狸吉「華城先輩が人質に」アンナ「正義に仇なす巨悪が…?」【下セカ】

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19 : ◆86inwKqtElvs [saga]:2020/08/21(金) 10:07:49.00 ID:Vqcr7VCy0



 ああ、やっぱりそうなるのか。アンナ先輩の変化は顕著だからなあ。愛の儀式について語られたら僕殺されるなともはや悟りのような境地で聞いていた。

「奥間君がわたくしを深く愛してくれていることに、先日ようやく気付いたんですの。わたくしが思っていたより、ずっと強く」

 アンナ先輩は、僕に笑いかけた。

「確かに奥間君がわたくしを変えてくれましたわ。ですがその変化はわたくし自身が研鑽を怠れば、悪い方向へ向かっていきますでしょう。わたくしは奥間君がわたくしを変えたのだと誇りを持って言える女性になるよう、努力していきたいと思っています」

 穏やかさの中に、強い決意があった。僕が圧倒されるほどの。

「そうか」

 母さんはアンナ先輩の様子に満足したのか、

「アンナのようになりたいと言っていたお前が、アンナにここまで言わせるようになったか」

「…………」

 何も言えなかった。ただ何も知らずにその歪んだ健全さに憧れていた僕しか知らない母さんは、そう思っている母さんには、何も言えなかった。

 不破さんは完全に外野の人間の筈だが、アンナ先輩が変化して一連の出来事に関わってたし、何か思うところがあるのかもしれない。ただじっと、無機質な瞳の中に何かを込めて、じっと僕を見つめていた。『それでいいのですか?』と問いかけているように聞こえたのは、僕の思い込みだろうか。

「……それで、わたしは解放していただけるのでしょうか?」

「わたくしは理由はありませんわね。今は生徒会長ではありませんから、持ち物検査をするつもりもありませんわ」

「残念ながら私も貴様のような要注意人物の所持品を見せてもらいたいところだが、今は休暇中だ」

 不破さんは何とか無罪放免になったらしい。でもこれ、僕がむしろヤバくなってない?

「不破さんには以前お世話になりましたし、わたくしが支払いますわ。マスター、彼女と奥間君のお会計はわたくしが支払いますので」

「狸吉を奢る必要はない。アンナ、狸吉を甘やかしてはいかん」

「いえ、ここに寄る前に、奥間君にはプレゼントを買っていただきましたの。その分を考えると、むしろわたくしの方がお世話になっていますわ。奥間君はわたくしが世話をしようとしても自分でやってしまったり、むしろもっと甘えてほしいぐらいですの」

「本当に愚息には出来過ぎた娘だな、君は」

 いやここでの世話ってもうほとんどペット的な扱いだから。家事とかだけじゃなく、勉強を教えてもらったりグチャグチャしたりご飯を食べさせたりお風呂に入れたりグチャグチャしたりグチャグチャしたり、とにかく隙あらば挑発してくるから。アンナ先輩、僕を学校辞めさせて自分のお部屋で飼いたいと思ってる節があるんだよなあ。

「せっかくですが、アンナ会長。自分の分は自分で支払います。もしわたしに何かを返してくれるというのであれば、わたしは別のことを求めます」

「え? 不破さん?」

 僕だったら即刻逃げるようなこの状況で、何を言いだすんだ?

「せっかくですから、アンナ会長と奥間さんのお母様、善導課の幹部でもあるあなたにも問いたい」

 不破さんの瞳はいつも通り無感情な、だけど何かを秘めた、挑戦的な光を込めていた。

「何故卑猥は悪なのですか? 行為の規制だけでなく、知識を求めることすら悪なのですか? それが社会のルールだから、正義だから、悪だから、嫌いだからという曖昧かつ感情的な理由ではなく、論理的かつ具体的な理由をわたしは知りたい」


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