狸吉「華城先輩が人質に」アンナ「正義に仇なす巨悪が…?」【下セカ】

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1 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/08/21(金) 09:49:27.39 ID:Vqcr7VCy0
昔、途中まで書いたものです。スレが見つからなかったというか、多分もう書き込めないでしょうし新しく立てさせてください。

その時はメインヒロインの声優さんの病死があって、ショックで最後まで書ききれなかったものなんですが、

5年たちますね。早いものです。

なんか昔のフォルダが見つかったので、いろんな意味での供養もかねて投下していきます。


前作がありまして、これを読まないと理解できないかもしれません。

狸吉「アンナ先輩に拉致監禁」綾女「SOXイ○ポッシブル!」
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5772445

これも懐かしいですね。R−18ですので読む際はお気をつけてください。

では投下していきます。量が多いので、気を付けてください。

2 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/08/21(金) 09:51:56.61 ID:Vqcr7VCy0

 足がひたすら重い。飢えたアナコンダの檻に向かう気分だ。しかもそのアナコンダは猛毒ももっている。ところでアナコンダのアナはどのアナなんだろう。

 現実逃避の思考は時間稼ぎにならず、僕は生徒会室に向かっていた。

 今日は華城先輩もゴリ先輩もいない。アンナ先輩と二人きりの生徒会室。何も起こらないわけがなかった。

 僕の誘拐事件から、アンナ先輩に決定的な変化が起きてから十日。

 アンナ先輩の家を出てから、二日が経っていた。

 僕は色々あってアンナ先輩の家にずっと泊まる羽目になっていたのだけど、そこでアンナ先輩といちゃいちゃのぐちょぐちょなことをやっていたけど、僕の逃げ口上やアンナ先輩のプレイスタイルによって初日以外は辛うじてB止まりでおさまっていた。昨日から学校にも登校を再開して、それを機に自分のアパートに戻っている。アンナ先輩は引き止めたのだけど、僕の母さんにいつまでも甘えてるわけにはいかないみたいなことを言ってもらって、何とか自分のアパートに戻ったのだ。

 生徒会室の前に立つ。背筋がゾワゾワする。今日は誰も止める人がいない。かと言って他に用事も思いつかず、華城先輩も休んでいてゴリ先輩も受験であまり生徒会の方に顔を出せず、生徒会の業務をほとんど一人でやっているアンナ先輩の負担は大きくて、僕が行かないわけにもいかなかった。

 すー、はー、と息を整える。ついでに息子の調子も確認しておく。大丈夫、まだ理性はきくはずだ。

 アンナ先輩は、あの事件以来、ひたすら飢えた肉食獣から媚薬という猛毒を持った蛇のように、襲い貪ることから誘い焦らすことを覚えてしまった。襲われていたころより、僕から求めるように焦らしながら誘うことを覚えたアンナ先輩は、以前よりよっぽど愉しそうでそして恐ろしかった。

 ん? もうそういう仲なんだしいいじゃんって? それ華城先輩にも言われたよ。アンナ先輩のセックスのテクは日に日に向上してたしね。そのうち視線だけで僕をイカせるようになったとしても、僕は全く驚かないよ? 顔も身体も声もテクニックも何もかもが最上級の人だよ? 正直、アンナ先輩がちょっとこっちを刺激するだけですぐ発射しそうになっちゃうよ?

 でもそれでも、逃げ続けなければならない理由があるのだ。

 コン、コンと、ゆっくりめにノックする。

 扉を開けると、生徒会室の主、アンナ・錦ノ宮が上品で穏やかな笑顔を浮かべながら、僕を迎えた。

「奥間君……、一日会えなかっただけですのに、ずいぶん長い間会えなかったような気がしますわ」

 上品で穏やかな笑顔は、僕だと認めた瞬間、捕食者の笑みに変わる。以前とは違って余裕こそ持ってるけど、むしろ危険度は増している。

「!?」

「んん……!」

 え、今座ってたよね? 立った瞬間から扉にいる僕のところまで一瞬で肉薄すると、僕を壁に押し付けつつ唇を重ね、舌を器用に使って唾液を送り込んでくる。

 以前のただ貪るだけのキスではなく、僕を昂ぶらせ、誘惑し、堕とすためのキス。

 アンナ先輩の唾液は媚薬のように、一気に僕を昂ぶらせ、僕の息子に一気に血液が集まってくる。

 どれくらい唾液を送り込まれたのか、二回くらいは飲み込んだ気がする。アンナ先輩は一旦離れると、僕の首筋に顔を埋め、鼻をクンクンと鳴らして、

「奥間君……ふふふ、わたくしとの約束は守ってくださっているみたいですね? 勝手に愛の蜜を出してはいけないというあの約束を」

 アンナ先輩、僕の愛の蜜(ようは精液だ)をより濃く美味しくいただくため、オナ禁を僕に命じていたのだった。勿論アンナ先輩には性知識がないからオナ禁って言葉も意味も分かってないんだけど、どうもアンナ先輩は愛の蜜は溜めた方がより濃く美味しくなると考えていて、実際それが当たっているから困る。性知識はないのに本能ですべてを習得してくる。この人本当に何か出来ないことってあるのかな。

 完全に空っぽになってから十日、朱門温泉で鍛えられた僕は普段なら我慢しようと思えばできる範囲なんだけど、アンナ先輩は事あるごとに僕を挑発してきて、僕からアンナ先輩を求めるように仕向けてくる。以前は喰われる恐怖から萎える面もあったのは否定しないけど、今のアンナ先輩はひたすら僕が堕ちるのを待てるようになってしまった。正直、今のキスだけで発射しそうになってる。

 その様子がわかるのか、くすくすと嬉しそうに愉しそうに笑うと、

「奥間君がおねだりしてくれれば、わたくしはいつでも構いませんのよ? ただ、愛の蜜を一滴も零したくないだけなんですの」

 アンナ先輩は敢えて見せつけるように、扇情的に舌をチロチロと動かす。アンナ先輩の下腹部からそこは以前と変わらず、粘り気のある水音が溢れんばかりに聞こえてくる。その下腹部を、僕の勃ちきった息子に強すぎず弱すぎない絶妙の腰使いで押し付け、僕の理性を飛ばそうとする。

「ああ、どちらがいいでしょう? ……舌を愉しませるべきか、私のお腹の中で奥間君の愛の蜜が広がり、染み渡るのがいいか……!」

 そう、僕が今でもアンナ先輩から逃げないといけない理由。

 アンナ先輩、中出しの味を覚えてしまったのだった。

3 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/08/21(金) 09:52:23.84 ID:Vqcr7VCy0
 正直ゴム有なら僕ももう、アンナ先輩の言うとおりにしてもいいかと思っていたりも正直あるけど、アンナ先輩が妊娠したらアンナ先輩の両親からは社会的に命を絶たれ、僕の母さんからは生命的な意味で命を絶たれる。そして僕の死体はアンナ先輩が美味しく戴いてお腹の中でずっと一緒、ハッピーエンドだ。アンナ先輩、僕を傷付けないようにはしてくれてるんだけど、どうも食人趣味にも目覚めかけてて、この前喉元や小指を食い千切られそうになったんだよなあ。……あれは一時的な混乱と駆け引きの為のものだったと思いたい。

 とにかく中出しだけは絶対に出来ない。アンナ先輩は妊娠を望んでいるから避妊が出来ない。避妊抜きにゴムを着けなければならない理由も思いつかない。何よりアンナ先輩は上も下もどちらの口でも、僕の愛の蜜で満たすことが何よりも最上級の愛で快感らしく、故により美味しくいただきたいと、そういう発想に至ってしまっているらしい。

「ふふふひっ、忘れてはいませんわよね? ……わたくしの許可なく愛の蜜を出したら、オシオキですわよ? それとも、オシオキを望むなら、それでもわたくしは……ふふふふ、はあ、あはあ、あ、それも、いいですわね……! 奥間君が愛に悶える顔も見たいですの……!」

「ひ!」

 捕食者が悦びの声に思わず反射的な悲鳴が出た。強制的に快楽を与えられ続けて発狂しそうになった悪夢が蘇る。今のアンナ先輩なら間違いなくあれ以上のことが出来る。

「ああ、我慢はよくありませんわよ? ……ずっとわたくしの為に愛を確かめ合うことを我慢していたのはすごくうれしかったですけど、もう愛の試練は乗り越えましたし、奥間君が我慢する必要はもうありませんわ」

 さらに追い打ちでぐぐ、と腰が押し付けられる!

「たった一言でいいんですのよ? 『僕の愛の蜜を飲み干してください』と、それさえ言えばいいんですの」

 発射が目前だった。でもアンナ先輩が上で飲むのか下で飲むのかわからない以上、答えられない。ついでに言うならアンナ先輩もずっと僕と繋がってないから、下で飲みたがる可能性が高い。

「あら、……奥間君はオシオキがお望みですのね? それもいいですわね……!!」

 とうとう手が股間に伸び、僕の言葉を待たず息子を発射させようと「あ、先輩、ここ、ここじゃちょっと!」僕は両手を使ってアンナ先輩の手を押しのけようとするけど、アンナ先輩の怪力には当然敵わず、むしろ獲物の最期の抵抗を愉しむように嫣然と笑って、


『――皆さん、騙されてはいけません!』


 ――PMの強制放送が始まった。

 僕らの勝利ともいえるデモが行われてから、政府はその主張を否定する為に毎日PMで強制的に放送をしている。

 アンナ先輩の顔が、陰った。

「…………」

 さすがに萎えたようで、アンナ先輩は何も言わずに自分の席に戻る。

「奥間君、続きはまた今度にしましょう? 今日は申し訳ありませんが、綾女さんの分も仕事を頑張っていかなければ」

「……はい」

 寸止めで終わったけど、助かったとは思えなかった。

 僕がアンナ先輩の家からなかなか出なかった理由の一つに、このPMによる政府の強制配信があった。

 アンナ先輩はそのそぶりを見せないけど、この件でアンナ先輩の家は揉めている。僕を拉致監禁なんて暴挙に及んだのも、この件が無関係だったとは思っていない。アンナ先輩が気に病んでないわけがないのだ。

「大丈夫ですか?」

 思わず安っぽい声をかけてしまった。だけどアンナ先輩は、性欲とは全く関係なく、本当に嬉しそうに、

「ありがとうございます。その言葉だけで、わたくしは……」

 政府の強制配信はまだ続いている。真実がどちらかにあるか、《SOX》の一員である僕にはわかっているけど、アンナ先輩はわからない。本能で分かっていても、性衝動や愛が満たされて安定しつつあっても、知識という判断材料がなければどちらが正しいのかなんてわからないのだから。

 僕も何とか性知識を、真実を伝えたいのだけど、そうするとアンナ先輩は今まで自分の行ってきた崇高な愛が卑猥というアンナ先輩にとっての絶対悪だったことを教えることになるわけで、どうすればいいのかわからない。アンナ先輩が壊れたらどれほど恐ろしいことになるか、僕は十日前にさんざん思い知っている。ついでに言うなら僕はアンナ先輩に限らず他の時岡学園の生徒にも性知識を教えたら即退学になることをアンナ先輩の母親であるソフィア・錦ノ宮と約束させられている。

 本当に情けないけど、この期に及んで僕は何もアンナ先輩に伝えられていなかった。

「アンナ先輩」

 とっさに呼びかけてしまったが、かけるべき言葉は見つからず、

「あの、よければ……えっと、今日帰り、華城先輩のお見舞い行きましょうよ」

 今の僕だけじゃ、アンナ先輩の負担を軽くすることはきっと出来ないと思った。

 アンナ先輩には、僕だけじゃ駄目なんだ。

「ええ、そうですわね」

 アンナ先輩は強制放送が続く中、それでも喜びの顔を見せる。同時に悪戯っぽい笑みも浮かべて、

「綾女さんには内緒で行きましょうね。奥間君、一緒に病院に行く前にお見舞いの品物、買っていきましょう」

 その笑顔は可愛らしくも大人っぽく、以前の天使の笑みとはやはりベクトルが違っているけど、魅力の大きさは変わらずに僕の胸をドキドキさせる。

 だけど、無理しているように見えるのは、きっと気のせいじゃなかった。

 やっぱりアンナ先輩には、心の底から笑っていてほしい。

 政府の強制配信は、まだ続いていた。
4 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/08/21(金) 09:53:29.47 ID:Vqcr7VCy0
「「「…………」」」

「あら、鼓修理ちゃんもいらしてたの。……えーと、そちらの方は? 確か、奥間君の中学生時代の……?」

「わ、わたしの小学生時代の友達でもあるのよ、アンナ!」

 とっさに眼鏡をかけた華城先輩、鼓修理、ゆとりがアンナ先輩に怯え、僕に非難の視線を浴びせてきた。

 本当、ごめんなさい。せめてメールしようと思ったのだけど、アンナ先輩がサプライズで驚かせたいなんて言うから無理だった。隙を見つけたかったけど、無理でした、本当ごめんなさい!

 ゆとりにはす、と目線を一瞬細めたが、すぐに僕や愛を育むものを邪魔する敵以外に見せる、上品で淑やかな会長モードに戻った。た、助かった? 正妻の余裕ってやつだろうか。

 ちなみに《SOX》はデモの効果が消えないうちに色々画策して、華城先輩は怪我で動けないながらも的確な指示と下ネタを言って更なる上の段階の性知識流布を行っている。結果は上々だ。《SOX》を敵視を通り越して殲滅すら望んでいるアンナ先輩にとっては腹立だしい結果だろうけど、感触としては第一清麗指定都市を中心に、政府よりも《SOX》の意見を支持している方が多数だ。今もその打ち合わせ中だったんだろう。本当に申し訳ない。

「えっと、邪魔ならすぐ帰ろうと」

「いえ、わたくしの方こそお邪魔して申し訳ありません。先客がいるとは知らなかったもので」

 完璧なお辞儀を披露し相手に一切不快感を与えない丁寧な所作は、ゆとりの怯えや毒気を抜いてしまう。困ったように僕に視線を向けてきた。僕に向けられても、正直本当に困る。

「奥間君の中学時代はどんな方でしたの?」

 さらりと当然のように雑談に入っていた。獣性に火がつくと本当にヤバい人なんだけど、それ以外では本当に人の心の隙間を埋めていく優しさと慈愛を持った人なのだ。獣性に火がつかなければ。

「狸、奥間の話訊きたいのか?……ですか?」

 ゆとりが慣れない敬語を使っている。鼓修理が話さないなと見てみると、あれ? いつの間にアンナ先輩の膝の上に乗ってるの? なんか姉が妹をあやすみたいに膝の上に乗せて頭をなでなでしていた。妹ががちがちに凍りついているのを無視すれば仲のいい姉妹に見えなくもない。なんか僕の愚息をなでなでしている時のアンナ先輩の嬉しそうな顔を思い出してしまった。

「普段の話し方で結構ですわ。それに、呼び方も普段通りに。その、以前はほんの少し、わたくしも我を忘れてしまった面は多少あったので」

 そのほんの少しでゆとりは縊り殺されそうになってたんだけどね。僕の名前を呼んだというだけで。

「えーと、その……」

 ゆとりは難しい顔をしてしまう。イメージとは一切違う、アンナ先輩の慈愛の一面に触れたからだろう。実際アンナ先輩は水が染み渡るように、すっと人の心に入り込んでしまう。これは僕がアンナ先輩と初めて会った小学生時代からそうで、アンナ先輩の本質の一部なんだろうと思う。

 ただゆとりは僕がアンナ先輩に襲われたこと、華城先輩を傷付けたことを最も怒っていて、その怒りはまだ消化できていなかった。華城先輩に関しては大事な人が狙われたという想いから理解は出来ても、僕の件に関しては本当にキレていた。

「……あんたに憧れて、卑猥を取り締まりまくってたよ」

 怯えと怒りから、その一言だけしかゆとりは言えなかった。

 事情は分からなくても、ゆとりが非常に複雑な、しかも負の思いを抱いていることはわかったのだろう。アンナ先輩は決して鈍い人間ではない。理解はするし察するが、それがどういうものなのかを実際に自分で経験したことがなかっただけで。

 その経験をさせなかったのがアンナ先輩の母親であるソフィア・錦ノ宮の教育なのだろう。

 汚いものを徹底的に廃し、それらから子供を守り、正しい事だけで子供たちを育てていく。

 その想いだけで《公序良俗健全育成法》を夫と共に作り上げ、実際に国の方針として通した女傑。

 それがアンナ先輩の母親だった。そしてアンナ先輩は、その方針の最大の成功例として一番に挙げられる子供だった。

 僕や華城先輩から言わせれば、それこそがアンナ先輩を歪ませた最も大きな原因なのに。

「失礼しましたわ。……そうそう、綾女さん。わたくしと奥間君で選んだお見舞いの品を持ってきましたのよ」

 華城先輩なら官能小説(オトナ小説と《育成法》以降は呼ばれているけど)が本当なら喜ぶだろうけど、無論今の日本にはそんなものは売っていないので、アンナ先輩だとどうしてもお堅い小説を選んでしまうところを僕がなんとか華城先輩の好みそうな、比較的気軽に読める娯楽小説をいくつか選んで買ってみた。
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