男「村が山賊に襲われて……」

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93 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 20:13:20.42 ID:R5MvulLiO
作家「店主殿、ウィスキーをいただけるかね?」

男「あぁ」つウィスキー

作家「ありがとう」

娼婦「初老先生ったらまだ来ないのかしら」

大男「呼び出した本人が一番おそいってのは気に入らねぇな」

作家「これも演出なのでしょうな! 黒幕はデザートが出された後に登場するぐらいで丁度良い……と言ったところですかな」

大男「わけが解らねぇ……おい! 店主、何でも良いから肉寄越せ! 肉!!」バンッ

男「……焼き加減は?」

大男「生で良い」ガルルル

娼婦「野性的ね……良いわ」ウットリ

薬師「そうか? 僕は乱暴な男は好かないな」

大男「俺もお前みたいなチンチクリンな女なんか好みじゃねぇよ!」

薬師「それは何より」

大男「女だから殴られねぇとか思うなよ?」グググ

男「……黒幕は食後の珈琲に入れる角砂糖のようなモノか」フッ

大男「あん?」

初老「皆、待たせたね……それでは、会合を始めようか」
94 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 20:34:56.28 ID:R5MvulLiO
初老「悪党諸君、忙しくあるべき夜の時間を奪って 申し訳無いが今宵は人に害することを娯楽とするもの同士、親睦を深めていってほしい」

パチパチパチパチ

初老「後何人か声をかけているんだがね……本日はこれだけのようだ」

作家「それは残念! 無念! また来週のお楽しみといたしまして……自己紹介などいかがですかな? 私、皆様方がどれ程の人間のクズ……悪党なのか気になりますゆえ」

大男「あん? 誰がクズだ!」バンッ

作家「い、いやだなぁ……褒めているというのに」

初老「私の口から一人一人紹介しようか……まずは作家君からだね」

初老「作家……悲劇を喜劇的に喜劇を悲劇的に書く奇才の小説家。 リアリティーのある人の破滅の過程を描く、自殺観測人……いや、自殺の火付け人かな」フフッ

作家「たまたま、私が取材した方々が何名か自殺しただけだというのに……酷いですな」ハッハッハッ

大男「まどろっこしいヤツだ」

初老「君からしたらそうだろうね」

初老「大男……殴り殺し、原初の殺人鬼と恐れられる男。 素手で人を殺める事に快楽を感じる殺人衝動、キリングハイの持ち主」

大男「人と殴り殺すのとセックスは変わらねぇからな」ニタァ

薬師「変態だぁ……」

大男「あん? 殴り犯すぞ」ギロッ

薬師「ひっ」

娼婦「殴られるのは嫌だけど、犯すだけなら相手になるわよ?」

初老「娼婦、殺しに快楽をおぼえるのではなく、快楽で殺す夜の蝶。 腹上死から、痴情のもつれまでお手のモノの希代の悪女」

娼婦「先生、そんな言い方酷いわね。 私は快楽を説いてるだけだというのに」ヨヨヨ
95 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 20:48:59.30 ID:V5+UMle4O
初老「さて、最後は薬師だね。 私と一番思想が近いわけだが」

薬師「そうですね」

初老「薬師……自身の調合した薬が人体にどのような影響を与えるか、その研究にしか興味の無い女。 彼女を説明するなら、この前の連続変死事件が解りやすいかな」

作家「ほう……人体が急に内側からは爆ぜたというあの」

薬師「あぁ、あれは僕の作品さ」ドヤッ

作家「それは是非!是非!是非! 目の前で見てみたい! 描写したい……そうですな、集団自殺しようとする方々に渡したいですな!!」

大男「それの何がおもしれぇんだよ」

男「一人目の凄惨な死を見ても、同じ薬で自殺をしようとするか否か……なるほど」

作家「えぇ、まさしく……閉じ込めて、最後の1人には自殺を止める選択肢を提示すれば」

男「薬の飲ませ合い……殺し合いに発展すると、良く思い付くな」

作家「店主殿も中々の理解力で……私達、趣味が合いそうですな」ガシッ

男「あぁ」ガシッ
96 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 21:03:38.28 ID:V5+UMle4O
大男「最後の一人……あいつは?」

男「……」

初老「彼は会合の場を提供してくれているだけだからね……どうだい、君も参加するかい?」

男「残念ながら、人を殺した事など無くてね。 見ているだけで十分だ」

大男「つまらねぇヤツ」

初老(人を人として認識してないんだよね……積極的に参加はしてくれないか)ザンネン

初老「それでは、紹介はほどほどに……後はお酒でも飲みながら悪事を自慢し合うもよし、提案し合うもよし……仲良く楽しんでいってくれたまえ」

作家「薬師殿! 薬師殿! 先程の薬の話なのですが!!」キラキラ

薬師「提供するのはかまわないが、無料ではな」

男「作家は何人か死にたがっている人を知っているのだろ? それを試験体として薬師に紹介するのはどうだ?」

薬師「それは良いね。 試してみたい薬があるんだ」チビチビ

作家「ふむん、悪くありませんな。 私もその観測にお付き合いしても?」

薬師「ククク、かまわないよ……君も来るかい?」

男「店が暇ならな」つ水

薬師(ぼ、僕が酒が苦手なのに気付いてくれたのか)ドキッ

初老(作家と薬師を彼に会わせたのは正解だったか)

娼婦「ふふふ、私が男性を誘い出して、貴方が因縁をつけて殺すというのはいかが?」

大男「まどろっこしいが」

娼婦「あら、全裸で土下座する相手を踏み殺す……中々の悦だと思うのだけど」サワサワ

大男「……へぇ、それは確かに気持ち良さそうだ」

初老(あの二人も予想通りだね……さて、どれだけの事が起こるか楽しみだ)
97 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:14:27.02 ID:V5+UMle4O
男「この水晶で小屋の様子を見ることが出来る」

作家「おぉ! 中々レアなアイテムですな! 何処で?」

男「帝国にいる時分にとある貴族から頂戴した」

作家「ほほぅ、その話も気になりますが」

薬師「今は小屋の中の様子だね」

作家「外から鍵をかけられた小屋の中に男女が7名。 全員自殺願望がある。 死体の処理を条件に此方の指示に従って自殺して貰えるようにしましたぞ」

男「順番に薬を飲んで自殺か……例の内側から爆ぜる薬か?」

薬師「あぁ、ちゃんと用意したよ」クククッ

作家「それは、楽しみですな……おっ、一人目が薬を飲みました」

バクハツシタ ナンダコノクスリハ コンナシニカタナンテ

作家「おぉ! おぉ! 良い! 良いぞ! 臓物まで木端微塵になり、他の参加者は肉片まみれ……願望を目の前で見て再燃する生への渇望! しかし、小屋から出られるのは一人だけという絶望! 良いですぞ!!」カキカキ

男「……彼等はどうやって集めた?」

作家「自殺したい者の情報は常に集めておりましたが、少なかったので何人かは私の文書を読ませました」

薬師「読ませた?」

作家「えぇ、私の取るに足らない特技なのですが、死にたくなる文を綴るのが得意でして」フフン

薬師「それは凄いな」ゾクッ

男「なるほど、作り物の自殺願望と本物の自殺願望の違いか……一人、薬を手に取ったぞ」

薬師「あぁ、あの薬は」

作家「どうかなさいました?」

薬師「クククッ、爆ぜる薬以外にも新作を混ぜておいたのさ」

作家「ほほう! それは楽しみですな!!」
98 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:23:13.98 ID:V5+UMle4O
「わ、私は死にに来たんだ……あんな死に方でもかまわない」ゴクン

「あっ、あぁ…うがぁあああああ!!」メキメキゴリゴリメキメキ

ナンダ! エグイ! カラダガデカクナッテ… ヒィ!

怪物「ワタシハ……シネテ、ナイ……」ヨロヨロ

参加者A「此方にくるな」ブンブン

怪物「ナイフ、ササレバ、シネル……」ヨロヨロ

参加者A「く、来るなって」ダッ

怪物「ニゲルナ、コロシテ……コロシテクレ」ツカミ

参加者A「止めろ……離せ! 離せ!……あぁぁあああ!!」ボキボキボキ

怪物「アレ……シンダ?」ポイッ

参加者A「」ドサッ

キャーー ヤダヨ、カエリタイ イキタイ、シニタクナイ

怪物「マテ、 ニゲルナ、ワタシヲコロセ……ワタシヲコロセヨォオオオ!!」ダッ

99 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:30:27.29 ID:V5+UMle4O
作家「何と! 何と! な・ん・と!! 飲んだものを異形に変える薬! 死にたい者を逆に死ににくい姿に変えて、生きたいと思い返したモノ達が虐殺されていく……あぁ、何と尊い、何と素晴らしい光景なのでしょう! 私、筆が止まりませんぞ!!」カキカキ

薬師「言語能力は残っているな。 怪物に成り立てだから、人の名残があるだけか? ククク、もう少し観測が必要だね」

作家「おぉ! 最後の一人が殺されました! 残されたのは怪物一人! 否、一匹!! ……ところで、薬師殿」

薬師「なんだい?」

作家「あの怪物は殺せるのですかな?」

薬師「ククク、銃でも貫けない皮膚、毒を打ち消す代謝を持たせたからね……簡単には死なないさ」

作家「それって……我々も危ないのでは?」

薬師「…………………ごめん、考えてなかった」タラリ

作家「薬師殿!?」

薬師「に、逃げようか……って、男がいないぞ」

作家「薬師殿、水晶を!男殿が小屋の中に!?」
100 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:38:23.33 ID:V5+UMle4O
怪物「…ミンナ、シンダ……ワタシハ、ナカマハズレ」

男「随分と暴れたみたいだな」

怪物「オマエラノセイデ……シネルトイッタノニ……ダマシタ! ダマシタナ!!」グググッ

男「君は人か?」

怪物「……ドウイウイミダ?」ピタッ

男「君は人か?」

怪物「ヒト……ダッタガ……ヒトデハナイ」

男「見た目は随分と変わったな」

怪物「オマエラノセイダロ!!」バンッ

男「中身はどうだ? 君は生き残ったのだから、死か生か選べるわけだが」トポトポ

怪物「シニタイニキマッテ……ドウシテ、ワインヲグラス二!?」

男「いや、真っ赤な小屋の中を見てたら飲みたくなってな」ゴクッ

怪物「ナンダ! オマエハ……オマエハ!!」グググッ

男「どうして、死にたい?」

怪物「……」ピタッ

男「床に落ちていたんだが……これはお前のか?」つ絵

怪物「アァ」
101 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/07(日) 22:47:43.87 ID:V5+UMle4O
男「パパへ……か。 娘が似顔絵を描いてくれたのか? 昔の君には似ていたのだろうな」

怪物「ダマレ」

男「死のうとしていた男がどうしてこんな絵を持ってきた」

怪物「ダマレ!」

男「死のうとしているのと、娘に何の関係がある?」

怪物「アァァアァアアァア!!」

男「……犯されて、殺されたか?」

怪物「ダマレ! ダマレ! ダマレ!!」

男「非力な父親では守ってやれなかったか」

怪物「ダマレェエエエエエェェエエエ!」

男「ならば、今ならばどうだ?」

怪物「…………ナニ?」

男「その姿ならば泣き寝入りする必要も無いんじゃないか?」

怪物「コロセル……アイツラヲ……アイツラヲ…ミナゴロシ……アァ、アァ!!」

男「さて、君は死か生か選べるわけだが……どうする?」つワイン
102 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:25:48.54 ID:G9WsWlXKO
男「戻った」

作家「」アングリ
薬師「」アゼン

男「作家、あの怪物の娘と娘を襲ったヤツらを調べられるか?」

作家「あ、あぁ、出来るとも!」

男「薬師、怪物の薬の応用で見た目を変える薬とかは作れないだろうか?」

薬師「へ? 任意の見た目に変える薬……出来るだろうか?」ムムム

男「出来れば用意してほしい」

薬師「解った、研究してみるよ」

作家「準備している間、あの怪物はどうするので?」

男「俺が飼育しておく」

薬師「し、飼育……」
103 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:32:23.26 ID:G9WsWlXKO
薬師「……男、いるかい?」ゲッソリ

男「薬師か……珈琲で良いかな?」

薬師「砂糖多めで頼む」つ薬

男「それは?」

薬師「君に頼まれていたモノさ……変装薬とでも名付けようか」

男「なるほど」

薬師「10分ほど他人の姿に変身できる……変身する対象の髪の毛と一緒に飲むことで指定できる」

男「髪の毛か……問題ない。 用意出来るだろう」

薬師「はぁ、疲れた」

男「ありがとう、薬師」ナデナデ

薬師「///」

作家「んん、お邪魔でしたかな?」ニヤニヤ

薬師「さ、作家! 何時から」アセアセ

男「作家も珈琲で良いか?」

作家「えぇ、ご馳走になります」
104 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:39:19.47 ID:G9WsWlXKO
作家「此方の3名が怪物の娘を犯し、殺した犯人でございます」

男「そうか、ありがとう」

薬師「どうやって捕まえる? 睡眠薬でも盛るかい?」

作家「文書を読む嗜みが無い相手では、私は何とも出来ませんな」ムムム

男「女暗殺者……彼等を捕まえて来てくれ」

女暗殺者「……」コクン

作家「ほほぅ、ただの店員さんではなかったのですな! 私、気になります!!」

男「3人程度なら楽勝だ」

女暗殺者「……」フンス

薬師「すごいじゃないか」

女暗殺者「……」ギロリ

薬師「何で、僕を睨む!?」

作家「久しぶりに恋愛小説なども綴りたくなりますなぁ」
105 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 10:48:29.34 ID:G9WsWlXKO
暴漢A「くそ! ほどけ! ほどけ!!」
暴漢B「俺達が何をしたって言うんだ……」
暴漢C「此処、どこだよ! 何なんだよ!!」

作家「あっさりですな」

女暗殺者「……」ドヤッ

男「さて、ご対面だな」

ギィ ドスンドスン

怪物「……」

暴漢s「「「ヒィイ!!」」」

怪物「コイツラダ……マチガイナイ…コイツラガ、コイツラガ!コイツラガァアアア!!」ブンブン

暴漢A「何だ、この化け物は!?」
暴漢B「くるんじゃねぇ……止めてくれよ」
暴漢C「」ジョロロロ

男「怪物、待て」

怪物「……オトコサン?」

男「最後の仕上げがある」

怪物「?」

男「この薬を飲め」

暴漢A「へ? 何だ……それは?」

男「この薬を飲め」グイグイ

暴漢A「止めろ! 無理矢理……むご、んぐっ」ゴックン



106 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/08(月) 12:03:19.18 ID:G9WsWlXKO
暴漢A「あぁ……アァァア!!」シュー

暴漢B「暴漢Aから煙が……何を飲ませやがった!?」

怪物娘A「へ? 何だ……胸がある?」

暴漢B「この女って」
暴漢C「俺達が襲った……」

怪物「ムスメ! ムスメェエエエ!!」

男「お前達も飲め」

怪物娘A「何だよ……これ」
怪物娘B「この怪物、この姿を見て娘って言ってたぞ」
怪物娘C「父親か……父親なのか……」ガクガク

怪物「オトコ、ドウシテ、ヒドイ、コノスガタジャ……コロセナイ……アァ、アァアアア!!」ジタバタ

男「殺せない? 好きにしたら良い。 選択肢は常に君にある……そら、生か死かだ」

怪物「オトコォオオオオ!!」
107 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/04/08(月) 20:53:14.16 ID:pc+1h9BrO
本日はここまでです。
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/08(月) 21:25:17.13 ID:cJhw7THCo

薬師かわいい
109 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 08:55:44.79 ID:K8RUp0NOO
男「タイムアップ……今日はここまでにしよう」

暴漢A「も、元の姿に戻った」スゥ

怪物「コロス! コロスゥ!!」

男「駄目だ」

怪物「コォロォサァセェロォォオオオオ!!」


男「君の選択だろ?」

怪物「アァアアァアアァアアァア!!」ジタバタ

薬師(えげつないな……)ウワァ
作家「はぁはぁ」カキカキ

男「明日もチャンスをあげよう……次は納得がいく選択をしろ」

暴漢A「あ、明日も……」ガタガタ
暴漢B「嘘だ……夢だ……」ビクビク
暴漢C「帰りたい……帰りたい……」

男「薬師」コショコショ

薬師「ち、近いな/// 何だい?」

男「明日は薬を4個用意してくれ」
110 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:17:00.22 ID:K8RUp0NOO
男「やぁ」

怪物「オトコォ! コロサセロォ! ハヤクコォロォサセロォォオオオオ!!」

男「元気だな。 良いだろう」

ガチャ

怪物娘A「んーんー!」E.サルグツワ
怪物娘B「んーんー!」E.サルグツワ
怪物娘C「んーんー!」E.サルグツワ

怪物娘D「んーんー!」E.サルグツワ

怪物「」

男「どうした?」

怪物「ボウカンハ……サンニンダッタ」

男「そうだな」

怪物「アト、ヒトリハ……ダレダ?」

男「さぁな」

怪物「コロソウトシタノニ……コロソウトキメタノニ……アァアアァア!!」

男「好きにしたら良い。 選択肢は常に君にある……そう、生か死かだ」

怪物「ヒトデナシガァァアアァ!!」

男「そういえば、この小屋には鏡が無かったな」スマナイ
111 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:27:40.17 ID:K8RUp0NOO
作家「……」カキカキ

薬師「それでな、特殊な光を当てることで分子の構造を変えて薬の特性を変えれないか試していてだね」

男「そうか」

薬師「と、こんな専門的な話をしても解らないか……すまない」シュン

男「薬師が楽しいなら幾らでも聞こう」

薬師「なっ/// そういうところだぞ! 君は本当に!!」ドキドキ

作家「……」ピタッ

男「書き終えたか?」

作家「えぇ、間違いなく私の最高傑作ですな」フゥ

男「珈琲を淹れよう……何か食べるか?」

作家「サンドイッチなどあれば」

男「女暗殺者……作ってくれ」

女暗殺者「……」コクン

薬師「あっ、僕も食べたい」

女暗殺者「……チッ」

薬師「舌打ちされた!?」

112 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:40:57.07 ID:K8RUp0NOO
作家「男殿……書き終えて思ったのですが」

男「俺も怪物娘Rまで用意して思ったんだが」

作家「厭きましたな」
男「厭きたな」

薬師「それは酷すぎないかい!?」

作家「だって、最近の怪物殿ってば叫ぶだけなんですもの……知能下がってません?」

薬師「あの姿になって随分経つからね」

男「ならば、そろそろ我慢の限界か……作家、最後は君も楽しめるだろう」

作家「ほほぅ、まだ何かあると……では、見届けるとしましょう」
113 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:48:20.69 ID:K8RUp0NOO
怪物「……」

怪物娘E(今日は大人しいな)

怪物「……」グルルルル

怪物娘D(唸り声?……いや、今の音は……)アセッ

怪物「ハラ……ヘッタ……」グルルルル

怪物娘達「」

怪物「……」ガシッ

怪物娘K(止めろ! 嘘だろ!? 実の娘の見た目何だろ!?)ジタバタ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

……
114 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 09:59:42.34 ID:K8RUp0NOO
怪物「……」

男「……」

怪物「マンゾクカ?」

男「あぁ、君の人生はワインによく合う」

怪物「ナントデモ、イエ…カタキハコロセタ」

男「あぁ、その事についてなんだが……謝らなければいけないな」

怪物「……?」

暴漢A「へへ」
暴漢B「どうも」
暴漢C「……ひひ、ひひひ」

怪物「」

男「少し手違いがあってな……彼等を混ぜるのを忘れていた」スマナイ
女暗殺者「……」テヘ

怪物「オマエハ、センタクシハ……オレニ、アルト……」ガタガタ

男「あぁ、選択肢は常にある……君の生か、君の死かだ」

怪物「」

男「ところで、教えて欲しいんだが」

男「自分の娘を食べてまで……生を選んだ気分はどうだ?」
115 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/09(火) 14:00:31.47 ID:K8RUp0NOO
作家「おぉ! おおぉおおおおおお!!」

怪物「」

薬師「自ら心臓を抉り出して、握りつぶして……」ウェ

男「自殺願望をようやく叶えられたか」フフ

作家「何と醜く美しいのでしょうか! これだ! これが、これこそが絶望であり、失望であり、願望の向こう側なのでしょうな!! 」ヨロヨロ

男「何処に行く?」

作家「書き直しに行くに決まっているでしょう! あぁ! あの程度で最高傑作などとは恥ずかしい! まだ、まだまだ、底も天井も程遠い!! 更なる作品を! 更なる執筆を……生きてて、良かった」ウットリ

薬師「変わっているな」

男「人のこと言えるのか?」

薬師「……」

男「完成したんだろ?」

薬師「ククク、お見通しか……あぁ、時間制限の無い変装薬が出来た。 試してみたいんだが」

男「3人余った……好きに使え」

暴漢達「へ?」

116 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 07:13:06.77 ID:UKZ3RYcLO
初老「良い豆でも仕入れたのかな?」

男「香りで解るとは……淹れがいがある」

初老「ふふ、君の顔付きで解ったのさ。 退屈してないようだね」

男「お陰さまで……美人三姉妹が高値で売れた」

初老「私にも教えて欲しいな……どんな悪戯をしてきたのか」

男「作家の本を読めば解る」

初老「違いない」ペラペラ

男「彼の新作か?」

初老「2作品同時出版とは筆がよほど走ったらしい」

男「そうか……ん?」

本≪恋する処方箋≫

男「……」

初老「……」ペラペラ

男「……」

初老「……」ペラペラ

男「初老も相変わらず悪戯が好きなんだな」

初老「おっと、そう返すか。 照れている顔でも見たかったが」フフッ

男「次の会合は?」

初老「明後日……かまわないかな?」

男「あぁ、貸し切りにしておくよ」
117 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 07:21:46.85 ID:UKZ3RYcLO
薬師「///」ゲシゲシ

作家「痛い、痛い……怒らないでくださいよ、薬師殿」

ワイワイガヤガヤ

大男「随分、人が増えたな……何処から見つけてきやがんだか」

男「さぁな……大男」つ生肉

大男「解ってきたじゃねぇか」

娼婦「あら、何を餌付けされてるのかしら?」

大男「あん? 餌付け何てされてねぇよ」

理容師「他の派閥と馴れ合うのはいただけない……そうだろ?」

大男「派閥なんざ……興味がねぇよ」

娼婦「そう……それで、良いのね?」

大男「……」

娼婦「……」ニコッ

大男「チッ……へいへい、解りましたよ。 女王様」
118 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 19:16:00.67 ID:UKZ3RYcLO
男「娼婦はウィスキーで良いか?」

娼婦「ワイン」

男「赤?」

娼婦「白」

男「……」
娼婦「……」ニコッ

男「俺は会合の場所を提供しているだけだ、派閥どころか参加者じゃない」

娼婦「薬師と作家を連れて何かしているようだけど」

男「娼婦に迷惑はかけていない」

娼婦「それはどうかしらね」

洋裁師「娼婦の姐さん、こっちで飲みましょう!」

理容師「そんな男のこと姐さんが気にする価値が無い……そうだろ?」

娼婦「えぇ、すぐに行くわ」
119 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/10(水) 19:38:45.34 ID:UKZ3RYcLO
作家「ふむん、新参者が増えていくなか、自分の派閥に初期の会員全員を取り込みたいと言ったところなのでしょうな」

男「道化師を中心とした派閥、守銭奴を中心にした派閥があるんだったか?」

作家「えぇ、悦で人を殺める娼婦の派閥、金儲けで人を殺める守銭奴、技を試したくて人を殺める道化師……まさしく、三者三様でございますな」

薬師「娼婦と道化師の派閥は似たような思想なんじゃないか? 人を殺して楽しんでるんだろ?」

作家「大いに違いますとも……言うならば、そう!」

男「堕落と研鑽」

作家「男殿! 台詞を取らないでくだされ!!」イジワル!

男「君達も何処かの派閥に入った方が良いんじゃないか?」

作家「私は……ふふ、男殿と馬鹿やってるのが好きでありますからな」

薬師「僕もだね」

作家「薬師殿が好きなのは男殿では?」

薬師「///」ゲシゲシ

作家「止めて! 蹴らないで!」
120 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/11(木) 10:04:39.91 ID:30hteuTbO
薬師「それにしても初老さんからすれば良い迷惑だろうね?」

作家「と言いますと?」

薬師「派閥争いに決まってるじゃないか」

男「迷惑どころか、仕組んだのは初老だろう」

薬師「へ? そうなのか?」

作家「でしょうな。 こと人間関係の構築において初老殿が失敗をすることもないでしょうし」

薬師「それでも……何のために?」

作家「競わせるため……悪事を加速させるため、ですかな」

男「だとしたら、良い頃合いだろう」

薬師「?」

作家「えぇ、燻った火種に点火するには……そろそろでしょうな」

121 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/13(土) 06:39:50.32 ID:DF7zEDdcO
初老「皆、待たせてしまったね」

娼婦「……いえ、何時も通り美味しいお酒をいただいてましたので、お気にせず」

初老「それなら、良かった」

守銭奴「美味しいお酒? 随分と娼婦ちゃんったら店長君に突っ掛かってたように見えたけどね」

娼婦「あら、同じ初期からの会員として、楽しくお話してただけなのだけど」

守銭奴「良くないなぁ! 新参者に対してそうも排他的なのは!!」

娼婦「新参者に排他的なわけじゃないわ……金に細かい男性が好みじゃないだけよ」

守銭奴「……」

道化師「自分の思い通りになる男性以外は好みじゃない……だよね?」

娼婦「……」

初老「派閥争いの噂は本当だったか……これは良くないな」

作家(白々しいですな)
122 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/04/17(水) 00:56:51.57 ID:HsXjSOBmO
リアルが忙しくて続き遅れそうです。
読んでくださってる方がいれば、すみません。
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/17(水) 11:01:56.44 ID:PhWi7JOhO
いるよ。待ってる。
124 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:25:04.06 ID:CJK/9qr0O
初老「愛すべき悪党同士で殺し合いをするのは、私が望むところじゃないんだよね」

娼婦「……解っているわ」
道化師「勿論とも」
守銭奴「それで?」

初老「ふふ、だから、そうだね……殺し合いじゃなくて競い相手もしてもらおうかな?」

娼婦「競い合い?」

初老「そうだとも。 次の会合にそれぞれ、この国で最も善人と呼ぶに相応しい人物の生首を持ってきておくれ」

ザワザワザワザワザワ

理容師「ぜ、善人の生首? それってあの男を殺せって言ってるようなものじゃないか……そうだろ!?」

初老「……」バンッ

理容師「」バタン

初老「意見がある者は手を上げて発言してくれたまえ……撃つ相手を間違えたら、流石に申し訳ない気持ちになる」

……………。

男「初老」ハーイ

初老「なんだい?」ジャキン

男「店が汚れた……後で、清掃代を要求する」

初老「君はぶれないね……本当に」フフフ

道化師「もっとも善人と呼ぶに相応しい人物の生首を持ってきた派閥の勝ちって事でいいんだよね?」

初老「あぁ、勝った派閥には活動資金と他の派閥への命令権を与えよう」

娼婦「ふふ、それは」
守銭奴「譲れないなぁ」
125 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:38:26.23 ID:CJK/9qr0O
男「……ふぅ」

作家「片付けは終わりましたかな?」

男「あぁ、参加者が増えたせいで会合の片付けも一苦労だ」

作家「ふむん、それは大変ですな」

男「その分の代金ももらっている」

作家「それで……善人狩りには参加なさるので?」

男「善人と呼ぶに相応しい人物の生首か……何で皆ざわめいたんだ?」

作家「聖教祖様が聖騎士を最も清き肉体と善なる魂を持ち得た男として、勲章を与えましたゆえ」

男「なるほど、暗に聖騎士の首を持って来いと言っていたわけか」

作家「作用でございます! 聖騎士と言えば、我が国最強の騎士、聖国の守護者とまで称えられる御仁……正面からは勿論、暗殺さへも難しいでしょうな」

男「国の破滅への一歩と言うことか……初老は若作りに余念がない」フッ

作家「ですな♪」

126 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:48:21.83 ID:CJK/9qr0O
作家(結局、男殿は参加されない様子。 私はいかがいたしましょうか)フラフラ

守銭奴「やぁやぁ! 作家先生! 千鳥足でご機嫌だねぇ!!」

作家「おぉ、守銭奴殿ではありませんか……私に何かご用で?」

守銭奴「なに、見かけたかやよぉ一緒に飲みなおさねぇかと思ってねぇ」

作家「男殿の店でしこたま飲んでまいりましたので遠慮させていただこう」

守銭奴「まぁ、待てって……先生」ガシッ

殺し屋「……」

作家「おやおや、悪党同士で殺し合いは……望まれていないと言ってましたが?」

守銭奴「殺し合いはしねぇさ……少し金儲けの話をしねぇかってよ」
127 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/17(水) 21:59:57.92 ID:CJK/9qr0O
薬師(くそ、作家のせいで男の顔がまともに見れなくなっちゃったじゃないか)///

道化師「薬師さん……だよね?」

薬師「むっ、道化師か……奇遇だね」

道化師「奇遇? いやいや、君を待ってたんだよ……オイラ達の派閥に入って貰えないかってね」

薬師「……どうして僕を誘うんだい?」

道化師「君は俺達に似てるからね、向上心がある……自身を高める事に悦を覚える質だよね?」

薬師「まぁ、もっとすごい薬を作りたいって欲はあるよ」

道化師「僕ももっと凄い技を身につけたい……もっと、優れた殺し方をしたいって欲に従って生きているんだ」

薬師「……」

道化師「君は我等の派閥にいるのが、自然だと思うんだよね」

薬師「男の傍にいるよりも?」

道化師「あんな男に良いように使われるなんて勿体無いよ〜」
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/18(木) 08:25:10.88 ID:k4Vv2elvo

角驢馬は元気かな
129 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 02:43:52.90 ID:UiqKQVqxO
薬師「……」ムムム

道化師(後一押しだね……)フフ

道化師「何を悩むことがあるんだい?」

薬師「いや、君の誘いをどう断ろうかとね」

道化師「!?」

薬師「作家のようにスラスラと言葉は出ないが、男の傍から離れる気は無い」

道化師「彼と恋人とかそういうのにはなれないと思うんだよね。 都合の良い道具として使われ続ける気かい?」

薬師「!?」

道化師(よし、今度こそ)

薬師「道具だよ! そうだ、的を得た表現だ! 僕は彼の道具でいたいんだよ!」スッキリ

道化師「……」イラッ

薬師「ありがとう、道化師……スッキリしたよ」

道化師「道具で良いと?」

薬師「道具が良いのさ」
130 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 02:57:47.20 ID:UiqKQVqxO
道化師「ならば! えぇ! 道具にしてあげるとも! しかし、利用者は俺様達だ!!」

獣使い「へへへへ」
曲芸師「やっと出番か」
手品師「♪」

道化師「まずは持ち運びに不便なその手足と耳障りな事しか吐かないその舌をとって、使い心地を良くしてやるよ!!」

薬師「や、止めろ! 同じ組織のメンバーで潰し合いなんて」

道化師「ウヒハハハハ! 潰すは潰すでも、雌の穴と薬の知識を使い潰してやる!!」

獣使い「道化師さん、きれてるなぁ」

曲芸師「最初に使わして欲しいものだが……貧乳って良いよね?」

女暗殺者「……」コクコク

曲芸師「あれ? 手品師h」バタッ

獣使い「お前何時からそこn」バタッ

道化師「どうした、何で誰も……」

獣使い「」
曲芸師「」
手品師「」

女暗殺者「……」ドモ

道化師「なっ!?」
131 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 20:18:13.65 ID:UiqKQVqxO
道化師「お前は、男の店の店員! そんな、我が派閥の幹部を倒すなんて……」タラッ

薬師「ど、どうして、女暗殺者が?」

女暗殺者「……道具?」

薬師「へ?」

女暗殺者「貴女も男の道具?」

薬師「あぁ、そうありたいと思っているよ」

女暗殺者「仲間〜♪」ギュー

薬師「うわぁ! 急にくっつくな!?」

女暗殺者「……」スリスリ

薬師「無言で頬ずりも止めてくれ!」///

道化師「偶然、運良く、獣使い達を殺せただけで、調子に乗りやがって……良いでしょう! 余が相手を……」パタッ

薬師「おぉ、ようやく効いたか」

道化師「なっ、何を何時?……盛られた?」ピクピク

薬師「麻痺作用のある無臭の気体を最近開発してね。 勿論、僕は解毒剤を予め飲んでるわけさ」ククク

女暗殺者「……」パチパチ

薬師「あれ? 何で女暗殺者には効いてないの!?」ビックリ
132 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/19(金) 20:32:23.56 ID:UiqKQVqxO
薬師「どうしてだろう? 代謝が特殊なのかな? 毒物に耐性があるとか?」ムムム

女暗殺者「……」エッヘン

道化師「おい! 何処を見ている! まだ、話は終わってない! 終わってないぞ!!」ピクピク

薬師「うるさいなぁ。 君に構ってる場合じゃないんだ……女暗殺者、幾つか薬を試させて貰っても良いかな?」ワクワク

女暗殺者「……」コクリ

道化師「こっちを向け! あたいと薬師は同類だ! 自分を高める欲に囚われた同類だろ? なぁ、頼むよ! 同類のよしみで助けてくれよぉ!!」

女暗殺者「……」ドヤァ

薬師「えぇ! この薬を飲んでも平気なの!? 本当に君の身体はどうなっているんだい?」

道化師「無ぅ視ぃすぅるぅなぁぁぁあ!!」

薬師「……予想外の出来事が起こった時に運や偶然といった言葉を吐いた時点で僕と君は同類じゃないよ」

道化師「何!?」

薬師「トライ アンド エラー、トライ アンド エラーさ」

薬師「君の中に向上心は無い……君を駆り立てているのはただのちんけなナルシズムさ」つ薬

道化師「その薬は何だ…止めろ! 飲ませないでくれ!!」

薬師「やはり、僕の調合は間違ってないか」

道化師「」

薬師「どうして、君には効かないんだろうね?」ワクワク

女暗殺者「……」ニコッ

133 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/20(土) 14:48:24.04 ID:vjmHX0JlO
男「……この時間に来るとは珍しいな」

作家「えぇ、まぁ……近くで用があったもので」

男「そうか」

作家「おや? 店員殿は?」

男「薬師と買い物に行った。 ……ペアルックコーデにはまっているらしい」

作家「何時からそんな仲良しに。 店員殿はむしろ薬師殿を嫌っていたように思いますが?」

男「女暗殺者は薬師を同類と認め、薬師は女暗殺者を被験体として認めた」

作家「相思相愛ですな」

男「あぁ」

作家「……ふむん、つまり店員さんがいない今、男殿を守ってくれる者はいないと」カチャ

男「それはなんだ?」

作家「銃でございます。……鉛の弾を撃ち出して男殿の頭蓋骨ぐらいなら簡単に砕く大人の玩具ですな」

男「そうか」トンッ

作家「そちらは?」

男「ハニーミルク、ただただ甘い子供の飲み物さ」

作家「男殿と初老殿の出会いを再現したかったのに……意地悪!」プンプン

男「幼稚なだけの遊びに付き合うほど暇じゃない」

守銭奴「なら、大人なビジネスの話ならば付き合ってくれるのかなぁ?」ガチャ

男「……ご注文は?」

守銭奴「ハニーミルク! ……あー、角砂糖を4つほどいれておくれぇ」
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/22(月) 18:51:37.04 ID:rZOQ3Ej4O
面白い
続きが楽しみ
135 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 01:41:47.59 ID:EjlvQkkOO
守銭奴「如何かなぁ? 店長君……いや、親愛を込めて男君と呼ぼうかぁ」

男「……」ペラペラ

守銭奴「本当にあれがぁ交渉材料になるのかい?」コソコソ

作家「えぇ、興味は引くかと」コソコソ

守銭奴「トマトとベーコンの良い仕入れ先ねぇ……それで味方につけれるならやすいが」

男「……アボカドの良い仕入れ先も知らないか? 最近、高騰したんだ」

守銭奴「お安いご用だ……欲しい食材をメモに書いて渡しておくれぇ」

男「助かる」

作家「嬉しそうでしょ?」
守銭奴「嬉しそうだなぁ……普通の喫茶店の店長みたいだぁ」

作家(普通であり、常識的でもある……それが男殿の真に恐ろしいところでもありますが)フフッ
136 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 10:36:42.01 ID:IC6zmmSiO
男「それで、ただで取り次いでくれるわけじゃないんだろ?」

守銭奴「あぁ、幾つか条件がある」

男「……」

守銭奴「1つ、作家先生の我が派閥への参入」

男「それは俺に許可をとる必要は無い」

守銭奴「作家先生が男君に許可を取って貰わない限り入ってくれないっでねぇ」

男「解った。 作家が嫌でなければ、俺が口を出すことはない」

守銭奴「2つ、善人……いや、抽象的な発言は止めようか。 聖騎士への関与の禁止。 彼を殺すのも助けるのも……世間話すら止めてくれぇ」

男「あぁ、解った」

守銭奴「3つ、我が派閥への関与……次の会合までの期限付きだが、聖騎士と同様に世間話であっても止めておくれぇ」

男「問題ない」

作家「少しは迷っていただきたかったな」ショボーン
137 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 12:23:45.19 ID:tg/o/vOFO
男「角砂糖は4つ……だろ?」

守銭奴「4つ、次の会合の翌日、貸し切らせてほしい」

男「祝勝会は大事だな」

守銭奴「おぉ、話が早くて助かる」

男「……此方からも1つ頼みがある」

守銭奴「ん? 何だぁ?」

男「この木の実を取り扱っている店も紹介して欲しい」つ木の実

守銭奴「見たこと無いなぁ……」

男「親友の好物なんだが……帝国を出てから見かけなくて」

守銭奴「帝国固有の種か? ……出来る限りは探してみよう」

男「ありがとう」

作家「男殿の親友? 私、気になります!!」

男「……」

作家「男殿?」

男「……」

守銭奴「次の会合まで作家とはぁ口聞かないってぇ」

作家「えぇ! もう始めているのですか!?」イジワル!
138 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/25(木) 18:21:30.53 ID:iBZRpYG8O
道化派A「くそっ! 道化師がやられるなんて!」

道化派B「し、しし、しかも、一緒にいった幹部連中も全滅か」

道化派C「男どもに仇討ちをしねぇとよ!」

道化派A「いや、だがよ……手を先に出したのはうちだ、その上これ以上男達に危害を加えようものなら」

娼婦「初老先生は貴方達を潰しにかかるでしょうね」フフッ

道化派達「娼婦!?」

娼婦「驚いたわ、道化師が殺されるなんて……好敵手として寂しい限りだわ」

道化派A(嘘だ)

娼婦「でもね、男への仇討ちなんて、道化師は望んでいないのでは無いのかしら?」

道化派A(嘘だってのに)

娼婦「それよりも、日々鍛え上げたその技で聖騎士の首をとる方が……道化師も喜んでくれるんじゃなくて?」

道化派A(嘘だって解っているのに……)

道化派B「そうだ、娼婦の言う通りだ」

道化派C「鍛え上げた技を男ごときに使うなんて勿体無い……聖騎士へと向けるべきだな」

娼婦「勇ましいわね……素敵だわ」

道化派A(嘘だって解ってる。 良いように使われるだけだって頭の中で理解もしてる……それなのに、それなのに)ワナワナ

娼婦「ほら、貴方も良いところ魅・せ・て♪」
139 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/26(金) 12:14:21.91 ID:DvykarTrO
不良神父「……」スパー

村人「あの、神父様」

不良神父「へいへい、何ですかい?」

村人「えっと、煙草……吸われるのですね」

不良神父「そりゃね、慈愛の女神様が我々から娯楽を奪うほどの器量なしとは思えませんで」

村人「そ、そうですか……あの、一人で大丈夫なのですか?」

不良神父「えーっと、洞窟に掬う禁術使いの退治でしたっけね……おじさん、治癒魔術しか使えないからなぁ」ポリポリ

村人「えぇ! そんな!? 異教徒狩りのスペシャリストが来てくれるって聞いてたのに!?」

不良神父「安心しな……俺はあくまで付き添いだよ……さて、集合時間まで……5、……4」

ウォォォオオオオオ!!

不良神父「……3、……2」

ウォォォオオオオオ!!

不良神父「……1」

聖騎士「到着!! ……不良神父殿、遅刻ではありませんな?」

不良神父「ギリギリな……早めに来いって言ったろ?」

聖騎士「す、すみません。 お年寄りが道に迷っていて……後、村の子供が迷子に……それから、新郎が拐われる事件が」アタフタ

不良神父「大事の前の小事だ……捨て置け」

聖騎士「大事の前に小事も果たせぬようならば、大事も果たせぬ……でありましょう!」キリッ

不良神父「はぁ、まぁ良いけどよ……ん?拐われたのは新郎なのか? 新婦じゃなくて?」

聖騎士「えぇ、拐われたのは新郎でありました!」

不良神父「面白そうな事件じゃねぇか……酒の肴にするからよ、後で聞かせやがれ」ゲラゲラ

村人「あの……えっと、禁術使いを退治して欲しいんですが……」
140 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/26(金) 12:31:44.13 ID:Y+AxG5RHO
聖騎士「えぇ! お任せよ! 私、聖騎士めが何とかいたしましょう!!」

不良神父「……洞窟で禁術使いに会ったらどうする?」

聖騎士「真っ当に生きて頂けぬか誠心誠意説得いたします!!」キリッ

不良神父「馬鹿野郎、問答無用で斬り殺せ」スパー

聖騎士「何と!?」

不良神父「話し合いなんて、必要ねぇ……禁術使いは殺す。 これが聖教の決まりだ」

聖騎士「しかし……でありますな」

不良神父「はぁ、こういう仕事は狂信者の方が向いてるか……まぁ、今後も汚れ仕事をアイツに押し付けるってんなら無理はしなくていいぜ?」ニヤニヤ

聖騎士「うぐっ、それを言われると……解りました。 我が一太刀は健やかな女神の子らの為に」

不良神父「それで、良いんだよ……行くぞ」

聖騎士「むっ、不良神父殿も一緒に洞窟に入ってくださるのですか!?」

不良神父「嬉しそうにしてんじゃねぇよ。 たまには教え子の勤労を見守るのも悪くねぇ」

聖騎士「不良神父殿……」キラキラ

不良神父(聖騎士の近くにいる方が安全だろうしな)チラッ

村人「……?」
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/29(月) 12:15:57.30 ID:rrvZCRmYo
親友って角驢馬?
角驢馬のことは大事な思い出なのか
142 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/29(月) 15:35:46.63 ID:3rwTyaLyO
村人→洋裁師「……怪しまれた?」フム

娼婦「洋裁師、首尾はどうかしら?」

洋裁師「姐さんの指示通り、聖騎士を洞窟に閉じ込める事は出来ましたが……道化師派閥の残党じゃ勝てませんよ?」

娼婦「あら、そうなの?」

洋裁師「えぇ、私の見立を信じていただけるなら」

娼婦「貴方の見立てが外れた事なんて無いじゃない」

娼婦「それで?」

洋裁師「はい?」

娼婦「それで、大男なら聖騎士に勝てるのかしら?」

洋裁師「………同士討ち……いや、ギリギリ競り勝てる……そんなところですね」ウーム

娼婦「そう、解ったわ。 行きましょう、洋裁師」

洋裁師「行くって何処に?」

娼婦「善人狩りに決まってるじゃない」

洋裁師「いえ、だから、善人は洞窟の中に……」

娼婦「あら、聖騎士以外にも善人と呼ぶに相応しい人はいるんじゃなくて」フフッ

洋裁師「!?」

洋裁師(姐さんは聖騎士を殺す事を既に諦めていたのか)

洋裁師(自分達の派閥で殺すことが出来ないなら、他の派閥も殺し難いようにしたい)

洋裁師(道化師派閥の残党をけしかけたのは、聖騎士が命を狙われていることを伝えて警戒心を煽るため)タラッ

娼婦「さて、楽に勝たせてもらいましょう」フフフ
143 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/04/30(火) 10:22:20.04 ID:aBO7vFr/O
道化派A「」
道化派B「」
道化派C「」

聖騎士「……ふぅ、まさか禁術使いが格闘戦を仕掛けてくるとは」

不良神父「いや、違うだろ……誘き出されて襲われたようにしか見えねぇよ」スパー

聖騎士「なんと!?」

不良神父「まぁ、恨みを買いやすい立場だ。 仕方ねぇが……心当たりは?」

聖騎士「うーむ、思い当たりませんな」

不良神父(コイツらは明らかに捨て駒にされた。 異教徒の連中か? それにしては戦闘スタイル、流派がバラバラだった……相手さんはどういう組織形態してんだ?)スパー

聖騎士「不良神父殿?」

不良神父「……聖騎士、少しの間休め」

聖騎士「し、しかし、私には女神の子らを守る使命が」

不良神父「お前さんが今動くのは迷惑だ」

聖騎士「……私は貴方を恩師と……それ以上に父と思っています。……私の為に無茶をしてほしくない」

不良神父「馬鹿野郎」ポコッ

聖騎士「?」

不良神父「俺がお前の事を息子だと思ってるから、無茶するしかねぇんだよ」ニヒヒ
144 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/05/02(木) 13:40:12.11 ID:nEEZO4d3O
旅行中につき、更新出来ません。
4日からまた続きを書こうと思います。
145 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/04(土) 21:38:08.89 ID:iiI4jV89O
不良神父(聖騎士には、孤児院の奉仕へ身分を隠して向かわせたが……相手さんが解らねぇな)スパー

不良神父(調べたところ、聖騎士を襲った奴等は裏社会で用心棒やら殺しの仕事をしている奴等みたいだが……金で雇われる奴等が捨て駒を引き受けるか?)

不良神父(自分の腕を試したかった? 名を上げたかった? それなら、複数人で仕掛けてきた事に違和感がある)

不良神父「上手く扱われただけ……それがしっくりくるがよぉ」

不良神父(あれだけの人数を自分の都合で操ったとなると……厄介なヤツに目をつけられたもんで)

「不良神父さん! 不良神父さんはいらっしゃいますか!?」ドタバタ

不良神父「へいへい、いますよ。 何だい……嫌な顔色しやがって」

「そ、それが聖騎士様が向かわれた孤児院で事件が!?」

不良神父「……すぐに向かう」

不良神父(身分を隠して行動させてたってのに……もう見つかったのか)タラッ
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/05(日) 13:27:49.68 ID:fa2tGs6uO
楽しみにしてる
147 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/07(火) 13:10:38.69 ID:qz/xjiurO
不良神父「……よう、何があった?」

聖騎士「私宛に手紙が届きまして……」

不良神父「おう」

聖騎士「女の子が私に届けるように受け取ったんですが……」

聖騎士「その子が、その子が私に渡す前に中身を見たら……文書を読んだだけなのに……」ポロポロ

不良神父「その女の子はどうなったんで?」

孤児院長「それが、自ら包丁で喉を突き刺してしまい」

不良神父「自殺ね。 ……手紙は?」

孤児院長「此方に……中身は見ていません。 不気味だったので」つ手紙

不良神父「そうかい」ペラッ

聖騎士「ふ、不良神父殿!?」

不良神父「………………聖騎士、思いっきり俺を殴れ」

聖騎士「はい!」バコンッ

不良神父「っ!」

孤児院長「な、何をなさっているのですか?」

不良神父「悪いね……こうでもしないと正気に戻れねぇと思ってよ」

聖騎士「不良神父殿……手紙には何と?」

不良神父「一作の童話が書かれていた……それだけだったが、確かに俺も死にたくなった」ウエッ

孤児院長「だ、大丈夫ですか?」

不良神父「吐いてくる。 おい、聖騎士。 俺が死なねぇように見張ってくれ」ゲッソリ

聖騎士「はい」
148 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/07(火) 13:21:48.75 ID:qz/xjiurO
不良神父「…………」パチクリ

孤児院長「目が覚められましたが?」

不良神父(口に布の塊が押し込まれている……舌噛んで死なねぇようにか。 手も椅子の背に固定されているな……記憶が定かじゃねぇ)

孤児院長「どうやら、正気に戻られたようですね」カチャカチャ

不良神父「悪いね、孤児院長さんよ。 俺なんざ拘束しても楽しくなかっただろうによ」

孤児院長「フフフ、人を拘束して悦に浸る趣味はございませんので。 ……何か食べられますか?」

不良神父「スープか何かねぇかな。 固形は食べられそうに無い」

孤児院長「ええ、持ってこさせましょう」

不良神父「……孤児院の奉仕の募集。 ここの孤児院では今まで出していなかった」

孤児院長「手伝ってくれていた青年が急に里帰りすることになりましてね」

不良神父「若い男手が必要になったと?」

孤児院長「まさか、聖騎士様が来てくださるとは思いませんでした。 ……身分を隠されていたのは先の手紙と関係あるのですか?」

不良神父「あぁ、何者かに狙われている」

孤児院長「なら、子供達の為にも彼に此処に居て貰うわけにはいけませんね」

不良神父「………疑って悪かった」

孤児院長「お互い父性を捨てられない仕事をしている……それだけのことです」

不良神父「違いねぇ……青年の故郷を教えてくれねぇか」

孤児院長「えぇ、喜んで」
149 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/07(火) 15:27:50.63 ID:p1g5DXDDO
不良神父「忙しそうだね、どうも」

青年「ははは、お陰様で……まさか、田舎の宿屋がここまで繁盛するとは思いませんでした」

不良神父「親御さんだけでは手が回らないからって、里帰りしてまで手伝うとは親孝行なもんで」

青年「それだけじゃ無いんですけどね」

不良神父「というと?」

青年「孤児院で孤児の子供達と直接関わるというのだけが、彼等の救い方では無いんじゃないかなって」

不良神父「……」

青年「宿屋で儲けたお金を寄付したり、孤児院出身者を雇ったりそういう関わり方も出来るんじゃないかな……なんて」

不良神父「そうかい……親孝行だね」

青年「えぇ、両親ともに喜んでくれてます」

不良神父「ちげぇよ。 きっと、孤児院長も鼻が高いって話さ」フッ

青年「えぇ、彼は確かに私の第2の父ですね」ニコッ
150 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/08(水) 10:19:37.02 ID:FqBEnfv0O
不良神父(青年の両親が営む宿屋の近くに大型の商業施設ができ、客足が増えた)スパー

不良神父(その結果、宿屋の人手が足りなくなって青年は里帰り。 青年が孤児院での奉仕を続けられなくなり、孤児院長は代わりを募集した)

不良神父「商業施設の出資者に聖騎士を狙わせたヤツがいる?………いや、遠回り過ぎるだろ」ボソボソ

不良神父(だが、大掛かりだとは言えねぇな)スパー

不良神父「主な出資者は投資家、守銭奴、小太商人、大太商人……か」

不良神父(聖騎士には教会と関わるなって言っておいたがよ……一応、狂信者を向かわせたが大丈夫かねぇ)

不良神父「長引かせるわけにはいかねぇな……さっさと、相手さんに辿り着かねぇと」
151 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/09(木) 18:02:42.20 ID:rnIZGi4IO
聖騎士「………村?」

聖騎士(どうしたものかとひたすら歩き続けてしまった……ここはどこだ?)キョロキョロ

キャッキャッ ワイワイ ガヤガヤ

聖騎士「ふふ、子供達が楽しそうに遊んでいる……良い村だな」

「おにいちゃん、おにいちゃん」グイグイ

聖騎士「はい、どうされました?」

「あのね、今日ね、教会でね、お歌の発表会があるんだよ」

聖騎士「なるほど、だから皆楽しそうなのですね」

「一生懸命、練習したから聞きに来てほしいな」

聖騎士(不良神父殿には聖教と関わりのある場には行くなと言われたが…………流石にこんな田舎の村なら大丈夫だろう)

聖騎士「ええ、是非拝聴させていただきます」ニコッ
152 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/11(土) 18:21:49.38 ID:E9RIVIemO
聖騎士(ふふ、子供達が緊張した顔で並んでいるな)

「一生懸命、練習しました! 聞いてください!」

「「「「聞いてください!」」」」

パチパチパチパチ

聖騎士(暖かな拍手、一生懸命な子供達、優しく笑う大人たち……本当に良い村だ)

作家「えぇ、ですので……今から起こることは貴方のせいなのですよ」ボソッ

聖騎士「!?」バッ

「あら、イケメン……私に何か用かしら」テレテレ

聖騎士「い、いえ失礼……何でもありませんよ、御婦人」

聖騎士(今、男の声で………)
153 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/11(土) 18:33:25.35 ID:E9RIVIemO
聖騎士(気のせいか?)

「ある日〜♪」

「「「ある日〜♪」」」

「森の中〜♪」

「「「森の中〜♪」」」

聖騎士(聖歌ではないのか)ホウ

「熊さんに〜♪ ■■■♪」

聖騎士(今、何て言った?)

「「「■■さんに〜♪ ■ら■♪」」」

聖騎士(何だ、この物語は……ただの童謡のはずなのに)タラリ

「ハハハ、良い歌だ!」
「うちの子が一番上手いわ」
「はぁ!? うちの子がいちばんよ!!」ナグリ

聖騎士「ここは何処だ……私は何をして……」

「■咲く森の■〜♪ 熊さんに出会■た〜♪」

『一作の童話が書かれていた……それだけだったが、確かに俺も死にたくなった』

「「ラララララーラーラーラーラー♪」」

「ララララ■ー■ー■ー♪」

「死ね! この村の人間なんて皆死ねば良い!!」グサグサ
「うちの子が死んだ! 歌いながら、首をかきむしって……ハハハハハハハハハハハハ! 朝食の準備をしなくてすむわ」
「葬儀の準備をしなくては……教会が儲かる、儲かる」
154 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/15(水) 10:11:29.93 ID:2Cx4c+HpO
聖騎士「……」ハァハァ

「」
「」
「」
「」「」「」「」

聖騎士「皆、死んだ……自殺した……」

聖騎士『止めろ! 歌うな!』

聖騎士「私のせいじゃない……私は悪くない……」ボソボソ

聖騎士『歌うなと言っているだろう!』ザンッ

聖騎士「私のせいでは……」

『えぇ、ですので……今から起こることは貴方のせいなのですよ』

聖騎士「私が殺した……私のせいで……私がぁ……」ガクンッ

狂信者「……」

聖騎士「狂信者殿……助けて、ください」ゲッソリ

狂信者「否である」
155 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/15(水) 10:29:52.08 ID:2Cx4c+HpO
狂信者「母なる女神すら救わない貴殿をどうして我が救おうか」

聖騎士「……」

狂信者「これは女神が貴殿に与えし苦悩、与えし試練である。ならばどうして、我がその愛を奪う? 否、奪うことなど赦されるわけが無く、汝はその愛から逃れず受け入れなければならない。恵みを受け入れ、苦悩を災悪のみを拒むなど、身勝手な行いを誰が信仰などと嘯こうか……故に、故にである」

狂信者「主の前に例外無し」ジャキン

聖騎士「!?」

狂信者「その弱さは罪である。 母なる女神への不孝であり、看過される罪状で無し。 ならば、我が裁とう、断とう、絶とう……抗い愛への返礼とするか、裁かれその罪への懺悔とするか選べ」

聖騎士「は、ははは……貴方という人はこんな時にも変わらないな」

狂信者「……であれば、如何にする」

聖騎士「我は聖騎士、女神の子らを守護すべき任を任されし一太刀の刃である……が同時に自身も女神の子の一人に他ならないと再確認いたしました」

狂信者「ふむ」

聖騎士「えぇ、解りましたとも……私はその愛へ返礼し、健やかなる子であると示しましょう」

狂信者「ならば、裁つことは無し……」バッ

聖騎士「狂兄さん……もしかして、凄く心配してくれてました?」

狂信者「………むぅ」///

聖騎士「ありがとうございます」
156 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/21(火) 09:06:50.32 ID:iNcc596PO
守銭奴「聖騎士が死んだ?」

殺し屋「あぁ、暫く狂信者と話した後、狂信者の手によって殺された」

守銭奴「おいおい、狂信者っていやぁ聖騎士と同じ教会で育った義兄弟って話じゃねぇか? そんな狂信者が聖騎士を殺すかぁ?」

作家「ふむん、しかし狂信者と言えば聖書の一説を読み間違えただけで上級神官の首をはねた事があるとか……あり得ない話では無いのでは?」

殺し屋「首は回収できなかった……すまん」

守銭奴「命を差し出させるだけの報酬は用意してねぇさ……へぇ、ここまでか」

作家「よろしいので? 狂信者と聖騎士が一人芝居売ったとも考えられますが」

守銭奴「……不良神父ってヤツが俺に話を聞きに来た」

殺し屋「!?」
作家「ほうほう」

守銭奴「あれだけ存在が勘ぐられないように気を付けたのによぉ、尻尾を掴まれかけたんだ」

殺し屋「当たり前だが、聖騎士達と真っ正面からやり合うというなら俺は降りさせてもらう」

守銭奴「割りに合わねぇ事はしないさ……さて、聖騎士の次に善人らしいヤツを探すとするか」
157 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/21(火) 09:17:41.92 ID:iNcc596PO
娼婦「あら、聖騎士が死んだの?」マジマジ

洋裁師「えぇ、狂信者に殺されたらしく」

娼婦「ふーん」ポイッ

洋裁師(興味無さすぎでしょう)

娼婦「よし、これにしようかしら」つ生首

洋裁師「えーっと、自然保護委員会の会長でしたっけ?」

娼婦「善人と呼ぶには相応しいでしょ?」

洋裁師「……大男に暇を与えてる状況で、どうやって殺してきたので?」

娼婦「嫌ね。 私は殺人なんて野蛮な事なんてしないわよ」

洋裁師「?」

娼婦「おねだりしたの―貴方の首をちょうだいってね」クスクス

洋裁師「」ゾクッ

娼婦「後は集会が始まるのを待ちましょうか」

洋裁師「大男は呼び戻しますか?」

娼婦「まだダメよ。 今、大男を呼び戻したら聖騎士を殺しにいってしまうかも知れないでしょ?」

洋裁師「ん? 聖騎士は既に死んでいるのでは?」

娼婦「ふふ、貴方は強さ以外は測れないのね。 可愛いわ」ナデ

洋裁師「んっ」///
158 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/05/26(日) 19:24:00.93 ID:Z6j5wcykO
仕事が忙しくて中々書けません。
すみません。

少しずつでも更新します。
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/26(日) 19:33:13.52 ID:c4RGHsdBO
報告乙
待ってる
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/27(月) 10:23:08.92 ID:9ApSbvEmO
読んでるぞー
161 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/29(水) 15:10:47.08 ID:GQcUxIpcO
不良神父「……」スパー

狂信者「……」セイザ

不良神父「聖騎士を半殺しにするって……何考えてるんだよ」ハァ

狂信者「否、七割殺しである」

不良神父「より悪いわ!」

狂信者「うむ……しかし、不良神父の治癒の腕と聖騎士の健体があれば死することは無しと判断したが故な。 こうでもしなければ、見張りの目も欺けまい」

不良神父「……たく。 で、ここは?」

狂信者「以前、滅した異教徒どもの巣よ。 まず、見つかることも無かろう」

聖騎士「……」Zzz

不良神父「聖騎士の死は報じるように伝達してある。 泥を被ってまで弟分を守りたかったとは泣かせるね」ヘヘッ

狂信者「断じて守ったわけではない。 女神も護らぬ子をどうして我が護ろうか、此の試練が愛ならば奪う権利など無し……ただ」

不良神父「ただ?」

狂信者「その愛を受け止めると決めたならば、その信仰は尊ばれるものである。 主の前に例外は無し、それ故、同じ子として為すべき事があればそれは我が試練である」

不良神父「はいはい、聖騎士が可愛くて仕方がなかったということな」スパー

狂信者「むぅ」///
162 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/05/29(水) 15:22:43.77 ID:ApD3B75GO
不良神父「聖騎士が目覚めるまで三日間……本当に大した健体だ。 ……それが幸せな事かは解らないがよ」ナデナデ

狂信者「与えられた事に感謝すべきである。 不幸とするも幸福とするも強欲よ」

不良神父「原典聖書に書かれた内容を慮ってるのはお前さんぐらいだと思うがね。 皆、女神に救いを求める……仕方ねぇことさ」

狂信者「産まれた事に感謝せねば子ではないというのにな」

不良神父「しかし、父は子に何かをしたいと思う。 母も同じだろう?」

狂信者「親などおらぬ我には解らず、我を在らわしは女神のみ」

不良神父「……」スパー

狂信者「…………が、父親代わりはおるか」プイッ

不良神父「へへっ、可愛いボウヤだよ。 ほんと」

狂信者「で、親父殿……如何する?」

不良神父「さて……どうしようかね」スパー
163 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/05(水) 10:08:50.42 ID:ktBKG3cWO
大男「……」

娼婦『大男、今回の件に貴方は関わら無いでほしいの』

大男『俺だったら聖騎士だって正面から殺せると思うがよ』

娼婦『貴方を失いたくないのよ』ウフフ

大男「……嘘つきめ」

大男(退屈だ)

男「退屈か?」

大男「……男、こんなところで何してるんだ?」

男「少し遊びにな」

大男「そうかよ」

男「退屈ならば、君もくるか?」

大男「……」
男「……」

大男「……良いぜ、お前らのお遊びに付き合ってやるよ」
164 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/07(金) 08:11:53.56 ID:5J80c05xO
男「B・B・Q」

大男「……」

薬師「B・B・Q!」

大男「…………」

女暗殺者「B・B・Q」

大男「………………」

浮浪者「B・B・Q♪」

大男「………………何だよこれ!?」

男「BBQだ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「遊びだっていってたじゃねぇか!」

男「これも遊びだ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「それとこの汚いのは誰だよ!」

男「浮浪者だ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「その言い回し止めろ!」

浮浪者「まぁまぁ、大男さん。 ほら、お肉が焼けましたよ」フフッ

大男「気安く話しかけてんじゃねぇ!」

男「大男、あまり浮浪者さんに横柄な態度を取るな」

浮浪者「ふふ、良いじゃありませんか。 大男さんのそういう若さ……私は嫌いじゃありませんよ」

男「浮浪者さんが良いなら良いが」

大男「どういう関係なんだよ」

男「拾った」キリッ
浮浪者「拾われました」キリッ

大男「……薬師、コイツらといてよく疲れねぇな」

薬師「なれたよ。 今日のBBQだって言い出しっぺの作家が参加出来ないタイミングで開かれたわけだしね」つコップ

女暗殺者「……」ゴクゴク

大男「……酒か?」

薬師「いや、皮膚が爛れて体が崩れる系のジュースだよ」

男「人、それを毒と呼ぶ」

女暗殺者「……イチゴ味♪」

薬師「べ、別に女暗殺者がイチゴが好きだからその味付けにしたわけじゃないんだからな」///

大男「……男、コイツらといてよく疲れねぇな」

男「人はそれを毒と呼ぶ? なら、毒は人じゃないのか? ん? なら、俺は人か? 毒とそれを呼ぶのが人ならばインコだって、オームだって、ネズミだって、猫だって人の可能性が……」ブツブツ

大男「……」

浮浪者「お肉、食べます?」

大男「おう、ありがとうよ」
165 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/07(金) 08:21:47.16 ID:KrVuoxpaO
薬師「ふぅ、食べた食べた」

浮浪者「どれ、皿洗いでもしてきますか」

薬師「浮浪者さんは休んでいなよ。 僕と女暗殺者でやって来るからさ」

女暗殺者「……」コクン

浮浪者「そうですか? それでは遠慮なく」フフッ

男「浮浪者さん、少し出てくる。 荷物を見ておいていただいても?」

浮浪者「えぇ、かまいませんよ」

男「……大男、ついてこい」

大男「やっとかよ」

男「……いい肉だっただろ?」テクテク

大男「ん? あぁ、うまかったよ」

男「野菜も焼けば甘味がます」テクテク

大男「そうだな」

男「キノコのニンニクとバター炒めも上手に出来た」

大男「……」

男「ニンニクの芽は焦げやすいからな、取っておくのがポイント何だ……っと、これだ」

大男「……これは」

アヒルのボート「」ジャーン

男「乗ってみたかったんだ。 大男、漕いでくれないか」

大男「……良いけどよ」
166 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/07(金) 08:27:19.15 ID:KrVuoxpaO
大男「……」

男「珈琲を淹れたことはあるか?」

大男「あん?」

男「俺は何時も紙で濾過しながら淹れる、ペーパードリップ式という淹れ方をしているんだ」

大男「そうかよ」

男「それ以外にも、粉を沈殿させて淹れる方法や、プレス式の淹れ方もある……ドリップ式より雑味が多くなるがな」

大男「雑味か……優れた淹れ方があるならそっちで皆淹れりゃあ良いのによ」

男「?」

大男「何だよ?」

男「雑味があることは劣っている事ではない」

大男「……」

男「嗜好品である以上、その雑味も楽しまれるべきだ。 ……優劣ではなく、嗜好の話だ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「その言い回し止めろよ」

男「むかつくか?」

大男「あぁ」

男「なら、殺せばいい」

大男「!?」

男「俺は抵抗しないぞ」
167 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/07(金) 08:33:56.34 ID:KrVuoxpaO
男「退屈しているんだろ? なら、殺せば良い」

男「俺がむかつくんだろ? なら、殺せば良い」

男「理解できない、気持ち悪いと思っているんだろ? なら、殺せば良い」

男「雑談に付き合いたくないと思っているんだろ? なら、殺せば良い」

大男「……」

男「人を殺すのが気持ちいいんだろ? なら、殺せば良い」

大男「上等じゃねぇか」ググッ

男「あぁ、首を絞めても、溺れさせても、殴り殺しても、君の思い通りだ」

男「俺は抵抗しない」

大男「……」

男「抵抗はしてあげない」

大男「!?」

男「娼婦との遊びはどうだった? 裸の男たちを踏み殺したり、中出しした後の男を絞め殺したり、赤ん坊を湖に沈めて遊んだり……愉快な噂は聞いたが」

大男「……退屈はしなかったよ」

男「ならば、愉快だったのか?」
168 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/07(金) 08:40:46.47 ID:UB262weiO
男「キリングハイ、殺人衝動、殺人快楽主義者、しかしながら、君は素手で殴り殺すことに拘るのは何故か」

男「殺すことに快楽を求めるならば、殺し方の種類を求めるはずだ」

男「苦い豆だけではあきるだろう? 酸味のある豆だけではあきるだろう? コクのある豆だけではあきるだろう? アッサリとした豆だけではあきるだろう?」

男「嗜好に口出しをするのは野暮だろうが……刺し殺す快楽を求めないのか? 毒を盛る悪戯心は無いのか? 杭で串刺しにされた様を鑑賞しながら食事を取るのは……悪く無いというのに」

大男「……それは」

男「素手で無いといけない理由は……武器を持ってしまうと殺し合いにならないからだろ?」

大男「!?」

男「君は殺すのが好きなんじゃない。 殺し合うのが好きなんだ。 そんな、君が何時から焼いた肉を頬張るようになったんだ。 なぁ、退屈は嗜好を錆びさせるのか」

大男「そうか、そう……だったのか」

男「大男……退屈はしてないのだろう。 ならば、愉快だったのかな?」
169 : ◆ccqXAQxUxI [saga]:2019/06/12(水) 20:32:27.30 ID:x5+cUZsdO
ザワザワザ

男「……」

娼婦「初老先生はまだお見えにならないのかしら?」

男「彼は人を待たさせるのが好きだからね」

娼婦「ふふ、良い女の条件ね」

男「良い女は男を待たせたりしないだろう」

娼婦「……貴方、恋愛観とか持ってるのね」

男「あぁ、人なのだから当たり前だろ」

娼婦「へぇ、ならその感性は薬師と店員さん、どちらの方を向いているのかしら?」

男「許嫁がいる」

娼婦「あら、故郷に?」

男「いや、この前、奴隷市で売られていたよ」

娼婦「貴方のことますます嫌いになれたわ、ありがとう」

男「どういたしまして」
170 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/06/12(水) 20:33:06.41 ID:x5+cUZsdO
上の、酉ミスりましたが本人です。
171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/06/12(水) 22:56:52.20 ID:sKsBUE5Mo
大丈夫。わかるぞw
172 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/14(金) 19:09:19.61 ID:Tal3taYKO
初老「やぁ、諸君……お待たせしたね」

守銭奴「漸くお出ましかぁ……生首を持ち歩く趣味は無いもんでね」

初老「ふふ、換金は早い方が良いか……君らしいね」

娼婦「あら、換金できるのかしら? あなたが持ってるのは生首じゃなくて、生ゴミじゃなくて」

守銭奴「いうねぇ、その手の皮肉は嫌いじゃねぇよ」

初老「さて、それでは2人とも聖騎士の首を出して貰おうか」

守銭奴「!?」
娼婦「……」

守銭奴「あぁ〜……聞き間違いか? より善人と呼ぶのに相応しい人物の首を持って来たほうが勝ちって言いましたよねぇ?」

初老「あぁ、聖騎士が最も最も清き肉体と善なる魂を持ち得た男として、勲章を与えられた数日後にね」

守銭奴「そりゃあねぇよ! 娼婦! あんた等も納得いかねぇだろ!?」

娼婦「何故かしら?」
173 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/14(金) 19:20:48.45 ID:Tal3taYKO
娼婦「今回の遊びで道化師の派閥が全滅したわ」

娼婦「聖騎士にちょっかいをかけた守銭奴達の派閥も聖教会に追われてるのでしょう?」

娼婦「だというのに、私がどうして納得できないのかしら?」フフフ

守銭奴「……娼婦、最初から勝つつもりがぁ無かったんだなぁ」

娼婦「勝つつもりはあったわよ? でもね、善人狩り何てお遊びに興味は無いの」

娼婦「私が狩りたかったのは最初から、道化師と守銭奴……貴方達なのだから」

守銭奴「それでぇ、俺達がぁ自滅するように誘導しやがったのかぁ!」ワナワナ

娼婦「周りの大人のせいにしたら何時までも成長出来ないわよ、ボウヤ」

守銭奴「殺し屋ぁ! もういい! この女を殺せ!! 報酬はいくらでも払う!! 殺せぇ! 殺せぇ!!」

殺し屋「……」ジャキン


ギィ……バタン
男「いらっしゃい」

大男「……おう」ボロボロ
174 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/14(金) 19:28:05.07 ID:Tal3taYKO
男「血塗れで店に来るのは止めてくれ」

大男「良いじゃねぇか……俺とお前の仲だろ?」

男「焼き加減は?」

大男「生で良い」

男「酒は?」

大男「一番度数が高いやつを」

男「割らなくて良いな」

大男「解ってんじゃねぇか」ニッ

守銭奴「…………って、なぁんなんだぁ!! ふざけるなぁ!! そういう空気じゃねぇだろ!!」

娼婦「……なんで」ボソッ

大男「外野が騒がしいが……今日は何かあるのか?」クチャクチャ

男「何時もの会合だ……娼婦から聞いてないのか?」つ酒

大男「最近、避けられててよ……そうか、今日なのか」ゴクゴク
175 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/14(金) 19:35:34.89 ID:Tal3taYKO
男「……利き腕はどうした?」

大男「あん? 斬り落とされた」

男「腹からモツが垂れているが?」

大男「アクセサリーだ……洒落てるだろ」

男「…………それもアクセサリーか?」

大男「いや、今日の飲み代だ」ゴトッ

聖騎士生首「」

守銭奴「なぁ!?」
作家「ふふ、どうやら、本筋は彼方のようですな……守銭奴殿」

男「すまない、それは受け取れない。 守銭奴との契約がある」

守銭奴「受け取らない!! だったら俺にぃ寄越せ!!」

男「……」

守銭奴「おい! 男、聞こえてねぇのかよ!!」

作家「この会合が終わるまで、守銭奴殿とは口聞かないらしいですな」

守銭奴「」
176 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/06/14(金) 19:43:52.95 ID:Tal3taYKO
洋裁師「ならば、我々のものだ! 大男は元々こちらの派ばt」バタン

娼婦「……」つナイフ

洋裁師「何で、姐さ……ん?」

娼婦「だって、醜かったのですもの」

男「教会の十字架の上にのせたら良いんじゃないか?」

大男「棒人間みたいだな」ニヤッ

男「あぁ、面白そうだろ?」

大男「退屈はしなさそうだ」ガクッ

男「なぁ、大男……聖騎士との殺し合いはどうだった?」

大男「聞いてくれよ……殴っても、殴っても死なねぇんだよ。 剣を折っても強いしよ……先に殺されるかと思ったぜ」ピクピク

男「退屈はしなかったんだな」

大男「あぁ」

男「じゃあ、愉快だったのかな?」

大男「……そりゃあ、勿論……満足……だ」
177 : ◆Q6fo44/dLk [sage]:2019/06/21(金) 23:06:31.95 ID:pRyWbe+V0
忙しい仕事を辞めようとしてゴタゴタ。
書きたいものが多いのに書けないの辛い。

読んでる人まだいたら本当に申し訳ありません。
続きはもう少しかかります。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/06/22(土) 02:46:05.62 ID:aq6m9FGyo
焦らず書けるときに書いてください
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/06/22(土) 22:22:19.67 ID:PVdHsTzEO
ゆっくり待ってる
180 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 15:44:48.14 ID:VEryQIeR0
待ってます
181 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/07/19(金) 18:59:43.82 ID:IFDURyQy0
作家「フフン、手垢まみれの言葉は好みませんが……蜘蛛の子を散らすように去っていきましたな」

初老「あぁ、そうだね」

作家「目的は達成できましたかな?」

初老「見れば解るだろう? ……私が欲しかった生首だ」

作家「欲しかったのは囮でしょうに」

初老「……ふふ、君は読み手としても一流のようだね」

作家「悪党どもに聖教会へちょっかいをかけさせて、注目を分散させること……初老殿が悪事を働き易い環境を作ることが目的だなんて、誰でも解りそうなものですが」

初老「解っていたなら何で君も参加したんだい? 男みたいに傍観者に徹していれば聖教に追われる身になどならなかっただろうに」

作家「さて、どうしてでしょうね」

初老「……もう1つの目的も解っているようだね」

作家「男殿という存在を理解するため……ですかな?」

男「楽しく談笑するのは良いが、注文してくれないか? ……貸切の予約がなくなってしまってな」

初老「私達が店長のオススメ以外を注文した事があったかな?」フフ

男「上客感謝する。 初老専用のコップを用意したんだ……少し待っていてくれ」

作家「ほほう! 私専用もあるのですかな?」

男「………」ヘ?

作家「意地悪!……と言うより、その反応は普通に傷付きますな!!」
182 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/07/22(月) 19:07:03.07 ID:oz0qRV9u0
作家「それで、初老殿から見た男殿はどのような存在で?」

初老「そうだね……蝶かな」フフッ

作家「ほほう」

初老「関わりの無いように思える場所で羽ばたき嵐を起こす……ふふ、難儀な男さ」

作家「………左様でありますな」

作家(蝶は嵐を起こしてる自覚など無いのですが……)フム

初老「しかし、それなら彼の羽ばたきすらも計算すれば私への影響は防げるだろう」

作家(まぁ、初老殿【小者】ではこの程度の理解でしょうな……大男の本質も、娼婦の本性も見抜けて無いようですし)

初老「次の私のショーでは観客でいてもらうよ、男君」

男「題目ぐらいは聞いてもいいか?」

初老「あぁ、構わないよ……聖国崩しさ」

男「それは楽しみだ」つコップ
183 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/07/22(月) 19:15:48.68 ID:oz0qRV9u0
初老「 」

作家「はぁ、たまりませんな」ウットリ

男「どうした? 初老、顎が外れそうだが?」

初老「こ、これはなんだ?」

男「ジントニック、友を喪った夜に合う苦さというなの優しさがある酒だ」

初老「君は! な! はぁ!! そんなことは聞いていない!?」

男「ならば、何を驚いている?」

初老「器の方に決まっているだろ!!」ガタン

男「初老用のモノを用意したと事前に言ったが」

初老「ふざけるな!?」

男「生首を器にしたのは悪趣味すぎたか? 耳を取り、取っ手を付けたりと工夫したんだが」

初老「この顔はこの顔は……だって、だってさぁ……」

コップ【聖教祖の生首を加工したコップ】

男「どうした? もしかして、友人だったかな?」スマナイ
184 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/08/04(日) 02:12:15.20 ID:Wx5CpjMvO
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/08/09(金) 00:59:36.40 ID:qxnVP2n9O
おぉ来てた
186 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/08/15(木) 21:13:56.92 ID:kGYbpTs30
初老「君は何なんだ?」

男「さっき、得意気に語っていただろう?」

初老「………あぁ、そうか偽物なのだろう! 本物の聖教祖の首なわけが無い」

男「?」

初老「だって、聖教祖は昨日演説をしていた! 公衆の面前に立っている!!」

男「作家もジントニックで良いか?」

作家「えぇ、もちろん♪」

初老「知っているぞ! 薬師が他人に化ける薬を……薬を………」ウナダレ

男「ツマミは……パスタにジェノベーゼソースを絡めようか」

作家「良いですな」

初老「今の聖教祖の中身は誰だ?」

作家「初老殿が追い付かれたようですぞ?」

男「拾った浮浪者だ」

初老「連絡は取れるのかい?」

男「あぁ、好きに動かせるが……いるかな?」

初老「………………お代は?」

男「■■■■」

初老「君は……君はぁ、何だ! 悪ですらないのか!? 人であろうとしているのか!? 私が、私がしたいことを全てしておきながら……悪にすら、染まらないのかぁ……」

作家「男殿、この世には二種類の人間がいると……私は思うのですが」

男「二種類? 聞かせてくれ」

作家「カテゴライズ出来る人間とカテゴライズ出来ない人間……如何でしょう?」

男「好みの言い回しだ。 作家が自分の命を疎かにしたのは許そう」

作家「……あらま、怒ってらっしゃっていたとは恐ろしい」

男「怒ったら誰でも恐ろしいだろ?」

作家(まだ、全うな感情が残ってるのが恐ろしいのですよ)フフフッ
187 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/08/15(木) 21:18:57.93 ID:kGYbpTs30
娼婦「あら?」

男「やぁ」

娼婦「やっぱり、貴方だったのね」

男「初老さんに頼んで建ててもらった」

娼婦「そう」フフフッ

男「どうした?」

娼婦「いえ、初老先生は驚いたのじゃなくて? 貴方を悪党と思っているようだしね」

男「……俺はただの木こりだ」

娼婦「あら? 喫茶店の店長さんでしょ」

男「あぁ、そうか……そうだった、店長だ」

娼婦「さて、少し失礼して」つ花

男「花を添えていたのはやはりお前か」

娼婦「掃除していたのは貴方ね」

【大男の墓】
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/08/15(木) 21:32:02.18 ID:wgn/gxwo0
やっと続き見れた・・・長かった・・・
189 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/08/31(土) 08:07:57.28 ID:TBakYqI6O
娼婦「……」

男「……」

娼婦「嗤えるでしょ? 私は彼に本気で恋をしていたのよ」

男「そうか」

娼婦「私と関わった男は皆、不幸な最期を遂げる。 開き直って悪女なんて役に甘んじていたわ」

男「そうか」

娼婦「大男なら死なないって、失うことは無いって想ってたのにね」クスッ

男「そうか」

娼婦「……」

男「俺が憎いか?」

娼婦「……貴方のお陰で彼は幸せな最期を遂げられた。 私といたら心が腐敗してたのでしょう」

男「どうだろうな」

娼婦「貴方って何処までも優しいのね」

男「」
190 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/08/31(土) 08:27:21.16 ID:TBakYqI6O
男「優しい?」

娼婦「大男の死を本気で悲しんでいるじゃない」

男「俺が優しい?」

娼婦「お墓まで建てて供養してくれたじゃない」

男「俺が優しい?」

娼婦「作家が自らの命を危険に晒したのを怒っていたのでしょう?」

男「俺が優しい?」

娼婦「この国の奴隷市は大きいわ」

男「俺が優しい?」

娼婦「そんな中からただの偶然で許嫁を見つけ出せるかしら?」

男「俺は……俺は……」

娼婦「ねぇ、ずっと気になっていたのよ」

男「俺は……何なんだ」

娼婦「いつも首にさげてる木の飾りは誰に貰ったものなのかしら」クスクス

男「」

娼婦「貴方って残虐非道なのに、悪では無いのね」
191 : ◆Q6fo44/dLk [saga]:2019/08/31(土) 08:33:40.24 ID:TBakYqI6O
『見つけてくれてありがとう』

『苦しまずに死ねる薬? 作れなくは無いが』

『私は汚されてしまったわ』

『そんな退屈なモノでどう遊ぶつもりだい?』

『お願い……私を殺して』

『自殺なんてしないよな?』

『……ふふ、駄目。 貴方には生きてほしいの』

『怒鳴らないでおくれよ、君らしくない』

『ありがとう、愛しているわ』

男「俺も……俺は……」ブツブツ

『最期に貴方に会えて幸せだった』
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/03/02(月) 21:46:49.87 ID:UIatwJh1o
待ってるよ
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