中二「玄関あけたらどっかの宿屋」 死神メイド「中二ミーツ死神」

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62 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/23(木) 21:27:05.94 ID:EGTJgzplo


三つ編み小人 「それでは、お金を拝見……」


チャリ チャリ



中二 「あの、この糸巻きっていったい……」


おさげ小人 「ああ、ここでは紋章のかわりに」

おさげ小人 「糸巻きが身分証明になるっす」


中二 「身分証明。糸巻きが……」

中二 (紋章が何か分からないから、よく分からない)


おさげ小人 「驚くのも無理はないっす」

おさげ小人 「そんなの、この世界くらいのもんっすから。ここの糸巻きは特別なんっす」


中二 「へえ……」



チャリン チャリン


三つ編み小人 「…………」

三つ編み小人 「ふぅーむ……」


中二 「…………」

中二 (いくらになるんだろう……)



…………


63 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/06/24(金) 01:40:43.83 ID:Ko07auevO
やっと来た!
乙です
64 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 05:32:49.79 ID:BICdlFseo


魔物の宿屋



カチ コチ カチ コチ


メイド? 「…………」


カチ コチ カチ コチ


メイド? 「……ズズ」


カチ コチ カチ コチ


メイド? 「…………」

メイド? 「…………」


ガチャ キイイ


中二 「…………」


メイド? 「……あら」

メイド? 「おかえりなさい」


65 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 05:36:13.50 ID:BICdlFseo



中二 「…………」


テク テク テク テク

ドサ


中二 「…………」


バララ


中二 は 換金記念チョコレート×3 を机にぶちまけた!


メイド? 「…………」


中二 「……これだけ」


メイド? 「…………」


中二 「三ヶ月ためたお金を換金したら」

中二 「これだけになった……!!」


66 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 05:49:34.64 ID:BICdlFseo


メイド? 「……換金所を利用したらもらえるチョコレートね」

メイド? 「MP回復と魔法力アップの効果があるわ」


中二 「終わりだ……」

中二 「あしたの試験……あたしの……いちまんえん……」


メイド? 「お金はどうなったの」


中二 「何かいろいろ調べられたあと、換金用とか言って、お金を壺みたいなものに放り込まれて……」

中二 「待ってたらこの世界のお金が出てくるから、待ってろって言われて」

中二 「でも待てど暮らせど何も出てこなくて」

中二 「換金所の人に、壺がお金と認めなかったんだろうって言われて……」

中二 「それでも待ってたら、かわいそうだからチョコひとつ多めにやるから、邪魔だから帰れって……」


メイド? 「…………」

メイド? 「……そう」


67 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 05:57:30.18 ID:BICdlFseo


中二 「財布だけ……残ったのは、空の財布だけ……富の抜け殻……トレジャーファントム……」


ブツブツ ブツブrツブツ


メイド? 「…………」

メイド? 「……お茶、飲みたかったら……」


中二 「……いただきます」


メイド? 「あっちにお湯があるから勝手に飲んだら良いわ」


中二 「…………」

中二 「もう終わりだあ!! うわーん!!」


68 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 06:06:21.92 ID:BICdlFseo


ガバ


中二 「輝かしい道も、いちまんえんも、みんなすっ飛んで無くなったあ!」

中二 「ていうか人生も終わったあ! なんか変なところから帰れずに終わったあ!」


メイド? 「あきらめるのは早いわ」

メイド? 「リボンがあれば帰れるわよ」


中二 「でも! そのリボンを買うお金がないと話にならないのでしょう?」


メイド? 「その通りよ。というか、全体的にお金がないと生きていけないわ、この町では」


中二 「お金、貸してください!」

中二 「美人のメイドさん!」


メイド? 「……………」

メイド? 「死神メイド」


中二 「え?」


メイド? 「死神メイド」

死神メイド 「それが、私の名前……」


中二 「……!」

中二 「死神メイドさん! お金を」


死神メイド 「いやよ」


中二 「終わったあ!」


69 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/06/28(火) 07:32:54.76 ID:rParMGoa0
70 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 19:59:13.10 ID:BICdlFseo

■死神メイド


http://i.imgur.com/oyPT4Fe.jpg
(画像はフィクションです)


種族  : 死神(のパシリ)
所属  : 魔物の宿屋 / 淫魔商会
所属隊 : なし
職業  : 死神/メイド/ギャンブラー
レベル  : ????/058/231
体質  : 無口/低体温/ポーカーフェイス/マイペース/ハイテンション
弱点  : 聖
耐性  : 死/闇/氷/くすぐり /淫
特殊技 : 魔王殺しパンチ/蘇生阻止キック/即死攻撃(乱舞)


商人の町の宿屋で働く少女。
仕事は大体いいかげん。


71 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 20:10:35.33 ID:BICdlFseo


…………


コポコポコポ トン


死神メイド 「はい。お茶、ついであげたわ」


中二 「…………」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「……ズズ」


中二 「…………」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「……運命だったのよ」


中二 「……運命」


死神メイド 「声優なんて、目指した時点で人生終わったようなものなのだから」

死神メイド 「私と出会い、ここへやってきたのも、そう、運命だったのよ」


中二 「…………」


死神メイド 「…………」


中二 「…………納得」

中二 「いくかあ!!」


72 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 20:23:27.35 ID:BICdlFseo


中二 「声優を何だと思っているんですか!」


死神メイド 「顔が悪いか、売れない役者の暇つぶし」


中二 「そこになおれ!」


死神メイド 「…………」


中二 「良いですか! 声優というのは」

中二 「役者が表情や体をつかって表現するものを声だけで……」


死神メイド 「やめて」


中二 「……!?」


死神メイド 「そういうの、どうでも良いわ」


中二 「………!!」


死神メイド 「本当に、まったく、興味ないの」

死神メイド 「やめて」


中二 「…………」

中二 「〜〜ッ、ッッッ! ッ〜〜〜〜!」

中二 「……はぁ」


ストン


死神メイド 「…………」

死神メイド 「……お茶」

死神メイド 「さめるわよ」


中二 「…………」

中二 「いただきます……」


ズズズズ


73 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 20:29:02.72 ID:BICdlFseo


ガチャ


死神メイド 「……あら」


中二 「……?」

中二 (誰か入ってきた。誰だろう……)

中二 「………!!!!?」


ノシ ノシ ノシ


??? 「…………」

黒オーク 「……おお」


中二 「……ぶ、ぶぶぶ……」

中二 (牙のはえた、大きな黒い豚!)


74 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 21:59:34.96 ID:BICdlFseo


死神メイド 「おかえりなさい」


黒オーク 「おう」


死神メイド 「あの子たち、どうたった?」


黒オーク 「おお、元気だったよ」

黒オーク 「んだけど、異種の方の娘たちから、ちょっと困った要望があってな」


死神メイド 「あら」


黒オーク 「いや、種類を増やしてほしいってな」

黒オーク 「とくに触手系と植物系を」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「触手だったら、あてがあるかもしれないわ」

死神メイド 「お腹を二、三発なぐれば、快く引き受けてくれるかも……」


中二 (何の話だろう)


75 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 22:06:46.36 ID:BICdlFseo


黒オーク 「淫魔の旦那は来とらんかい?」


死神メイド 「ええ」


黒オーク 「そうかい。いれば、相談もできたが」

黒オーク 「けんど、このところ見ないな、旦那」


死神メイド 「忙しい人だから」


黒オーク 「ふーむ」

黒オーク 「んで、そっちのお嬢ちゃんは誰だい」


中二 「……!」

中二 「あのっ……あたしはっ」


死神メイド 「知らないわ」


中二 「おうっ!?」


76 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/06/28(火) 22:12:44.92 ID:BICdlFseo


死神メイド 「冗談よ」


中二 「こんなときにやめてください……!」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「友達よ」


中二 「!?」


黒オーク 「……あー」


中二 「い、いやいやいや、あのですね」

中二 「あたしはですね、家に帰ろうとしたら……」


黒オーク 「……うん、うん」

黒オーク 「だいたい分かった」

黒オーク 「災難でがしたな、お嬢ちゃん」


中二 「……あ、はい」

中二 (何やら察された……)


77 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/06/29(水) 02:50:25.75 ID:i+oF4xxnO
淫魔ってことは幼女Nの世界と同じ世界線の話なのか。
全く別の単体の話だと思ってたからサプライズだよ!
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/07(木) 19:46:02.42 ID:hto0ik9zo
前も出てきたし同じ世界線じゃないかな
パラレルかもしれないけど
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 05:46:07.80 ID:QfYJ3WAMo


黒オーク 「……まあ、まずは」

黒オーク 「何か、食いますかい?」


中二 「い、いえ、おかまいなく……」


キュルルル


中二 (お腹が鳴ってしまった!)


死神メイド 「お腹は空いているようね」


中二 「あはは……」


黒オーク 「遠慮するこたぁないのに」


死神メイド 「つまり、あなたの料理を食べるくらいなら、泥でも拾って食べた方が良いということね」


中二 「い、いただきます!」


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 05:54:04.96 ID:QfYJ3WAMo



黒オーク 「おっしゃ、じゃあ何か作ろう」


中二 「す、すいません……」


黒オーク 「良いんでがすよ。おれも腹が減っていたし」

黒オーク 「何か食いたいものはありますかい?」

黒オーク 「あったかいもの、冷たいもの、肉、魚、野菜……」


中二 「ええっと」


死神メイド 「トンカツだそうよ」


中二 「ええっ!?」


黒オーク 「おっしゃ」


中二 「えええっ!?」


81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 06:24:44.95 ID:QfYJ3WAMo


カチ コチ カチ


中二 「…………ふう」


ズズ


死神メイド 「……ぼーっとしているわね」


中二 「……あ」

中二 「いえ、思い返すと何だか、やっぱり現実じゃないみたいで」

中二 「だって、道端で糸巻き棒を投げつけられて、帰って玄関あけたら知らない街で」

中二 「そこを見たことない生き物が、人間みたいに歩いてて」

中二 「……夢の中にいるような」


死神メイド 「……そう。夢」

死神メイド 「残念だったわね、なんとかテスト」


中二 「うぐっ、誰のせい……!」

中二 (お、落ち着け自分。演じるには相手を受け入れる気持ちが肝要!)

中二 (切りかえよう。強い感情にただ流されるだけでは、感情を操る役者になどなれない……!)

中二 「……はあ。まあ、また半年後にあります」

中二 「半年の遅れなど巻き返してみせます」


死神メイド 「若いのに、切りかえが速いのね」


中二 「……! はい!」

中二 「あ、い、いえ、コホン……演じるためには必要なことだから」


死神メイド 「そう」


ズズ


中二 (……この人はいくつなんだろう)


82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 06:29:08.94 ID:QfYJ3WAMo


中二 (ほかと違って、こっちと同じ普通の人みたいだし)


死神メイド 「……そうやって」

死神メイド 「半年、また半年と、延びていくのね」


中二 「うぐっ……縁起でもないことを……」


死神メイド 「……遅れるって」

死神メイド 「何に、何が遅れてしまうの?」


中二 「……アタシが、ライバルにです」


死神メイド 「そういうものなの」


中二 「厳しい世界なのです」


死神メイド 「そう……」

死神メイド 「精子よりも?」


中二 「はあ!?」


死神メイド 「精子の生存競争よりも、厳しい世界なのかしら」


中二 「知りませんが!」


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 06:42:18.45 ID:QfYJ3WAMo


死神メイド 「…………」


中二 「……あ、あの」

中二 「待ち遠しいですね、あの豚さんの料理」

中二 「けっこう楽しみなんですよ」

中二 「あ、でも、どうしようかなあ、巨大な虫の蒸し焼きとか出てきたら……」


死神メイド 「精子の世界は厳しいわ」


中二 「あーあ、話もどしたあ!」


死神メイド 「とくに人間などの哺乳類は」

死神メイド 「何千万という夥しい数の精子のうち、生き残るのは一匹かそこら」

死神メイド 「まさに、狭き門」


中二 「……は、はあ」


死神メイド 「……大丈夫よ」


中二 「え?」


死神メイド 「あなたは一度、その競争に勝ったのだから」


中二 「……!」


84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 06:54:17.35 ID:QfYJ3WAMo


中二 「…………そ」

中二 「そうですよね!」


ガタン


死神メイド 「いきなり立つと危ないわ」

死神メイド 「どうしたの」


中二 「何千万のライバルに打ち勝ち、この世に生まれるという最大級の勝利を得たアタシ!」

中二 「いってたかだか数万人のライバルに勝つくらい、なんてことない!」


死神メイド 「そうなのね」


中二 「アタシ、頑張る!」

中二 「頑張って、もういちど狭き門をくぐってみせる!」


死神メイド 「また精子になるの」


中二 「はい!」


死神メイド 「変なツボに入ったみたいね」


85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 07:00:15.58 ID:QfYJ3WAMo


中二 「うふわはははは……」

中二 「アタシ、精子になるわ」

中二 「声優の精子に……!」


死神メイド 「…………」


中二 「そして狭き門をくぐり、声優の卵として声優界に着床してみせる!!」

中二 「なってみせる、最強の……!」


ガチャ


黒オーク 「おーう、おまちど……」


中二 「精子になります!!」


黒オーク 「…………」


死神メイド 「…………」


中二 「…………」

中二 (うわあ!?)

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 07:13:24.31 ID:QfYJ3WAMo


黒オーク 「…………」


中二 「…………」

中二 (うわああ)

中二 (うわああ!)

中二 (よりによって聞かれた! 何てことを言ってしまった!)


死神メイド 「…………」


黒オーク 「……おう」

黒オーク 「んじゃあ、食べるでがすか」


カチャ コト


中二 「…………」

中二 (うわああ! 何事もない風に気遣われた。気まずい!)

中二 (恥ずかしさで死んでしまいそう!)

中二 (どうしたら良いんだこれ。どうしたら……!)


黒オーク 「フォークとナイフ、スプーンと、とりあえずいろいろ持ってきたから」

黒オーク 「好きなものを使ってくだせえ」


中二 「くっ、殺せえ……!!」

中二 「いやいっそ犯せ! その方がこのやり場のないエネルギーのやり場がある」

中二 「犯してください!」


黒オーク 「……へえ」

黒オーク 「じゃあ、そのうち」


中二 「嘘! ごめんなさい勢いで言いました、嘘です!」


黒オーク 「……で、がしょうなあ」

黒オーク 「まあ、ひとまず落ち着いて」

黒オーク 「飯にしやしょう」


87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 07:23:11.50 ID:QfYJ3WAMo


…………


カチャ カチャチャ

パク モグモグモグ


中二 「……おいしい! フワフワでシャキシャキでジュワジュワ!」


黒オーク 「おお、そいつは良かった」


死神メイド 「彼は宿のお客の食事を、ひとりで作っているのよ」


中二 「へええ……」


黒オーク 「まだ宿が小さい頃だけども」


死神メイド 「今は人に任せることも多いわ」

死神メイド 「彼も、権力者ゆえの堕落には勝てなかったのね」


黒オーク 「お前はまた、そういう……」


死神メイド 「冗談よ」


中二 「あ、あはは……」


88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 07:58:19.53 ID:QfYJ3WAMo


黒オーク 「んで、お嬢ちゃんは、ええと……」


中二 「中二です」


黒オーク 「おう。これはどうも」

黒オーク 「おれは黒オークでがす」


死神メイド 「宿オークと呼ぶ人もいるわ」


中二 「はい」


黒オーク 「中二さんは、自分がどうなってるか」

黒オーク 「どのくらい分かってるんでがしょうか」

黒オーク 「どうしてここに来た、とか」


中二 「えっと、帰り道で死神メイドさんに糸巻き棒とリボンをもらって」

中二 「で、家に帰ったらこの街にいて」

中二 「いろいろあって、ここに……」


黒オーク 「……あー。うん、やっぱり」

黒オーク 「そりゃあ、すまんこってす」


中二 「い、いえ……」


死神メイド 「あなたが謝ることは無いわ」


黒オーク・中二 「そうだけど」


89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/07/08(金) 08:09:03.80 ID:QfYJ3WAMo


死神メイド 「あら」

死神メイド 「仲良しね。羨ましいわ」

死神メイド 「本当に、羨ましい」


黒オーク 「……まあ、こういう子でがす」


中二 「はあ」

中二 「いえ、分かります、何となく……」


黒オーク 「……ふーむ」


中二 「? あの……」


黒オーク 「いんや。お若いのに、落ち着いているでがすな」

黒オーク 「もっと取り乱しても不思議でないのに」


中二 「取り乱していたんですけど、いろいろあって……」


黒オーク 「で、がしたな」

黒オーク 「なんにしても、立派なこってす」


中二 「いやあ……」

中二 (見た目は大きいし牙があるし、怖いけど、良い人そう)

中二 (……良い豚?)


90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 12:34:50.53 ID:hPQAszP80
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/04(木) 07:00:41.17 ID:4TrVjRYm0
はいドドン
92 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/08/11(木) 21:48:03.22 ID:jrd7qGjeo


黒オーク 「中二さんは、この街で行くあてなんて、当然ないでがしょうな」


中二 「はい」

中二 「帰る方法は教えてもらったけれど」

中二 「悲しいかな、お金が無く……」


黒オーク 「で、がすか」

黒オーク 「おお、それでは、おれの金を貸……」


死神メイド 「ここに泊めてあげるのはどうかしら」


黒オーク 「……まあ、構わんけど」


中二 (すごいチャンスを逃した気がする)


93 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2016/08/11(木) 21:56:24.46 ID:jrd7qGjeo


黒オーク 「けども、混沌区に近いとはいえ」

黒オーク 「ここは魔物区だし」

黒オーク 「この宿も一応、魔物・妖精向けでがすからなあ」


死神メイド 「人間に貸さないわけでもないじゃない」


黒オーク 「しかし、うーむ……」


中二 (魔物区?)


死神メイド 「しょうがないわね」

死神メイド 「では、叩きだしましょうか」


中二 「えっ!?」


黒オーク 「いんや、だからリボンを買ってあげて……」


死神メイド 「だめよ」



94 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 22:06:43.12 ID:jrd7qGjeo


死神メイド 「宿オーク、この豚。あなたはこの店で何番目かに偉い人なのよ」


黒オーク 「店主だけども」


死神メイド 「それに、あなたが管理しなくてはならないのは、いまや宿だけでもないでしょう」

死神メイド 「そんな人が、お金にそんなことでは駄目」

死神メイド 「誰かにタダで何かをしてあげるなんて」

死神メイド 「その誰か以外を、ないがしろにしているということだわ」

死神メイド 「多くの人の上に立つとは、そういうことなのよ」


黒オーク 「もっともらしく言うけども」

黒オーク 「だったら、この宿に泊めるにも、金をもらわにゃならんくなるぞ」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「その通りね」

死神メイド 「たたき出しましょう」


中二 「ええっ」


黒オーク 「こらこら」

黒オーク 「何がしたいんかい、お前は」


95 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 22:20:10.03 ID:jrd7qGjeo


死神メイド 「せっかく来てくれたのだし」

死神メイド 「泊まっていってほしいわ」

死神メイド 「五百年くらい」


中二 「永住させる気なのでしょうか」


死神メイド 「この街だって、楽しいこともあるのよ」

死神メイド 「友だちには、そういうこと、知ってもらいたいもの」


中二 「メイドさん……」

中二 (友だちに対する態度じゃない気もするけれど)


黒オーク 「まあ、五百年は無理にしろ」

黒オーク 「……中二さんの世界のニンゲンの寿命は何百年でがすか?」


中二 「だいたい百五十年くらいですね」

中二 「将来はもっと長くなるかもしれないそうです」


黒オーク 「ほー。ヒトの中でも短い方でがすな」


中二 「そうなんですか」


黒オーク 「同じニンゲンでも、三百年ほど生きる世界もあるでがす」

黒オーク 「すべての種族の中では、長いとは言えんでがすがね」


中二 「ほー」


96 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 22:26:25.65 ID:jrd7qGjeo


中二 「頭はまるで追いつかないけれど」

中二 「世界はひろいんですね」


黒オーク 「ひろいというか、大きいというか、多いというか」

黒オーク 「センセではないので、うまく言えんですが」

黒オーク 「しかし、本当に落ち着いているでがすな」


中二 「目の前の出来事を受け入れる……フッ」

中二 「新鮮で自然な演技をするためには、大事なことなのです」


黒オーク 「そりゃ結構」


97 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 22:37:51.48 ID:jrd7qGjeo


死神メイド 「あなた、混乱しまくっていたじゃない」

死神メイド 「三十ターンくらい」


中二 「あれは……っ」

中二 「私もまだ未熟だったのです」

中二 「……ターン?」


黒オーク 「えーと、それで、何だったか」

黒オーク 「おお、この宿に泊まる話でがした」

黒オーク 「中二さんは、それで構わないんで?」


中二 「は、はい。でも、お金が……」


黒オーク 「それは考えんでくだせえ」

黒オーク 「うちの者が巻き込んじまったんでがすから」


中二 「ありがとうございます」


黒オーク 「巻き込まれて、良かったのかもしれんでがすがね」


中二 「?」


98 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 22:50:20.33 ID:jrd7qGjeo


黒オーク 「まあ、いずれ分かるでがしょう」

黒オーク 「そんときに中二さんが決めたら良いでがす」


中二 「……はあ」


黒オーク 「リボンのことも心配せんで良いでがすよ」


中二 「え?」


黒オーク 「金は出すんで」

黒オーク 「まあ、安心して観光してくだせえ」


中二 「あ、ありがとうございます!」


死神メイド 「うちの宿オーク、太っ腹でしょう。私の誇らしいことのひとつよ」

死神メイド 「お金があるから、他人に優しくできるの」

死神メイド 「お金があるから」


黒オーク 「……まあ、そういうもんだけども」


99 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 23:09:22.13 ID:jrd7qGjeo


中二 「あの」


黒オーク 「うん?」


中二 「何か、宿の仕事を教えてもらいたいんですが」

中二 「駄目でしょうか」


黒オーク 「……? おー」

黒オーク 「うちを手伝ってくれるっつうことでがすか?」


中二 「はい」


黒オーク 「気をつかわんでくだせえ」


中二 「いえ、甘え癖と怠け癖がありまして」

中二 「このくらいはしておかないと」

中二 「……良い経験にもなりますし」


死神メイド 「自信家なのね」

死神メイド 「自分がここで働くに値するということ前提で話すなんて」


中二 「うっ……」


死神メイド 「冗談よ」

死神メイド 「嬉しいわ。先輩として指導してあげる」

死神メイド 「全身の骨がドロドロになるまで」


中二 「ドロドロ!?」


100 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 23:30:22.10 ID:jrd7qGjeo


黒オーク 「うーむ、しかし」

黒オーク 「魔物の宿屋で人間を働かせると」

黒オーク 「どっちにとっても不幸なことが起きないとも限らんし……」


中二 「そ、そうですか……」


黒オーク 「さっきはああ言いましたが、危ないことには首を突っ込まん方が良いでがすよ」

黒オーク 「親御さんも心配しているでがしょうし」


中二 「あ、大丈夫です」

中二 「十年くらいいなくても、心配しないんじゃないですかね」


黒オーク 「そ、そうでがすか」

黒オーク 「んですが……」


死神メイド 「やめましょう」

死神メイド 「彼女の目から光が消えている」

死神メイド 「この話題はきっと闇が深いわ」


黒オーク 「うーむ」


中二 「?」


101 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 23:39:27.74 ID:jrd7qGjeo


黒オーク 「そいじゃあ、その辺のことはゆっくり話すとして」

黒オーク 「中二さん用の空き部屋を確認してこよう」


中二 「あ、ありがとうございます」


黒オーク 「ん。魔物の宿屋へようこそ」


ガタタ

ノシ ノシ


死神メイド 「帰ってきたばかりでしょう。私がやるわよ」


黒オーク 「いやいや、ちょいと確認したいこともあるし」

黒オーク 「まあ、部屋が見つかったら掃除は任せるけども」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「……中毒ね。宿の仕事から少し離れただけで、落ち着かないのね」


黒オーク 「はっは……」


ノシ ノシ

ガチャ バタン



102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 16:16:27.05 ID:KSSVTn+jo
こっちの話は分かってても脳が勝手にカフェの奴と混同しそうになって混乱する
103 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 05:57:59.46 ID:IX/q3CITo


死神メイド 「…………さてと」


スタスタ

ポチ


魔動画 『……ガガ、ザザー』


中二 「!」

中二 (壁にかかった板に死神メイドさんが触れたら)

中二 (板に映像が……)

中二 (これって、まるで……)


死神メイド 「魔法じかけのアイテムよ」


中二 「魔法……」


死神メイド 「あなたの世界では絶滅しているのだったわね」


中二 「絶滅……そ、そうなるんですかね」

中二 (ここでは当たり前のように生活に溶け込んでいるのかな)


魔動画 『ザザッ……』

魔動画 『第三大世界と第A大世界……いわゆる未知の世界の衝突から……日』

魔動画 『星天観測所によりますと、衝突の中心とされる界域の観測はいまだ不可能であり……』


104 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:09:33.03 ID:IX/q3CITo


中二 「うーむ、魔法。魔法かあ……」

中二 「声を自在に変えられる魔法なんてあるのだろうか」

中二 「だとしたら、異性どころか渋いおじさん声もいける……」


死神メイド 「…………」


スタ スタ スタ


中二 「……!」

中二 「あ、あの……」


死神メイド 「くつろいでいて」

死神メイド 「私も準備してくるわ」


スタ スタ スタ

パタム


中二 「……行っちゃった」


魔動画 『ヂャララララ、ヂャララララララ』

魔動画 『踊る、長針チャンネル下層版!』

魔動画 『この魔動画は、貫層魔法学院下級生徒会がお送りします……』


105 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:19:40.87 ID:IX/q3CITo


…………


カチ コチ


魔動画 『続きまして、メンバー全員の昇級が決定しているパーティ』

魔動画 『ファイブフェアリーズの新曲!』

魔動画 『下級塔での最後のライブとなります……』


チャルララ ジャッジャジャジャ

パプー


中二 「…………」

中二 「……へえー、ここにも音楽ってあるんだ」

中二 「なんか良い曲かも……」


ガチャ

スタ スタ スタ


死神メイド 「お待たせ」


中二 「あ……はい」


死神メイド 「……黒オークは?」


中二 「まだ、行ったままですね」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「はい、これ」


バサ


綺麗なメイド服


中二 「……メイド服だ」


死神メイド 「ここで働くなら、着てもらわなくちゃ」


中二 「これを、あたしに?」


死神メイド 「ええ」

死神メイド 「私のお古だから、胸のサイズが合わないかもしれないけれど」

106 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:30:18.46 ID:IX/q3CITo


中二 「……おおー」

中二 (まさか、メイド服を着る機会がくるとは)

中二 (ちょっと興味あったんだよなあ……)


死神メイド 「今日はやめておきなさい」


中二 「えっ……」


死神メイド 「体、汚れているでしょ」

死神メイド 「宿屋は清潔感が大事だから」


中二 「は、はい!」

中二 「先輩!」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「かまわないけれど」

死神メイド 「……遅いわね、彼」

死神メイド 「お風呂をどうするか相談したいのだけれど」


中二 「そうですね……」



ガチャ ギイイ


黒オーク 「…………」



死神メイド 「あら、噂をすれば」


107 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:39:49.13 ID:IX/q3CITo


黒オーク 「……あー」


死神メイド 「うかない顔ね」

死神メイド 「鏡でも見てしまったの?」


黒オーク 「いや、うーん」

黒オーク 「……部屋が」


中二 (まさか)


死神メイド 「とれなかったのね」


黒オーク 「おう」

黒オーク 「……中二さん」


中二 「は、はい」


黒オーク 「申し訳ないこってす」

黒オーク 「空いている部屋がありませんで」


ペコリ


中二 「い、いえ、そんな、探していただいたのに……」


黒オーク 「いや、本当に申し訳ない」


死神メイド 「それで、どうするの」


黒オーク 「まあ、この部屋でも、おれの部屋でも使ってもらうしか……」


死神メイド 「少女を部屋に連れ込んで何をするつもりなのかしら」

死神メイド 「女騎士の格好をさせた少女を部屋に連れ込んで、何をするつもりなのかしら」


黒オーク 「何もせんし、騎士の格好もさせんし連れ込まんけども」


108 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:46:29.24 ID:IX/q3CITo


死神メイド 「戦士だけに?」


黒オーク 「騎士って言っとらんかった?」


中二 「ええと……」

中二 「忙しいんですね、この宿屋」


黒オーク 「まあ、ありがたいことに」

黒オーク 「んだけど、この時期に部屋が一杯になることは、あまり無いんでがすが」


死神メイド 「治安隊の取り締まりが厳しくなったせいかしらね」


黒オーク 「ん?」


死神メイド 「このところ、物騒じゃない」

死神メイド 「糸盗みも出ているし」


黒オーク 「おおー」


中二 (糸盗み?)


109 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 07:04:55.17 ID:IX/q3CITo


中二 「ええと」


黒オーク 「おっと、すまんこってす」


死神メイド 「ここの仕組みについては、おいおい説明するわ」

死神メイド 「気が向いたら」


中二 「お、お願いします」


黒オーク 「部屋を用意せんといかんでがすな」

黒オーク 「たしかに、おれの部屋に若い娘さんを置くのも悪いだろうし」

黒オーク 「ここを使ってもらいますか」


死神メイド 「待って」

死神メイド 「まだあるじゃない」


黒オーク 「うん?」


死神メイド 「あそこよ」


110 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 07:46:41.02 ID:IX/q3CITo


中二 (ここだとかあそこだとか、分からないけれど)


黒オーク 「あそこは……駄目だろう」


死神メイド 「そうかしら」

死神メイド 「予約の空き部屋……は、ダメね」


黒オーク 「やっぱりこの部屋だな」

黒オーク 「……従業員の部屋を増設せんといかんなあ」


死神メイド 「ずっといるわけでもないのに?」


黒オーク 「必要なくなったら、倉庫にするなり潰すなりすりゃ良い」


死神メイド 「大雑把ね」

死神メイド 「良いわ。私の部屋を貸しましょう」


黒オーク 「おお?」

黒オーク 「珍しい。相部屋嫌いのお前さんが」


死神メイド 「抱き枕が欲しかったところなのよ」

死神メイド 「殴る用の」


中二 「なぐ……」


ガチャ


??? 「げっ……」


中二 (誰か来た)

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/06(木) 14:04:08.16 ID:27vkZ7ng0
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 15:05:40.02 ID:k6+nREwy0
待ち
113 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:04:41.73 ID:QHGvs5D/o


死神メイド 「あら」


黒オーク 「おん?」

黒オーク 「おお、たしか……」


??? 「あちゃー……誰もいないだろって思って来てみたら」

女郎蜘蛛娘 「なーんで、揃っているかなあ」


中二 (人間……)

中二 (じゃ、ないか。耳が尖ってるし)


死神メイド 「女郎蜘蛛娘よ」

死神メイド 「娼婦狐の遊郭の」


中二 「遊郭……」


黒オーク 「おおー」

黒オーク 「そちらさんには、日頃お世話になっとります」


ペコ


女郎蜘蛛娘 「あ、あははは……どうも……」


中二 「お世話に……」


114 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:11:15.82 ID:QHGvs5D/o


死神メイド 「安心して、そういう意味のお世話じゃないわ」


中二 「あ、そうですか……?」


死神メイド 「雄としての体がお世話になっているのよ」


中二 「想像通りですがっ?」


黒オーク 「なってない、なってない」

黒オーク 「おれは」


中二 「はあ……」


死神メイド 「娼婦を派遣するギルドの子よ」

死神メイド 「うちも派遣先として登録しているの」

死神メイド 「そういうサービスを求めるお客もいるから」


中二 「な……なるほど」


女郎蜘蛛娘 「ああ、うち男娼もいるよ」


中二 「ほ、ほほう……」

中二 (そういうの、あるんだ)


黒オーク 「これこれ、変なことを教えとらんで」



115 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:20:27.56 ID:QHGvs5D/o



黒オーク 「そいで、どうしたんでがすか」


女郎蜘蛛娘 「ぅえ゛っ?」


黒オーク 「部屋が分かんなくなったでがしょうか?」


女郎蜘蛛娘 「ああ、いやー……」

女郎蜘蛛娘 「あぁーっは……はは……」


中二 (何だか締まりの無い人だ……)


女郎蜘蛛娘 「はは………」

女郎蜘蛛娘 「………ちょ」

女郎蜘蛛娘 「ちょーっと……昼寝に」


黒オーク 「へえ……?」


女郎蜘蛛娘 「いやぁー……あっはっは、どーしよ」

女郎蜘蛛娘 「あははは……」


中二 (娼婦……っていったら、やっぱりあれだよね)

中二 (ご奉仕的な……裏的な……)

中二 (……はじめて見た)


116 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:33:03.06 ID:QHGvs5D/o


死神メイド 「逃げてきたのね」

死神メイド 「また」


女郎蜘蛛娘 「ぬ゛っ……」


黒オーク 「うん?」


中二 「逃げて……」


死神メイド 「この子、ここでサボるつもりだったのよ」

死神メイド 「お客をとるのが嫌だから……」


女郎蜘蛛娘 「おおーっとお!」


ガシ


中二 「ひっ!?」

中二 (肩を掴まれた!)


117 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:33:30.59 ID:QHGvs5D/o


女郎蜘蛛娘 「妹! 妹ではないか妹よ!」

女郎蜘蛛娘 「なんかほら生き別れた感じの!」


ユッサユッサ


中二 「え、ええー!?」

中二 「あ、アタシは……」


女郎蜘蛛娘 「妹! 妹だよ妹!」

女郎蜘蛛娘 「うん、妹だよ妹! 見れば見るほど妹だ。髪型似てるし!」

女郎蜘蛛娘 「いやあー、会いたかったぞ妹!」


バシン バシン バシン バシン


中二 「ちょっ……痛っ……たたかっ……」


女郎蜘蛛娘 「よーっし、妹ぉー! ここじゃアレだから移動しようではないかー!」

女郎蜘蛛娘 「積もる話をしようではないかー!」

女郎蜘蛛娘 「積もっちゃおうじゃないかー!」


ガシ ヒョイ 


中二 「おふわっ!?」

中二 (担がれた!)


黒オーク 「お、おい……」


女郎蜘蛛娘 「じゃあ、そういうことで!」

女郎蜘蛛娘 「私たち、積もる話が積もってるんで!」


ダ ダ ダ ダ ダ ダ


…………


118 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:37:23.65 ID:QHGvs5D/o


…………



黒オーク 「……はあ」


死神メイド 「…………」


カチ コチ カチ コチ


黒オーク 「…………」


死神メイド 「……良いのかしら」

死神メイド 「連れ去られちゃったわよ、あの子」


黒オーク 「……お」

黒オーク 「いかんいかん、そうだった」


死神メイド 「百等自警団を呼びましょう」


黒オーク 「殺す気かい」

黒オーク 「えーっと、娼婦狐さんとこの連絡先は……」


ガサ ゴソ ガサ


死神メイド 「…………」



…………























119 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 05:10:37.17 ID:QHGvs5D/o





■女郎蜘蛛娘


http://imgur.com/A38q8xC
(画像はフィクションです)


種族 : 女郎蜘蛛(劣性)
所属 : 千夜光ギルド / 常夜絢爛楼閣
所属隊: なし
職業 : 見習い娼婦 / 軽戦士 / 罠士 / 地図士
レベル: 001 / 005 / 015 / 77
体質 : 投げやり / 天然 / 人情家 / 母性 / 苗床体質
弱点 : 鈍足 / 睡眠 / 暗闇
耐性 : 混乱 / 水 / 魅了 / 淫(無効)
特殊技:いとをだす / いつでも脱出 / ひっさつパンチ


商人の町で暮らす気だるげな少女。
サキュバスと似たような種族ながら、性欲がない。


120 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 05:12:27.52 ID:QHGvs5D/o
>>119 ミスごめんなさい







■女郎蜘蛛娘


http://i.imgur.com/A38q8xC.jpg
(画像はフィクションです)


種族 : 女郎蜘蛛(劣性)
所属 : 千夜光ギルド / 常夜絢爛楼閣
所属隊: なし
職業 : 見習い娼婦 / 軽戦士 / 罠士 / 地図士
レベル: 001 / 005 / 015 / 77
体質 : 投げやり / 天然 / 人情家 / 母性 / 苗床体質
弱点 : 鈍足 / 睡眠 / 暗闇
耐性 : 混乱 / 水 / 魅了 / 淫(無効)
特殊技:いとをだす / いつでも脱出 / ひっさつパンチ


商人の町で暮らす気だるげな少女。
サキュバスと似たような種族ながら、性欲がない。




121 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:00:12.62 ID:QHGvs5D/o


…………



野外喫茶



瞑想詩人 「模様を描く石畳……見上げれば、低く星の靄がかかる黒天井」

瞑想詩人 「ここは夜を知らない夜の町だけれど、静かになるときがある」

瞑想詩人 「一日が終わろうとするカフェ」

瞑想詩人 「去ってしまった客の変わりに、さて、何が来るのだろうか……と」


サラ サラ


女郎蜘蛛娘 「……いやー、ごめんごめん」


中二 「うええ、頭がクラクラする」


女郎蜘蛛娘 「許してよー、何かご馳走するからさあ」


中二 「いえ、あの……」


女郎蜘蛛娘 「すいませぇん、注文良いですかあ!」


中二 (ここでは話を聞かないのが礼儀なのだろうか)

中二 「あの、ですから、アタシはあの宿に……」


スタ スタ スタ


??? 「はいはーい……あんたはまったく、私の交代間際に……」

??? 「って」

パン娘 「あぁあーーー!!」


中二 「!?」


パン娘 「あんた、あの時の!」



122 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:14:56.88 ID:QHGvs5D/o


中二 「え?」


女郎蜘蛛娘 「なになに、知り合い?」


パン娘 「あんた!」


バンッ


中二 「はい!?」


パン娘 「さっきはよくもやってくれたわね!」

パン娘 「おかげで、料理を作り直すハメになったんだから!」

パン娘 「しかも、ぶちまけた分の料理代、私のお給料からひかれちゃうんだから!」


中二 「ええーっと」

中二 「身におぼえが……」


パン娘 「無いとは言わせないわよ!」


女郎蜘蛛娘 「おー、会話の連携プレー」


パン娘 「あんた、店の中をドタバタ駆け抜けて行ったでしょう!」

パン娘 「あのときよ!」


中二 「えー……」

中二 「!!」

中二 「ああ!」

中二 (人の骨さんに追われていたときに、そんなことがあった気がする!)


123 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:19:26.20 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「思い出したようね」

パン娘 「まったく、厚かましいを通り越して良い度胸ね

パン娘 「あんなことをしておいて、のこのこ客として戻ってくるなんて」

パン娘 「まったく、どうしてくれようかし……」



ガタタンッ


中二 「ごめんなさい!」


ビシッ


パン娘 「!?」


女郎蜘蛛娘 「おおー、見事な直角謝罪」



124 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:28:30.37 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「え」

パン娘 「ええーっと……」


中二 「決して、わざとやったわけでは無いんですが」

中二 「本当にごめんなさい!」


ビシッ


パン娘 「……あ、え」

パン娘 「まあ、うん……そ、そうよ」

パン娘 「当然、ごめんなさいよね……」


中二 「料理!」


パン娘 「はいっ?」


中二 「いえっ、被害は……」

中二 「お店の被害はいったいどれほどの……!」


パン娘 「……あ、えーっと」

パン娘 「ミルクケーキに、赤い木の実のタルトに、蜜の紅茶に……」

パン娘 「あとはお皿が一枚。そのくらいかな……」


中二 「ごめんなさい!!」


ビシィッ


パン娘 「ええーっ……!?」


女郎蜘蛛娘 「見事な六時半」


125 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:35:41.79 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「いや、あの、あんた、別にそこまで……」


中二 「ごめんなさい!」


ビシィッ


パン娘 「わ、分かったから……!」

パン娘 「顔あげなさいよ。これじゃ私、年下をいじめてるみたいじゃない」


女郎蜘蛛娘 「初対面でも当たりきついもんねー、パン娘」


パン娘 「やかましいわよっ」

パン娘 「……ねえちょっと、蜘蛛娘、何とか言ってよ」

パン娘 「この子、あんたの連れなんでしょ?」


女郎蜘蛛娘 「あー、無理」

女郎蜘蛛娘 「私も今さっき会ったばっかで、付き合い方よくわかんないもん」


パン娘 「はあっ!?」


126 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:42:29.97 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「どういうことよ」

パン娘 「もー、いいから何とかしなさいよ」


女郎蜘蛛娘 「しっかたないなあ」

女郎蜘蛛娘 「……ねえねえ、君、顔上げなよ」


中二 「そういうわけにはいきません!」

中二 「まずは、しっかりと謝罪を!」

中二 「この姿勢で五分間!」


ビシィ


女郎蜘蛛娘 「あー、そうかー」

女郎蜘蛛娘 「頑張れっ」


中二 「はいっ」


パン娘 「ちょっと、何で煽ってんのよ!」

パン娘 「本当どうにかしてよ。あんたたち髪型一緒でしょ!」


女郎蜘蛛娘 「だよね。びっくりだよねー」


中二 「ごめんなさい!」


パン娘 「あーん、もう、どうすりゃ良いのよお」


127 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:55:29.34 ID:QHGvs5D/o


中二 「人が一生懸命につくった料理を」

中二 「作品を! 台無しにしてしまうだなんて」

中二 「裸で土下座でもしなければ贖えないほどの悪行!」

中二 「ごめんなさい!」


パン娘 「いや、別にそんな……つくったの別の人だし……」


女郎蜘蛛娘 「あー、裸で土下座はしないんだね」


パン娘 「ちょっと、また……!」


中二 「寒いじゃないですか!」


パン娘 「!?」


中二 「裸で土下座したら、寒いじゃないですか!」


パン娘 「そ、そうだけど……」


中二 「寒いのは、駄目です」

中二 「嫌です」


パン娘 「…………」

パン娘 「ええぇー……」


128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/11(金) 12:29:18.67 ID:cZlhrRBtO
129 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:13:23.67 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「ちょっと、何なのよー」

パン娘 「どうしたら良いのよぉ……」

パン娘 「怒鳴ったのは謝るから、もう顔あげてよ」


中二 「謝るのはアタシの方です!」

中二 「ごめんなさい!」


パン娘 「ほ、本当に、分かったから」

パン娘 「顔あげて、座ってってば」

パン娘 「ほら、ここに立たれたら他のお客さんも困るし……」


中二 「……はっ、ご、ごめんなさい」


ガタタ ストン


パン娘 「……もー、びっくりしたあ」


女郎蜘蛛娘 「君、おもしろいねえ。変で」


中二 「変……」

中二 「物づくりの人はとりわけ尊敬するように心がけていまして……」

中二 「いや、本当にごめんなさい」


パン娘 「良いけどさあ」

パン娘 「これじゃあ、怒るに怒れないじゃない」


130 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:23:07.50 ID:QHGvs5D/o


…………


パン娘 「へえー、今日来たばかりなんだ」


女郎蜘蛛娘 「ひとりで?」


中二 「はい、まあ。おかげで右も左も分からず……」


パン娘 「分かる分かる」

パン娘 「広いしゴチャゴチャしてるもんねえ、この町」

パン娘 「私も来たばっかりのとき、いっぱい迷ったもん」


女郎蜘蛛娘 「自慢だけど私ー」

女郎蜘蛛娘 「二日でこの辺の道おぼえたよ?」


パン娘 「あんた、だらしないくせに方向感覚だけは良いわよね……」


女郎蜘蛛娘 「あはは……」


中二 (二人は知り合いなんだろうか)

中二 (って、いや、早く黒オークさんの宿に戻らないと)

中二 「あのー……」


パン娘 「あっ、じゃあさあ」

パン娘 「パンケーキ食べていきなよ!」

パン娘 「おいしいんだよー、ここのパンケーキ!」

パン娘 「私、奢ったげる!」



中二 「ええー……」

中二 「ご、ごちそうになります」


131 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:31:58.50 ID:QHGvs5D/o


女郎蜘蛛娘 「わーい」


パン娘 「あんたは今までのツケと合わせて払いなさいよ」


女郎蜘蛛娘 「ええー……」

女郎蜘蛛娘 「やだ」


パン娘 「あんた!」


女郎蜘蛛娘 「冗談、冗談」

女郎蜘蛛娘 「お金入ったらちゃんと払うから」

女郎蜘蛛娘 「私はいつものやつ」


パン娘 「はいはい」

パン娘 「まったく……」


サラ サラ カキ カキ


女郎蜘蛛娘 「……あ」

女郎蜘蛛娘 「ごめーん」

女郎蜘蛛娘 「お金ないや」


パン娘 「はあっ?」


女郎蜘蛛娘 「ねえねえ、君、持ってるー?」


中二 「いえ、無一文ですね」


女郎蜘蛛娘 「あちゃー」


132 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:38:10.52 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「あんた、お金持たずにやってきたわけ!?」


女郎蜘蛛娘 「いやあ、来る予定はなかったのよ」

女郎蜘蛛娘 「でもさー、なりゆきでね」


中二 (それなのに、アタシにご馳走するとか言ってたんだ……)


パン娘 「はあ……」


女郎蜘蛛娘 「ごめーん」

女郎蜘蛛娘 「私、水ね」


パン娘 「……いいわよ。出してあげる」

パン娘 「いつものね」


女郎蜘蛛娘 「良いの?」


パン娘 「お店に来て水だけ飲んでるなんて」

パン娘 「友だちとしてこっちが悲しくなるわよ」


女郎蜘蛛娘 「おお、友よー」

女郎蜘蛛娘 「ありがとう!」


ガシ


パン娘 「きゃっ、ちょっと、こんなとこで抱きつかないでよっ……」

パン娘 「やんっ……」


中二 (水はタダなんだ……)

中二 (わりと裕福なところなんだろうか)


133 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:44:07.02 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「ちゃんとツケに足しとくからね」


女郎蜘蛛娘 「ええー?」

女郎蜘蛛娘 「けち」


パン娘 「あんたねえ……っ」


女郎蜘蛛娘 「冗談だって」


中二 「あの、アタシが駄目にした分」

中二 「お金ないけど、皿洗いでも何でもして返しますから!」


パン娘 「い、いや、だからいいって」

パン娘 「あんたはあんたで、どうしてそこまでするのよ……」


女郎蜘蛛娘 「私の分までやってー」


パン娘 「あんたは黙ってなさい!」


中二 「あのっ……!」


パン娘 「本当に大丈夫だからっ」

パン娘 「じゃあ、ちゃっちゃと注文届けてくるわね!」


スタ タ タ タ


134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 19:20:59.58 ID:7OJegeYAo
おおっ何か絵が上手くなってる?
以前が下手だった訳じゃないけど趣味全振りの絵柄で評価し難かったのが
良い感じのバランスに見える
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/06(火) 09:01:24.68 ID:zR/jUAok0
待ち
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 07:36:15.43 ID:tBnFkHuG0
あけおめろまえ!
137 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 03:58:20.44 ID:4HmhLnm2o


………

リィン ゴオン リィン……




中二 (どこからか、鐘の音……?)


キョロ キョロ


女郎蜘蛛娘 「あー、もうこんな時間かあ」


中二 「時間?」


女郎蜘蛛娘 「ほら、ここってずっと夜じゃない?」

女郎蜘蛛娘 「ここで生まれ育つとそうでもないみたいだけど、外の世界から来ると、時間の感覚がつかめないわけ」

女郎蜘蛛娘 「だから、こうやって鐘が鳴るんだよ」


中二 「へえ……」


女郎蜘蛛娘 「どこから聞こえてくるか分かんないんだけどね」


中二 「不思議な鐘ですか」


女郎蜘蛛娘 「そうそう」

女郎蜘蛛娘 「まあ、この町で不思議なんて数えてたら、星を数えるのと変わんないけどね」


138 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:16:45.99 ID:4HmhLnm2o


ゴオン リイン……



中二 「宿オークさんの宿には時計がありましたけど」

中二 「あの鐘も、どこかの時計塔から鳴っているんでしょうか」


女郎蜘蛛娘 「さあ……」

女郎蜘蛛娘 「そうかもしれないけど、誰も見つけたことがない」

女郎蜘蛛娘 「もしかしたら時計ができる前……いやいや、町が出来る前から鳴っているのかもねえ」


リイン ゴオン 


中二 「……ううーむ、とことんアタシの常識が通じなさそう」


女郎蜘蛛娘 「あははぁ、考えすぎは毒だぞ妹よ」

女郎蜘蛛娘 「私のようにヘラヘラ無銭飲食できるほど図太くなるのだー」


中二 (この人はもっと考えた方が良い気がする……)


女郎蜘蛛娘 「とにかく、あの鐘の音は覚えておいた方が良いよ」

女郎蜘蛛娘 「冒険者は特にね」



139 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:36:09.73 ID:4HmhLnm2o


中二 「冒険者?」


女郎蜘蛛娘 「ほら、この町って……」


ズズズ


女郎蜘蛛娘 「……ん?」


中二 「……何か不安な音が聞こえますが」

中二 「地響きというか……」


ズ ズ ズ ズ


女郎蜘蛛娘 「うーん、何だろうね」


中二 「だ、大丈夫なんでしょうか、これは」


女郎蜘蛛娘 「さあ」


中二 「さあって……」


ズ ズ ゴ ゴ ゴ


中二 「ち、近づいてませんか?」

中二 「下から大きな何かが来ているような」


女郎蜘蛛娘 「そのわりに揺れてないけど……」




コツ コツ コツ コツ


パン娘 「おまたせー」


女郎蜘蛛娘 「お、くるくる」

女郎蜘蛛娘 「ここのパンケーキは美味しい上に来るのが早いんだよー」


中二 「いや、それどころじゃ……」


パン娘 「パンケーキ二つと、星蜜の……」




ゴ ゴ ゴ ゴ

ボコン



パン娘 「きゃあ!?」


ガシャン ガララン


中二 (ちょうどパン娘さんが立っているところの床が、箱の蓋みたいに開いた!)



140 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:46:04.67 ID:4HmhLnm2o


モク モク モク


中二 「う、うわ、すごい煙が……!」


女郎蜘蛛娘 「ケホッ……って、吸っても何ともない」

女郎蜘蛛娘 「毒ガスじゃないみたいだけど」


中二 「毒ガス!? ここは床が突然開いて、さらにそこから毒ガスが噴き出す町なんでしょうか!?」


女郎蜘蛛娘 「無いとは言い切れない」


中二 「ええっ!?」


女郎蜘蛛娘 「私もこの町のこと全部知ってるわけじゃないもん」


パン娘 「もー、いったい何なのよお!」

パン娘 「またお料理落としちゃったじゃないの!」


モク モク


中二 (よく見ると不思議な煙……なんだか、キラキラしている)

中二 (というか、もろに煙の中にいるけれど、大丈夫なんだろうか)


モク モク モク モク


人影 「…………」


中二 「……ん?」


モク モク


中二 (煙の向こうに、女郎蜘蛛さんでもパン娘さんでもない人影がある……)


141 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:51:47.41 ID:4HmhLnm2o


モク モク モク


人影 「…………」


サアアア


中二 「煙が消えていく……」


ザアア


人影 「…………」

??? 「…………」


女郎蜘蛛娘 「……おおー」


中二 (煙の中から、女の人が現れた)

中二 (人間みたいだけど、頭に犬耳をつけている……?)


??? 「…………?」

コボルト娘 「ここは……」


キョロ キョロ




142 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:02:41.81 ID:4HmhLnm2o


コボルト娘 「…………」


キョロ キョロ


中二 (小さな弓のようなものを持っているけど、矢のようなものは見当たらない)

中二 (それにしても、ぼろぼろの服……)


コボルト娘 「酒場……?」


中二 (む、低めの声が格好いい)


女郎蜘蛛娘 「喫茶店だよ」

女郎蜘蛛娘 「青空喫茶へようこそー」


コボルト娘 「青空、喫茶……」

コボルト娘 「…………」


水の入ったコップ


中二 (アタシの飲みかけの水を見つめている)


コボルト娘 「その水は……」


中二 「は、はい」


コボルト娘 「無料だろうか」


中二 「そうだと思いますけど……」

中二 (女郎蜘蛛さん、お助けを)


女郎蜘蛛娘 「うん、タダだよ」


コボルト娘 「そうか……」

コボルト娘 「いきなりですまないが、それを私にくれないか」

コボルト娘 「ひどく喉がかわいているんだ」


中二 「ええと……」



143 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:03:43.02 ID:4HmhLnm2o

>>144


1. 中二 「どうぞ」
2. 中二 「いくらくれる?」


144 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:04:11.22 ID:4HmhLnm2o





145 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:13:35.34 ID:4HmhLnm2o


中二 「どうぞ」


コボルト娘 「恩に着る……」


パン娘 「ちょっとお!」


コボルト娘 「?」


パン娘 「あんた、何してくれてるのよ!」

パン娘 「おかげで料理が台無しになっちゃったじゃない」

パン娘 「私のお給料から引かれちゃうんだからね!」

パン娘 「お尻も痛いし!」


ギャイ ギャイ


女郎蜘蛛娘 「まあまあ、落ち着きなよ」

女郎蜘蛛娘 「二度あることは三度あるって」


パン娘 「まだ二度目よ! 不吉な予言をしないで」


女郎蜘蛛娘 「三度なかったんだ。良かったじゃない」


パン娘 「良かないわよ!」


コボルト娘 「……料理」


床にぶちまけられたパンケーキ ×2
星蜜のお茶 ×2


コボルト娘 「すまない」


パン娘 「そうね、すまないわよね! お店の床までこんなにして」

パン娘 「あーあ、大きな穴!」

パン娘 「もー、どうしてくれるのよ!」


中二 「皿洗いでも、何でもしますから……っ」


パン娘 「あんたはもう良いのっ」



146 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:22:15.30 ID:4HmhLnm2o


コボルト娘 「すまない」

コボルト娘 「先にこの水だけでも飲ませてくれないか」

コボルト娘 「ゲホッ……償いは、ちゃんとするから」


中二 (肩で息をしている)


パン娘 「償いっ……て」

パン娘 「何なの、ひどく疲れているみたい」

パン娘 「もしかして、潜ってたの?」


中二 (もぐってた?)


コボルト娘 「ああ」

コボルト娘 「事情を話すと、少し複雑だが……」


ハア ハア


パン娘 「い、いいわよ、飲みなさいよ」

パン娘 「座って」





147 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:29:31.87 ID:4HmhLnm2o


コボルト娘 「ありがとう……」


ギギ ガタタ

ストン


コボルト娘 「…………」


ガサ ゴソ


薬筒


中二 (細長い筒を取り出した……)


コボルト娘 「…………」

コボルト娘 「ゴクリ……うぐっ」


中二 (中の物を一気飲み)

中二 (苦そう……)


コボルト娘 「ゴクゴ゙クゴク……」


中二 (すごい勢いで水を飲んでいる)


コボルト娘 「プハッ……」

コボルト娘 「ふう……」


中二 (この人、おっぱいが大きい)


148 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:39:22.08 ID:4HmhLnm2o


中二 (年上だとは思うけど、結構近そうな気もする)


コボルト娘 「ありがとう、生き返った」


中二 「い、いえ……」

中二 (微笑みが格好いい)

中二 (犬耳だけど)


パン娘 「おかわりは?」


コボルト娘 「ありがとう、もう十分だ」


パン娘 「そう」

パン娘 「それにつけても、本当にボロボロね」


コボルト娘 「ああ、私が挑むにはまだ早いところだったようだ」


女郎蜘蛛娘 「他の人はいないの?」


コボルト娘 「いない。一人だけだ」


女郎蜘蛛娘 「わお」


中二 (女郎蜘蛛さんが眠たそうに驚いている)


149 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:53:04.68 ID:4HmhLnm2o


女郎蜘蛛娘 「すごいね、その若さで一人で潜るなんて」


コボルト娘 「そんなことはない……」


中二 (長い前髪で分かりにくいけれど、左右で目の色が違う)


コボルト娘 「……いくらだろうか」


パン娘 「へ?」


コボルト娘 「私が台無しにしてしまった料理と、床の修理費は」


パン娘 「え、ええと……いや……」


コボルト娘 「こんななりだが、そのくらいの金は出せる」

コボルト娘 「いま出せなくても、潜って返す」


パン娘 「そりゃ、床はちょっと偉い人に聞かなきゃ分かんないけど」

パン娘 「いいって、ちゃんと休んでからで」


コボルト娘 「そうか……」


中二 (犬というより、狼みたい)


150 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 06:20:36.85 ID:4HmhLnm2o


女郎蜘蛛娘 「ねえねえ、パン娘ー」


パン娘 「何よ」


女郎蜘蛛娘 「パンケーキは?」


パン娘 「床に落ちているわよ」


女郎蜘蛛娘 「えー……」

女郎蜘蛛娘 「じゃあ新しいやつ」


パン娘 「あんた、タダ飯食らう分際で……ちょっとは遠慮しなさいよね」


コボルト娘 「すまない」


パン娘 「いや、ええと……」

パン娘 「ああ、もう、分かったわよ!」

パン娘 「持ってくるわよ」


女郎蜘蛛娘 「わーい」


中二 「いやはや、ごめんなさい」


パン娘 「……あんたも、パンケーキで良い?」


コボルト娘 「私?」

コボルト娘 「いや、私は……」


パン娘 「あら、店をこんなにしといて、何も食べずに出て行くつもり?」


コボルト娘 「……。だから、金なら……」


女郎蜘蛛娘 「気にしない、気にしない」

女郎蜘蛛娘 「照れ隠しで言ってるだけだから」


コボルト娘 「……?」


女郎蜘蛛娘 「ここの名物なのよ」

女郎蜘蛛娘 「隠しメニュー、パン娘の優しさ照れ隠し」


パン娘 「そんなもん無いわよ」

パン娘 「じゃあ、ちょっと待ってて。すぐに持ってくるから」


コツ コツ コツ コツ


151 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 06:44:55.47 ID:4HmhLnm2o



女郎蜘蛛娘 「……いやあ、一人で潜るとはねえ」


コボルト娘 「…………」


中二 「あの、潜るって……」


女郎蜘蛛娘 「地下」


中二 「地下?」


女郎蜘蛛娘 「地下じゃないかも」


中二 「はい?」


女郎蜘蛛娘 「とにかく、モンスターとかお宝とか」

女郎蜘蛛娘 「いっぱいあるとこ」


中二 「モンスター……お宝」

中二 「ああ、今流行りの……」


女郎蜘蛛娘 「ああー」

女郎蜘蛛娘 「絶対わかってないよね」


152 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 14:37:00.36 ID:4HmhLnm2o



コボルト娘 「……この町には来たばかりなのか?」


中二 「はい」

中二 「まだまだ右も左も分からなくて」


コボルト娘 「そうか……」

コボルト娘 「…………」


女郎蜘蛛娘 「あなたは長いの? この町」

女郎蜘蛛娘 「なんだか慣れた感じがするけど」


コボルト娘 「いや……」

コボルト娘 「百日ほど前に来たばかりだ」


中二 (ここって一日はどのくらいの長さなんだろう)


女郎蜘蛛娘 「それでもう一人で潜ってるんだ」


コボルト娘 「……そうするしかないから」


女郎蜘蛛娘 「ああ、何か事情ありそうだね」


153 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:14:19.50 ID:iAp7NWefo


コボルト娘 「…………」


女郎蜘蛛娘 「まあ、ここで出会ったのも巡り合わせだよ」

女郎蜘蛛娘 「パンケーキでも食べてのんびりやろうよ」


コボルト娘 「……赤き月の導きのままに」


女郎蜘蛛娘 「ん? なあにそれぇ」


コボルト娘 「……私の世界の挨拶のようなものだ」

コボルト娘 「ここに月は出ないようだが」


女郎蜘蛛娘 「あはは」

女郎蜘蛛娘 「面白いことも言うんだ」


コボルト娘 「いや、今のは……」


中二 (小型の木の弓……あたしでも片手で持てそう)

中二 (持つところに何か腕輪みたいなものがゴチャゴチャついているけど、使いにくくないんだろうか)



154 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:24:33.74 ID:iAp7NWefo



女郎蜘蛛娘 「でもまさか、ここから出てくるとはねえ」


床の大穴


コボルト娘 「申し訳ない」


女郎蜘蛛娘 「良いよ良いよ、私たち一銭も払ってないし」

女郎蜘蛛娘 「払わないし」


中二 「いま言い直しませんでした?」


女郎蜘蛛娘 「あっはっは」


コボルト娘 「……私が払う」


女郎蜘蛛娘・中二 「ん?」


コボルト娘 「お前たちの食べる分は、私が払おう」


女郎蜘蛛娘 「…………」


中二 「…………」

中二 「……あの、えっと」


女郎蜘蛛娘 「うんうん。真剣な声で」

女郎蜘蛛娘 「お前……だって」

女郎蜘蛛娘 「女の子同士なのに、ちょっとドキッとするよね」


中二 「いえ、そうじゃなくて」

中二 「いえ、はあ、そうですね……」

155 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:33:38.27 ID:iAp7NWefo


コボルト娘 「そうさせてくれ」

コボルト娘 「でないと、こちらの気がすまない」


中二 (借りはつくらない主義……みたいなものなのかな)


女郎蜘蛛娘 「まあ、どうしてもっていうなら良いと思うけど」

女郎蜘蛛娘 「この大穴、もしかして大発見なんじゃない?」


中二 (大発見?)


女郎蜘蛛娘 「だってさあ、まだ見つかっていなかった脱出口じゃない」


コボルト娘 「偶然見つかって運が良かった」

コボルト娘 「どうやら、こちらからは繋がらないようだが」


女郎蜘蛛娘 「にしてもさあ、ギルドに届けたら特別報酬がっぽり貰えちゃうよ」


中二 (ギルド……)


コボルト娘 「だと良かったんだが……」



156 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:40:23.57 ID:iAp7NWefo


コボルト娘 「モンスターから逃げきるのに必死だったから」

コボルト娘 「マッピングをする暇もなかった」


女郎蜘蛛娘 「あちゃー……」


コボルト娘 「……あれはどこだったのだろう」

コボルト娘 「青緑色の壁が続く水道」

コボルト娘 「あたりに他の冒険者の姿を見えなかった」


女郎蜘蛛娘 「うーん……上層の人たちなら分かるのかもねえ」


中二 (上層……)


女郎蜘蛛娘 「まあ、良かったよ。命があって」

女郎蜘蛛娘 「帰還おめでとう」


中二 「お、おめでとうございます」


コボルト娘 「……感謝する」


157 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:46:16.09 ID:iAp7NWefo


コツ コツ コツ


パン娘 「へーい、今度こそおまたせえ……」


女郎蜘蛛娘 「お、来た来た」


中二 (三つの皿に、飲み物までいっぺんに持ってきている)

中二 (なれた様子……有能な店員さんなんだなあ)



??? 「全員!」

??? 「動くなぁ!」



中二 「!?」




158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/27(金) 22:07:00.26 ID:K1Q1iIG9o
中二さんのキャパはまだ平気なんだろうか
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/22(水) 17:44:31.80 ID:d0vPOVqK0
待ち
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 06:17:05.72 ID:JVJyYD770
まだなのかい?
161 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/20(月) 10:15:18.59 ID:uhWJSASWo



中二 (青空喫茶の入り口に……)


??? 「屋根の無い店とはありがたい」

不死竜娘 「百等自警団、不死竜隊である!」


太っちょ兵 「…………」


ひげ兵 「…………」


自警団員たち 「…………」



中二 「自警団……」

中二 (びしっとした、たぶん制服を着ている)

中二 (無骨な鎧や兜をしている人もいるけど、羽根つきだったり、トゲつきだったり、そんなもの身につけてなかったり、統一感は無い)


女郎蜘蛛娘 「もう来たんだ。最近仕事が早いなあ」


コボルト娘 「…………」




不死竜娘 「先ほど、穴の発生が確認された!」

不死竜娘 「よって調査を行う!」

不死竜娘 「これより一時、この場の権限は我々不死竜隊が預からせていただこう!」


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