魔女娘「あなたは何ができるの?」サキュバス「うっふーんなこと」

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8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/10/24(木) 18:37:13.27 ID:Os+LDEiDO
まだかな
9 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2019/10/27(日) 18:52:51.62 ID:X5n/noWX0
魔女娘「うう……ん、ふああよく寝た」

魔女娘「……? ここどこ?」

魔女娘「やけに豪華なベッド……貴族が使うベッドみたい。ふかふか」

魔女娘「……どうせふかふかならベッドより焼き立てのパンのほうがいいなぁ」

魔女娘「ベッドみたいな大きさのふかふかなパン……食べたいなあ」グウゥ


魔女娘「……おなか、空いたなあ……ん?」


焼き立てパン「」ホクホク


魔女娘「なんでベッドの上に焼き立てのパンが……」ぐう

魔女娘「……。……食べちゃえ」


焼き立てパン「ち、ちょっとまってぇ—―!」


魔女娘「パンがしゃっべた!?」


焼き立てパン「すごいねあなた、この状況で食欲優先させるなんて」


魔女娘「生きたパン……絞めたことないな」


焼き立てパン「食べることしか考えてない!?」

焼き立てパン「まってまって!? 元の姿に戻るから—―」ボフンッ


魔女娘「うっ……けほけほ……あれ、パンは?」


???「どうやらあたしのマスターは色気より食い気みたいね」


魔女娘「……誰? パンは?」


???「さっき自己紹介したけど……まあ忘れちゃうか」

サキュバス「じゃあ改めまして、あたしはサキュバス。あなたの使い魔よ」


魔女娘「……私のパンは?」


サキュバス「ごめんなさいね。あの姿はマスターの欲望をもとに形作った幻想なの」

サキュバス「普通は性欲マシマシ汁だくだくな理想の美形になるんだけど……性欲よりも食欲が上回った人なんて聞いたことない」

サキュバス「……欲を助長させる暗示もかけてたのに」ボソ


魔女娘「そんな……食べたかったパン……」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/10/27(日) 18:58:42.61 ID:hhs88MhUo
良いね食いしん坊少女
11 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2019/10/27(日) 20:23:58.87 ID:X5n/noWX0
サキュバス「ねえマスター、ここがどこだか気にならないの?」


魔女娘「そういえば、こんな豪華なベッドで寝たことない、私」

魔女娘「学園の保健室……な訳ないか。貴族みたいなベッドだし……それに……—―!!?」ハッ


魔女娘「ドアがない、窓も……どころか、ベッド以外に何もない!」


サキュバス「うふふ、やっと気づいたみたいね」ニヤリ

サキュバス「そう、ここには出口なんてない—―」ドサッ


魔女娘「うわっ—―?!」ドサッ

魔女娘(押し倒され—―)


サキュバス「ここはあなたの夢の中」

サキュバス「なにをしてもいい。なにをしても許される」

サキュバス「ねえ、見せて……あなたの欲を――」


サキュバス「醜く、愚かで、度し難い――その陰鬱とした劣情を――!!」


魔女娘「……っ」ガクン

魔女娘「な、にこれ……力が……」


サキュバス「言ったでしょう。ここはあなたの夢の中」

サキュバス「あたしが創ったあなたの夢。全てはあたしの思った通り」


サキュバス「抵抗しないで。どうせ逃げ場はないのだから」

サキュバス「受け入れて。――今まで一度も体験したことのない甘美な夢を見せてあげる」
12 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:31:48.96 ID:keKnuKXkO
――魔女娘視点。

 
 これまで一度も嗅いだことのない甘い匂いが鼻を擽る。

 どんなチョコレートよりも蕩けていて、どんな花蜜よりも粘執的な。

 そんな匂いに、私の心はふにゃふにゃに砕けてしまった。


 その匂いは目の前の女性から漂っている。

 美しい女性だ。

 二重の瞳に、熟れたリンゴを思わせる瑞々しい唇。カモシカのようにしなやかに伸びる手足は小麦のような健康的な色をしていた。


 そんな彼女のなかで一番心惹かれたのは、貴族が身に付けているような宝石――アメジストを思わせる紫紺の瞳。

 くっきりとした目尻にしっかりと嵌まったその瞳は、逸らされることなくまっすぐに私を射抜いている。

13 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:32:51.19 ID:keKnuKXkO
 今までで出会ったことのない美貌を目の当たりにして、胸はこれ以上ないくらいに高鳴った。

 こんな気持ち、初めて。

 今まで貧困に喘ぎ、日々の食べ物にも困る生活をしてきて、色恋を知る余裕もなかった。

 魔法の適性があるのが分かり、両親に身売り同然で貴族に売られ、養子になった今となっても……今さら、恋愛なんかに興味が持てなかった。


 だから、これが初めて。

 他人に見惚れるなんてことは――。

14 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:34:23.22 ID:keKnuKXkO

サキュバス「とまどってるの? 安心して、怖いことじゃないよ」


 脳みそを溶かす甘い声。

 その甘美さを真っ先に受け止めた耳から、頬をつたい、首もとまで熱が伝播する。ぞっと腕が粟立った。


 その麗しい腕が私へと伸び、捕らえる。

 ブラウスのボタンが上から一つ一つ外される。

 真白い服が剥かれ、幼少の折りに怪我したきり消えない傷の、決して綺麗とは言えない肌が空気に触れる。


サキュバス「かわいいおっぱいだね。ふふっ子供みたい」


 その言葉に、少しばかり熱が揺らぎ、うっと眉根を寄せる。


 私はあまり自分の事が好きではない。

 育ちの悪い貧相な体だけならまだしも、あちこちに刻まれた傷。

 例え貴族の一端になろうとも、例え魔法の腕前が凄かろうとも、この思いだけは消えやしないだろう。


 だから、目の前の綺麗な女性に、私の裸を見られるのは嫌だった。

15 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:35:37.73 ID:keKnuKXkO
魔女娘「ゃ……見ないで……」


 手を振り、振り払おうとするもその行為に意味などなかった。

 弱々しい私の力は、すぐ押さえられてしまった。

 私の腕を掴んだサキュバスは言う。


サキュバス「抵抗しないで、恥ずかしがらないで。あなたの身体、とても素敵だよ」 


 力強い視線に射抜かれ怯み、力が完全に抜ける。

 だけど、その瞳はやはり綺麗だった。

 そんな瞳をみていると、なんだか抵抗する気が失せてくる。

 むしろ彼女が見たいと言うのなら、自分から服を脱ぐべきではないかとすら思えてくる。

 思う前に身体は動いていた。


魔女娘「笑わ……ないでよ……」


 そう言った時には既にブラウスは腕から抜け落ち、下着のない私の肢体は全てさらけ出されていた。

16 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:36:57.96 ID:keKnuKXkO
サキュバス「……ふふっ、綺麗だよ、すっごくね」


 滑らかで細い指が伸び、私の胸を――薄い胸板の上に走っている切り傷を撫でる。


サキュバス「どうしたの、これ?」


魔女娘「……昔、男の人に襲われて、そのときに……」


サキュバス「へぇ……」


 サキュバスのか細い指が傷痕を嘗める。

 こそばゆさに身が震える。

 

サキュバス「この傷、嫌い?」


魔女娘「きらい……醜いでしょ」


サキュバス「そうでもないけど……まあ好きにはなれないか、乙女だもの」


 顔が胸にぐいっと近づく。吐息がかかり、どくんどくんと胸の上下が速くなる。

17 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:38:49.45 ID:keKnuKXkO
 ちろり、と軟らかで湿り気の帯びた感触が胸に、そこに走った傷痕に、与えられた。


 思わず、ひゃっとあられもない声が出てしまう。


サキュバス「かわいい声……これ、好き?」


魔女娘「……きらい」

 嫌いだった。他人に見られたくない箇所だった。そんな場所を、私は今、舐められている。
 目の前の美しい女性に舐められている。
 
 猫のようにチロチロと走る粘体は、今までに感じたことのない痺れを産む。
 
魔女娘「ひゃあ……あぁ、ん」
 
 我慢できずに、上げたことのない声を上げてしまう。

 こんなの知らない。
 こんな媚びたような声を上げる自分も、胸に走る気持ちよさも、嫌いなところを好きにされる疼痛も……美しい人に弄ばれる甘さも。

サキュバス「ふふっ、月並な言い方だけど、体は正直だねぇ。サキュバス冥利に尽きるなぁ」
 
 ぺろりと舌なめずりする妖魔。
 妖しく光ったその瞳は、弱った獲物を目の前にして喜悦に震える獣のよう。
 竦んでしまって何もできない。
 ただ、与えられている快楽の渦に流されるのみ。
 
18 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:39:44.79 ID:keKnuKXkO
サキュバス「出来上がってきたねぇ……じゃあ、こっちもイッてみようか」
 
魔女娘「――はへぇ?!」
 
 
 不意に、細く滑らかな指がお腹を撫でると、ツツっとそのまま下に伸びた。
 生え揃ってない子供みたいな淡い茂みの奥。
 ぬらりと汗ではない汁、淫らな液の溢れる一筋の割れ目。
 
 誰にも触れられたことのない箇所へと手を伸ばされた。
 

魔女娘「だ、だめ……そこ、おしっこのところ……汚いよ……」
 
サキュバス「ふふ、そんなことないよ」

 そう言ってサキュバスは遠慮なく敏感なところに指を突き刺す。
 
サキュバス「うふふ、入っちゃった。見て、分かる? マスターのきつきつなおまんこに私の指、出たり入ったり」

魔女娘「う、あぁん……ぁっあああん――!」
 
 欠けていたところを埋められる感覚に喜びの艶声がでてしまう。
 
 サキュバスが少し指を動かしただけで、グッチュグチュとお股から水音が溢れ出す。即ちそれ程までに、濡れていたということで……。
 
19 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:40:35.81 ID:keKnuKXkO

魔女娘「う、わぁ……はずかし、ぁっ……ああん、みない、でぇ――」
 
 今自分はどんな表情をしているのだろう。
 初対面の女性……しかも、顔の良い人に好きに弄ばれるなんて……。
 
 ぐしゃりと両手で顔を抑える。間違いなくだらしない顔になっている。そんな顔見せたくなかった。
 恥ずかしさで頭がおかしくなりそうだった。
 
 
20 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:41:36.44 ID:keKnuKXkO
 ぐちゅぐちゅ。
 私の女性器から奏でられる淫らな水音は勢いを増す。私の喘ぎと、サキュバスの弄笑が合わさった蠱惑の三重奏。

サキュバス「かわいいね、マスター。そんなに気持ちいいんだぁ……口からだらしなくよだれ垂らして……」
 
魔女娘「うへぁ……っあ、ひ」
 
サキュバス「まともに言葉も出せないか……でもまだまだ――」
 
魔女娘「イっ――あああっ!! なにこれ?? なにこへ?? あたま、おかしくなりゅ!!!」
 
サキュバス「うふふ、ここが気持ちいんだ? もっとやってあげるね」
 
魔女娘「やらぁ!? や、やだやだ!! ああぁっ、きもひ、よすぎ……! しらない、こんなの、しらなぃぃぃっ!!」
 
 こつこつこつ! 
 サキュバスの指、激しくなって。
 わたしの、気持ちいいところ、見つけられては、ぐちゃぐちゃになるくらいかき乱して――。
 
魔女娘「あ、あああっあへあへぇ……! あああんっふへぇえ――!!」
 
 脳が溶ける。もう、獣みたいな声しか出せない。
 限界だった。
 
21 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/02/22(土) 00:42:25.45 ID:keKnuKXkO
サキュバス「もう、イきそう? イきそうね! いいよ、ぐちゅぐちゅおまんこ爆発させて! 私に挨拶代わりの始めまして本気イキみせて!」
 
 私が限界になっているのを感じ取ったのか、攻める手の激しさが増す。
 脳の奥でチカチカとスパークが走った。電流は増幅し、私の体を焦がし尽くした。
 
魔女娘「あっ、あ、ぁっあ――あ、嗚呼アああぁっアアァああッッッ!!」
 
 溢れ出た快楽は、脳を犯し、体中を走り抜け、サキュバスの指が差し込まれた膣で爆発した。

魔女娘「――っっ!!!」
 
 高いところから降りてこれない。
 それほどまでに深い絶頂。
 呼吸さえ忘れてしまうほどだった。
 
22 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/02/22(土) 00:43:37.08 ID:keKnuKXkO
サキュバス「うふふ、かわいい」
 
 彼女の声が耳に心地良い。
 高いところにいた意識がふわりふわりと落ちてくる。
 気だるさが体を蝕み、意識が更に下へと落ちていく。
 まぶたが重くなってきた。
 
サキュバス「淫催眠も使ったけど、ここまで乱れてくれるんだ。くふふ、当たりのマスターだあ」
 
魔女娘「サキュバス……?」
 
サキュバス「ふふ、これからも末永くよろしくね、マイマスター」
 
 薄れゆく意識の中、妖艶に微笑むサキュバスの顔が印象的だった。
 その端整な唇を歪ませて言う。
 
サキュバス「次は現実で楽しみましょ。ね、マスター」
 
 
――――――
――――
――
 
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/02/22(土) 01:27:22.01 ID:5MPB+ZAEo
うおおお再起動してる!
ありがとう!!
続き待ってる!
24 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:05:55.14 ID:JETatQBBO
魔女娘「――――?!」ガバッ
 

ライバル魔女「魔女娘さんっ?!」
 
 
友魔女「やっと起きた!……大丈夫、魔女娘?」
 
 
ライバル魔女「大丈夫なわけありませんわ!! あんなにうなされて……汗もこんなに……」


友魔女「落ち着きなよ、ライバル魔女……」


ライバル魔女「落ち着けるわけ無いでしょう! 魔女娘さんが倒れたんですのよ!」


友魔女「その魔女娘が目覚めたんだから落ち着けってんだ……」
25 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:06:54.42 ID:JETatQBBO
友魔女「……と、魔女娘、今の状況分かる? 授業中に倒れたから保健室に連れてきたんだけど……」


魔女娘「……あの人は……?」


ライバル魔女「え?」


魔女娘「あの人は、どこ?」


友魔女「誰のことだい……ああ、使い魔か。彼女なら先生が話があるって、連れて行った――」


魔女娘「――まずいっ!!」ダッ


ライバル魔女「ちょっと、魔女娘さん! どこに行く気ですの?! 倒れたのですから安静に――」


魔女娘「そんなこと、言ってる場合じゃない……」

魔女娘「とんでもないの呼び出しちゃった……」

26 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:08:10.41 ID:JETatQBBO
ライバル魔女「どういうことですの!?」


魔女娘「やっぱり触媒もらっとけば良かったってこと――!」


ライバル魔女「ほら――――ほら! だから言ったじゃありませんの! あの時ワタクシに一生尽くすと誓っていれば、こんなことにはならなかったのですわ!」

ライバル魔女「今からでも遅くありませんわ。泣いて頭を垂れながら、ライバル魔女様を愛しております、これから一生、身も心も全て捧げますと言えたら、使い魔を再召喚するときに触媒を下賜してあげてもよろしくてよ――!」


魔女娘「……」


友魔女「つまり魔女娘が倒れたのは、呼び出した使い魔のせいってこと?」


魔女娘「そうじゃない。単純に私の魔力不足。……けど、放置したら、まずいことになる……」


ライバル魔女「ちょっとお!? 無視しないでくださる?!」
27 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:09:17.00 ID:JETatQBBO
ライバル魔女「そもそも、何を焦っているんですの……? 貴女らしくもない……。いったい貴女は何を呼び出したんですの?」


友魔女「ヒューマンタイプだよね。君の魔力をすべて吸い取るなんて……少なくともただの使い魔じゃないね……」


魔女娘「……私が、呼び出したのは――」


ドア「」ガチャ


サキュバス「――お、目が覚めたみたいだね、マスター」


魔女娘「サキュバス……」


ライバル魔女「さ、サキュバス――っ!?」


サキュバス「あら? どうも〜」


ライバル魔女「サキュバスって……あのサキュバスですの?!」


サキュバス「どのサキュバスか知らんけど……そのサキュバスだと思うよ」


友魔女「……じゃあ、倒れた魔女娘がうなされてたのって」


サキュバス「ん? ああ……私の支配した夢の中の出来事は、現実の肉体にも影響するからね」

サキュバス「マスターのパンツ、ぐしょぐしょなんじゃない?」


魔女娘「――――」バッ

魔女娘「……!!!」カアァッ


ライバル魔女「え? え?」

28 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:10:15.15 ID:JETatQBBO
魔女娘「……サキュバ――」グウゥ

魔女娘「……お腹、へった……」


友魔女「こんなときに……キミってやつは……」


サキュバス「まあまあ……ほら、どうぞマスター。ここに来る前に食堂によって焼き立てパン恵んで貰ったの」


魔女娘「パン! 焼き立て!!」ピコーン


サキュバス「うふふ、食事は大事よね――――よく分かるわ」


サキュバス「さ、夢にまで見た焼き立てパンどうぞ」


魔女娘「ありがとう!」パクパク


29 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:11:03.21 ID:JETatQBBO
友魔女「で、サキュバスさん。貴女、先生に呼び出されてたけど、使い魔になるってことでいいのかい?」


サキュバス「そうそう。元いた場所に帰りますかって聞かれたけどね。帰る故郷もないし、面白そうだし――なによりご飯に困らなくなりそうだし」

サキュバス「腹ペコご主人様の使い魔をすることにしたの。これからよろしくね、ご主人様のお友達さん」


ライバル魔女「ワタクシは認めませんわよ!!」


サキュバス「ん? 君は……ご主人様の友達その2さん」


ライバル魔女「友達じゃありませんわ!!」

ライバル魔女「ワタクシと魔女娘さんはライバルです。そこのところ履き違え無いようよろしくお願いいたしますわ、この淫獣!」


サキュバス「淫獣……」


ライバル魔女「ええ! そうですともそうですとも、魔女娘さんにいやらしいことをしたのでしょう?! ワタクシだってしたことないのに! あなたなんか淫獣ですわ!」
30 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:12:05.99 ID:JETatQBBO
友魔女「おい……あんまり挑発しちゃ――」


サキュバス「くふふ、淫獣……淫獣って、ふふふ――あははっ」

サキュバス「なかなかどうして笑かしてくれる……」


ライバル魔女「な、なんですの……突然笑いだして……」


サキュバス「いえいえごめんなさいね、くふふ……ツボに入っただけだから気にしないで」

サキュバス「まあ、仲良くしていきましょ、お友達さん達」


ライバル魔女「お断りですわ!!」


友魔女「……まあ、変なことしないならいいかな……」


魔女娘「ねえ、パンはもう無いの?」


サキュバス「ないよ」


魔女娘「そう。ごちそうさまでした」

魔女娘「まだお腹減ってるから学食に食べに行ってくる」


友魔女「ほんと、キミってやつは……」

31 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/09(木) 12:13:02.11 ID:JETatQBBO
ライバル魔女「なんとかなりませんの、その暴食――食事なら私専属のシェフに一級のものを作らせますわ。ぜひワタクシの部屋まで」


魔女娘「いいや。学食いくから。まだお昼過ぎくらいでしょ? 今からシェフに作ってもらわなくても学食で十分」


ライバル魔女「なぜ!? 淫獣の持ってきた得体のしれないパンは食べられて、ワタクシの用意した食事は食べないの?!」


魔女娘「ポイント貯めたいから。――一緒にご飯食べるなら早く行こう。ぺこぺこなの、お腹」


友魔女「じゃあ私はご一緒するよ。倒れたキミを看てたから、何も食べてないんだ。それに良い使い魔を召喚したくて、ゲン担ぎに朝ご飯も抜いてきていてね。かく言う私もお腹ぺこぺこなの」


ライバル魔女「そんな……高々学食の割引ポイント如きに、ワタクシ(のシェフ)が負けるなんて……」

ライバル魔女「ああもう分かりましたわ! 行きます! ワタクシも学食に行きますわ!」

ライバル魔女「魔女娘さん! ワタクシの分のポイントも欲しいと――どうしても欲しいというのなら、その頭を地面に擦り付け、ライバル魔女様おしたい申しております、一生永久にお側に居させてください、と媚へつらい涙ながらに懇願できたら差し上げても宜しくてよ!」


魔女娘「うん、いらない」


ライバル魔女「もうっ!!」

32 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/04/09(木) 12:14:18.47 ID:JETatQBBO
サキュバス「――くふふ、ほんと面白いね、アナタ達」


魔女娘「で、サキュバスは一緒に来るの? 来るんならポイントちょうだい」


サキュバス「ご一緒もするし、ポイントぐらい上げてもいいけど、その前に――」

サキュバス「パンツくらい替えてきたら?」


魔女娘「……漏らしたわけじゃないし、ご飯を優先してもいいと思うの」


友魔女「替えてきなよ、みっともない」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/09(木) 12:28:42.66 ID:Ul/T1AdBO
待っててよかっ!!!た!
34 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:01:59.06 ID:5EZ9OMUe0
――――――
――――
――


――???視点


 気づけば一面真っ白な世界にいた。

「いやーまいったねぇ。まさか死んじゃうなんて」


 真っ白な世界に一点のノイズ。
 サンタさんみたいにヒゲをもっさりと蓄えた老人が、私の目の前でそうぼやいていた。


???「どこだ、ここ?」


「死後の世界というやつだね。つまりお前さんは死んだんだ」


 私の呟きに答えたのは件のジジイ。
 その予定調和じみた薄っぺらい言葉と、使い倒されて最早神秘さの欠片もない一面真っ白なこの空間に……ああ、これはつまりそういうことなんだろうなぁと思った。

 そのジジイは遠くを見るように目を細め、私を凝視した。

「自分が死んだのに驚かないなんて大物だねぇ」

???「こういうラノベが流行ってるんですよ。死ぬ予定のなかった人が神様のミスで死んじゃって、お詫びとして別の世界に転生させてくれるってやつ」

 小学生が考えたみたいなチート能力を特典として付けてね、なんて嘯くと、ジジイは目を更に細め、笑った。


「理解が早くて助かるよ。そのとおり、君には君のよく知る異世界に転生してもらいたい」


???「ってことは、転生先は、私がやってたゲームの世界、あたりかな?」


「察しが良いのは美点だね。『乙女のハートは恋の魔法』。このゲームのことはよく知ってるよね」
35 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:03:07.44 ID:5EZ9OMUe0
 頷き一つ。
 『乙女のハートは恋の魔法』。略しておつ恋は、私が攻略と二次創作に青春を捧げ、何だったら社会人になっても同人活動を続けていた程、どハマリしたゲームだ。
 貴族と、一部の魔力がある平民しか入れない魔法学園を舞台に、たまたま魔力の才能に目覚めた町娘の主人公と貴族との恋愛を描いた乙女ゲーム。

「そのゲームと似たような世界にイレギュラーが起きちゃって、本来の歴史から外れてきているんだ」


???「そのイレギュラーをどうにかしろと?」


「そういうこと。本来あるべき歴史にするために、歴史の導となってほしいんだ」


???「分かったよ。で、私は誰に転生するの? 悪役令嬢? それともモブ?」

「いんや、そうじゃない」


 自称神のジジイが手をかざすと、私の足元に魔法陣が浮かび上がった。


「君が転生するのは、ヒロイン。つまり主人公だ」


 瞬間、意識が闇に引っ張られた。


――
――――
――――――

36 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:04:14.04 ID:5EZ9OMUe0
――食堂のテラス


魔女娘「もぐもぐ、んん〜仔牛さんうまうま」


ライバル魔女「本当によく食べますわね……」

ライバル魔女「さ、ドラゴンちゃん、あなたも一杯お食べなさい。強くなるのですよ」


魔女娘「そうそう。一杯食べて美味しくなってね」


ライバル魔女「ちょっと! ワタクシの使い魔を非常食として見ないでくださいまし!」


魔女娘「トカゲの尻尾は切っても再生するよ」


ライバル魔女「だからといって食べていいわけではありませんわ! あとしれっとドラゴンちゃんのことをトカゲっていうの止めてくださる!?」


友魔女「ホントにキミってやつは、食い意地張ってるなぁ」


魔女娘「ん、食べることは生きることだから」キリッ


友魔女「なにカッコつけて言ってるんだか……」

37 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:05:37.41 ID:5EZ9OMUe0
魔女娘「あ、そうそう。今更だけど、友魔女はちゃんと使い魔召喚できた? 私が倒れたいざこざで流れたりしてないよね?」


友魔女「ちゃんと召喚できたよ。――ほら、この子」

黒猫「にゃーん」


魔女娘「ネコだ。可愛いね」


ライバル魔女「あら、なかなか高貴な身立ちではありませんか? まあ、うちのドラゴンちゃんの方が見目麗しいですけれど」


サキュバス「ほれ、にゃんこ、おて」


黒猫「にゃ」プイ


サキュバス「やん、いけずぅ」

38 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:06:21.97 ID:5EZ9OMUe0
???「あ、先輩たち、こんにちは」


友魔女「ああ、キミか。こんにちは、後輩ちゃん」


ライバル魔女「ごきげんうるわしゅう、後輩さん。壮健なご様子で何よりですわ」


後輩「もうからかわないでくださいよ、ライバル魔女先輩。私なんて魔法が使えるだけのただの町娘ですよ。そんなに畏まって挨拶されると萎縮しちゃいます」


ライバル魔女「あらここは貴族の通う学校ですのよ。これくらい当たり前ですわ」


???「おい、後輩。どこにいる」


後輩「あ、王子様こちらです」


王子「そこにいたのか。……なんでお前もいる」ギロッ


ライバル魔女「あら、ワタクシだってこの学園の生徒ですわよ。学食を使う権利はありますわ」


公爵「おーい、後輩ちゃんに王子ぃー、ボクのことをおいていかないでくれよー」

公爵「って、あちゃーライバル魔女さんもいる」


ライバル魔女「なんですの、よってたかって。私がいるのになにか問題がありますの」


公爵「ないけどさぁ……」

39 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:07:03.66 ID:5EZ9OMUe0
王子「ふん、お前は卑しいからな。元婚約者のお前が、嫉妬から俺の最愛の人を傷つける、なんてこともあるんじゃないかと思ってな」


ライバル魔女「あら、ごあいにく様。ワタクシ貴方に粉砂糖程の未練もございませんの」


後輩「ちょ、ちょっと二人とも仲良くしよ。ね?」


ライバル魔女「あら、ワタクシ別に争いたいわけではありませんよ」


王子「どうだか。――ほら、行くぞ、後輩」


後輩「あ、ちょっと待ってください王子様」

後輩「あの、魔女娘さん? 大丈夫……そうですね」


魔女娘「んぐんぐ……っぷは! 何が? 見ての通り2匹目の仔牛をやっつけてるところなの。用があるなら手短に」


後輩「いえ、授業中倒れたと聞いたから大丈夫かな、と……まあ要らない心配だったみたいですね」


魔女娘「まあね」ガツガツ

40 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:08:05.55 ID:5EZ9OMUe0
王子「おい、お前さっきから無礼だぞ。食事をしながら、俺の後輩と話すな」



ライバル魔女「…………」

ライバル魔女「……あら、『俺の後輩さん』は確か、ただの町娘だったはず。少しくらい砕けた態度でもよろしいんじゃなくて」


王子「ふん、今はまだ、な。いずれ俺の妻となるのだ。その時には女王――つまり、国の母となるのだ。言わば後輩は『国の幼母』だ。だというのに、その態度!」

王子「そもそもだ。人と話すときに食事をするな、物を噛むな、手を止めろ! 話す相手が町娘だ王族だ以前の問題だ!」


魔女娘「……モグモグ」


王子「おいこら! 話を聞け! 人としてのマナーの問題だ!」


ライバル魔女「……」


友魔女「まあ、何も言えないよね。これに関しては王子様が正しいし」


ライバル魔女「まったく……もう少しレディとして相応しい身の振り方を覚えてほしいですわ」


サキュバス「まあまあ、そんなにカッカッしないで――」


王子「誰だ貴様は――!」


サキュバス「これはこれは、お初にお目にかかります。そこの魔女娘の使い魔となりました。サキュバスと申します。以後、お見知りおきを」


王子「使い魔風情が、この俺に――な……に、ぇ――?」


サキュバス「あら、私の顔になにかついています?」


王子「あ、いや……その……」カアアッ///


サキュバス「あら、お顔が赤くなりましたけど大丈夫ですか? お熱とか……」ソッ


王子「いい! 触るな!!」バッ

王子「俺はもう行く! 後輩も早くこい!!」


後輩「ええ……はい。――それじゃあ皆さんまた……」


公爵「ちょっと王子、急にどうしたのさ――ボクも行くから待って〜」タタタッ

41 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:10:18.90 ID:5EZ9OMUe0
友魔女「……何したの…………?」


サキュバス「面倒くさいことになりそうだったから、ちょっと軽い魅了と催眠をね」


友魔女「…………とんでもないな……」


魔女娘「……腹立つ」モグモグ


友魔女「こっちはこっちで、どうしたのさ」


魔女娘「あいつ、ライバル魔女のこと一方的に振っておいて、どの面下げてあんなこと言えるんだか」モグモグ


ライバル魔女「魔女娘さん……」

ライバル魔女「いいんですわ! あんな男こっちから願い下げですの!」


ライバル魔女「でもそれはそれとして、食べながらしゃべるのはおよしなさいな。みっともありませんわ!」


42 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:11:37.91 ID:5EZ9OMUe0
ライバル魔女「ふう……ドラゴンちゃんお腹一杯ですの?」


ドラゴン「ぐるるる……」コクコク


ライバル魔女「そのようですわね」


友魔女「私も食べた食べた。お腹いっぱい」


魔女娘「……私は、まだ…………」


友魔女「え? 冗談だろ? 君、結局800グラムのステーキを3枚も食べてただろ」


魔女娘「でも、まだ――」グウゥ


ライバル魔女「ちょっと、魔女娘さん……どうしたんですの?」


魔女娘「分かんない……分かんないけど、お腹が空くの……」


魔女娘「うっ――もう、だめ……」

魔女娘「――――」バタン


ライバル魔女「魔女娘さん!?」ダキッ

友魔女「とりあえず、そこのベンチに横にさせて……」

43 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:12:33.29 ID:5EZ9OMUe0
サキュバス「……精気が足りてない……」


友魔女「なんだって?」


サキュバス「精気よ、精気。生気と言い換えてもいいけど……」

サキュバス「字面の通り、生き物を生き物足らしめるのに必要なものよ。精気が不足するということは、即ち生き物としての死を意味するわ」

サキュバス「――精気は、私達サキュバスの主食でもあるわ」


友魔女「ちょっと待て……サキュバス、お前さっき魔女娘に……その、捕食行為おこなってたよな……?」


ライバル魔女「じゃあ魔女娘さんか、その精気が不足しているのは……」


サキュバス「……確かに、寝てる間にマスターからはちょっと精気を頂いたけど……」

サキュバス「それでもパンを一斤でも食べればすぐに補填されるくらいの量――」

サキュバス「禁断症状が出るほどじゃない。だから……こんなこと、起こるはずない……」


友魔女「じゃあなんで、起こるはずないことが――」


後輩「それは、魔女娘先輩とサキュバスさんの相性が良かったからですよ」

44 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:15:33.69 ID:5EZ9OMUe0
友魔女「――?! 後輩ちゃん……? どうして?」


後輩「やっぱり心配だったんで戻ってきちゃいました!」

後輩「あ、安心してください。王子達はおいてきましたんで――」


ライバル魔女「そんなことより、どういうことですの!? ――相性がよかったって」


後輩「そのままの意味ですよ」

後輩「極稀に使い魔と主人の相性が良すぎて、主人が使い魔の特性と同調することがあるんです」

後輩「――つまり、魔女娘先輩もサキュバスになってるってことですね」


友魔女「はあっ?! そんな、聞いたことがない……!」


後輩「先輩が聞いたことなくても、実際に魔女娘先輩は精気欠乏によって倒れました」

後輩「飢餓状態のサキュバスと同じ状態ですよ、これ」

後輩「きっと初めてのサキュバスとしての空腹に体が慣れてないんでしょうね」

後輩「先輩はそれに気づかずに、一心不乱にご飯を食べてましたけど、それだけじゃ精気を回復するのには足りなかったみたいですね」

45 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/04/15(水) 10:16:39.49 ID:5EZ9OMUe0
サキュバス「…………」

サキュバス「なら、サキュバスとしての食事をすれば、良いってことよね」


後輩「そうですね。お腹いっぱいになって精気(えいよう)が体中に回れば、自然と目を覚ますと思います」


友魔女「食事……サキュバスとしての……」


ライバル魔女「――――」

ライバル魔女「ワタクシの部屋に運びましょう」

ライバル魔女「魔女娘さんはワタクシの生涯のライバルですもの。放っておけませんわ」

ライバル魔女「――ワタクシがなんとかします……」


後輩「ソですか。でも、魔女娘先輩は飢餓状態になるほどの空腹です。ライバル魔女先輩一人が精気を提供しても満たされるかどうか……下手したら共倒れになりますよ」


友魔女「……私も行くよ。魔女娘は私の友達だ。こんなことで亡くすわけにはいかない」


サキュバス「私も行くわ。お二人にとっては邪魔かもしれないけど、きっと初めての吸精で勝手がわからないと思うから……私が教えるわ」


後輩「それなら安心ですね」ウン
46 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/04/15(水) 10:18:10.90 ID:5EZ9OMUe0
後輩「さ、決まったのなら急いだほうが良いですよ。魔女娘先輩の命のリミットは刻々と近づいて来てるんですから」


ライバル魔女「急ぎますわよ!!」

ライバル魔女「魔女娘さんはドラゴンちゃんに運ばせますわ。背中に乗せて――!」


サキュバス「お願いね、ドラゴンちゃん」


ドラゴン「キュルルル――!」


友魔女「…………」


ライバル魔女「ほら、友魔女さんも早く――!」


友魔女「――ねぇ、後輩ちゃん……」


後輩「なんですか、先輩? 早くしないと魔女娘さんが手遅れになりますよ」


友魔女「キミ、なんでそんなに詳しいんだ……?」

友魔女「使い魔との特性の同調なんて聞いたことがない……なんでキミは知ってたんだ……?」


後輩「実は私、勉強熱心なガリ勉ちゃんなんですよ。そうは見えないでしょうけど――」


ライバル魔女「友魔女さん――!!」


後輩「ほら、お友達が呼んでいますよ。早く行ったほうがいいですよ」


友魔女「……また、今度話を聞きたい」

友魔女「――ごめん。遅れた早く行こう」タタッ


後輩「…………」

後輩「――なかなかどうして……思い通りにはいかないねぇ…………」
47 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/13(水) 05:53:20.86 ID:Gzaj7nTn0
――ライバル魔女視点

――――――
――――
――


 昔のワタクシは、魔女娘さんの事が気に食わなくて仕方がありませんでした。
 その理由はとても簡単で、今にして思えば鼻で笑えるほどのくだらない理由。

 ――ワタクシが入学試験で負けたから。

 たまたま魔法適正が高いからというだけで貴族の仲間入りをした平民上がりの小娘が、たまたま入学試験でワタクシより上になった。
 運だけの相手に負けた。
 当時のワタクシはそんなことで魔女娘さんのことを目の敵にし……思い返すのも恥ずかしいですが、嫌がらせを一杯してしまいました。
48 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/13(水) 05:54:07.28 ID:Gzaj7nTn0
 それが変わったのは日々彼女に触れていくにつれ、彼女も努力していることに気づいたから。
 そもそもが平民生まれだというのに、突然、貴族社会の縮図となっている学園に放り込まれて、それでも屈することなく懸命に生きていくには、とてつもない努力とどんな理不尽にも屈することのない精神力が必要となってくる。
 魔女娘さんは、その二つを持っていました。

 だから、彼女と接するにつれて、気に食わないという気持ちが、だんだんと認めてあげてもいいかなという気持ちに心変わりしていくのも必然というもの。

 彼女が努力した結果、ワタクシよりも良い成績を出すというのなら、ワタクシはその倍の努力をして魔女娘さんの事を打ち負かせばいい。


 そう。ワタクシはいつしか魔女娘さんのことをライバルと認めるようになりました。

49 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/13(水) 05:55:07.44 ID:Gzaj7nTn0
 そして、ワタクシにとっての運命のあの日。
 すなわち、ワタクシが王子から婚約破棄を言い渡された日。
 その日、魔女娘さんはただのライバルではなくなりました。


 他の女性の事が好きになったからという理由で告げられた一方的な婚約破棄。
 最初、ワタクシは怒りました。その行為は人として、王族としての通りに反している、と。

 けれど、王子は悪びれるどころか、逆にワタクシを怒涛の勢いで貶してきました。頭に血が上っていてよく覚えていませんが……確か、むしろ今まで婚約者にしてやっていたことを感謝しろ、妾にだったらしてやってもいいぞと、これらに類するような事を言われたと記憶してあります。


 身勝手な言い分に何も言えなくなりました。
 前から、王族という身分に笠を着て、厚顔無恥な行いをするのには眉をひそめていましたが、まさかここまで愚かだったとは……。

 ワタクシが唖然としているのを、婚約破棄によりショックを受けたからだと勘違いした王子は(ある意味ではショックでしたけれど……)、我が意を得たりと言わんばかりに更にワタクシのことを責め立てました。

 けれど、もう何もワタクシの耳には届きません。
 ――こんな男に一時とはいえ懸想していたのかと、自身の見る目のなさに愕然とし、ついでこの男はもう駄目だという諦念が心中に渦巻いたからです。
 何も言い返す気になれませんでした。
50 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/13(水) 05:56:00.76 ID:Gzaj7nTn0
 周りにいる学友もワタクシ達には近づいてこようとしません。
 当たり前です。相手は腐ってもこの国の王子。
 誰しも下手に口出しして目をつけられるなんてことは避けたいはず。
 ワタクシに味方なんていない。
 魔法界の華だなんだと煽てられても、結局、こういう時に助けてくれるような人は誰もいない。

 そのときのワタクシができたことは己の惨めさに身を震わせることのみ――



魔女娘「なに、勝手なことを言ってるの?」


 ワタクシと王子とを隔てるように、割って入ってきた少女が一人。
 ワタクシのことを守るように背へと隠した魔女娘さんは、キッと王子を睨みつけていました。


 最初、ワタクシはとても信じられませんでした。
 だって魔女娘もワタクシはライバル同士。なんだったら過去に嫌がらせもしました。
 それなのに、ワタクシを庇うなんて、あり得ないと……。

51 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/13(水) 05:57:21.02 ID:Gzaj7nTn0
魔女娘「黙って聞いてたら、ライバル魔女のことを散々言いやがって!」

魔女娘「ライバル魔女がどれほど努力してるか知ってるの!?」

魔女娘「魔法特待生の私が……魔法しか能のない私が、魔法で負けそうになるほど懸命に――!!」

魔女娘「魔法だけじゃない……勉強とかマナーとか私なんかじゃ足元にも及ばないくらい頑張ってる!!」


 突然現れて何やらまくし立てる魔女娘に王子はキョトンとした顔をしました。
 けれど、目の前の娘が無礼を働いたというのは分かったのでしょう。
 キョトンとした顔が一瞬で侮蔑に染まりました。


王子「なんだお前は――! お前に関係ないことだろ!」

王子「大体、お前の言っている努力は貴族だったら当たり前のことだ!」


魔女娘「当たり前なんかじゃない!! 貴族だからと笠に着ないで、高貴であろうと努力を重ねる。こんなにできた令嬢はいない!」

魔女娘「ライバル魔女は、お前なんかが馬鹿にしていい相手じゃない!!」


 その言葉は今まで向けられたことのない……。


 公爵令嬢として生まれたワタクシは、王子の許嫁として……つまり未来の王女に相応しくなるべく、幼い頃から習い事に勉強にと勤しんできました。
 ……いいえ、両親から強要されてきました。本当はワタクシは、習い事も勉強も……王子の婚約者という立場だって一度だって望んだことはありません。

 一番をとって当たり前。教師達からも両親からも、そう言われて育ちました。そのためにはもちろん、休みなんてありません。
52 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/13(水) 05:58:57.52 ID:Gzaj7nTn0
 そんな生活に疲れ、一度だけお父様に泣いて、休みが欲しいと訴えたことがありました。
 けれどその願いが届くことはなく……。

 ――その渇いた音は今でも耳の奥に残っています。
 頬を張られた音。

 休みが欲しいと訴えたワタクシの頬をお父様は、ブッたのです。

『甘えるな。……お前は将来王族となるのだ。完璧になれ。失望はさせてくれるな』

 こんなに辛いのに、こんなに認めてほしいのに、お父様は……。
 もう涙は出ませんでした。……きっとその時ワタクシは壊れてしまったのでしょう。
 頑張らないと、甘えたことは言ってはいけないと、完璧で――一番でなければいけないと……でないと認めてもらえない。
 だから、頑張りました。好きでもない男を好きになるように努力しました。王女に相応しいよう研鑽を重ねました。
 認めてもらえるように、身をすり減らして。

 なのに、ワタクシが望んだものは何一つ手に入らなくて……。


 だから――


ライバル魔女「魔女娘さん……」


 魔女娘さんの言葉に、ポロポロと熱いものが頬を伝いました。
 あの時に止まってしまった涙が――。

 ああ、魔女娘さん……ワタクシはずっとその言葉が……。

53 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/13(水) 06:00:05.14 ID:Gzaj7nTn0
王子「お前――」


後輩「まあまあ、王子様それくらいにして――ね?」


王子「ん……あぁ、後輩がそういうなら……」

王子「おい、ライバル魔女! どう喚いてもお前との婚約は解消するからな」


 まだ、王子が何かしら言っているが、もう気にならなかった。
 だってワタクシには――


魔女娘「まだ言うか――」


ライバル魔女「いいんです。魔女娘さん」


魔女娘「ライバル魔女!?」


ライバル魔女「婚約、破棄しましょうか、王子様」


王子「はっ! 初めからそう言えばいいのだ」

王子「破棄したのならお前にもう用はない。いくぞ、後輩」


魔女娘「ちょっと! まだ話は――」


ライバル魔女「――もういいのです」
54 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/05/13(水) 06:02:00.13 ID:Gzaj7nTn0
 勝手に婚約破棄したらお父様はなんて言うでしょうか。
 別の婚約者が当てられるか、下手したら勘当同然に修道院に送られるか。
 どちらにしても、きっとあの時の比じゃなく怒るのでしょうね。

 でも、後悔はありません。


ライバル魔女「……ねぇ、魔女娘さん」


魔女娘「なに?! 復讐なら手伝う!」


ライバル魔女「望んでませんわ、そんなこと……」

 だって、ワタクシが望んだものは――

ライバル魔女「――ワタクシ達はライバルですわ!」


魔女娘「なに、突然?」


ライバル魔女「突然でもなんでも、ワタクシとアナタはライバルですわ」

ライバル魔女「ただのライバルじゃありません。一生涯のライバルですわ――!!」


 なにそれ? と不思議そうな顔をした魔女娘さん。
 でも、すぐに「私のライバルだったらそんなに泣かないで」なんて言って慌てて私の頬を拭ったのだ。


――
――――
――――――



 ワタクシの部屋のベッドの上。
 そこに苦しげな表情の魔女娘さんが横たわっている。
 あの時、ワタクシの涙を掬った指はピクリとも動かない。

ライバル魔女「こんなことで……」

 うっすらと白んでいる頬に手を添える。
 精気の抜けたその頬は、朝やけの空気の如く冷たかった。

ライバル魔女「こんなことでアナタを失わせない、絶対に――!!」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/05/13(水) 08:02:28.26 ID:WkNIuqRl0
ええやん
56 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/15(金) 06:11:35.03 ID:GQa4DH7SO
    ?


サキュバス「まずキスをしましょう」

 若干西に傾いた日の光が、締め切られたカーテンの隙間から細く棚引く。
 薄暗い室内には四人の女性が。

 その内の一人は意識を失っており、顔色悪く冷や汗を垂らしてベッドに横たわっている。
 魔女娘だ。彼女は先ほど使い魔であるサキュバスと同調しサキュバスの能力を得てしまった。その結果としてサキュバス特有の飢餓――精気欠乏を起こしてしまい倒れてしまったのだ。
 精気欠乏から回復する手段は一つ、それはエッチすること。

 その魔女娘を取り囲むように、三人の女性がいた。
 彼女ら三人とも、精気欠乏によって倒れた魔女娘を助けたいという一心のもと、心配そうに魔女娘の顔を見ている。

 
友魔女「なんだ、キスだけでいいのか……」

 三人の内の一人がホッとしたような声を上げる。
 魔女娘の様態の悪化から、かなり無茶をしなくてはいけないのでは、と危惧していたからだ。

57 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/15(金) 06:13:40.14 ID:GQa4DH7SO

サキュバス「いいえ、キスだけじゃたりないわ。ただ今まで一度も吸精をしたことのないマスターのために、キスはあくまでも精気の吸い方を体に教えるためにするの」


ライバル魔女「キス……以上のことをしなくてはいけない、ということですわね……」


サキュバス「ええ……」


 頷くサキュバスを尻目に、ライバル魔女は魔女娘に覆いかぶさった。
 サラリと落ちたライバル魔女の金の髪が、カーテンのように魔女娘を隠す。
 微かな吐息がライバル魔女にかかる。


ライバル魔女「こんなことで……こんなことで、アナタを失わせない!」


 決意を胸に、ゆっくりと顔を近づけた。
 それでも本当にしていいのかと幾ばくかの逡巡の後、意を決し動き出した唇に柔らかなものがぶつかった。


魔女娘「んっ……」


ライバル魔女「んぁ――!」


 唇と唇の重なり、両者から吐息が漏れる。
 触れた直後、魔女娘は身を強張らせたが、薄く目を開き、ライバル魔女の姿を認めるとフッと口許を緩めた。


ライバル魔女(なんてこと……! 柔らかい! 魔女娘さんとワタクシ、今――!)


 対してライバル魔女は混乱の最中にいた。
 憎からず思っている相手、むしろ気になってすらいた相手とキスしているという事実に頭がクラクラとした。
58 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/15(金) 06:14:36.74 ID:GQa4DH7SO

 時間にして数秒のこと。
 だけれど、緊張と興奮のせいでライバル魔女にとって永遠に感じられた瞬間は、我慢できなくなったライバル魔女が顔を逸らしたことで終わりを告げた。


ライバル魔女「っはぁ――――!」


魔女娘「ん、んん……なに、してるの?」


友魔女「魔女娘――!」


ライバル魔女「起きましたの――!」


魔女娘「……なに、これ」


 魔女娘が目を覚ましたことにより歓喜の声を上げた魔女二人。
 だが、当の魔女娘は自身の体にある違和感に、首を傾げた。いや、実際には体を動かすことができず、首を傾げることすらできなかった。


 だが、それよりももっと大きな違和感が魔女娘を戸惑わせた。
 空腹なのだ。それも、物凄く。
 この飢餓感は昼食からずっと続いており、食べても食べても満たされることはなかった。
 だけど……

魔女娘(少し、楽になってる……?)

 空腹感が酷かった時と比べたら、ほんの少しだけお腹が満たされていた。
 あんなに食べても少しも満たされなかったのに何故……と、疑問に思ったが、物事を考えるほどの体力だって今の魔女娘にはなかった。
 すぐにまた目蓋が重くなり、意識が闇の中に沈もうとする。


サキュバス「……んっぁ――――!」


 その唇が、サキュバスの唇で塞がれた。
 今度はしっかりとした意識の中で行われた唇同士の逢瀬。

59 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/15(金) 06:15:29.84 ID:GQa4DH7SO
サキュバス「ん――ジュる……っ」


魔女娘「――っっ!!!」


 ギョッと目を丸くする魔女娘。
 それはなぜか。――口腔内に侵入者が現れたからだ。

 サキュバスは舌を妖しく蠢かし、魔女娘の口腔を好き勝手ひっかき回す。

 湿り気の帯びた軟体からの侵略に魔女娘は目を回す。完全にされるがままだ。
 それをいい事にサキュバスはより一層自由奔放に舌を動かした。
 舌で舌を?き抱いて吸い付き、奪い尽くさんとばかりに舌と唾液を啜る。
 呼吸が上手くできなくて頭をクラクラとさせる魔女娘を尻目に、うふふとサキュバスは淫魔らしく妖艶に微笑むと、頬を両の手で包み込み力強くキスを続ける。
 さながら、捕食するように……。

サキュバス「…………ん?」

 不意にサキュバスの服を引っ張る者がいた。
 唇を離し、そちらを見る。

 友魔女が訝しげにサキュバスのことを見つめていた。


友魔女「本当に精気を送っているのかい……? 私には君が……君だけが食事をしているように見えるんだが……」

サキュバス「あら、ちゃんと送ってるわよ。ほら、意識回復してるでしょ」


魔女娘「……はぁはぁ……ほんと、なにしてくれてるの――うぅっ」

 魔女娘は光に集まるうっとおしい蛾を見るような目でジロリとサキュバスを睨むが、直後に呻き、ガクリと頭を揺らめかせた。


サキュバス「まだ自由に身体を動かせる、って訳じゃないみたいだけど」

60 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/15(金) 06:16:27.86 ID:GQa4DH7SO
 ゆらりと無邪気な子供のように、それでいて正体不明な幽鬼のごとく身を翻らせると、淫魔らしくニタリと笑った。


サキュバス「今、マスターはエッチしないと死ぬ身体になっちゃったの」

サキュバス「自分でも感じるでしょ。――身体が触れ合うたびに、充たされる感覚……潤い、心臓から手足の先へと送り出される熱を」

サキュバス「それが吸精――サキュバスの食事」


魔女娘「なんで、そんな――」


サキュバス「――もういいでしょ」

サキュバス「なんでなんでって一々理由を探るよりも……」

サキュバス「今、湧き出て止まらない、マスターが一番欲しているものはなに?」


 サキュバスの言葉にゴクリと生唾を飲み込んだ。
 その瞳は揺れていた。それは、己の中に湧いた欲が、今まで積み上げてきた常識や良識といった人間らしさを否定しているから。


魔女娘「わ、私は……」


 不安に駆られて呼吸が乱れる。
 しだいに過呼吸のように激しい呼吸へと。徐々に欲は助長し、渇望と理性とがせめぎ合い、散乱として纏まらない思考。

 欲しい……欲しい欲しい欲しい!
 けど駄目だ。それだけは……彼女達に手を出したら戻れなくなる。
 だけど欲しい! 戻れないから何なのだ! 自分でも分かっているのだろう。満たされない空腹に、疼きっぱなしの胸の傷に――。とっくに私は――!


魔女娘「だとしても――!」


 だとしても超えてはいけない一線がある。
 だって彼女たちは、私の大切な――

61 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/15(金) 06:17:27.96 ID:GQa4DH7SO
ライバル魔女「魔女娘さん――」


 不意に踊り出たのはライバル魔女。
 彼女は葛藤する魔女娘の目の前にサキュバスを押しのけて身を割り込ませると、逃さないとばかりに魔女娘の頬に手を添えて顔を近づけた。


ライバル魔女「――――んっ!!」

魔女娘「ライバ……んっぁ!」



 それはライバル魔女にとって二度目のキス。
 サキュバスのそれと比べると児戯にも等しい触れ合い。
 だけれど、そのキスの温かさは二人ともが今までで一度も感じたことのない……。

 ゆっくりと唇が離される。添えられていた手がスルリと解ける。
 魔女娘の目の前には顔をこれでもかというくらいに真っ赤にさせたライバル魔女の姿が。


ライバル魔女「魔女娘さん――ワタクシ達の関係をお分かり?」

魔女娘「それは……ライバル?」

ライバル魔女「いいえ、違います」


 否定したライバル魔女はスッと息を吸い込むと、魔女娘の目を真っ直ぐと見据えて、告げる。


ライバル魔女「ワタクシにとって貴女は、『生涯のライバル』ですわ」

ライバル魔女「ワタクシと貴女は一生涯をかけて競い合い、そして並び立つ間柄!」

ライバル魔女「ご存知ありませんの? そんじょそこらの仲よしこよしよりも、ワタクシ達の関係は強いんですのよ!」

ライバル魔女「ワタクシから逃げられると思うんじゃありませんわよ。例え、貴女が国外逃亡しようと、別の世界に行こうとも――人間じゃなくなったとしても、ワタクシは絶対に貴女を諦めない!」

ライバル魔女「例え貴女がどこの何者になろうとも、ワタクシの居場所ら貴女の横ですわ!」

ライバル魔女「なぜなら、ワタクシ達は生涯のライバルなのですから!」

ライバル魔女「――だから、ワタクシ相手に我慢をしないでください……」


魔女娘「ライバル魔女――」

62 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/05/15(金) 06:18:26.96 ID:GQa4DH7SO
友魔女「……やれやれ、ライバル魔女だけにいい顔させる訳にはいかないな」


 いつの間にかライバル魔女の隣へと移動していた友魔女はそう言うと、魔女娘の頬に手を添えて無理やり顔を自分の方へと向ける。

友魔女「私だって同じだよ」

友魔女「こんなことで死んじゃ嫌だよ。だって魔女娘は私の大切な友達なんだもの」

 友魔女は魔女娘を抱きしめた。
 まるで、まだ魔女娘がそこにいるのを確認するように。

友魔女「いいよ……魔女娘にだったら、何されても――」


魔女娘「友魔女……」


ライバル魔女「ワタクシだって同じですわ」


 負けじとライバル魔女も魔女娘の事を抱きしめた。

63 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/05/15(金) 06:20:07.48 ID:GQa4DH7SO
魔女娘「…………」


 魔女娘の手が二人の肩口でゆらりと動く。
 キツくキツく二人のことを抱きしめ返した。強く胸の中にかき抱く。


ライバル魔女「きゃっ!?」

友魔女「わっ?!」


魔女娘「ははっ――」

 驚きに身を竦ませる二人には死角となっているところで笑みを浮かべる。
 唯一それを見れたのはサキュバスだけだった。

サキュバス「あぁ……やっぱり私のマスターは当たりね……」

 その笑みを見て感嘆のため息を漏らす。
 それは、欲に溺れ、色に焦がれた者が浮かべるもの。
 精を啜る淫魔の中にだって彼女程の表情をする者を、サキュバスは一人しか知らない。


 当の魔女娘は、涎が止まらないほど目の前の少女達にかぶりつきたくて仕方がなかった。
 これで空腹がどうにかなるぞ、と。
 これが一番欲しかったんだ、と。

 魔女娘が浮かべたもの。


 ――それは下卑た淫魔の笑みだった。


 そこに理性はなく、代わりに食欲に呑まれた獣(淫魔)がいた。
64 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:44:58.76 ID:eD6qnqNT0
ライバル魔女「きゃ――――!?」

友魔女「わっ――――」


 魔女二人が驚嘆の声を上げてベッドに倒れる。

魔女娘「ふふふ……」

 不敵な笑みを浮かべる魔女娘に押し倒されたからだ。
 二人を押し倒した魔女娘は、本能の赴くまま、友魔女の形のいい胸の膨らみへと手を這わせる。
 そのまま笑みを絶やさず服の上から胸を揉みしだいた。


友魔女「ふへぁ……ちょ――魔女娘?!」

 親友からの不意打ちじみた愛撫に思わず素っ頓狂な声を上げ、身をよじらせる。


魔女娘「駄目だよ。――逃げないで」

 妖しく光る魔女娘の瞳。
 その瞳は怨敵を追い詰めたメデューサの如く、身をよじらせ魔女娘の手から逃れようとした友魔女を射る。


友魔女「へっ――!?」


 瞬間、友魔女の身体は逃げるどころか身じろぎ一つできなくなった。

 抵抗は許されない。自分にできることは、目の前の女に身体を差し出すことのみ。
 その瞳に見つめられると、不思議とそれが正しいことのように感じた。


友魔女「んっ――あ……ぁ――魔女娘ぇ……」


 されるがままを受け入れた友魔女の口から甘い吐息が溢れ出す。

 それを確認すると魔女娘は、緩慢と揉みしだく手を止めずに、ライバル魔女へと顔を向けた。

65 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:46:51.54 ID:eD6qnqNT0
魔女娘「…………」

ライバル魔女「魔女娘さ――ぁん……」


 何も言わずにライバル魔女の唇を塞ぐ。唇で、だ。


魔女娘「ん……くふぅ――ん、ん」


 しばらくは唇の柔らかさを堪能するように執拗に唇を押し付けキスを貪る。


ライバル魔女「ん……ぁあ、ん……はあぁ――っくちゅ――ちゅっ」


友魔女「っ、はあぁっ……だめ、魔女娘っ――んっ」


 うら若き乙女三人が、肉欲に溺れて絡み合う。
 甘い喘ぎと、粘着的で湿り気を帯びた空気。そして、鼻孔を擽る淫らな香り。

 それらは全て快楽を求めんとする魔女娘によって引き起こされたものだ。
 彼女は内に灯った渇望の火を絶やすことなく、貪欲に手を伸ばす。


友魔女「っ――はあ……ぁん」


 魔女娘の手が友魔女の胸から下へと滑る。
 シャツのボタンを外しながらお腹のラインに指を這わせた。


魔女娘「ふ、ふふふ……」

 妖し気な笑みを浮かべ、スカートを引きずり上げる。
 
66 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:48:01.40 ID:eD6qnqNT0

友魔女「ぅ……うわぁ――」

 太腿をか細い指になぞられ、虫が這ったようなゾゾ気に引きつった声を上げた。

 内腿のすべすべとした感触を楽しむように撫でつける。


友魔女「そんな、魔女娘……ぁっ――だめ……」

魔女娘「何が駄目なの? ふふっ、ねぇ――ひょっとして、ここに触ること?」


 小悪魔めいた笑みを浮かべて、指がスカートの最奥――乙女を乙女足らしめる部分を小突く。
 指先が湿り気に触れる。


友魔女「ひゃ――」


魔女娘「へぇ……ここ、こんなにして。期待してるんでしょ」


友魔女「そんなこと――」


 クチュ。
 言い切る前に、粘ついた音が響く。

 魔女娘が奏でたそれは一度に留まらず、一流の演奏家のように匠に指を爪弾かせ、見事に友魔女は下着の奥の泉から淫らな音を、または口から吐息混じりの甘い声を響かせる楽器と成り果てた。


友魔女「ぁっ……あ、あ――っ」

67 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:50:01.24 ID:eD6qnqNT0
魔女娘「気持ちいいんだ? 今まで見たことないだらけた顔してるよ」


友魔女「そんな、これは……魔女娘が無理やり……ひゃ――!」


魔女娘「無理やりなんて酷いなぁ。望んで私とこういうことするくせに」


友魔女「ひゃ、ひゃん――あっ、ま……魔女娘ぇ――」


魔女娘「ほら、体は正直ってね」


 にやつきと共に蜜が漏れしとどに濡れている花弁を掻き立てる。
 さながらメレンゲを泡立てるように乱雑に。

 優しさのないその手付きに、それでも友魔女の身体は確かに反応した。
 むしろ、その乱雑さが――


友魔女「ら、らめぇっ!! こんなに気持ちひぃのっ――おかひくなるぅ」


 あまりの快感に脳のシナプスが焼け焦げ、呂律がまともに回らない。
 加速度的に吹き荒れる快楽という名の暴風。
 今までの人生で一度も体験したことのないような甘く過激な刺激に、長く持つはずもなく……。


友魔女「んっっ――!! く、あああっっっああぁん!!」


 甘い絶叫。そして堪えるように脚がピンっと伸びた。
 びくんびくんと腰が跳ね、焦点の合わない瞳はそれでも魔女娘の事を必死に見つめていた。

68 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:51:28.13 ID:eD6qnqNT0
魔女娘「あは、ごちそうさま」


 そう言うと手についた愛液をペロリと舐めて、ニヤリと口角を上げる。


友魔女「あ……ぁあ」

 腰の痙攣は収まり、絶頂を迎えた証としておへその下あたりに僅かばかりの熱がくすぶる。

 余韻に浸ろうとして、友魔女は自身の身体がまったく動かないことに気がついた。
 
 倦怠感が身体を支配し、思考は靄がかかったようにぼんやりとした。


友魔女(これが、精気、けつぼう……?)

 まともに働かない頭で思考する。
 確かにこれ程力が抜けるのならば、魔女娘が倒れたのも頷ける。

 だから嬉々として舌なめずりをしている魔女娘を見て。

友魔女(良かった。元気になって……)


 そう、安堵したのだ。
 安堵と同時に、意識が薄れていき闇へと沈んだ。


69 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:52:48.91 ID:eD6qnqNT0

魔女娘「さてと……」


 気絶してしまった友魔女を脇へと移動させ、視線をもう一人の少女へと向ける。


ライバル魔女「ぅ、ううぅ……」

 そこには目を潤ませたライバル魔女がいた。
 

魔女娘「ごめん。待たせたね」


ライバル魔女「ま、待ってなどいませんわ――その、まだ満足できてないんですの?」


魔女娘「くすっ。おかしなことを聞くね。こんな気持ちいいこと満足してもしきれな――いっと!」


ライバル魔女「きゃ――きゃあ!?」


 魔女娘はライバル魔女の足に手を這わせると、一瞬にしてスカートを剥ぎ取り下半身を白のショーツ一枚にしてしまった。
 そのまま足を掴み、ライバル魔女の身体がくの字に曲がるように持ち上げた。


魔女娘「やっぱり食事は口でしないとね」


ライバル魔女「口って……まさか貴女……」


魔女娘「そのまさかだよ」


 こともなげに言い切ると、所謂まんぐり返しとなっているライバル魔女の股に顔を突っ込んだ。
 そのままちゅっちゅと舐めだした。

70 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:54:46.77 ID:eD6qnqNT0
魔女娘「ん、んく。ぴちゃぴちゃ――じゅるん」


ライバル魔女「ん、ああぁん――や、やめて……そんなところ……汚い、ですわ」


魔女娘「汚くないよ……うふふ、とっても美味しい――」


 くにくにと蜜の溢れる花弁をショーツ越しに人差し指で弄びながら、ペロリと口端を舐めあげる。

 ライバル魔女はそんな恥ずかしい姿も、魔女娘に足をひっくり返して押さえつけられているため、つまびらかに見えていた。
 目を離すことができなかった。
 何故なら、蠱惑的なその光景に釘付けになったから。もっと言えば悦びすら覚えた。


魔女娘「さてと……こんなに美味しいの、直接食べないのは損だよね」


 そう言ってクロッチの部分を引っ張ると、こともなげに風の魔法を唱えた。

 ショーツの薄布は風の刃を前に一瞬にしてびりびりと切り裂かれ、意味のない布きれと化す。
 淫液と唾液で濡れ、物欲しそうにヒクヒクと蠢いている花弁がさらけ出された。


ライバル魔女「うっ――うわあ」

 さながら熟れたりんごのように。
 これ以上ないほど羞恥に頬を染めたライバル魔女。
 それもそうだ。今まで誰にも見せたことのない箇所を無抵抗に暴かれ、しまいにはまじまじと見られるなんて。想像すらしたことのない羞恥に身をよじらせた。

 だが――――

71 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:56:29.88 ID:eD6qnqNT0

ライバル魔女「こ、の――――!」

 されるがままを受け入れるだけなら魔女娘のライバルを名乗っていない。


魔女娘「あら――?」


 お尻が両の手で掴まれた。何事かと思い視線を下げると、ライバル魔女は魔女娘のお尻を自身の顔の上まで引き寄せた。

 そのまま――

ライバル魔女「ん、ちゅっ――」

 スカートの中に頭を突っ込むと、ショーツを唇で横にずらして魔女娘の乙女の部分に直接口づけた。
 そこは汁でぐちゅぐちゅでめちゃくちゃ。むせ返るような雌の匂いがスカートの中に満ち、蛇口を捻ったように溢れ出す淫らな汁に溺れそうになる。


ライバル魔女「負けませんわ――」


 溢れ出る蜜に溺れそうになるというのなら、溺れる前に全て吸いつくせばいい。
 ズズズズズッッッッ!!!
 今まで一度も立てたことのない下品な音を響かせながら、魔女娘の陰唇へと武者ぶりつく。


魔女娘「あっ、ンあ――あはっ」


 突然攻められ、下半身から頭にかけてピリッと電気が走る。
 それでも魔女娘の顔に浮かぶのは笑顔。
 喜悦に悦ぶその笑みは、ライバル魔女に対する愛情と信頼の証。

72 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 18:58:42.31 ID:eD6qnqNT0

 やっぱりそうだ。ライバル魔女がただされるがままなんてありえないと。彼女はきっと同じ土俵で戦ってくれる。それが例え淫靡なことであっても。


魔女娘「あーむっ! ――ちゅるるる!!」


 だから、彼女の陰唇を貪った。
 彼女は負けないと言った。だったら魔女娘も負けてはいられない。
 ライバル魔女風に言うならば、魔女娘とライバル魔女は生涯のライバルなのだから――!


ライバル魔女「――ッッ〜〜〜ッン!!!!」


 遠慮なしに魔女娘の全体重がライバル魔女の顔へのしかかる。
 強制クンニにいよいよ呼吸ができなくなる。苦悶と快楽の波に揉まれ、もはや声は声にならず。
 だが、それで引くようなライバル魔女ではない。
 むしろ、開いた口を一切の隙間なく陰唇へと――。

 ライバル魔女は残った少しの理性で考える。
 このまま続けたところでサキュバスと化してる魔女娘には勝てない。
 見ると魔女娘も魔女娘で理性が吹き飛び、サキュバスとしての欲望に忠実だ。手加減はまったくしていないのだろう。
 だとしたら、多少人より魔法が使えるだけのただの人であるライバル魔女は、精力を吸われ尽くしていずれ負ける。

ライバル魔女(でしたら――!)

73 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 19:00:53.27 ID:eD6qnqNT0
 人より多少使える魔法で攻めるしかない。
 使うのは音の魔法。音とはつまり振動。
 振動を吠えてぶつける。口は未だライバル魔女の陰唇に隙間なく吸い付いている。


ライバル魔女「――――――ッ!」

 ヴヴヴヴヴヴヴッッッ――――!
 バイブレーションの声砲が魔女娘の陰唇を貫いた。

 
魔女娘「ひっ――な、な――」


 一瞬にして魔女娘の顔から余裕が消えた。
 分かりやすく例えるならば巨大なローターが女性器全体に押し付けられてるような……。
 しかも、パワーは最大。手加減はない。

 さしものサキュバスと化してる魔女娘だって喰らえば一溜りもない。
 たまゆらにして快感のメーターは振り切れ、絶頂へと上り詰める。


魔女娘「あぁあん――んッ! 駄目……だめだめっ! イク!! イクイクいくぅっ――――っ!!!」


 魔女娘の背がピンっと伸び、腰が感電したようにガクガクと震える。
 余計にライバル魔女の顔に乗っているお尻が重くなったが、それでも魔法だけは止めることはなく。ここで気絶しても決して止めないという気迫がライバル魔女にはあった。
 果たしてその執念は実を結ぶ。


魔女娘「――――――」


 不意にプツリと糸の切れた人形のように魔女娘が崩れ落ちる。
 重さから開放されたライバル魔女はお尻の下から抜け出し、くたりと倒れた魔女娘を見下ろした。

 ハァハァと肩で息をしてぐったりとしている魔女娘。
 ライバル魔女はそんな彼女を見て満足気な笑みを浮かべると。

74 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 19:02:18.40 ID:eD6qnqNT0
ライバル魔女「う……力が……」


 自身もフラフラだということに気がついた。
 それも当たり前だ。
 まともに呼吸ができない状態で魔法を全力行使したのだ。
 クタクタになっても仕方がない。

 けれど、やっぱりライバル魔女の中で一番大きかったものは――


ライバル魔女「勝ちましたわ――」

魔女娘「流石ライバル魔女。まさかイカされるとは思わなかった」


ライバル魔女「…………え?」


魔女娘「それに魔法も使ってくるなんて」


 むくりと何事も無かったように身体を起こす魔女娘。その姿に倦怠感の欠片もなく……。


ライバル魔女「どうして……?」


魔女娘「どうしても何も……まだまだ腹八分目ってところだし。いやあ、なかなかどうして美味しいね、ライバル魔女」

魔女娘「あ、もしかして満足したと思った? まだまだ食べられるよ、私」


ライバル魔女「そんな……」

75 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 19:04:26.47 ID:eD6qnqNT0
 愕然。今のライバル魔女にこそ、まさにその言葉が似合う。
 魔女娘が意識を取り戻した後も、ライバル魔女がエッチなことに付き合ったのは、……まあ、魔女娘のことが好きだからというのもあるが、サキュバスの本能に呑まれた彼女の事を正気に戻したいとも思ったから。

 サキュバスという種族は女をイカせることで精力を吸い取っていると思っていた。
 だからこそ、逆に派手にイカせ気絶させれば終わると。
 しかし、実際にはイカせてもイカされても精力を奪い取れるときた。


ライバル魔女「……いつの間にそんなエッチな人になっちゃったのかしらね?」

ライバル魔女「もしかして元から? ムッツリっていうやつかしら」


魔女娘「あはっ、どうなんだろうね。元から私の中にあった欲かもしれないし、違うかもしれない」

魔女娘「でもね、これだけは言えるの。――今、すっごい満たされてる」

 にこりと笑って。

魔女娘「でも、もっと欲しい」

 そう言うと魔女娘は右手を構えて魔法を唱える。

76 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 19:05:57.93 ID:eD6qnqNT0
魔女娘「魔法を使うってアイデアいただくね」

魔女娘「ま、そのまま使うって言うのも味気ないからさ……」

 指先に水が発生する。
 その水がグルグルと渦巻いて、渦潮を形作る。
 それだけには留まらず、ヴヴヴッと渦潮に振動が加わった。


魔女娘「まずはだいぶエッチな汁で汚れちゃったし、水で綺麗にしようか、そこ」


 あの渦潮がどれ程恐ろしいか。ライバル魔女は息を呑んだ。
 回転と振動。それに水であるが故に流動的だ。
 つまり、ライバル魔女の陰唇にぴったりとくっつき、回転と振動を与えてくることに他ならない。
 あれで遊ばれたら最後、間違いなくなす術はないだろう。

 ちらりと友魔女のことを盗み見る。
 未だに寝息を立てており、それに若干顔色も悪い。精気欠乏の症状だ。よしんば目を覚ましたとしても手助けは見込めない。

ライバル魔女「自分で洗えますわ……と言っても聞いてくれませんわよね」


魔女娘「そんな悲しいこと言わずに――さあ、まだまだ楽しもうよ」


サキュバス「いんや、流石に欲張り過ぎだね」

77 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 19:07:22.80 ID:eD6qnqNT0
魔女娘「サキュバ――ん!?」


サキュバス「――んんっ」


 サキュバスはライバル魔女の前に割って入ると、キスで魔女娘の唇を塞いだ。


サキュバス「ぷはっ……ふぅ。とりあえず腹八分目で我慢なさい。太るわよ」


魔女娘「ぅ――うぅ……」


 うめき声を上げると、油の切れたランプのようにフッと意識を失った。
 それを見たライバル魔女は慌てて――

ライバル魔女「魔女娘――!」

 抱えてみると穏やかな寝息を立てている。苦しげではない。
 そのことに安堵し、サキュバスの方を見ようとして、


サキュバス「ほら、貴方も――ちゅ」


ライバル魔女「んんん――!」


 ライバル魔女の唇も塞ぎ、短いながらもキスをした。
 

ライバル魔女「――っ、何しますの!!」

78 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/26(金) 19:09:48.18 ID:eD6qnqNT0
サキュバス「精気の再分配だよん」

サキュバス「我が愛しのマスターは、初めての吸精で舞い上がっちゃったからね」

サキュバス「マスターから過剰分の精気を吸精したの。あとまだ止まりそうになかったから催眠もかけた」


サキュバス「だから――」

 友魔女にも近づくと、寝ている彼女とも唇を重ねた。
 友魔女の表情が和らいだものへと変わる。


サキュバス「これでおっけー。みんな等しく精気は行き渡ったわ」


ライバル魔女「……一応、礼を行っておきますわ」

ライバル魔女「……って、アナタ、そんなことできるなら、わざわざワタクシたちがこの……えっちなことする必要なかったのではなくて?!」


サキュバス「まあ、いいじゃん。おかげで楽しい事もできたし。――それにサキュバスとして生きていくなら遅かれ早かれこういうことはしなくちゃいけないし」


ライバル魔女「……ああ、もう! 色々言いたいことはありますが、今日はもう疲れましたわ!!」

ライバル魔女「少し寝ますわ!」


サキュバス「うん。お疲れ様。お休みね」


 ライバル魔女は返事をすることなく、魔女娘の隣に横になる。
79 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/06/26(金) 19:11:44.94 ID:eD6qnqNT0
 そんな彼女達のことをため息混じりに見つめると、気を取り直してサキュバスもベッドに横になった。

 何も言わないライバル魔女を尻目にサキュバスは――


サキュバス(気づかれたかな……?)


 三人での吸精の強要。人一人分の精気を吸精しても満足しなかった魔女娘。その魔女娘は行為の最中、人の変わったようになった。


サキュバス(ほんと、マスターガチャでアタリを引いたな)


 魔女娘こそずっとサキュバスが求めていた人物かもしれない。
 始めて彼女のことを夢の中で抱いた時に感じた親近感。

 だからさっきの吸精のキスの際に仕込みをしたし、細工も施した。

サキュバス(あとは仕掛けを楽しみに……)

 そんなことを思いつつ、微睡みに身を落とした。
80 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/28(日) 08:58:07.38 ID:LgSQfQLR0
――???視点

???「ついにこの時が――」


 私の目の前に広がる広大な学園。
 王立カースカーム魔法学園。
 此処こそゲーム『乙女のハートは恋の魔法』略して『おつ恋』の舞台となる学園。

 十六歳となった私はこの学園へと入学することとなる。
 そう十六歳。
 つまり、あの日から――自称神が私をゲームの世界に転生させてから十六年経ったということになる。

 十六年。短かったと言えば嘘になる。
 それに、そもそも私が転生したのはヒロイン、つまり主人公だ。

 『おつ恋』のストーリーをざっと話せば、平民の女の子が王子様、もしくはお貴族様と恋に落ちる逆玉ラヴストーリー。
 そこで問題となってくるのが、主人公が割かし底辺気味な平民だったということだ。
 幼い頃に両親は事故で死別。それ以降、孤児院も兼ねている教会で過ごすのだが……お世辞にも裕福とは言えない環境だった。
 一日二食は当たり前。そこに住んでいる子ども達に課せられるのは週六日で朝から夕までの奉仕活動。加えて、あちこちがガタガタでボロボロな設備。

 現代日本出身者から言わせれば、どんなブラック企業だとツッコミたくなるところだが、悲しきかな、この世界に労基はない。
 だからと言って、仮にそこから逃げ出したとしても、人攫いに捕まって奴隷として売られるか、ガラの悪いやつに殺されるかの二つに一つかだ。
 それが分かっているから逃げ出す子どもはほとんどいなかった。


 だが、転生者でこの世界のことを知っている私から言わせれば、真っ黒な労働環境など二の次だった。

 何より、そこで奉仕しているシスターに問題があったのだ。

81 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/28(日) 08:59:50.26 ID:LgSQfQLR0
 この話をするには『おつ恋』のオチを語らなくてはならない。
 そもそも『おつ恋』は、ただのイケメン達とヒロインの恋物語ではない。
 敵役(ヒール)がいる。
 この場合の敵役とは悪役令嬢のことではなく、ヒロインと結ばれたヒーローを貶める悪役のこと。

 そいつは、【災厄の魔女】と呼ばれていた。
 その【災厄の魔女】は、物語の終盤突如として現れ、結ばれたばかりのヒロインとヒーローを襲う。
 物語の序盤からその存在は示唆されてはいたが、初見で登場したときには度肝を抜かれたものだ。

 悪逆非道で情け容赦のない彼女の登場によって話は急転。手に汗握る展開となった『おつ恋』は一気に面白くなった。事実、【災厄の魔女】が登場により良作だった私の『おつ恋』の評価は、傑作へとまたたく間に上がったのだ。

 初登場時に、悪役令嬢であるライバル魔女の腹を貫き絶命させ、さらに学園を半壊。あげく国そのものが崩壊寸前まで追い込まれた。
 主人公とくっついたヒーローまでもが【災厄の魔女】を止めようとして返り討ちにあってしまい、死ぬ寸前まで追い詰められてしまう。
 それを救ったのがヒロインで――ヒロインこそが【災厄の魔女】を倒すことのできる人物で……と、本筋のネタバレはここまでにしておいて。
82 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/06/28(日) 09:01:39.46 ID:LgSQfQLR0
 問題は【災厄の魔女】の正体だ。
 その魔女の正体こそ、孤児院兼教会のシスター。

 【災厄の魔女】の登場から物語が面白くなったと言っても、将来国を滅茶苦茶にする奴が近くにいるなんて冷や汗を?くなんてもんじゃない。
 いくら主人公の私が【災厄の魔女】を倒すことができる存在だとしても、いつ気まぐれに殺されやしないか……ラスボスとひとつ屋根の下で生活するのは流石に生きた心地がしなかった。


 だから、こうして無事に魔法が発現し、学園に入学できたことに物凄く安堵している。

 ……だというのに。


ライバル魔女「納得いきませんわ! どうして平民上がり如きが試験でワタクシよりも上の点数がとれますの!!」


魔女娘「……どうしても何も……私よりできないから、私より下なんでしょ」


ライバル魔女「なんですって!?」


 ………………。
 なんで、この二人が喧嘩してるの?
 まだこの二人はあまり接点がなかったはず。
 この段階じゃ、こんな口論をする仲じゃ……。

 そう思って聞き耳を立てていると、どうやら入学試験で魔女娘がライバル魔女より良い点数を取ったことで因縁をつけられたらしい。

 それを聞いてまたも唖然とした。
 私の知ってる『おつ恋』と違う。
83 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/06/28(日) 09:03:39.70 ID:LgSQfQLR0
 魔女娘は筆記も魔法も試験で高得点を取れるようなキャラじゃない。
 ライバル魔女のキャラはそのままだとしても、二人が入学当初に接点を持つなんてストーリーにはなかった。


 そこでふと転生前に自称神が言っていたことを思い出す。
 イレギュラーが起きたと。確かにそう言っていた。
 これが、それか。


 ストーリーが……『おつ恋』の世界が変わっているのだ。


 私は未だに口論を続けている二人へと近づいた。
 ストーリーに変化が起きている。そして、転生前に自称神が、物語をあるべき姿に戻してくれと言っていた。
 なんで戻してくれと言ったかは定かではないが、【災厄の魔女】という世界を簡単に破壊できるやつがいる以上、そいつを確実に倒すためにはストーリー通りに事を進めるのが一番だからか。
 だったら、私のすべき事は一つ。

 私は、二人の仲に割って入って口を開いた。


友魔女「喧嘩は辞めなよ。二人とも仲良くしよ?」


 物語に介入し、この世界をより私好みに改造しちゃえ。
 やることは『おつ恋』の二次創作みたいなものだ。
 それなら生前に『おつ恋』の二次創作で年二回の祭典で壁サーにまで上り詰め、某支部でデイリー一位を頻回に取るくらいには得意中の得意だ。
 要は最後に【災厄の魔女】さえ倒してしまえばいいのだろう?

 だったら、私は第二の人生、推しに――主人公の親友にして健気で麗しくひたむきな、それでいて儚い『おつ恋』……いや全メディアの中で最かわな魔女娘に幸せになってもらえるよう尽力しよう。


 ――有り体に言えば、私は魔女娘の限界オタクなのだった。

84 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/14(金) 06:21:07.54 ID:aTc5IdqM0
――――――
――――
――


魔女娘「んん〜よく寝た……」


サキュバス「あらおそよう。体調はどう?」


魔女娘「おそよう……? ってもう夕方か……」

魔女娘「体調も何も……」


魔女娘「……ちょっと待って。私、どうなってた……?」


友魔女「うぅ……くふぁ……もう起きたのかい魔女娘」

ライバル魔女「んん……おはようございます……元気そうですわね。良かった」


魔女娘「はへぇ? ……なんで裸……?」

魔女娘「――って!? 私も裸ぁ!? なんで――」


ライバル魔女「なんでも何も……」

友魔女「その……魔女娘は私達にやったこと覚えてないのかい?」


魔女娘「やっ、やったこと……?」


サキュバス「ヤッたことと言ってもいいね」シュッシュッ


ライバル魔女「今すぐその下品なジェスチャーをお止めなさい。はしたないですわよ、淫獣」


サキュバス「はしたないことをしていたのは貴女たちでしょ。3人で絡まって……ねえ?」


魔女娘「えっ? えっ!?」

魔女娘「――――ぁ……!」カアアア


魔女娘「わ、私なにしてんの――!?」


サキュバス「あ、思い出した?」

85 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/14(金) 06:22:40.81 ID:aTc5IdqM0
魔女娘「思いだしたも何も――なんてこと」


サキュバス「そう慌てるなさんな。ちゃんと合意の上での行為だから」


魔女娘「合意って――」


友魔女「ぅ……まあ、キミを救う為に必要だったし……」


ライバル魔女「ワタクシ達のことを……き、気にする必要はありませんわ! 犬に噛まれたようなものですわ!」


サキュバス「でも、なんだかんだで満更でも無かったよね?」


友魔女「…………うぅ」カアア


ライバル魔女「何を言っていますの?!」


サキュバス「さてと、ご主人様も目覚めたことですし――」


魔女娘「な、なに……? まだするの……」


サキュバス「いや何かすると言うより、しなかったというべきかしらね」


ライバル魔女「む……勿体つけずに教えなさいな!」


サキュバス「いや、キミたち、午後の授業バックレたけど大丈夫かしら、と思ってね」


友魔女「えっ?」


ライバル魔女「あっ?!」


魔女娘「――今、何時!?」


サキュバス「夕暮れに入ったところ」


ライバル魔女「な、なんてことっ!? このワタクシが! 今まで無遅刻無欠席を誇ったこのワタクシがぁ!!」

ライバル魔女「爛れた事をして授業を無断欠席してしまうなんて!」

86 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/14(金) 06:24:07.03 ID:aTc5IdqM0
魔女娘「その……ごめんね。私のせいで……」


ライバル魔女「魔女娘さんが謝ることなんてありませんわ! 悪いのはこの淫獣なんですの! そう、この淫獣! どう落とし前つけてくれる気ですの!」


サキュバス「……君の実家絶対明るいことして貴族になってないよね。脅し文句がカタギじゃないよ」


友魔女「まあまあライバル魔女落ち着いて。やってしまったことは仕方ないよ。事情説明して謝りにいこうか」


ライバル魔女「なんて説明する気ですのよ」


友魔女「魔女娘が体調不良で看病してました、っていうしかないでしょ。嘘ではないわけだし」


ライバル魔女「それしかありませんわね……」


ドア「」コンコン

???「ライバル魔女様いらっしゃいますか?」


ライバル魔女「この声は取巻きさんですわね」


ライバル魔女「おりますわよ」
87 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/14(金) 06:25:20.03 ID:aTc5IdqM0
取巻き「ああ良かった。いらっしゃるのですねライバル魔女様。魔女娘さんの様態は如何ですか?」

取巻き「あ、部屋の中に入ってもよろしいですか」


友魔女「魔女娘のことなんで知って……? ――って、部屋は不味い。私達全員裸!」


ライバル魔女「――実は……ま、まだワタクシたち風邪気味で……ゴホゴホ……だから移したら申し訳ありませんのでどうかそのまま」


取巻き「そうなのですか?」


ライバル魔女「え、ええ……」


取巻き「でしたら申し訳ありませんがドア越しで」


ライバル魔女「そうして頂けると助かりますわ」


ライバル魔女「取巻きさんはどこで魔女娘さんが倒れたのを知ったのですか?」


取巻き「後輩さんです。授業が始まる少し前に教室までやってきて、魔女娘さんが倒れたのでライバル魔女様が看病していると伝えてくれたんです」


ライバル魔女「そうなのですか」


取巻き「ひょっとして友魔女さんもそちらにいらっしゃいますか?」


友魔女「ん、いるよ。その口ぶりからすると後輩ちゃんは私のこと話してないっぽいね。ごめんね心配かけたね」


取巻き「いえ、大事ないのでしたら構いませんよ」


取巻き「あ、そうそう先生から伝言を頼まれていたのでした」

取巻き「後日、午後の講義の補講を行うそうです。それと魔女娘さんの体調が回復せずに明日も休むのなら連絡するように、と」


取巻き「では確かに伝えましたので。私はこれで」


ライバル魔女「ええ、ありがとうございました。お気をつけて帰ってくださいね」


取巻き「ごきげんよう」


ライバル魔女「ごきげんよう」

88 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/14(金) 06:26:11.80 ID:aTc5IdqM0
ライバル魔女「さてと――」

ライバル魔女「もう体調は大丈夫ですわよね、魔女娘さん」


魔女娘「う、うん」

魔女娘「でも、なんで私、あんな風になってしまったの?」


サキュバス「そうね、じゃあそこらへんから話しましょ」


ライバル魔女「ちゃんと事実だけ話すんですのよ!」


サキュバス「わかってるよ。信用ねぇなぁ」


サキュバス「じゃあ心して聞いてねマスター。今のあなたに起こってること。今日みたいなこと何度となく起こるから」

89 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/08/14(金) 06:28:44.63 ID:aTc5IdqM0
――――――
――――
――



――???


取巻き「はい。ライバル魔女、魔女娘、友魔女の三人一緒にいました」


後輩「そう。やっぱりね」

後輩「もう遅いかな……できれば友魔女はこっちに引き入れておきたかったんだけど」


後輩「この馬鹿みたいね」バチン

王子「ウグァっ!!」ビクン

後輩「私みたいなか弱い乙女が小突いたくらいで動くんじゃないよ! 椅子すらまともにできないのか、この馬鹿は!」

王子「も、もうしわけありません……」


後輩「椅子がしゃべるな――汚らわしい……チッ、萎えるわ」


後輩「ああ、そうだ」ニヤリ


後輩「よく友魔女共の様子を見てきてくれたね。ご褒美をあげようね」


後輩「服を脱いで跪け」


取巻き「はい……」パサッ


後輩「いい眺め……顔は上げて……そうそう――」

後輩「うふふ……アハハ――あなたのお顔良い踏み心地だわ」

後輩「そら、お舐めなさい」

後輩「いま、あなたの顔を踏みつけてる私の足を、犬のように惨めったらしく舐め回して私に媚を売るの」

後輩「出来るでしょ……出来るわよね――出来たらもっといい事してあげる。そら……そらそらそらそら――!」グリグリ


取巻き「ぁあ、ピチャピチャ――れろ、ハァハァ……ありがとうございますありがとうございます……レロレロんちゅ、はぁ……後輩さまの足を舐められるなんて、私は幸せものにございます……」


後輩「あは、良いね。サイコー」

後輩「いいよ、合格。ご褒美に今夜も魅了してあげる。精々美味しく戴かれてね」ニヤリ


――
――――
――――――


90 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:08:19.55 ID:3Xb3Zrtm0
――翌朝

魔女娘「ふわあ〜よく寝た」


サキュバス「おはよマスター。おかわりはない?」


魔女娘「おかげさまで昨日みたいな空腹はないよ……けど普通にお腹空いた」


サキュバス「あら、だったら私のことつまみ食いする?」


魔女娘「いい。普通にご飯食べる」


サキュバス「やん、いけずぅ」


魔女娘「……それにしてもまさか私がサキュバスになるなんて……」


サキュバス「やっぱりショック?」


魔女娘「別に。食事の仕方が一個増えただけ」


サキュバス「昨日あんなに取り乱してたのによく言うね」


魔女娘「……まあ、なんとでもなるでしょ。だからもう気にしない」


サキュバス「セックスするのに?」


魔女娘「気にしないの――――」


魔女娘「ほら、学食いくよ。サキュバス云々の話より朝飯前の腹ごなしが私には必要。とりあえずパンにしとこうかな」


サキュバス「腹ごなしってそういう意味じゃないと思うけど……まぁついていきますよ、マスター」


91 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:11:01.67 ID:3Xb3Zrtm0
――学食


ライバル魔女「おはようございますわ、魔女娘さん。朝からいい食べっぷりでわすわね」


魔女娘「ん! んぐんぐ……ぷはぁ、おはよライバル魔女」


ライバル魔女「おかわりなさそうで安心ですわ」

ライバル魔女「……その、あれから、えー……その、アレな気分になったりしていませんか?」


魔女娘「なってないよ。大丈夫。ありがと心配してくれて」


ライバル魔女「そうですか……
もし必要になったら……ち、ちゃんと言うんですのよ! ……昨日約束したんですからね!」

ライバル魔女「遠慮なんかしては駄目ですわよ! ワタクシと魔女娘さんは生涯のライバルなのですから――」


魔女娘「うん……ありがとう――」


サキュバス「ふぅん」ニヤニヤ

92 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:14:18.65 ID:3Xb3Zrtm0
――昨日



サキュバス『――という訳でマスター、サキュバスになっちゃった』


魔女娘『なにそれ――嘘でしょ』


サキュバス『嘘みたいでしょ。でも本当。……私だって驚いてる』

サキュバス『これからどうするかも考えなくちゃいけないね』

サキュバス『サキュバスとしての空腹を長いこと放っておくと、また今日みたいなことになるだろうし』


友魔女『ということは、今日みたいなことを定期的にしなくちゃいけない、と?』


サキュバス『そりゃサキュバスだからね』


魔女娘『……その、特性の同調……っていうのは切れないの?』


友魔女『分からない。聞いたことのないことだから』


ライバル魔女『使い魔との契約を切ればあるいは……』


サキュバス『と、私も思って使い魔契約の魔法陣を確認したんだけど……ほら、これ』


ライバル魔女『なになに……ってこれ解除無効の刻印?! しかも難易度Sのものじゃありませんの、滅多に解けませんわよこれ!? この淫獣なんでこんな手のこんだ細工を――』


サキュバス『私じゃない。いつの間にか書き変わってた』


ライバル魔女『嘘おっしゃい!』


友魔女『まあまあ……とにかく今は魔女娘のことだよ』

93 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:15:21.64 ID:3Xb3Zrtm0
魔女娘『……つまり、これから生きてくには、定期的にえっちなことしてかなくちゃいけないってこと?』


サキュバス『そういうこと』


魔女娘『……ぅわ』クラッ


友魔女『魔女娘!? 大丈夫!?』


魔女娘『どうなるんだよ、これから……』


ライバル魔女『魔女娘さん……』

ライバル魔女『――これからはワタクシが受け止めますわ!』


魔女娘『ライバル魔女……?』


ライバル魔女『貴女が必要だというのなら、身体ぐらい張りますわ』

ライバル魔女『だから、そんなに落ち込まないでください』

ライバル魔女『貴女はワタクシの生涯のライバルなんですのよ。ワタクシに落ち込んでいる姿を見せてはいけませんわ』


友魔女『もちろん私も協力するよ。遠慮なんかしないでよ』


魔女娘『なんで……なんで私なんかのために……』


ライバル魔女『簡単なことですわ』

ライバル魔女『ワタクシにとって魔女娘さんは“なんか”じゃありませんから』


友魔女『そうそう。大切な友達だからね。辛いかもしれないけど、私達がいるからね』


魔女娘『二人とも……』

魔女娘『ありがとう――――』


サキュバス『…………』

サキュバス『え? サキュバスになるのそんなに嫌?』


魔女娘『……』

ライバル魔女『当たり前じゃないですの』

友魔女『まあ、進んでなりたいものじゃないかな』


サキュバス『ひっど……』


――――――
――――
――
94 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:17:36.47 ID:3Xb3Zrtm0
ライバル魔女「そうそう友魔女さんが特性の同調について知っている人に心当たりがあると言っていましたわよ」


魔女娘「本当? 何か分かればいいけど……」


サキュバス「早く私との同調が切れるといいわね」


魔女娘「昨日、サキュバスになるのは嫌だって言われたの気にしてるの?」


サキュバス「べっつに〜」


友魔女「やあおはよう、お三方」


魔女娘「おはよ、友魔女」


ライバル魔女「ごきげんよう友魔女さん」

ライバル魔女「……同調について何か分かりました?」


友魔女「ごめん。話を聞いたけど同調のことは知ってても、それを切る方法までは知らなかった」


魔女娘「そっか……」


ライバル魔女「ところで誰に聞いたんですの?」


友魔女「後輩ちゃん。昨日何か知ったようなこと言ってたし、夜たまたま会ったから聞いたの。まあ成果は無かった訳だけど」


魔女娘「調べてくれただけで十分。ありがとうね」
95 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:20:09.81 ID:3Xb3Zrtm0
モブ学生1「おーい、そっち持っててくれ」

モブ学生2「わあったよ――」


サキュバス「何か騒がしいわね……」


魔女娘「ん、ああ……再国祭が近いから。準備に忙しいんでしょ」


サキュバス「再国祭?」


魔女娘「ああ、知らないか。簡単に言えば建国祭みたいなもの」


サキュバス「だったら建国祭でいいじゃない。わざわざ再国祭なんて名乗らずにさ」


友魔女「詳しい説明いるかい?」


サキュバス「ぜひ」


友魔女「じゃあ話そうかな」


友魔女「昔々……って言う程昔じゃないけど、まだ年寄りの中には覚えている人もいるんじゃないかな」

友魔女「悪い魔女がこの国に攻めてきました。その魔女は一人きりであったのにも関わらず、大勢の国民を虐殺し、国を恐怖の渦に陥れました」

友魔女「その行いから魔女は【災厄の魔女】と呼ばれ恐れられました。【災厄の魔女】のあまりの悪行にこの国に住む人たち全員が【災厄の魔女】に殺される、そこには早いか遅いかの違いしかない。そんな恐れを抱きました」

友魔女「絶望に沈んだ国を救ったのは、当時の王子様と彼の愛した女性でした」

友魔女「ひっ迫した戦闘の末に王子とその恋人は力を合わせて見事【災厄の魔女】を打ち倒したのです」

友魔女「王子は残った国民達と共にこの国を再興し、また国としての形を整えました」

友魔女「その日を再国祭としたのです」

友魔女「って感じかな」


サキュバス「はえ〜【災厄の魔女】ね……酷い人もいたものね」

96 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:24:40.22 ID:3Xb3Zrtm0
ライバル魔女「『この恨み、この無念を決して忘れない――必ずや蘇りこの国の民を全員葬ってくれる』」


サキュバス「突然何言ってんの。頭壊れた?」


ライバル魔女「一々煽らないと気が済まないんですの?!」

ライバル魔女「はぁ……【災厄の魔女】が死の間際に発した言葉ですわ」

ライバル魔女「当時の王族はその言葉と、【災厄の魔女】を風化させないために再国祭を催したのです」

ライバル魔女「再国祭だけではありませんわね。この学園も【災厄の魔女】が復活した際に対抗できるようにという目的で建てられましたの」


魔女娘「まあ死人が蘇ることなんてないんだから、今じゃ再国祭に建国祭以上の意味はないよ」


友魔女「…………」

友魔女「でもさ、蘇ったらどうする。蘇るんじゃなくてもさ、【災厄の魔女】みたいな魔女が出てくるかも」


魔女娘「……その時は伝説みたいに王族がどうにかすればいいんじゃない。まあ、あの馬鹿王子だと返り討ちに遭いそうだけどね」


サキュバス「お祭りかぁ……楽しみね!」


魔女娘「うん。サンドウィッチにカステラ……あとあとフランクフルトとチョコバナナ、リンゴ飴もあるのかな――くふふ、屋台楽しみ。いっぱい食べる」


ライバル魔女「ほんと食べ物のことばかりですわね」


サキュバス「それでそのお祭りはいつあるの、近いんでしょ?」


友魔女「三日後だね。今年もみんなで回ろうね」

ライバル魔女「そうですわね! 楽しみですわ!」


魔女娘「去年はまだライバル魔女は素直じゃなかったから、思うように屋台を回れなかったけど今年こそ――」


ライバル魔女「ちょっと素直じゃなかったってどういうことですの――まるで今は素直みたいな言い方ですわね」


サキュバス「素直じゃん」

サキュバス「それにしてもお祭りが近いのね」

サキュバス「話には聞いたことがあるけどお祭り初めてだから本当に楽しみ」ワクワク


魔女娘「そうなんだ。それじゃ目一杯楽しもう。ワッフル! クレープ!」


サキュバス「たのしもー!」


ライバル魔女「盛り上がっていますけど、祭りはまだ始まりませんわよ」


友魔女「このテンションがいつまで続くことやら……」ヤレヤレ
97 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:36:13.63 ID:3Xb3Zrtm0
――――――
――――
――


――友魔女視点。昨晩。


 ――今日はなかなかハードな一日だった。
 私はお風呂で身を清めながら、そんなことを思った。

 ライバル魔女と精気欠乏を起こした魔女娘を救うため、セックスをした。


友魔女「っっっんんん!! ――ぁわっっぁぁあ!!!」


 狭いバスルームで手足をバタバタとさせながら、行為のことを思い出して悶た。
 悶た。悶える。なんだったら叫びたい。叫んだ。ワキワキとした気分を抑えられそうにない!


 そう推したいしている魔女娘と、セックスしたのだ!
 まさか前世含めた初体験が一番の推しキャラ、魔女娘とだなんて――!
 サキュバス様々だ。ほんとヤッホー!

友魔女「――ふぅ……」

 シャワーを冷水にして頭からかぶる。
 それだけで火照った身体は幾分か冷静になった。
 思考に湧いたイレギュラーの名前にそうせざるを得なくなったのだ。

 ――サキュバス。

 『おつ恋』の中には出てこなかったキャラクター。
 殆どのキャラが本編ストーリーと性格が違っているが、こいつはそもそも存在さえしなかった。

 果たしてイレギュラーの一言で片付けてしまっていい存在か。
 ただのえっちな奴だったら放っておいても良かったが、『催眠』なる嫌らしい特技を持っているのが気にかかる。

 『催眠』がどこまで通じるのか分からないが、他人を思い通りに操ることに制限のないチート能力だったら放って置く事などできない。
 私だけではなく魔女娘にも危害が加わるかもしれないから。


 さてどうしたものか。使い魔契約は簡単には切れない状態。まさか殺すわけにもいかない。
 そう思いつつお風呂から上がり、パジャマを着た。


後輩「あ、先輩! お邪魔してます。お風呂に入っているようだったのでお部屋で待たせていただきました!」


 自室へと戻った私を待ち受けていたのは不法侵入者だった。

98 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:37:32.74 ID:3Xb3Zrtm0
友魔女「なんでいるの?」


後輩「先輩に会いたくなって」キュルン

後輩「あ、そうそう駄目ですよ先輩。いくらここに女子しかいないからって、入浴中に部屋の鍵かけてないのは。怪しい人が勝手に部屋に入っちゃいますよ」


 そりゃ、お前のことだろうが。
 そう喉元まで出かかったがなんとか堪えたが、胡乱げな視線を向けることまで我慢できなかった。

 後輩もそれを分かって尚大げさに首を振った。


後輩「やだな先輩。もっと肩の力抜いてくださいよ。ただおしゃべりしに来ただけですよ」

 人好きのする笑顔を浮かべた後輩は、そのままの表情で。


後輩「使い魔との特性の同調について聞きたくないですか?」


友魔女「……」


 狙いは何だ。こいつの狙いは――。
 後輩――イレギュラーという点ではサキュバスと同様。
 そもそも後輩なんてキャラは『おつ恋』に出てきていない。

 私は知らないんだ。こんなキャラ。
 最初は私がヒロインとしての役割を放棄したため、それを代わりに行うキャラとして湧いてきたのだと――所謂世界の強制力によって生み出されたキャラだと思っていた。
 実際に王子然り、他の攻略対象とよろしくやっているのは確認済みだ。

 だが、今日のことでその考えに疑惑の念が生まれた。

 それが使い魔との特性の同調。
 『おつ恋』を手垢まみれになるまで遊び尽くした私が知らなかった要素。
 それを後輩ちゃんは知っていた。

 本人が言ったようにゲーム外の知識を偶々知っていた可能性もある。


 しかし、私の胸中に浮かんだのはもう一つの可能性。


友魔女「そうだね。後輩ちゃんとは一度話したいと思ってたところだしね」


 ――後輩も転生者なのではないか。
99 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:38:46.83 ID:3Xb3Zrtm0
undefined
100 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:40:16.13 ID:3Xb3Zrtm0
 例えばだ。私が前世で死んだあとに『おつ恋』の完全版設定資料集なるものが出ていて、その中に使い魔との特性の同調の記述があって、後輩はそれを読んでからこの世界に転生してきたのではないか。
 もしくは、特性の同調なる要素がDLCで追加されたか。いや、それなら素直に続編が出た可能性の方が高いか……。


 もしもそうなのだとしたら――


友魔女(『おつ恋』のこと語りたい――!)


 もともと『おつ恋』二次創作に人生捧げてた身としては、『おつ恋』語りが出来なくて燻っていたところだ。
 それもこれも『おつ恋』のことを知っている人がいないからだ。そりゃそうだ。だってここが『おつ恋』の世界そのものなんだもん。

 久しぶりにオタ活できそうで震える!!


後輩「……どうしたんですか……」


 突然オタクの血が騒ぎ出したせいでワキワキとしだした私を不審に見つめる後輩ちゃん。
 いけない。少し落ち着かないと。
 前世でも『おつ恋』熱が暴走して何人のリアル友人をドン引かせたか。

 ここは慎重に……。
 だけど、転生者かどうかなんてどう聞こう……。

 まさか馬鹿正直に、君も一回死んで転生したの? なんて聞けるわけがない。
 違ったら私ただのイタイ人だ。もしくは宗教に勧誘していると勘違いされるかも。
 別に後輩ちゃんにどう思われてもいいが、魔女娘に話が伝わって頭おかしいと思われるのは絶対イヤだ!
 せっかく今まで本性を隠してクールで友達思いのキャラを貫いて来たのに、こんなことで不思議ちゃんキャラに転向したくない。

 ここはオタクしか分からない符号で話しかけるか……?

 オタクかパンピーかを見分けるおあつらえ向きな質問を一つ知っている。
 よし! そうと決まれば早速……。
101 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:41:27.67 ID:3Xb3Zrtm0
友魔女「ねえねえ後輩ちゃん、攻めの対義語って何?」


後輩「……突然なんですか」


友魔女「いいからいいから。攻めの対義語言ってよ。ね?」


後輩「………………攻めの対義語は守りじゃないんですか?」


友魔女「ん……ああ……そうだね。そうそう」

友魔女「話って何だっけ。使い魔との特性の同調の話だっけ」

友魔女「後輩ちゃんはなんで知ってたの」


後輩「ちょっと待って! 何で今度はテンションガタ落ちなんですか?!」

後輩「え? 私何か間違えましたか?! 間違えましたかっ?!」


友魔女「ううん、後輩ちゃんは何も間違えてないよ。私が勝手に舞い上がって、勝手にから回っただけだから」

友魔女「特性の同調について話そうか」


後輩「ほんと、何なんですか…………」
102 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:42:43.47 ID:3Xb3Zrtm0
 納得できていないのがひしひしと伝わってくるが、私も期待を裏切られたのだ。許してほしい。

 そんなこんなで、やっとこさ話は本題へと進んだ。


後輩「まあ、特性の同調に関しては名前の通りですし、昼に話した通りですよ」


友魔女「私もそれは体験したよ。魔女娘、本当にサキュバスみたいだった」


 まさに天にも昇るような気持ちというものをリアルに体験した。
 意識がなくなる直前、魔女娘が元気になったのを安堵したのと同時に、これ死ぬのでは……とひそかに思うほどだった。
 推しの上で腹上死するのならそれはそれで幸せ、というのは置いておいて。


友魔女「特性の同調って切れるものなの? ほら、教会でお祈りしたら状態異常が治るみたいな、そんなノリで」


後輩「……教会にそんな力ありませんよ」

後輩「申し訳ないですけど、同調の解除方法は知らないですね」

後輩「多分ですけど使い魔が死んだら同調は切れます。試したことないから分からないですけど……どんな状態でも生きてさえいれば、同調は続くと思います」


友魔女「そっか……」

103 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:43:41.83 ID:3Xb3Zrtm0
 さすがに使い魔を殺すのは抵抗がある。幾ら胡散臭いサキュバスだからと言っても変わらない。
 それはきっと魔女娘とライバル魔女も同じだろうから、二人にわざわざ言う必要もないか。


後輩「じゃあ私はそろそろ帰りますね」


友魔女「え? もう帰るの? 本当に、同調について話に来ただけ?」


 他に何があるんですか、と人好きのする笑みを浮かべながら後輩は私の後ろを通り過ぎた。


後輩「おやすみなさい。良い夢を」


 そう言ってあっさりと部屋から出ていった。

後輩「なんだったんだ……?」

 閉まったドアを呆然と見つめる。


後輩「――――!」


 瞬間、訪れる戦慄。
 それに気づいて愕然とした。

 ――私、素を出しすぎていなかったか。

 私はこの学園に入学してから猫をかぶり続けていた。
 魔女娘やライバル魔女の前ではもちろん。名前も知らないモブの前でもだ。
104 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:45:15.83 ID:3Xb3Zrtm0
 だけど、今の私はなんだ。
 メタ発言ばかりしてなかったか……。
 猫をかぶり続けていたのは、おかしな奴に思われたくないからって理由もあるが、もう一つ大切な理由がある。
 それは【災厄の魔女】を倒すため。

 ヒロインとしてのロールは降りた私だが、【災厄の魔女】を打倒するという役割だけは降りていない。というか、【災厄の魔女】はこの物語の主役である私以外に倒せないはず。

 展開が変わりすぎて、いつ誰がキャラクターとしての役割を失ってもおかしくない。
 例えばヒロインでなくなった私のように。ライバル魔女だって原作から立ち位置が大分変わっているし、愛しの魔女娘にしたってそう。

 ちょっとしたことでキャラクターの役割が変わってしまう。

 私から【災厄の魔女】を倒すという役割がなくなってしまったら、設定上誰も【災厄の魔女】を倒せなくなってしまう。

 それは困る。困るからこそこの世界を好みの展開に変えつつも、私――友魔女の性格だけは変えないように、つまり【災厄の魔女】打倒の役割を失わないよう注意して行動してきたのに……。


友魔女「なんで今更……こんなミスを……」

 
 しばらく呆然とその場に立ち尽くした。

105 : ◆TEm9zd/GaE [saga]:2020/08/20(木) 17:47:30.15 ID:3Xb3Zrtm0
――後輩視点


 何が起こってる。
 あいつはあんなに馬鹿じゃなかったぞ。

 確かに世間知らずで夢見がちな性格をしていたが、もっと警戒心が強かったし、少なくとも突然訳のわからないことを言い出すような不思議ちゃんでは無かった。

 幾ら動きやすいように過去を改変したからと言って、あいつに関しては後に制御しやすいように改変は加えていない。

 そもそもだ。催眠が効くのもおかしかった。
 先程の会話の中で、弱みを握れたらいいな、どうせダメだろうけど……くらいのダメ元で本心を晒す催眠をかけたら、見事にかかった。
 普通に比べたら効き目は弱かったが、それでも効果が無いのと弱いのとじゃ話が違ってくる。
 まあ、催眠がかかったおかげであいつが前回とは違うと気づけた訳だが……それはともかく。

 ――加護が弱まりつつあるのか……。

 加護が弱くなったり無くなるんならいい。
 だが、無くなった加護が他の奴にかかったら……。

 そしたら、私が長いことかけて積み上げてきた計画が全てパーになる。

 【女神の加護】はあいつに――友魔女に持っていてもらわなくては困る。


友魔女「ちっ――――加護がまだ残ってる内に再国祭で仕掛けるしかないか」


 私は足早に夜の廊下を駆けた。


――
――――
――――――
106 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/08/20(木) 17:58:23.01 ID:3Xb3Zrtm0
>>105ミス

――後輩視点


 何が起こってる。
 あいつはあんなに馬鹿じゃなかったぞ。

 確かに世間知らずで夢見がちな性格をしていたが、もっと警戒心が強かったし、少なくとも突然訳のわからないことを言い出すような不思議ちゃんでは無かった。

 幾ら動きやすいように過去を改変したからと言って、あいつに関しては後に制御しやすいように改変は加えていない。

 そもそもだ。催眠が効くのもおかしかった。
 先程の会話の中で、弱みを握れたらいいな、どうせダメだろうけど……くらいのダメ元で本心を晒す催眠をかけたら、見事にかかった。
 普通に比べたら効き目は弱かったが、それでも効果が無いのと弱いのとじゃ話が違ってくる。
 まあ、催眠がかかったおかげであいつが前回とは違うと気づけた訳だが……それはともかく。

 ――加護が弱まりつつあるのか……。

 加護が弱くなったり無くなるんならいい。
 だが、無くなった加護が他の奴にかかったら……。

 そしたら、私が長いことかけて積み上げてきた計画が全てパーになる。

 【女神の加護】はあいつに――友魔女に持っていてもらわなくては困る。


後輩「ちっ――――加護がまだ残ってる内に再国祭で仕掛けるしかないか」


 私は足早に夜の廊下を駆けた。


――
――――
――――――
107 : ◆TEm9zd/GaE [sage saga]:2020/09/14(月) 08:25:00.17 ID:EK1XIJvq0
【食べる専門の人たち】

魔女娘「はぁ仔牛ちゃんうま」モグモグ


サキュバス「朝からステーキ……」ヒキ


ライバル魔女「本当に仔牛のステーキが好きですわよね」


魔女娘「ん。私死ぬときは仔牛のステーキに埋れて死ぬの」


ライバル魔女「……脂でベトベトになりますわよ」


友魔女「あはは、脂のおかげで死んでも暫くはお肌テカテカだね」


サキュバス「そういえばマスター食べてばかりだけど、自分で料理とかするの?」


魔女娘「しない。料理する時間があったら、ご飯買ってその分食べる」


サキュバス「なんともまあ……らしいっちゃらしいか。お二人さんは?」


ライバル魔女「したことありませんわね。幼少の頃より専属のシェフがおりますの。わざわざワタクシがする必要もありませんわ」


友魔女「私は昔はしたよ。孤児院に住んでたから当番制だった」


サキュバス「昔は?」


友魔女「今は国から補助が出てるから、そのお金で外食が多いかな。楽だし」


サキュバス「友魔女はともかく二人は料理する必要ができたらどうするの」


魔女娘「大丈夫。大抵のものは火を通せば美味しくなる」


ライバル魔女「ふふん。ワタクシを誰だと思っていますの? ワタクシですわよ! その気になれば料理なんて一瞬でマスターしてみせますわ!」


サキュバス「……ねぇ、友魔女ちゃん今度料理教えてくれない? もしもの時にこのままだと火を通しただけの肉と、ご飯と言えない物体を食べさせられることになるわ」


ライバル魔女「ちょっと!? それどういうことですの!?」


友魔女「あはは、やる気があるなら今度教えるよ」


魔女娘「いいじゃん火を通したお肉美味しいじゃん。ねぇ仔牛ちゃん」モグモグ


サキュバス「そのステーキだって香辛料で味付けしてあると思うけど……少なくともただ焼いただけじゃないと思う……」


魔女娘「…………」モグモグ

魔女娘「ああ、おいし」


サキュバス「もう……」

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