イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

927 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/05/24(金) 01:39:49.31 ID:N02BX3Bt0
百合姫提督「もう、赤城ったらそんな足元がおぼつかないほど飲んで……立てる?」

赤城「立てますよ、子供じゃないんですから……っとと」

百合姫提督「大丈夫?」倒れそうになる大柄な赤城を懸命に抱きとめる……

赤城「ええ……すん、すんっ」

百合姫提督「ごめんなさい、もしかして汗臭かった? ……温かい部屋で食べたり飲んだりしたものだからちょっと汗ばんでいるし」

赤城「いえ、そうではなく……いつもの香水とは匂いが違いますね」

百合姫提督「あ……そ、そうね///」

足柄「そういえば今日のは甘っぽい花の香りよね……ねぇ、もしかして」

百合姫提督「///」

足柄「ふぅん、なるほどね♪」

…普段はグリーンティー(緑茶)や柚子のような、どちらかというと中性的でさっぱりした和風のパルファム(香水)を使うことの多い百合姫提督……だが、頬を赤らめた百合姫提督のうなじから立ちのぼるのはフローラルブーケ系の甘く華やかな香りで、それを指摘されると恥ずかしげに小さくうつむいた…

龍田「提督もなかなか捨てておけないわねぇ?」

百合姫提督「も、もう……これはフランチェスカからのクリスマスプレゼントだったから、少し付けてみただけで……///」

足柄「まぁそういうことにしておいてあげるわよ……そうよね、間宮?」

間宮「ええ♪ 提督が一生懸命読んでおられたタラントの提督さんからのお手紙に「クリスマスの時は私も同じ香水を付けるから、香りだけでも一緒にいましょう?」と書いてあったなんて、たとえ風の噂で耳にしたとしても言うわけにはいきませんから♪」

百合姫提督「ま、間宮っ///」

間宮「あ、いけません……ついうっかり♪」帝国海軍の給糧艦であり、また強力な通信設備と傍受機能を持っていた「間宮」は艦隊の金棒引きとして、鎮守府の噂という噂を知り尽くしている……

妙高「はぁ、お熱いお熱い……♪」わざとらしく手で顔を扇いでみせる……

金剛「……それでいえば、長門だってそういうのはたくさんあるでしょう?」

長門「まぁ、少しは……♪」

…戦前にはその特徴的な煙突のシルエットから広く国民に知れ渡り、ある種のアイドルとして名高かった戦艦「長門」……その性質を受け継いでいるのか、長身の古風な美人でさながら「帝劇のスタア」といった容姿の長門には、鎮守府祭や広報活動で知ったという人たちからたびたびファンレターが届いたり、上陸休暇中にツーショットやサインをせがまれたりする…

利根「へぇ、あれが少しだってぇのかい! この間の入湯上陸で一緒に陸に上がったけど、まるで「煙管の雨が降る」ってぇやつだったじゃあねぇか!」

(※煙管の雨が降る…江戸時代、花魁が好みの相手にひと吸いしたあとの煙管を渡すことに由来。要は吸い口ごしの間接キスをねだるというしゃれたアプローチで、それが複数の相手から行われることから。歌舞伎「助六」でお馴染みのモテ表現)

長門「あの時はたまたまよ、たまたま」

足柄「モテる女はたいていそういうことをいうのよ……ね、提督♪」

百合姫提督「私は別にモテるとかそういうのは……///」

龍田「そうねぇ、でもタラントでは向こうの提督さんとずいぶん仲良くしていたわよねぇ?」

百合姫提督「いえ……だって、それは……えーと、そういえば忘年会のことだけれど……///」

羽黒「あらまぁ、艦隊運動の時のキレの良さはどこへやら……さぁさ、提督の苦しい話題の転換に敬意を表して聞いてあげるとしましょうよ」

百合姫提督「もう、みんなしてそうやって……///」

足柄「いつも通り「マウンテン」か「チェリー」か……それとも「マミー(ミイラ)」あたり?」

(※帝国海軍士官の間ではスラングとして単語を英語にもじり「パイン」(料亭『小松』)や「グッド」(料亭『吉川』)などの言い換えが流行っていた)

百合姫提督「えぇと、今年は「山科」と「小桜」は別の鎮守府が押さえているそうなので、27日に「木乃伊」で行うことになりました」

初雪「……それにしても「木乃伊」って変な店名ですよね」

百合姫提督「ええ、なんでも店のご主人がそれらしい店名にしようと思って「木乃伊(きのい)」としたら、後で「ミイラ」って読み方があったことを知ったそうよ」

足柄「ずいぶん変な店名だと思ってたけれど、そんな理由だったのね……ま、あそこは手ごろな割に料理もお酒もいいし」

百合姫提督「ええ、それに店のご主人も何かと良くしてくれるから……」

足柄「それじゃあそういうわけで……それじゃあ時間も遅いし、一旦おつもりにしましょうか」

百合姫提督「そうね。それじゃあ一度お開きにして……まだ飲み足りない娘はもう少し飲んでも良いけれど、明日に響くことがないように」

仁淀「後は私が管理しておきます」

百合姫提督「お願いね。私はお風呂をいただいてから休みますから、何かあったら構わずに連絡してください」

………

928 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2024/05/30(木) 02:51:57.04 ID:aSUSxV0q0
…翌日…

足柄「……なぁに、また飲み会なの? 忘年会の季節とはいえ、このところ三日にあげず飲み会ね」

百合姫提督「ええ。今日は横鎮の提督を始め横空(横須賀航空隊)の司令官とかみんなが集まる忘年会だし、私だけ欠席するわけにも行かないから……」

足柄「まぁいいけど、飲み過ぎないようにしなさいよ? 帰りは無理して歩こうとしないで、ちゃんとタクシーを拾うのよ?」

百合姫提督「そうするわ」

梅「良ければわらわが付いて行こうか?」

百合姫提督「お気遣いありがとう、でも大丈夫よ……場所と時間、それに電話番号はここに書いておいたから、何かあったら連絡してちょうだいね?」はぎ取り式のメモ帳に書き付けて手渡す…

大淀「では、お気を付けて」

百合姫提督「ええ、行ってきます」

…横須賀市内・料亭「美月(みつき)」…

百合姫提督「遅くなりました」

横鎮先任提督「おお、百合野くん……なに、全然遅くないよ。どこでも好きな場所にかけてくれ」

横鎮後任提督「百合野准将、どうぞ上座に」

…横須賀第一鎮守府を預かる中年の先任提督に始まり、末席の年若い佐官クラスまでさまざまな男女十人前後が座敷に集っている……百合姫提督の後からも何人かやって来ては席についた…

先任提督「さてと、百合野君はビールでいいかな?」

百合姫提督「ええ、はい」

先任提督「じゃあ注いであげよう……みんな飲み物は行き届いたね?」生ビールと(下戸の提督は)烏龍茶のグラスが行き渡ったか確認する……

百合姫提督「ええ、大丈夫です」

先任提督「よろしい……それじゃあ今年もご苦労様、乾杯」

一同「「乾杯」」

先任提督「さぁさぁ、遠慮しないでつついてくれ……田中君、お造りや天ぷらも遠慮しないでいいんだぞ?」

若手提督「は、ありがとうございます」

先任提督「百合野君。きみも遠慮しないで、食べたいものがあったらドンドン頼んでくれよ?」

百合姫提督「ええ、いただきます」

…お造りの鯛にわさびを乗せ、ちょんとつつくように小皿の醤油を付けて口に運ぶ……薄いがもっちりした鯛の食感と濃い口醤油の深みのある味わい……それにチューブのではない「本物の」わさびならではつんとした、しかし爽やかな香気が鼻を抜ける…

短髪の女性提督「良かったらいくつかお取りしましょうか?」

百合姫提督「ええ、ありがとう」

…お造りの他にも懐紙を敷いた粋なカゴに、からりと揚がった春菊、レンコン、さつまいものような冬野菜、それに車エビ、太刀魚などの天ぷらが盛り合わせてある……手元には塩だけでなく温かい天つゆの小鉢も置いてあり、それぞれ好きな方で食べられるようになっている…

短髪「はい、どうぞ……ところでこの間は燃料を融通して下さってありがとうございました」

百合姫提督「いいえ、うちの方の割り当て分にまだ余裕があっただけだから」

先任提督「いやいや、あの時は本当に助かったよ。本当なら「横一」である僕の方から佐藤君の鎮守府に融通してあげないといけない所だったんだけどもね、あいにくジャワ島方面までうちの娘たちを動かしている最中だったもんだから……とかく戦艦ってのは燃料を食うしねぇ」

百合姫提督「そうですね」

先任提督「燃料廠にそういって追加を出してもらうとなったら恐ろしく面倒な手続きが必要になるし、最終的には艦隊司令部のお歴々も市ヶ谷に出向いて説明しなきゃいけなくなる所だったから……いやぁ、あれには本当に感謝だよ」

百合姫提督「そんなに感謝されるとかえって気恥ずかしいです……」

短髪「いえ、おかげで大規模対潜掃討も無事に済みましたから……私になにかお返しできる機会があったら何なりとおっしゃって下さい///」

百合姫提督「ええ、ありがとう……///」お酒も回って紅潮した頬をした女性提督から熱い視線を向けられ、はにかんだように答えた……

先任提督「とにかく君が横須賀にいてくれてありがたいよ。さすが井ノ上校長の愛弟子だね♪」

百合姫提督「もう、またそれですか。その話は誰かが広めたまったくの作り話なんですよ……本当に広まって欲しくない話ばかり勝手に広まるんですから///」

短髪「でも、その事なら私も聞いたことがあります。江田島では井ノ上成美(いのうえ・なるみ)校長の愛弟子だったとか……」

百合姫提督「だからそれは誰かが言いふらした噂で……」

後任提督「そうそう、僕も聞いた覚えがあるよ。「横二」の百合野提督は井ノ上校長の愛弟子で「智」の百合野って呼ばれているって」
2762.49 KB Speed:0.3   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)