた覚えなんてないよ! ジンケンを無視するっておかしいと思わない!?」
 床に転がったままの姿勢で、首だけ持ち上げ言う姿が滑稽だった。
 くすくすと笑ってやれば、少年は「なにがおかしいんだよ!」と吼える。
 そうだ、これでいい。腹立たしさなど微塵も感じない。ただ、楽しいと思えるだけだった。
 少年が抵抗すればするほどタカシの楽しみは増えていく。
「なんだよ! なにがおかしいんだよ!」
 きゃんきゃんと犬のように吼え、少年は歯を食いしばっている。
 ああ、可愛い。タカシは歪んだ自分の嗜好を恥とも思わずに、少年を見下ろしていた。
「な、なに笑ってるんだよ! 俺を放せよ! チクショウ、放せよ!!」
 ひとしきり吼えさせたところで、タカシはトランクを蹴り飛ばした。
 衝撃に少年が怯えるのは当然のことで、きゅっと硬く目を瞑った少年の横にしゃがみ込むと、
更なる恐怖心を煽るために唾を吐きかけてやった。
「自分の立場を考えろ。貴族制度はもうない。いつまで御貴族様の坊ちゃま気取りをするつもりだ?
君の目が抉り取られて体を切り刻まれて豚の餌にされたところで、私を咎めるものはどこにもいないだろう。
何故なら君は私が買った『もの』なのだ」
「そんな……! ふざけんなよ、俺は俺だけのものだ!!」
「生意気を言っていいと誰が言った」
 細い顎を掴み、タカシは冷えた視線を投げた。
16 : ◆OfJ9ogrNko [sage]:2013/12/18(水) 01:22:13.68 ID:+YyZKnXG0
 タカシは貴族の、この貴族的な態度を嫌悪していた。
 なにをするわけでもなく、長く続く家系であるとか金が偶々あったというだけで称号が与えられ、
怠惰な生活を国で手厚く保護されのうのうと暮らし、それだけなら兎も角、
農民や商人を見下しきり人の上に人を作り、その下々の民の税で贅沢三昧の彼らが嫌いだったのだ。
 顔が歪むほどに頬を掴まれた少年は苦悶の表情を浮かべて「イハイ」と意味不明の言葉を漏らす。
「なにを言っているのか判らないね。ああ、私が手をどかせば話せるかな。放すつもりはないけどね。
痛いかい? 私はこのまま君の顎を砕くこともできるよ。そうされたくなかったら私の質問に答えなさい」
 一際右手に力を込めると、少年の目に涙が溜まっていった。
 それを確認して手を放すと、まずは最初にした問いと同じい「名は?」と質問をした。
 しかし不思議なことに、なんとなくではあるが彼がなんと答えるのかは想像ができた。
 そう、彼はおそらくこう答えるだろう――、
「……ショウタ……」
 そう。ショウタと。
 きっと会場で聞くともなしに聞いていたのが頭の片隅に残っていたのだろう。
 妙なデジャヴをかき消すようにして微笑むと、掌でショウタの頬をひと撫でした。
「そうショウタか。ようこそ、ショウタ」
 にこりと微笑み抱えてやれば、しかしショウタは殊更怯えた顔をする。
「君は今日から私のペットだ。可愛がってあげよう」
「ふざけんな! 嫌だ! 早くこれを放せ!」
 横たわったまま、がしゃんがしゃんと枷のついた手足を振り回しショウタは叫んだ。
17 : ◆OfJ9ogrNko [sage]:2013/12/18(水) 01:23:59.96 ID:+YyZKnXG0
 タカシはしばしの間、彼の暴言を楽しんだ。
「俺の爺ちゃんは大臣をしたことこあるんだぞ! お前なんか、すぐにでも捕まえてくれるんだよ!
俺にこんなことをしてただで済むと思うなよ! お前が俺にこんなことをしたってわかったら、お前こそ豚の餌だ!」
 貴族のお坊ちゃまとも思えぬような罵詈雑言が飛び出し、しかし稚拙なそれはいっそ愛らしいほどだ。
 タカシはショウタの前に椅子を置くと、それにすわり、そして口角を持ち上げたままで彼を見下ろした。
 止め処なくあふれ出す罵詈雑言を悠然とした笑みで受け止め、
そして彼の呼吸が荒くなる頃を見計らうと、先ほど取り除いたばかりのゴミ箱の中のギャグボールを
口内に突っ込んでやる。
 息苦しいのか、それとも恥辱のためか、ショウタは目を見開きタカシを見た。
「君のお爺様が大臣だったからなんだというんだ? 家はもうないだろう。
家は潰れ、そして君は売り出された。そうだろう?」
 ただ事実を淡々と述べていけば、しかしショウタの目には涙がたまり、それはすぐさま滝のようにこぼれだした。
 もごもごと何かを言いたげにしているが、如何せん口に異物を突っ込まれた状態ではそれも叶わない。
 タカシは溜息混じりに「諦めたらどうだ。お前はここに居るしかないよ」といいつつギャグボールを取り外すと、
ショウタはキッとタカシを睨んだ。
 唾液でぬらぬらと滑るようになった指をシャツで拭い、タカシはショウタの顔を手で掴んだ。
「うるさい、うるさい、うるさい! お父様は俺を迎えに来ると言った!」
「信じているのかい、それを」
 子供の純粋さに呆れと嘲りを隠し切れず、タカシはクックッと喉の奥で笑う。
「なんだよ、なんなんだよ!」
「ばかだなぁショウタは。お前はお前の父親が自殺をしたのを知らないのか」
「……え……?」
ショウタの目がまん丸になるほどに見開かれ、そしてタカシを見上げると「嘘……」と呟くように言った。
「嘘だ、嘘言うな!」
「本当だ。ほら」
 わざわざ女中に探させたのは、ショウタの父の訃報に関する新聞記事だった。
 もうひと月も前のものであったから探すのに随分と難儀したが、
優秀な女中はきちんとその記事を見つけ出してくれた。
 タカシがざっと読んだ感じでは、これから明るいとは思えぬ未来を悲観して一家心中を図ったようだった。
 唯一手元に残った僅かな財産は自殺当日の晩餐に全てつぎ込まれ、そのスープの中に致死性の高い毒物が
混入させられていたようだった。
18 : ◆OfJ9ogrNko [sage]:2013/12/18(水) 01:26:25.01 ID:+YyZKnXG0
 自分の顔の横に転がった新聞記事を、ショウタは目を忙しなく移動させながら読んでいた。
 ショウタにはきょうだいが居なかったようだ。なんとか家を建て直そうと試みたものの、
金を騙し取られて泥沼化、ショウタは売りに出され、もうどうにもならぬと諦めがついたところで
心中をしたようだった。
「嘘、嘘だ……だって、だって……」
迎えに来るって、いっていたもん。
ショウタはかすれる声で呟くと、そのうちヒッヒッとえづきそして泣き出した。
「嘘だ、嘘だぁ……!」
「諦めろ。お前は私に買われたんだ」
 嫌だ、嫌だ。お母様、お父様、お爺様お婆様。
 果てはペットの犬の名や家に仕えていた庭師の男の名までを口にしながらショウタは泣き続けた。
「お前は他に行くところなんてないんだよ」
 残酷な言葉を告げれば、ショウタの泣き声はどんどん大きくなった。
 耳障りなほどに大きなそれに辟易すると、タカシはショウタを再びトランクに閉じ込めるため、蓋を閉じに掛かる。
「やめ、やめろ!」
「うるさいからね」
近所迷惑、とつけたし、それから抵抗をものともせずに蓋を閉じた。
 くぐもった叫び声が聞こえる。
 うるさい、興が醒めたなと一人ごちると、タカシはその部屋のランプをふっと息で吹き消し
そして廊下へ出ると、待機していた下男を呼び寄せトランクを地下へと運ぶことを命じた。
 扉の向こうでは、いまだショウタが叫んでいた。
「ああ、地下についたらトランクからだしてやってくれ」
 下男は「はい」とだけ短く返事をすると、タカシの顔を見ることさえせずにトランクを廊下へと引っ張り出した。
 きっと明日の朝にはすっかり大人しくなっていることだろう。
 ずきりと頭が痛んだ。
 今日は頭痛がひどい。こんな日に子供の喚き声をいつまでも聞いている必要はないだろう。
 明日の夜にまた来ればいい、と結論を出し、タカシはさっさと自室に引っ込むことにしたのだった。


19 : ◆OfJ9ogrNko [sage]:2013/12/18(水) 01:27:19.81 ID:+YyZKnXG0
>>10
ありがとう

今日はここまで
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/12/18(水) 18:15:24.06 ID:6fQzdFyn0

速報は初めて?
メール欄に半角でsagaって入れると「殺す」とかがきちんと表示されるよ
あと、ここでは基本、作者はsageない。読者がsageる
詳しくは「初めてSS速報に来た方へ」ってスレを読んで

あと、悪いけど行間を一つあけてくれると携帯から見やすくなるから、手間じゃなければそうしてほしい
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2013/12/19(木) 21:11:31.51 ID:n+ke/+nK0
待っ●いるよ
22 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:12:03.04 ID:5GdPqy6h0
>>20
うお、素で間違えてたわthx
>>21
ありがとう
23 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:13:49.69 ID:5GdPqy6h0
 昼過ぎに目を覚ましたのは、女中が遠慮がちに「坊ちゃま」と呼びかけたからだ。
「なんだ?」
 寝起きで頭が回らない。昨夜は遅くに帰宅をしたから、眠りにつくのが必然的に遅くなってしまった。
 どうせ今日は仕事も休みだと気分よく惰眠を貪っていたというのに、台無しである。
 扉の向こうから彼女は「あの」と言いづらそうに切り出す。
「あの、地下室が……」
 騒がしくてたまらない。
 彼女はそう告げた。地下室にはショウタが居るはずだ。食事の必要もないと告げてあるから、
使用人たちがわざわざ地下へと赴くことはない。
 となると、ショウタが外にまで聞こえるような声で叫んだり暴れたりを繰り返しているということになる。
「そうか」
「あの」
「大丈夫、今行くから」
 クロゼットからてきてとうな衣類を引っ張り出して身にまとう。着ていた寝巻きはそのまま手に持ち、
扉のすぐ傍で待機していた女中に手渡した。
「悪いね、騒がしくして」
「いえ……」
 彼女は目を逸らしタカシを見ようとはしない。
 それはそうだろう、彼女は昨夜までは自分の主人は『全うな男である』と信じて疑うことさえなかったのだ。
 気持ちの悪いものをみ見る目をされたとしても仕方がないだろう。
 そこまで考え、はて彼女は生身の人間なのか、それともアンドロイドであるのかと言う疑問が浮かぶが、
しかし答えは見出せなかった。
 家の中の人間についてまで殆ど把握していないのは褒められたことではないだろうが、だがタカシは
その手のことに深くこだわる性質ではなかった。元来の性質なのだから致し方がない。
 そう、極度のサド気質なのもまたタカシの元来の性質なのだ。
 だから自室から階段を下るなる微かに響いてきたくぐもった音に、寝起きながら興奮を覚えたのだろう。
24 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:16:09.00 ID:5GdPqy6h0
 地下室への入り口は壁を隔てているが、それでも声ははっきりと聞こえるのだから、
近くであったのならどれほど響くことだろう。
「活きのいい子供だ」
「え?」
「なんでもないよ」
 イジメがいがある。舌なめずりしたいような、自分でも不気味に思えるほどの感情をもてあましながら
タカシは地下への入り口が設けられた家の中心部へと向かった。

 タカシの住まうこの家は、回廊型をしている。
 邸宅の一階は一二の部屋から成っていて、まるで時計ようだ。
 時計のとおりに番号を振るうならば、玄関の丁度前の部屋は六、
タカシが先ほど下ってきた階段のある辺りは一に当たる。
 玄関を開ければすぐさま障子で閉ざされた部屋が姿を見せ、それから首を伸ばして左右を見やっても
同じく閉ざされた部屋と長く伸びた廊下があるだけで他にはなにもない。
 見る者によってはさぞや不気味に映ることだろう。
 それぞれの廊下を真っ直ぐ進めば直角に折れ曲がった廊下がまだ続くわけではあるが、
玄関からはその様子は窺い知ることができない。
 おまけに、部屋の全ては障子で閉ざされているから、家の様子も、家人の人となりも判断ができぬに違いない。
 きっちりと同じサイズの部屋が並ぶ家は、はっきりと言ってしまえは不気味で、タカシはあまり好きではなかった。
 成人の祝いにと祖父より賜った邸宅であったから文句は言えぬが、しかしこの不気味さよりも更に
タカシの頭を悩ませるのは、この不便な家の造りなのである。
25 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:18:37.65 ID:5GdPqy6h0
 それぞれの部屋に添う形で伸びる廊下は実はその端と端は繋がっていないのだ。
 六を基点として、向かって右に進めば一で廊下は途切れ、
逆に進めばに一二にが行き止まりになっているということだ。
 何故こんな不便な造りにしたのかタカシには判らなかった。
 さて、ショウタを放り込んだ地下室は一二の部屋にある。
 正確には、一二の部屋の中へと地下へ続く入り口があるのだ。
 タカシは一二に赴く間、そのくぐもった叫び声を存分に楽しんだ。普段は不便極まりない廊下も、
今日だけは乙なものと思えるから性欲とは不思議なものだ。
 微かに聞き取れるのは「馬鹿」だとか「アホ」、それから「死ね」という言葉で、貴族のお坊ちゃまにしては
如何せん語彙力が貧困だ。
 と言ってもはっきりと聞こえるわけではなく、僅かな音を拾って「そう言っているのであろう」と
タカシが脳内で補完しているだけだから、もしかしたらもっと高等な罵詈雑言を吐いている可能性もある。
 いずれにせよそれはタカシへの悪態に他ならぬはずで、そうに違いないと思えば気分が高揚した。
 タカシは確実にショウタの存在そのものを楽しんでいる。
26 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:27:58.34 ID:5GdPqy6h0
 ようやくたどり着いた一二の部屋の襖を開き、そして現れた純和風の客間の、その床の間へと一直線に進む。
 掛けられた巻物を無造作に捲り、そしてその先に続く扉を押し開くと階段が現れた。
 階段のその先は薄暗く、目視することは困難だ。左手で壁を探ると突起物に行き当たり、
それを指先で軽く押せば、壁に点在する電灯に上部から下部へと流れるように順に明かりが点っていった。
 そしてその微かな光りで満ちた階下をタカシが見下ろすと、まるでそれを見計らったかのように
「開けろ!」と言うしゃがれた声が今度ははっきりと響き渡ったのだった。
 地下室に入るにはもうひとつ扉を開けなくてはならない。
 そのような状態でもショウタの声がはっきりと聞こえるということは、相当な大声で叫んでいるということだ。
 その声にほくそ笑む自分自身に呆れつつも、わざと足音を鳴らしてタカシは階段を下る。
 一歩ごとにひんやりとした空気で満たされていく空間を楽しみながら足を運んでいく。
 扉は階段を下りきってすぐの場所にある。内部へと続く重厚な木製扉を押し開けば、
首輪と手枷足枷が嵌められた姿のショウタがそこに居た。
「おい、お前、これ外せ!」タカシを見つけるなりショウタは歯をむき出しにしてそう叫んだ。
「……挨拶もないのか」
「そんなもの必要ない! いいからこれを外せ!」
「それは無理だね。だって君、逃げるだろ?」
「当たり前だろ!」
 馬鹿正直に答えるショウタに思わず笑みが漏れた。
「ならなおさら外せないよ」
 タカシの言葉に、ショウタは手足の自由を奪う鎖をガシャガシャと激しく鳴らした。
 そんなことをしたところでその鎖が千切れることはないのは当然判っているだろうが、
そうせずには居られない、と言った様子である。
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2013/12/20(金) 00:28:25.72 ID:t/JPKquR0
地の分は結構なことなんだけれども、もしよろしければ地文と台詞の間に行あけてくれるとうれしい。
今の状態だと見辛くて…
28 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:30:02.31 ID:5GdPqy6h0
 手は手枷のほかには手錠を嵌めているから、自由は利きにくいだろう。
 それでも手は壁、足は床へと繋がる鎖はいずれも長いから、
地下室内のみにおいてはある程度は自由に動ける仕様だ。
 過度のストレスは反抗心を早くに磨耗させる。だからこそある程度の自由――、
逃げられそうで逃げられない状況をタカシは作ったのだ。
「これ、外せよ」
 ショウタはタカシを睨みつつ再びそう言った。
 変声期前の可愛らしかった声はすっかりしゃがれている。二、三日大人しくさせれば治るのだろうが、
これはこれで味があっていいものだと考える。
 今まで明かりひとつなかった地下に灯された電灯は、少しばかりショウタの緊張をほぐしたようだった。
「眠れたか?」
「眠れるわけがないだろ!」
 それではいつどうやって枷を嵌めたのかと考えれば、下男が力ずくでショウタを押さえ込んだのだろう。
腕や足に青あざが残るのはその作業の所為かもしれない。
 傷はつけるなと言っておけばよかったかもしれない。
「眠っておけばよかったのに。一日は長いよ」
「どういう意味だよ!」
 手負いの獣よろしく歯をむき出しでタカシを睨むショウタにタカシは平然と「今から犯すからね」と
言ってやる。
「へ……?」
 言葉の意味が判らないわけではないだろう。しかしショウタは口を開け、
そして暫くそうしていたかと思えば急に唇を戦慄かせ「やめろ」と蚊の鳴くような声で言い放った。
29 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:35:02.65 ID:5GdPqy6h0
>>27
物凄い量になっちゃうからさ…
30 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/20(金) 00:41:36.91 ID:5GdPqy6h0
めんどくさくなっちゃったから今日はここまで
行間空けるのってSS速報では絶対なのか……
なんて面倒な……すまんかった……orz
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/20(金) 01:10:03.09 ID:5dD0GZTE0


絶対って訳じゃないけど、どのスレでも大体は言われるな
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/21(土) 13:00:19.59 ID:9ZnGLHElo
別に俺はどっちでもいいよ
別にくっついてても読めるし、好きに書けばよかね

33 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:43:08.32 ID:3ZexRIYo0
>>31>>32
絶対ではないのかー
じゃあいい……のかな
アメ○ロみたいな場所でよく見る一行ごと開けてある文章って
スクロールが多くて苦手なんだよ
他人のSSについては全く気にしないし面白ければなんどもいいって人間なんだが
自分で書いたものがそれだとちょっとな
スマホから見ると何度も指を動かさなくちゃいけなくて面倒なんだ

VIPで書くには量が多すぎる、小説家になりたいわけではないからなろうも違う、
それで前から覗いていたここに書こうと思ったわけなんだ 許してくれ

見難いって人、すまんが無理そうだったら回れ右してくれ
頑張って見なくちゃいけないほどもモンでもないんだ 本当にすまん
34 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:44:50.01 ID:3ZexRIYo0
「む、無理だ……! 俺、無理だ、そんなの……!!」
「無理? 無理だろうがなんだろうが今から君は私に犯されるんだよ」
 ショウタはタカシの言葉に鎖をカシャンと鳴らしながら後ずさった。
「嘘、嘘だろ、だって、だって俺は……」
 そう、ステージ上に立っていた彼らは『特別な』商品なのだ。
 初物で、血統もいい。
 初物とは言え慣らしぐらいは施され、玩具のひとつやふたつはくわえ込んだことがあるだろう――、
そう思われるだろうが、彼らは正真正銘の『初物』なのだ。
「知っているよ。尻なんて弄ったこともないんだろ?」
「だ、だったら……」
 そんな恐ろしいことはやめてくれと目が訴えているが、タカシはそれに対して「君は私が買ったんだ」と
冷ややかに言い放った。
 何の為の血筋か考えてみれば容易い。
 買い手はかつて貴族であった彼らに鬱憤を抱く者たちばかりだ。
 それらを服従させることにこそ意味があるのだから、体が受け入れやすく作りかえられていたら
なんの意味もない。
 一から主人の手で意のままに体を作り変えることができる――、それがこの商品が『特別』であるゆえんなのだ。
「大丈夫、ちゃんと仕込んであげるから」
「や、やめ、やめて……!」
 申し訳程度の綿の衣類は女の着るネグリジェのような形をしていて、
それをひん剥いてやれば彼は丸裸になる。
 簡素なそれの裾にに手を掛ければショウタは手を振り回し、爪を立てて抵抗を試みた。
 女がスカートを捲られることに抵抗するような姿は、そそるものがある。
「やめろ、おい、ふざけんなよ、おい……!」
 抵抗は思いの外激しく、そして爪先は時折タカシの頬を引っかいていく。
35 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:46:22.02 ID:3ZexRIYo0
「おい、おいってば……!」
「……面倒だな……」
 たくし上げるのをタカシはやめて、襟元に手を伸ばし、タカシはそれを一気に引き下げた。
 簡素なボタンが飛び散り、そして布が裂ける音がした。
「おい、なんでもする、だから、」
 布を小さく丸めると、口にへと突っ込む。そうすればショウタはもうしゃべることができない。
 罵詈雑言は楽しんだし、しかしここまで来てこれ以上に弱音を吐かれたら興ざめだ。
 なんでもする? 冗談ではない。それ以上に許しを請われたらタカシのそこは萎えるだろう。
 あくまでも抵抗する気概のあるショウタでいて欲しかったのだ。
 それから数十分の間、ショウタは抵抗を続けた。尻に触れよう物ならば足を振り上げて拒絶を示す。
 望ましい反応だ。
「足を開きなさい」
 くぐもった声では何を言っているのか判らぬが、ショウタは首を振り抵抗する。
「仕方のない子だ」
 呆れたように言えば、勝気な目はキッとタカシを睨み、そうしていたかと思えばやはり馬鹿のひつ覚えか
足をじたばたとさせる。
 そんなショウタを放っておいて、これ見よがしに嘆息した。
「足を開きなさいとと言っている」
 二度三度と、先ほどと同じように首が振られた。
 目は涙か汗か、そんなもので潤んでいる。
「どうしても嫌なのか?」
 幼子に尋ねるように言えば、今度は首が縦へと振られた。
 そうだ、そう来なくてはこまる。
「困ったな……」
 困ってなどいないが一応は検討をするような素振りを見せるのは、勿論盛り上げるためだ。
 タカシはショウタの手足が届くギリギリの範囲まで遠ざかり、そして背を向ける。
 歯がゆいだろう。あと少しでタカシを襲えるというのに、彼にはそれができない。
36 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:48:54.44 ID:3ZexRIYo0
 ところで、この部屋の入り口の真横には、ひとつの大振りな桐箱がある。
 下男に昨夜のうちに用意させたものだ。
 ふぅふぅと抵抗するショウタをちらと見遣ると、彼は相も変わらずタカシを睨んでいる。
「ショウタ、あの箱はなんだと思う?」
 判らない。そう言うように、ショウタは視線を落とす。
「面白いものがたくさん入っているよ」
 面白いのは、勿論タカシにとっては、だ。
 わざとゆっくりと歩み、そしてたどり着いた先でもったいぶりつつ箱を開く。
 蝶番の軋む音が響き、そしてその中に眠る全体的に黒っぽい物体のひとつを取り出した。
「これはね、鞭だ。ああ、ショウタは乗馬くらいしていただろうから知っているかもしれないね」
 ショウタの顔は面白いほどに血の気が引いていった。
 外にもディルドだとかアナルパールだとかいかがわしいものは一通り揃っていたが、
取り敢えずは鞭とローションを引っつかんでショウタの元へと戻っていく。
「お利巧なショウタには判るよね。さぁ、早く足を開きなさい」
 青ざめたショウタはそれでも強情に足と足の間をくっ付けたままでいる。
 引き裂かれた布を纏っただけの彼は殆ど全裸に近い状態で、その格好だからこそ寒さや恐怖を煽るのだろう。
 床に落とされた視線は最早持ちあげることにさえ恐怖を覚えるのか、床の上を左右に泳いでいる。
「開けろといっている」
 優しげな口調を引っ込めて、途端に命令口調へとなったタカシにショウタはわずかばかりの隙間を腿に空ける。
 それが限界だというような態度にタカシは笑った。
「それであけたつもりか?」
 ショウタにとって精一杯の譲歩であったのだろうが、タカシはまだ許すつもりはない。
37 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:51:06.91 ID:3ZexRIYo0
「そうか。判った。それならそれでいい――、嫌でも言うことを聞きたくなるからね」
 ショウタがタカシの動きを確認すよりも早く、タカシは右手を振り上げた。
 手に持ったのは鞭。
 SMどころか性交さえしたことのないショウタに、タカシはどんな風に映っているだろう。
 振り上げた鞭がショウタの腿へと到達する頃、やっと彼は涙の溜まった瞳をタカシへと向けたのだった。
 パシッと乾いた音が響き、「うー」と言うくぐもった叫びが漏れ出る。
 タカシは休むことなく二発目を繰り出し、そしてショウタの左右の腿へと赤い線を残した。
「どうだ?」
 鋭い痛みにショウタは未だ「うー」と唸り声を上げている。
「足を開く気になったか?」
 ショウタは身を屈めて「うう」と唸り続け、痛みに耐えていた。
「ああ、言うことを聞けないようだね」
 すかさず言えば、ショウタは首を左右に振り
そしてあれほど抵抗していた腿に力を緩めて足を大きく開いたのだった。
「……よくできたね」
 えらいね、と頭を撫でてやれば、彼は身を強張らせたままそれを受け入れる。
「四つんばいになりなさい」
 残念なことに、今度はショウタは抵抗することなく言われたままのポーズを取った。
 もっと抵抗をして欲しいところである。どうも鞭を取り出すタイミングを謝ったかもしれない――、
そんなことを考えつつ、タカシはローションを開封して、それを手にたらした。
「足、もっと開いて」
 言われるがままに足を開くと、しりの狭間の穴が露になった。
 ローションを指に塗りつけると、タカシは無造作にその穴へと指を突っ込む。
 まずは一本。窄まった穴が抵抗を見せる。
38 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:51:55.26 ID:3ZexRIYo0
「力を抜け」
 そう言われても未経験なショウタには容易いことではないだろう。
「抜けといっている」
 尻が小刻みに震えているのが妙に淫猥だった。
「抜きなさい」
 指は流石に乱暴に動かすことは憚られ、ゆっくりとした動きで尻の内外を行ったり着たりさせる。
 暫くそれを続けていると、コツを掴んだのか、指はにゅるんと尻の中に吸い込まれていくようになった。
「そうだ。それでいい」
 漸く指一本の行き来がスムースになったころ、二本目の指で入り口をつつく。
 これはなかなか上手くいかない。抵抗があるし、力の入った穴は小さくてなかなか入らないのだ。
 何度も何度も弄り倒し、漸く二本目が入るころにはショウタの腿は長く続く同一体勢に疲れたのか
震えだしていた。
「床へと体をつけてもいい」
 そう指示を出すと、ショウタは以外にもそれに従い、それに伴い尻の位置も下がる。
 彼の顔は碌に見えぬが、涙の溜まった目で必死でこの恥辱に耐えていることだろう。
「……いい子だ。そのうちよくなる」
 囁くように言ってもなんの慰めにもならないのだろう。ショウタはうんともすんとも言わぬまま、
されるがままとなっていた。
39 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:53:56.68 ID:3ZexRIYo0
 弄り始めてどれくらいの時が経過しただろう。随分と長いことこうしているよう気がする。
 一時間か、一時間半か、或いはそれ以上だろうか。
 自分でも気の長いことだと感心しながら、タカシはすっかり緩んだそこから漸く指を引き抜いた。
 相変わらず床へと体を伏せているショウタであるが、その体が震えているのは精神的な打撃からくるものなのか
それともタカシが体を弄り倒しているからなのかは判らない。
 一方タカシはと言えば、目の前では広がった穴がパクパクと開閉しているが、
それにそそられるかと言えばそうでもない。
 もっと抵抗してくれないと燃えない、と言うのが正直なところだった。
 立ち上がってショウタの顔が確認できる位置へと移動すると、突如降り注いだ影に怯えた様子でショウタは
体を揺らした。
 視線がかち合えば、しかしそれから逃れるかのように慌てて目を逸らす。
 最早彼の中には抵抗の意志は殆どなく、心は恐怖で満たされているようだった。
 なんてつまらないのだろう。
「なぁ」
 呼びかける声にでさ怯えた仕草を見せるショウタに思わず溜息が漏れた。
「親父さんは、なんで君を売ったんだろうね」
 タカシの言葉にショウタはゆっくりと視線を上げた。
「どうせ心中するのに、なんで君だけ売り飛ばしたりしたんだろうね」
 涙を湛えた瞳が揺らめいていて、瞬きひとつで雫は零れ落ちそうだった。
「ショウタを裏切って置き去りにして……、きっと君のことなんてどうでもよかったんだな」
 そうタカシが言った瞬間、芋虫のように丸まっていたショウタは上体を跳ね上げさせ、
そして噛み付かんばかりの勢いで身を乗り出した。
40 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:54:51.85 ID:3ZexRIYo0
 瞳に力が宿り、そしてタカシを睨む。
 ふさがれた口はなにを言おうとしているのかは判然としないが、布きれを突っ込まれた口は
必死でタカシへと何かを告げようとしているようだった。おそらく暴言だろう。
 そうだ、こうでなくては困るのだ。
 タカシは立ち上がり、ショウタを見下ろした。
「今日はここまでにしておこう」
 挿入するのはまた次回への楽しみとして取っておけばいい。
 タカシは桐箱まで歩み寄ると、その中に無造作に放置されていたアナルパールを掴み、
再びショウタの元へと戻ってきた。
「私が明日来るまでこれを入れておきなさい。
ああ、今夜は食事を用意してあげるから楽しみにしておくといい」
「――!!」
 要らない。
 そう言ったようだったが、タカシはそれに構うことなく尻にそれを突っ込んだ。
 悲鳴染みた声が鼻を抜けて響くが、タカシはそれに構わず、もう今日のところは興味を失ったオモチャへと
視線を移すことなく地下室を出て行った。
 ショウタはもっともっとタカシを楽しませなくてはならないのだ。
 一日や二日で全てを食らい尽くす必要も壊してしまう必要もない。
「楽しみだ……」
 浮き足立つ心をなんとか沈めて、タカシは地上へ出るべく階段を上って行ったのだった。
41 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:56:25.58 ID:3ZexRIYo0

 
 タカシはデニムでチューリップの花びらを擦りながら、その整備された庭を歩いていた。
 広い庭だ。純和風の邸宅に不似合いではあるが、その家をぐるりと多い囲むようにしてチューリップが
植えられている。そして板塀の近くには、背丈を同じくする桜がずらりと並び、タカシを圧巻させた。
 この景色にタカシは見覚えがあった。この庭はタカシが成人するまで住まっていた邸宅――、
つまり本家の庭に他ならなかったのだ。
 ああこれは夢だ。タカシは美しい庭を歩きながらそう考えた。
 この場所を知ってはいるが、しかしそれが現実ではないと理解するのは容易いことだった。
 例えば桜。あの庭に植わっていた桜の木は高さが不揃いで、少しばかりみっともなかったはずだ。
 それに、庭の所々はまるでエラーを起こしたかのように、あるはずのないものたちが我が物顔で鎮座している。
 廃棄されたアンドロイドが山積みになっていたり、かと思えば書類の束が放置されていたりする。
 本家を出てかなり長いから、記憶がおぼろげになり、庭の細部までは思い出すことが難しいのだろう。
だから庭の様子が部分的におかしいのだ。
 アンドロイドの残骸に書類の山――、それらはタカシの現在の生活に密着しているものたちだった。
 だからこそタカシは『これは夢なのだと』と強く自覚するに至ったのである。
 しかし見事な桜である。現実の桜もこんな風に咲き誇るのだろうか、と考えつつ舞い落ちる花びらを眺めていると
桜の木の向こうから人影が突如として現れた。
42 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:58:45.32 ID:3ZexRIYo0
『タカシさん』
 日傘を差した美しい女性だ。彼女は上品そうな笑みを浮かべている。
 あれは誰だっただろうと考えていると、女性は白い手袋をした細い腕を軽く持ち上げて左右に振った。
 そうだ、あれは姉だ。姉のミユキだ。
『ミユキ』口内で呟くように言えば、その名前がしっくりと胸に落ちた。
 しみこむ様なそれにホッと一息を吐き、タカシも彼女に向かって腕を振るう。
 夢とはいえ実姉を忘れるとは些かうっかりが過ぎるだろう。
 姉が嫁いで何年になっただろうか。
 ある代議士の家へと嫁いだから、そうそう会えなくなってしまったのだ。
 思えば、もう年単位で会っていないのだから、夢の中で顔を咄嗟に思い出せぬのも
仕方がないのかもしれない。
 彼女は裾の長いワンピースを器用に動かしながらタカシに近づいてきた。
足早に歩きつつも、チューリップを踏みつけたりしていないのだから感心をせざるを得ない。
『やっと追いついたわ』
 日傘を閉じながら、ミユキは微笑んで見せる。相も変わらず少女めいた人である。
 そんな少女のような彼女だが、どうやら妊娠をしているようだ。
 腹が僅かに膨れ、ワンピースの布地を押し上げていた。
『男の子だって先生が仰っていたわ』
『そう、よかった』
『ねぇ、お腹に触って?』
 え、と躊躇したのはつかの間で、気づけば手首はミユキの柔らかな手に引かれ、
そうしてその丸みを帯びた腹へと掌を当てていた。
 姉弟とは言え彼女は異性だから、なんとなく触れることに躊躇したのだ。
 そこは思いの外かたく、なるほど子宮が筋肉だという話は本当のようだと、タカシは妙な感慨に浸る。
43 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 21:59:34.08 ID:3ZexRIYo0
『動く?』
『やだわ、まだ動いたりしないわよ。もっと先よ、動くのは。この前もそう言ったわよ?』
『――そうだったかな?』
『言ったわよ』
 もう、とミユキは頬を膨らませ、それから幸せそうに微笑んだ。
『名前、付けて下さいね?』
『――俺が? 何故?』
 名付け親に弟がなるというのは奇妙な話だ。
 だがミユキはふざけている風でもなく、やや困惑の入り混じった顔で
『何故ってどうして?』と逆に尋ね返すのだ。
 さもそれが当たり前の行為であるかのように。
『何故、俺が』
『何故ってタカシさん』
 ザっと風が吹いた。
 風は桜の木を激しく揺らし、姉の髪を乱した。
 花びらが散る。ピンク色の花びらを撒き上げながら、風は強く吹きつけていく。
『ミユキ?』
 花びらで霞む視界の向こうで、ミユキは未だ小首を傾げタカシを見ていた。
『何故って』
 乱れた髪を直しながら、ミユキは艶やかな唇を開ける。
『名前をつけるのは父親の役目でしょう?』
44 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 22:00:45.20 ID:3ZexRIYo0
「……っ!」
 耳に響くのは、目覚ましの音だ。
 不快なその音は、人間工学で計算された『誰もがすっきりと目覚めを迎えられる音』らしいのだが、
タカシにとっては鼓膜に直接触れられているかのような気分の悪い音で、あまり好ましいと思えぬものだった。
「起床した。停止」
 誰もおらぬ寝室で、誰に聞かせるわけでもなくそういえば、どこからともなくポーンという電子音が響く。
『脳波を計測します……、起床を確認。目覚まし機能を停止します』
 天井からの声に、渋々とベッドから降り立つと、タカシは今しがた見た悪夢について思いをめぐらせた。
 あれは姉のミユキだった。ミユキとは随分会っていない。最後に会った時には『妊娠した』と言っていたはずだ。
 あんな夢を見るなんてどうかしている。
 性に関するサブカルチャーが比較的おおらかな日本においても、近親相姦が異常であることは間違いない。
 タカシはミユキに対してそんな不埒な感情はいだいたことがないし、いだくほどに飢えているわけでもない。
 夢とは願望や恐怖を象徴的に映し出すもののようだが、それは全くのでたらめなのではなかろうか。
 そうでなかったらあんな夢をみるはずがないのだ。
「坊ちゃま、おはようございます」
 冴えぬ気分のまま自室の扉を開け廊下へ出ると、待機していた女中がタオルを差し出した。
「おはよう」
 滑らかな動きは人そのもので、やはり彼女は人間に違いない、と確証のない考えを導き出した。
 彼女はタカシが階段を下るのを待つようにして、廊下のわきに寄り頭を垂れ続ける。
 それほどまでに恐縮する必要はないと思うのだが、祖父の代から親子で勤めている者が多いこの屋敷では、
タカシに対してまるで神か王の対するがごとく振舞うのである。
 息が詰まる思いだ――、それでもショウタのような子供を引きずりこむような褒められぬ行為についても
誰一人咎めるわけではないから、比較的好き勝手にしている方なのかもしれない。
 言われるがままに好きでもない代議士の下へと嫁がされた姉に比べれば、
過ぎるくらいの自由を貰っているのだろう。
45 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 22:02:48.68 ID:3ZexRIYo0
 キッチンで朝食を済ませてから新聞に目を通していると、下男が大振りな旅行鞄をもってやってきた。
「坊ちゃま、お支度が整いましたよ」
「……なんの支度だ?」
 にこにこと微笑んでいた下男は「スカイカーレーシングですよ」とこともなげに告げる。
「なんの話だ?」
 今日は月曜日で、出勤をしなくてはならないはずだ。
 暢気にレジャーを楽しんでいる場合はではない。
「いやですね、スカイカーレーサーのご友人にお会いして、
レーシングの手ほどきを受けると楽しみにされていたじゃありませんか」
 新聞から目を離し、まじまじと下男の顔を見る。冗談を言っている素振りではなかった。
 今日は出勤して、新年が始まり次第早々に発売される新型アンドロイドについて様々な準備があるはずだ。
 発表は現社長である父の役目だが、その傍にタカシはついている必要がある。
それについての段取り話し合いもあるし、下男が今しがた伝えた娯楽関係の予定は当分の間――、
いいや、そんな馬鹿げた予定は確かに立てていた。
「……忘れていた」
 そう、忘れていたのだ。
 いつもと違う日常――、つまりショウタの存在だ、にかまけていてすっかり忘れていた。
 旧友がこのたび医者からスカイカーレーサーへの転向を果たしたのだ。
 スカイカーレーシングと言えば近頃誰もが注目するスポーツで、タカシも大きな興味を抱いている。
 カフェインが入った脳が、未だに寝ぼけている。
 きっと妙な夢を見て出鼻をくじかれたような気分になった所為に違いないとタカシは考えた。
「坊ちゃま、大丈夫ですか?」
「ああ、平気だ」
 意識は次第にすっきりとしてきた。
 スポーツマンタイプの旧友の笑顔が脳裏に浮かび、そして彼のレーシングマシンに乗せてもらえると思うと
心は躍る。それほどタカシはスカイカーを楽しみにしていた。
 だが。
46 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 22:04:30.45 ID:3ZexRIYo0
「坊ちゃま?」
 タカシの表情に気づいたのだろう、下男がもう一度「大丈夫ですか」と尋ねた。
「大丈夫だ」
 先ほどと同じように返事をするが、しかしタカシはもうスカイカーに然したる興味を抱いては居なかった。
 そんな自分自身のことが不思議でならない。冷めつつあるコーヒーを啜りながら眉根を寄せるタカシに
下男はやはり怪訝そうな顔でタカシを見つめていた。出方を窺っているのだろう。
「すまないが」暫しの間を置いて、結局導き出した答えはひとつだった。「断りの連絡を入れておいてくれないか」
 久しぶりのまとまった休みだ。
 だからこそ旧友と会いたかったはずであるが、タカシが最も興味を抱いているのはショウタだ。
彼以上に興味の湧く、面白いことなど今はひとつもなかった。
「――お断りですか?」
「ああ」
 あれほど楽しみにされていたのに。そう言いたげな下男は、しかしなにも言わぬまま
「判りました」とだけ返事をしキッチンを去っていった。
 コーヒーを飲み干した瞬間に、ズキンと頭痛が走る。
 また頭痛だ。薬を飲んでおく必要がある。
「悪いが、今日は地下室で過ごす。夕方まで誰も降りてこないよう伝えてくれ」
 女中に申し付ければ、彼女はまつげを揺らしながら頷いた。
47 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 22:05:08.38 ID:3ZexRIYo0
 ああ、怖がらせている。彼女にとって、タカシは少し前までは全うな主人であったのだろう。
 世間にとってもタカシは全うな人間のはずだ。今までそう思われるように生きてきたのだ。
 きっといたいけな子供をいたぶっていると世間に周知されれば、
この行為が合法であったとしてもタカシの立場はなくなるだろう。
 この悪い遊びがどこかへと漏れ出ることはあってはならぬこと。だがタカシはそれを隠す気にはならなかった。
 何故と問われたところで答えようがない。
 何故――?
 判らない。
「ストレスかな……」
「はい?」
 女中はタカシの声に返事をするが、いいやなんでもないと首を横に振ってやると、
仕事があるだとかてきとうな理由をつけて去っていった。
 汚れた食器を片付ける者が居らぬと気づいたのはその後のことで、タカシはそれらを手に取り
どうすべきか考えあぐねた結果、調理台の上にそれを放置したのだった。
48 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 22:07:24.30 ID:3ZexRIYo0
 ショウタは平らなスープ皿を傾け、皿に直接唇をつけて中身を啜っていた。
 全裸でスープはカトラリーさえ用いずに飲んでいる。
 凡そ良家の坊ちゃまには見えぬ姿であるが、これはタカシが強要したことだった。
「美味いか?」
 椅子に座り足を組み、見下ろすようにして言うと、ショウタはウンでもスンでもなく、
ただ一瞬だけタカシを睨んだだけだった。
 尻に入れられた器具はそのままだから、その異物感は気分のいいものではないだろう。
「後ろ、抜こうか?」
 そう尋ねるも、しかし彼はタカシを無視するかのようにスープを飲み続けた。
 組んだ足を入れ替える瞬間、少しだけ空気が動くと、スープの香りに混じってなにか嫌な匂いがした。
 そういえば、連れて来たその夜からショウタを一度として風呂には入れていない。
 そう気づくと何とはなしに自分自身も汚れるような気がして、
タカシは「食事が終わったら風呂に入ろう」と提案をした。
 いや、これも提案と言うよりは決定事項で、ショウタが抵抗したとしても譲るつもりはなかった。
 ショウタは返事をしない。
 タカシは彼の首に続く鎖を思い切り引っ張り「風呂に入るよ」と語気を強めて言う。
 ショウタが掴んでいた平皿はコンクリの床に落下し、ガシャンと耳障りな音がし、
よくよく見れば皿の縁は少しだけ欠けていた。女中が困った顔をするだろうが、
持ち主はタカシであるのだから気にする必要はない。
「判ったね?」
 やはりショウタは返事をしなかったが、彼がジッとタカシを見つめてきたから、それだけで満足だった。
49 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 22:09:50.02 ID:3ZexRIYo0
 ショウタはタカシを無視する方向で抵抗を始めたようだった。
 怒鳴っても手足をばたつかせても無意味と知り、最後の手段として持ち出したのが『無視』のようだった。
 とは言えまだまだ彼は子供だ、だんまりもそう長くは持たないだろう。
 台無しになった料理はそのままで、手枷と足枷をそれぞれ手錠と足錠に変えてから、
タカシは逡巡ののちにショウタを肩に担いだ。
 一瞬、ショウタが空気を盛大に吸い込む気配がしたが、無視決め込むことを思い出したのか、
そのまま空気は吐き出され、そして彼は大人しく肩に納まった。
「うちの風呂は広いぞ」
 その言葉も無視しているのだろう。
 これと言った返事も期待しないまま、タカシは地上に上がる階段を上って行った。
50 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/22(日) 22:10:38.19 ID:3ZexRIYo0
今日はここまで
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/22(日) 23:49:59.61 ID:P978hIn80
いいね、乙
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/23(月) 04:28:34.50 ID:EmAMHSHCo
●たよ
53 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 22:46:06.19 ID:Tukd11yn0
>>51-52
ありがとう

以下エロパートなので注意
54 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 22:47:58.99 ID:Tukd11yn0
 風呂の通称は『二の部屋』である。
 ショウタの重みの分、若干であるが足音が大きくなったのだろう、
それを聞きつけた家のものたちが、それぞれの持ち場から顔を出しては、
事態を把握するとすぐに顔を引っ込めた。
 途中女中に声を掛け、てきとうな衣類を用意してくれと頼み、タカシはそのまま風呂場にショウタを突っ込む。
 なにせ衣類を引き裂いた夜からショウタは全裸だ。放り込むのは容易かった。
 浴室に放り込まれたショウタは、なにをするでもなくただ突っ立っている。
 タカシは自身も服を全て脱ぎ捨てると同じように浴室に入っていった。
「……!」
 その姿にショウタは驚いたようで、飛びのくようにして浴室の隅へと逃げる。
「なにをしている」
 だがその問いに答えることなく、ただ身を縮めて怯えた目でタカシを見た。
 背中を向けて、顔だけは捻るようにしてタカシを見ている。
 その稚拙な行動がおかしかった。
 アナルパールが収まったままの尻をこちらに向けて、なにを保護しているつもりでいるのだろう。
 その姿に、ショウタがまだ子供なのだと自覚し、そしてタカシは最悪なことに、嗜虐心が増すのを感じた。
55 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 22:49:14.33 ID:Tukd11yn0
「来なさい、洗ってやろう」
 腕を半ば無理やり引かれたショウタは、体をよろめかせながらタカシの前へと戻ってきた。
 まずは座らせ頭を洗う。オーガニックのシャンプーは、確か母の趣味だ。
女中か誰かが補充を繰り返しているのだろう、減ることはない。
 掌で伸ばしたシャンプーは柔らかな花の匂いがした。
 頭が終われば後は次は体だ。
 タカシはこれと言って声を掛けることもなく、突然ショウタの臀部に手を伸ばしてそれを引き抜いた。
「あ……っ!」
 思わずと言った風に漏れた声は、初めて会った日の幼さの残る声だった。
しゃがれた声が元に戻りつつあるのかもしれない。
「痛かったか?」
 それについては、ショウタは黙ったままだ。余程悔しかったのだろう。
 耳まで赤くし小刻みに震えているところを見ると、相当に辛かったのかもしれない。
 少しだけ反省をし、タカシは幾分か優しげな手つきでその狭間を洗ったやった。
 残りはボディタオルでいいだろう。大雑把な自身を自覚していたが、ある程度は丁寧に触ってやったつもりだ。
 手錠と足錠は、ショウタの一挙手一投足に反応して、その都度耳障りな金属音を響かせる。
 これは失敗だったかもしれない。もっと頑丈で軽いものを用意させるべきだっただろう。
 そんなことを考えているうちに、ショウタの体はそれなりに綺麗になった。
56 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 22:50:42.21 ID:Tukd11yn0
「お湯に浸かってなさい」
 命じられると、意外にもショウタは大人しくバスタブに沈んだ。
渋々と言った様子ではあるが、それでも素直にタカシの命令を聞いている。
 自身の体を洗う最中、こっそりとショウタを盗み見れば、時折小さな頭が揺れ、
濡れた毛先から雫が滴るのが見とめられた。
 ショウタは体が小さい。
 骨格は華奢、尻も小ぶりで、手足も細い。花街に売り飛ばされてから暫くの間、
まともな食事はしていたのだろうか。もっと栄養のあるものを食べさせたほうがいいのかもしれない。
 ――馬鹿みたいだ。
 一瞬で頭を駆け巡った、まるで善人のような思考に自分自身を嘲笑した。
 稚い子供を閉じ込め好き勝手しているタカシに、娼館をあれこれと言える資格はないのだ。
 なにを急に善人ぶっているのだろう。
 タカシは善人ではない。どちらかと言えば悪人であることは間違いがないだろう。
 ――それならばいっそ。
 蛇口を捻り、シャワーを浴びる。熱いお湯が体中に泡を落としていった。
 落下する泡を視界の端に見遣りながら、タカシは前も隠さずに立った。
 自分を覆うようにして突如として伸びた巨大な影に、ショウタは一瞬遅れを取ったものの
すぐさまバスタブの隅へと移動したが、しかし所詮そこは風呂で、逃げられる場所などたかだか知れている。
 乱暴にバスタブに踏み込み逃げ惑う体を捉えると、湯で濡れた体はするりと逃げた。
 背後から近づき、手荒に細い腰へと腕を巻きつけると、獰猛な征服感が湧き上がるのを感じる。
57 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 22:53:39.52 ID:Tukd11yn0
「あ……っ!」ショウタが小さな声を上げた。
 男の猛った性器が尻を掠めたのだから、恐ろしくないはずがないだろう。
 バシャリバシャリと、まるで小船が荒波の上を滑るかのような音が浴室に響く。
 相変わらずショウタは言葉を発そうとはしなかったが、
手足の抵抗は少しずつではあるが激しくなっている。
 タカシも無言でショウタの体を捉えると、腕の力で華奢な背中を押さえつけて
身動きが取れぬ状態へと持ち込んだ。
 もとより手足は碌に動かすことができぬのだ、尻を片手で開くことなど容易い。
 手に取ったボディソープを肉と肉の狭間に垂らし塗りつけると、
そこはあっという間に口を開けて見せた。
「や、やめ……!」
 ここまできて漸くショウタが言葉を発した。
 肩越しに振り返ったショウタの顔は恐怖に満ちていて、だが罪悪感は少しも浮かばないのだから救いがない。
「犯すと言ったはずだ」
「や、やだ、やめて、怖い、やだ……!」
 涙に滲んだ声と、細い手足が抵抗を繰り返す。
 やだ、こわい、やだ。
 言葉は次第に悲鳴に変わり、そのうちすすり泣きに変わった。
 タカシは構わず尻の狭間に指を沿え、そして穴を探ると遠慮もなしにその中へと指先を進入させたのだった。
「やめ、やめて、怖い……! ねぇ、やめて……!!」
 食事にさえまともにありつけなかったためだろう、ショウタの抵抗はタカシにとっては
蚊を叩き落すことよりも簡単で、体力の消耗からか、暴挙の五分後には
ショウタはバスタブの縁へとくたりと体を預けていた。
 言葉では相変わらず抵抗を続けていたが、そんなものは抵抗のうちには入らない。
 赤く縁取られた入り口が、パクりと口を開けた。
 ヒクヒクと蠢くそれに、タカシは己の身がひどく高揚しているのを自覚すると、心の興奮が更に高まった。
58 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 22:56:29.84 ID:Tukd11yn0
「や、やだ……やだ、」
 小さな入り口に、性器を宛がう。弱々しい腕は、二度、三度と振られるが、
拘束された上での抵抗は、なんの意味もなさないようだった。
「やめて、やめ……、助けて……、たす……、」
 小さな掌はバスタブの縁を掴んでいる。抵抗をしようと一時的にそこへと預けていた腕は振り上げられるが、
しかしバランスを崩したショウタは腹を強か打ちつけた。
 ぐっ、と小さな呻き声が聞こえるが、タカシは構わず腰を固定し続ける。
 随分と乱暴なことをしている。
 その乱暴な行為に興奮するのは、ショウタが『貴族の少年』だったというラベルが張り付いているからか、
それとも彼がこんな状況でさ抵抗を忘れないためなのかは判らない。
 ショウタはなおも声を上げ続けた。
「やめて、や……、お父さん、助けて……!!」
 ショウタがそう叫んだ瞬間に、タカシの性器はショウタの中に沈んでいた。
 肉が抵抗をするかのように蠢く。
「あ、あ……っ……い、いたい、痛いぃ……!!」
 ひぃひぃと泣き声が交じった悲鳴が続き、渾身の力でバスタブの縁を握る彼の手は白くなり、
そして体は小刻みに震えている。
 汗かそれとも水蒸気が液体化したものかがショウタの肌に浮かんでは滑り落ち、
そしてそれは尻の合間へも流れていった。
 皮膚の腰骨が動き必死で抵抗の様子を見せるが、肝心の粘膜は本人の意志に逆らい飲み込むような動きを見せた。
 粘膜が卑猥に動き、タカシの性器を舐めるようにして蠢く。
59 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 22:58:33.44 ID:Tukd11yn0
「ぁ、あ、あ……!」
 中に肉を収めてから数分が経ち、そうするとタカシもショウタの変化を感じ取っていた。 
 体の力は抜け落ち、もう表面的には抵抗する様子は見られない。少しだけ腰を動かすと、
抵抗ばかりを発していた声には甘さを含んだものも多少ではあるが交じるようになっていった。
「ん、ぁ、」
「ショウタ」
 髪からの雫が伝い落ち、耳たぶの端に水滴を溜めていた。それを吸うようにしたあと甘噛みすると、
ショウタは「ぁ、ん」とあからさまな嬌声を上げて見せた。
「気持ちいいのか」
「ち、が、」
 絶望と羞恥の入り混じった顔が振り返る。
 ちがう、ちがうと小さく繰り返すが、体の方はそうではないようで、タカシが腰を前後させると
内側は更なる奥へと導くかのように、或いは強請るかのように蠢いた。
「あ、や、やだ、無理、こ、怖い、ねぇ、怖い……!」
「その声はなんだ」
 ショウタの状態を逐一告げてやると、ショウタは「いや、いや」と言いながらも
そのうち腰を自ら動かすようになった。
「卑猥な音がしているね。じゅぷじゅぷ言っている」
「や、やめて……! ぁあ! あ、やぁ、やめ、ろよ……! あん!」
「やめて欲しくなさそうだけど」
「ちが、違う……! やめ、やめろ……!」
 渾身の力で手を掛けたバスタブを押すが、しかしそれは結合を深くさせる役目を担うだけで、
エネルギーは逃げの方向には働かない。
「……馬鹿だな」
 思わずそう言うと、ショウタはキッと睨み、だがそれも僅か数十秒のことで、
表情は次第に溶けていった。
60 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 23:00:34.19 ID:Tukd11yn0
「あ、あ、駄目、駄目……!」
「ああ、イきそうか」
「なに、これ、なに……!」
「なにって?」
「や、やだ、なんか来る、怖い、こわい!!」
 はて、とタカシは腰を動かすのをやめた。
 『怖い』は先ほどから幾度となく発されていた言葉であるが、今度は様子が異なった。
 『なんか来る』とは一体なんのことだろう。
 一瞬の思考の末に導き出したのは、ショウタは射精をしたことがないのかもしれない、
と言う結論だった。
 なるほど、初物と言うのはなにも後ろのことだけではないようだ。
 その考えに至ればますます興が乗る。
「ぇ、あ、え……っ?」
 ますます腰の動きが激しくなったことに、ショウタは戸惑いを覚えているようだ。
 体を仰け反らせはじめたショウタの腰を掴むと、性器が起立しているのが見て取れ、
悪戯心の芽生えたタカシはそこを握ると手を動かししごいてやった。
「な、なに、なに、これ……!」
 放っておいた水の張られた洗面器には、戸惑いに目を白黒させるショウタの顔が
はっきりと映し出されている。
 前をしごかれ、尻は穿たれ、なにもかもが初めてのショウタはもう全てに追いつくことができず
どうすればいいのかが判らないようだ。
 もみくちゃにされながら、乱れる思考の中で、それでも抵抗するような言葉だけは只管紡ぎ続ける。
「や、やだ、こわい、待って、待って……!」
61 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 23:06:07.30 ID:Tukd11yn0
 射精感が高まり、タカシは腰を打ち付けるようにして動きを激しくしていった。
 パンパンパンという肉のぶつかり合う音が響き、
その合間に「あん」と言う甘い声が混じる。
 腰を押さえつけている親指が肉に食い込み、それが何故かとても卑猥に見えるが、
何故そう見えるのかは判らない。
「待って……っ! ぁん、あ!」
 タカシは腰を前後し続けた。
「感じているじゃないか。この淫乱」
「ちが、違う……!」
 か細い制止の声も聞いてやるはずもなく、タカシは酷い言葉を吐きながらショウタの一番いい場所を
執拗に擦りあげてやった。
「感じているんだろ?」
「ち、ちが、あ、ぁ、あん、あ、ひぃ!」
 違う違うといい続けるが、性器からはぬめった汁が滴り続けている。
「気持ちよさそうだな」
「違う、違うも、あっ」
 あ、あ、と短い声が続く。
 性器を擦りあげるペースを早めると、その嬌声も次第に高く、大きくなり、
そして気づけばショウタは自ら腰をうねらせていた。
「あ、もう、もう、だめ、だめぇ……っ!」
 やがてショウタは短い悲鳴を上げた絶頂を迎えた。
 思い切り吸い込んだ酸素が上手く肺にまで至らず、苦しそうだ。それと同時にタカシの掌は濡れ、
青臭い匂いが充満した。
 脱衣所へと続くガラスに水滴が大量に付着している。それは心なしかいつもより多く見えるのは
気のせいではないかもしれない。
62 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 23:07:49.42 ID:Tukd11yn0
「あ……っ……あ……っ」
 はぁはぁと背中を揺らしながら呼吸を整えるショウタから性器を抜き出すと、肉は執拗に纏わりつき、
まるでタカシが出て行くことを拒否するような仕草を見せる。
 ぽっかりと開いた穴はヒクヒクと動き、そしてやがて閉じていった。
「……あ……」
 力を失った体はバスタブにぐにゃりとひっかかり、タカシに対して文句のひとつさえ放つことができぬようだ。
 時折「あ」と短い声を上げ続けているが、しかし言葉と呼ぶには短すぎ、それはどちらかと言うと
呼吸の断片のようなものだった。
 ――あっけない。
 出してしまった後は、急激にテンションが下がりつまらなくなる。
 尻を庇うでもなく、ただ力なく壊れた人形のような格好をしているショウタにも、ただ「つまらない」という
感情しか浮かばなかった。射精した瞬間に、もうどうでもよくなったのだ。
 興が醒めると、その小さな体も汚物か何かのように直視したいものではなくなる。 
 放っておいたとしても、誰かしらが面倒をみるだろう。
 そう結論付けたタカシは、色んな体液で汚れたバスタブの栓を引き抜くと、
一人湯から上がり、シャワーを浴びたのちにはショウタを振り返ることなくさっさと浴室を出て行った。
 脱衣所でタカシが衣類を整えた頃になってもショウタは出てこない。
 だがそれを心配する情さえ、もうタカシには浮かばなかったのだ。
 娼館での生活を少しだけ心配したのは、おそらくたんなる『気の迷い』だろう。
 なにか言葉の使い方がおかしいような気もしたが、『気の迷い』と言う言葉は
タカシの胸には随分としっくりと馴染んだ。
 そう、気の迷いだ。
 ショウタを買ったのだって、同じこと。
 毎日ステーキでは飽きるから、たまには不味いものも食べてみたくなるのだ。
 ただそれだけだ。
 脱衣所を出ると、たまたま通りかかった下男にショウタを任せ、自分はさっさと自室に引き上げた。
 あの様子ではどうで逃げられまい。
 そんなことを考えながらタカシは階段を上って行ったのだった。
63 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2013/12/26(木) 23:08:21.72 ID:Tukd11yn0
きょうはここまで
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/27(金) 14:58:01.16 ID:7BdqP3Gyo
楽し●よ
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/27(金) 17:19:09.62 ID:lTaTPss60
66 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/01(水) 00:25:12.21 ID:rCHzOw5v0
あけましておめでとうございます
67 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/02(木) 01:21:07.88 ID:KYphqHHDO
おめでとう
68 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/07(火) 04:39:34.44 ID:L2g6CTEC0
今一番続きが楽しみなスレ
69 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:40:25.55 ID:3oMktgvd0
保守してくれる人thx
ちょっと私生活が忙しい感じがする…
更新が少しだけで申し訳ない
しかもショウタとの絡みがないという
すまん
70 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:42:58.46 ID:3oMktgvd0
 そのカフェは若い女性で溢れていた。
 緑がたくさん植えられている庭は、どこぞの国の御貴族様の庭を模したものらしく、
女性に人気である理由はその辺りにあるようだった。
 尤も、山も木もことごとく切り倒されている昨今の日本においては、
カフェに緑があるということ自体が珍しく、彼女たちがこの場へと惹かれる要因は
オシャレであること以前にあるのかもしれない。
 店のど真ん中に植わっているのは桜の木で、あの手の樹木ももう国内には数えるほどしかないことだろう。
 徹底した近代化が招いたのは緑の消失だ。それでも国策だというのだから致し方がない。
 戦争と大災害を想定した街づくり――、それは年老いた政治家たちが生み出した国策だったのだ。
 彼らはみな、半世紀ほど昔の青春時代を戦争一色に塗りつぶされていた。
 彼らはいざと言うとき、か弱い女子どもを丸ごとシェルターに避難させられるようにシェルターを作り、
若い命が散らぬよう、様々な対戦闘機設備を整えた。
 おかげで国土の殆どは鉄と油の匂いでまみれているが、これも国策と言うのなら仕方がない。
 そう、国策なのだから仕方がないのだ。
 鎖国前、日本は外国と戦争をした。
 おかげで人口の半数以上が死亡し、日本の人口は一時六千万人にまで減少したという。
今はなんとか立ち直っているが、それでもギリギリで一億人いるかいないか、といったところだ。
 こんな事態が二度と起こらぬよう、街は、いや辺鄙な村でさえ、この国は作り変えられたのである。
 しかしまぁ、人口が減少したといっても、百坪もない小さなカフェがこの賑わいだ。
 この女性たちはいったいどこから溢れてきたのだろうとタカシは考えつつ、
姉の背を前に高い声が溢れる庭を突っ切っていったのだった。
71 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:44:57.68 ID:3oMktgvd0
『こっちよ』
 姉は細い手でタカシの手を握り、引くようにして前を歩いている。
 その手は素手だ。白い手袋を彼女が嵌めていないのは珍しい。
 女性が安易に肌を露出するものではない、と言う考えは開国をしてからも根強く残っていて、
だから彼女はワンピースを身につけているときでも決して肘まで届く長い手袋を外さなかったのだ。
 一体どういう心境の変化があったのだろう。
 タカシは頭の片隅でそんなことを考えつつも、姉に手を引かれるまま、
関係者以外の立ち入りを禁じられているカフェのその二階へと足を踏み入れたのだった。
 この店は姉が出資しているらしく、彼女は美味いコーヒーが飲みたくなるとこうしてここを訪れるのだ。
『話ってなんだよ』
 タカシは額に浮かんだ汗をぬぐいながら尋ねる。
 二階は屋根裏部屋のような造りで、斜めに傾いた天井には窓が設けられていた。
 その向こうにはリニアモータートレインが走るチューブが宙に浮き、空の景観を汚している。
 今年の夏は暑い。猛暑だとかで、酷いところは気温が四九度を観測したらしい。たまらない。
『あのね……』
 勧められた椅子に座し、タカシはメタルボトルに入ったコーヒーを啜った。
『あの……』
 ミユキの口は、歯切れ悪く何度も『あの』と紡ぐ。
 だが、なかなか『あの』の続きをタカシに告げることができぬようだった。
72 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:46:26.94 ID:3oMktgvd0
『うん、なに』
 姉は溜息を吐き、それから観念したかのような顔で『子供は男の子ではないと困るんですって』と続けた。
『え?』
『女の子じゃ、困ると言われたの』
 ミユキの手は、その下腹部に添えられていた。
 なにか嫌な予感がして、タカシはそのマニキュアの施された爪を眺める。
 嫌な予感がなんなのかは判然としない。とにかく、不快――、
いや、不快であることとは様相の異なる、何かとてつもなく不気味ななにかが
そこに迫っているような気がしたのだ。
 よくよく見れば、姉の腹は膨れている。
 ああ、彼女は妊娠していたのだとタカシは思い出した。
『女の子だったの』
『……だから?』
 ミユキの眉はハの字に曲がり、それから言いづらそうに『人工授精にしてみては、って言われたの』と告げたのだ。
『は?』
『だから、この子、女の子だったの。だからね、この子を堕胎して、人工授精で――』
 姉が何を言っているのかが理解できず、タカシは眉間に深いシワを刻み付けた。
『ちょっと、ちょっと待ってくれ。なにを言っているのか……』
『ごめんなさい、タカシさんの言いたいことも判るの。でも、どうしても男の子ではないと駄目なのよ』
 判るわよね、とミユキは幼子を諭すように尋ねた。
 タカシは何故、自分がこんな話をされているのかが判らなかった。
 ミユキは憂い顔で、しかしもう覚悟を決めた顔でそこに佇んでいる。
 堕胎は、もう彼女の中では決定したことであるに違いない。
73 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:48:32.69 ID:3oMktgvd0
『ちょっと待ってくれ、だって――』
 姉がこれほどまでに冷酷であるはずがない。
いくら代議士の家に嫁ぎ男児を産まねばならぬと言っても、それはまた次に期待すればいいだけの話だ。
 今回腹に宿った子をわざわざ堕胎するというのは、おかしな話であろう。
『待って。待ってくれ。いくらなんでも堕ろすことはないだろう。だって、だって――』
 だって、折角宿った命なのだ。
『でも、確実に男の子が欲しいのよ。"ちゃんとした"男の子が』
『なに? どういう意味……、』
『駄目なの。私が男の子を産まないと』
『ミユキ……』
 椅子に座ったままのミユキの肩を掴もうとすれば、それを避けるかのように彼女は身を捩った。
『だから、ごめんなさい、タカシさん』
 唖然としたまま、タカシはミユキを見下ろした。
 俯いたまま、タカシと目を合せようとしない彼女は、見知らぬ女のように見えてしまう。
 彼女はこんなに冷酷なことをいえる女だっただろうか。いいや、そんなはずはない。
 何故なら彼女は――。
74 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:50:00.69 ID:3oMktgvd0
『なあ、考え直そう』
『無理よ』
『何故、だって? 男の子ならまた次に……』
『駄目なの、どうしても男の子がいいの。女の子なんて要らないわ。私はたくさん男の子を産まないと……』
 頑なになった様子で首を振るミユキに、タカシは閉口した。
 彼女は、こんな女ではなかったはずだ。
 タカシの愛した女は――。
『――!?』
 自身の頭を通り過ぎた言葉に、タカシはハッとする。
 今、タカシはなにを考えた? 愛した女? 姉を相手に何を考えているのだ。
 俯いたミユキのつむじを見た。子供の頃はタカシの方が背丈が小さくて、どんなに背伸びをしても
そこは見えなかったはずだ。今では簡単にそこは覗ける。
 いつからそうなった? いつから――。
『タカシさん、怒っているのは判るの。でも……』
 ミユキはやはり俯いている。
『お願い、一緒に病院に行ってくだらない?』
 何故そんなことをタカシに懇願するのだろう。
『堕胎には、』
 ミユキがゆっくりと顔を上げた。
『父親の同意が必要なのよ。だから、タカシさん、一緒に病院へ行ってくださらない?』
 ミユキの顔が持ち上がり、涙の溜まった瞳が露になる。
 父親? いったい誰が? 
『お願いよ』
 ミユキはもう一度言った。今度はタカシの目を見て。
 
75 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:51:10.16 ID:3oMktgvd0
 寝巻き用のロンTは湿っていた。
 真冬だというのにタカシは寝汗をかいていたようだ。おまけに襟ぐりは少しばかり延び、
その上シワが寄っている。眠っている間に酷く握り締めていたのだろう、
体全体はうっすらと汗をかいているのに、掌だけはサラリとしていた。
『目覚ましを解除します』
 頭上から降る声は無機質にそう告げて、カーテンは自動的に開かれた。
「……っ」
 窓から差し込む朝日は眩しい。強烈な光りに目を細め、
そしてタカシは粘ついた唾液を無理やり飲み込んだのだった。
 時刻は午前八時。休日に朝にしては少々早かったが、タカシには眠りなおそうという気持ちが起きなかった。
 ――また、気味の悪い夢を見た。
 この夢の所為で穏やかな眠りが台無しにされた。
 なんと気持ちの悪い夢だろう。生理的嫌悪感は吐き気までをも催させ、タカシは再び襟ぐりを握り締める。
 最悪の目覚めだ。
 欲求不満と言うわけではないだろう。性欲は満たされている自信があった。
 では何故姉のあんな夢をみたのだろう。
 行為に至っている夢ではないだけマシだろうか。
「参ったな……」
 額に浮かんだ汗を拭いながら、タカシはハァ、と吐息した。
76 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:52:03.96 ID:3oMktgvd0
 もうすぐ正月だというのに、万が一そんな不埒な夢を見てしまったら、姉の顔を直視できそうにない。
 いくらタカシが性根の捻じ曲がった男だとしても、近親相姦は頂けなかった。
 アダルトコンテンツにおいては妹モノだとか義理の姉だとか、背徳感を刺激するものは
いつの時代も人気があると聞くが、タカシはその手のジャンルにはとんと興味を抱けぬのだった。
 血を近くしくする者同士で行為に及ぶというのは気持ちが悪いだけだ。考えただけで身震いしそうになる。
そしてタカシはそのついでのように義理モノも嫌っている。
 義理だろうがなんだろうが、庇護すべき、或いは家族として接するべき相手に欲情するなど畜生のすることだ。
「そうはなりたくないな、流石に」
 だというのに、何故ミユキの気味悪い夢をみるのだろうか。
 無意識に姉の妊娠を心配しているのかもしれない。
 そう、代議士の家ならば男児が生まれたほうがいいに決まっている。
 ミユキの腹に宿っている子の性別を、タカシはまだ知らない。一番最初の夢では男の子だと言っていたが、
それはタカシの願望であり、実際はどうだかまだ判らないのだ。
「だからか……」
 きっと姉を心配しているのだ。だからあんな奇妙な夢を見るのだ。タカシはそう結論付けた。
 例えば姉が女児を産み落としたところで、タカシにはそれを変えてやることはできない。
 男児が生まれてくれと願ったところで、子の性別は受精段階で決まっており、のちのち願ったところで
未来は変えようがないのだ。
 タカシが心配しても詮無いことと充分に判っている。判っているが密かに心配することはやめられない。
 だからきっとあんな夢を見たに違いない。
「あほらしい」
 自分でも非生産的な思考に侵されすぎている自覚があったから、タカシは頭を掻き毟ると
全ての感情を洗い流すために部屋をでたのだった。
77 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:52:45.76 ID:3oMktgvd0
「お熱があるようなんです」
 タカシが階段を下っていくと、女の声がそう誰かに告げていた。
 声のボリュームは落とされていたが、何とはなしにその声が緊張していることだけは感じ取れる。
「どれくらいだ?」
 今度は男の声がそう尋ね返した。事務的に尋ねてはいるが、こちらの声も少しばかり硬かった。
「三十八度と少し。平熱はあまり高いほうではないようですから、少し心配で……」
「そうか……ご相談しよう。病院に行くべきだろうけれど、ウンと言ってくださるかどうか……」
「いいお返事をいただけると思えませんが。だから嫌だったんですよ、あんな乱暴な……。
なにかあったらどうするんですか」
 女の声は切羽詰っていて、誰かを責めるかのように――、タカシを責めていることは明白であるが、
そう吐き捨てた。
「やめなさい。私たちがご主人様に逆らうことは許されることではない。
これはそのご主人様のご意志なのだから従うしかないのだよ」
 二人の下働きの会話から推測するに、どうやらショウタは熱を出したようだった。
 片方は下男で、片方は女中であろう。
 女中はその後もタカシを責め、下男はタカシを擁護するような発言を繰り返していた。
 あれだけ無体をしたのだから、体調を崩すなと言うのが無理な話なのかもしれない。
 タカシは下りかけのまま途中で歩みを止めていた足を動かし、何食わぬ顔で階下へと進んでいった。
78 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:53:38.95 ID:3oMktgvd0
「おはよう」
 階段の前にいた二人ははっとした顔でタカシを見遣り、
それから掠れ声で「おはようございます」と短く挨拶をした。
「熱を出したのか」
「ええ、三十八度と少しなのですが」
 下男が言うと、タカシは考えるフリを一応は示してみせた。
 医者に連れて行きたくないわけではない。ただ、面倒であったから、自分で連れて行くのが嫌だったのだ。
「差し出がましいようですが、どうか、あの――、奴隷の少年に医療を受けさせてあげてください」
 女中は訴えるような眼差しでタカシを見つめ懇願してみせる。
 下男が制止に入るが、彼女は続けた。
「あの、もし、もしなにかあったら――、その、死んだりしたら、家の名を汚すことになりかねません。
お医者様は私が呼びますし、治療の最中は傍に居ります。ですから――、」
「判った」
 タカシの手を煩わすことがないのなら構わない。
 どこまでも冷酷で無責任である自分を自覚しているが、タカシはただただショウタの世話を焼くことが
面倒だったのだ。誰かが手を焼くのならそれはそれで楽でいい。
 タカシは頷きつつ、きょとんと間抜け面を晒す女中へと「その件は君に任せよう」と事務的に告げた。
社の中で使うような冷ややかな言葉に、女中は暫しの間そうしていたが、そののちにはハッとなり
「判りました」とホッとした顔つきで返事を返したのである。
79 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:56:10.06 ID:3oMktgvd0
 とにかくタカシは、ショウタについて手ずからあれこれと面倒を焼くことをしたくなかったのだ。
 そこまで面倒に思うくせに、乱暴を働くことについては未だ楽しみに思う気持ちがある。
 まるでエラーを起こしたアンドロイドだ。自社製品ではその手のリコールは一度としてなかったが、
他社製品には見られるアンドロイドの問題行動によく似ていた。
 自発的な思考をAIが行い、本来のプログラミングされた思考との間に齟齬が生じ、
上手く処理がなされずに極端から極端に走るという現象がそれだ。
 アンドロイドが思考しないのは遠い昔のこと、今では殆どの場合、彼らはパターンにパターンを重ね、
独自の、人間のそれに非常に近い『考え』を持つ。それが問題なのだ。
 例えば、母型アンドロイドが人間の子供を保護という名目で束縛をする『過保護』という行動がある。
 その一方で、保護だけを熱心に行いそのほかの母としての役目、
例えば食事の支度だとか洗濯には一切の手をつけぬネグレクトが見られるのだという。
 本来の家事を行い子供の面倒をよくみるバランスのよいプログラミングの上に、
アンドロイド自身が思考し、子に愛情を注ぐ行動に比重がよってしまったが故の行動だ。
 彼らの思考はイコール感情ではない。だからこそ起きてしまう事故なのだろう。
80 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:57:02.98 ID:3oMktgvd0
 そしてタカシはショウタに性欲を抱いている。それもかなり暴力的で熱烈なそれを。
 だが、それ以外についてショウタに対する興味は殆ど抱けないのだ。
 彼に対する感情は、非常にアンバランスで、まるでアンドロイドのエラー、それによく似ている。
 性欲と感情が必ずしも結びつくとは限らないのは、悲しいかな男の性ともいえよう。
しかし、感情をぶつけられ、体を繋いだとなればほんの少しでもそれらしい――、
例えばもう少し優しくしてやろうだとか、丁寧に扱ってやろうだとか、
つまりショウタに対してもう少し思いやりのある行動をとってもよさそうなものである。
 タカシにはそれが一切ない。思い浮かばない。
 ただただショウタを虐めたおしていたぶりたいのだ。
 頭の中でショウタの顔を思い浮かばれば、そのうち彼の顔は掻き消えそれはいつの間にか
裸体を晒し泣いている姿に変わる始末である。
 自分自身の内的なバランスが崩れていることを、タカシは自覚せざるを得なかった。
「いた……」
 頭が痛むような気がする。
 どうやら調子が悪いのは精神的なバランスだけではないようだ。
「坊ちゃま?」
 下男が気遣わしげにタカシを見た。
「いや……、」なんでもない、と手を振り、それから「大丈夫だ」と締めくくる。
 誰かと会話することが、今はとても面倒だ。
 自室に戻ると言い残し、タカシは再び下りてきた階段を上って行った。
81 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:58:35.08 ID:3oMktgvd0
 なんとも気持ちの悪い現状に、タカシは自分なりに頭を悩ませていた。
 そもそも自分は秩序を乱す人間ではないはずだ。
 なにがきっかけでバランスを崩しているのかが、自分自身でも判りかねている。
 姉の夢が原因だろうか。
 そうは思うが、彼女の安否を確認することさえできないのは、
彼女が多忙であることを充分に承知しているからだ。
 姉の夫にはまだ幼いきょうだいがたくさん居て、彼女は腹で子を養いつつ、
その怪獣のようなきょうだいの世話をも焼いていると人づてに聞いた。
 おまけに敷地内には夫と縁の近い者たちが住まっており、事実上同居状態のようなのだ。
 代議士の一族の考えることはタカシにはよく判らぬが、しかしその状況を聞いただけで、
一族内で『新参者』である姉が身重ながらにバタバタと動き回り、
生家なぞ気に回している余裕がないことは馬鹿でも判る。
 弟のことなどで気を煩わせてはいけない。
 タカシはそんな風に思っていた。
 姉を思う気持ちは多分にある。しかしショウタにはそれがない。
 ショウタにその感情の欠片でも与えてやれればいいのだが――、生憎それらしい感情を抱けない自分がいて、
タカシはそれが少しばかり恐ろしかった。
 タカシも薄々気づいてはいた。
 単にショウタが元貴族であると言う嫌悪感意外にも、なにかしらの感情をショウタに抱いているのだ。
 その正体がさっぱり判らない。
 ただ、ショウタに対してなんの感情をも抱いていないと無理に思いたがる程の内容であることは明らかだ。
「……ってぇ……」
 こめかみを手首の内側で押さえる。自分のひんやりした手が、少しだけ頭痛を和らげた気がした。
 頭の片隅にモヤがかかったように、感情のその正体――、これは早く突き止める必要がありそうだ。
 早くなんとかしなくてはならない。
 タカシは深く嘆息すると、ベッドへ倒れこんだのだった。
82 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/01/14(火) 00:59:48.13 ID:3oMktgvd0
今日はここまで
83 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/20(月) 23:30:23.39 ID:854GpZtR0
エロを求めるショタコンの嗚咽が聞こえる
84 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/21(火) 22:55:06.98 ID:za/cttQEo
待って●るよ
85 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/04(火) 00:45:15.62 ID:EPHIzqgDO
続きはまだでござるか
86 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/04(火) 07:44:28.34 ID:lUpNODtuO
ずっと 待っ⚫︎いるよ
87 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/04(火) 21:47:43.11 ID:UTdf0pjo0
この名前は・・・ いつものあなたか
嗚咽上げながら楽しみにしてる
88 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:04:13.79 ID:D6CzLVIy0
こんばんは
 ト リ ッ プ が 思 い 出 せ ず に 困 っ て い ま し た
そんなわけで保守ありがとうございます
89 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:07:18.22 ID:D6CzLVIy0
 医者が渋面してショウタの体を観察していた。
 奴隷を診るには所有者の立会いが必要だとかで、結局のところ、タカシはこの場に立ち会うに至った。
 青あざや擦り傷、その他にも酷い怪我を負っているショウタは、医者の前でも不貞腐れた顔を作り
一切口を開こうとはせず、また愛想を振りまくこともしなかった。奴隷失格もいいところである。
「限度と言うものをご存知ですかな」
 年老いた医者は、ショウタの態度についてなひとつ苦言を漏らすことはなく、
その代わりタカシへの説教は幾度も口にしていた。
「限度があるのですよ、限度がね」 
 聴診器などの医療器具をしまいながら、医者はタカシに向かってはっきりとそう発言した。
「楽しむつもりなら、限度を知っていただかないと。使い捨ての奴隷ならいいですが、
長く、つまり彼が大人になるまでくらいは、と思っているのならそれなりに手加減しませんと」
 殺すつもりはないのでしょう、と問われれば、タカシは「まぁ」と返事するより他はない。
 殺したいわけではない。死んでほしいわけではない。
 長く楽しむつもりなら、なるほど、それなりの手加減は必要だというのは頷ける。
「鞭は闇雲に振るえばいいというものではない。醜い傷が残ってそれを見るたびに萎えては
飼って置く意味もなくなるというものでしょう」
 それはそれで別に構わないのだが、傷跡が発熱しているとなれば話は別だった。
「頭は踏みつけてはいけません。尻に大きすぎる異物を突っ込むのも頂けない。
全く、愛玩用なのにこれほどの扱いを受けている奴隷を私は始めて見た。
殺さないのならそれなりの慈悲を」
 巨大ながま口のようなバッグを閉じると、医者はタカシを見上げ、「暫く虐待行為は禁止」と
命令口調で言ったのだった。
90 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:09:03.99 ID:D6CzLVIy0
「さぁ、地下に戻りましょう」
 女中はショウタの手を引くと彼を立ち上がらせた。
 塗り薬をふんだんに塗りたくられたショウタは全身が包帯だらけだ。
流石にこの体に無体をする気にはなれず、タカシはされるがままの状態であるショウタを見送った。
 女中に手を引かれて歩く後姿は幼い。
女性で、身長が一六〇に満たぬであろう彼女よりも更に小柄で、そして痩せている。
 殴る蹴るの暴行を加えることは楽しいが、それを行うためには彼の体力を温存させることも必要だと、
タカシは時々忘れかけてしまう。本当に彼のことを性欲を発散するための道具――、
肉だとしか思っていない自分自身に少々引いてしまう。
「あ……っ!」
 それは突然だった。
 女中の声が響いたかと思えば、突然タカシに凝視されていたその小さな背中が崩れ落ちたのだ。
 ショウタは木目の床へとぺたりと座り込み、そして体の全てをそこへと密着させていた。
 倒れたのだ、と気づくまでに数秒を要した。
 タカシがそう認識した時には下男が脇をすり抜け、女中が「ショウタ様」と叫んでいた。
「ショウタ様!」
 女性特有のキンとした声が鼓膜を揺さぶり、しかしタカシは動くこともできずにその場に立ち尽くし、
ただその様子を窺うしかない。
 小さな手が左右に振られ、大丈夫だと訴えているようであったが、
タカシから見てもその姿が平気であるようには到底思えぬほどに非力で緩慢な動きであった。
91 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:11:18.16 ID:D6CzLVIy0
 女中がしきりにショウタを呼び、そしてその合間で一瞬だけタカシを振り返ると睨んで見せる。
 ――それは一瞬のことで、当事者でなければ気づかぬほどの短時間であったが、
タカシは確かに彼女が自身に向けて、侮蔑と軽蔑、そして嫌悪感を投げ掛けたことを自覚した。
 雇われの身である彼女は何某かの文句を言うことこそなかったが、
それでもタカシは自分に向けられたその突き刺さるような思念には、反省という言葉を思い起こさせた。 
 やりすぎたのは判っている。また、まだ未熟な体に思い切り無体を働いたことも。
 だが彼は奴隷だ。それも元貴族の。
 下手したら一晩で殺してしまう輩もいるのだから、タカシの扱いはまだ丁寧なもので、
それに金を出したのは自分自身なのだから責められる言われはない。
 ショウタはタカシのオモチャで、だから好きなように扱っても誰にも責められる言われはなく――。
 頭の中を言い訳が駆け巡る。幾度も同じ言い訳が頭を駆け巡っていく。
「ショウタ様……!」
「……ぶ……から」
 ショウタはしきりに大丈夫だから、と繰り返すが、医者が言っていたように
安静にしている必要がありそうなのは確かである。
 ショウタはタカシのオモチャだ。オモチャ以外のなにものでもない。
 だが。
92 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:12:27.10 ID:D6CzLVIy0
 言い訳が駆け巡るということは逃げを、或いは許しを請いたがっていることだと
タカシはとうとうその事実を認めた。
 ええいままよ、とタカシはショウタへと近寄ると、その細っこい体を見下ろしそしてその様子を窺った。
 包帯を巻いた腕も、足も細い。やたらと、細い。
 ――少年だからか、それともタカシのやる餌を食べなかった所為か、それとも元来細身であるのか。
 そんなどうでもいい話がぐるぐると周回し、今はそんなことをしている場合ではないはずだと
もう一人の自分が叱咤した。
 女中はタカシの存在を無視したまま震える声でショウタを呼んでいる。
 彼女が仕えるのはタカシであってこの奴隷ではないはずなのだが。
「私が」タカシは乾いた唇を舐め、やったのことでそう搾り出した。
「はい?」
 下男と女中の視線が突き刺さる。
 その視線に気おされ、タカシはやっとのことで「私が連れて行く」と言ったのだった。
93 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:14:52.06 ID:D6CzLVIy0
 ショウタは身じろぎさえせず、体を緊張させたまま、タカシの腕に収まっていた。
 抱きかかえて歩くのは癪だったので、まるで荷物かなにかのように小脇に抱えて歩く。
 一二の部屋から下る階段では、危うくバランスを崩して彼を落としかけたが、
それでもショウタは悲鳴をあげるでも抗議の声を上げるでもなかった。余程調子が悪いのかもしれない。
 地下へとたどり着けば、そこは相変わらずの打ちっぱなしのコンクリでベッドさえない。
 入り口のあたりに置かれた例の桐箱の上へと取り敢えずは下ろしてみるが、さてどうしたものかと
考えあぐねていた。
 一々ベッドを用意してやるのも嫌だ。
とはいえ、体調の悪いショウタを布団も毛布もないコンクリの上へと放置することは流石に憚られる。
 ショウタは相変わらず俯いており、体調の悪さが伺い知れた。
 どうすべきなのだろうか。奴隷の身分に相応しい態度を取るならば『何も用意しない』と言う選択が
最も正しいものに思われた。
 だが、それでは彼を長く楽しむことが難しくなってしまう。
 だが、なにか用意してやることもタカシの意に反するのだから困ったものである。
 第一それは俺のキャラではない、とわけのわからないことを考えているうちに、
ショウタは桐箱の上で力なくその姿勢を崩して横たわった。
 ――これは本格的に調子が悪いのかもしれない。
「おい、」
 パシッと乾いた音が、地下一階のコンクリに反響する。
 一瞬なにが起こったのかよく判らなかったが、どうやらタカシはその手を払いのけられたらしい。
 どこにそんな体力が残っていたのだろうか、桐箱の上に身を横たえながらも、
ショウタは生意気な視線をタカシに向け、嫌悪感と侮蔑の念を必死で示していた。
94 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:16:30.22 ID:D6CzLVIy0
「触るな……!」
 僅かに鼻に掛かった声は風邪の所為だろう。
 潤んだ瞳はタカシを睨んでいるが、しかしいつもほどに力はない。
 ああ、なんだ、まだまだ余裕はあるではないか。
 そんな風に思ってしまう自分は鬼畜に違いないとタカシは考えた。
「この期に及んで抵抗か」
「……っ!」
 横たわったままの体の、その背中を足で踏みつける。
小さな背中が軋むのを感じたが、タカシは構わずその背を何度も踏んだ。
「どうした、声を上げればいいだろ」
 強情にもショウタは口を引き結び、その痛みに耐えているようだった。
 潤んだ瞳が更に水を湛えるほどにそれを繰り返すが、しかしショウタは痛いの『い』の字さえ発することはない。
 なんて強情で、なんて生意気で、なんて、なんて――、楽しいのだろう。
 己の歪んだ癖を十二分に確認しながら、タカシは痩せた腕を掴んで、背中側に捻り上げてやる。
「ぃたい……っ!!」
 ショウタは漸く声を上げた。そうだ、この声を聞きたかったのだ。
 悲鳴を、泣き声を。一度堰を切ってしまった痛みに対する訴えは、もう我慢することはできないのだろう、
ショウタはか細くしゃがれた声で『痛い、痛い』と繰り返した。
 もう我慢などできない。
95 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:19:32.67 ID:D6CzLVIy0
以下エロパート注意


 てきとうにローションを塗りつけた指を、乱暴に尻へと宛がった。
 ショウタはその身に降りかかろうとしていることをいち早く察すると、
手負いの獣のようによろめきつつ、無様に桐箱の上を這い回った。
 逃がさないというように、タカシはその腰を思い切り引っ張ると有無を言わせず固定した。
 弱々しい動きを片手で抑えることは容易く、ショウタはあっという間に胸と桐箱を密着させる形に至った。
 やめろとも怖いとも言わず、ただショウタは折り曲げられた腕を伸ばそうと苦心しているが、
しかし大の大人の手で押さえられては全く抵抗ができず、ただただ芋虫のように上半身を蠢かせるしかない。
 ショウタは歯を食いしばり抵抗を続けた。
 タカシは乱暴に弄くり倒していた尻から指を抜き去ると、己の勃起したそれをその穴に宛がった。
「ひ……ッ!」
 狭い穴に、肉が吸い込まれていった。発熱の為かそこはやたらと熱くてそして潤んでいる。
 尻が痙攣している。抵抗しようと動かされる腕は宙を彷徨いそしてぱたりと力なく崩れ落ちる。
 肉体からは抵抗らしい抵抗は見られないが、その顔だけはタカシへの嫌悪がにじみ出ていた。
それだけで、ねじ伏せた甲斐があったというものだ。
「ひ、ぃっ」
 穴の入り口は赤く色づいている。細い声が「痛い」と告げるがタカシは構わずに腰を進めた。
身勝手な行いは通常のタカシであればあり得ないことであるが、しかし相手は奴隷だ。
ならば何をしても構わない。
 折り曲げられた体の隙間から手を差し込むと、タカシはショウタの性器を探った。
 それは見事に勃起し、雫をたらしていた。
96 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:29:25.93 ID:D6CzLVIy0
「なんだ……」
 呼吸の合間に嘲笑するようにそういうと、ショウタは真っ赤に染まった目でタカシを睨み、
そして羞恥のためか俯いた。
「淫乱」
 そう告げてやると、ショウタの呻き声が止まった。
 おや、と様子を窺えっていれば、そのうちかみ殺した呼吸は次第に抑えきれなくなったのか僅かに漏れ始め、
そしてそれらは嗚咽に変わっていった。
 どうやらショウタのプライドを木っ端微塵に砕いていしまったようだ。
 前回同じ台詞を吐いたはずだが、そのときの彼は「違う」と言い張ったはずだ。
熱が出て気が弱くなっているのかもしれない。泣き声がタカシの嗜虐心にまた火をつけると知ってか知らずか
ショウタは声を殺して泣いた。
 だがそれも時間の経過とともに鳴き声に変わり、そして喘ぎ声に取って代わることをタカシは知っている。
 ――案の定、暫く攻めたてていれば、ショウタは甘い声を漏らし始め、
その上器用に尻を動かし始めたのだ。
 嗚咽しながら「ぁん」と喘ぐという芸当をショウタは見せはじめ、
 淫乱と何度も何度も罵り倒したが、その声ももう碌に聞こえないのか、
仕舞にショウタは「もっと」とねだり始めた。
「駄目……あ、ぁ……! や、お尻、変……っ!
ぁん、あ……っ、ひっ……駄目、おかしい、おかしいよぅ……」
「感じてるんだろ?」
 タカシの声も耳に入らないのか、今では腰を自ら振っている。
 呆れるな、とタカシはその痴態を鼻で笑う。
 タカシが試しに、と一切の動きを止めてみれば、朦朧としたショウタはなにも考えることができないらしく、
ただただ快感を貪るように尻と足を動かし自ら挿入を促していく。
 正気に戻れば憤死モノだろうが、しかし今のショウタは「駄目」といいつつも一人での尻をうごかし、
ただ馬鹿のように喘ぐことしかできない。卑猥な音が尻から漏れ、その音にさえ感じるかのように
ショウタの喘ぎはどんどん大きくなっていく。
97 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:30:19.14 ID:D6CzLVIy0
「あ、あ、キモチイ、気持ちいいよ……ぁ、あ、」
 小ぶりな尻が前後する。女のようにみっちりとした肉のあるそれではなく、腰を屈めれば骨の形がわかるそれは
しかしタカシの目には卑猥に映った。前後する尻とその穴はジュプジュプといやらしい音を立て、
そしてそれに呼応するようにショウタは喘いだ。
「ぁ……あ、お尻、と、とけ、る……っ」
 そう呟くようにショウタが言った瞬間、タカシは猛スピードで腰を動かした。
 ショウタは「ぁ」とも「ぉ」ともつかぬ謎の喘ぎ声を上げ、そしてタカシが射精するころには壊れたように
「あ、あ、あ、あ、」と繰り返すだけになった。
 タカシが腰を引いても、穴は引きこむように、出て行くことを拒むように締め上げる。
熱く熟れたそこは性器そのもので、タカシはその穴を只管楽しんだ。
 頭でもおかしくなったようにショウタは喘ぎ続き、そして何度も射精した。
「ぁ、あ、あ、……あ、ん、あ、あっ」
 腰の動きが早まる。あと少しだ。
「ぁ……!!」
 ショウタがいくと同時に、タカシもその穴へと射精した。
98 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:31:41.40 ID:D6CzLVIy0
 汚れた体を桐箱に預け、ショウタは脱力していた。
 肩甲骨がゆれ、そして両足もブルブルと痙攣している。絶頂の余韻に浸ったままの体は、
穴から零れ落ちる精液に構う様子もないようだ。
 はぁはぁという呼吸が響き、それがどちらのものなのか判らなかった。
 熱がまた上がったかもしれない。真っ赤になった顔は、やはり汚れている。
貴族のプライドを完全に踏みにじってやったような、深い満足感で心が満たされる。
 真っ赤な頬に手を伸ばすと、やはりそこは熱かった。
 ふいに、足音が響いた。
 それから、何かを落下させる音。
「なに……」
 下男であった。
 衣類だの毛布だのをまとめて運び込もうとやってきたのだろう、
しかし彼はその手に抱いたもの全てを床へと落下させ、そして青ざめた顔でタカシを見ていた。
 いや、その視線はタカシへと送られるよりも、ショウタに向かっていた。
「なにをなさっているんです……!!」
 激怒、憤怒、つまりは怒りに染まった声がそう叫んだ。
 その怒声にショウタはぴくりと身じろぎし、そして億劫そうに顔を持ち上げる。
 タカシのショウタへと伸ばされた手は――、あろうことか、下男の手によって叩き落とされた。
「おい……」
 下男ごときがタカシの手を払い落とした事実が不愉快であった。
 男は持ち込んだタオルでショウタの体を清め、そして地を這うような声で「お医者様の言葉を忘れましたか」と
タカシを責めた。
99 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:32:49.46 ID:D6CzLVIy0
 下男に責められる言われはない。ショウタは、タカシが金で買ってきた『モノ』だ。
好きに扱ってもいいはずである。
 手を伸ばし、奴隷に触れようとする。だが下男はさせるかと言わんばかりに自分の身を盾にしてショウタを庇った。
「お前……ッ」
 タカシは強引に下男の肩を引っ掴んだ。
 みしりと軋むような音がする。それでも下男はその場をどかず、タカシを見上げた。
「どけ!」
「どきません!!」
 強情にも下男はショウタを庇い、そして睨んでいる。
 この家に召抱えられている人間とも思えぬ行動だ。
 タカシは激昂している自分を自覚しつつ、その腕を振り上げた。
 それは、タカシのオモチャだ。タカシが買ってきたオモチャのはずだ。
 オモチャをどう扱おうがタカシの自由のはずだ――、
「動かないでください! 触らないで!」
 下男はそう叫んだ。
「……ッ」
 タカシは硬直した。
 振り上げられた腕はその形で止まり、踏み出そうとした足も床へと張り付いたままだ。
 普段は従順な下男が反発した所為か、或いは睨みつけた所為か、タカシは一歩も動くことができなかった。
 畏怖しているわけではない。従っているわけではない。
 ただ、動けなかったのだ。なにか呪縛のようなものが体中に絡みつき、それはタカシを硬直させた。
100 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:33:56.00 ID:D6CzLVIy0
「貴方はおかしい……!」
 俯き表情は見ない。だが下男は小刻みに震えながら、絞り出した声でタカシの異常性をはっきりと指摘した。
「狂っている……!!」
 たっぷり十秒は間が開いただろうか。互いに距離を保ったまま、暫しの静寂が地下室を満たしていた。
 肩を震わせていた下男は、突如タカシに背を向けたと思えば、毛布で手際よくショウタを包みだし、
そして自らの腕にそれを抱いた。
 首から上だけを出した状態で毛布に包まるショウタの顔は、死体のようだ。下男は心配そうにショウタを見つめ、
それが終わると地上へと向かうべく足を踏み出した。
 地下に、足音が反響した。下男が歩くごとに毛布の端がゆらゆらとゆれ、タカシはその動きに酔いそうになる。
地下室の入り口まで歩いた彼はピタリと歩みを止めた。
「もう年末です……ご自分のお部屋の掃除はご自分でお願いします」
 先ほどとは打って変わった穏やかな声がそう告げる。
 その瞬間に、タカシは振り上げられた腕をゆっくりと下ろしたのだ。
 手を上げていたことさえ忘れていた――、タカシは消え行く二人の背中を見送ると、
溜息を吐きそして汚れた桐箱の上へと腰を落ち着けたのだ。
101 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:35:10.85 ID:D6CzLVIy0
 指摘されるまでもない。近頃突如として芽吹いた強い嗜虐性は留まることを知らず、
その獣がひとたび目を覚ませば、タカシはもうその欲求をコントロールすることができずにいる自身を自覚していた。
 もとよりそのような性質は持ち合わせていたのだろう、しかし近頃のタカシはあまりにもおかしい。
 それに苦しむことさえなく、『ショウタは元貴族の奴隷なのだ』という言い訳のもと、
彼を躊躇なく犯す自分のこともよく判らなかった。
 そしてそれに罪悪感を覚えない自分自身を至極冷静に観察できる自分も居る。
 行き過ぎている自分の異常性を認めながらも、だからなんだという風に、何ひとつ反省することができない。
 もっとこう、なにかしらせめぎあうものがあってもおかしくはないはずだ。
 タカシは汚れた手で髪をかき乱した。
 そう、これも『悩んでいる体』を自分自身に向かってアピールしているだけで、
タカシ自身は何も悩んでいない。
 自分はこんな不気味な生き物だっただろうか。
 どうも調子が悪い。
 タカシは立ち上がると冷ややかに地下室を観察し、
それに飽きると上階へと向かうべく階段を上りだしたのだった。
102 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:38:50.63 ID:D6CzLVIy0
 大掃除と言うものは概して楽しい作業ではない。
 一年分の汚れを掻き出し、新年に備える。
 寝るためだけに帰っている自室は、殆ど使われていないくせに埃はあちらこちらから姿を現した。
「くそ、なんだこれ……」
 絡みきったコードの束に、埃を被った記憶媒体、それに無造作に本棚に置かれたフィルム型パソコンは
随分と昔に廃れたものだ。
 去年もこうして大掃除を行ったはずだが、その様子がどうであったのかタカシはまるで覚えていないし、
そもそも去年も片付けたはずだというのに何故こんな風に既に化石と化した電子機器が自室にあるのかが判らなかった。
 要らないものは捨てる。ただそれだけの作業がどうにも難しい。
 とりわけ本棚の中身は酷いもので、もうとっくに電子書籍で入手したものまでが一冊どころか
二、三冊重複している場合もあった。
 まとめて捨てようと本棚に手をかけ、不要なものをどんどん抜き出していく。
 と、タカシは手を止めた。
 分厚い『AIの基本構造――思考とは何か 第十版』なる本の横に添えられるようにして置かれていたのは
アルバムだった。
 中身は何の変哲もない、ごく普通のアルバムだ。
 母が居て、父が居て、祖父が居て、そしてミユキがいた。二人で写っているもの、家族全員で写っているもの。
 そこには人間らしい微笑を浮かべる自身が居て、不思議なものを見ているような気分になった。
 近頃、こんな風に普通の人間のように微笑んだだろうか。
 学生時代のタカシは、ダサいことこの上ないシャツとニットベストで微笑みながら姉と一緒に写真へと収まっている。
 懐かしかった。この頃、この国は漸く開国された状況に慣れ始めたのだ。
 日傘を盛って少しだけ首を傾げた姉の顔に、タカシは指先で触れた。
 ミユキは元気だろうか。近頃はメールでさえ届かなくなった。
 あの人は、元気だろうか――。
 もう一度写真を指先でなぞると、姉が微笑んだような錯覚を覚えた。
103 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:40:29.48 ID:D6CzLVIy0
『タカシさん』
 声が耳に木霊する。そう、鈴のような声をした女性だった。
『このお洋服、おかしくないかしら?』
 服装にとても気を使う人だった。
『もう、それじゃあ判らないわ。どれでもいいのね、男の人って』
 困った顔でさえ、美しい人だったのだ。
 会いたいと思う。姉の腹の子も心配だ――、男の子であればいいのだが。
 代議士の家に嫁いだ以上、望まれるのは男児だ。女児とて可愛いものであろうが、
政界で生きるにはやはり男の方が有利であることは間違いない。
 他の職業なら兎も角として、やはり政治家は男だ。
 タカシにはどうしてやることもできない問題であるが、できることなら男児を、と望んでしまう。
 優しい姉が苦しむ姿を弟としては見たくはないものだ。
「坊ちゃま」
 と、扉の向こうからノックとともにタカシを呼ぶ声がした。
 下男だ。
「……」
 すぐに返事をしてやるのは癪だ。下男は雇われている身でありながら、タカシに背いたのだ。
本来すぐに解雇してもいいところを、タカシにその意思がないことに感謝してもらいたいくらいである。
「坊ちゃま、すみません」
 再びのノックにタカシは顔を顰めた。
 アルバムを手にしたまま、扉に向かう。
「なんだ」
 扉越しに返事すると、タカシは耳をそばだてた。
「あの、お話があります」
 タカシはこれ見よがしに溜息を吐くと扉を十センチほど開けた。
どうせこのまま意地を張って開けずに居ても、下男は扉の前に居座り続けることだろう。
104 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:42:05.28 ID:D6CzLVIy0
「なんだ」
 タカシは下男の顔を見遣り――、そして口をつぐんだ。
 彼の頬は赤くはれ上がっていた。
 慌てて扉を最大限に開けると、「それはどうした」と問う。
「ああ、これは大したことでは……」
「いや、拙いだろう。どうしたんだ」
 ここは彼の職場だ。怪我をしたとなれば雇い主であるタカシは病院へと連れて行く義務が発生するのだ。
「……少年に、少し蹴られまして。いえ、あの、わざとではないんです。
意識を取り戻した直後のことでしたので、私を坊ちゃまと勘違いして抵抗されたのでしょう。それで……」
 なるほど、事故と言うことらしい。
「あの、どうか、どうか少年を叱りつけたりはなさらないで下さい。私の不注意でもありますから」
「それはどうでもいいが、痛むか?」
「少し痛みますが平気です。それより、先ほどのご無礼をお詫びに参りました」
 頬を赤くした下男が深々と頭を下げた。
「やめろ、お前は悪くはない」
 ただ、自分が少しおかしいだけなのだ。
 原因不明の、常軌を逸した欲求に囚われる。
 ひとたびスイッチが入れば、もう止まらないし止められないのだ。
105 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:43:25.73 ID:D6CzLVIy0
 タカシはまた髪をかき乱した。そしてはっとした。
 また『自身の行動に困惑している体』を自分自身へと向かって示している。
 何のためにそんなことをするのか判らない。
「坊ちゃま……?」
「いや、なんでもない。近頃は私の行動も行き過ぎている。お前が私をああいいたくなる気持ちも判る」
「坊ちゃま」
 下男は視線を泳がせ、それからまた頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした」
「いや、いい。それよりそこ、冷やせよ」
 はい、と言う返事を待たずに、タカシは扉を閉じた。
 タカシは意味の判らないわだかまりが腹に巣くうのを感じていた。
 一体なにが自分の中で起きているのかが判らない。
 下男の頬の怪我は心配できる。遠くはなれて暮す姉のことも。
 だというのに何故ショウタに対してのみあそこまで残酷で無慈悲になれるのか自分でも理解できなかった。
 奥歯をきつく噛み締める。
 するとこめかみにギュッとした痛みが駆け抜けていった。
 近頃の頭痛の原因はこれかもしれない。
 タカシはアルバムをベッドの上へと放り投げると、自分自身も横になったのだった。
106 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/05(水) 01:43:52.39 ID:D6CzLVIy0
今日はここまで
107 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/05(水) 14:54:03.49 ID:lgwH2KSGo
純文学よりの官能小説を読んでいるみたいだ
近未来なのにレトロ調な雰囲気も良いよ

こういうものがSS速報で読めるとは思わなかった
108 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 14:48:52.63 ID:djWGIOPDO

毎回楽しみにしてるよ
109 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/06(木) 19:58:57.07 ID:PwUBG+Kd0

続き待ってる
110 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/18(火) 00:33:38.11 ID:7qxHavWD0
保守とか感想とかthx

短い
111 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/18(火) 00:35:18.45 ID:7qxHavWD0
 タカシは庭に立っていた。
 やはり庭は部分的に奇妙で、これが夢と気づくのは容易かった。
 夢と気づいても足が動かぬのは、目の前に展開された光景があまりにも不可思議であったからだ。
 ミユキが庭を駆けていた。少年と一緒に、だ。
 真夏の庭は太陽が照りつけ快適とは言いがたい。
 額に浮かんだ汗を拭いながら、タカシはミユキと少年をジッと見つめていた。
『待って、危ないわ』
 ミユキが少年に声を掛けた。
『ほら、お靴。紐が緩んでいるわよ』
 ミユキは日傘を少年に渡し、そしてワンピースの裾が汚れるのも構わずに自らがしゃがみ込んだ。
『自分で結べるよ』
 少年が不満げに言うと、ミユキは幸せそうに微笑み『そうなの?』と尋ね返す。
『できるよ』
『でもね、このお靴は結び方が少しだけ難しいから、任せて頂戴?』
 そういうと、少年はこっくりと首を縦に振った。
 微笑ましい光景である。
 タカシはいつしか背中の筋肉を緩め、緊張をほぐしていた。
 こんな幸せな光景に、なにかこの身を危険に及ぼす出来事など起こりえない――、そう思いながら、
こちらに気づいたミユキに向かって手を振ったのだ。
112 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/18(火) 00:36:57.36 ID:7qxHavWD0
『タカシさん』
 しゃがみ込んだままのミユキが手を振った。
 ああ、ワンピースの裾が土と枯れた芝生で汚れている。
 土汚れは庭を駆け巡った時のものかもしれない。
『ワンピース、汚れる』
『あら』
 タカシの指摘に、ミユキは今気づいたといわんばかりに裾を見遣り、そして苦笑した。
『私ったら、駄目ね』
 汚れた裾を美しい手がなでる。ひとなでごとに汚れは落下し、しかし深く入り込んだ土は取れないのだろう、
僅かに茶色く染まった部分はそのままであった。
『着替えておいで』
『そうね』
 ミユキはゆっくりと立ち上がった。
 いや、立ち上がろうとしたのだ。
 その動きはは途中で途絶え、そして彼女の動きは完全に止まったのだった。
『ミユキ……』
 タカシはその様子を息を呑んで眺めていた。
 ただ、アホのように。
『駄目だよ』
 そう言ったのが少年だと気づくまでには時間が掛かった。
『駄目だよ』
 少年はそう言うと――、傘を、そう、その手に持った傘を、傘を――。
 ミユキの胸から抜き取ったのだ。
113 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/18(火) 00:39:56.30 ID:7qxHavWD0
『……え……?』
 ミユキの白い頬に、鮮血が飛び散った。
 それから崩れる体。
 細い体が力をなくしたようにがくりと崩れ、そして、倒れこむ。
 まるでスローモーションのようだ。
 細く小さな体は芝生の上へと倒れこみ、そして庭は、ワンピースは、
土汚れなど比にならぬほど赤黒く汚れていた。
『駄目。駄目だから』
 ドサリと言う鈍い音がして、日傘が放り出された。
 真っ赤な光景に、タカシは未だ立ち尽くしている。
『ミユキ――!』
 声を張り上げ、彼女に駆け寄った。
 自分のものと思えぬ絶叫と、現実と思えぬ光景。
 いや、これは夢だ。
 夢だというのに、焦ることを止められれず、震えでもつれそうになる足で必死に彼女の元へと向かう。
『ミユキ、おい、ミユキ!!』
 頬を叩いても髪をかきあげても彼女の瞳は動かない。
胸に開いた穴から噴出した鮮血は、辺りを赤く染め、濡らし、そして汚した。
 タカシ自身の手も滑ったそれで真っ赤に染まっている。
『ミユキ、ミユキ!!』
 震えた声では名前のほかに何か呼ぶこともできない。やっとのことで搾り出した声は『救急車』、
しかし焦りのあまりタカシは、そのミユキの負傷の原因である少年を見上げ、そう懇願していたのだ。
114 : ◆OfJ9ogrNko [saga]:2014/02/18(火) 00:43:11.91 ID:7qxHavWD0
『だぁめ』
 少年の顔が逆光でよく見えない。
 英数字の『1』の形に指を伸ばし唇に当てている少年は『駄目だよ』と言った。
 そこで漸く冷静になったタカシは、裏返る声で『貴様』と叫び、そして気づけば少年を芝生の上へと転がし
その襟首を引っ掴んでいたのだ。
『貴様、なにを、ミユキになんてことを……!』
 強い日差しが少年の顔を照らす。
 ああ、タカシはこの顔を知っていた。
 そう、よく知っている顔だ。
『……ショウタ……!!』
 不敵に微笑む顔に、タカシは強か拳を打ち込んだ。
『お前、お前、なんで……!!』
 何度も何度も殴る。
 ゴキ、だとかミシ、と言う耳慣れない実に気持ちの悪い音や感触が伝わるが、
タカシは加減なくショウタを殴った。
 タカシの拳はやがてすりむけ血が滲み、気づけばショウタは身動きひとつ取らなくなっていた。
 ハァハァと言う荒い呼吸は自分のものだ。
 襟首をつかまれたままピクリともしないショウタを見つめ、
しかしタカシはまだまだだと言わんばかりに力強くなおも殴り続けた。
『ふざけるな! ふざけるな……!!』
703.48 KB Speed:0.1   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 続きを読む
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)