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パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男のとてもとても楽しい忘年会 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [#0718]:2008/12/12(金) 14:14:32.27 ID:9Wv.ZoEo
皆さまご無沙汰しております
長谷川君です

前に書かせていただきました
「パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の悲しい人生」
ttp://vippants.blog57.fc2.com/
の続編です
お時間がございましたらどうぞお付き合いください

前作ではたくさんの応援をいただき
本当にありがとうございました
ただ、いくつかのご批判意見
女性下着の大量窃盗事件を起こした長谷川君が
のほほんと安楽な人生を過ごしていいのか
暖かい家庭に恵まれて楽しく暮らす事が許されるのか
このようなご意見をいただき、自分でも考えてみました

長谷川君に過去を償わせてきちんと謝罪させ
また被害を受けた女性たちの心の傷を取り払う事ができるのか
自分なりに考えて続編を書いてみました
もちろん全ての皆さまが納得できるとは思っていませんが
頑張ってみます

なので今回はあまり楽しいお話ではありません
初めてご覧になる方は上記のまとめサイトを読んで頂けるとありがたいです

では始めます

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【安価とコンマ】或る無名のウマ娘 6 @ 2024/05/21(火) 23:03:45.14 ID:LycZD2yqo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1716300225/

開くと貯金が増えるスレ @ 2024/05/20(月) 21:35:55.08 ID:MOxGLALr0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716208554/

イケパンみっちん39 このスレには可愛いパンダが居るにぇ! @ 2024/05/19(日) 19:47:17.65 ID:skVyN/3XO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716115637/

僕の記憶が全て消えても生まれ変わったらまた君を探す @ 2024/05/18(土) 22:27:06.84 ID:7xX40cGt0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1716038825/

グレみんと快楽の座 @ 2024/05/17(金) 22:24:15.47 ID:DUS3Z54Xo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715952254/

【習作】安価コンマでワンピース @ 2024/05/16(木) 21:19:27.48 ID:QUcgFIEu0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1715861966/

テンリュデネ・ゾー @ 2024/05/14(火) 20:47:34.15 ID:aewHWgbao
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715687253/

薬師とか錬金術とか、田舎とか @ 2024/05/13(月) 23:03:05.43 ID:nAT+1SmNo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1715608984/

2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/12(金) 14:22:10.70 ID:9Wv.ZoEo
パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男のとてもとても楽しい忘年会

第1話 集合編

12月に入ったある週の週末だった
俺と妻のみどりは宴会の準備をしていた

ここ数年いつもやっている
会社の部下を招いての忘年会だ

異常気象はもはや日常化し
昨日までは汗ばむぐらいだったのに
今日はずいぶん寒い
雪でも降りそうなどんよりした日だった

今年の俺には楽しみにしている事が2つあった
1つはこの1年で大きく変わったみどりを見せびらかす事

ずいぶん上手になったお化粧をして
短く切ったサラサラの髪を明るい茶色に染め
たおやかな笑顔で微笑むみどり

相変わらずすらりとした肢体だが
そのお腹は服の上からでも分かるほどに膨らんでいる
すでに妊娠7カ月だ

皆が見たらさぞびっくりするだろう
1年前の地味で無愛想なみどりとは全然違うから
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/12(金) 14:29:31.97 ID:9Wv.ZoEo
ただのノロケなんだけど
マジで今のみどりは40前には見えない
10歳は若く見える

実際20代後半って言っても普通に通用すると思う
そんなみどりを早く見せびらかしたかった

そしてもう一つは今日は特別な客が来る
俺にとっての大切なお客様だ

みどりはまだはっきりとは知らない
ちょっと人数が増えるからと言って
大目に料理を用意してくれるように頼んだ

「ねえあなた誰が来るの?私の知ってる人?」
ふふふまだ内緒だ

みどりは野菜や肉を切って並べている
俺はテーブルやストーブを出した

今日は人数が多いので
新しく買ったカセットコンロも出した

もうあまりみどりに重労働はさせられない時期だ
人数も多いしみどりもあまり動けないし
今日の準備は大変だった
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/12(金) 14:36:51.54 ID:9Wv.ZoEo
出産のため、みどりはいったんパートを辞めた
俺も今日は午後から有給を取って準備を手伝っている

午後からずっと準備に追われていたが
なんとか間に合いそうかな

時間はまだ余裕があるな
俺はキッチンの椅子に座って
立ち働くみどりの後ろ姿を眺めた

ずいぶん大きくなったお腹に負担をかけないよう
きょうのみどりはクリーム色のワンピースを着ている
その上にピンクのカーディガンを着て
エプロンを付けている

今日のお客の事ははっきりとは説明していないけど
まあだいたい想像はついてるのだろう
何かの虫が騒ぐのか
今日は特に念入りにお化粧をしている

そんなみどりの働く姿はとても美しかった
結婚した時はあんなにつまらない女だったのに
なぜこんなにきれいになってくれたのだろう
新婚当初の無愛想な姿を思い出して俺は1人でニヤついていた

こんなに変わってしまったお互いが信じられないくらいだ
朝起きてリビングに行くと
もう起きていてテレビを見ていたみどりが俺を振り向く
そしてニッコリと微笑むのを見て一日が始まる
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/12(金) 14:40:09.84 ID:9Wv.ZoEo
(あれ?うまくトリップが付かない・・・)

夜会社から帰ってくると夕飯の支度をしていたみどりが
俺の方を見て笑いかける
抱き寄せてキスをする時の充足感

そして夜、俺のベッドに潜り込んでくるみどりを迎え入れる時の
ゾクゾクするような期待感

俺の腕の中で絶頂に達するみどりの切なそうな声と体の震え
ノロケてるみたいで申し訳ないけど
今や俺の生活の全てはみどりのためにあり
みどりの人生の全ては俺のためにある

基本的に料理はできるが全てが大雑把なみどりの包丁さばきは
お世辞にもきれいとは言えないが
こうやって働くみどりの後姿を眺めるのがとても楽しかった

みどりの包丁の動きに合わせてワンピースのスカートが小さく揺れる
そしてかすかにヒップのラインが透けて見える

俺はちょっと危ない妄想にかられて
みどりに背後から近付いた

みどりをそっと後ろから抱き締め
短い髪からのぞく白い首筋に唇を這わせる

「あなた・・・ダメよ」
そんなみどりを無視して両手で胸を大きく揉みしだく
前よりもかなり重く、どっしりとした感触だ
6 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 14:46:43.19 ID:9Wv.ZoEo
(トリップの付け方を間違えましたので新しいのに変えます)

最近はもうみどりの体とお腹の子供に負担をかけないように
セックスは我慢していたので
みどりをこうやって抱くのは久しぶりだった

しばらく俺はゆっくりと
みどりの温かい体の感触を味わった

ブラジャー越しに手のひらに伝わる
みどりの甘い乳房の匂いと柔らかさを楽しんだ

「もう・・・ちゃんと切れないじゃないの・・・」
口ではそう言いながらも
みどりは豊かなヒップを俺の股間に押し付けてくる

ちょっとムラムラしてきた
みどりをこちらに振り向かせてキスをする

包丁を流しに置いたみどりも優しく応えてくれた
あまり長くないみどりの舌を探り当て
ゆっくりと絡め合った

ものすごく甘美なみどりの舌だ
結婚した当初は
みどりとこんなに甘いキスができるなんて想像もしてなかったのに

ぐんにゃりとなったみどりは俺に全体重を預けてくる
俺はお腹の子供の重みも受けながら
さらにみどりの口の中を舐め回す
7 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 14:50:47.90 ID:9Wv.ZoEo
みどりも精一杯舌を伸ばして
俺の口の中をかき回してくれる
とても気持ちがいい

俺はみどりのワンピースをめくり上げた
みどりの太ももを包むストッキングの
サラサラした手触りが興奮をかき立てる

「うーん・・・だめよ・・・」
逃げようとするみどりを再びクルリと後ろに向け
テーブルの上に両手をつかせた

俺はしゃがみこんで素早くワンピースをめくり上げた
白っぽいベージュのストッキングと
その下の真っ白なパンティーに舌を這わせる

「あなた・・・時間ないってば・・・」

俺はそれには答えずに
まずはストッキングだけを引き下ろした

パンツとお尻の境目のあたりにゾワゾワと舌を這わせる
「・・・ん・・・」
みどりがビクンと身体を震わせる

さすがにもう妊娠後期だししかも冬だし
ちょっと大きめの安心パンツだった
しかも真ん中にはおりものシートまで貼り付けている
8 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 14:54:03.35 ID:9Wv.ZoEo
パンツマニアの俺にとってはちょっと残念な光景だが
そんなものでみどりに対する情熱は薄れるはずがない
まっすぐ伸びたみどりの太ももと同じぐらい、白い清潔なパンツに興奮する

俺にとってはたまらない瞬間だ
みどりも俺のこの習性は十分理解してくれている
はいてるパンツが俺の唾でベトベトになっても笑って許してくれる
俺はみどりの白いパンツを存分に舐め回した

全てを理解しているみどりはさらに俺の顔にお尻を押し付けてくる
誘うように小さくお尻を揺らせている
俺はわざとみどりの一番感じる部分には顔を近づけない

「うーん・・・」
みどりがじれったそうに腰をくねらせる
まだまだだよみどりお楽しみは取っておかないと

パンツ越しに舌と頬に伝わるみどりの柔らかなお尻の感触を十分楽しんでから
ゆっくりとパンツをひざのあたりまで下げる

眩しいぐらいに白くてすべすべで
陶器のような光沢を持った
みどりの柔らかいお尻がむき出しになる

「あなた・・・寒い・・・」

そう言いながらもみどりは俺が愛撫しやすいように
お尻を突き出して俺を誘ってくる
9 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 14:57:45.83 ID:9Wv.ZoEo
俺はしばらくみどりの後ろの穴をじっと見つめてから
そこに口を付けた
俺の舌を伝わってじんわりと陶酔感がにじみ拡がる

嗅ぎ慣れたみどりのかすかな体臭が
顔の周りに温かくまとわりついてくる

「あぁ・・・あなた・・・」

みどりは小さな声を出してあえぎ始めた
お尻の近くの柔らかい部分から
熱い液体が流れ出す

まだ時間はあるし
このままみどりの体を久しぶりにじっくり楽しもう

俺はあふれ出るみどりの蜜を吸った
とても甘くて、そして熱かった

じらしながら、みどりの一番感じる部分の周りに舌を這わせる
まだ肝心なところは攻めない

「ああ・・・」

みどりは小さくあえぎながら
舐めてほしい部分を俺に押し付けてくる
10 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:00:44.79 ID:9Wv.ZoEo
俺はそれを避けながら、周囲だけを丹念に舐めた
そして徐々にみどりの核に舌を近づける

「っ・・・・・」
みどりのひざからガックリと力が抜け
お尻を落として崩れ落ちそうになる

そんなみどりの腰を下から支えながら
さらに攻撃を続ける

さんざんじらされていたので
みどりの性器からは熱い液体が流れ続けている
もう太ももの辺りにまで垂れてきている

「ああ・・・ああ・・・」
俺は今はみどりの中心部分だけを攻撃している

恥ずかしそうに顔を出している
みどりの小さな芯を舌で転がした
次第にその振動速度を速めていく

「ああ・・・あなた・・・ああっ・・・」
みどりはもう手を付いていられなくなり
テーブルの上に胸と顔を伏せた
くぐもった声で小さな叫び声を上げている

「あなた・・・だめ・・・イッちゃぅ・・・」
みどりのお尻が意志とは関係なく勝手に揺れ出した
そこで俺は舌をパッと放す
11 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:03:44.92 ID:9Wv.ZoEo
「何で?何でやめるの?」
抗議するみどりのひざがガクガクと震えている
「お願い・・・もうちょっとだから・・・もうちょっとして・・・」

みどりはさらに俺にお尻を押し付けようとするが
それを無視して立ち上がり
みどりの肩をそっと押さえる

「もう・・・いじわる・・・」

恨めしそうな顔をしながらも
みどりは俺の前に従順に腰を下ろした

もう長い付き合いなので会話などは必要ない
こうやってじらした後のみどりはいつもより激しく反応する事も知っている

みどりはパンツを半分ずらされたままの姿で俺の足もとにひざをつき
慣れた手つきで俺のズボンのファスナーを下ろす
「・・・お化粧取れちゃうじゃないの・・・」

久しぶりなのですでにもうギンギンだった
みどりの柔らかい舌で弄ばれる感覚を想像すると身震いが走る

みどりは俺のチンコの先端に軽くキスをしてから
しばらくは先の方だけをチロチロと舐めた
まとわりつくみどりの熱い吐息がとても気持ちいい

さっきのお返しとばかりにみどりもなかなか俺の全てを口にしてはくれない
俺は今すぐみどりの髪をつかみ
いつものように強引に喉の奥まで突き刺してやりたい欲求と必死で戦った
12 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:07:45.45 ID:9Wv.ZoEo
病院でもらった出産の手引きにはもう
あまり強烈なセックスはしないようにと書いてある

みどりの喉の奥に深く抜き差しを繰り返し
息のできない苦痛にのたうつみどりを見てみたかったけど
さすがにこの時期、母体にあまり負担はかけられない
もどかしい思いで俺はみどりの揺れる髪をゆっくりと撫でた

さんざんじらせた後でみどりは口を大きく開き、そしてようやく口いっぱいに頬張ってくれた
腰椎から脳天をめがけて穏やかな快感が突き抜ける
俺の腰も意志とは関係なくカクカク揺れる

あまりの気持ちよさにいきなり発射しそうだった
みどり・・・上手くなったね・・・
その時だった

ピンポーン

いきなり玄関のチャイムが鳴った
まだ予定よりだいぶ早いのに
誰だろう?

何だよ今いいところなのに
空気読めないヤツだな
宅配便かそれとも宗教の勧誘か?

「もう・・・」
お楽しみを邪魔されたみどりは恨めしそうに寝室に駆け込み
慌ててズボンのファスナーを締めた俺が玄関に出た
完全に勃起していたチンコが邪魔で歩きにくい
13 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:10:33.38 ID:9Wv.ZoEo
バタンと勢いよくドアを開けると
そこには沙希ちゃんが立っていた

「お久しぶりでっすぅー!今日はお招きありがとうございまっすー」
そう言ってはじける笑顔で立っている沙希ちゃんは
全然昔と変わっていない

みどりと同じ髪型をして
相変わらず豊満な肉体をしていた

ケーキの箱のような
大きな包みを抱えている

派手な紫のコートを着ていたが
俺にはその下の肉体を鮮明に想像できる

今までに何度も妄想で犯しまくった
たっぷりとした肉体があるはずだ

今までみどりとしていた行為の感覚も手伝って
俺にはまるで沙希ちゃんが全裸でそこに立っているかのような錯覚にとらわれた

生臭い妄想にとらわれている俺に気づいてるのかどうか
沙希ちゃんははじけるような笑顔でそこに立っていた

コートの下には同じ紫色のセーターを着て
その下のジーンズもぴっちりと肌に巻きついている
たまらなくエロティックな姿だった
14 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:13:46.93 ID:9Wv.ZoEo
もちろん沙希ちゃんも今日のゲストの一人だ
呆然としている俺と意味不明な会話をしているうちに
ようやく服装を整えて口紅を塗り直したみどりが出てきた

2人とも手を取り合って再会を喜んでいる
前に教えてもらったメールアドレスに今日の招待状を送ると
絶対に行きますと2つ返事で約束してくれたのだ

「せっかくなんでお手伝いしようと思って早く来ましたー」
相変わらず沙希ちゃんいい子だな

俺にパンティーを盗まれたのに
俺と浮気する寸前までいったのに

コートを脱いだ沙希ちゃんはその豊満な巨乳をひけらかしながら
さっそくみどりの横に並んで働き始めた
実際助かるよありがとう沙希ちゃん

しかしせっかくみどりとセックスしかけてたのに
残念だな
まあいいか
後で久しぶりに沙希ちゃんでオナニーさせてもらおうっと
勃起もようやく収まってきた

そして気がつくと玄関で1人の小男がモソモソと靴を脱いでいる
誰だこいつ?
こんな男なんか招待してないぞ
15 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:20:36.40 ID:9Wv.ZoEo
しかも人の家にスーツなんか着てきやがって
大きな花束まで持ってる

お前いったい誰だ?
沙希ちゃんと一緒に来たのか?
何で沙希ちゃんと一緒なんだよ

でもこいつ何か見覚えがある
しかもついさっきまで会ってたような気がする

その小男は靴を脱ぐとペコリと頭を下げた
「へへへお疲れ様ッスー」

何だお前川上じゃないか
まだ早すぎるぞ
何でスーツなんか着て花束持ってるんだ?

しかもけっこう似合ってるし
カッコいいじゃないかコイツ

川上と沙希ちゃんには接点はある
1年ぐらいは一緒に働いていたはずだ
沙希ちゃんは先に辞めてしまっていたけど
その頃新人で入ってきたのが川上だった

川上はなかなか爽やかな好青年で
学生時代はずっとサッカーに明け暮れていた
16 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:23:55.30 ID:9Wv.ZoEo
残念ながら背が低いので
あまり選手としては大成しなかったが
そこそこいい所までいったらしい

頭は悪いけどとても腰が軽く、頼むと何でもやってくれる
明るくて人なつっこい、いいヤツだ
俺が持っていないものを全て持っている

当時2人が付き合っていたようには思えない
沙希ちゃんはやめてすぐに結婚したって言ってたし
あの頃の川上は完全に新人で
俺とみどりに睨まれながら必死で仕事を覚えていた頃だ
とても彼女なんか作る余裕はないはず

知らない者同士ではないとしても
今日一緒に宴会するにしても
それが何で沙希ちゃんと一緒に来るんだ?

呆然とする俺の前を素通りして川上はスタスタと部屋に入り
美しいみどりにしばし見とれていたが
持っていた花束をうやうやしくみどりに手渡すと
沙希ちゃんの横に並んだ

川「えー本日は」
沙「お招きいただきありがとうございます」
川「そしてみどりさんご懐妊おめでとうございます」

何だお前らお笑い芸人みたいに
わざわざ練習してきたのか?
17 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:31:10.49 ID:9Wv.ZoEo
川・沙「(せーのっ)お二人に報告がありまっす」
川「実は僕たち」
沙「私たちこのたび」

川・沙「結婚する事になりましたっ!」
川「つきましては長谷川さんご夫婦にぜひ仲人をお願いしたいと」
沙「よろしくお願いしまっす!」

ええええお前ら
知らん間に
そんな関係になってたのか?

実は前から2人はお似合いだと思っていた
明るく楽しい沙希ちゃんと
ハツラツとして元気な川上は
地味な俺とみどりとは全く正反対の
まさに似合いのカップルだった

身長は沙希ちゃんの方が高いし体重は倍ぐらいあるし
年も沙希ちゃんの方が一つ二つ上のはずだけど
この元気者コンビはなかなかいい組み合わせだと思った

しかし俺は2人が仲良くなるような状況にはさせなかった
なぜなら俺が沙希ちゃんに惚れていたからである

どちらかが手が足りない時は
必ず俺かみどりが手伝った
川上なんぞに沙希ちゃんを渡すつもりはなかった
18 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:34:45.25 ID:9Wv.ZoEo
だけど川上はいいヤツだった
いつも元気で頑張り屋で
無愛想な俺をいつしか補佐してくれるようになった
俺も川上がかわいくなり
何度も飲みに連れて行ってやった

もう弟みたいなものだった
川上もなぜか俺を慕ってくれたし

沙希ちゃんが離婚したって聞いた時も
まず浮かんだのは川上の事だった
この2人ならいいカップルになると思った

それが知らない間にこんな関係になってたとは

なぜだろう
沙希ちゃんを取られて悔しいとかは全く思わなかった
本当におめでとうと思った

2人がどんななれそめでつき合うようになったのか
それは後できっちり問い詰めるとして
今はとにかく祝福してやろう

「おめでとう川上」
「おめでとう沙希ちゃん」
みどりも嬉しそうだ
19 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:38:39.55 ID:9Wv.ZoEo
沙希ちゃんは恥ずかしそうに微笑み
川上も照れている
何だお前ら本当にお似合いだな

よかった
沙希ちゃん・・・
今度こそ幸せをつかんでほしい

ほのぼのとした空気が流れていたが
みどりがスパッと断ち切った
「あなたもう時間がないわよ」

だいぶ余裕があると思ってたのに
みどりとイチャついてたのと
こいつらの結婚宣言につき合わされてたんで
もうあまり時間がなくなっていた

そうだそうだ準備しないと
俺は邪魔なソファーなどを寝室に運んだ
上着を脱いだ川上も手伝ってくれた

「川上・・・」
「ハイッ」
「おめでとう」
「ありがとうございますッス」

「俺も沙希ちゃん好きだったんだからな」
「ヘヘヘ分かってたッスよ!」
「絶対沙希ちゃんを幸せにしろよ」
「はい!」
20 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:42:02.26 ID:9Wv.ZoEo
そうしてバタバタしてるとまたチャイムが鳴った
また俺がドアを開けに行く
今日は客が多いから大変だ

ドアを開けた瞬間だった
地味な俺たちの家にまばゆい光が燦々と降り注いだ

真っ白な妖精が突然俺の家に現れた
日が落ちていく冬の夕闇に
なぜか明るい陽光が周囲を明るく照らし出した

そこに立っていたのは石原さんだった
この笑顔ですぐに分かった
あの時と同じ、透き通った美しい笑顔だった

真っ白なコートに身を包んで
すらりとした長身の石原さんが艶然と笑っていた
「どうも・・・お招きいただいて・・・」

なぜ石原さんを招待できたのかの説明はしない
インターネット上の大人の事情と解釈してほしい

小学校時代に俺にパンツを盗まれて泣いていた頃とは全然違う
高校時代は颯爽とした明るい少女に生まれ変わった
爽やかな視線でまっすぐ前を見つめていたあの少女時代とも少し違う

柔らかな表情は俺の期待をはるかに凌駕していた
品のある大人の女性の魅力を全身から放射していた
これはたまらん
21 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:45:43.33 ID:9Wv.ZoEo
さっそく石原さんを部屋に上げてみんなに紹介した
あまりにも強烈な美人の登場に一同の身が引き締まる
いきなり俺のみどりに強烈なライバルが現れてしまった

それぞれ自己紹介をしてから
石原さんもコートを脱いで手伝い始めた

「あの・・・これつまらないものですけど差し入れです」
そう言って石原さんは持っていた紙袋を開けた

中に入っていたのは大量の漬物だった
誰でも知ってる大手の漬物メーカーだ

曲がりなりにも食品会社に勤めている俺にはよく分かる
業界の何番目かに入る大手メーカーだった

「主人の会社のものなんですけど・・・黙って持って来ちゃいました」
そう言って石原さんはニッコリ笑った

再び一同に驚きの輪が広がる
石原さんは結婚して姓を変え
大手漬物会社の社長夫人となっていたのだった

漬物会社ってのが何だかかわいらしいけど
そうだよなこんな美人なんだもんな
金持ちのボンボンは放っておかないだろうな
すごいな皆の人生って
22 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:49:10.89 ID:9Wv.ZoEo
(ここで注意書きです
 ここから先に登場する人物
 特に女性陣ですが
 ほとんどが結婚して姓が変わっています
 しかしあまりリアリティを追及していると
 話がどんどんややこしくなっていくため
 全て旧姓のまま話を進めます
 いちいち新しい名字を考えるのも面倒なので
 では戻ります)



そして石原さんは
高価そうなふわふわした白いセーターの袖をまくり上げ
女性陣と一緒に働きだした

妊婦のみどりをかばいながら立ち働いてくれる
漬物や刺身を切ったりオードブルを並べたりしている

すぐに気付いたがその手際のいい事
包丁さばきも盛りつけ方も見事だった
不器用なみどりは目を丸くしてそれを見ている

みどりはツカツカと近寄って来て
俺を寝室に引きずり込んだ

「あなたあの人とどういう関係だったのよ?」
だから前に説明しただろうあの石原さんだよ
23 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:52:28.59 ID:9Wv.ZoEo
「ふーん」
何だそのいやらしい目つきは

「あなた」
ハイ
「逃した魚は大きかったって思ってるでしょ」
ハイソノ通リデス

「正直でよろしいですこと」
みどりはそう笑ってつぶやき
俺の肘をギュッとつねって立ち去った

みどり・・・
本気で怒ってるな・・・
今のはちょっと・・・痛かった・・・

またチャイムが鳴った
時計を見るともう約束の時間に近い
やばい急がないと間に合わないぞ

ドアを開ける前から声が聞こえる
ゲラゲラと笑い合ってる女性の声だ
もうこの声だけで誰かは分かる
正直あまり呼びたくはなかったんだけど

でもけっこうコアなファンも多いみたいだし
やっぱり構成上呼ばないといけないと思ったんで
おそるおそるドアを開けた
24 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 15:57:22.05 ID:9Wv.ZoEo
「長谷川クーーーーーーーーン!!!」
「久しぶりー会いたかったわ」
「よーーーーーーーーーん!」
「キャハハハハハハハハhwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

そこに立っていたのは2人の巨人
長身の俺とほとんど変わらない
いや横幅があるから俺よりはるかに大きく見える
片方は色白でふっくらまるまる[ピザ]
もう片方は小麦色に日焼けした筋肉ゴリラ
こんなのが家に上がってきたら床が抜けるんじゃないか

何やら食べ物らしきものが入ったビニール袋を
両手で大量に抱えていた
「差し入れ持ってきた」
「わよーーーーーーーーーーーんっと!」
「キャハハハハハハハh」

俺の苦い青春時代をまざまざと思い出させる
そう、あの中学女子バスケ部集団のリーダーコンビ
早川さんと前田さんが登場した

早川さんは相変わらずえびす様のような顔でニコニコ笑い
前田さんはやっぱりラッシャー板前だった

そして2人とも
みどりが使う1年分ぐらいの量の化粧品を
顔じゅうにたっぷりと塗りたくっていた
25 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:00:54.18 ID:9Wv.ZoEo
「長谷川クーン全然変わんないネ」
「いやちょっと老けたわよ長谷川クン」
「老けてないわよあんた長谷川君になんて事言うのよ」
「そんな事ないでしょあなた自分のダンナと比べてるでしょ?」
「だって長谷川クンは私のハ・ツ・コ・イの人!」
「きれいな奥さんもらったんだってねちょっと見てやるからね」
「キャーハッハッハッハッハッwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

すいませんごめんなさいもう帰ってくれませんか
「大勢来るんだから準備大変でしょっ?」
「手伝うからゆっくりしてなさいネ」
「そうそう、はっせっがっわっクン」
「キャーハッハッハッハッハッwwwwwwwwwwwwwwwwww」

だめだ
熱が出てきた

ドヤドヤと上がり込んだ巨漢コンビは
挨拶もそこそこに自分たちの荷物を開いた

用意よく大きな紙皿なども買ってきたみたいで
パッパッと手際よくそれらを並べ始める
まさしくこれは大阪のオバチャンだ

しかし
そんな大量の食べ物を
いったい誰が食べるんだろう
そうかあんたら2人で食べるのか
26 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:05:23.57 ID:9Wv.ZoEo
またチャイムが鳴った
もうそろそろ会社のヤツらかな?
そうだ部下たちにあのオバチャンの相手をさせよう

若いヤツらだからオバチャンの最高の餌食だ
上司命令で相手をさせてやる

なに心配いらない
ちょっと飲ませておけば何でも言う事を聞く単純なヤツらだ

いそいそとドアを開けるとまたオバチャンが立っていた
あれ?こんなの呼んだかいな?
もしかして近所の人かな?
ガヤガヤうるさいんで文句言いに来たのか?

うるさいのは2人だけだし良かったら連れてってもらうかな?
「お久しぶりー」

しかしこの顔には見覚えがある
そうだ、小学校のセクシーアイドルNo,1の美少女だ

「うわー長谷川君だいぶ変ったねー」
あんたもね

かつてのナイスバディーは見事にもう面影すらない
ただの暑苦しい肉布団だ
27 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:09:01.41 ID:9Wv.ZoEo
林さんはニタニタと笑いながら俺の耳に口を寄せる
「2ちゃんねるの変態小説読んだわよ」
どうもすいませんつい出来心で

「私も出してくれたのは嬉しいんだけど、あんな書き方しなくてもいいじゃないのさ」
だって事実だったんですから

「どうせフィクションが前提なんだから、別に匂いまで書かなくても」
だって・・・本当の事だし・・・ってかネタバレは困ります

「あの時ちゃんと正直に言ってくれたら、いくらでも見せてあげてたのに」
いえもう反省してますから勘弁して下さい

「もっと長谷川クンの知りたかった事、イッパイ教えてあ・げ・たのに」
すいません俺には妻のみどりがいるんでそろそろ帰ってくれませんか?
「うっそだよーん!」

「後でとっちめてあげるからね」
そう言って林さんはすさまじい流し目を俺に投げつけ
家の中に入って行った

石原さんと林さん・・・同級生のはずなのに
人生って・・・すごいな
何か頭が痛くなってきた

俺も部屋に入ろうとすると
またチャイムだ
もうオバチャンは勘弁してくれ
まさかあの人まであんなになっていたらどうしよう
28 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:13:56.39 ID:9Wv.ZoEo
しかしドアを開けるとそこには
むさくるしい男が2人立っていた
何だこの汚い男どもは

って考えなくても分かるね
高校時代の悪友どもだ

酒に酔って女子更衣室を遅い
校舎のガラスを叩き割って逃げたバカどもだ

織田と村田の2人だった
もう1人の友達の石崎とはとっくに連絡が取れなくなっていた
落ちこぼれ友達だけど
石崎だけには向上心があったから
知らない間にちゃんと勉強して
自分だけ彼女を作って
落ちこぼれグループからさっさと逃げ出していた

織田と村田には今でもちょくちょく会う
この家にも来た事があるので
みどりとも顔なじみだ

もちろん2人ともちゃんと結婚して子供もいる
一升瓶とかウイスキーのボトルを何本か持っている

今でも一緒によく飲む
俺の数少ない親友だ
相変わらずむさくるしいけど
29 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:18:16.97 ID:9Wv.ZoEo
こいつらは巨漢女子コンビとも一応同級生なので
当時はあまり仲良くはしていなかったけど
俺が紹介するとさっそく話し始めた

俺は同窓会なんか行ったことないし
招待状すら来なかったから経験はないが
あまりお互い知らなくても
そこはやはり同窓生
たちまち当時の学校の話題で盛り上がり始めた

よかったオバチャンの相手ができたし
2人はさっそくオバチャンの餌食にされて
照れ臭そうに笑っている

いいなこういうのって
まさに同窓会の雰囲気だ

もうほとんど集まったかな
後は会社のヤツらと
一番来てほしいけど
来てくれないかもしれないあの2人だな

まああの2人とはこんなゴチャゴチャした状況で再会したくないし
また別の日にゆっくり会って話したいもんだな
どうしてるかな・・・・・
30 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:22:21.84 ID:9Wv.ZoEo
「あなたも早く食器並べて」
いきなりみどりに叫ばれて俺の妄想は中断した

キッチンと続いた居間はもう戦場になっていた
この日のためにわざわざ新しく買った大きなテーブルに
収まりきらないほどの料理が乗っている

しかもこの大勢の荒くれ軍団を
みどりが完全に仕切っている

妊婦のみどりは体があまり動かせないので
あれこれと口だけで指図している
さしものオバチャン軍団までもが
唖然としてみどりにつき従っている

さすがはみどり
俺にはもったいなさすぎる嫁だよ
みどりのくせに

そして再び部屋に入ろうとしたらいきなり玄関のドアが開いた
たくさん来るからもう鍵はかけてなかった

チャイムも鳴らさずに入ってきたのは
大学の同級生、岩川だった

小柄な体をさらに猫背に曲げている
相変わらず貧相な男だ
31 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:26:08.26 ID:9Wv.ZoEo
そうだなお前も呼んだんだっけ
大学時代は世話になったからな

お前いま何やってるんだ?
ちゃんと仕事はしてるのか?
たまには人と話したりしてるか?
ってゆーかもうちょっとまともな服は買えないのか?

まあ入って、適当にくつろいでくれ
別に誰にもかまわないでいいから
酒だけは飲ましてやるから

「こんばんわッスー」
おっとやっと社員たちが来たか
遅かったな

「川上さんと連絡取れないんで先に来ちゃいましたよ」
川上ならもう来てるよ彼女連れて

「えっ?マジっすか?どんな人ですか?」
お前らの先輩だよ
ものすごくかわいい美人だよ
「えええええええ彼女ができたって聞いてましたけど先輩ッスか?」

ああ入って見て来いよ
腰抜かすなよお前ら
ついでにみどりも見てびっくりして来い
32 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:30:26.96 ID:9Wv.ZoEo
「今日はお客さん多いって聞いたんでみんなでお寿司買ってきましたーっ!」
ありがとうお前らも本当にいいヤツだな
ってかもう食べ物多すぎるし

ドヤドヤと入っていく若者たちを見送って
俺は一度玄関の外に出た
ちょっとタバコ吸おうかと思った

みどりも妊娠したし
そろそろタバコをやめなければいけない
子供のためだ
タバコはやめよう
そう言ってもうずいぶんたつ

いつも家の外でしか吸わないし
みどりに言われて本数もだいぶ減らした
今は1日に5本ぐらいしか吸っていない

アパートの廊下に出てタバコに火を付ける
このアパートも今年いっぱいだ

子供が生まれるとここも狭くなるので
正月が明けたら新しいマンションに引っ越す事が決まっている

もう契約も終わってるし
使わない荷物などは少しづつ運び始めている
あとひと月ほどでこのアパートともお別れだ
33 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:33:49.60 ID:9Wv.ZoEo
みどりと結婚してからずっとここに住んできた
もう10年になるのか

いろいろあった
ずっとみどりと一緒だった
みどりとの暮らしがあまりにもつまらないので浮気も考えた

何度かパンツ盗んだ事がバレてしまい
あやうくみどりに出ていかれるところだった

死ぬ寸前までみどりを追いつめでしまった事もあった
なのにみどりは俺から離れようとせず
今までずっと一緒にいてくれた

俺も今はみどりの事しか考えていないけど
家に2人がいるのに全く空気がそよとも動かない時も
お義理でつまらないセックスをしている時も

パンツ泥棒を問い詰められて小さくなってた時も
俺がみどりにすさまじい強姦をしていた時も
冷たくなっていくみどりを泣きながら見守っていた時も

そしてようやく小さな愛をはぐくみ始めた2人の様子も
ずっとこのアパートは見守ってくれていた
じっと、何も言わずに

このアパートに優しく包み込まれてきたから
俺たちはずっと一緒にいられたのかな?
34 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:36:40.07 ID:9Wv.ZoEo
俺も何とかまともな人間に成長し
そしてみどりはとびきりの美人に変身した

ここにいたから変われたのかな?
そう考えると、このアパートにも感謝の気持ちがわき起こる

ありがとう
新しいマンションに行っても
今まで通りずっと仲良くしていくから

ヤキモチ焼かないでくれよ
ずっと見守っててくれよ

「あなた!またタバコ吸ってる!」
ごめんなさいもう消します
「まだ入ってこないで!タバコ臭いから!」
ハイハイ

「もう何も手伝わないで本当に役に立たない人ねあなたは」
ハイオッシャル通リデスネ
「お客さんほとんどそろったんでしょ?こっちの用意もできたからそろそろ始めるわよ」
ハイオ任セシマス
「あなたがいないと始まらないでしょ!もう入ってきなさい!」
ハイ

そうわめいて中に入ろうとするみどりの腕をつかんで引っ張り出す
さっきまで舐めていたみどりのお尻の感触がまだ俺の舌に残っている
「もうタバコ臭いからやめて!赤ちゃんが病気になるでしょ!」
35 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:40:08.85 ID:9Wv.ZoEo
みどり・・・
「何よもう忙しいのに?」

今もこれからもずっと先までも
「???」
ずっと愛してるからな

「・・・・・・・・気が済んだ?」
ハイ
「じゃあ入りましょうか寒いし」
ハイ

「あー今晩は雪降りそうだね」
そうだね降るかもね

「・・・・・ありがとうあなた」
いえいえどういたしまして
「これからもよろしくお願いします」
もちろん任せとけってば

みどりは俺の耳元に口を寄せて囁いた
「後でさっきの続きしてね」
もちろん今からでもしたいぐらいだ

みどり・・・愛してるよ・・・

「今年いっぱいタバコは1日2本ね!来年からは禁煙開始!」
えっ?そんな・・・ひどい・・・分カリマシタ
「さあ忘年会を始めましょう!」
36 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:43:38.12 ID:9Wv.ZoEo
強くなったな・・・みどり
それに・・・とってもいい女だ

世界の誰もが手を触れることさえできない
俺の自慢の妻だ
もう嬉しくてたまらない
今すぐみどりの首に縄を付けて世界中を走り回りたい

そうしてみどりに引きずられて部屋に入ろうとすると
ちょうど階段を上がってくる人が見えた
初老の上品な男性だ

アパートの住人かな?
見た事ないけど
みどりを引きとめてその男性を見た

男性は部屋にかかっている表札を順に見上げながら
ゆっくりとこちらに歩いてきた
誰かを訪ねて来たのかな?
俺の近くまで近づいてきたので軽く会釈する

「あのう、ここに長谷川さんという方がお住まいだと思うのですが?」
はい私ですが?

「それは失礼いたしました、私はこういう者です」
そういって初老の男性は名刺を差し出した

高校の校長と書かれている
でも俺の知らない高校だ
37 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:48:04.15 ID:9Wv.ZoEo
わけの分からない俺とみどりに老人は説明する
「ええと、旧姓奥原の夫です」

ああ奥原先生の旦那さんか
やっと分かった

へー校長先生の奥さんなのか
ものすごく感じのいい紳士じゃないか

さすがは奥原先生
いい所に嫁いだんだな

まあどうぞお上がり下さい
外は寒いし立ち話も何ですから
ところで奥原先生はどうしたんだろう

「いえ、私はここで失礼しますので」
そうおっしゃらずにどうぞ中で暖まって下さい
同級生も何人か来てますので

「実は・・・・・奥原は先日亡くなりました」
へ?

え?




38 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:51:49.87 ID:9Wv.ZoEo
俺の目の前が真っ白になった
髪の毛が全部逆立った
鳥肌が立ち、体中が震え出した

い・・・・・いつ・・・・・ですか?
半月ほど前です

まさか

嘘だろこのジジイ人をペテンにかけようとしやがって
オバチャン3人けしかけてやろうか

「今日ここに来るのをとても楽しみにしていたんですが」

「あなた・・・入っていただきましょ」
みどりにそう言われて
とにかく引きずるようにその男性を中に入れた

寒い外での立ち話は老人の身体にはこたえるし
それにもっとちゃんと話が聞きたかった
奥原先生のご主人は丁重に礼を述べてから、家の中に入った

ガヤガヤとうるさい部屋から石原さんと林さんを呼び出し
運び出した家具でゴチャゴチャした寝室に入れた
寝室にある小さな電気ストーブをつけた

みどりに何か温かい飲み物を持ってくるように頼み
みどりもここにいるようにと言った
39 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:55:53.28 ID:9Wv.ZoEo
他のみんなにご主人を紹介してから、適当に腰を下ろした
みどりも俺の隣に座った

石原さんはすでに状況を読み取り、真っ青な顔をしている
林さんもこの雰囲気を察知したのか
背筋をピンと伸ばして話を待っている
さすがは元トップアイドル
オバチャンになってもちゃんと空気は読める

全員が落ち着いたところで、ご主人は話し始めた

実はインターネット上の大人の事情で知った先生の自宅に電話をかけた
奥原先生が出た

大人の事情でみんな集まりますから
ぜひ先生にも出席していただきたいんです

俺もいろいろありましたが
妻の支えでなんとか頑張ってやっています

自慢の妻も見ていただきたいので
ご足労ですが足を運んでもらえませんか?

便利のいい場所まで出てきていただければ
お迎えに上がりますので
同級生も何人か来ますし、皆喜びますからぜひどうぞ

奥原先生は嬉しそうだった
「私みたいなおばあちゃんが言ったら迷惑かけますよ
 もう何十年も経ってるんだし、皆さんのおじゃまになるんじゃないかしら?」
40 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 16:59:25.23 ID:9Wv.ZoEo
30年ぶりに聞く奥原先生の声はとても懐かしかった
あの頃と同じ、優しい声だった

声を聞いただけでも涙があふれてきた
あの時の夕暮れの教室が一気によみがえった
そしてあの派手な赤いパンティーも思い出した

そんな事は絶対にないです
俺は奥原先生にたくさん話したい事があるんです

電話じゃ言えないぐらいたくさんの事が
お詫びもしないといけないし
それにものすごく感謝してます

「ありがとう長谷川君じゃあぜひ寄せてもらうわ
 あとで詳しい住所をグーグルマップで送ってね
 私はちょっと体の調子が悪いので主人に連れてってもらうから」
ぜひどうぞご主人もご一緒にいらして下さい
先生のご主人ならもちろん大歓迎しますから

それがひと月ぐらい前だっただろうか
体の具合が悪いのは聞いていたし
ご主人と一緒に来るのも聞いていた

でも声は元気そうだったし
それからわずか半月でこんなになるとは
41 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:02:50.31 ID:9Wv.ZoEo
「奥原はガンでした
 本人には知らせてなかったのですが
 もうあまり長くはないと言われてました
 長谷川さんの話も聞きました
 立派な生徒だったと聞きました

 その長谷川さんから突然電話があって
 ちゃんとやってるからぜひ会いたいと言われて
 すごく喜んでいました
 もしかしたらひと月なら間に合うかもしれないと思っていました
 奥原がまだ動けるうちに
 少しぐらいなら出かけられるかもと思っていたのですが」

俺の全身がわなわなと震え出した
石原さんと林さんも泣いている
2人とも、奥原先生と会うのを楽しみにしていた

先生が来るならクラスの全員を呼ぼうと
林さんは言い張っていた
子供たち全員が、男子も女子もみんな憧れていた

奥原先生に会えるのなら
本当にクラスの全員が集まっただろう
自分が責任持って集めるからと言ってくれた

だけどこの家にはそんなに大勢は入れないし
正直あまり会いたくないヤツもいるから
必死で林さんを思いとどまらせた
42 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:06:27.42 ID:9Wv.ZoEo
それぐらい
会いたくてたまらなかった先生なのに
みんなが会いたがっていた先生なのに
ついこないだ話したばっかりなのに

何で先生をいきなり呼びつけるのじゃなくて
自分が行けばよかったのに
何でそこまで考えられなかったのか

お前ちょっと調子乗りすぎだろ
ドラマの主人公気取りで先生まで呼びつけるなんて

「奥原は本当に今日を楽しみにしていました
 奥原はもう教師はだいぶ前に辞めていました
 私の異動に合わせて退職したのです
 なので生徒からわざわざ連絡があるなんて最近はめったにありませんから

 自分に会いたいからぜひ来てくれなんて
 本当に久しぶりの事でしたので
 年甲斐もなく
 どんな服を着て行こうかとか
 何か買っていかなきゃとか
 子供みたいにはしゃいでいました」

俺の目からも涙がこぼれた
みどりまで泣いている
皆が泣いていた
43 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:10:30.88 ID:9Wv.ZoEo
「それから数日
 奥原の顔色はとてもよくなりました
 毎日出かける事ばかり話していました
 長谷川さんからの連絡が
 奥原に元気を与えてくれたのだと思いました
 だけどそれが最後でした
 奥原の命はそこで燃え尽きました」

もしかしたら・・・
俺が電話したから・・・
療養してる先生に無理をさせたから・・・
先生の気持ちに無理な負担をかけたから・・・
奥原先生の生命の火を燃やしつくしてしまったんじゃ・・・

「長谷川さんそれは間違っています
 奥原はとても喜んでいました
 最後まであなたと会えるのを楽しみにしていました
 あなたからの電話が
 最後に奥原を輝かせてくれたのです

 絶対にそんな事はもう仰らないでください
 奥原が悲しみます
 最後はとてもいい笑顔で亡くなりました
 長谷川さんのおかげです
 今日はどうしてもそれをお伝えしたくて来たのです
 本当にありがとうございました」

俺は声を上げて泣いた
何て言ってたのかは分からない
ただ声を上げて泣いた
44 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:14:07.03 ID:9Wv.ZoEo
意味の分からない声を張り上げて泣いた
みどりが俺の背中をさすってくれた

奥原先生のご主人も泣いていた
全員で泣いた
長い時間泣いた

台所の連中も様子を察したのか
ひっそりと静まり返っている
やがてご主人がまた、口を開いた

「こんな時にこんな話をしに来てしまい
 本当に申し訳ありません
 ただこれだけはお伝えしたかったのです
 誰かの命がなくなり、誰かの命が生まれる
 それは当り前の事です
 人間の命には限りがあります
 それを人間の手で変えることはできません
 全てが運命です
 
 私たちはただ
 それぞれ与えられた時間を生きているのみなのです
 だから悲しまないでください
 奥原のためにも
 明るくふるまってやって下さい
 私の妻のために、笑って過ごしてやって下さい
 そして奥さまのお腹の中にいるお子さんのためにも
 明るく楽しい人生を教えてやって下さい」
45 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:17:36.42 ID:9Wv.ZoEo
俺は涙を拭いて顔を上げた
分かりました
奥原先生に言われました
どんな事があっても
みんなをしっかり守ってあげる
優しい大人になってねと

ずっと忘れていません
これからも

「ありがとうございます」

そうしてご主人を送り出した
石原さんと林さんがご主人を駅まで送って行ってくれた
とても悲しい事だけど
泣いてたら奥原先生に怒られる

もうプールが怖くて逃げてた頃の俺じゃない
パンツ盗んだのがバレてビクビクしてる俺じゃない
まっすぐ前だけを見つめるって約束した

隣の部屋ではみんなが待ってるんだから
こんな日に来てしまって悪かったのかと気をもんでいるだろう
約束した事だ

さあ宴会を始めよう
奥原先生とご主人の分まで
なあみどり

「・・・そうね」
46 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:20:56.73 ID:9Wv.ZoEo
居間で声をひそめていたみんなに呼び掛ける
ごめんねずいぶん待たせちゃって
後でちゃんと説明するけど
まずはみんなで乾杯しよう

いや、ぜひ一緒に乾杯してほしい
そうして乾杯の用意をした

少しずつざわめきが戻り始め
部屋を埋め尽くした人間が動き始めた
部屋が狭くてそれぞれが落ち着く場所なんてないから
全員が一斉にドヤドヤと動いた

その時またチャイムが鳴った
タイミングの悪い登場シーンだな
せっかく落ち着いたと思ったのに

何だよ誰だ空気読めないヤツは
ご主人を送って行った2人には
鍵は開けとくから勝手に入るように言っといたのに

めんどくさいな上品な人間は
そう思って部屋を出てから思い出した

そうだあと一人来る予定があったんだ
47 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:24:47.41 ID:9Wv.ZoEo
大人の事情でやっと探し当てて
やっと連絡が取れた時
来れるかどうか分からないって言ってたけど

来てくれたのか?

あの人が来たのか?

ついにあの人に会えるのか?

乾杯をちょっと待ってもらって
急いで玄関に向かった
と言っても狭い家なので数歩で着く

ドアを開けると
そこには想像通りの小柄な女性が立っていた
ニッコリと笑顔を浮かべて立っていた

時間がいきなり戻った
20年ぐらい一気に戻った

あの時と同じ
小柄なかわいい女性が立っていた
顔も身体つきも全く変わっていない

ちょっとだけ、その笑顔には陰があった
そこだけ少し大人の色気があった
ものすごく美しい、小さな女性がいた
48 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:27:51.06 ID:9Wv.ZoEo
しかしそれにしても全然変わっていない
あの時のままだ
まさか幽霊か?

バカかこんな時に幽霊の話をするな

その女性はとてもかわいかった
信じられないぐらい美しかった
石原さんよりも・・・いやちょっと比べにくいな

俺の頭にあの時の夕焼けが浮かんだ
2人で横に並んで座って
日が暮れるまで話をしていた

あの時と同じ
暖かい気持ちが胸にゆっくりと拡がった

切ないような
照れくさいような

あの時の夕焼け空が鮮明に思い出せた
そしてあの時のオレンジ色のブラジャーも浮かんだ

俺につきまとって離れなかった天使
俺の袖をグイグイ引っ張って
落ちこぼれ仲間から遠ざけてくれた天使
いつでも俺の横にいて
いつでも俺を励まし続けていてくれた天使
49 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:30:44.33 ID:9Wv.ZoEo
そして俺とは違う男と
2人で仲良く歩いていた天使

いたずらっぽい笑顔で
背の高い俺を見上げていた天使

そして今日もやっぱりあの時と同じ
いたずらっぽい笑みを浮かべて
俺を見上げている女性の姿があった


「長谷川クン」


上野さん・・・

よく来てくれたね
会いたかった

本当に会いたかったんだよ

毎日上野さんの事を考えてるよ
思い出さない日なんか一度もないよ

来てくれたんだね
本当に来てくれたんだね・・・

よく来てくれたね
ありがとう・・・
50 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:33:59.25 ID:9Wv.ZoEo
さあ入って・・・
「おじゃましまーす」

その上野さんは玄関をくぐる時にちょっと外を振り返った
誰かいるのか?
誰かと一緒に来たのか?

「うん・・・あの・・・主人とね」
そうか・・・結婚してるんだね
「まあね・・・」

よかったね
入ってもらってよ

「いや・・・あの・・・いいの」
何だよいいよ入ってよ
俺の知ってる人かな?

もしかしたら中村かな?
中村だったら知ってるから大丈夫だよ
久しぶりに会いたいしさ
「だめなの・・・」

俺は制止する上野さんを振り切って外に出た
上野さんがかなり強く止めたので
悪いかなとは思ったけど

上野さんのハートを射止めた男ってのを見てみたかった
俺の天使の心をつかんだ男の顔を見てみたかった
51 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:37:33.30 ID:9Wv.ZoEo
中村かな?
それとも違う男かな?
もう嫉妬の気持ちなんか全くない
ただ挨拶がしたいだけだ

困ったような顔をして引きとめる上野さんを振り切って外へ出た
せっかく来てくれたんだし
上野さんのご主人なんだし
当然上がってもらいたかった

俺の上野さんを取りやがってチクショー
ぐらいは言ってもいいだろ
もう今なら

外には1人の男が立っていた
見覚えのある外見
俺より長身でがっしりした体格

色男で勉強ができてスポーツ万能で
親は大会社の社長で金持ちで

いつもカッコいい私服を着ていて
いつも女の子に囲まれて歩いてて
クラスの、いや学校中の人気者で
周りにはいつも友達がいた

俺みたいな落ちこぼれにも普通に声をかけてきた
俺が上野さんと一緒にいるのを見ても
笑って俺に話しかけてくれた
52 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:40:58.79 ID:9Wv.ZoEo
イヤなやつだったよ
大っ嫌いだったよ
中村・・・・・

中村は女にモテるから
ちゃんと上野さんを幸せにしてるか心配だった

浮気して彼女を泣かすような事があったら
俺が襟首つかんで殴りつけてやろうかと思っていたけど

ちゃんと一緒にいてあげてくれたんだな
中村・・・

中村は俺の姿を見るとこっちに歩いてきた
しかし様子が変だ
松葉杖をついて歩いている

袖を通さずに羽織っただけのコートの前が割れ
ズボンの右足が妙にヒラヒラしているのが分かった
そして松葉杖をつく右手のシャツの手首から先がなかった
俺はギクっとなった

中村の身体には異変があった
右足がなかった
太ももの辺りから先がなかった
義足って言うのか
金属の棒のようなものがついていた
53 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:44:45.91 ID:9Wv.ZoEo
そして右手もなかった
ヒジから先がなかった
脇からヒジまでの部分で挟んで
松葉杖をついていた

俺は一瞬動揺してしまった
すぐには言葉が出なかった
だから入りたくなかったのか

な・・・中村・・・よく来たな
ま・・・まあ入れよ

「いや俺はいいよ」
なんでだよせっかく来てくれたのに
俺の嫁さんも紹介するからぜひ入ってくれよ

「長谷川君ごめん本当にいいの、いいから」
いやでもせっかく来てくれたんだから

「あなたどうしたの?」
みどりが顔を出した
みどりには上野さんの事は細かく説明していたので
すぐに分かったようだった
中村の事も紹介する
54 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:47:30.47 ID:9Wv.ZoEo
みどりは顔色一つ変えずに平然と笑い
「まあ寒い所をわざわざありがとうございます」

そして上野さんに向かって
「主人が本当にお世話になったそうで、いつもお話は聞かされています」
「いえ・・・そんな・・・」
「あなた何ボーッとしてるの早く上がってもらいなさい風邪引いちゃうでしょ?」

この場の気まずい空気を素早く察知したのか
みどりは有無を言わさず全員を家に引きずり上げた

さすがはみどりだ俺の嫁だ
何の躊躇もなく2人を家に上げてしまった

あまりの手際の良さに中村も何も言い返す事ができずに
みどりと上野さんに肩を支えられて上がって行った

さあてこれで全員そろったな
いよいよ宴会の始まりだ

どんな集まりになるのか
ちょっと不安だけど・・・・・



パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男のとてもとても楽しい忘年会

第1話 集合編 終
55 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:51:02.12 ID:9Wv.ZoEo
パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男のとてもとても楽しい忘年会

第2話 断罪編



いろいろとややこしい話だったが
とにかく全員がそろった
俺の過去から現在までの全てを知っている人間が集まった

実は昼ごろからみどりのパート友達も何人か来て手伝ってくれてたのだが
もうとっくに帰っていた
これらの女達は本編には全く登場していないので書かない

例の化粧品グループだ
別に美人でもないグラマーでもない
俺にとっては何の魅力もないおばはんたちだ

このおばはんグループの中にも1人ぐらいちょっと小ぎれいな女性がいて
それが哀愁漂うバツ1かなんかで俺と仲良くなって
みたいなドラマを書いてみたいけど
あんまり楽しそうじゃない妄想なのでやめとく

というかこの世の中にみどりよりも美しい女性なんかいるはずがない
みどりよりも美人が登場しない限りは俺の物語は始まらない

いや、石原さんと上野さんは除いて
56 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:54:25.73 ID:9Wv.ZoEo
とにかく全員が集まったので乾杯の準備をする
本当は一人ずつ自己紹介をしてから始めたかったのだが
いろいろあって長く待たせてしまったので
とりあえず乾杯して鍋などつつきながら
後でゆっくり紹介しようという事になった

全員が好みの飲み物を持って立ち上がる
これだけ大勢の人間が立ち上がると大変だ
部屋が真っ暗になったような気がした
冬の夜は暗くなるのも早い

「あなたごあいさつをしなさい」
ハイ
えーと本日はまずまずのご晴天にも恵まれまして
「あなた今日雪降りそうだけど」

はっせっがっわっくーーーーーーーん

キャハハハハハハハハhwwwwwwwwwwwwww

っていうか別に言う事ないよ
まあ普通に

それでは皆さまが今後も安楽な老後など過ごされませぬように
乾杯!

「カンパーイ!!」
ってなわけでようやく宴会がスタートした
なんとなくそれぞれ周りの人と乾杯をし
持っていた飲み物を飲み始める
57 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 17:58:20.02 ID:9Wv.ZoEo
奥原先生のご主人の登場で
みんなの間にちょっと気まずい空気が流れていたが
そんな流れを巨大オバチャン2人が破ってくれた

「ちょっと皆さんたくさんお料理持ってきたからぜひ食べて下さいネ!」
「これは私がパートに行ってる店で貰って来たの」
「これは主人がやってる店から無理やり取ってきたの」

「全部タダだから遠慮なく食べてね!!」
「キャーハッハッハッハッハッハhwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

そう言って小皿に取り分け
有無を言わさず全員に押し付け始める
その騒ぎでやっと静まっていた空気が動き始めた
やるなあオバチャン助かった
今だけは感謝します
呼んでてよかった

しばし和やかに団らんした
俺は全員を知っているけど
他のメンバーはそれぞれを知らないので
どうなる事かと思ったけど
よく考えたらもう全員が中年だ
ガキみたいに照れて人と話せないなんて事はない
58 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:01:20.28 ID:9Wv.ZoEo
ちょっと人数を整理してみよう
よくまあこの狭いアパートにこれだけの人数が入れたものだ

まずは中学時代の同級生の早川さんと前田さん
その巨体に似合わずてきぱきと動いている
誰彼かまわずにむりやり料理を押し付け
相手が遠慮してると背中を叩いてドヤしつけてる
あんまり近づかないでおこう

それから高校の同級生の中村と上野さん
2人の座っている一角だけは静かだった
足を投げ出して壁にもたれている中村に
上野さんが何かと気を使ってあれこれ食べさせている
それを中村は面倒くさそうに食べている

しかしいつ中村はあんな体になってしまったんだろう
確かバレー部に入ってたはずだけど
でもあんなケガはしそうにないし
それなりにみんながハメを外す学生時代に事故でもしたのだろうか

それとも就職してからなのかな?
どんな仕事をしてるんだろう
後で聞けたら聞いてみよう

そして悪友友達の織田と村田
相変わらずむさくるしいスタイルで黙々と飲んでいる

お前らちょっとはしゃべれよ
こんなむさいヤツらによく来てくれる嫁さんがいたもんだ
59 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:04:57.15 ID:9Wv.ZoEo
あっ俺も一緒か
みどりに感謝しとかないとな

同じく大学時代の悪友の岩川
こいつも上の2人と一緒だ
この様子じゃまだ結婚はしてないだろうな
それも後で聞いてみないと

そして俺の元後輩と今の部下
川上と沙希ちゃんの元気者カップル
川上は嬉しそうにいろいろ取ってきて
沙希ちゃんに一生懸命食べさせている

お前今からそれじゃ一生尻に敷かれたままだぞ
上司の俺を見習え

しかし沙希ちゃん幸せそうだな
この2人のなれそめも後でゆっくり聞かないと

部屋のど真ん中に座を占めて
周囲のひんしゅくをかいながら
イチャイチャしていた
まあいいか今日は特別に許してやろう
60 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:08:54.65 ID:9Wv.ZoEo
そして俺の会社の部下4人組
面倒なんで名前は考えてない
とにかく4バカ組だ

バカだけど今や立派に成長した企業戦士だ
かわいい俺の部下だ
名前はないけど

後は今奥原先生のご主人を駅まで送っていってる
石原さんと林さん
寒いのに面倒かけて申し訳ない

せっかくだからここで食事でもしていってもらった方がよかったのかな?
断られるのを承知で無理にでも誘った方がよかったのかな
その2人ももう帰ってくる頃だろう

指を折って数えてみた
15人か
俺とみどりを入れたら17人になる
安アパートにこんな大勢がドタバタしてたら
部屋の床が抜けるんじゃないかな?

新しいマンションに移ってからの方がよかったかな
でもたぶんみどりは言うだろう
「汚れるからこっちの方がいいの」
61 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:14:53.52 ID:9Wv.ZoEo
これだけたくさんの人間が
俺の変態小説の餌食になってしまったのか
あの小説がネットで多少の評価を頂いて
このメンバーも少し有名人になった

俺のおかげというか
とにかく俺はあちこち引きずりまわされ
いろんな人と旧交を温めた
それもあってこうして今日全員がそろったのだが

もとより全て適当なフィクションの話なので
名前を出された人も別にそう怒ってはいない
ああさっき林さんだけ怒ってたな
後でもう一度謝っておかないと

そういやまだ帰ってこないなあの2人
そう思ってたらまたチャイムが鳴った

みどりが玄関に出たがすぐに戻ってきた
石原さんと林さんが帰ってきた
そして奥原先生のご主人も一緒にいた
石原さんが俺に言う

「ご主人ね、家に帰ってもお一人だし
 良かったらここでみんなと食事していってもらおうと思って
 連れて帰ってきたんだけどいいかな?」
62 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:18:10.17 ID:9Wv.ZoEo
さすが石原さん機転が利くな
俺もさっき見送ってから気づいたんだ
せっかくだからみんなでワイワイやりましょうって

どうも俺は後から気がつく
だからみどりにいつも怒られる
みどりと石原さん
なかなかいい勝負だ

ご主人は深々と頭を下げ
「こんな年寄りが若い方々に混じらせていただいて申し訳ありません」と言う
本当に紳士だなこの人
さすが校長先生だ物腰が全然違う

きっとかなりいい学校の校長なんだろうな
さすがは奥原先生だ
立派なご主人と結婚したんだな

これで完全に全員がそろった
奥原先生のご主人も入って全部で18人になった

みんなのお腹がちょっと落ち着いた所で
それぞれの自己紹介を始める
63 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:21:17.83 ID:9Wv.ZoEo
(ここから先は自己紹介になります 
 話のつじつまが全く合わなかったり
 どう考えてもおかしな表現がたくさん出てきますが
 もとより時間軸のバラバラなメンバーを無理やり全員登場させていますので
 矛盾はお許しください
 弁明もいたしません)


「えーっと、はじめまして
 石原と申します
 あの・・・」

(石原さんが恥ずかしがって話せないので俺が説明する)
俺が最初に盗んだ子供パンツの持ち主です

「もう・・・・
 あの時はどうしていいのか分かりませんでした
 目の前が真っ白になって
 倒れそうになりました
 
 長谷川君がこっちをジロジロ見てるのも分かりました
 でも・・・ただ・・・着替えを見てるんだなって思ったから
 もう恥ずかしくって
 そのままスカートをはいて帰りました
 家に帰ってさんざん怒られました
 ただなくしたんだと思って
 盗られたとは思わなかったんです」
64 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:24:29.53 ID:9Wv.ZoEo
「ずっと後までそう思ってました
 長谷川君から電話があるまでは
 すごく恥ずかしかったし
 その・・・何で・・・私のなのかなって

 だから今日は文句言うつもりで来たんです
 もうあの時みたいに恥ずかしがってるだけじゃないですから
 でもこんなに皆さんが被害(?)にあってるのを見て
 もう30年近くも経ってるんだし
 何か笑えて来ちゃいますよね

 ここに来てよかったと思います
 みんなとワイワイ騒げて
 今までの・・・モヤモヤみたいなのがすっきりしました」

高校時代にまた会ってるんだけど
「そんなの全然気づきませんでした(きっぱり)」
あの時は・・・いややめときます

「今は結婚して子供が2人います
 まあ・・・幸せです
 でも今日でもっと幸せになったような気がします
 呼んでいただいて本当にありがとうございます」
65 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:27:44.15 ID:9Wv.ZoEo
しかし美人だなー石原さん
残念だけど俺のみどりがかすむ

小学時代から高校生
そして大人になるにつれ
この美人度はますます増大している

これで60歳とかになったらどんだけ美人になるんだろう
あんまり想像したくはないけど

そうかやっぱり子供がいるんだな
まあ当り前か
という事は当然旦那さんとセックスもしてるんだな

この美しい女性が
いったいどんなセックスするんだろ?
ほっそりした体はいったいどれぐらい開発されてるんだろ?

うらやましいなこんな美人の奥さんだったら
俺なら毎日2回はセックスするな

しかもものすごく恥ずかしい格好で
一番恥ずかしい部分を自分で拡げさせて
狂ったようにのたうちまわらせてみたいもんだ
ありえないような体位でガンガン突きまくってみたいな

そうそう今どんなパンツはいてるのかな?
もうあんな子供パンツじゃないだろうし
お金持ちの奥さんってどんなパンツはいてるんだろう?
66 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:30:53.01 ID:9Wv.ZoEo
どんな匂いがするんだろう
どんな味がするんだろう
そしてその中にはどんな恥ずかしい部分が隠されているんだろう

やっぱりフェラチオとかもちゃんとするのかな?
お尻の穴とか舐められたりもするのかな?

体中を濡らすよだれと愛液にいやらしくまみれて
すさまじい絶叫を体中から振り絞り
快楽の深みに溺れていったりとか

はたまた動物のようにセックスを楽しみ
昼だろうが夜だろうが旦那のチンコを求めて這いずり回り・・・

「・・・・・」
突然みどりに尻をつねられた
あれ?俺何かしゃべったかな?
妄想のついでに何か口走ったか?
しかし誰も気づいてない
何でみどりにだけ聞こえたんだろ?

「ちゃんと進行しなさい」
ハイ分カリマスタ

くそぅまた勃起してきた
みんなが帰ったら絶対オナニーしてやる
1日5回はできそうだなこりゃ
67 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:35:54.29 ID:9Wv.ZoEo
奥原先生のご主人はちょっとまだ飛ばそう
今はダメだタイミングが悪過ぎる
次は林さんに頼もう

「小学校時代、学校一のアイドルだった林です
 いま誰か信じられないって言いませんでしたか?
 昔はそれなりにスタイル良かったんですから
 
 もうねーあの時はパニくりましたよ
 私は絶対盗まれたと思ってました
 クラスの男子はいつも私を見てましたからね
 体育の時も普通の時も
 着替えてる時もプールの時も
 だから絶対男子の仕業だろうと思って
 見つけたらどうしようかってずっと考えてました
 でも結局見つからなかったんですけど

 それにお母さんにも言われたんです
 あなたの体に興味を持ってくれる男子がいるなら
 それはありがたいと思いなさいって
 あなたにそれだけ好意を持ってくれてるんだから
 ちょっとやり方は良くないけどね
 自分に魅力があるからなんだって思いなさいって
 そう言ってくれたんで
 もう許そうって思いました
 父は怒ってましたけどね
 絶対犯人を見つけてやるって息巻いてましたから」
68 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:38:17.10 ID:9Wv.ZoEo
「でもまさか長谷川君が犯人だったとはね
 クラスの何人かは長谷川君だって言ってましたけど
 私はそうは思ってませんでした
 完全にしてやられたってわけです
 でももう怒ってませんから
 まあいいです

 それにしてもあの書き方は悲しいですよ
 臭いだなんて
 美少女になんて事言うんですかね
 もうちょっと優しく書いてくれてもいいじゃないですか
 どうせフィクションなんだし
 他の人みたいに
 石鹸の清潔な匂いだとかうら若き乙女の匂いとか
 悪臭ですよ悪臭
 鼻が曲がるとか
 もしあの時そんな事聞いてたらもう生きていけませんよ
 小学6年生の時にあんなの
 
 でも一つだけ内緒にしてた事があります
 実はあのパンツね
 お母さんのなんですよ
 私は小さい時から胸もお尻も大きかったから
 下着は全部お母さんと共通でした
 今みたいにかわいい下着なんてなかったですから
 あー恥ずかしいわさすがに
 だからあの臭いはお母さんのだって事にしてくださいね」
69 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:41:38.20 ID:9Wv.ZoEo
「今はバスガイドやってます
 皆さんバス旅行など企画される時は
 ぜひ○○観光をお願いしますねっ

 主人はもういません
 バツ1です
 もうだいぶ前に離婚しました

 子供は男の子が1人
 中学3年生です
 私が育ててます
 来年から高校生ですから
 良かったら校長先生
 ウチの子の面倒をみてやっていただけませんか?」

そう言って林さんは奥原先生のご主人に笑いかける
ご主人も笑顔で任せて下さいと答える
さすがは林さん気配りの名人だ
場の空気が一気になごんだ

林さんバツ1だったのか
でも元気そうだな
やっぱり女は強いのか

しかしあの臭いはお母さんのだったのか
どおりで
いやもうやめようそんな想像
次はオバチャンコンビか
70 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:44:32.00 ID:9Wv.ZoEo
「早川と申しまーす!
 前田と申しまーす!
 私たち
 長谷川君に
 振られちゃいましたーっ!
 キャーハッハッハッハhwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

ちょっと待って早川さんは振ってないぞ

「それはあなたが何も分かってなかったからでーす
 ずっと隣の席に座ってて
 ずっと一緒に話をしてて
 ずっと一緒にお弁当食べてたのに
 長谷川君は私の方なんか全然見てなかったし
 前田さんの胸ばっかり見て
 ニヤニヤして
 スケベ笑い浮かべてたのを知ってるんですからね」

またみどりの目つきが険しくなる

「だけど前田さんが先にアタックしちゃったからあきらめたんです・・・」

「あの時はねーもう死ぬ思いで告白したんですよ
 小さな胸をとーっても痛めてね」

キャーハッハッハッハッハhhwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
71 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:47:07.75 ID:9Wv.ZoEo
「でも長谷川君全然上の空だったし
 ダメだと思ってましたよ最初から
 断るにしてももっと優しい言い方ってあったと思うんですけど
 無視ですよ無視
 考えられます?
 中1の清らかな乙女が
 胸を痛めて愛を打ち明けたのに」

キャーハッハッハッハッハhwwwwwwwwww
(しつこいですか?)

「でも一番驚いたのはやっぱりあれ」

「そうそうあれ
 あの事件が長谷川君が犯人だったなんて」

キャーハッハッハッハハ

「あんなに大人しい顔してたくせに
 ムッツリスケベって言うんですか
 今みたいにこんなふてぶてしい顔じゃなかったんですよ
 ホントにかわいらしい少年で
 もう食べちゃいたいぐらいだったんですよ」

キャーハッハッハッハッハhッハhwwwwwwwwww
(疲れる)
72 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:50:53.12 ID:9Wv.ZoEo
「バスケ部の先輩もいたんですよ盗まれた女子の中に
 もう泣いてたんですからね
 ホントにちゃんと責任取ってもらいたいですよ
 まだ黙っててあげますからね
 口止め料下さいね
 そのあなたのカ・ラ・ダでね」

キャーハッハッハッハッハッハh

「私(早川さん)の主人は会社員です
 私はお弁当屋さんにパートに出てます
 おかずが時々もらえるんで便利ですよ
 主人の稼ぎも少ないんでホント助かります」

キャーhh(自粛)

「子供は3人います
 一番上は11歳
 後は9歳と6歳です
 とってもかわいいですよー」

「私(前田さん)の主人はレストランやってます
 イタリア料理店です
 時々雑誌にも載ってますので
 皆さんよかったらいらして下さいね
 私も時々店にいますので
 見つけたら声をかけて下さいね
 ちょっとぐらいはお安くできますから」
73 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:53:46.32 ID:9Wv.ZoEo
「子供は一人だけです
 男の子です中学2年生です
 やっぱりバスケやらせてます
 もう180cm以上あります
 アメリカのプロにさせるのが夢でーす」

キャーh(同上)

「2人ともずっと同じ小学校から
 同じ大学に行って
 実業団までずっと一緒にバスケやってました
 あと少しで全日本に出られる所まで行ったんですけど」

「ずっと2人で一緒でしたが
 それぞれ結婚して引退しました
 でも今でもたまにこうやって会ってます
 それとたまにママさんバスケみたいなので遊んでます
 せっかくのご縁ですので今後とも
 どうぞよろしくお願いしまっすぅー」

ky(ry

ありがとうオバチャンたち
でも盛り上がった
今日はありがとう
でもできたらもう2度と会いたくないです
74 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 18:57:20.84 ID:9Wv.ZoEo
次は高校生編か
どっちを先に出すか
上野さんはまだ中村につきっきりだし
あんまり話も聞いてなさそうだし
先にこいつらにするか

「えーっと
 織田です
 長谷川君の同級生です
 長谷川君にタバコ教えたのは俺です
 どうもすいません

 あれから何とか○○大学に受かって
 それから料理学校に行って
 今は料理人やってます
 中華料理店のコックです
 一応コック長やってます
 店を持つのが夢です
 
 店でバイトしてた子と結婚しまして
 子供は今2歳です
 女の子です
 すごくかわいいです
 母もまだ元気です
 今は一緒に同居してます
 まあまあ楽しいです
 どうも」
75 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:03:08.21 ID:9Wv.ZoEo
「村田です
 ガラス割ったのは俺です
 2浪して東大に入りました
 雇われ弁護士やってます
 早く自分で開業したいです
 学生結婚して
 子供はもう高校生です
 それなりに反抗期です
 大変です
 どうも」

何かこいつら陰気だな
俺もあんまり変わらないけど

でも考えてみれば
俺たちみたいなバカでも
ちゃんと就職して
いい嫁さんがもらえて
子供も作っていけるんだし

ウチの高校は進学校だから仕方ないのかもしれないけど
別に落ちこぼれだって
勉強ができなくたって
素行が多少悪くても
大人になったらちゃんとみんな変わっていくんだよな
76 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:06:44.60 ID:9Wv.ZoEo
社会に出れば誰でも変わるし
あんなに短い学生生活で
人生の全てを決めてしまおうなんて
間違ってるんじゃないかな

勉強ができるとかできないとか
運動ができるとかできないとか
そりゃできるに越した方がいいのは分かるけど
できないからって人間以下みたいな扱いされてる子って
けっこういるんじゃないかな

まあ大人になってもいつまでも改心しないのもいるけど
それはそれでしょうがないし
それでもいつかは必ず気づく
早いか遅いかの違いだけで
それをゆっくり待ってやる社会になればいいのにな

急ぎすぎるんだよな
今の社会は・・・

「あなたちゃんと進行して」
はいはいみどりさんあなたは本当にご立派で
「進行役のあなたが黙っててどうするのよ」
ハイハイ次は誰だ高校の次は大学か

岩川か
こいつちゃんとしゃべれるのかよ
まあどうぞ
77 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:10:18.32 ID:9Wv.ZoEo
「岩川です
 長谷川君と同じ大学の出身です
 今本を書いてます

 ○○■■というペンネームでやってます
 おかげさまで
 最近ちょっと売れてきてます
 よろしくお願いします」

おい何だこいつ?
○○ってこないだバカ売れした小説家じゃないか
何だかテレビのドラマになってたあれだ

電車の中で痴漢取り押さえて殴られて
それでその女の子にティーカップか何かもらって
大人のキスをしたとかどうとか
まあまあ面白かったな
俺もテレビずっと見てたし

有名人の登場にオバチャンがザワつく
「えー○○さんだったんですかあぁぁぁぁ?????」
「サインして下さいサイン」
「私も私も」
「私の胸にサインしてぇっ」

キャーハッハッハッハhッハhhwwwwwwwwww
78 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:14:02.13 ID:9Wv.ZoEo
はぁ・・・
ってか岩川顔真っ赤じゃないか
お前女子高生が趣味だって言ってたのに
年を取って
[ピザ]熟女マニアになったとか

ドサクサに紛れて林さんが素早く席を代わって横に座った
ん?いいかもしれないこの2人は
後でまとめてやるか

隣のみどりも同じ事を考えてるのか
昔と同じだ
唇の端を歪めて笑ってる
みどり・・・怖い

さてその次は
もう大学まで来たし
次はみどりか
おいみどり何か言え

「私は最後でいいの」

ああそうですか
じゃあ沙希ちゃんいく?
79 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:17:17.66 ID:9Wv.ZoEo
「はいっ!
 えーっと
 沙希と申しまーす
 なぜか私とみどりさんだけ名字がないんですぅ
 みどりさんはすぐ長谷川さんと結婚しちゃいましたけど
 私だけずーっと沙希ちゃんのままです
 まあこの名前はけっこう気にいってるのでいいんですけど
 どうせもうすぐ変わりますから

 ずっと書いてもらってた通りです
 私・・・長谷川さんの事・・・けっこう好きでした
 一生懸命アピールしてたのに
 ダメでしたぁ
 みどりさん怒らないで下さいね
 ホントに何もなかったんですから
 頑張ったんですよ
 頑張ったんですけどぅ

 『ごめんみどりが待ってるからもう帰らないと』

 って言われちゃいました
 今でもホントにみどりさん尊敬してます
 みどりさんとってもきれいになって
 結婚してからもっとカッコよくなられました
 私もみどりさんみたいになれたらなーって
 ずっと思ってますけど
 どうやら無理みたいです
 でも頑張りまっす!」
80 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:20:32.71 ID:9Wv.ZoEo
「下着盗られた時はびっくりしました
 まさか会社の中だし
 信じられなかったですけど
 みどりさんから何回も
 盗られたんじゃなくてなくなったんだよって言われて
 そうなのかなーって思いましたけど
 でもやっぱり盗られたんだと思ってました」


(このあたりの描写はあきらかに不自然ですがもう気にしないでください)


「みどりさんがあんまりしつこく何回も言うから
 ははーん誰かをかばってるんだなって思ってました
 だとしたら相手は一人しかいませんよね
 長っ谷っ川さんっ!
 みどりさんを大切にしてあげて下さいね!
 みどりさんは最初からずぅっと
 長谷川さんの事が大好きだったんですからねっ!」
81 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:23:51.25 ID:9Wv.ZoEo
「25歳の時に一度結婚しました
 でもうまくいかなくてすぐに別れました
 それ以来ずっと独身です
 長谷川さんに何度かちょっかい出して
 もうちょっとのとこまで行ったんですけど
 みどりさんにはかないませんでした

(チラッと川上を見る)

 でも近々何かいい事が起こりそうでっ!
 とっても楽しみでっす!」

ありがとう沙希ちゃん
俺ずっと沙希ちゃんの事忘れないから
これからもずっと応援してるからね

俺は川上と沙希ちゃんの斜め後ろに座っていたので
立って話している沙希ちゃんのヒップが目の前で揺れている
こんなに大きいのにとてもかわいく
そして信じられない高さにある
断じて垂れてなどいない

どんな仕組みになってるんだろ?
今日はどんなパンツはいてるんだろ?
やっぱり派手な色のパンツかな?
あー味わいたい味わいたい
82 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:26:43.00 ID:9Wv.ZoEo
ってゆうか川上の野郎は
この沙希ちゃんのお尻をもう楽しんだのかな?
おっぱいとかパンツとかその中身とか
くっそーあの野郎
ただひたすらうらやましいぜ

しかしみどりさん
さっきからずっと太ももが痛いんですけど
そんなにつねらなくても別に

過去の過ちは全部報告したし
反省もしたじゃないですか
もう全部知ってる話でしょう今さら

あんまり怒らないでくださいよ
みんなから丸見えですから
校長先生までこっち見て笑ってるでしょ

まあいいやえーっと次は
あと残り4人だな
誰からいくか

「次、よろしいでしょうか?」
あら校長先生ですか
ではお願いします
みんなに話してあげて下さい
83 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:30:23.88 ID:9Wv.ZoEo
「長谷川さんの小学生時代の担任教師をしておりました
 奥原の主人でございます
 先ほど長谷川さんたちにはご報告したのですが
 奥原は先日亡くなりました
 今日ここに来るのをとても楽しみにしていましたので
 私が代わりにお邪魔させていただきました

 ご挨拶だけして失礼しようと思ってたのですが
 皆さんのご厚意でここにいさせてもらい
 楽しませていただいております
 こんな楽しいお席で湿っぽい話をするつもりはありませんし
 笑って奥原を送って頂けるととても嬉しいのですが
 一つだけお聞きください

 正直申し上げまして
 長谷川さんのやってきた事は許されざる事です
 れっきとした犯罪です
 私も教師の端くれである以上は
 このような子供に成長してしまわないよう
 全力を挙げて努力していかなければなりません
 私も奥原も努力しました
 努力してきたつもりです」
84 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:33:10.78 ID:9Wv.ZoEo
「しかし現在になっても
 子供たちの犯罪や
 子供たちを巻き込んだ犯罪
 長谷川さんのような犯罪
 そしてもっと恐ろしい事件などが
 今になっても後を絶ちません
 私たちのやり方が間違っているのか
 いつもそれを考えると胸が痛みます

 しかし今日の皆さんのお顔を見て
 私は一つの事に気がつきました
 人間はいつでも変われるのだと言う事に気がつきました
 もちろん心の純粋な子供時代に全てを変えられたら
 それは素晴らしい事です
 社会に出る前にしっかりと人格を築きあげ
 そして社会人として日本を支え
 将来生まれてくる子供たちを教育する
 これが正しい国のあり方であり
 正しい教育のあり方だと思います

 長谷川君を見れば分かるように
 彼は大人になるまで成長する事ができませんでした
 そして大人になってもまだ成長できませんでした
 だけどここにおられるみどりさんの献身的な愛が
 こうやって長谷川君をとうとう変えてしまったのです」
85 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:37:13.22 ID:9Wv.ZoEo
「そして変わった長谷川君はまた
 みどりさんをも変えました
 それまでにはとても大変な困難があったと思いますが
 こうして2人は変わり
 今はこんなに素晴らしい家庭を築き上げています

 他の皆さんもそうです
 過去に犯してしまった間違い
 過去にしてしまった失敗
 そして過去に受けたいやな心の傷
 それらを全て乗り越えて
 再びここに全員が集まり
 過去の事を笑いあえるなんて
 私は素晴らしい事だと思っています

 なぜそんな事に今まで気付かなかったんだろう
 なぜ無理やり子供時代に全ての事を押し付けてしまうんだろう
 別にいいじゃありませんか
 いくつになろうが何をしていようが
 大人になってからやっと改心できる人間もいるんですから
 なぜそれをゆっくり待ってやれないのか
 そんなに必死で生き急がなければならないのか
 これが社会の問題なんです
 我々はあまりにも急ぎすぎています」
86 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:40:11.07 ID:9Wv.ZoEo
「生まれた時にはもう幼稚園の事を考え
 幼稚園に入ればすぐに小学校の事を考え
 小学校から中学校、そして高校大学と
 卒業して就職しても彼らには何も残りません
 ただ詰め込まれた学問しか残っていません

 皆さんのように他人を思いやる気持ち
 他人を愛する気持ち
 失敗しても何度もミスをしても
 後から肩を叩き合って笑いあえる友人
 そんなものが現代の学校社会から消えている事に悲しくなります
 そしてその笑いを消してしまったのは私たち教師の責任でもあります

 皆さんもお子さんたちに
 もちろんこれから生まれるお子さんにも
 ゆっくりご指導してあげて下さい
 失敗しても間違っても
 ゆっくりゆっくりついていてあげて下さい
 いつになってもいいのです
 いつか必ず
 そのお子さんは何かを感じて下さるはずですから

 ありがとうございました」
87 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:43:36.07 ID:9Wv.ZoEo
すげぇこの先生やっぱり
俺の目に狂いはなかった
ただモンじゃないなこの先生は
俺がさっき考えてたのと同じ事を言った
さすがだ
俺もさすがだ

「あなた」
ハイ
「だからと言ってあなたがやってきた事が全て許されるわけじゃありませんからね」
ハイ
「ですよね校長先生」

「そうですね確かに長谷川君のやってきた事は重罪です
 もし捕まれば相当な罰を受けるはずです
 もう時効を過ぎているものもあるかもしれませんが
 どっちにしても笑って許せる範囲は超えていますね
 今は反省しているからという問題でもありません

 でも長谷川さん
 ここにいる皆さんのお顔をよく見て下さい
 誰が怒っていますか?
 誰が泣いていますか?
 もしこの中に
 この中にいない人でも
 あなたに対して気分を悪くしている人がいたら
 あなたはその方たちにお詫びせねばなりません
 そして全力で罪を償わなければいけません」
88 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:46:21.38 ID:9Wv.ZoEo
「ですが
 警察に自主しろとか
 服役して罪を償いなさいと言うわけではないのです
 あなたが努力して
 皆さんに心からの反省をして
 それを自分の言葉で伝えなければいけません

 そしてどうすれば罪を償えるのか
 よく考えて下さい
 そしてこれからの世代に
 奥さまのお腹の中の子供さんが育つ世代には
 あなたのような子ができないように
 あなた自身が努力しなければなりません

 男の子も女の子も
 みんなが安心して暮らせる社会を作っていく事が
 あなたに課せられた使命ではないでしょうか?
 それは大変な努力を必要とします

 もちろんあなた一人ではできません
 だからこそ
 今日集まって下さった皆さんのお力を借りて
 あなたの犯した事を全て笑って許してくれる友人の力をお借りして
 あなたが努力していってください
 分かりましたね」
89 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:49:24.94 ID:9Wv.ZoEo
はい・・・すいません・・・ごめんなさい

「あなた」
ハイ
「それは校長先生じゃなくて皆さんに言う言葉でしょ?」
ハイソウデス
「ちゃんと言いなさい」
ハイ

皆さん本当にすいませんでした
子供の頃のいたずらとは言え、皆さんの心に深く傷を付けてしまいました
心からお詫び申し上げます
もし許せなかったら
好きなようになさってください
全ては僕の責任です
ごめんなさい

校長先生のおっしゃる通りです
今後の人生で
もっと子供達が楽しい人生を送れるように
間違った道を進んでしまわないように
全力で努力していきますから
どうぞ応援して下さい
よろしくお願いします
90 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:52:16.99 ID:9Wv.ZoEo
「よろしくお願いします
 主人の責任は私にもあります
 2人で頑張って参りますので
 どうか見守って下さい」

俺は頭を下げた
みどりも一緒に下げてくれた

ちょっと
気まずい沈黙が続いた

「はっせっがっわっクーーーーーーーーーーーーーン!」

その沈黙を破ったのはオバチャン2人だった

「長谷川クン」

はい

「一つだけ聞かせてちょうだい」

はい

「あなたがした事は悪い事です
 これは動かせない事です」

はい
91 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 19:56:55.29 ID:9Wv.ZoEo
「では聞きます
 あなたはただ単に下着が欲しかったからあんな事をしたのですか?」

はい?

「あなたは下着を盗んだ時
 持ち主の事をちゃんと考えていましたか?」

はぁ

「ただあなたの気持ちだけを満たすためにしたのですか?」

それは違うと思います

「その人たちについてはどういう思いだったのですか?」

えぇと、たぶん、好きだったと思います

「間違いないですね?」

はい

「誰のでもいいというわけではなかったのですね?」

はい

「好きな子だから、そうしたんですね?」

はい!
92 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:00:17.82 ID:9Wv.ZoEo
「ただ男の子の欲求を満足させるためだけではなかったのですね?」

はい!

「その子が好きで好きでたまらなかったからそうしたのですね?」

はいっ!!

「それは間違ってたと言う事も今はちゃんと分かっていますよね?」

はい!

「分かりました
 校長先生
 もうこれぐらいでいいと思いますけど?」

「さすがです
 お2人は素晴らしい女性です
 長谷川さん、よかったですね
 皆さんに感謝してあげてください
 本当に立派なお友達に恵まれましたね」

ありがとう・・・・・
みんな
早川さん、前田さん
ありがとう
93 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:04:34.87 ID:9Wv.ZoEo
こんな簡単な誘導尋問で
俺を助けてくれるなんて

中学の時
あんな風に無視したのに
俺を助けてくれるなんて
なんて優しい・・・女性なんだ
ありがとう・・・・・

「はっせっがっわっくーーーーーーーん
 もう顔を上げてもいいよ」

やべぇまた泣いちゃった
カッコ悪い

「あなた」
何だよ
「次は私が話すけどいい?」
ああいいよ好きにしてくれ
94 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:09:39.21 ID:9Wv.ZoEo
「長谷川の妻のみどりでございます
 お腹に子供がおりますのでこれ以上頭が下げられません事をお許しください
 長谷川の責任の半分は私にあります
 たとえ知り合う前の事だったとしても
 その責任は現在一緒にいる私にもあります

 先ほども申しましたが
 これから皆さんへの謝罪も含め
 立派な社会に変えていくために
 どんな事でもやっていくつもりです

 でも私たちは小さな人間です
 何も大きな事はできません
 この街で働き
 この街で暮らし続ける事しかできない夫婦です
 私も主人もとても大きな事はできません

 何をすると言っても
 何もできる事が思い浮かびません
 だけど待っていて下さい
 今お腹の中にいる子が生まれたら
 校長先生がおっしゃったことを肝に銘じて
 立派な子供に育てます」
95 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:12:27.47 ID:9Wv.ZoEo
「この子にはつらい人生を送らせたくはありません
 そして皆さまのお子様が悲しい人生を送るとこがないように
 毎日お願いし続けます
 長谷川はやっと立ち直りました
 今は真面目に働き
 そして私を愛してくれています
 私にはそれだけで十分なんです
 長谷川をどこにもやりたくないんです
 長谷川がここにさえいてくれたら
 私はそれで幸せなんです

 私もこの長谷川に自分を変えてもらいました
 もし長谷川がいてくれなかったら
 私は本当につまらない人生を送っていると思います
 長谷川がいてくれたから
 私は今とても幸せなんです

 自分勝手な話ばかりでも申し訳ありません
 でも長谷川には人を変える力があります
 それは今ここにいてくださる皆さんがいてくださったからこそなんです
 長谷川も私も一生忘れません
 その思いがある限り
 2人とも絶対に間違った道は進みません」
96 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:15:24.27 ID:9Wv.ZoEo
「お互い変わるのが遅すぎたと思っています
 だけど変わりました
 昔の事だから許して下さいなどとは言えませんが
 どうぞこれからの私たちを見守ってやっていただきたいのです
 どうか、よろしくお願いします」

みどりまで・・・・・
ありがとう・・・
みどりのくせに

「何だかさー」
「何だかだよねー」
「そうですよねー」
「長谷川君がカッコよく見えてきちゃったわよねー」
「長谷川君のくせに」
「私のパンツの匂い嗅いで悶えてたくせに」
「私の胸ばっかり見てたくせに」

キャーハッハッハッハッハwwwwwwwwwwww

「あー何か強ーいお酒飲みたくなってきたね」
「飲もうか!」
「そうですね!」
「さあ長谷川クン飲むよ!」
「みどりさんもさあ顔あげて」
97 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:19:05.93 ID:9Wv.ZoEo
「今日はみんなで雑魚寝しよっか?」
「いいですねーそれ」
「男は別よどっか外で寝るのよ」
「えっ外っすかー?」
「じゃあおねいさんの隣で寝たいの?」
「いやあのそれはその」
「キャーハッハッハッハッハッハッハwwwwwwwwwwwwwwww」

「さあ長谷川クンまだ自己紹介終わってないでしょ!」
「ちゃんと進行してよ長谷川クン!」

せーのっ
「はっせっがっわっクーーーーーーーーーーーーーン」

はあ何だか疲れた
疲れたけどみんな許してくれたのかな?

ありがとうみんな
こんな俺を
俺のくせに・・・・・




パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男のとてもとても楽しい忘年会

第2話 断罪編 終
98 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:28:53.82 ID:9Wv.ZoEo
さてちょっと休憩します

今回は堅苦しい話で申し訳ありません

それにあまりにも強引なこじつけで
自分でも不自然だとは思うのですが
どうしてもこういう流れになってしまいます

今日はもう1話続けます
それにしてもスレの中の人さん
仕事が早いですねwww

一応ここまでが序章です
これらが本編と言うか
ちょっとしたドラマの始まりになります

こんなつまらない話を読んで下さってる方はおられるんでしょうか?
まあ気にせずやります

それでは数分後に再スタートします
99 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:35:57.09 ID:9Wv.ZoEo
パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会

第3話 混乱編


今までの登場人物が一同に集まった忘年会で
俺は皆に謝罪した
心から謝罪した

常識的に考えたらあり得ない話だけど
ここはインターネットの仮想空間
どうやら皆さんのお許しが頂けたようなので
宴会はどんどん続いていった

もう夜はだいぶ更けている
外は寒そうだ
だけど狭い室内にこれだけの人間がいたら
人いきれで暑苦しいぐらいだ

その後しばらくしてから奥原先生のご主人は帰って行った
石原さんと林さんがまた駅まで送ると言ってくれたが
上品な老紳士は丁重に断り
タクシーを呼んでほしいと言ったので
みどりがタクシーを呼んだ

冬の夜だしこんな天気だし
すぐにつかまるかなと思ったけど
15分ぐらいで来てくれた
100 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:38:46.43 ID:9Wv.ZoEo
ご主人は全員に丁寧な挨拶をしてから
家を出て行った
俺とみどり、石原さんと林さんが下まで見送った

本当にありがとうございました
今までずっと肩に乗っていた重いものが
少し軽くなったと思います
校長先生のおかげです

「いえ、それは私ではなく皆さんにおっしゃってください
 仲間を大切に、そしてご家族をしてあげて下さい」

分かりました
ありがとうございます

そのうち奥原先生にも会いに寄せていただきます
せめて、先生に手を合わさせて下さい

「ありがとうございます、ぜひいらして下さい」

そう言って校長先生は帰って行った

寒さに震えながら家に戻る
今日はワイワイ騒ぐつもりだったのに
どうもうまくいかないな
俺のせいだけど
101 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:43:10.18 ID:9Wv.ZoEo
さて自己紹介の続きだ
誰まで行ったっけな?

そうだ川上の番だ
うまく盛り上げてくれよ

「えーっと川上と申します
 長谷川さんの一番弟子です!
 学生時代ずっとサッカーやってました
 今も友達と草サッカーやってます」

「まさか長谷川さんがそんな事やってたなんて
 今日初めて知りました
 ちょっと動揺してますけど
 長谷川さんがもう妙な事をしないように
 僕たち部下がしっかり見張ってますから
 皆さんご安心くださいっ!
 以上でーすっ!」

ってお前それだけかよ
俺の事はどうでもいいだろ
沙希ちゃんが睨んでるだろうが
さっき沙希ちゃんがちゃんとフラグ立ててくれたのに
せっかくだからご報告せんかい
こんなにいい舞台用意してやったのに
102 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:46:57.64 ID:9Wv.ZoEo
すかさずみどりが川上を睨みつけた
「川上君」
「はいっ?」
「それだけなの?」
「ハイッ?」
「あなたの隣に座っているかわいい人は誰なの?」

「あっ忘れてました!
 えーっと、ついでに発表させていただきます!
 僕の妻の沙希ちゃんでーす!」

お前バカかまだ結婚してないだろ
何が妻だ
何1人で舞い上がってるんだよ
上司として恥ずかしいよ全く

それでも一同がざわついた
ほとんどが40歳近い集団の中で
1人だけ目立つ派手でかわいい沙希ちゃんはオヤジどもの視線を一気に集めていたのに
その沙希ちゃんをいきなり奪っていくとは
オバチャンたちが手荒く祝福し
オヤジはそれを冷めた目で見ていた

まあいいか後でとっちめてやるからな
次は俺の部下どもか
適当にしゃべってくれ
103 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:50:10.81 ID:9Wv.ZoEo
俺の会社の部下たちがつまらない自己紹介をしている
騒いでいるのはオバチャンだけだ

そりゃそうだよな俺たちだって
こんな宴会に20代の若い女の子が混じってたら
目の色変えて口説きまくるだろうし

まあ許してやろうか今日ぐらい
オバチャンたちにもエネルギーを与えないとな

つまらん自己紹介をえんえん聞いている時だった
突然ガチャンと食器が割れる音がした

今日の宴会で一番静かな区画
中村と上野さんが座っている場所からだった

全員の視線がそちらに向く
自己紹介はまた中断し
今までほとんど無視されていた2人に注目が集まった

どうやら中村が上野さんに食器を投げつけたようだ
上野さんの膝元にコップが転がり
飲み物が服にこぼれている

その上野さんは顔を押さえれうずくまっている
おい中村お前何やってるんだよ
104 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:53:04.40 ID:9Wv.ZoEo
近くにいたオバチャンが慌ててハンカチを持って
上野さんにかかった飲み物をふき始めた
かわいそうに上野さんはうずくまったまま泣いている

中村は自由な方の手と足を使ってゴソゴソと立ち上がった
「もう帰るからな」
そう言って大勢が立っているのを押しのけて
外に出ようとする

おい中村どうしたんだよ
近づいて行って顔を見る

それは昔の中村の顔ではなかった
健康的に日に焼けた
どうしようもないくらい虫唾が走るような好青年の面影は全くなかった
身体を壊してから思うように外に出られないのか
不健康そうに青黒くむくんだ顔は当時とは全然違っていた

それにかなり酔ってるのか
目がドロリと落ちくぼんでいた
高校時代の色男の面影なんて全くなくなっていた

「いちいち構うな」
そう捨てゼリフを吐いて松葉杖を取り、コートを羽織った

一瞬でだいたい想像できた
にぎわう部屋の片隅で小さくなってる2人の様子は
あまり他のみんなには見えてなかったかもしれないけど
俺は気になってずっとチラチラ見ていた
105 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:56:08.28 ID:9Wv.ZoEo
あの上野さんと中村のカップル
俺が大好きだったかわいい上野さん
高校一オシャレなカップルが
どうしてこんなに陰気な2人になってしまったのか
ずっと気になっていたからだ

上野さんは中村に気を使い
あれこれと食べさせていた
身体があんなだからだろうか
中村は不機嫌そうだった

いちいちかまう上野さんをうざそうにしながら
使える左手で酒ばかり飲んでいた
織田と村田が買ってきてくれた一升瓶をそばに置き
1人でぐいぐい飲んでいた

それでも上野さんはそんな中村に付き添い
ずっと面倒をみてやっていた
バカな俺にも何となくは分かるけど
プライドの高い男にはけっこう屈辱的な状況だろう

何気ない上野さんのしぐさが
中村の気に障ったんだろうと思った

オバチャンに濡れた服を拭いてもらっていた上野さんが慌てて立ち上がり
中村にコートを着せるのを手伝おうとした
その時だった
106 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 20:59:51.36 ID:9Wv.ZoEo
中村が相変わらず大きなその左手で
ブンと思いっきり上野さんにフックを叩きつけた
小柄な上野さんはその一撃をまともに食らい
取り囲んでる人の中に吹っ飛ばされた

おい中村お前何やってるんだ
いいかげんにしろよ
お前を支えてくれてる上野さんに
何て事をしてるんだよ

俺の大好きだった上野さんだぞ
どんな理由があっても許さないぞ

俺は握りこぶしを固めた
ケンカなんかした事ないけど
今ここでやらなきゃどうなるんだ
人を殴るってどんな感じなんだろう
でもなかなか足が踏み出せず、ちょっと躊躇していた

俺よりも素早くみどりが反応した
パーに開いた右手を大きく振り上げながら
中村の方に1,2歩踏み出した

みどり?
やめとけお前は妊婦だぞ
急に体を動かすのはよくない
俺は完全に出遅れていた
107 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:02:59.47 ID:9Wv.ZoEo
ところがそのみどりよりもさらに早く動き出していた物体があった
「みどりさんダメですっ!」
紫色のセーターを着た
ぬいぐるみのような丸い影が躍り出た

そのぬいぐるみは戸惑う俺よりも、そして身重のみどりよりも素早く
コロコロと転がり出て
中村の頬に痛烈なビンタを放った

パンと小気味よい音がして
中村はバランスを失ってよろめく

沙希ちゃんだった
あの沙希ちゃんが
信じられない反射神経で
中村に張り手をかましたのだ
足の不自由な中村は完全にバランスを崩して倒れそうになる

すると俺の部下たちも素早く進み出て
崩れる中村の大きな身体をしっかりと支えた
見事な連係プレーだ

その足元には小柄な川上がすでに潜り込み
下に置いてあったコップやツマミの皿などがひっくり返らないように
完全にガードしていた
108 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:05:26.35 ID:9Wv.ZoEo
トリプルプレー成立だ
攻撃を加えようとした俺とみどり
それをかいくぐって一撃を見舞った沙希ちゃん
そしてディフェンスは俺の部下たち
アフターフォローは川上

わずか3秒ほどの間に
完全試合が成立してしまった

何だ全員俺の部下じゃないか
すごいなこいつら
さすがは俺の部下だ
苦労して育ててきただけの事はある

ってゆーか
何もしてないのは
俺だけじゃないか

それはともかく
ようやくバランスを取り戻した中村を
沙希ちゃんが激しく睨みつける

こんな沙希ちゃんの顔は見た事なかった
凛としていて、とても美しかった
沙希ちゃん・・・きれいだよ・・・
109 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:08:33.81 ID:9Wv.ZoEo
沙希ちゃんは中村の前に顔を突きつけて叫んだ
「恥ずかしくないんですか?
 間違ってるって事ぐらい分かるでしょう?
 自分の奥さんにこんなひどい事
 してもいいなんて思ってるわけないでしょう?」

せっかくの楽しい忘年会場がまたシーンと静まり返ってしまった
ああ・・・なんて事だ・・・

沈黙を破ったのは上野さんだった
みんなに助けられてようやく起き上がり
「みんなごめんね・・・・ごめんなさい」

とつぶやいて
中村の肩の下にその小さな体を入れた
そしてふらつく中村を支えて出て行こうとする

するとみどりが俺のそばにツツと寄ってきた
「あなた今帰らせちゃだめ」

そうだなかなり酔ってるみたいだしな
「寝室で休んでいってもらいなさい」
ハイ
110 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:11:50.53 ID:9Wv.ZoEo
出て行こうとする2人に玄関口で声をかける
上野さんはコートすら羽織っていないし
おい中村まだ歩かない方がいいぞ
外はもう暗いし寒いし
雪も降りそうだし

「迷惑かけたな」
そんな事はどうでもいいよ
とにかくまだ出ちゃだめだ

上野さんも寒そうだし
今から帰るのは大変だぞ
「長谷川君ごめんね本当に
 でもこれ以上いたら皆さんに・・・」

いいんだよそんな事は
だけどまだ帰っちゃだめだ
中村もだいぶ酔ってるみたいだし
せめてちょっと休んでからにしろよ

俺は正直中村の事よりも上野さんの方が心配だった
いったいどうなってるんだよこの2人は
高校生の時からあんなに仲が良かったのに
俺といる時間以外はいつも一緒だったはずなのに

いや俺といたのは学校の中だけだ
それ以外の時間はずっと2人でいたはずなのに
なんでこんな状態になってしまったんだよ
111 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:14:46.95 ID:9Wv.ZoEo
中村も興奮がやや落ち着いたのか
上野さんの方を気まずそうに見ている
殴られた上野さんの顔は腫れ上がっている

美しい顔がかわいそうに引きつって歪んでいた
すぐに冷やした方がいいのかな

俺は再び攻勢に転じる
とにかくちょっと休んでいけよ
別に帰るなとは言わないからさ
向こうに部屋があるからちょっと酔いを覚ましていけよ
それからでもいいだろ帰るのは

中村も小さな体で支えている上野さんをチラッと見下ろし
「悪いな・・・」
もういいよとにかく少し休めよ

そうしてふらふらする中村の身体を寝室に運び
俺のベッドに寝かせた
やはり相当酔ってたんだろうか
横になるとすぐにイビキを書き始めた

みどりがビニール袋に入れた氷を持ってきてくれた
上野さんの顔にそっと押しつけてから
みどりは部屋を出て行った
「長谷川君・・・みどりさん・・・本当にごめんね・・・」
112 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:17:15.42 ID:9Wv.ZoEo
上野さん
上野さん・・・
高校時代、俺が憧れていた上野さん

いつも元気で明るくて
いつも俺の横ではしゃいでいた上野さん
俺は上野さんが好きで好きでたまらなかった

だけど俺は上野さんを自分のものにはできなかった
俺がふがいない落ちこぼれだったせいなのもあるけど
俺に泣く泣く彼女をあきらめさせたのは
この中村がいたからだった

学校で一番カッコよくって
学校で一番いいオトコだった
男の俺から見てもうらやましくなるぐらい
素晴らしい男だった

それが何でこんな状態なんだ
片手と片足をなくしたのはしょうがない
何か事故に巻き込まれてケガをしたんだろうけど
そんな事はどうでもいいんだよ

何で酒に酔って上野さんに暴力を振るうんだよ
上野さんがお前に何かやったのか?
つらそうなお前をかいがいしく助けてくれただけだろ?
113 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:20:30.24 ID:9Wv.ZoEo
寝室で中村の寝顔を見ながらしばらく黙っていた

「長谷川君・・・聞いてくれる?私たちの事・・・」

ああぜひ聞かせてくれ
一晩中かかってもいいから聞きたい


ここからは上野さんの独白になる


中村が高校を卒業してもしばらくは
2人は付き合っていたらしい

しかしやがて中村から連絡が来なくなった
上野さんも覚悟はしていたけど
中村には新しい彼女ができたらしい

だけど上野さんはあきらめなかった
金持ちの中村は東京の有名な私立の大学に通っていたが
前に書いたとおりの理由で彼女は同じ学校にはいけなかった
せめてもの思いで同じ東京の国立の大学を目指した

1年間浪人したが、何とか東京の大学に合格した
そして親元を離れて下宿し始めた

家からの仕送りはほとんど期待できなかったので
アルバイトをしながら自力で生活した
114 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:24:10.21 ID:9Wv.ZoEo
そして上野さんは中村の姿を必死で探した
広い東京で探すのは大変だった

だけど苦労したあげくに
卒業間際にようやく発見した

中村の父親は地元で建設会社を経営しており
就職の心配は全くする必要がなかったが
努力家の中村はそれを断り
親への反骨心もあったのだろうか
同じ建設業だけど
父の会社とは全く関係のない会社に就職していた

上野さんも必死で大学を卒業して就職した
彼女も地元には戻らなかった
地元に戻ればそれなりに有力者の父がいる
娘の就職の世話ぐらいは簡単にできただろう

だが彼女も厳しい道を選んだ
何と中村と同じ会社に就職したのだ

部門は全く違うし顔を合わせる事もない
大きな建設会社だった
それでも彼女は中村の近くにいたかった
115 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:28:04.89 ID:9Wv.ZoEo
近くにさえいれば
いつか必ずまた会えると思った

たとえ無視されても
中村と同じ空間で過ごしたかった

そしてやっと中村に再会できた時
やはり予想はしていたけど
悲しい現実が上野さんを待っていた

中村はもう結婚する事が決まっていた
相手はもちろん上野さんではない
彼女も知らない女性だった

うらやましがる同僚たちの噂で
関連会社の重役の娘さんだと聞かされた
ものすごく美人で、そして派手な女性だと聞いた

広いホテルの会場で
豪華な結婚式が催され
上野さんもその末席に座った
あふれる涙で何も見えない結婚式だった
116 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:31:43.97 ID:9Wv.ZoEo
優秀な中村は会社でもメキメキと頭角を現した
親の七光りなどあてにしなくても
自分の力で未来を切り開ける男だった

ちょうどバブルのはじけた時期だったし
それなりに会社はダメージを受けたが
逆にそのピンチが中村の出世を助けた

崩れる会社を立て直すために
中村は必死で働いた
吹き荒れた激しいリストラの嵐にも生き残り
逆にその状況をも自らの成長へのチャンスに変えた

やがて実家の父親とも和解して
将来必ず戻ってきて後を継ぐと約束した
それまでもっと修行するために
敢えていばらの道を選んだ

外国に大きなビルを立てるプロジェクトのメンバーに選ばれた
中村にはかなり大きな責任が任された
数年にわたって赴任する必要があったが
頑張り屋の中村はそれに挑戦した

無事完了すれば昇進が待ち受けていた
さらにその後、円満に父の会社を継ぐ事も決まった
自分を待ち受ける揚々とした未来に向けて
家族を残して中村は飛び立っていった
117 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:35:27.44 ID:9Wv.ZoEo
傷心の上野さんは1人で東京に残り
黙々と働き続けた
もちろんこんな美人の彼女を世間の男が放っておくはずはない
大学時代からさまざまな男に言い寄られたが
彼女はその全てをはねのけてきた

しかし中村の結婚を知ってから
傷心の彼女は自分を無理やり納得させ
何人かの男性と付き合った
しかし結婚まではこぎつけられなかった

中村の事が忘れられないのか
それともただ縁がなかっただけなのか

そして単身外国に渡った中村は精力的に働いた
頑張り屋の中村は
それこそ寝食を削ってまで働いた

異国での労働は厳しかった
言葉の通じない外国で
さまざまな調整をする役割の中村の仕事は難航するが
持ち前のガッツで問題を次々に解決していった

そしてしばらく経過し
ある日、中村は現場に出ていた
もちろん作業員ではなかったのだが
現場に出る事もたまにはあった
そしてその日、事故が起こった
118 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:38:25.23 ID:9Wv.ZoEo
現場のチームと打ち合わせをしていた中村は
外国人労働者のずさんな作業に気づき
注意しようと歩み寄った
その時だった

固定していた資材が崩れ
高層ビルから落下しようとしていた
中村はすぐに労働者たちを退避させ
ゆるんだ金具を締め始めた

中村にはそんな責任はない
逃げればよかったのだ
しかも中村には工具の使い方なども分からない
彼の仕事は現場の作業員ではなかった

しかし彼の責任感が逃げる事を拒んだ
必死に崩壊を食い止めようとする中村
止めに入る現地人の監督の言葉も分からない

「もうだめだからあきらめてこっちに来い」
という意味なんだろうけど中村は聞いてはいなかった

そして間もなくゆるんだ資材が一気に崩壊した
幸いな事に地面まで真っ逆さまに落ちる事は避けられたが
逆に中村めがけて崩れ落ちてきた

スポーツで鍛えた頑丈な身体だが鉄骨にはかなわない
中村の半身はグニャリと押しつぶされた
119 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:41:24.88 ID:9Wv.ZoEo
すぐさま技術の低い現地の病院ではなく
設備の整ったヨーロッパの病院に運び込まれて手術を受けた
おかげでなんとか命は取り留めたのだが
右手と右足を失ってしまった

そして日本に帰国した時には
中村は家族すら失っていた

順調に出世を続ける理想の夫を追い求めていた彼の妻には
失敗を犯した中村など必要な人間ではなかった

置き手紙すら残す事なく
家族は中村から離れていった

逃げた妻に今でも慰謝料を払っているのか
ちゃんと離婚届は出したのか

そして中村に子供がいるのかどうかさえ
上野さんにもまだ分からないという

大会社だし労災などの保障は完備している
もちろん父親の強いバックアップもある
中村が将来食っていく事には何の心配もなかった

しかし当然のように昇進の話は流れ
どうでもいい閑職に就けられてしまった

中村のプライドは大きく歪み
会社を休む事も増えていった
120 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:44:09.87 ID:9Wv.ZoEo
無断欠勤しても文句すら言われない
そんなつまらない部署だった
中村はますます落ち込み、そして荒れ狂った

そんな中村が行きつく先は上野さんの所しかなかった
落ちぶれた中村を優しく包み込めるのは上野さんしかいない
荒れる中村の面倒は全て上野さんがみた

2人はすぐに一緒に暮らし始めた
会社にも家族にも捨てられた失意の中村を
上野さんは再び奮い起こし始めた

20年近くも待ち続けて
ようやく上野さんの前に戻ってきた中村は
体だけではなくその心までもが
昔とは全く違う人間に変わっていた

それでも彼女は、昔俺にやってくれたみたいに
ゆっくりと中村の心を解きほぐし
懸命に中村をいたわった

1人では風呂も食事もできない
トイレすら1人でできない中村の
文字通り全ての面倒を彼女が見た

だが中村にはその気持ちは伝わらなかった
あの上野さんのひたむきな愛情すら受け入れられない中村だった
121 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:47:08.98 ID:9Wv.ZoEo
そしてとうとう中村は会社を辞めて地元に戻ってきた
もちろん上野さんも一緒に戻った
中村は父親の後押しもあって何とか関連会社に職を見つけた
もう野望に燃えていた頃の中村ではない
ただ食わせてやるだけという仕事をありがたくいただいた

失意の中村は酒を飲んだ
その量は半端じゃなかった
元々身体も大きい上に
さらに失望という名のスパイスが加わり
毎日浴びるほどの酒を飲んだ

そして酒を飲んでは暴れた
上野さんにも暴力を振るった
うまく食事をさせられない上野さんを怒鳴りつけ
松葉杖で叩き続けた
しばらく起き上がれなかった事もあったと言う

そんな上野さんを中村はさらに殴りつけた
いつまで寝てるんだとわめき散らしながら

中村には優秀な兄弟がいる
後継者は他にも何人もいる
中村は完全に社会から捨てられてしまった
父親からはもう連絡すらほとんどないと言う
122 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:50:25.33 ID:9Wv.ZoEo
こっちに戻って来たのが約3年前の事だった
2人とももう40歳が目前だった
そして中村は今になってもまだ
婚姻届にハンコを押してくれないと言う

上野さん・・・・・
上野さん・・・
上野さん

何でこんな苦労するんだよ
何でこんなバカな苦労するんだよ

こんな美人が
こんなかわいいのに
こんなに優しいのに

何で世界は俺みたいなバカにこんな平凡な幸せをくれて
こんないい人間にこんなひどい人生を与えるんだよ
おかしいじゃないか

中村だってそうだよ
同じ男の俺が見ても分かるぐらい
コイツはいい男だ

おそらく世界中の人間が全てうらやむぐらいの能力の持ち主だ
しかもそれを鼻にかけたりしない
本物の好漢だった
123 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:53:17.50 ID:9Wv.ZoEo
高校時代
上野さんと話している時に中村が来た時に
俺はコソコソ逃げ出そうとしたら

「長谷川たまには一緒に帰ろうぜ」
「いつも上野が世話掛けて悪いな」

俺はそんな情けをかけてもらうのが悔しくて
逆に中村を避けていた

なのに中村の頭には
そんなひねくれた俺の気持ちなど理解できていなかった
それだけ素直ないい男なんだ

事故の時だってそうだ
そんな事しなけりゃよかったのに
別に中村の責任でもないのに
自分の身体を張ってまで

何考えてるんだよ
アホなヤツだよ
どうしようもないバカだよ
中村・・・・・
124 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 21:58:03.89 ID:9Wv.ZoEo
その時、寝室の戸がカラリと開いた
みどりだった

みどりは一瞬で部屋の空気を読み取り
「あなた寒くない?」
ここには小さな電気ストーブしかない

上野さんは寒さと悲しみに震えて小さく身体を丸めていた
「ファンヒーター持ってきてあげるから
 あと何か食べるものとかいる?」

うんありがとう頼むよ
「分かった
 しばらくここにいてあげなさいねあなた」
そう言ってみどりは出て行った

「長谷川君・・・素敵な奥さんで良かったね」
ありがとうみんなのおかげだよ
「私も・・・みどりさんみたいになれるかな?」

大丈夫だよ上野さんなら
みどりなんかよりもっといい奥さんになるよ
いやもう十分いい奥さんだよ
あんな怖いみどりじゃなくってさ

中村だってバカじゃない
俺よりはるかにいいヤツだよ
俺が上野さんを好きだったよりもっともっと
中村も上野さんを愛してるはずだよ
125 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:01:22.85 ID:9Wv.ZoEo
ただちょっと歯車がズレてるだけだよ
そのうちきっと元に戻るよ
さっき校長先生も言ってただろ
誰でも変われるんだよ

こいつなら絶対変わるよ
もうとっくに変わろうとしてるはずだよ
だってコイツは
腹が立つぐらいのいいヤツなんだから・・・

中村がモゾモゾと動いた
寝返りを打つような感じで横を向いた
上野さんがすかさず中村の体の下に手を入れ
苦痛が少ない体勢にしてやる

「・・・ごめんな」

何だ中村起きてたのか
今の話聞いてたのか?

「ああ・・・全部聞いてたよ」
じゃあ上野さんの気持ちよく分かっただろ?
「前から分かってるよ」

あんまり彼女泣かすなよ
「分かった・・・」
まあもうちょっと休めよ静かにしといてやるから
「・・・」
126 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:04:18.81 ID:9Wv.ZoEo
またカラッと戸が開いた
みどりだった
さっきのようにチラリと部屋を見回し
「あなた」
何?

「石原さんがこっちに来たいって言ってるけどいい?」
うんいいよもちろん
「石原さんに変な気を起こしちゃダメよ」
何言ってるんだ当たり前だろ

「中村さんすみませんけど」
「はい?」
「うちのバカがあなたの奥さんか石原さんにちょっかい出そうとしたら
 思いっきりブン殴ってやってもいいですから頼めますか?」

おいみどりいいかげんにしろよちょっと言いすぎだろ
今ここでそんな事言う必要ないだろ
それにお前ファンヒーター持ってくるって言ってまだ持ってきてないじゃないか

何だよ偉そうに
みどりのくせに
ムカッときた俺は
思わず立ち上がりかけた
127 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:07:54.03 ID:9Wv.ZoEo
「ククククク・・・分かりましたよ
 大丈夫ですから任せといて下さい」

振り返ると中村が笑っていた
体を震わせて笑っている
ふざけやがって中村のくせに

上野さんまでクスクス笑ってるじゃないか
みんなで俺をバカにしやがって

あれ?そこでピンと来た

みどり・・・お前って・・・何者だ?
「奥さん・・・さっきはすいませんでした
 皆の前で恥ずかしい事をしてしまって」

「いいんですよウチなんかもっとひどい事されてますから
 ねえあなた?」
ハイスイマセン
「じゃあ石原さん連れてくるからね」
そう言ってみどりはまた出て行った

みどりにこんな空気を変える力があったとは
さっきまで悲しみに包まれていた上野さんを
険悪な表情だった中村を
一瞬で笑わせて去って行った
128 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:10:43.98 ID:9Wv.ZoEo
「長谷川・・・お前いい嫁さんもらったな・・・」
そうかそう思うか俺もそう思う

俺はどうやらとんでもない嫁をもらってしまったような気がするんだ

しばらく黙っていたが中村はもうおとなしくなっていた
上野さんに手を貸してもらってベッドの上に体を起こした
すぐに石原さんが入ってきた

両手でお盆を持っている
ワインの瓶とチューハイの缶といくつかの紙コップ
それにいろいろおつまみが載っていた

その後ろにみどりもついてきた
ファンヒーターを持っていた
「あなた持って」

俺はみどりのファンヒーターを受け取り下に置いた
中村は壁にもたれた方が座りやすいと言うので
壁際に上野さんと並んで座り
俺と石原さんは俺のベッドに腰を下ろした

みどりはちょっと疲れてるみたいなので
自分のベッドにしばらく横にならせた
大丈夫かみどり?

「うん大丈夫よずっと立ってたからちょっと疲れただけ」
休んでていいからな
「うん・・・ありがとう」
129 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:13:13.44 ID:9Wv.ZoEo
「はーでも何だか賑やかすぎて疲れちゃったね」
ワインのコップを口に運びながら石原さんが言う
「こんな大勢でワイワイ騒ぐのって何年ぶりだろう」

そうだねいい所に嫁いだんだし
お金持ちの家庭ってどんなんだろう
そういや中村も上野さんも金持ちの家だったな
こんなマッチ箱みたいな小さなアパートは珍しいんだろうな

中村も石原さんにさっきの事を詫びた
「いいんですよちょっとびっくりしましたけど
 でももう大丈夫そうですね」

まだ酔ってはいるが中村はもうしっかりしている
その目には昔のような力強い光があった

「本当に恥ずかしい所を見せちゃって」
「でもケンカするほど仲がいいって言うでしょう?
 うらやましいです」

そうだなこんな上品な女の人は
旦那とケンカなんてしないんだろうな
「私・・・そんなのがうらやましいんです」

どうしたんだろ石原さん
見るからに幸せそうな雰囲気が出てるのに
石原さんの話も聞きたいな

「ただのグチだけど・・・聞いてくれる?」
130 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:16:45.01 ID:9Wv.ZoEo
ここから石原さんの独白


名門女子高を卒業した石原さんは
そのまま女子大に進み
そして就職をした
当時すでに副社長だった若旦那が勤める漬物会社だった

会社で一番のこんな美人を誰もが放っておくはずがない
たちまち激しい争奪戦が繰り広げられたが
当然のように勝者となったのは
その後社長となる
若さあふれる好男子だった

びっくりするようなお屋敷に済み
何人かの家政婦に囲まれて暮らした

それまで育ったごく普通の家庭とは全く違う環境に
最初のうちはとまどう石原さんだったが
家庭での暮らしのやり方はただ一つ
「何もしない事」だった

枯れかけた植木の葉っぱを切っただけで誰かが怒鳴られる
奥さまに余計な手間をかけさせるんじゃないと

掃除も洗濯もそして家族の食事の用意も
何一つさせられる事はなかった

全ては石原さんを心から愛してくれている
旦那の気配りだった
131 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:20:48.65 ID:9Wv.ZoEo
旦那はとても優しく
石原さんには何も不満はなかった

生まれた2人の子供もスクスク育ち
お坊ちゃん特有のわがままもなかった

誰もが夢見る憧れの家庭だった
それが普通だと思っていた

しかし今日集まって見て
力いっぱい生きている皆を見てうらやましくなった

石原さんの実家は食堂をやっており
彼女も忙しい時には仕事を手伝わされた
かっぽう着を着て額に汗して働いた

そして結婚を控えてからは料理学校にも通った
なのにその腕を振るう場所がどこにもなかった

さっき手際よく料理を準備していた
あの素晴らしい包丁さばきはそれでなのか

確かにあの腕前を家族の前で披露できないのは残念だ
それにしても金持ちの家ってそんななのか
うらやましいなマジで
「でも・・・全然楽しくないんです」

旦那には何の不満もない
金持ちに特有の傲慢さなどはひとかけらもない
いつも明るく、優しく、そして強い夫だった
132 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:24:03.46 ID:9Wv.ZoEo
それでも石原さんは
せめてたまには自分が食事を作ってやりたい
子供に持たせる弁当ぐらいは
自分が用意してやりたいと思う

しかしそれは自分のわがままだ
自分が我慢していたら
ありがたく楽にさせてもらい
気楽に遊びまわっていればよいのだから
ずっとそう言い聞かせて生きてきた

力強く生きている人がうらやましい
上野さんのように自分で道を切り開けるような人がうらやましい
ごめんね贅沢な話で
自慢してるつもりじゃなくって

その時上野さんがキッと顔を上げた

「それは違うと思います
 私なんかただ好きにやってるだけだから
 家族にも悲しい思いをさせて
 勝手にわがままやってるだけですから」
133 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:30:22.91 ID:9Wv.ZoEo
次は上野さんの独白


上野さんも子供の頃までは金持ちの家に育った
家には何人かの使用人がおり
家族の食事も全て女中たちが作った

母親も深窓のご令嬢育ちで
家事などは全くできない女性だった

毎日の食卓にはいつも豪勢な料理の数々が並び
その中から好きなものだけを食べればよかった

上野さんはそれがとても楽しく
またそれが当然だと思っていた

遠足のお弁当などには
まるで料亭から取り寄せたようなお重を持たされ
また学校のみんなも同じようなものだった

しかしある日突然
兄が何も食べなくなった
例の天才少年の兄だ

お手伝いさんが作った大量のご馳走には見向きもせず
自分の部屋にこもり
自分で買ってきたスナック菓子を食べていた
134 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:33:15.09 ID:9Wv.ZoEo
父は当然激怒し使用人たちを怒鳴り散らす
子供に食べさせる食事すら満足に用意できないのかと

お手伝いさんは恐々としながら必死で料理を作ったが
それでも兄は何も食べなかった

これではいけないと心配した母が始めて手作りの弁当をこしらえた
生まれてこの方
料理など一度もしなかった母が
へんてこなおにぎりと残骸のような卵焼きを作った

父に見つからないように
兄の部屋にそっと差し入れをした
「ちゃんと食べないと体に悪いから」と言って

兄はそれをきれいに平らげて弁当箱を返した
それから母は毎日台所に立つようになった
家政婦に教わりながら
下手くそな料理を毎日作り続けた

豪華な料理がズラリと並ぶ食卓の隅っこに
必ず母が作った一品があった
思わず吹き出しそうになるぐらい
奇妙な料理があった

だが兄はそれだけを食べた
他のおかずには目もくれず
母の手作りのおかずだけを食べた
135 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:36:51.29 ID:9Wv.ZoEo
上野さんもそれをマネしてみた
彼女にはまだ豪華なおかずの方に未練があったが
母の嬉しそうな表情が分かるのでそれを食べた
普段あまり笑わない兄もその時は笑顔を見せてくれた

普段めったに一緒に食事をしない父は激怒していたが
母が必死になだめた
やがて父も文句を言わなくなり
たまに家族で食卓を囲む日もできた
そこには母の手料理が並んだ

その後、父の事業の失敗で家庭はめちゃくちゃになり
悲しい時期もあった
雇っていた家政婦も全員辞めた
しかしそのおかげで母が毎日ご飯を作ってくれるようになった

それだけでも嬉しかった
どんどん母の料理の腕も上がり
毎日が楽しかった

そんな母の愛情さえ感じられない時期もあったし
後からさんざん両親には迷惑をかけた
だけど母は毎日へこたれずに兄と自分に愛をかけてくれた
それが今でもとても嬉しかった

石原さんももっと自由にするべきです
お子さんたちが何も言わないのはいい子だからだけじゃないんです
言ってはいけないからそうしているだけです
136 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:40:14.67 ID:9Wv.ZoEo
子供が母親の作る食事を食べたくないなんて
そんな事があるはずがありません
それでいいのかななんて
ただ自分とご家族に甘えてるだけじゃないですか?

おい上野さんちょっと言い過ぎじゃないかな?
石原さんとは初対面だしあんたは1つ年下だ

しばらく沈黙が続いたが
石原さんは突然笑い出した
「何だ・・・そんな事か・・・」

そうだ好きなようにすればいいんだ
子供のご飯を作るぐらい
なんでもない事なんだ

別に怒られてもいいんだ
自分の家なんだし自分の家族なんだし
それに料理は得意だし

母親が自分の子供に食事を作って何が悪いんだろう
当然の事じゃないか
私何を考えてたんだろう

そんな簡単な事になぜ気が付かなかったんだろう
ありがとう上野さん

いえ、偉そうにごめんなさい

いいお母さんね
137 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:44:58.65 ID:9Wv.ZoEo
はい・・・でも母は心配してると思います・・・私の事

上野さん・・・

でも、ちゃんと分かってくれてると思ってます
だって・・・
チラリと中村の方を見る

さあ中村今だお前の出番だ
横になっていたみどりもむっくりと顔を起こす
お前が言え何とか言え

「上野・・・済まなかった・・俺が・・・こんな体になってなければ
 もっと仕事もバリバリできたのに・・・」

「中村クン・・・」

「俺が東京なんかに行かずにこっちで就職してたら・・・
 お前に迷惑もかけずに・・・」

みどりが何か言いたそうに口を開いたが俺が先を制する
みどりさんここは俺に言わせてくれ
せっかくの名場面だから

おい中村違うだろ言う言葉が

「ん?」
138 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:48:09.17 ID:9Wv.ZoEo
お前の失敗はたった一つだよ
確かにお前は人生で最大のミスを犯した
だけどそれはそんなケガしちゃった事じゃないだろ
分かってるだろそれぐらい

「・・・・・」

しかもそれは取り返しのつかない失敗じゃないだろ
いつでもお前の目の前にいてくれてて
いつでもやり直せる存在じゃないか
まさかそれに気づいてないんじゃないだろうな?

全員が中村を見ていた
本当の事情を知ってるのは今は俺だけだったが
さっきの様子を見てるからみんなにも何となく分かるのだろう
これだけ一途に中村を愛してくれてる上野さんなのに
さっきの態度でだいたい想像がつく

高校生の頃からずっと中村を愛していた
東京にまで追いかけて行った

同じ会社に入ってようやく会えたのに無視されても
別の女性と結婚までしてしまったのに
お前が大ケガをして帰ってきても
ずっと待っててくれていた
139 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:51:07.19 ID:9Wv.ZoEo
そしてお前にどれだけ殴られてもずっと逃げなかった
今お前の隣に座ってる上野さんだよ

彼女の気持ちをちゃんと分かってあげていない事が
お前の人生最大の失敗だよ

だけどお前が少し手を伸ばせば
優しい言葉の一つでもかけてあげさえすれば
そんな失敗は全て帳消しにできる

いつでも最初からやり直す事ができる存在だ
まさかそんな事に気づいてないんじゃないだろうな?

みどりと石原さんは身体を固くしている
上野さんはうつむいている
そして中村も下を向いている

時間が流れた
そして

「フフフ・・・まさか長谷川に説教されるとはな・・・」
当たり前だろ俺もお前ももう40だぞ

「パンツ泥棒のお前にな・・・」
いやいやそれは言うな今は言うな
せっかくの名場面が台無しだ

中村は隣でうずくまる上野さんに笑いかけた
上野さんはますます身を小さくすくめる
140 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:54:10.09 ID:9Wv.ZoEo
「上野・・・本当に悪かった
 もうちゃんとするから・・・許してくれ」

「うん・・・いいの・・・全然大丈夫だから・・・ありがとう」
そして上野さんは中村の肩に頭をもたせた
中村はそんな上野さんの髪に顔をこすりつける

ったく手間をかけさせやがって
中村のくせに

それからしばらくみんなで黙って飲んだ
ようやく落ち着いた俺もワインをもらって飲み
中村も紙コップに注いでもらったワインをちびちびと飲む
さすがにさっきのように鯨飲はせず
舐めるようにゆっくりと飲んでいる

上野さんはあまり酒が強くないのか
渡されたチューハイの缶にはほとんど口を付けていない

ちなみにみどりは妊娠してからはほとんど飲んでいないが
実は九州人で、なかなかの酒豪だ
妊娠する前は正月などに2人でかなり飲んで
俺の方が先につぶれてしまう事もあった

俺も高校時代に酒の味を覚え
大学のサークルでは先輩に負けずに平気で飲んでいたし
自分でもそこそこ酒は強い方だとは思うんだけど
悔しいけどみどりにはかなわない
141 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 22:57:14.62 ID:9Wv.ZoEo
ただみどりの言葉を借りると
「いくら飲んでも全然酔わないからつまらない」
そうで、めったに一緒に飲む事はなく
いまだに俺はみどりが酔い潰れた所を見た事はない

そして石原さんはなかなかイケるクチのようで
ワインとチューハイを交互にゴクゴクと飲んでいる

「あーおいしいねー!こんなに飲むのなんて本当に久しぶり!」
舌をペロッと突き出してニッコリ笑う
石原さんって・・・なんだか面白い人だな

中村もようやく落ち着いたのか
上野さんの肩に腕を回し
上野さんはそんな中村に幸せそうに寄り添っている

そしてベッドの上の俺の隣には石原さんが
触れなば落ちんという風情で色っぽく体を揺らす
「あーあちょっと酔っちゃったかな・・・?」

酔いと暖房とで頬をピンクに染めたその横顔はとても美しかった
この顔は・・・そうだ
奥原先生のあの美しい顔に似ているような・・・

冗談のつもりなのか
時おり石原さんの肩が俺に軽くぶつかる
これは・・・まさか俺を誘ってるのか?
142 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 23:00:09.29 ID:9Wv.ZoEo
中村と上野さんは完全に2人の世界に入っている
そして背後のベッドではみどりが目をつぶって寝ている
今なら・・・ちょっとぐらいなら
肩を抱き寄せてもいいかな?

白いセーターを着た石原さんの細い肩が時々俺に触れる
はらりと落ちた長い髪が俺を妖しく誘っている
ちょっとだけ・・・手を伸ばせば・・・

中村・・・上野さん・・・
しばらくこっちを見るなよ・・・・・

俺の左手は石原さんの細い腰に数センチまで近づいた
気づいているのかどうなのか
リズムを取るように、彼女の体がゆっくり揺れる

その時、背後の布団がガサッと動いた

「さてっと!」

みどりが体を起こした
「さあ、ちょっと休んだから元気になったし
 みんなで向こうに戻りましょうか?」

とつぜん背後からのみどりの声に焦り
石原さんの腰に回そうとしていた手を下ろした
わざとらしく、ベッドに落ちていた自分の抜け毛などを拾い集める
143 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 23:04:01.55 ID:9Wv.ZoEo
「オカゲサマデ ずいぶん楽になりましたので」
みどりは最初の一言をわざと強調して言った
クソッ見てたのかみどり?
また後で怒られるのか・・・

その姿を見て苦笑する中村もみんなにお詫びがしたいというので
手を貸して立たせてやり、寝室を出ようとした

すると石原さんがみどりを呼び止めた
「みどりさん、もうちょっとお話させて下さい」
2人を寝室に残して俺と中村、そして上野さんはみんなが騒ぐ部屋に戻った

はあやっと宴会がちょっと落ち着くかな?
それにしても今日は複雑すぎる夜だ

明日になったらだいぶ毛が抜けてるかもな
40間近になって
最近ちょっと気になり始めてるんだけど
いやだわもう



パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会

第3話 混乱編 終
144 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/12(金) 23:07:27.62 ID:9Wv.ZoEo
さて今日はここまでにしたいと思います
読んで下さってる方はおられるのでしょうかww

また明日13時過ぎごろから再開する予定です
また見つけられましたらお付き合いください

今回は6話構成ですので
あと3話です
ちょっと堅苦しい話なのと
あまりにも強引なこじつけ方で
自分で読んでいても苦笑してしまいますがww

まあ最後まで頑張ります
どうもありがとうございました
145 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/13(土) 00:45:40.16 ID:/neMKeI0
乙!
前回同様、読みごたえある文章で楽しませてもらってるぜ
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/13(土) 01:46:33.85 ID:xsX9YFko
お疲れ様でした!
今から残りの分をまとめますです
147 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 11:57:53.20 ID:1E3PPOYo
>>145さん
>>146さん
レスありがとうございます

あと3話頑張って続けますので
よろしくお願いいたします
予定通り本日13時より再開します
148 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:21:11.90 ID:1E3PPOYo
パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会

第4話 告白編


だいぶ長い間寝室でいろいろ話している間に
もう深夜と呼べる時間になっていた

みんなを放ったらかしにしていたので
こっちはどんな状況だろうと思っていたけど
思ったより和やかな宴会が続いていた

さっきの混乱した状況はは
アルコールの酔いとともに消えてくれたようだ

部屋に入るなり中村は深々と頭を下げた

「皆さんさっきは大変失礼しました」

一瞬シーンとするが
中村の力強い光を取り戻した穏やかな目と
その肩を支える上野さんの優しい表情を見て
みんなの表情がゆるむ

俺の部下たちを除いてはみんな中年の大人だ
いちいち説明をしなくても
顔の表情でだいたい分かる
149 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:30:19.84 ID:1E3PPOYo
中村は次に沙希ちゃんの所に行って頭を下げる
「ありがとうございました、おかげで少しは目が覚めました」
「いえそんな・・・偉そうな事を言っちゃってすいません・・・」
「あなたのおかげです、本当にありがとう」

そう言って中村は沙希ちゃんと握手を交わし
沙希ちゃんはそんな男前の中村を見て顔を真っ赤にする
それをかわいそうな川上が呆然として見ている

そして中村は上野さんに支えられて、元いた場所に座った
また再び歓談が始まった

ホッとした俺は、ようやく部屋の中をゆっくり眺めた
キッチンと居間の間のふすまを取り払った部屋の中に
よく入れたなと思えるぐらいのたくさんの人間がいた

初めは少々よそよそしかった雰囲気が
今ではいくつかのグループに別れて談笑している

早川さんと前田さんの巨大オバチャンコンビは
俺の部下の若手4人に取り囲まれている

部下たちは中年女性の恥ずかしい下ネタに嬉しそうに鼻の下を伸ばしてやがる
こいつらにこんな趣味があったとは
いいよ思いっきり甘えてやれ
おっぱいぐらいは触らせてもらえるかもしれんぞキヒヒヒ
150 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:33:13.81 ID:1E3PPOYo
川上は相変わらず沙希ちゃんに付きっきりだ
親鳥がヒナに餌をやる時みたいに
川上はあちこちから食べ物や飲み物を集めてきて
それを沙希ちゃんに食べさせている
沙希ちゃんも楽しそうに口を開けて甘えている

くっそう俺の沙希ちゃんをこんな風にしやがって
うらやましいけど良かったな川上

キッチンには4人掛けのテーブルがある
その上に今日の大量のご馳走が並んでいる
みどりが昨日から準備していたものと
今日みんなから届いた大量の差し入れもだ
その4つの椅子はすでに埋まっていた

もう1人のオバチャン、林さんの隣には岩川が座っていた
さっきまではしゃいでいた林さんなのに
なぜか今は静かだ
岩川もほとんど何もしゃべってないし
ここだけ時間の流れが止まっていた

少し酔ってるのか
赤い顔をして岩川を見つめる林さんの目は
すでにオバチャンの目つきではなかった

かつての小学校No,1のグラビアアイドルは
中年になってもやはり健在だった
かなり余分な肉がついてはいるが
全身からあふれる色気はあの頃と同じか
いやあれ以上だった
151 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:36:31.86 ID:1E3PPOYo
ムンムンするお色気がここまで伝わってくる
俺とみどりでこの2人をくっつけてやろうと思ってたのに
どうやらその必要はなかったらしい
ひざを突き合わせて話す2人の声はほとんど聞こえない

あと2つの椅子には織田と村田の悪友コンビが飲んでいる
たまに食べ物を取りに来る誰かと少し話してるみたいだけど
それ以外はずっと黙って飲んでいる

すでにもう泥酔状態だ
この様子じゃだいぶ飲んだんだろうな
それに俺たちも中年だし
もう飲める量も減ってきたもんな

上野さんと中村も静かに飲み始め
石原さんとみどりはまだ寝室で話している
なんだか俺の居場所がない
川上でもいじめて遊ぶか

そう考えて俺は川上の前にドカッと腰を下ろした
おい川上お前らいつから付き合ってたんだ?
「あっそれ聞きたいですか?どうしても聞きたいのですか?
 しょうがないですねぇ!じゃあ話しましょうか?」

何だよ聞かれて嬉しそうだな
そんなに言いたいのか
まあ聞いてやるよ
152 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:39:04.22 ID:1E3PPOYo
やはり川上は入社当時からかわいい沙希ちゃんの事が気になっていたそうだ
沙希ちゃんが退社する直前に何とか連絡先だけは聞き出した

しかしその後まもなく沙希ちゃんは結婚してしまい
川上の恋はすぐに破れてしまった
それでも勇気を出して何度か電話をかけた

沙希ちゃんはあまり熱心ではなかったが
とにかく電話には出てくれた
お互いの仕事の事などを、年に何回か話す程度だった

ところがやがて沙希ちゃんが離婚した事を知ってから
川上は猛然と攻撃をしかけた

映画に行きませんか?

食事はどうですか?

車買ったんだけどドライブはいかが?

沙希ちゃんにいい返事がもらえなくても川上はくじけなかった
電話がメールに形を変えても、ずっとアタックを続けた

そして今年の夏の終わりに、とうとう沙希ちゃんから一通のメールが届いた
「どこか連れてって」

憧れの女性をついに捕まえた川上はもう絶対に沙希ちゃんを離さなかった
かわいらしい純愛はすぐに熱く燃え上がる恋へと変わり
とうとう沙希ちゃんに結婚を決意させた
153 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:42:25.71 ID:1E3PPOYo
すでにお互いの両親にも会って話をした
川上の両親は沙希ちゃんが再婚なのでやや難色を示したが
そんな事は川上にはどうでもよかった
障害の一つにすらならなかった

「親が何と言おうとも
 たとえ世界中から見放されようとも
 俺は沙希ちゃんと結婚するから」

そう言い切ってくれたんですよぅー
沙希ちゃんはそう嬉しそうに言った
こんなに愛されてよかったね沙希ちゃん

川上には言わなかったけどその時期はちょうど
俺が沙希ちゃんの誘いを振り切った時期だな
そしてその後みどりの妊娠が分かった時だ

あああの日だな
今でもはっきり覚えているよ

危なかった
俺があの時誘惑に負けていれば
川上の人生もみどりの人生も狂わせていたとこだった

しかし川上ってすごいなうらやましいな
この小さい体のどこにそんなガッツがあるんだろう
一緒に仕事をしていても分かるけど
こいつは今まで一度もくじけた事なんかなかった
154 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:45:25.19 ID:1E3PPOYo
どんな失敗をやらかしても
俺がどうやって先方に謝ろうかと悩むほどのミスをしでかした時も
いつも明るく笑えるヤツだった

「次は絶対やりませんから信用して下さいッス!」
そんな笑顔がかわいくて、憎めないヤツだった

待てよ?
もし俺が高校時代に川上ぐらいのガッツがあれば
中村から上野さんを奪えたかもしれない

何のチャレンジもする事なく
ただ上野さんには彼氏がいるからしょうがないって
勝手に思い込んであきらめていた

もしかしたら上野さんをこんなつらい目に会わせずに
温かく抱擁してあげられたかもしれないのに
たったそれだけの事もできないでいた

俺が川上なら
上野さんに彼氏がいようがどんなに男前だろうが
強引に上野さんにアピールし続け
そして彼女がつらい目にあっている時にスッと近づいて
優しい言葉の一つもかけて上げられたかもしれない

傷心の上野さんは俺にヒシとしがみつき
「長谷川クン・・・抱いて・・・忘れさせて・・・」
ってなことになってたかもしれない
155 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:49:08.13 ID:1E3PPOYo
くっそぅもう一度あの頃に戻ってやり直したい
そしたら上野さんと・・・
何万回もオナニーした上野さんの小柄な体が思い浮かぶ

派手なオレンジ色のブラジャーでその貧乳を包んでいた
今は中村と仲良く座っているかわいい上野さんが
俺の妻になっていたかもしれないのに・・・
バカヤロウ

2人でイチャつく川上と沙希ちゃんをぼんやり見ながら
俺の脳内にはまた上野さんとのラブシーンが駆けめぐる

俺は初めての夜に上野さんとベッドを共にする
上野さんは上下オレンジ色の下着姿で悩ましく俺を誘う
「長谷川クン・・・来て・・・」
俺は上野さんの小さな体にへばりつき
渾身の愛撫を続ける

かわいいブラジャーを外すとそこには少女の小さなピンク色の蕾が羞恥に震えている
俺はその蕾をゆっくりと愛撫する
さらにオレンジ色のパンティーを脱がせると
そこにはやはりまだ女になりきっていないピンク色をした花びらが俺を誘う

あふれる蜜を舐め上げると彼女は歓喜に身を震わせ
細い体をビクンと震わせ、小さな叫び声を上げる

やがて俺は凶器と化した肉棒で彼女を貫く
あまりの激痛にその美しい顔を歪める上野さん
まだ男を知らない少女の固い体だが徐々に官能を受け入れ
やがてその甘い快感に自らも腰をぎごちなく動かしてすすり泣く
156 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:53:42.88 ID:1E3PPOYo
そして初めての大人の女へと昇り詰めていくあの瞬間が近づくのを感じて激情に震え出す
俺と上野さんは完全に体を密着させた状態で
2人同時に愛の絶頂を迎える

俺の全精力が上野さんの小さな体の中心を目がけてほとばしり
上野さんは全身を突っ張らせて痙攣する

彼女は遠のく意識の中でさえも俺にしがみついてくる・・・
長谷川クン・・・愛してる・・・
上野さん・・・俺もだ・・・

「あなた」
ぅわっ!

なっ何だよみどり
いきなり後ろから声掛けるなよ
完全に油断していた

「また何か妙なこと考えてたでしょ」
その隣には石原さんもクスクス笑いながら座っていた
ああ何だもう帰ってきてたのか

気がつけば全員が川上と沙希ちゃんに目を向けていた
早川さんと前田さんがニヤニヤ笑いながらにじり寄ってくる
このオバチャン2人も相当酔ってるようで
もう目が完全に座っている

なんだなんだ次はコイツらをいじるつもりか?
悪くないなグフフフ
「ねーぇあんたたち」
157 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:56:50.15 ID:1E3PPOYo
「はい?」
「結婚するんだったらさー
 私たちが見届け人になってあげるからさ」

「そうそう今ここでやっちゃいなさいな」
「何をですか?」

「分かってるでしょうキスよキス」
「そうよ誓いの熱いキッスよ!」
「どうせもうやってるんでしょう?」
「おねいさんたちに見せてもらいます!」

キャーハッハッハッハッハhhwwwwwwwwww

あーうるさいオバチャンだな
しかしこれは面白そうだ
ちょっと暗い雰囲気だったからな
コイツらに盛り上げさせよう

川上と沙希ちゃんは目を丸くして見つめ合っていたが
やはり基本的に能天気な2人だ
川上がスッと立ち上がり
うやうやしく沙希ちゃんに手を差し伸べる
ゆっくりと立ち上がった2人は目と目を見つめ合っている
158 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 13:59:56.96 ID:1E3PPOYo
「はっせっがっわックン!」
はい?
「神父さんの代わりやってあげて!あなた上司でしょっ?」
えっ俺ですか?

よしやるか面白い

えーでは川上クン
これから一生沙希ちゃんを守り続ける事を誓いますか?」
「ハイッ!誓います!」

ハイハイそれでは沙希ちゃん
川上とずっと一緒にいるって
別に誓わないでもいいからね

「あなた」みどりの声
ハイ
「ちゃんとやりなさい」
ハイ

では沙希ちゃん
「はいっ!」
川上と永遠の愛を誓いますか?

「はい誓いまっす!」
それでは互いに愛の口づけをどうぞ
159 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:02:43.84 ID:1E3PPOYo
川上が沙希ちゃんの背中をそっと抱き寄せ
沙希ちゃんは目を閉じた
そして・・・

2人は口づけを交わした
おめでとう・・・沙希ちゃん・・・そして川上
幸せになれよ

全員が2人に拍手を送った
俺も何だか・・・目が熱くなった
部下が結婚するのは初めての体験だった
けっこう嬉しいもんだな・・・

しかしオバチャンの暴走はこれでは収まらなかった
「ハイ次は長谷川君とみどりさんね!」
えっ俺たちもう新婚ではありませんが?

「さっき言ったでしょう?2人で協力して頑張るって」
「そうそう2人でできる事ならなんでもするって」
「だから今改めて誓いなさい」

しかしオバチャンこれはできませんよ
第一みどりさんがそんな事は承知しませんってば
なあみどりさん

「あなた」
なあみどりそれはさすがにできないだろ

「して」
160 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:05:53.25 ID:1E3PPOYo
みみみみどりお前マジか?酔ってるのか?
いやみどりは妊娠してからは全くお酒は飲んでいない
もちろん今日も飲んでないはずだ

またみんながはやし立てる
えーするのか本当に?

もちろん俺はイヤじゃないけどちょっと恥ずかしいな
いいのかみどり?
えーい仕方がないか

俺は立ち上がり
みどりの手を取って立たせた
みどりはじっと俺を見つめている
立ち上がると、蛍光灯の真下だった

こんなに明るい所でみどりの顔をまじまじと見つめるのも久しぶりだった
いつもセックスする時は暗くした寝室だったし
家ではみどりは化粧を落としていたし
今日は特に念入りにしていたみどりの化粧はまだ落ちていなかった

宴会が始めってからもう長い時間が経つ
オバチャンたちはすでに化粧が崩れ
見るも無残な様相を呈し始めていたのに
みどりの顔は始めと少しも変わっていなかった

ちなみに石原さんもそうだった
いろいろ食べたり飲んだりしてたのに
口紅すらまだほとんど落ちていなかった
161 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:08:29.29 ID:1E3PPOYo
上野さんはさっき殴られたり泣いたりしていたから
多少は化粧は崩れていた
だからと言ってそのかわいらしい魅力は全然消えていなかったが

俺は蛍光灯の下でみどりの顔をじっと見つめた
美しい顔だった
さっき舐めた、みどりのお尻の感触も思い出した

みどりは優しく、にこやかに俺を見つめている
こんな女が・・・俺の嫁に来てくれたなんて・・・
幸せすぎるな・・・俺って・・・

「キース!キース!キスキスキス!!」

みんなの声援を受けて俺はみどりを抱き寄せ
俺はみんなの見ている前でそっとみどりにキスした
抱き寄せるとお腹の赤ちゃんが俺の腹に軽く当たった

ほとんど毎日しているキスだけど
ガラにもなく今日は少し感動した
そして顔を離すと、みどりの顔も少し赤らんでいた

そのまま黙って俺の手をつかんだまま
床にずるずると座り込んでしまった
何だみどり感じちゃったのかな?
みどりのくせに
ウヒヒヒ
162 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:11:21.20 ID:1E3PPOYo
しかしオバチャンたちの貪欲な欲求は止まらない
「ハイ次は中村クンと上野さんねー!」
「そうです学校一の美男美女カップルの登場でーす!」

キャーハ(自主規制

ちょっとさすがにそれはマズいんじゃないか?
さっきあんな事があったばっかりだし

それにこの2人はまだ結婚してないんだし
中村がイヤがるかもしれない
なあみどり止めた方がいいかな?

振り向くとみどりも一緒に手拍子をしていた
「キース!キース!キース!」
おいいいのかみどりこのままやらせて

中村はさすがに戸惑っている
上野さんも顔を真っ赤にしてうつむいてしまった

ちょっとこの2人はこのオバチャンのノリには合わせにくいだろう
助け船を出した方がいいのかな?

しかし中村は立ち上がった
手を貸そうとする上野さんをやんわりと押しとどめる

さっきとは違って、やさしく手を振りほどき
自分の力で立ち上がった
163 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:15:01.57 ID:1E3PPOYo
そして上野さんに手を差し出し
そっと立ち上がらせた

それから自分は上野さんの足もとにひざまずいた
ちょっと窮屈そうだが
うずくまるような形で座った

「上野・・・・・」
全員が黙ってその儀式を見守った
何が始まるかのはなんとなく分かる
俺も緊張してきた

「上野・・・長い間本当に悪かった
 お前の気持ちを全然考えていなかった
 許してほしい
 たくさん苦労かけたし
 たくさんイヤな思いもさせた
 これからもずっと苦労させるけど
 よかったら・・・
 俺と結婚して下さい」

上野さんはその小さな体をさらに小さくしている
その目からは大粒の涙がポトリとこぼれ落ちる
全員が黙って上野さんを見守った

上野さんの目から涙がこぼれ続ける
中村は座り込んだまま
握った上野さんの小さな手を額に押し当てている
上野さんはまだ何も言わない
164 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:18:24.89 ID:1E3PPOYo
全員がシーンとしている
コソリとの物音すらしない
俺もこんなに緊張するのは・・・
パンツを盗んだ事がみどりにバレた時以来だ

やがて上野さんは左手の袖で涙をぬぐい
上を向いて大きく深呼吸をしてから言った

「・・・・・バカ・・・」

「こんだけ待たせといて
 今さら何が苦労させるけどよ・・・
 もう絶対許さないから・・・
 責任取ってもらいますからね・・・」

そう言って泣いている上野さんには笑顔があった
昔と同じだ
いたずらっぽく笑う上野さんのあの笑顔だ

今日初めて会った時の陰のある笑顔ではない
まだ泣いているけど
心からの笑顔だ

俺にはよく分かる
俺もこの笑顔に何度癒やされた事か
この笑顔が戻ればもう大丈夫だな

おめでとう上野さん・・・そして中村
涙が出てきた
みどりも横で涙ぐんでいる
165 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:21:51.68 ID:1E3PPOYo
よかったな中村
そして上野さん・・・・・
くそぅ・・・エロい妄想すら浮かんでこない

オバチャンたちは場の流れを読んでさらに盛り上げる
「はいキース!キース!キース!」

中村はゆっくりと立ち上がり
上野さんの細い腰を抱き寄せた

真っ赤になって目に大粒の涙を浮かべる上野さんに
そっと中村は唇を重ねた

中村は大きな左手で力強く上野さんを抱擁し
上野さんは片足を上品に折り曲げてそれに応える

悔しいけどカッコよかった
まさしく美男と美女のたまらないキスシーンだ

俺とみどりのキスなんかはるかにかすむ
映画の1シーンを見ているみたいだった
ここに夕陽でも当たってればアカデミー賞が取れるかもしれない

さしものオバチャンたちも
この美しすぎるキスシーンには度肝を抜かれたようだ

「ああ何だかドキドキしちゃった」
「何か変な気分になってきちゃった」
あの下品な笑い声もこの時ばかりは起こらなかった
166 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:24:08.65 ID:1E3PPOYo
「はーでもよかったねーよかったよかった」
そして全員が座り込み、また宴会が再開された

「おい長谷川」
ん?何だ中村?
「俺も自己紹介していいかな?」

あっそうだなお前ら2人だけまだだったんだ
何かあんまりそういう雰囲気じゃなかったし
でも無理してしなくてもいいんだぞ別に
つらい事だったら話さなくてもいいんだから
「いや、ぜひ聞いてほしい」

そう言って中村は立ち上がった
今度は上野さんの手を借りたが
そのまま上野さんを座らせずに自分の隣に立たせた

そして上野さんの腰を抱いたままで話し始めた
「中村と申します」

「長谷川・・・君の中学高校の同級生です
 いろいろあって上野とずっと付き合ってました
 上野が長谷川と仲良くしてるのも知ってました
 だけど・・・その・・・長谷川が上野に手を出すはずがないと思ってましたし」

また部屋に失笑が沸き起こる
俺ってそんなにどうでもいい存在だったのか?
なぜか早川さんと前田さんの目がキラリと光る
167 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:27:41.37 ID:1E3PPOYo
「上野が高校に入ってきてから卒業するまで
 ずっと付き合ってました
 たぶん友達はみんな俺たちが結婚すると思ってたと思います
 なのに俺は上野を幸せにはしてやれませんでした
 東京の大学で他の女とつき合い、また別の女性と結婚しました
 そして仕事で赴任した海外で事故にあい
 こんな身体になりました

 ボロボロになった俺は嫁にも捨てられました
 外国の病院で治療を受けて日本に帰って来たとき
 嫁はもういませんでした
 住んでいたマンションには家具も何もなく
 ただ裁判所からの立ち退き命令書だけが置いてありました
 嫁との慰謝料にあてるため、俺は全財産をなくしました」

中村・・・これは自己紹介じゃないだろ・・・
お前いま・・・上野さんに聞かせてるんだな?
その上野さんは中村の顔を食い入るように見つめている

「そして一文無しになり
 会社の窓際に追いやられました
 ただ給料だけは払うから
 会社を訴えたりするな
 そんな状態でした
 もちろん訴えるつもりもありませんでした」
168 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:31:41.38 ID:1E3PPOYo
「俺は右手と右足を失い
 嫁の待つ温かい家庭も
 将来を支えていく仕事も
 自分の未来も
 全て失いました
 それなのにこの上野は」

中村の声が震えた
俺の隣でみどりが姿勢を正す

「上野はずっと俺を待っていてくれてました
 住むところのなくなった俺は
 仕方なくこの上野の元を尋ねました
 上野は俺をタクシーで迎えに来てくれて
 家に上げてくれました
 
 そして笑いながら

 『おかえり』

 って言ってくれました

 俺はその日から上野と一緒に暮らし始めました
 情けない話ですけど
 生活の全ての面倒を上野が見てくれました」
169 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:34:09.84 ID:1E3PPOYo
「こんな俺なのに
 他の女と結婚して
 手も足もなくしてしまった俺に
 仕事も満足にできない俺に
 上野はずっとついててくれました

 俺はそんな上野の気持ちも分からずに
 上野にずっと八つ当たりし続けました
 お前なんかがいるから
 お前がずっとつきまとってくるから
 俺はこんなひどい目にあったんだ
 お前は俺の疫病神だ
 そんな事を考える事もありました

 上野に暴力も振るいました
 なのに上野はひたすら謝り続け
 
 『ごめんなさいごめんなさい』って

 俺を責める事もなく
 ずっと泣き続けていました」
170 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:37:55.96 ID:1E3PPOYo
ここでたまらずに上野さんが口をはさんだ

「中村クンもういいからやめよう?
 もうそんな話しなくていいから
 あなたはもう大丈夫なんだから
 つらい事を話さなくてもいいんだから」

「いや俺は話したいんだ
 お前に話したいんだ
 頼むから、最後まで聞いてくれ」

「中村クン・・・」

「俺はどうかしてたんだと思います
 自分でも間違ってるって分かってました
 だけど毎日毎日が同じ事の繰り返しで
 外を歩けば奇妙な目で見られ
 会社では誰も話しかけてきません
 そして家に帰れば上野がわざとらしく俺にかまってくる
 そんな生活がイヤでイヤで仕方ありませんでした」

ポツポツと話す中村だがその言葉には力が満ち溢れている
中村も俺たちと同じなんだ
誰にも言えずに胸にしまいこんでいたつらい過去を
今ここで全部吐き出そうとしてるんだ

中村・・・頑張れ!
全部ここで吐き出してしまえ
そしてつらい事なんかみんな忘れてしまえ
171 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:42:05.47 ID:1E3PPOYo
気がつけば全員同じ表情だ
早川さんと前田さんも身を乗り出して
中村に無言の応援をしている
頑張れ中村・・・

「そして俺は会社を辞めました
 地元に戻り
 父の勧めでどうでもいい会社に就職しました
 こっちに戻ってきても何も変わりません
 ただ食わせてもらうだけの給料をもらい
 適当に会社に行って
 適当に時間までいるだけの仕事です
 俺じゃなくても・・・誰でもできる仕事です

 そんな俺を変えるために
 上野は必死で努力してくれました
 ふさぎこむ俺を無理して外に連れ出そうとしたり
 毎日新しい服を着て俺に見せびらかしたり
 誕生日や2人の記念の日には必ずご馳走を作り
 少しでも俺の心を開こうとしてくれてました

 俺が食事をこぼさずに食べられたり
 その・・・トイレを・・・1人でできた時には
 手を叩いて自分のことのように喜んでくれたり
 傷口が痛む時には一晩中寝ないで氷を取り換えてくれたり
 上野が必死で俺を変えようとしている気持ちは痛いほど分かっていました」
172 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:45:28.71 ID:1E3PPOYo
「俺も変わりたかった
 会社でボーッとしてるだけじゃなくて
 自分の力で何とかしたかった
 何度か自分で企画を立てて上司に伺いを立てたりもした
 しかし全てダメでした
 無理しなくてもいいから
 君はいるだけでいいんだから
 そして一番つらかった言葉
 
 『お父さんの手前があるから置いてやってるんだ』
 『これ以上もう厄介事にかかわらせないでくれないか?』

 そして俺は全ての努力を放棄しました

 毎日酒を飲んでは暴れる俺に
 上野がよく逃げ出さなかったなと思います
 もし上野が逃げてくれていたら
 どんなに楽だった事か
 俺はその日のうちに自分の命を自分で終えていたでしょう
 そうしたくて
 早く楽になりたくて
 俺は上野にさらにつらく当たりました

 『気に入らないのなら出て行け』
 『さっさと出て行け』 
 『[ピーーー]』

 上野がさっさと出て行ってくれてたら
 俺の人生はもっと楽に終わってたかもしれません」
173 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:49:12.17 ID:1E3PPOYo
そうだよ中村
上野さんは絶対逃げないんだよ
この人は
俺からも絶対逃げなかったし
そして俺は救われたんだよ

俺の方が先輩じゃないか
こういう事は
俺が一番よく分かってるんだ

上野さんは絶対逃げ出したりはしないんだから

「なのに上野は出て行こうとしませんでした
 暴れる俺に必死にしがみつき
 命をかけて俺を引きとめてくれました
 俺にどんなに叩かれても
 俺にどんなにひどい言葉を浴びせられても
 泣きながら
 俺の怒りが鎮まるまで
 ずっと我慢してくれていました

 そして今日
 やっと
 あなたに目を覚ましてもらえました」

中村は沙希ちゃんの前に歩み寄った
皆の視線が沙希ちゃんに集まる
沙希ちゃんも中村の話を聞いてもう泣いていた
その沙希ちゃんが目を赤くして中村を見つめる
174 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:52:11.98 ID:1E3PPOYo
「今日皆さんと会って話をして
 そしてあなたに叩かれていなかったら
 俺はずっと上野の気持ちも分からないまま
 自分の命を自分で縮めるどころか
 下手をすると、じゃまばっかりしてくるこの上野の命まで
 奪ってしまっていたかもしれません
 こんな俺が言う言葉じゃないかもしれませんけど
 今日で目が覚めました
 もう大丈夫ですから」

そして再び上野さんの方に体を向けた 

「ヨーロッパの病院にいる間に離婚届は書いて送った
 それに、前の会社からおりる保険金は全て嫁に支払われているから
 今はもう慰謝料は払わなくてもいい
 父が援助してくれたので
 東京のマンションのローンも完済している

 そして俺には子供はいない
 前の嫁はとっくに再婚して幸せに暮らしている
 俺は一文なしだけど
 借金などは何もない
 上野・・・お前と暮らすのに何も支障はないから・・・
 こんな俺だけど・・・見捨てないでいてくれるか?」

また上野さんは泣いているが
さっきのような悲しい表情ではなかった
みんなももう上野さんの答えは分かっている

「ありがとう・・・中村クンありがとう・・・」
175 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:55:24.94 ID:1E3PPOYo
そのとたん、早川さんが中村を
前田さんが上野さんの背中をドンと押した
2人は押し付けられて抱き合う
全員の拍手の中
中村と上野さんは再び熱い抱擁を交わした

すかさず沙希ちゃんが叫ぶ
「そうだ私ケーキ買ってきてますからみんなで切って食べましょう!」
女性陣の黄色い歓声を浴びてみどりが台所に向かう
そのみどりも泣いていた
もう全員が泣いている
もちろん俺も泣いていた

もうボロボロだよ今日は
あまりにもいろんな事が起こりすぎて
頭がついていかない・・・

「あの・・・私も・・・」

上野さんだった
「私も自己紹介を・・・」
もういいよ上野さん
もう何も言わなくていいんだよ

上野さんが送ってきた人生は全て中村が話してくれたから
もうこれからはつらい思いをする必要はないんだから
明日から始まる楽しい暮らしだけを考えてればいいんだから
それだけでいいんだよ上野さん
176 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 14:59:13.60 ID:1E3PPOYo
もう過去の話なんかどうでもいいんだ
今のあなたのその笑顔が
あなたの自己紹介なんだから・・・

「ありがとう・・・皆さん本当に・・・ありがとう・・・」

女性陣がケーキを切り
紙皿に乗せて全員に配られた
お酒の飲めない者には紅茶も配られ
それ以外はまだ酒を飲みながらケーキを食べた

再び喧騒が収まった
さーて俺もちょっと飲むかな?
なんだか気ばかり使って全然飲んでないし
ようやく落ち着いたんでゆっくりさせてもらおう
その時だった

「あのーすいませんけど」
岩川だった
手をまっすぐ上に挙げている
お前何だよここは学校の教室じゃないぞ
せっかく落ち着いた雰囲気をまた壊すつもりかお前は

岩川の顔はかなり酔っていた
大学時代、女子高の部室で眠りこけていた
あのだらしない顔をしていた
177 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:02:15.38 ID:1E3PPOYo
おい岩川空気読めよ
せっかくきれいなキスシーンと愛の抱擁でみんなが恍惚としてる時に
いきなり太宰とか暗唱し出すんじゃないだろうな

「ちょっと一言言わせてもらっていいですか?」

全員の目が岩川に移る
その岩川を林さんが優しく見守っている
まっまっまさか?

岩川は椅子から立ち上がり、林さんの手を取った
林さんは少女の時のようなうるんだ目で岩川を見つめている
おいヤバいぞこれは正直あまり見たくないぞ

ひざまずこうとした岩川はそのままドテっと転げ落ちた
おいもうやめとけあんまりカッコよくないから

それでも岩川は這い上がって再び林さんの手を握った
林さんはその手を両手でしっかりと握ったまま放そうともしない

「林さん・・・俺と・・・結婚を前提にして付き合って下さい」
周りは驚いて2人を見守る
「まだ駆け出しの作家ですけど・・・絶対にあなたを幸せにしてみせますから!」

確かに林さんはバツ1で何も問題はないし
岩川は見た目はキモい変質者だけど今や売れっ子小説家だ
別に悪い組み合わせではないけど・・・
178 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:05:37.07 ID:1E3PPOYo
だけど岩川の趣味は爽やかな女子高生の白いパンツのはず
言っとくけど林さんのパンツはベージュのおばさんパンツだぞ
しかもとってもくs

「あなた」
ハイ

「少し黙ってなさい」
ハイっておいみどりさっきから俺は何も言ってないぞ
まさかみどりお前テレパシー能力があるとか???

「お願いします!」
真剣に訴える岩川を見つめる林さんの身体中から
あふれ出るフェロモンが一層強くなった
俺にも分かるぐらいの強烈な色気だ

気の弱い少年などがもしこの2人の間に立ったら
ものすごい色気に圧倒されて悶死するかもしれない
そんな怪しい妖気さえ漂わせている

今や完全に少女時代のカンを取り戻した林さんは
その体までもが細くなったようにすら見える
いや、出る場所はちゃんと出たままで

エロ小学生たちに毎日着替えを盗み見られていたあの豊満な肉体が
もしあの当時の小学生の熱い視線だけで女性を妊娠させる事ができたなら
林さんはもう数百人以上の子供を身ごもるハメになってただろう
179 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:08:10.32 ID:1E3PPOYo
その目にも鮮やかなナイスバディーを持った
昭和の伝説のグラビアクイーンが今
ついに完全復活しようとしていた

「私なんかで・・・いいんですか?」
「はい」
「離婚歴があって、大きな子供もいるおばさんでもいいんですか?」
「はいっ!」
「ありがとう・・・本当にありがとう・・・
 喜んでお受けさせていただきます」

何ということだ
一気に3組の夫婦が誕生してしまった

俺とみどりはいいとして
川上と沙希ちゃん
中村と上野さん
そして岩川と林さんだ
いくらフィクションだとは言えちょっとできすぎだろこれは

部屋の空気は大きく盛り上がった
俺の部下どもたちも興奮している
ちくしょう・・・こいつら・・・
俺の宴会を盛り上げてくれて・・・ありがとう

そして岩川は林さんとキスをした
ひ弱な文学少年は
色白で豊満な体格のグラビアアイドルに抱きすくめられ
まるでこれは・・・
180 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:13:37.16 ID:1E3PPOYo
「なんかさー」
「私もそう思った」
「思う?」
「たぶん一緒だね!」
せーのっ
「割りばしにワタアメが絡みついてるみたい!」

キャーハッハッハッハッハhhwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

イヤだ・・・・このオバチャンたち
俺と全く同じ事考えてる・・・鬱だ

「ねえあなた」
はい?
「お友達お2人眠りこんじゃったみたいだけど」

なに?
後ろを見ると織田と村田がテーブルに突っ伏していた
何だよこいつら静かだと思ったら寝てたのか
最初から静かだったけど

しょうがないなーお前らもう寝ろ
ベッドの部屋に連れてってやるから

しかし俺のベッドを使うのはいいけど
どちらかがみどりのベッドに寝るのか

イヤだなーこいつらなんかに
俺のみどりのベッドを使わせるのは
181 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:16:59.61 ID:1E3PPOYo
そうだ地べたに寝かそう
どうせ酔ってるんだから分からないだろ

そう思ってとりあえず2人を立たせた
おいお前ら向こうで寝て来い

織田と村田はヨロヨロと歩いて寝室に入った
入ったところにそのままひっくり返った
すでにベッドに上がる気力さえないみたいだ

これ幸いと俺の布団をかぶせ
後は放っておいた

電気ストーブがついてるし
寒くて死ぬような事はないだろう
後でまた見に来てやるからな

居間に戻ると全員が窓際に集まっていた
「すごい雪降ってるよー」
外を見ると確かに大雪だった

12月の初めのこの時期に雪が降る事はこの地方では
そんなに珍しくなないけど
それでもこれほどすごい雪は久しぶりだった

俺が就職してこっちに来てから1度あったぐらいだろうか
深夜に雪はしんしんと降り続け
もう積り始めていた
寒そうだなー
182 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:19:04.58 ID:1E3PPOYo
「ねえ雪合戦とかしにいきませんか?」
部下の一人が言う
「そうそう佐藤の公園行って遊びましょうよ!」

佐藤の公園ってのは会社の近くにある
佐藤なんとか製作所ってのがあって
その駐車場の隣の空き地を買い取り
木や花を植えて公園のようにしていた

ベンチや水道なども設置してあったので
天気のいい日にはよく昼休みに弁当を食べてる工員の姿がある
俺も時々みどりと散歩に行っていた場所だ

だけどもう寒いしやめようよ
そもそも今日は俺は全然飲んでないし
せっかく宴会が落ち着いてきたんだから
ちょっとゆっくり飲ませてほしいんだけど

しかしオバチャンどものテンションは一気に上がった
「そうだそうだ遊びに行こうよ!」

しかし元気だな早川さんと前田さん
スポーツ少女だったからな
こんな狭い部屋にじっとしてる方がつらいのかな?

しかも驚く事に、皆が外に出たいと言ってきた
あのお上品な石原さんさえ
期待に目をキラキラ輝かせている
183 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:22:12.41 ID:1E3PPOYo
そうだなこの人も普段こうやって遊ぶ事なんかないんだな
よし付き合ってやるか

いろいろ相談して
妊婦のみどりは残る事になった
さすがにこの時期お腹を冷やすのは良くないと思った

織田と村田の無法者2人と一緒にするのはちょっと怖かったけど
中村もやはり寒いとつらいと言うので
上野さんと一緒に残った

それ以外のメンバーで家を出た
十分厚着をしてから俺も出た

「あなた帰りにアイス買ってきてね」
はい
「皆さんの分もね」
はいはい

そしてみんなで佐藤の公園を目指した
公園はあっという間に雪に覆われていた

佐藤の工場は夜通し操業しているので
トラックが次々と出入りする駐車場にはライトが煌々と灯り
公園の方まで光が漏れてくるので暗くはなかった

雪合戦するほどには雪は積もっていなかったが
さっそくみんなではしゃぎだした
全くコイツらいい年して元気あるな
184 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:25:42.91 ID:1E3PPOYo
俺は寒さに震えながら
近くにあるベンチに腰を下ろした

早川さんと前田さんが若手社員を二つに分けて雪投げのような遊びを始めた
岩川と林さんは向こうのベンチに並んで座っている
川上は沙希ちゃんとべったりくっついたまま木の陰に隠れた

そしてあぶれた石原さんが俺の方に近づいてきた
「座ってもいい?」
もちろんどうぞ
もしかしたらと期待しておりました

石原さんは俺の隣に座った
「はーすごいねー今年最初の雪だね」
うんそうだね

「きれいだねー真っ白で」
いや石原さんの方がはるかに真っ白できれいだ

「長谷川君今日はありがとうね」
いえいえどういたしまして

「本当はね、来るのはイヤだったの」
そりゃそうだろうねパンツ泥棒の被害者の宴会なんて

「でも来てよかった!いろいろ教わったし
 校長先生にもいいお話聞けたし元気になれたし」
そう言ってくれるとホッとするよ
185 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:28:55.62 ID:1E3PPOYo
「私もこう見えても高校から大学ぐらいまではけっこうヤンチャだったのよ」
ふーん
「お酒も飲んだし夜遊びもしたしね」

へーそれであんなに飲んでたのか
あんまり遊んでそうには見えないけど
やるもんだね

「・・・いろいろ自分を変えたくってね、いろんな事に挑戦したの」
俺もそうだったよ中学の頃は
「一番楽しい時期だったのよ」
俺は中学の頃が一番楽しかった

「陸上部に入って走り回ってたのよ」
えっ俺も陸上部だったよ高校の時
「そうなの?あんまりそうは見えないね」
あんまり真面目に練習してなかったしね

「ふーん・・・今でも走る?」
いやもう走らないよ俺には向いてないし
「じゃあ走ろうっ!」
えっ?今からですか?

「そう!1周ぐらいなら走れるでしょ?」
いやもうダメですもう40ですよお互いに
「さあ!走ろうっ!」

そう言われて石原さんに手を引かれ、俺は走り出した
イヤだよこんな青春ドラマみたいなの
走るのなんて何年振りだろう
186 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:32:31.22 ID:1E3PPOYo
でも石原さんと手をつなぐのが嬉しくて
ニヤニヤしながら走り続けた
すぐに息が上がり始めた
でも手を離すのが残念なので必死で走った

1周走る頃にはフラフラになっていた
石原さんは息一つ乱さずに
「あー走ると気持ちいいね長谷川君」
そうですか俺はそうは思いませんけど

「なんか明日からまた生まれ変われそう」
それはよかったですね
「いろいろあったから・・・生まれ変わりたいの・・・」

石原さん?
「イヤな事だっていっぱいあるのよ・・・」
ドキドキドキ
「思いだしたら・・・つらくなるような事がね」
それは俺の事ですか?俺のせいですか?
「・・・・・・・・」

石原さんは急に黙りこんでしまった
なんなんだろう
さっきまで目を輝かせてはしゃいでたのに
よく分からん

「雪っていいね
 どんなに地面が汚れてても
 その上をきれいに真っ白に変えてくれるから」
石原さん・・・?
187 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:35:24.35 ID:1E3PPOYo
そんな意味深な会話をしているうちに全員が戻ってきた
「長谷川君もう寒いよ」
「そろそろ体力の限界です」

なんだみんなもうヘバっちゃったのか
まだ30分も経ってないぞ

まあそんなものかみんな中年なんだし
さすがに寒いしもう帰ろうか

そうだみどりにアイス買って来いって言われてたんだ
じゃあ川上みんなを連れて帰っといてくれ
俺はコンビニに寄っていくから
すると石原さんがついてきた

「私も付き合うわね」

どうしたんだろ急に石原さん
さっきは無理にはしゃごうとしたり
急に黙りこんだり

まだいまいち理解してないだけに
どう反応していいかも分からないし
いまいち女の人の事は理解できない

そんな性格なのかな?
そういやさっきみどりと2人だけで話してたな
どんな話してたんだろう・・・
188 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:38:25.48 ID:1E3PPOYo
「はっせっがっわクン狼になっちゃダメよーん」
キャハハハハハハhwwwwwwwwww

俺と石原さんは、みんなの冷やかす声を背に受けて
家とは反対方向にあるコンビニに歩き始めた

俺はちょっとドキドキしながら並んで歩いた
石原さんの歩みはなぜかかなり遅かった

一歩一歩、踏みしめるようにゆっくりと歩いている
さっき寝室で俺にもたれかかってきたのを思い出す
その細い肩の重みが俺の心を熱くする

「長谷川君・・・聞いてほしいの・・・」

その一言で俺は足を止めた



パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会

第4話 告白編 終
189 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:41:26.79 ID:1E3PPOYo
さて長谷川君です
今日はもう1話だけ続けようと思います
最後まで行きたかったのですが
時間的に難しそうなのですいません

ちょっと休憩してまた続けます
よろしくお願いします
190 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:52:35.57 ID:1E3PPOYo
パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会

第5話 最後の衝撃


暗い夜道にようやくコンビニの明るい看板が見えてきたところだった
立ち止まった石原さんは下を向いている
どうしたんだろう?

やがて顔を上げて俺をじっと見た
さっきまでの優しいまなざしではない
怖いぐらいの真剣な表情で俺を見つめている

まさか・・・俺の事が・・・
だめだ石原さん俺にはみどりがいるから
いくらなんでももうみどりは裏切れない

石原さんは俺の方ににじり寄ってきた
しかし石原さんきれいだな
大人になってますますきれいになってる
酔って体をぶつけてきたあの感触がまだ残っている
191 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 15:57:42.20 ID:1E3PPOYo
軽く酔ってるのと
さっき走って上気したのか
頬をピンクに染めた石原さんには
とろけるような大人の色気があった

すらりとした体に真っ白なコートを着ている石原さん
その胸はあまり大きくはないがしっかりと存在を主張していた
それが彼女の息使いに合わせて上下に小さく揺れる

ジロジロ見ちゃいけないんだけど
なぜか俺は彼女の顔が見られず
その小さな胸から視線を外せなかった

「長谷川君・・・私ね・・・」
思いつめた表情で俺から目を離さず話している

よしこうなりゃ俺も男だ
俺は覚悟を決めた
もうお互い大人だ
大人の関係なら大丈夫だ

お互いの家庭には迷惑は絶対かけない
石原さんももちろんそれは承知してるだろう

せっかく金持ちの家に嫁いで
何不自由なくしている生活を壊したくないだろう
192 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:00:45.25 ID:1E3PPOYo
もちろん俺も同じだ
みどりとの幸せはもう壊したくない

だけどお互いきちんと割りきったら
あとは大人の関係が残るのみだ
うまくやれば、何も心配いらない
それは2人とも分かってるはずだ

「わたし・・・・・」

さあ石原さん・・・心を開いて
その細い体から湧き上がる激しい情熱の全てを俺にぶつけてくれ
俺の胸に飛び込んで・・・

俺もしっかり受け止めるよ
みどりにさえバレなければ
大人の2人だけの秘密にできるから・・・
さあ・・・・・・・・

「私、中学生の時にレイプされたの」
193 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:03:34.33 ID:1E3PPOYo
ぇぁっ?








しばらくその言葉の意味が呑み込めなかった

頭の中が突然真っ白になった
降っている雪空と同じだった
雪は小やみになっていたけど
俺の目の前は同じぐらいの真っ白になった

「い・・・い・・・石原さん?」

「大丈夫、大丈夫だから最後まで聞いて」

石原さんはそう言って話し始めた
まっすぐ俺を見つめている石原さんの顔色がどんどん青ざめていく
壮絶な美しさだった
その歌うような唇からこんな恐ろしい話を聞く事になるとは・・・
194 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:07:01.18 ID:1E3PPOYo
中学3年生になった頃
石原さんはいつものように帰宅する途中だった
まだこの頃は地味な女の子だった

小学生の時と同じ
人と話す事なんかめったにない女の子だった
友達の1人も作れず
いつも1人ぼっちだった
その日ももちろん、1人で通学路を歩いていた

いきなり男に腕を掴まれた

空家のような家にそのまま引きずり込まれた
あまりの恐怖に声を出す事もできなかった
家具も何も置いていないガランとした部屋に突き飛ばされた

男は石原さんに覆いかぶさり

それから長い時間にわたって

ひどい事をされた

住宅街の真ん中にある空家だから
大声で叫べばよかったのに
暴れて物音でも立てたら
誰かが様子を見に来てくれたかもしれないのに
当時の石原さんには何もできなかった
195 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:11:06.68 ID:1E3PPOYo
俺にパンツを盗まれた時と同じように
ただ震えて、泣いていただけだった

屈辱の時間は長く続いた

石原さんはずっと手で顔を覆って泣き続けていた

その手を無理やり引きはがされて

写真を何枚も撮られた

いろんな角度から写真を撮られた

もう永遠に終わらないのかと思った

このまま家には帰してもらえないのかと思った

ものすごく悲しくて、ものすごく恥ずかしくて

そしてものすごい痛みが彼女の全身を襲った
196 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:14:11.78 ID:1E3PPOYo
なぜ自分が意識を失わなかったのか

いやすでに失っていたのか

それすらも分からなかった

あまりにも激しい凌辱に

声すら上げる事ができなかった

ただ黙って

ずっと泣き続けていた


そして永遠とも思える時間の後
石原さんは服を着るように命じられた

ちぎれたボタンを拾い集めるように言われた
泣きながら制服のボタンを自分で拾い、ポケットに収めた

もし誰かにしゃべったらこの写真をばらまくと言われた

そして家から放り出された

男は逆方向に 走って逃げて行った
197 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:17:35.78 ID:1E3PPOYo
どうやって家に帰ったのかは覚えていない
ただ親に顔は見せられないと思った

急いで自分の部屋に引きこもり

自分でボタンを縫い直した

まだ手が震えていて、針になかなか糸が通せなかった

そしてその後、お風呂に入った

早く体を洗い清めたかった

そして脱衣場で鏡を見たら

そこには幽霊が映っていた

俺はもう立っていられなかった
ガックリと膝を落とした

「ごめんね怖くない話だから
 ちゃんと最後まで聞いてね
 私は大丈夫だから
 とにかく聞いてほしいの」

鏡に映っていた幽霊はもちろんお化けではない
幽霊のような顔をした
石原さんの姿そのものだった
198 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:20:05.91 ID:1E3PPOYo
「その時ね・・・下着盗られた事も思い出したの
 何で自分だけこんな目に遭うんだろうって
 他のみんなは毎日楽しそうにはしゃいでいるのに
 なぜ私だけがこんなひどい目に遭うのかなって」


あぁ・・・俺のせいなのか・・・

石原さん・・・俺のせいだ・・・

石原さんの人生をメチャメチャにしてしまったのは

まぎれもない

パンツ泥棒のこの俺だ

俺があんな事をしなければ

石原さんは・・・

石原さんは・・・・・


俺の全身から力が抜けた
雪の積もる地面に両手をついた
体中がガクガク震えていた
199 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:23:10.52 ID:1E3PPOYo
「違うの、そうじゃないの
 もうちょっとだけ聞いて、お願いだから」

「鏡を見ながら思ったの
 自分がこんな陰気な顔をしているから
 ひどい目にばかり遭うのかなって

「もっと明るくなって
 友達をたくさん作っていれば
 こうやって1人ぼっちで外を歩く事もないんだって
 イヤな事はイヤだってはっきり言えたら
 誰も私にひどい事なんかしないのじゃないかなって
 その時そう思ったの」

「それからお風呂に入って体を洗った
 お湯がとっても痛かった
 だけど何回も何回も洗った
 洗えばきれいになると思った
 何回も洗えば
 いつかはきっときれいになるって思った」

何とか親にはバレずに済んだ
そしてその日から石原さんは自分を変え始めた
まっすぐに前だけを見つめて歩き
人にはできるだけ笑顔を見せた

毎日家で鏡を見ながら
笑顔を作る練習をした
200 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:26:16.94 ID:1E3PPOYo
それでも外に出るのはとても怖かった

誰かが自分を陰に隠れて見ていると思った

またあの時みたいに

急に誰かに腕を掴まれるかと思った

だけどそんな恐怖は振り払って
毎日笑顔で登校した

もちろん本物の笑顔ではない
おぞましい体験を必死の努力で隠した
作り笑顔だった

今までした事なかったのに
勇気を出して周りの人に話しかけた

初めは話すのがヘタで
意味不明の会話しかできなかった

話しかけた相手がちゃんと返事をしてくれたのに
それに上手に応える事もできなかった

それでも必死で話をした
とにかく恐怖を忘れたかった
201 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:29:13.91 ID:1E3PPOYo
無理して明るく笑い
無理して他人に話しかけ
無理して他人と一緒に行動した

やがてそんな石原さんの周囲に友達が集まってくれた

そして石原さんは生まれ変わった
校則違反スレスレに長く伸ばした髪を茶色に染め
母親に内緒で薄化粧をして
まっすぐ前を見つめながら歩いた

突然美しい蝶に変身した石原さんを
学校中が驚きの目で見守った

そして高校も変えた
地味な田舎の学校に通いたくなかった
あの場所の近くを通るのはイヤだった

そんなに裕福ではない両親に何度も必死でお願いして
学費の高い私立の女子高に通わせてもらい
そして美しい蝶は都会に華やかに飛び出した

そうだ、俺が出会った頃の石原さんだ
澄んだ瞳でまっすぐ前を見つめていた石原さんだ
まさかそんな事があったなんて信じられないぐらいだった
202 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:32:28.75 ID:1E3PPOYo
もう自分の過去を知っている者なんて誰もいない
心の傷はひた隠しに隠した
必死で忘れようと努力した

体の傷は何度も洗い清めた
幸いな事に、体の変調は何もなかった
そして女子高に入ってから全てが変わった

中学時代から少しずつ伸び始めていた背はさらに伸びた
もう下を向いて歩かないからどんどん伸びた

通学途中にはたくさんの男子からラブレターをもらった
今までのように、おどおどとうつむいて歩く彼女を
面白がって覗き込むような男はいなかった

まっすぐ前を見つめて颯爽と歩く彼女の前には
胸をドキドキさせて手紙を差し出す少年たちが並んだ

全員が同じように真剣に彼女にすがりついてきた
明らかに自分が変わったのが分かった
変わった事を周囲が認めてくれた

そうしていろんな傷を振り払った石原さんは青春を謳歌した
高校時代、そして大学時代も
常にたくさんの友達に囲まれていた

華やかなあのバブル時代を
透き通った笑顔でずっと、心ゆくまで満喫した
203 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:36:09.21 ID:1E3PPOYo
何人かの男性とつき合い
とても楽しかった
もちろん別れもあったけど
全然つらくはなかった

自分がそのたびに成長していける事が分かっていたから
青春時代の思い出は今でも思い出せる
つい昨日の事のようにはっきりと思い出せる

もちろん時々過去の傷も思い出すが
それは急いで胸の奥にしまいこんだ

自分さえ忘れてしまえば
誰かを苦しめる事もない
自分さえ忘れてしまえば
誰かが常にそばにいてくれる

その人のためにも
もう過去の事で悩んだりはしない
いつでも自分に新しい幸せを与えてくれる人がいる

とにかく毎日が楽しかった
イヤな過去の記憶を思い出せなくなるぐらい
たくさんの楽しい思い出を作った

そしてバブルがはじける寸前に就職した
すぐに今の主人と結婚した
204 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:39:08.00 ID:1E3PPOYo
当時の世の中は未曾有の大不況だったが
食品産業にはそんなにダメージはなかった

いくら不況でも人間必ず食事をする
遊ぶお金は削っても
漬物を買うお金を減らす人は少なかった

いろいろあるけど主人は優しいし
子供もスクスク育っているし
今日上野さんに言われて目が覚めたし

もう昔の傷なんて関係ないって
今なら笑って言えるからね

がく然と冷たい地面に膝をついたままの俺の肩に手を置いて
石原さんは笑顔で語り続けた

石原さん・・・
そんなにひどい目にあったのに
何でこんなに元気にいられるんだ・・・

優しく俺を見つめる石原さんの目は
嘘を言っている目つきではなかった

吸いこまれそうな、透き通った
優しいまなざしだった

「長谷川君」
205 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:42:30.98 ID:1E3PPOYo
石原さんはしゃがみこみ
俺と同じ目の高さで話し続けた
きれいな白いコートの裾が地面に触れるのもかまわずに

「長谷川君がやった事はやっぱり悪い事です
 もしあの時長谷川君だって分かってたら
 私はあなたにもっとひどい事をしたと思います
 ひどい事を言ったと思います
 
 他の人たちだってそうです
 林さんたちみたいに
 あんなに笑って済ませるなんてできるはずがないです

 今の仕事も
 優しい奥さんも
 そして生まれてくる子供さんも
 全て失っても何も言い返せないはずです

 だけど1つだけ言っておきたいの
 あんな事があったから
 つらい事があったから
 逆に自分を変える事ができた人だっているかもしれないの

 私しかいないかもしれないけど
 でも私はたぶんそうだと思うから
 もしかしたら私1人だけかもしれないけど
 明るく生まれ変われた人が
 1人だけはいるって事を覚えておいてほしいの」
206 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:45:11.00 ID:1E3PPOYo
「もうあんな事はやらないって信じてるし
 奥さんのためを思ってるって信じてるし
 つらい過去に向き合っていく気持ちも分かってるけど
 あまり重荷に考えすぎない方がいいと思うの
 皆そんなに弱くないから
 少なくとも私はそうじゃないから
 だからしっかり前を向いて歩いてほしいの」

俺はまた泣き出してしまった
この石原さんになぜこんなに強い力があるんだろう

俺が起こした事件よりももっとひどい
もう生きていけないぐらいのひどい目に遭ったのに
なぜ今こんなに輝いていられるんだろう

そう言えばみどりだってそうだ
小さい頃にあんな目に遭ったのに
俺にあんなひどい事をされたのに
それでもどんどん強くなっていく
今では逆に昔の方がかわいかったのにって思えるぐらいに強くなっていた
207 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:48:15.09 ID:1E3PPOYo
そして上野さんもだ
子供の頃から普通に送っていたお嬢様の暮らしを
突然叩き切られてしまい
たくさんつらい目に会ってきたのに

高校で一緒だった時はそんな事をおくびにも出さなかった
俺が荒れていなければあんな話はしなかっただろうし

そして大人になってからも
ずっと中村を追い続けて暮らしていた

高校の頃からだから
もう20年になる
20年間ずっと1人で
こっちを振り向いてくれるかどうかも分からない中村を信じて待ち続け
そしてついに自分の思いを実らせた

林さんだってそうだ
小学生時代、人気絶頂の時に突然臭いパンツを盗まれて
恐怖に泣いていたのに
離婚する時にだっていろんなつらい事情があったのだろう
なのに今はあんなに元気にしてる

前田さんと早川さんもだ
中学時代の悲しい初恋の思い出をあんなに笑って言い放てるなんて
208 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:51:24.93 ID:1E3PPOYo
女の人ってなんて強いんだろう

女性ってなんて素晴らしい存在なんだろう

石原さんの言葉が俺を軽い気持ちにさせてくれた
女性には強さがあった
どんなにつらい傷をつけられても
思い切って振り飛ばせる力があるんだ

膝をついていた俺を優しく見守ってくれる石原さんの全身から
温かい光がさしているように感じた

そして俺は何と弱い存在なんだろう

何とバカな存在なんだろう

自分だけの欲望で
そんな目に遭う女子の事なんか全く考えていなかった

完全犯罪を見事になしとげて
1人悦に浸っていた自分が悲しいぐらいに情けなくなった

「あなたの事を許せない人はたくさんいると思う
 もちろんその人たちには全力で反省しなければいけない
 だけどみんながそうではないから
 少なくとも私はそうじゃないから
 それだけは覚えておいてほしいの
 違うかもしれないけど
 私はいろんな事があったおかげで変われたから」
209 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:55:48.11 ID:1E3PPOYo
石原さん・・・・・

「変な話してごめんなさいね
 イヤな思いさせちゃったでしょ?」

いやそんな事はないよ石原さん
本当にありがとう

そんなにつらい話を聞かせてくれて
話すのだってつらかったろう

本当にごめんなさい
もう言葉にできないぐらい
申し訳ない気持ちでいっぱいです

「分かってくれた?」
これで分からなければ俺は本当のバカです
生きていく価値すらないバカ男です

分かります理解します
一生かけても理解します
本当にありがとう

「だからもう気にしないでいいからね・・・」
石原さん・・・・・
210 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 16:58:28.25 ID:1E3PPOYo
膝をついたままの俺の手を取り
石原さんは俺を立たせてくれた
服についた雪も払ってくれた

そして俺の腕を取って歩き出した
俺の腕をしっかりと抱え込んでくれる
腕を組んでくれる彼女の胸が俺のひじにギュッと押し当る

決して大きくはない石原さんの胸だ
みどりよりも間違いなく小さい

だけどブラジャーにパットでも入っているのか
ツンと尖った、存在感のある胸の感触だった

なぜかいやらしい妄想など全く浮かばない
胸が当たっている俺の腕を通して
温かい勇気が伝わってくるような気がした
なぜかじっとりと、重い感覚だった

そうして俺たちはコンビニに入り
人数分のアイスを買った
ずっと腕を組んだままだった

石原さんの胸はずっと俺のひじに当たったままだった
俺を支えようとしてくれているのか
それともわざとなのか
彼女の小さな胸がずっと俺のひじを押していた
211 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:01:05.35 ID:1E3PPOYo
深夜バイトのコンビニの若い店員は
まぶしいものでも見るように呆然と美しい石原さんを見つめていた

万が一数が足りないとみどりにまた怒られるので
少し多めに買った

そしてまた夜道を歩いた
雪はだいぶ落ち着いたが、まだパラパラと降っている

アパートに近づいてきたので
石原さんはそれまで組んでいた腕を離して歩き始めた
俺は自然に半歩下がって、石原さんを斜め後ろから見ながら歩いた

雪よりも真っ白なコートを着た石原さんは
まさに雪の妖精だった

少し茶色い長い髪を風になびかせ
ほとんど足音も立てずに歩いている

まるで地面を滑っているようだった
すぐに俺はある事に気がついた

石原さんにはほとんど雪が降りかかっていなかったのだ
212 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:04:39.91 ID:1E3PPOYo
もうだいぶ小やみになっていたが
それでもずっと雪は降り続いている

しかもさっきまでは大雪だったのに
それに公園を一周走ったのに
石原さんのコートには雪の一片すら落ちていなかった
髪もサラサラのまま、全く濡れていない

さっき俺と一緒にしゃがんでいたのに
白いコートの裾にも泥などは全くついていなかった

そして俺は自分の服を見た
肩から下に雪がこびりついていた

溶け始めた雪は俺の最近ちょっと危険な髪の毛を濡らしている
そこで気がついた

この程度の雪は石原さんには何の汚れも与えられないんだ
体も心も、昔のイヤな傷を全て完全に振り払った石原さんには
雪などが束になってかかっても
その美しい姿に1つのシミさえも付ける事ができないんだ

俺は全ての女性たちにこうあってほしいと願った
俺の被害を受けた女子生徒たちが
そして同じような犯罪の被害にあった全ての女性たちが
石原さんのような透き通った心の強さを持ち続けてほしい
心からそう願った
213 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:07:07.47 ID:1E3PPOYo
石原さん・・・

「なーに?」

石原さんもそうだけど
俺にひどい目に遭った女子がみんな
石原さんぐらい強い心を持ってて欲しいと思う

「私はそんな強くなんかはないよ
 ただたまたま、そう思っただけかもしれないから」

いやそんな事はない
本当に素晴らしい人だ

俺は石原さんほど強くはないから
俺と一緒に願ってほしい

みんなが石原さんと同じ強い気持ちを持っていて
俺にされた事に打ち勝ってほしい

俺は毎日そうお願いするから
もしよかったら一緒に願ってほしい

妖精のその力を貸してほしい
このバカな俺を助けてほしい
214 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:10:11.60 ID:1E3PPOYo
石原さんはクスリと笑い
「何か言ってる事があまり良く分かりませんけど
 それで長谷川君が楽になるのなら
 じゃあいっしょにお祈りしましょう」

ありがとう・・・石原さん
そうして2人で
雪の降る夜に手を合わせてしばらく祈った

全ての男子が女性をいたわる優しい心を持てますように・・・
全ての女子が温かく、そして強い心を持ってくれますように・・・
そして全ての人間が

つらい記憶をその心からきれいに振り払えますように・・・・・

そしてまた暗い夜道を歩き出した
もう2人に会話はない
歩きながら石原さんの肩が俺に軽くぶつかる

手を伸ばしたいけど、今はそれはできない
すぐ手が届きそうなのに
なぜか今はすごく遠い存在に感じる・・・
215 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:13:20.24 ID:1E3PPOYo
やっとアパートの前まで戻ってきた
ヤバいなもうだいぶ時間が経ってる

アイス買ってくるだけでこんなに時間がかかるなんて
みどりに何て言い訳しようか
また怒られる

だけどもう少しだけ、あと少しでいいから
もうしばらく石原さんと一緒にいたかった
この時間をもう少しだけ楽しみたかった

あっそうだタバコも吸わなきゃ
ずっと我慢してたんだった
一本だけ吸って帰ろう

石原さん
「はい?」
ちょっとタバコ吸っていいかな?
「いいよ」

そう断わって俺はタバコに火をつけた
ごめんね寒いのに
後3分だけ待ってね

「うんちょっと寒いけど3分ぐらいなら我慢できるから」
俺はしばらく黙ってタバコを吹かした
216 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:16:31.19 ID:1E3PPOYo
頭の中ではこの瞬間が永遠に続いてほしいと願っていた
そんな事ができるわけないのに
どうやったらこの素晴しく美しい、そして心の強い女性といられる時間を
もう少しの間、続けていたかった

でもアパートの2階には仲間がみんな待っている
そして愛するみどりも待っている

今すぐ石原さんを連れて
どこか遠い世界にでも行きたかったが
当り前だけど、それは無理な相談だった

燃え尽きていくタバコの灰とともに
俺に与えられた至福の時間も過ぎようとしていた

「ねえ、私にも一本ちょうだい」
えっ石原さんタバコ吸うのか?
「だから言ったでしょ?昔はそれなりにヤンチャだったって」

何だか不思議だけど一本さし出して火をつけてあげた
石原さんはかわいくすぼめた口でタバコの煙を吸い込んだ
とたんにゲホゲホむせ出した
217 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:20:12.70 ID:1E3PPOYo
「あーやっぱりダメねーもう15年ぶりかな?
 結婚する前ぐらいまではね
 たまに隠れて吸ってたのよ
 でも主人にバレちゃって
 病気の子供が生まれたらどうするんだって怒られたの
 
 主人もそれまではタバコ吸ってたんだけど
 私のためにその日でピタッとやめちゃったの
 それされちゃ私も吸えないからね
 それ以来ずっと吸ってなかったんだけど
 でも今日はなんとなくあの頃のヤンチャしてた時代に戻りたいの」

あまり信じたくないけど
この石原さんがヤンチャだったなんて
何だか笑えるな
不思議な妖精だ

「ねえ長谷川君」
はい?
「ヤンチャのついでにお願い聞いてくれる?」
もちろんです
「さっき一緒にお祈りしてって言ったでしょう?」
はい

「お祈りしてあげたからそのお返ししてくれる?」
はい何を致しましょうか?
218 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:24:11.80 ID:1E3PPOYo
「キスして」
はい?

「キス」
ぅぁ?

そう言って石原さんはクルっと振り向き
俺の方を見つめた

「そんなに深い意味はないから
 また明日からはちゃんとお上品な奥さまに戻るから
 今日だけ・・・
 ちょっとだけワガママさせてほしいの
 お願い・・・」

俺はもちろんイヤではなかった
むしろありがたくて涙が出る話だ
しかしいろんな話を聞いた後でこれはちょっとつらい

せっかく俺の前に妖精が舞い降りてくれて
俺の心の重荷を取り払ってくれたのに
この妖精はずいぶんお茶目な妖精さんだった

石原さんは澄んだ瞳でまっすぐ俺を見つめ
誘うようにつま先立ちをしている
2人の距離は15cmほどしか離れていなかった
219 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:28:14.52 ID:1E3PPOYo
石原さんの吐く息は白く輝き、それが俺の顔にまとわりつく
さっきまで飲んでた飲み物の匂いだろうか
果物のさわやかな香りがした

つま先立ったままで俺の胸に両手を当て
誘うように俺に顔を近づけてくる
その顔はものすごく美しくて
そして感動的だった

人生で最初の妖精とのキスだ
そして人生最初の
みどり以外の女性とのキスだ
膝がカクカク震えていた

俺は覚悟を決めて石原さんの肩を抱き寄せた
石原さんは素直に俺に体を預けてくる

細い肩だった
片手で持ち上げられそうなぐらい
華奢な体だった

この細い体のどこにそんな強さがあるんだろう
石原さんは目を閉じて俺に全てを任せている

悪いけどみどりとは比べものにはならない
いや比べる事すらできない

この世のものとは思えないくらいの美しい顔が
俺の目の前にあった
思い切って・・・
220 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:32:49.80 ID:1E3PPOYo
俺は石原さんに唇を重ねた
石原さんの唇は割と薄くて
そして小さかった

みどりよりも10cmは背が高い石原さんとキスするのに
腰をかがめる必要もなかった
それも初めての経験だった

外はこんなに寒いのに
なぜか温かさを感じた
そしてほんのり果物の匂いがした

石原さんの暖かい吐息が俺の頬をくすぐる
とても気持ちがよかった

勃起するとか
そんな余裕もないぐらい
緊張したキスだった

やがて唇を離した石原さんはニッコリと笑い
「みどりさんには内緒にしといてあげるからね」
と言って階段を駆け上がって行った
221 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:35:41.01 ID:1E3PPOYo
ああ・・・何て・・・素晴らしい・・・
トントンと階段を上がっていく石原さんの
コートの下から見える
ふくらはぎの白さが強烈だった

おっと石原さんはもう2階に上がっていた
呆然としていた俺もその後をついて上がる

ドアを開ける前にもう一度目と目を合わせる
石原さんはにこやかにほほ笑んでいる

さっきのキスは夢なのかな?
でも石原さんは間違いなく目の前に立っている
この美しい女性とキスをしたなんて
この小さな唇を本当に奪ってしまったなんて

ドアを開けるのがためらわれた
できればもう一度
みどりのいない所でもっと続きを

石原さんは拒むだろうか
それとも大人の関係だからって
笑って身を任せてくれるだろうか・・・

ドアのノブに手をかけたままためらう俺を
石原さんはじっと見つめている
俺の気持ちが伝わっているのだろうか
何も言わずにじっと見つめてくれている
222 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:38:08.71 ID:1E3PPOYo
このドアを開けたら
この瞬間が終わってしまう・・・
でも開けないといけない

俺にはみどりがいるんだから
世界でいちばん愛しているみどりが待ってるんだから
いろんな想いを振り切って
俺はドアを開けた

そしてようやく家に帰りついた俺たちは皆の白い視線を浴びた
「遅かったですわね」
「もう夜は明け始めてるわよ」

気が付かなかったが、空はもう白み始めていた
とうとう一晩中騒いでいたのか

みどりは無表情で俺にソッポを向いている
結婚して10年も経つから分かる
こういう時のみどりは一番怒っている事を

みんなが俺たちをからかう
「お2人仲良くご苦労さんでしたね」
「ずいぶん遠くのコンビニに言ってたんですね」
「もしかしたらアイス工場まで買いに言ってたんじゃないかしら」

キャーハッハッハッハッハhhwwwwwwwwwwwwww
223 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:42:20.55 ID:1E3PPOYo
オバチャンたちそのジョークは今は笑えない
しかし喜びまくるオバチャンの前で石原さんは笑って答える

「長谷川君ったらけっこう強引なんで困っちゃった」

ちょっと石原さんもう勘弁してくれ
もうこれ以上家庭に波風立たせないでください
みどりさん・・・違いますから・・・

俺を睨みつけるみどりさんを置いてオバチャンが締めに入る

「さーてもう電車も動く時間だから皆で後片付けして
 もう溶けてるだろうけどアイス食べて 
 そろそろおいとましましょうかね」

全員で仲良くアイスを食べてから
みんなで後片付けを始めた
寒かったのでまだアイスは溶けてなかった

片付けなんかしなくてもいいって言ったんだけど
妊婦のみどりには大変だろうという事で
全員でドヤドヤと掃除をした

明日というかもう今日だけど
アパートの住人からきっと苦情が来るだろうな
結局朝まで騒いでたんだからな
まあいいかどうせここは今年いっぱいだし
来年からは新しいマンションだから
224 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:45:50.07 ID:1E3PPOYo
寝室で寝ていた織田と村田を叩き起こし
全員で片づけが始まった
男たちは重い物を運び
寝室に移してあったソファーなどを元に戻す

女性陣は洗い物をしたり掃除機をかけたりし
石原さんとみどりがみんなの朝食を作った
中村と上野さんは邪魔にならない所に引っ込んだ

昨日の鍋の残りで作った熱いうどんが出来上がり
炊きたての白いご飯と
石原さんの持ってきた漬物とで朝食を済ませた

「さあそれじゃお開きにしましょうか」
締めのあいさつをしろとか言われたけど
もう疲れきって言葉も出てこない

とにかくありがとうございました
明日からとにかく頑張りますから
どうぞ見守っていて下さいとだけ言った

その時石原さんとチラリと目が合った
石原さんは
優雅にウインクを送ってきた

2人だけの秘密だった
みどりにも、他の誰にも言えない秘密だった
なぜか俺に力を与えてくれた
本当にありがとう・・・石原さん
225 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:49:06.89 ID:1E3PPOYo
全員が上着を着てゾロゾロと下に降りる
さすがにみんな疲れていた
それに眠そうだった

オバチャン2人に道中の面倒を頼む
「大丈夫だからみどりさんにしっかり絞られて下さいねーっ」
くそっ黙っててくれればいいのに

外はもう明るくなっていた
みどりと2人で手を振って見送る

よかったみんないい人ばっかりで
みんな気を付けてな

「じゃあまた会社でっ!」
部下たちと川上と沙希ちゃんが俺に頭を下げる
ああお前らも気を付けて帰れよ
それに沙希ちゃん・・・幸せになれよ

その後を追うように早川さんと前田さんが走り出す
「はっせっがっわクン元気でねーっ!」
ありがとう2人にも世話をかけたな
いろいろ気を使ってくれてありがとう
本当に感謝してます
226 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:52:06.41 ID:1E3PPOYo
岩川と林さん、それに織田と村田も歩き出した
「おう・・・」
「おう・・・」
みんな頑張れよ
俺も頑張るから
また一緒に酒でも飲もうな

そして石原さんが近寄って来た
「本当にありがとうね長谷川君」
いや・・・その・・・あの・・・

石原さんはみどりにも頭を下げる
「また電話しますね!」
なぜか2人は仲良くなったみたいで
さっき朝食作ってる時もずっと2人で話してたし
俺の事をあれこれ噂とかしたんだろうか

石原さんはみどりのお腹に手を触れ
「もうそろそろ動きますかねー?」
「時々動いてますよ」
「産まれたら顔見に来ますね」

「ぜひいらしてください

 主 人 も 喜ぶと思いますから」

何だよみどり
いちいちトゲのある言い方するな
でも産まれたらまた石原さんが来てくれるのか
楽しみだ
227 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:55:47.24 ID:1E3PPOYo
そうして石原さんはみどりと握手をして離れていった
俺とは・・・何もしてくれなかった
まあいいか
さっき・・・いややめとこう
みどりにバレると怖いし

最後に残ったのは中村と上野さんだった
電車には乗らずにタクシーで帰ると言う
かなり遠距離だけど
何とか割引があるらしい

「いろいろ悪かったな長谷川」
いやもういいよそれより幸せにな
「感謝してるよ」
やめてくれ似合わないぞお前
中村のくせに

「じゃあな」
上野さんはそんな中村を眩しそうに見ながら肩を支え
そして歩き出した

上野さんも・・・幸せにね
これだけ苦労したんだから
残りの人生は楽しい事ばっかりだよ
きっと・・・
228 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 17:59:15.43 ID:1E3PPOYo
中村と上野さんはぴったりと体を寄せ合って歩いている
大きな中村の陰に隠れるような
上野さんの小さな背中はとても幸せそうだ

その上野さんが中村に何か耳打ちし
体を離して俺の方に走り寄ってきた

俺もそんな上野さんの所に駆け出した
みどりには悪いけど
なんとなく聞かれたくなかったので
みどりを置いて上野さんに近寄った

ハァハァと息をつく上野さんは本当にかわいかった
そして昔のように
いたずらっぽい目で眩しそうに俺を見上げる

「長谷川クン・・・今日は本当にありがとうね」
いえいえ俺なんか何もやってませんから

「助けてもらえたね」
いや俺も助けてもらってますから高校の時

「じゃあおあいこだね
 本当にありがとう・・・絶対に忘れないから・・・」

俺も絶対忘れないよ・・・上野さん・・・
絶対幸せになるんだよ
俺は上野さんには本当に幸せになってほしいんだから
229 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:02:33.21 ID:1E3PPOYo
それから中村の事も頼むよ
アイツを幸せにできるのはやっぱり上野さんだけだから
ほら中村が待ってるよ
早く行ってやりなよ

「うん・・・・・」

「あのね・・・あの時言えなかったんだけど・・・」
あの時?
「そう、高校で最後に話した時・・・」
あーあれか

俺の大学合格を伝えた時の事だな
もう会わないって言った時に何か言いたそうだったっけ
俺は無視してそのまま行っちゃったんだった

だけどごめんもう聞きたくなかったんだ
どうせいいお友達でいましょうだとかそんな話しだろ?
そんな話は聞きたくないよ
よけいに悲しくなるから

「ちょっと耳貸して」
ん?
「お願いだから
 もう最後だから耳貸して」
230 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:05:59.47 ID:1E3PPOYo
そうして腰をかがめた俺の耳に上野さんは口を寄せ
一言だけ囁いた
その時俺の耳に上野さんの唇が軽く触れた気がした

耳に当たる上野さんの息がとても暖かく
そしてその言葉に全身から鳥肌が立った

呆然として声も出せない俺に
上野さんは微笑み
そして離れて待っているみどりにペコリと頭を下げた

「長谷川クンとみどりさんはすっごくいい2人だから
 ずっと幸せでいてね
 私も頑張るからね・・・ありがとう長谷川クン・・・」

そう言って上野さんはまた走り出した
中村の待つ元へ

そして再び中村の肩に体を入れて歩き出した
中村が俺に軽く手を振る
俺は振り返す余裕すらなかった

俺は呆然と朝の街に立ち尽くしていた
20年前に聞けなかったあの言葉
本当は聞いてみたかったのに
俺の意地っ張りで聞かなかった言葉
231 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:08:20.15 ID:1E3PPOYo
もしかしたら聞けるかもしれない
でも聞けなかったかもしれない
聞くのが怖かった

上野さんの最後の一言は

「好きでした・・・」

本気なのか、それとも冗談なのか
もうどうでもいい事だ
ただ彼女の口からその言葉が聞けただけで嬉しかった

たとえ嘘でもかまわない
いや嘘であってくれたほうがいいのかもしれない
今となっては

もうお互い別々の人生を歩んでるんだし
お互い素晴らしい相手と巡り合えた
だからこそ・・・本当に嬉しいよ・・・

上野さん・・・お幸せに
俺の上野さん・・・さよなら
232 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:11:19.83 ID:1E3PPOYo
そして石原さんも・・・
石原さん・・・

大丈夫だとは思うけど
これからも元気でね

また会えるかな?
ちょっと会いたいな石原さん・・・

ひじにずっと当たっていた彼女の胸の感触と
そっと抱き寄せた細い体
そしてあの唇の感触はまだ残っている

ああ・・・もう一度・・・
できたらその続きをぜひ・・・・・

「あなた」
ハイ?
「もう寒い」

みどりの声で現実に引き戻された
ハイ
腕組みをして離れたところから俺を見ている
サンダルでペタペタと地面を叩いて
「ずいぶんお幸せそうで」
いやだから高校の時の話をしてただけですから
233 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:14:30.05 ID:1E3PPOYo
「ふーん」
いろいろありがとうって言われただけだよ
「私にも中村さんにも聞こえない所でね」
だからちょっと照れ臭かっただけだよ昔の事だし
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

心配するなってば上野さんにとっては今日は
人生最大の素晴らしい日になったんだから
ヤボな事考えるんじゃないよみどりちゃん

「ふーんそれだけかなー?
 良かったですわ私
 こんなにおモテになる殿方と結婚できて」

何だよそれイヤミったらしい言い方だな
もしかして石原さんまで疑ってるのか?
おいみどり言っとくけど石原さんとは何もなかったんだぞ

「分かってるわよあの話聞いてたんでしょう?」
あれ?みどり知ってたのか

「だってさっき一緒に話してたから
 あなたにも話していいかって聞かれたから」
234 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:17:06.41 ID:1E3PPOYo
なんだ知ってたのか
あの時2人でしてたのはこの話か

「ひどい目にあう女の人っていっぱいいるのね」
そうだな俺たちがそういうのをこれから頑張って撲滅していかないとな

「私もあなたにはかなりひどい目にあわされましたけど?」
いやだからあれはなりゆきだったからみどりさん
「殺されかけましたけど?」
スイマセン

「それよりその話してただけなのに
 何であんなに顔真っ赤にして帰ってきたの?」
いやあのそれは別に何でもなくてその

「石原さんが長谷川君強引なんで困っちゃったって言ってたわよね」
いやだからあれは石原さんが勝手に

そうだ!暖房の入った部屋にいきなり入ったからだよ
うんそうだよ

「それに帰って来たときあなたタバコ臭かったわよ」
だってタバコぐらい吸いますよ別に子供じゃあるまいし
235 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:20:10.41 ID:1E3PPOYo
「あなた」
ハイ
「子供のこと大事に思っててくれる?」
当り前じゃないか何だよ当然の事を

「私のことも大事に思ってくれる?」
当然だよみどりお前は俺の妻だ

たった1人の愛する妻だ
2度と他の女なんかに

「2度とって事は1度はあるの?」
いやそれはだからあるはずがないだろうみどり

何を絡んでるんだよ酒も飲んでないのに
みどりのくせに

「タバコは昨日で終了!今日からは健康的な生活を楽しみましょう!」
いやだからみどりさん
「さっき言った事はウソなの?」
いえ違います
「じゃあハイ」
236 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:23:07.68 ID:1E3PPOYo
そう言って手を差し出すみどりの手に俺はタバコとライターを渡した
まあいいかタバコくらい
なあみどり信じてくれ俺にはみどりしかいないんだから
本当に愛してるよみどり

「ここも長かったわねー
 新しいマンションでもいい事いっぱいあるといいね」

もちろんだよみどり
3人でいっぱいいい思い出を作ろう
俺とみどりと生まれてくる子供とで

もうすっかり朝日が昇っている
何十年ぶりだろう徹夜して遊んだなんて
工場街に隣接した住宅地が動き始めていた
車も人も動き出した

さあみどり中に入ろう
お腹の子供が冷えるとよくない

一緒にお風呂に入って
一緒に寝よう
徹夜だったからな

今日は1日中2人で寝よう
「あなた・・・」
237 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:27:00.15 ID:1E3PPOYo
「私、いま幸せだから」
なんだよ突然
しかし話をコロコロ変えるな最近のみどりは

「前に言ってくれたでしょ?
 お前をもっと幸せにしてやるって」

ああ言ったよ確かあの時だな
「私・・・幸せだからね
 あなたと一緒にいられて・・・」

皆まで言うなみどり
分かってるけどありがとう

「あなた・・・・」
何だいみどり・・・

「石原さんのメールアドレス聞いたんだけど教えてほしい?」
えっ?それはそのもちろん
いえやっぱり結構です

いやもしかしたらまた連絡する必要がもしかしたら発生するかもその時にもしかしたらえーと

「嘘に決まってるでしょうがまったく
 あなたって人はやっぱり信じてもいいのかどうなのか」

みっみっみどり?
みどりのくせに?
238 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:30:09.74 ID:1E3PPOYo
「さあ!お風呂に入りましょう!」
そう言ってみどりは俺の腕を取り
2人で階段を登った

みどりは俺にじゃれてしなだれかかってくる
のしかかる2人分の命の重さが俺の気持ちをギュッと引き締める

みどり・・・俺絶対に頑張るからな
お前のためにも
生まれてくる子供のためにも

そしてみんなのためにも

ありがとう・・・みんな
いい人生を・・・



パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会



                   完


と思ったんですけどもう一つおまけを付けます
239 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:32:13.95 ID:1E3PPOYo
ありがとうございました
今日はここまでにしようかと思ったのですが
もう少し時間がありますので最後まで行きます
パー速にもバーボンハウスとかってあるのでしょうか?
8時までには終わりたいのでちょっと急いでいきます
ではすぐに始めます
240 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:35:07.47 ID:1E3PPOYo
パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会

第6話 おまけ


俺はみどりに手を引っ張られて家に入った
みどりはさっそく風呂の準備をしに行った

部屋の中はみんながきれいに掃除してくれたので
逆に来る前より片付いていた
ゴミまでまとめていってくれていた

「あなた一杯飲む?」
ああありがたい
今日はほとんど飲んでないから
飲んだ気もするけど全然酔えなかった

いいよみどり自分でやるから座ってろよ
「わたしもちょっとだけいただいてもいい?」
いいのか?
「薄いのにしてね」
よし分かった
241 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:37:23.25 ID:1E3PPOYo
俺は残っていたウイスキーで水割りを2杯作り
みどりと俺の前に置いた

みんなが持ってきてくれた大量の食材はとうてい食べきれず
それぞれまとめて冷蔵庫に入っていた

2日か3日は買い物に行かなくてもいいかも
残っていたおつまみで飲みながら今日の事を思い返す

あまりにもたくさんの出来事がありすぎてまだ頭が整理できない
無理もないか俺の人生の30年間を
それぞれ別々に歩いてきた人間が一気に全員集まったのだから
いくらフィクションとはいえ強引すぎる

みどりと話しながら昨日からの事をゆっくり思い出していった

まず最初は奥原先生の訃報だ
今回最年長の登場人物だし
多少の体調の変化はあるかもしれないけど
まさか亡くなってしまうとは

計算してみると先生はもう50を過ぎてるのか
でもまだ55にはなってないはず
校長先生はガンだって言ってたけど
それにしてもちょっと早すぎるよな
242 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:40:12.54 ID:1E3PPOYo
もうここであの真っ赤なパンティーを思い出すのはさすがに気が引けるが
あの夕暮れの教室で話した事はまだはっきり覚えている
先生の優しい表情、優しい笑顔
優しい言葉

そして泣き崩れる俺の肩を抱いてくれた時に感じた
先生の体の温もりとかすかな化粧品の匂い
子供心にもなぜかエロティックな想像をかき立てる
母親とも違う、もちろんみどりとも違う
柔らかい大人の女性の感触だった

本当に素晴らしい先生であり、美しい女性だった
残念ながら先生との約束を完全に忘れてしまい
大人になるまで全く成長できなかった俺を
先生はどんな目で見ていてくれてたのだろうか

怒っているかもしれないし
呆れてものも言えないかもしれない

でも先生
俺はちょっとは成長しましたよ
今ここにいる
妻のみどりのおかげで

もう少しで完全に人生を踏み外すところでしたが
みどりが踏みとどまらせてくれました

こんなバカな俺ですけど
みどりがいてくれる限りは
もう大丈夫ですから
243 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:44:10.21 ID:1E3PPOYo
「先生にお参りに行かなくちゃね」
そうだなみどり
「早い方がいいわよ私がまだ動けるうちに」

校長先生もいい方だったな
あんな立派な大人になりたいもんだ

「相当努力しないといけないけどね」
その通りだみどりたぶん俺には無理だろうな

「さっそく校長先生に電話して、来週にでも行きましょうよ」
うんそうするか
あんまり寒くならないうちに
2人で一緒に行こうみどり

奥原先生・・・これからもずっと
俺たちの事を見守っていて下さい
絶対に真面目に頑張りますから・・・・・

次は上野さんと中村か
しかしあいつら壮絶な人生送りやがって
まるでドラマの主人公みたいだな

色男と美人のカップルが
20年の時を経て
ついに一緒になれるだなんて
こんな3文エロ小説にはふさわしくない展開だな
244 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:47:34.61 ID:1E3PPOYo
あいつらがそのままのキャラで演じるだけで
若い男女はキャーキャー泣き叫ぶんじゃないかな?

トレンディドラマの俳優よりもはるかにカッコいい2人だから

しかし腹が立つ
俺の大事な上野さんをあんな目に会わせやがって
中村の野郎
正直うらやましい

でも上野さんの最後の言葉が俺の胸を熱くさせてくれた
たぶん嘘なんだろうけど
中村と一緒になれて幸せな上野さんが
感謝の気持ちを伝えてくれただけなんだろう

さすがに俺もこの年になって
そんな言葉を真に受けたりはしないよ
でも嬉しかった
ただ嬉しかった
それだけ

今ごろ2人は家に帰って
「今までごめんな上野」
「ううんいいの、だって信じてたから」
「上野・・・」
「中村クン・・・」
245 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:49:28.60 ID:1E3PPOYo
とか言いながら熱い抱擁なぞ交わしながら
中村の手が上野さんの小柄な体を撫で回し
ゾクゾクするような快感に震えた上野さんは
身に着けてるものを全てはぎ取られ
生まれたままの姿となって
他の男性には決して見せる事のない部分を恥ずかしそうに開く

中村の舌がその上野さんの花びらに隠れた小さな核を弄び
そして上野さんも中村の大きなモノをかわいい舌で丁寧に清め
やがて2人は体を重ねる

スポーツで鍛えた中村のがっしりした肉体は
小柄な上野さんを押しつぶすように激しく動き
あまりの激しさに上野さんは悲鳴を上げる
しかしそれは苦痛からくる悲鳴ではなく
その声はやがて歓喜の叫びとなる

中村の動きはさらに激しさを増し
そして2人同時にクライマックスを迎える

上野さんはその中村の背に爪を立て
絶頂感と恥ずかしさを全身でこらえる

そんな中村は衰える事を知らない太くて硬い肉棒を突き立て
さらに上野さんを・・・
246 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:52:03.56 ID:1E3PPOYo
「あなた」
ハイ?
「もういいかげんにしなさい」
ハイ

っておいみどり俺は何にも声になんて出してないぞ
何でお前人の考えてる事が分かるのか?
まさか本当にテレパシーがあるんじゃ・・・?

「バカな事言ってんじゃないの
 あなたの顔見たら何考えてるのかだいたい分かるのよ
 結婚して何年になると思ってるんですか?」

そうですねもう10年になりますからね
ああそうですかハイハイ

それにしても20年も待ち続けるなんて
しかも中村がまた振り向いてくれる保証なんか何もないのに
よく我慢したよな上野さん

あんな美人が
大都会の東京で20年も
ずっと1人で耐え忍んでたなんて
いまだに信じられないな
247 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:54:21.76 ID:1E3PPOYo
「でもすごい勇気だよね上野さんって
 私と同い年なんて信じられないわよ」
そうかみどりも俺の1つ下だったな

忘れてたよ最近お前の方がやたら年上に感じる事がある
「あなたいま何か言った?」
イエイエとんでもゴザヒマセン

まるっきり高校時代と変わらない上野さんにもびっくりしたけど
中村の顔にも驚いたな

最初に会った時はまるで生気がなくて
青黒くむくんだ顔してたのに
帰る時には昔みたいに爽やかな笑顔さえ浮かべていたぞ

しかも中年を迎えたからか
いぶし銀っていうのか?
そんな魅力さえあったな

ちくしょう・・・アイツ・・・カッコよかったな
なあみどり

「まあそうだけど私はあなたの方が好きよ」
へっ何だよみどり

分かってるじゃないか
やっぱりみどりのくせに
248 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:56:51.96 ID:1E3PPOYo
「人間ちょっとぐらい抜けてる方が面白いのよあなたみたいに」
へへへありがとうみどりちゃん
素直に嬉しいよ

「ちゃんとやっていけるかしらねあの2人」
大丈夫だよだって中村なんだから
手と足がなくてもあいつの頭脳があれば

大会社の経営者に2本の足なんかいらない
すぐに復活するよ
ましてや上野さんがついててくれてるんだからな

そして社長になるのか
大手建設会社の社長か
また浮気とかしなきゃいいけどな

「大丈夫よ何かあったら電話するって言ってたから
 早川さんと前田さんをけしかけてあげたらいいじゃない」

おいまさかみどり本気でそんな事を
「だってあなたならそう考えるでしょう?」
まあそうだけど
ずいぶん大胆な発言するようになりましたこと

しかし上野さんといい
そういや沙希ちゃんもだ
俺の妹みたいな感じだしな
なぜか悔しいとか思わない
頑張って幸せになってほしいな・・・
249 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 18:58:56.85 ID:1E3PPOYo
石原さんね・・・」

そうだ石原さんだ
彼女が一番つらい経験をしてたんだな
今日たくさんあった出来事の中で一番ショッキングだった

あの話を聞いたとき

体中から力が抜けて

足がガクガク震えた

頭の中が真っ白になって

何も考えられなくなった

なのに彼女はにこやかに笑い続けていた

まさか身近にそんな体験をしてしまった人がいるなんて
しかもあんなに美しい人がそんな目にあってたなんて

「あなたにどう言ったか知らないけど
 かなりひどい傷が残ったんだって」

「いろいろ変なものとか使われて
 病院にも行けないからなかなか治らなかったんだって
 もしかしたらずっとこのままかもしれないって思ったって」
250 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:01:09.24 ID:1E3PPOYo
そんなにひどかったのか?
俺はそこまで聞いてないぞ

「そりゃいくらなんでも男の人にそこまでの話はできないでしょうね
 私も聞いてて気持ちが悪くなったから
 聞きたい?」
いやごめんなさい俺そういうのダメなんです

「本当に根性のない人ね男のくせに」
だってみどりさん・・・
俺、血とか本当にダメなんですよ
あなたの生理の時の血を見ただけで倒れそうになるんですから

「そこまでつらい記憶って
 口で言うほど簡単には消せないと思うの」

そうだなあのおとなしかった石原さんだもんな
あんなに明るい女性に立ち直るまで
どれほどの苦労をしたんだろう?

パンツを盗まれた事を先生にも親にも言えずに1人で泣いていた
あの石原さんが
どれぐらいの努力をして生まれ変わったのか

同性にまでうらやましがられるぐらいの
美しい蝶に生まれ変われたのか
251 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:03:40.73 ID:1E3PPOYo
そしてたくさんいる
俺にパンツを盗まれた女性たちに
彼女のような強い気持ちを持ってもらうためには
いったいどうしたらいいんだろう・・・

なあみどり
「はい?」

俺のせいで
今でもイヤな記憶を引きずっている人がいるかもしれない
他にももっとたくさん
子供の頃のつらい記憶を残したままの人がいるはずだ

そんな経験を持っている女の人に
俺なんかができる事があるんだろうか?
校長先生と約束した
俺に何かできる事があったらぜひやりたいって
果たして俺にそんな事ができるのだろうか・・・

「そうだね・・・
 どうしたらいいんだろう」

「1人1人に謝って歩くわけにもいかないし
 あまり男の人に口をはさんでもらいたくない問題だしね」

そうなんだよみどり
252 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:06:36.19 ID:1E3PPOYo
それに日本全国の悪ガキたちが
本当に相手の事を思いやれる人間になってほしい
女の子の事を尊い気持ちで見つめてあげて欲しい

そしてつらい経験を持った女の子たちが
心を開いて笑って過ごせる世界にしたい

「あなた本気でそう思ってるの?」
当たり前だ今は本気だ

そうだ政治家にでもなるか
豊かな美しい日本を作るために立ち上がってみようかな?
「バカ」
ハイ

しばらく黙って飲んだ
俺は何杯目かの水割りを作り
みどりは水を飲んだ

そしてみどりがふと顔を上げた

「そうだよあなた、書けばいいのよ」
はい?
「この話を全部書けばいいのよ
 ややこしいお説教なんかしないで
 今までの事を全部書くの」
書く?俺が?
253 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:10:09.84 ID:1E3PPOYo
「あなた昔は作家になりたかったって言ってたでしょ?
 書いてみればいいじゃないの」
いやだけど俺にそんな大それた事が

「大それた事なんか書かなくていいの
 今のあなたの気持ちを正直に書きなさいよ
 自分が今までやってきた事を振り返って
 今日皆さんとあった話をちゃんと書いて
 そしてあなたがどう変わったのか
 今あなたがどう思ってるのか
 事実を書くだけでいいのよ」

ちょっと待てみどり
言いたい事は分かるけどこれはフィクションだぞ
あんまり正直に書くと本物の作者がお縄を頂戴するぞ

「いいのよあんなウスラハゲの中年オヤジなんか
 その辺は適当にごまかしとけばいいの
 もうあなたはそういうとこだけは妙に融通が利かないんだから」

お前にそんな事まで言われたくないぞみどり
本物の作者が怒ってるぞ

でも書いてみるかな?
ちょっと面白そうだな
本当にヤバい所は脚色すればいいんだし
254 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:12:16.42 ID:1E3PPOYo
「あなたにできなかったら岩川さんに頼めば?
 あの人が書いてくれたらきっとベストセラーになるわよ」

いやだめだあいつにそんなチャンスはやらない
俺が書く

これでも学生時代は作家志望だったんだ
本だって今までに何万冊も読んでいる
新聞に投稿した事だってあるんだからな
採用されなかったけど

「あなた」
はい?
「私の事は美人に書いてね」

当り前じゃないかみどり
でも悪いけどお前は3番目だ
石原さんと上野さん
妖精と天使の上位2人は悪いが絶対に動かせない

それに沙希ちゃんもかわいいし
あのナイスバディーはやっぱり俺の中ではNo,1だ
それから奥原先生ももちろん美人だったし
って事はみどりは5番目になるのか

うーんどうしよう・・・
いくらなんでも5番目じゃみどりは怒るだろうな
じゃあどこに入れたらいいんだろう・・・
255 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:14:49.93 ID:1E3PPOYo
「あなた」
ハイ
「脚色してもいいって言ったでしょ?
 そのへんは上手にごまかしなさい
 長谷川君のくせに」
ハイハイ

「どうせ会社でもヒマなんでしょ?
 沙希ちゃんのお尻ばっかり思い出してボーッとしてるヒマがあったら
 もうちょっと建設的な事にその頭使って下さいね」
何でここに沙希ちゃんが出てくるんだよ
俺の心を見透かしやがって腹の立つ

だいたい俺の仕事はみんなを管理することなんだよ
あいつらの失敗を処理する大事な仕事なんだからな

確かに最近あんまりミスもしないし
俺の仕事といえばみんなのお茶を入れたり掃除をしたり
タバコ吸いに外に出たり
いろいろ妄想したり・・・

「そういうのを世間一般ではヒマって言うのよ」
まあそうとも言うけど
256 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:17:55.09 ID:1E3PPOYo
しかし沙希ちゃんのお尻・・・
大きかったな
あんなに大きなお尻なのに
全然垂れてなんかなかったし
何か特殊なパンツでもはいてるのかな?

胸だってそうだ
あのバストは絶対95cmはある
なのに信じられない高さに盛り上がってたし
ブラジャー取ったらどうなるんだろ?
ダランと垂れ下がっちゃうのかな?
まさかあれだけのおっぱいがちゃんと自立するのか?
それとも川上のクソ野郎が毎日揉みまくってるからとか

くそぅあの野郎
うらやましいぜ
ちょっと写メールとか撮って送ってくれないかな?
みどりのと交換するからって言ってみたらどうだろ?

いやみどりのは送れない
みどりの裸だけは絶対に見せない
俺だけのみどりだから
しかし何かいい方法はないかな・・・
またマンションにでも忍び込むか
257 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:20:07.82 ID:1E3PPOYo
「あなた・・・」
ハイ
「よくもまあ毎日毎日そんな事で頭膨らませられるわね」
はい!妄想歴はすでに40年近くになります!
「・・・・・・・・もう疲れた」

いろいろ話しながら2人で飲んだ
俺は頭の中で書く内容を考えた

どうやって書こうかな?
どんな風に書こうかな?
俺にできるのかな?

みどりの言うとおり
あまり難しく書く必要はないか
今までに起こった事をありのままに書けばいいのか

ちょっと恥ずかしい話だけど
フィクションだって事にしてしまえばいいんだし
それにみんなが励ましてくれてると思えば
何とか自分にもできそうな気がする

校長先生と約束した通り
俺にできる事を少しずつやっていくだけだ

小さなことでもいいから
俺の気持ちを伝えていきたい
世界中の悩める青少年のために・・・
258 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:23:15.96 ID:1E3PPOYo
そうだあと1つだけ
みどりに聞いておかないといけない事があったんだ

なあみどり・・・
「はい?」

その・・・答えたくなかったら答えなくてもいいんだけど
「?」
その・・・みどりはどうやってつらい記憶を忘れられたんだ?
「???」

いやその・・・子供の頃の事とか
あとその・・・俺にひどい事された事とか
そう簡単に忘れられるもんじゃないだろ?
「・・・・・」

石原さんだってそうだ
あそこまで悲しい経験をいくら生まれ変わろうとしたって
そんなにすっぱり忘れられる事なんてできるのかな?

「うーん・・・石原さんはどうか分からないけど・・・」

「はっきり言って、そんなのすぐに忘れる事なんかできないわよ」
やっぱりそうか
259 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:25:14.11 ID:1E3PPOYo
「いつだって目を閉じたらすぐに思い出す
 悲しくて夜眠れないことだってある
 たぶん石原さんもそうだと思う
 記憶でもなくしてしまわない限り
 そう簡単には忘れられないのよ」
そうだろうな・・・

「でも私はもう忘れた事にしたのよ
 決して忘れてはいないけど
 忘れた事にしちゃったの
 なぜだか分かる?」
分からない

「分かってほしいんだけどなー」
分からないよ分かりませんから教えて下さい

「それはね・・・」
教えてくれみどり
もしこの話を書くならここは大事なポイントだ

世界中にたくさんいるこういう卑劣な犯罪の被害を受けた女性たちに
みどりや石原さんの心の強さを分けてやりたいんだ
260 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:27:13.56 ID:1E3PPOYo
「結局自分で忘れるしかないのよ
 どんな薬を飲んだって
 お酒を飲んだって
 どんなにいいお医者さんにかかったって
 体の傷は治せるかもしれないけど
 心の傷なんか他人には絶対に治せないの」
うん

「自分で忘れないといけない
 それは強さだとかそんなものじゃないと思うの
 周りに自分を温かく見守ってくれる人がいれば大丈夫だと思う」
みどり・・・それは・・・

「前に私にひどい事をした人がいたけどね
 私はその時もう死ぬんじゃないかって思った
 自分の好きな人に殺されるんだったら仕方ないのかなって思った
 だけどその人は自分のやった事に気がついてくれて
 ちゃんと反省して謝ってくれたの」
ぅっ・・・

「その人はそんな私にずっと付き添っててくれて
 自分の恥ずかしい過去の話をちゃんと話してくれて
 そして私の話を全部聞いてくれて
 私にミョウガをたくさん食べさせてくれて
 それから毎日のように私を笑わせようとして
 毎日つまらない冗談ばっかり言ってくれた人がいたから」
みどり・・・・・
261 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:29:20.76 ID:1E3PPOYo
「その人が私の笑ってる顔を見て
 とても嬉しそうにしてくれたから
 私のためにどんな事でもしてくれる優しさがあったから
 その人をもっと喜ばせようと思って
 その人の事を毎日考えていて
 その人が私を優しく抱いてくれるのが嬉しくて
 それで私は毎日笑顔でいられるようになったの」
みどり

「実際毎日つまらないオヤジギャグにつき合わされて大変だったけど
 その人が私を思ってくれてる事が分かったから・・・」
みどり・・・

「石原さんだってたぶんそうだと思うの
 自分が泣いてる顔を見せたくないって
 つらい顔を見せたくないって思う人がいたから
 だから勇気を出せたんじゃないかな
 恋人なのか、ご家族なのか
 それは分からないけど・・・」

「そういう人って誰にでも必ずいるはずなのよ
 その人の事を思い出せば
 つらい思い出なんか忘れられると思う
 私はそうだったから
 あなたがいてくれたから
 私はそれだけで幸せなのよ」
262 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:32:17.97 ID:1E3PPOYo
「それさえあれば
 自分を愛してくれる人さえいれば
 どんな事だって忘れられるのよ
 親でもいいし友達でもいいし恋人だっていい
 誰にだって
 必ずそういう存在がいるって事を
 教えてくれたのはあなただから」
みどり・・・

「あなたがいてくれたから全部忘れられたのよ・・・」
みどり・・・ありがとう
俺もみどりと全く同じ気持ちだ

どうしようもなくひねくれてた俺の人生なのに
俺を支えてくれた人がずっといてくれた

みどりと出会う前にもそういう人と巡り合えた
そして今はみどりだけだ
みどりが俺を愛してくれたから
俺もちょっとは変われたのかな

朝起きてみどりがいるととても安心できた
会社から帰ってみどりの顔を見ると一日の疲れが吹き飛んだ
夜はベッドでみどりを抱きしめているととても幸せを感じられた

そして今はみどりのお腹の中で育つ赤ちゃんを感じて
生きている事がこんなに素晴らしい事なんだなって思えるんだ
263 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:34:08.08 ID:1E3PPOYo
みどり・・・愛してるよ
みどりに出会えて
俺は本当に幸せ者だな

「あなた・・・・・」 

みどりが俺をじっと見つめていた
その目はうるんでいる
何か俺はものすごく
温かいものに全身を包まれているような気がした

石原さんも、上野さんも
そして奥原先生も
俺にとっては大切な人ばかりだ
だけどこのみどりには絶対にかなわないんだ

そう
俺だけの大事なみどりなんだから

みどりの目はキラキラと輝いている
窓から差し込む朝日を受けて
1年前とは全く違う
俺を完全に信じ切っている目だ

その目が今はかすみに包まれてきている
こういう時のみどりの言いたい事は分かる
もう10年連れ添ってきた妻だ
264 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:36:44.96 ID:1E3PPOYo
お互いに相手の事を理解できなくて
つまらない時間をずいぶん無駄に過ごしてきたけど
この1年近くで
その空白は完全に取り戻している

みどりが俺を誘っている
俺に乱暴に犯される事を期待してる目だ

昨日の夕方、途中まで舐めたみどりのお尻を思い出す
妊娠の後期に入って
かなりたくましくなってきたお尻だけど
だからと言ってだらしなく拡がってはいない

少年のように固く引き締まっていたお尻は
いまようやく女の盛りを迎えようとしていて
たっぷりと盛り上がっていた
そのお尻を舐めて欲しがっているんだな

「あなたもうあんまり飲まないでね」
うんもうそろそろやめよう
世間はとっくに朝だ
かれこれ24時間以上起きてる事になるんだな
もう寝ようかみどり
265 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:38:41.93 ID:1E3PPOYo
「ねえあなた・・・」
分かってるよみどり・・・

「昨日の続きして・・・途中でやめちゃったから・・・」
みどり・・・
体は大丈夫なのか?
「1回ぐらいは大丈夫だから優しくしてね」

俺もずっとしたかったんだよみどり
昨日は途中で中断しちゃったから
みどりのお尻をたっぷりと舐めて
そしてみどりが俺を舐めてくれて
もう少しのとこまでいったのに
川上と沙希ちゃんに邪魔されたんだった

俺の股間がムズムズし始めた
みどりの甘い蜜の味わいと
温かい口の中に包まれる感触がよみがえってくる

窓の外は明るい冬の青空だ
昨夜の雪が嘘のように
真っ青な空の中に明るい太陽が顔を出している

今日はいつもの薄暗い寝室じゃなくて
こっちの明るい部屋で
みどりの身体をじっくり楽しもうかな
266 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:41:07.63 ID:1E3PPOYo
お腹の膨らんだみどり
柔らかなみどりの肉体を
陽だまりの中でゆっくり味わいたいな

「あなた・・・お風呂に連れてって・・・」
みどりは両手を伸ばして俺に甘えてくる

よしもう後の事はゆっくり考えよう
そうだよ時間はたっぷりあるんだし
今はみどりの事しか考えないでおこう

みどりとセックスする事だけしか
生まれてくる子供には申し訳ないけど
今日だけは我慢してもらおう

俺は椅子から立ち上がり
みどりを立たせて優しくキスをした
昨日から何回目のキスだろう
みどりは体中の力を抜いて俺にもたれかかってくる
俺の口の中でみどりの柔らかい舌がヌメヌメと別の生き物のように這い回る
267 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:43:14.35 ID:1E3PPOYo
「んん・・・」
みどりの吐息はもう火のように熱くなっている

みどり・・・今ここでしようか?
このまま立ったままでみどりの中にブチ込みたい・・・
「だめ・・・ちゃんとお風呂入ってから・・・」

そう言って甘えてくるみどりはまるで少女のようだった
大きくなったお腹を抱えて
俺にぐにゃりともたれかかってきている
鼻を鳴らして俺に体をすりつけてくる

そんなみどりがいとおしくてたまらない
世界で一番大事な妻だ
他の誰とも比べられない
俺だけのたった1人の妻だ

理由は簡単
みどりは世界で一番俺を愛してくれてるからだ

「あなたと一緒にゆっくり暖まって
 あなたにきれいに洗ってほしいの・・・」

よしよしみどり
俺が全部洗ってやるから
みどりは何もしなくていいから
268 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:45:14.91 ID:1E3PPOYo
俺の愛するみどり
いつまでも
いつまでも
ずっとこうしていような
2人でずっと・・・

そうして俺はみどりの肩を抱いて浴室に向かった
みどりは安心して俺に全てを任せている

そうだよ・・・俺たちはもう大丈夫だから
みんなも幸せになってほしいな
世界中の全ての人が

しあわせになれますように


パンツを盗む事に快感を覚えてしまった男の
とてもとても楽しい忘年会


                  完



この後、先日公開していただきました

「元パンツ泥棒の長谷川君とその妻みどりさんのその後の妖しい一日」

に続きます
どうも、ありがとうございました
269 : ◆xyAZ5VvW6Y [sage]:2008/12/13(土) 19:47:35.08 ID:1E3PPOYo
どうもありがとうございました
何とか8時前に終われました
また月曜日にでも
このスレが残っていれば
もしくはまとめサイトの方で
ご挨拶などさせていただきたいと思います

スレの中の人さん
相変わらず早い仕事に感謝します

それでは今日はこのあたりで
失礼させていただきます
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/13(土) 22:57:15.13 ID:KlFis760
完結乙!
あまり上手い感想を言えないけどこれだけは言っておく

     これだからVIPはやめられねえ!!

271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/14(日) 10:33:15.40 ID:.gcDiXY0
今読み終わったwwwwwwwwww
乙でした!
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2008/12/31(水) 01:12:13.43 ID:BdUnBcDO
やっと見つけて、読み終わった!!!

完結お疲れさまでした。
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