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【新章】邪気眼の恋路とユカイな仲間達【突入】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :とんかつ [sage]:2010/02/09(火) 15:27:15.27 ID:FNVkjGU0
まとめwiki
http://www36.atwiki.jp/onnanokokara/

前スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1253359850/

愉快痛快なネトラジ(凍結中)
http://203.131.199.131:8050/test0109.m3u


【テンプレ】
春――それは、出会いの季節。
寒い朝を懐かしむ季節に移り変わるように、このスレにも新しい”風”が吹き始める。
…それはまるで、桜のつぼみのような、小さく、それでいて美しい5人の恋の物語――


〜攻略対象〜
1.ゆき兄…主人公の幼馴染。家は隣で、家族ぐるみの付き合いは未だに続いている。
     主人公を想う気持ちなら負けない自信があるが、はっきりしない主人公にやきもきしている。

2.ゆき兄…主人公のクラスメイト。成績は中の上ぐらいだが、主人公の成績がよくないのもあり、よく彼女から
     勉強を教えてもらう。内気な性格だが、運動神経・ルックスはかなりいい。

3.ゆき兄…主人公のバイト先の先輩。誰にでも優しく、皆から親しまれている。
     主人公のミスを見ていられないところもあり、守ってあげたいと思っている。

4.ゆき兄…主人公の所属する部活の後輩。面倒見のいい主人公に強く惹かれている。
     おっとりした性格で、家事が得意。恥ずかしがり屋。

5.ゆき兄…主人公のクラスメイト。先週転校したばかりで、右も左もわからないときに
     主人公に助けられた。お礼がしたいと思っているが、内心複雑な状況。転校前になにかあったらしい。



※このスレの登場人物はwikiを見てください。

あ、あとちなみにですが。主人公は男で、ゆき兄もおとry
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かすみ「歩夢せんぱい♪ 今日も可愛いですね〜♡」侑「・・・」 @ 2024/06/19(水) 00:12:19.76 ID:XvxKQmOwO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1718723539/

(安価&コンマ)謎のツールを巡る戦いpart4(仮面ライダー555) @ 2024/06/19(水) 00:08:01.47 ID:UZJ3OHT70
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1718723280/

由比ヶ浜(今日はあたしの誕生日……なんだけど……)【俺ガイル】 @ 2024/06/18(火) 23:34:13.90 ID:sw5TWJfn0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1718721253/

旅にでんちう @ 2024/06/16(日) 10:27:41.98 ID:y2zqJ2byO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1718501261/

【艦これ安価】今更始める艦隊これくしょん @ 2024/06/16(日) 01:31:28.92 ID:YTWH798x0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1718469080/

レズ娘 @ 2024/06/15(土) 22:32:10.86 ID:mxHt+n8To
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1718458330/

レズ娘 @ 2024/06/15(土) 22:14:17.20 ID:Rl3fvy0Co
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1718457257/

君が元気でいられる為に! @ 2024/06/15(土) 21:30:06.05 ID:+VRYXBt+O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1718454606/

2 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/09(火) 17:40:08.70 ID:aLpe0cDO
>>1
スレ立て乙…

って、おまwwwwwwwwwwwwwwwwとwwwwwwwwんwwwwwwwwかwwwwwwwwつwwwwwwwwwwww
3 :黒やん :2010/02/19(金) 23:50:21.16 ID:PhbJ6UDO
壁|ω・)ジー






壁|ω・)ノシ ジャアネ
4 :そら :2010/02/20(土) 00:40:45.54 ID:ElOfkwDO
>>3
( ФωФ)久方ぶりなんだ、もう少し居たまえよ
5 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/20(土) 12:52:30.06 ID:6M0YJ2DO
>>3
ちょwwwwwwwwww油断したころに来てるしwwwwwwwwwwww
6 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 21:56:56.80 ID:wXYE.bwo
よし、間に合ったぞよ
ほふほふ
7 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:00:44.88 ID:wXYE.bwo
誰も見てなくても始める…
だって僕はそのために存在してるんだから…

と、センチになったところでGO
8 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:01:48.98 ID:wXYE.bwo
――12年前、冬

「皆様、お集まり頂きましてありがとうございます
 今宵はクリスマスイブ…聖夜です。
 この聖なる夜に是非とも神をその身に感じていただきたい。」

厳粛な雰囲気の中で壇上の牧師が集まった人々にそう語りかける。
静かで落ち着いたその声は響くように広い教会内に万遍無く行き渡る。
聖夜ミサと言われる教会の集まり。
信徒はもちろんのこと暇を持て余した人たちが多数参加し、皆厳かな気持ちで過ごしていた。
典礼や祈願、奉納などとミサは進行していき、やがて主への祈りを捧げる段階となった。
その時、扉が大きな音を立てて開け放たれた。

「愚劣なる神の信徒ども!メリィークリスマァァス!」

次の瞬間、教会内に無数に連なった爆竹に火をつけたような音が響き渡った。
続くように叫び声があがった、出口に向かって駆け出す者、窓を破って逃げ出そうとする者が互いに互いの行動を邪魔しあう。
音はそれからしばらく鳴り響き続けた。
どれくらい時間が経過したのか、それはもう誰にもわからなかった。
皆血だまりの中にその身を預け、もう言葉を発することも無かった。
ただ1人、入り口に立っていた銃口から白い煙を立ち昇らせる銃を持った男以外は。
男は足音を響かせながらゆっくりと屍の折り重なった中央の通路を歩いていく。
そして壇上に突っ伏して事切れた牧師を引きずり倒し壇の上へと飛び乗った
そのまま振り返り、両手を広げて男は大声で叫んだ。

「この聖なる夜に!神を信じた君たちは神の前で死んだ!
 信じる者は救われるというならば君達は死ななかったはずだ!
 本当に神がいるとならここで屍となったのは僕のほうだったはずだ!
 だがこれが現実だ!信仰は人を救わない!神は人を救わない!
 信仰なぞ感情の逃げ場所に過ぎないのさ!
 人を救えるのは人だけなんだよ!神に匹敵する力を持つ人だけが本当の意味で人を救えるんだ!!」

それに答える者は誰も居なかった。ただ男の声だけが教会に響き渡るだけだった。
男は満足げに銃を投げ捨て、胸の前で十字を切り、言った。

「アーメン…ギャハハハハハハハ!!!!」

狂ったように笑い声をあげる男を、飛び散った血で赤く染まった神像の虚ろな瞳が見ていた。
9 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:03:49.20 ID:wXYE.bwo
――そして時は現在に戻る

「時間は球体であり、人はその球体の上を一定方向に歩き続ける存在である…
 つまり過去に起こったことは時間が立つにつれ再度同じことが起こる可能性が高まって行く。
 …エンプティの報告によれば"見た者"の差異はあれど彼は"同じ場所"でほぼ同一の存在である"在りえない者"に魅入られ
 同じように列車に轢かれて死ぬところを同じようにエンプティに助け出された。
 …恐らくあの2人には自覚は無いが、彼らは違う時間で同一の時間を体験していたのではないか?
 仮説に過ぎない、人が時空間を操ることは決して不可能だ。ましてやある限定された部分だけを繰り返すとなれば尚更。
 しかし彼には天眼がある。神すらも超える力…
 彼は命に危機に直面し限定的ではあるが本来の力を無意識下で発動し
 自らが死ぬ運命を1度助かった運命に置き換えることであの怪異より生還したのではないか…
 仮説、希望的観測、だが可能性は決して0とは言えない。
 だがもしこの仮説が正しければ…やはり彼は…」
10 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:06:06.21 ID:wXYE.bwo
怪異天眼異聞録

【怪異2 〜隙間女〜】

11 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:07:21.91 ID:wXYE.bwo
「へっくしょい!!!!…ずび…風邪引いたかな…」

垂れてきそうになった鼻水をすすりながら俺は通路を歩き出した。
あの事件から数日が過ぎた、ニュースや新聞を細かくチェックしたが事件は報道はされていなかった。
エンプティに問いかけてみるとあの事件自体がEDEN機関の手によって無かったことになっているらしい。
正直なところ1人の人間の死を無かったことにしてしまう程の力を持つEDEN機関という存在が少し恐ろしくなった
だが協力して、護衛までつけてもらっている時点で俺はどちらかといえばもう機関側の人間だ、それにとやかく言うつもりも無い。
そして今は俺はEDEN機関の研究所の通路を1人でハクレイに指定された部屋へと歩いている。
なぜこんなことになったかというとあの事件によって俺の肉体、精神に問題が無いかの検査を受けさせられることになったからだ。
大袈裟すぎるとは思って最初は拒否したがハクレイは頑なに譲らず、結局俺は検査を受けることになった。
そのうち「検査室」と書かれたプレートがかけられている部屋が見えた。どうやらここみたいだな。
扉を開けようと手をかけると中から話し声が聞こえた。

「それでどうだったんだ?天眼を持つっていう奴は?」
「普通だったよ、全然私たちと変わらないただの人間に見えた」
「人間ねぇ…」
「果たして天眼を持つ奴が人間って言えるかな?」

男の声が2人分、それと恐らくフロスが室内で話しているようだった。
俺はドアから手を離しそっと聞き耳を立てた。

「天眼はその存在を人が許しても神が許さないと言われる全ての事象を思いのままに捻じ曲げる力」
「それはもう人間を超えた存在だ、俺らとは根本的に違う存在なんじゃねぇのか?」
「化け物、とも言えるかもな、ハハッ」

化け物、か。そうかもしれないな…
でも俺はただ見えない物が見えるだけ…たったそれだけなのに…
いや、それが決定的…か

「違うよ、彼は化け物なんかじゃない、私達と同じ人間だよ」
「…根拠は?」
「私にはなんとなくわかった」
「研究者が勘で物を言うな」
「…わかってる、けど…」

化け物とか異常とか言われるのは馴れている。
昔の俺ならこの場から逃げ出していたのは間違いない
それを留めてくれたのは俺自身の変わろうとする意志とフロスという存在のおかげだった。
理解されないからと逃げ出してしまえば永遠に理解は得られない。
救われるためには自分から手を差し伸ばさないといけないことは充分わかっていた。
だから俺は、勢いよくドアを開けた。

「!?」
「…あの、検査…」
「…あ!ああ…じゃあこっちにお願いします…!」

明らかに動揺した様子で男の研究員が俺を案内した。
もう1人の男の研究員はカルテのようなものから目を離さない。
唯一この部屋で俺と目を合わそうとしているのはフロスだけだった。
俺はフロスに笑いかけると小さくピースサインをした。
フロスもそれを見てニッコリと微笑んだ。
12 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:09:10.10 ID:wXYE.bwo
「…うん、健康だね、欲を言えばちょっと痩せ過ぎかなぁ」
「それは体質」

アレコレ言われるがままに動いていたらいつの間にか検査が終わったらしい。
フロスは「じゃー後は私がまとめておくから」と男の研究員2人を締め出してしまった。
そして今室内は俺とフロスの2人だけになっていた。

「…ごめん、さっきの聞いてた?」
「さっき…ああ、気づいての?」
「入ってきたタイミングを考えて多分聞いてたんだろうなって」
「…ま、フロスが謝ることじゃないよ、それに…慣れてるし、ハハ」
「…そんな悲しげに笑っても説得力ないよ、ごめんね」

一転してなんだか重苦しい空気になる。
昔からこういう重くて真面目な雰囲気はどうにも苦手だ。

「だからフロスが謝ることじゃないよ
 それに、フロスがわかってくれてる、それだけで充分だ」
「ゆき兄…」
「…なんか照れるな。
 今まであんまり思ったことを口に出すことが無かったから…
 フロスには、なぜか話せる…どうしてかな。」

目を逸らして照れ笑いとしていると不意に頬に当たる何か。
顔をあげるとフロスが俺の頬に手を当ててじっと見つめていた。
え、何この状況?

「…綺麗な眼だね」
「あ、え…」
「…君を見てると、なんだか凄く安心する…」
「…」

何度も思ったようにそれは俺も感じている。
とても暖かく、懐かしく、心に訪れる平穏…
あまりにも愛しく…同時に狂おしいほどの悲しみ…

「…本当に、綺麗な眼…」
「ちょ、フロ…!」

顔が近づいてくる、フロスは目とかつぶってるし、どういう状況?そういう状況?
嫌じゃないしむしろ望むところなんだけど唐突すぎる!!心の準備が出来てない!!
でもあかん!意志とは裏腹にドンドン顔が近づいて…!!
13 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:10:22.51 ID:wXYE.bwo
その瞬間、ドアがガラッと開いた。

「ゆき兄、検査終わった…って、何してんだ?」
「…エンプティ〜…」

突然開いたドアに猫でいうなら全身の毛を逆立てるほどビビった俺は体勢を崩して座っていた椅子から盛大に転げ落ちた。
心臓の鼓動が死ぬほど早い。今にも破れそうだ。
フロスは恥ずかしそうに俺から顔を逸らしていた。

「検査は終わったんだな?
 ちょっと一緒に来てくれないか?」
「…わかったよ」

俺は立ち上がるとフロスに向かって言った。

「えと…それじゃまたね…」
「う、うん…またね…」

とても気まずい、思わず身震いするほどの気まずさだ。
俺は入り口で無表情で立っているエンプティの元に向かった。
通りすぎる際に俺は小声で言った。

「恨むからな…」
「何をだ?」
「知るかッ!!」
「…何をカリカリしてるんだ」

検査室のドアが閉まる。
俺は腕組みをしてエンプティに向き直った。

「で?どこに連れてく気だ?」
「ああ、ハクレイ様が呼んでるんだ」
「ハクレイが?」
「何の話かは知らないが行けばわかるさ」
「…ああ」

俺はエンプティと一緒にハクレイの部屋へと向かった。
研究員と違ってハクレイの部屋だけは実験区画にある。
俺のカードキーでは実験区画の扉は開けれないからエンプティが扉を開けながら俺達は実験区画のハクレイの部屋に向かう。
しかしこの研究所はどこも同じような作りで目印になるようなものが少ないから相当馴れても迷いそうだな。
そんなことを考えてるうちにハクレイの部屋についた。
エンプティがドアを開ける。
14 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:11:50.82 ID:wXYE.bwo
「失礼します、ゆき兄を連れてきました」

礼儀正しくそう言ってエンプティは部屋に入った。
俺は何も言わずにその後に続いた。
奥の机にハクレイは座っていた、相変わらずサングラスをつけている。
ハクレイは顔をあげると割りと軽い調子の声で俺に話しかけてきた。

「やぁゆき兄、初めての怪異の侵食はどうだった?」
「報告聞いたんだろ?」
「君の感想は聞いてないからな」
「…極めて深刻な問題ってことは理解した」
「…だが、これで終わったわけじゃない。
 怪異はこれからも現実へと侵食してくる。」
「…」
「…ま、心配するな。
 エンプティが必ず君を守るさ」
「エンプティがねぇ…」

後ろに立っていたエンプティのほうを見てみる。
相変わらず無表情だった。

「…まぁ一応2度も助けてもらったし信用はしてる…かな」
「それは何よりだ、ハハハ」

エンプティは笑い出した。
最初に会ったときのような硬い雰囲気が嘘のようだな…

「君が怪異の侵食で心が打ちのめされているんじゃないかと思ったが杞憂だったようだな」
「ああ、そりゃ杞憂だな、正直なところ恐怖はしたが打ちのめされてはいない」
「…それじゃもういいよ、家に帰るなりしてゆっくり休んでくれ」
「ああ…」

俺とエンプティは部屋から出ることにした。
エンプティは律儀にハクレイに向かって頭を下げていた、こいつ本当に真面目だなぁ…

「…天眼に問題は無し。
 そういえば今日はアルゴルの姿が見えないな…」
15 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:14:51.40 ID:wXYE.bwo
とりあえず俺は家に帰ってきた。
エンプティもくっついて来たが一応命の恩人でもあるし追い返すことも出来ずに家にあげた。
俺が座り込むとエンプティも対面に座り込んだ。

「…」
「…」

全く話すことも無く時間だけが無駄に過ぎて行く。
エンプティは基本的に自分から何かを語ろうということはしない
それが良いときもあればこんな風に悪い時もある。
俺はこの状況をどうにかしようと呟いた。

「…EDEN機関の人間は皆"在りえない者"の存在を信じているのか?」
「当たり前だ、天眼を研究する者は皆信じている」
「どうも科学的な研究者ってのは非科学的なものを信じないっていう偏見があってな」
「…科学というのは、これまでの人類の歴史の中で人類が知り得た知識の範囲内のことを言う
 それ以外のことは全て「非科学的」ということになる
 人類が知らないだけで存在している、存在はしているが今の人類の科学ではそれを認識するに至れない。
 まだまだ科学が発展途上であるというならば非科学的と言われるようなことでも完全に否定することは出来ない。
 逆に言えば真っ向から否定する人間は人類の知識や進歩がここでストップとしてると決め付けているようなものだ」
「いや、確かに一理あるけど別に俺は議論したいわけじゃないんだ」
「じゃあどういうわけだ?」
「…沈黙に耐えられない」
「…ああ…」

エンプティはう〜んと唸ると何かを考え出した。
そしておもむろに口を開いて言い出した。

「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつ…」
「なんでいきなりじゅげむを言い出すんだよ!!」
「沈黙に耐え切れないと言ったから何か喋っておこうかと…」
「だからっていきなりじゅげむなんか延々と喋られたら余計嫌だわ!」
「じゃあ何を言っていればいいんだ」
「いや、普通にしとけよ、普通に」
「普通…」

さっきと同じようにエンプティはう〜んと唸りだした。
そして今度は俺に向かって言って来た。
16 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:16:33.47 ID:wXYE.bwo
「すまない、普通ってどうすればいい?」
「え…いや…だから普通に友達の部屋にいるような感じで」
「…例えば?」
「例え…ええと…一緒にゲームしたりくだらないことを話したり…」
「それが普通なのか?」
「…多分」
「じゃあゲームをしよう」
「じゃあって何だよ」
「それが普通なんだろ?ところでゲームって何をすればいいんだ?」
「待て、お前はどこまで本気なんだ」
「どこまで、というのがいまいちわからないが俺は仕事で手を抜いたことがない」

なんだコイツ、もしかしてこれが天然というやつか?
それにしては全く可愛げが無いぞ。

「よし、ゲームをしよう…しかしゲームか…
 そういえばこの前テレビで見たゲームがあるな」
「どんなのだよ」
「ゴールドラッシュゲームと言って
 貸し付けられたのは1億円と相手国の金庫に3億円の合計4億円分の金塊をプレイヤーは光の国と炎の国に分かれて奪い合って…」
「ライアーゲームじゃねぇかよ!!そんなもんここで出来るか!!」
「…ここで出来るものか…」
「もういいから!考えなくていいから!!」
「そうだ、これならどうだ」

そう言いながらエンプティはカバンから何かを取り出してそれを机の上に置いた。
ゴトリという音がして目の前には黒光りする…これはいわゆる拳銃というやつでは。
17 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:17:14.27 ID:wXYE.bwo
「…これ本物?」
「弾を1発だけ残して交互にこめかみに当てて引き金を引いて…」
「ロシアンルーレットかよ!もうゲームの域超えてる!」
「1/6の確立ぐらい天眼を持つ君には平気だろう」
「ちっとも全然ノット平気!!つーか下手したら死ぬから!!」
「…そうか、死ぬのは困るな」
「ああもういいから…俺寝るわ」
「じゃあ俺はどうすれば?」
「静かにジッとしてればいいよ!!」
「む…」

エンプティは微動だにしなくなった、まばたきすらしなくなった。

「…いや、そこまで静かにジッとしなくてもいいんだけど」
「注文が多いな」
「…よしわかった、リラックスしてそこにいればいい、オーケイ?」
「了解した」

そういうとエンプティは正座から足を崩した。
…1から10まで説明しないとわからないのだろうかコイツは…
そう思いながら俺はベッドで布団にくるまった。
しかし突然銃を出して来たのにはびびったな…何で持ってんだろ…

「それじゃ俺はちょっと寝るからな」
「おやすみ」
「ああ、おやすみ…」

寝てる間に部屋をどうこうされたりしないかと心配になったが
やはり疲れていたのであろう、すぐに俺は深い眠りへと落ちていった。
18 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:20:01.29 ID:wXYE.bwo
「雪之助、やっぱりここにいた」
「…お鈴か」
「んっしょ…んっしょ…」
「落ちるぞ、ほら、手」
「ありがとう…でもなんでいつもここにいるの?」
「ここは空が近いからな」
「理由になってないよ?」

「…聞いたか?お鈴が妾になるとよ…」
「…知ってるよ」
「いいのか?」
「そりゃいいに決まってんだろ、相手は一国の城主だぜ
 お鈴の器量でよく行けたもんだぜ、ハハハ」
「そうじゃなくて…お前の気持ちのことだよ…」
「…どうにもならんよ、俺はただの浪人だ
 あいつを幸せにしてやれるのは…俺じゃない」
「…雪之助」

「貴様ここをどこだと思っている!」
「お鈴を出せ…!邪魔翌立てするなら…斬る!!!」
「曲者めが!」
「浪人風情が!1人でこの人数に立ち向かえると思っているのか!!」
「何人いようと知ったことか!!
 邪魔する奴は全員斬り捨ててやる!!!」

「はぁ…はぁ…俺は…俺はぁ…」
「クソ…ちくしょう…どうしてこんな結末に…」
「お鈴…俺は…こんな…生などいらないんだ…」
「生き長らえて…何になるというんだ…」
「チックショォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
19 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:21:56.56 ID:wXYE.bwo
「…き…い…ゆき兄!!」
「ん…?」

エンプティの声が聞こえて目を開ける。
しかめっ面のエンプティが俺を見ていた。

「…なんだ…どうした?」
「酷くうなされてたぞ」
「…夢を…見ていた…」
「怪異ではなくて?」
「…わかんねぇ、でもなんかヤケにリアルな夢だったな」
「どんな夢だったんだ?」
「…おぼろげだけど…悲しい夢だったような気がするよ」

…雪之助と呼ばれていた男、どことなく俺に似ていたような気がする
とはいえ夢は夢だ、どうせ昔見たテレビか何かの影響であんな夢でも見たんだろう
しかし中途半端に起きてしまったな、今から寝なおす気にもなれない
時計を見ると俺が寝始めてから4時間ぐらいが経過していた。
そこでふと気になった。

「エンプティ…お前4時間何やってたんだ?」
「リラックスしていた」
「…どうやって?」
「座って畳の目の数を数えていた」
「…それはそれは…」

…今更エンプティの行動にいちいち突っ込む気力も起きない
時刻は深夜2時過ぎ、草木も眠る丑三つ時ってところか。

「腹減ったな…コンビニいってこようかな」
「行って来ようか?」
「んー、頼もうか…な?」

なぜか猛烈に嫌な予感がした。
背筋を無数の虫が這い上がるような感覚。
この感覚、同じだ、あの時と…

「待って…俺から離れないでくれ…」
「どうした?何か感じるのか?」
「…見えないが…何か感じる…」
「どこから?」
「…」

俺は意識を集中させた。
部屋は静寂に包まれる、俺とエンプティの小さな呼吸音しか聞こえない。
…いや、何だ?微かな…音…カリカリ…カリカリ…
20 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:24:33.44 ID:wXYE.bwo
「…音だ、音が聞こえる」
「音?」
「こっち…」

俺は耳を澄ませて音の方向へと近づく。
か細く、今にも消えてしまいそうな小さな音を必死にたぐりよせるように。
音は、タンスと壁の隙間から聞こえてきていた。
疑念が確信に変わる、ここに何かがいる。
そっと、俺は壁に顔を寄せる。
暗い、タンスと壁の僅かな隙間に注目する。

「うおぁッ!?」

俺は大声をあげて後ろへと飛びのいた。
今のは…!?

「どうした!?」
「目が合った…!隙間から何かが覗いてた!」
「…隙間?」

エンプティがタンスと壁の隙間に目を向けた。
そこから漂う異様な雰囲気、それに飲まれぬように心をしっかりと保つ。
そしてエンプティはゆっくりと隙間を覗いた。

「…何もいないぞ」
「そんな…」
「いや、だが君が何かいたというなら何かいたんだろう…それか俺には見えないかッ!?」

それは信じられない光景だった。
壁とタンスの僅かな隙間からエンプティの顔に向けて勢いよく飛び出した白く光る凶器。
咄嗟に顔を逸らしたエンプティの頬に一筋の赤い血が滲む。
包丁を持った白い手。物理的な法則を無視したようにそれは壁とタンスの隙間から突き出されていた。

「なんだこれはッ…!?」

エンプティが驚愕の声をあげた瞬間だった。
タンスと壁の隙間から感じていた嫌な気配が爆散するように部屋全体を包み込んだ。
同時にあのカリカリという音がそこらじゅうから聞こえ始めた。
もう意識を集中させなくてもわかる、小さな不確かな音とて四方八方から聞こえればそれは確かな音として鼓膜を揺らす。
部屋のあらゆる場所から俺達を包むように聞こえる音。

カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
21 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:28:59.36 ID:wXYE.bwo
「エンプティ!この部屋はまずい!!」
「わかった!」

俺とエンプティは部屋を出ようと入り口へと向かって走り出した。
その瞬間、ベッドと床の隙間から何かがズルリと這い出してきた。
髪の長い人ではないかのように白い肌を持った女が。
刹那、ドアの隙間、床に置かれた物と床の隙間、あらゆる物の隙間から包丁を持った白い手が突き出された。
あらゆる隙間から、明らかな殺意を持った凶器が飛び出してきた。

「なっ…!?」
「ゆき兄!危ない!!!」

エンプティに突き飛ばされて突き出された包丁は俺の身体を掠めた。
視界には無数の白い手を包丁。

「ゆき兄!隙間だ!隙間に気をつけろ!!!」
「無茶いうな!室内だぞ!隙間がどれだけあると思ってるんだよ!!
 クソ!こんなことなら小まめに掃除しとくんだった!!」
「…!部屋の真ん中によれ!!」

叫びながらエンプティは周囲に散乱していた雑誌や服やら
とにかくあらゆる隙間を生み出す物を部屋の隅に手や足を使って弾き飛ばしていった。
そしてポッカリ空いた部屋の中央の何も無い空白地帯、そこに俺とエンプティは飛び込んだ。

「これで…どうだ!」

確かに周囲から隙間は消えてあの手が出てくることは無くなった。
だが同時に壁際に乱雑に散った物のせいで逆に物と物とが重なり合い更なる隙間を生み出した。
周囲を埋め尽くす白い手、そしてその手が持つ包丁全ての切っ先が俺達に向けられてユラユラと動いている。

「エンプティ…あんまり状況が好転してない気がするんだが…」
「…いや、恐らく大丈夫だ…目測を誤っていなければ…」
「ウウ…」
「!?」

女の呻き声が聞こえた。
そしてユラユラと切っ先を揺らしていた無数の包丁が部屋の中央にいる俺とエンプティに向かって突き出された。
あらゆる場所から突き出される包丁、それはもう逃げ場が無かった。

「エンプティィィィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
「くっ…!!」

カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
22 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:31:42.19 ID:wXYE.bwo
「…はぁ…はぁ…」
「…目測は、間違ってなかったようだな…」

全ての包丁は俺達に当たる寸前で止まっていた。
いや正確には止まってはおらずに必死に俺達を貫こうとしているが
何かに押えつけられているように俺たちには届かない。
しかし視界のほとんどが包丁の切っ先ってのは中々キツい光景だと思う。
まるで拷問器具の中にいるようだ。

「…こいつはあらゆる隙間から無数に現れるようだが…
 逆を言えば出現している隙間から僅かな距離しか存在することが出来ないようだ
 この部屋がもう少し狭かったらアウトだったろうな…」
「…お前、全部計算して物を弾き飛ばしてたのか?」
「かなり厳しかったがな」
「…すげぇな」
「君に言われると、照れるな」

ギリギリではあったがなんとか命は繋いだ。
だが重要なのはここからだ。
こいつは俺が今まで見てきた"在りえない者"とは明らかに異質な存在だ。
エンプティにも見えていることだけでも充分だが、生きている人間の身体を直接傷つける程、"こちら側"に干渉できている。
逆に言えばそこまで干渉できているからこうしてエンプティにもしっかりと見えているということだろうか。
そして、ズキリと眼に痛みが走る。

「グッ…!」
「ゆき兄?」
「眼が…痛む…」

カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
23 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:34:25.59 ID:wXYE.bwo
外から怒号が飛び交い、人々の叫び声と泣き声が聞こえる。
女は何が起こったかわからない。怯えてる。
窓から差し込むのは月明かりじゃない、赤く燃える紅蓮の業火。
大きな音がして、天井が崩れ落ちる。

…押し潰されて…でも[ピーーー]なかった…
潰れた家と地面の…僅かな隙間…生の死の狭間に…彼女はずっと…
恨みを…抱えて…隙間に…ずっと…死ぬまで…
自らの身体を抑える柱を削ろうと…
爪が折れて…剥がれて…指先から骨が露出しようとも…

カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…

死んでも…削り続けて…
いつしか、彼女は隙間から見える世界を憎んで…
長い時間が過ぎて…いつしか彼女は隙間に生きている存在を引きずりこもうとして…

「お願い…ここから出して…
 もう嫌なの…誰か私に気づいて…」
「…」
「どうして誰も私に気づいてくれないの…?
 気づいて!気づいてよ!!私をここから出して!!出してよぉぉおおおおおおおおお!!」
「…」
「…どうして私だけ…ここにいなくちゃいけないの…?
 1人は嫌だ…だから…だから…」
「やめろ!生きている者を引き込んでも君はもう…」
「黙れぇッ!!!!!!!!!!」
「!?」

吹き荒れる感情の風と言ったところか。
その爆発的な感情に気圧される。

「…お前か…お前が私を閉じ込めているのか…
 この暗闇に…この暗闇を…お前も味わえ…!!」

彼女の手には包丁が握られている。
彼女は気も狂わんばかりの闇の中で心を壊し、死してなおも隙間に囚われた。
そして生まれる全ての対する圧倒的な憎悪と殺意。
人を傷つけるという強すぎる意志が生者の5感に干渉し傷をつける。
最後は自分と同じ狭く暗い隙間へと引きずり込む…
それが…怪異"隙間女"…

「…こっちに…おいで…
 早く…こっちに…」
24 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:36:59.42 ID:wXYE.bwo
「…あ…ああああ…」
「…見たのか」

…我に返ると、俺は部屋の真ん中で膝を突き涙を流していた。
もう、あの無数の手は消えていて、部屋には静寂が戻っていた。

「大丈夫か?」

エンプティが俺の身を案じている。
…大丈夫…俺は死者に飲まれたりしない…
死者に飲まれれば死ぬだけ…

それでも、死の瞬間の感情や全てを見て、知ってしまうことはそんなに軽いものじゃない。
どんな強い人間でも死ぬ瞬間の感情はあらゆる抑制から放たれ、その本質は剥き出しになる。
圧倒的な無数の感情が俺の心に入り込み、激流の如く俺の思考を押し流していく。
…今のところ耐えることは出来ている。
だが、俺には毎回耐えられるという自信が無いのも事実だ。
…今それを考えてもしかたない。

俺は生きるために自分が出来ることをするだけだ…
しかし彼女の心はもう完全に壊れきっている。
どんな言葉を紡いでも届かない、彼女はただ人を殺し続けるだけの存在に成り下がっている。
そうしていないと彼女は自分という存在を保てないのだ。
だから前とは違う、俺がどんなに彼女と心を通わせようと彼女を止めることは出来ない。

「…エンプティ…このままじゃ俺は…」
「大丈夫だ」
「何が大丈夫っていうんだよ!彼女は"在りえない者"だぞ!
 チンピラやヤクザに絡まれたのとはワケが違うんだ!
 触れれもしない!言葉も届かない!隙間なんてそこらじゅうに無数に存在する!!
 殺されるのを待つだけじゃないか!!!」

思わず声を張り上げてしまった。
だが事実だ、結局本気で"在りえない者"に狙われた人間は神に祈るしかない。
それでもエンプティは静かに言った。

「手はある」
「坊主にお経でもあげてもらうか?牧師に悪魔払いでもしてもらうか?
 それとも寺生まれにでもアイツを吹き飛ばしてくれって頼むか?」
「どちらかと言えば後者だな」
「は?」
「最も、俺は寺生まれじゃないけどな」

そう言ってエンプティは静かに笑った。
この自信は一体どこから沸いてくるのか、と思ってるとおもむろにエンプティは俺に聞いてきた。
25 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:39:23.75 ID:wXYE.bwo
「で、結局あれは一体どういう怪異なんだ?」
「…あれは元々かなり古い時代の人間だよ
 …空が赤かったから火事だろうか、それもかなり大きい…
 家が崩れて…瓦礫の隙間に彼女で動けなくなって誰にも気づかれず
 やがて全てを恨みながら死んでいった」
「焼け死んだんじゃなくてか?」
「ああ」
「家が潰れた…か…古い時代…」
「…そういえば夢で見た家の作りに似てたな…江戸時代…?」
「江戸…火事…火消しか?」

エンプティの言葉に頭の中でパズルのピースがかっちりとはまったような気がした。
江戸時代の火消しは火の広がりを止めるために火元の周りの家を叩き壊していた
混乱の中で叩き潰した家にもし人がいたとしてもそれは考えらない話ではない。
だとしたら彼女の憎悪も納得できる。彼女は事故で死んだわけじゃない、故意ではないにしろ人に命を奪われたようなものだ。
そして隙間の中で生きながらえ、彼女はそれを許容できなかった。

「…誰かを救うことが誰かの命を奪ってしまう、か」
「1人で納得しないでくれるか?
 わかったなら説明してくれ」
「ああ、悪い」

俺はエンプティに自分の考えを言ってみた。
頷きながら最後まで聞いた後、しばらく考えてエンプティは納得したらしい。

「…なるほどな、確かに合点が行く話ではある」
「ああ、多分アタリだと思う」
「しかし生きている存在全てに矛先が行くのなら諦めて他の人間の下に行くのではないか?」
「…無理だろうな、"魅入られる"とか"取り憑かれる"とかいう言葉があるだろ
 あれはそういう類だ、1度標的を決めたら絶対に逃がさないような奴だよ」
「天眼に引き寄せられたというわけか」
「ん〜…それはわかんねぇ、たまたま波長が合ったとか目についたからとかかもしれねぇしな」
「それならあの怪異はまた来る、と?」
「来る」

断言するほど言い切れたのはやはり見ることで知ったから。
天眼は全ての本質を見透かす、そして俺の見た物が本質というのなら
彼女の本質はもはや、殺意と憎悪と執念でしかない。
極めてシンプル、しかしそれ故に非常に厄介な存在だった。

「ならここは場所は悪い、移動しよう」
「どこに?」
「お楽しみだ」
26 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:42:27.94 ID:wXYE.bwo
エンプティはさっさと部屋から出て行ってしまった。
若干イラっとしたが俺は素直についていくことにした。
そして車に乗り込んでエンプティは物凄い勢いでアクセルを踏んだ。

「ちょ、ちょ、はええよ!!」
「事故ったことはない」
「なんだそのDQN的な言い訳!!」

正直どんな怪異よりも恐ろしいドライブを味わった。
いつでもドアから飛び出せるような体勢を取っているとやがて車は山の中に入った。
暗く、狭い山の中のボロボロの道路は否応なく嫌な雰囲気を助長させる。
そして車が停止した。

「ここは?」
「EDEN機関が昔使ってた野外実験場の跡地だ
 もっとも、機密保持のために役目を終えた瞬間に全て取り壊され今は広いただの空き地だ」

俺とエンプティは車から降りた。
…なるほど、確かになんのことはない背の低い草が生えてるだけの広い原っぱだ。
隙間という隙間なんかここには無い。

「ずっとここにいるってか?」
「まさか」

エンプティは車のトランクをあけてそこからよくわからないものを色々取り出した。
具体的に言えばハニワのような物体に変なフィギュアだったり龍の絵が描かれた鉄甲だったり…
こいつ一体何なんだろう…

「よっと…」

おもむろをそれらを空き地の真ん中に積み上げる。

「これで隙間が出来たぞ」
「なるほど、出てこれる場所をあえて1つ作ったのか」
「そういうことだ…ふむ、空が白んできたな」
「…腹減ったな」
「買出しに行ってきてやるよ、君はここにいろ、ここなら安全だ」
「…こんな何も無い場所で何をしていろと」
「死ぬよりかはマシだろ?」
「まぁな」
「じゃあ行ってくる」

エンプティは車に乗って土煙をあげながら行ってしまった。
俺はとりあえずその場に座った。

「ふぅっ…」

夜と朝の狭間、それはどことなく俺の好きな昼と夜の狭間に似ている。
なぜ俺はこの時間が好きなんだろうか?
昼でも夜でもない、不安定な境界の世界…
最も心が落ち着く時間…不思議な気持ちになる…
27 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:45:28.27 ID:wXYE.bwo
カリカリカリカリカリカリ…

「!?」

あの音が聞こえた。
まさか、もう来たっていうのか!?早過ぎる!!
焦っている俺を尻目に、目の前に詰まれた物の隙間からズルリと手が伸びてくる。
落ち着け、ここに隙間はあそこしかない、俺には届かない。
白い手と包丁がユラユラ揺れる。
だが俺には届かないと悟ったのか手の動きが止まった。

「はは…どうだ…」

安堵した、そして心に生まれた油断。
それを見透かしたように、怪異は動いた。
ドゴッ!という重い音と共に包丁が地面に突き刺された。
その後、ゆっくりと土をパラパラと撒き散らしながら地面から引き抜かれた刃。
そこに、隙間が出来ていた。

「こいつ!?」

状況を理解するのに数秒かかった、その僅か数秒の逡巡、それが退路を断つ。
地を突いては抜き、増え、突いては抜き、増える。
あっという間に周囲の地面には無数の隙間が現れる。
そして、まるで俺を飲み込もうとする津波のような殺意の群れ。
逃げ場が、無くなった。

「クッ…!?」
28 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:48:48.75 ID:wXYE.bwo
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ…

音がどんどん大きくなる。
まるで彼女の感情を表しているように、喜んでいるようにも聞こえた。
地面からまるで生えるように立つ無数の手が海草のようにユラユラゆれる。
その奥、俺の正面に、彼女はいた。

「…お前も…こっちに…来て…」

口からゴボゴボと血を流しながらそう言い放つ彼女。
零れ落ちる血が自らの身体を赤く染めていく。
その表情、それはもう人のものではない。
恐怖が凝縮された塊そのもののような、見ているだけで心を打ち砕かれそうになる。
彼女の目が、一段と見開かれた。

「こっちに来いぃぁぁがぁあああぁぁぁあぎぃぃぃいいいいい!!」

もはや声にならない絶叫、その声に導かれるようにユラユラと動いていた全ての手がその動きを止め
包丁の切っ先を俺に向けた。
そして、刃が放たれた。
酷くゆっくりと向かって来るその包丁。
俺は全身を突き貫かれて死ぬということは容易に想像出来た。

死にたくない。
俺は死にたくない。

眼に、激しい痛みが走った。
それは刺されたからではなく、自らの内から来る者と理解出来てた。
頭の中の回線がショートするような感覚、視界が真っ白に染まる。
そして何かが浮かんだ。過去の情景…夢で見た世界…
29 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:50:37.21 ID:wXYE.bwo
「お鈴…俺もすぐにそっちに行く…」
「…これはこれは…」
「誰だッ!?」
「まさかかような場所でこのような運命を持つ者に会えるとは…」
「貴様は…?」
「我のことなどどうでもよい…それよりもお主、自らの運命に抗ってみたいとは思わぬか?
 運命を変えたいと思わぬか?理不尽な運命を壊したいとは思わぬか?」
「何を世迷いごとを…」
「そうじゃ…確かに世迷いごとじゃ…
 可能性は限りなく零に近い…じゃなが決して零ではない…」
「…」
「もしもお主が死すらいとわぬと言うのならば…
 運命を捻じ曲げ…失った者を取り戻し…添い遂げることもできるやもしれぬな…」
「…俺はもう、生きる意味も無い…」
「その想いを肉体を失っても、魂に刻み付け続けて行くならば…
 我はお主の助けになろう」
「…俺は…」
「覚悟が決まったなら、我に会いに来るがいい…
 我はいつもこの山にいるのでな…」
「…貴方の名前は?」
「我の名は…」

――仙師、白蓮。人は仙人や天狗と我のことを呼んでおる。――

【もうこの人生に意味など無い
 ならば俺は…次の人生に希望を繋ごう。
 そして、必ず運命を捻じ曲げてやろう】
30 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:52:31.47 ID:wXYE.bwo
「はぁっ…はぁっ…何だ…今のは…?」

今自分が見たものは何だったのか
いや、そんなことよりも俺はどうなった?死んだのか?
そう思って周囲を見渡す。
…状況は好転していない、いや、むしろ好転しているのだろうか。
なぜか全ての包丁は俺に届く前に止まっていた。
しかし消えているわけではない、俺は相変わらず包囲されているのだ。

「くぁッ…!?」

動こうと思った瞬間に酷く眩暈がした。
とてつもなく気分が悪く、今にも吐きそうだ。
と、その瞬間だった。
背後から強烈な光が俺を照らした、そして土を削る音とエンジンの音。
振り向かなくてもわかった、何が来たのか。

「エンプティィィィイイイイイイイイイイイイイ!!!!」

叫ぶと同時に、俺の真横を風が突き抜けた。
排気ガスの臭いが鼻を突く。
車が、俺の横を突っ切っていき、山の斜面へと消えた。
そして間を置いて辺りを揺るがす爆発音が響いた。
周りの木々から無数の鳥たちが飛び上がる。

「手を伸ばせ!!」
「!?」

エンプティの叫び声に思わず手を伸ばした。
がっしりとその手が掴まれ、俺の身体が宙に浮き上がった。

「うわっ!?」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

そのまま俺は投げ飛ばされた。
片手で俺を引き上げて投げ飛ばすってどんな腕の力してんだよ!
反転する世界、そこに見えた物。
エンプティに向かう、無数の包丁。

「逃げろ!!逃げろォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「逃げないさ」

その声を聞いた直後、地面に叩きつけられ土にまみれながら転がる。
辺りに音が響いた、とても大きな音が。
叫び声が聞こえた、だがそれはエンプティの声ではなかった。
地獄の底から聞こえるような声、その声の主は…彼女しかいない
31 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:55:20.08 ID:wXYE.bwo
「ぐっ…つぅ…」

クラクラする頭を地面に叩きつけられた痛みを堪えながら俺は倒れながらエンプティを見た。
エンプティは立っていた、その足元に無数の腕が力なく横たわっていた。
風が火薬の臭いを運んで来る。
その臭いはエンプティの両手に持たれた2つの銃より放たれていた。
白い煙を風に散らす、2つの銃。

「あれは…!?」
「…この世で唯一、"在りえない者"に物理的に干渉し、消し去ることの出来る物…
 それがEDEN機関が研究の末に作り出した2丁の霊銃【ニルヴァーナ】」
「物理的に干渉…そんなこと…出来るのか…?」
「見ての通りだ」

信じられない、だが現実にエンプティは隙間女の攻撃をかい潜った。
…死者すらも殺しうる武器の創造…
それが本当なら…EDEN機関は最早神の領域に達している
人の智が自然の摂理さえ超えたっていうのか?

「つっ…」
「ゆき兄、そこでじっとしていろ
 すぐに片付ける」

そう言うとエンプティは銃を隙間女へと突きつけた。
隙間女は銃口を見つめている。
未知なる存在であろう自らを傷つける物体。それに恐れを成したのか。
それとも、本当は彼女は消え去ることを望んでいたのだろうか。

「黄泉へ還るがいい」

冷たく言い放たれたと同時に響いた発砲音。
銃より放たれた弾丸は、彼女の眉間を貫いた。
衝撃により頭が反り返り、彼女はその場に崩れ落ちる。
同時にエンプティを囲んでいた無数の手がまるで霧のように消え去った。
エンプティはゆっくり彼女に向かって歩き出し、呻き声をあげる彼女へともう1度銃を突きつけた。

「消えろ」
「待て!!」
「…」

俺の制止の声でエンプティはこちらを振り返る、それでも銃を彼女から離さない。
俺はよろめきながら立ち上がり、彼女の下へと行った。

「危険だ、離れろ」
「大丈夫…もう何も出来ないみたいだ…」
「…痛いよ…暗いよ…私を…出して…」
32 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:56:35.45 ID:wXYE.bwo
身体を小さく丸めながら、まるで子供のように泣きながら震える彼女。
…彼女はどれほどの苦痛を味わってきたのか。
小さな頃、オシオキで暗い部屋に閉じ込められた時
僅かな時間でも怖くて仕方が無かった。
それを遥かに上回る想像を絶する苦痛を彼女は味わった…
死ぬまで…そして死んでからも…

「…顔をあげて」
「私を…出して…」
「…もう、大丈夫だから」
(ゆき兄の眼が…赤く…光っている?)

俺はそっと彼女の手を取った。
力のまるで入ってないその手が、俺の甲を撫ぜる。
そして、強く握った。

「暖かい…とても…」
「…よく、頑張ったね」
「私を…救ってくれるの…?
 ここから、出して…くれるの…?」
「…生きようとする意志を、心の底から叫ぶんだ
 憎しみも殺意も何も無い、純粋な生きようとする気持ちを叫びだして」
「…私を…」


――私を助けて!!!!!!!!――



「おい、今何か声が聞こえなかったか?」
「ああ、俺も聞こえた」
「助けて!私はここにいる!!私を助けて!!!!」
「ここだ!この隙間だ!!」
「娘っこがこの隙間にいるぞ!!早く助けてやらんと!」
「私は…助かったの?」
「もう大丈夫だ!!手を伸ばせ!」
「…私はやっと、この暗闇から…」
33 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:58:25.27 ID:wXYE.bwo
彼女の身体が塵のように消えていく。
その顔から憎しみも殺意も消えていた、穏やかな顔で薄っすらと微笑んでいた。
唇が、小さく動いた。

「ありがとう、ございました…」
「…」

やがて、朝日が俺たちを照らす頃
彼女は完全に消えた、辺りにその存在を確定づける証拠を大量に残して。

「…終わった」
「…みたいだな」

俺は立ち上がった。
いつの間にか気持ち悪さが嘘のように消えてとても清々しい気分になっていた。
俺はエンプティのほうを向いた。

「来るのがちょっと遅かったな」
「早いほうだとは思ったがな」

俺は笑った、それにつられたのかエンプティも笑った。
初めて、こいつの笑い顔を見た気がする。
しばらく俺達は笑いあって、エンプティが言った。

「そういえば車が大破したからな…歩いて帰らないといけないな」
「つーか、なんで大破させるんだよ」
「止めて降りてたんじゃ間に合わないと思って飛び降りた」
「…エンプティ、お前すげぇな」
「それを言うのは2度目だな」
「凄いって思ったときは何度でも素直に凄いって言えばいいんだよ」
「そうか、それなら俺はすでに何百回と君に凄いと言わなければならないな」
「…それはまた今度にしてくれ」
「了解」
「それじゃ帰りますか、歩いて…」
「大丈夫なのか?」
「ああ…それにな、この朝日をもう少し眺めていたいからな
 見ろよ、まるで長い間狭い隙間に閉じこめられて…そこから出てきたような眩しい光だ」

俺達は原っぱを後にしようとした。
最後に後ろを振り向くと、深々と頭を下げた彼女の姿が見えた。
…ありがとう、か
それなら俺は生と死の隙間から抜け出て、新たな世界に旅立つ君にこの言葉を送るよ。

いってらっしゃい、と。
34 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/20(土) 22:59:05.27 ID:wXYE.bwo
「…霊と心を通わせ、解き放つとはな…
 素晴らしい、やはり彼は未知数だ」
「たった2回の怪異の侵食で彼の心境に何かしらの変化が起きているようです」
「…彼は昼と夜、朝と夜などの狭間の時間が好きだという
 なぜかわかるか?」
「いえ…」
「推測するに…それは彼自身が生と死の狭間の存在だからだと思うのだよ
 どちらに転ぶか、誰にも分からん」
「…ハクレイ様にもですか?」
「現状、彼は生に傾いているようだがな
 もしも死者と心を通わせ続け、あちらの世界を選んだなら…」
「…それは私が止めます」
「それでいい…それでな…」
「それともう一つ報告が…
 彼の眼が薄っすらとですが赤く光っているのを確認しました」
「…なるほどな、どうやら無意識下では使い方も理解してきているようだな…
 では引き続き護衛をし続けろ、彼のそばで彼の天眼をしっかり見極めて来い」
「…了解しました」

隙間女 完
35 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/21(日) 01:02:52.90 ID:7MgmQs2o
ゆき兄おつ!

エンプティのリラックスの仕方ワロタwwwwwwwwwwwwwwwwww
モンハンやらせとけばいいと思うよwwww
36 :そら :2010/02/21(日) 02:25:47.05 ID:Qg2CSUDO
今回は戒名組は一切出ないのかな
37 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/21(日) 06:25:34.56 ID:zPgcFs6o
ふぅ寝た寝た

>>36
いや出るよ、でまくり
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 06:15:45.99 ID:w6EqGkAO
えんだああああああああああ
39 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/02/22(月) 20:59:16.44 ID:hy7rKtk0
いああああぁぁぁぁぁああああ
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/22(月) 23:39:14.07 ID:1G1VlqYo
http://imepita.jp/20100222/851140
この映像をよーく見てほしい
お気づきだろうか?

そう、擬態したアレが
隠れているのである。

そこで今夜はこのような
驚くべき能力を持った生き物たちの
世界へ皆さんを招待しません
41 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/22(月) 23:59:47.28 ID:YUbadkQo
>>40
全然擬態してねぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
42 :そら :2010/02/23(火) 02:59:54.08 ID:lDVoU6DO
>>40
世界wwwwwwまwwwwるwwww見wwwwえwwwwwwww
43 :そら :2010/02/27(土) 02:48:20.10 ID:3.APzIDO
明日は入社試験です
頑張ります
44 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/02/27(土) 16:38:57.32 ID:/8orazQo
今日のうpは諸事情により落とさせていただきます!!
アンバサ!
45 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/02/27(土) 17:37:55.03 ID:mDBTEsDO
アンバサ…?



炭酸白やん汁とな…?
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/04(木) 01:09:31.96 ID:Exa7jpMo
閑散としたスレに中堅ゴッドイーターが参上!
http://imepita.jp/20100304/039390

▼『ゴッドイーター』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:PSP
■ジャンル:ACT
■発売日:2010年2月4日
■価格:5,229円(税込)
47 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/04(木) 01:10:48.60 ID:iYaTSMAo
クロワロタwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
48 :そら :2010/03/04(木) 01:12:39.29 ID:MTQgrUDO
>>46
とりあえずこの人には勝てないなってことしか分からない
49 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/04(木) 01:18:42.74 ID:iYaTSMAo
あまりの衝撃に誤字ってたが気にしない事にした
50 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/04(木) 01:24:08.03 ID:Exa7jpMo
貼るはずのURLを間違えちゃった☆

http://www.godeater.jp/
※音量微注意
51 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/04(木) 01:54:44.86 ID:iYaTSMAo
>>50
橘サクヤ・・・だと・・・?



( 0ww0) <ダディャーナザァーン!!

       |/H\
       | 0M0;)
       |⊂/ジー
     ≡ | /
52 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/04(木) 01:56:13.66 ID:iYaTSMAo
ああ・・・うっかり全角・・・
53 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 21:49:53.64 ID:C8aZaP.o
ああ、土曜
そう、土曜

今週は落としません
54 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:00:35.34 ID:C8aZaP.o
最近、意味深な夢をとにかく見続けている。
所詮夢は夢で現実ではないと言っても俺の見る夢はあまりにもリアルで現実とまるで遜色が無い。
これも天眼の影響とでも言うのだろうか。

「ゆき兄、これは何だ?」
「ルービックキューブだよ、全部の面を同じ色に合わすんだ」
「ふむ…」

エンプティはこのごろ俺の部屋の物で遊ぶようになった。
段々わかってきたがこいつには一般的な知識や常識という概念が欠落しているらしい。
なんでそうなったかは聞いたこともなく知りたくないが、好奇心旺盛な子供というのはこんなもんなんだろうなと思う。

「赤…黄色…中段…上段…白…」

あれから数週間ほど立ったが次の怪異は襲ってくることはない。
そのおかげで少々心に余裕も生まれた。
だがそうなると今度は自分のこと、つまり天眼のことと意味深な夢が気になってしょうがなかった。
一番記憶に残っているのは江戸時代で俺は雪之助という浪人になっている夢だった。
それは他の夢に比べて一際鮮明で起きた後なぜかとてつもなく心を揺さぶられる。
…何度も見るうちに雪之助がとても俺に似ていることに気づいた。
似てるといっても外見とか表面的なものではない、いや顔も勿論似てるんだが。
もっとこう魂的な感じ、自分じゃないとわからないような感覚的な似ている、といったものだった。
もしかしてあれが前世、というやつだろうか。
前世という概念を信じていないわけじゃないがそれならなぜ突然夢に見だす?というのが俺の最大の疑問だった。
そしてもう1つの疑問点。
最初は断片的だった夢が一つの時間軸に沿うように続いていくことだった。
つまるところそれはとてもリアルな延々と続く映画を見ているようなものだった。

「…出来た…」
「それならバラしてもう1度やってみろよ…俺は寝るぞ」
「上段…中断…白…青…おやすみ」

俺はルービックキューブに集中するエンプティを放ってベッドに潜り込んだ。
今日も、夢を見るのだろうか。
55 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:01:59.79 ID:C8aZaP.o
怪異天眼異聞録

【怪異3 〜四辻〜】
56 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:03:34.83 ID:C8aZaP.o
「…今日も絶好の昼寝日和だねぇ」
「おい!雪之助!いるか!」
「前言撤回…いるぞー」
「失礼する」

やや乱暴に扉がガラガラと開けられた。
立て付けが悪くなってるので途中でつっかえたがそれを無理やりこじ開けようとしている。
ガタン!と大きな音がして扉が開いてそこから現れたのは腐れ縁の高島だった。

「…お前、壊すなよ」
「昼間っから寝転がって…」
「別にいいじゃねぇか、やることもないんだ」
「…いつまでそうして腐っているつもりだ?」
「はっ」

俺は起き上がって胡坐をかいて高島に向き直った。
高島は律儀に正座をして俺に言った。

「…いいか、俺は何も嫌味を言いに来ているわけじゃない
 友達として純粋にお前が心配なんだ」
「そりゃどうも」
「いくら天下泰平の世の中だといっても仕事もせずに昼間から家で寝ているような浪人生活…
 何かの拍子に明日にもその身が果ててもおかしくはないんだぞ?」
「気が向いたら仕事でも探すさ、大工とかいいんじゃねぇか?
 …いや、俺には似合わんか」
「茶化すな」
「けっこう真面目なんだがな」
「…俺だってお前が何の取り得もないただの浪人だったら好きにしろと思うさ
 だがお前の剣の扱いには天賦がある、俺はその才能が腐っていくのを黙って見ていられないんだ
 どうだ、俺が殿に直接お前のことを紹介してやるから一緒に…」
「…高島、お前さっき自分で言ったろ
 今は天下泰平の平和な世の中だ、人殺しの腕なんて時代は欲しがっていない」
「剣は人を[ピーーー]ためのものじゃない、誰かを守るためのものだ!」
「守るためなら斬ってもいいと言うのか?
 …とにかくだ、俺はもう剣を振るう気は無い」
「お前…」
「今日はもう帰れ」

高島は苦虫を噛み潰したような顔になり、ゆっくりと立ち上がった。
去り際にこちらを向かずに一言だけ呟いた。

「また来るからな」

そして立て付けが悪くなったドアを乱暴に開けて出て行った。
俺は高島が帰ったのを見届けるとまた布団に横になった。
57 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:05:54.79 ID:C8aZaP.o
日もすっかり落ち、辺りが宵闇に包まれた頃、俺は寂れた街道を歩いていた。
聞こえるのは鳥の声と虫の声、そして何処からか響く犬の遠吠え。
辺りは足元を照らす提灯の灯り以外は真っ暗だった。
不気味な雰囲気を意にも介さず歩いているとやがて暗闇の中にポツリと灯りが見えた。
近づくとそれはこんな人通りも無い道にも関わらず営業しているそばの屋台だった。
俺はのれんをくぐって店主に話しかけた。

「やってるかい?」

奥でかがみこんでいた小柄な中年の男が顔をあげる。
そして男は満面の笑みで頷いた。

「そば一丁」
「あいよ、少し待ってな」

店主はそばを作り出した、俺は静かにその背中に向けて言った。

「こんな場所で儲かるのかい?」
「ま、ぼちぼちですね」
「しかし物好きだな、こんな場所で店を構えとくなんて
 最近この辺で旅人が行方不明になる話を知らないのか?」
「初耳ですね」
「どうもそれは化生の類がやってるって噂が立ってんだ、何か心当たりは無いかい?」
「そうですねぇ、私は毎晩ここに店を構えてますけど
 そういった物を見たことは一度もありませんねぇ」
「もしかしたら俺が化生かもしれんぜ?」
58 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:08:51.63 ID:C8aZaP.o
店主の手の動きが止まった。
そしてゆっくりとこちらに振り返った。

「冗談だよ」
「人が悪いですぜ、旦那」
「…そうだな、冗談はこのぐらいにしとこう」
「はい?」
「どんなに上手く化けたところで、俺は騙せないぜ?」

店主の顔から笑みが消えた。
その目に冷たい光が宿っていた。

「…昔はどうだったかしらねぇが
 今の江戸にはお前らを住まわせておく余裕は無いらしくてな」
「…ク、クキキキキ
 それでどうするという?まさか一介の侍風情がワシを切り殺せるとでも思うておるのか!?」

俺は刀を鞘から抜いた。
現れた刃は錆びが浮き刀身はボロボロだった。
それを見た化生が耳障りな声で笑う。

「カハハハハ!!これは滑稽な!!
 どれほどの名刀が出てくるのかと思えばそんな錆まみれのなまくら刀でワシを斬れると思うてか!!」
「刀の本質は刃じゃない、惑わされると…」
「舐めるな小童が!!!!」

化生が、その本性を現し俺に飛びかかってきた。
顔は牙をむき出しにし、その爪はまるで獣のように鋭い。
常人ならば一瞬で血祭りにあげられるだろうその速度。
俺は刀を構えた、そして…
59 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:12:01.00 ID:C8aZaP.o
「コラ!起きろ雪之助!!」
「ん…」

うるせぇなと思いつつ重いまぶたを開ける。
目の前に見慣れた顔があった。

「…お鈴か」
「お鈴か、じゃないでしょ!
 いつまで寝てるのよ!」
「ああ、うん、わかってるわかってる…
 起きるよ、起きりゃいいんだろ」

俺は布団から身体を起こして背伸びをした、背中の骨が音を立てる。
大きなあくびをして俺はお鈴に向き直った。

「んで、説教しにきただけか?」
「…これ」

お鈴は俺に風呂敷を差し出してきた、受け取るとずっしりと重かった。
風呂敷をほどいてみると中から重箱が出てきた。
そっと蓋を開けるとおにぎりなどが詰められていた。

「どうせまたろくなもの食べてないと思ったから…」
「そりゃありがたいことで」
「それじゃあね」
「あ、待てよ」

さっさと帰ろうとするお鈴を俺は呼び止めた。
お鈴は振り返って「何だよ」と言いたげな顔をしている。

「折角だ、一緒に食おうぜ?」

重箱からおにぎりをひとつ掴みだしてそれをみせびらかすようにしながら俺はそう言った。
お鈴は何かを考えるような仕草をしたが結局戻ってきて座り込んだ。
俺たちは無言で重箱の中のおにぎりを黙々と食い続けた。
そのうち食べながらお鈴が聞いてきた。
60 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:13:53.94 ID:C8aZaP.o
「雪之助さぁ、いっつも昼間寝てるけど夜に何かしてるの?」
「いや、別に」
「だって長屋の人言ってるよ?
 雪之助は時折夜中にどこかに出かけてるって」
「眠れないから散歩してるだけだ」
「それは昼寝てるからでしょ…
 そんな雪之助が長屋の人たちからの評判はいいのが不思議だ…」
「近くにいてよくわかる俺の魅力ってな」
「調子乗るな!」
「ハハハ、まぁ毎日のように騒動を持ち込む男衆よりかはずっといいらしいぜ
 その点、俺は完全に問題無しだからな」
「しかしちょっとは体裁とか気にして…あれ?」
「ん?」
「その腕、どうしたの?」

お鈴が俺の右腕を指差した。
そこにはボロ布が巻きつけられていてその布が薄っすらと赤く染まっていた。

「怪我したの?」
「昨日ちょっと転んでな、大した傷じゃないさ」
「ふ〜ん…」
「…ご馳走様」

俺は指についた米を舐めとりながらお鈴に頭を下げた。

「うまかったよ、ありがとう」
「…うん、それじゃ私これ持って帰るね」

お鈴は重箱をまた風呂敷を包むと小脇に抱えて立ち上がった。
扉をあける瞬間にふと思いついたようにお鈴が顔だけをこちらに向けて言った。

「そのうち請求するからね!」
「はははは、無いものは取れないぜ」
「作っとけ!」

そう言いがらお鈴はさっさと扉を開けて言ってしまった。
俺は腹が程よく満たされたおかげでまた眠気が襲ってきたのに気づいた。
どうせ起きていてもやることが無いのでもう1度眠ることにした
そう、夜まで眠ろう…
61 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:16:23.33 ID:C8aZaP.o
辺りが真っ暗になった頃、俺は目を覚ました。
遠くから犬の遠吠えが聞こえてくる。
ねぼけ眼で蝋燭に火を灯す、暗い室内がぼんやりとした灯りに包まれる。

「…苦楽か?」

背後で何かがこすれる音がした。
ゆっくりと振り向くとそこには黒衣に身を包み、顔すらも黒い布で覆った男、苦楽が立っていた。
布の隙間から覗く感情を失ったような瞳は何度見ても馴れない。

「街道の妖は斬り捨てたぞ」
「…よくやった」
「少し手傷を負わされたがな」

俺は苦楽に見えるように右腕を伸ばしてみた。
だが反応が無かったのでさっさと引っ込める。

「それで?」
「…最近ある場所で次々と人が死ぬ
 その死に様から恐らく怪異だと思われる…斬り捨てて来いとのお達しだ…」
「…江戸城に力を集めたせいで他の部分が脆弱になりすぎてる
 これだから俺はいつまでも剣を手放せない」
「手放す気なぞ無いくせに…」
「手放せない、と言ったほうが正しいかな
 お前も同じさ、俺は剣から逃げられない、お前は忍という性から逃げられない」
「…これが昨日の分の報酬だ」

苦楽が懐から巾着袋を取り出してそれを手渡してきた。
俺はそれを受け取って中を確認し、懐に仕舞い込んだ。

「そんである場所ってどこだよ」
「…宿場町にある四辻だ」
「四辻とはまぁ…嫌な予感がするね
 …あの世とこの世の出会う所とか、死刑にした罪人の死体を魂が戻ってこないように四辻に埋めるとか
 何か出るには格好の土壌だな。」
「…うんちくはどうでもいい、なるべく早い内にどうにかしろ」
「わかったよ」
「…では」

次の瞬間、苦楽の姿がふっと消えた。
俺は苦楽から目を離していなかったのにも関わらず、だ。

「相変わらず見事な隠形だな…」

感心しながら壁に立てかけてあった刀に視線を写す。
蝋燭の灯りに照らされる刀はまるで得物を求めるかのように鞘の隙間から瘴気を放っているように見えた。

「…手放す気もない、ってのも間違ってはないな
 俺にはこれしかないんだからなぁ…」

懐に突っ込んだ巾着袋の重みを感じながら俺はそう呟いた。
62 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:18:56.05 ID:C8aZaP.o
翌日、早くに目が覚めた俺は金もあることだし街に繰り出してみることにした。
といっても特に当てがあるわけでも無く、家にいてもやることもないから本当にただブラブラしてみるだけだった。
風車を持った少年にぶつかりそうになったぐらいで別に大したことが起こるわけでもない。
全く、馬鹿みたいに平和な世の中になったもんだ。
だが、血に染まらなければ生き抜けれなかった頃よりかはずっとマシだな。
そんなことを考えながら歩き続けながらちょっと小腹が空いたことに気づいた俺は行き着けの茶店によった。
店の外に置かれた長椅子に腰をかけるとお盆を持った女が近づいてきた。

「見たことある顔だと思ったら雪之助かぁ」
「桃花、団子くれよ、みたらしとあんこな」
「金は持ってるの?」
「今日はある」
「そりゃ珍しいなー、どこから盗んできた?」
「人聞きの悪い…早く団子もってきてくれよ」
「はいはい」

桃花は小走りで店の中に走っていった。
ぼうっと団子が出てくるのを待っていると視界に淡いピンク色の雪のようなものが舞った。
見上げると、どこからか桜の花びらが風に吹かれて飛んできているようだった。

「なかなか風情があっていいもんだな」

風に舞う桜の花びらを見る、そんなちょっとした幸せを感じていた。
その心地よい気分をぶっ壊したのは突然響いてきた下卑た笑い声だった。
ちらりと声の方を見るとあまりにも場違いな風貌の男が3人。
山賊崩れだろうか、周囲に威圧を与える熊のような男が俺の隣にどっかと腰を下ろしジロリと俺を横目で見た。
明らかに「邪魔だ、退け」という旨を伝えようとしているのを察した俺は立ち上がって長椅子から距離を取った。
それとほぼ同時ぐらいに店内から桃花がお盆に団子とお茶を乗せて出てきた。

「雪之助ー、団子できたよー、ついでにお茶もつけといてあげたー」
「ん、ありがとな」
「おい、姉ちゃん、さっさと注文聞いてくれねぇか!」
「はいはい、ただいまー」

俺にお盆を手渡し桃花はさっきの男たちの方へと向かっていく。
流石に馴れてるなぁと思いながら俺は片手でお盆を支えながら団子を一つ頬張った。
少々気分は害したが、団子の上手さと突き抜けるような青空とそこに彩りを加える桜の花びらで多少のことはどうでもよくなる。
団子を食い尽くしてお茶を飲みながらも俺はまだ桜を眺めていた。
63 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:21:35.82 ID:C8aZaP.o
そこに今度は桃花の声が響いた。

「ちょっとやめてよ!」
「へっへっへ、いいじゃねぇかよ、ちょっとぐれぇ」

そう、多少のことはどうでもよくなる
しかしこれは多少ではない。
流石に知り合いがこんな下卑た連中に絡まれたとあっちゃあなぁ…
俺はまだ少しお茶の入った湯のみを桃花に絡んでいた男に向かって投げつけた。
ガシャンと湯のみが砕ける音がして、少し残っていたお茶が男の頭に飛び散った。
桃花が何が起こったのかわからないという顔をしながらこちらを向いた。

「雪之助…!?」
「…おい、兄ちゃん、なんの真似だ?」

ドスの聞いた声で静かに俺に問いかける熊のような男。
取り巻きの男2人が俺の周囲を囲んだ。

「悪い、手がすべった」
「そうかい…手がねぇ…」

男がこちらに向かってきて俺の前に立ちふさがった。
近くで見ると改めてわかるが、かなりの大男だった。
6尺…いや、7尺はある巨躯は見るもの全てに圧倒的な威圧感を与えていた。
男は俺に顔を近づけて言った。

「俺も鬼じゃねぇ、ちっとばかり兄さんの気持ちってもんを見せてくれれば見逃してやる」
「はぁ…」

ため息をつきながら懐から巾着袋を取り出す。
苦楽からもらった今の俺のほぼ全財産、それを俺は男の手に握らせた。
男は巾着袋の中身を改めると僅かに口元を吊り上げた。

「いいだろう、今回だけは許してやる」
「ああ、悪かったな」
「雪之助…」
64 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:23:38.38 ID:C8aZaP.o
後ろから桃花が申し訳なさと心配が混じったような声で俺の名前を呟いた。
男の取り巻きがニヤニヤしながら俺に話しかけてきた。

「へへっ、兄ちゃん運が良かったな」
「どいつもこいつもお前みたいに素直ならいいんだけどな」
「よし、野郎ども、続きだ」
「へい!」

取り巻き2人は威勢のいい返事をすると今度は桃花の腕を掴んだ。

「ちょっと…!?」
「へっへっへ、金も入ったことだし…
 あそこの兄ちゃんみたいに素直についてくればいい思いができるぜ?」
「このっ…!」

取り巻き2人ともみ合う桃花をニタニタと笑いながら見つめる男。
俺は心の底に湧き上がる黒い感情を押さえ込んで静かに言った。

「…おい、話が違うんじゃねぇか?」
「手が滑って俺に茶をぶっかけたことが許したが…
 あの娘に手を出すことをやめろとは言われてないんでなぁ」
「…なるほど、確かに少し読み違えたな」
「ま、やめろっていうならもう少し…わかるだろ?素直な兄ちゃん?」
「悪いが、さっき渡したのでもう文無しだ」
「それなら…しょうがねぇよなぁ
 てめぇら!つれてけ!!」
「待て!!」
「おいおい、兄ちゃん…止めろというならそれ相応の気持ちが必要ってさっきも言ったろ?」
「…クッ」
「わかったら黙ってろ!!!てめぇら!さっさと連れてくぞ!」
「おいやめろッ!」
「しつけぇんだよ!!」

男の手を引っ張ろうと掴んだ瞬間に顔面に拳を叩き込まれた。
俺は吹っ飛んで背中から地面に倒れこむ。
65 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:25:48.11 ID:C8aZaP.o
「素直にならねぇから痛い目見るんだぞ
 死にたくなけりゃすっこんでろ!!」
「…どうしても桃花を連れていきたいっていうなら俺を殺してからにしやがれ」
「ああん?」

殴られた衝撃で出た鼻血をぬぐいながら俺は立ち上がった。
男がツカツカとこちらに歩み寄ってきた。

「…正気かテメェ?」
「ふん、腰にぶら下げてる刀は料理用か?」
「テメェ…」

男が刀に手をかけた。

「雪之助!」
「おとなしくしろテメェ!」

桃花が騒ぎ立てるが取り巻き2人に止められる。
一方で俺は目の前の男を睨み付けていた。

「…どうした?斬れないのか?
 まぁ真昼間からこんな場所で人を斬ったとなればお前もただじゃすまないが…
 …でもな、保身を考えて人を斬れないような奴が刀を下げるんじゃねぇよ、腑抜けが」
「クッ…!!」

刀にかけた男の手が震えていた。
その目には怯え。

「…斬ってみろ、さぁ」
(…なんなんだコイツ、ただの優男かと思ったら…なんて目をしやがるんだ!
 死ぬのが怖くねぇのかコイツ…!なぜ、なぜ俺のほうが震えてるんだ…!)
「俺を斬ってみろ!!!!」
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

恐怖に突き動かされるように男が刀を鞘から抜き、振り上げた。
陽光を反射して刃が鈍く光る。
刀が、俺に向かって振り下ろされる。
だが肉を切り裂く痛みはこなかった、ただ金属音だけが鼓膜を揺らした。
振り下ろされた刃を、もうひとつの刃が止めていた。
66 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:28:49.44 ID:C8aZaP.o
「…野良犬が入り込んだようだな」
「なっ、なんだテメェ!?」
「刀も抜かぬ者を斬りつけるような外道に教える名など無い」
「…高島」
「…言うなよ」

男の刀を止めたのはいつのまにか出てきた高島の刀だった。
そのまま高島は男を睨み付けた。

「俺が相手になってやる、存分に斬りかかって来い」
「うっぐ…テメェらぁ!!」
「へいっ!!」

取り巻きの男2人も刀を抜き、そのまま高島を取り囲んだ。
それを意にも介さず高島は静かに刀を構えたまま立ち尽くす。
小鳥が飛んできて、高島の肩に止まった。
野生の鳥が警戒を解いて居座る、尋常ならざる離れ業。
刀を抜いているにも関わらず高島からは微塵の殺気も威圧も感じられなかった。
その安心感が酷く不気味であり、男たちは斬りかかろうにも斬りかかれずにいた。
清流の極み、とでも言えばいいのか。

「おおおおおおおおお!」

男の取り巻きの一人が高島へと雄たけびをあげながら斬りかかった。
高島が静かに笑った。肩に乗っていた小鳥が羽ばたいた。

「動きが大き過ぎる」

高島は僅かに身体を揺らした、たった数ミリとも言える僅かな揺らぎ
だというのに男の刃が空を斬った。
ほぼ同時に鈍い音がして男がそのまま地面に倒れた。

「てめぇええええええええ!」

もう1人の男も高島へと斬りかかる。
今度は高島が前へ出た。

「動作が丸見えだ」

男の刀が振り下ろされるよりも早く。
懐に飛び込んだ高島の刀の柄が男の腹部を穿った。
小さな呻き声をあげながら男は頭から地面に落ちた。
最後に残った男は顔を引きつらせながら後ろへとずり下がっている。
逃げようとしているのは誰の目にも明らかだった。
次の瞬間だった。
男の頭部に高島の刀が振り下ろされた。
逃げる隙も考える隙も与えずに刀は男の頭を打ち据えた。
そのまま男は白目をむき、その巨体を地面に預けた。
…男の逃げるという判断は間違っていない、目の前の敵が受身から攻撃に転じるというのなら逃走するのも立派な兵法だ。
だが高島の剣は、高島が行動に移すまでそれが攻撃か守りか判断がつかない。
機先を読むことが不可能な剣、それが高島が極めた清流の如き剣技。
67 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:35:01.34 ID:C8aZaP.o
「峰打ちだ、お前らみたいなのを斬る気にもなれん」
「助かったぜ、高島」
「…ほら」

高島が男の懐をまさぐり巾着袋を取り出して俺に向かって投げてきたので慌ててそれをキャッチする。
ほど同時に呻き声をあげながら取り巻き2人が立ち上がって、状況を把握して慌てて倒れている男に駆け寄った。
高島は無言で追い払うような仕草をする。
取り巻き2人は男を担ぎ上げると全速力で走っていき、やがて見えなくなった。
それを見届けると高島がこっちを向いた、その顔は少しばかりの怒りを携えていた。

「…どうして刀を抜かなかった、お前ならこの程度の奴ら軽くあしらえたろうに」
「俺は人を斬らない」
「峰があるだろ」
「…抜けば、斬っちまうからな…」
「…今回は俺が来たからよかったもののいなかったらどうなっていたやら」
「あ、あの、あの」
「ん?」

ふと見るともじもじとしながら桃花が何か言いたげにこちらを見ていた。

「ありがとうございました!お礼にお団子でも食べてってください!」
「あ、いや、俺は…」
「お団子嫌いですか!?それなら蕎麦とか!」
「桃花ー、俺も団子もう1本ー」
「…あ、そっか、雪之助もいたんだ」
「何それ!?一応俺も助けたじゃん!!」
「冗談だよ、団子ね」
「ああ、みたらしな
 折角だから高島も食ってけよ」
「…そうだな、それじゃあ娘さん、ごま団子としょうゆ団子を」
「はい!」

元気良く返事をして桃花は店の中に飛び込んでいった。
俺と高島は長椅子に座った。
唐突に高島が話しかけてくる。

「…お前、どうしてもそこまで人を斬ることを嫌がるんだ」
「俺は優しいからな」
「4年間の間に何があった…」
「…」
「4年前、お前は突然俺とお鈴の前から姿を消して…
 1年前にまた突然帰ってきたと思ったらまるで人が変わったようになっていた…」
「ちょっと旅に出てみたくなっただけさ」
「…なぁ雪之助、平和な世の中だといってもさっきのような奴らは決していなくならないんだ
 皆が安心して暮らすためには誰かが汚れ役を務めなければいけない
 だが俺はそれが汚れ役だとは思わない、必要なことなんだ」
「桜、綺麗だぜ」
「話を聞け」
「…まぁそういわずに見てみろよ、綺麗だぜ、桜」
「…そうだな」
68 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:36:44.52 ID:C8aZaP.o
高島はそれ以上はもう言葉を発しなかった、どれだけ真面目に語っても無駄だろうと悟ったようだった。
…高島が俺のことを心底心配してくれているのはよくわかってる。
それでも、俺は…

「おまたせしましたー」

桃花が団子を持ってきて俺たちの横に置いた。
高島は団子を頬張ると少し驚いたような顔をした。

「うまいな…ここの団子」
「団子はうまいし、桜は綺麗だし、これで可愛い女の子がいたら言うことなしだな」
「雪之助、雪之助」

桃花が自分を指差しながら期待した目でこちらを見てきた。
俺は乾いた笑いを出しながらそっと目線を逸らした。

「[ピーーー]」

酷い言葉が聞こえたような気がしたが聞かなかったことにして俺は団子を頬張った。
食い終わって俺は桃花に金を渡そうとしたが桃花は「今日はおごり」と言ってくれた。

「それじゃあ俺は帰るぜ、高島」
「…ああ」

高島はそれだけ言うとまた団子を頬張っていた。
俺はあくびをしながら家路についた。

「帰ったら…とりあえず昼寝でもして…」
69 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:38:42.65 ID:C8aZaP.o
すっかり夜も更けてどこからか犬の遠吠えが聞こえる時間。
つまり普段俺が行動する時間になって俺は目を覚ました。
そして枕元の刀を手に取り、長屋を出て宿場町のほうへと向かった。
苦楽に示された場所、四辻。
その真ん中に俺は立ち尽くした。
空気が重く、肌がしびれるような感覚に襲われて思わず身震いする。
静かで、とても暗い。風すらも吹かずにねっとりとした空気が全身を包み込んでいる。
すると、前方から何かがゆっくりとこちらに向かってくるのが見えた。
人の形をしているが、それが人ではないことは誰の目にも明らかだった。
人を超越した巨躯に、頭部から伸びる2本の突起、それは古より語られる"鬼"そのものだった。
よく見るとそれだけではなく、鬼の後ろに大小様々な影があった。
人の形をした者もあれば、そうでないものも。傘の形だったり仏像のようだったり。
俺はそれらの影を凝視しながら小さく笑った。

「百鬼夜行か…」

やがてそれらも俺を完全に捉えた。
様々な影を率いる鬼が、雲の隙間から差し込んだ月光に照らされた。
燃えるような赤黒い巨躯に獣の生臭さを携え、暴虐なる者そのものな外見。
その鬼が、俺に話しかけた。

「こんなところに迷い子がおるわ、あの世とこの世の狭間で迷った哀れな迷い子が」
「肝を食らおか?四肢を食らおか?」
「それとも目玉を食らおか?」

鬼と、それに追従する妖どもがケラケラと笑い声をあげる。
俺は鬼へ向かって言葉を投げかけた。

「江戸の街にお前らの居場所は無い
 今すぐ立ち去るというならば見逃してやろう」
「ゲヒャヒャヒャヒャ!聞いたか!この小童が我らを見逃すとな!!」
「人間風情が我らを斬り捨てる気でおる!」
「慢心も甚だしい!!」

妖どもが俺を取り囲んだ。
活きのいい餌を今か今かと食らおうとする目線が俺に突き刺さる。
俺は刀を鞘から抜いた。錆が浮きボロボロになった刀身が顕わになる。

「錆刀…?」
「もう1度言う、江戸から去れ」
「お断りだ、どうしてもというならこの羅漢童子を倒してみせるがよい!!!」

怒気を帯びた咆哮が俺の全身を突き刺した。
だがそれに怯まずに俺は刀を構えた。
70 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:40:18.25 ID:C8aZaP.o
「…俺の剣術は、決して退かぬ、決して怯まず、決して臆せず
 例え万の敵に囲まれようとも決して背中は見せん」
「ならば我らが貴様を一片たりとも残さず食ろうてやろう!!」

羅漢童子と名乗った鬼の一声で背後から1匹の妖が俺へと飛び掛ってきた。
それは餌を目前にお預けをくらった犬が我慢の限界を超えたように。
俺は刀を振るった。

「破ァッ!!」
「何ッ…ぐぎゃぁ!?」

飛び込んだ妖の身体が真っ二つに一刀両断され、俺の両脇に分かたれた身体を横たえた。
飛び散った妖の血液が俺の身体に降り注いだ。
それを見た妖どもの顔色が変わった。
餌を見る目から、敵を見る目へと。自らを脅かす者への恐怖と憎悪と怒りの目。
咆哮と共に、無数の妖が俺へと飛び込んでくる。

「1匹残らず斬り捨てる!!!」

俺は次々に迫り来る妖へと刀を振るった。
まるで豆腐を斬るように、妖の身体が容易く両断され地面へと落ちその血を雨のように降らす。
戦場を駈けずり回り、視界に入る妖どもの身体を両断し、時に蹴り飛ばし、時に突き刺し、大地に屍の山を築き上げる。

「貴様ァ!!」
「人間風情が!!!」

前後から2体の妖が同時に飛びかかってきた。
正面の妖を斬ろうとするとフッと妖の姿が消えた、そう思った瞬間刀が下から弾き飛ばされ俺の手から離れた。
宙を回転する刀が月光に照らされる。
背後から迫っていた妖が何かを振り上げるのが感じ取れた。

「食らえぇぇい!!」
「お前がな」

何かが硬い物を貫き、突き刺さる音。
俺の背後から伸びる影の頭に、長い物体が突き刺さっていた。
1歩前に歩むと、後ろで武器を振り上げたままの妖が地面に倒れこんだ。
その頭部には俺の刀が突き刺さっている。
すぐさま刀を引き抜き、正面に横薙ぎに振るうとそれは先ほど俺の刀を下から弾き飛ばした妖の身体を分断する。

「そんな馬鹿なッ…!?」

徐々に、妖どもに怯えが見え始めた。
餌としか思っていなかった人間、なのにたった1人の人間に仲間が為す術無く倒れていく。
それが妖に恐怖を生み出す。
妖であろうとも心はある、だが心あるもの故に容易く恐怖に支配されてしまう。

「なんだこの人間は!?」
「まるで…まるで鬼神だッ!」
「こ、殺せ!食い殺せぇぇぇえええええええ!!!!」
71 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:42:23.77 ID:C8aZaP.o
恐怖に囚われた妖どもが一斉に向かってくる。
だがそこにはもう連携も戦術も存在しない、ただ正面から向かってくるのみ。
いくらこようが俺の相手ではなかった。
妖の血を浴びながら、俺は気がつくと自分が笑っていることに気づいた。
そうさ、これが俺だ。
俺が人を斬らないのは弱すぎて斬っても面白みが無いからだ。
俺が真に斬りたいのは人を超えた力を持つ存在、妖どもだ!!
その時、月光が不意に途切れた。
同時に、風を切り裂くとともに丸太ような太さの巨大な鉄の棒が俺へと向かってきた。
咄嗟に剣で防御するがその衝撃は俺を宙に弾き飛ばした。
剣からピシリと鋼の割れる音がした。

「がっ…!?」

宙を舞い、地面に転がるように叩きつけられる。
舌打ちをしながらすぐに立ち上がる。

「図に乗るな、人間が」
「大将のお出ましってわけか」
「…剣から身に衝撃が伝わる一瞬のうちに後ろに飛びのき衝撃を受け流したか」
「お前なら、ちょっとは楽しめるな」
「…よかろう!我は三百の鬼を従える大鬼!羅漢童子!
 貴様の相手になってやろう!!
 誰も手を出すことは許さん!この人間は我が食ろうてやる!!!」

羅漢童子の身体から何かが噴出するのを感じた
大気が震えている、どうやら本気でやり合おうとしているみたいだった。
…面白い、俺は何が相手でも背中は見せん!!
俺は羅漢童子に斬りかかった。
羅漢童子はその右手に持った巨大な鉄棍で刀を受け止める。
夜の闇を切り裂くような金属音が周囲に響き渡った。
一瞬動きが止まった俺の頭に羅漢童子の左手が伸びてきた。
鉄棍を蹴り飛ばし、反動で俺は後ろへと飛ぶ。掴まれれば頭を粉々に砕かれていただろう。
着地すると今度は羅漢童子が俺へと向かってきた。
それはまさに獲物を食ららんとする野獣そのものだった。

「ムンッ!!」

鉄棍が恐ろしい勢いで横薙ぎ俺へと振られた。
余りにも太く、長いその鉄棍、逃げ場は上しか無いと悟った俺は軽く跳躍する。
その時、羅漢童子の顔に笑みが浮かんだ。
土が吹き飛ぶ音、地面に叩きつけられた鉄棍はその反動で予測を遥かに超える速度で俺へと向かってきた。
空中では身動きが取れずに衝撃を受け流すことも出来ない。
72 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:44:37.55 ID:C8aZaP.o
「クッ!!」

せめてもの軽減になればと刀で鉄棍を受け止める。
だが甘かった、恐ろしいほどの衝撃は容易に俺を吹き飛ばし
遥か先の石垣に俺の身体を叩きつけた。
焦点が定まらない視界で錆の浮いた刀身に大きな亀裂が入っているのが見えた。
だが状況を理解する前に本能が逃げろと伝えた。
大地を揺らす音、それは羅漢童子が俺へと向かってきていることを示唆していた。

「粉々になるがいい!!!」

咄嗟に身体を捻ると、一瞬前まで俺の頭があった場所に鉄棍が突き立てられた。
否、突き出された鉄棍は石垣を容易く砕いてしまった。
逃げが一瞬遅れれば確かに俺は粉々になっていただろう。
だが避けれたお陰で懐までの道が見えた。
鉄棍を退いて横薙ぎに振るったとしても俺の刀が振るわれるほうが早い!

「愚かな」

羅漢童子は棍を回転させた。
瓦礫を吹き飛ばし、回転する棍。
地面をかすり、土を巻き上げながら、石垣を砕いたほうとは反対側の棍の先端が下からすくいあげるように俺に向かってきた。
判断が追いつかず、愚かにも俺は刀で受け止めようとしてしまった。
その判断が愚の極みだと気づいた時には、もうどうにもならなかった。
俺は宙へと吹き飛ばされた。
そして自然に落下するよりも早く、羅漢童子に鉄棍が俺を弾き飛ばし地面へと叩きつけた。
73 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:46:31.37 ID:C8aZaP.o
「矮小な」
「…ぐっ…」
「これでわかったろう、人間ごときでは天地が避けようと我には勝てぬ」
「…決断が…早すぎるぜ…」

俺は転倒しそうになりながらもゆっくりと立ち上がった。
右わき腹から激痛が走った、胸骨が折れたのかもしれない。
羅漢童子は小さく笑う。

「確かにお前は強い
 だが所詮は人だ、自分の刀を見てみろ」
「…!」

俺の刀は最早刀身がヒビに覆われ、いつ砕けてもおかしくはない状態だった。
指で軽く突いただけで砕け散ってしまいそうなほど。

「その退魔刀を失えばお前はもう妖に傷をつけることは叶わん
 そして獄で悔いるがいい!人の身で我らに挑んだことを!!」

羅漢童子が俺へと向かってきた。
勝利を確信したのだろう、真っ直ぐ走ってきて上から鉄棍を振り下ろす。
例え避けたところで砕け散る寸前の俺の刀でやられることは無い。
受けたところで刀を砕き、俺の身体を粉砕する。
そう、確かに詰みだ。

「死するがいい!!!」

詰み、だが…お前は1つ読み誤っている。
俺は刀で鉄棍を受け止めようと構えた。

「笑止!!刀ごと砕け散れ!!」

鉄棍が振り下ろされ、身体に衝撃が走った。
そして刃が砕け散った。
74 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:48:20.25 ID:C8aZaP.o
「…馬鹿な!?」

羅漢童子が驚愕の声を挙げた。
鉄棍は止まっていた。
そして、俺の刀は赤く光り輝いていた。
それは先ほどの錆ついた刃とは違い、見る者全てに恐怖を与える煉獄の炎のような揺らめき。

「…行くぞ、羅漢童子」

俺は鉄棍を弾き、そのまま刀を横薙ぎに振るった。
刀身から吹き出す煉獄の炎は、刃の射程距離を著しく長くする!

「ぬおっ!?」

羅漢童子は咄嗟に後ろに飛びのく、だがそれでも刃から逃げ切ることが出来ずに
その身にまとっていた鎧が分断され、轟音と共に地面に落ちた。
羅漢童子の顔に、僅かに怯えが浮かんだ。

「…羅漢童子、お前さっきこれが退魔刀と言ったな
 少し話をしてやろう、この刀にまつわる話だ」
「ぬぅっ…」
「昔むかし、とある刀鍛冶がいてな
 職人気質で気難しかったが、やっと出来た1人娘を溺愛していた、そんな男だ
 だが、ある日その娘は妖に食われこの世を去った
 男は嘆き悲しみ何日も床に伏した、だが三ヶ月後、彼はふらりと立ち上がるとある刀を鍛え始めた
 それから何日も何日も昼夜を問わず男の工房からは槌を打つ音が響き渡った
 だが突然その音がぱったり止み、気にあった村人が工房を訪ねると… 
 男は自らの胸に刀を突き刺し絶命していた…
 その胸に刺さっていた刀こそ、彼の怨念、嘆き、怒りを受け継ぎ最後に自らを突き刺すことによって魂を一片残らず刃に宿した
 男の生涯最後の刀、この世の妖を一匹残らず斬り捨てる究極の刀…
 だがその刀に込められた男の凄まじい妖に対する憎悪は持つ者の心を蝕み、砕く
 究極の退魔刀であると同時にこいつは所有者を狂気の渦に落とす、妖刀なのさ
 …こいつの本当の鞘は、今お前が砕いた表面なのさ
 この赤く燃えたつ刀身こそ、こいつの真の姿…」
「…真の姿…」
「退魔翌妖刀、天座(アマクラ)
 それがこいつの名前さ」
「ではなぜ…貴様は普通にそれを使っていられる!」
「さぁな、実のところ俺もよくわからない
 だが理由なんてどうだっていい、こいつのお陰で俺は金を稼いでるんだからな
 さ、お喋りはここまでだ、覚悟はいいか、羅漢童子」
「貴様ァァァアアアアアア!!!」
75 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:50:50.34 ID:C8aZaP.o
羅漢童子が鉄棍を振り上げて俺へと向かってきた。
鉄棍が、今まで以上の速度で俺に向かって振り下ろされる。

「ひとつ言っておくが、天座に斬れない妖はいない
 例えそれが妖の持ち物でもな」

何も考えずに振るった天座と鉄棍がぶつかり合った。
いや、ぶつかってすらいない。
鉄で出来た棍を刃が音も立てずにすり抜け、棍の先端が宙へと飛んだ。
ただそれが自然なことのように。

「なんだと!?」
「…斬り殺せ、天座」

俺は羅漢童子に懐へと飛び込んだ。
そして、天座をその身体に突き立てた。

「ぬぐぉッ!!」

羅漢童子の手から鉄棍が落ちた、ガランという音を立て地面に転がる鉄棍。
周囲から、全ての音が消えた。
戦いを見守っていた他の妖たちもこの状況が信じられないのか動こうとはしない。
百鬼夜行が、大将である羅漢童子がたった1人の人間にやられるなどと微塵も考えていなかったのだろう。

「最後に言いたいことはあるか」
「…貴様…まさか…数年前に、京で数多の妖を斬り捨て…
 雪のように白い肌に妖の血の華を咲かせると恐れられた…
 妖斬り血雪華と呼ばれた侍か…!?」
「よくご存知で」
「ク、クク…そうか…今は江戸にいたのか…
 だが…いつか貴様は我が仲間たちが食ろうてくれる!!」
「そりゃ楽しみだな」
76 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:51:27.16 ID:C8aZaP.o
パァッ!と、羅漢童子に血が辺りに散った。
上半身を縦に真っ二つに割られた羅漢童子は噴水のように辺りにその血をブチまけた。
まるで雨のように周囲に赤黒い血液が降り注ぎ、その中心に佇む赤く燃える刀を携えた俺の姿。
それはまさしく妖の恐怖の象徴。
周囲にいた妖が叫び声をあげて我先にと散り散りに逃げ出した。
所詮は羅漢童子の力に集った集団、こうなるのは自明の理だ。
だが、1匹残らず逃がしはしない。
俺は走り出し、逃げる妖の背中を次から次へと斬りつけた。
ある妖は空に逃げた、ある妖は地面を掘った。
だが天座の刃は大地を裂き、天を割る、鞘から放たれた天座から逃げ切れる妖なぞ存在しない!!
殺戮の嵐が吹き荒れ、やがて四辻から全ての妖が消え去った。
天座から赤い光が消えたのを確認し、俺は天座を鞘へと閉まった。

「…さて、帰るかねぇ」

誰に言うでもなく呟いて俺は四辻を後にした。
家に帰り着くまでの間に羅漢童子が最後に言った言葉を考えていた。
仲間たちが食ろうてくれる、か。
…上等だ、俺の剣術は決して退かぬ、決して怯まず、決して臆せず。
たとえ万の敵に囲まれようとも決して背中は見せぬ。
どんな奴がこようが、斬り捨てるだけだ。
高島、俺は人を斬らない、平和を脅かす人を斬るのはお前の仕事だ。
だから俺は夜の闇に紛れて平和を脅かそうとする妖を斬ろう。
これは、俺にしか出来ないことなんだからな…
77 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:52:12.36 ID:C8aZaP.o
「…うーん…」

…長い夢を見ていた気がする。
いや、気のせいじゃなくて確かに俺は見ていた。
雪之助という侍の数日間をまるで俺が本人のように。
ふとここが現実なのか不安になって咄嗟に辺りを見回した。
見慣れた俺の部屋で、机の前ではエンプティがルービックキューブをいじっていた。
それを見てどうやら現実だと安心しているとエンプティが口を開いた。

「起きたか」
「…ああ、お前ずっとルービックキューブやってたのか?」
「ああ、ちょっと見てくれ」

そう言ってエンプティは物凄い速さでルービックキューブの色をそろえ始めた。
え、何この速さ。やべぇだろオイ。
あっという間に6面を揃えたエンプティは俺に向き直って言った。

「とりあえず40秒ちょっとで揃えられるようになったんだが…
 何秒で揃えれば合格なんだ?」
「…40秒って世界レベルだろオイ」
「他に何か無いのか?」
「…ジグソーパズルでもやってれば?」
「ジグソーパズル?」
「今度買ってきてやるよ…代金はEDENが払うんだから滅茶苦茶でかいのをチョイスしてやる」
「そうか、ありがとう」
「いえいえ」

俺はベッドから起き上がった。
夢で見た、お鈴が誰かに似ている気がするが…
なぜか頭にもやがかかったように上手く思考が回らない。

「どうした?また怪異か?」
「いや…そんなんじゃなくて…
 ちょっと考え事してただけだよ」
「そうか…お、39秒」
「お前、頭の中で正確に時間測れるのか?」
「正確ではないな、0.05秒の範囲で誤差はある」
「…いや、もう突っ込むのもめんどくせぇや」

雪之助…か。
退魔翌妖刀を持って誰かからの依頼で妖を斬り殺している俺に似てる侍。
また、見るのだろうか、雪之助の夢を。
ふと、自分が続きを見たいと思っていることに気がついて俺は苦笑した。
それを見たエンプティは首をかしげていた。
78 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/06(土) 22:53:56.02 ID:C8aZaP.o
「ふぁ〜あ…あーだりぃだりぃ…
 行方不明者の捜索なんて手がかりが出るほうが珍しいっちゅうのに…」
「酔った勢いで依頼受けたのはあんたでしょうに…」
「しょうがねえだろ、しかし聞き込みなんて警察がしてっからなぁ…
 今更ちょいちょい聞き込みしたところで有力な情報なんてよぉ」
「時間が立てば新たな情報が見つかるかもって息巻いてたのあんたじゃないすか
 …あー、でも関係ないかもしれませんが変な話を聞きましたよ」
「変な話〜?」
「なんかただの怪談とか都市伝説みたいな感じなんですけど…
 確か――」
「ふ〜ん…」
「あれ、意外ですね、笑わないんですか」
「いや〜…しばらく前にそういう超常現象的なことに散々巻き込まれたからなぁ…
 けっこう信じるようになっちまったんだ…
 それにな、火の無いところに煙は立たないっていうだろ?
 …繋がりはあるんじゃねぇかなぁ…
 それかまさしくその怪談そのものズバリなことが起こったとかな」
「まさか…幽霊なんていませんよ」
「いや、龍とかいるぞ、俺見たし
 あとなんか死んでも生き返る奴とか手からビーム出せる奴とか俺知ってるし
 そういうのに比べたら幽霊とか普通にいる気がすんだよ」
「…まぁとにかく…
 もう少し、情報を集めてみますか」
「ん、任せた」
「あんたも集めるんですよ!!!」
「めんどくせぇ」
「こんなところで座り込まないで!
 行きますよ!!ほろにがさんってば!!!」
「はいはい…あーあ、なんか楽しいことでも起こらねぇかなぁ…」


四辻 完
79 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/06(土) 23:24:16.58 ID:DWORqGQo
ゆき兄おつ!

ここでほろにー登場とかwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
80 :そら :2010/03/07(日) 00:49:41.66 ID:d6aq9YDO
黄龍ほろにーか!
81 :ポロニウム [sage]:2010/03/07(日) 15:55:19.98 ID:KCzPYQSO
まさかの俺参上wwww
ゆき兄乙


>>黒やん
業務連絡ー業務連絡ー
サンデーズ廃盤になったらしいから在庫残ってたらくれー
82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/12(金) 00:56:41.49 ID:t53OXkSO
過疎ってんな
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/12(金) 22:09:59.69 ID:I4IMnsDO
ああ、過疎だな
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/13(土) 06:38:11.56 ID:6S9e9r.0
土曜日です
85 :そら :2010/03/13(土) 09:18:59.42 ID:kTDTTsDO
http://imepita.jp/20100313/334700
人混み
86 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/13(土) 22:26:30.14 ID:UNW8kF2o
土曜日か


ゆき兄が来ていないだと・・・?
87 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/14(日) 07:24:56.65 ID:FPacrXg0
しろやんの日!
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/16(火) 09:08:35.59 ID:CWo13/Mo
http://blog-imgs-36-origin.fc2.com/y/u/t/yutori2ch/rl_1949.jpg
89 :そら :2010/03/16(火) 09:11:49.75 ID:OHGPzQDO
さむ…らい…?
90 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/20(土) 14:32:25.33 ID:9leqBcDO
あ、パー速復活してるwwww


黒やんこないだ誕生日おめでとうございました
お祝いにがっつり残業してましたwwwwwwww
91 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/03/20(土) 21:55:46.03 ID:aolvU/Qo
人生を賭けた追い込みの時期なので
余裕が持てる4月まで休載させていただきます。

といっても今週と来週だけだけどな
92 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/20(土) 22:01:04.69 ID:9leqBcDO
おkおk
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/24(水) 22:19:56.55 ID:dSbU.oDO
相変わらず過疎かよ!じゃあ話題提供だよ!

実家帰る途中にスカウトっぽい人に声かけられた


でも社名ググったら「金とってなかなか仕事くれない」とか酷評なんだが…ww

どうしよう電話番号と名前教えてもーた/(^o^)\
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/25(木) 10:18:07.76 ID:/oezDUSO
とりあえずうpしろし。
と、バナさんが申しております
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/25(木) 12:06:09.38 ID:uAIn8ADO
うpって顔か?いやいや無理だわww

んじゃ電話かかってきて面接とかになったらやることを安価でもしようかのぅ
96 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/25(木) 12:40:05.84 ID:dh.WcYDO
>>94
ちょwwwwwwおまwwwwwwwwww
なぜ言いたい事わかったし
>>95
安価と聞いて(ry
97 :深淵槍裂歓声暮色枕辺涙色番蝶 :2010/03/25(木) 18:13:02.28 ID:/V5uj.DO
安価まだー?
98 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 16:07:08.98 ID:QqSQtQDO
んじゃ>>100-105できるだけやるわ
99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 17:45:41.02 ID:8JKBX2DO
相変わらず過疎過ぎんだろ…



ksk
100 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 18:05:59.65 ID:HYE87A6o
とりあえずおにんにんいじりながら面接受ける
101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 18:12:35.07 ID:8JKBX2DO
終わる直前におもむろにびっくりするぼどユートピア!
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/26(金) 18:19:27.99 ID:2BLyxewo
終始タメ口
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 18:24:58.45 ID:8JKBX2DO
語尾にデュフwwデュフフwwかフヒヒ
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 20:07:40.43 ID:HYE87A6o
もういいから顔出しちゃいなよ








ここに
105 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/26(金) 21:03:09.38 ID:Xje2T2DO
急に右腕を押さえて
「くっ…また暴れだしやがった…」

みたいな厨二発言を随所に織り込む
106 :ほろ苦 :2010/03/26(金) 21:32:55.65 ID:L9YSu.SO
これはひどいwwwwwwwwwwww
107 :そら :2010/03/26(金) 22:23:58.51 ID:PJrTpEDO
期待してます
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/26(金) 23:06:29.65 ID:8JKBX2DO
楽しみに待ってるね!
109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/27(土) 01:26:42.25 ID:QhbMjGUo
これで何もやらなかったらただのかまってちゃん

安価は絶対
110 :えび :2010/03/27(土) 02:16:57.81 ID:RKfv1kwo
ちくしょう後一歩安価に間に合わなかったか!
111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 16:53:29.42 ID:GRC9o.DO
ちょwwww

>>109
大丈夫わかってる、安価出した以上それは絶対だ


火曜日面接だから待っててくれ
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 17:01:21.38 ID:GRC9o.DO
うp…んーうpかぁ…
昔ここにうpしたことがあるってのではダメかの?ww
113 : :2010/03/28(日) 17:14:19.58 ID:Qh1hScDO
久々のうpと聞いて(ry
114 :P :2010/03/28(日) 17:54:25.10 ID:3LtEkQUo
うpと聞いてすっ飛んできました
115 :そら :2010/03/28(日) 18:27:17.46 ID:o0uoLADO
うpですと?
116 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/28(日) 18:42:55.09 ID:qNoa9Mko
うpか
117 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/28(日) 19:46:15.38 ID:wLXza.DO
うpと聞いて(ry


あ、できればメガネ装備でよろしく^^
118 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/28(日) 20:05:13.86 ID:KHPTrwMo
なんだうpか
119 :ebi :2010/03/28(日) 20:34:15.41 ID:jMuY8Yko
うpの香りが
120 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/29(月) 00:18:34.50 ID:c7NZzwDO
ダイジョブダイジョブ
ウpナンテ カンタンダヨー





こんだけ隠せば色々誤魔化せるしwwww
http://imepita.jp/20100329/008940
121 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 01:11:41.35 ID:gvg5.kQ0
残ってた嬉



スーツアルケドネテシマオウ
122 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/03/29(月) 01:51:49.46 ID:c7NZzwDO
>>121
スーツと聞いて(ry


寝るにうpしてくれるんですよね?

う p し て く れ る ん で す よ ね ?
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 01:55:38.37 ID:rc8gW8ko
>>122
先生興奮しすぎです
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/29(月) 02:56:48.04 ID:IZk06ako
下半身裸スーツと聞いて
125 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 10:31:52.03 ID:5bUcIMDO
うp代わりといってはあれだが安価増やそうか

>>126-130
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 10:35:17.22 ID:MGtcq.Y0
返答に迷ったらオンドゥル語で答える
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 13:47:18.29 ID:5bUcIMDO
人が居なさすぎたwwww

タメ口でオンドゥル語ならいいのか?オンドゥル語よくわからんがやってみるわ
128 :あb :2010/03/30(火) 13:49:24.59 ID:1ePC8goo
最初の自己紹介で語尾にうぃっしゅ♪をつける
なにか質問されたらDAIGOっぽくたしかにぃ〜
と一回言ってからこたえる
129 :P :2010/03/30(火) 15:27:59.39 ID:JLl3ti2o
会話に不自然がないようにサメについての話題を混ぜる
130 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 15:49:07.33 ID:4XeqeBso
おもむろにブリッジして「真っ赤なハートは、幸せの証 熟れたてフレッシュ、キュアパッション」と叫ぶ
131 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 16:14:05.98 ID:WkPDOgDO
>>130
クソワロタwwwwwwwwwwwwwwww
132 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 16:37:34.49 ID:5bUcIMDO
面接オワタ

2時半からだったから>>129以降はできなかった…すまん
133 :ab :2010/03/30(火) 16:43:40.92 ID:1ePC8goo
報告wwktk
134 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 16:53:43.74 ID:5bUcIMDO
とりあえず流れを。

時間5分前に本社にいって面接の旨を伝える

場所は貸ビルの一角。その事務所には仕切りがやたらあって、その仕切ってある一つの場所のテーブルで「履歴書かいて少し待っててくれ」といわれた。


しばらくして女性登場。なんか目開きまくってて魚っぽくなってる



女「どうもこんにちは〜。」
俺「どうも○○(下の名前)ですウィッシュ」(多分声上ずってた)
女「…え?ww」
俺「さっき履歴書かいてて気づいたんすけど〜俺面接あるの?」
女「え?ちょっ…あの…」
俺「えっ」
女「いやなんでもないです」


なんか知らんが俺が圧迫してた
135 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 16:54:36.85 ID:1ePC8goo
逆圧迫wwwwwwww
136 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 17:00:01.94 ID:5bUcIMDO
女「あ、あぁ貴方は○○マネージャーからスカウトだったわね。でもごめんなさい、面接は一応あるの」
俺「まじっすか〜はい。」女「じゃあ会社の説明するわね。」

会社説明中。途中で突然右腕を押さえてみる。

女「ど、どうしたの?」
俺「ま、まただ…またコイツが勝手に…くっ」


おにんにんムニムニ
137 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 17:03:35.14 ID:5bUcIMDO
なにしてるかはテーブル越しだから気づかなかった模様

女「大丈夫!?どこかわるいの!?」
俺「触るな!!(触ってない)…大丈夫だ安心しろ…フヒヒww」
女「…」
俺「続きをどうぞフヒヒww」

こりゃ受からねぇわ
138 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 17:10:27.11 ID:5bUcIMDO
会社説明終了。合否は明日知らされるらしい。

女「なにか質問ある?」

しまったなにもない…こういうときはオンドゥル語だっけ?

俺「…む、むしろ私に何か質問はあるかねオンドゥル」

女「は?」
俺「いやですからあの…」
(履歴書パラパラ)
女「へぇ野球やってたんだ、どれぐらい?」
俺「たしかにぃ〜やってましたねぇ〜もう15年っすかねぇ〜」
女「しゃべり方統一しなさいwwww」
139 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 17:14:09.72 ID:5bUcIMDO
そんなかんじで面接終了。
最後に「まぁこういうのもアリなのかもねww」とか言われたのが不安だがまぁこれ以上は進展しないだろww


すまんなチラ裏しちまって。ゆき兄までのつなぎと思ってくれたら最高だわww
140 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 17:26:04.67 ID:JLl3ti2o
これは合格して仕事の行動全部安価で決めないとな




141 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/30(火) 17:34:30.00 ID:1ePC8goo
受かるのを期待してる俺がいる
142 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 18:10:56.56 ID:MGtcq.Y0
スカウトならよっぽどひどい場合意外受かるだろ




これはどうかわかんねぇけどwwwwwwwwwwwwwwwwww
143 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 18:39:12.32 ID:N8MD9ioo
どうせ面接の女性と恋に落ちるんだろ

イケメン[ピーーー]
144 :ほろ苦いマックのコーヒー :2010/03/30(火) 20:09:56.10 ID:Krc4NUSO
>>139
こwwwwwwwwwwれwwwwwwwwwwっうぁwwwwwwwwwwwwww
早く続きを書くんだ!
ついでにうpも(ry
とバナさんが申しております^^
145 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 20:10:12.12 ID:MGtcq.Y0
イケメン死滅しろ
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/30(火) 23:26:12.81 ID:5bUcIMDO
今思い出したがびっくりするほどryをやってなかった…

>>144
続きっつってもなんもないぞww明日をまてww
147 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 00:19:54.95 ID:cYqM7b60
いや安価多かったんだしおk
148 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 11:04:29.01 ID:7pvAMkDO
おいおまいらwwww受かっちまったぞwwwwww
149 :ほろ苦いキリンのブラックロング缶 :2010/03/31(水) 12:01:22.17 ID:L0Y8a6SO
盛 り 上 が っ て ま い り ま し たwwwwwwwwwwwwwwww
150 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 12:27:36.31 ID:cYqM7b60
な、なんだってー!!!!!!!!!!


Ω Ω Ω
151 :バナ丸 :2010/03/31(水) 12:30:44.87 ID:WpHJEkDO
おめでとうございますwwwwwwwwwwwwwwww
152 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 12:53:20.78 ID:7pvAMkDO
どーすんだよwwww受かる気なかったよwwww

土曜に写真撮影あるからそこでなんかするか
>>154-164やれるだけ

バイトいてくる〜
153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 13:21:45.95 ID:aLK7.wgo
wwktk
154 :バナ丸 :2010/03/31(水) 14:59:28.86 ID:WpHJEkDO
スカート着用
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 15:06:56.04 ID:3nZu8B.o
ニーソ着用
156 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 16:01:11.31 ID:cYqM7b60
昇天ペガサスMIX盛りで
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 16:20:38.03 ID:aLK7.wgo
ガイヤが輝けとか言っちゃうファッションで
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 18:14:10.25 ID:U5jg5x6o
会場で待つ時はジョジョ立ちで待機
159 :そら :2010/03/31(水) 18:23:43.55 ID:6Hqx3oDO
キムチを持参する、撮影中に食べる
撮影中が無理なら機を改めてちゃんと食べる
160 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 18:49:40.28 ID:cYqM7b60
面接のときの女性が来たら「またあえてよった」とささやく
161 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/31(水) 19:29:43.76 ID:WYpy6QDO
関係者を口説く
162 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 22:27:47.00 ID:2LAXZkwo
会った人全員に「フリスクいります?」と聞いてミンティアをあげる
163 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 23:11:29.70 ID:aLK7.wgo
写真をここにうpする
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/31(水) 23:24:41.33 ID:2LAXZkwo
基本的にしゃべり方はDAIGOを意識
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/01(木) 00:13:08.51 ID:d.tFbQDO
しまった多すぎたなww
ちなみに必ず長袖長ズボンじゃないといけないからすまんがスカートは無理だww

面接の女性は左手薬指に指輪はめてたが…やってみるわ
166 : 【末吉】 [sage]:2010/04/01(木) 20:13:59.06 ID:U1ltU9Io
てへぺろ(・ωく)
167 : 【吉】 [sage]:2010/04/01(木) 20:28:53.51 ID:0NtIeMDO
エイプリルフールだな
168 : 【末吉】 :2010/04/01(木) 20:42:56.91 ID:J1lhREDO
そうか、エイプリルフールか…
169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/02(金) 10:48:27.67 ID:x8yeDdko
あぁ、エイプリルフールだな
170 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 21:52:43.01 ID:2BS/vWQo
土曜!

今週分はなんというかファンサービス的意味合いが強いな
171 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 21:57:32.56 ID:2BS/vWQo
数年前、とある学園で世界の命運を決めるほどの戦いがありました。
それは決して語られることの無く、ただ戦いに身を投じた戦士の心に刻み込まれただけ。
その戦いに巻き込まれたものの、自分の想いに従い、逃げ出さずに全てを見届けた男がいた。
彼は何に囚われることもなく、ただ己の信じる道だけをひた走り、自らの因縁に決着をつけた。
…そしてまた、彼の天命はまたも巨大な運命と交錯する。


「しかしよくこんなにコーラを飲めるな…」
「俺にとっちゃ酒みたいなもんだって」

大量に買い込んだコーラをエンプティに持たせて俺たちは夜の街を歩いていた。
家に置いていたコーラが無くなっていたので1.5リットルを1ケースほど買った、もちろん支払いはEDEN機関だ。
もっとも、これだけあってもだいたい一週間持つか持たないかぐらいなのだが…
文句のひとつも言わずにコーラのケースを運んでいるエンプティに感謝しつつ歩いていると
前方から手に一升瓶を携えた酔っ払いがフラフラしているのが見えた。
今時あんな奴いるんだな、と思いつつ横を通り過ぎようとした。
その時、ゴトン!という重い音がした。酔っ払いが手から一升瓶を落としたらしい。
瓶は割れなかったものの中身をこぼしながらコロコロと地面の上を転がる瓶。
しかしそんなものはどうでもいいかのように酔っ払いは目をぱちくりさせていた、俺を見ながら。
そして信じられない。といった感情を交えた声で小さく言った。

「お前…まさか…そんな…?」
「え…何?」
「む…?」
172 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 21:59:02.79 ID:2BS/vWQo
ふらふらと近寄って来る酔っ払い。
しかしそんなことよりもエンプティが懐に手を突っ込んだのが見えたほうがよっぽど問題だった。

「銃はやめろよ」
「…」

小さく呟くとエンプティは懐から手を出した。
しかし酔っ払いに対しての警戒はまるで解いてはいなかった。
身を案じていることなど知らないかのように酔っ払いは目の前まで来て俺の顔をじっと覗き込んだ。

「…生きてたの…か?」
「俺はあんたのことを知らない、人違いだ」
「…人違い…名前は?」
「何も知らない酔っ払いにわざわざ名前を教えると思うか?」
「ん…」

酔っ払いは目を逸らして黙ってしまった。すっかり酔いが冷めたと言った感じだな。
しばらく沈黙していると間にエンプティが割り込んできた。

「もういいだろう」
「…わかった、悪かった」

手をひらひらと振りながら転がった一升瓶を拾い上げて、地面に落ちたというのに躊躇いもなく一気飲みを始める酔っ払い。
…まぁ飲み口が直接地面についたわけでもないしな
酒をコーラと仮定すると俺もあの程度は余裕でやってただろうし…
などと考えているとエンプティがコーラの箱を持ち上げて俺に言った。

「それじゃ行こう、ゆき兄」
「ブボァッ!!」

エンプティがわざとなのかそれともうっかりなのか俺の名前を口にした。
「馬鹿!」と言うよりも早く酔っ払いが顔をあげて盛大に口から俺に向かって酒を霧状に噴出した。
無論避けることは出来ずに俺は頭から酔っ払いの唾液が混合された酒を頭からかぶった。
前髪がしな垂れて先端からポタポタと雫が落ちる。
怒りたいところなのだがこうなると怒る気力がほぼ無くなった。
173 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:01:16.78 ID:2BS/vWQo
「…」
「ゆき兄って…!お前…やっぱり!?」
「…だから、アンタのことは知らないんだよ…」
「それは…つまり記憶が!?」
「いや、だから記憶とかそういうんじゃなくてな…」

両肩をつかまれそうになり、それを防ごうとするうちに揉み合いになる。
酔っ払いはすでに酔っ払ってなどおらずにその顔は真剣そのものだった。
…強い想い、きっとこいつは俺に誰かの面影を見ているのだろう。
その想いに答えてやりたい。だけどそれは不可能だ。
どれだけ似ているとしても、俺は俺でしか無いのだから。
気がつくと、俺は抵抗するのをやめていた。両肩に乗せられた手が俺の身体をガクガクと揺らす。
頭が揺れて、気持ちが悪い。

「…ゆき兄…俺はッ…」

男がそこまで言った時、ガンッ!というかゴンッ!というか
とりあえず硬い物と硬い物を力任せにぶつけ合ったような音が辺りに響いた。
そして男の目がぐりんと回転して白目になったかと思うとその目を瞑って地面に倒れた。
男の背後ではエンプティが銃を構えて立っていた、どう考えてもあれで殴ったんだろう。

「おいエンプティ…さすがにそれは…」
「仕方ないだろう、まともに話が出来なかったんだ」
「…まぁ…そりゃそうだが…」
「起きられるとめんどうだ、さっさと帰ろう」
「このまま放っておくのか?」
「今日は気温も高いし死にはしないさ」
「…」

後ろ髪を引かれる想いだったがエンプティに促されて俺はその場を後にした。
何度も後ろを振り返りながら。
どんなに外見が似ていると言っても人にはそれぞれ微細な違いがある。
それは会話を交わすうちに顕著になる。
あいつは、それすらもわからないほど動揺していたんじゃないだろうか。
…そこまでの動揺を呼び起こす程の何か…か。
いや、考えるのはやめよう、どうせもう会うことも無いのだろうし。

しばらくの時間が立ち、うつぶせに倒れていた男の手が小さく動いた。
そしてそれは地面を掴むようにゆっくりと拳を握り締め始めた。

「…似すぎている…あまりにも…あいつに…
 名前まで同じなんて…偶然で済まされるのか?
 へへ…依頼は後回しだ…こっちのほうが俺にとっては重要だ…!
 楽しくなってきたぜ…!久しぶりに!!」
174 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:04:11.96 ID:2BS/vWQo
怪異天眼異聞録

【怪異4 〜後引き神〜】
175 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:08:33.63 ID:2BS/vWQo
「しかし、いくらなんでも気絶させることは無かったんじゃないか?」

並んだカップラーメンに均等にお湯を入れながら俺は後ろを見ずにそう言った。
だが返事は返ってこなかった。
カップラーメンの蓋が開かないように蓋の上に箸を置き、トレイに乗せる。
こぼさないように慎重にトレイを持って机に運ぶ。

「…」
「…集中するのもいいが麺がのびるぞ」

エンプティは物凄く真剣な表情でジグソーパズルを凝視していた。
俺の言葉なんか聞こえてないようだった。
こうなっている時には何を言っても無駄とそろそろ理解していた俺は放っておくことにした。
3分ほど立って俺は自分のカップラーメンの蓋を開けて、抑えにしていた割り箸を使い麺をすすった。
食いながらエンプティのジグソーパズルを見ていたが、ふとしたことに気がついた。

「早いな…」

俺が寝ている間にルービックキューブを世界大会レベルまで早く完成させることが出来るようになったのだから
今更驚くといったことも無いのだが…やっぱりあまりにも凄い技術ってやつには目を奪われる
いや、そもそもこれが技術によるものなのかは定かではないが…
しばらく見ているとピタリとエンプティの手が止まった。
「ふぅ」と息をつきながら顔をあげる。

「ん、もう出来たのか」
「とっくに3分立ってるよ、早く食わなきゃ伸びるぞ」
「そうか、しかしジグソーパズルとは楽しいものだな」

言いながらエンプティはカップラーメンを手にとって小さく麺をすすりだした。
女の子みたいな食べ方するなコイツ。

「しかしあそこまで微細な違いを見分けなければいけないとはな、普通の人には少々敷居が高いだろうな」
「違いってなんだよ」
「ピースごとの曲線の僅かな違いや、角部分の湾曲の差とか…」
「…お前、もしかしてそれを見てピースをはめてるのか?」
「それが正しい遊び方じゃないのか?」

嘘だろ、と思った。
つまりこいつは絵を見てるんじゃなくてピースの形自体を見て組み立てているってことじゃないか。
だったら裏返しでやっても出来るんじゃねぇのか?
こいつは一体何なんだろう、本当に俺たちと同じ人間なんだろうか。
エンプティは本気で?マークを浮かべたような顔をして俺を見ている。

「…や、まぁ…遊び方は人それぞれだからな…」
「うん?」
「…いいから食えよ、のびるぞ」
「ああ」
176 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:09:31.85 ID:2BS/vWQo
ぞるぞるとさっきと違い今度は勢いよく麺をすすりだすエンプティ。
俺はすでに食い終わってしまい手持ち無沙汰になっていた。
するとピンポーンと部屋に音が響いた。
ネットで何か買った覚えは無い、セールスとか新聞の勧誘だったらエンプティに追い返してもらうか。
そう思ってドアを開けた。

「ハロー」
「…」

昨日の酔っ払いが満面の笑みで立っていた。
すぐにドアを閉めようとしたが閉め切るよりも早く足が滑り込んできてドアが閉まるのを妨害する。

「待て!ちょっと話を聞いてくれ!頼むから!」
「話すことはねぇってば!つうかなんでアンタ俺の家知ってんだよ!!」
「だからそのへんも含めて全部話すから!ちょっとだけでいいから話を聞いてくれ!!」
「いや帰れよ!警察呼ぶぞ!!」
「手土産もって来たからさぁ!!ほらほら!極上の日本酒だってば!!」
「俺は酒は飲まないんだよ!!」
「あ、そうか…お前コーラだったな」
「え…?」

なんでそこまで知ってるんだ?と思い、一瞬だけ手から力が抜けた。
その瞬間にドアがガバッと開かれてその隙間に男が身体を滑り込ませてきた。
ヤバい、侵入された。

「危害を加えるつもりは無い、ちょっと話したいだけだ…!」
「…信じられねぇぞ、つうかどっちかと言うと危険なのはお前のほうだぞ」
「どういう意味?」
「ゆき兄ッ!伏せろッ!!」

背後から聞こえたエンプティの声に振り返る。
銃を構えて、完全な戦闘態勢のエンプティがそこにはいた。

「待て待て待て待て!!それはマズい!それはやめろ!!」
「ちょ、ちょっと、待て!だから危害を加える気は無いんだって!!」

男と俺の意見が合致した。
俺はまぁ家の前で人が死ぬなんて洒落にならないという観点からだが男のほうはまず間違いなく自分の命の危機からだろう。
というかエンプティの目がマジになっているのが最も洒落にならない。
俺が男から離れた瞬間にアイツは間違い無くブッ放す。
狙われてるのは俺じゃないが俺も動けなくなっていた。
どうしようも出来ずに固まってると小声で男が話しかけてきた。

「利害は一致してるようだ、俺に話をあわせろ」
「いや、でも…」
「大丈夫、絶対に危害は加えない、俺を信用してくれ
 俺だって死にたくねぇし、お前も殺人事件なんかに巻き込まれるのはゴメンだろ?な、なッ?」
「確かにッ…!ただ一つ教えとくがアイツは一般常識がちょっと欠落してるからな…!」
「おーけーおーけー…そういう奴は慣れてる
 と、とにかく、お前は俺の意見を肯定してくれ、な?な?」
「わ、わかった…!」
177 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:11:20.70 ID:2BS/vWQo
俺と男はゆっくりと笑顔でエンプティの方向を振り返った。
もちろん2人とも引きつった笑顔だった。
男がベラベラと喋りだした。

「いや、ほら、俺とコイツさ、昔からの友達でな
 あんまり久しぶりだったから、ちょっと俺のこと忘れてたんだよな?な?」
「う、うん、そう、そうだぜ、このオッサンとは友達だったんだぜ」
「オッサンじゃねぇーよ!…あっとぉ…ハハハ…
 えーと、ほら友達だから家を知ってたんだしー…
 昨日はちょっと久しぶりすぎて感極まって取り乱しちゃったんだよ…
 そんで今やっっと俺のこと思い出したんだよな?」
「そうそうそうそうそう!!今やっと思い出したんだよ!
 え、えーと…」

しまった、俺はコイツの名前知らない
そしてエンプティの顔がなんか複雑な表情になっている。
もう少しで押し切れそうなんだが…!

「そうさ!昔はこのへんじゃゆき兄とほろにがのコンビはかなり有名だったんだぜ!」

ナイス!自然に自分の名前を教えやがった!このオッサンなかなかやるじゃねぇか!

「そうそう!俺とほろにが昔この辺でえーと…えーと…」
「人が落ちないように外れたマンホールを直す慈善的活動とかしててな!」
「外れたマンホール…?あ、うん、そうそうそうそうそう!」
「本当久しぶりだな!ゆき兄!」
「ああ!本当久しぶりで感動したぜほろにが!!」

おたがい示し合わせたかのように抱きついた。
う、コイツ、酒と汗と煙草くせぇ…あと野良犬の口の臭いがする…
なるべく鼻から息を吸わないようにしてチラリとエンプティのほうを見る。

「…本当か?」
「ああ、本当本当」
「…ゆき兄、本当に本当?」
「ああ、本当に本当、だからホラ、お前はジグソーパズルでもやってろよ…」
「俺たち、ちょっと久しぶりに2人で話したいから…」
「あ、ああ、だから、ほら、エンプティ…」
「…わかった」

渋々、と言った感じだがどうやら納得したらしい。
銃を閉まう、しかしまだ俺たちのことを見ている。
これ以上ここにいるとヤバいと思ったのかほろにがが矢継ぎ早に言う。

「そ、それじゃいこうぜゆき兄」
「そ、そうだなほろにが…エンプティ留守番頼むぜ!!」
「左足から1、2、1、2…」
「1、2、1、2…」
178 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:12:46.09 ID:2BS/vWQo
まるで社交ダンスを踊るようになりながら俺たちは外に出た。
最悪のShall we Dance?だなクソ…
そのまましばらく歩いて道に出た辺りて俺とほろにがは示し合わせたかのようにお互いの身体を突き飛ばして離れた。

「お前とんでもねぇ奴と一緒に暮らしてんだな」
「…まぁ…な…
 それはともかく結局お前は何なんだよ!」
「んん…立ち話もなんだからとりあえず飯食いがてら話そう、な?」
「…わかったよ」

警戒してないわけではなかったが少なくとも危険は無いだろうと思った。
そして言われるがままに近くのファミレスに行った。
ほろにがは店員も待たずにさっさと喫煙席に座り、俺にメニューを半ば投げつけるように渡してきた。
料理を注文するとほろにがはおもむろに煙草を取り出して煙を吸い始めた。

「…それで?どうして俺に固執するんだ?」
「…なぁ、こうして2人でいると何か思い出したりしないか?」
「何も思い出さねぇよ」
「…おっ…」
「おっ?」
「お…お…オー、リューマチが…」
「はぁ?」
「オー、リューマチ…オーリューマチ…オーリュー、マチ…おうりゅう…とか…」
「…は?」
「…いや、なんでもない」

こいつは何を言ってるのだろうか。
というかだいたい予想はついた、要するに俺はこいつの知ってる奴に激似で…
あまりにも似ていて、もしかしたら記憶喪失とかになって別人として生きているんじゃないのだろうかなんて思っているのだろう。

「…あのな、昨日も言ったが俺はお前を知らないんだ
 お前の知ってる奴に俺が似てるんだろうけど、それは本当に他人の空似なんだ」
「他人の空似で名前とか嗜好とかまで似るもんか!?」
「んなこと俺に言われても…そういうこともあるんじゃねーか?」
「俺にはどう見てもお前はアイツに見える…」
「ええとお前の知ってるゆき兄…ええい、まぎらわしいな…」
「お前の性格だ、もしかしたら…
 あれほど感動的な別れをして…今更俺たちの前にのこのこ現れるのが恥ずかしくて…
 わざと別人を振舞ってるとか…」
「だからー、俺は何も知らないって言ってんだろ?」
「ゆき兄は何も知らないって言いながら全部知ってた前科があるから信用できないねぇ?」
「だからそのゆき兄は俺じゃねぇって!」
「もう過去に囚われるのはよせよ〜、ぶっちゃけさぁ…ほら…
 お前がいなくなって俺だってちょっとは寂しかったんだぜ…?
 ね?ね?ちょっとほろにが様の恥ずかしい過去も聞けたことだし本当のこと言っちゃってもいいんでない?」
「だーからー…ああもう!わかんねぇ奴だな!!」
179 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:13:22.01 ID:2BS/vWQo
一向に話が進まない、ほろにがはどうあっても俺を自分の知ってるゆき兄として扱いたいようだ。
しかしだからといって俺はどうあがいてもほろにがの知ってるゆき兄ではないのだ。
なんとかして証明しなければいけないが…どうしたもんか
頭をひねって考えていると店員がほろにがのハンバーグ定食と俺のドリアを運んできた。
とりあえず一旦落ち着こうと俺たちは料理を食べだした。
が、食ってる最中ですら問答無用にほろにがは話かけてきた。

「つかおめぇ本当に忘れたのかモッチャモッチャ」
「…やめろよ、そんな口の中でグチャグチャになったハンバーグを見せながら喋るの…」
「ンゴックン…しかし…本当に別人みたいだな」
「だから別人なんだって…」
「…んー…なんでかな…なぜかわからないけどそうは見えないんだよな…」
「そう言われてもな、事実は事実なんだが」
「まぁ俺は自分で納得が行くまで調べないと気が済まないタチだからな」
「まだ納得いってないのか?」
「うん」

俺はため息をついた。
いったいどうすれば納得してくれるんだよコイツは。
だんだん頭痛くなってきたわ…
と、思った時、比喩とかじゃなくて本当に頭が痛くなってきたことに気づく

「う…」
「おい…どうした?」

頭を抑えて机に突っ伏す、ほろにがが慌て出す。
痛い…いた…い…
頭だけ…じゃなくて…眼が…痛い?
どうして…天眼が…?
身体から汗が出てくるのがわかる、身体は熱いのにまるで凍えそうなほど寒い。
呼吸がうまくできない、何かに締め付けられたように身体が重苦しい。

「お、おい…大丈夫…か?」
「う、あッ…!?」

わずかに顔をあげ、ほろにがを見た瞬間に心臓が止まるぐらい驚いた。
ほろにがの背にすがりつくように"何か"がいた。
それはまとわりついてるようにも見え、ほろにがを引っ張ろうとしているようにも見えた。
人のようにも見え、獣のようにも見える、ただ一つわかるのはその禍々しさから決して良い存在ではないということだけだった。
取り憑かれている。
そう理解するのにさほど時間はかからなかった。
やがて眼の痛みが治まるに従ってそれは霞のようにおぼろげになって、見えなくなった。

「はぁ…はぁ…」
「…どうしたんだ、いきなり?」
「…気分が悪い…帰る…」
「お、おい!」
180 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:15:55.60 ID:2BS/vWQo
俺はすぐさま立ち上がり、店を出ようとした。
慌てたほろにがが俺の腕を掴んだ。

「放せッ!!」
「うっ…」

思わず叫んでしまった、周りの客や店員が一斉にこっちを見た。
その視線にさらされながら、俺はほろにがに向けて言った。

「俺は、お前の知ってるゆき兄じゃない
 別人で、ただの他人だ、もうこれ以上話すことはない」
「…」
「それと…寺とか神社とかでお祓いとかしてもらったほうがいい」
「え?」
「…それじゃ…」
「あ…」

ほろにがは追っては来なかった。
ただ立ち尽くして、俺の背を呆然と見つめていた。
酷なようだが俺に出来ることは何も無いのだから…
そうさ、俺にとってはただの他人だ、知ったことか
店から出た時、どんよりと空が曇り少しばかりの雨が降っていた

「めんどくせぇ…濡れちまうな…」

走って帰ろうと思って足を踏み出す、だけどまるで力が抜けるように足から力が抜ける。
そのままバランスを崩して目の前に転倒する。
小さな水溜りに頭から突っ込む、ついでに膝と掌を擦りむいてしまった。

「いっ…てぇ…」

どうやら、さっき天眼が発動した影響がまだ少し残ってうまく走れなかったようだ。
身体についた泥を払い落として立ち上がる。
すりむいた膝が痛くてひょこひょこと足を引きずるように俺は歩き始めた。
雨が身体から体温を奪っていくのを感じ、震えながらゆっくり家へと向かう。

「待てよオイ!」
「…話すことは無いって言ったろ…」

後ろには、慌てて追いかけてきたのか息を切らしたほろにががいた。
俺は無視して歩き出した。

「…怪我したのか?肩貸すぞ?」
「いいよ、別に…俺はあんたの知ってるゆき兄じゃない…
 俺に肩貸す理由なんか無い、所詮他人さ…」
「…ああ、今ちょっとだけ、お前が俺の知ってるゆき兄じゃないと思えた」
「どういうこッ…?」

自然に、滑るように、ほろにがが俺の腕を掴んで自らの肩に導いた。
突然のことに驚いたと同時に顔から火が出るぐらい恥ずかしくなった。
181 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:16:45.51 ID:2BS/vWQo
「お、おい!」
「他人とか、関係ねぇんだよ
 …お前は、雨に濡れてる赤子を見たら見捨てて逃げるか?」
「はぁ…?」
「昔教えてもらったのさ、お人好しの馬鹿野郎にな」
「…」

俺たちは雨の中をゆっくりと歩き出した。
実際こんな大袈裟に肩を貸してもらう必要は無かったのかもしれないが…
冷たい雨の中で、ほろにがの身体はとても暖かかった。
やがてアパートについて俺は部屋に入ろうとした
てっきりほろにがもついてくると思ったが予想とは裏腹に少し離れた場所で頭をポリポリとかいていた。

「どうした?」
「…いや、その…なんか、色々悪かった…
 お前は、俺の知ってるゆき兄とは違うんだよな…」
「…うん」
「俺、行くわ…
 …ほんのちょっとだったけど、懐かしい思い出に浸れた…ありがとな…」
「…ほろにが」

ほろにがは背中を向けて歩き出した、とても悲しそうな背中。
呼び止めようと思ったが、出来なかった。
声をかけたところでどうにもならないことを俺はわかっていたから。
ほろにがが望んでいるのは俺じゃない、ゆき兄の声だから。
悲しいが、どうすることも出来ない。
…部屋に戻ろう。

だが、俺は忘れていた。
ほろにがにまとわりついていた"あり得ない者"の存在を。

不意に、背後から凄まじいまでの不快感を感じた。
テケテケの時や、隙間女の時と同じような、いや、下手をすればそれ以上の。
咄嗟に振り返り、道路に出る。
去っていくほろにがが遠くに見えた。
だが俺の眼には写っていた、ほろにがの周囲で蠢く悪意を。
気がつくと叫んでいた、あらん限りの大声で。

「ほろにがぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!!」

きょとんとした顔でゆっくりとこちらを振り向くほろにが。
その姿が、眩しい光に包まれた。
車のヘッドライトに包まれ、その姿は影として存在を色濃く強調する。
ほろにがも気づいたようだったが、それはあまりにも遅すぎた。
間に合わない。
だが、次の瞬間に起こったことは俺の想像を遥かに超越していた。
182 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:18:07.48 ID:2BS/vWQo
高速で突っ込んできた車のボンネットにほろにがは両手をつき、高く跳んだ。
空中で回転し、まさに当たるか当たらないかのスレスレで車を飛び越えたほろにが。
そのまま車は風を切り裂く轟音とともに俺の横を猛スピードですり抜けていった。
そして、ほろにがが地面に見事に両足で着地した。
俺は今起こった光景を夢じゃないかと呆然として見ていたがすぐに我に返り、ほろにがへと駆け寄った。

「だ、大丈夫か!?」
「ああ、あんぐらいのことには馴れてるさ」

そう言いながらほろにがは煙草を取り出して吸い始めた。
馴れてる、だって?
少し間違えれば命を失うようなことだぞ。
それに馴れてるなんてほろにがは一体どんな壮絶な人生を送ってきたっていうんだよ。
いや、そんなことよりも…

「ごめん、ほろにが…」
「なんでお前が謝るんだ?」
「…見えてたんだ…なのに俺は…自分には害がないからって…
 関係…ないからって…見捨てようとしてた…」
「…どういう意味だ?」
「俺…昔から人に見えない物が見えるんだ…
 さっき…見えたんだ…ほろにがに凄くよくないものが憑いてるのが…
 一目で危険なもんだってわかったけど…俺は…」
「…あー、だから寺とか言ってたんだな…」
「全部信じてくれなくてもいい!だけどッ…このままじゃほろにが死んじまう!
 騙されたと思って…」
「信じるぞ、俺は」
「え?」
「幽霊とかそんなもん、俺は余裕で信じるぜ?
 お前のその、人に見えないものが見えるって能力もな」

あっけからんとそういうほろにが。
それが嘘ではないというのが、なぜか理解できた。
ほろにがの目には疑惑や疑念というものは微塵も感じられなかった。
一方で俺は少々戸惑い気味だった。
EDEN機関の人間を除いて、天眼のことを信じてくれる人間なんてほろにがが初めてだったからだ。

「…ありがとう、ほろにが」
「まぁ、礼はともかくだ
 俺はどうすればいいんだ?寺いってお祓いでもすればいいのか?」
「…もっと確実な方法がある」
「おー、頼もしい」
「とりあえず、いったん俺の部屋に来てくれ」

ほろにがを引っ張って自分の部屋へと入る。
ドアを開けると奥からエンプティが出てきた。
183 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:21:24.04 ID:2BS/vWQo
「おかえり」
「エンプティ…」
「ん?」

俺はその場で床に手をつき頭を下げた。
いわゆる土下座だ。

「何の真似だ?」
「頼みがある」
「顔をあげてくれ…頼みってなんだ?」
「ほろにがに憑いている"在りえない者"を処理してやりたい」
「…」

エンプティは目を瞑って黙ってしまった。
俺は顔をあげてエンプティを見る。
しばらくしてエンプティが目を開き俺を見た。

「ゆき兄、それはつまり…関わらなくていい怪異に自分から関わろうとしているのか?」
「…」
「…私の任務は君の護衛、引いては怪異から守ることだ
 言っている意味がわかるか?」
「…助けたいんだ」
「それで君が命を落としたら元も子も無い」
「だから、エンプティが協力してくれればそんなことは無いんだよ!!」
「…私とて、全ての怪異から君を守れるかと聞かれれば…
 自信は無い、絶対など在りえない」
「だったら見捨てるって言うのか?」
「君が無事ならそれでいい」
「ッ…!」

俺は立ち上がって、ほろにがに外に出るようにジェスチャーをした。
黙って見ていたほろにがは頷きながら外へと出た。
そして俺も靴を履きなおす。

「どこへ行く気だ?」
「俺がやる」
「無茶をするな…」
「エンプティが手伝ってくれないのならこれしかないからな」
「行かせるわけにはいかない」

エンプティが懐から銃を取り出し、銃口を俺に向けた。

「撃てるのか?」
「殺しはしないが、動きを止める程度なら許される」
「…エンプティ」

銃口は確実に俺をとらえていた、もし引き金が引かれれば
俺は避けることは出来ないだろう。
だがそんなことより、俺の心には風が吹き荒れていた。
184 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:22:49.94 ID:2BS/vWQo
「…お前もなんだな、エンプティ」
「なに?」
「お前も、俺を見てはいない…俺の命と任務しか見てないんだ…」
「それは…」
「…前の俺もそうだったのかもしれない…
 でも今は違うんだ、テケテケの時も、隙間女の時も…俺の中にひとつの感情があった…
 そして今、その感情はこれ以上ないくらい強くなってる」
「感情…?」
「…助けたいんだ俺は…
 俺は俺を理解してくれる人を助けたいんだ!!
 俺は、ほろにがを助けたい!!」
「ゆき兄…」
「…天眼、世界を変える力とか神が望まない力とか実感沸かないし全然わかんねぇんだけどさ…
 俺は思うんだ、この力は、誰かのために使ってこそ本当の意味のある力なんじゃないかって
 …だから俺、助けるよ、ほろにがを」
「…それでも、行かせるわけには」
「エンプティ、お前は"撃てない"さ」
「!?」

俺はドアを開けて外に出た。
エンプティは、撃たなかった。
ただ呆然と俺の背中を見つめているだけだった。
外に出ると、もう雨は止んでいた。
煙草を吸いながら待っていたほろにがが話しかけてきた。

「話は済んだのか?」
「…ああ」
「ん、眼が…?」
「え?」
「…いや、気のせいか?」
「どこか、邪魔の入らない場所は無いかな?」
「…俺が隠れ家として使ってた廃寺なら近くにあるけどな」
「隠れ家ってお前どんな仕事してんだよ…」
「そのうち教えてやるさ、よし行くかにー」

そこからしばらく歩き、住宅街を抜け、あたりに緑が多くなってくる。
田舎道、と言うようなあぜ道を歩いているうちに段々と日が沈み、辺りが夕闇に包まれだす。
ひゅうひゅうと吹く風が心中の不安を煽っていく。
やがて、見晴らしのいい田舎道を塞ぐように目の前に林が現れた。
随分手入れがされてないようで最近人が立ち入った形跡は全くなかった。
がさがさと風に吹かれてこすれあう葉や枝の音がまるで得物を求める獣の息吹のようにも聞こえる。

「随分来てなかったが…雰囲気がえらく変わってるな…」
「気の持ちよう…だと思うけどな」
185 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:23:18.58 ID:2BS/vWQo
そして俺たちは林に入った。
さっき降った雨で地面の微妙なぬかるみ、濡れた葉に足を取られそうになるが
なんとかわずかに残っている道を辿っていく。
ぼろぼろになった石壇が見え、俺たちはそこをあがっていく。
石壇を登りきると、境内といった感じの広い場所は無く、あがってすぐの場所に寺としては小さめのお堂が鎮座していた。
扉をほろにがが開けて、俺たちは中に入る。
ツンと、鼻をつく匂いとギシギシと音を立てる古びた床。

「…よくこんな場所を隠れ家として使えてたな、俺なら1日持たないぞ」
「まぁ俺はあんまり雰囲気とか気にしないからな…
 と、言っても何か憑いてるって言われた今はちょっと流石に背筋がゾクゾクだぜ
 んで、どうすんだ?」
「そこに座ってくれ」
「ん」

ほろにがを座らせ、俺は対面するように前に立った。
大きく息を吸い込み、眼を瞑る。
大丈夫、うまく行く、テケテケの時と同じようにやればいい。
眼に意識を集中させて、見えない物を見えるようにするだけだ。
ほろにがに憑いている存在、まずはそいつの正体を突き止める。
額から汗が流れ落ちるのを感じる。
そして、暗闇に浮かぶ、どこかの光景。

「…ゆき兄…死んじまったのか…?」
「…全部もって行くとかかっこつけすぎにも程があんだろ」
「…俺は…」
「死んだって…思えないな…なんかよぉ…」

これは、ほろにがの過去だろうか
…ほろにがの悲しみと、後悔、行き場の無い怒り、それが手に取るようにわかる。
そして、ズルリとほろにがの背後で蠢く何か。
まとわりつくように、ゆっくりと、ほろにがの身体に手を伸ばしていく。
…ほろにがの中のある感情が増すと共に、そいつはほろにがにより深くまとわりつく。
そうか、コイツは…

「ほろにがから離れろ」
「…」
「離れろ!!!」
「無駄…無駄…こいつの心に――がある限り…」
「なら力ずくで引き剥がすぞ!!」
「出来るのか?そんなことが…?」
「…」
186 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:24:18.04 ID:2BS/vWQo
視界が暗転する、誰かに背中を掴まれて力任せに引っ張られる感覚。
世界が回る、やがて何も見えなくなって
最後には俺だけが取り残された。

「はッ!?」
「お、おい、どうした?」
「いや…」

気がつくと俺は元の廃寺に立ち尽くしていた。
目の前には心配そうな顔をするほろにががいた。

「…ほろにが、聞いてくれ
 お前に憑いてる存在は――」

そこまで言った瞬間、全身の毛という毛が逆立つような感覚が俺に襲い掛かった。
それは、純然たる悪意の証明。
俺は藪を突付いて蛇を出してしまった。

「まずい、まずい、まずい、まずい…!」
「お、おい、どうしたんだよ!?」
「逃げろ、ほろにが!今すぐここから!!!」
「え?」

メキメキと頭上から音が聞こえてきた。
上を見上げると、柱という柱に亀裂が入り始めていた。
まずい、本気で現実に干渉を始めてきた。

「ほろにが!!今すぐここから離れろォォォオオオオ!!!」
「お、おうッ…って…なぬ!?
 あ、足がうごかねぇ…!ちゃんとカルシウム取ってるのに!」
「足…!?」

ほろにがの足首を、何かが掴んでいた。
それは、ほろにがに憑いていた存在。
醜悪な笑顔を浮かべて、ほろにがが引きずり込まれるのを今か今かと待ちわびていた。
俺は、叫んだ、その存在の名を。

「後引き神!!!」
「なんじゃこいつはぁあああああああああああああああああああああ!!!」

ほろにがも自分の足元を見て叫んだ。
それが意味するのは、すでにほろにがにも見えている。とても強く現実へ干渉を始めているという事実。
やってしまった、下手にこちらから干渉したせいで奴を暴走させてしまった。
だが後悔する暇は無い、柱が軋む音が徐々に大きくなり
もういつこの廃寺は倒壊してもおかしくは無いような状態だった。
187 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:25:10.42 ID:2BS/vWQo
「ゆき兄!これどーすんだよ!!どーすんのよ!!」
「クソッ!!」

俺はほろにがの腕を掴み引っ張ろうとする。
だがほろにがの足はその場から全く動かない、まるで石像のように。

「無駄、無駄…」
「チクショォオオオオオオオオオオオ!!」

俺じゃ駄目なのか!?
やっぱり見えるだけの俺じゃ…駄目なのか!?
ふざけんなよ!!何が天眼だ!!何が運命すら捻じ曲げるだ!!
こんなんじゃ俺は何も変わらねぇじゃねぇかぁあああああああああああ!!!
考えろ…!こいつがほろにがに憑いている理由を…!

「ほろにが…!」
「何!?」
「後悔を、後悔を捨てろ!!」
「はぁ!?」
「こいつはッ…後引き神はお前の後悔に同調してお前に憑いてるんだ…!!
 ほろにがが後悔をすてれば、こいつはほろにがに憑いていることは出来なくなる!!」
「後悔って…何の後悔だよ!?
 ハンバーグとステーキどっちにしようか迷ってハンバーグにしたけどやっぱりステーキにしときゃよかったって後悔か!?」
「そんなんじゃなくて…もっと心の奥にある…!」

ガァン!と背後で何かが落ちる音がした。
天井の柱が倒壊したらしい。まずい、まずいまずい!!

「ほろにが!わかってるはずだ!自分の中にある後悔から目を背けないでくれ!!
 そして捨てろ!!そうすればッ…!」
「俺はッ…」
「早く!!もう時間が無いんだ!!」
「…そんな簡単に捨てれたら…俺は苦労してなかったよ…」
「クッソォォォォオオオオオオオ!!!」

いよいよ、廃寺が崩れる。
バキバキと音を立て、最も大きな柱が倒れた。
支えを失った屋根は、俺たちを押しつぶそうと一斉に降り注いだ。
こんなところで終わるのか!?
…終わってたまるものか!俺はやっと気づけたんだ!!
この力の意味に!自分が出来ることに!!
全てを呪って生きてきた俺がやっと自分を肯定してやれると思ったんだ!!
こんなところで、終わるわけには行かない!!!
俺は、こんな運命を認めない!!
188 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:27:18.51 ID:2BS/vWQo
「お前、眼が赤く…!?」
「開け!天眼ェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン!!」

視界が真っ赤に染まって、世界がゆっくりと動き出す。
天井から降り注ぐあらゆる物が迫る世界。
避けられない死が降り来る中、床が轟音と共に砕け散った。

「なっ!?」
「ウォオオオオオオオオオオオオ!!!」

突然消滅した床、足場を失った俺たちは床下に向かって落下を始める。
その床下の闇の中で、金色に輝く光が煌いた。
それは徐々に大きくなり、迸る光の奔流となって俺たちを包み込んだ。

「この光…!まさかッ!?
 これは…!龍脈ッ!?」
「吹ぅきぃ飛ぉべぇぇええええええええええええええええええええええ!!!」

右腕を上へ向けて振り上げた。
それに導かれるように、金色の光は上へ向かって爆発的な勢いで立ち上った、
まるで火山の噴火のように、圧倒的な勢いで降り来る瓦礫を跳ね飛ばし遥か空へと立ち昇る。
轟音と、眼を開けていられない程の煌きが俺とほろにがを包み込む。
全ての音が消えて、光の世界に閉じ込めらたような世界。
そこで俺は見た、俺ではない、もう1人の俺を。
ほろにがが、震える声で言った。

「…ゆき兄…!?お前…ゆき兄なのか…!?」
「後悔することなんか無い…
 あれが俺のするべきことだったんだ…
 だいたいガラじゃねぇぜ?お前が後悔だとか…」
「俺は…」
「…笑っとけよ、俺はそのために…」
「…囚われていたのは…俺のほうだったか…ハハハ、情けねぇな…」

ほろにがの身体から、何かが弾けとんだ。
絶叫をあげ、悶え苦しむ後引き神。
それを見て、彼は俺に振り向いた。
似てる、とても、俺と…

「あいつを頼むよ、俺のそっくりさん」
「…ああ」

俺は頷いた、それを見ると彼は小さく笑った。
そして、彼はほろにがから離れた後引き神へと近づいた。
そしてその両手を掴むと、彼の身体から光の中でも尚遥かに強い光と認識できるほどの煌きが溢れ出した。

「アァァァアアアアア…」
「俺は皆に生きて欲しかった…そのためにこの身を暗い地の底へと投げ打った…
 …お前は、俺が消し去ってやる…!俺の仲間に2度と手を出すんじゃねぇえええええ!!」
「アァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
189 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:29:21.53 ID:2BS/vWQo
全てを包み込む、光が世界を覆っていく。
ほろにがが叫んだ。

「ゆき兄ッ!!」
「じゃあな!ほろにが!」
「ゆき兄ィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」

光が弾けた、まるで大輪の花のようにその残滓を散らしていく。
あまりにも美しく、儚く、優しき花…
後引き神の絶叫と、ほろにがの縋り付くような叫び声の中で、世界がまた暗く暗転した。
190 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:30:05.08 ID:2BS/vWQo
「う…」
「気がついたか…」
「エンプティ!?」

飛び上がるように起きると、目の前にはエンプティが不機嫌な表情で座っていた。
周りを見渡すと、潰れて残骸となった廃寺が目に飛び込んできた。

「俺は…」
「後を尾けて様子を見ていた、倒壊しそうになった廃寺から引っ張り出した」
「ほろにがはッ!?」

エンプティは無言である方向を指差した、その先にほろにがが立ち尽くしていた。
俺は駆け寄り、話しかけた。

「ほろにがッ…」
「夢だったのか…現実だったのか…
 あいつに助けられたのか、それともエンプティってやつに助けられたのか…」
「…」
「でも、何か知らねぇけど俺にはわかるんだよな…
 あいつが、助けてくれたって…」
「ほろにが…」
「ありがとな、俺を過去から救い出してくれて」
「ああ…」

ほろにがはポケットから煙草を取り出して火をつけた。
だがそのまま吸わずに、火のついた煙草を地面に立てた。

「…よし」
「…」
「俺、お前のこと気に入ったぜ
 ちゃんとした自己紹介がまだだったよな?
 俺はほろにが、探偵だ」
「探偵?」
「ああ、探偵…
 ん?待てよ…見えない物が見える…ってことは」
「あん?」
「そうだよ!なぁ!俺に協力してくれよ!
 今受けてる依頼がマジで幽霊とか妖怪の仕業じゃねーのかって感じなんだよ!!」
「はぁ!?」
「報酬は払うからさ!な!な!」
「何で俺がッ…あ」

不意に頭に浮かんだのは光の中で彼に言われた「あいつを頼むよ」という言葉だった。
いや、でもしかし…
チラリと後ろのエンプティを見ると「もう勝手にしてくれ」と言わんばかりの表情だった。
天眼、この力は誰かのために…
191 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:31:31.12 ID:2BS/vWQo

「わかった…」
「ひょー!話がわかるね!!」
「…まぁ、頼まれたからな」
「…そういえば、なんだろ、今見るとお前あんまりアイツと似てないな」
「気の持ちようだろ」
「それもそうだな、ハハハハハ」


ほろにがと別れ、俺とエンプティは家に帰った。
エンプティは怒っているのか終始無言だったが
家につくと同時に不意に聞いてきた。

「結局あいつについてた怪異とは何だったんだ?」
「後引き神、古来より人の影に乗って延々とついてくるって言われた怪異さ
 …まぁ乗ってるのは影じゃないんだが」
「というと?」
「後ろ髪を引くとか、言うだろ?髪を神として言い換えれば、後ろ、引く、神となってそのまんまだ
 後ろめたいこと、引いては後悔、そういうもんを抱えてる人間に憑いて魂を奪おうとするんだ」
「なるほど…」
「…それと、ありがとな」
「ぬ?」
「撃ってくれたんだろ?ニルヴァーナで?」
「気づいてたのか?」
「薄々な…」
「…しかし1撃で消滅させることが出来たのは幸運だった
 お陰で君たちを助け出すことが出来た」
「そりゃ彼が手助けしてくれたのさ」
「彼?」
「俺にそっくりな彼がね」
「…?」
「ま、中身はだいぶん違うみたいだけど…」

192 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/03(土) 22:32:09.37 ID:2BS/vWQo
後引き神 完
193 :そら :2010/04/04(日) 01:06:24.71 ID:luEYUwDO


ねぇ他の戒名まだぁー(ばんばん
194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/04(日) 08:32:08.20 ID:KORsdKYo
 (⌒⌒)  ズンズン チャチャ
  \/

  (⌒`'⌒)  ズンズン チャチャ
   \ /
     Y

    / ̄\/ ̄\
   (          )  ハートキャッチ!
    \      /
      \   /
        V

   ヽ(^o^ )ヽ    ノ( ^o^)ノ  プリキュア〜
     (  )    (  )
      \\  //
        \ /
         .×   
         / \
       ε    3

             / ̄ ̄ ヽ,
            /        ',
          ノ//, {0}  /¨`ヽ {0} ,ミヽ
        / く l   ヽ._.ノ   ', ゝ \       Alright!!
      / /⌒ リ   `ー'′   ' ⌒\ \
      (   ̄ ̄⌒          ⌒ ̄ _)
      ` ̄ ̄`ヽ           /´ ̄
           |            |
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/04(日) 11:07:13.89 ID:ASvxxgDO
撮影どうなったか気になってるんだがwwww
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 16:46:05.69 ID:0zz2fEDO
>>195
うじ兄のSS始まったから大人しくしてたww
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 16:58:51.13 ID:0zz2fEDO
じゃあ撮影の話


撮影場所はこの前の事務所

事務所に通してくれた女性はこの間のさかn…人ではない別の女性だった

女「ではそちらに座ってお待ちください」
俺「うぃっしゅ」
隅でジョジョ立ち開始。同じ撮影待ちの人にジロジロみられる。

男「…」
俺「…あ、気がつきませんで。フリスクいります?」
男「…ず、頭痛ですか?」
俺「いいえ、ただ待っているだけですが?」
男「は、はぁ…ってこれフリスクじゃな…いえなんでもないです。」


椅子が拳一つ分ぐらい離れたのがわかった
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 17:05:33.23 ID:0zz2fEDO
言っておくと>>154-155>>157>>160はできなかった、すまん


撮影の順番がくる。おもむろにバックからキムチのタッパーとワックスを取り出す。

女「ではこちらの部屋にどうぞ」
俺「うぃっしゅ」

部屋は6畳ぐらいで中には白い布が壁にかかってた。


バイト終わったら続き書くわww
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 23:07:56.61 ID:0zz2fEDO
部屋には女性のカメラマンが一人いるだけで、あとは機材がいっぱいあった

カ「じゃあ荷物おいて準備できたら言ってね」
俺「うぃっしゅ」

とりあえず髪型をペガサス盛りっぽくワックス使ってサイヤ人っぽくしてみる

カ「ちょっとwwwwwwなにしてんのww」


おwwこの反応からしてキムチ食べても平気だろうww

俺「いただきます」

挨拶は忘れずに一気に書きこむ。ちなみにキムチはあまり好きではない。


するとカメラマンが慌てながら締め切っていた部屋のドアをバンッと開けて叫んだ

カ「ちょっと○○ちゃん!?悟空がキムチたべて部屋すごいことになってるんだけど!」


辛さに咳き込む俺とキレ気味のカメラマンを交互に見てその○○さんは爆笑してた
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/04(日) 23:15:46.85 ID:0zz2fEDO
とりあえず部屋にファブリーズみたいなのをかけ、俺はミンティアを食べまくった。ミンティア辛い。


まぁ結論からいうと撮影だから匂いは問題なかったからつつがなく終わった。サイヤ人は却下された。


撮影終了後、親子で来てた次の人に部屋を代わると「うわなんだこの匂いは」とか言ってたがきっと機材の劣化による腐敗臭だろう。



撮影終わった後は事務の人と今後の話をして帰った。
その事務の人にアドレスを願ったら「また今度ねww」とあしらわれた。すまぬ。
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 00:38:55.81 ID:N5f3OUY0
いいぞ!もっとやれ!
202 :そら :2010/04/05(月) 02:12:28.05 ID:sakzLQDO
シュール
203 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/04/05(月) 03:42:08.80 ID:mR/yraoo
ゆき兄乙!

って書きにきたんだが撮影シュールすぎワロタwwwwwwwwwwwwww
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/05(月) 04:37:55.86 ID:BoI5icw0
>>200
どうかんがえてもお前のキムチのせいだろwwwwwwwwww
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/05(月) 05:56:56.46 ID:gvBydIDO
>>200それでも拒否らない事務所ww
これからも続くのか?wwww
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/06(火) 00:10:42.75 ID:e4YEX.DO
>>205
続けていいんなら続けたいなww

ちなみに写真上がるのが24だからそれまでなにもできん、すまん
207 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/10(土) 22:08:49.71 ID:ndy78RQo
ごめんなさい 風邪ひいたから 寝かせてくれ
208 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/04/10(土) 22:34:56.90 ID:UbdUNGco
>>207
コーラ飲んで寝ろww
209 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/04/11(日) 16:07:25.38 ID:kjaTqEDO
名古屋に来たはずなのに…

http://imepita.jp/20100411/579340
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/11(日) 19:43:54.29 ID:Nko.6kSO
>>209
どういう事なの…
211 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/04/11(日) 20:58:44.75 ID:kjaTqEDO
>>210
近鉄名古屋駅の前にいたんだ……2体も……
212 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/17(土) 22:00:09.05 ID:RbBrgCQo
今日ちょっと今から出るから帰ってからうp始めっぞ!

…と、思ったけど帰り時間未定だな
明日にしようか、明日の夜10時
213 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/04/17(土) 23:36:14.31 ID:aW49yIDO
把握ー
214 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:02:32.34 ID:6jut7kwo
朽ち果てた教会は過去の面影を微塵も残してはいなかった。
色褪せ、雨に晒さ続けた天井には至るところに穴が空き、柱を剥き出しにする。
腐りはて、崩壊を待つだけの木製の椅子と砕け散ったステンドグラス。
建物の内部にまで侵入してきた木々。積もった埃。
一切の人の侵入を拒むようなその場所は、ある意味では本来の状態の時よりも聖域だと言ってもいいかもしれなかった。
だが、聖域を聖域たらしめる神像は赤黒く染まり、表面はヒビ割れが覆っていた。
その神像をじっと見つめている男が1人。
悪魔の名を冠する男、アルゴル。
アルゴルの背後でギィと、錆びきった蝶番が音を立て、ドアが開いた。

「おっと、先客がいるとは」

おどけた感じの声がアルゴルの背後から響いた。
アルゴルは神像から目を離さずに背後の声に答えた。

「こんな場所に何の用だい」
「俺は探偵でな、とある事件を調べてるんだ」

その言葉を聞いてアルゴルは後ろを振り返る。
そして少し大きな声で言った。

「12年前の虐殺事件のことか?」
「いや、それとは別さ」
「…そう」

アルゴルはもう1度神像へと目をやる。
天井の隙間から零れ落ちる太陽の光がアルゴルと神像を照らしていた。
それは、悪魔の名には似つかわしく、神々しさを漂わせていた。
アルゴルはゆっくりと口を開いた。

「ここは、神に見捨てられた者たちの墓標
 あまりここには立ち入らないほうがいい」
「お前はいいのか?」
「…僕は、とうに見捨てられているからね…
 いや、僕のほうから見限ったと言えばいいのか…」
「…12年前の虐殺事件って何だ?」
「12年前のクリスマスイブ、この教会でミサが行われ数十人の人間が集まっていた
 だが突然乱入したきた男が銃を乱射し、教会内の人間は数人の生き残りを残して皆死んだ
 神を信じていた人たちは、自分の信じる神の前でその命を奪われたのさ」
「思い出した、そういえば昔ひっきりなしにそんなニュースやってたな」
「…犯人は今も捕まっていないらしいけどね」
「…ん、まぁ…なんにせよここに俺の欲しい手がかりは無いようだな
 俺帰るわ、邪魔したな」

ギシリと、床が軋む音がゆっくりと遠ざかり。
ドアが大きな音を立てて閉まった。
静寂に包まれた滅びの聖域で祝福を受けたかのような悪魔はその後も1人で神像を見つめ続けていた。
神像は何も語らず、ただその場に在り続けた。
赤黒く、ヒビに覆われても、神像はその役目を果たし続けていた…
215 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:04:56.67 ID:6jut7kwo
怪異天眼異聞録

【怪異5 〜ハクレイ〜】

216 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:08:12.73 ID:6jut7kwo
天眼研究機関EDEN、あらゆる運命を捻じ曲げる究極の力を研究するために生み出された極秘組織。
俺は、あの日からずっとここにいる。
俺はどこにも行けないから、居場所が無いから。
だけどハクレイは俺に居場所を与えてくれた、そして名前を与えてくれた。
忌むべき名前だとしても、俺にはもうそれしかなかった。
夜だと言うのに通路は明るく、ずっとここにいると時間の感覚が無くなっていく。
やがてハクレイの部屋の扉が見えてきた、俺はいつものようにカードキーを取り出し扉を開けた。

「どこへ行っていた?」
「…」

返事はせずに俺は室内へと入る。
ハクレイの目線は常に手元の書類から動かなかった。
こいつはいつも書類かモニターを見ている、それが仕事なんだろうか。
しばらくするとポツリとハクレイが喋り始めた。

「あまり目立つな、お前は影だ、影は自らを誇示すべきではない」
「…今更だと思うがな、ほとんどの職員は俺のことを知っているはずだ
 施設内をうろつく、正体不明の不気味な男という認識でだ」
「それが問題だと言ってるんだ…」

ハクレイは小さくため息をついて額に手を置いた。
俺は続けた。
217 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:09:10.26 ID:6jut7kwo
「人の存在ってのは隠し通せるものじゃないはずだ
 むしろ9年間もの時間の中でよくその程度で済んだと言ってもいいはずだ」
「…確かにな
 だが今は時期が悪い、彼の完全なる覚醒にはどんな不確定要素も存在してはならない」
「また、あいつか…」
「随分と、彼のことが嫌いなようだな
 自分の存在を脅かされるが故か?」
「…そんなこと」
「少なくとも恐怖は感じているだろう?
 彼はもうレベルCまで到達している、この僅かな期間でだ」
「確かに素養は認める、だが俺は決して恐怖などはしていない」
「なら、確かめて来るといい」
「なんだと…?」
「実際見てくればいいじゃないか、気になるなら」
「…何を考えているハクレイ」
「何がだ?」
「お前は矛盾してる、目立つなと言ったと思えば明らかに目立つ行動を進める
 俺を救ったと思えば突き落とそうとする、天眼を求めると同時に捨て置こうとする…
 なぜだ?俺にはお前がわからない?」
「わからない、か」

ハクレイが、そっとサングラスを取った。
そして、顕わになったその眼で俺を見つめた。

「わかるわけがない、人が彗星をその手に掴めると思うか?」
「…」
「そして俺は進めてるんじゃない…
 見て来い、と言ってるんだ、この意味、わかるだろう?アルゴル?」
「クッ…」

俺は乱暴に部屋から出た。
あいつの居る場所はあいつが持ってる端末からデータが送信されるので知るのは容易い。
だがなぜだハクレイ…お前は何を考えて…

「これでいい、これで…
 俺の眼は…俺の目指す未来を確実に写している…」
218 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:12:31.95 ID:6jut7kwo
「…ボロいアパートだな、こんな場所に住んでるのか…」

今にも潰れてしまいそうなアパートを前にして俺は足を進めるのを躊躇っていた。
結局あいつの住んでる部屋の前まで来たもののドアを開ける手はどうしても伸びない。
ここまで来た以上帰るという選択肢が存在しないことぐらいは理解しているのだがやはり躊躇いが消えない。
そうこうしてるとドアの向こうから耳を劈くような大きな声が聞こえ始めた。

「あーーーーーーーーーーーー!テメェ俺のコーラ飲んだろ!!!」
「あんなにあるんだからいいじゃねぇか!!」
「よりによって1番冷えたの取りやがって!!しかもコークハイにしとるとかブッ殺してやんぞテメェ!!」
「お前のその異常なこだわりは何なんだよ!」
「お前ら喧嘩するな、1つの物にそんなにこだわるなんて恥ずかしくないのか」
「うるせぇよ!!!朝から晩までジグソーパズルやってる奴が!!」
「しかも裏返しとかお前どんだけ狂ってんだよ!」
「この際言うけどお前アッタマおかしいんだよ!!」
「…侮蔑!」
「銃はやめろ!!…あ、俺は撃たれないのか、なら良し!」
「良しじゃねぇ!!」
「消えろ!!」

一体何を言い争ってるのかわからないが…
中には俺の知らない奴も含めて3人いるのか?
と、その瞬間目の前のドアが勢い良く開いて俺の顔面に強く打ち付けられた。

「がッ!?」
「だからそうやって普通に銃を向けるなよ!!」
「敵に対して武器を構えるのは普通のことだろう」
「いってぇ…」
「おい、ほろにが」
「んだよ!」
「そこで鼻血出してる人に謝ったほうがいいんじゃねぇか?」
「あん?」

鼻を押さえながら飛び出して来た3人を睨んでいるとやっと視線が俺に集中した。
ドアを勢い良くあけたのは…このよくわからない男か。
問題のよくわからない男はヘラヘラ笑いながらまるで心のこもってなさそうな謝罪をしてくる
219 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:15:13.29 ID:6jut7kwo
「いや、わりーわりー、そこの馬鹿がアメリカばりに銃を抜いたせいでな
 ちょっと焦っちゃったんだ、ゆき兄ティッシュティッシュ」
「ほれ」
「んだ、もうあんまりねーじゃねーか、[ピーーー]しすぎなんだよ」
「最近はこいつがいっから[ピーーー]できねぇんだよ!
 減ってるのはお前が鼻水用に使いまくるからだろ!!」
「可哀想だな…盛んな時期なのにめんどくさい同居人がして[ピーーー]できないって…」
「エンプティ撃て」
「了解」
「おい待て待て待て待て!」
「お前ら俺を無視すんなよ!!」

あまりにもシカトされたので思わず叫んでしまった。
また3人の目がこちらに向いた。

「まぁとりあえず鼻血吹けよ兄ちゃん」
「ん?お前どっかで…?」

ゆき兄、天眼を持つ者…一瞬だが何度かEDEN内で接触した
この様子ならどうやらよく覚えてないらしい。
とりあえず鼻血を拭う…が、また垂れてくる
するとヘラヘラ笑っていた男がずいっと近寄って来た。

「それじゃダメだろ、鼻血ってのは止まるまでこう…」
「おい、何を!」
「突っ込むんだよ!!」
「ほがッ!!」

鼻に思いっきり丸めたティッシュを突っ込まれた。
正直、鼻の穴が避けるかと思った。 

「…正直思うがほろにがの馴れ馴れしさとエンプティの常識観念の欠落はどっちもどっちだな」
「そこの仏像と一緒にすんなよ」
「そのココロは?」
「木彫りみたいに顔が変わらない」
「あんまり上手くねぇな…」
「だから俺を無視するなよ!!」

段々イライラしてきたので一段と大きな声で叫んだ。
そしてもう一度3人は俺をじっと見た。

「まぁとりあえず中入れ、な」
「俺の部屋なんだけど」
「固いこというな、ほら入れや鼻血男」

半ば強引にそのままヘラヘラ笑う男に室内に連れ込まれた。
…他人の部屋をどうとかいう趣味は無いがこれは酷い。
コーラの缶と漫画がところ狭しと転がって…
部屋の一角の妙に綺麗な場所には中途半端に組み立てられた裏返しのジグソーパズル…
そして…足元に…裸の女…?
220 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:16:25.43 ID:6jut7kwo
「気になるのか?」
「…」
「ほろにがぁ!開きっぱなしで置いてんじゃねぇ!!!」
「男の泥棒相手には最大のトラップだぞ!俺はこの部屋の防犯能力を高めてやってんだよ!」
「単に読む途中でそのまま置いてんじゃねぇか!!」
「その女あんまり顔が好みじゃねぇんだよ」
「…あ、悪い、とりあえずここ座ってくれ」

そう言うと、ゆき兄はエロ本を掴んで乱暴に放り投げた。
ほろにが盛大にジャンプしてそれを掴んだが着地に失敗して台所の方向に音を立てながら転がっていった。
エンプティは隅っこに座ると裏返しのジグソーパズルを組み立て始めていた。

「まぁとりあえず、コーラでよければ…」

そう言いながら缶のコーラを俺に手渡して来る。
これが天眼を持つ者…
何の脅威も感じない、ただ馬鹿と共同生活を送ってる馬鹿みたいな奴じゃないか。
そんなことを考えてるとゆき兄は俺の顔をじっと見ていた。

「…何だ?」
「どっかで…会ったっけ…?」
「…気のせいだろう」
「俺ゆき兄ってんだけど、知らない?」
「…知らないな」
「名前は?」
「…アル…」
「アル?」
「アルゴ…いやアルク…ゴルディウス…」
「は?」
「アルク・ゴルディウス…」
「どちらの国の方で?」
「…ウンジャマ首長国連邦」

ゆき兄が引きつった笑いを浮かべていた。
…正直俺ならこんなことを言う輩が目の前にいたらブン殴ってるとは思うが…
腕組みをしたままゆき兄がズリズリと後ろに下がってエンプティをちょんちょんと突付いた。
そっと聞き耳を立ててみる。

「あるの?そんな国…?」
「…知らんな」
「…俺らが知らないだけで実際はあるのかもしれないが…」

納得したようでズリズリとまたこっちに戻ってくるゆき兄。
一体何を話したらいいのかわからなくなってるようで表情が複雑に変化していた。
…本質を見抜く天眼を使いこなせているのならあらゆる嘘は瞬時に嘘とわかる。
確かにそれは天眼をかなりコントロール出来るところまで到達しなければ不可能だが…
やはりこいつは、俺の脅威では無い。
…ハクレイの目が曇った、それだけのことだろう。
俺は鼻に刺さっていたティッシュを抜いた。
221 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:18:53.48 ID:6jut7kwo
「帰る」
「あ、そう…」

部屋から出ようとして立ち上がる。
玄関前でほろにががエロ本を読んでいた。

「帰るんか?」
「ああ」

ほろにがは手をひらひらと振って俺を送りだした。
ドアを開けて外に出る。
ハクレイ、やっぱり俺にはお前の考えてることは理解できないよ。
だが俺の心には安心と同時にどこか失望が存在していた。
確実に自分を上回る存在、だがそれが否定された安心。
そしてまだ見ぬ高みを見れるかと思ったことへの失望。
結局、俺も同じ穴の狢だということなんだろうか、神に反逆するEDENの人間たちと。
そんなことを考えていると閉めたはずのドアがガンと音を立てて開いた。

「ん?」
「…まだ何か用か?」

出てきたのはゆき兄だった。

「少し散歩だよ」
「そうか…」

別に示し合わせたわけでも無いのだがなぜか歩調が同じになってしまった。
何を話すというわけでも無く、2人して歩くはめになってしまった。
…正直不快だ。

「…気分悪くさせたならごめんね」
「は?」

突然話しかけらる、というか俺の心中を察したような発言に一瞬ドキリとした。

「さっき、俺知らない間に何か悪いこと言ったかもしれないから」
「別に…」
「…俺さ、最近まであんまり人と関わろうとしなかったから
 なんかこう、ストレートに物を言ってしまったりすることがあってさ」
「…どうして関わろうとしなかったの?」
「まぁ…ちょっと変な癖っていうか特技っていうものがあって…」
「ふぅん」

天眼を持つが故に誰も信じられなかった、か。
まぁ実際そうだろう、むき出しの人の心を直視し続けながら通常の生活を送るのは余りにも辛すぎる。
それならばいっそ閉じた世界で何も見なければいいのだから。
これは別に責められることではないだろう。
222 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:21:10.89 ID:6jut7kwo
「ところでお前なんて俺の部屋の前で」

そこまでゆき兄が呟いた時だった。
ギャギャギャギャ!と乱暴な音を上げながら黒塗りの大きな車が俺たちの真横に止まった。
そして間髪おかずにドアが開け放たれ、中から出てきた数人の黒い服の男たちがあっという間にゆき兄を車に引きずり込んだ。
その手際には一片の無駄も無く、ゆき兄すら自分が一体どういった状況に陥ったのかは判断できなかったろう。
次の瞬間には黒塗りの車はまた猛スピードで走り去っていった。
正直俺も何が起こったのか理解できなかった。
と、その瞬間、俺の携帯が鳴り響く。ハクレイからだった。

「…どうした」
「…EDEN機関のスポンサーの一人が欲に囚われた」
「どういうことだ?」
「言葉通りだ、何もわかってない分際で彼を独占しようとしている
 これだから金と権力だけ持った豚どもは…」
「つまり、危険が迫ってると」
「エンプティがいるから恐らく大丈夫だろうが
 奴らは数が多い、お前も援護に回れ」
「…1分ほど連絡が早ければ打つ手もあったが…」
「…」
「…」
「アルゴル、やることはわかるな?」
「…ああ、それで、敵は?」
「チャイニーズマフィアだ」

電話を切り、俺は状況を整理する。
とはいっても要するにゆき兄はさらわれた、それもクソ厄介なチャイニーズマフィアどもに。
だが…このまますぐに中国に連行するとは考えづらい。
むしろEDEN機関を裏切ったという事実がある、空路や航路は即効で潰されるというのは奴らもわかっているだろう。
そしてあの車は目立つ、乗った場所から降りた場所までこまかくチェックされる高速はまず使わないだろう。
かといって一般道路にもすぐさまEDEN機関の検問などが張られるはずだ。
…と、なるとやはりそう遠くない場所に潜伏先があるはずだ。
そこに潜伏している僅かな時間、ほぼ今日中とも言っていいほどの時間がチャンスなはず。
そうこう考えてると道の先から見た顔が息を切らして走りよってきた。

「クソッ!俺がついていながら!!」
「失踪事件調べてて重要な協力者が誘拐事件に巻き込まれるって洒落なんねーぞクソ!!」
「ん!お前!!」

エンプティとほろにがが言い争いをしながら走ってきて俺の前でとまった。
どうやらエンプティのほうにもハクレイから連絡が行ったらしいな。

「ゆき兄は!?見なかったか?」
「…俺の目の前で突然現れた黒い男たちにさらわれた」
「なぜ助けなかった!!」
「そんな状況じゃなかった…」
「貴様…!!」
223 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:27:19.88 ID:6jut7kwo
エンプティの瞳には確かな怒りが宿っていた、俺が撃たれるんじゃないかと錯覚するほどの。
だがそれをほろにがが止めた。

「やめろ、エンプティ、今そんなこと言っててもしょうがない」
「クッ…」
「…急ブレーキの跡…車か…車幅がこれで…大きいな…
 この近辺でこんな車はそう無い…だとすると人目のつかない場所か…
 …5人から10人ちょいほどのグループか?」

ほろにががブツブツと呟きはじめる。
さきほどエロ本を読んでた時とはまるで別人のような真剣な顔だった。
それだけで気圧とされそうな…

「わかるのか?」
「俺的にはわかる、だがそれが一般に当てはまるという保証は無い」
「どういう意味だ?」
「つまり推察はするが当たってるかどうかはわからないってことだ」
「…」

エンプティが鋭いツッコミを入れるとほろにがは押し黙った。
少し見直すところだったが…やはりこの程度か。
慌てふためく2人とは対照的に俺が落ち着いているのは、ある確証があったから。
それは俺が本気を出せば奴らの居場所などすぐにわかるということ。
それをハクレイも理解しているからこそ、あそこまで落ち着いていられる。

「で、とりあえず車は確定なんだけど
 なぁ、兄ちゃん、どんな車だったんだ?」
「どんなって…あ、あんなの」
「あん?」

気がつくと、目の前にさっきと同じような車が止まっていた。
スモークが張られた窓ガラスのせいで中は見えないという点まで同じだった。
不意に後ろでキィッ!と音がする。
振り向くとそこにもまた同じような車が存在した。
目撃者、及びそれに接触した人間も消す、か。
チャイニーズマフィアの考えそうなことだ。

「…なぁエンプティ、俺帰って寝ていいか?」
「駄目だ」
「かぁ〜っ…」
224 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:29:41.29 ID:6jut7kwo
どうやらこの2人も状況を察したらしい。
そして車のドアが開け放たれ、物騒な物を携えた屈強な男が煙草を加えながら出てきた。

「おいおい…こんな街中でマシンガンなんかぶっ放す気でいんぞ、あちらさん」
「あとのことは考えてないんだろうな」
「まぁ警察は政府と繋がってるような巨大マフィアには弱いからな
 そういうのに強いのは、何にも縛られてねぇ野良犬だ」
「随分と自信があるようじゃないか」
「そういえば、お前ゆき兄のボディガードだろ?
 実力見せてみろよ」
「そういうお前こそ、足手まといにはならない程度なんだろうな?」
「言ってくれるじゃねぇか…」
「お前のせいで俺の仕事が増えるんだ…」

なぜかマシンガンを突きつけられてるという状況なのに
ほろにがとエンプティは睨み合いを始めた。
それを見ていたマシンガンを構えた男が一声あげた。

「ヘイ!」
「「うるせぇ!!ちょっと黙ってろ!!!」」

その瞬間、男の顔面とみぞおちにほぼ同時に拳が叩き込まれていた。
白目を剥き、開いたドアから車の中に叩き込まれた男。
そしてほぼ全てのドアが開き、銃を持った男たちが車から一斉に降りて来た。

「兄ちゃん伏せてろよ!!
 おい!エンプティ!どっちが多く倒せるか勝負だ!!」
「望むところだエロ本野郎!!!」
225 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:32:10.05 ID:6jut7kwo
頭がガンガンする、確か、アルクとかいう奴と一緒に道を歩いてて。
そしたら突然真横に車が止まって…何かを押し付けられて…
ああ、そっからわかんねぇ…
目の前が真っ暗だ…
ただ不安定な意識に誰かの声が響いているのがわかった。

「これが天眼を持つ男ヨ?」
「EDENの手が伸びるのは早かろう、急げ」
「おい、起きろ」

真っ暗な世界がぐぁぁぁんと衝撃を受けた気がした。
感覚的に世界が回転するのだけは察することが出来た。

「起きろッ!!!」
「うッ!!」

腹に何かを叩き込まれるのを感じて俺の意識はやっと覚醒した。
だがまだ視界がぼやけている、上手く見えない。
かろうじて目の前に男がいるのだけはわかった。
突然強烈な光が目に飛び込んできた。
眩しいというより痛いと言ったほうが正解だった。

「…瞳孔正常、覚醒しました、大丈夫です」
「質問するヨ?」
「おい、聞こえてるだろう、返事をしろ」
「…ぁ…ぁ」

上手く声が出せない、かすれるような蚊の無くような音しか出ない。
だがそれでもとりあえずは相手には伝わったらしい。

「お前、天眼使えるヨ?」
「…ぃぁ」
「おい、ハッキリ言え」
「…ぃ…ぅ…」
「頭ふっとばされなきゃわかんねぇかコラァ!!」

後頭部に冷たい何かが押し付けられた。
それが何かを理解して全身からさーっと血の気が引いた。
何だ、この状況は。

「やめるヨ!!!!お前はどうしてそうすぐに処理しようとするヨ!!!」
「すみません…」
「…とにかく、これじゃあ一向に話が進まん、喋らすより行動で示してもらったほうがいいだろう」
「さすが大老ヨ、天眼ヨ、イエスなら頭を縦に、ノーなら横に振るヨ
 お前はEDEN機関に協力している天眼所有者で間違いないヨ?」
226 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:33:48.58 ID:6jut7kwo
俺はどうしようか迷っていた。
この状況は恐らくハクレイも想定外のことなのだろう。
少なくとも俺が今命の危機に直面していることは疑いようの無い事実だった。
シラを切るか、それとも正直に答えるか。
…いや、俺のやることはしばらく時間を稼ぐだけでいいはずだ。
エンプティたちに連絡が行ってないはずがない、今頃必死に俺を探してるはずだ。
迷った末、俺は首を縦に振った。

「手っ取り早く用件を伝えるヨ
 私達の言うとおりに天眼を使ってほしいのヨ
 こっちも時間が無くて、断ったら頭が割れたスイカになるヨ」

大体こいつらの考えてることは理解できた
しかし俺はそんな自由に天眼を扱えてるわけじゃない。
過大評価すぎる…しかし断れば死ぬ、それ以前に上手く喋れない現状じゃそれを伝えることが出来ない。
首を振らずにそのまま制止していると後頭部にガツンと衝撃が走った。
その衝撃と痛みが、更なる覚醒を俺にもたらす。

「反応するヨ…こっちもケツに火がついて急いでるヨ」
「…使ってやりたいが…俺にはまだそのレベルの力が無い」
「ん、喋れるようになったヨ?」
「おかげさまでな」

特徴ある語尾の男は豪華な拳法着のようなものを着ていた。
…顔は、中国人って感じだな。長い髪を後ろで縛っており髭こそ生えてないものの
漫画などで見られる典型的な中国人像に酷似していた。
すると奥の暗がりからだいぶ歳いった老人がゆっくり出てきた。
老人は中国男に何かを耳打ちする。

「大老言うヨ、今すぐそのレベルになるか、死ぬかのどっちかヨ」
「無茶苦茶言うなよ」
「少しだけ時間をやるヨ、瞑想でもして神に祈ってればいいヨ、おい」
「はい」

俺の背後から野太い声が聞こえてその男がドアを開けた。
そして老人と男が出ていき、部屋には縛られた俺と中国人男だけが残った。
なんでこいつは出て行かないんだ。
そう思っていると中国人男はまた喋りだした。
227 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:35:54.58 ID:6jut7kwo
「あの老人はもうろくしたボケジジイだ、全く君には同情する」
「あんた…?」
「驚いたか、俺はチャイニーズじゃあない、顔は整形で変えたものだ
 名前は…今はレイ・チャンと名乗ってる
 あのジジイに取り入るにはこっちのほうが都合が良かったからな」
「…」
「俺は天眼なんて信じてねぇ、そんな都合のいい力があってたまるか
 どいつもこいつも夢見すぎなんだよ」
「同感だな、みんな夢見過ぎで…俺を過大評価してんだよ…」
「…ふむ、取引しないか?」
「取引?」
「このままいると俺もEDEN機関に巻き添えくらって消されるんだ
 …俺はお前を逃がしてやる、お前は俺の命を助けてくれ」
「くっくっく…」
「!?」

ドアが大きく開け放たれ、銃を抱えた男たちが一瞬で俺たちを包囲した。

「なんだと…!?」
「お前が私を欺いていたように、私もお前を欺いていた
 その可能性は考えなかったかね?」
「大老…」
「所詮お前はその程度の存在だっということだ」
「…チッ」
「天眼の全てを捻じ曲げる力、ハクレイはそれをエサに我らの金を吸い上げる
 奴はペテン師だ、例え天眼が本当であったとしても私が生きている間に完成することは無いだろう
 ならば、天眼などに用は無い!!貴様は私に必要無い!!」

心臓が、跳ねるような感覚に襲われた。
この老人は、あまりにも醜い。
何人の人間を葬り、自らの欲を満たしてきたのだろうか。
何かが、身体に入り込んでくる。
黒い衝動が心の内で膨れ上がり、俺の意識を内側へと追いやっていく。

「りゅう、げん…」
「何?」
「龍玄…龍玄…」
「なぜ私の名前を知っている…?」

俺の口から出る言葉は俺の意思で発せられているわけではない。
俺の身体に入り込んでくる、奴らが俺の口を使っているに過ぎない。
視界に、数多の死が移り込む。
目を逸らすことすら許されない絶対の死。

「やめろ、やめろ、やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろ…
 許さない、お前は、よくも、俺を、やめろ、殺してやる…
 死んで、龍玄、呪って、道連れ、地獄に…」
「なんだ、こいつは…!?」
228 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:37:34.08 ID:6jut7kwo
ガクンと、まるで操り人形のように俺の頭がうなだれ、引っ張られるように上がる。
口から出る言葉は恐らく目の前の老人への怨念の声。
そして俺が見ている死の光景、恐らくこの老人に殺された人たちの光景。
凄惨極まりない、悪鬼の所業。
それが加速すると同時に俺の口から出る言葉も加速する。
静かな室内に、怨念が反響し、響き渡る。
その不気味さに銃を携えた男たちもが恐怖しているのがわかった。
それが統制に僅かながらの揺らぎを与えた。
その揺らぎを待っていたかのように、真っ暗な室内に一斉にライトが点灯した。

「む!?」
「おっらぁああああああああああああ!!」
「がはッ!?」

囲みの一角から咆哮と叫び声があがった。
そして、銃撃音が響き渡った。

「ゆき兄助けに来たっぜぇー!!」
「大丈夫かゆき兄!!」

エンプティとほろにがだった。
助けに来てくれたのは嬉しいが…そんなに目立ったら意味ないだろ!?
俺の予感通り全ての銃口がエンプティとほろにがに向けられた。

「さて、言われたとおり飛び込んだが…どうすんだ?エンプティ?」
「…EDEN機関を舐めるな、殲滅だ」

耳を劈くような銃撃音が炸裂した。
弾丸の雨が、室内に降り注いだ。
戦闘服のような物に身を包んだ大群が銃を乱射しながら一斉に工場内になだれ込んできた。
血と銃弾を撒き散らしながらバタバタと倒れていく男たち。

「おいおい!なんだこれ!」
「ケルビム部隊…EDEN機関が有する戦闘部隊
 楽園を守るためだけに存在する、楽園を害する者たちを滅[ピーーー]る存在!!」

叫び声、飛び散る血、後悔、憎悪、怒り、恐怖。
やめろッ…!!やめろ!やめろ!!やめろォ!!!
見せるな!!俺にそんな光景を見せるな!!来るな!!来るな!!来るなァァァアアアアアアアアアア!!!

「がッ…あがッ…!嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
 やめろォ!!ヤメロォ!!やめてくれぇ!!」
「お、おい、お前どうした?」
229 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:38:44.36 ID:6jut7kwo
もう自分が何をしているかわからない。
俺のすぐ横に立っていたレイは俺の変化に気づいたらしいが、俺にはレイの姿はもはやブレまくり歪んだ像としか認識できていなかった。
視界一杯に広がる亡者。それが俺を侵食し始めていた。

「しっかりしろよ!縄解いてやるから!!」
「うあぁ…がっ…あっ…ひっぐ…」
「ゆき兄ッ!!」
「エンプ…ティ…たすけ…」
「貴様ァッ!!ゆき兄から離れろ!!」

エンプティが懐からニルヴァーナを取り出し、レイに向けて発砲した。
違う、レイじゃない、俺が助けて欲しいのはこの亡者の大群からなんだ…

「がッ…!!!」

レイの右肩を弾丸が貫通する。
肩を押さえ、苦痛に顔を歪ませる。

「…貴様、ここは退くが今度あったら殺してやる…!!」

そう呟くとレイは銃撃戦を行っている男達の中へと飛び込んだ。
エンプティが近づいてきて俺を縛っていた縄を解く。

「大丈夫か!?」
「死が、死が来る…」
「これは…この場にいる全ての人間の死を捉えているのか?」
「あっげっ…ぐ…」
「まずい!ほろにが!!今すぐこの場からゆき兄を脱出させるぞ!!」
「無茶言うな!銃弾が飛び交ってんだぞ!!!」
「それでもやるんだ!!」
「ああクソ!」
230 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:40:54.91 ID:6jut7kwo
山の中腹辺りに作られていた廃棄された工場。
その中からは無数の叫び声で銃撃音が聞こえ始めていた。
どうやら、ケルビム部隊が突入したらしい。

「俺が出るまでも無かったか…ん?」

森の中を突っ切る影が見え、俺は木から飛び降りた。
そして影の前に着地する。

「何だ貴様ッ!?」
「…」

その影の正体は龍玄、反乱を起こしたチャイニーズマフィアの首領。
そして背後に側近であろう2人の男が明らかな敵意をこちらい向けていた。
…この場合、やはり俺がやるしかないか。

「…俺はアルゴル、かつて信じる者に裏切られた悲しき悪魔」
「撃て!!」
「残念、"視えている"」

身体を捻って、俺は飛んだ。
銃弾は俺の身体を掠め、背後の木に穴を開けた。
生身で銃弾で避けた俺に対して3人から恐怖の念が生まれるのが見えた。

「なッ…」
「俺には勝てねぇよ、人間は悪魔にゃ勝てねぇんだ」
「…ふざけるな!」

側近の1人が銃口を俺に向けた、だけどもう遅い。

「お前の死は最初から視えてた」
「ながッ…!?」

ゴキリと、音がして、男の首がありえない方向に捻じ曲がった。
捻じ曲げたのは俺の腕だから当たり前なのだが。

「なッ…いつ動いた?」
「貴様…人間か!?」
「悪魔だっつってんだろ?
 もう1人、死が視えてる」

パァン!と音がして、続いて水気を含んだ重い物体が地面に飛び散る音がした。
内臓を前方にブチ撒けて、もう1人の側近はその場に崩れ落ちた。

「ひっぃぃぃぃいいいいい…」
231 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:43:18.90 ID:6jut7kwo
最後に残った老人は腰を抜かし、その場に崩れ落ちた。
下半身から小水を垂れ流して、ガクガクと震えてやがる。
くだらねぇ、全然くだらねぇ。

「神に祈るか?そしたら、もしかしたら助かるかもしれないぜ?」
「…あ、あああ…」
「手を組んで、跪いて、祈りを捧げて見るか?」
「ひぃぃいいいい…!」

俺の言葉通りに老人は手を固く組み、その場に跪いて目を瞑り必死に神に祈りを捧げだした。
そうだ、人はどうにもならない状況を悟った時に神に祈る。
馬鹿どもは愛が地球を救うとか、信じる者は救われるとか自分の弱さを隠すための蓑にすがりつく。
だが、例えば頭上で核が爆発する寸前に愛や信仰で何が変わるというのだろうか。
祈りとは、逃げるに等しい、戦うことをやめた人間の行為に過ぎない。

「…神などいない、お前の死もとうに視えていたよ」
「ひあぁああああああああああ!!」

老人は飛び上がるように立ち上がって、俺から一直線に逃げ出そうとした。
だがもう遅い。

「お前の死は、お前がもたらした死によってもたらされる
 俺の眼には、それが見えている」
「ひぁッ!?」

老人の動きが突然止まる、いや、止められた。
それは足元から来る、自らがもたらした死によるもの。
亡者よ、怨さの声を響かせ、その恨みを晴らせ。

「龍玄、お前は許さない…」
「連れて行く…お前を連れて行く…」
「地獄に堕ちろ…」
「あぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

夜の闇を切り裂くような絶叫が響き渡った。
手についた血を舐め、俺は耳を澄ます。
銃撃音は聞こえない、どうやらあちらも全てが終わったらしい。

「ひ、ひひひひひ、ひひひひひっひひひ…」

乾いた笑い声を出しながら、ヨダレを口の端から垂らして虚ろな目で虚空を見つめる老人。
死にはしなかったか、まぁ死んだとほとんど同じことだな。
そう思っていると足音が近づいてきた。
232 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:46:15.32 ID:6jut7kwo
「…ハクレイ…?」
「やぁアルゴル、いい夜だな」
「なぜお前がここにいる?」
「ケルビム部隊を動かしたんだ、状況を確認するために来たに決まっているだろう」
「ハクレイ、俺は少し気になることがある」
「何だ?」
「お前は、ゆき兄に会いにいけと行った
 そして俺は会いに行った、するとこの事件が起こった
 タイミングが良すぎると思わないか?」
「何がいいたい?」
「お前、最初から全部わかってたんじゃねぇのか?」
「…フ、そう思いたいならそう思っているといい」
「もう1つ、今回の件でのお前の目的には俺に関わるものか、それともあいつに関わるものか」
「…先に本部に戻っていろ、アルゴル
 お前は考えなくていい、何もな」
「…チッ」

夜の森を俺は歩き出した。
月が冷たく、銀色の光で俺を照らしていた。
まるで、あの場所のように。
233 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:48:12.78 ID:6jut7kwo

「う…」
「気づいたか?」
「ゆき兄、大丈夫か?」

目を開けると、心配にそうに覗き込むエンプティと特に心配そうな顔はしてないほろにがの顔が飛び込んできた。
頭が、グラグラして気持ち悪い。

「うぷ…」
「おいおい!こいつ吐きそうだぞ!」
「気持ち悪いなら吐いたほうがいい」
「いや…大丈夫、それより…何がどうなったんだ?」
「…全部終わった、奴らは殲滅したよ」
「殲滅…」

ああ、そうだ、あの瞬間、俺の中に大量の死が流れ込んできた。
あらゆる剥き出しの感情が俺の精神と思考を侵食し、責め立て、押しつぶそうとしていた。
…初めてだった、擬似とかじゃなくて人が本当に死ぬのを見たのは
そして、その死が自分に流れ込んでくるという経験も。

「なぁ…エンプティ…」
「なんだ?」

ほろにがが重い声でエンプティに言った。

「いや…やっぱりいい…
 機関がどうあれ、お前らがゆき兄を助けようとしているのは事実だからな」
「信じられなくなったか」
「有無を言わさずに皆殺しってのはさすがにな
 悪だ、善だとは言うつもりは無いが…」
「…人類の新たなる可能性を守るためには多少のことなど目をつぶる
 そう、俺はハクレイ様に教えられた」
「ゆき兄、もう動けるか?」
「ん、ああ…多分」

俺は少しふらつきながらも立ち上がった。

「事後処理は全部ケルビム部隊がやってくれる
 俺たちはもう帰ろう」
「ああ…」

俺たちは3人でその場を離れた、どうやらここは森の中の工場だったようだ。
廃棄され、朽ち果てるのを待つだけの…
ケルビム部隊と呼ばれる戦闘服の男たちが忙しそうに走り回る中、見た顔が目についた。
234 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:50:15.14 ID:6jut7kwo
「アルク…どうしてここに?」
「…ゆき兄、気をつけろ」
「え?」
「ハクレイを信用するな」
「何…?」
「お前、何者だ」

エンプティが懐に手を突っ込みながら前に出た。
止めようとしたが手を振り払われる。

「今のハクレイと昔のハクレイは違う
 …いや、元から目的のために自分偽り続けていたのかもしれない」
「…」
「いいか、ゆき兄、忠告はした」
「あ、待って…」

アルクは、それだけ言うと去っていってしまった。
あいつも、EDEN機関の人間なのか?
ほろにがが呟いた。

「キナ臭ぇな、昔嫌ってほど味わった
 悪意とか陰謀とかの匂いがプンプンしやがんぜ」
「…EDEN機関をほぼ自由に動かせるハクレイ様がなぜそんなことをしなければいけない」
「目的のためには自らの手で作り上げた物でも躊躇なく破壊する人間だっているんだよ」
「まさか…」
「…帰ろう、エンプティ、ほろにが」

心の中に、何かが広がっている。
ほろにがも、エンプティも、何かを考え、何かに疑いを持つ。
それでもまだ、その何かがわからない。
正しいのか、正しくないのか、わからずに、ただ先の見えない暗闇を歩き続けているような気分だった。
235 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:51:36.27 ID:6jut7kwo
「…まだ、足りない…もっと…もっと…」

ハクレイは、遠くからゆき兄たちを見つめながら呟いていた。
その瞳は、緑色の光を薄っすらと放っていた。
236 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:52:45.44 ID:6jut7kwo
――10年前、EDEN機関日本支部

「おい!事故だ!!爆発してる!!」
「最重要機密の実験区画じゃないか…煙が酷い…!」
「薬品が燃えてるんだ、早く消火しないと…!!」

「…酷いな、フロアをぶち抜いてる…」
「…うえっ…」
「吐くなよ…いや、気持ちはわかるが」
「見てられないよ…これじゃ生き残りは…」
「…?反応があるぞ?」
「お、おい!こっちにいるぞ!!生きてるぞ!!!」



―ラグナロク・プロジェクト
EDEN機関の中でも選りすぐりの人材によって進められた極秘プロジェクト。
実験失敗、関わっていた全ての者が1人を除いて死亡。
最重要機密扱いであり、実験データ、概要、計画の全容などはデータが残っておらず。
また関わったほぼ全ての人間が死亡したため事実上凍結となった。
だがたった1人の生存者が断片化していたものの計画の全容を記憶していたため
9年前、彼がEDEN機関日本支部総帥になると同時にラグナロク・プロジェクトは再び動き始めた。
だが未だにラグナロク・プロジェクトの内容を知る者は皆無である。
実験の唯一の生存者であり、EDEN日本支部現総帥の男の名は
コードネーム、ハクレイ。
237 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/04/18(日) 22:54:00.34 ID:6jut7kwo
ハクレイ 完
238 :そら :2010/04/19(月) 01:18:23.22 ID:OJotgkDO
ほろにーさんがレギュラーと化している…!
239 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/04/24(土) 22:17:03.03 ID:qREcO6DO
ゆき兄が来ていないとな…?
240 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [しばらく携帯厨\(^o^)/]:2010/04/25(日) 21:45:12.18 ID:A4jfWwDO
過疎か…(´ω`)
241 :そら :2010/04/25(日) 21:50:13.36 ID:gfJYcMDO
面接ボーイはどうなったんでしょうか
242 : [('A`)]:2010/04/26(月) 16:35:50.42 ID:1km6UISO
まさか撮影での暴走のせいで修羅場に…
243 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:24:45.49 ID:XrEvWYwo
親戚!親戚!!
幼女!!幼女!!
244 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:29:37.20 ID:XrEvWYwo
1、みんなでご飯食べなきゃいけないから早くうpするよ!
2、早く幼女と戯れたいから早くうpするよ


どちらが正解でしょう。いや、どっちも正解ですけどね。
というわけで今日はもうさっさと今からうpする。
245 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:39:30.74 ID:XrEvWYwo
あの日から、一週間が過ぎた。
死者37人、あの時、あの場所で死んだ人間の数。
そして彼は、天眼を持つが故に37人の死をその眼で完全に捉えてしまった。
だから、彼が倒れたのは半ば必然とも言える。
心電図、脳波計、他あらゆる機械に繋がれたまま彼は眠り続けている。

「…肉体には何の異常もありません」
「精神に酷い負荷がかかり、それから逃げ出そうという防衛本能が…」
「外部からの刺激に全く反応を見せない、魂が抜けてるとでも言えばいいのか」
「だとすればこれは現状ただのタンパク質の塊ってことになるぜ」
「…何にせよ、目覚めるかどうかは彼次第ということに…」

研究員たちは口々に好き勝手なことを言い合う。
だが彼らの発言がまるっきり的外れなわけではない、むしろ充分すぎるほど的を得ている。
彼は、外部からの刺激に全くの反応を示さず、ただ眠り続けている。
機械によって得られる情報は彼は健康体だと提示する。
それでも彼は決して目覚めることなくただ静かに眠り続ける。

「ハクレイ様」
「うん?」

1人の研究員に呼ばれ、私はそちらを向いた。

「…脳波の計上から察しますと…彼はどうやら夢を見ているようです」
「夢、か…」
「ええ…それも、ずっと…」
「彼が見ているのは、37人分の人生か…それとも37人分の死か…もしくはもっと別の何かか…」
「我々にはそれを推し量ることは出来ません」
「全くその通り、だな」

ベッドの上で眠り続ける彼が見ている光景、世界。
それを私たちが共有することは決して不可能なのだ。
個々の人間にそれぞれ形作られる世界は、決して本人以外には理解されない。
そしてあらゆる意味で異端な世界を持つ者ほど、近い存在を求めるものだ。
君も、私もな…
246 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:40:37.69 ID:XrEvWYwo
怪異天眼異聞録

【怪異6 〜絵画〜】
247 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:41:51.08 ID:XrEvWYwo
硝煙の匂いが鼻を突き、視界を濡らす真っ赤な血液、鼓膜を揺らす断末魔。
そんな状況がいったいどれくらい続いたんだろうか。
最初の頃こそおかしくなりそうだと思っていたが人間の適応力というものは凄かった。
正直なところ俺はもう何も考えずに次々と映し出される死をただ見つめているだけになっていた。
何も感じず、何も考えず、ただ在るがままを見つめるだけ。

一体どれだけの間、そんな不毛な世界に堕ちていたのか。
気がつくと、辺りは真っ暗になっていた。
もう硝煙の匂いも、血の赤も、断末魔も聞こえない。
だがそれに代わって、正面に1人の男が背を向けて立っていた。
その手には、筆が握られ、虚空に向かって筆を振り続けていた。

「…この絵、どう思う?」
「えっ?」

男は振り向かずにそう言った。
だが絵なんか見えない、男と俺以外は完全な暗闇の世界だった。
俺はなんて言葉を返そうか困惑していると男が続けた。

「…完成しないんだ、どうしても、どうしても完成しないんだ…
 この絵に僕の全てを込めているのに…それでも届かない…
 僕の中にある全てを、僕の世界をこちら側に持ってくることが出来ないんだ…
 僕は、このままじゃ約束を果たせない…」
「約束?」
「…完成されない世界、この世界に…君は何を見る?」
「何も見えない…」
「見えるさ、君なら…
 目を開け、そして見据えろ、この世界を!!!」

その言葉に呼応するように世界が回転した。
それとも自分の平衡感覚が狂ったのだろうか。
何にせよ、俺の感覚の上では世界は上下左右がごちゃ混ぜになった。
そして、暗幕に穴が開いたように小さな光が、視界を闇から救い上げていった。
248 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:43:15.35 ID:XrEvWYwo
10月、そろそろ寒さが身にしみる季節になってきた。
だっつうのにこの部屋は隙間風が多くて余計な寒さが直撃している気がする。
適当なゴミクズを隙間に埋めてなんとかしのいでいるが本格的に冬が来る前になんとかしたほうがいいのかもしれない。
とは言っても先立つ物も無く、どうにかしようと思いつつもどうにもならない状況になっている。
と、考え込んでるとドアがコンコンと叩かれた。

「ユキスさん?」
「いるよ」
「開けますよ?」

立て付けの悪いドアが力任せに開けられる。
開け放たれたドアから姿を覗かせたのはソーラだった。

「何か用か?」
「何か用かじゃないですよ、この前立て替えた絵の具代いつ返してくれるんですか?」
「ああ…悪い…もうちょっと待ってくれないか?」
「ハァ…」

ソーラは溜め息をつきながら腕を組んで俺の部屋を見渡した。
壁に貼り付けられてる無数の絵を見ながら。

「相変わらず売れてないんですね」
「一昨日も画商に3枚ほど置いてきたけどな、多分無理だろうな」
「…このアパート代も随分滞納してるんですよね?
 それどころかロクに食べてもないんじゃないですか?」
「倒れない程度には食ってるよ
 まぁ最近ちょっとキツいけどな」
「しょうがないな…昨日食べたチキンの余りが少しあるんですけどいりますか?」
「いる」
「…持ってきてあげますよ」
「持つべき物は同じ夢を持つ友だねぇ…」

ソーラが部屋から出て行くのを見届けると俺は筆を机の上に置き
中途半端に書き上げられた絵を壁際に寄せて久しぶりのご馳走を待った。
しばらくするといい匂いを漂わせながら皿の真ん中にちょこんと乗せられたチキンを持ってソーラが戻ってきた。
机の上に置かれたそれを口に突っ込む。
貪るように食べる俺を尻目にソーラはさっき壁際に寄せておいた俺の絵を見つめていた。
小さなチキンはあっという間に俺の胃袋の中に消えてしまい、後には皿だけが残った。
皿についた肉汁を舐めようとも思ったがソーラが見ているのでそれはやめておいた。
と、そこでソーラはポツリと呟いた。
249 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:44:42.32 ID:XrEvWYwo
「…僕は好きなんですけどね、ユキスさんの絵」
「ん?」
「技術とかそんなんじゃなくて
 見る人間のもっと深い所に語りかけるような何か…
 ユキスさんの絵からはそういうのを感じるんです」
「そんな大それたこと考えてなくてただ描きたいように描いてるだけだぜ?
 …正直なところ上手さでいったらお前のほうが上手い」
「僕の絵はまだ技術だけですよ、それも誰かに教えられた技術
 さっきも言ったけどユキスさんの絵は技術とかそういう問題じゃなくて…」
「フォローはいいさ
 知ってるぜ?最近お前の絵はけっこう売れてんだろ?」
「え…」
「画商からちょっと聞いたんでな」
「…僕は自分の絵が売れるのが不思議でしょうがないんですよ」
「何言ってんだ?美術学校でも抜群の成績なんだろ?」
「…結局皆、小手先の技術でしか見てないんですよ
 確かに俺の絵は売れてます、でもまだ俺はユキスさんに勝てる気がしません」
「なんか難しくなってきたな」

俺は書き溜めていた数枚の絵を集めてそれぞれを額に入れた。
そして出来た奴を背中に担いで立ち上がった。

「どこ行くんですか?」
「道端で売ってみる、寒くなるとできねぇからな
 それに絵の具代もさっさと返さないといけないしな」
「…」
「じゃ行ってくるぜ、チキンありがとな」

部屋を出ようとすると慌ててソーラもついてきて一緒に部屋を出た。
ドアに鍵をかけようとしたがこんなボロアパートに入る物好き泥棒がいるのかとふと思い
鍵をかける必要があるのかと考えたが、ソーラがじっと見つめてくるので一応鍵をかけた。
ソーラと別れ、俺はアパートを出て大通りに向かった。
適当な場所を陣取り、持ってきた絵を広げて、その真ん中に座り込んだ。
道行く人々はチラリと見るだけでさほど興味を持たずに通り過ぎていく。
とりあえず出てきてみたもののやっぱり全く売れる気がしない。
そのまま無情にも時間だけが経過していった。
250 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:45:58.15 ID:XrEvWYwo
身体がすっかり冷え切ってしまった頃だった。
1人の女性が俺の前で立ち止まった、いや、正確には俺の絵の前で。
話しかけようと思い、一瞬身を乗り出す。
だけど、話しかけられなかった。
その表情があまりに真剣で、そして美しかったから。
俺は少し上げた腰をゆっくりと降ろし、ただ彼女の興味が絵から離れるのを待った。
ざぁっと、強い風が吹き、街路樹から葉が舞い散り、ひらひらと地面に落ちる。
そしてまた、風に吹かれてどこかに消えていく。

「あ…」

彼女が小さく声をあげて目線を絵から離した。
そして目線が合い、俺は言おうと言葉を失った。
深い緑色の瞳に、思考が全て奪い去られた。

「…!」

ポカンとしていると女性は一瞬驚いたような顔になり小走りで走り出した。
あわてて呼びとめようとしたがもう遅かった。
女性の姿はもう大通りの遥か遠くに小さく見えるだけになってしまっていた。

「結局…買わねぇのかよ…期待させやがって…」

落ち込みながらもう1度座りなおした。
それから辺りが暗くなるまで粘ってきたが結局1枚も売れることは無かった。
冷たくなった両手をこすり合わせながら俺は広げていた絵を片付け始める。
空腹と寒さを堪えながら俺は帰ることにした。
251 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:47:08.63 ID:XrEvWYwo
アパートに帰りつくと廊下でソーラとすれ違った。

「どうでした?」
「駄目だ」
「…元気出してください」
「別に落ち込んでないさ、いつものことだ
 とりあえず疲れたから寝る、絵の具代は…もうちょい待ってくれよ」
「…わかりました」
「悪いな」

そう言って俺は自分の部屋に戻った。
ランプに火を灯すと、真っ暗な室内がぼんやりと照らされる。
背中に背負った絵を乱暴に床に下ろす。
疲れていることに間違いはないがとても眠る気は起きなかった。
椅子に座り込み、俺は筆を取った。
真っ白な、何も無い世界を、自らの感性だけで埋め尽くしていく。
それが、たまらなく好きなんだ。
だけど、現実は無情だ。
自分でもわかってる、俺の絵は時代を代表する名画のように万人を魅了する力なんて持ってはいない。
恐らく、俺は後世に名を残すことは出来ないだろう。
それでも、誰かの心に、俺の世界を残せたなら…その時は…
朝日が昇るまで、俺は描き続けた。
1つの世界を。
252 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:48:18.40 ID:XrEvWYwo
今日も今日とて道端で売ろうと試みてみる。
まず間違い無く売れないだろうというのはそろそろわかっている。
しかし流石にそろそろアパートを追い出される危険性をはらんできた。
追い出されればいよいよヤバい、冬が来たらまず俺は死んでしまうだろう。
だがそうは言っても売れないものは売れないのだ。
いよいよもって危険な状況に追い詰められた俺は頭を抱えてうなだれていた。
そんな俺に話しかける声があった。

「あの…」
「え?」

見上げると、深い深い緑色の瞳。
一瞬の戸惑いのあと、記憶が呼び覚まされる。
数日前に俺の絵を真剣な表情で見つめていた女性だった。

「買ってくれるんですか?」

今度はちゃんと言葉を出すことが出来た。
とはいうものの半分以下の期待ぐらいしかしていなかった。
売らなきゃやばいと感じてるのに売れるわけがないという相反した思考を持ってる自分が少し嫌になった。

「あの…お願いがあるんです」
「お願い?」
「…私の絵を描いてください」
「はい?」
「先日、ここで貴方の絵を見て、とても…感動しました
 どうかお願いします」
「いや…そんな…」
「これを…」
「?」

彼女が俺に1枚の紙を手渡してきた。
それが小切手だということを理解すると同時にそこに書かれていた金額に心臓が飛び出しそうになった。
一生遊んで暮らせる、とまではいかないまでも質素に暮らせば人生の半分ほどは何とかなるんじゃないかというほどの大金だった。

「このお金でどうかお願いします」
「…」

真っ直ぐに俺を見つめる深い緑色の瞳。
俺は少しだけ笑いながら言った。

「過大評価だ…」
「え?」
「…正直、僕の絵にここまでの価値は無い
 この金額ならもっと有名な画家にだって描いてもらえるはずだ」
「…私は今まで生きてきた中で沢山の名画を拝見してきました
 でもその中のどれよりも貴方の絵に心を奪われたんです
 私は、どんな名画よりも貴方の絵が好きなんです、お願いします」
「…」
253 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:50:02.42 ID:XrEvWYwo
深々と頭を下げる彼女を見ながら俺は思考する。
全く理由はわからないが、彼女は俺の絵が気に入って。
物凄い大金で描いて欲しいと言ってきている。
降ってわいた幸運のようなものだ、断るなんてことは愚の骨頂だ。
しかし金額が金額だ、上手い話すぎて裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。
俺はもう1度彼女を見た。
深い吸い込まれそうな緑色の瞳、長いプラチナブロンドの髪、どこか浮世離れしていると思えるほどの白い肌。
白いドレスに彩られたそれらは、まるでそれ自体が一つの絵画のような美しさを漂わせていた。
心臓が、トクンと跳ねた。
初めての経験だった。誰かを見て描きたいと思ったのは。
とても美しい夕暮れや、平和な町並みを見て描きたいと思ったことは何度かある。
だが人を見て、描きたいと思ったことは一度も無かった。
彼女を描きたいと心の底から思った。

「わかりました…描きます、いえ、描かせてください」
「本当ですか?」
「準備に数日ほどかかります…
 家の場所を教えておいてください、それと…描いている時は長時間動けませんけど大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、家の場所は…」

彼女の家の場所をメモに取り。
渡されたお金で準備を整えるために俺は立ち上がった。
そこでふと名前を聞いていないことを思い出した。

「お名前は?」
「アルテニア・シルフォード、アルテニアで結構です」
「じゃあ俺のことはユキスで結構です、それじゃまた後日」
「お待ちしてます」

キャンバスを買わなくちゃ、それも一番上等なやつを。
それから、アパート代を払って、ソーラに絵の具代を返して…
使い道はどんどん思いつく、だが今はとりあえず最高級の道具を揃えないと。
完璧に描いてみせる、アルテニアの全てを。
半ば飛び跳ねるようにして俺は画材店に飛び込み、ありったけの道具を買い漁った。
254 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:50:41.66 ID:XrEvWYwo
大量の画材道具を抱えてふらふらしながらアパートに帰り着き階段を上がる。
上がりきった廊下でソーラで出会ったが俺の抱えている荷物を見るなり口をポカンと開けたまま呆然となっていた。
だがすぐに我に返ったようで慌てて俺に質問してきた。

「ど、どうしたんですかそれ?まさか買ったんじゃないっすよね!?
 拾ってきたんすか!?どこで?うわっ…これ最高級品じゃないっすか…!?
 まさか盗んで…!?」
「ちげぇよ…仕事の依頼があってな、俺に肖像画を描いて欲しいんだってよ
 あ、金入ったから絵の具代返すぞ?」
「あ…そうなんですか…
 しかしこんな最高級品で描くなんて…」
「道具にこだわりはないが、気持ちよく描けるからな」
「まぁ…なんにせよ、良かったですね」
「ああ、それじゃな」

画材を買ったお釣りからソーラに前に借りた絵の具代を返すと俺は部屋に戻った。
乱暴に室内にスペースをあけてそこに買ったものをブチまけ必要な物を分けながら準備する。
久しぶりにテンションが上がってきた、いい絵が描けそうだ。
255 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:51:22.20 ID:XrEvWYwo
メモに従い、アルテニアの家の前についた俺は考え込んでいた。
俺の絵にあんな大金を出すような人の家だからさぞや大豪邸なんだろうと勝手に思っていたが
なんてことはない、普通の家だった。
まぁ多分家にはこだわらない人なんだろうと勝手に納得して俺はチャイムを鳴らした。
ソワソワしながら少し待っているとドアが開く。

「あ、いらっしゃい、ユキスさん」
「どうも、あと、さんは入らないよ」
「…じゃあユキス、いらっしゃい、どうぞ中に入って」
「あ、それじゃ…お邪魔します」

そのままリビングに通された。
家族が見当たらないが1人で住んでるんだろうか。

「ごめんなさい、散らかってて」

どこが?と思った。
これで散らかってるというなら俺の部屋は爆弾が落ちた後ぐらいのレベルだ。
アルテニアは紅茶を出してくれた。

「それで…私はどうすればいいでしょう?」
「今日はラフスケッチに来ただけですから楽にしてていいですよ」

俺は一口だけ紅茶に口をつけ、スケッチブックを取り出した。
アルテニアは少し緊張しているようだった。
俺は緊張をほぐそうと描きながら少し話しかけた。

「…俺の絵のどこがそんなに気に入ったんですか?」
「それが…自分でもよくわからないんですよね」
「わからない?」
「でも、魂を奪われるって多分ああいうことだったんだと思います
 …ユキスの絵を見た瞬間、世界は私と絵だけだった…」
「描いた人間にはサイコーの褒め言葉だね、ちょっとこっち向いてくれるかな?」
「あ、はい…」

正面、左からの横顔、右からの横顔。
余すことなく、その顔を描き続ける、一片たりともその輝きを逃さぬように。
そこからは他愛の無い話をしながら、俺は描き続けた。
彼女は、静かに微笑みを浮かべ、時に心地よい沈黙を俺にくれた。
世界と自分が切り離されたように、俺は何かに取り憑かれたように描き続けた。
大時計が大きな音を立て、俺はその音で我に返った。

「…あれ、もう…こんな時間だったんだ」

ここにきてまだ1時間も経ってないと思っていたがすでに5時間あまりが経過していた。
窓の外には眩しいほど赤く夕日が燃えていた。
256 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:52:14.89 ID:XrEvWYwo
「ごめんなさい、ラフスケッチだけだったのに随分時間取っちゃいました
 それじゃ…今日はこれで」
「あの、ユキス」
「ん?」
「完成は…いつ頃になるかしら?」
「…まだちょっとわからないな」
「…なるべく、急いで欲しいんです」
「…何かわけが?」
「少し…」
「なるべく急ぐようにはするけど、あんまり急ぐとどうしても手抜きになるから…」
「そうね…」
「じゃあ、今日はこれで」
「ええ、また…」

俺はアルテニアに背を向けて家路についた。
絵の完成を急がすってどんな理由があるんだろうな。
少し考えてみたものの特に理由も思いつかない
そもそもそれを言ったらなんで自分の肖像画を描いて欲しいのかという根底の疑問に戻ってしまう。
深く考えるのはやめよう、俺はただ描き続ければいいだけだ。
そこでふと思い出したように今日書いたスケッチを見てみた。
…上手くできているとは思う、これを元に描くのは充分すぎるはずだ。
だが、なぜか、俺の頭は違うと判断しいてた。
それは些細な違和感。だが気づいたからには決して無視できない違和感。
いや、無視なんかいくらでも出来ただろう、気のせいだと言うことにして進めることはあまりにも容易いはずだ。
それでも…

部屋に帰った俺はスケッチブックを取り出し、アルテニアを描き続けた。
ラフスケッチから得られる情報、そして頭の中に存在するアルテニアの幻影。
それら全てから、彼女が最も美しく輝く唯一の場所を探し続ける。
描いては、それを置き、また描いては、置き。
そんなことを延々と繰り返す。
何の生産性も無い、無限に広がるパターンの中からたった一つを見つけ出すような行為。
砂漠のどこかに落ちたビーズを捜すかのような作業。
寝食すらも忘れ、俺はその作業に没頭した。
257 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:52:48.67 ID:XrEvWYwo
ユキスさんが部屋にこもってからかれこれ3日が立とうとしていた。
3日前までは一目見てわかるほどウキウキ気分だったというのに。
まさかあまりに食事をしないので倒れているのではないのだろうかと不安になったので少し尋ねてみることにした。

「ユキスさん、ソーラです」

コンコンとドアをノックしてみるも中から反応は無い。
ふと、ドアノブに手をかけてみるとノブはいとも簡単に回った。
少しだけ躊躇したが僕はドアを開けた。

「入りますよー」

ドアを開け、飛び込んで来た光景はとても現実とは思えなかった。
開け放たれたドアから閉じた空間に吹き込んだ風は大量の紙を舞い散らせた。
その光景は、ある意味では恐怖だった。
小汚く、狭い部屋にところ狭しと舞い散る女性の簡潔なスケッチ。
様々な角度から描かれ、物によってはまったく同じ絵にすら見える物も多々ある。
それらのほぼ中心で、椅子に座ったままダランとまるで死んでるようなユキスさんがいた。

「ユキスさん?」

慌てて近寄ると、小さな寝息が聞こえてきた。
どうやら死んでいるわけではなかったらしい、全く驚かせる…
と、ふと目の前のキチンと置かれた開かれたスケッチブックに目が止まった。
色も何も塗られていない、ただのシンプルな線画。
だがそれは強烈に僕の心を捉えて、離そうとはしなかった。
まるで、炎へと飛び込む虫のように、見る者全てを惹きつける一枚がそこにあった。
いや、これはまだ完成はしていない、完成したらどうなるんだ?

「ん…」
「!?」
「…ん…ソーラ…しまった、寝ちまってた!!」

起きるなりユキスさんはいきなり飛び上がるように立ち上がった。
そしてスケッチブックを掴むと出かける用意を始めだした。

「あ、あのユキスさん?」
「何だ?」
「あ…いえ…」
「何だよもう、とにかく俺行くわ、じゃあな!!」
258 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:53:17.39 ID:XrEvWYwo
それだけ言い残すとまるで突風のように猛スピードで部屋から出て行ってしまった。
僕の頭の中には、あの絵だけが鮮明に焼き付けられていた。
そう、一瞬の邂逅で、鮮明に焼き付けられる作品。
それがユキスさんが持つ、究極とも言える能力。
絵画を超えた、1つの世界、空想を遥かに超越し、現実へと干渉する、究極のイマジネーション。
…惜しむらくは、その世界は一般的に受け入れられないということだろう。
ユキスさんの世界は、極少数の特定の人間の心を強烈に揺さぶる。
だがそれ以外の人からしてみればそれは巷に溢れるただの絵画と変わりが無いのだ。
次元が違いすぎているから、認識すら出来ない。
いや、そもそもそれが当たり前なんだろう。
個であるユキスさんの世界を、また個である別の人間が完全に理解することなど出来ないのだろうから。
僕自身、完全に理解できているわけではない。
あくまでも僕は極一部分だけに共感できているに過ぎない。

…だが考えてしまう。
もしもユキスさんが次の段階にいったとしたらどうなるか。
個であるユキスさんの世界が全とも言える現実を飲み込むほどになったら。
おそらく、その時はユキスさんは…時代を越えて語り継がれるほどの名画を残すことになるだろう。

「はは…」

不意に、乾いた笑いが零れ落ちた。
その理由は、胸中にある相反する2つの想いから出たものだった。
ユキスさんの成功を望むと同時に、望まんでいない自分の本心を感じたからだった。
技術では決して届かない才能。それがユキスさんにはある。
例え僕が死ぬまで努力し続けても、あの領域に達することはないだろう。
それが、痛いほどわかっているからこそ、悔しく、もどかしい。
所詮、秀才は天才には勝てないということなのだろうか。

「クソッ…」

思わず、床に落ちていたスケッチを拾い上げ、乱暴に破り捨てた。
堰を切ったように黒い感情が溢れ返り、歯止めが効かなくなる。

「クソッ…クソッ…クソォォォオオオオオオオオオオ!!」

手当たり次第に破り捨て、乱暴に投げ捨てる。
引き裂かれて細切れになった紙片はパラパラと舞い落ち、まるで落ち葉のようだった。
まるで、僕を嘲笑うように、ゆっくりと宙を舞って…
259 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:55:10.43 ID:XrEvWYwo
アルテリアの家についた俺は意気揚々と呼び鈴を鳴らした。
しばらく待っているとパタパタと音がしてドアが開く。

「よかった、やっと来てくれたのね」
「はは…ごめんなさい、でも熟考出来たおかげでイメージは固まったよ」
「ふふ、楽しみね、寒いでしょ?早く中へ入って」
「ああ、それじゃお邪魔します」

中へ入ると、アルテリアは前回と同じように紅茶を出してくれた。
前回はあんまりよく味わって飲まなかったが、じっくり味わってみると非常においしいな。
窓の外では落ち葉がはらはらと落ちていた。

「…ここの窓から見える景色はいいね、なんだか落ち着ける」
「気が合うわね、私もここからの景色が大好きなの」
「それじゃ気が合ったところで描きますかね」
「よろしくお願いしますっ」

俺たちは笑いながら準備をした。
だけど作業が始まればポツポツとは喋るものの基本的には無言になる。
だが不思議なことに、アルテリアと共に作る静寂は心地よかった。
…ただ時間が過ぎる、静かに、静かに。
1日が過ぎ、一度家に帰り、翌日また来て、1日が過ぎて…
そんな日々が繰り返され、10月は終わろうとしていた。
だけど、そんな幸せな日々は、いとも簡単に砕け散る。

「なぁ、アルテリア、たまには息抜きに散歩でもしてみないか?」
「え?」

筆を置き、俺は唐突にそう言った。
もう絵はほとんど完成間近だったこともあったが。
完成したらアルテリアとの接点が無くなってしまう
そんなことを考えて、俺はもう少しアルテリアを知りたいと思ったから提案してみた。
アルテリアは少し考えたが笑顔で頷いてくれた。
そして俺たちは外に出た。

「んっと…」
「え…?ちょ…!?」

右手に柔らかく感触と暖かさを感じ、そちらを見るとアルテリアの左手が添えられていた。

「あっ、うっえっ…」

右手がカクカクと動く、握ろうか握らまいか迷っている俺の思考をストレートに表していた。
そんな俺を見ながらアルテリアは楽しそうに笑っていった。
260 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:55:48.65 ID:XrEvWYwo
「あはは、顔真っ赤」
「いや、だって…俺…慣れてなくて…」
「大丈夫大丈夫、ほら、筆と思ってギュッて握ればいいんだよ」
「筆…筆か…」

右手に力を込める、柔らかで暖かく優しい感触が手のひら一杯に広がる。
心臓の鼓動は早くて、初めて画商に絵を持っていった時ぐらいドキドキした。
アルテリアは満足そうに頷くと言った。

「行こっか」
「あ、うん…」

俺たちは歩き始めた、はは、これじゃまるでカップルだな。
芸術家を目指すのなら俗物的であってはいけないとも言うが俺には無理だな。
アルテリアの手は暖かで、触れていると安心する。
他愛も無い話が心に平穏をくれる。
しばらく歩き落ち葉が積もる公園のベンチに俺たちは腰かけた。

「…ユキス、歩くの早いね」
「ん?」
「女の子と付き合ったことないでしょ?」
「は、え?」
「合わせなきゃ駄目よ?」

顔から火が出そうになる。
苦笑いしながら目を逸らして別の話題を必死に考える。
ふと、気になっていたことを聞いてみようと思った。

「アルテリア、君はどうして肖像画がほしいんだい?」
「…」

アルテリアは少し困った顔をしてうつむいてしまった。
しまった、と少し後悔した。

「…あ、いや…話したくないなら別にいいんだ」
「…」
「もう聞かないよ、だから顔あげて…」
「はぁ…はぁ…」
「アルテリア?」

様子がおかしいことに気づき、不安になって俺は立ち上がった。
肩で息をしているアルテリアの正面にかがんで下から顔を覗いてみた。
アルテリアの顔はこれ以上無いというほど真っ青になっていた。

「アルテリア…どうしたんだよ!?」
「ユキ…ス…」
261 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:56:57.98 ID:XrEvWYwo
小さく俺の名前を呟いたかと思うと、アルテリアは目を瞑った。
そして、ベンチにその身体が倒れた。
ゆっくりと、まるで糸が切れた操り人形のように。

「アルテリア…!?」
「…私を…連れて帰って…」
「何言ってんだ!どう見ても病院が先だろ!?」

アルテリアの肩を掴んでそう叫ぶ。
だがアルテリアは辛そうに、だけどしっかりとした瞳で言った。

「…家に…お願い、ユキス…」
「アルテリア…」

無理やりにでも病院に連れていくべきだったのかもしれない。
だが、俺はアルテリアを背負い、家へと帰ることにした。
アルテリアの緑色の瞳の奥に込められた願い。
それを見て、首を横に振ることはできなかった。
ゆっくりと、アルテリアに振動を与えないように歩き、アルテリアの家へと帰り着く。
彼女をベッドに寝かせ、布団をかける。
ベッドの横に椅子をもってきて、俺はそこに座り込んだ。
どれくらい時間が経ったのかは定かではない。
やがて、アルテリアはゆっくりと目を開けた。
窓の外はすでに日が落ち、街灯に照らされた木の葉が大きな雪のように見えていた。

「…びっくりしたでしょう…」
「…アルテリア…」
「…私はもう長くない…医者にすら見捨てられ…
 いつ死んでもおかしくないの…多く見積もっても冬までは生きられないと…」
「そんな…」
「…いっそ、自分で命を絶とうとも思った
 世界に絶望し、私はあてもなく死に場所を探していた…
 そんな時、貴方と、貴方の絵に出会った…
 ユキスの絵は…枯れ果てたような私の心を…これ以上無いほどの彩りをくれた…
 だから、私は…私が死んでも…私が生きた証を残そうと…」
「…それが、理由だったのか」
「…ごめんなさい…今日は…疲れて…」
「…」

俺は無言で立ち上がり、帰る準備をし始めた。
本心はアルテリアの傍にいたかった。
だけど、彼女は俺に自分の弱弱しい姿を見せたくないのだろう。
俺が留まれば、きっと彼女は無理をしてしまう。
部屋から出る際、俺はベッドの上の彼女に言った。

「絵は…必ず完成させる…」
「…ありがとう、ユキス」
262 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:57:33.40 ID:XrEvWYwo
外に出ると、冷たい風が頬を撫ぜた。
僕らはいつも自分たちの力じゃどうしようもない運命に翻弄されている。
俺には何も出来ない、俺はアルテリアの病を治すことは出来ない。
だが、それでも、死に行く彼女の心に安息を与えることは出来るかもしれない。
アパートに帰ると、ソーラがいた。

「おかえりなさい…どうかしました?」
「いや…そうだ、ソーラ…これ、やるよ」
「え?」

俺は8割方完成していたアルテリアの肖像画をソーラに渡した。
それを見たソーラはとんでもなく驚いていた。
まぁ驚いて当たり前だと思うが。

「これ…あんなに頑張って書いてたやつじゃないですか!?」
「もう、いらないんだ」
「どうして!?」
「描き直す」
「え…?」
「彼女が、本当に望んでるのは、そんな絵じゃない
 …だから描き直す、それは破るなり焼くなり好きにしてくれ」
「ちょ、ユキスさん!?」

俺はソーラの制止も聞かずに部屋へと戻った。
そう、彼女が本当に望んでるのはお決まり通りに描かれた肖像画なんかじゃない。
アルテリアが俺の絵に惹かれた理由がそこにある。
俺はずっと現実という世界を嫌っていた、そして恐らくアルテリアも病に冒され死を待つだけの現実を嫌った。
だから、現実を写し取るだけの肖像画では駄目なんだ。
描き直そう、君が惹かれた俺の世界に、君を描こう、俺の世界で、永遠に君を生かし続けよう。
問題は間に合うかどうかだ、もうアルテリアには時間が無い。
いや、間に合わせて見せる。必ず。
そこで、俺は自分がアルテリアをモデル以上の感情で見ていることに気がついた。
長く一緒にいた時間がそうさせたか、それとも自分の世界に憧れている人間への情愛か。
だが、そんなことはどうでもいい。
これが一時の迷いだとしても、心の底から沸いてくる本心だとしても
俺の愛と一緒に、君に今だかつてない最高の絵を捧げよう。
死して尚、君を世界に生かすため。君をただ死なせはしない。
263 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:58:36.96 ID:XrEvWYwo
アルテリアは、そのうち立ち上がることもままならなくなった。
苦しいはずだろうに、それでも静かな微笑みを絶やすことは無かった。
やがて、秋が終わろうとしていた。
木々から葉はほとんど落ち、冷たい気温は冬の到来を予感させていた。
静かなアルテリアの部屋、コトンと音をさせて、俺は筆を置いた。

「…出来たよ」

立ち上がり、キャンバスを回転させ、アルテリアに見せる。
アルテリアは、少し驚いたような顔をして、笑った。

「…まるで私じゃないみたいだね」
「アルテリアさ」
「…素敵な…絵…」

俺はアルテリアに寄り添うようにベッドに腰をかけた。

「ほら、ここが一番苦労したんだ
 君の瞳の色、深い緑色、この色を出すのに本当に苦労したんだ」
「うっ…あっ…」
「アルテリア?」

アルテリアは、涙を零し始めた。
それがどの感情から来るのかはわからなかった。
少し慌てていると突然アルテリアは俺の胸にしがみついてきた。
そして、顔をうずめて途切れ途切れに喋り始めた。

「…私…死にたくないよ…
 もっと…生きていたいよ…」
「…アルテリア…」
「この絵のように…生きて…いたいよ…
 ユキスと一緒に…この世界で生きていたいよ…」
「…ああ、そうだね…俺も…君と生きていたい…」

俺はごく自然に、アルテリアを抱きしめた。
暖かな命の鼓動、この暖かさも、消えてしまうのか?
この涙も、この想いも、全て、全てこの世界に存在することを許されないというのか?
もし神がいるというなら、お前はこんな俺たちを嘲笑っているのか?

「…ユキス」
「何?」
「貴方に会えて…よかった…」
「…俺も、君に会えてよかった」
「…ありがとう、ユキス…」
264 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 21:59:14.98 ID:XrEvWYwo
そう言って、アルテリアは笑った。
これ以上無いほどの、美しい笑顔だった。
まるで、炎の灯火が消える直前に一層燃え上がるように。
そして、アルテリアは静かに目を瞑った。
確認する必要なんて無かった。
抱きしめたアルテリアの身体から力が抜けていくのを感じた。
留めようと、強く強く抱きしめても、指の隙間から零れ落ちる水のように、それを留めることは出来なかった。
俺はそっとアルテリアをベッドへと寝かせた。
穏やかな死に顔は、生きている頃となんら遜色ない美しさを纏っていた。
そっと、俺は唇を重ねた。
最初で最後のキス、僅かに残る暖かさを押しのけるように感じた冷たい死の味。
シーツを握り締める、あまりに強く握り締め、手のひらに食い込んだ指、じんわりとシーツに滲む血液。
そっと顔を上げ、俺は描きあげた絵を見た。
…そこにあるのは、アルテリアが夢見た世界。
だけど、アルテリアは言った、この世界で、生きていたいと。

所詮、僕らは鳥篭の中の鳥と同じだ。
どんなに新たな世界を描いたとしても、扉を開けることは出来ない。
ならば、全て無意味だったというのか?
この数ヶ月、アルテリアの決意も、俺の覚悟も何もかも全て無意味だったというのか!?
何もかも全て、叶わぬ夢だったというのか!!!それが人の運命だとでもいうのか!!?
そんな運命なぞ俺は受け入れない!!受け入れてたまるものかッ!!!

だがもし、それが絶対の真理だというなら、それが世界の在るべき姿だというなら…
俺は、この世界そのものを変えてみせる…!
決して開くことの無い扉をこじ開けてみせる!
もう一度、君をこの手に…!あの暖かさを取り戻してみせる!!
俺の世界で、この世界を塗りつぶしてみせる!!
富も、名声も、地位も何もいらない、欲しいのは描いた世界だけ。
そして約束しよう、今度こそ、君と共に生きよう…ずっと…生きて…
265 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 22:00:11.83 ID:XrEvWYwo
「今のは…」
「見えたか?」

気がつくと、俺はまた真っ暗な中に立っていた。
正面で俺を見つめている男。
それは間違いなく、ユキスだった。

「世界は悲しみに満ちている
 …だから神は天眼という毒を残したのかもしれない」
「ユキス、お前は…」
「…アルテリアは生き続けている、俺の世界で
 だけど、決して干渉することが出来ない…
 だから、俺はこの世界そのものを塗り替えようとした…
 なのに…どこで間違えたのかな…なぁアルテリア…もう君の暖かさも思い出せないんだ…
 それでも俺にはこれしか残ってないから…描き続ける…」
「…」
「遠い旅人、もう1人の俺、お前は俺のようになるなよ
 覚えておけ、世界は大きすぎて1人じゃ変えられない…」

ユキスは、俺に背を向けた。
そして虚空に向かって筆を振り始める。
俺は目をこらして、その虚空を見つめた。

「…!」

見えなかったわけじゃなかった、最初から俺の目は見ていたのだ。
その絵は、余りにも巨大だった。
全体で見ると、ほんの僅かなな黒が視界を覆っていたに過ぎなかった。
だがその全貌を認識するよりも早く、俺の意識が弾け飛んだ。
消え行く意識の奥に、ユキスの声が響きわたった。

「また会おう、旅人よ」

そして、俺の記憶は途切れた。
266 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 22:01:23.92 ID:XrEvWYwo
朦朧とした意識の最中で眼を開けようとすると眩しい光が飛び込んできた。
思わず眼が痛くなって強く瞼を閉じる。
そして今度はなるべく刺激を与えないようにゆっくりと瞼を開く。
見たことのない場所に寝かされていた。
どうにも動きづらいと思ったら体中の色んなところに何かがくっついていた。
一瞬躊躇したものの、それらを全部引き剥がす。
呼吸しづらいと思ったら鼻の穴によくわからない管のような物が突っ込まれていた。
引っ張ってみるとズルズルとよくこんなに入ってたなと思うほど鼻水まみれになった長い管が出てくる。
思いっきり引っ張ってみようとしたが怖いのでそのままゆっくりと引っ張り出す。
そうこうしてるとウィーンだか音がして誰かがパタパタと入ってきた。
そちらのほうを見て、そこに立っている"彼女"を見て、俺は思わず口走った。

「アルテリア…」
「え?」
「…あれ、フロス…?」

目をこすってもう1度よく見る。
普通にフロスだった、アルテリアとは似ても似つかないのになぜ間違えたのか自分でも不思議に思うほどだった。
そこでやっと自分の置かれていた状況が気になってフロスに聞いた。

「俺…なんでここにいるんだっけ…」
「突然倒れてずっと寝てたんだよ?」
「倒れて…?」
「…一気に無数の死を捉えてしまったことが原因って言ってたけど」
「…そうか」

そっと俺は右眼を瞼の上から押さえてみた。
あの夢も、天眼が見せたのだろうか。
そういえば雪之助の夢も似たような感じだったな。
ゆき兄である俺自身と、雪之助と、ユキス。
あれは前世か?それとも全部別の世界の俺なのか?

「…大丈夫?」

フロスが心配そうに顔を覗き込んできた。
俺は無言で頷いた。
267 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 22:02:11.05 ID:XrEvWYwo
「お腹すいてるよね?今食べる物持ってきてあげる」

そういうとフロスは出て行ってしまった。
ユキスは、あれからどうなったのだろうか。
世界を、塗り替えることが出来たのだろうか。
…いや、恐らく無理だったんだ、あの暗闇の世界でのユキスは何かに後悔していた。
何があったのかまでは知らないが…
「世界は悲しみに溢れている、だから神は天眼という毒を残したのかもしれない」という言葉が頭の中にずっと響いていた。
その言葉の真意を知ることは、今の俺には出来ない。
どうにも空虚な気分になっているとドアが開いた。

「…」
「お待たせー、食べ物もって来たよ…」
「…フロス」
「…泣いてるの?」
「え…?」

頬に触れると確かに涙が零れていた。
自分では全く気づかなかった。
フロスが食事を机の上に置き、心配そうに俺の傍に来た。
なぜそうしたのかは自分でもわからないが俺はフロスの手を握り締めた。

「えっ…」
「ごめん…少しの間でいいから…」
「…うん」

フロスは何も言わずに、泣いている俺の手を握り締めてくれた。
その暖かさは、あの世界で触れたアルテニアとなんら変わることはなかった。
この涙を流しているのはきっと俺じゃない。
…俺も、いつか見つけられるだろうか、何を犠牲にしてでも叶えたい想いを。
そうなったとき、天眼は世界になって毒となるのだろうか。
ユキス、お前は何を知ってしまったんだ?
涙の意味を、教えてくれよ。
なぁ…アルテリア…
268 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/01(土) 22:03:03.76 ID:XrEvWYwo
「マズいことになってきたな」
「報告します、ソード・プリッケル様が到着されました」
「…通せ」
「ハッ…がッ!?」
「ハァ〜クレイ…久しぶりだな」
「…悪い癖は直っていないようですね、プリッケル殿」
「離してッ…ください…」
「ふんっ」
「ゲホッ…ゲホッ…」
「それで、わざわざこちらに来た理由をお聞かせしてもらいたいですね」
「ケルビム部隊を動かしたそうだな?」
「…権限はあると思いますが?」
「ああ、権限はあるな、だが確かに裏切りとはいえ奴らを殲滅したのには問題があったぞ?
 裏切ったから弁明も聞かずに皆殺しだというのは他の投資者に不安を植えつけた」
「だが最早天眼は手に入っている
 制御さえ出来れば、奴らの不安は水泡に帰すでしょうね
 目の前に詰まれた黄金の山を実際に目の当たりにすれば欲にまみれた奴らは尻尾を振ってついてくる」
「だが重要なのは黄金の山は無いということだ
 可能性があっても可能性だけじゃ無いと同じだ」
「結果を急ぎすぎている、Noゼロの二の舞になってしまえばそれこそ元の木阿弥だ」
「それについて思ってることがあるんだがなぁ?」
「何がですか?」
「10年前のラグナロク・プロジェクト以降のお前はまるで天が味方をしたかのように
 あれよあれよと極東支部の総帥にまで押しあがった
 …不思議な話だよな、いくらあの実験唯一の生き残りだとしても不可解だ」
「才能に嫉妬してるんですか?クックック…」
「フン…あくまで仮定だが…Noゼロは死んでいない、今も生きて…
 お前のために天眼を使っている、と私は考えた」
「それはまたブッ飛んだ仮定ですね
 もしそうなら、今さら私が天眼を欲するわけはないでしょう?」
「…お前が欲しているのは…天眼そのもの…
 思い通りできる力のみ、それを持つ人間には興味は無い、そうじゃないのか?」
「それを言ってしまえば、人間誰しもそうだと思いますけどね…
 私は忙しいのでそろそろ失礼しますよ
 …どうぞごゆっくり、プリッケル殿」
「…極東支部はあまりにも胡散臭すぎる…
 ハクレイ、その冷たい仮面の何を隠している…」


絵画 完
269 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/05/01(土) 22:18:33.98 ID:pHStPcDO
ちょwwwwwwwwwwwwフライングうpしてやがるwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

なんという真性ロリコン…
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/03(月) 20:10:03.11 ID:952YVLso
ここ貼っていいのかな?

邪気眼・厨二・ファンタジーなりきりスレ合同イベント企画スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1272882684/

こんなんやってます
良かったら意見とか出してくれると嬉しいよ?
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/06(木) 01:23:14.42 ID:JTC6pkAO
再来週女装大会行ってくるわ
272 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/05/06(木) 12:36:06.67 ID:59cUtADO
>>271
うp期待してます^^
273 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/08(土) 22:05:52.56 ID:N0Djx/co
あー駄目無理もうあかん
もう人生終われ、今すぐ終われ
ちゅーか世界終われ
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/08(土) 22:16:17.27 ID:Rc6R3xIo
>>273
禿同
世界終わらせてきてくれよ
275 :ほろ苦 :2010/05/09(日) 00:26:11.73 ID:eeGDmISO
>>273
死ぬなら天眼完結させてからな。
続きマダー?
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/09(日) 13:55:45.60 ID:Ig19jFEo
地震で世界終わったと思ったわ
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/12(水) 12:13:03.32 ID:cfeQuQDO
おい幼女の件kwwsk話せよ!!
278 :面接ボーイ :2010/05/12(水) 12:20:56.94 ID:cfeQuQDO
あ、そうだいらないと思うけど報告

今はCMのオーディション受けまくって落ちるの繰り返しですww
もしかしたらauのに出れるかも
279 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/12(水) 18:45:37.29 ID:rtY8qfko
遠回しに事務所には入れたと言ってるしwwwwwwww
280 :バナ丸 :2010/05/12(水) 22:04:27.18 ID:RaKi4MDO
ちょwwwwwwwwwwwwまじかwwwwwwwwwwww
281 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/12(水) 22:11:05.59 ID:mqmQnUAO
面接ボーイからイケメンの香りがするぜい‥‥
282 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/15(土) 21:16:16.44 ID:7tnAOiko
天眼、明日
今日は寒いからやる気がしない

ちゅうか眠い
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/15(土) 21:35:18.12 ID:w3Ah.5oo
日本では冨樫が毎週仕事をしています。
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/16(日) 16:17:09.98 ID:dePRwYDO
>>283
冨樫が休載したら働く
285 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/16(日) 22:04:32.97 ID:w8xu1OEo
たかはしきゅんとふっきんがきたお
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/16(日) 22:12:12.73 ID:cRmHs6DO
とりあえず うp
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/16(日) 22:35:02.46 ID:Z9LBglIo
イェーイ、たかはしきゅんとふっきんみてる〜?
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/16(日) 23:14:05.61 ID:dePRwYDO
トンカツがこのスレに興味を持ったようです
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/17(月) 00:22:41.42 ID:1eNKMSAo
マスターうpまだー?
290 :白やん [ひんぬー]:2010/05/21(金) 20:53:12.75 ID:9M/uDTg0
やっとiPhoneでの閲覧用のアプリ導入した(`・ω・´)
291 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/05/23(日) 16:13:42.03 ID:rxVj5wDO
ナルトの再放送撮りだめしてたの見てたんだが…


回想シーンでちび我愛羅が夜叉丸連呼してて萌えた件
この戒名つけてくれたゆき兄にちょっとだけ感謝したwwww
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/05/27(木) 22:13:18.73 ID:UvrWo2DO
戒名・・・出遅れショック坊やは今どこに・・・
293 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/05/29(土) 16:22:19.39 ID:CzXqnGco
精神崩壊していた心がやっと元の形を取り戻し始めたのです
ちゅうわけで最近さぼってすまなかった

今日は諸事情でうp無しだけど
またちゃんと来週からあげていきます、ちゃお
294 : 【末吉】 [sage]:2010/06/01(火) 23:43:57.18 ID:Vz/GiAko
大吉出たら明日こそハロワ行く
295 : 【毎月1日限定ですよ。。】 :2010/06/02(水) 01:46:29.53 ID:gNU2AIDO
>>294
末wwwwww吉wwwwww
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/02(水) 01:51:47.62 ID:sS9S5ywo
>>295
【毎月1日限定ですよ。。】
297 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:01:32.23 ID:P94vsFIo
天眼にしようと思ったけど
今日は俺の短編【魔女と騎士】をお楽しみください
298 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:01:57.68 ID:P94vsFIo
世界のある場所のある地方に遠い昔から語られるお話があった。
それは母が眠れない子供に聞かせてあげるような、御伽話の様な話。
それが真実かどうかはもう誰にもわからない。
ただ口伝で語り継がれるのみのお話の真実を求めることなど誰にも不可能。
ましてや、かような荒唐無稽な話であれば真実を知ろうする者もいないだろう。

…それはこんな話だった。
遥か昔、白の王と赤の女王は長い長い戦争を続けていた。
心優しき騎士が戦争を終わらすために、ある魔女と契約した。
魔女の力を得た騎士の力は凄まじく、その力を見た王たちは恐れをなして戦争を辞めた。
かくして、魔女と騎士により、この地には平和が戻ってきた…
よくある御伽噺と言えばそれまで。
だがもし少なからず真実が含まれているというなら。
…それは一体どれほどの悲劇だったのだろうか。
現実は非情で、誰もが笑いあえるハッピーエンドなんてそうそう無い。
ましてや戦争などという個の意思すべてを飲み込むかのような時代のうねりとも言える事象に基づいた話なら。
それはきっと、必ず誰かの心に傷跡を残しただろう。
いや、やめよう、どのみち今に生きる僕たちに真実などわかるはずもない。
ああ、そうそう、このお話のタイトルはね…
299 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:02:20.45 ID:P94vsFIo
【魔女と騎士】
300 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:03:37.85 ID:P94vsFIo
来るもの全てを拒むような茨が茂った暗い森。
その道なき道を茨を切り払いながら進んでいく。
最早自分が正しい道を歩いているかどうかすらわからない。
それでもただ前へ前へと進んでいく。
頬に触れる茨の棘が軽い痛みと共に後悔の念をつれてくる。
栄誉ある王国騎士が真偽も定かではない噂に釣られて、こんな場所で迷ってのたれ死んだとなればいい笑い者になるだろう。
ただそんなことは出発する前からとっくにわかってたことだ。
今さら文句を垂れたところで自分自身の否定にしかならないだろう。
軽く頭を振って不安を掻き消しながら、俺は剣を振るい、茨を切り捨てる。
そうしながら、俺はここに来ようと思った事の発端を思い出していた…
301 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:06:41.96 ID:P94vsFIo
「なぁ、アルスト、この戦争に意味はあるのかな?」

目の前で皿に茹でられた芋にかじりついていた俺と同じ王国騎士のアルストにそう言った。
アルストは一瞬目をぱちくりとさせてかじりついていた芋を皿の上に置いた。
そして呆れたような口調で俺に言い返してきた。

「またそんなこと言ってんのかよ
 意味はあるだろ、戦争に勝って領土を増やせば生産力が上がって国が豊かになる
 理由なんてそれで充分だろ」
「…俺がまだガキの頃にこの戦争は始まって
 それから15年、ずっと続いた戦争でこの国は豊かになるどころかどんどん疲労してる
 例え勝ったところで、今さら元通り以上になれると思うか?」
「知らね」

吐き捨てるように言うと、アルストは目の前の芋を素手で掴み取る。
そしてそのままかじりつく。
もぐもぐと口を動かしながらその目はじっと俺を見ていた。
視線に突き動かされるように俺はまた言葉を紡いだ。

「…レコス様は変わってしまわれた…
 かつては名君と謳われ、この身も心も預けるに足る存在だった
 だから俺は血の滲むような訓練を重ねてこうして王国騎士になったのに…」
「ナザル、口は災いの元だぞ
 王国騎士が王への不満を口にしてるなんて知れたら翌日には首と胴体が離れてるぜ」
「…そうだな…すまん」
「ま、俺は聞かなかったことにしてやるよ
 さて、俺はそろそろ休ませてもらうよ」

そう言ってアルストは机から立ち上がった。
ガチャガチャとチェインメイルの鎖のこすれる音を立てながら狭く暗い廊下へと出て行った。
俺は給仕場の机に1人でうなだれた。

白の王と言われるレコス様が治めるこの国はある時までまさしく平和を象徴した国だった。
15年前までは…
それは何の前触れも無く、突然だった。
赤の女王と呼ばれる隣国の女王クルエルが率いる軍勢が攻め込んでくるまでは。
目を瞑れば、あの日のことはまるで昨日のことのように瞼の裏に浮かんでくる。
赤い悪魔が村を飲み込んだあの日のことが…
302 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:09:07.56 ID:P94vsFIo
突然の雄叫びが日がすっかり落ちた村に響き渡り。
土煙をあげながら、木々をなぎ倒し、村へとなだれ込んだ鎧の軍団。
同時に全ての飲み込まんとする業火が村を覆った。
怒号と悲鳴と、叫び声が静かだった村を瞬く間に埋め尽くし。
大地は血を吸い、屍が次々と積み上げられた。
その地獄の中で、俺は両親に抱きかかえられ、部屋の隅でうずくまっていた。

「大丈夫、大丈夫よ、ナザル…」

そう俺に言い続けた母の声は震えていた。
父は何も言わず、スコップを握り締め、ドアを凝視していた。
俺は母の胸に顔をうずめ、耳を劈く絶叫が消え去るのをただ待ち続けた。
木が砕ける音、父親の「逃げろ!」という叫び声。
母が俺を抱きかかえ、走り出した。
顔をうずめていた俺は何が起こったのかわからなかった。
わずかに肌に感じる空気は、酷く熱を帯びていた。
そのうち、俺は突然地面に投げ出された。
叩きつけられる痛みを感じながら、母の名を呼び、顔をあげた。
そして目に飛び込んできた光景は恐らく一生忘れる事は無い。

紅蓮の炎に包まれる村を背景に、馬に乗り、大きな槍を携えた黒い鎧の男が無慈悲に母を見下ろしていた。
馬の足元で倒れこんでいる母の足からは血が流れ、太ももからは矢の先端が突き出していた。
絵画のような、あまりにも現実感の無いその光景に俺は動けなかった。
全てが夢で、俺はベッドに寝ていて、朝になったら汗ぐっしょりでおきて
怖い夢を見たんだって母に泣きついて、母は俺の頭を優しく撫でてくれるんだ、なんて本気で思ってしまった。
だが、そんな希望を打ち砕くように、母は叫び声をあげた。

「逃げなさい!」

止まった時間がその言葉で再び動き出した。
俺は、脇目も振らず、道なき道をただひた走った、何度も何度も振り返りながら。
最後に見えた光景は、胸を貫かれた母のシルエット。
どれだけ走ったか、東の空が白みだす頃、俺は村を一望できる丘の上にいた。
業火が全てを飲み込んでいく、生まれ育った村、友人も、父も、母も。
力の無い自分が、悔しかった。
何一つ守れずに、逃げ出すことしか出来なかった自分が許せなかった。
ただ、滅んでいく村を見つめながら、俺は血を流すほど拳を握り締めた。
力が欲しかった、誰かを守れる力が、大事な物を守れる力が。
そして、悲しみの螺旋を断ち切る力が欲しかった。

だから、俺は騎士になった。

2度と俺のような子を生み出さないために俺は騎士となった。
どんな訓練も、あの時の地獄に比べれば大したことでは無かった。
それでも、戦争は終わらない。
どれだけ頑張っても、どうすることも出来なかった。
15年という余りにも長い歳月に渡って続いた戦争は最早泥沼のような状態だ。
明確も目的すら失われ、互いに惰性で殺し合いを続けている。
止めることも出来ず、止まることも出来ない、あまりにも巨大すぎる時代のうねり。
個人の欲望が産み落とした、姿無き悪魔…それが、戦争だ。
303 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:10:31.31 ID:P94vsFIo
後日、騎士団の集団訓練中のことだった。
無心で剣を振り続けた俺の耳に、不意にアルストが話しかけてきた。

「ナザル、お前、魔女の噂知ってるか?」
「魔女?」
「北の森の奥深くに魔女がいるんだってよ」
「…噂だろ?」
「その魔女は、戦争を終わらせる術を知ってるらしいぜ?」
「…何だと」
「あくまでも、噂だけどな」
「なんでそれを俺に教える?」
「噂ってのは誰かに話したいものだろ?」

そう言うとアルストは口笛を吹きながらさっさと自分の持ち場に戻ってしまった。
噂に過ぎずとも、それが俺の心に波紋を広がすには充分すぎた。
どこか、神頼み的な所もあったのかもしれない。
戦争を終わらせると息巻いたところで俺は所詮一介の騎士に過ぎない。
それでもどうしても戦争を止めるというならば…
人を越えた存在に助力を仰ぐしかないだろう。
後先も考えず、俺は翌朝、北の森へと発った。
そこにあるのが希望なのか、絶望なのかも考えずに…
304 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:11:59.44 ID:P94vsFIo
そんなことを考えながら茨を切り開いて先に進んでいた。
すると真っ暗な森の奥に小さな明りが見えた。
トクン、と心臓が大きく跳ねた。
その明りがゴールなのかはわからないが少なくとも俺はそこを目指して
今までよりも早いスピードで茨を切り開きながら先へ先へと進んだ。
しばらくすると茨が薄くなり、やがて周りが少し開けた。
暗い、茨に囲まれた森の中の広場に、今にも潰れてしまいそうな家とも呼べない小屋のようなものが存在していた。
遠くから見た明りはその家の窓から漏れていた。
ゆっくりと、ドアに手をかける。
念のために剣にも手をかけておく。
ギィ、と不気味な音を立て、ドアがゆっくりと開いた。

不思議な空間だった。
火にかけられた鍋がコトコトと音をたて。
机の上には蝋燭が灯され、その明かりがぼんやりと真っ暗な室内を照らしていた。
ぼろぼろなのに、非常に生活観が溢れる部屋。
やはり、ここは魔女の家なのか?
だが不思議と恐怖は感じなかった、むしろこの空気はどこか懐かしいほどだった。

「誰?」
「!?」

突然声をかけられ、咄嗟に剣へと手を伸ばす。
ゆっくりと声の発せられた方向へと視線を移す。
部屋の隅の暗がりから、人影がゆっくりとこちらへ近づいてきた。
その影が、蝋燭の明かりに照らされた。

「…」

言葉が出なかった。
黒い服に彩られた、透き通るような銀色の髪。
あまりにも白すぎる肌、少し乱暴に扱っただけで壊れてしまいそうな華奢な身体。
そして、何よりも赤い瞳。
その姿は、儚さと隣り合う、一瞬の煌きにも似た美しさを放っていた。
俺は目を逸らすことが出来ずに、その場に立ち尽くした。
305 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:14:07.33 ID:P94vsFIo
「貴方は誰?どうしてここに?」

その言葉で俺は我に帰る。
慌てて自己紹介をする。

「これは失礼、私は白の王国騎士団のナザルと申します」
「白の王国騎士団…そんな人がどうしてここに?」
「この地に住まう魔女が、戦争を終わらす方法を知っていると聞き探していたところです」
「…それは、白の王直々の命令なのかしら?」
「…いえ、私の独断です」

彼女は、静かに頷くと机に座った。
対面のもう1つの椅子を指し示しながら。

「座ってください」
「…はい」

俺は言われるがままにその椅子に腰を下ろす。
今にも壊れそうな椅子を壊さないように慎重に体重をかけながら。
コトンと、目の前にコップが置かれた。

「薔薇の花から作った紅茶です、気分が落ち着きますよ」
「…ありがとう」

薄っすらとピンク色を放つ液体。
とても落ち着く香りが鼻を突いた。
そっと口を付けると、とても暖かく、優しい味だった。

「…魔女とは、恐らく私のことでしょう
 この森には私以外に住んでいる人はいませんから」
「…戦争を止める方法を知っているというのは本当ですか?」
「どうでしょうね…わかりません…」
「…」

やはり噂は噂でしかなかった。
とんだ無駄足だったと落ち込む。
だが、彼女はそのまま言葉を続けた。
306 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:16:02.25 ID:P94vsFIo
「ただ…止める方法はあります」
「え?」
「誰もが気づくことですが、誰もそれを信じないから
 戦争は止まらないのです」
「どういう意味ですか?」
「簡単な話、キングを討てば戦争は終わります」
「…」
「貴方は白の騎士団ですから…
 赤のキングに位置する者、赤の女王クルエルを討てば戦争は終わります」

淡々と呟き続ける彼女だったが、正直なところ俺は呆れていた。
そんなことは誰しも百も承知なのだ。
だからキングは互いに自分が討ち取られないように全力で守り攻め立てる。
やはりずっとこんな森に1人で住んでいる女性の考えなどこの程度か…
失望にも似た感情を抱きながら、俺は溜め息をついた。
だがそんな俺の心中を見透かしたかのように彼女はそのまま続けた。

「わかってますよ、貴方の言いたいことは」
「え?」
「多分、私が戦争を終わらす術を持っているという噂はそういうことなんでしょう
 …どこから噂が漏れたのかわかりませんが…」
「どういう意味ですか?」
「魔女との契約というものをご存知ですか?」
「いえ…?」
「魔女と契約した者は、契約した魔女と命を共有し、あらゆる敵から魔女を守ることを使命をします
 そしてその対価として騎士は人を超越した力を得られます
 それはたった1人で一つの国にすら匹敵する強大な力です」
「そんな…馬鹿な話…」
「…貴方の心は泣き叫んでいる
 力が欲しいと、渇望している」

彼女は椅子から立ちあがり、近くの棚から何かを取り出すと机の上に置いた。
それは小瓶、中は黒くどろりとした液体で満たされている。

「全てを捨てる覚悟と、私と共に永遠を歩む覚悟があるなら
 その小瓶の液体を飲み干してください」
「貴方は、本当に魔女なのですか?」
「人は自らの考えが及ばない存在や事象を魔女や魔法と呼ぶだけよ」
307 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:21:13.13 ID:P94vsFIo
どこか美しく、どこか残酷な笑みを口元に浮かべて彼女はそう言った。
確かに、全てが真実なら、俺が赤の女王を討てば戦争は終結するだろう。
だがそれが本当に正しいのだろうか。
より大きな力を以て、力を捻じ伏せる、それもまた形を変えた小さな戦争なのではないだろうか。
ただ…それでも…
赤の女王のせいで嘆き悲しむ人々がいるのなら、それは正義ではないだろうか。
いや、俺はもう大人だ。
向こうの兵士だって守るべきために戦っていることも理解できている。
俺たちは互いに自分の信じる正義を胸に掲げ、それに従っているだけだ。
ならばそこに善も悪も無いのではないだろうか。
客観的に見れば、どちらも善であり、どちらも悪である。
それなら根本的にどちらが悪かったかに要点は集約される。
…どちらが悪いだと?
決まっている、突然攻め込み、何の関係も無かった俺の村を焼き払った赤の女王のほうが悪だ。
少なくとも、あの瞬間はそうだった。
15年の歳月に渡り続いた戦争の発端はあの事件だ。
どちらの国にとっても敗北を認めるには15年の歳月はあまりにも重過ぎた。
停滞し、腐ってしまった現状を打破するには、この身を削るしかない。

「…心は、決まったかしら?」
「俺は…」

震えながら小瓶に手を伸ばす。
これを飲めば、もう後に引くことは出来ない。
全てを捨てる覚悟はとうに出来ている、どうせ俺にすがるような者は無い。
それよりも重要なのはもう一つの覚悟のほう。
彼女と共に永遠を歩む覚悟…
俺は顔をあげて彼女を見た。
赤い瞳の影から覗く、孤独と悲しみ。
その目は、どこか俺に似ているような気がした。
しかし疑問は残る、いや、疑いと言ったほうが正しい。
契約は戦争を終わらせる力とは全ては彼女の話したことが真実の上に成り立つ。
もしも彼女の言うことが全て嘘であり、この小瓶の液体がただの毒というなら俺は惨めな死に彩られるだけだ。
そんなことをしても彼女に何のメリットがあるわけでもないというのはわかっているが
そもそも彼女はなぜ1人でこんな場所に住んでいるのか。
その原因を考えてみるとこの小瓶の液体が毒であっても俺にはおかしくないように思えた。
狂人の戯言、最も彼女は狂人には見えないが、見てわかるような狂人は本当の意味で狂っているとは言えないだろう。
どちらにせよ、判断材料が足りない。
だから俺は自らの疑問を解くために彼女に質問した。
308 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:24:57.62 ID:P94vsFIo
「聞かせて欲しい、なぜ君はこんな場所に住んでいるんだい?」
「…そうね、何もかも隠したままの契約はアンフェアよね」

静かにそう言うと彼女は立ち上がって窓の近くに移動した。
いつの間にか外には雨が降っており、森からは水の滴り落ちる音が響いていた。
その音をBGMにしながら彼女はポツポツと語りだした。

「私は忌み子としてこの世に生まれた」
「忌み子?」
「赤の王家は双子が生まれた場合、妹を忌み子とする…
 強大な魔翌力を有す代わりにその性質は凶であり、生まれた場合はただちに命を絶てと」
「赤の王家…まさか!?」
「…私は赤の女王クルエルの双子の妹」
「そんな、まさか…」
「ただし私は命を絶たれなかった
 長い時間の中で掟は半ばあってないような物に成り下がっていて
 結局私は姉と同じように育てられた…15年前のあの日までは」
「15年前…?」
「…母が病気で死に、私たち姉妹のどちらかが王位を継承することになった
 そして…姉は…クルエルは欲望に取りつかれた…
 突然掟を持ち出し、私を忌み子として弾圧し、処刑しようとした…
 私は命からがら逃げ出し、姉の目の届かないこの場所に住まうようになった」
「王位のために実の妹にまで手をかけようとしたのか…?」
「私からすれば、忌み子は姉のほうだった…
 いや、あの性質こそ赤の女王には必要なのかもしれないけれど…
 それでも姉は桁外れな欲望を持っていた…戦争の始まりも突き詰めれば姉の…」
「クソッ!!」

俺は思わず怒りに任せて机に拳を叩き込んだ。
机がギシギシと音を立て今にも倒壊しそうになる。
外の雨はいつしか土砂降りとなり、雷鳴が轟きはじめていた。

「私に姉を止める力は無い
 …姉の欲望が消え去るのを願いながらも命を失うことを怯え
 この地でただ怯えて暮らしていた私もまた罪人なの」

そこまで聞いて俺は理解した。
彼女は俺と同じなのだと。
力によって抑え付けられ、力を欲した俺と同じなのだと。
そして、心に湧き上がった強い思い。
彼女を守りたい。
俺はそっと机の小瓶に手を伸ばし、蓋を開けた。
鼻を突く刺激臭がぷんと匂って来る。

「名前を教えてくれないか?」
「…私の名は、ベローナ」
「ベローナ、俺は全てを捨ててでも戦争を終わらせる
 そして、俺と君が笑いあえる世界を作り出す
 そのために、君に永遠を捧げよう!!」
309 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:27:19.27 ID:P94vsFIo
俺は、小瓶の液体を一気に飲み干した。
味を感じるよりも早く飲み込み、残るのは形容し難い吐き気のみ。
同時に、身体の中から全てを焼き尽くすような熱を感じ始めた。

「がッ…はぁッ…!?」

地獄の業火に焼かれるとはこういうことだろうか。
思考も何もかも奪いつくすような灼熱の痛みが全身にくまなく襲い掛かる。
世界が歪み、何も見えなくなる。
その暗闇の中に、ベローナの声だけが聞こえていた。

「ナザル…ありがとう…私はずっと待っていた…
 私は貴方のために、貴方は私のために、命を共有しいつか土に還るその時まで…」
「ベ…ローナ…」
「契約を、結びましょう」

唇が、重なった。
その暖かさが煉獄に焼かれるこの身に安らぎを与えた。
鼓動が早くなるのを感じた。
雷鳴が響き渡る、暗い森の奥底で、俺は新たな命がこの身に宿るのを確かに感じていた。
2つの心音が重なり、共鳴する。
今までの自分を捨て、新たな自分に肉体を再構築される感覚。
心の中にある価値観全てをかなぐり捨て、たった1人のためだけに命を賭けるその覚悟。
全身から湧き上がる躍動感、何もかもを打ち砕けると思えるほどの力が沸いてくる。
白銀の鎧が、まるで染め上げられるように黒い鎧へと変化していく。
これが、魔女の力。
やがて身体を焦がす灼熱は消え去った。
俺はただ彼女を抱きしめ、唇を重ねていた。
守ってみせよう、この銀色の髪も、壊れそうな身体も、赤き瞳も、何もかも。
そして捧げよう、俺たちが本当に笑いあえる世界を…
310 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:31:53.77 ID:P94vsFIo
こうして、俺はベローナと契約し、魔女の騎士となった。
その翌日、俺はベローナの手を引き北の森を出てある場所へと向かっていた。
赤の女王クルエル率いる軍勢の最前線であり、今も定期的に白の騎士団と攻防を繰り広げる場所。
2つの国の丁度境目ほどにある平原へと。


ベローナを連れて突然現れた俺を白の騎士団の者たちは訝しげな目で見た。
俺は騎士団にベローナを預けると平原を歩き始めた。
背後から静止の叫び声が聞こえるがそんなもの今の俺にはどうでもいい。
遠くから何かを打ち鳴らす音が聞こえた。
おそらく赤の軍勢が俺の姿を確認したのだろう。
マントを風にはためかせながら俺は平原を一歩一歩確実に歩いていく。
そして、次の瞬間、視界を埋め尽くすほどの矢が迫っていた。

「ベローナ、行くよ」

傍にはいなかったが。
俺にはベローナがうなづく姿が見えていた。
剣を抜き、空へと振った。

無数の矢が、空中で弾け散った。
砕けた矢が、パラパラと破片になって宙を舞う。
まるでそれは花びらのように。
雄叫びが大地を揺らした。
前方から無数の兵士たちが俺へと向かってきた。
地平線を埋め尽くすほどの兵士は凍てつく殺気を漂わせながら、俺へと一直線に向かってきた。
俺は大群に向けて剣を振るった。
鋭すぎる太刀筋は空中に真空の刃を生み出し、襲い来る大群を両断した。
だが屍を踏み越え、さらに迫り来る無数の軍勢。
剣を振るうたびに血飛沫が舞い上がり、断末魔の悲鳴とともに大地にその身を横たえる兵士たち。
彼らの振るう如何なる剣も俺に届くことはなく、俺の振るう剣は一振りで何十人もの命を奪い去る。
許されるとは思っていない、どんなに正義を掲げたところで俺が人の命を奪っていることに変わりはないのだから。
それでも、不特定多数の命よりも俺には彼女の心のほうが大切なのだから。
人を[ピーーー]呵責も、彼女が傍にいてくれるから耐えられる。
俺は、魔女の騎士、彼女のためだけに剣を振るう存在、だから、彼女に笑顔を取り戻すために
俺の行く道を阻む者は全てこの剣で切り払う!!
311 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:34:33.90 ID:P94vsFIo
ナザルの戦いを遠くから見ていた白の騎士団の部隊長は信じられないと小さく口にした。
万を超えるほどの大軍がたった1人の男に薙ぎ倒されていく。
そんなこと普通に考えればありえるはずが無い。
だが現実、目の前でそれは起きている。
黒いマントをなびかせながら、赤き血に彩られ、屍を積み上げるその姿。

「あれはまるで…悪魔だ…」

ナザルの凄まじき力とその戦いぶりは、赤の軍勢と対立する白の騎士団にすら恐怖を与えていた。
圧倒的力を目の当たりにして、誰も動こうとはしなかった。
あれはもう災害と同じ、近くにいる者全てを飲み込んでしまう殺戮の嵐。
誰もナザルに近づくことなど出来なかった。
嵐が吹き止むまで、誰もが動こうとしなかった。
ただ1人を除いて。

「彼は悪魔じゃありません
 …誰よりも優しい…それ故に心を削りながら戦う…騎士です…」

そう言ったのは戦いを眺めていたベローナだった。
感情を失ったかのような声で呟くベローナだったがその目には僅かに喜びの色が宿っていた。
だがそれを騎士団も、ナザルすらも知ることは無かった。

やがて、戦闘が終わった。
平原を埋め尽くし屍の中でただ1人、ナザルは立っていた。
そして、ナザルはベローナを連れ、平原を渡っていった。
後に残ったのは、無数の屍と、目の前の現実をどう受け止めていいのかわからない白の騎士団だけだった。
312 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:40:15.63 ID:P94vsFIo
翌日、白の王レコスに謁見している騎士団の1人がいた。
それは平原でナザルの戦いを見ていた部隊の隊長だった。

「あの平原の赤の軍勢がたった1人に落ちただと…」
「信じられない話ですが…真実です…
 突然現れた女を引き連れた黒いマントの男がたった1人で万を超える軍勢を潰したのです
 私も夢か何かだとは思いました…それでも、現実でした…」
「その者は一体…?」
「彼は…白の騎士団のナザルと名乗っていました
 去っていく直前に、戦争を終わらせると言っておりました」
「戦争を…?」
「恐らく、赤の女王を討つ気だと…」
「…戦争が終わるか…今さら考えたこともなかった…」
「レコス様、我々はどうすればいいのでしょう?」
「…彼の力が本当なら、止めることは出来ないだろう…ただ、問題は戦争が終わった後だ
 15年の長い歳月をかけて続いた戦争は良くも悪くも両国の下地になっている
 もしここで戦争が終われば、バランスが崩れ去り、確実になんらかの問題が浮き上がるだろうな…
 それを理解したからこそ、私は終わらせるのではなく被害を最小限に抑える努力を続けていた…
 正しいかどうかはわからなかった、ただ私は民を守らねばと思っていただけだった
 …逃げ、だったのかもしれないな」
「レコス様…」
「…何にせよ、早急に事後の対策を練る必要がありそうだな…
 下がって良い、ゆっくり休むがいい」
「は…」

部隊長は敬礼すると王の間から外へと出た。
そこで数歩進むと壁にもたれかかっていた男に話しかけられる。

「ちょっと待てよ」
「…貴方は?」
「騎士団員アルスト、ナザルと同じ部隊だ」
「…」

アルストは部隊長に歩みより、真っ直ぐな瞳で少し声を荒げながら言った。

「…今の話は本当なのか?」
「王への謁見を盗み聞きとは…懲罰物ですよ」
「んなことわかってる…だが、俺はナザルのことが気にかかってな…」
「…間違いなく、彼は自分のことをナザルと言っていました」
「横にいた女ってのは?」
「わかりません、ただ美しくはあったが…どこか冷たい感じでしたね…
 無機質というか、なんというか…」
「魔女…」
「え?」
「いや…こっちのことだ…
 呼び止めて悪かったな、もういいよ」

部隊長は小さく礼をして廊下を歩いていった。
アルストは窓から外を見ながら自問するように呟いていた。

「…ナザル、お前は純粋すぎたんだな…」
313 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:42:24.30 ID:P94vsFIo
白の騎士団各隊への通達が出されたのはその翌日だった。
内容は要約するとナザルの足取りを追えと言うことだった。
アルストは、その追跡部隊に志願した。
足取りを追うと言っても簡単なことだった。
ナザルは脇目も振らずに一直線に赤の女王の城に向かっていた。
道中にある、赤の軍勢を全て捻じ伏せながら…

「酷い臭いだ…」

アルストは鼻を抑えながら、周囲を見渡した。
死んでから2日ほどだろうか、腐敗が進んだ屍は辺りに酷い臭いを撒き散らした。
死肉を貪ろうと空にはカラスが飛び交っていた。
屍に埋め尽くされた大地はまさに地獄絵図だった。

「…これを、あのナザルがやったというのか」
「アルスト、どうした?」
「いや…」
「先に進もう、ここは赤の女王の領地だ
 殲滅されてるとはいえ慎重にな」
「わかってる…早くナザルに追いつかなくては…」
「…聞きたかったんだが、どうしてナザルをそこまで気にかけるんだ?」
「友達だったからな」
「それだけの理由で?」
「…ナザルはな、甘い奴だった
 戦争っつう生きるか死ぬかの世界で博愛精神を持って敵にも情をかける
 そしてあいつの憎しみは戦争そのものだけに向けられ続けていた…
 そんなあいつが、こんなこと出来るわけねぇんだ…
 いや、これが本当にあいつのやったことなら、誰かがアイツを変えてしまった
 …ナザルの純粋さを利用した、クソッタレがいやがるはずなんだ
 ナザルと共にいたという女、俺はそいつに会って話を聞かなきゃならねぇんだよ」
「…」
「すまん、忘れてくれ」
「アルスト、お前はナザルのことが好きなのか?」
「よせよ、気持ち悪い
 …まぁ、戦争に毒され腐れきっちまった俺はナザルに憧れていたのかもしれねぇなぁ…
 どんな最悪な環境でも、決して毒されず、ただ白く咲き誇る、この花のようなアイツにな」

そう言ってアルストは足元にあった一輪の花に目をやった。
乾いた血で赤黒く染まる大地で、一層の白さを輝かせるその花に。
314 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:46:58.90 ID:P94vsFIo
その頃、ナザルとベローネは終着点へと辿り着いていた。
赤の女王の住まう城、その門前へと。

「おい、そこの2人」

門番がナザルとベローナに近づいた。
その動きに警戒はまるで無かった。
それもそのはず、ここに来るまでナザルは赤の軍勢を全て殲滅してきた。
殲滅ということは誰1人として生き残らなかったということ。
つまり、各地の被害のことは赤の女王には伝わってはいなかったのだ。
そしてその油断を、ナザルが見逃すはずはなかった。
一閃、振られた刃は音も立てずに門番の首と胴を離れ離れにした。
噴水のように血液を噴出しながら倒れる門番の身体に背を向け、ナザルはベローナに言った。

「終わらせよう」

ベローナは静かに頷き、ナザルの手を握る。
次の瞬間、ナザルは小さな咆哮と共に剣を振るった。
大きな門が、轟音と共に砕け散った。
その音を聞きつけ、兵士がぞくぞくと集まってくる。
そして兵士たちは見た。
土煙の中で、飛び散る血液を頭から浴びて、殺意の塊のような眼をした男を。
それはまさしく、悪魔と呼ぶに相応しき存在だった。
戦うか、逃げるか、その判断が恐怖の姿に僅かに揺らぐ。
その揺らぎを、ナザルは、ナザルの剣は兵士たちの身体ごと切り裂いた。
首が宙を舞い、周囲に血の雨を降らせる。
他の兵士が状況を理解し、叫び声をあげるその時には
すでに彼らにとっての悪魔は眼前まで迫っていた。
その背後には、残酷なまでに美しい笑みを称えた女の姿があった。
断末魔の叫び声と、恐怖から来る雄叫びが響き渡り。
果たしてそこに地獄は降臨した。
阻む存在全てを斬り、砕き、叩き潰し、ナザルはベローナの手を引いて城を駆け上る。
死の嵐が城の中に吹き荒れ、赤いカーテン、赤い絨毯は赤黒く染められていく。
長く広い廊下にナザルが駆け込んだ時、正面から今までの兵士とは明らかに姿の違う者たちが出てきた。

「我らはクルエル様直属の親衛隊…
 ここから先に行かすわけには行かない」
「なら、お前たちを殺して進むだけだ」
「あまり調子に乗るなぁ!!」

巨大な両手斧を振り上げながら、重厚な鎧を着た男が飛び出してきた。
ナザルはベローナから手を離し、1人でその男へ正面から飛び込んでいく。

「血迷ったか!我が斧の一撃は決して止めることは出来ん!!」
315 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:49:14.63 ID:P94vsFIo
ナザルの頭骨を1撃の元に粉砕すべく、巨大な斧が振り下ろされようとする。
だが男は見誤っていた。
魔女の騎士となったナザルと存在全てを。
斧が振り下ろされるより早く、ナザルは男の懐へと飛び込んだ。
そして、ナザルは右手を突き出した。
腹腔に響くような重い音が周囲に響き渡った。

「ば、かッ…な…」

ナザルの右手は鎧を貫いていた。
鎧で手の隙間から、おびただしい量の血が流れ出ていた。

「素手で…プレートメイルを突き破る…だと…!?
 貴様…化け物ッ…かッ…?」
「黙れ」

水気を含んだ何かが力任せに潰される音が響いた。
ナザルがゆっくりと手を引くと、鎧の穴からまるで蛇口のように血液が噴出した。
男は、白目を剥き、痙攣しながら倒れこむ。
それは心臓を握りつぶされた故。
鮮血に染まりながら、ナザルは笑っていた。
それは、待ち望んだ戦争の終わりが眼前に迫ったことへの喜びからだろうか。
それとも、人の殺めることに喜びを見出したせいだろうか。
だが、親衛隊にはそんなことどっちでもいいことだった。
その姿は、圧倒的な恐怖の体現。
純粋なる死そのもの、それ以上でも以下でもない、触れる者全てを[ピーーー]存在。
さりとて、親衛隊という肩書きを持つ彼らは引くことも出来なかった。
死を覚悟し、立ち向かうことしか許されない。
それでも、誰1人としてナザルに傷をつけることは叶わなかった。
ベローナはそんなナザルの姿を満足そうに見つめているだけだった。
316 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:51:53.09 ID:P94vsFIo
一方その頃、アルストを含む白の騎士団のナザル追跡部隊もまた赤の女王の城前まで来ていた。
殺されてまだ間もない死体の山を見て、彼らは確信した。
ナザルが、ここにいると。

「ナザル…早まるな…クルエルを殺しちゃいけないんだ…」
「アルスト、これ以上は…」
「…俺は行く」
「アルスト!待て!!」

静止も聞かずに、アルストは屍を踏みながら、城の中へと駆け出していった。
ただ、友に真実を伝えるがために。
だがその歩みに邪魔が入った。
入り組んだ城の中で、ナザルから隠れ、生き延びた兵士たちがアルストの前に立ちはだかった。
圧倒的な恐怖から逃れた彼らは恐怖によって暴走した感情をアルストにぶつけようとしていた。
アルストは剣を抜き、構える。

「邪魔だ退けぇえええええええええええええええええええ!!!」
317 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:54:16.18 ID:P94vsFIo
「ん…?」
「どうしたの?」
「アルストの声が聞こえた気がした…」
「…気のせいじゃない?
 それよりも、王座はこの扉の向こう、覚悟はいい?」
「…ああ」

気のせい、なのだろうか。
でも確かに聞こえた気がした。
いや、今さらそんなことはどうでもいい、この扉の先にいる女王を倒せば戦争が終わる。
待ち望んだ世界が手に入るんだ。
余所見をするな、未来だけを見るんだ。
これで最後だ、これで、もうこの身を血に晒すことも無い。
俺は、意を決してドアを開けた。
大きな音を立て、ドアが開いた。
なぜか、俺たちの足取りは遅くなった。
王座の荘厳な雰囲気がそうさせたのか、それともクルエルに敬意を払ったのかわからないが
俺とベローナはゆっくりと歩いて、王座へと近づいた。

「…そういうこと、か」

王座に座っていた女が小さく呟いた。
そして顔をあげる。
着ている者こそ違えど、その顔はベローナに瓜二つだった。
顔だけじゃない、銀色の髪も、華奢な身体も、赤い瞳も、何もかも。

「…お久しぶりです、お姉さま」
「騎士を得たか…ベローナ…
 なら、兵士は皆殺し…だろうな」

圧倒的な力を前にしていると言うのにクルエルは落ち着き払っていた。
これが赤の女王の貫禄とでも言うのだろうか。

「ベローナの騎士よ、お前はどうしてベローナと契約した?」
「戦争を終わらせるため」
「…そのために私を[ピーーー]か」
「15年前、お前は俺の村を焼き払った
 その罪科は受けなくてはならないだろう」
「…フ、ハハハハハ」
「何がおかしい!?」
「哀れな道化よ…全てその女に踊らされているとも知らずに…」
318 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:55:37.39 ID:P94vsFIo
クルエルは、ベローナを指差した。
踊らされている?俺が?

「戯言を抜かすな!!
 俺は俺の意思でここにいる!そしてお前を[ピーーー]!!」
「そうか、そう信じたいのだな…
 ただ私はここで討たれるわけにはいかない」

その時、王座の後ろから何者かが現れた。
黒い鎧に身を包んだ、男か女かもわからない騎士が。
その姿は15年間忘れもしなかった。
15年前、俺の母を殺した騎士。

「貴様はぁ…!」
「彼はレヴランド将軍、我が軍最強の騎士であると同時に…
 私の騎士でもある」
「何だと!?」
「将軍、頼む、私はあの女に用がある」
「御意」

次の瞬間だった。
黒い鎧の男、レヴランドは一瞬で距離を詰めてきた。
それはまるで、吹き抜ける突風を彷彿とさせる。
黒い風が吹き荒れた。
金属音が響かせ、俺はレヴランドの剣を押し留める。

「グッ…」
「若き騎士よ、退く気は無いか」
「俺はこの身を血に晒してここまで辿り着いた…!
 今さら戻る場所などありはしない!!」
「ならば、果てよ」

突然、レヴランドの剣が引かれた。
拮抗する力を失った俺は前のめりになる。
視界ギリギリの位置に、姿勢を低くしたレヴランドが構えていた。
まずい、と思った時にはもう遅かった。
刹那、腹部を大砲に撃ち抜かれたかと錯覚するほどの衝撃が襲いかかった。

「げはぁッ!?」

衝撃で身体が宙に浮き、そのまま物凄い勢いで背後の柱へと叩きつけられる。
その凄まじい衝撃はいとも容易く硬質な柱に巨大なひび割れを巻き起こした。
衝撃の余韻が消える間すら与えず。
俺の視界が捕らえたのは剣を構えこちらへと向かってくる黒い風だった。
咄嗟に身体を捻り、剣を突き出した。
レヴランドが首を捻り、ギリギリでその刃を避けるとほぼ同時に
俺の首元ギリギリをレヴランドの刃が掠った。
319 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:58:17.94 ID:P94vsFIo
「…ハァ…ハァ…」
「魔翌力では劣るが、純粋な剣技では私のほうが上だ
 諦めてここから去るがよい」
「黙れッ…俺は…お前を[ピーーー]…
 15年前にお前に殺された、母の仇…」
「何だと…?
 まさか貴様、あの時の…!!?」
「やはり…お前かッ!!!!お前だったのかァアアアアアアアアアアアアア!!!」

雄叫びと共に、俺は左手でレヴランドの剣を殴りつけた。

「ぬおッ!」

その衝撃は確かにレヴランドに伝わり、僅かに体勢が崩れた。
剣を引き、両手で持ち、俺はレヴランドの頭目掛けて振り下ろす。
だが届かない、金属音が響き渡り、寸での所で俺の刃はレヴランドの剣で止められてしまった。
…それがどうした、届かないならば届くまで振り下ろすだけだ!!

「あぁああああああああああああああ!!!」

感情が堰を切ったように流れ出し、俺は叫び声をあげながら剣を振るい続けた。
レヴランドはその全てを受けきっているが
撃ち合うたびに僅かな動揺が感じられていた。

「…ぬっぅ…」

レヴランドの顔が歪んだ。
俺はただひたすらに剣を振り続けた。
視界の端で、クルエルと何かを話すベローナが一瞬だけ見えた。


ナザルとレヴランドの人を超越した戦いの横。
合わせ鏡のような2人の魔女は言葉を交わしていた。
双子として、そして道を分かたれた存在として。

「ベローナ…やはりお前は忌み子だ…」
「お姉さまは今だにそんな掟に縛られているのですか?」
「…私の罪は、私が裁こう」

クルエルの手にはいつの間にか短刀が握られていた。
ベローナは後ろに1歩後ずさりをする。
だが、クルエルの赤い眼が見開かれた。

「妹よ!お前だけは私が殺さなければならない!!」

短刀を振り上げ、ベローナへと向かうクルエル。
だが、ベローナは笑った。
それはこれ以上ないほどの残虐な笑み。

「そうだと、思ってましたわ
 哀れなお姉様」
320 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 22:59:42.59 ID:P94vsFIo
突然だった。
本当に何の前触れもなく。
レヴランドが俺の剣を弾き飛ばした。
何が起こったのか理解出来ずに、ただ本能が理解したのは。
絶対的な死の予感。
しかし、レヴランドは叫び声を共に俺に背を向け、飛び出した。

「クルエェェェェェル!!!!」

その叫び声とレヴランドが向かった先を見て、俺の脳はさらに加熱した。
短刀を振り上げた、クルエルに向かい、ナイフを突き出そうとしているベローナ。
その顔は今だかつて見たことの無いほど、狂喜していた。
まるで止まったような時間の中で。
赤の女王クルエルの胸元に、ベローナのナイフが突き立てられた。
赤い花が散った。

「がはっ…」
「ぐぼぉっ…!?」

同時にレヴランドが倒れた。
黒い兜が衝撃でレヴランドの頭から離れ、地面を転がった。
騎士と魔女は命を共有する。
つまりは、そういうことだ。

「哀れで滑稽なお姉様、後は私が全て引き継ぎましょう」

ベローナの優しい声は、全てを凍てつかせるほどの冷たさに染まっていた。
俺はただ呆然とその光景を眺めていることしか出来なかった。
だが、レヴランドは立ち上がった。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

黒い風が吹き抜けた。
黒き風に舞う、赤い花。

「咄嗟に身体を捻って、致命傷を避けたのね…
 だけどもう駄目よ、どれほど粘ってもその傷では私の騎士、ナザルに勝つことは出来ない」
「…それでも…私は…女王を…クルエルを守ると誓った…!
 私の罪を受け入れ、共に背負ってくれた彼女のために…!!」
「ナザル、彼を殺して」
「ベ、ベローナ…?」
「早く」
「う…」
321 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:00:29.93 ID:P94vsFIo
有無を言わせぬ威圧感を漂わせながらベローナは俺に命令した。
俺は迷いながらも、剣を構える。
口から血を流しながら、クルエルを抱きかかえたレヴランドが俺を見る。

「…若き騎士よ、私の罪は15年前に始まった」
「…何?」
「私は、命令により、ある村を襲った…
 お前の、村だ…」
「!」
「だが…お前は勘違いしている…
 命令を下したのは…クルエルではない…」
「ナザル!そいつを殺しなさい!!
 早く!殺せ…殺せぇええええええええええええええええええええええええええええ!!」

ベローナの絶叫が響き渡る。
激情の咆哮、だが俺の身体は動かなかった。
レヴランドの語りに、引き込まれていた。

「命令を下したのは、あの女だ…」
「なっ…え?」

レヴランドは、ベローナを震える手で指した。
そして、口元から血をこぷこぷととめどなく溢れさせながら続ける。

「15年前…先代赤の女王が死に…
 双子のどちらかが王位を継ぐことになった…
 クルエル様は、妹にその座を譲った…」
「ベローナに…!?」
「だが、この女はまさしく忌み子だった…
 この女が王位を継いだその時こそ、その凶である性質は暴走した…
 白の国の村を襲い、15年に渡る戦争を始めたのは…
 クルエル様の妹であり、お前の魔女である、ベローナだ!!」
「そんな…嘘だ…嘘だッ…!」
「クルエルは、それに気づき、ベローナを処刑しようとした…
 だが彼女は鬼になりきれず、追放にするに留めた…」
「それが…私の罪…」
「クルエルッ!?」

レヴランドの腕の中で力なく倒れていたクルエルが起き上がった。
しかし胸からおびただしく流れる血は止まらず。
赤いドレスを、より赤く鮮血に濡らしていた。
息も絶え絶えな彼女はそれでも確かに強い意志を携えた声でナザルへと語りかけた。
322 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:01:13.03 ID:P94vsFIo
「私はあの時、なんとしてでも…ベローナを殺しておかなければいけなかった…
 それが…私の罪…そして私は贖罪として…女王を演じた…」
「ならばなぜすぐに戦争を止めなかった!?
 お前たちの言っていることが真実ならすぐにでも戦争を止めたはずだろう!!」
「若き騎士よ、お前は戦争を憎むあまり…
 未来を見失っている…最も…それも私の責任なのかもしれない…」
「どういうことだ?」
「どういう経緯があれ、赤の国が白の国へと戦争をけしかけたのは事実…
 それが妹の凶行でした望んでいることではなかった…
 それで済むような問題なのか?」
「だけど…!戦争が続くせいで今も罪も無い命が奪われて…!
 誰もがしたくもない殺し合いを続けるはめになってるんだ!!
 少なくともすぐに止めればそんなことは!!」
「…そうさ、それも私の罪だ…だが降伏してどうなる?
 もし降伏すればお前と同じで憎悪に駆られた白の軍勢はこの国を襲撃するだろう
 そこに吹き荒れるは略奪、殺意、憎悪、悲哀、憤怒…
 それらはこの国をあっという間に飲み込み、最後には何も残らない…
 私は罪人であると同時に…赤の女王クルエル…
 だから私はこの国を、見捨てるわけにはいかなかった、この国に住む、民を守らねばならなかった…
 せめて被害を最小限に抑えようとしながら、私は増え続ける罪に苦しみ続けた!!
 それでも私は引き下がることなど出来なかった!!
 私を慕ってくれる民のため!母から受け継いだこの国のため!この国に生きる数多の命を守るために!!」

その叫ぶクルエルからは、凄まじいほどの威圧感。
時代を作る覇者の資質。
初めてナザルは、赤の女王クルエルという存在の真の恐ろしさを認識した気がした。
323 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:02:11.95 ID:P94vsFIo
「ご、ふっ…」
「クルエル様ッ…」
「レヴランド…すまない…
 最後まで…貴公をつき合わせてしまった…」
「ベローナに騙され…信じる道も何もかも失った私を救ってくれたのは貴方でした…
 今さら死ぬことなど、怖くはありません、最後まで貴方と共に生きる…
 私は、私にそう誓いました…」
「…さぁ…若き騎士よ…真実は開かれた…
 ここからどうするかは、自ら決めるがいい…」
「俺は…俺はッ…!!!」
「あぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ベローナ!?」

絶叫をあげながら、いつの間にかベローナがクルエルとレヴランドへと剣を振り上げた。
止めなければいけないとナザルは思った。
だが、静止の声よりも早く、その刃はクルエルとレヴランドを2人まとめて突き刺した。
赤い花が咲く。
黒き鎧に散りばめられる、赤い花。
あまりにも美しく、倒れていく。
聞こえるはずの無い、2人の声がナザルには聞こえた気がした。

「これで私は…赤の女王クルエルではなく…
 ただのクルエルとして…」
「冥府の果てすら越え…永久に歩もう…クルエル…」
「レヴランド…」

どさりと、もつれあうように2人は倒れた。
その顔は美しく微笑んでいた。
静かに、優しく、死の安らぎが2人を包んでいた。
324 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:03:19.76 ID:P94vsFIo
もう、クルエルとレヴランドは動かない。
ベローナは楽しそうにステップを踏んでいた。
そんなベローナを見るのは初めてだった。
だが素直に喜ぶことは出来なかった。

「ベローナ…」
「ナザル、これで戦争は終わるわ」
「…」
「嬉しくないの?」
「戦争を憎むがあまり見えていなかったもの…
 …ベローナ…赤の国はどうなるのかな?」
「…滅ぶわ」
「そこに住む命もか…」

俺の世界は、余りにも狭かった。
憎しみで狭まった視野は広く世界を見れなくなっていた。
ただ戦争が終われば誰もが幸せになると盲目的に考えていた。
15年の戦乱の爪あとなど考えたことも無かった。
自らの信念が間違いだと突きつけられ、もう俺は何を信じて良いかわからない。
何が真実だろうか、クルエルとレヴランドが最後に語ったことこそが絶対の事実だとでもいうのか。
それならば、俺が最も憎むべき相手は…?

「ベローナ、教えてくれ
 15年前、俺の村を襲うように指示を出したのは…君なのか…?」
「…ナザルは、私とお姉様の言う言葉
 どちらを信じるの?」
「わからない、わからないんだ…!
 もう俺はこれからどうしていいかも…何もかも…」
「なら…」

ベローナが俺を抱きしめた。
微かな香水の香りが鼻を突き。
耳元で囁かれる。

「私だけを信じていればいい…
 全ての道を見失っても…私が道を指し示す…
 だから、私を信じて」
「…ベローナ」

俺はそっとベローナを抱きしめようとした。
だがその時、扉が開けはなたなれた。

「ナザル!!」
「アルスト…!?」

全身に傷を負い、白い鎧を返り血に染めていたものの
それは俺と同じ部隊に所属していたアルストに間違いなかった。
325 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:05:05.50 ID:P94vsFIo
「お前、どうしてここに…?」
「その女から離れろ!!」
「え…」
「お前は利用されてるんだ!その女に!!」
「違う!私はナザルを利用してなんかいない!」
「ナザル…お前が目指していたのは屍の山なのか!?
 血と屍に上に作られた平和がお前が目指していたものか!?
 本当は気づいてんだろ!でもお前は認めたくなかっただけだ!!」
「うっ…あああ…」

そうだ、俺はどこかで気づいていた。
全てが間違って、道を踏み外していることに。
そしてそうなるように仕向けたのがベローナだということにも。
わかってたんだ、間違ってることは。
彼女に潜む狂気も、復讐心も、契約を交わした時から。

「ナザル!あいつを殺して!!」

俺は踏み出した。
剣を構えて、全てを断ち切るために。

「ナザル…!!!」

ごめん、アルスト。
間違ってるのは俺のほうだ。
俺もまた、クルエルやレヴランドと同じように、罪人なんだ。
ベローナという魔女に踊らされた、悲しき罪人。
それでも、俺が道を正せなかったのは。
ベローナを、愛してしまったから。
だから、俺は、今ここで、最も重い罪を犯そう。
全てを終わらせるために。
326 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:07:33.32 ID:P94vsFIo
血飛沫が、天井にまで届いた。
下から斬りあげられた刃は、鮮血を天井高くまで弾き飛ばしていた。

「…え…?」
「…ごふっ…!」
「ナザル…!?」

ナザルの刃は、ベローナを斬り裂いた。
それが痛みが自らに襲い来ることを知ってのうえで。

「どうし…て…」

呟きながら、倒れるベローナをナザルはゆっくりとその手で受け止めた。
そして、寄り添うように倒れこむ。

「…ごめんな…ベローナ…
 でも俺は…君を、心の底から…愛していたんだ…」
「なら、なぜ…」
「愛しているからこそ…君を止めなきゃいけなかったんだ…
 間違っているかもしれない、それでも…俺にはこれが正しさだった…」
「ナザ…ル…」
「どうして…こうなるんだろうな…
 君が双子の妹として生まれなければ…双子の妹を忌み子とする赤の王家になど生まれなければ…
 きっと僕らは…もっと違った道を歩めたはずなのに…」
「…そう、ね…きっと…もっと幸せな…」
「赤の王家の血は滅ぶ…
 もう君のような悲しい運命は生まれない…
 そして、僕も君と共に行こう…」
「ナザル…真実を伝えるわ…」
「え?」
「…私も、ナザルを心の底から…愛していた…
 これだけは、間違いなく…真実…」
「ベローナ…」

ナザルの目から大粒の涙が零れ落ち。
ベローナの服に染みを作っていく。
アルストは動けなかった。
運命によって紡がれた狂気に翻弄された2人の悲しき傀儡が最後に作り出した、運命への反逆。
その儚さと、美しさに、呼吸すら忘れ、ただ見つめ続けた。

「永遠を、共に歩もう」
「…どんな世界でも…貴方と一緒なら…笑いあえる…かな」
「勿論、さ」
「…嬉し…い…な…」

ベローナの手が、力なく地面に落ちた。
そして続くように、ナザルも地面に崩れ落ちた。
いつの間にか、アルストは泣いていた。
それが一体何に対しての涙だったのかは、もう誰にもわからなかった。
327 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:09:03.64 ID:P94vsFIo
王国騎士団第7部隊、一等士官アルストの手記より。

戦争は終わった。
ナザルの望みは叶えられた。
しかし、恐らくその後の展開をナザルは決して望まなかっただろう。
赤の国の領土は全て白の国に奪われ。
赤の国の民は戦争に関わっていた者は処刑され。
戦争とは直接的に無関係だった民も奴隷として扱われ、迫害を受けた。
この世界に、正しさはないのかもしれない。
世界は悲しみに満ち溢れていて、蓋をしたところで別の所から新たな悲しみが生まれるだけに過ぎない。
それが、人の心に狂気を産み落とす。
ただ1つ思うのは、正しさが無いと同じように、間違いも無いということだ。
ナザルは正しくはなかった、だが決して間違っているだけでもなかった。
少なくとも、彼は私が思い描く正義に最も近い存在だったとは思う。
私は生涯彼のことを忘れまい。
自らの正義に振り回され、道を踏み外した英雄としての彼を。

恐らく、いつか時間が流れる中でこの悲しき運命の話は形を変え
本来のものとはまるで違うお話となってしまうだろう。
だがそのほうがいいだろう。
悲しみしか生み出さなかった戦争のお話など、脚色され、真実から遠ざけたほうが良いのだ。
決して語られぬ真実だけを私は胸に秘め、明確な答えの無いこの世界で歩み続けよう。
それが、我が友に捧げる、鎮魂歌だと信じて。
328 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/05(土) 23:15:15.02 ID:P94vsFIo
そしてこの短編が今なんか絵になるとかならないとかの話がありましてね
まぁそんなわけで僕も皆も期待大
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/06(日) 13:52:08.87 ID:vmL6lCwo
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/18(金) 02:40:11.23 ID:dR6WH6AO
口唇ヘルペスなったお
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/06/22(火) 23:41:48.67 ID:15c7kgDO
それが、まさか最後の一言になろうとは、この時誰も思いもしなかったという・・・
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/23(水) 15:51:58.10 ID:1h4PRMDO
Ω ΩΩ<ナ、ナンダッテー!?
333 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2010/06/28(月) 00:18:01.37 ID:2GjYe/oo
無意味に薬を飲んでオーバードーズ

身体が重いのにテンションだけ上がって困る
334 : 【吉】 [sage]:2010/07/01(木) 21:38:51.75 ID:kacc9Poo
忘れるところだった
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/02(金) 08:01:44.71 ID:NlG57IAO
忘れてたわ
336 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/07/02(金) 12:34:38.95 ID:w5hld2DO
ああ、忘れてたさ
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/07(水) 01:32:33.61 ID:LFnm7.AO
モンゴル
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/07(水) 20:47:12.45 ID:J1arOfYo
800
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/22(木) 03:13:54.96 ID:Q8IOWIAO
こんなに過疎
340 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/07/25(日) 02:20:27.49 ID:DjT/hU.o
ほんと、過疎りすぎだろ・・・

ゆき兄小説サボんなよ?^^
341 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [やっぱり過疎ってんなww]:2010/07/28(水) 21:40:15.92 ID:hb3vOADO
また衝動買いしてもうた…



カエルかわいいよカエル
http://imepita.jp/20100728/776380
http://imepita.jp/20100728/776680
342 :黒やん :2010/07/29(木) 07:08:39.93 ID:I1aNX2DO
二枚目はカエルさんが小さくてよくわからんwwwwwwwwwwww



にしてもたまたま見たらうpとは……
やはりうpが僕を呼んでいるのか…!
343 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/07/29(木) 09:11:17.26 ID:s99fYoDO
>>342
黒やん…恐ろしい子!


耳だけ撮ってもなんだと思ってちょっと離したらこんな事にwwww
344 :ミギー [sage]:2010/07/30(金) 19:08:44.83 ID:ZsvC9Uco
黒やん生きてたのね・・・・!
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/30(金) 20:18:20.28 ID:NIvLYgMo
ミギーも生きてたのか・・・
346 :黒やん :2010/07/31(土) 08:01:04.95 ID:.A6OO.DO
毎日体調悪いけど生きてる
347 : 【中吉】 [sage]:2010/08/01(日) 06:22:54.30 ID:6LOqu6Mo
801の日
348 : 【末吉】 :2010/08/01(日) 14:04:25.61 ID:AkyQMwDO
今月も忘れるとこだったww
349 : 【毎月1日限定ですよ。。】 :2010/08/02(月) 00:06:15.72 ID:fuiwE6DO
おみくじぃぃぃぃ
350 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 [sage]:2010/08/05(木) 02:30:46.24 ID:24g64gDO
何だか、平野綾でお祭り騒ぎですね
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/05(木) 07:27:56.53 ID:Mm/yLIAO
お祭り花火きれいだおー
352 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/08/08(日) 21:07:10.82 ID:3i1dNsDO
ゆき兄はいつになったら小説の続きを書くのか…








髪切ってきたお( ^ω^)
http://imepita.jp/20100808/758780
353 :黒やん :2010/08/08(日) 22:56:54.49 ID:xy9CRMDO
覆面…なるほど、暗殺者か
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/08(日) 22:58:30.95 ID:yjyOa6E0
fukumen
guma
omosirokattayaro?

arega
itibann
osusume
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/11(水) 19:11:35.45 ID:b2ImJkDO
>>354
nihongo de onegaishimasu
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/12(木) 04:43:41.42 ID:pSUFp6AO
写メつきメル友掲示板に女装した写メを加工利用してネカマをしようとしたらチンコの写メを送ってくるやつが多すぎて心折れたの巻
357 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/08/14(土) 00:34:33.78 ID:5VZLJ2DO
>>356
どどんまいwwwwwwwwwwww
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/17(火) 08:12:10.03 ID:bUYgBgDO
>>358がおにんにんうpすると聞いて飛んできますた!
359 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/08/17(火) 09:51:30.38 ID:PzDQk6DO
>>358
>>358
>>358
>>358
>>358
360 :黒やん :2010/08/17(火) 18:48:30.30 ID:LGMOBoDO
>>358
頑張って!
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/18(水) 08:16:32.98 ID:4EwP1QAO
おにんにんときいて(ry
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/30(月) 23:58:13.78 ID:gEyht8.0
夏も終わりのひとコマ
夏祭りにて

「なつもおわりだねー」
「んだなー」
「「・・・」」
「「花火でも見に行く?」」
「wwwwww」
「いくかww」
「いくべww」

「お、もうはじまちゅうべww」
ドーンドーン
「「おーーーーww」」
「子宮に響くなww」
「俺たちついてないけどなww」
「んじゃ、たまに響くなww」
「むしろ揺れるなww」
ドーン!!
「おお!でけえ!!」
「あれだ!掛け声!あれなんだっけ!?」
「玉だ!玉だ!」
「あれやんべ!!」
ドドーン!
「玉やー」
「鍵やー」
「かぐらー」
「黒ヤーン」
「・・・」
「・・・」
ドーン!!!
「「かそやーん」」
「「・・・」」


過疎回避ーww
363 :黒やん :2010/08/31(火) 20:11:57.79 ID:iDWBTUDO
呼ばれた気がした
364 : 【吉】 [sage]:2010/09/01(水) 05:14:52.07 ID:mD8smtoo
今日から本気出す




大吉だったら働く
365 : 【末吉】 :2010/09/01(水) 10:38:15.54 ID:Fl1McIDO
俺も本気出すか…




大吉だったら働く
366 : 【中吉】 [sage]:2010/09/01(水) 11:14:23.48 ID:5grEUYDO
じゃあ俺も…





大吉だったら働く
367 :黒やん :2010/09/03(金) 08:30:41.40 ID:5gqF7cDO
MHP3とPSPo2i…
発売日ずらせなかったのかよ



で、みんなは買うのかい?
368 : 【毎月1日限定ですよ。。】 [sage]:2010/09/04(土) 04:40:17.81 ID:u6bTiK.o
10000000個予約してきた
369 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/09/04(土) 14:33:57.89 ID:MgnZW6DO
>>367
MHP3は買うお!

アナログスティックがツンツンしててデレてくれないからハードも買い直しの予感…(´ω`)
370 :黒やん :2010/09/04(土) 21:52:27.35 ID:3ws8LkDO
>>368
一個くれ

>>369
これを機に新しいの買えばいいんじゃね?
371 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/09/05(日) 00:37:33.08 ID:LTeE6gDO
>>370
たった今ぶっ壊れた\(^o^)/


歩けなかったり回避のかわりにしゃがみ込む程度だからなんとかなってたんだがな…
デフォで↓入力入りっぱで移動すらできなくなったwwwwwwwwwwwwwwwwうぇwwwwwwうぇwwwwwwwwwwww


もう自宅にすら入れないお…(´ω`)
372 : :2010/09/05(日) 04:15:14.35 ID:v.kYzYDO
>>371
新しいPSPとPSPo2を買うと聞いて
373 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/09/05(日) 22:18:12.62 ID:LTeE6gDO
>>372
修理とか面倒だからポチってきた

pspo2は買わないしwwwwwwwwwwww
あんなリタマラ地獄なゲームやる気力ないわwwww
374 :黒やん :2010/09/08(水) 11:13:21.70 ID:qTGBr.DO
>>373
まぁそう言うな
一緒に出ないアイテム掘り掘りしようぜぇwwwwww
375 :そら [sage]:2010/09/18(土) 09:51:37.24 ID:8r/g4UDO
剣さん誕生日おめででで
376 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/09/18(土) 16:35:43.84 ID:2Mrr9YDO
ととととと
377 :ほろ苦 :2010/09/24(金) 17:24:18.93 ID:ydcLHkSO
http://www.nicovideo.jp/watch/sm12207851

久しぶりに。
378 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/09/24(金) 21:03:55.28 ID:ZKYhGMDO
>>377
エロくないだと…?
379 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/09/24(金) 21:14:55.33 ID:ZKYhGMDO
新しいメガネ買ったおwwwwwwwwwwwwwwwwフヒヒwwwwwwwwwwwwwwww


ツルが黒ってのがツボですた^p^
http://imepita.jp/20100924/758810
http://imepita.jp/20100924/759100







憧れの黒縁メガネが絶望的に似合わないので度入りサングラスにした事は反省していない

http://imepita.jp/20100924/759380
380 :黒やん :2010/09/24(金) 22:12:40.90 ID:R6/MloDO
うpが僕を呼ぶ
381 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/09/25(土) 00:22:22.55 ID:7PtEgkDO
>>380
もはや召喚呪文だなwwww
382 :黒やん :2010/09/25(土) 19:53:56.84 ID:tVMt5.DO
>>381
僕を喚ぶと大量のMPが必要だぜ?
383 : 【吉】 [sage]:2010/10/01(金) 00:36:57.82 ID:mGpVe9Qo
勝負
384 : 【末吉】 [sage]:2010/10/01(金) 01:48:57.02 ID:F1LeoDAo
俺がおみくじだ
385 : 【末吉】 [sage]:2010/10/01(金) 10:14:42.57 ID:mPmhiGA0
大吉なら働く
386 : 【大吉】 [sage]:2010/10/01(金) 10:50:02.05 ID:Dvgou.DO
ピョン吉なら会社早退する
387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/10/08(金) 07:41:57.30 ID:diMPpcAO
1000なら働く
388 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2010/10/08(金) 13:56:59.75 ID:75kG/ADO
>>387
働く気なさすぎワロタwwwwwwwwwwwwwwww
389 : 【だん吉】 [sage]:2010/11/01(月) 00:03:36.17 ID:qqPDmVgo
今日から本気出す
390 : 【吉】 :2010/11/01(月) 12:43:43.65 ID:ofqPeQDO
だん吉が本気出すと聞いて(ry
391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/11/12(金) 08:07:22.87 ID:RnsqZkSO
過疎ってるなぁと思っていたら
いつの間にかおみくじスレになっていたでござる

何を言って(ry
392 :バナ丸 [sage]:2010/11/15(月) 20:40:11.87 ID:4tdll.DO
書くネタないしな…


tkゆき兄は小説の続きそろそろ書けよwwwwwwww
393 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 11:36:47.59 ID:ZOxwrJAo
おなかこわした
394 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 12:50:39.15 ID:lZic/EDO
>>393
だから拾い食いはやめろと……いや、そんな事すんのゆき兄だけだなwwww
395 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/11/27(土) 15:37:10.49 ID:ZOxwrJAo
拾い食いなんて今まで1回しかしたことないよ
396 : 【末吉】 [sage]:2010/12/01(水) 07:42:24.13 ID:XpKpES.o
ちょっと休憩
397 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/06(月) 17:41:55.74 ID:v5JkVMDO
え?ゆき兄年越しでラジオやるってマジ?
398 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/06(月) 23:53:02.91 ID:bcdTRkAO
戒名組はもう死んだか?
399 :黒やん :2010/12/07(火) 08:53:25.56 ID:sXXWcYDO
あ、まだ生きてます
400 :出遅れショック坊や :2010/12/09(木) 12:53:27.62 ID:9G6DyoDO
呼ばれたような気がしたらこれだよ!!!
401 :黒やん :2010/12/09(木) 15:34:58.79 ID:XlLjMUDO
ショックwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
402 :ほろ苦 :2010/12/10(金) 12:51:57.34 ID:mmJXIcSO
レア過ぎてこっちが出遅れる罠
403 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 01:20:37.28 ID:boSAqOQo
o(・_・= ・_・)o キョロキョロ


(゜o゜)つ彼女に送るメール内容
>>404
404 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/11(土) 15:43:08.11 ID:yNXploAO
やめて!ラーの翼神竜の特殊能力で、ギルフォード・ザ・ライトニングを
焼き払われたら、闇のゲームでモンスターと繋がってる城之内の精神まで
燃え尽きちゃう!お願い、死なないで城之内!
あんたが今ここで倒れたら、舞さんや遊戯との約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。これを耐えれば、マリクに勝てるんだから!

次回、「城之内 死す」。デュエルスタンバイ!
405 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 01:46:32.40 ID:bidpcBMo
>>404
携帯で打つには辛かったぜ。
長すぎて良い反応は期待できない気がするが。
406 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 01:50:47.89 ID:bidpcBMo
て、起きてた。
草は絵文字だと思って。

「完全に迷惑メルですけどもwwwwww笑
でも城之内でわかったwwそのセリフを言ってるのは・・・・・あんずちゃん?ww」
407 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/12(日) 01:51:35.33 ID:bidpcBMo
ああ、忘れてた。
>>408
返事でも、新たな話題でも。
408 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/12(日) 03:57:48.52 ID:twpAwIAO


そうそう( ^ω^)
とりあえず今からデートしようぜ
409 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 08:15:16.90 ID:F4kkPFMo
>>408
普通にカフェでデートしてしまったではないか。
   >>410
410 :黒やん :2010/12/13(月) 09:28:22.22 ID:QAM7BgDO
猪木のモノマネをしながらぬこの可愛さについて熱く語る
411 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 11:04:46.84 ID:F4kkPFMo
・・・メールで!?
412 :黒やん :2010/12/13(月) 11:33:17.55 ID:QAM7BgDO
あ、メールだったか…すまんwwwwww



猪木っぽいメールを頑張って送るんだ!
413 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/13(月) 12:15:08.78 ID:F4kkPFMo
「にゃんこですかー!にゃんこがいればなんでもできる。1、2、3、にゃー!」

変身
「遅刻決定にゃ・・・お金入ってなくて改札に挟まれて目の前で電車が過ぎ去ったにゃ・・・」

僕は頑張った。
悪かったのはタイミングだ。
>>414
414 :しげるん :2010/12/14(火) 03:28:59.71 ID:.B2Y8oDO
ちょりーっす。そういや最近めっきり冷え込んできたよね
つまり冬、鍋の季節ですね!だから鍋しよう!コタツに入って鍋をつつこう!
君は何鍋が好きかな?ちなみに私は土鍋が好きだよ
415 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/15(水) 16:00:21.86 ID:kpJQGYAO
女の子の友人に


白い液体(性的な意味で)

って送ったら返信返ってこない

くそ!!何がまずかったんだ!!
416 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/18(土) 22:41:30.44 ID:uig3ys6o
とりあえず久しく言ってないから言っておこうか




リア充爆発しろ
417 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 00:43:41.60 ID:KVAb.rA0
2011年は本気出す
418 :omikuji!dama! [sage]:2011/01/01(正月) 00:44:51.58 ID:KVAb.rA0
コマンド忘れてた
419 : 【ピョン吉】 [sage]:2011/01/01(正月) 00:47:08.44 ID:KVAb.rA0
本気出そうとした結果がこれだよ・・・
420 :omikuji! [sage]:2011/01/01(正月) 00:54:20.63 ID:vFlbVF20
なにがでるかな
421 : :2011/01/01(正月) 04:20:58.88 ID:.d4jdoDO
明けました
422 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! [sage]:2011/01/01(正月) 22:26:49.86 ID:Hs617MDO
あけましておめでとう
423 : 【だん吉】 [sage]:2011/01/01(正月) 22:28:51.83 ID:Hs617MDO
これでよかったっけ
424 :!dama [sage]:2011/01/01(正月) 22:30:49.53 ID:Hs617MDO
お年玉なしか…
425 :omikuji! :2011/01/01(正月) 23:54:31.74 ID:ALC0dwAO
426 :あはっぴぃにゅうにゃぁ2011! :2011/01/02(日) 00:18:27.07 ID:6rpe6760
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/01/09(日) 15:30:21.51 ID:58RdMcAO
ちゅるやさんちゅるやさんちゅるやさん
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/10(月) 20:21:35.00 ID:ICN+1ZCto
成人の日!でもここはネバーランドだからみんな子どもさ!
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/15(土) 19:52:14.01 ID:OWLKcKbIo
今日はセンター試験!でも、今起きました^q^
430 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/01/19(水) 02:12:32.07 ID:xPeiwOZqo
おっすおっす
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/01/23(日) 11:35:22.31 ID:3XjHVYUAO
性病になった
432 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/01/25(火) 21:01:05.51 ID:tV9j6DLOo
>>431
だから安風俗はやめておけと
433 :431 :2011/01/25(火) 22:31:06.75 ID:1PHuqQrwo
>>432
興味本位でやったホモセックスがまずかったみたい・・・
434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/01/25(火) 23:45:32.27 ID:/d9UzKDAO
ひぎぃ!お尻さけちゃうよう
435 :バナ丸 :2011/01/27(木) 15:36:41.24 ID:ZF7y1N0DO
>>433
おまwwwwwwwwwwwwwwwwww



kwwsk^^
436 : 【吉】 :2011/02/01(火) 07:13:42.56 ID:LjeaeDjjo
バレンタインデーも頑張る
437 : 【吉】 :2011/02/01(火) 23:51:45.08 ID:a4WIvMpDO
バレン……タ…イン……?

なにそれこわい
438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/03(木) 12:31:27.83 ID:SJXsE2cAO
今年はうんこチョコいっぱいだよぉ/////
439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/04(金) 05:09:07.48 ID:fMI0PdYUo
このスレが立ってから1年が経とうとしている
440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/05(土) 16:37:38.79 ID:CZ4tKjzDO
ゆき様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ
441 :黒やん :2011/02/09(水) 08:14:57.46 ID:pEsgc9tDO
今日で一年か
442 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/09(水) 21:52:43.29 ID:f08lJtHso
ハッピバースデースーレー
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/20(日) 10:51:18.52 ID:dwOvcWj4o
ゆき兄含め戒名ズはそれぞれの道を歩んでゆくのであった・・・。
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/02/21(月) 14:54:27.68 ID:9Edp0j6zo
>>443
俺がいるぜ
445 :黒やん :2011/02/23(水) 03:29:49.83 ID:iU98ZczDO
僕もいるぜ
446 :444 [sage]:2011/02/23(水) 03:51:01.59 ID:BB1tsD8ro
俺もいるぜ
447 :黒やん :2011/02/23(水) 05:15:56.44 ID:iU98ZczDO
>>446
テリーマン!
448 :444 [sage]:2011/02/23(水) 12:21:47.15 ID:BB1tsD8ro
>>447
俺もいるぜ!
449 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [久々にフルで戒名書いてみたww]:2011/02/23(水) 17:58:44.14 ID:A/tKj9ZDO
俺もいるぜ!
450 :黒やん :2011/02/23(水) 22:03:19.58 ID:iU98ZczDO
>>448
しつけぇwwwwwwwwww

>>449
バナ…夜叉丸!
451 :444 [sage]:2011/02/24(木) 00:30:49.56 ID:oz2wEwjgo
俺もいるのか?
452 :黒やん :2011/02/24(木) 08:45:32.63 ID:1eeiV+wDO
>>451
お前だったのか…
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/24(木) 10:22:51.62 ID:oz2wEwjgo
俺は誰だ!
454 :バナ丸 :2011/02/24(木) 11:08:14.92 ID:6cDNuZoDO
>>450
もうバナ丸でいいわwwww

>>453
444じゃねぇかwwwwwwww
455 :黒やん :2011/02/24(木) 11:31:52.14 ID:1eeiV+wDO
>>453
むしろこっちが知りたいわwwwwww

>>454
僕さ、バナナってあんまり好きじゃないんだよね
456 :444 [sage]:2011/02/24(木) 14:46:18.33 ID:oz2wEwjgo
なんだ俺か
457 :457 [sage]:2011/02/24(木) 21:37:57.29 ID:QyYFnIQUo
>>456
お前だけにいい格好はさせないぜ!
458 :444 :2011/02/24(木) 22:50:53.58 ID:CFrsKSRIO
>>457
いいや、ここで俺が犠牲になって皆が助かるならいいカッコさせてもらうぜ!
459 :459 [sage]:2011/02/25(金) 07:08:47.56 ID:wOG0bCKco
>>458
お前だけにいい格好はさせないぜ!
460 :444 :2011/02/25(金) 12:32:57.43 ID:u8iFWfJeo
>>459
させてくれよ!
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/27(日) 23:16:25.44 ID:5liiewdUo
お前らがゲシュタルト崩壊
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/02/27(日) 23:58:28.83 ID:WptDy9Gh0
463 : 【大凶】 [sage]:2011/03/01(火) 23:37:41.06 ID:92lrqmiwo
3月はちょっと休憩
464 : 【吉】 :2011/03/01(火) 23:44:05.62 ID:pU6gYhqDO
やべ、また忘れるとこだったわ
465 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/08(火) 19:00:41.29 ID:mArRSdUeo
ザンキさんが辺見えみりと結婚か

ザンキさんも出てる今の昼ドラで矢車さんが自分が何年も前に使ったコンドーム入りケーキ食わされたり、娘が包丁で脅されながら売春させられそうだったりで面白い
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/03/09(水) 01:32:00.96 ID:bQwCQ7KDO
ザンキさん…


tk矢車さんの扱い不憫すぐるわwwwwwwwwwwww
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/03/09(水) 13:48:16.52 ID:TuvtjaJ/o
昼ドラで2人がライダーに変身するとは思わんかった
468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/03/17(木) 02:10:31.46 ID:htUgbhD5o
ゆきにー!!!原発を止めてくれー!!!!
469 :黒やん :2011/03/17(木) 18:31:05.23 ID:rdtdxqGDO
そういえば長いことゆき兄を見ないな
470 :バナ丸 :2011/03/18(金) 23:35:03.41 ID:JyPSNI9DO
ゆき兄…
小説の続きはいつになったら書くのかと
471 :空天未開砕片綺羅点灯剥落彼方 [sage]:2011/03/24(木) 13:55:18.02 ID:M+6z5FYDO
おれは しょうきに もどった!
472 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2011/03/25(金) 03:24:57.96 ID:tJMI+jXIo
オラオラー!スレ主様のお通りだぁー!
473 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2011/03/25(金) 03:30:56.09 ID:VaVyYnEWo
>>472
千葉県乙

ここの帝王は風化寸前でも山口県の邪気眼って決まってんだよ!!
最近スランプなんだよ!!
俺の中から魔素がどんどん出てんだよ!!
燃料棒露出してんだよ!!!

ごめん、不謹慎でした
474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2011/03/25(金) 09:33:28.48 ID:tJMI+jXIo
会社説明会行って来ます
ttp://imepita.jp/20110325/342900
475 :蒼海星光悲哀転化夜叉丸新雪幸 [メガネ萌え同好会会長]:2011/03/25(金) 18:00:47.14 ID:xCIq5D/DO
>>474
スーツうpと聞いて(ry

なぜメガネをかけないんだッ!!
476 :バナ丸 :2011/03/25(金) 18:03:03.74 ID:xCIq5D/DO
>>473
インフェルノ露出まで読んだ
477 :黒やん [ゴアー]:2011/03/25(金) 19:10:41.87 ID:bBMQpSsDO
ゆき兄久々に見たな
478 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/03/25(金) 20:30:23.89 ID:MsnPILPH0
ゆき兄!ゆき様は!?
479 :バナ丸 [ガンキンキンwwwwww]:2011/03/27(日) 16:36:03.19 ID:+Ocln8/DO
ゆきちー元気かな…

ゆき兄はさっさとゆきちー情報教えればいいと思うんだ^^
480 : 【吉】 [sage]:2011/04/01(金) 23:25:11.41 ID:qn8dM7tO0
ゆきちーなら俺の隣の国で寝てるよ

481 :バナ丸 [sage]:2011/04/04(月) 15:45:12.50 ID:OJVeM61DO
>>480
おまえはどこの国にいるんだよwwwwwwww
482 :破邪顕正幸福迅雷恵比寿之助 :2011/04/05(火) 17:38:03.76 ID:rpMp6a8AO
ゆきちーときいて飛んできました
483 :破邪顕正幸福迅雷恵比寿之助 :2011/04/05(火) 17:40:08.27 ID:rpMp6a8AO
ゆきちーときいて飛んできました
484 :バナ丸 [sage]:2011/04/05(火) 22:37:52.12 ID:xTtG1elDO
>>482-483
大事な事なので(ry

tkえびくん久しぶりすぐるわwwwwwwww
485 :えび :2011/04/08(金) 16:34:01.43 ID:5cGPp18AO
>>484
やあやあ夜叉夜叉
久しぶりにうpしにきたら
イメピタが3/31にサービス終了してたんだぜ……
486 :黒やん :2011/04/09(土) 06:03:56.31 ID:/WVd+fXDO
じゃあ代わりに夜叉丸がうpすればいいんじゃね?
487 : :2011/04/09(土) 19:15:06.84 ID:utNBiI4Do
俺もそれがいいと思いましたまる
488 :バナ丸 [sage]:2011/04/09(土) 23:25:24.15 ID:2vuNk2cDO
>>485
イメピタ終了だと…?
写メ送ってくれればいいんだぜ?^^

>>486
言い出しっぺが先にやるべきだと思うんだ^^

>>487
むしろおまいが(ry
489 :黒やん :2011/04/10(日) 06:09:01.21 ID:zGsUaqUDO
>>488
うp?仕方ないなーじゃあ僕が…おっと仕事の時間だ
490 : :2011/04/10(日) 07:11:26.84 ID:k3+WQdqNo
>>488
うp?仕方ないなーじゃあ俺が…おっと尻を叩く時間だ
491 : [sage]:2011/04/11(月) 02:24:22.74 ID:WDb7XEyDO
最近だらしねぇな
492 :えび :2011/04/11(月) 03:59:01.99 ID:/7uCnV2AO
バシーンバシーン
モットシリモッテコイヤー
493 :ほろにー [sage]:2011/04/16(土) 14:36:49.18 ID:QK7tQxjSO
>>490
リア充のシリダスさんチーッス
494 : :2011/04/21(木) 02:10:59.34 ID:cT1InXGso
改めて言われると照れちゃうね///
495 : 【だん吉】 [sage]:2011/05/01(日) 11:30:41.32 ID:soKidUHdo
よっこらせっくす
496 : 【大凶】 [sage]:2011/05/01(日) 19:54:07.43 ID:Nbre6V2DO
5月か…
497 :ゆき兄 ◆01XySrzV/Q :2011/05/23(月) 00:38:28.97 ID:wOTbG6/So
5月病な気分
498 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2011/05/24(火) 03:16:42.48 ID:0cXc7t7go
さ…五月病
499 :バナ丸 :2011/05/25(水) 17:26:40.10 ID:gxe8TqgDO
慢性5月病の俺に死角はなかった


今月有給3日くらい使ってるわwwwwwwww
500 : 【凶】 [sage]:2011/06/01(水) 20:27:10.88 ID:d6Nymvr3o
6月も祝日をつくるべきだと思います。
501 : 【だん吉】 [sage]:2011/06/01(水) 20:49:14.98 ID:hl7jABdDO
平日に会社休み美味しいです^p^
502 :たまゆら [sage]:2011/06/02(木) 00:21:30.46 ID:ygf3bqOK0
来月から大阪勤務なう。
503 : 【末吉】 [sage]:2011/07/01(金) 00:46:10.88 ID:24BfT8KYo
今年も半分無駄に過ごしてしまった
504 :空てんみかいきらてんとうはくらくかなた [sage]:2011/07/31(日) 19:59:33.15 ID:mW7+7i5DO
七月も終わりますが皆様如何お過ごしあそばせ
505 : 【ピョン吉】 [sage]:2011/08/01(月) 00:58:19.50 ID:scWW/co0o
801はやおいの日
506 : 【吉】 [sage]:2011/08/01(月) 19:30:14.75 ID:p3AsuDnF0
T=〃レヽきちレニちヵゞレヽTょレヽゎ∋Йё
507 :白日虚空輪廻山紫水明華燭吾子 [sage]:2011/08/01(月) 19:31:18.13 ID:p3AsuDnF0
また中途半端な結果に・・・
508 : :2011/08/02(火) 04:46:05.52 ID:6TWP/RDDO
八月…
また蝉に恐怖しながらの生活か…!
509 :三郎 :2011/08/02(火) 09:59:19.16 ID:Dbne4DLdo
プールびらき!
510 : [ひんぬー]:2011/08/02(火) 12:29:53.45 ID:h52l36FIO
Gが倒せないのでしばらく共存する(((o(*゚▽゚*)o)))
511 :バナ丸 [sage]:2011/08/02(火) 15:40:06.77 ID:WYcMXJ6DO
いけね、おみくじ忘れてた…
牛角さんのフィギュアーツ争奪戦でいっぱいいっぱいだったんだ…

>>508
7月も蝉いただろwwwwwwww
512 : :2011/08/02(火) 21:24:13.80 ID:6TWP/RDDO
>>510
ブラックキャップを設置するんだ

>>511
え?こっち七月は殆ど蝉がいなかったんだが…
最近鳴き始めたけど
513 :【ピョン吉】 [sage]:2011/08/02(火) 21:49:22.01 ID:+azS8+LNo
蝉と言えば蜩
あいつら鳴くの夕方だけかと思ってたら朝もカナカナ鳴くのね
514 : [ひんぬー]:2011/08/03(水) 04:21:04.75 ID:m4/6WCnzo
>>512
ブラックキャップは12個設置してたお(´・∀・`)
今日は姿が見えなかったから居なくなった事にする(´・∀・`)
515 : :2011/08/03(水) 05:28:24.21 ID:HUDsJpqDO
>>514
ベランダとか、外にも置いたほうがいいらしいね、あれ
516 :バナ丸 :2011/08/03(水) 09:48:25.30 ID:6u7t4/4DO
>>512
え?mjd?

>>514
1cmの隙間に隠れてるよ^^
517 :三郎 :2011/08/03(水) 11:29:53.46 ID:RbJ/dkj9o
主に見てないとこで活動するよね
518 : :2011/08/03(水) 12:32:51.98 ID:HUDsJpqDO
>>516
マジで。
最近鳴き始めたからこれからうるさくなると思う
519 :三郎 :2011/08/09(火) 23:08:00.36 ID:gi9SLOqIO
おっぱい!おっぱい!
520 : 【末吉】 [sage]:2011/09/01(木) 00:15:41.44 ID:Ujd8wpxDO
9月か…
521 : 【ピョン吉】 [sage]:2011/09/01(木) 07:19:09.06 ID:yhtASlgIo
防災の日!地震に備えるピョン
522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/19(月) 13:40:08.16 ID:Gqy3zmsd0
告白
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/24(土) 23:14:07.13 ID:CQScOT6+0
散る
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2011/09/25(日) 03:51:43.52 ID:mQ4O+RiIo
>>523
好きなだけ泣きなさい
525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(三重県) [sage]:2011/09/25(日) 20:43:35.59 ID:WCzx2ip3o
>>523
イ`
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/29(木) 02:02:38.42 ID:PiQR7A+Q0
不屈
527 : 【凶】 [sage]:2011/10/01(土) 03:35:18.69 ID:Lag5840+o
今年も3/4が終了したことをお知らせします。
528 : 【大凶】 [sage]:2011/11/01(火) 13:58:16.30 ID:+Xv9QQ7DO
おみくじスレと聞いて(ry

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
529 : 【吉】 [sage]:2011/11/01(火) 17:12:21.11 ID:ZCZgkCO60
ワンワンワン

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(仮鯖です)(大阪府) :2011/11/01(火) 20:17:59.11 ID:6e9No4/H0
また散る

サーバを移転しました@荒巻 旧サーバ:http://vs302.vip2ch.com/
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(仮鯖です) :2011/11/02(水) 17:46:00.01 ID:4CQS0OcIO
1羽でチュン!2羽でチュチュン!!3羽そろえば牙をむく

 ヾヽヽ      _ _    、、
 (,, ・∀・)  1  丶|丶|  ー-,  -千- __   ヽ     |
  ミ_ノ   ┴ ./、|/、|   (    ノ  ___|__ __ノ   o
  ″″

 ヾヽヽ    ヾヽヽ       _ _    、、
 (,, ・∀・) (,, ・∀・)  ⌒,  丶| 丶|  ー-,  -千- __   -千- __   ヽ     |  |
  ミ_ノ    ミ_ノ  /    /、| /、|   (    ノ  ___|__  ノ  ___|__ __ノ   o o
  ″″    ″″   ̄ ̄

 ヾヽヽ    ヾヽヽ   ヾヽヽ     _ _
 (,, ・∀・) (,, ・∀・) (,, ・∀・)  ⌒, 丶| 丶|  ソ フ_ ニ .| 十``
  ミ_ノ    ミ_ノ   ミ_ノ   ̄). /、| /、|  て ´__) ん しα
  ″″    ″″   ″″   ̄

       .,,_  _,,=-、
       '、  ̄_  _.,! __       .r-,.  _   r −、
      _/  _!」 .└ 、( `┐   .,,=! └, !、 .ヽ ヽ  丿
     .(.     ┌-'( ヽ~ ,.-┐ `┐ .r'  r.、''" r' ./
      ゛,フ .,.  |   `j .`" .,/ .r'" ヽ  | .l  '、ヽ、
     ,,-.'  , 〈.|  |  i' .__i'"  .( .、i .{,_ノ ヽ  ヽ \
  、_ニ-一''~ ヽ   |  \_`i   丶,,,,、     }  ヽ_丿
         ヽ__,/            ~''''''''''''″
532 : 【小吉】 [sage]:2011/12/01(木) 00:00:21.70 ID:sXgTkv22o
師走
533 :以下、三日土曜東R24bがお送りします :2011/12/23(金) 22:18:23.08 ID:y3qahG+po
もうすぐ
534 :以下、三日土曜東R24bがお送りします :2011/12/23(金) 22:30:31.92 ID:dUr4fL7Y0
535 : 【凶】 :2012/01/01(日) 08:39:09.68 ID:MF0ghT6c0
おめ
536 : :2012/01/01(日) 09:26:18.47 ID:eEv8/TvDO
よろ
537 : 【吉】 [sage]:2012/01/01(日) 15:23:29.44 ID:imNsA35F0
地震怖い
538 :VIPServiceでコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) :2012/01/01(日) 19:42:38.74 ID:jDoH2IVIO
ことよろ
539 : 【吉】 [sage]:2012/02/01(水) 08:36:18.21 ID:f++5M8Z6o
大雪怖い
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