幼女魔王N「小さなお城で甘えたい」 母性巫女「晴れ渡る雨の新世界」

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119 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/05(土) 07:27:17.93 ID:Bie0A8nYo


幼女魔王M 「あんたたち」


幼女魔王WHF 「お菓子ぃ、お菓子お菓子お菓子ぃ!」


ジタバタ ジタバタ


幼女魔王M 「……これから覇権を握ることになる魔法ゲーム器は何か、教えていただけるかしら」


幼女魔王WHF 「お菓……」

幼女魔王WHF 「……!!」


ピタ


母性巫女 (一瞬で泣き止んだ……!)


幼女魔王W 「ふっふっふ……」


幼女魔王H 「次世代の遊び道具を模索し続ける私たちフェニックス隊にとっては、その程度の問題……」


母性巫女 (そういう隊なのね……)


幼女魔王F 「オチャノコサイサイよ!」


母性巫女 (オチャノコ……?)


幼女魔王W 「これから覇権を握る魔法ゲーム器、そう、それは……!」


幼女魔王H 「ニンシンドーsbitchよ!」
幼女魔王F 「ペニーステーション4よ!」
幼女魔王W 「セイガサカーンよ!」


120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 08:11:38.46 ID:gsFe0Jlqo
どいつとは言わんが既に覇権どころか滅んだゲーム機が一つ混ざってますね…
121 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/05(土) 08:51:41.33 ID:Bie0A8nYo


母性巫女 「…………?」



幼女魔王H 「ちょっと、何でそうなるのよ。sbitchしかありえないでしょう!」

幼女魔王H 「ペニステなんて見栄えばかりにこだわって中身すっかすかのゲームしか無いじゃない!」

幼女魔王H 「sbitchは携帯魔法ゲーム器としての運用も可能なのよ!」

幼女魔王H 「乙女ゲーと劣化美少女ゲーまみれのペニーステーションバイタと合わせてかかってきても、sbitchの足元にも及ばないわ」


幼女魔王F 「何を言っているの! 次世代の遊び道具を追求する私たちが推すにふさわしいのはペニステよ!」

幼女魔王F 「sbitchの性能では次世代の領域であるVR機能に対応できるとは思えない!」

幼女魔王F 「そして面白いゲームだってたくさん出ているわ! SO5とかFF15とかFF15とかFF15とか!」

幼女魔王F 「たしかにヘボゲーもたまにあるけれど、それはつまり、それだけたくさんのゲームが出ているということ!」

幼女魔王F 「玉石混交は覇権の器ゆえのこと!」


幼女魔王W 「いいえ待って、XXXboxやANARIboxを語らずしてどうするというの!」


ガミガミ ギャーギャー


母性巫女 「何の話をしているのか全然分からない……」


幼女魔王A 「あのね、私、分かるよ。聞きたい?」


母性巫女 「あら、それじゃあゆっくりしているときに教えてもらえますか?」


幼女魔王A 「うん……! えへへ」


幼女魔王M 「さあ、今のうちに行きましょう」


122 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/05(土) 09:01:41.12 ID:Bie0A8nYo


母性巫女 「え、でも……三人がせっかく答えを……」


幼女魔王M 「大丈夫よ」

幼女魔王M 「答えなんて何もない質問なのだから」


母性巫女 「そうなんですか?」


幼女魔王M 「ここはもう、ずっとそういうところ。ここにあるどんな問題にも、答えなんて無い」

幼女魔王M 「誰も答えてくれやしない。誰も答えられやしない」


母性巫女 「……?」


幼女魔王M 「すぐに分かるわ」

幼女魔王M 「……WHF、あんたたち、会議が始まる頃にはちゃんと来なさいよね」



幼女魔王WHF 「ギャーギャー、ワーワー」



幼女魔王M 「……フン」

幼女魔王M 「行くわよ、A、K」


テク テク テク


母性巫女 「あ、ちょっと……」


幼女魔王A 「まま、行こう」


母性巫女 「……は、はい」



テク テク テク テク

………

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 16:26:36.64 ID:nSeZxs1Ao
更新乙
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 01:59:47.89 ID:3pQ1uSC8o
わーい
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/06(日) 03:54:03.18 ID:WDFZDe6CO
待ってた
126 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 02:57:17.64 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王の塔 円形広間



ザ ザ ザ ザ

コツ コツ コツ



母性巫女 「ここは……お城の広間?」

母性巫女 (Nの城とはつくりが全然違う)

母性巫女 (暗い無骨な石畳。広くて寒々しい)


幼女魔王A 「まま、上を見ちゃいけないの」

幼女魔王A 「天井に張り付いた逆さまお化けが、暗闇を吐きながら、誰かと目が合うのをじっと待っているのよ」


母性巫女 「あら」


幼女魔王M 「ただの思い込み。逆さまお化けなんていないの」

幼女魔王M 「高すぎて天井が見えないだけ」


母性巫女 「あら?」


幼女魔王A 「……い、いるもん。本当だもん」


幼女魔王M 「はいはい」

幼女魔王M 「早くKに教えてあげなさい。ここは何?」


幼女魔王A 「う、うん」

幼女魔王A 「ここはね、ええとね、広間なの」

幼女魔王A 「ここから廊下がいっぱいあってね、みんなの部屋に繋がっててね、みんなでお菓子を食べたりね、お話ししたりね、遊んだりね、ええとね……」


母性巫女 「はい。はい……」


127 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 03:14:58.31 ID:3VmAHDZuo


コツ コツ コツ


??? 「あら、珍しいわね」

幼女魔王C 「M、A、あなたたちが一番だなんて」



幼女魔王C があらわれた!



母性巫女 (また新しいN……)

母性巫女 (Aと同じくらい小さいけれど、どこか落ち着いている)


幼女魔王C 「……?」

幼女魔王C 「ずいぶん大きい子がいるわね」

幼女魔王C 「そうは見えないけれど、新しい私たちなのかしら?」


幼女魔王M 「さすがC、その通りだよ」

幼女魔王M 「この子は幼女魔王K」


母性巫女 「ええと、よろしく、お願いします……」


幼女魔王C 「……!」

幼女魔王C 「そんなはずは……」


母性巫女 (Kではまずいことでもあるのかしら)

母性巫女 (というか私、幼女魔王Kじゃ無いし……)


幼女魔王M 「そう思うのも分かるけれど……どうしてそう思うのかはよく分からないけれど」

幼女魔王M 「問題は無いはずだよ」


幼女魔王C 「……そうね。よく考えてみれば、そういえばKはずっと空いていたわね」

幼女魔王C 「でも……いいえ、きっと気のせいね」

幼女魔王C 「よろしくお願いするわ、K」

幼女魔王C 「私は幼女魔王C。クールな幼女魔王よ」


母性巫女 「はい。よろしくお願いします……」


128 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 03:22:35.43 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王C 「本当に珍しい子ね」

幼女魔王C 「髪が黒いのなんて、今までいたかしら」


幼女魔王M 「私が知っている限りでは、ないね」

幼女魔王M 「Rあたりなら分かるかもしれないけれど、まだ病気中だっけ」


幼女魔王C 「ええ、日に日に弱っていくわ。次はあの子なのかもしれないわね」


幼女魔王M 「そう。寂しくなるね……」



母性巫女 「R……?」


幼女魔王A 「料理が得意な幼女魔王」

幼女魔王A 「ずっと前からここに住んでいるの。でも、最近調子が悪いみたい」


母性巫女 「そうなんですか。ありがとうございます、A」


幼女魔王A 「ど、どういたしまして」

幼女魔王A 「えへへ……」


129 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 03:30:13.33 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王C 「Tの姿が見えないのだけど」

幼女魔王C 「今日の幼女魔王会議について、少し話しておきたかったのに」


幼女魔王M 「ああ……あの子はいったよ」


幼女魔王C 「!」

幼女魔王C 「……そう、分からないものね。予兆はなかったと思ってた」

幼女魔王C 「私が気づけなかっただけかしら」


幼女魔王M 「私も分からなかった」

幼女魔王M 「新しい子の気配を感じるって私に言って、下へ行ったんだ」

幼女魔王M 「そして、それっきり」

幼女魔王M 「最期はこのKが立ち会ったんだよ」


幼女魔王C 「そう。あなたが……」


母性巫女 「はい」


幼女魔王C 「それは幸せなことね」


母性巫女 「幸せ……」


幼女魔王C 「誰にも知られずに生まれること」

幼女魔王C 「誰にも知られずに生きること」

幼女魔王C 「誰にも知られずに死んでいくこと」

幼女魔王C 「そんなの、とても悲しいじゃない」


130 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 03:41:35.89 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王C 「そう、いったのね、T」

幼女魔王C 「……Tが感じた新しい子は、では、あなただったのかしら」


母性巫女 「それは……たぶん」


幼女魔王C 「まあ、生まれたてで分かるはず無いわよね。ごめんなさい」

幼女魔王C 「でも運が良かったわね。下はとても危険な場所なのよ」

幼女魔王C 「生まれてすぐにいってしまうということにも、なりかねなかった」


母性巫女 (……小さな棺、不気味な男の人の声)

母性巫女 (MとAが来てくれなかったら、私、あの声の主に……)

母性巫女 「うっ……」


ゾクン ガク


幼女魔王A 「まま……!」


幼女魔王M 「危ないところだったんだよ」

幼女魔王M 「あの声に捕まりかけていたんだ」

幼女魔王M 「あと少し声との距離が近かったら、連れていかれていたかもしれない」


幼女魔王C 「そうだったの……」

幼女魔王C 「ごめんなさい。そんなつもりは無かったけれど、とても恐ろしいことを思い出させてしまって」


母性巫女 「大丈夫です……」



131 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 16:58:05.16 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王C 「……ねえ、K」

幼女魔王C 「もしかしてだけど、あなたは」

幼女魔王C 「知らない私、ではないの?」


母性巫女 「知らない……?」


幼女魔王C 「本当ならこの塔にいない私」

幼女魔王C 「生まれるはずのなかった私」


母性巫女 (生まれるはずのなかった?)


幼女魔王A 「…………」


幼女魔王M 「そうか。たしかに、そう言われるとそう見えなくもないかな」



母性巫女 「…………」

母性巫女 (幼女魔王の塔……何人ものN……ワタシたち……知らないワタシ……)


幼女魔王A 「まま……」


母性巫女 (甘えん坊)


幼女魔王M 「だとしたら、私たちが普段いかないような場所にいたのも納得できる」


母性巫女 (モンスターを操る)

母性巫女 (WHFは、おもちゃで遊ぶのが好き……)

母性巫女 (やっぱり、この塔は……)

132 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 17:04:45.41 ID:3VmAHDZuo


グチョ ヌジュジュ ヌップヌップ

ドプドプドプ



母性巫女 「!?」

母性巫女 (嫌な音が広間に鳴り響いた)


幼女魔王C 「……予鈴ね」

幼女魔王C 「続きは後にしましょう」

幼女魔王C 「K、これから幼女魔王会議が始まるわ」

幼女魔王C 「あなたも参加してちょうだい」


母性巫女 「はい」

母性巫女 (会議……)




ゾロゾロゾロ

ガヤガヤガヤ



幼女魔王たち 「おはよう」

幼女魔王たち 「こんにちは」

幼女魔王たち 「こんばんは」



幼女魔王たち が現れた!

















133 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 17:18:16.75 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王D 「今日もクソみたいな一日になりそうね」


幼女魔王E 「さっさと終わらせましょう。はやくお風呂場での石鹸遊びに戻りたいわ」


幼女魔王P 「私も、孵化マラソンに戻りたい」


幼女魔王L 「今日のおやつは何かしら。Lサイズのパフェ? すごく大きなLサイズのパフェ?」


ザワ ザワ



幼女魔王G 「こんにちは、C。さすが、早いね」

幼女魔王G 「連続一番乗り記録は更新中というわけだ」


幼女魔王C 「おはよう、G。今日で途切れたわ、四番目」


幼女魔王G 「驚いた。変なことでも起きるんじゃないか」

幼女魔王G 「たとえば黒髪で背の高い私が現れるとか」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (この子……)


幼女魔王C 「それだけじゃないわ」

幼女魔王C 「Tがいってしまった」


幼女魔王G 「おや……」


134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/07(月) 17:21:33.35 ID:AyRW/i/Xo
更新乙
135 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 17:25:41.00 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王G 「それではいよいよ袋小路」


幼女魔王C 「いつものことよ」

幼女魔王C 「M、お願い」


幼女魔王M 「ええ」

幼女魔王M 「……死の……先を往く者たちよ!」


ボワン


イボ触手 「プチュプチュ」


ドリル触手 「ドルル」


ヒトデ触手 「チュパチュパ」


鎧触手 「メガメガ」


触手たち が現れた!
触手たち は なれた手つきで作業を始めた!
なんと! 広間に不細工な円卓が現れた!


136 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 17:34:17.05 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王M 「魂の束縛は潰えた。この場に……」
幼女魔王C 「ご苦労様、ありがとう」


幼女魔王C 「それでは私たち、席について」


幼女魔王たち 「はーい」


テク テク テク

ストン ストン ストン


母性巫女 (床に座った……椅子は無いのね……)


幼女魔王A 「まま、こっち、お隣……」


母性巫女 「あら、はいはい」


テク テク ストン



幼女魔王C 「今日はこれで……」



トタタタタタタ


幼女魔王W 「うおおおお」


幼女魔王H 「間に合ったあ」


幼女魔王F 「セーフ、セーフ!」


ストン ストン ストン



幼女魔王C 「……全員かしら」

幼女魔王C 「では、私たち、幼女魔王会議を始めましょう」


137 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 17:48:50.90 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王の塔 円形広間

いびつな円卓



幼女魔王J 「モグモグ……やっぱり味は落ちてるわね」


幼女魔王R 「お料理担当だったRがいないと、こうなるわよね」


モシャ モシャ


幼女魔王W 「結局あれよね、花札よね」


幼女魔王H 「突き詰めていくとそうなるわよね」


幼女魔王F 「流行って回帰するのよね」


ペチャクチャ


幼女魔王I 「ハア、ハア……ああ、素敵な気持ち悪さ」

幼女魔王I 「この口でヌチョヌチョいじめられちゃったらどうしよう……」


ヒトデ触手 「チュパチュパ」


ウニョウニョ


幼女魔王G 「Oは欠席か」


幼女魔王C 「男のミルクを見つけるまで帰って来ないと言って出て行ったきりだけど」


幼女魔王M 「いま思えば、止めるべきだったのかもしれないね」


ペチャクチャ


幼女魔王A 「まま、私のお菓子、一緒に食べよ……」


母性巫女 「あら、ありがとうございます」

母性巫女 「じゃあ私のお菓子も一緒に食べましょうね」


キャッキャッ ウフフ

138 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 17:55:15.13 ID:3VmAHDZuo


ペチャ クチャ

ダラダラ ダラダラ ダラダラ ダラダラ


幼女魔王C 「……待って」

幼女魔王C 「これ、たぶん会議じゃないわ」

幼女魔王C 「やり直しましょう」


幼女魔王たち 「賛成」


ピタ


幼女魔王C 「……コホン」

幼女魔王C 「では、会議を始めましょう」


幼女魔王たち 「はーい」



…… …… ……



幼女魔王S 「ふうん、今日は焼き菓子なのね……」


幼女魔王J 「モグモグ……」


139 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 17:58:36.47 ID:3VmAHDZuo


サイコロを3回振り、出た目の数の合計に10000をかけた回数だけ
>>137->>138を繰り返す。
なお、3回とも同じ目の場合、繰り返しは発生しない。



140 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 18:11:10.17 ID:3VmAHDZuo





淫魔幼女のアイテムメモ


■プレミアムステップアップサイコロ 
 ノーマルサイコロに比べ、三連続で同じ目の出る確率が1%も高いサイコロ。
 一個につき白貨6000枚。一度使うと消滅する。
 購入するたびに、緑の薬と赤の薬を8個ずつ貰えるぞ。
 
  

141 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 18:15:27.20 ID:3VmAHDZuo




幼女魔王C 「ふむ……どうしてかしらね、同じことの繰り返しになってしまう」

幼女魔王C 「何がいけないというのかしら」


幼女魔王M 「頭脳派のTが欠けたのは痛いね」


幼女魔王G 「嘆いてもいられない。残った私たちで頑張ろう」


幼女魔王C 「そうね」

幼女魔王C 「そうだわ、今日は新しい私がいるのよ」

幼女魔王C 「なので、自己紹介から始めましょう」


幼女魔王M 「……うん、斬新な切り口なんじゃない?」


幼女魔王G 「さすがの発想力だね」


幼女魔王C 「では、Aから順番にお願い」


幼女魔王A 「ふぇっ……!?」


142 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 18:30:59.28 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王A 「あ、あの、あの……あの……あの……」


幼女魔王たち 「…………」


幼女魔王A 「ま、まま……」


母性巫女 「大丈夫、大丈夫ですよ」


幼女魔王A 「……幼、幼女魔王A」

幼女魔王A 「Aの、甘えん坊の、幼女魔王……」

幼女魔王A 「です」


幼女魔王C 「幼女魔王C。Cの字を……次からここは省略で良いかしら、クールな幼女魔王よ」


幼女魔王D 「幼女魔王D。だんご虫の幼女魔王」


幼女魔王E 「幼女魔王E。エロスの幼女魔王」


幼女魔王F 「フェニックス!」


幼女魔王G 「幼女魔王G。ゲーム大好きの幼女魔王だ」


幼女魔王H 「フェニックス!」


幼女魔王I 「幼女魔王I。いじめられたい幼女魔王」


幼女魔王J 「幼女魔王J。上下貫通されたい幼女魔王」


幼女魔王C 「Kは最後でお願いね。お願い、L」


幼女魔王L 「K……!?」


143 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 18:42:31.55 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王L 「……コホン」

幼女魔王L 「L。Lサイズのパフェを友だちと食べたい幼女魔王」


幼女魔王M 「M。モンスターを使う幼女魔王」


幼女魔王P 「プニマン……プニットマンスター大好き。Pよ」


母性巫女 (プニマン……?)


幼女魔王S 「S。処女だけど寂しいから人型のしもべを手に入れて甘えたい幼女魔王」


幼女魔王W 「そしてフェニックス!」



幼女魔王C 「ありがとう、私たち」

幼女魔王C 「では、K」


母性巫女 「はい」

母性巫女 (ええと……)

母性巫女 「幼女魔王K……です。黒い髪の幼女魔王」

母性巫女 「かなあー……」


幼女魔王たち 「K……!?」


144 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 18:54:23.74 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王S 「……って、よく考えたらKで驚くことなんて無いわよねえ?」


幼女魔王D 「どうして反応しちゃったのかしらねえ?」


ザワ ザワ


母性巫女 「…………」


幼女魔王G 「うーん……Kか」


幼女魔王C 「やはり引っかかるのかしら、G」


幼女魔王G 「君もそのようだね」

幼女魔王G 「何と言うか、Kがどうこうではなくて」

幼女魔王G 「それ以前に、根本的に私たちと違う存在というような気がしてね」

幼女魔王G 「そう、あれだよ……」


幼女魔王M 「知らない私?」


幼女魔王G 「それだ」




??? 「つまり、オレの側の存在ということか?」




??? が現れた!



145 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 19:02:42.62 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王たち 「!!!!」


幼女魔王J 「夜の腐婦……」


幼女魔王L 「星を見る風婦……」


幼女魔王C 「……!」

幼女魔王C 「驚いた、Y。あなたの方から降りてくるなんて」


??? 「胸がざわついて、静かに星も見れなくてね」

??? 「こんばんは……K? だっけ」

幼女魔王Y 「オレは幼女魔王Y」

幼女魔王Y 「夜の湖畔に淀む風であり、幼女魔王でないものだ」


母性巫女 「は、はあ……」

146 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 19:31:01.05 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王Y 「魔道の流線、無情の風、黒い花飾り、オレのことは何と呼んでも構わない」

幼女魔王Y 「オレは何者でもないのだから」

幼女魔王Y 「だが、ここの子らとは違う岸に立つことを示すため」

夜の風 「夜の風とでも名乗ろうか」


母性巫女 (この子……人……見た目はNだけど、まったく別のものみたい)

母性巫女 (あっ、髪から覗く耳がロバの耳のよう……)


幼女魔王C 「Y………ウッフ……コホンッ………夜の風」

幼女魔王C 「あなたも会議に参加してくれるのかしら」


幼女魔王Y 「鐘は鳴ったのだろ」

幼女魔王Y 「それに、この会議に意味が無いことは、お前たちも知っているはずじゃないか」

幼女魔王Y 「最も重要な一人を欠いてしまっていては」


幼女魔王C 「重要な一人」

幼女魔王C 「Nのことかしら」


147 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 19:38:05.31 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王H 「そういえばそうね」


幼女魔王F 「Nがいなければ、会議がどうなろうと何にもならないわよね」


母性巫女 (N……)


幼女魔王W 「何か良い案があるっていうの、夜のフェニックス」


幼女魔王Y 「さあ? オレはそこのKに用があってきただけさ」

夜のフェニックス 「夜の風とよべ」

夜の風 「それだけは何か嫌だ」


148 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 19:55:26.29 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王C 「……たとえ意味が無いとしても」

幼女魔王C 「いつか意味が出てくるときのために、これは続けておかなくてはいけない気がするの」


夜の風 「そうか、好きにするべきさ。この塔についての権利はお前のものなのだから」

夜の風 「さて、オレにはせいぜい見守ってやることしかできないが、では、一つ余計なお世話をしてやろう」

夜の風 「会議とやらが終わったら、K、オレの部屋においで」

夜の風 「幼女魔王の塔について話したいことがある」

夜の風 「知らない者同士で」


母性巫女 「知らない者……」


幼女魔王C 「やっぱりこの子は、あなたと同じ側なの?」


夜の風 「オレにお前の答えを求めるな」


幼女魔王C 「…………」


幼女魔王A 「………だ」

幼女魔王A 「駄目!」


幼女魔王M 「A」


幼女魔王A 「会議が終わったら、ままは私と一緒。私が、塔を案内するの」


夜の風 「そうかい」

夜の風 「だったら、一番にオレの部屋へ案内すると良い」


149 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 20:07:18.21 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王A 「……!」

幼女魔王A 「で、でも、道が分からない……」


幼女魔王G 「君たちの部屋への道は崩れて、私たちでは通れないんだ」


夜の風 「……どうにかすれば良い」

夜の風 「できなかったらそれで良い」


幼女魔王A 「…………」


夜の風 「お前たちが望むかどうかだ」

夜の風 「好きにすれば良いさ」


キイイイ


母性巫女 (! ……魔法?)


キイイイ ニョンニョンニョン


夜の風 「じゃあな。願わくば、またあとで」


ニョンニョンニョン

バシュン


母性巫女 「消えた……」


150 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 20:13:21.71 ID:3VmAHDZuo


シイン


母性巫女 「…………」


幼女魔王M 「……さすが、知らない私」

幼女魔王M 「何を言っているかさっぱり分からなかった」


幼女魔王C 「そうね」

幼女魔王C 「……会議に戻りましょう」


幼女魔王G 「何を話そうか」


幼女魔王L 「何でも良いわ。みんなでLサイズのパフェを食べながら話しましょう」


幼女魔王P 「……早くプニマンに戻れるなら、どうでも良い」


幼女魔王C 「まずは、Tのことかしら」



151 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/07(月) 20:20:57.42 ID:3VmAHDZuo


幼女魔王W 「Tがどうしたって言うの?」

幼女魔王W 「そう言えば、姿が見えないけれど」


幼女魔王C 「M」


幼女魔王M 「いってしまった」

幼女魔王M 「立ち会ったのが、このKなの」

幼女魔王M 「ね?」


母性巫女 「はい……」


幼女魔王P 「! ……ふうん」


幼女魔王S 「私より後に生まれたくせに……複雑だわ」

幼女魔王S 「逝き遅れること、これで何人目かしら」


幼女魔王G 「前向きにとらえよう。いくことが不幸なわけじゃ無い」



152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/08/08(火) 01:11:09.72 ID:v0zYe5aC0
>>137
Rが出席してる件について
153 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 02:30:11.46 ID:ZsN+cuEAo

>>152 ありがとうございます


※訂正ごめんなさい

>>137 の名前表記

「幼女魔王R」は「幼女魔王L」か出席者の誰かということでお願いします


154 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 02:38:48.45 ID:ZsN+cuEAo


幼女魔王G 「それで、Kのことだ」


幼女魔王C 「そうね」

幼女魔王C 「あら……G、あなた」


幼女魔王G 「何だい?」


幼女魔王C 「いえ、些細なことなのだけれど、あなたって、物を食べるときはいつも左手を使ってなかった?」

幼女魔王C 「今は右手で食べている」


幼女魔王G 「そうだったかな?」

幼女魔王G 「まあ、本当に些細なことさ。LボタンとRボタンを間違えることもある」

幼女魔王G 「なあ、P?」


幼女魔王P 「ゲーム大好きとしてありえないんですけど」


幼女魔王G 「やれやれ、君はいつも通りだね」


155 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 03:02:53.46 ID:ZsN+cuEAo


幼女魔王C 「コホン……さて、新しい私である、Kのことだけれど」


幼女魔王W 「私じゃ無いって、夜のフェニックスが言っていたわね」


幼女魔王H 「幼女魔王じゃない幼女魔王K……つまり」


幼女魔王F 「偽者か!」


幼女魔王C 「偽者では無いわ」

幼女魔王C 「知らない私よ」


幼女魔王W 「知らない私って何だろう。忘れた」


幼女魔王H 「知らない私が幼女魔王K?」

幼女魔王H 「それって、つまり」


幼女魔王F 「偽者か!」


幼女魔王C 「違うわ」


幼女魔王W 「じゃあ本物なのね。本物の幼女魔王K」


幼女魔王H 「本物の幼女魔王Kが偽者じゃ無い知らない私?」


幼女魔王F 「じゃあどっちが本物なのよ」


幼女魔王C 「…………」

幼女魔王C 「どっちなのかしら」



幼女魔王たち 「うーん……?」



母性巫女 (これが、幼女魔王会議……)



156 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 03:12:28.34 ID:ZsN+cuEAo


母性巫女 「あのう、すみません……」


幼女魔王G 「何だい」


母性巫女 「はい。実は、幼女魔王KというのはTにつけてもらった名前で」

母性巫女 「私は……」


幼女魔王H 「偽者か!?」


母性巫女 「いえ……あ、そうですね、ええと、もともと幼女魔王Kではなくて」

母性巫女 「母性巫女という名前で……」


幼女魔王たち 「!!!」

幼女魔王たち 「!!!!!!」


ザワッ


母性巫女 「ひっ……!?」

母性巫女 (一斉に身を乗り出してきた!)


157 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 03:28:22.78 ID:ZsN+cuEAo


幼女魔王たち 「…………ゴクリ」


母性巫女 「ご、ごめんなさい、言い出せなくて……」


幼女魔王たち 「…………」


母性巫女 (みんな同じ表情で、目だけを爛々と光らせたまま動かない)


幼女魔王A 「………わ」

幼女魔王A 「私の!」


ダキッ


母性巫女 「A?」

母性巫女 (腕にしがみついてきた……)


幼女魔王A 「私のままだもん、私が最初に見つけたんだもん!」


幼女魔王S 「ずるい! 母性巫女は私の……私たちのものでしょ!」


幼女魔王I 「そうよ、あなただけがお尻ペンペンしてもらえるなんてずるい!」


幼女魔王P 「消えなさいよ、あなたたち!」

幼女魔王P 「ねえ母性巫女、私しか持ってない伝説のプニマンをあげるわ。私の母性巫女になってくれたら、どんなプニマンでもあげる」


ギャア ギャア


母性巫女 「あ、あの……」


幼女魔王M 「お、落ち着きなよ!」


幼女魔王C 「ええ、そうねっ……母性巫女がここに居るなんて、ありえないはず……!」



158 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 03:38:24.73 ID:ZsN+cuEAo


幼女魔王G 「ううむ。彼女が知らない私なのだとしたら、ありえないことも無いのでは?」


幼女魔王C 「でも、母性巫女よ……そんなこと……」


幼女魔王H 「じゃあ、偽者か!」


幼女魔王C 「……そ」

幼女魔王C 「そうよ! きっと、そう。偽者に違いない」

幼女魔王C 「彼女はKで、母性巫女では無い……そう、きっと、ええ、そう……」


幼女魔王W 「だとしたら、知らない私で幼女魔王Kなの?」


幼女魔王F 「母性巫女じゃ無くて幼女魔王Kで、でも本物は知らない私で幼女魔王Kじゃ無い?」


幼女魔王たち 「…………」

幼女魔王たち 「……うーん?」



母性巫女 (……もう一度、母性巫女だと名乗りたいけれど)

母性巫女 (同じことの繰り返しになりそうで言えない)

母性巫女 (どうしよう)



159 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 03:45:03.41 ID:ZsN+cuEAo


幼女魔王C 「……そうだわ」

幼女魔王C 「Nよ」

幼女魔王C 「Nなら全部分かるはず」


幼女魔王G 「たしかに。彼女に聞けばすべて分かるはずだ」


母性巫女 (N……)


幼女魔王M 「でも、無理な話だよ。あの子はもうずっとこの会議に姿を見せていない」

幼女魔王M 「議長のくせに」

幼女魔王M 「どうして彼女がNなのか、私たちに忘れられてしまうほどに」



160 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/08(火) 05:16:31.76 ID:ZsN+cuEAo


幼女魔王W 「Nって何の幼女魔王だったっけ」


幼女魔王I 「なめこ」


幼女魔王D 「なめくじ」


幼女魔王S 「にしんの缶詰」


幼女魔王L 「にゅるっと出てくる歯磨き粉」


幼女魔王H 「ふぇにっくす」


幼女魔王J 「ねいきっど」


幼女魔王C 「どれも違っていそうね」

幼女魔王C 「ニューだったかしら」


幼女魔王G 「眠り姫では?」


幼女魔王M 「ほらね、みんな分からない」


幼女魔王C 「というか、会議の場以外でも、もうずっと彼女の姿を見ていない気がするわ」



161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/08(火) 05:41:49.48 ID:NKrMK+Cto
更新乙
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/09(水) 11:08:08.94 ID:VUYWIAjUO
ボーボボの会議みたいだなww
163 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/10(木) 03:20:40.06 ID:1PrAJAp/o


幼女魔王C 「Nはどこにいるのかしら」


幼女魔王E 「浴場では見ていないわ」


幼女魔王P 「知らない」


幼女魔王F 「N……そうか、偽者か!」


幼女魔王L 「その話題はひとつ前に終わっているのよ、F」


幼女魔王G 「そうか。このところ会議がまったくまとまらなかったのは、彼女がいないからか」


幼女魔王M 「正直まとめきれていた気もしないけど、やはり居ないとまずいのよ」


幼女魔王C 「Nを探すべきとういうことかしら」

幼女魔王C 「Nを探しましょう」


幼女魔王たち 「賛成」


母性巫女 (Nがいない……)

母性巫女 (みんなが言っているNは、私の知っているNのことなのかしら)


164 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/10(木) 03:30:46.03 ID:1PrAJAp/o



幼女魔王C 「会議が終わったら、Nを探しに行くのはどうかしら」


幼女魔王G 「それなら、いくつかの班に分けた方が良いんじゃないかな」


幼女魔王たち 「賛成」


幼女魔王M 「美触手にも手伝ってもらうことにするわ」


幼女魔王A 「……ままと一緒に遊ぶって約束したのに」


母性巫女 (塔の案内がいつの間にか遊びになっている……)


幼女魔王C 「では班を決めて、準備をしてから第一次N探し隊の活動を開始します」



165 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/10(木) 03:47:21.24 ID:1PrAJAp/o


…………



母性巫女 (幼女魔王会議が終わった……)



幼女魔王W 「フェニックス!」


幼女魔王H 「フェニックス!」


幼女魔王F 「フェニックス!」



幼女魔王E 「石鹸が一番よ。ここに押し当ててをニュルニュルニュルって前後に動かすと、脳みそがバターみたいにとろけちゃう」


幼女魔王J 「上下貫通よ。全身を一本の触手に支配されている感じはきっと終わらない多幸感よ」


幼女魔王I 「無理矢理よ、無理矢理いろんなことを身体にされるのが最高なの」



幼女魔王C 「合わせて、新しい道も見つかると良いわね」


幼女魔王G 「YやXのような、知らない私がいる可能性はまだまだあるからね」



ガヤガヤ



幼女魔王A 「まま、一緒だね……」


母性巫女 「はい。よろしくお願いします」


幼女魔王A 「うん」

幼女魔王A 「えへへ、ままと二人っきり……」


幼女魔王M 「三人よ、三人」




166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/10(木) 04:05:59.10 ID:4/ZaSC0Zo
更新乙
たくさん読めてうれしい
167 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/10(木) 04:13:14.77 ID:1PrAJAp/o


幼女魔王C 「みんな、班に分かれたわね」

幼女魔王C 「塔を歩くときの注意はおぼえているかしら」


幼女魔王たち 「ここより下の階には行かないこと」

幼女魔王たち 「三つの怖いものを見かけたら一生懸命逃げること」



幼女魔王M 「……この塔には、恐ろしい三匹のモンスターがいるの」

幼女魔王M 「K、階段であなたが襲われそうになったのもそれよ」


母性巫女 「あの男の人の声ですね」


幼女魔王M 「下層をうろうろしながら、ずっと私たちに呼びかけるの」

幼女魔王M 「静かな日には、この広間まで聞こえてくることもあるわ」

幼女魔王M 「でも絶対に答えては駄目。分かるでしょ?」


母性巫女 「ええ……」


幼女魔王M 「あとは鎌の生えた棺と、大きな毛玉」

幼女魔王M 「鎌の生えた棺も下層にしかいないから、まず見かけることは無いと思うわ」

幼女魔王M 「下層で鎌を振り回して物を壊していたり、下層のさらに下を探索しようとした別の私が襲われそうになったこともあるらしいから」

幼女魔王M 「もしも出会ったら逃げるべきね」


母性巫女 「はい」

母性巫女 (崩れた牢で見た、あの小さな棺ね)


幼女魔王M 「大きな毛玉は……ときどきここにも出てくる」

幼女魔王M 「ふわふわ浮きながら笑っているだけで何もしてこないし、放っておけばいつの間にかいなくなるけど」

幼女魔王M 「見るとすごく嫌な気分になるのよ。どんなお菓子の味も分からなくなるくらい」


母性巫女 「そんなものがいるんですね。ありがとうございます」


幼女魔王A 「! ………」

幼女魔王A 「私だって、説明できるのに……」


幼女魔王M 「ごめん、ごめん」

幼女魔王M 「でもAは説明してる途中で自分で怖くなって泣いちゃうでしょ」


幼女魔王A 「うぅうー」


母性巫女 「あはは、大丈夫、大丈夫……」


ナデ ナデ



168 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/10(木) 04:19:38.24 ID:1PrAJAp/o


幼女魔王C 「説明は済んだかしら、M」


幼女魔王M 「うん」


幼女魔王C 「何か珍しいアイテムを見つけたら、ネコババせずに一度はみんなに見せること」

幼女魔王C 「新しい部屋や道を見つけたら地図に記録して、みんなにしらせること」

幼女魔王C 「新しい私や知らない私を見つけたら、やっぱりみんなにしらせること」

幼女魔王C 「Nがいない分、情報を積極的に分かちあいましょう」

幼女魔王C 「疲れたらちゃんと休むこと」

幼女魔王C 「それでは、第一次N探し隊」

幼女魔王C 「活動開始」




169 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/10(木) 04:41:14.44 ID:1PrAJAp/o

…………


幼女魔王の塔 めちゃくちゃな廊下



コツ コツ コツ


母性巫女 (広間をあとにして、Nを探し始めたけれど)

母性巫女 (曲がりくねった石畳の廊下が上に下に入り組んで、どこをどう歩いているか分からない)


幼女魔王M 「……おっと」


床 が崩れて 通れない……


母性巫女 (大きな穴)

母性巫女 (下には何もない。真っ暗……)


幼女魔王M 「ここ、通れなくなってるね。前に来たときは大丈夫だったのに」

幼女魔王M 「地図に記録しよう。A」


幼女魔王A 「うん……」

幼女魔王A 「んしょ、んしょ……」


カキ カキ


母性巫女 (頑張って地図に書きこんでいる)

母性巫女 (ペンの持ち方が危なっかしい……)


幼女魔王A 「まま、きれいな円になってる?」


母性巫女 「え゛っ!?」

母性巫女 「……ちょ、ちょーっとぐにゃっとなっているけれど、一生懸命の可愛い円ですよ」


幼女魔王A 「えへへ……」


幼女魔王M 「甘やかしすぎ。出来損ないのへろへろな四角じゃない」

幼女魔王M 「きれいな円を書きたかったら、まだまだ練習が必要」


幼女魔王A 「うぅうー……!」


母性巫女 「今度、今度いっしょに練習しましょうね」

母性巫女 「Mをびっくりさせるくらいきれいな円を書きましょう」


幼女魔王A 「………一緒」


母性巫女 「ええ、一緒」


ナデ ナデ


幼女魔王A 「……えへへへ」


母性巫女 (なでるとトロリとした顔で笑うのは、Nそっくり)


170 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/11(金) 00:05:46.46 ID:g23JdBWqo


幼女魔王M 「こんなことは珍しくないんだけど」

幼女魔王M 「最近は多すぎるね。地図を新しくしなきゃ、書き込みだらけで見にくいったらないよ」


母性巫女 「Nを見なくなったことと関係があるんでしょうか」


幼女魔王M 「言い切れないけど、そうだとは思う」

幼女魔王M 「今、この塔で一番大事な役割を果たしているのはあの子だから」


母性巫女 「大事な役割」

母性巫女 (幼女魔王の塔で、一番大事な役割を果たすのがN……)

母性巫女 (この塔はやっぱり……)


幼女魔王M 「まあ、果たせていないわよね」

幼女魔王M 「前の子はよくやっていたみたいだけど……」


母性巫女 「前の子?」


幼女魔王M 「この塔が一度滅ぶ前に、今のNと同じ役割についていた子」



171 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/11(金) 00:35:52.84 ID:g23JdBWqo


母性巫女 「この塔が、一度滅んだ……」


幼女魔王M 「あなたが居たっていう地下が、その名残よ」


母性巫女 「あのぼろぼろの地下牢ですね」


幼女魔王M 「その下に、私たちの知らない層が眠っているというわ」

幼女魔王M 「もう誰もおぼえていないけれど、かつて私たちは、そこで暮らしていた」

幼女魔王M 「かつてそれこそが、幼女魔王の塔だった」

幼女魔王M 「おぼえていないはずなのに、みんな不思議と分かっている」


母性巫女 (一度滅んだ塔……)


幼女魔王M 「私たちが暮らすこの上層は、塔が一度滅んだあとにできたもの」


母性巫女 「いったい何が起きたんでしょう」


幼女魔王M 「分からない」

幼女魔王M 「あの牢より下へ行ってみれば手がかりがあるかもしれないけれど」

幼女魔王M 「危険すぎてできていない」

幼女魔王M 「棺に声……もしかしたらもっと怖いものがいるかもしれないし」


幼女魔王A 「…………」



172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/11(金) 00:43:46.96 ID:ZzOf9mFMo
更新乙
173 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/11(金) 00:46:06.73 ID:g23JdBWqo


母性巫女 (知らないけれど、分かっている……)

母性巫女 (幼女魔王の塔、下、今は上に住んでいる……下……過去……?)


幼女魔王M 「少し前、下の方で大きな音が上がったわ。何かが決定的に崩れるような」

幼女魔王M 「私より長く塔で暮らしていた子も多かったはずだけれど、いつの間にかいなくなった」

幼女魔王M 「もし下の層で何かを見つけようとするなら、時間はあまり残されていないのかもしれない」


母性巫女 「……あの」

母性巫女 「以前にNの役割にいた子は、どこに行ったんでしょう」


幼女魔王M 「……さあ」

幼女魔王M 「新しい子たちは会ったことないし」

幼女魔王M 「私は当時を知っているから会ったこともあるはずだけれど、何も思い出せない」


幼女魔王A 「…………」



174 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/11(金) 02:35:09.22 ID:g23JdBWqo


幼女魔王M 「Nのいた幼女魔王会議でも、よく議題に上がっていたわ」

幼女魔王M 「下層について」

幼女魔王M 「探索すべきだと言う子たちと、そうすべきでないと言う子たち」

幼女魔王M 「真っ二つに分かれて言い合って、いつも結局まとまらないままうやむやになった」


母性巫女 「……Nはどっちだったんでしょうか」


幼女魔王M 「いつもどっちつかずよ」

幼女魔王M 「あの子が一声上げたら、それで決まるのに」


母性巫女 「やっぱり……」

母性巫女 (怖がりなあの子らしい)

母性巫女 (私を……あんなことにした時には、勇気を振り絞ったのかしら)




175 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/11(金) 02:47:02.03 ID:g23JdBWqo


幼女魔王A 「…………」

幼女魔王A 「ずるい」


幼女魔王M・母性巫女 「?」


母性巫女 「A?」


幼女魔王A 「Mばっかり、ままとお話ししてる」

幼女魔王A 「私が案内するのに。私のままなのに」


幼女魔王M 「私たちだよ」

幼女魔王M 「私たちのK。そしてAは、私たちのA」


幼女魔王A 「…………うぅう」

幼女魔王A 「ままぁ……」


ダキ


母性巫女 「あらあら……」


ナデ ナデ


母性巫女 (こんなに素直に甘えてくることは、Nは無かったっけ)

母性巫女 (いつも申し訳なさそうにして……)

母性巫女 (あれ、後になるとこんな感じだったかしら)


幼女魔王M 「私の姿でそんなことして」

幼女魔王M 「Cあたりが見たら呆れ返るなんてもんじゃないね」


176 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/11(金) 03:59:50.48 ID:g23JdBWqo


母性巫女 (眠っているNに近づくこともできなくなっていたのが嘘みたい)


ナデ ナデ


幼女魔王A 「えへへ……」


幼女魔王M 「さあ、もたもたしてないで、先へ行くよ」


母性巫女 「あ、はい」


幼女魔王A 「うぅう……」


ギュウ


母性巫女 (小さな手で服を掴んでくる)

母性巫女 「行きましょう、A」


幼女魔王A 「……やだ」


幼女魔王M 「A、わがままがすぎるよ」


幼女魔王A 「やだもん。……もう歩けないんだもん。ままとこうしてるんだもん」


幼女魔王M 「A!!」


幼女魔王A 「ぃうっ……」

幼女魔王A 「……グスッ……うぅうう゛ー」


母性巫女 「じゃあ、歩けるようになるまで、おんぶして行きましょうか」


幼女魔王M 「K、駄目だよ」

幼女魔王M 「それじゃあ、いつまでもAは甘えん坊の私のままだ」


母性巫女 「良いじゃないですか、甘えん坊でも」


幼女魔王M 「駄目だよ。甘えん坊なんて」

幼女魔王M 「そんなんだから……」


ヒラ ヒラ ヒラ


母性巫女 「?」


ヒラ ヒラ ヒラ


枯葉


母性巫女 「塔の中なのに、枯葉が舞い落ちてくる」


幼女魔王M 「……何てこと」

幼女魔王M 「いつの間にここに」


母性巫女 「ここに何かあるんですか?」


幼女魔王M 「この先に、Yの部屋があるのよ」
177 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/08/11(金) 15:21:21.52 ID:g23JdBWqo




幼女魔王M 「そう、夜の……フフッ……風の」


幼女魔王A 「プフッ……」


母性巫女 「会議の場に突然現れた、あの人の」


幼女魔王M 「そんなつもりは無かったんだよ」

幼女魔王M 「まずはNの部屋へ向かおうとしていたのに」


幼女魔王A 「まま……」



夜の風の声 『思ったより早かったじゃないか』



母性巫女 「!」

母性巫女 「声が響く……」


夜の風の声 『よくできたね、A。ちゃんと迷わずにKを案内してきた』


幼女魔王A 「……ち、違う、私は」


ヒラ ヒラ ヒラ ヒラ

カサ パサ ファサ


母性巫女 (枯葉が積もっていく……)


幼女魔王M 「あいつ、何かしたのね。私たちをここに誘導したのよ」

幼女魔王M 「知らない私は、私たちの知らないことができるから厄介」



夜の風の声 『K、いるね。ここから先はお前一人でおいで』




178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/11(金) 22:16:53.24 ID:+ZT5OaW0o
おつ
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/11(金) 22:20:33.18 ID:TLEmjO+co
おつ
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/08/20(日) 01:12:01.63 ID:HvIRWL9yO
葉巻さん何やってるんだwww
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/13(水) 18:12:18.55 ID:AhHOp3Kp0
待ってる
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 14:21:08.20 ID:cTEbmKr40
そろそろか?
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 13:03:19.16 ID:k3ur67xAo
9月も終わりそうだけどまだ来ないっすかね?
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/02(月) 04:54:26.36 ID:gF5lCfEa0
もうすぐ来るよ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/12(木) 00:18:06.22 ID:luw9bpT7o
来ないっすね
186 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 18:26:16.77 ID:RTxEFThOo


カササ パサ カサ


母性巫女 (行かないといけない気がする)


幼女魔王M 「K」


幼女魔王A 「まま……」


ギュ


母性巫女 (小さな手……)

母性巫女 「ごめんなさい。ちょっと行ってみます」

母性巫女 「探しているものの手がかりが見つかるかもしれないし」


幼女魔王M 「しかたない。じゃあ、私も……」


幼女魔王A 「だめ!」


幼女魔王M 「A……」


幼女魔王A 「……A、向こうに行っちゃ駄目……」


幼女魔王M 「A?」


幼女魔王A 「ままも……」


ギュウ


母性巫女 「…………」

母性巫女 「ちゃんと、帰ってきますから」


幼女魔王A 「…………」


母性巫女 「ね?」


幼女魔王A 「…………」

幼女魔王A 「……うん」




187 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 18:36:28.50 ID:RTxEFThOo


幼女魔王M 「じゃあ、行こうか」


母性巫女 「良いんでしょうか。一人で来るように言われたのに」


幼女魔王M 「大丈夫だよ。私にできないことができても、どうせ私だし」

幼女魔王M 「Aは残るんだね?」


幼女魔王A 「……だめ」

幼女魔王A 「私たちは、みんな駄目」


幼女魔王M 「うん?」


夜の風の声 『Aの言う通り、お前たちは来ないように』

夜の風の声 『オレにはちゃんと見えているのだからね』


幼女魔王M 「ちぇっ、いやな奴」


母性巫女 「あの、Aのこと、よろしくお願いします」


幼女魔王M 「うん。何かされそうになったらすぐに引き返してきなよ」


母性巫女 「ええ……」


ザ ザ ザ


188 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 18:58:13.81 ID:RTxEFThOo



枯葉の廊下



ペシ カシャ ガシャ


母性巫女 (枯葉だらけ)

母性巫女 (私の故郷では見ない形の葉だわ)


パキ パパキ ザ ザ


母性巫女 (本当に枯葉だらけ。床も見えない)

母性巫女 「…………」

母性巫女 「夜の風……さん?」


夜の風の声 『何だ? 部屋まであと少しだよ』


母性巫女 「あの、少し掃除してからでも良いでしょうか」


夜の風の声 『掃除?』


母性巫女 「廊下に枯葉が積もっているなんて、歩きにくいでしょうし」


夜の風の声 『必要ない。早くおいで』


母性巫女 「あら、大丈夫ですよ、お掃除好きですから」


夜の風の声 『遠慮して言ってんじゃないよ』

夜の風の声 『そこはそれで良いんだよ』

夜の風の声 『そういうものなんだよ』


母性巫女 「はあ……」


ザ ザ ザ


母性巫女 「…………」


夜の風の声 『…………』


母性巫女 「……でも、このまま積もっていくと」

母性巫女 「廊下が枯葉で詰まってしまうわ」

母性巫女 「たいへん。やっぱり、掃除しましょう」


夜の風の声 『…………』


母性巫女 「ね?」


夜の風の声 『はよ来い』




189 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 19:00:25.69 ID:RTxEFThOo


夜の風の声 『一定量以上は積もらないような仕組みなんだよ』

夜の風の声 『魔法でそういう風にしてんだよ』

夜の風の声 『そういう演出なんだよ』


母性巫女 「そうなんですか?」

母性巫女 「そういうことなら……」


ザ ザ ザ

ペシ ペペキ


母性巫女 (踏んだときのこの感触)

母性巫女 (本物の枯葉よね)

母性巫女 「………あの」

母性巫女 「演出って、いったい」


夜の風の声 『いい加減にしろよ。勘弁しろよ』

夜の風の声 『はやく来いよ』


190 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 19:13:43.72 ID:RTxEFThOo


ザ ザ ザ


母性巫女 「…………」

母性巫女 (城のみんなは、ちゃんとご飯食べているのかしら)

母性巫女 (記録魔、泣かされていないかしら)

母性巫女 (猫耳蛇娘も箒少女も、元気だけどやりすぎるところがあるから……)

母性巫女 (波魔法少女も、しっかりしているけれどそういうのはじっと見守る人だし)

母性巫女 (書き置きくらい残しておくべき……って)

母性巫女 (故郷の森じゃなくて、城のことばかり思い出している……)


ザ ザ ザ


母性巫女 「……あら?」





母性巫女 「行き止まり……?」


ザ ザ


母性巫女 「どうしま……」


ズボ


母性巫女 「しょお゛っ!?」


なんと 落とし穴だ!


191 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 19:35:47.68 ID:RTxEFThOo


ヒュルルル


夜の風の声 『あっはは! 引っかかった引っかかっ……』


母性巫女 の 空中多段跳び!
落とし穴 を 無効化した!


母性巫女 「ふう、危なかった」

母性巫女 「とっさに空中でジャンプしていなかったら落ちていたところだった……」


落とし穴


母性巫女 「深い穴……。どこまでも続いていそう」

母性巫女 「塔の所々にあったものと同じようなものなのかしら」

母性巫女 「夜の風さん。やっぱり危ないので、掃除してから……」


夜の風の声 『…………』


母性巫女 「夜の風さん……?」


夜の風の声 『……ふっ、ふふん』

夜の風の声 『何を言っている。入り口はそこさ』


母性巫女 「ええっ!?」


夜の風の声 『さっさと降りておいで』


母性巫女 「降りるって、こんな深い穴……」


夜の風の声 『飛び降りたら良いのさ』


母性巫女 「と、飛び降りるって……」


夜の風の声 『心配するな。オレは風だぜ?』

夜の風の声 『ふんわり受け止めてやることくらい……』



母性巫女 の 空中多段跳び!



母性巫女 「少しずつ高さを落としながら、空中でジャンプを繰り返せば……」

母性巫女 「うん、いけそう……」


トイーン トイーン トイーン

トイーン……



192 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 21:02:10.32 ID:RTxEFThOo



トイーン トイーン……


母性巫女 (真っ暗……)

母性巫女 「……あ」


ポワ


母性巫女 (下の方に、ぽつんと明かりが……)


トイーン トイーン

トイーン……


幼女魔王の塔
隠された客室Y


……トイーン トイーン

スタ

テク テク テク


母性巫女 (……ここは、どこかの部屋?)

母性巫女 (穴の底というより、森の中にあるみたいだわ)


??? 「…………」


母性巫女 (窓辺に誰かいる)

母性巫女 (窓の外は、星空……)


??? 「…………」

生き人形 「…………」


母性巫女 (髪の長い……女の子?)


193 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 21:11:59.24 ID:RTxEFThOo


母性巫女 (揺れる夜の湖面みたいな髪の色)

母性巫女 (塔にいる子たちとは全然違う姿)

母性巫女 「あの……」


生き人形 「…………」


プイッ


母性巫女 「あ……」

母性巫女 (近づこうとしたら、そっぽ向かれた)

母性巫女 (拗ねているみたい)


生き人形 「…………」


ポソポソポソ


母性巫女 (何か話しているみたいだけれど、聞こえない)

母性巫女 「……もしかして、夜の風さん?」


生き人形 「………!」


母性巫女 「……?」

母性巫女 (固まった?)


生き人形 「〜〜〜〜……っ」


カアアア


母性巫女 (あっという間に顔が真っ赤に!)


194 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/13(金) 22:14:02.71 ID:YoNOSrHWO
こっちでも微妙になんかこう黒花さんは黒花さんなんやね…
それにしても母性巫女強いな
195 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 22:53:49.18 ID:RTxEFThOo


母性巫女 (どうしよう)

母性巫女 (とりあえず抱きしめてみようか……)


生き人形 「…………」


ピョン タ タ タ タ


母性巫女 (逃げ出した)

母性巫女 「あ、待っ……」


生き人形 「…………」


タ タ タ タ


母性巫女 「……わっ」

母性巫女 (女の子の逃げた先の壁に……)


骨の仮面
美少年の仮面
黒花の仮面
馬の仮面
美女の仮面
正体の仮面
姫の仮面
魔王の仮面
妖精の仮面
角の仮面


母性巫女 (たくさんの仮面がかかっている)


196 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/13(金) 23:00:11.90 ID:RTxEFThOo


生き人形 「…………」


生き人形 の 風乗り!
ふわりと浮いた!


ヒョイ スチャ


生き人形 は 黒花の仮面 を装備した!


生き人形 「…………」


母性巫女 (黒い花飾りをつけた仮面)

母性巫女 (まるで生きているみたい)


生き人形 「…………」


ギュ


母性巫女 (骨の仮面を抱きしめている)


生き人形 「…………あなた」

生き人形 「嫌い」


母性巫女 「えっ!」


197 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 00:27:44.08 ID:PQc19xido


母性巫女 (呼びつけられて、いきなり嫌われるなんて)

母性巫女 「あの……」


生き人形 「…………」


プイ


母性巫女 (すごく嫌われている)

母性巫女 (ここまで嫌われるほどのことをしちゃったのかしら……)

母性巫女 「あの、私、何か……」


生き人形 「…………」


ツーン


母性巫女 「……ご」

母性巫女 「ごめんなさい?」


生き人形 「…………」

生き人形 「……ハァ」

生き人形 「ようこそ。ここは塔の客室」

生き人形 「私は幼女魔王Y」

生き人形 「幼女魔王の中の、幼女魔王でない者」


母性巫女 (何かを諦められた)


198 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 00:37:26.21 ID:PQc19xido


生き人形 「あなたが幼女魔王会議の場で見た私は、私の仮面のひとつ」

幼女魔王Y 「あなたの前にいる私もまた、仮面にすぎない」

幼女魔王Y 「私には名前も、正体もない」

幼女魔王Y 「なぜなら私でさえも知らないから」

幼女魔王Y 「それは、どうでも良い話」

幼女魔王Y 「大事なことは、私が、本来ならばこの塔にいるはずがないということ」

幼女魔王Y 「ここが、客室であるということ」


母性巫女 (客室……本来ならいない……)


幼女魔王Y 「どのように大事かを感じるには」

幼女魔王Y 「ここが何であるのかを知らなければならない」





199 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 00:50:48.28 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「幼女魔王の塔とはすなわち何か」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (たくさんのあの子がいる、あの子の名前の塔)

母性巫女 (分からないけど、まるで)

母性巫女 「あの子そのもの……?」


幼女魔王Y 「幼女魔王そのもの」

幼女魔王Y 「その通り」

幼女魔王Y 「ここは幼女魔王という個人」

幼女魔王Y 「幼女魔王という、ひとつの世界」



200 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 01:01:54.77 ID:PQc19xido


母性巫女 「世界……」


幼女魔王Y 「個と個の境界線」

幼女魔王Y 「世界と世界の境界線」

幼女魔王Y 「個は、ひとつの世界そのもの」


母性巫女 「……ここは、あの子の中なんでしょうか?」


幼女魔王Y 「知らない」


プイ


母性巫女 「えー……」


幼女魔王Y 「幼女魔王という存在であることは間違いない」

幼女魔王Y 「中にいるのかは知らない」

幼女魔王Y 「あなたが幼女魔王を抱き上げることと、ここにこうしていることは」

幼女魔王Y 「あまり違いが無いことなのかもしれない」


母性巫女 「…………?」





201 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 01:47:02.77 ID:PQc19xido



母性巫女 「…………」

母性巫女 「とにかく、ここはあの子そのものなんですね」


幼女魔王Y 「…………それで良い」

幼女魔王Y 「それが分かれば、この塔について気づくこともある」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (……入り組んだ回廊、ところどころに空いた穴)

母性巫女 (たくさんのあの子。出席者はあの子だらけなのに、まとまらない会議)

母性巫女 (いなくなった子。崩れ落ちた子……)

母性巫女 (地下牢……棺、男の人の声、あの笑い声……)


幼女魔王Y 「ここにある物すべてが、幼女魔王という存在に不可欠のもの」

幼女魔王Y 「というよりも、ここにある物によって、幼女魔王という存在は組みあがっている」


母性巫女 「は、はあ……」


幼女魔王Y 「塔という入れ物と、その中でうごめく幼女魔王たち」

幼女魔王Y 「そのうごめくものたちの中で異質なもの」

幼女魔王Y 「私と、私と同じように客室にいる者たち、そしてあなた」


母性巫女 「異質……」


幼女魔王Y 「幼女魔王の中で、幼女魔王になりきれないもの」

幼女魔王Y 「幼女魔王が客として扱わざるを得ないもの」


母性巫女 「うーん……?」


幼女魔王Y 「あなたは、幼女魔王では無いでしょう?」


母性巫女 「はい……」


幼女魔王Y 「それを自覚できるのに、ここにいる」

幼女魔王Y 「それは、ここではとても不自然なことなのよ」

幼女魔王Y 「まるまる幼女魔王という存在であるべきなのに、そうでない」

202 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 03:49:03.36 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「この塔に私やあなたがいる限り、幼女魔王は、幼女魔王でありながらそうでないことになる」

幼女魔王Y 「自分でありながら自分でない」

幼女魔王Y 「それがどれほど大きな負担になるか、あなたは想像できる?」


母性巫女 「それは、いいえ……」


幼女魔王Y 「なのに幼女魔王の塔にはいくつも客室がある」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在は、いくつかの異なる存在を抱えながら」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在であり続けている」


母性巫女 (あの子であり続けている……)

母性巫女 「そうでしょうか。塔はぼろぼろだし、あの子と会ったとき、とても問題が無いようには見えませんでした」


幼女魔王Y 「これでも、ましになった方なのよ」


母性巫女 「え……」


幼女魔王Y 「私がここに来たとき、すでに広場より下は誰も住めないところになっていたけれど」

幼女魔王Y 「上もまた、塔と呼べるようなものではなかった」

幼女魔王Y 「壁は穴の方が大きくて、つくりかけのようでもあったし、なおしかけのようでもあった」

幼女魔王Y 「幼女魔王たちは眠っているのか死んでいるのか分からないくらい、とにかくあまり動くことが無かった」


母性巫女 (一度滅んだ塔……)


幼女魔王Y 「けれど、日に日に壁の穴は小さくなり、それにつれて幼女魔王たちの動く時間が増えていった」

幼女魔王Y 「そして誰が何をしたのかも分からないままに、ここは幼女魔王の塔と呼べるまでになった」


203 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 04:01:53.52 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「自分というものは、周囲によって形づくられる部分もあるけれど」

幼女魔王Y 「幼女魔王の場合、それがほとんどだった」

幼女魔王Y 「自分で形づくる部分が、まったく無かったと言っても過言では無いと思う」

幼女魔王Y 「誰かから無理矢理、幼女魔王という形にさせられている」

幼女魔王Y 「そんな印象を受けた」


母性巫女 「誰かから……」


幼女魔王Y 「それは正しいことだったのかもしれない」

幼女魔王Y 「あのままでは、今もここは瓦礫の山だったかもしれないし」

幼女魔王Y 「もしかしたら、もっとひどいことになっていたかもしれない」


母性巫女 「いったい、あの子に何が……」


幼女魔王Y 「さあ?」

幼女魔王Y 「ただ、このところ崩れだした今の塔でも」

幼女魔王Y 「あの頃よりは遥かにましということは確かよ」


204 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 04:24:28.38 ID:PQc19xido


母性巫女 「……あなたは、この塔についてどれくらい知っているんですか」


幼女魔王Y 「知らない」


プイ


母性巫女 (かわいい)


幼女魔王Y 「この塔の全容が分からないから、私がどれくらい知っているかも分からない」

幼女魔王Y 「ただ、思うこと、考えることはやめていない……」


ギュ……


母性巫女 (骨の仮面……大事なものなのかしら)


幼女魔王Y 「私からこぼれた私がここにいる意味」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在」

幼女魔王Y 「思って、考えて、確かめながら、ここでじっとしている」


母性巫女 「じっと……」


幼女魔王Y 「私は、あくまで客」

幼女魔王Y 「この塔の主人は、幼女魔王」

幼女魔王Y 「塔の主人が私のもてなし方を決めるまで、無闇に出歩くことはしない」

幼女魔王Y 「もてなしを待って、もうずい分たつけれど」


母性巫女 「……会議に現れたのは?」


幼女魔王Y 「あなたがいたから」


母性巫女 「私が?」


幼女魔王Y 「私と同じだから」

幼女魔王Y 「そして、私と違うから」

幼女魔王Y 「あなたは、私とは違う方法でここに来た」

幼女魔王Y 「とても危険なことだと思ったから」



205 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 05:26:18.80 ID:PQc19xido


母性巫女 「危険……」


幼女魔王Y 「そんな気がしただけ」

幼女魔王Y 「あなたがこの塔そのものを、崩してしまいそうな」


母性巫女 「私、そんなつもりありませんよ」


幼女魔王Y 「だから、危険だと思ったのよ」

幼女魔王Y 「そのつもりが無くても、そうしてしまう」

幼女魔王Y 「これほど厄介なことは無い」


母性巫女 「でも、私は……あ」

母性巫女 (そのつもりが無くても、そうしてしまう)

母性巫女 (この子に嫌われるつもりがないのに、嫌われてしまった)

母性巫女 (記録魔にも、そんなつもり無いのに嫌われた……)

母性巫女 (……もしかして、私ってすごく悪い人なのかしら)


幼女魔王Y 「自覚はあるようね」



206 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/14(土) 12:54:14.42 ID:jXY46BY+o
更新乙
207 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 15:05:25.41 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「ここは幼女魔王そのもの」

幼女魔王Y 「何が、彼女に深刻な変化をもたらすか分からない」

幼女魔王Y 「いつの間にか、幼女魔王の塔があなたの塔とか私の塔になってしまっているかもしれない」

幼女魔王Y 「本当なら、塔の幼女魔王たちとはなるべく接触しない方が良いのだけれど」


母性巫女 「気をつけます……」

母性巫女 「あの、もしかして、この塔の床が崩れだしたのは、私がここに来て、あの子たちと会ったからでしょうか」


幼女魔王Y 「関係ないとは言えないけれど」

幼女魔王Y 「崩れだしたのは、あなたの来るずっと前からよ」


208 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 15:26:57.93 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「瓦礫の山が塔になった頃から」

幼女魔王Y 「幼女魔王たちは活発に動くようになり、幼女魔王の塔、幼女魔王そのものは」

幼女魔王Y 「個としての存在を確立できるようになった」

幼女魔王Y 「地下の棺が確認されたのもその頃」

幼女魔王Y 「しかし、やがて幼女魔王たちは、塔に疑問を持つようになった」

幼女魔王Y 「自分たちの名を冠する塔が、自分たちの知らない間に造られたことに、初めて違和感をおぼえた」

幼女魔王Y 「彼女たちは会議を重ねたが、結局どうすることもできなかった」

幼女魔王Y 「塔の造り方など分からないし、崩すわけにもいかない」

幼女魔王Y 「地下に巣食う棺を越えることもできない」


母性巫女 「あの棺は、何なんでしょう」

母性巫女 「あれも、あの子なんでしょうか」


幼女魔王Y 「知らない」


母性巫女 「あの子たちは、三つの怖いものに数えていましたけど……」


幼女魔王Y 「怖いもの」

幼女魔王Y 「幼女魔王の恐怖」

幼女魔王Y 「得体の知れないもの」

幼女魔王Y 「未知のものほど恐ろしい」


母性巫女 「未知……知らない」


幼女魔王Y 「あれもまた、私やあなたと同じ、客」

幼女魔王Y 「幼女魔王がもてなすことのできない、招かざる客」




209 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 15:47:01.03 ID:PQc19xido


母性巫女 「あれが、私たちと同じ……」


幼女魔王Y 「男の声と毛玉は、新しい」

幼女魔王Y 「二つとも、ほぼ同じころに現れた」

幼女魔王Y 「そして、幼女魔王Kがいなくなったのは、そのころ」


母性巫女 「K……本物の?」


幼女魔王Y 「そう。幼女魔王Kは、あなたではない」

幼女魔王Y 「Kは、最も短命だった」

幼女魔王Y 「彼女が生まれたすぐあとに男の声が生まれ」

幼女魔王Y 「彼女が消えたすぐあとに毛玉が生まれた」

幼女魔王Y 「不思議なことに、幼女魔王たちはそのことを、Kという存在そのものを忘れている」


母性巫女 「…………」


幼女魔王Y 「なのに彼女があなたに幼女魔王Kという名前をつけたのは」

幼女魔王Y 「あなたにその面影を求めたからなのか」


母性巫女 「私に?」


幼女魔王Y 「幼女魔王Kに心当たりは?」


母性巫女 「いえ、全く……」


幼女魔王Y 「Kのいるわずかの間、塔には幸せがあった」

幼女魔王Y 「失くしたことを忘れなくてはならないほど」

幼女魔王Y 「彼女にとって、それは大きな幸せだった」

幼女魔王Y 「では、彼女にとっての大きな不幸せとは何か」


母性巫女 「…………」

母性巫女 「ひとりぼっち」


幼女魔王Y 「孤独」

幼女魔王Y 「彼女が知ることのできる、未知とは違う恐怖」


210 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 20:28:11.37 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「塔がKを失くしたとき」

幼女魔王Y 「塔の何かが変わった」

幼女魔王Y 「何か大きなものが目覚め、いなくなった」


母性巫女 「何か?」


幼女魔王Y 「そう、何か」

幼女魔王Y 「塔の地下深くに眠っていた、何か」

幼女魔王Y 「私は塔に来て少し後から、それを感じていた」

幼女魔王Y 「たぶん、幼女魔王たちは、塔のできる前から感じていたのだと思う」

幼女魔王Y 「感じて、おそれていたのだと思う」


母性巫女 「その何かって、何なんでしょう」


幼女魔王Y 「知らない」

幼女魔王Y 「けれど、想像することはできる」


母性巫女 「はあ……」


幼女魔王Y 「…………」


母性巫女 「…………」

母性巫女 (考えろということかしら)


幼女魔王Y 「……想像することはできる」


母性巫女 「……聞かせてもらえますか?」


211 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 20:33:15.26 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「塔の地下深く」

幼女魔王Y 「棺のいる地下牢より、もっと深いところにいた何か」

幼女魔王Y 「それこそが、幼女魔王」

幼女魔王Y 「真の彼女」


母性巫女 「え……」

母性巫女 (一度滅んだ塔……じゃあ、滅ぶ前の……?)


幼女魔王Y 「幼女魔王たちがそれをおそれていたのは」

幼女魔王Y 「それが本物だから」

幼女魔王Y 「自分たちが、偽物だから」


212 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 20:49:13.83 ID:PQc19xido



母性巫女 「あの子が、にせもの……」


幼女魔王Y 「あのとき失ったのは、塔の本当の主」

幼女魔王Y 「つまり失われたのは、この塔の方」

幼女魔王Y 「この塔は抜け殻」


母性巫女 「抜け殻……」


幼女魔王Y 「なぜ、何かはこの塔を取り戻すのではなく捨てたのか」

幼女魔王Y 「それは知らない」

幼女魔王Y 「あるいは、誰かによって連れ去られたのかもしれない」

幼女魔王Y 「とにかく、この塔は抜け殻となり」

幼女魔王Y 「そして、完全に個となるために動き始めることとなった」


母性巫女 「完全に……?」


幼女魔王Y 「抜け殻のまま、朽ちていくことができなかった」

幼女魔王Y 「なぜか?」

幼女魔王Y 「滅んだ塔の上、誰かによって造られた仮初の塔」

幼女魔王Y 「ここがなぜ、今も存在し続けられるのか」

幼女魔王Y 「理由は知らない」


213 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/14(土) 21:31:26.77 ID:PQc19xido


幼女魔王Y 「真の主を失くしてもこの塔が崩壊しなかったのは」

幼女魔王Y 「私がここに来た理由と関係があるのかもしれない」

幼女魔王Y 「この塔を造ったものが関係しているのかもしれない」

幼女魔王Y 「彼女が強い存在だったから? 誰かと出会ったから?」

幼女魔王Y 「それとも一度魂の入った人形は」

幼女魔王Y 「生きていると言って良いの……?」


ギュ……


骨の仮面


母性巫女 「…………」

母性巫女 (そうだ。出会ったころのあの子は……)


幼女魔王Y 「崩壊を始めたのは、あなたの来る少し前」

幼女魔王Y 「Nが姿を消してから」


母性巫女 (N……)

母性巫女 「じゃあ、やっぱり、Nを見つけ出さなくちゃいけないということでしょうか」


幼女魔王Y 「どうかしら」


母性巫女 「会議をまとめていたのはNだと言っていました」

母性巫女 「あの子がいなくなって、塔が崩れだしたなら、そういうことじゃないんでしょうか」


幼女魔王Y 「……知らない」

幼女魔王Y 「幼女魔王Nとは何か」

幼女魔王Y 「それを、彼女たちは知らない」

214 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 00:21:46.55 ID:mYSuAd2go


幼女魔王Y 「あなたの来るずっと前に、塔は崩れだしていた」

幼女魔王Y 「あなたの来る少し前に、塔は崩れだしていた」


母性巫女 (……ん?)


幼女魔王Y 「この違いに、彼女たちは気づかない」

幼女魔王Y 「塔は、常に崩壊と再生を繰り返すもの」

幼女魔王Y 「常にどこかが崩れ、直し、少しずつ姿を変えていく」

幼女魔王Y 「Nが姿を消して始まった致命的な崩壊と、常にある崩壊の違いに気づけない」


母性巫女 「……つまり、やっぱりNを見つけないと」


幼女魔王Y 「だから、いけない」


母性巫女 「え……」


幼女魔王Y 「どちらの崩壊も、あなたがここに来たから起きているわけではない」

幼女魔王Y 「ならば、なおすのは彼女たちにやらせるべき」

幼女魔王Y 「そしてあなたは幼女魔王Nを探してはいけない」

幼女魔王Y 「見つけるのは、幼女魔王たちでなくてはならない」


母性巫女 「でも……」


幼女魔王Y 「でも?」


母性巫女 「放っておくなんて、そんなこと、できません」


幼女魔王Y 「できないといけない。ここはそういう場所」

幼女魔王Y 「もし、あなたが彼女たちと一緒に幼女魔王Nを探し続ければ」

幼女魔王Y 「幼女魔王という存在が大きく歪んでしまうかもしれない」


母性巫女 「そんなこと……やってみないと」


幼女魔王Y 「あなたが彼女を抱きかかえることと、ここにこうしていることは変わらないかもしれないと言ったでしょう」

幼女魔王Y 「ここでは、あなたの常識は通じないの」

幼女魔王Y 「助けるつもりが、傷つけることになりかねない」


215 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 00:36:47.27 ID:mYSuAd2go


母性巫女 「このまま塔が崩れていったら、どうなるんですか」


幼女魔王Y 「塔は滅ぶ」

幼女魔王Y 「つまり、幼女魔王という存在が崩壊する」


母性巫女 「だったら、私やあなたもNを探した方が……」


幼女魔王Y 「いけないと言っている」

幼女魔王Y 「これは幼女魔王自身の問題」

幼女魔王Y 「結果がどうなろうとも、私たちは見守らなければならない」


母性巫女 「そんな……」


幼女魔王Y 「見守ってあげるのも、優しさ」


母性巫女 「でも、それであの子が取り返しのつかない大きな傷を負ってしまったら」


幼女魔王Y 「それは、仕方ないことよ」

幼女魔王Y 「彼女がその程度でしかなかったということよ」

幼女魔王Y 「生きていくだけの力が無かったということ」


母性巫女 「仕方ない……?」


216 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 02:43:25.84 ID:mYSuAd2go


幼女魔王Y 「そう、切ない言い方だけれど、仕方な……」


母性巫女 「仕方ないで済ませられるわけ、ありません」

母性巫女 「だって、だってあの子は」

母性巫女 (あんなにか弱くて、心がやわらかくて……)


幼女魔王Y 「彼女が、何だというの。……あなたは、幼女魔王の何なの」


母性巫女 「私は……」

母性巫女 「私は……」


幼女魔王Y 「なぜ、あなたはここに来たの」


母性巫女 「なぜ……」

母性巫女 (波魔法少女の力を借りて、私の過去と交差するために……)

母性巫女 (それが理由だったはずだけれど)

母性巫女 (じゃあ、どうしてこの塔に来たの……?)


幼女魔王Y 「自分という存在について答えられない」

幼女魔王Y 「なのに、他の存在のために何かをしてやろうというの」


母性巫女 「そんなつもりは……」


幼女魔王Y 「そうしようとしていたじゃない」


母性巫女 「…………」


幼女魔王Y 「彼女たちとともに探し物をするべきではないの」

幼女魔王Y 「あなたはあなた。幼女魔王ではないし、幼女魔王にはなれない」

幼女魔王Y 「この塔にいるのなら、手を差し伸べるのではなく、見守りなさい」


母性巫女 「…………」



217 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/15(日) 03:12:31.01 ID:mYSuAd2go


母性巫女 「あの子が崩れていくのを、黙って見ているなんて」

母性巫女 「そんなの、耐えられません……」


幼女魔王Y 「…………」

幼女魔王Y 「……分からずや」



カタ カタタタ……



母性巫女 「……!」


壁の仮面たち が あやしげに震えだした……


幼女魔王Y 「だったら、ずっと、この部屋にいなさい」


フワリ


母性巫女 (浮いた……)


幼女魔王Y 「すべてが落ち着くまで」


フワ フワ

キイイイ


幼女魔王Yの姿が かわっていく!


幼女魔王Y 「私は血のひとしずく。私からはがされた仮面」

幼女魔王Y 「無限の顔を持つ湖のエルフォ、そのひとかけら」

幼女魔王Y 「けれど心はかけらにして、私そのもの」

幼女魔王Y 「私は百の顔を持つ、心ある魔力」

百面エルフ 「幼女魔王のもてなしを待つ一人、腐敗の力の主」


百面エルフ が 現れた!
仮面の群れ が 現れた!



カタ カタタタ


骨の仮面


母性巫女 (Yの抱いていた仮面が……)


骨仮面の剣士 「…………」


母性巫女 (人の姿に……)


骨仮面の剣士 が 現れた!




218 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/15(日) 04:01:25.90 ID:58gucKu1o
更新乙
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