【ミリマスR-18】初体験同士のPと莉緒が一夜を共にする話

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3 :夢の半ば 2/17 [sage]:2020/10/23(金) 18:19:17.63 ID:W50xWqsD0
 BGM代わりにつけたテレビでは、さっきまで一緒に飲んでいたこのみさんが、赤いドレスに身を包んで歌っていた。二週間前に収録した歌番組のオンエアだった。事務所で録画を見ようと思っていた所だったが、渡りに船だったかもしれない。

「この曲、大好き。素敵だわ……。ステージのこのみ姉さんって大人よねぇ」
「こういう歌がきっかけでファンになった、って声が多いんだよ、あの人。動画サイトのコメントとかファンレターとかもさ。まぁ、大抵本人の姿を目にするとルックスのギャップに驚かれちゃってて、時々複雑そうにしてるけど。内面はしっかり大人なのに、アダルティアピールが毎度毎度噛み合ってないのもちょっと不憫だよな」
「……怒られちゃうわよ、そんなこと言ってると」

 このみさんのステージが終わった。ディレクターと交渉した結果トリに入れてもらえた"dear..."。テレビの前では二人分の拍手が鳴っていた。よく冷えていたビールが喉越し良く胃の中に吸い込まれていく。

「莉緒、さっき店で潰れてたのに、飲んで大丈夫なのか」

 グラスに注いだ梅酒を、莉緒がロックで口にしていた。顔こそほんのり赤いが、酩酊しているような様子も無い。

「んー、あれね……ちょっと演技しちゃった。悪酔いはしてないわよ」
「えっ、そうだったのか……どうして?」
「だって……ああでもしないと、最近中々二人っきりになってくれないじゃない」
「……」
「プロデューサーくん。私、疑問に思っていることがあるんだけど」

 意図的に状況を避けていたのを、見抜かれていた。返す言葉が思いつかず、残り少なかった缶ビールを逆さまにしたが、ほんの僅かの雫しか入っていなかった。

「あれだけ沢山の女の子に囲まれてて、誰のことも好きにならないの?」
「好きになったらマズい要素しか無いじゃないか。立場ってものがあるだろ」
「キミを慕ってる子がいるのは認識してるんでしょう?」
「……まぁ、そういう意識が剥き出しの子もいるけど。年上に対する憧れとか……単にそういうもんだと思うようにしてるよ」
「何だか……残酷ね」
「そうやって仮面を被っていないと、身が持たないんだって。忙殺されているのが有難く感じるぐらいさ。それに、俺みたいなのと一緒になったって、幸せにはなれないよ。みんなには、将来、もっといい相手が見つかるはずだ」

 半分は嘘で、半分は本当だった。目の前の相手に対する、表に出てこようとする本心を、綺麗ごとで無理矢理踏んづけて、塗りつぶす。

 同い年で、タメ口を利き合う莉緒には、学生の頃の女友達みたいな心地良い距離感をずっと感じていた。もちろん、プロデュースする担当アイドルなんだから、気を配らなければいけないのは他の子同様だ。ただ、ともすれば下品になってしまう過激な言動やセックスアピールはいつだって、女っ気の無い自分には深々と刺さっていた。もしかしたら気があるのかも、なんて、都合の良い期待も胸に抱いていた。
 そして、純粋な存在たるアイドルとしても日に日に眩しくなっていく莉緒に心を奪われないよう、自分自身に、義務感と社会的立場という蓋を被せ続けてきたのだ。それもここ数週間では限界を迎えつつあり、劇場で姿を見かけて目が合う度に、鼓動が聞こえそうなぐらい胸が高鳴るようになる始末だった。
 それで意図的に接触する機会を減らそうとした結果の今日だ。離れなければ、と思う一方で、もっと近づきたい、と焦がれる。大義名分と内心の欲求とのせめぎ合いにくたびれている自分がいたのも確かだった。

「……あんなにみんなのことを褒めてるのに、自分自身のことになると、評価が低いのね」
「自己評価がもっと高かったら、きっと自分が表に立とうとしているよ。いいんだ、俺は裏方で、原石が宝石になっていくのを見守っていられれば、それで」

 空になった莉緒のグラスで、氷がカランコロンと音を立てた。

「原石を見つけて、丁寧に磨いてピカピカの宝石に仕上げているのは、キミじゃない。もっと自信持ってよ」
「お、俺はただ、みんなの手伝いをしているだけだよ。キラキラになっているのは、みんなの日頃の努力の賜物であって――」
「その努力ができるのも、プロデューサーくんが支えててくれるからなのよ。私だって……」
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