中二「玄関あけたらどっかの宿屋」 死神メイド「中二ミーツ死神」

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99 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 23:09:22.13 ID:jrd7qGjeo


中二 「あの」


黒オーク 「うん?」


中二 「何か、宿の仕事を教えてもらいたいんですが」

中二 「駄目でしょうか」


黒オーク 「……? おー」

黒オーク 「うちを手伝ってくれるっつうことでがすか?」


中二 「はい」


黒オーク 「気をつかわんでくだせえ」


中二 「いえ、甘え癖と怠け癖がありまして」

中二 「このくらいはしておかないと」

中二 「……良い経験にもなりますし」


死神メイド 「自信家なのね」

死神メイド 「自分がここで働くに値するということ前提で話すなんて」


中二 「うっ……」


死神メイド 「冗談よ」

死神メイド 「嬉しいわ。先輩として指導してあげる」

死神メイド 「全身の骨がドロドロになるまで」


中二 「ドロドロ!?」


100 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 23:30:22.10 ID:jrd7qGjeo


黒オーク 「うーむ、しかし」

黒オーク 「魔物の宿屋で人間を働かせると」

黒オーク 「どっちにとっても不幸なことが起きないとも限らんし……」


中二 「そ、そうですか……」


黒オーク 「さっきはああ言いましたが、危ないことには首を突っ込まん方が良いでがすよ」

黒オーク 「親御さんも心配しているでがしょうし」


中二 「あ、大丈夫です」

中二 「十年くらいいなくても、心配しないんじゃないですかね」


黒オーク 「そ、そうでがすか」

黒オーク 「んですが……」


死神メイド 「やめましょう」

死神メイド 「彼女の目から光が消えている」

死神メイド 「この話題はきっと闇が深いわ」


黒オーク 「うーむ」


中二 「?」


101 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/08/11(木) 23:39:27.74 ID:jrd7qGjeo


黒オーク 「そいじゃあ、その辺のことはゆっくり話すとして」

黒オーク 「中二さん用の空き部屋を確認してこよう」


中二 「あ、ありがとうございます」


黒オーク 「ん。魔物の宿屋へようこそ」


ガタタ

ノシ ノシ


死神メイド 「帰ってきたばかりでしょう。私がやるわよ」


黒オーク 「いやいや、ちょいと確認したいこともあるし」

黒オーク 「まあ、部屋が見つかったら掃除は任せるけども」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「……中毒ね。宿の仕事から少し離れただけで、落ち着かないのね」


黒オーク 「はっは……」


ノシ ノシ

ガチャ バタン



102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/28(日) 16:16:27.05 ID:KSSVTn+jo
こっちの話は分かってても脳が勝手にカフェの奴と混同しそうになって混乱する
103 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 05:57:59.46 ID:IX/q3CITo


死神メイド 「…………さてと」


スタスタ

ポチ


魔動画 『……ガガ、ザザー』


中二 「!」

中二 (壁にかかった板に死神メイドさんが触れたら)

中二 (板に映像が……)

中二 (これって、まるで……)


死神メイド 「魔法じかけのアイテムよ」


中二 「魔法……」


死神メイド 「あなたの世界では絶滅しているのだったわね」


中二 「絶滅……そ、そうなるんですかね」

中二 (ここでは当たり前のように生活に溶け込んでいるのかな)


魔動画 『ザザッ……』

魔動画 『第三大世界と第A大世界……いわゆる未知の世界の衝突から……日』

魔動画 『星天観測所によりますと、衝突の中心とされる界域の観測はいまだ不可能であり……』


104 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:09:33.03 ID:IX/q3CITo


中二 「うーむ、魔法。魔法かあ……」

中二 「声を自在に変えられる魔法なんてあるのだろうか」

中二 「だとしたら、異性どころか渋いおじさん声もいける……」


死神メイド 「…………」


スタ スタ スタ


中二 「……!」

中二 「あ、あの……」


死神メイド 「くつろいでいて」

死神メイド 「私も準備してくるわ」


スタ スタ スタ

パタム


中二 「……行っちゃった」


魔動画 『ヂャララララ、ヂャララララララ』

魔動画 『踊る、長針チャンネル下層版!』

魔動画 『この魔動画は、貫層魔法学院下級生徒会がお送りします……』


105 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:19:40.87 ID:IX/q3CITo


…………


カチ コチ


魔動画 『続きまして、メンバー全員の昇級が決定しているパーティ』

魔動画 『ファイブフェアリーズの新曲!』

魔動画 『下級塔での最後のライブとなります……』


チャルララ ジャッジャジャジャ

パプー


中二 「…………」

中二 「……へえー、ここにも音楽ってあるんだ」

中二 「なんか良い曲かも……」


ガチャ

スタ スタ スタ


死神メイド 「お待たせ」


中二 「あ……はい」


死神メイド 「……黒オークは?」


中二 「まだ、行ったままですね」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「はい、これ」


バサ


綺麗なメイド服


中二 「……メイド服だ」


死神メイド 「ここで働くなら、着てもらわなくちゃ」


中二 「これを、あたしに?」


死神メイド 「ええ」

死神メイド 「私のお古だから、胸のサイズが合わないかもしれないけれど」

106 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:30:18.46 ID:IX/q3CITo


中二 「……おおー」

中二 (まさか、メイド服を着る機会がくるとは)

中二 (ちょっと興味あったんだよなあ……)


死神メイド 「今日はやめておきなさい」


中二 「えっ……」


死神メイド 「体、汚れているでしょ」

死神メイド 「宿屋は清潔感が大事だから」


中二 「は、はい!」

中二 「先輩!」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「かまわないけれど」

死神メイド 「……遅いわね、彼」

死神メイド 「お風呂をどうするか相談したいのだけれど」


中二 「そうですね……」



ガチャ ギイイ


黒オーク 「…………」



死神メイド 「あら、噂をすれば」


107 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:39:49.13 ID:IX/q3CITo


黒オーク 「……あー」


死神メイド 「うかない顔ね」

死神メイド 「鏡でも見てしまったの?」


黒オーク 「いや、うーん」

黒オーク 「……部屋が」


中二 (まさか)


死神メイド 「とれなかったのね」


黒オーク 「おう」

黒オーク 「……中二さん」


中二 「は、はい」


黒オーク 「申し訳ないこってす」

黒オーク 「空いている部屋がありませんで」


ペコリ


中二 「い、いえ、そんな、探していただいたのに……」


黒オーク 「いや、本当に申し訳ない」


死神メイド 「それで、どうするの」


黒オーク 「まあ、この部屋でも、おれの部屋でも使ってもらうしか……」


死神メイド 「少女を部屋に連れ込んで何をするつもりなのかしら」

死神メイド 「女騎士の格好をさせた少女を部屋に連れ込んで、何をするつもりなのかしら」


黒オーク 「何もせんし、騎士の格好もさせんし連れ込まんけども」


108 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 06:46:29.24 ID:IX/q3CITo


死神メイド 「戦士だけに?」


黒オーク 「騎士って言っとらんかった?」


中二 「ええと……」

中二 「忙しいんですね、この宿屋」


黒オーク 「まあ、ありがたいことに」

黒オーク 「んだけど、この時期に部屋が一杯になることは、あまり無いんでがすが」


死神メイド 「治安隊の取り締まりが厳しくなったせいかしらね」


黒オーク 「ん?」


死神メイド 「このところ、物騒じゃない」

死神メイド 「糸盗みも出ているし」


黒オーク 「おおー」


中二 (糸盗み?)


109 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 07:04:55.17 ID:IX/q3CITo


中二 「ええと」


黒オーク 「おっと、すまんこってす」


死神メイド 「ここの仕組みについては、おいおい説明するわ」

死神メイド 「気が向いたら」


中二 「お、お願いします」


黒オーク 「部屋を用意せんといかんでがすな」

黒オーク 「たしかに、おれの部屋に若い娘さんを置くのも悪いだろうし」

黒オーク 「ここを使ってもらいますか」


死神メイド 「待って」

死神メイド 「まだあるじゃない」


黒オーク 「うん?」


死神メイド 「あそこよ」


110 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/09/15(木) 07:46:41.02 ID:IX/q3CITo


中二 (ここだとかあそこだとか、分からないけれど)


黒オーク 「あそこは……駄目だろう」


死神メイド 「そうかしら」

死神メイド 「予約の空き部屋……は、ダメね」


黒オーク 「やっぱりこの部屋だな」

黒オーク 「……従業員の部屋を増設せんといかんなあ」


死神メイド 「ずっといるわけでもないのに?」


黒オーク 「必要なくなったら、倉庫にするなり潰すなりすりゃ良い」


死神メイド 「大雑把ね」

死神メイド 「良いわ。私の部屋を貸しましょう」


黒オーク 「おお?」

黒オーク 「珍しい。相部屋嫌いのお前さんが」


死神メイド 「抱き枕が欲しかったところなのよ」

死神メイド 「殴る用の」


中二 「なぐ……」


ガチャ


??? 「げっ……」


中二 (誰か来た)

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/10/06(木) 14:04:08.16 ID:27vkZ7ng0
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/01(火) 15:05:40.02 ID:k6+nREwy0
待ち
113 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:04:41.73 ID:QHGvs5D/o


死神メイド 「あら」


黒オーク 「おん?」

黒オーク 「おお、たしか……」


??? 「あちゃー……誰もいないだろって思って来てみたら」

女郎蜘蛛娘 「なーんで、揃っているかなあ」


中二 (人間……)

中二 (じゃ、ないか。耳が尖ってるし)


死神メイド 「女郎蜘蛛娘よ」

死神メイド 「娼婦狐の遊郭の」


中二 「遊郭……」


黒オーク 「おおー」

黒オーク 「そちらさんには、日頃お世話になっとります」


ペコ


女郎蜘蛛娘 「あ、あははは……どうも……」


中二 「お世話に……」


114 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:11:15.82 ID:QHGvs5D/o


死神メイド 「安心して、そういう意味のお世話じゃないわ」


中二 「あ、そうですか……?」


死神メイド 「雄としての体がお世話になっているのよ」


中二 「想像通りですがっ?」


黒オーク 「なってない、なってない」

黒オーク 「おれは」


中二 「はあ……」


死神メイド 「娼婦を派遣するギルドの子よ」

死神メイド 「うちも派遣先として登録しているの」

死神メイド 「そういうサービスを求めるお客もいるから」


中二 「な……なるほど」


女郎蜘蛛娘 「ああ、うち男娼もいるよ」


中二 「ほ、ほほう……」

中二 (そういうの、あるんだ)


黒オーク 「これこれ、変なことを教えとらんで」



115 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:20:27.56 ID:QHGvs5D/o



黒オーク 「そいで、どうしたんでがすか」


女郎蜘蛛娘 「ぅえ゛っ?」


黒オーク 「部屋が分かんなくなったでがしょうか?」


女郎蜘蛛娘 「ああ、いやー……」

女郎蜘蛛娘 「あぁーっは……はは……」


中二 (何だか締まりの無い人だ……)


女郎蜘蛛娘 「はは………」

女郎蜘蛛娘 「………ちょ」

女郎蜘蛛娘 「ちょーっと……昼寝に」


黒オーク 「へえ……?」


女郎蜘蛛娘 「いやぁー……あっはっは、どーしよ」

女郎蜘蛛娘 「あははは……」


中二 (娼婦……っていったら、やっぱりあれだよね)

中二 (ご奉仕的な……裏的な……)

中二 (……はじめて見た)


116 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:33:03.06 ID:QHGvs5D/o


死神メイド 「逃げてきたのね」

死神メイド 「また」


女郎蜘蛛娘 「ぬ゛っ……」


黒オーク 「うん?」


中二 「逃げて……」


死神メイド 「この子、ここでサボるつもりだったのよ」

死神メイド 「お客をとるのが嫌だから……」


女郎蜘蛛娘 「おおーっとお!」


ガシ


中二 「ひっ!?」

中二 (肩を掴まれた!)


117 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:33:30.59 ID:QHGvs5D/o


女郎蜘蛛娘 「妹! 妹ではないか妹よ!」

女郎蜘蛛娘 「なんかほら生き別れた感じの!」


ユッサユッサ


中二 「え、ええー!?」

中二 「あ、アタシは……」


女郎蜘蛛娘 「妹! 妹だよ妹!」

女郎蜘蛛娘 「うん、妹だよ妹! 見れば見るほど妹だ。髪型似てるし!」

女郎蜘蛛娘 「いやあー、会いたかったぞ妹!」


バシン バシン バシン バシン


中二 「ちょっ……痛っ……たたかっ……」


女郎蜘蛛娘 「よーっし、妹ぉー! ここじゃアレだから移動しようではないかー!」

女郎蜘蛛娘 「積もる話をしようではないかー!」

女郎蜘蛛娘 「積もっちゃおうじゃないかー!」


ガシ ヒョイ 


中二 「おふわっ!?」

中二 (担がれた!)


黒オーク 「お、おい……」


女郎蜘蛛娘 「じゃあ、そういうことで!」

女郎蜘蛛娘 「私たち、積もる話が積もってるんで!」


ダ ダ ダ ダ ダ ダ


…………


118 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 04:37:23.65 ID:QHGvs5D/o


…………



黒オーク 「……はあ」


死神メイド 「…………」


カチ コチ カチ コチ


黒オーク 「…………」


死神メイド 「……良いのかしら」

死神メイド 「連れ去られちゃったわよ、あの子」


黒オーク 「……お」

黒オーク 「いかんいかん、そうだった」


死神メイド 「百等自警団を呼びましょう」


黒オーク 「殺す気かい」

黒オーク 「えーっと、娼婦狐さんとこの連絡先は……」


ガサ ゴソ ガサ


死神メイド 「…………」



…………























119 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 05:10:37.17 ID:QHGvs5D/o





■女郎蜘蛛娘


http://imgur.com/A38q8xC
(画像はフィクションです)


種族 : 女郎蜘蛛(劣性)
所属 : 千夜光ギルド / 常夜絢爛楼閣
所属隊: なし
職業 : 見習い娼婦 / 軽戦士 / 罠士 / 地図士
レベル: 001 / 005 / 015 / 77
体質 : 投げやり / 天然 / 人情家 / 母性 / 苗床体質
弱点 : 鈍足 / 睡眠 / 暗闇
耐性 : 混乱 / 水 / 魅了 / 淫(無効)
特殊技:いとをだす / いつでも脱出 / ひっさつパンチ


商人の町で暮らす気だるげな少女。
サキュバスと似たような種族ながら、性欲がない。


120 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 05:12:27.52 ID:QHGvs5D/o
>>119 ミスごめんなさい







■女郎蜘蛛娘


http://i.imgur.com/A38q8xC.jpg
(画像はフィクションです)


種族 : 女郎蜘蛛(劣性)
所属 : 千夜光ギルド / 常夜絢爛楼閣
所属隊: なし
職業 : 見習い娼婦 / 軽戦士 / 罠士 / 地図士
レベル: 001 / 005 / 015 / 77
体質 : 投げやり / 天然 / 人情家 / 母性 / 苗床体質
弱点 : 鈍足 / 睡眠 / 暗闇
耐性 : 混乱 / 水 / 魅了 / 淫(無効)
特殊技:いとをだす / いつでも脱出 / ひっさつパンチ


商人の町で暮らす気だるげな少女。
サキュバスと似たような種族ながら、性欲がない。




121 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:00:12.62 ID:QHGvs5D/o


…………



野外喫茶



瞑想詩人 「模様を描く石畳……見上げれば、低く星の靄がかかる黒天井」

瞑想詩人 「ここは夜を知らない夜の町だけれど、静かになるときがある」

瞑想詩人 「一日が終わろうとするカフェ」

瞑想詩人 「去ってしまった客の変わりに、さて、何が来るのだろうか……と」


サラ サラ


女郎蜘蛛娘 「……いやー、ごめんごめん」


中二 「うええ、頭がクラクラする」


女郎蜘蛛娘 「許してよー、何かご馳走するからさあ」


中二 「いえ、あの……」


女郎蜘蛛娘 「すいませぇん、注文良いですかあ!」


中二 (ここでは話を聞かないのが礼儀なのだろうか)

中二 「あの、ですから、アタシはあの宿に……」


スタ スタ スタ


??? 「はいはーい……あんたはまったく、私の交代間際に……」

??? 「って」

パン娘 「あぁあーーー!!」


中二 「!?」


パン娘 「あんた、あの時の!」



122 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:14:56.88 ID:QHGvs5D/o


中二 「え?」


女郎蜘蛛娘 「なになに、知り合い?」


パン娘 「あんた!」


バンッ


中二 「はい!?」


パン娘 「さっきはよくもやってくれたわね!」

パン娘 「おかげで、料理を作り直すハメになったんだから!」

パン娘 「しかも、ぶちまけた分の料理代、私のお給料からひかれちゃうんだから!」


中二 「ええーっと」

中二 「身におぼえが……」


パン娘 「無いとは言わせないわよ!」


女郎蜘蛛娘 「おー、会話の連携プレー」


パン娘 「あんた、店の中をドタバタ駆け抜けて行ったでしょう!」

パン娘 「あのときよ!」


中二 「えー……」

中二 「!!」

中二 「ああ!」

中二 (人の骨さんに追われていたときに、そんなことがあった気がする!)


123 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:19:26.20 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「思い出したようね」

パン娘 「まったく、厚かましいを通り越して良い度胸ね

パン娘 「あんなことをしておいて、のこのこ客として戻ってくるなんて」

パン娘 「まったく、どうしてくれようかし……」



ガタタンッ


中二 「ごめんなさい!」


ビシッ


パン娘 「!?」


女郎蜘蛛娘 「おおー、見事な直角謝罪」



124 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:28:30.37 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「え」

パン娘 「ええーっと……」


中二 「決して、わざとやったわけでは無いんですが」

中二 「本当にごめんなさい!」


ビシッ


パン娘 「……あ、え」

パン娘 「まあ、うん……そ、そうよ」

パン娘 「当然、ごめんなさいよね……」


中二 「料理!」


パン娘 「はいっ?」


中二 「いえっ、被害は……」

中二 「お店の被害はいったいどれほどの……!」


パン娘 「……あ、えーっと」

パン娘 「ミルクケーキに、赤い木の実のタルトに、蜜の紅茶に……」

パン娘 「あとはお皿が一枚。そのくらいかな……」


中二 「ごめんなさい!!」


ビシィッ


パン娘 「ええーっ……!?」


女郎蜘蛛娘 「見事な六時半」


125 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:35:41.79 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「いや、あの、あんた、別にそこまで……」


中二 「ごめんなさい!」


ビシィッ


パン娘 「わ、分かったから……!」

パン娘 「顔あげなさいよ。これじゃ私、年下をいじめてるみたいじゃない」


女郎蜘蛛娘 「初対面でも当たりきついもんねー、パン娘」


パン娘 「やかましいわよっ」

パン娘 「……ねえちょっと、蜘蛛娘、何とか言ってよ」

パン娘 「この子、あんたの連れなんでしょ?」


女郎蜘蛛娘 「あー、無理」

女郎蜘蛛娘 「私も今さっき会ったばっかで、付き合い方よくわかんないもん」


パン娘 「はあっ!?」


126 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:42:29.97 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「どういうことよ」

パン娘 「もー、いいから何とかしなさいよ」


女郎蜘蛛娘 「しっかたないなあ」

女郎蜘蛛娘 「……ねえねえ、君、顔上げなよ」


中二 「そういうわけにはいきません!」

中二 「まずは、しっかりと謝罪を!」

中二 「この姿勢で五分間!」


ビシィ


女郎蜘蛛娘 「あー、そうかー」

女郎蜘蛛娘 「頑張れっ」


中二 「はいっ」


パン娘 「ちょっと、何で煽ってんのよ!」

パン娘 「本当どうにかしてよ。あんたたち髪型一緒でしょ!」


女郎蜘蛛娘 「だよね。びっくりだよねー」


中二 「ごめんなさい!」


パン娘 「あーん、もう、どうすりゃ良いのよお」


127 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 06:55:29.34 ID:QHGvs5D/o


中二 「人が一生懸命につくった料理を」

中二 「作品を! 台無しにしてしまうだなんて」

中二 「裸で土下座でもしなければ贖えないほどの悪行!」

中二 「ごめんなさい!」


パン娘 「いや、別にそんな……つくったの別の人だし……」


女郎蜘蛛娘 「あー、裸で土下座はしないんだね」


パン娘 「ちょっと、また……!」


中二 「寒いじゃないですか!」


パン娘 「!?」


中二 「裸で土下座したら、寒いじゃないですか!」


パン娘 「そ、そうだけど……」


中二 「寒いのは、駄目です」

中二 「嫌です」


パン娘 「…………」

パン娘 「ええぇー……」


128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/11(金) 12:29:18.67 ID:cZlhrRBtO
129 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:13:23.67 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「ちょっと、何なのよー」

パン娘 「どうしたら良いのよぉ……」

パン娘 「怒鳴ったのは謝るから、もう顔あげてよ」


中二 「謝るのはアタシの方です!」

中二 「ごめんなさい!」


パン娘 「ほ、本当に、分かったから」

パン娘 「顔あげて、座ってってば」

パン娘 「ほら、ここに立たれたら他のお客さんも困るし……」


中二 「……はっ、ご、ごめんなさい」


ガタタ ストン


パン娘 「……もー、びっくりしたあ」


女郎蜘蛛娘 「君、おもしろいねえ。変で」


中二 「変……」

中二 「物づくりの人はとりわけ尊敬するように心がけていまして……」

中二 「いや、本当にごめんなさい」


パン娘 「良いけどさあ」

パン娘 「これじゃあ、怒るに怒れないじゃない」


130 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:23:07.50 ID:QHGvs5D/o


…………


パン娘 「へえー、今日来たばかりなんだ」


女郎蜘蛛娘 「ひとりで?」


中二 「はい、まあ。おかげで右も左も分からず……」


パン娘 「分かる分かる」

パン娘 「広いしゴチャゴチャしてるもんねえ、この町」

パン娘 「私も来たばっかりのとき、いっぱい迷ったもん」


女郎蜘蛛娘 「自慢だけど私ー」

女郎蜘蛛娘 「二日でこの辺の道おぼえたよ?」


パン娘 「あんた、だらしないくせに方向感覚だけは良いわよね……」


女郎蜘蛛娘 「あはは……」


中二 (二人は知り合いなんだろうか)

中二 (って、いや、早く黒オークさんの宿に戻らないと)

中二 「あのー……」


パン娘 「あっ、じゃあさあ」

パン娘 「パンケーキ食べていきなよ!」

パン娘 「おいしいんだよー、ここのパンケーキ!」

パン娘 「私、奢ったげる!」



中二 「ええー……」

中二 「ご、ごちそうになります」


131 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:31:58.50 ID:QHGvs5D/o


女郎蜘蛛娘 「わーい」


パン娘 「あんたは今までのツケと合わせて払いなさいよ」


女郎蜘蛛娘 「ええー……」

女郎蜘蛛娘 「やだ」


パン娘 「あんた!」


女郎蜘蛛娘 「冗談、冗談」

女郎蜘蛛娘 「お金入ったらちゃんと払うから」

女郎蜘蛛娘 「私はいつものやつ」


パン娘 「はいはい」

パン娘 「まったく……」


サラ サラ カキ カキ


女郎蜘蛛娘 「……あ」

女郎蜘蛛娘 「ごめーん」

女郎蜘蛛娘 「お金ないや」


パン娘 「はあっ?」


女郎蜘蛛娘 「ねえねえ、君、持ってるー?」


中二 「いえ、無一文ですね」


女郎蜘蛛娘 「あちゃー」


132 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:38:10.52 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「あんた、お金持たずにやってきたわけ!?」


女郎蜘蛛娘 「いやあ、来る予定はなかったのよ」

女郎蜘蛛娘 「でもさー、なりゆきでね」


中二 (それなのに、アタシにご馳走するとか言ってたんだ……)


パン娘 「はあ……」


女郎蜘蛛娘 「ごめーん」

女郎蜘蛛娘 「私、水ね」


パン娘 「……いいわよ。出してあげる」

パン娘 「いつものね」


女郎蜘蛛娘 「良いの?」


パン娘 「お店に来て水だけ飲んでるなんて」

パン娘 「友だちとしてこっちが悲しくなるわよ」


女郎蜘蛛娘 「おお、友よー」

女郎蜘蛛娘 「ありがとう!」


ガシ


パン娘 「きゃっ、ちょっと、こんなとこで抱きつかないでよっ……」

パン娘 「やんっ……」


中二 (水はタダなんだ……)

中二 (わりと裕福なところなんだろうか)


133 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2016/11/11(金) 19:44:07.02 ID:QHGvs5D/o


パン娘 「ちゃんとツケに足しとくからね」


女郎蜘蛛娘 「ええー?」

女郎蜘蛛娘 「けち」


パン娘 「あんたねえ……っ」


女郎蜘蛛娘 「冗談だって」


中二 「あの、アタシが駄目にした分」

中二 「お金ないけど、皿洗いでも何でもして返しますから!」


パン娘 「い、いや、だからいいって」

パン娘 「あんたはあんたで、どうしてそこまでするのよ……」


女郎蜘蛛娘 「私の分までやってー」


パン娘 「あんたは黙ってなさい!」


中二 「あのっ……!」


パン娘 「本当に大丈夫だからっ」

パン娘 「じゃあ、ちゃっちゃと注文届けてくるわね!」


スタ タ タ タ


134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/11/12(土) 19:20:59.58 ID:7OJegeYAo
おおっ何か絵が上手くなってる?
以前が下手だった訳じゃないけど趣味全振りの絵柄で評価し難かったのが
良い感じのバランスに見える
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/06(火) 09:01:24.68 ID:zR/jUAok0
待ち
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/01(日) 07:36:15.43 ID:tBnFkHuG0
あけおめろまえ!
137 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 03:58:20.44 ID:4HmhLnm2o


………

リィン ゴオン リィン……




中二 (どこからか、鐘の音……?)


キョロ キョロ


女郎蜘蛛娘 「あー、もうこんな時間かあ」


中二 「時間?」


女郎蜘蛛娘 「ほら、ここってずっと夜じゃない?」

女郎蜘蛛娘 「ここで生まれ育つとそうでもないみたいだけど、外の世界から来ると、時間の感覚がつかめないわけ」

女郎蜘蛛娘 「だから、こうやって鐘が鳴るんだよ」


中二 「へえ……」


女郎蜘蛛娘 「どこから聞こえてくるか分かんないんだけどね」


中二 「不思議な鐘ですか」


女郎蜘蛛娘 「そうそう」

女郎蜘蛛娘 「まあ、この町で不思議なんて数えてたら、星を数えるのと変わんないけどね」


138 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:16:45.99 ID:4HmhLnm2o


ゴオン リイン……



中二 「宿オークさんの宿には時計がありましたけど」

中二 「あの鐘も、どこかの時計塔から鳴っているんでしょうか」


女郎蜘蛛娘 「さあ……」

女郎蜘蛛娘 「そうかもしれないけど、誰も見つけたことがない」

女郎蜘蛛娘 「もしかしたら時計ができる前……いやいや、町が出来る前から鳴っているのかもねえ」


リイン ゴオン 


中二 「……ううーむ、とことんアタシの常識が通じなさそう」


女郎蜘蛛娘 「あははぁ、考えすぎは毒だぞ妹よ」

女郎蜘蛛娘 「私のようにヘラヘラ無銭飲食できるほど図太くなるのだー」


中二 (この人はもっと考えた方が良い気がする……)


女郎蜘蛛娘 「とにかく、あの鐘の音は覚えておいた方が良いよ」

女郎蜘蛛娘 「冒険者は特にね」



139 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:36:09.73 ID:4HmhLnm2o


中二 「冒険者?」


女郎蜘蛛娘 「ほら、この町って……」


ズズズ


女郎蜘蛛娘 「……ん?」


中二 「……何か不安な音が聞こえますが」

中二 「地響きというか……」


ズ ズ ズ ズ


女郎蜘蛛娘 「うーん、何だろうね」


中二 「だ、大丈夫なんでしょうか、これは」


女郎蜘蛛娘 「さあ」


中二 「さあって……」


ズ ズ ゴ ゴ ゴ


中二 「ち、近づいてませんか?」

中二 「下から大きな何かが来ているような」


女郎蜘蛛娘 「そのわりに揺れてないけど……」




コツ コツ コツ コツ


パン娘 「おまたせー」


女郎蜘蛛娘 「お、くるくる」

女郎蜘蛛娘 「ここのパンケーキは美味しい上に来るのが早いんだよー」


中二 「いや、それどころじゃ……」


パン娘 「パンケーキ二つと、星蜜の……」




ゴ ゴ ゴ ゴ

ボコン



パン娘 「きゃあ!?」


ガシャン ガララン


中二 (ちょうどパン娘さんが立っているところの床が、箱の蓋みたいに開いた!)



140 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:46:04.67 ID:4HmhLnm2o


モク モク モク


中二 「う、うわ、すごい煙が……!」


女郎蜘蛛娘 「ケホッ……って、吸っても何ともない」

女郎蜘蛛娘 「毒ガスじゃないみたいだけど」


中二 「毒ガス!? ここは床が突然開いて、さらにそこから毒ガスが噴き出す町なんでしょうか!?」


女郎蜘蛛娘 「無いとは言い切れない」


中二 「ええっ!?」


女郎蜘蛛娘 「私もこの町のこと全部知ってるわけじゃないもん」


パン娘 「もー、いったい何なのよお!」

パン娘 「またお料理落としちゃったじゃないの!」


モク モク


中二 (よく見ると不思議な煙……なんだか、キラキラしている)

中二 (というか、もろに煙の中にいるけれど、大丈夫なんだろうか)


モク モク モク モク


人影 「…………」


中二 「……ん?」


モク モク


中二 (煙の向こうに、女郎蜘蛛さんでもパン娘さんでもない人影がある……)


141 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 04:51:47.41 ID:4HmhLnm2o


モク モク モク


人影 「…………」


サアアア


中二 「煙が消えていく……」


ザアア


人影 「…………」

??? 「…………」


女郎蜘蛛娘 「……おおー」


中二 (煙の中から、女の人が現れた)

中二 (人間みたいだけど、頭に犬耳をつけている……?)


??? 「…………?」

コボルト娘 「ここは……」


キョロ キョロ




142 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:02:41.81 ID:4HmhLnm2o


コボルト娘 「…………」


キョロ キョロ


中二 (小さな弓のようなものを持っているけど、矢のようなものは見当たらない)

中二 (それにしても、ぼろぼろの服……)


コボルト娘 「酒場……?」


中二 (む、低めの声が格好いい)


女郎蜘蛛娘 「喫茶店だよ」

女郎蜘蛛娘 「青空喫茶へようこそー」


コボルト娘 「青空、喫茶……」

コボルト娘 「…………」


水の入ったコップ


中二 (アタシの飲みかけの水を見つめている)


コボルト娘 「その水は……」


中二 「は、はい」


コボルト娘 「無料だろうか」


中二 「そうだと思いますけど……」

中二 (女郎蜘蛛さん、お助けを)


女郎蜘蛛娘 「うん、タダだよ」


コボルト娘 「そうか……」

コボルト娘 「いきなりですまないが、それを私にくれないか」

コボルト娘 「ひどく喉がかわいているんだ」


中二 「ええと……」



143 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:03:43.02 ID:4HmhLnm2o

>>144


1. 中二 「どうぞ」
2. 中二 「いくらくれる?」


144 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:04:11.22 ID:4HmhLnm2o





145 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:13:35.34 ID:4HmhLnm2o


中二 「どうぞ」


コボルト娘 「恩に着る……」


パン娘 「ちょっとお!」


コボルト娘 「?」


パン娘 「あんた、何してくれてるのよ!」

パン娘 「おかげで料理が台無しになっちゃったじゃない」

パン娘 「私のお給料から引かれちゃうんだからね!」

パン娘 「お尻も痛いし!」


ギャイ ギャイ


女郎蜘蛛娘 「まあまあ、落ち着きなよ」

女郎蜘蛛娘 「二度あることは三度あるって」


パン娘 「まだ二度目よ! 不吉な予言をしないで」


女郎蜘蛛娘 「三度なかったんだ。良かったじゃない」


パン娘 「良かないわよ!」


コボルト娘 「……料理」


床にぶちまけられたパンケーキ ×2
星蜜のお茶 ×2


コボルト娘 「すまない」


パン娘 「そうね、すまないわよね! お店の床までこんなにして」

パン娘 「あーあ、大きな穴!」

パン娘 「もー、どうしてくれるのよ!」


中二 「皿洗いでも、何でもしますから……っ」


パン娘 「あんたはもう良いのっ」



146 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:22:15.30 ID:4HmhLnm2o


コボルト娘 「すまない」

コボルト娘 「先にこの水だけでも飲ませてくれないか」

コボルト娘 「ゲホッ……償いは、ちゃんとするから」


中二 (肩で息をしている)


パン娘 「償いっ……て」

パン娘 「何なの、ひどく疲れているみたい」

パン娘 「もしかして、潜ってたの?」


中二 (もぐってた?)


コボルト娘 「ああ」

コボルト娘 「事情を話すと、少し複雑だが……」


ハア ハア


パン娘 「い、いいわよ、飲みなさいよ」

パン娘 「座って」





147 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:29:31.87 ID:4HmhLnm2o


コボルト娘 「ありがとう……」


ギギ ガタタ

ストン


コボルト娘 「…………」


ガサ ゴソ


薬筒


中二 (細長い筒を取り出した……)


コボルト娘 「…………」

コボルト娘 「ゴクリ……うぐっ」


中二 (中の物を一気飲み)

中二 (苦そう……)


コボルト娘 「ゴクゴ゙クゴク……」


中二 (すごい勢いで水を飲んでいる)


コボルト娘 「プハッ……」

コボルト娘 「ふう……」


中二 (この人、おっぱいが大きい)


148 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:39:22.08 ID:4HmhLnm2o


中二 (年上だとは思うけど、結構近そうな気もする)


コボルト娘 「ありがとう、生き返った」


中二 「い、いえ……」

中二 (微笑みが格好いい)

中二 (犬耳だけど)


パン娘 「おかわりは?」


コボルト娘 「ありがとう、もう十分だ」


パン娘 「そう」

パン娘 「それにつけても、本当にボロボロね」


コボルト娘 「ああ、私が挑むにはまだ早いところだったようだ」


女郎蜘蛛娘 「他の人はいないの?」


コボルト娘 「いない。一人だけだ」


女郎蜘蛛娘 「わお」


中二 (女郎蜘蛛さんが眠たそうに驚いている)


149 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 05:53:04.68 ID:4HmhLnm2o


女郎蜘蛛娘 「すごいね、その若さで一人で潜るなんて」


コボルト娘 「そんなことはない……」


中二 (長い前髪で分かりにくいけれど、左右で目の色が違う)


コボルト娘 「……いくらだろうか」


パン娘 「へ?」


コボルト娘 「私が台無しにしてしまった料理と、床の修理費は」


パン娘 「え、ええと……いや……」


コボルト娘 「こんななりだが、そのくらいの金は出せる」

コボルト娘 「いま出せなくても、潜って返す」


パン娘 「そりゃ、床はちょっと偉い人に聞かなきゃ分かんないけど」

パン娘 「いいって、ちゃんと休んでからで」


コボルト娘 「そうか……」


中二 (犬というより、狼みたい)


150 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 06:20:36.85 ID:4HmhLnm2o


女郎蜘蛛娘 「ねえねえ、パン娘ー」


パン娘 「何よ」


女郎蜘蛛娘 「パンケーキは?」


パン娘 「床に落ちているわよ」


女郎蜘蛛娘 「えー……」

女郎蜘蛛娘 「じゃあ新しいやつ」


パン娘 「あんた、タダ飯食らう分際で……ちょっとは遠慮しなさいよね」


コボルト娘 「すまない」


パン娘 「いや、ええと……」

パン娘 「ああ、もう、分かったわよ!」

パン娘 「持ってくるわよ」


女郎蜘蛛娘 「わーい」


中二 「いやはや、ごめんなさい」


パン娘 「……あんたも、パンケーキで良い?」


コボルト娘 「私?」

コボルト娘 「いや、私は……」


パン娘 「あら、店をこんなにしといて、何も食べずに出て行くつもり?」


コボルト娘 「……。だから、金なら……」


女郎蜘蛛娘 「気にしない、気にしない」

女郎蜘蛛娘 「照れ隠しで言ってるだけだから」


コボルト娘 「……?」


女郎蜘蛛娘 「ここの名物なのよ」

女郎蜘蛛娘 「隠しメニュー、パン娘の優しさ照れ隠し」


パン娘 「そんなもん無いわよ」

パン娘 「じゃあ、ちょっと待ってて。すぐに持ってくるから」


コツ コツ コツ コツ


151 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 06:44:55.47 ID:4HmhLnm2o



女郎蜘蛛娘 「……いやあ、一人で潜るとはねえ」


コボルト娘 「…………」


中二 「あの、潜るって……」


女郎蜘蛛娘 「地下」


中二 「地下?」


女郎蜘蛛娘 「地下じゃないかも」


中二 「はい?」


女郎蜘蛛娘 「とにかく、モンスターとかお宝とか」

女郎蜘蛛娘 「いっぱいあるとこ」


中二 「モンスター……お宝」

中二 「ああ、今流行りの……」


女郎蜘蛛娘 「ああー」

女郎蜘蛛娘 「絶対わかってないよね」


152 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/10(火) 14:37:00.36 ID:4HmhLnm2o



コボルト娘 「……この町には来たばかりなのか?」


中二 「はい」

中二 「まだまだ右も左も分からなくて」


コボルト娘 「そうか……」

コボルト娘 「…………」


女郎蜘蛛娘 「あなたは長いの? この町」

女郎蜘蛛娘 「なんだか慣れた感じがするけど」


コボルト娘 「いや……」

コボルト娘 「百日ほど前に来たばかりだ」


中二 (ここって一日はどのくらいの長さなんだろう)


女郎蜘蛛娘 「それでもう一人で潜ってるんだ」


コボルト娘 「……そうするしかないから」


女郎蜘蛛娘 「ああ、何か事情ありそうだね」


153 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:14:19.50 ID:iAp7NWefo


コボルト娘 「…………」


女郎蜘蛛娘 「まあ、ここで出会ったのも巡り合わせだよ」

女郎蜘蛛娘 「パンケーキでも食べてのんびりやろうよ」


コボルト娘 「……赤き月の導きのままに」


女郎蜘蛛娘 「ん? なあにそれぇ」


コボルト娘 「……私の世界の挨拶のようなものだ」

コボルト娘 「ここに月は出ないようだが」


女郎蜘蛛娘 「あはは」

女郎蜘蛛娘 「面白いことも言うんだ」


コボルト娘 「いや、今のは……」


中二 (小型の木の弓……あたしでも片手で持てそう)

中二 (持つところに何か腕輪みたいなものがゴチャゴチャついているけど、使いにくくないんだろうか)



154 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:24:33.74 ID:iAp7NWefo



女郎蜘蛛娘 「でもまさか、ここから出てくるとはねえ」


床の大穴


コボルト娘 「申し訳ない」


女郎蜘蛛娘 「良いよ良いよ、私たち一銭も払ってないし」

女郎蜘蛛娘 「払わないし」


中二 「いま言い直しませんでした?」


女郎蜘蛛娘 「あっはっは」


コボルト娘 「……私が払う」


女郎蜘蛛娘・中二 「ん?」


コボルト娘 「お前たちの食べる分は、私が払おう」


女郎蜘蛛娘 「…………」


中二 「…………」

中二 「……あの、えっと」


女郎蜘蛛娘 「うんうん。真剣な声で」

女郎蜘蛛娘 「お前……だって」

女郎蜘蛛娘 「女の子同士なのに、ちょっとドキッとするよね」


中二 「いえ、そうじゃなくて」

中二 「いえ、はあ、そうですね……」

155 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:33:38.27 ID:iAp7NWefo


コボルト娘 「そうさせてくれ」

コボルト娘 「でないと、こちらの気がすまない」


中二 (借りはつくらない主義……みたいなものなのかな)


女郎蜘蛛娘 「まあ、どうしてもっていうなら良いと思うけど」

女郎蜘蛛娘 「この大穴、もしかして大発見なんじゃない?」


中二 (大発見?)


女郎蜘蛛娘 「だってさあ、まだ見つかっていなかった脱出口じゃない」


コボルト娘 「偶然見つかって運が良かった」

コボルト娘 「どうやら、こちらからは繋がらないようだが」


女郎蜘蛛娘 「にしてもさあ、ギルドに届けたら特別報酬がっぽり貰えちゃうよ」


中二 (ギルド……)


コボルト娘 「だと良かったんだが……」



156 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:40:23.57 ID:iAp7NWefo


コボルト娘 「モンスターから逃げきるのに必死だったから」

コボルト娘 「マッピングをする暇もなかった」


女郎蜘蛛娘 「あちゃー……」


コボルト娘 「……あれはどこだったのだろう」

コボルト娘 「青緑色の壁が続く水道」

コボルト娘 「あたりに他の冒険者の姿を見えなかった」


女郎蜘蛛娘 「うーん……上層の人たちなら分かるのかもねえ」


中二 (上層……)


女郎蜘蛛娘 「まあ、良かったよ。命があって」

女郎蜘蛛娘 「帰還おめでとう」


中二 「お、おめでとうございます」


コボルト娘 「……感謝する」


157 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/01/26(木) 01:46:16.09 ID:iAp7NWefo


コツ コツ コツ


パン娘 「へーい、今度こそおまたせえ……」


女郎蜘蛛娘 「お、来た来た」


中二 (三つの皿に、飲み物までいっぺんに持ってきている)

中二 (なれた様子……有能な店員さんなんだなあ)



??? 「全員!」

??? 「動くなぁ!」



中二 「!?」




158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/27(金) 22:07:00.26 ID:K1Q1iIG9o
中二さんのキャパはまだ平気なんだろうか
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/02/22(水) 17:44:31.80 ID:d0vPOVqK0
待ち
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/03/17(金) 06:17:05.72 ID:JVJyYD770
まだなのかい?
161 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/20(月) 10:15:18.59 ID:uhWJSASWo



中二 (青空喫茶の入り口に……)


??? 「屋根の無い店とはありがたい」

不死竜娘 「百等自警団、不死竜隊である!」


太っちょ兵 「…………」


ひげ兵 「…………」


自警団員たち 「…………」



中二 「自警団……」

中二 (びしっとした、たぶん制服を着ている)

中二 (無骨な鎧や兜をしている人もいるけど、羽根つきだったり、トゲつきだったり、そんなもの身につけてなかったり、統一感は無い)


女郎蜘蛛娘 「もう来たんだ。最近仕事が早いなあ」


コボルト娘 「…………」




不死竜娘 「先ほど、穴の発生が確認された!」

不死竜娘 「よって調査を行う!」

不死竜娘 「これより一時、この場の権限は我々不死竜隊が預からせていただこう!」


162 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/20(月) 18:24:06.38 ID:uhWJSASWo


不死竜娘 「申し訳ないが市民の方々には、安全のため、この場から離れていただくことをお願いしたい!」


中二 「声の大きな人だなあ。うらやましい」


パン娘 「何なのよ、大声で威圧して、偉そうにしちゃって」

パン娘 「お願いだなんて、断れば難癖つけて捕まえるくせに」


女郎蜘蛛娘 「まあまあ、最近は物騒みたいだし」


中二 「穴って、やっぱりさっきの……?」


女郎蜘蛛娘 「うん、コボルト娘ちゃんの出てきた穴」

女郎蜘蛛娘 「さあさあ、面倒になる前に離れようよ」


中二 「はい……」

中二 「うーん、結局食べられないままかあ」


コボルト娘 「すまない。私のせいだ」


中二 「いえ、そんな……」



ズカズカズカ


太っちょ兵 「おらおら、いつまでボサッとしてるんだ!」

太っちょ兵 「けつに根っこでも生えちまったか。がはは!」


ひげ兵 「さっさと従わねえと、うちの隊長はおっかねえぞお」


中二 「うわっ」

中二 (こっちに来た。鎧と何かの革の独特なにおい。中は普通の人間に見える)


パン娘 「ちょっと、乱暴に店の中を歩いて、うちの客をびっくりさせないでよね!」


太っちょ兵 「うひょっ、何て口をききやがる」


ひげ兵 「そっちがさっさとどかねえのが悪いんだ」

ひげ兵 「っと……」


中二 「……う?」

中二 (睨まれた?)


163 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/20(月) 18:34:34.53 ID:uhWJSASWo


ひげ兵 「おいおい、なんだあ、子どもがいるじゃねえか」

ひげ兵 「とんだ不良娘だぜ」


太っちょ兵 「ひひひ、度胸あるじゃねえか、夜にこんな所を出歩くとはよ」

太っちょ兵 「さっさと帰らねえと、人さらいに捕まって娼婦街の闇行きになっちまうぞ?」

太っちょ兵 「もっともここは、いつも夜だけどなあ。わひゃひゃ……」


中二 「いえ、帰るに帰れない事情がありまして……」


パン娘 「行きましょっ、こんなのと真面目に話す必要なんて無いわよ」


中二 「あ、はい……」


太っちょ兵 「何だあ、お前。ずいぶんとキツいこと言うじゃねえか」


パン娘 「ごめんなさいね。私はがらの悪い兵隊が嫌いなの」

パン娘 「あんたたちなんか、アッカンベエよ」


ひげ兵 「おいおい、こちとらお前らが安心して暮らせるよう日々頑張ってるってのに」

ひげ兵 「そりゃあ無いんじゃねえの」


太っちょ兵 「気の強い女は嫌いじゃないぜ」

太っちょ兵 「しかもパン族の女の腰つきが、へっへっへ……」


女郎蜘蛛娘 「おえっ……」


中二 (女郎蜘蛛娘さんが気持ち悪そうな顔をした)



164 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/20(月) 18:48:11.37 ID:uhWJSASWo


不死竜娘 「貴様らあ!!」


ひげ兵・太っちょ兵 「!?」


不死竜娘 「何をもたついているか!」


中二 (隊長らしき人が来た)

中二 (小柄で肌が青白い……顔にツギハギがある)

中二 (耳の上くらいから角が生えて、片方は短い)


ひげ兵 「すみません隊長」


太っちょ兵 「こいつらが、生意気な口をきくもんで」


ひげ兵 「おいっ……」


パン娘 「何よ、いきなり怒鳴ったのはそっちでしょ」


不死竜娘 「生意気な口……?」


太っちょ兵 「うっ……」


不死竜娘 「貴様……」


バチ バチ


中二 (!? 隊長らしき人の角が光り出した)

中二 (帯電している……?)


太っちょ兵 「い、いや、今のは言葉のあやってやつで……」


不死竜娘 「民の僕たる我々が」

不死竜娘 「どの口でそれを言うかあ!!」


バチ バチ

ドゴオン


不死竜娘 の放電!
太っちょ兵 は 210 のダメージ!


太っちょ兵 「ぎゃあ!」


中二 「ぎゃあ!」


165 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/20(月) 19:29:00.05 ID:uhWJSASWo


太っちょ兵 「ううーん……」


ドサ


ひげ兵 「余計なこと言うから……」


不死竜娘 「フンッ。この程度の制裁で気絶とは、軟弱者が」

不死竜娘 「この層のレベルは思ったよりも低いようだ」


中二 「あわわわ、かみ、雷が……」

中二 (背はアタシと同じくらいしかないのに、すごい威圧感)


不死竜娘 「……申し訳ない」

不死竜娘 「我が部下たちが失礼なことをしたようだ」


パン娘 「いや、別にそこまでしなくても……」


不死竜娘 「部下たちは厳しくしつけなければな」

不死竜娘 「さて、ここは危ない。申し訳ないが早く避難していただきたい」


パン娘 「そんなに急かさなくても良いじゃない。営業中だし」


中二 (うわあ、すごい度胸)


不死竜娘 「申し訳ないと言っている」

不死竜娘 「穴の調査をすることは、民の安全な生活のために欠かせないものだ」

不死竜娘 「早ければ早いほど良い。ご理解いただきたい」


コボルト娘 「…………」


パン娘 「そりゃあ、そうでしょうけど……」


不死竜娘 「時間が惜しい」

不死竜娘 「快い協力をお願いする」


中二 (脅迫にしか聞こえない……)


166 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/22(水) 20:29:33.38 ID:XzhKPw8Vo


パン娘 「むうー……」


フヨヨヨヨ


??? 「……こらこら、パン娘」

けやき箒 「自警団のかたがたを困らせちゃいけないよ」


中二 「うわっ」

中二 (箒が飛んできて、口をきいた!)


パン娘 「店長!」


中二 (店長!?)


けやき箒 「……こんばんは、自警団のかた。治安維持活動、お疲れ様です」

けやき箒 「私はこの青空喫茶の店長です」


不死竜娘 「百等自警団不死竜隊、不死竜娘だ」

不死竜娘 「聞いたと思うが、穴の調査のため、自警団員以外の者にはこの場から避難していただきたい」


けやき箒 「ええ、すぐに避難させましょう」

けやき箒 「パン娘、早くお友だちを連れて避難しなさい」

けやき箒 「どんなに小さなものでも、穴が危険なものだからね」

けやき箒 「お客さん、女郎蜘蛛、今度来てくれたときにサービスしますから、これからもご贔屓にお願いしますよ」


パン娘 「……は−い」


コボルト娘 「…………」


中二 「はい……」

中二 (紳士的な箒……)


女郎蜘蛛娘 「やったあ、大っぴらにタダ飯にありつけるや」


パン娘 「アンタね……」


不死竜娘 「快い協力、感謝する」


167 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/03/22(水) 20:52:11.13 ID:XzhKPw8Vo


けやき箒 「終わったら、椅子やテーブルは……」


不死竜娘 「心配無用だ。こちらで元の場所に戻しておく」



中二 「…………」

中二 (ここでは道具も話すんだ……)


パン娘 「ほら、行くわよ」


中二 「あ、はい」


トコトコトコ


女郎蜘蛛娘 「いやあ、相変わらずあの人たちが嫌いみたいだねえ」


パン娘 「当たり前よ」

パン娘 「自警団だからって、あいつら偉そうに威張り散らして」

パン娘 「お店でも行儀悪くお酒飲んで騒いで絡んできて、いっつもお尻を……ああ、思い出しても腹がたつぅ!」


女郎蜘蛛娘 「大きいもんね」


パン娘 「うるさいわよっ。気にしてるんだからね!」


女郎蜘蛛娘 「あはは……」

女郎蜘蛛娘 「でも、このあたりの自警団のガラが悪かったのって、前の隊長のときなんでしょ?」

女郎蜘蛛娘 「今の隊長になってから、そういうの減ったって聞いてるけど」

女郎蜘蛛娘 「うちの店でも、自警団のお客の行儀が良くなったって言ってたし」


中二 「自警団もそういう店、使うんだ……」


女郎蜘蛛娘 「使う使う。暇さえあれば来てるんじゃない」


パン娘 「あんた、自分がそういう話聞くの嫌なくせに、何てこと子どもに言ってるのよ……」


コボルト娘 「…………」


テク テク テク




自警団員の声 「……おい、何だお前」


自警団員の声2 「今ここは立ち入り禁止だぞ。さっさと立ち去……」

自警団員の声2 「うわっ、何をする!?」


ドゴンッ



中二 「!?」

中二 (どこからかすごい音がした)

168 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/23(木) 07:24:38.95 ID:oz9wNQ7Ho


??? 「…………」

死神メイド 「…………」


鎧の自警団員 「キュウ……」


自警団員A 「何だ貴様! どういうつもりだ」

自警団員A 「我々の邪魔をするつもりか!?」


死神メイド 「……違うわ」

死神メイド 「気安く触ってきたので、やめてもらおうと思って」

死神メイド 「お腹を押しただけよ」


自警団員A 「嘘をつけ!! 押しただけだってんならどうして……」


鎧の自警団員 「キュウ……」


自警団員A 「鎧のどてっ腹がぶち抜かれてるんだよ!?」


自警団員B 「こりゃひでえぜ、泥鬼にぶんなぐられたみたいに見事に粉々だ」


自警団員D 「かわいそうに……こないだ新調したばっかだって言ってたのに」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「不思議ね」


自警団員A 「うるせえ!」





169 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/23(木) 08:03:35.95 ID:oz9wNQ7Ho


死神メイド 「…………」


自警団員A 「自警団に暴力を振るうのは重罪だぞ!」

自警団員A 「おまけにそのナメた態度は何だ! 捕まえて牢屋に入れてやる!」


死神メイド 「……ねえ、あなた」


自警団員A 「ああ!?」


死神メイド 「もう少し、静かにした方が良いわ」


自警団員A 「はあ!?」


死神メイド 「人通りが多いとは言え、夜に大声を出したら近所迷惑よ」

死神メイド 「あなたの声、とてもうるさいわ」

死神メイド 「何かあったの。それとも、自覚がないの?」

死神メイド 「自覚が無いのなら、あなた、ちょっと心配だわ」


自警団員A 「……っ………このッッ」

自警団員A 「誰のせいだと思ってやがる!!」


死神メイド 「何が?」


自警団員A 「だから、おれが怒っているのがお前の……」

自警団員A 「えーい、うるせえ! とにかくこれ以上おれを怒らせるな!」


死神メイド 「あなた、怒っているのね」

死神メイド 「自分が怒っているからと言って、それが人を牢屋に入れて良い理由にはならないわ」

死神メイド 「理不尽よ」


自警団員A 「ぐ……ッッ!! ………ぐぎっ!!!」

自警団員A 「この………ッッ」


死神メイド 「私にだって仕事があるの。悪いけれど……」

死神メイド 「………!」



ヒュゴオオオ


不死竜娘 「全団員、どけえええ!!」


170 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/23(木) 08:33:30.25 ID:oz9wNQ7Ho

ドゴオン

ガゴ ゴト ゴロ

バラ バラ パラ



パン娘 「きゃああ!? なになになに、何なのよ、もう!」


中二 「死神メイドさんが現れて、自警団の人と何かもめて……」

中二 「と思ったら、顔色の優れない隊長さんが飛び上がって、どこからか大きな斧のようなものを取り出して」

中二 「帯電しながら落下の勢いにのって死神メイドさん目掛けて突撃しましたね……」


女郎蜘蛛娘 「おー、見事な解説だ」


中二 「へへっ……滑舌は鍛えていますから」


コボルト娘 「…………」



モク モク モク モク

ストン


死神メイド 「…………」

死神メイド 「どうしたの」

死神メイド 「こんなところで、武器を持って戦ったら危ないじゃない」

死神メイド 「机や柵が壊れてしまったわ」


不死竜娘 「貴様を仕留めるためには、最初から手加減などできんからな」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「手加減していたわ」

死神メイド 「この人たちを気づかったのね」



自警団員A 「ふう、ふう、ふう……」

自警団員A 「重いんだよ、この!」


ゴイン


鎧の自警団員C 「キュウ……」


自警団員B 「あ、相変わらず心臓に悪いぜ、隊長の大斧は……」



死神メイド 「おかしな人ね」

死神メイド 「周りの目を気にせず襲ってきたかと思ったら、変なところで気をつかって」


不死竜娘 「その手には乗らん!」


バチチ ブオン

不死竜娘 の 帯電!
不死竜娘 の 素早い斬撃!

ヒラリ

死神メイド は ひらりとかわした!
171 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/23(木) 08:47:44.84 ID:oz9wNQ7Ho


不死竜娘 「バッタのようによく動く……」


死神メイド 「どうしたの、いきなり斬りかかってきて」

死神メイド 「理由が分からない」


不死竜娘 「お前と問答などするものか!」


ブオン ブオン

ヒラリ ヒラリ

ドガ バキバキバキ



パン娘 「きゃああ!」

パン娘 「椅子が! テーブルが! もらったばっかのファイブフェアリーズのサインがあ!」


中二 (ファイブフェアリーズ? どこかで聞いたような……)


女郎蜘蛛娘 「へえー、ここにも来たんだあ」




ヒゲ兵 「隊長、やめてください!」

ヒゲ兵 「今は穴の調査で、そいつとやりあってる暇はねえはずです!」


不死竜娘 「それはお前たちがやれ!」

不死竜娘 「私はこの極悪犯罪人をぶちのめして永久に牢獄にぶち込む!」


ヒゲ兵 「隊長に暴れられたら調査どころじゃねえってさあ!」

ヒゲ兵 「……って、おわっ」


太っちょ兵 「いてて、いったい何が……ふぎゃっ!?」


流れ弾!
重い木片 が 飛んでくる!
太っちょ兵 に 20のダメージ!
太っちょ兵 は 気絶した!


172 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/24(金) 07:11:42.82 ID:sNKls7SUo



死神メイド 「人の話を聞かないなんて、失礼な人」

死神メイド 「人を探しているの。知らないかしら」

死神メイド 「髪が黒か白の、若い……たぶん男か女だと思うのだけれど」


不死竜娘 「でやあああ!」


ビュオン

ドゴオン

バリバリバリ


死神メイド 「……そう」

死神メイド 「困ったわ」


ブオン ヒラリ

バキ ガシャン



通りすがり 「なんだなんだ」


靴磨き 「自警団の喧嘩かな。困るなあ……」


酔っ払い 「いいぞお、やれやれえ」


??? 「…………」



ザワ ザワ

ピー ピー



自警団員A 「こら、見世物じゃないぞ!」


自警団員B 「どうしましょうか」


ヒゲ兵 「隊長が暴れだしたら止まらん」

ヒゲ兵 「しかたねえ、穴の調査はおれたちだけでやるぞ」

ヒゲ兵 「なあに、どうせいつもの迷い穴だろ」

ヒゲ兵 「ちょっと穴周辺の素材を採取して、面倒な書類を上層に送ったらおしまいさ」


173 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/03/24(金) 07:21:14.32 ID:sNKls7SUo


コボルト娘 「…………」


中二 「死神メイドさん……」

中二 (自警団から狙われるって、いったい何をしたんだろう)


けやき箒 「君たち、ここで立ち止まっていてはいけないよ」

けやき箒 「早く避難しなさい」


パン娘 「店長! お店……」


けやき箒 「なあに、すぐになおせるさ」


パン娘 「でもお……」


けやき箒 「調理台はちょっとやそっとじゃ壊れないし、うちは屋根の無い青空喫茶だ」

けやき箒 「飲み物を置ける空いた木箱さえあれば、それで立派なお店だよ」

けやき箒 「さ、行った行った」


174 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/04/17(月) 13:13:10.48 ID:gIkSXohL0
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/07(日) 08:48:23.73 ID:ORBPWRW70
176 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/05/24(水) 01:33:08.78 ID:Wsu/zdsto


…………


糸巻きの町 路地裏



ワー ワー

ガチャン ガシャ



パン娘 「さてと……」


女郎蜘蛛娘 「良かったねえ、仕事はやく上がれて」


パン娘 「本当ならもっと早く上がれてたんだけどね」

パン娘 「どうする? 何か食べるなら、うちにでも来る?」

パン娘 「あまり物で良ければ、何か作るわよ」


女郎蜘蛛娘 「わーい」

女郎蜘蛛娘 「やったぜ中二ー」


女郎蜘蛛娘の ハイタッチ!


中二 「わ、わーい」


パチン


中二 「……て、アタシ、宿オークさんの宿に戻らないと……」


女郎蜘蛛娘 「いえーい!」


中二 「いえーい!」


パチン


中二 (体が逆らえない! 柔軟な演技のため、相手の行動を受け入れるように心がけていたせいか!)



177 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/05/24(水) 01:39:58.84 ID:Wsu/zdsto



コボルト娘 「…………」


テク……


パン娘 「ねえ、あなたも来る?」


コボルト娘 「……私?」


パン娘 「冒険から帰ってきたばかりで、栄養つけなきゃでしょ」

パン娘 「店でごちそうできなかった分、うちで食べさせてあげるわよ」

パン娘 「あまりものだけど」


コボルト娘 「…………」

コボルト娘 「冒険者ギルドに報告しなくてはならない」

コボルト娘 「だから……」


パン娘 「じゃあ、先にそっちを済ませてからにする?」

パン娘 「ねえ」


女郎蜘蛛娘 「いえー……ん?」

女郎蜘蛛娘 「ああー、良いよ。私も新しい依頼ないか見ておきたいし」

女郎蜘蛛娘 「ね?」


中二 「え? あ、はい」


女郎蜘蛛娘 「いえーい」


中二 「いえーっ……あの、もうちょっと手を下げてもらえませんか」

中二 「飛ばなきゃ届かない……」


178 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/05/24(水) 02:06:53.25 ID:Wsu/zdsto


女郎蜘蛛娘 「君、小っこいよねえ」

女郎蜘蛛娘 「にんげんの中でも小さい方なんじゃない」


中二 「そうですね。学校でも整列のときはだいたい前になりますね」


女郎蜘蛛娘 「学校かあ。この町にも学院があるよ、すごくでっかいの」

女郎蜘蛛娘 「いえーい!」


中二 「いえー……あの、さっきより高くなってませんかね?」



コボルト娘 「…………」


パン娘 「じゃ、行きましょ。一番近いギルドは……」


グキュルルル


コボルト娘 「…………」


パン娘 「…………」


女郎蜘蛛娘 「お、パン娘の腹の虫が」


パン娘 「し、しかたないでしょ、まだ食べてないんだから!」


中二 「ま、まあ、可愛い音でしたから……」


パン娘 「そんななぐさめ無用よ!」


キャン キャン ウフフ


コボルト娘 「……フフ」

コボルト娘 「ありがたいが、やはり一人で行く」


パン娘 「え? でも」


コボルト娘 「時間がかかるし、さっきのように面倒に巻き込んでしまうかもしれない」

コボルト娘 「食事はまた今度、落ち着いたときに、店で食べさせてもらうよ」


パン娘 「そう……? まあ、そこまで言うなら……」


女郎蜘蛛娘 「店、残ってると良いけどね」


パン娘 「お黙り!」






179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/17(土) 05:52:06.15 ID:RMBbBMYY0
待ち
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 10:27:41.99 ID:AdBnkV810
待ち
181 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/07/26(水) 16:31:31.13 ID:NRxNRKBUo


糸巻きの町

魔物区 無限海へ続く川辺



大カエル 「無限にひろがる町の外には、無限にひろがる海があるという説もあります」

大カエル 「しかし海へ向かう人も、海の向こうを知ろうとする人もいません」

大カエル 「冒険心にあふれる人々は、地下に広がるダンジョンそして町中心の城にあるという宝に夢中なのです」



クルルルル ホー ホー

ギシ ギシ ワハハハ……



中二 (コボルト娘さんと別れて、しばらく歩いていたら)

中二 (橋と川だらけの場所に出た)

中二 (大小たくさんの川、それに沿って歪んだ家が縦に横にいくつも重なっている)

中二 (たくさんの橋はそんな家々を出鱈目に繋でいる)

中二 (みすぼらしいもの、立派なもの、何階分も上の家と繋がったもの……どことも繋がっていないものまである)

中二 (広場より静かだけれど、常に誰かの声や橋の軋みが聞こえる)


女郎蜘蛛娘 「ここは下層でも人が多いところだよ。冒険者もたくさんいる」

女郎蜘蛛娘 「冒険者ギルドとか個人工房、色んな店や停留所が近くにあるから」

女郎蜘蛛娘 「学生は少ないけどね」


中二 「へえ……」

中二 「ごちゃごちゃしているけれど、川がきらきらして綺麗ですね」


女郎蜘蛛娘 「星靄の日はもっと綺麗だよ……あ、パン娘、こっちの橋の方が早いよ」


パン娘 「そうなの?」


女郎蜘蛛娘 「この前みつけたんだ」


パン娘 「あんた本当にこういうの得意よね……」


182 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga]:2017/07/26(水) 16:46:07.29 ID:NRxNRKBUo


中二 「それにしても、すごい数の橋ですね」


女郎蜘蛛娘 「みんな好き勝手に渡してるからねえ」

女郎蜘蛛娘 「この前なんか、パン娘の家の窓にさあ……」


パン娘 「その話はやめて」


女郎蜘蛛娘 「あっはは」


中二 (何があったんだろう)


ドボォン


中二 「!?」



???A 「おおーい、誰か落ちたぞお」


???B 「カワウソ隊に連絡だあ」



女郎蜘蛛娘 「おおー、今日も落ちてるねえ」


パン娘 「どうせ酔っ払いでしょ」


中二 (……気をつけよう)

183 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/07/27(木) 00:27:27.28 ID:B4pz5e7ho

魔物区 無限海へ続く川辺



女郎蜘蛛娘 「……もとは大きな川だったらしいんだけどね」

女郎蜘蛛娘 「いろいろあって今の形になったそうなんだよ」

女郎蜘蛛娘 「あ、この先から混沌区ね」



混沌区 星淀む川辺



中二 「混沌区?」


女郎蜘蛛娘 「いろんな種族がごった煮で暮らしているところだよ」

女郎蜘蛛娘 「この町ではいろんな種族が暮らしていてね」

女郎蜘蛛娘 「食べ物とかの関係で相性の悪い種族同士もあるから、住む場所は分かれているんだ」

女郎蜘蛛娘 「その方が、余計なトラブルが起きないしね」

女郎蜘蛛娘 「で、ここはそうじゃない」


中二 「なるほど……」

中二 「危なそうですね」


女郎蜘蛛娘 「うん。危ないよお」

女郎蜘蛛娘 「君は混じりっけなしのにんげんみたいだから」

女郎蜘蛛娘 「人食い鬼さんちとか、桃尻淫魔さんちには近づかない方が良いかな」


中二 「き、気をつけます」





184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/27(木) 10:13:01.99 ID:XJ3NEr8BO
おつ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/17(木) 02:04:47.14 ID:WWV83SAC0
待ち
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/01(金) 18:49:04.47 ID:2FLAzmf80
待ち続けますわよ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 04:19:41.14 ID:vNaeF+XO0
待ち続けるったら待ち続けますわよ!
188 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/26(火) 00:26:24.25 ID:YSVUCC5wo


天秤帽子A 「すべての糸を、すべての人に!」

天秤帽子A 「すべての魔法を、すべての人に!」

天秤帽子A 「糸巻きの町のすべての人に、自由を!」



中二 (橋の端に、不思議な帽子を被った二人組がいる)



天秤帽子B 「お疲れ様でえす」

天秤帽子B 「よろしくお願いしまあす」


水平天秤のビラ1


中二 (ビラを差し出された)

中二 「えっと……」


天秤帽子B 「秘密ギルド、水平天秤です」

天秤帽子B 「今度、私たちのギルドの集会があるので、良かったら見学に来てください」

天秤帽子B 「この町の真の平等と自由について一緒に考えましょうねえ」


中二 (一生懸命に作られたような、手作りのビラだ)

中二 「あ、ありがとうございます」




































カン カン カン

ギイイ






女郎蜘蛛娘 「ただいまあ」
189 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/26(火) 00:35:36.74 ID:YSVUCC5wo


川辺のアパート パン娘の部屋



女郎蜘蛛娘 「我が家は落ち着くねえ」


パン娘 「あんたの家じゃないでしょ」


中二 (ベコベコの金属の橋を渡って、隙間を埋めるように伸びる階段を登って)

中二 (パン娘さんの家に着いた)

中二 (小さいけど、住みやすそうな家だ)


パン娘 「あんたは、変なビラを受け取っちゃって……」


中二 「熱心だったもので」


パン娘 「詐欺師だって熱心に仕事するわよ」

パン娘 「この町では、何でもかんでもに首を突っ込まないこと」


190 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/26(火) 00:41:38.32 ID:YSVUCC5wo


パン娘 「じゃあ、ちゃちゃっと何か作るから、適当にくつろいでいて」


女郎蜘蛛娘 「はーい」

女郎蜘蛛娘 「ようし、中二ちゃんよ、パン娘の家を案内してあげよう」

女郎蜘蛛娘 「まずはベッドの横のタンスから」


中二 「はい」


パン娘 「変なことしたら蹴っ飛ばすからね」


女郎蜘蛛娘 「はーい」


パン娘 「まったく……」


スタ スタ スタ



191 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/26(火) 00:58:07.66 ID:YSVUCC5wo


中二 「……何だか、素敵な部屋」

中二 「見たことが無いけれど、なじみのある物ばかり」

中二 「花の形の灯りに、良いにおいがする木のベッドに……」

中二 「あ、窓あけても良いですか?」


パン娘 「ああ、お願い」

パン娘 「うるさかったり変なにおいがしたら、カーテンおろしといて」


中二 「はあい」


カチャ ガココ

ソヨソヨソヨ 


中二 「……ふう」

中二 (風が気持ち良い)

中二 (にぎやかな町の音がどこか遠くに感じる)


女郎蜘蛛娘 「いよっ、窓辺の乙女」


中二 「は、はあ……いえ、そんな」

中二 「良いところだなあって」

中二 「ひしめく家の灯りとか、声とか、人の気配がして、川面の灯りは綺麗で」


女郎蜘蛛娘 「気に入ってくれたかね」


中二 「はい」


パン娘 「あんたの部屋じゃないでしょ」

パン娘 「すぐに飽きるわよ、暮らしていたら」


192 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/09/26(火) 01:04:41.00 ID:YSVUCC5wo


パン娘 「うるさいし、狭いし、下品な笑い声が聞こえてきたりするし」

パン娘 「お尻をさわってくる人もいるし」


女郎蜘蛛娘 「窓辺に座って川を眺めるのが好きなんだよ、パン娘は」

女郎蜘蛛娘 「この前訪ねたときは、歌まで歌ってたんだ」


中二 「良い趣味をお持ちで」


パン娘 「そんなのは教えなくて良いの」

パン娘 「美味しい料理が食べたかったらね!」


トン トン コトコト


女郎蜘蛛娘 「でも、残り物なんでしょう?」


パン娘 「こんにゃろ、わざと塩と苦薬を間違えてやろうかしら……」


女郎蜘蛛娘 「冗談、冗談」



193 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 11:08:46.98 ID:vYn2dPT1O
おつ
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 05:26:47.02 ID:5KfpcvNg0
およよ〜待つおよ〜
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/21(土) 12:22:30.87 ID:eNFN+Ztdo
こっちの方はなかなか本編が進まないからレスが難しいな
それともだらだら日常系になるのかしら
196 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 01:49:13.51 ID:sOp4ugrwo


…………


グツグツ コト コト 

パン娘 「あちち……」

シュー シュー



中二 (低いテーブル。大木をそのまま輪切りにした感じだ)

中二 (ベリーソースをかけたケーキみたいにつやつやしている……)

中二 (カーペットは何でできているんだろう)


女郎蜘蛛娘 「行儀良いねえ。足くずしなよ」

女郎蜘蛛娘 「こんな狭い部屋だけど、気なんか遣わなくて良いって」



中二 「あ、はい、失礼します……」



パン娘 「ちょっと、また何か聞こえたわよ!」



女郎蜘蛛娘 「あははあ……ねえねえ」

女郎蜘蛛娘 「君って住むところ決まってるんだっけ」


中二 「……あ、はい。宿オークさんのところで」

中二 「家に帰るまで住み込みで働かせてもらいながら、お世話になろうかと」


女郎蜘蛛娘 「住み込みかあ。うちにもいるなあ、住み込みで働いてるの」

女郎蜘蛛娘 「……って、ええー、帰っちゃうの?」


197 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 02:06:48.86 ID:sOp4ugrwo


中二 「はい。私には、声優という夢がありますので」


女郎蜘蛛娘 「セーユウ?」


中二 「声の役者です」

中二 「感情を表現するために、普通の役者は表情や身振り手振り、足音などを使えますが」

中二 「声優は基本的に声しか使いません」

中二 「声だけであらゆる感情、季候に気候など周りの様子さえ表現するのが」

中二 「声優なのです」


女郎蜘蛛娘 「……あー」

女郎蜘蛛娘 「聞いたことあるある」

女郎蜘蛛娘 「声優ね、声優」


中二 「普通の役者よりも高い演技力が求められる、たいへん難しい世界なのです」


女郎蜘蛛娘 「なるほどねえ」

女郎蜘蛛娘 「じゃあさあ、こっちでなっちゃえば良いじゃん」


中二 「え?」


女郎蜘蛛娘 「どうやってなるのか分かんないけどさ」

女郎蜘蛛娘 「大丈夫大丈夫、やればできるって」


198 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 02:37:42.34 ID:sOp4ugrwo


中二 (ここで……)


パン娘 「何を言ってんのよ」

パン娘 「へい、お待ちぃ」


カボチャのドルマ
残り物ピキリア
残り物スープ


中二 (中身をくり貫いたカボチャに、何かおいしそうな炒め物が入っている?)


女郎蜘蛛娘 「きたきたー」

女郎蜘蛛娘 「残り物パン娘スペシャル!」


パン娘 「残り物は余計よ!」

パン娘 「……まだ子供だし、ここで暮らすのは大変よ」

パン娘 「それに、パパやママも心配するでしょ?」


中二 「いいえ? 全然」


パン娘 「いやいや、そうは言っても……」


中二 「まったく、心配していませんね」


パン娘 「まあ照れるのは分かるけど、心配……」


中二 「していません」

中二 「いなくなったら泣いて喜びますね」


パン娘 「…………」

パン娘 「ええぇ〜〜……」


女郎蜘蛛娘 「…………よし」

女郎蜘蛛娘 「いっただきまーす!」



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