武蔵「鏡花水月の夜に」

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82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/13(火) 23:27:03.24 ID:tDeoFDHgO
>>81さんありがとうございます。ぶっ叩かれる覚悟で初めてSS投稿したのですごく嬉しいです。でもミスは少ない方がいいのでこれから3日に一度のペースでいこうかと思います。えっちぃのはですね、多少無理しないと何も変わらないので頑張ろうと思います。
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/15(木) 23:06:49.76 ID:RHughSyuO

飛龍「索敵機からこちらに接近する深海棲艦の伝達を受けました。艦種は軽巡洋艦型ホ級一体、駆逐艦型イ級二体からなる計三体です。共にオーラを発しておらず、単縦陣を組みこちらに前進中。どうやら、私達の動向はあちらには嗅ぎつけられてはいないみたいですね」

飛龍の連絡を受けた夕立、暁、大井達からは先程まで不満げだった雰囲気は一変し、緊張糸が張り詰め始めた。
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/15(木) 23:13:35.44 ID:RHughSyuO

大井はというとあれだけメンドくさそうな顔をし、一目で分かる程の眉間の皺が一瞬で消えさり無表情に変わった。その事に気がついてしまった響は大井の一変した表情の移り変わりから目を逸らしほんの少し肩を震わせている。

今は、一人を除き騒がしかった時は去り、静寂が周りを瞬間的に包み込む。無意識の中聴こえるのは緩やかに海面を鼓動する波音のみ。
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/15(木) 23:16:02.73 ID:RHughSyuO

私は、これから一戦交える「深海棲艦」について幾つか説明しなければならない。何故なら、この深海棲艦について理解すると同時に事細かに説明を書き表わせば、艦娘が製造された理由、行き着く先を知ることができるからである。

深海棲艦とはいうならば人類の敵、だった生物だ。この一文ではもはや昔話だと感じられるだろうが、もちろん現代においても深海棲艦と人間との異種間による世界大戦の構図は変わりなどしていない。人の認識では。
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/15(木) 23:17:41.71 ID:RHughSyuO

ではこの認識は誰のものなのか。人ではない何か。模造品の人間である何か。艦娘での認識では、艦娘対、深海棲艦の戦争に構図は塗り替えられいる。人と艦娘、互いに認識の違いが現れるのは艦娘が世間一般でどのような兵器として考えられているかにある。

私達艦娘とは、自ら思考し、自発的に発砲する。いわば人工知能を搭載した画期的な人型兵器としてまかり通っている。人が銃を扱うように、艦娘もまた人がなす戦争の手段の一部でしかないというわけだ。
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/15(木) 23:22:24.79 ID:RHughSyuO

そこに認識のズレが生じる。戦っているのは私なのだ、兵器を扱い血を流すのは私なのだと、人間が考えるのには。この自分よがりな考えとなる所以は、情勢が人類対、深海棲艦にあった時代にまで遡らなければならない。
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/15(木) 23:26:42.24 ID:RHughSyuO
明日は花金です。夜中まで頑張れます。だから明日がんばります。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 15:29:34.67 ID:Zug7XGAdO

世界にはまだ艦娘が存在しなかった時代。人類が深海棲艦と対立し一方的な殺戮の連鎖を押しとどめるには、やはり人が兵器を扱いそれこそ世界大戦を彷彿とさせる命懸けでの攻防をせねばならなかった。

それは空の上から、それは陸上から。様々な方法で深海棲艦の侵攻を防衛していたが、どれもこれも防衛の域を超えず殲滅への糸口には届かなかった。核兵器の使用の構想もあったが深海棲艦の生息は分散的であり無意味な案として却下された。何より放射能による海洋資源への影響は、人類にとっては世界を股にかけた戦争であり貴重な食糧の一部を失うことが痛手となりうるのは明白だった。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 15:31:04.54 ID:Zug7XGAdO

その鳴かず飛ばずの手段の中、一番効果的であったのは、やはり同じ土俵である海上からだった。海上の要塞、軍艦での防衛。それならば軍艦の防御として航空兵器の運用も形に残る成果として残る。

時代は大元を一気に叩く近代戦争から、第二次世界大戦のクラウゼヴィッツ型に似て異なるが本質的には同じ、一つ一つを順当に捻り潰す方法へと遡るのであった。
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage ]:2016/12/17(土) 15:55:01.80 ID:Zug7XGAdO

艦娘には魂の具現化による艦装を携え、物理法則を無視した爆発力を含む砲弾を放り出す事ができる。クラウゼヴィッツの戦争理論には「相手を強み真似て無力化する」という趣旨がある。何が言いたいのかというと、当たり前の話しであるが深海棲艦にも物理法則を無視した爆発力を含む砲弾を放り出せることができるというわけだ。

すなわちそれは、人類だけで英知を結集しただけの兵器では物理法則を無視した攻撃翌力など到底不可能であり、深海棲艦には太刀打ちできないというわけだ。
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/17(土) 15:59:28.14 ID:Zug7XGAdO
今日はとことん暇なんで、一肌脱いでがんばります、へっくち!
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/17(土) 16:05:46.63 ID:QJn7hPgSo
見てるよ
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 16:52:15.24 ID:Zug7XGAdO

ここで一つ注意してもらいたい。人類は深海棲艦に太刀打ちできないと言ったが、あくまで技術的な面での話しである。銃弾で深海棲艦を倒すことは可能であり、その気になれば人が殴り殺すこともできなくはないという事だ。

では技術的に深海棲艦に劣った軍艦、航空機での抵抗はどういった結果に終わるか。簡単だ。軍艦はただの大きな的にしかならず、航空機は音速に近い速さを出せても必ず落とされる。何故なら、深海棲艦は人型のサイズ程、大きくて五メートル程、小さくて三十センチ程の大きさしかないからだ。
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 17:04:30.21 ID:Zug7XGAdO

動きは生物そのもの。変幻自在に海を駆け巡り、空を覆い尽くす。そんな一体一体が縮小した軍艦、航空機の真似事をできる生き物相手に銃弾を当てることは困難だ。そして、その弱みにつけ込み深海棲艦は軍艦の側面に穴を開け乗り込んだり、甲板へと侵入して乗組員を殺戮して回るのだ。

所以。これこそが人間が深海棲艦に対する憎悪の所以。

そして、もう一つある。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 17:08:37.17 ID:Zug7XGAdO


深海棲艦は陸、大地を餌とする。

この事実に人類は最早どんな手段を用いても、深海棲艦を絶滅せねばならないのだ。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 17:13:44.75 ID:Zug7XGAdO
ちょっと休憩いたします。6時くらいからまたがんばります。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 21:47:47.18 ID:klwr/xqSO

それには圧倒的戦力差を僅かでも埋めなければならない。

まず超えるべき課題として挙げられるのは、物理法則を無視する攻撃力、限りなく生物に似た動作を可能とする機械の可動、水上を悠々と滑走する装置。これらの課題を全てクリアして初めて深海棲艦との戦闘を少なからず対等にすることができる。
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 22:05:58.58 ID:klwr/xqSO

はっきり言って不可能な問題だ。どれもこれも人間が施せる技術の範疇を超えている。ならば、できることは一つしかない。

「相手の強みを真似て無力化する」。深海棲艦の研究。そしてその成果が兵器である「艦娘」の誕生へと繋がる。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage ]:2016/12/17(土) 22:19:10.57 ID:klwr/xqSO

満を辞して人類を大地を存続させるため生まれた艦娘だが、いかんせん賛美の声は少なかった。

艦娘とは深海棲艦を模倣した人型兵器。これが世間一般的な艦娘の印象。解るはずだ、私達艦娘が人型兵器として製造されたのは最も愚かで、最悪の形であるということは。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 22:33:18.37 ID:klwr/xqSO

人類は深海棲艦に対して最大限の憎悪を持っている。そんな深海棲艦を模倣した人型兵器が人類を救う。これが皮肉でなければ何というだろうか。故に人間は艦娘を人間としては見ない、ただの兵器として扱う原因だ。

さて長々と説明したわけだが、もう少しだけ話しは続く。深海棲艦の生態と、艦娘の誕生を説明したのならば、最後に、艦娘の行き着く先について説明をせねばならない。
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/17(土) 22:53:08.84 ID:klwr/xqSO

簡素に事実を述べよう。艦娘は死ねば深海棲艦に変わる。人が死ねば幽霊に変わるよう、艦娘もまた死ねば深海棲艦になるのだ。この両者の共通点は「死」の概念から憶測される噂話でしかないが、艦娘の場合は公式的に大本営から否定の発表があった。

火の無い所に煙は立たない。事実、大本営の発表は真っ赤な嘘である。

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/17(土) 22:59:29.16 ID:klwr/xqSO
すみません休憩で寝てたらこんな時間になりました...
気がついたら自分語りで100レス目ですね。今日はもうちっとだけがんばります。
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/17(土) 23:54:58.78 ID:klwr/xqSO
すみません全然先が思いつかないので今日は終わりにします。
ずっと思ってることなんですが長ったらしい文でも何か一文足りないような気がしてなりません。だれか御教示してもらえないでしょうか....
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 11:23:00.25 ID:VPdrRAjcO

なぜ深海棲艦に成り果てるのか、原因は不明だ。ただ深海棲艦を元に造られた物を艦娘と呼ぶのならば、深海棲艦になるのも頷ける。

つまりは、卵が先か、鶏が先かである。

これにて説明は終了だ。さて時間は過去から現在の私達艦娘が活躍する時代に巻き戻る。

武蔵「どうだ、私もまだまだ捨てたものじゃないだろう」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 11:33:22.07 ID:VPdrRAjcO

大井「はいはい凄いのは分かりましたから。さっさと作戦を決めましょうね」

響「それで、私達はどうしたらいいんだい?武蔵さん?」

大井の百面相から解放された響はいつの間にか無表情に戻っている。

夕立「うぅー!やっと帰れるぅ!」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 12:01:18.33 ID:VPdrRAjcO

暁「えぇもうほんとに...」

夕立に抱きつかれた暁は完全に疲弊やつれきった顔をした。それもそうだろう。出撃から今に至るまで夕立とはずっと口喧嘩が絶えなかったのだから。

武蔵「予め立てた作戦通りに事を進める。暁、できるな?」

暁「えっ!?は、はい。できますよ?」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 13:28:22.69 ID:VPdrRAjcO

武蔵「うむ、ならばいい。そうだな、この機会に暁に一つ教えておこう、いや、皆に言えることだがこんな言葉がある。ピンチはチャンスと。今暁達は疲れているのは一目瞭然だ。だからこそ、逆境の時を切り抜ける手段を学べるはずだ」

艦娘が深海棲艦との戦闘を行う場合、大抵深海棲艦側に軍配は上がる。戦闘力も然ることながら、一定海域に生息する深海棲艦の群れを殲滅しながら行軍することは、燃料、弾薬、気力の全てを浪費するのだ
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 13:29:28.70 ID:VPdrRAjcO

引き返す選択を取ることも大切だ。だがどれだけボロボロで、死にかけで、死んでも死守しなければならぬ場面が必ずやってくる。その時生死を分ける選択に自らが直面したら、経験がものを言うのだ。

いつかくる絶望的な現実のため、私は優しく彼女らを指導しなければならないのだ。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:36:18.59 ID:eMNLRlfUO

飛龍「....みなさんそろそろ対敵します。目標は航路変えずこのまま私達の正面に現れるはずです。準備はよろしいですね?」

海原の遥か向こう、青空と海原の界の色彩に豆粒の黒い影の集団が見える。

飛龍「攻撃機発艦の手筈は整っていますが、今回は無しの方向ですよね」

武蔵「あぁ、今日は苦労ばかりかけてすまないな飛龍」
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:37:24.28 ID:eMNLRlfUO

大井「雷撃はどうします?作戦通りだと発射する方向でしたけど、低級深海棲艦相手だと一気に殲滅してしまいますね」

武蔵「同じく待機だ」

大井「わかりましたけど一応私も駆逐艦のサポートに行きますよ。こんなイライラしてる姿、北上さんに見せられないのでここで発散しときたいんです」

響「私達駆逐艦は散開して側面からだよね」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:39:39.38 ID:eMNLRlfUO

武蔵「うむ、夕立、大井は正面から。響は右側面から、暁は左側面から。みな常に発砲を続け包囲するように行動してくれ。当てることは構わないが、あくまで夕立の実施運用が目的であることは忘れないでくれ」

夕立「ううーー!!!やっったああああ!!!いっっくぞーーー!!!ソロモンの悪夢、見せてあげる!」

夕立が両手を上に広げて艦隊に突っ込んで行く。「夕立」はソロモンの悪夢と揶揄されているが敵には同情せざるおえないな。

こんな楽しいそうにしている悪夢に付き合わされるのだから。

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:40:44.51 ID:eMNLRlfUO

暁「あ!!待ちなさい!一人じゃ危ないでしょ!!」

響「さて、やりますか」

大井「私、砲雷撃戦って聞くと…燃えちゃいます....特に今日なんかわね!!」

夕立に続いて残りの三人が後を追う。そしてこちらの動きに気づいたのか敵深海棲艦も行動を始めた。

飛龍「えと、私はどうしましょう?」
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:48:29.84 ID:eMNLRlfUO

飛龍が少し困った顔でこちらを向く。どうやら四人が動き始めたのに自分だけ何もしないのは如何なものなのかと考えていそうな顔だ。なんとなく考えいることがわかる。そう考えそうなのだ「飛龍」は。

武蔵「すまないが艦載機を飛ばすと相手の標的が増えてしまい正確なデータがとれなくなってしまう。あちらがピンチになったら私と共に攻撃機の発艦を頼む」

飛龍「はい、わかりました....」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:49:31.66 ID:eMNLRlfUO

武蔵「ふむ、不服か。ならば後で飛龍には駆逐艦三人のアドバイスをする役割りを任せるとしようか。随伴艦として働くのに航空母艦のアドバイスは貴重だからな」

飛龍「はい!!わかりました!!」

責任感が強い子だまったく。いい娘ではあるが仕事とプライベートを分けられるであろう娘は汚れ仕事が何故か一番向いている。なんてのは言えないが。
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:51:41.28 ID:eMNLRlfUO

そうこう考えていると向こうからいつもの聞き慣れた音が聞こえてくる。

火薬が炸裂する爆音。その爆音は私の元に届く頃には聞きやすい程の音となり私の耳を通じ鼓膜、脳へと響く。

私は目を瞑り音のイメージを膨らませる。砲身から飛び出た鉄製のマニキュアは相手の体を切り裂き、体内のありとあらゆる臓器を醜く整形したあと出入り口をご丁寧に真っ赤に塗り終えたのち、命を絡め取り海へと沈んでいく。その惨状を。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:56:36.29 ID:eMNLRlfUO

飛龍「あ!!夕立ちゃんがイ級を一体沈めましたよ!!うぁ、結構グロい...。あれが駆逐艦の一発なの...?」

今度は連続した音が聞こえてくる。ドォーンドォーンと。装填された砲弾が砲身から押し出されるリズムに合わせて。

重く敵に機械的なリズムで風穴を空けた音とよく聞き取れない少女の叫び声のハーモニー。それは公園を徘徊する蟻の群れから一匹を無作為に選び取り出したのち、嬉々としてその四肢を毟り取り楽しそうに叫ぶ幼子の声のように聞こえてしまう。
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 17:58:58.91 ID:eMNLRlfUO

無垢な少年少女達は悪意のない衝動的なそれを、殺意とは知らない。ただ、楽しいから。お遊びでしかない。前脚をとったらどうなる?何かがたんまり溜まったここを潰すと。首を抉ったら。そんな好奇心の奥底にある感情の名前をしらないのだろう。

もしかしたら響や暁や夕立も同じなのかもしれない。

いや、私も大井もどの艦娘も。この世界に私達が産まれた時から今も昔も片時として変わらなかった戦うという宿命。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:01:15.58 ID:eMNLRlfUO

その意味を考えたことはあったのか。

艦娘としての生を人間らしく生きることができたのではないのか。そんな考えがとめどなく溢れてくるが今はその時ではない。また、思い出した時に、風呂でゆっくりと考えるとしよう。

飛龍「暁ちゃんと響ちゃんが最後のイ級を沈めましたよ!うーん、ちょっとまだヒヤヒヤする部分がありますねぇ....」
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:03:02.94 ID:eMNLRlfUO

瞼を開ける。眼下に広がる死屍累々は深海棲艦の肉と体内を流れる血液の代わりをした燃料で辺り一面汚染されていた。

そしてこちらへ向かってくる影一つ。その姿は昔見た映画のジョーズにあるワンシーンを思い出す。だが決定的に違うのはこのジョーズは私を食い殺さんとするためにくるのでなく、手薄な方へと逃げようとしていることだ。
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:05:56.13 ID:eMNLRlfUO

大井「武蔵さん!!!前!!!」

わかっているとも。しかし、私の出番は今回はない。主役は夕立だ。

武蔵「お前は何故こちらにきた?」

一言、そう深海棲艦に呟く。すると撤退しようとしていたホ級の進水は止まる。蛇に睨まられた蛙のように。一触即発の状況で蛇は饒舌にこの哀れな蛙へと二つ提案を促す。
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:12:58.97 ID:eMNLRlfUO

武蔵「生存確率の高い方を選べ。まず前提として私は必ずお前を撃ち抜くことができる。仮にもしお前が私から後ろに行くことができても私のこの46p三連装砲がお前を42q圏内から逃がさない。ならば進路を変え後ろにいる4人から逃げる方を選んだ方が得策だとは思わんかね?もっとも、生の確率より死の確率の方が遥かに上だが。ふむ、どうやら解ってないようだな、ならば簡単に教えてやろう。お前は死ぬんだ、2つに1つのパターンでだ」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:19:55.23 ID:eMNLRlfUO

私の言葉を理解したのかホ級の表情は隠れてしまい伺えないが確実に戸惑いを感じているのであろう、左右を忙しくなく見回している。

そしてもう一度私の方へと向き返ると、動物とは違う機械と機械が激しく擦れ合う音に似た不快な雄叫びをあげ、尋常ではない程体が反り返る。すると生物と人間に似た生き物の結合部が引き裂かれ、そのつど筋肉繊維一本一本から放出する血液の有様はグロテスクという言葉以外思い浮かばない。

不意に、自らの頭蓋に砲をあてた。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:21:28.16 ID:eMNLRlfUO

耳を劈くほどの爆音、爆風が私を襲う。そしてホ級の全ては四散した。しかし自殺ではない。大井の酸素魚雷によってだ。

大井「何勝手に死のうとしてるんですか?深海棲艦なら深海棲艦らしく私達に殺されなさい。自殺なんて、あんたには許されないのよ」

細切れになった残骸の上に立ち冷淡にそう述べる。
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:22:34.80 ID:eMNLRlfUO

なぜだか、その眼からはホ級に対する憐れみと同情を感じる。あんたが羨ましいわよ。そう大井は小さく呟いた。その一言はこのホ級だった物ではなく偶然聞こえてしまった私にでもない。自分自身に噛み締めて言い聞かせいるように私は感じた。

武蔵「....さて、今日は帰るとしようか。みんな、ご苦労だった」
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:26:13.93 ID:eMNLRlfUO

武蔵「....さて、今日は帰るとしようか。みんな、ご苦労だった」

夕立「あ〜〜終わったぁぁ〜〜。帰ったらご飯食べよっと!」

遅れて三人が帰ってきたが服装には、血痕の後が押し目もなく広がっている。

暁「まだそんなこと言える元気があるの...」

響「確か今日は肉料理の日だったと思うよ」

暁「えっ。こんなの見た後にお肉とか....ハァ、やっぱり今日は運が悪い日よ....」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:27:23.85 ID:eMNLRlfUO

武蔵「沢山食べて精をつけないとな。よく食べよく寝る。これが早く成長する秘訣だ」

飛龍「だからって食べた後にすぐ転がると牛さんになっちゃいますからね!」

戦いを終えた私達は帰路につく。楽しげな談笑をしながら飛龍は夕立達にアドバイスを。私はそれを聞きもう少し具体的なアイディアを。大井はというと、会話に入らずどこか上の空だった。

もしかしたら、大井は私が目を逸らしていることに正面から向き合っているのだろうか。
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:30:39.89 ID:eMNLRlfUO

つくづく今日は運が良くない。こうも悪いと、泣きっ面に蜂という言葉通りになってしまいそうで気味が悪い。

何事も起こらず平穏に戦争する。私はこれを望んでいる。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/18(日) 18:33:26.44 ID:eMNLRlfUO


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奇しくも予感は現実となってしまう。長年の勘が、私の予期せぬ答えを感じえていたからだろうか。

「ふふ、やっと見つけたわよ武蔵.....」

忘れもしない。私は。この声を。あの姿を。


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130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/18(日) 18:37:23.94 ID:eMNLRlfUO
今日は終了です。どちら様か出てくる様子ですが、自分のサジ加減で出てくるのが早かったり遅かったり。わかるのはまだまだ先ってことでございます。ではへーほーを読んで勉強してきます。またそのうち。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/18(日) 18:49:22.08 ID:KzupQGtN0
土地食っちゃうから共存が無理という発想は画期的だった

132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/22(木) 17:25:52.72 ID:SBisIpqhO

大井「きたかみさぁぁああんん!!!ただいまぁぁぁあああ!!」

鎮守府に帰投する否や艦装を霧散させ、北上に全速力を保ったまま飛びつく。手厚い大井からの愛情に対し北上はというと、直線を描きやってくる大井から体を逸らし、

北上「おーみんな。おつかれー。帰ってきて早々で悪いけど簡易チェックシートに記入よろしくねー」
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/22(木) 17:28:02.31 ID:SBisIpqhO

私達一行に笑顔でプラスチック製のクリップボードをひらひらさせながら近づいてくる。対象物にたどり着けなかった大井はというと、北上を抱きしめる格好のままどこかに飛んで行った。

武蔵「いつもご苦労様だな、「北上」は」

北上「うん?どっちの意味?」

武蔵「両方だ」

北上「まぁ慣れだよ。私も別に嫌じゃないし、大井っちも好きでやってるみたいだしね。なんていうのかな?居酒屋でいうお通しみたいなのだよ。行ったことないけどねー」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/22(木) 17:31:43.64 ID:SBisIpqhO

顔色一つ変えず北上はクリップボードを私に手渡した。北上から手渡されたクリップボードには艦装の不具合、損傷箇所。艦娘の戦闘後の体調不良をレ点で申告するシートが二枚重なり挟まっている。これはこの鎮守府独自のシステムで、提督が艦娘に対する扱いの真剣さを感じる。

艦装というものは実に不思議である。艦娘の意思によって艦装は光を纏いつつ徐々に質量を帯び顕現し、意思によって霧のように霧散して跡形もなく消え去る。これは魂の具現化による艦装の出現として認識されているのは知っているだろう。

もとより、魂の具現化とは一体なんだ。
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sags]:2016/12/22(木) 17:33:23.50 ID:SBisIpqhO

艦娘には前世の記憶がある。前世の記憶といっても人間の様に喜怒哀楽を主軸とする人生の記憶など皆無で、怒哀。この二つの感情だけが内を蝕み延々と、現世にも痛みを伴う記憶の正体である。誰かは断末魔を上げ倒れ、みな一つ憤怒の形相で役割を果たし魂が抜け落ちた死体に沸々と涙をこぼす。この記憶。

前世の私の中では地獄が広がり、夥しい数の人間が私の中で死んでいった。体内で誰かの命の灯火が消える感覚を何と言葉で形容するのか、私は未だに分からない。
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/22(木) 17:34:27.23 ID:SBisIpqhO

大和型戦艦二番艦「武蔵」これは私の前世。日の本最後の戦艦。かの昔から武蔵とは名高き強者の証しでありその名に恥じぬような振る舞いをしなければ、私の中で眠る誇り高き彼らに顔向けできない。私が常に「武蔵」を心がけているのはそこにある。
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/22(木) 17:38:21.11 ID:SBisIpqhO
今週は何かと忙しいので遅なりました... 。すみません。
それと書き溜めでない追加のお話しなのでシュバットドーンできません。がんばります。
138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/12/22(木) 19:29:14.87 ID:yajuEtlz0
艦装と艤装はちがうものなのけ?
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/22(木) 21:41:04.15 ID:SBisIpqhO
>>138さんそこまで深く考えてなかったですけど、考えてたらピンときたんで説明しようと思います。また書き足しなんで遅くなりますけど...
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 00:41:29.97 ID:Xm8Hfyh9O

私は塗装が剥がれ錆びつき焦げ茶色に酸化したビットの上に足を組み腰掛けた。そしてクリップボードからボールペンを取り外し項目に記載しようと紙面を眺めると、以前にも増して様々な項目がみっしりと敷き詰められていることに一目で気がついた。

暁「あぁ!もうまた増えてる!!」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 00:46:14.19 ID:Xm8Hfyh9O


どうやら私に限った話しではないようだ。苦虫を噛み潰したように落胆とする暁の表情が見てとれる。

北上「あー。うん、確か二十項目くらい追加したみたいだよ」

申し訳なさそうに頭を掻く。しかし北上はチェックシートの作成に携わってはいない。申し訳なさそうな反応をとるのは同情の気持ちからと、いずれ自分もこうなるのだろうと予測しての反応でもあるはずだ。
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 00:58:37.33 ID:Xm8Hfyh9O

響「改善前は確か三十項目くらいだったはずだよね」

この逸脱した簡易チェックシートとやらは三ヵ月前、私がこの鎮守府に来てから始まった。

経緯はというと、元々は出撃を終えた艦娘達は損傷の大小関係なくドックへと直行していたのだ。だが私「指南艦」なる者がやってくるという事で取って付けたようにして始まってしまった。

急遽始まったこの乗り組みに当事者からすると面倒事が一つ増え、尚且つ日に日に数を増す項目に対し露骨な点数稼ぎの為だという声が少なからず上がっている。
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 01:06:46.96 ID:Xm8Hfyh9O

提督曰く予々構想はあったらしい。簡易的な不良診断を行う事で艦装と艦娘とのシンクロのズレの判断材料となりうるからだ。

いつかいつかとタイミング見計らっていたら時が経ち、提督は殆ど忘れていたらしい。そんな中私がやってくるという事で、急遽突貫工事で始めたのだ。

決して点数稼ぎで始めたわけではないと提督は言う。勿論そんな事はこの鎮守府に在籍する艦娘共々知っている事だ。少なからず点数稼ぎだと言う声は提督に対し艦娘が面白おかしくイジっているだけなのである。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 01:14:56.10 ID:VWL5HMKz0

みな「簡易的な」チェックシートならば文句の一つもないのだが、出撃を終える度文字の羅列はどんどんと綿密になる事についての不満の声は本物であることを、提督は良かれと思いやっているため未だに真相に辿り着けてはいない。

帰投して早々に億劫な雰囲気。面倒だとは私も思う、しかし規則には歴とした理由がある。従って損は無い。

私も細かな羅列に目を細めちまちまと記載を始める。長い戦いになると思ったのだろう私が座るビットの横にみな一列に並び、楽な体勢を組み地べたに座り始めた。
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/25(日) 01:20:08.27 ID:VWL5HMKz0
ばっぴーめりーくりすますでした。北上さんを妹にサンタさんください。榛名を姉でサンタさんください。また今日そのうちにです。寝ます。
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 23:14:42.30 ID:Xm8Hfyh9O

響「ねぇ武蔵さん」

右下にいる響は私に声をかける。

武蔵「ん?どうした響?」

響「武蔵さんはこれって意味あると思う?」
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 23:19:43.66 ID:Xm8Hfyh9O

先程までとは打って変わって深海棲艦と全く遭遇せずとも顔色一つ変えなかった響は珍しく不満げな顔をし、ボールペンの芯を出し入れしている。

武蔵「うむ、ある。ただ量はもっと少なくていいがな。響は必要ないと思っているのか?」

響「そうだね。量とは関係なくこの行為自体必要ないと思っているよ。艦装の不具合と損傷なんてそんなに大事な事じゃないからね。艦装なんて艤装を取り付けるだけの装具にしかすぎないのだから。私の憶測だけどチェックシートをやるわけは司令官が艦娘の修復に使う資材の量を節約したいから、こんなメンドウな事をしてると思ってるんだ。そんなの整備担当の明石が判断する事だからチェックシートの必要性はないと思ってるんだ」
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 23:24:21.17 ID:Xm8Hfyh9O

武蔵「ふむ、確かに間違ってはいない。資材の管理は提督が判断する範疇ではない。明石が管理し、最終的な判断を提督が行えばいい。だが響、間違っているな」

私は用紙の裏面に「艦装」と「艤装」と二つの文字に間隔を開け、書いたのを響に見せる。関係ないが裏面が白紙だとここにも項目が増えるのではないかと一抹の不安がよぎった。

武蔵「響が提督の思慮を理解するには艦装と艤装について深く知らなくてはならない」

クリップボードを受け取った響は不思議そうに二文字を目で追ったのち小首を傾げ時間が止まった。
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/25(日) 23:37:28.25 ID:Xm8Hfyh9O

響「なんで艦装と艤装の説明を始めるのさ」

私の方に座り直した響は説明をしろと言わんばかりにクリップボードを突き出した。

武蔵「響は艦装を艤装を取り付けるための装具と言ったな。まずはその誤解を解かなければならないからな。ではまずは艤装についてからだ」

私も響に対面し直す。そして艤装と書かれた隣に点線を引き説明の準備を始めた。

150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/25(日) 23:56:19.37 ID:Xm8Hfyh9O
夢で金剛に会えました。あと夕立と武蔵さんにも。金剛さん本物見たらあんな気持ちになれるのか...。サンタさんありがとう。また三日後くらいにがんばりますデス。
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 07:49:17.76 ID:xV+slWNOO


艤装とは、一部制約はあるが任意で艦装に取り付けることが可能な重火器のこと。

この一文は士官学校で提督候補生達が学ぶ艤装についてを引用したものである。

いわゆる教科書の説明文なのだがこの他にも様々な艦娘ついての説明が書き連ねられている。艦娘の平均寿命や、艦娘が患う病について、対処法など。勿論この後待つ艦装についても教科書には艤装と同等な説明が施されている。
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 07:50:27.92 ID:xV+slWNOO

教科書において艤装の扱い方は一文を太文字であしらい、教師がマーキングを言い渡すくらいに重要な必須項目として見なされている。その割に艦娘が自分について案外理解が浅いことに私は疑問を生じ得ないでいる。

私は教科書通りを点線に沿う形で書き、このまま響に渡そうと思ったが毎度交換を行うのはなんとも面倒だと直感した。腰を曲げ、響の目線より少し下に文字が見えるよう調整をした。

響「私の認識と何ら違いがないね。武蔵さんの46p三連装砲は駆逐艦の私には装備できないし、艦娘が艤装で深海棲艦と戦うのは当たり前の話しだからね」
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 07:53:21.27 ID:xV+slWNOO

艤装は本物の軍艦に搭載された艦砲のミニチュアサイズである。私が武装する46p三連装砲とは名ばかりで私が軍艦時代に使用した正真正銘の46p三連装砲とは全くもってサイズが違う。一回りも二回り、いやそれ以上に小さく縮小されているのだ。

武蔵「あぁ艤装の認識は今はそれで間違ってはいない。駆逐艦は46p三連装砲を武装して深海棲艦と砲撃戦を交わえない。では、響。ここで一つ質問しよう。なぜ響は46p三連装砲を装備することができないのだ?」
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 08:04:39.87 ID:xV+slWNOO

響「そんなの当たり前の話しじゃないか。私は駆逐艦。武蔵さんは戦艦。軍艦の種類によって装備できなくて当然だ」

私は意識を集中し鉄艦だった頃の記憶を辿り始めた。現在の私に位置すべき、過去の私の現像を写し当てるために。

徐々にピントが照合し始めるとどこからか現れた蛍の灯火は私の腰回りに蜷局ぎ、密集を行う。ある程度形が見えてきた瞬間、一気に瞬き重みが腰回りに生じた。現れたのは私の艦装に武装された46p三連装砲だ。
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 08:14:09.08 ID:RwqAiHKwO

艦砲を外して響に手渡す。両腕で危なかしく受け取ったが違和感を感じたのか眉をひそめた。

武蔵「どうだ響。重たいか?」

響「まぁまぁ重たいね。でも思ってたより軽い」

武蔵「響は先ほど自分は駆逐艦であるからこれを装備することができないと言ったな。正解といえば正解だ。だが響はこれを装備できないと言ったのは身体的な意味合いを大きく含んだイメージで語ったのではないか?」
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/12/31(土) 08:31:53.06 ID:RwqAiHKwO

響はぽんぽんと手の平でお手玉を飛ばす様に遊んでいた手を止めた。地面に置き、そしてまた人差し指で突き遊び始めた。

響「確かにこんな小さな体では支えきれないと思っていたよ。でも駆逐艦がこんな代物を扱うだなんてイメージになかったのもあるね。じゃあ武蔵さん、なんで駆逐艦はこれを付けて戦えないの?装備をこれ一つに絞れば機敏に動く自信は私にはあるよ」

武蔵「知るには次に艦装を正しく知ることだ」
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2016/12/31(土) 08:34:43.35 ID:RwqAiHKwO
初コミケ参加で遅れました。艦これのコーナーで買った小説を読むのが楽しみです。では参加なさっておられる方々、がんばってくださいませ。
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/02(月) 01:33:16.76 ID:6Y/kKntto
あけおめおつです
艤装の設定なみにネットリ書き込まれたエロ期待
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/01/05(木) 14:02:30.42 ID:1TUMzzY5O

私は地べたに置かれた46p三連装砲を持ち上げ艦装に近づける。すると磁力で引きつけられる様に吸い込まれ、あるべき所に戻ったのだ。

そして過去の私、現在の私と結びつく意識を切り離す。艦装の出現と同じく、淡く朧げな灯火が艦装から飛び立ち空気中を彷徨い始めた。

私はペンを走らす。艦装とは、艦娘に艤装を取り付ける上で必要な一部分である、と。書き終えた字面の目視を響は試みるが、生憎艦装が消失の最中であるため、視界に群がる光を闇雲に手のひらで払いのけなければ文字が見えない。ぶんぶんと響は手のひらを振っている。
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2017/01/05(木) 15:52:27.46 ID:1TUMzzY5O
すみません。かなり行き止まりました。結構迷うと思うので一応やる気あるぞ!というのは言っておきます。話の終わり方は決めてあるので大丈夫です。
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/01/08(日) 16:22:51.71 ID:aIOKBGUKO

見るに見かねた私はクリップボードを響に手渡そうとする。差し出すと瞬く光源から響の腕だけが現れクリップボードを掴む。確かに響が受け取ったのを私は感じると手を離した。

響「ありがとう武蔵さん。それで、見ると私が理解してる艦装と艤装については相違はない気がするけど、今までの話を聞く限り私の認識は間違ってるんだよね」

武蔵「自己の認識と事実は全く食い違う時がある。俗説もまた然りだ」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/01/08(日) 16:23:49.45 ID:aIOKBGUKO

響「で、その答えは?」

武蔵「....端的に言って、艦装とは艦娘の一部分であるということだ。時に響。艦娘とは何かを知っているか?」

響「深海棲艦を模倣して造られた人型兵器。そしてその名に由来する軍艦の魂を移植した兵器の総称を言う」

武蔵「ほぅ...。話は脱線するが響は一体何者であるか、答えられるか?」
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/01/08(日) 16:26:49.98 ID:aIOKBGUKO

艦娘は自らの理解が浅いと私は論じた。ここから先、艦娘が艦装に理解をするには自分は何者で、何物であるかを認識しなければならない。

人間が俗説とする理解と、艦娘が俗説とする理解を。

誰もが必ず思春期に問いかけるはずだ。私は誰と。人間が導き出す解答は、紆余曲折を経て、私は人間であると帰結するのだが、結局の所人間とは血と肉、タンパク質の集合体でしかないという目に見えて筋が通った簡単な解答だから迷わない。
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/01/08(日) 16:28:19.20 ID:aIOKBGUKO

しかし鉄、弾薬に燃料、ボーキサイトで錬成され、挙げ句の果てには人間とは似て非なる物をした複雑怪奇な艦娘の解答は、エゴイズムに塗れた答えと、もう一つに分かれるのだ。

しかし響の話し振りだと自らは何物であるかの理解はあるようだ。ならばこの先の飲み込みもすんなりと通るだろう。

艦装から放たれる光はすべて消え去り、隠された響が露わになった。響の瞳は真っ直ぐと私の瞳と交錯していた。その瞳の威風にふと藍玉の石言葉を思い出す。海の水と名付けられた藍玉には聡明沈着、勇敢と象徴付けられている。響の透き通る藍緑色をした瞳と「響」の佇まいにもしやと、私は勘ぐるのであった。
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/01/08(日) 16:29:58.70 ID:aIOKBGUKO

響「兵器さ。紛うことなきね。それには暁や夕立は気づいてないみたいだけど、大井さんは気付き始めてる。飛龍さんはとっくに理解して役割を果たそうとしてるは初めて会った時に感じた。面倒だよね、艦娘って。突き詰めれば突き詰めるほど自分を苦しめる。人間にみたいに簡単な存在でありたかったと私は思うよ」

あぁそうかと。言葉を繋げた響は晴れ晴れとした空を見上げた。

響「艦装が艦娘の一部分と武蔵さんは言ったね。艦装は軍艦の頃の記憶を辿って体に出現させる。これで靄が晴れたよ。艦装は私なんだね。後付けの艤装とは違って。だから前世が駆逐艦の私には46cm三連装は取り付けられない」

武蔵「そう言うことだ」
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga ]:2017/01/08(日) 16:33:45.00 ID:aIOKBGUKO
なんとかなりました。またそのうちがんばります。
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/08(日) 18:11:16.46 ID:2eD3yHKgO
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