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【アルデバラン】ある夏の日の話をしたいパート2【サダルスウド】 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/15(金) 08:44:22.00 ID:ndaVSb9Do
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【進撃の巨人】俺「安価で巨人を駆逐する」 @ 2024/04/27(土) 14:14:26.69 ID:Wh98iXQp0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714194866/

諸君、狂いたまえ。 @ 2024/04/26(金) 22:00:04.52 ID:pApquyFx0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714136403/

少し暑くて少し寒くて @ 2024/04/25(木) 23:19:25.34 ID:dTqYP2V2O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1714054765/

渾沌ゴア「それでもボクはアイツを殺す」 @ 2024/04/25(木) 22:46:29.10 ID:7GVnel7qo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714052788/

二次小説の面白そうなクロス設定 @ 2024/04/25(木) 21:47:22.48 ID:xRQGcEnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1714049241/

佐久間まゆ「犬系彼女を目指しますよぉ」 @ 2024/04/24(水) 22:44:08.58 ID:gulbWFtS0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713966248/

全レスする(´;ω;`)part56 ばばあ化気味 @ 2024/04/24(水) 20:10:08.44 ID:eOA82Cc3o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1713957007/

君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

2 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:28:24.50 ID:ndaVSb9Do
乙です。では続きを書きます
3 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:29:12.20 ID:ndaVSb9Do
「おらー!!今年は絶対に優勝すんぞ!!!」

向井さんがそう声をかける。
全員で「おーっ!!!」と笑顔で叫んだ。

体育祭は快晴の秋空で始まり既に昼休みとなった。
部活対抗のリレーの打ち合わせで天文部全員が集まっていた。
ユイが女子部員皆と笑顔で話しているのを見た。

良かった・・・ユイに笑顔が戻って・・・

俺がそう思っていると後ろから殴られる。
「おら、ニヤニヤ、ユイを見てんじゃねーよ、トオル!!」
その言葉に俺もユイも顔を赤くする。
4 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:31:44.90 ID:ndaVSb9Do
今年のテーマの聖闘士のクロスを皆が纏っていた。まあ、もちろんダンボールだが。
それでも、タカコとマリが一生懸命に作ってくれた物だ。

「向井さんのは何ですか?」
「俺はアンドロメダ・・・ネビュラチェーン!!!」
そう言って紙の鎖を俺にぶつける。明らかにミスキャストだろ。アンタ女顔じゃねーじゃん!
第二走者のヨウイチはドラゴンで、第四走者のケンタはキグナスだった。

で、第三走者の俺はヒドラ・・・ヒドラって何だよ。知らねーよ。

向井さんはアンカーでサモハン、マルオは応援となった。
「あれ?部長は?」
第一走者の部長を探す。
5 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:32:39.09 ID:ndaVSb9Do
「いや、待たせたね」
そう言って部長は『阪急ブレーブス』と書かれたユニフォームで現れた。
全員が一瞬固まった後に突っ込んだ。

「ガチでサブマリン山田だー!!!」
「てか、星座関係ねーし!!!」

部長がニヤニヤしながら眼鏡を光らせる。
「おう、そうだ」
向井さんが、そう言って紙袋を俺に渡して来た。
6 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:33:32.93 ID:ndaVSb9Do
「お前のクロスはヒドラ・・・海蛇座だからさ・・・」
ま、まさか・・・

「ほれ、一年振りだろ?」
「マー君!!!!」

俺は又もやマー君と再会した。

「皆ー頑張ってねー!!」
女子四人が俺達に手を振る。
サモハンはコーラを飲み、マルオは何故か自作のフェニックスのクロスを纏っていた。
リレーの始まりのアナウンスが聞こえ俺達は入場する。
各クラブの選手達が円陣を組み、それぞれの掛け声をしていた。
7 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:34:42.64 ID:ndaVSb9Do
「よし・・・俺達もするぞ・・・トオル行け」
向井さんの一言に俺は焦る。
「え?マジでやるんすか??」
「当たり前だ!!何の為に練習したんだよ!!」
マジかよ・・・俺は仕方なく円陣を組み右手を差し出す。
全員も俺の右手に重なる様に差し出して来た。
俺は溜息をつくと、覚悟を決めて叫んだ。

「そーらを自由に、飛びたいなー!!!」

そこまで俺が叫ぶと、他のメンバーが続けて叫んだ。

「はい!!!タケコプター!!!!」

・・・周りが騒然とした。
てか、天文部、全く関係ねーし。

まあ、ウチの天文部の女子四人はウケていたよ。
8 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:35:32.07 ID:ndaVSb9Do
「っしゃー!!!お前ら分かってんな!!!一位になれなかったら???」
「なれなかったら・・・?」
止せば良いのにケンタが向井さんの言葉に反応する。
「屋上から輪ゴムでバンジー!!!」
ケンタが青い顔をした。
うん、ガチでさせられそうでしょ。

第一走者の部長がスタート位置につく。
なんか格好が野球部と被るんだが・・・
9 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:36:29.42 ID:ndaVSb9Do
「位置について!!!」
その言葉に部長はセットポジションについた。
「用意!!!」
部長はアンダースローのモーションをする・・・

おお・・・!正にサブマリン!

「パンっ!!!」
ピストル音が響いた瞬間に部長は走り出した。
そんな訳の分からないスタートにも関わらず陸上部、ラグビー部に続き三位でスタートした。

てか、マジで運動能力たけぇ!!
着ぐるみよりは今年の方がハエエ!!!
10 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:37:48.55 ID:ndaVSb9Do
そのまま三位で第二走者のヨウイチにバトンを渡す!!
ヨウイチはラグビー部を抜き、一気に二位に踊り出た!
てか、去年の着ぐるみより、断然速い!!!

「トオル!!!マー君作戦だー!!!」

ハイハイ、去年に引き続きマー君頼んだ!!
俺はランナー待機所でマー君をブンブン振り回す。
「おい、だからガチの蛇は辞めろ!!!」
「お前、それはヤベエって!!!」
他の部からはクレーム続出だが、関係ねえ。

だってアンタらは負けても、屋上から輪ゴムでバンジーはさせられないだろうが!!!
11 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:39:02.02 ID:ndaVSb9Do
・・・それに・・・俺は応援席でノリノリで応援しているユイを見た。

・・・最後に見せてやりたいんだよ・・・!
あの人に・・・俺達が・・・優勝する所を・・・!

一位の陸上部がバトンを受け取り走り出した。
その後で・・・俺はヨウイチからバトンを受け取った・・・!
ヨウイチの目が「イケ!!」と語り掛けていた・・・!

俺はマー君を振り回しながら走る・・・!

抜かしは出来ないが・・・抜かれない!!!
俺は二位の位置を譲らず、次のケンタにバトンを渡した・・・!
12 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:40:00.36 ID:ndaVSb9Do
だが、陸上部との差が開いている・・・!
ケンタは「ダイヤモンドー・・・ダーースッ!!!!!」と叫びながら凄いスピードで走り始めた!!

は、速い・・・一位との間が縮まる・・・

このペースなら・・・そして俺はアンカーを見た・・・
最後は・・・この人・・・

一番頼りになる男・・・向井さんだ!!!
13 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:41:14.48 ID:ndaVSb9Do
一位の陸上部がバトンを渡し、そのすぐ後で向井さんがケンタからバトンを受けとった・・・!

「もえろおおお!!!俺のこすもおおおお!!!」

そう叫んだ、向井さんは凄いスピードで陸上部を追い掛ける・・・!
だが、陸上部もアンカーだ・・・!
それでも向井さんは差を縮めて行く!!!
グランドに歓声がこだまする・・・!
ゴールはあと、僅かだ・・・!
行け・・・!頼む・・・!

「行けエエエ!!!!!!」

俺は叫んだ・・・!
14 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:41:55.47 ID:ndaVSb9Do
最後の直線で並ぶ・・・!!!
向井さん・・・!!
ゴールテープの手前で・・・向井さんは右手を突き上げ・・・

そのまま向井さんの体がゴールテープを切った・・・!

大歓声が起きた・・・!

「うおおおおおおお!!!!!!!」

そう叫びながら俺達は一斉に向井さんの元に集まり、全員で抱き合った!
15 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:43:08.90 ID:ndaVSb9Do
そして応援席からも女子四人とサモハン、マルオが掛けより全員で喜ぶ・・・!

向井さんは俺達を見ながら右手を突き上げると叫んだ。

「アン、アン、アーン!!!!」

残りの全員も笑顔を見合わせて同じく右手を突き上げ続けて叫んだ・・・


「とーっても、だーいすき!!!てんもーんぶー!!!」






秋の柔らかな日差しに包まれて、ユイの笑顔が眩しかった・・・

16 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:43:42.96 ID:ndaVSb9Do
以上です
いやあ・・・2スレに跨って申し訳ないっすww

それでは、また明日!
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/15(金) 09:45:06.92 ID:nqavMGrQo
乙ー
いいメンバーだ本当
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/15(金) 09:45:24.38 ID:fY/JJwCYo
1乙
朝から泣いちゃったじゃねーか
社長のところでおいらも働かせてください。
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/15(金) 09:46:41.92 ID:Z6pXV2AAO
おつかれ〜。
毎日楽ませてもらってます。
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/15(金) 09:47:10.30 ID:EZ35KAF/0
良い最終回だった
21 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/15(金) 09:48:25.29 ID:fY/JJwCYo
ところで前スレの、次スレ誘導のタイトル【ザダルスウド】これわざと?
22 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/15(金) 09:49:11.95 ID:beEpxIkoP
いやちょい ユイそのクジ屋で納得したのか
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/15(金) 09:49:26.53 ID:/Gx5v3xSo
もうちっとだけ続くんじゃ
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/15(金) 09:50:03.28 ID:fY/JJwCYo
>>20
なぜに最終回?まだまだつづくんだからね。
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/15(金) 09:50:34.41 ID:/Gx5v3xSo
>>22
確かにクジ屋で当選した時のユイさんの反応気になるよなw
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/15(金) 09:51:40.95 ID:u9OG4L7SO
いやー泣いた

てか、前スレ貼らなくて良いの?
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/15(金) 09:54:34.00 ID:beEpxIkoP
アフィじゃないまとめ欲しいな

俺は作れないが
28 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:55:30.17 ID:ndaVSb9Do
すみません・・・まだ続きますww

まあ・・・疑問点は必ず解消する様にしますので・・・ww
29 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:56:32.20 ID:ndaVSb9Do
>>26
すみません。余り慣れてないもので・・・

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1309147635/
ある夏の日の話をしたい
30 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/15(金) 09:59:52.44 ID:ndaVSb9Do
それと・・・前スレで、どなたかが、仕事の事について言っておられましたが・・・
ちゃんと仕事をもってますww

それも、ちゃんと出てきますので・・・
まあ、疑問点はまだ有ると思いますが、必ず最後には分かるようにしていますので(多分)
もうしばらく暖かい目で見てくださいww

ですが、素人なもので、分かりにくい文章や内容はなるべく解説しようと思います。

それでは、また明日!(多分)
31 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) :2011/07/15(金) 10:00:42.96 ID:fbiiLqyq0
朝から泣かせやがって・・・

待ってるぜ!!
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/07/15(金) 10:03:23.14 ID:rc6x6up7o
おkおk
おもしろいからいろいろ気になるんだよ
あとで伏線回収されるなら問題ないしょ
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/15(金) 10:06:32.84 ID:EZ35KAF/0
まだドラゴンボールで言うセル編中盤くらいかな?

・・あれ?GTまであるの??
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/15(金) 10:17:00.87 ID:1E/vOatOo
社長の言葉に泣いた・・・
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/15(金) 10:29:33.13 ID:C5ZPXiF9o
最後にってところに不安が…
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(宮崎県) [sage]:2011/07/15(金) 10:50:45.30 ID:ah8nkJFQo
三年でもう卒業だからって意味だと思いたい
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/15(金) 11:30:40.75 ID:dWMV8mlPo
毎日トオルの話を読まないと落ち着けない俺ガイル
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海・関東) [sage]:2011/07/15(金) 11:32:09.32 ID:PtZsGnqAO
毎回死亡フラグ的な終わりかたでビクビクする
39 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/15(金) 11:37:23.16 ID:fY/JJwCYo
>>16
優良スレ、パート2と言わずパート20まで続いてほしい。
とにかく、今のペースで頑張ってほしい
がんばれ、トオル
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/15(金) 11:52:02.33 ID:kWw5Ut/x0
泣いた。笑った。そして元気が出た

トオル、今日もありがとう!
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/15(金) 13:05:41.90 ID:v8AJVeFIO
昨日見つけてイッキに追いついたよ!これからも楽しませてくれ!
ところでキモ[ピザ]から高校入学までに何キロから何キロまでしぼった?
42 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/15(金) 17:47:11.88 ID:WjkIgU4eo
社長もトオルもリコさんも…もうみんな最高だあああああああああああああ
ユイが最悪な方向に行かなくてよかったよ

43 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/15(金) 17:47:42.60 ID:WjkIgU4eo
社長もトオルもリコさんも…もうみんな最高だあああああああああああああ
ユイが最悪な方向に行かなくてよかったよ

44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) :2011/07/15(金) 18:41:31.18 ID:hh3uhGuRo
第2回サモハン焼豚祭りは開催されなかったのかww
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage ]:2011/07/15(金) 21:36:58.76 ID:sJMcuu1Bo
マルオ応援なのなwww
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 01:19:49.79 ID:Vm935P1xo
淡々と投下していくのが素晴らしい
あとリコさんが巨乳なのが素晴らしい
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 08:22:18.47 ID:nXbLonH2P
トオル召喚
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/16(土) 08:25:25.94 ID:kbrG9ycBo
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
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                       ::|          |::
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                         ::j            ::
                        ::,′           l::
                         ::/           |::
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                       ::/    〉┴r      ::
                       ::,′    /:: ::|     |::
49 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2011/07/16(土) 09:47:59.54 ID:tRHikZ6ro
追いついた
いい仲間たちだな
みんな幸せでいてほしい
50 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/16(土) 10:17:55.11 ID:aY/KtB3xo
>>47-48
いつも息が合ってるなwww
51 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/16(土) 11:29:29.31 ID:0nIxQ/0Go
トオルちゃん今日は来ないのか?
部長成分が足りない・・・
52 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage ]:2011/07/16(土) 12:21:16.58 ID:Warlp2+Bo
なんだよこのいつもの流れwww
53 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/16(土) 15:29:25.20 ID:NehNM6lqo
もしまだ警備してんなら土曜日とかイベント多いから忙しいんじゃね?
54 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/16(土) 15:42:50.20 ID:pYCECD0IO
幸せ家族旅行じゃね?結末わからんけど、期待込めて。
55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/16(土) 16:06:08.23 ID:YUjc+3Cgo
連休だしな
56 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/16(土) 19:25:16.09 ID:NehNM6lqo
それにしても待ち遠しいなwww
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 19:26:08.82 ID:26DWS+bDO
おっぱいランキングに続き、できればちん○ランキングも。一位はマルオとして二位以下も知りたい。
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 21:05:08.41 ID:b+R3RG5Fo
トオルおつ!
前スレユイを救えないのか!ってところまで読んで落ちた…あのあとどうなったん?
59 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 21:12:49.17 ID:tiqpQR0/0
>>58
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/kako/1309/13091/1309147635.html
60 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:21:06.28 ID:fIGyg+Cno
乙です
今日はとても忙しくて・・・いやはや。
>>57
いや、マルオ以外は正直覚えてないっすww

それでは続きを書き込みますね
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 21:22:17.70 ID:eHSaeQgIO
待ってました!
62 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 21:22:54.13 ID:BADtEbpDO
トオル遭遇キター
63 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:22:55.68 ID:fIGyg+Cno
体育祭も終わり、学校は文化祭一色に包まれた。

「いよいよ・・・今年も、この時期がやって来た・・・!」

真っ暗な部室の中で部長が顔の前で手を組み呟いた。
俺は何も言わずにカーテンを開ける。
「今年のプラネタリウムもプリンにするかー?」
向井さんが腕をブンブン回しながら聞いて来た。
「あー、去年のプリン美味かったなぁ・・・」
サモハンが味覚の反芻を行う。
「そんなに美味しかったんですか?プリン」
「まあ、流石は天文部料理長のトオル君って、とこね」

タカコの質問にユイが笑顔で答える。
あっざーす。
64 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:23:49.67 ID:fIGyg+Cno
俺はふと二人を見た。
前回はどうなる事かと思ったがユイは笑顔を取り戻し、受験勉強も頑張っている。
お母さんも治療を頑張っていて、ユイに「心配しないで、アナタは夢を目指してガンバリなさい」そう言っているとリコさんから聞いた。

何はともあれ、良かった。
タカコをふと見る。最近、タカコはビクビクしなくなり、明るくなったと思う。
冗談にも乗るし、笑顔も多い。
65 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:25:19.38 ID:fIGyg+Cno
だが、最近は俺への熱い眼差しが減って来たかの様に思える。
まあ、それは少し残念な気持ちも正直有ったが、俺的にはその方が良い。
俺はやっぱりユイが好きだから・・・

「でも、ユイさんも好きだけどタカコの事も気になるんだよな・・・」

・・・俺の後ろで向井さんがそう言う。
ユイとタカコが顔を赤くして下を向く。
「何・・・してんすか・・・」
「いや、お前がずっとギラギラした目でユイとタカコを見つめてたから・・・そんな事を思ってるのかと」
「いや、思ってた、としても余計なお世話なんで、サッサと司会して下さい・・・部長はどうせ窓の外を見てるだけなんですから」

その言葉に部長は窓の外を見つめ始めた。
66 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:26:07.32 ID:fIGyg+Cno
「ちぇーっ」
向井さんは、そう言って司会を始める。
俺は軽く笑った。向井さんは前回のユイの事件を知っている。
だが、言わない。この人は本当に信頼が置ける人なんだ・・・

皆が色々と意見を言い合っていた。
こんな風景も・・・あと僅かなんだな・・・
向井さんが司会して、皆が意見を言って、部長で落として、部長が窓の外を見る・・・
本当に楽しい時間が過ぎるのは早いんだな・・・
67 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:27:07.09 ID:fIGyg+Cno
「よし・・・じゃあ、プラネタリウムで出す物は、今年は星型クッキーで決定だな」
タカコの案で星型クッキーに決定した。
その方が天文部らしくて良いな。

俺がそう思っていると部長がカーテンを閉め始めた。
またかよ・・・

「実は・・・生徒会より、最高機密指令の通達が有った・・・!これを見てくれ・・!」
部長はカバンからクシャクシャに丸められた紙を取り出して机に置いた。
なんかただのゴミを出したとしか思えんのだが・・・

ユイがそれを丁寧に伸ばし、皆で覗き込む。
68 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:29:11.85 ID:fIGyg+Cno
「全員指令書を見たかい・・・見たなら、すぐに燃やして・・・」
「暗くて見えないんでカーテン開けますねー」
マリがそう言ってカーテンを開けた。再び紙を見る。
「全員指令書を見たかい・・・見たなら、それを燃やし・・・」

「進路希望書・・・第一希望『軍師』第二希望『国家機密を作る人』・・・」
「わああああ!!!間違えた!!!それは違う!!こっち!!!」

部長が慌てて別の丸められた書類を出した。
「いや、アンタ、進路ダメダメだろ・・・」
部長が出して来た書類には『クラブ対抗仮装大会』と銘打たれていた。
「仮装大会?何するんすか?これ」
ケンタの質問に皆が部長を見る。
「ん?」
部長は俺らを見た。
「いや、これ、何をするんすか?」
その言葉に部長は首を傾げた。
「さ・・・さあ?部長会出てないから・・・部室のポストに入ってただけで・・・」

つーか、出ろよ!!!
69 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:30:53.33 ID:fIGyg+Cno
リコさんのツテで生徒会より仮装大会の情報を得た。
情報によると仮装大会は文化祭最終日の最後のステージで行われる。
生徒会、教師達の審査で優勝が争われるらしい。
優勝した部には豪華景品が贈られるとの事。

「て、事はだな・・・これは目立つだけじゃダメだな・・・」
「笑いを取りに行く、と言う事ですか?」
向井さんの言葉に俺が答える。
「それか・・・」
そう言って向井さんが女子四人を見た。

「御色気作戦・・・か・・・」
「絶対に嫌!!!」

女子四人が叫んだ。
ん〜、それは見たいんだけど・・・
70 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:33:37.28 ID:fIGyg+Cno
「どうします?なんか着ぐるみでも着ますか?」
ヨウイチの言葉に向井さんが首を振った。
「いや・・・それは多分、他のクラブと一緒になって薄れる」
「そうか・・・」
皆が考え込んだ。
「なんか、運動部が騒いでましたよ」
「え?」
ケンタの言葉に全員が反応する。
「天文部には絶対に負けないって・・・体育祭の時に、リレーで優勝を取られたのが運動部の顧問の逆鱗に触れたらしくて・・・」
「まあ・・・確かに、運動部からしたら、たまらんだろうな」
俺も頷く。そういや、最近運動部の奴らがよく睨んで来ると思ったら・・・そう言う事かよ。
71 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:34:33.26 ID:fIGyg+Cno
その時、向井さんが「ふん!」と鼻を鳴らした。
「おもしれぇ・・・こうなったら俺達で体育祭、文化祭、共に優勝を掻っ攫うぞ・・・二冠達成だ・・・!」
そうやって敵を増やして行くんですね・・・俺は溜息をついたのだった・・・

仮装大会は仮装大会で考えねば為らないが、文化祭のメインであるプラネタリウムとクッキー作りも考えねばならない。
プラネタリウムはセット自体は去年の物があるから内容だけを考えれば良い。
第三回天文部最高機密会議が開かれ、全員でその内容を考える。
72 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:35:30.00 ID:fIGyg+Cno
皆がそれぞれ意見を出し合っているが俺は机に肘をつき、シャーペンをくわえながらユイを見つめていた。

「そういや・・・去年の今頃・・・俺はユイさんとデートをしたんだよな・・・あの時はキスを・・・」
「向井さん、何をしてんすか・・・」
俺の後ろから声を出す向井さんに俺は言った。
「いや、お前がユイばっかり見るから、お前の気持ちになってやろうかと・・・」
「いらんお世話っす!!」

見るとユイが顔を赤くして下を見ている。
ユイもいつになったら、慣れるんだよ・・・
73 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:36:44.69 ID:fIGyg+Cno
プラネタリウムの内容も決まり、それぞれの役割分担を決める際にリコさんとマリが言った。

「クッキーは?」
へ?
「クッキー作りの内容を決めないと」
「いや、星型クッキーっしょ?なら前日にまとめて作ればイケますよ」俺がそう言うとマリが
机を叩いて立ち上がった。「クッキー作りをナメ過ぎたらいかんぜよ!!」誰が乗り移った???「はい、議長!!!」突然リコさんが部長に言う。「議長・・・?良い響きだ・・・リコ君、何かね???」部長の眼鏡が光った。「クッキー作り専任部隊を作る動議をお願いします!!!」
74 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:38:08.49 ID:fIGyg+Cno
「せ、専任部隊・・・何か特殊部隊っぽい・・・分かった!専任部隊を作る事を許可する!!」
リコさん部長を乗せ過ぎ。

「メンバーは・・・トオルさん、ユイさん、タカコの天文部料理三銃士が良いと思います!!!」

え??マリ???
「分かった!!!天文部部長の名に於いて命ずる!!!三人をクッキー専任部隊とする!!!」

・・・え?俺とユイとタカコは三人で顔を見合わせる。
リコさんとマリは窓の外を見ながら呟いた。

「面白くなったわね・・・」
「ええ・・・!」

お前らあああああ!!!!
75 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:39:18.03 ID:fIGyg+Cno
結局、俺達三人がクッキー作りをする事になり、俺達は試し作りを俺の家でする事になった。

「トオル君・・・私のクッキーを食べて・・・」
「ダメです!トオルさんは私のクッキーを食べるんです!」
「じゃあ、仕方ないから二人のクッキーだけじゃ無くて・・・君達自身を頂こう・・・かな・・・!」
「辞めーーーい!!!!」

俺は部長と向井さんの会話を止めた。
ユイとタカコは顔を真っ赤にして俯いている。

俺達はクッキーの案を考える為に俺の家で試し作りをしようとしていたのだが・・・
76 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:40:59.61 ID:fIGyg+Cno
「何してんすか、二人共!!!」
「いや、暇だから・・・」
「なら帰れー!!!」

何故か部長と向井さんが居る。
「あーあ・・・三人の気恥ずかしい会話を聞きたかったのに・・・」
「ですねぇ・・・」
リコさんとマリも居た。
「トオルー、ウイングマンの十巻どこ?」
ヨウイチが漫画を読んでいる。
「味見まだー?」
サモハンはナプキンを襟元に入れてナイフとフォークを持っていた。
77 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:42:03.84 ID:fIGyg+Cno
「トオルさん!!!大変です!!!」
「なんだよ!!」
ケンタの叫び声に俺が反応する。

「マルオが、またジュースを零しました・・・」
マルオが俺のバスタオルで拭いている。俺はピキンと来た。

「テメエは何で、こんな時だけ活躍するんだよ!!!!」

マルオが泣いた。



結局、試し作りは何とかなったが、皆で騒ぎながら試食をして、夜になり、そのまま皆で鍋をした。
そして女子四人が帰った後も、男子メンバーで酒盛りを始め、結局いつもの様に朝まで騒いだのだった・・・
78 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:44:12.91 ID:fIGyg+Cno
飲んだ翌日はいつも体が痛い。多分皆で雑魚寝をするからだろう。
オマケに体がなんか冷えてるんだよ。夏はクーラーで他の季節は朝が冷えるからなんだろうか?

皆が泊まった翌日は、いつも俺が一番に起きる。
そして、皆を眺めるんだ。
向井さんが一番場所を取り大の字で寝ている。
向井さんの足の下にはマルオの顔がある。
部長はベッドの下に頭を突っ込んで寝ている。
ヨウイチは自分の制服を枕にして横向いて一番まともに寝ていた。
サモハンは机に伏せて右手はポテチの袋に突っ込んでいる。
ケンタは大体、台所で寝ていた。

俺は、その風景が今でも忘れられない・・・
カーテンの隙間から朝日が入り込み皆が眠っている姿・・・

最高の風景だったんだ・・・
79 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:45:44.10 ID:fIGyg+Cno
「あー、体いてぇ・・・」
「枕要りますね」

ヨウイチの言葉にケンタが答える。
「人数分、枕を用意しろよトオル」
「いや、一応座布団やら、入れたら人数分有りますけど、いつも使わないじゃないっすか」
「寝たら、そっと差し込んどくのが、下僕の務めだろうが!!」

俺達は皆で学校へ向かっていた。

「しまった・・・宿題忘れた・・・」
部長が呟く。
「まあ、来年もあるんだから、良いじゃないっすか」
「そうか・・・じゃあ良いか」
「良いんかよ!」
「あ、しまった、僕、トオルさんチに体操服忘れた・・・今日体育有るのに・・・」
マルオがそう言う。
「裸でやれ、薄い影が濃くなるぞww」
80 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:47:14.48 ID:fIGyg+Cno
そんな会話をしながら歩いていると前からユイとリコさんが「おっはよー!」と元気よく現れる
「うぃーす」
「おはようございまーす」
俺達が答えると後ろからも声をかけられた。
「おはようございまーす♪」
見るとタカコとマリだ。
「なんだ、全員集合だな」
「結局、朝まで飲んでたんですか?」
マリが尋ねる。
「まーな」
「もう高校生の癖に」
ユイが俺達に注意する。俺達は照れた様に笑った。

「あ、そうだ、部長提出しましたー?あの書類」
「書類?」
「仮装大会の書類ですよ。生徒会に何の仮装をするか事前に提出しないと・・・今日までですよ」

え?
俺が部長を見ると部長は「空が・・・高くなったねえ・・・」そう呟いていた。

「おおおおおぃぃぃぃ!!!!!」
81 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:48:19.67 ID:fIGyg+Cno
昼休みに第一回天文部緊急最高機密会議が開かれる。

「何にしますか???とにかく書類を出さないと!!!」
ヨウイチが焦りながらそう言う。
「うーむ・・・」
向井さんが腕組みをしながら天井を見た。
「うーん・・・あ・・・」
唸っていたケンタが呟いた。
「なんか思いついたか??」
俺がケンタを見る。
「あ、いや・・・あそこの窓ガラス、凄い汚れてるな、って思いまして・・・」
「あ、ホントだ。なんか茶色いな・・・絵の具か?」

皆が窓を見る。
「雑巾で拭いてみろよ」
向井さんの一言にマルオが雑巾を持って来た。
82 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:49:32.02 ID:fIGyg+Cno
「あ、取れないですね・・・なんかガチガチになってます」
「貸してみて」
ユイが雑巾で拭くが、取れない。
「少し水に付けてふやかしてみれば良いんじゃないでしょうか?」
「お、そうだな」
タカコの言葉に俺が水を塗り込む。だが落ちない。

「ククク・・・甘い、甘い」
部長がそう言い出した。
「こう言う時は・・・ペイント薄め液だよ!」
そう言って薄め液を取り出した。
「てか、なんで、そんなもんを・・・」
「この前、プラモの色付けを部室でしてたからね」
「アンタ、部室で何をしてんだよ」
83 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:50:24.64 ID:fIGyg+Cno
そう言いながら部長が全員に注目される中、薄め液を付けたタオルで窓を拭く・・・
すると綺麗に除去された。

「おおお・・・!!」
「スゲエ!!!」
「流石、部長!!!」



・・・「て、何やってんだー!!!俺達!!!」
全員が頭を抱えた。
「ダメだ・・・何で、こう言う時に限って部室を綺麗にしてんだよ・・・」
「現実逃避の魔翌力、半端ねえ・・・」


キーン、コーン、カーン、コーン・・・
84 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:51:14.05 ID:fIGyg+Cno
「うわあああ予鈴がなったあああ!!!」
「昼休みが終わっちまう!!!!」
「おい、どうする??どうすんだ???」
「何、するの???何で行く???どうする???」

皆が焦っていると部長が眼鏡をクイッと押し上げた。

「見えたああああ!!!!」
そう言って部長はシャーペンを手に取ると書類に何かを書き俺達に見せた。

「天文部は、これで行く!!!!」

その書類には『太極拳』そう書かれていた・・・
85 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:54:20.09 ID:fIGyg+Cno
文化祭の準備が進められて行く。
他のクラブの部室前を通ると時折、「打倒!!天文部!!!」そう言う掛け声が聞こえて来る。
うわー・・・敵多いな・・・
あの体育祭のリレー事件は学校では何故か『サブマリンの奇跡』そう呼ばれていた。
何故に部長のサブマリンが注目されたのかが分からないが・・・どうでも良い。
それより今は、部長が苦し紛れに出した『太極拳』の内容を決めなければならなかった
第二拠点の俺の家で会議が繰り返される。

だが、大体いつも最後は酒が出され、無茶苦茶なふざけた案が出される。
皆が爆笑しながら、真面目にその不真面目な案を実際に練習する。
まるで本気とは思えないが、俺達はどうでも良かった。

俺達自身が楽しいのであれば・・・
86 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:55:36.57 ID:fIGyg+Cno
「出来たー!!!」

文化祭一日前、俺達はプラネタリウムを完成させた。
「仮装大会も完璧だしな・・・」
「なんだかんだ言いながら間に合わせちゃうのは、凄いっすね俺ら」
「ある意味ね」
皆でウンウンと頷き合った。

「よし・・・じゃあ、今日は俺、早く帰りますよ」
俺が、そう言ってカバンを持つ。
「バカヤロー!!!文化祭の前祝いをするんだろうが!!!」
向井さんの言葉に俺は振り返る。

「クッキー作り・・・手伝って頂けるんでしたら・・・」
「お疲れ様でーす」

向井さんはお辞儀をした。
87 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:56:56.46 ID:fIGyg+Cno
「え?一人で作るの?」
ユイが俺に聞く。
「あ、はい・・・まあ、レシピも決まってますし・・・あれ位の量なら俺一人で大丈夫っすよ」
俺がそう言って笑う。
「そう・・・」
「はい、だからユイさんとタカコは今日位、ユックリ休んで・・・」
俺の言葉にユイとタカコは顔を見合わせる。
「じゃあ、お先でーす!」
俺はそう言って家に帰った・・・


家で一人でクッキーの生地作りを行っていると、家のインターフォンが鳴る。
ん?誰だ?
俺がドアを開けると・・・


「あ・・・こんばんは・・・」


そう言ってタカコが立っていた・・・
88 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:58:06.31 ID:fIGyg+Cno
「一人じゃ、やはり大変かと思いまして・・・」

タカコはそう言ってエプロンを付けて俺の横に立つ。
俺はその姿にドキッとした。
時刻は夜の8時。こんな時間に女子と家で二人キリなんて・・・

「家は・・・大丈夫か?こんな遅くに・・・」
「あ、はい・・・今日は父も出張ですし・・・妹も友達の家に・・・」
タカコがそう言って生地をこねる。
「あ、タカコって、妹が居るんだ・・・」
「はい。今、中学生なんですけど・・・凄く生意気なんですよ」
「まあ、中学生なんて、そんなモンでしょ」

俺が笑った。その時、タカコが俺を見て目が合った。
ドキッ。俺の鼓動が速くなる。
89 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 21:59:15.41 ID:fIGyg+Cno
「な・・・何・・・?」
俺が震える声で、そう言うとタカコは下を向いて顔を赤くする・・・そして・・・

「だ、だから・・・今日は・・・遅くなっても・・・」

最後の方は声が小さく聞き取れ無かったが意味は・・・
ものすっごぉぉぉく、伝わった。
「え・・・?え・・・?え・・・?」
だが、意味は伝わっても俺のごとき人間はそれを、どう対処して良いのかが、サッパリ分からない。
タカコは顔を上げる。頬が赤く染まり、軽く上目遣いで俺を見つめていた・・・

こ、これが上目遣いかああああ!!!!や、やべーっす!!!
90 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:00:03.78 ID:fIGyg+Cno
タカコは何も言わずに黙って俺を見つめている。
俺もタカコから目が離せなかった。

だが・・・

「あ、そ、そうだ・・・ココアパウダー・・・無いんだ・・・」
俺はそう呟くとタカコから目を逸らした。
「お、俺、ちょっと買って来るよ・・・」
「あ、なら・・・私も・・・」
「大丈夫!大丈夫!タカコは生地こねといて・・・うん、俺、ちょっくら行って来るから!」

そして俺は逃げる様に部屋から出て行った・・
91 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:01:19.25 ID:fIGyg+Cno
スーパーに行きココアパウダーを買う。買いながら俺は思った。

惜しい事をしたのだろうか・・・?
いや。違う・・・あれは、あれで正しい筈。俺が好きな相手はユイだ。タカコじゃない。
だから、あの場で流されていたら・・・うん、超まずい。ダメ過ぎる。あれで良かったんだ・・・

俺は自分に言い聞かせる。
だけど・・・俺はタカコのエプロン姿を思い出した。
可愛い・・・そう思った。
や、やっぱり・・・惜しい事をしたのだろうか・・・?

そんな優柔不断のエロエロな俺だが・・・
家に帰ると、先程の選択が正しい事を思い知らされた。


家にユイがいたからだ・・・
92 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:02:22.05 ID:fIGyg+Cno
ドアを開けた瞬間にユイが笑顔で「お帰りなさーい」そう言って出迎えてくれたので、少しエロい気持ちでいた俺は死ぬ程驚いた。

ユイはエプロン姿でクッキーをオーブンに入れながら「やっぱり、トオル君一人に任せちゃうの悪いから・・・私も来たんだ・・・」そう言った。
「あ・・・そうなんだ・・・」
俺は何とも言えない表情でそう言う。
するとユイは顔色が少し変わり小さな声で言った・・・

「あ、迷惑・・・だったかな・・・」
「あ、いや・・・全然・・・!」

俺の言葉にタカコは小さく下を向く。
93 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:03:33.52 ID:fIGyg+Cno
そして、その態度を感じたユイが自分が言った言葉による俺の回答によってタカコが傷付いた事を察知し、額に指を置き下を向いて自己嫌悪した様だ。

俺もユイの自己嫌悪を感じ、自分が物事をよく考えずに発した言葉による物と言う事を肌で感じ、空気が最悪な程に冷え込んだ事への自分の馬鹿さ加減を呪いながら溜息をついた・・・

・・・と、まあ、複雑に状況を言ったが・・・単純に言うとややこしい空気になったんだ。
タカコは自分が置かれたその空気が俺の発言により、自分が傷付いた事によりユイと俺の・・・

まあ、ややこしい物言いは置いといて、タカコ自身がこれはマズイ、そう思い笑いながら言った。
94 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:04:45.97 ID:fIGyg+Cno
「あ、休憩がてら、試食・・・しません?」
俺とユイもすぐに笑い、「そうしよう・・・!」と言った。


「あ、このシナモン入り美味しい・・・」
タカコが口を手で隠しながら言う。
「だねえ・・・て言うか、この塩味クッキー・・・意外に美味しいんだけど・・・」
ユイが驚いている。
「でしょ?なんかね、この前試しに作ったらクラッカーみたいでイケるって思ったんすよ」
俺が少し自慢げに言った。
「やっぱり、トオルさん料理上手ですよね・・・」
「うん。一家に一台トオル君、って感じ!」
「いや、なんか照れますね・・・」
95 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:05:34.76 ID:fIGyg+Cno
俺は照れて・・・そしと訳の分からない事を言った・・・

「いやー、もし、何だったら・・・俺を嫁に貰って下さいww」

その瞬間、二人は顔を赤くして下を向く・・・

ええっっ!!!???今のアレな発言だった???
てか、そこは「逆でしょ、お婿!!!」って突っ込む場所でしょ!!!

部屋全体がアレな空気になり、俺達を包み込む。
誰か・・・助けて・・・俺が好きな女と、俺の事を好きな女に囲まれて・・・
本来幸せな気分の筈の俺は、非常に重い十字架を背負わされた気分の時だった・・・
96 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:06:31.47 ID:fIGyg+Cno
「やーい、女の中に、男がひーとり♪」

そう言う声が聞こえた。振り返ると部長と向井さんが二人で玄関に立っている。

うおおおおおお!!!!アンタら何で居るんだあああ!!!そして勝手に入んなあああ!!!で、お前らガキかああああ!!!

・・・っと、色んなツッコミが頭に浮かんだが、今のこの瞬間には二人が救世主に思えた。
「ど、どうしたんですかぁ・・・二人共」
俺は少しホッとした表情をしながら二人に言う。

「お前の貞操の危機だと知って至急に現れた」

何言ってんの?
97 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:08:46.45 ID:fIGyg+Cno
そんな軽い気持ちで俺が突っ込もうとすると・・・
ユイとタカコの顔がボンッと爆発した様に赤くなる。

ええええ!!!!!?????ガチ?ガチなのか????ち、違いますよね???

「えー、コチラが今、正に童貞と言う名前の壁が破壊されようとしている歴史的現場です」
部長が呟く。その言葉にユイとタカコの頭から煙りが出た。
うおおおおいいい!!!それ以上は言うなああああ!!!
その時、再び玄関の扉が開きリコさんとマリが入って来た。
「ああー!!!なんで部長と向井君が居るのよー!!!」
リコさんが騒ぐ。
98 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:09:48.87 ID:fIGyg+Cno
「せっかくの面白い場面を・・・」
マリが呟いた。ユイとタカコの顔が爆発した。
もーー!!!辞めてあげてぇぇぇ!!!

「うおっすぅ!!わっ!!本当にユイさんとタカコが来てるぅ!!」
「向井さん情報はマジだったか」
「エロい事をしてんすか???」
「エ、エロい事、見たい・・・」
そう言ってヨウイチ、サモハン、ケンタ、マルオが入って来る。
ユイとタカコは木っ端みじんに飛び散った。
「なんなんだああ!!!アンタらはああ!!!!」
俺が叫ぶ。
99 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:10:34.08 ID:fIGyg+Cno
「いやー、お前んチに襲撃しようと思ったらユイがお前の家に入ったのを見て、様子を伺ってたら面白くて・・・」
「私らはお互いにユイとタカコからトオル君の家に行く事を聞いたら面白そうだったから・・・」
「俺らは向井さんから、面白い場面が見られると緊急連絡網で・・・」

ユイとタカコは跡形も無い位に存在が消えていた・・・
も、もう許してあげて・・・

結局、いつもの様に・・・朝まで騒ぎながら・・・皆でクッキーを完成させたのだった・・・
100 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:11:36.25 ID:fIGyg+Cno
文化祭の一日目が始まった。
去年と同じく客がワンサカと押し寄せ俺達は上手く捌き切れない。
確か去年は一日目で学んだ筈だが、忘れていた様だ。

今年のプラネタリウムのテーマは星の一生だった。
星の一生をストーリー仕立てにして、ユイが読み上げて行く。
ユイの声が暗闇に心地好く響く。クッキーは大盛況だった。
一日目が終了した時に又もや向井さんが叫んだ。

「おい、これで世界に進出出来るぞ!!!」
無理だよ。

二日目、朝から俺達は動き回り大変だった。
だが、去年より人数も増えて客を回し易い。
何故か体育祭で使用したクロスも展示していた。
101 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:12:44.71 ID:fIGyg+Cno
文化祭はあっという間に過ぎ去り、いよいよ仮装大会の時間がやって来た。
各クラブが各々の格好で出で立つ屋外ステージ裏では、早くも運動部連中が俺達に敵意を剥き出しにしている。

他のクラブは着ぐるみを着たり、女装したり、テレビの流行りのキャラの出で立ちばかりだ。
そんな中で俺達、天文部の衣装に他のクラブからざわめきが起きた・・・
そりゃそうだ。

俺達はブリーフに親父靴下にサンダル。
上はランニングシャツに顔は近所のパン屋で貰う紙袋を被り目の所だけを開けている格好だ。
102 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:14:03.22 ID:fIGyg+Cno
金が全く掛かっていない。
皆に変に注目され俺は目茶苦茶恥ずかしかった。

「それでは、今年の文化祭も、いよいよ大詰め、クラブ対抗仮装大会でーす!!」

生徒会の人達の司会に見に来ている、全校生徒が歓声を上げた。
いよいよか・・・俺達の順番は調度真ん中辺りであった。

「それではトップバッターは・・・野球部、モジモジ君です!!」

野球部はモジモジ君をやった。観客から微かな笑いが起きた。
一番やってはいけない、テレビネタ。絶対に滑るよな。

「寒いな、奴ら」

向井さんが呟く。
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 22:15:16.96 ID:nXbLonH2P
うおトオルきてたああああああっ
104 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:15:37.01 ID:fIGyg+Cno
それから順番に各クラブがステージに上がる。
皆、着ぐるみでポーズしたりとか、歌手の真似をして歌ったりだ。

「モノマネ大会じゃ無いんだけどね・・・」
部長が眼鏡を光らせる・・・が、紙袋で見えない。
俺が面白い、と思ったのは吹奏楽部の女装でのダンスだ。
中々見映えもよく、面白い。
「強敵・・・っすね」
ケンタが呟く。そして・・・

「では、続いては・・・全運動部の今や賞金首・・・体育祭でのサブマリンの奇跡、ここに再来・・・天文部でーす!!」

そう紹介されると共に歓声が沸いた
105 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:16:57.20 ID:fIGyg+Cno
ステージ上に俺達が上がると、どよめきが起き、その後笑いが起きた。
掴みはOK。

「えーっと、天文部さんは・・・太極拳と言う事でしたが・・・?その格好は・・・?」
司会者が少し笑いながらマイクを部長に向けた。
「これは殷の時代に生まれた衣装であり、そして、全ての成人男子が冠婚葬祭で着用した衣装です」
そう言うとざわめきと微かな笑いが起きる。
ステージの最前列で手を振る、天文部女子四人はウケていた。
106 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:18:01.36 ID:fIGyg+Cno
「まあ・・・分かりました。それでは、天文部さんアピールタイムです!!」

そう司会者が言うと同時に俺達は前列と後列に二列に別れ直立不動で立った。
そして、荘厳で神秘的なメロディーが流れると共に俺達はゆっくり太極拳を踊りだす。
全員がピッタリと揃って踊っている。
その瞬間に一回目の爆笑が起きた。

そして、太極拳を1分程、踊った後に、ゆっくりとした動きで、一旦ステージの裏に去り、その後すぐにそれぞれ道具を持って全員がゆっくり体型を変えて行く。
107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 22:18:34.41 ID:NLP319djo
   ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧
  ( (-( -( - ( -д( -д)
  (つ(つ/つ//  二つ
ハァ─) .| /( ヽノ  ノヽっ ─・・・
   ∪∪とノ(/ ̄ ∪

                ∧
 ((  (\_ ∧ ∧ ∧ ∧ Д)っ
   ⊂`ヽ( -д-) _)д-) )  ノノ
  ヽ ⊂\  ⊂ )  _つ
スゥ──(/( /∪∪ヽ)ヽ) ノ ──
      ∪ ̄(/ ̄\)

     (\  ∧ ∧   カッ
      < `( ゚Д゚)
       \ y⊂ )
       /    \
       ∪ ̄ ̄ ̄\)
108 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:19:54.87 ID:fIGyg+Cno
一番先頭にサモハンが跪く。
その横に向井さんが紐で結んだ二個の洗濯バサミを持ち肩膝を付いて待機。
サモハンの後ろに部長とヨウイチが手にムチを持って立った。
その後ろの列に間隔を開けて俺とケンタが片膝をついて座り、ティッシュペーパーの箱を小脇に抱えている。

そして、ステージの一番端っこにマルオがクラッカーを持って立っていた。
109 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:21:20.37 ID:fIGyg+Cno
荘厳な音楽が続き、その音楽に突然、ドラの音が入った。

「ゴーン!」

その瞬間に向井さんが立ち上がり、サモハンのランニングシャツを引きちぎった。

「ゴーン」

その音で次に向井さんがサモハンの両乳首に洗濯バサミを挟む。

「ゴーン!」

向井さんがユックリ洗濯バサミに付いている紐を引っ張った・・・サモハンがピクンと体を震わす。

そしてすぐに、サモハンの後ろにスタンバっている部長、ヨウイチがムチでサモハンを叩いた。

サモハンが又もや体をピクン、と動かす。それと同時にマルオがクラッカーを鳴らす・・・!

そして両サイドの最後尾に片膝を付いて座っている俺とケンタが、ティッシュペーパーの箱からティッシュペーパーを取り出し、それを空に投げた・・・!
110 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:22:37.56 ID:fIGyg+Cno
「ゴーン」

再び、向井さんがサモハンの乳首を挟んでいる洗濯バサミの紐を引っ張った・・・
部長、ヨウイチがサモハンにムチを打つ。
マルオがクラッカー。
俺とケンタがティッシュペーパーを空に舞い上げる・・・

俺達はそれを何回か繰り返した。
ティッシュペーパーが風で何枚も流されると比例して・・・

会場に爆笑がこだました・・・!
思いっ切り下ネタだが、恐らく太極拳からの流れでシュールな風景なので爆笑が起きたのだろう。
111 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:23:42.94 ID:fIGyg+Cno
教師や女子も爆笑していた。
ウチの天文部の女子も爆笑をしている・・・

最後にマルオの「フランスパン!」その一言で幕は閉じた・・・!

俺達は満場の拍手の中、ステージから飛び降りた!
そして歓声のど真ん中を走りながら突っ切って行く!
皆が拍手と歓声を俺達に送ってくれていた・・・!

気がつけばユイ達女子四人が観客席から手を突き出している・・・
俺達は顔の紙袋を外し、互いに笑顔を見合わせた女子四人とハイタッチをして走る・・・!
112 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:24:59.19 ID:fIGyg+Cno
そして全員で右手を突き出し叫んでいた・・・

「てんもんぶ・・・さいこおおおお!!!!!」

その瞬間の笑顔と・・・興奮を今でも覚えている・・・
そして何故か俺はマルオに右手を突き出し叫んだ!

「フランスパン!!!」

するとそれに呼応する様に全員も右手を突き出し
「フランスパン!!!」
そう叫んだ・・・そして、何がおかしいのか・・全員で腹を抱えながら笑っていた・・・・


ずっと、ずっと・・・笑い続けていたんだ。
あと三ヶ月後に待ち受ける・・・

先輩達の、ユイの卒業と言う事を忘れてしまうかの様に・・・
113 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:25:30.39 ID:fIGyg+Cno
表彰式、俺達は文句なしの優勝を掻っ攫い、見事に二冠を達成した。
そして、この日の出来事を・・・俺達の母校ではこう言う様になった

『フランスパンの奇跡』と・・・





ちなみに景品はノート五冊だった。

114 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/16(土) 22:26:12.42 ID:fIGyg+Cno
以上です!

いや、今日はなんか寝不足で・・・文章が変だったら申し訳ないっすww

それでは、また!!
115 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 22:26:36.68 ID:nXbLonH2P
なぜフランス
116 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2011/07/16(土) 22:27:24.90 ID:YohwQGV0o
今日も面白かったよ
117 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/16(土) 22:30:05.27 ID:qOKbDGrqo
トオルさいこーww
118 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 22:30:13.45 ID:NLP319djo
トオル乙です。

119 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 22:33:15.85 ID:tiqpQR0/0
おもしろかったー!おつー
120 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/16(土) 22:44:00.49 ID:ukaW9wDao
おつです、本当に愉快で楽しいなあ
121 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 22:47:19.13 ID:b+R3RG5Fo
>>59
ありがとう、ユイが救われてよかった

トオルおつ!
122 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/16(土) 22:58:33.76 ID:F2CvscADO
感動やら嫉妬やら羨望やらが混ざった変な気持ち

とりあえずいつもいつも乙
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/16(土) 23:15:20.78 ID:YUjc+3Cgo
トオルは何気に今良い歳したオッサンだな
多分40越えてるっしょ?
よく昔の事細かく覚えてるな…

もし、覚えてなくて即興で小ネタ作ってるんだとしても
それはそれで毎日このペースとクォリティで続けられるのは凄いな
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/16(土) 23:32:29.48 ID:NehNM6lqo
miraiで待ってる
125 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/17(日) 00:43:04.62 ID:vKRVTUQAo
トオル先輩ちーっす
ウイングマンから察するに、40代半ば…かな?
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) :2011/07/17(日) 00:54:40.49 ID:y0GSNkxbo
トオルは俺より年上なんだろうなあ
毎回おつかれさま!
次回も期待
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/17(日) 04:25:23.99 ID:a+JfUOcKo
いい高校生活だなーww
俺も斜に構えてだりぃとか言ってないで
やることやっとけばよかったよ( ´_ゝ`)
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/17(日) 11:29:54.26 ID:4bT1Ju7S0
トオル先輩、今日は来れないのかなー?
129 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(四国) :2011/07/17(日) 23:43:59.14 ID:Ys3ICIHAO
今日はお休みですか?
130 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:00:23.50 ID:62HnxljOo
いやはや、日本つええな
まあ、それは置いといて、朝早くからこそっと投下しときますね
131 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:01:44.21 ID:62HnxljOo
文化祭が終わり、季節は冬となる。
期末テストも無事に終了した後に年末の慌ただしさを迎えた。
去年と同じくクリスマスには全員でクリスマスパーティーを行い、皆で楽しむ。

その年末に間に有った出来事は、皆でケーキバイキンクに行き、何故かマルオがサモハンに大食い勝負を挑んだ位かな?
結局、勝負に勝ったサモハンが名実共に天文部の大食いキャラの名を手に入れ、負けたマルオは腹を壊し学校を休んだ。

後はいつもの様なマッタリとした生活だった
132 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:02:29.30 ID:62HnxljOo
今年の年末は各自それぞれに予定が有る様で俺は非常に久しぶりに一人キリで正月を迎える事になったのであった・・・

年末の仕事納めを終えて、いつもの様に酔っ払った石田さんを家に送る。
石田さんの奥さんが遅いから泊まって行きなさい、そう言われお言葉に甘えそうさせて貰った。
俺が風呂から上がり、奥さんに礼を言うと奥さんに「お茶でも飲んで」そう笑顔で言われ、又もやお言葉に甘えた。
133 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:03:23.11 ID:62HnxljOo
奥さんと色んな話をしていると奥さんが俺に言う。
「主人もトオルさんと出会う事が出来て嬉しいのよ」
「え?そうなんすか?」
「うん、主人に取ってトオルさんは『俺の最後の教え子だ』みたいに言ってるの・・・」

そうなんだ・・・

「主人と末永く仲良くしてやって下さいね・・・」
「いえ、こちらこそ・・・」
俺はそう言って頭を下げたのだった・・・
134 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:04:14.34 ID:62HnxljOo
年末の29日、30日、二日間をかけて俺は家の大掃除を行った。
第二拠点と化してから俺の家には余計な物が沢山増えた。

何故か向井さんが「戦利品じゃあ!」と言って持って帰って来たペコちゃん人形まである。
思い切って捨てようかと思ったが、向井さんに拾いに行かされるかも知れないかと思い辞めた。

その他にも、漫画や雑誌、体操服、ジャージ、菓子類や何故か作りかけのプラモまである。
とりあえず、俺の判断で要らない物は全て捨てた。
どうせ置いてある事すら忘れている連中だ。

そんな事をしていると、俺の年末があっという間に過ぎてしまい、大晦日を迎える。
135 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:05:12.67 ID:62HnxljOo
正月の間の食材と必要な物を買おうとスーパーに行きカートに買い物を入れレジを通ろうとした時に、気が付いた。
俺がポケットを探るが・・・

無い・・・財布が無い・・・

全身から血の気が引く。
正月を過ごす費用として入れていた・・・二万円近くが・・・無くなっていた・・・

家に帰り脱力感のままベッドに寝転がる。
どこかで財布を落としたのだ。
とりあえず警察に届け、銀行へ紛失の連絡をし、カードをストップして貰った。
ただ年末年始を挟むので、窓口で金も下ろせないし、カードの再発行も出来ない。
136 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:06:30.62 ID:62HnxljOo
ヤバい・・・一文無しだ・・・
いや、正確に言うと台所に置いて有った12円が有るので、一文無しでは無いのかな?
ハハハ・・・どうでも良いや・・・

俺は冷蔵庫を開けてみた。
冷蔵庫には玉葱が半分とバターと辛子とワサビ・・・それとマヨネーズ。
ヤバい。これは飢え死にしちゃうかも・・・

仕方なく俺は誰かに金を借りよう、そう思いヨウイチに電話をする・・・
が、ヨウイチは田舎に帰っている様だ。
サモハンも留守。向井、部長の二人も居ない。
ケンタ、マルオに至っても居なかった・・・

確かに。今年は皆、予定がある・・・そう言ってたな・・・
ヤバい。ガチでこれはヤバいぞ
137 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/07/18(月) 07:07:32.49 ID:thVNoI0xo
>>133
変なフラグにならないでくれよ
138 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:07:42.16 ID:62HnxljOo
だが、女子に頼るのは嫌だった。恥ずかしい。
金を貸して欲しいとは口が裂けても言えない。
石田さんは夫婦で年末から温泉旅行に行く、そう言っていた。
俺は一人部屋で途方に暮れていた・・・

除夜の鐘が鳴り年が明けた様だ。
俺は中途半端な時間に寝たので中途半端な夜中に目が覚めた。
窓の外は真っ暗で俺のアホ面しか映っていない。

寝る前に食べた玉葱のバター炒め、マヨネーズ辛子和えは自分で言うのは何なんだが、美味かった。
しかし、それにより俺の食料は尽きてしまった。
米の備蓄もなく、インスタント食品すら無い。
139 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:09:45.76 ID:62HnxljOo
>>137
変な書き方してすまんww

続き
「フフ・・・」
俺は窓に映る自分のアホ面を見て笑う。
そして一人で「明けましておめでとうございます」そう言ってみたんだ。
それから、また笑った後に、再び寝た。

起きると夜が明けていたが、俺の腹は減っていた。
普段ならば、こんなに腹を減らす事は無いのだが、どうやら食料が無い事で本能的に食料を求めているのか?
銀行が開くのは四日か五日・・・それまで俺の体が持つのだろうか?
不安だ。とりあえず、俺はテレビをつける。

テレビを見て気を紛らわせ様、そう思ったのだ。
だが、テレビにはお節料理特集や食い物が沢山出て来る。
俺は黙ってテレビを消した。
140 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:10:52.87 ID:62HnxljOo
時刻は元日の正午になっている。
気を紛らわす為に散歩に出た。

道行く人達は晴着を来たり、家族連れで非常に楽しそう。
元日の昼間から一人で腹を空かせているのは俺位だろう。
なんか非常に悲しくなって来た。

なんで俺はこんな馬鹿なんだよ・・・
よりによって正月に財布を落とさなくても良いじゃないか・・・
自分の馬鹿さ加減に泣きそうになって来る。
歩き回る事で余計に腹が減って来た。

神社に出店が出ていて良い匂いをさせている。
子供が食べているトウモロコシを見て奪ってしまいそうな欲求が出て来た。
141 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:12:06.64 ID:62HnxljOo
せ、せめて米が有れば・・・
米が有れば今、出店の匂いだけをオカズにご飯を食べる事が出来そうだ。
俺はムシャムシャとご飯を食べて幸せそうにしている自分を想像しながら家に帰った・・・

家に到着すると益々、何もする事が無く腹が減る。
時刻は夕方になっていた。かれこれ24時間は何も食べていない。
とりあえず何回目かは分からないが、水で腹を膨らませる。
ゲップと共に水が出そうな位に水を飲んだ。
もう水はいらねえ。

ふと精子にタンパク質が含まれている事を思い出した。
一瞬飲もうかと思ったが精子を出す元気が無い。
142 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/18(月) 07:12:56.68 ID:lXW7LPDxo
トオル待ってたぞ〜!!
ってかこんな早朝からとかwwww
夜勤明けなのに寝れないじゃねぇかwwww
143 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:13:16.72 ID:62HnxljOo
寝よう・・・そう思うが腹が減って眠れない。
ヤバいぞ・・・これは・・・その時、何かを思い出した。
そう言えば・・・!
慌てて台所に行く・・・有った・・・!

向井さんが置いて行った日本酒!!!
米じゃあ!!!

俺は日本酒をコップに注ぐと、それを口に含んだ。
口の中にアルコール特有の刺激が広がり、それを一気に喉の奥に押し込んだ。
喉と食道が焼ける様な熱さを感じ、次に胃が熱くなる・・・
ジンワリとした感覚が広がり、腹の減りが治まった気がした。

これはイケる・・・!
そう思い再び日本酒を口に含んで行く・・・
144 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:14:43.33 ID:62HnxljOo
>>142
スマソww

続き
が、いきなり頭がクラクラとして来た。
すきっ腹に日本酒を流し込めば当然だ。
俺はフラフラになり、目を回す様にベッドに倒れ込んだ。
うひー・・・俺はそのまま意識を失ったのであった・・・

気がつけば猛烈な吐き気がして、真夜中に目を覚ました。
トイレで吐こうとするが何も出ない。とりあえず水を飲んだ。
すると吐き気が更に倍増し、水を吐き出す。
再び水を飲み、水を吐く・・・それを繰り返し俺は再び眠った・・・

翌朝目が覚めた時に、もうダメだ。そう思った。
145 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:15:45.79 ID:62HnxljOo
こうなれば恥も外聞も無い。女子に連絡して金を借りよう・・・そう思った。

とりあえず最初にリコさんに電話をしてみる・・・が、出ない。
そしてマリに電話する・・・出ない。
そこで俺の電話が止まった。

どうしてもユイとタカコには電話が出来ない。
恥ずかし過ぎる・・・
自分が好きな人と、自分を好きな人・・・どちらも金を借りにくい。
そしてどちらも片親で裕福では無い。
非常に金を借りにくい相手であった・・・
だが、何とかしないと、コチラも生命の危機を感じている。

仕方なく・・・タカコに電話した。
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/18(月) 07:16:25.36 ID:2nb0eYKX0
トオル先輩に遭遇。

朝早くからありがとうございます。
147 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:16:53.26 ID:62HnxljOo
何と無くユイよりもタカコの方が・・・そう思ったからだ。

タカコの家の電話のコール音が響いている。
俺は妙に緊張した・・・ガチャリと音がして「はい」そう言ってタカコの声が聞こえた。

「あ、もしもし・・・トオルだけど・・・タカコ?」

そうドキドキしながら言う。すると・・・

「あ、お姉ちゃんなら居ませんけど・・・」

そう言われた。
あ・・・妹か・・・声、ソックリだね・・・
俺はガッカリした。

どうやらタカコは父親と共に田舎に帰っているそうだ。
俺は肩を落として電話を切った。

いよいよ・・・ユイに電話をするしか無くなった・・・
148 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:18:20.15 ID:62HnxljOo
俺は凄く緊張しながらユイの家の電話番号を押す。
手が震えた。
てか・・・ユイはお母さんのお見舞いで病院に居るかも知れない・・・それなら非常にマズイな・・・

そう思うが既にダイヤルしてプルルル・・・と言う呼び出し音が響いている。
俺の心臓は非常にヤバい音を立て始めた。
何回かのコールの後に、居ない・・・か。
そう思い半分ホッとして、半分ガッカリして受話器を置こうとした・・・その時だった・・・

「はい、もしもし・・・」

慌てたユイの声が聞こえた。
ドキッッッ!!!俺の心臓が爆発する様な音を立てる。
149 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:19:27.57 ID:62HnxljOo
「もしもし?」
ユイが何も言わない受話器の向こうに不審そうな声を出した。
俺は慌てて「あ、もしもし・・・」そう呟いた瞬間にユイが言った。

「・・・トオル・・・君?」

又もやドキッッッとする。
「あ、はい・・・あ、あの・・・」
俺が慌てると向こうはホッとした声で「明けましておめでとうございます・・・」そう落ち着いた声を出す。
俺も慌てて「あ、明けましておめでとうございます・・」そう返礼をした。
そしてユイがクスリと笑い「ビックリした・・・誰かと思ったよ・・・」そう言う。
「ああ、すみません・・・正月早々・・・」
俺が恥ずかしそうに呟いた。
150 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:20:42.25 ID:62HnxljOo
そして、やっと誰かに繋がった事にホッとする。
しかもユイに繋がった事に安心と安らぎを覚えた。
「どうしたの?」
ユイが明るい声で尋ねた。
俺は自分が掛けた用件を思い出し、焦る声で今の状況を説明する・・・
「あの・・・ですので、あの、か、必ず銀行が開いたら、お返ししますんで、あの、ちょっとだけ、お金を貸して・・・頂け無いでしょうか・・・」
俺がそこまで言うとユイは・・・

「もう!なんで早く連絡してくれないのよ!大丈夫??すぐに行くから!」

そう言ってくれて俺は泣きそうになった。
ユイは二時間後には行く、そう言ってくれて電話を切った。
俺は泣きそうに、いや実際は泣いていた。

死ぬかも知れないそう思った時に、ユイの優しさに触れたからだ。
151 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:21:51.02 ID:62HnxljOo
だが、そこからなんかドキドキして来た。
正月早々にユイが俺の家に来るからだ。
俺は家を大掃除していて良かった・・・そう思いホッとすると同時に緊張して来た。
とりあえず服をお出かけ用に着替え髪型をセットした。
そして歯を磨き、鼻毛のチェックをする。
完璧・・・そう思い、ユイを待っていると二時間調度位にユイが現れた。

「お待たせー・・・ゴメンね、用意に手間取って・・・」

ユイはいつもの様に可愛く、そして素敵な笑顔をしていた。
手にはスーパーの袋があり、食材が沢山入っている。
「あ、いえ・・・すみません、ホントに・・・」
俺は礼を言う。
152 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:22:31.45 ID:62HnxljOo
するとユイは手にあるスーパーの袋を床に起きペコリと丁寧にお辞儀をした。

「明けましておめでとうございます・・・本年も宜しくお願い致します・・・」

そう言ったので俺も慌てて頭を下げる。

「あ、明けましておめでとうございます・・・ほ、ほんね、ほんねもよれしけ・・・」
噛んだ。

その言葉にユイがクスクス笑った。
俺も笑う。

二人で笑っていた・・・
153 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:23:38.60 ID:62HnxljOo
「お腹減ってるでしょ?正式にご飯作るから、先に煮しめでも、食べてて」

そう言ってタッパーに入った煮しめを俺の前に置く。
「あ、いえ・・・俺が作ります・・・」
「良いから、トオル君みたいに上手じゃ無いかも知れないけど・・・」
「い、いえ・・・そんな・・・」
俺が慌てて首を横に振ると、ユイはクスリと笑い

「・・・これ位・・・させてよ・・・」

そう言って小さく呟いた。

・・・ん?
154 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:24:47.25 ID:62HnxljOo
ユイが料理を作ってくれて俺の食卓が一気に華やいだ。

「うわー!!美味そう・・・」
「味は保証出来ないけど・・・どうぞ!」
「いや、目茶苦茶美味そうです・・・いっただきまーす!」

そう言って俺はユイの料理を食べる。

「・・・美味い・・・マジで美味いっす・・・!」
「ホントに?良かったー」

ユイはそう言って笑った。俺はバクバクとユイの料理を食べる。
ユイは肘を付きながら俺を見つめていた。
俺はドキッとする。
俺の態度に気が付いたユイが慌てて顔を赤くして下を向いた。

その態度に俺は益々ドキドキしてしまった。沈黙が現れた。
155 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:26:17.77 ID:62HnxljOo
この沈黙を打ち破るべく俺は突然呟く。
「あ、て言うか・・・今日、大丈夫なの?お母さん・・・」
俺の言葉にユイは顔を上げ、「うん・・・大丈夫」そう言い、続けてユイが話す。
「今日も病院に行って、帰って来たら調度、トオル君から電話があって・・・」
「そうなんだ・・・」
少しホッとした。

料理を食べ終わり二人で洗い物を一緒にする。
それが終わるとユイが熱いお茶を煎れてくれた。

「あ〜・・・熱いお茶、ウメエ・・・」

俺がホッとした様に言う。
ユイはクスクス笑い「普段は飲まないの?」そう尋ねる。
「いや、なんか独り身だと、お茶を煎れるの面倒臭くて・・・急須とか洗ったりしないといけないから落ち着けないっしょ」
156 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:27:15.21 ID:62HnxljOo
「あー、分かる。今、私もお母さんがずっと病院だから、一人暮らしと変わんないから」
「そうなんすか」
「うん、だからトオル君がよく料理とかちゃんと作れるな・・・って思うの。自分一人だと面倒臭く無い?」
「いや、料理は作るのが好きなんで・・・後片付けが面倒臭いけど、それも慣れました」
「そっか・・・」

ユイはそう言って俺に笑顔を向ける。

「勉強、どうっすか?はかどってます?」
「うん。大丈夫!」
157 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:28:21.79 ID:62HnxljOo
「頑張って下さいね・・・」
「うん、ありがとう・・・トオル君も・・・」
「え?」
俺はユイを見た。ユイは湯呑みを見ながら呟く。

「トオル君も・・・来年・・・来てね・・・」

そう言った後に俺を見た・・・急激に俺の心拍数が上昇する。


「待ってる・・・!」


ユイの言葉に俺は顔を赤くしながら下を向いた。
そして「・・・はい」そう呟くので精一杯だった・・・
158 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:29:26.36 ID:62HnxljOo
俺達は二人でゲームをしたり、テレビを見たりして遊んだ。
そして気が付くと時刻は夜になっていた。

「あ・・・もう、こんな時間・・・」

俺は言いたく無いが時間の話をする。出来れば帰らせたく無い。
が、明日もユイはお母さんの所へ行かないといけない・・・だから、帰らせないと・・・
そう思いユイを見た。

ユイは「ホント・・・だ」そう呟くと「ん〜・・・」そう言って伸びをした。
そして自分の膝を指で弄りながら呟く・・・
159 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:30:27.58 ID:62HnxljOo
「・・・泊まって・・・行っちゃお・・・かな・・・?」


そう言うと俺を見た。

え・・・?
俺達はジッと見つめ合った。ユイが少し顔を赤くして俺を見ている。
俺もユイの瞳を見つめていた。

え・・・?
再び俺はそう思う。そしてやっと言葉の意味を理解して・・・
心臓が爆音を立て始めた。

え?え?え?え?・・・





ええええええーーーーー!!!!!!!?????
160 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:31:22.79 ID:62HnxljOo
コツコツと時計の針の音だけが部屋に響いていた。
だが、俺の耳には心臓の爆音だけが響いている。
口の中がカラカラに渇いていた。唾も上手く飲めない。
するとユイが急に下を向いたかと思うと照れた様に笑い始めた。

「・・・て、訳には・・・いかないか・・・」

え?

「夜はね、急に容態が変化する可能性があるから・・・家に居ないとダメなの・・・」

そう言って少し悲しそうに笑った。
俺は残念な気持ちと、少しホッとした気持ちと両方が混濁しており、「そうなんだ・・・」そう呟いた。
161 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:32:38.85 ID:62HnxljOo
ユイが立ち上がると俺も立ち上がる。
「送る・・・」
俺はそう言ってユイのカバンを持った。
「うん・・・ありがとう」
ユイは微笑む。

二人で家を出て1月の寒い夜空を見上げながら歩いた。
「あれが・・・オリオン座ですよね」
俺の言葉に「ご名答」そうユイが笑った。
「それ位は知ってますから」
「そうなんだ・・・」
二人で笑う。

ユイは再び夜空を見つめた。
ユイの口元のマフラー越しに白く吐かれた息が見える。


そしてユイが呟いた・・・
162 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:33:38.05 ID:62HnxljOo
「本当に・・・ありがとう・・・」

え?
俺はユイを見つめる。
ユイは俺を少し細めた目で優しく見つめる。


「二百万円・・・貸してくれて・・・!」


え・・・??
俺は目を見開きユイを見つめる。

「ずっと・・・お礼を言いたかった・・・けど、言ったら・・・せっかくの好意が・・・」

ユイは少し迷いながら俺に呟いて行く。
163 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:34:35.48 ID:62HnxljOo
俺は「はあ・・・」と溜息をついた後に笑ってしまった・・・
「知って・・・たんだ・・・」
「あのくじ引き屋さんは・・・怪し過ぎるよ・・・!」
「そうかー・・・良い案だと思ったんだけどな・・・」
俺が笑いながらそう言った。
ユイも笑う。俺は続けた。
「いや、普通に渡しても、ユイさんが受け取らないって・・・リコさんが言うからさ・・・だから・・・」
「うん・・・でも、あそこまでされたらね・・・受け取らざるを得なかった・・・せっかく私の為にしてくれているんだって思ったら・・・断れなかったの・・・」

その言葉に俺は笑う。
164 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:35:55.62 ID:62HnxljOo
「でも・・・」
ユイは俺を見上げる様に見つめた。

「ありがとう・・・凄く嬉しかった・・・絶対に返すから・・・!」

ユイの言葉に俺は首を振る。
「いや、良い・・・それは上げたモンだから・・・気にしないでよ」
「ダメ!そんなの気にするに決まってるじゃない!二百万円は大金だよ・・・絶対に返す・・・」

こうなったらユイは頑固だ。絶対に返すんだろう。

「分かりました・・・じゃあ、いつか、俺が死ぬまでに・・・返してよ・・・」
165 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:37:03.68 ID:62HnxljOo
「利子も付けるね」
「いや、それは良いよ・・・」
「ダーメ、絶対に付ける」
「うーん・・・じゃあ、利子代わりに・・・」
俺はそう呟くと夜空を見上げ・・・小さく照れながら言った・・・


「・・・一回だけ・・・デートを・・・して下さい・・・」


そう言った瞬間、超恥ずかしくなり、下を向いた。
恥ずかしいし、そして卑怯だな。この誘い方は・・・
断れないじゃないか・・・

俺がそう思っているとユイも下を向き顔を赤くしながら呟く。
166 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:37:46.49 ID:62HnxljOo
「・・・それは・・・ダメ・・・」


えええええ!!!!!?????
俺は焦って鼻水を垂らしそうになりながらユイを見る。
するとユイは顔を赤らめ俺を見つめて言った・・・



「私も・・・したい事だから・・・利子に・・・為らない・・・」



え・・・?
167 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:38:42.18 ID:62HnxljOo
その時ビュッ・・・と言う音と共に風が吹いた。
「寒い・・・」
俺がポケットに手を突っ込み首をすくめた。
マフラーを付けてこりゃ良かった・・・

そう思っているとユイが「待って・・・」そう呟いた。
「え?」
俺がユイを見るとユイは付けているマフラーを外し伸ばして俺の首に巻き付けた。
そして、もう片方を自分に巻き付ける。

「こうしたら二人で暖かい・・・」

ユイがニッコリ笑う。
168 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:39:32.30 ID:62HnxljOo
マフラーからユイの良い匂いが俺の鼻腔をくすぐり、ユイとの距離の近さが俺の鼓動を速くさせた。
二人で一つのマフラーを巻き付けて歩くには寄り添う様に歩かなければ為らない。
ユイの腕が思い切り俺の腕に触れていた。
俺の肩の先にはユイの顔がある・・・

ユイを見るとユイはニッコリ微笑んだ。
「暖かい?」
そう聞かれ「・・・うん、凄く・・・」そう答えながら俺はユイを見つめる。
169 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:40:20.04 ID:62HnxljOo
ユイは少し伏し目がちに下を見た後に俺を見つめる。
俺達は見つめ合い、その場で立ち止まっていた。

そして俺の左手は・・・ユックリ、ユイの右手を探す・・・
ユイもそれに応える様に俺の左手に近付こうとしているのが分かった・・・


ユイの冷えた手が俺の左手に捕まる・・・
170 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:41:19.14 ID:62HnxljOo
「冷たいね・・・」

俺が笑いながら呟いた。
ユイも笑い「トオル君は・・・暖かい・・・」そう呟くと俺の肩に自分の額を乗せる。

「なんか・・・凄く・・・緊張する・・・」

ユイの震える声が聞こえた。

「俺・・・も・・・」

俺の声も震えている。
俺の右手がユイの肩に触れる。
ユイはピクリと反応した。


そして・・・顔を上げた。
171 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:42:29.03 ID:62HnxljOo
泣きそうな程に瞳が赤く、頬も赤かった。

そのまま・・・ユックリ・・・瞳を閉じて行く・・・
俺も震える手でしっかりユイの肩を持ち・・・そのままユイに顔を近付ける・・・

ユイの閉じた瞳が目の前に見え・・・
俺達は・・・


キスをした・・・


寒い夜空に星空が瞬く中・・・




俺達は生まれて初めての・・・キスをしたんだ・・・

172 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/18(月) 07:42:49.98 ID:62HnxljOo
今日は以上っす!
続きはまた明日!
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/18(月) 07:43:22.40 ID:WZj/AA4a0
早起きしてよかった
トオル先輩おつかれっす!!
174 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/18(月) 07:43:47.66 ID:lXW7LPDxo
報告お疲れ!思わず読み切ってしまったよww
なんて純情なんだ!
wwktkが止まらないwwwwww
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/18(月) 07:45:19.75 ID:9GlkVTvDO
朝からニヤニヤが止まらない。幸せな気分になりました。
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/18(月) 07:49:42.99 ID:WZj/AA4a0
朝から幸せな気持ちになれた。
俺も恋がしたい・・・|ω・`)
そうだ、バイクで風になろぅ。
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/18(月) 07:57:19.47 ID:dfrAvhCLo
グヌヌ 相変わらずの寸止めか・・・
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/18(月) 08:22:24.18 ID:tPQS6OgIO
先輩朝からちぃーっす。おつかれさま!
いよいよキスがががが
なんて純情なんだ!
次回も期待!!!
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/18(月) 08:56:52.72 ID:cei8XKyho
オハヨウジョ

この時間に来るとは、間に合わなかったぜ
赤壁の戦いに突入って感じですかね、いよいよ目が離せません
毎日楽しみにしてます。
180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/18(月) 09:19:19.71 ID:VsapiV6BP
召喚間に合わなかった
181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/07/18(月) 14:19:28.89 ID:j1xTpKsZo
>その時ビュッ・・・
いけない想像をした僕を許して下さいor2…
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/18(月) 15:40:52.18 ID:lK7i2ZuBo
>>181
おれもやっちまったかって思ったw
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/18(月) 17:32:00.09 ID:I/k/wlWio
トオルの優しさと行動力はすごい
タカコも幸せにしてやってくれwww
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/18(月) 19:37:01.18 ID:3xx7dhSSO
俺もこんなピュアな恋愛したい(したかった)な〜………(遠い目
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/18(月) 20:50:29.39 ID:xuvPXHAzo

 ';:. :';.
  .';:. :';.           : '`"゛ゞ- 、..、
   ';:. :';.       ,,..;' '' : _,--‐ =-、´゙';
   ';:. :';.       ゾ;'ノ'、 ; ニ、;ニ _`;,...'i_x=,テ`
    .';:. :';.   ,-‐=xィ廴 .. __, ニ ‐ ‐;.-、ゞ〉ソ" 丿
    .';:. :';.  丶、´ ゞ、´''冫...ヽ ッ〃,.. .. ゙;;_ノ
     ';:. :';.   `ー、、ヽ´=・ン;‐、=・;`'f′
      .';:. :';.    .iリゞ、,、ン __''_ 丶ノ⌒"`ヽ、 いでよ、トオル
      .';:. :';.     / /;;;;;ヽ ´'' ''`ノ〃  ̄"`゙ヾ、
       〈lliiヽ_..ィ"フ |;;;;;;;;;;;;; ̄_,,x‐‐ ´ ⌒ ..)|;|  今こそ、真の力を魅せる時だ!
       r‐‐っ、冫   !;;;;/ ̄^゙゙''''''‐ -- . -  |;| 
      .. ヒニソ,ゞt-ー¬、 ......、 `       ノノ
      / |rーイヽ、               ; /
      | |と__ン、 \、、           、.|
      |丿;;;;;;;;|`´ \\      丶   ..' '|
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/18(月) 23:22:41.26 ID:4k3MUhAIO
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
                       ::          ,′
                       ::i  :;     :;  i::
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                        ::,′           l::
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                       ::,′    /:: ::|     |::
187 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:49:11.76 ID:e6o+k3zwo
おはようございまーす
188 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:49:34.11 ID:e6o+k3zwo
では、続きをどうぞ
189 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:50:29.62 ID:e6o+k3zwo
ユイとキスをした翌日から俺は熱を出して寝込んでしまった。
とんでも無い位の出来事だったからだろう。

だが、毎日ユイとのキスを思い出して熱が有るにも関わらずニヤニヤする。
幸いユイが買い込んでくれた食材が有る為に食事に困る事は無かったが・・・

あのキスの後に、俺達は無言でユイの家まで行き、そして家の前で再度キスをした。
帰り道は俺の股間はアレしてビンビンで歩きにくかった事を覚えている
190 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:51:30.33 ID:e6o+k3zwo
ただ冬休み中にユイと連絡をしたかったが出来なかった。
ユイも勉強が有るし、お母さんの世話も有るから忙しいかと思ったからだ。
そしてユイからも連絡が無い。
だから冬休みが終わる前日は不安が広がる。

あのキスは俺が見た幻だったんじゃ無いか?
実はキスなどしていなくて、普通に帰ったのに、俺が都合良く幻を見ていただけじゃ無いか?
そんな不安に駆られた。


新学期が始まり学校へ行く。
放課後に部室に行こうとするが先生から用事を頼まれ、部室に行くのが遅れた。
191 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:52:30.10 ID:e6o+k3zwo
部室に行くと全員が勢揃いしていて何かを話し合っている。

「おう、トオルー!!おせーぞ!!」
向井さんの元気の良い言葉が俺に降り懸かった。
「あ、すみません・・・ちょっと先生に呼ばれてて・・・」
俺がそう言いながら席に座ろうとする前にユイを見た。
ユイはリコさんの隣に座り俺を普通の表情で見ていた。

あれ・・・?なんで、そんなに普通なんだ・・・?

「さーてと・・・全員が揃ったので・・・今から新部長の発表をすんぞ・・・!」
向井さんの言葉に部長が「コホン」と頷いた。
192 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:53:34.44 ID:e6o+k3zwo
「それでは・・・栄え有る、我が天文部、第43代部長を発表する・・・!」
てか、数増えて無いか?まあ、どうでも良いが。
「どぅるるるるるるる・・・」
向井さんが効果音を出した。
俺は気にせずにチラリと再びユイを見る。
ユイは俺に目をくれずにリコさんと何かを囁き合っていた。

・・・やっぱり・・・あれは幻だったんかな・・・
そうだな。そもそも俺とユイが上手く行く筈も無いよな・・・

「はあ・・・」
そう言って溜息をついて顔を上げ再びユイを見た。
するとユイが俺を見つめていた・・・

え・・・?
193 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/19(火) 07:53:39.03 ID:9PM9Iiybo
おっ、トオルと久しぶりに遭遇!
おはようじょ!
194 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:54:36.32 ID:e6o+k3zwo
が、その瞬間に俺の後頭部に激痛が走る。
「って!」
俺が頭を押さえて振り返ると向井さんが拳を握りしめ立っていた。
「え・・・?なんすか・・・?」
「何、ボーッとしてんだ!!早く立って挨拶をしろ!!!」
はあ?何だよ・・・一体。
俺は立ち上がり皆に一礼して言った。
「遅くなりました・・・明けましておめでとう・・・ございます・・・」
「タコかあああああ!!!!」
俺の頭を再び向井さんが殴る。
「って!なんすか!さっきからポカスカと・・・」
195 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:55:55.04 ID:e6o+k3zwo
>>193
おはようじょ

続き
「誰が新年の挨拶をしろと言った!!部長就任の挨拶だ!馬鹿!!」
はあ!?

・・・って・・・俺は全員を見渡す。
全員が俺を見つめていた。

「・・・マジ?」

その言葉に部長が眼鏡を光らせる。
「そうだ・・・!君はこの栄光の天文部の第51代目の部長になったんだ・・・!」
ちょくちょく数を増やすの辞めろ。
俺は部長のニッコリ笑顔に言った。
「あ・・・良いです・・・」
そう言って手を横に振る。
部長はガビーンとした表情を浮かべた。
196 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:57:27.02 ID:e6o+k3zwo
「な、なんで!!」
「来年も部長がやってください・・・」
「いや、流石に今回は卒業出来るよ!!」
「いや、マジ・・・良い・・・てか、嫌?」
「うおおおい!!!嫌がるな!!!」
「ヨウイチ・・・やって・・・」
ヨウイチはいきなり寝た振りをする。
「サモハン・・・」
サモハンは麦チョコを耳に詰めて聞こえない様にポテチを食べていた。
「あ、じゃあ・・・天文部解散、と言う事で」
「諦めるのはやっ!!!」

最終的に嫌がる俺の右手にペンを持たせ、向井さんが無理矢理、学校への提出書類に俺の名前を強引に書かせ・・・
俺は新部長になった・・・
197 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:58:43.04 ID:e6o+k3zwo
1月もあっという間に過ぎて行く・・・

あれからユイと話せるチャンスが無かった。
ユイ達三年生は、新学期に入ると、すぐに最後の期末テストに突入するからだ。
そして、それが終われば卒業式まで学校に来る事が無い。
そして俺達も修学旅行へと向かう。

修学旅行中、ヨウイチ、サモハンが別のクラスだと言う事で俺は一人で観光バスに揺られ外を眺める。
・・・何にも楽しく無かった。
高校生活で一番つまらなく、苦痛の行事だったのかも知れない。
俺は修学旅行中、ずっと一人でイヤホンを耳に差し込み音楽を聴いていた。
そして・・・


ずっとユイの事を・・・そしてキスをした事を思い出していたんだ・・・
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) :2011/07/19(火) 07:59:43.58 ID:HVhUtZJpo
おはようじょ
遭遇できたのは初めてだな
楽しみにしてるよ
199 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 07:59:55.20 ID:e6o+k3zwo
「もうすぐ・・・先輩達は卒業か・・・」
ヨウイチが窓の外のテニス部のお尻を見ながら呟いた。
「ああ・・・そうだな」
俺もテニス部のお尻を見る。

修学旅行を終えて通常の学校生活が始まる。
ただ、違うのが三年生が学校に来ていない事だけだ。
「俺らも・・・三年生になるな・・・」
「なるな・・・」
「時は速いもんだ・・・」
「ああ・・・速い」
テニス部が通り過ぎ、今度は女バスの集団が通る。
「なんか・・・驚くべき事じゃね?」
「まあな・・・でも、もっと驚いたのはさ・・・」
「うん・・・」
女バスがジャージを履いているのが残念だ。
200 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:01:26.26 ID:e6o+k3zwo
>>198
おはようじょ
いや、特に普通ですよww

続き
「まさか部長が大学に受かるとはな・・・」
「ああ、何の冗談かと思ったよ・・・」
「留年しても行けるんだな・・・大学」
「そうだな・・・なんか悪い夢を見ているみたいだよ・・・」
「ちわっすー」
俺達が下らない話をしていると部室の扉が開きケンタとマルオが入って来た。
「うーっす」
俺達も窓の外を見ながら返事をする。
「あ、また女子運動部の観察っすか?」
「うん・・・この風景が見られるのも、後一年だしな」
「それより、チョコ貰いました?」
ケンタが尋ねる。
201 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:02:43.77 ID:e6o+k3zwo
「え?今日バレンタイン?」
「そうっすよ・・・知らなかったんすか?」
知らなかった。去年は知ってたのに・・・

「ああ、一応俺は六個」
ヨウイチがサラリと自慢する。こやつめ。
「あ、スゲーっすねヨウイチさん・・・俺は二個っす」
マジかケンタ。
「トオルさんは?」
ギクッ。
「トオルは・・・二個は確実だよな?」
ヨウイチがニヤニヤしながら言う。
「あ、ユイさんとタカコっすね!」
ギクッ。
俺は何も言わずに黙っていた。タカコはチョコをくれるかも知れない・・・

だけど、ユイは・・・?
202 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:03:50.84 ID:e6o+k3zwo
去年はユイからはリコさんと合同のチョコを貰った。
だけど・・・今年は二人共学校に来ていない。
受験も忙しいし、今年は貰えないかもな・・・
俺がそう思っていると突然マルオが呟く。

「俺・・・無い・・・」
そうか。ドンマイ。
「大丈夫だって、マリとタカコが義理チョコくれるよ」
ヨウイチがそう言って慰める。するとマルオの顔がパーッと明るくなった。
「そ、そうっすね・・・」
そうマルオが言った時に突然サモハンが現れ言った。
「義理はあくまで義理・・・それは一個には入らん」

マルオは泣き出した。
203 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:04:57.00 ID:e6o+k3zwo
「おいおい、サモハン泣かすなよ」
ヨウイチがそう言う。同時にケンタが尋ねた。
「サモハンさんは?」
するとサモハンはカバンから特大のチョコを取り出した。
マジかサモハン!!!

「うわ・・・デケエ・・・相手誰だよ・・・」
「うわ、ガチでサモハンさんの名前が書いてある・・・」
その時再び部室の扉が開き、「失礼しまーす♪」そう言ってマリとタカコが入って来た。
その瞬間にマルオが飛び上がり二人の元へ言って手を差し出し言った。

「ありがたく頂戴します!!!」

が・・・マリは「は?何を?」そう冷たく言い放つ。
204 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:06:32.69 ID:e6o+k3zwo
「あ・・・いや・・・チョコ・・・」
「私は義理はあげない主義なの!!!」
そう言って椅子に座った。マルオは固まる。
タカコが申し訳なさそうにしながらマルオに言った。
「ゴメンね・・・マリがそう言うから・・・」
マルオは泣いた。
そのマルオにマリは追い討ちをかける。

「欲しかったら男を磨く!ショボい男にチョコを貰う権利無し!」

マルオはロッカーの中に閉じこもった。
男子全員がマルオを憐れに思う。

タカコが少し目を合わしニッコリ微笑む。
俺は「?」と思っていると帰り際にタカコがそっと小さな袋を押し付ける。
「え?」
俺がそう言うとタカコは「シッ・・・!」そう言って「気持ち・・・なんで・・・」恥ずかしそうな笑顔で、そう言ったのだった・・・
205 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:12:12.71 ID:e6o+k3zwo
チョコを貰えるのは悪い気がしない。素直に嬉しい・・・
だが、今の俺には複雑だった。俺の頭の中には今はユイしか居ない。
毎日ユイの事を考えてしまう。
そしてユイとのキスの事を・・・

「はあ・・・」
その日の俺はバイト中に今年に入り何百回目かの溜息をついた。
ユイとあれから全く接触をしていない。ユイからの接触も無い。
マジであのキスは幻だったのか・・・?
だが、もしも本当にキスをしたなら、一体全体これはどう言う事なんだろう?
何、この放置プレイ。俺は再び溜息をついたのであった・・・
206 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:13:29.30 ID:e6o+k3zwo
俺がボーッとしながら警備をしていると目の前に白い物が落ちて来た。

え?
空を見ると白い物がチラチラと降って来る。
マジかよ・・・雪か。どうりで寒いと思ったよ。
俺はジャンパーの襟を立てる。
さみいよ・・・
そう思いながら空を見ていた・・・


仕事が終わり事務所に戻り報告書を書いていると石田さんが窓を見ながら呟く。
「おいおい・・・これは積もるぞ・・・」
「マジっすか」
「外に出たくねーな」
そう言って事務所の石油ストーブの前に手を当てた。
確かに帰りたくない。
俺も報告書を書き終わり石田さんの横でストーブに手を当てながら外を見た。

寒そうだな・・・マジで。
どうせ早く家に帰っても仕方が無いので俺はボーッとストーブの前に居たのであった・・・
207 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:14:47.12 ID:e6o+k3zwo
事務所を出たのは夜の十一時半を回っていた。
俺は雪の中マフラーに顔を埋めながら歩いて行く。
雪が静かに夜の街に降り注いでいた。
うっすらと地面に白い絨毯が敷かれた様に雪が積もっている。

さみいな・・・

再びそう思い家に到着した。
家の前で鍵をポケットから探しながらドアの前に立つと、ドアノブに紙袋が掛かって有る事に気が付いた。
なんだこれ?そう思いながら中を開けると、それはケーキだった。

ケーキ?
俺はそのケーキの箱を取り出す。
するとそのケーキには手紙が挿し込まれていた。
208 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:16:09.19 ID:e6o+k3zwo
手紙を開くと・・・それはユイからであった。
俺は慌ててそれを読む。

『トオル君へ。バレンタインのチョコを渡そうとして、これを持って来ました食べて下さい・・・でも味は保証出来ません(笑)』

俺はケーキの箱を開ける。すると中には手作りのチョコレートケーキが入っている。

ユイ・・・
手紙は続きがあり俺はそれを読む。

『・・・一応ね、手渡しで渡したかったんで、待ってみたんだけど・・・今日は遅いのかな?』

え・・・?
ユイの字が震えている。恐らく寒い中、長い事俺を待ち続けたのだろう。
209 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:17:34.57 ID:e6o+k3zwo
『これを渡す目的も有ったんだけど・・・もう一つ・・・トオル君に会って確かめたい事が・・・有りました』
ん?


『今の私達は・・・どう言う関係なのかな・・・?』


・・・!

『ゴメンね。私、こう言う経験が全く無いから・・・どうして良いか分からなくて・・・何度かトオル君に連絡しようと思ったんだけど・・・恥ずかしくて、そして・・・』

ユイ・・・
210 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:18:45.68 ID:e6o+k3zwo
『あの日の・・・キスが夢だったら・・・どうしようかなって思ったの・・・』

俺は目を見開いた。

『夢じゃ無いよね・・・?夢だったら私、ちょっと病院に行くね(笑)』

俺の手紙を持つ手が震えていた。

『ゴメンナサイ。こうして手紙を書いていても寒さが限界です(汗)今日中に会いたかったです・・・でも、日付が変わったので今日は帰ります・・・それじゃあね!』

すぐに俺は時計を見る。時刻は0時15分を指していた。
211 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:19:48.91 ID:e6o+k3zwo
俺は手紙とケーキを家に入れると・・・すぐに駆け出した・・・
静かに雪が降り続いていた。

ユイ・・・

顔に雪がポツポツと当たっていく。

ユイ・・・

走る俺の吐く白い息が俺の後ろへ流れていた。

ユイ・・・

ハッハッと息を切らせながら俺は走り続けた。
212 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:20:48.93 ID:e6o+k3zwo
白く敷き詰められた雪の絨毯に足跡を見つける・・・
俺は全力でその足跡の先を目指し走る・・・
ユイ・・・
ユイ・・・
ユイ・・・

目の前に・・・ユックリと歩いて行く・・・ユイの後ろ姿が見えた・・・
ユイ・・・!!


「ユイさーーーーん!!!!!」



静かな雪の降る街に・・・俺の叫ぶ声が響き渡った・・・
213 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:21:45.54 ID:e6o+k3zwo
ユイは立ち止まると俺を振り返った。
頬を赤くして白い息を吐いている。
俺はその姿を見た時に胸が張り裂けそうな気持ちが生まれた。
そしてユイが微笑んだのが分かる・・・
俺はその優しく、柔らかな微笑みの元に・・・

全力で駆け抜けて行った・・・

そして、そんな儚いユイを・・・


俺は思い切り抱きしめたんだ・・・
214 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:22:40.71 ID:e6o+k3zwo
「・・・ユイさん・・・!」
ユイの細く、華奢な体を力一杯抱きしめる。
ユイのマフラーから香る優しく甘い匂いが俺の体全体で感じた気がした。
「・・・トオル・・・君・・・」
ユイが俺の体に手を回す。そして俺をしっかり抱きしめてくれる・・・

「ユイさん・・・」
「・・・うん」

「好きだ・・・大好きだ・・・!」
215 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:23:17.22 ID:e6o+k3zwo
俺がユイのマフラーに顔を埋めながら呟くとユイも「うん・・・」と呟いた後に・・・



「私も・・・大好き・・・!」



・・・そう答えてくれた。
216 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:23:55.00 ID:e6o+k3zwo
その瞬間、俺の涙腺が崩壊した。
鼻を啜りながら俺の目から大量に涙が溢れて来る。
そんな俺の頭にユックリと手をまわしたユイは俺の耳に囁く様に言った・・・


「大好き・・・大好きトオル君・・・!」


雪が穏やかに降り注ぐ中・・・



俺達はいつまでも抱きしめあっていたんだ・・・
217 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:24:35.45 ID:e6o+k3zwo
二月の後半になり、冬の寒さの合間をぬって穏やかな日が来る。
そんな柔らかい暖かな日差しの中、ユイ達三年生の卒業式が行われた。

「いやー、卒業なんだな・・・あの人達も・・・」
ヨウイチが正面玄関の花壇の淵に座りながら呟いた。
「ほんとっすね。所で、卒業生を送るのに、なんかするんですか?」
ケンタが尋ねる。

周りには他のクラブの在校生が各々のクラブの先輩達が出て来るのを待っていた。
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 08:25:19.94 ID:JF4j6v2YP
トオル召喚するまでもなくきてたああああああ
219 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:25:41.05 ID:e6o+k3zwo
「いや、知らん」
「え?知らないんですか?」
俺の答えにマリが驚いて尋ねる。
「だって、去年は眼鏡の人は卒業出来なかったから、送り方は知らん・・・まあ、なるようになるっしょ」
俺がそう欠伸をしながら言った。

「トオルさん・・・」
「え?」
マリがそう呟くので俺はマリを見る。
「なんか・・・落ち着きが出て来ましたね・・・なんか有ったんですか?」
ギクッ。なんて勘の鋭い奴・・・

「あ、ああ・・・ほら、俺も・・・あれだ、新部長として・・・な」
220 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:26:39.79 ID:e6o+k3zwo
俺がユイと付き合った事は誰にも言っていなかった。
どこから漏れるか分からない。特にバレたくない人達が居るからな・・

「あ、向井さんと部長」
サモハンの言葉に俺はギクッとする。
「おうおう!在校生諸君、出迎えご苦労!!」
向井さんと部長が胸に花を付けて卒業証書を手に出て来た。
「あ、おめでとうございまーす!」
タカコとマリがそう言って二人に近付く。
部長が二人の前で証書が入った筒を「ポンッ」と抜く。

「これが・・・卒業の音だよ・・・!」
意味が分かんねーよ。
221 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:27:44.97 ID:e6o+k3zwo
「部長の卒業証書、本物なんすか?」
「偽造じゃねーの?」
俺達男の言葉に部長が無言で証書の筒をポンポン鳴らしながら追い掛ける。

「あ、ユイさん、リコさん!」
タカコがそう言って手を振りながら叫んだ。
「ああ〜!!!みんな〜!!」
ユイとリコさんは既に泣いていた。
「おめでとうございます〜」
それを見たタカコとマリも涙ぐむ。

俺はユイを見つめた。
ユイが卒業するんだ・・・

そして涙ながらに話している女子四人を見る。
222 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:28:50.82 ID:e6o+k3zwo
なんか・・・良いな。

俺は生まれて初めて卒業式を体験したかもしれない。
もちろん俺も卒業をして来た。
だけど、いつも一人で、やっと色んな事から解放される・・・それしか思っていなかったんだ。
だから初めて卒業式を淋しい・・・そう感じた。

そんな事を思っていると後ろから向井さんが俺に腕を回してきた。
「トオルちゃーん」
「な、なんすか・・・」
向井さんの嫌らしい笑みに俺は警戒して答える。
「ほらぁ・・・ユイが卒業しちゃうよぉ・・・結局ダメだったねぇ・・・君のアレの卒業は・・・」
言う事がゲスい。
223 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:29:52.54 ID:e6o+k3zwo
「最後に一言言えよ・・・トオル!」
ヨウイチも俺の肩に手を回してきた。
「うん。これが最後だ!ハッキリとフラれた方が君の為だ!」
部長が後ろからそう言う。失敬だな。
「トオルさん、言った方が良いですって!!ダメ元で!!」
ケンタが泣きそうな顔で言う。
ダメ元って何。
「いつまでも有ると思うな、目の前の女と料理」
サモハンが何故か名言みたいに言う。
マルオも俺に近付いた。だが、何も言えず下を向いた。

何しに来た。
224 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:30:52.95 ID:e6o+k3zwo
「ほれ、早く」
「行けって!」
皆が俺の背中を押す。
マジで辞めろって!!

「おーい!!ユイ!!トオルがなんかお前に言いたい事が有るんだってよ!!」

向井さんが笑いながら叫んだ。
辞めんかあああああ!!!!!

ユイや他の女子も俺を見る。俺は顔が赤くなる。ユイも顔を赤らめた。

な、なんだよ・・・これ・・・

だが、この場を収めるには、俺が何かを言うしか無かったんだ。
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 08:31:41.07 ID:JF4j6v2YP
バレンタインの日やったのか貴様
226 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:31:42.79 ID:e6o+k3zwo
だから俺は顔を赤くしながら叫んだ。
「ユ、ユイさん!!!」
その言葉にユイは益々、顔を赤くして俺を見る。

「あ、あの・・・えーっと・・・来年・・・俺は卒業します・・・!」
「何を言っとるのかね君は」

向井さんが冷静に突っ込む。
うるせー。
俺は気にせずに続ける。
227 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:33:10.30 ID:e6o+k3zwo
「そ、それで・・・卒業して・・・何年かしたら・・・俺、頑張って働くんで・・・そして・・・俺が一人前になったら・・・」
ユイが真っすぐに俺を見つめている。



「い、一人前になったら・・・結婚しましょう!!!!!」



その瞬間、他の皆が口を大きく開けて固まった・・・
唯一サモハンが辛うじて呟いた。

「・・・プロポーズしたぞ・・・コイツ・・・」
228 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:33:44.85 ID:e6o+k3zwo
だが、ユイは顔を真っ赤に染めて一瞬、下を向いた後に俺に微笑んで・・・答えた・・・


「はい・・・!」


その瞬間、全員が電撃を受けた様に固まり、その後に叫び始めた・・・
229 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:34:30.20 ID:e6o+k3zwo
「なあああんじゃそりゃあああああ!!!!!」
「うけたあああ!!!プロポーズ・・・うけたああああ!!!!」
「どどどどどどどーゆうことおおおお????」
「えええ????何????何????」
「きんとうーーーん!!!!!」
「核だああああ!!!!核戦争が起きるんだあああああ!!!!」


全員が騒然としている中・・・


俺達は顔を赤くしながら・・・見つめ合っていた・・・
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 08:34:56.29 ID:JF4j6v2YP
あれ 予想の斜め上いかれた
231 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:35:15.72 ID:e6o+k3zwo
その日、天文部全員で俺の家で騒いだ。
結局、飲みながら俺はユイと付き合った事を吐かされて、全員から目茶苦茶に飲まされた。

タカコは酔って泣き、「幸せになってくださ〜い〜」とユイに連呼していたのを覚えている。
とにかく、これが高校生活で最後に全員で騒いだ日だったんだ。

皆が酔っ払い雑魚寝をする。
俺も酔って眠ってしまっていた・・・
232 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:36:19.66 ID:e6o+k3zwo
翌朝、いつもの様に一番に俺が目を覚ます。
全員が各々の格好で眠っていた。
向井さんと部長が何故か寄り添う様に眠っているのを見た。

最初に・・・この人達に捕まらなかったら・・・
俺のこんなに幸せな高校生活は無かったんだ・・・

そして、ユイと抱き合う様に眠っているリコさんを見る。
この人のお陰で・・・俺はユイに一度フラれた後も勇気を貰う事が出来た・・・



そして・・・
233 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:37:25.75 ID:e6o+k3zwo
座布団を枕に寝息を立てているユイを見つめた・・・


全ての始まりは・・・この人からだ・・・


俺はこの二年間の色んな事が頭に浮かんで来た・・・

今日で・・・今日で、この人達と・・・離れ離れになってしまう・・・

俺の目から涙が出て来た。
234 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:38:09.68 ID:e6o+k3zwo
卒業して欲しくない・・・!
ずっと、ずっと・・・一緒に居たい・・・!



皆と・・・離れたくない・・・!



俺は声を押し殺しながら泣いた。
とめどなく涙が流れて来る・・・
235 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:38:59.83 ID:e6o+k3zwo
その時、一瞬俺の涙が止まった。
それは・・・


又もやユイのスカートがめくれ上がり・・・ユイの生足が見えたからだ・・・!


お・・・おおおお!!!!こ、こりゃたまらんですたい!!!
俺はもっと見える様に体をずらす・・・
が、嫌な予感がして・・・顔を上げた・・・



そこには満面の悪魔の笑顔で俺を見ている向井さんが居た・・・
236 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:40:08.73 ID:e6o+k3zwo
「あ、いや・・・これは・・・」
その瞬間に向井さんが叫ぶ。

「おい、お前ら早く起きろ!!!!!トオルがなあああ!!!!」
「すみません、すみません、すみません!!!!向井さん、すみません!!!!」
「え・・・何・・・?」
「どうした・・・?」
「今、トオルがユイのおおお!!!」
「いや、すみません!!!向井さん、マジで!!!!マジで勘弁して!!!!」
「私がどうかしたー・・・?」
「おう、ユイ、トオルがな・・・」

「もおおおお向井さああああん!!!!!!」






この一週間後・・・
ユイが見事に第一志望の大学から合格通知が届いたんだ・・・

237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/19(火) 08:40:32.25 ID:9PM9Iiybo
ちょwww向井さんwwwwwww
238 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:41:19.75 ID:e6o+k3zwo
もうちょっとだけ続くんじゃ


すみません、恐らくここが一番キリの良い場所だと思うんですが・・・
まだ、続いてしまいますww

もう少しだけお付き合いを下さい

それでは、また明日!
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/19(火) 08:42:40.98 ID:aagSDSKK0
おつかれ〜ん。
明日も楽しみにしてます。
240 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/19(火) 08:43:01.51 ID:e6o+k3zwo
>>225
正直に書きますと・・・その日はやってないですww
俺らは超ウブだったんでww

すみませんねww
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/19(火) 08:45:24.27 ID:llxHjzO6o
初めはどんな人達なのかと思ったけど
部長達にして、あの無茶苦茶な勧誘方法ありって感じだなあw
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/19(火) 08:45:26.54 ID:9PM9Iiybo

また頼むよ
243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/19(火) 08:45:40.02 ID:029xSBMbo
そっちの意味か
でっきりバレンタイン自体をやったのかと思ってた
行事的な意味で
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 08:46:57.40 ID:JF4j6v2YP
パー速にスレ立てるとハーレムができる

リコさんをこれからどうたらしこむのかが見物だな
245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/19(火) 08:57:52.92 ID:MmgJ0Balo
>>238
>もうちょっとだけ続くんじゃ
>すみません、恐らくここが一番キリの良い場所だと思うんですが・・・
>まだ、続いてしまいますwwww

切りよくないぞよ
是非とも、今現在まで書いてほしいぞよ

あっ今日のオハヨウジョはオイラじゃないからね。
夜中に、召喚しようとしたけど・・・
246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/19(火) 09:22:06.91 ID:4Sryit/Bo
うわ、先輩来てた!
次回楽しみに待ってますね。
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/19(火) 09:39:51.64 ID:mWbJuMSIO
泣いた
ピュアすぎて泣いた
それに比べて今の自分は…

また続き楽しみにしてる!おつかれさま
248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/07/19(火) 09:51:02.14 ID:RU0R3cCPo
携帯がない時代ってすれ違いとかあって切なかったよねぇ…
249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 10:18:38.59 ID:KURGj53IO
もうちょっとと言わずにグダグダと現在まで書き続けてくれ!
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/19(火) 13:17:39.53 ID:6Q2M1AKz0
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 13:51:38.68 ID:DNQI+HvIO
>>240
その日は…
その日「は」…
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/19(火) 15:31:25.35 ID:cjbO2Le3o
>>251
うわあああああああああああああ
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 15:43:23.20 ID:xlK7v+EIO
>>251
/(^o^)\ナンテコッタイ
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(兵庫県) [sage]:2011/07/19(火) 15:55:25.40 ID:T6juTGRbo
>>251
そら、タイミングがきたらするだろwww
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/19(火) 16:01:18.15 ID:llxHjzO6o
流れ的にそんな過剰反応する事でもないだろ、童貞っぽさがぷんぷんするからやめろ
俺も童貞だけど
256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/19(火) 19:36:40.91 ID:NOLRwLnSO
これユイ視点の話も書いたら面白いんだろうな。

どっちもドラマティックで。
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/19(火) 19:45:32.59 ID:59U0oEpEo
もう小説にして
出版してまえwwwwww
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/19(火) 23:11:22.94 ID:cjbO2Le3o
ユイは誰に似てる?
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/19(火) 23:11:55.13 ID:cjbO2Le3o
ユイは誰に似てる?
260 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/20(水) 08:03:42.85 ID:/l8oA/LAP
トオル召喚
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/20(水) 08:09:21.09 ID:vgTUHMwlo
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
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262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/20(水) 08:18:43.09 ID:lvoUnf3Vo
>>260->>261
この流れを見ると一日が始まった気がするなwww
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/20(水) 08:18:45.34 ID:E95VtmuQo
もうそれいいよ
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/20(水) 08:31:14.82 ID:vXi43ToIO
>>261
毎日お疲れさまです
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/20(水) 09:25:56.32 ID:+NwSKWXzo
>>262
同意
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/20(水) 12:04:01.69 ID:rfbdvHWD0
>>262

同じく同意
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/20(水) 12:30:17.84 ID:/l8oA/LAP
トオルこねえええええ
268 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:16:49.98 ID:tVN9l2N1o
乙です
それでは、続きをどうぞ
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/20(水) 15:17:46.49 ID:/l8oA/LAP
きたああああ
270 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:17:50.49 ID:tVN9l2N1o
「おい、部長。今年の部活紹介どうする」

俺はボーッと椅子に座りながら窓の外を見ていた。
「おい、部長」
サモハンの投げた消しゴムが俺の頭に当たり、やっと気が付く。
「あ、俺の事か・・・」
「良い加減に呼び名を慣れて下さいよ・・・部長」
マリの言葉に俺は首を振った。

「いや、部長って言うと、あの眼鏡しか思い出せ無いんだよ」
「ま、確かに・・・」
皆が頷く。
「なんで・・・俺は今まで通りトオルで頼む」
「じゃあ、トオル部長で♪」

タカコが笑顔でそう言ったので苦笑いをした・・・
271 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:18:33.21 ID:tVN9l2N1o
三年生になり新しい季節がやって来た。
部長や向井さん、リコさん・・・それにユイが卒業し部室はかなり静かになった。
何だか物悲しく、そして凄く淋しかった。
俺は三年生になりヨウイチと同じクラスになった。
俺もヨウイチも国公立の理系を目指すからだ。
何としてもユイと同じ大学に進学したい俺としては苦手な理系でも頑張って勉強をしていたんだ・・・
272 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:19:21.69 ID:tVN9l2N1o
「凄い、トオル君、かなり勉強したんだね!」

ユイがそう言って俺の頭を撫でてくれた。
「いや〜・・・俺も頑張らないとね・・・」
俺はヘラヘラ笑う。

俺達は俺の家でユイに勉強を見て貰っていた。
ユイの教え方は上手い。
こんな優秀な家庭教師をタダで利用して良いもんなんだろうか?

ユイは毎日大学に通い、一旦お母さんの病院に行き、そしてその後からバイトをし、その合間を縫って俺に勉強を教えてくれていた。
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/20(水) 15:19:45.77 ID:w6AapN1/o
超絶支援!
274 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:20:23.40 ID:tVN9l2N1o
もちろん、勉強だけでなく、休みの日はたまにデートをする。
デートと言ってもお互い金が無い身。

二人で公園で桜を見たり、本屋に行ったり、夜に花火を見た高台から望遠鏡で夜空を見たりだった。
そんなデートでも俺は凄く楽しかった。

生まれて初めての恋人。
生まれて初めてのデート。

凄く安らいだ気持ちに成れたんだよ。
待ち合わせはいつも俺が先に来てユイを待つ。

ユイを待つのが好きだった。
275 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:21:55.80 ID:tVN9l2N1o
待ち合わせの場所はユイの家の近くの公園。
そこでベンチに座りながら空を見て待つ。
公園の前を人が通る度にユイが来た・・・そう思いドキドキする。
それがユイでなければ再びドキドキしながら待つんだ。

そしてユイが現れ俺を見ると笑顔で駆け寄る。
その瞬間が堪らなく好きだったんだ。

俺達はいつも二人で話をした。
昨日見たテレビの事。
ユイの大学の事。
天文部の皆の事。
そしてお母さんの容態が良くなった、と話すユイは本当に嬉しそうであった。
276 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:23:02.06 ID:tVN9l2N1o
話が変わるが俺の好きな歌がある。
かなり古い歌だけど、アルフィーの『君が通り過ぎた後に』と言う歌。
タッチの映画の歌だったと思うんだ。

その歌詞にいつも自分達を重ねていた。
二番の歌詞の
『果てしない海に小船を浮かべ、二人漕ぎ出した愛だったね。穏やかな優しさに包まれて・・・』
と言う歌い出しの歌詞がね、あの時の俺達二人の気持ちにピッタリだった。

そんな穏やかな正に春の日の恋だった・・・
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/20(水) 15:23:51.17 ID:MXXjVYJto
JASRACから来ますた
278 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:24:08.22 ID:tVN9l2N1o
もちろん。俺も男で性欲がある。
しかも結構な変態ww

だけどユイを抱きたく無い・・・と言えば嘘になるが、あの時の俺はキスがしたかった。
俺達はキスをするのも、たまに・・・だった。
お互いにキスをしたい、そう言う気持ちはあるのだが、何故か言い出せない。
キスをしたい気分の時はお互いにモジモジする。
それでも中々出来ない。

最終的に俺がいつも勇気を振り絞り、「キ・・・キス・・・しよっか・・・」そう言ってユイを見る。
ユイは顔を赤くして静かに頷いてキスをする。
キスした後に二人で照れた様に笑っていた。

まあ、なんちゅうか・・・今考えても、こそばくなる恋愛だったよ・・・
279 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:25:33.92 ID:tVN9l2N1o
そしてね、もう一つキスが中々出来ない理由があったんだ・・・

「いやー、四月に入ったら暖かくなったな」
そう言って向井さんがマガジンを読みながら言った。
「だねえ、桜も散ったし、ゴールデンウイークも間近だしね」
部長が何故かチクワを食べながらそう言う。
「あの・・・て言うか・・・」
俺はカバンを持って呟く。
「なんだ?」
向井さんがマガジンから目を離さずに答えた。

「ここは俺の家で、そして今日は平日で俺は今から学校に行くんですけどおおお!!!!」
制服姿の俺はテーブルをバンと叩く。
280 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:26:37.16 ID:tVN9l2N1o
「いってらっさーい」
「あ、帰りに酒買って来て、酒」

二人が冷静に答える。
「いや、向井さん達、大学に行かなくて良いんすか??!!最近ずっと俺んチに居るじゃないっすか!!!」
「馬鹿だな、お前は。大学はな、別に毎日行く必要は無いんだよ」
向井さんの言葉に部長がウンウンと頷く。
「でも、毎日行かなくて良い訳でも無いでしょうが・・・ユイは毎日行ってますけどね」
「ユイはユイだ」
「けど、向井さんもユイと同じ理系でしょ?ユイは勉強大変だって言ってましたよ」
281 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:27:43.17 ID:tVN9l2N1o
「ユイん所の大学とウチの大学じゃレベルが違い過ぎて判断材料がねーんだよ」
「そうそう。ユイ君は国立だもんねー」
二人はすっかり呆けていた。
こうやって大学生は馬鹿になっていくのか・・・
俺がそう思い溜息をつくと、向井さんが肘をついて俺を見た。

「所でお前・・・」
「はい?」
「『ユイ』って呼び捨てで呼んでんだ・・・」

ギクッうう・・・

「・・・え?き、聞き間違えじゃ無いですか・・・」
「いや、確かに『ユイ』を連呼していた」

部長の眼鏡が光った。
282 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:28:46.03 ID:tVN9l2N1o
「さ、さてと・・・学校に遅れちゃう・・・」
俺が立ち上がった瞬間に向井さんと部長が俺に寝技をかけて組み敷く。
「おいおい、トオルくーん??何??お前らアレか???どこまで行ったんだ???」
「ど、どこにも、行ってないっす・・・」
「大体呼び捨てで呼ぶカップルは肉体関係があると世論調査では78%の結果が出ている」
「う・・・嘘っぽい情報・・・」

俺が二人に寝技を喰らってると玄関のドアが開き「みんないるー??」そう言ってリコさんが入って来た。
283 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:29:55.81 ID:tVN9l2N1o
「おう、リコ良い所に来た、コイツ、ユイとヤッたらしいぞ!」
「や・・・やって・・・ない・・・」
「えー!!!ホント???キャー!!!ねえねえいつ??いつ???」
リコさんがノリノリだ。

「・・・・」
「向井君・・・」
「なんすか部長」
「これヤバい。落ちてる」
「おー!!!」

・・・と、まあ・・・結局、卒業しても彼等は俺の家に入り浸っていたのだ。
お陰でユイと二人きりに中々、成れない。
ただでさえ俺達は進展が遅いのに、奴らのお陰で益々二人の関係は進展しなかった・・・

その上・・・
284 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:31:00.20 ID:tVN9l2N1o
「大学って、そんなつまらないんですかー?」

タカコが源氏パイを食べながらリコさんに尋ねる。
「うん・・・なんかね、ノリが違う・・・みたいな」
「あ、分かる分かる。俺の大学の奴らもそんなんだよ。俺、サークル入ってすぐ辞めたわ」
「僕の大学の人達もだなー、皆、ちょっと変わってるんだよ」
「そう、なんか変」
「大学は変わった奴らが多いよな、ハハハハ・・・」

変わってるのは・・・お前らじゃーいいい!!!
俺はシャーペンを持ち頭を抱えながら思った。

何でこの人達は自分本意に物事を考えられるんだろう・・・
周りの皆が変だと思ったら、それは自分が変だと思わないんだろうか?
その図々しさが羨ましい。
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/20(水) 15:31:07.70 ID:w6AapN1/o
その上・・・・ゴクリ
286 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:32:02.76 ID:tVN9l2N1o
俺は集中して出来ない宿題に頭を抱える。
向井さん達は入り浸るわ、在校生の奴らも放課後に向井さん達に会いに俺んチに来るわ・・・
一体全体、あの卒業式の別れは何だったんだ??
結局去年までと、何も変わっていない。

「でも、向井さんらは・・・ちょっと個性的・・・ですから・・・それで周りの人も・・・」
ヨウイチが言葉を選んで言う。
ヨウイチ、もっとストレートにアンタらが変なんだよって言ってやれ。
「いや、それがお前やトオルみたいな変な奴ばっかでさ」
えええええ????俺達が変って言われたああああ!!!!
言葉を選んだ結果、最悪にストレートな返しが来たヨウイチは凹んでいた。
287 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:34:43.21 ID:tVN9l2N1o
「所で新入部員は入ったのか?」
「あ、男子二人に女子一人が入りました」
ケンタがそう答える。
「よし、じゃあ、連れて来い!!俺がテストしてやる!!」
「辞めろおおおおお!!!」

俺は全力で止めた。

が・・・俺の必死の努力が空しく、新入部員は向井さんに
「自分を悪魔将軍の硬度に例えるとどの位?」
と言ってボールをぶつけようとするし、
「カリアゲ君について、感想文を十枚以上書いて来い」
と言う言葉にドン引きになっていたのだった・・・
288 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/20(水) 15:35:25.10 ID:tVN9l2N1o
すみません、時間が無くて今日は以上です

また明日続きを書きます、それでは!
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/20(水) 15:36:13.95 ID:w6AapN1/o
>>288
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/20(水) 15:53:43.82 ID:vgTUHMwlo
>>1来てた、乙!
無理しなくていいぞ
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/20(水) 16:30:14.13 ID:VknDoqUSo
なんか初カノ思い出した
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/20(水) 16:40:58.83 ID:GJ4Bz18No
この曲いいよね
「もしも道に迷う夜なら
        道標はこの愛」
恋愛ていいよね  戻りてー
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/20(水) 19:54:47.57 ID:TpLaGkwfo
短いよトオルぅ!
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/20(水) 20:10:48.83 ID:mwKxV+Fvo
毎日来てくれるだけでもありがたいじゃないか
295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) :2011/07/20(水) 23:31:41.76 ID:I55iS0MUo
ところでいま、話自体はドラゴンボールで言うとどのあたりなんだ?
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 00:02:36.77 ID:dcF+VKNIO
>>295
「亀」と書かれた石を探すあたり
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 00:40:54.73 ID:FwPUAJFxo
実は俺ドラゴンボール1巻しか読んでないから誰かジョジョ4部で例えてくれ
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 02:23:29.35 ID:7iBbcFHDO
>>297
丈太郎がクレイジーダイヤモンドに名前つけたあたり
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/21(木) 04:30:15.88 ID:w3GycLVqo
おつ!
続き楽しみにしてる!
300 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 08:02:39.83 ID:qeOzdRjyP
トオル召喚
301 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/21(木) 08:03:27.66 ID:3m82YKHIO
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
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302 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/21(木) 09:20:33.41 ID:iXj9qBj7o
さぁ一日の始まりだwwwwww
303 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/21(木) 09:39:26.95 ID:Fk9vIr1Fo
おは(ry
トオルに2つ質問
・リコさんや後輩はトオルが高校入る前に1年社会人をやってたことは言わなかった?
・部長と向井さんが天文部に入った訳
既出だったらすまん
304 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 09:48:47.75 ID:60gPcDaSO
>>303
> おは(ry
> トオルに2つ質問
> ・リコさんや後輩はトオルが高校入る前に1年社会人をやってたことは言わなかった?
> ・部長と向井さんが天文部に入った訳
> 既出だったらすまん


トオルじゃないが
質問1 日本語わかんない
質問2 そのエピソードは別に書く予定あり
305 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 09:50:35.88 ID:qeOzdRjyP
>>303
> おは(ry
> トオルに2つ質問
> ・リコさんや後輩はトオルが高校入る前に1年社会人をやってたことは言わなかった?


読み解けない
306 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:51:24.89 ID:nrkPP1tOo
おはようごじゃります・・・眠ってませんぞよ
全く寝れなかったぞよ
必死に書き上げたぞよ・・・

>>295
ちなみにワンピースで言うと今は、やっと空島編ww

>>303
リコさん、後輩連中はいつの間にか知ってたよ。多分誰かが言ったと思う
部長と向井さんの天文部に入った理由は・・・長いんだよね
だから、ちょっと別の機会でお話をさせてくださいww

あと、誰かが言ってましたけど、ユイが誰に似てるか・・・
えっとね、最近あの・・・比嘉なんとかって女の子、沖縄出身の子
あの子見た時、うわwwwwと思っちゃいましたww
まあ、正直あそこまで綺麗じゃないかもねww

まあ、長々と前置きをしましたが、本編どうぞ
307 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:52:56.45 ID:nrkPP1tOo
ゴールデンウイークに入り例年通りに山へキャンプに行った。
今年は靴を顔にぶつけられる心配は無い・・・俺がそう思っていると・・・

奴らはついて来やがった・・・

「いやあ、お前らが心配でな!!」
「僕が居ないと君達は何も出来ないだろ?」
そう言ってどこで聞き付けたのか集合場所の駅に部長と向井さんが現れた時には悪夢かと思った。
オマケに向井さんのカバンからは大量の酒が見えている。
二、三年生全員が俺に思い切り肘をぶつけて来る。分かったよ言うよ
308 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:53:55.23 ID:nrkPP1tOo
「あ、あのですね・・・き、今日は部活の行事なんで・・・部外者の方は・・・」
俺がそう言うが二人は「さあ、行くぞ!遅れんなよ!!」
「君達にキャンプがどう言う物か教えてやろう」
全く意に介さない。
二、三年生全員が俺を睨みつける。
いや、俺のせいかよ!!

結局奴らはついて来た。
そして夜には一年男子は思い切り酔わされてロッジ中に吐きまくると言う大惨事が起きたのだった・・・
てか、どんだけ暇なんだよ、この二人・・・
その後一年男子は向井、部長の名前を聞くだけで怯えてしまう程のトラウマを背負ったのだった・・・
309 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:54:53.18 ID:nrkPP1tOo
ゴールデンウイークが終わり、一息ついた頃だった。
ある日俺が仕事に行くと社長に呼ばれた。
「トオル君、もう一個別のバイトする気無い?」
そう言われる。
「え?バイト?」
「うん、ちょっと知り合いの人がね、バイトを探してるんだよ・・・休みの日だけでも良いから・・・無理かな?」
そう言われ俺は困った。

休みの日は唯一、ユイと二人きりに成れるチャンスだ。
それに受験勉強もしないといけない。
だが・・・社長には金を借りた大きな恩がある。
それに、金を稼げるのは悪い話では無い。
そしたらユイにも、もっと良い所に遊びに連れて行ってやれる。
迷った結果、俺はOKを出した。
310 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:56:30.00 ID:nrkPP1tOo
すると社長は「じゃあ明日、行ってみよう」そう言われ俺は新たなバイト先に行く事になったのだ。

翌日、俺は社長に連れられ駅の近くに行った。
「ここだよ」
そう言われ見ると、そこは「マルセイユ」と書かれた洋食屋だった。
「結構、美味しいんだよ・・・どうも、マスター。連れて来たよ」
社長に続いて俺も中に入る。
「おう、いやいや助かるよ」
中から泉谷しげるに似たオッサンが出て来た。
便宜上「シゲルさん」で。

俺はシゲルさんに挨拶をする。
311 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:57:31.66 ID:nrkPP1tOo
するとシゲルさんは俺をジロジロと見て、「ちょっと来い」そう言って厨房に連れて行く。
厨房の中に入ると、いきなりジャガ芋が入ったダンボールを指差して言った。
「皮、剥けるか?」
そう聞かれ俺は頷く。
「よし、手始めに五個剥いてみろ」
そう言われ俺は制服を腕まくりして、手を洗う。
多分、普通の高校生だから皮なんか剥けない、そう思ってるんだろう。
俺は少し驚かせよう、そう思い包丁を借りて五個の皮を丁寧に剥いた。

「どう?中々使えるだろ?」
社長がシゲルさんに言う。
俺も少し「どうだ?」みたいな表情でシゲルさん見る。
シゲルさんは黙って頷くと「うん、じゃあ明日から来れるかい?」そう言われた。

お、合格だな。
俺はそう思い「はい!」と元気良く返事をしたのだった・・・
312 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:58:34.45 ID:nrkPP1tOo
「え?洋食屋さんでアルバイト?」

ユイが電話口の向こうでそう言う。
「うん、まあ、休みの日だけなんだけど・・・社長の頼みでさ」
ユイが少し嫌がるんじゃ無いかと心配した。
だが・・・
「良いんじゃない!トオル君料理得意だもんね!」
その嬉しそうな声にホッとした。
「まあ、オーナーの人も認めてくれたみたいだし・・・ちょっと頑張ってみる、あ、でも受験勉強もちゃんとするよ」
「大丈夫、トオル君はちゃんと出来る人だから・・・私も食べに行ってみたい」
「うん、じゃあ、その時は俺が作ってやるよ!」

・・・そう言って俺は安心して笑っていた・・・
313 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 09:59:39.42 ID:nrkPP1tOo
翌日、俺が店に行くと既にシゲルさん始め厨房のスタッフの人が揃っていた。
俺は慌てて頭を下げる。
「あ、遅くなってしまいました・・・すみません!」
だが、シゲルさんや別のスタッフの人は「ああ、いや、遅れて無いから大丈夫」そう言って各々の作業をしていた。

厨房のスタッフはシゲルさんを入れて四人居た。
皆、何も言わずに黙々と作業を行っている。
俺はシゲルさんが貸与してくれた白衣に着替え何をしたら良いか分からずにボーッと立っていた。
するとシゲルさんが「ボーッと立ってねーで、なんかしろ」そう怒鳴るでも無く静かな声で注意する。
俺は慌てて何かをしようとするが、何をして良いか分からない。
314 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:00:57.04 ID:nrkPP1tOo
すると、スタッフの中で一見、哀川翔に似たコワモテの人が俺に近寄って来た。
「野菜の皮を剥いてくれる?」
そう顔に似合わない優しい声で言う。
「あ、はい!」
俺はそう返事をすると野菜が入ったダンボールに行き、その皮を剥いていく。
俺は仕事が有った事に少しホッとしながら、いつしか皮剥きに夢中になっていた。

どれ位の時間をそうしていたか分からないがシゲルさんが「おい!新人はどこに行った!!」そう叫んだ。
「あ、はい、ここに居ます!」
俺がそう叫ぶとシゲルさんは俺を見て「いつまで皮剥きに時間を掛けてんだ!仕込みが終わんねーだろ!」そう叫んだ。

え?結構速く剥いてんだけど・・・
315 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:02:10.65 ID:nrkPP1tOo
俺がそう思っていると先程の哀川翔が近寄り、「ちょっと変わろうか」そう言って俺から包丁を受け取ると凄いスピードで皮を剥き始める。

え・・・?
あっという間に沢山有った野菜の全ての皮を剥き終わってしまった。
「あ、皮は棄てないでね、それも使うから」
え?皮を?
俺が聞く間に哀川さんは自分の仕込みに移った。
俺は又もや何をして良いのか分からずにボーッと、突っ立ていた・・・

店が開店し、厨房の四人が凄いスピードで動き回る。
だが、俺はその輪の中に入れずに、ただ突っ立て邪魔なだけ。
一瞬皆の動きに併せて、俺も動き回ってみたが、なんかただの変な人みたいで辞めた。

ヤバい・・・なんか泣きそうになって来た。
316 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:03:45.60 ID:nrkPP1tOo
俺が目をウルウルとしていると、又もや哀川さんが俺を見て言った。
「皿洗ってくれる?」
やっと声を掛けられてホッとした俺はすぐに皿洗いをする。
皿やフライパンが山の様に詰まれている。
とにかく洗わないと・・・そう思い一生懸命洗うが・・・

「おい!フライパンねーぞ!早くしろ!」
シゲルさんの声が聞こえ急いで洗うと、「待った!!」そう哀川さんが叫ぶ。
「え?」
「卵のフライパンから先に洗う!」
え?卵のフライパンてどれ?
「皿ねーぞ!!」
又もや怒声が飛ぶ。

俺はパニックになって来た。
そして慌てて肘が皿に当たった瞬間に「ガシャーン!!」と言う音と共に床に皿の破片が散らばった。
317 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:05:12.49 ID:nrkPP1tOo
「す、すみません!!」
急いで頭を下げる・・・が、誰も何も言わない。
俺はどうして良いか分からずにいると「早く片付けろ!!そのままにしておく気か!!」又もや怒られ涙目になりながら割れた皿を片付ける。
手で拾おうとすると「ホウキとチリトリで!!手を怪我したらどうする!」哀川さんに言われホウキを持って来る。
あ、俺の事を心配してくれたんだ・・・
そう思い嬉しくなっているとシゲルさんが静かに言う。

「お前が血を流そうがどうだって良いが、その手で皿を洗うと皿に血が付く。そんなもんをお客様に出せねーだろ」
そう言われて益々凹む。
急いで片付けをして戻ると、若いスタッフが既に山ほど有った皿を洗い終えていた。
彼はそのまま黙って自分の作業に移った。
318 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:06:30.28 ID:nrkPP1tOo
そして俺は再び一人ポツンと取り残されたのだった・・・

シゲルさんが初日だからと言う事で、少し早めに店を上がらせてくれた。
家に帰ると、そのままベッドに俯せに倒れ込んだ。
そのまま俯せのまま顔を横に向けて電気スタンドをボーッと見つめる。
その時、電話のベルが鳴ったので俺は起き上がり電話を取る。

「お疲れ様〜・・・今日どうだった?」
ユイの明るい声が電話口の向こうから聞こえた。
「ん・・・あ、ああ・・・うん」
俺はそう曖昧な返事をする。
「元気・・・無いね?疲れた?」
「え?あ、うん・・・初日だからね」
「そっか・・・じゃあ今日はユックリ寝て・・・明日の学校遅れちゃダメだよ」
「うん・・・ありがとう・・・じゃあ」

そう言って電話を切る。
319 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:07:25.68 ID:nrkPP1tOo
切ってからコードレスの受話器を枕元に置き溜息をついた・・・

何も出来なかった・・・

俺は今まで皆に料理が上手い、そう言われ自分は料理が出来る人間、そう思っていたんだ。
所が、今日プロの技を見て・・・自分がどんだけアマチュアなのかを思い知らされた。

「はあ・・・」

俺は溜息をつく。
ダメだ・・・俺には無理だ。社長には申し訳無いけど・・・辞めよう。受験勉強も有るし・・・

そう思い俺はそのまま眠っていた・・・
320 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:08:40.62 ID:nrkPP1tOo
翌週、俺は何故か店に出勤していた。
それも、出勤時間の二時間前に到着する。
店にはシゲルさんしか居なかった。

「おはようございます」
俺がそう言うとシゲルさんは少し驚いて俺を見た後に「おう、おはよう」そう言って仕込みを始めた。
俺はすぐに白衣に着替えるとすぐにダンボールに入った野菜の皮を剥きはじめる。

プロみたいに速く出来ないなら、その分、早く作業を始めれば良い。
そう思って早く来たのだ。

何故俺は辞めなかったんだろう?
それは社長へ断りを入れるのが申し訳無い、と言う気持ちがあった。
だから言えなかった、と言うのは有る。

だが、それ以上に・・・悔しかったんだ。

なんかこのまま辞めたら負けた気がしてならなかったんだ。
だから、辞めるならちゃんと一人前の仕事を出来る様になってから辞めよう。
そう思った。変なこだわりなのかも知れないが・・・

ショボい俺にも極々少量のプライドが有ったんだよ
321 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:10:08.27 ID:nrkPP1tOo
その日は何とか皮を全て剥く事が出来た。
最後の方になると、段々コツが分かり少しスピードがついて来た。
だが、翌日には筋肉痛になったけどね。

皿洗いも素早く行う。
しかし皿洗いは前もってする事が出来ない。
その都度、汚れ物が渡されるからだ。
だから、どんなに急いでもシゲルさんから怒声が飛ぶ。
くそっ、泉谷しげるみたいにマジでウルサイ親父だ。

その日も又もやクタクタになりながら家に帰った。
翌日、筋肉痛に苦しみながら、俺は皿洗いをどうしたら早く成れるか授業中に考えていた。
効率よく皿を洗うには・・・学食に行き、おばちゃん達が皿洗いをしているのを見た。
そうか・・・作業工程を減らせば良いんだ・・・

俺はそう思い家に有る皿を全て洗う
322 :303 [sage]:2011/07/21(木) 10:10:22.53 ID:Fk9vIr1Fo
>>304-305
「後輩は」の後ろに「、」を打てばよかった
どうも

>>306
返レスどうもです
323 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:11:18.05 ID:nrkPP1tOo
段々、コツが分かって来た。
うひ!なんかすぐに試したいぞ、おい。

警備のバイトが休みの平日に洋食屋の仕事に入れない物だろうか?
そう思い、俺はシゲルさんに電話をしてみた。
シゲルさんは俺の頼みに一瞬黙った後に、「じゃあ・・・入って貰おうか」そう言われ嬉しくなった。

そして次回に入った時も二時間前に来て皮剥きを全て終わらせる。
その時は初めて時間が余った。
なので、他の人の作業で、俺が出来る事は無いかと見る。

その時に気が付いたのが、各々が使用する鍋やフライパン、包丁、ボール等が有るのだが、空いた瞬間に前もって洗えば、皿洗いの時間を短縮出来るのは勿論、使用する人が、道具の処理に気にする事無しに作業が出来るんじゃないか?
324 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:12:13.31 ID:nrkPP1tOo
そう思った俺はチョコチョコと動き回る。
だが哀川さんが俺を見て言った。

「気持ちは分かる・・・が、予測不能に動き回られると邪魔なんだ」

そう注意され凹む。
だがシゲルさんが叫んだ。
「おい、別にダメと言ってんじゃねーんだぞ!動きを予測して動けってこった!」
そう言われシゲルさんが俺を見る。

「分かったな、トオル!」

初めてシゲルさんに名前を言われた。
俺は嬉しくなり「はい!」と返事をしたんだ・・・
325 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:13:31.85 ID:nrkPP1tOo
店に入って一ヶ月が経過した頃、段々料理の世界のやり方が分かって来た。
料理の世界は誰も何も教えてくれない。
ただ、自分で考えて、そして全て見て覚えるんだ。
俺は一ヶ月が経過した時には皮剥きがかなり速くなっていた。
そして皿洗いも無難にこなす。

プロの料理人は大勢の客を捌かなければならない。
だからスピードが求められるのだが・・・
それだけでは無い事が、一ヶ月経過した時に思い知らされる。

ある日、シゲルさんが「トオル、賄いを食って帰れ」そう、俺が帰宅する時に言われる。

え?マジでラッキー。
よく考えたら一ヶ月経過したけど一度も料理を食べた事が無かった
326 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:14:19.54 ID:nrkPP1tOo
シゲルさんがナポリタンを出してくれた。
このマルセイユは名前こそフランス料理屋みたいな名前だが、その実は洋食全般なんでも出すんだ。

哀川さんが俺を見て「美味くて、腰を抜かすなよ」そう言う。
俺は「ハハ」と笑い、ただの冗談だと思いナポリタンを一口食べた。

その瞬間に・・・俺は衝撃を受けた。

え??え??
気が付くと俺は夢中でナポリタンを啜っている・・・
327 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:14:59.52 ID:nrkPP1tOo
そして全て食べ終わるとシゲルさんを見る。
シゲルさんは少し笑いながら「どうだ?」そう言った。

目茶苦茶美味い・・・てか、美味過ぎる・・・

味は濃く無いのに、しっかりと味が付いている。
この店が流行っている理由が分かった。
駅前で立地が良いだけじゃないんだ・・・

「腰抜かしたか?」

哀川さんにそう言われ俺は黙って頷いたのだった・・・
328 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:16:32.01 ID:nrkPP1tOo
季節はジメジメとした梅雨に入っていた。

ある日、シゲルさんから「明日、賄いを作ってみるか?」そう言われた。
賄いを作る。その時の俺は料理人の世界の事は、よく分かっていなかったんだが・・・
これは凄い事なんだよ・・・
俺はそんな事も知らずに単純に料理が作れる、そう思い喜んだ。
何を作ろう?そうだ、ハンバーグが良いな。
俺のチーズをかけたハンバーグは天文部の人達に絶賛されたんだ。
俺はそう思い、授業中からワクワクしながら店に行くのを楽しみにする。
店の人達の鼻を明かせたい。

「て、天才やー・・・おまはん、天才でっせー・・・」
そう言って何故か関西弁で驚くシゲルさんを想像していたんだ。
329 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:18:57.32 ID:nrkPP1tOo
店に行き、仕事を終えた後にシゲルさんに言われる。
「おい、トオル、賄いを作れ」

きた・・・!
俺は勢い勇んでハンバーグを作った。
自分で言うのは何だが、上手く作れたと思う。
出来上がりを皆の前に皿を置く。
すると哀川さんが「早いな・・・」そう呟いた。シゲルさんは何も言わない。
四人が一斉に食べ始める。
俺はドキドキしながら皆の反応を待った。

「て、天才でごわす・・・アンタ、十年に一人の天才だっぺ・・・」
そう、どこの方言か分からない言葉で言う哀川さんを期待した。

が、「ふーん・・・」哀川さんは、そう呟いただけだった。
シゲルさんは「よし、分かった」そう呟いた後に「まだ、賄いは早かったな」そう言われた。

え?

「賄いは、テストなんだよ、お前の腕の」
哀川さんが、そう言った後に「まあ、ダメだな」そのままロッカーに消えたのだった・・・
330 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:19:47.64 ID:nrkPP1tOo
ダメ・・・?
なんで??

俺は家に帰ってからも悩んだ。
何がダメなんだ???美味いじゃないか?
俺はそう思う。

皆、美味過ぎて嫉妬してるんじゃ無いのか?
だから・・・

・・・その時の俺はそんな傲慢な考えを持っていたんだ・・・
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/21(木) 10:20:19.94 ID:vK2VlM470
トオル先輩。おはようじょ!

今日もよろです
332 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:24:25.93 ID:nrkPP1tOo
「ここは・・・こうなるの、分かる?」

ユイが俺にそう言う。
「・・・うん」
「じゃあ、これは・・・?」
「・・・うん」

俺の言葉にユイが黙った。
しばらく沈黙しているユイに気が付きユイを見ると、ユイはジッと俺を大きな目で見つめていた。
「あ、ゴメン・・・」
俺がそう謝るとユイは両手で俺のほっぺを挟んだ。
うひゃひゃ、何て可愛いことをするんだ、うひ。

「どうしたの?何か心配事?」
俺のほっぺを挟んだままユイが首を傾げる。
「あ、ぎょめん・・・きゃんがえぎゅとってきょとは・・・」
「あ、ゴメン」
ユイがそう言って両手を離す。
333 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:25:37.78 ID:nrkPP1tOo
「いや、スマン、ちょっと考え事してて・・・」
「洋食屋さん・・・の事?」
「よく分かったね」
「だって最近、洋食屋さんの話ばっかりだもん」
ユイはそう言って笑った。
俺は、ユイを見てふと思った。
「なあ、ユイ・・・ハンバーグ食べたく無い?俺の」
「え、あ、うん・・・食べたいかな?」
「よし、じゃあ作るから待ってて」

俺はそう言って先日に賄いで作ったハンバーグをユイに出した。
「いっただきまーす」
ユイは嬉しそうにハンバーグを食べる。
「どう・・・?」
「うん!美味しい」
ユイは嬉しそうな顔をした。
334 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:26:43.02 ID:nrkPP1tOo
だよな?なんでダメなんだろう?
「ほんと、ちゃんとしたハンバーグだよ」

ん・・・?

俺はユイの言葉に何か引っ掛かった。
「ちゃんとした・・・?」
「うん、味付けも焼き具合もちゃんとしたハンバーグ」

・・・!

「なあ、ユイ」
「うん?」
「もしも、このハンバーグが店で出て来たら・・・どう?」
「店で・・・?」
「例えば、これが千円だったら?」
「え?ハンバーグが?高く無い?」

・・・分かったぞ・・・!

俺は再び一人で考え込んでいた・・・
335 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:27:23.06 ID:nrkPP1tOo
それから毎日、俺は一人で、ある料理を作り始めた。
何度も何度も作る。味を見ると、何かが違う。
何が足りないのかを必死で考える。

店で仕事をしながらシゲルさんや哀川さんの料理を覗き見る。
その度に二人は「仕事しろ!」と言うが、「見るな」とは言わない。

そうか・・・料理の腕は教わるもんじゃ無い・・・とは良く言うが・・・
本当に盗むもんなんだ・・・

俺はその時痛烈にその事を覚えたのだった・・・
336 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:28:03.75 ID:nrkPP1tOo
七月に入り期末テストに入る。

結果は上々だった。ユイのお陰で俺はかなり学力が伸びていた。
テスト期間はシゲルさんから、「お前の本業をキチンとやれ」そう言われ店に来る事を禁じられていた。
シゲルさんが、実はかなり良い人だと痛感したのだった。

だが、テスト期間も料理の事がかなり頭にチラついていた。
早く店に行きたかった。そして、賄いを作らせて貰いたかったんだ
337 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:29:15.26 ID:nrkPP1tOo
テスト明けに俺は急いで店に行く。
「おはようございます!」
俺が元気良く挨拶をするとシゲルさんは「ふん!」と鼻で笑い
「元気が良いじゃねーか」
そう言ってニヤついていた。
「はい!今日から休みなんで、目一杯働きますよ!」
「ほう、皿は割るなよ」
「割らないっすよ!あ、おはようございます!」
哀川さんが店に入って来たので挨拶をする。
「元気だねぇ、高校生は」
哀川さんは苦笑いを浮かべた。

「そんな元気の良い、トオルに・・・今日の賄いでも、お願いするかな・・・」

来た・・・!俺は胸が高鳴った。
「ん?どうした?やらないのか?」
俺は慌てて首を横に振る。
「やります!!!やらせて下さい!!!」

よし・・・遂に来た・・・!
338 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:30:22.92 ID:nrkPP1tOo
閉店後、シゲルさん、哀川さん、他の二名のスタッフが店に残り俺の賄いを待つ。

俺の料理にかなりの時間が掛かってしまった。
だが、全員が文句を言わずに待つ。
そして出来上がった料理をスタッフルームに運びこんだ瞬間に全員が驚く。

「ナポリタン・・・?」

そう俺はナポリタンを出した。
哀川さんが「お前・・・」そう呟くがシゲルさんが「まあ、良い・・・食べようや」そう言って全員が食べ始める。
俺はドキドキしていた。

どうだ・・・?

シゲルさんがフォークでパスタを巻き込みそれを口に運んだ・・・
ドキッ・・・!俺の心臓がパンクしそうな音を立てる。
他の人達もパスタを口に入れた。そして全員が黙って咀嚼する。
339 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:31:32.99 ID:nrkPP1tOo
シゲルさんが少し笑い哀川さんを見た。
哀川さんも目を見開いてシゲルさんを見る。
哀川さんは黙って更にパスタを啜り始めた。
シゲルさんも二口目を啜る。

「トオル・・・」
二口目を咀嚼し終えたシゲルさんが呟いた。
「・・・はい」
「これは・・・俺のパスタの味付けだ・・・」
「はい、そうです・・・!」
「だが、ちょっと俺より、塩を多めに使ってるな?」
「はい」
「なんでだ?」
シゲルさんの質問に俺はゴクッと生唾を飲み答える。

「今日は、非常に暑い一日でした。ましてや厨房の中は火を使う為に地獄の様な暑さです」

そうだ。夏の厨房はエアコンを点けていても、暑くてたまらない。
340 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:32:29.53 ID:nrkPP1tOo
「皆さん、水分をかなり補給していました。ですので・・・その分、塩分不足になるかと思い・・・塩を若干多めにしました・・・」

その言葉に哀川さんは俺を見つめて頷いた。
シゲルさんは「ふん!」と鼻で笑う。

「俺と同じ様に、全ての材料に下味をつけたのか?」
「はい」
「まあ、ただ時間を掛けすぎだ。下味は予め用意しとくもんだ。段取りが悪過ぎる」

そう言われ俺は軽く凹む。
341 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:33:12.91 ID:nrkPP1tOo
だがシゲルさんはそう言った後にニヤリと笑った。
「トオル!」
「はい!」
俺はシゲルさんを見る。


「明日からお前が客にナポリタンを作れ!分かったな!」


その言葉に俺は体中が震えた・・・
そして大きな声で「はいっ!!!」そう返事をしていたのであった・・・
342 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:38:08.95 ID:nrkPP1tOo
「結城貢って知ってるか?」

急に俺の隣に立ちシゲルさんが俺に聞いて来た。
「名前は・・・」
俺が野菜を用意しながら答える。
「あの人の言葉で『料理は愛情』って言葉があるんだけどな・・・」
「・・・はあ」
「俺は料理の極意は正にそれだと思うんだよ・・・」
俺はパスタを出してシゲルさんを見た。

「愛する人、大切な人に・・・美味しいと思って貰いたい・・・そう思って作るんだ・・・そしたら、どんなに手間を掛けても、その人の為に作れる筈なんだ・・・この世で一番の料理人は誰か知っているか?」

「いや・・・分かんないです・・・」
343 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:39:18.59 ID:nrkPP1tOo
「それはな、自分の小さな子供に料理を一生懸命に作ってやる・・・母親なんだ」

シゲルさんが俺を見る。

「母親は、子供の為に、肉を限界まで柔らかくしたり、小さく切ったり、素材を吟味したり・・・様々な工夫をするんだよ・・・自分の子供に食べて貰いたくてな」

そう言ってシゲルさんは腕組みをする。
「お前が最初に作ったハンバーグはマズくは無い・・・だが美味くも無かった」
その言葉に俺は黙って頷いた。
344 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:40:04.51 ID:nrkPP1tOo
「お前はテクニック自慢を俺達にしただけだ。だが、あのナポリタンは違った。あれはお前が俺達の事をしっかり考えて作ったんだ・・・俺達に喜んで貰おうと」

そうだ。俺はユイに言われ悟ったんだ。
本当に手間隙掛けて作った物ならば感動が生まれる位に美味いんだ。
ただのハンバーグでも千円を余裕で払える位の。
だが、俺の料理はただのテクニックだけだったんだ・・・
345 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:41:10.72 ID:nrkPP1tOo
「もしも・・・自分の愛する人が、この世で最後に一度だけ、料理を食べる事が出来るとしたら・・・お前はどうする?」
その言葉に俺は一瞬考えたがすぐに答えた。


「・・・自分で・・・自分で作ります・・・!」


俺の答えにシゲルさんは頷いた。
「そうだ・・・!俺達、料理人はそれが出来るんだよ・・・!」
シゲルさんはそう言って厨房から客席を見た。
346 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:42:37.85 ID:nrkPP1tOo
「だがな・・・普通の人には中々、それが出来ない・・・だから、その人達の代わりに俺達がやるんだ・・・!今、アソコの客はお前のナポリタンを待っている・・・ひょっとして、あの人がこの世で食べる最後の料理かも知れない・・・」

俺は客席を見た。

「あの人の為に、お前は全身全霊をかけて、料理を作るんだ・・・テクニックなんから要らない・・・!あの人がお前の最愛の人だと思え!!!」

俺はユイを思い浮かべた。

「最愛の人に、最後の料理を作ってやる・・・そう思って作れ・・・良いな!!」
「はい!!」
347 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:43:17.04 ID:nrkPP1tOo
ナポリタンを作り終えた俺は、そっと厨房の中から客席を見つめた。
客はカップルだった。
俺はその二人を俺とユイに置き換えて作った。

金が無い俺達二人。
その二人がなけなしの金で料理を食べに来たら・・・

そしたら絶対にその金の価値に見合った料理を出してやりたい・・・!

俺はドキドキしながら二人を見つめる。
348 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:44:39.75 ID:nrkPP1tOo
カップルは俺のナポリタンを啜った。
そして女の子は目を大きく見開いて・・・呟いた・・・!


「おいしいー!!」


俺は厨房で思いっ切りガッツポーズを取ったのだった・・・!!
シゲルさんも哀川さんも俺を見て笑っていた・・・




あの日、あの時、あの瞬間が、俺の運命を変えた第二の瞬間だったかも知れない・・・




俺の夢に・・・『料理人』と言うキーワードが増えた瞬間だったんだ・・・

349 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/21(木) 10:45:58.61 ID:nrkPP1tOo
今日は以上です

いや〜急ぎ足で書いたから疲れた〜

それじゃあ、また明日!
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/21(木) 10:53:20.45 ID:bpChqjDno
思わず感心して唸ってしまった
おつです、また明日。
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/21(木) 10:55:12.17 ID:8VyLehxYo
>>1乙!ナポリタン食いたくなった。
昔食った太めの麺にケチャップたっぷりのやつ・・・
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/21(木) 11:18:42.04 ID:E5MuECj2o
>>351
同じく
今日の昼飯はナポリタンにしようかな
353 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/07/21(木) 11:25:44.81 ID:q7zY9Z1ko
そしてあのナポリタンのコピペが生まれたのねwwww
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 11:27:33.20 ID:qeOzdRjyP
ここはとおるレストラン 人気メニューはナポリタン
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 11:58:38.17 ID:XHgccKyIO
パスタ食べたくなったwwww
おつかれさま!
続き待ってますねー
356 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 13:37:19.43 ID:MurLc7jIO
>>354
とっぴんぱらりのぷぅ
357 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/21(木) 14:38:28.10 ID:iq4jFMpVo
もし書き終わってその気があったらトオルの店教えてほしいなと思ったりした
まぁ2chには無理かも知らんけど
358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/21(木) 16:23:15.20 ID:zh6+VmXeo
トオル乙
ユイさんは比嘉愛未似なのか! すごい好みなんだがwwww

>ひょっとして、あの人がこの世で食べる最後の料理かも知れない・・・
>あの人の為に、お前は全身全霊をかけて、料理を作るんだ・・・
>テクニックなんから要らない・・・!あの人がお前の最愛の人だと思え!!!
>最愛の人に、最後の料理を作ってやる・・・そう思って作れ・・・良いな!!
料理人ではないけど接客業で働く者として心掛けたいと思った
359 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/21(木) 18:37:40.01 ID:tQwXHmL4o
プロの料理人で警備員の高校生
凄い肩書きだなww
360 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海) [sage]:2011/07/21(木) 19:35:59.39 ID:nc7dpv0AO
トオルの頑張りが本当に凄いわww

俺も見習わないと(っд`)
361 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 07:54:09.83 ID:SG/0TkbpP
トオル召喚
362 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/22(金) 08:00:10.84 ID:+rBN+fFwo
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
                       ::          ,′
                       ::i  :;     :;  i::
                       ::|          |::
                       ::l         |::
                         ::j            ::
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                       ::,′    /:: ::|     |::
363 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/22(金) 09:50:49.68 ID:bMfgV+UWo
さぁ一日の始まりだwwwwww
364 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/22(金) 09:53:25.44 ID:hF4ymVkGo
安心の流れwwwwww
もうお前ら結婚しろww
365 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 10:20:06.75 ID:o5OmZ2uDO
今日は夕方に来るかな?
366 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 10:57:04.34 ID:YDdbjRWKo
おはようございます
夏らしくなって来ました

それでは続きをどうぞ
367 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 10:58:26.45 ID:YDdbjRWKo
ある日俺が店で必死に仕込みをしていた。
すると哀川さんに「どうした?なんか張り切ってるな」そう言われた。
「え?そうっすか?」そう言いながら俺は張り切っている。
「今日、コイツの彼女と友達が二人で食いに来てくれるそうだ」
シゲルさんが、そうニヤけながら言う。

今日、ユイとリコさんが食べに来る事になっていた。
「もう〜シゲルさん、言わないで下さいよ〜」
そう言いつつ俺もニヤけている。
「お、そうなのか!じゃあ俺も下味を手伝ってやろう」
「あざーっす!」
俺がそう言ってルンルン気分で仕込みをしていると、客席係りのスタッフの人が俺の所へ来た。
368 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 10:59:18.14 ID:L4KMw7tIO
トオルも来たし一日が始まったな
369 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 10:59:59.56 ID:YDdbjRWKo
「トオル君、知り合いの人が来てるよ」
そう言ってくれる。
「あ、なんかすみません・・・」
そう言って俺は笑顔で客席を見た・・・


・・・瞬間に顔を強張らせた・・・

「どうした?」
哀川さんが聞いて来る。
「し・・・塩・・・」
「え?」
「塩撒いて!!!そして店を閉めて!!!」
「何を言ってるんだお前?」
「潰される!!!店が潰される!!」
「はあ?」

客席にはユイ、リコさん・・・


そして、奴ら二人が・・・いた・・・
・・
370 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:01:24.49 ID:YDdbjRWKo
俺はシゲルさんから特別に注文を聞いて来い、そう言われフラつきながら四人の元へ行く。

「いらっしゃいませ・・・」
その言葉に四人が俺を見た。
「あ、トオルくーん!」
リコさんが手を振る。
「きゃっ、白衣姿、似合う〜」
ユイが少し顔を赤くして言う。

「ようこそ、お越し頂きま・・・」
「京極さんの顔を立てて再度来てやったんだ、究極のメニューとやらを味わってやろう」
「山岡君!本当に大丈夫なんだろうね?!」
残り二名がウゼエ。
俺は無視して続けた。
371 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:03:15.59 ID:YDdbjRWKo
「ご注文をお伺いいたします」
「何がオススメですか?」
ユイがメニュー表を持ちながら少し顔を赤らめて尋ねる。
なんて可愛いんだ、この子は・・・あ、この子、俺の彼女だ。デヘヘ。

「オススメはこちらのナポリタンスパゲティーでございます。私がお作りさせて頂きます」
「あ、なんかトオル君、シェフみたい〜カッコイイ!じゃあ私はそれで!」
リコさんがそう言う。
「あ、私もナポリタンで・・・」
「畏まりました・・・えーっと・・・」

俺は部長、向井のコンビを見た。
「俺はテリヤキバーガーセット、スマイル抜きで」
「じゃあ、僕はトロわ握って貰おうかな、サビ抜きで」

お前ら草でも食ってろよ。
372 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:04:30.12 ID:YDdbjRWKo
俺は溜息をついて呟いた。
「じゃあ買って来るんで5時間程、お時間をくださーい」
「うおおおおい!!!ツッコミ適当過ぎんだろ!!・・・」
二人は喚きながら、結局ナポリタンを注文した。

「ナポリタン、四つ入りました!」
俺がシゲルさんにそう言う。
「よし、じゃあ、正に最愛の人を喜ばせる料理を作ってやれ!」
「はい!!」
俺は料理に取り掛かる。
そして出来た料理を四人に運んだ。

「わー!美味しそう!」
ユイとリコさんが嬉しそうに言う。
373 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:05:40.30 ID:YDdbjRWKo
「ただのナポリタンだろ?」
「本当に普通だな」
お前らにタバスコ二本丸ごと入れれば良かったよ。

だが食べ始めると四人が黙る。
そして・・・

「美味しい・・・え?何これ・・・?」
「これ、本当にトオル君が作ったの・・・?」
ユイとリコさんが俺を見上げた。
「喜んで頂けましたでしょうか?」
「うん!もう最高!」
その言葉に俺は涙が出そうになる。

オマケの二人を見る。彼等は何も言わずにバカスカと食べていた。
この二人が何も言わないって事は・・・

ツッコミ所が無いって事なんだ・・・
374 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:07:14.68 ID:YDdbjRWKo
俺はここ最近ずっと、料理人になりたい・・・そう思う気持ちが沸いていた。
店で俺の料理を出す度にお客さんが喜んでいる姿を見るからだ。
自分の料理が皆に喜ばれる・・・それは最高に気持ちが良い瞬間だった。
そして幸せな事だった。

俺は他の料理も作りたい、そう思いシゲルさんや哀川さんの料理を盗み見る。
そして家でも自分で作り練習をした。
俺は次第に上手くなり、ハンバーグも作らせて貰える様になった。
そうなると、もう夢中で料理にのめり込む。

俺は生まれて初めて・・・明確に将来像を考え始めていた・・・
375 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:08:22.68 ID:YDdbjRWKo
だが、その事はユイにも言って無かった。
ユイは俺に一緒の大学に行って欲しいと思っている様だ。
だから、中々言えない。
俺も出来ればユイと一緒の大学に入り、毎日一緒に過ごしたかった。
だが、料理人にも成りたい。その二つの事柄が頭でグルグルと周り続けていたんだ・・・

一応、俺の夢を語った人はいた。
それは警備の社長だ。

社長は俺の後見人だ。
それに金を借りていたからだ。
金はその時、かなり返済をしていた。
社長はユックリで良い、そう言われたがなるべく早く返したかったので生活費を削り返していた。
376 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:09:16.35 ID:YDdbjRWKo
俺が社長に料理人に成りたいと言ったのは、もう一つ理由がある。
それは警備のシフトを減らして店に入りたい旨を伝えたんだ。
社長が嫌がるかと思ったが社長は少し涙目になり、

「そうか・・・夢が見つかったか・・・!」

そう言って喜んでくれたのだ。

俺は凄く感激した。
俺は社長に「人が居ない時は必ず入ります」、と告げたが社長は「無理せずに夢に向かって進みなさい」そう言ってくれる。

そして「私も食べに行くよ」そうも言ってくれたんだ・・・
377 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:10:43.26 ID:YDdbjRWKo
夏休みに入ると茹だる様な暑さが続いた。

ある日、俺が店から帰ると血相を変えてケンタが俺の家に来た。
「ト、トオルさん・・・し、至急に緊急最高機密会会議を召集して下さい!!」
「なんだよ・・・血相を変えて」
「じ、実はですね・・・」
ケンタの話を聞き、俺は顔色を変え、すぐに最高機密会議を召集したのであった・・・

翌朝、ニ、三年が俺の家に集まる。
「集まって貰ったのは・・・他でもない・・・」
俺がそう言うと、ふと自分の物言いが眼鏡部長みたいだな、そう思う。

378 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:12:08.72 ID:YDdbjRWKo
「奴らが・・・夏合宿の日程を聞いて来ました・・・!」
そのケンタの一言に全員が肩を落とす様に下を向いた。
「お、恐れていた事が・・・」
ヨウイチが呟く。
「ゴールデンウィークの二の舞になりますね・・・」
タカコが溜息をつく。
「まあ・・・とにかく、全員あの二人との接触を避ける事!!とにかく夏合宿が終わるまでは電話にも出るな!!分かったな!!」
俺がそう厳命すると全員が頷いた。
が・・・時既に遅し・・・であった・・・

「おう!!トオル!居るかー??」
そう言って向井さんと部長が俺の家に入ってきたのだ。
全員がビクッとする。

なんてタイミングが悪い人達なんだ・・・いや、彼らにとっては良いのか・・・
379 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:13:26.31 ID:YDdbjRWKo
「いや〜外は暑いよ・・・こう暑いと海に行きたくなるよね!」
部長の言葉に俺達全員が顔を下に向ける。
「うん?どうしたお前ら?」
「あ、いや・・・そ、そうだ、向井さん向井さんの大学って学園祭とかって有るんですか?」
俺が必死に話題を変え様とする。
「有る。所で夏と言えば海じゃん?」
ぐぬうう・・・何て話題がブレない人なんだ・・・
「今年はいつ行くんだ?」
全員が完全に下を向いた。
「・・・へ?」
俺が代表して答える。
「いや、行くんだろ?」
「え・・・?こ、甲子園っすか・・・?」
その瞬間に俺の顔にスラムダンクの4巻が飛んできた。
スラムダンクが凶器になるなんて・・・
380 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:14:48.77 ID:YDdbjRWKo
「海だよ!!夏合宿の海に決まってんだろうが!!」
「あ、ああ・・・う、海っすね・・・」
俺が顔を押えながらそう呟く。
「今年は霊的な物を沢山感じられるよ〜」
うるせーよアンタは。

「う、海ね〜・・・ヨウイチ君・・・どうだったかね・・・?」
俺がヨウイチに振る。
ヨウイチは「あ、駄目だ・・・俺、軽く熱があるわ・・・ちょっとクーラーに当たり過ぎだわ・・・」そう言って逃げる。
「サモハン・・・」
だが、サモハンはトンガリコーンを耳に挿しこんでいる。

ヤバイ・・流石に後輩には振れない・・・
俺はそう思い、いきなり空気と同化する様に気配を消し去った。
俺は石。その辺に落ちている石。
そう小石なんだ・・・そう思い全ての気配を消し去る。
381 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:16:14.76 ID:YDdbjRWKo
俺達三年がそうして逃げていると向井さんは「ふん!」と言うとマルオにずかずかと近寄る・・・
マルオは一気に恐怖で顔を強張らせる。

は!マズイ!!一番弱い所を攻められる!!なんて戦術に長けた人だ!!

「おい・・・」
「ひゃ・・・ひゃい」
向井さんの言葉にマルオは怯えながら返事をした。
「ま・・・まるおおおお!!!」
俺がそう叫びながら駆け寄ろうとするが、部長が俺の前に立ちはだかった・・・
「ふ・・・僕を抜けると思うのかね・・・?」
俺は部長に取り押さえられる。

「選べ・・・大人しく話すか・・・オデコに『チンコ』と言う日焼け跡を付けられるか・・・」
「ひいいいいい!!!!!」
マルオは叫んだ・・・そして・・・

「は、八月八日ですうううう!!!」

奇しくもその年の甲子園の開会式と同じ日だった・・・

382 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:17:36.17 ID:YDdbjRWKo
ミンミンと蝉の鳴き声がやかましくなり、八月を迎えた。
俺はいつものユイの家の近所にある公園の木陰のベンチに座りユイを待つ。

あちぃ・・・
手うちわで自分を扇いでいる時にユイが夏らしい白いワンピース姿で現れる。
うわ〜なんて可愛いんだよ・・・

「おはよう」
ユイが笑顔で言う。
「おはよう」

俺は丸見えのユイの肩に頬を擦り寄せたくなる衝動を抑えながら呟いた。
俺達二人はユックリ歩み出し、二人で色んな話をしながら空にある入道雲を感じていた
383 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:18:58.25 ID:YDdbjRWKo
「でさー、向井さん達、結局夏合宿に来るみたいなんだよな〜」
俺がそう言うとユイは笑う。
「向井君達もトオル君達と一緒に夏を満喫したいのよ」
「だけど暇なオッサン達だよ」
俺は溜息をつく。
「私も・・・」
「ん?」
ユイは少し恥ずかしそうな表情で言う。
「トオル君と・・・一緒に海に行きたいもん・・・」
ユイの言葉に俺はドキンと胸が鳴り顔を赤らめた。
ユイも顔を赤くする。うはww

「じゃ、じゃあ・・・」
俺はユイを見る。
「じゃあ、ユイも・・・リコさんと一緒に・・・夏合宿に来る・・・?」
384 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:19:44.57 ID:YDdbjRWKo
俺の言葉にユイは一瞬俺を見上げ再び顔を下げる。
そして顔を横に振った・・・

え?
「そ・・・そうじゃ無くて・・・」

ん?
ユイは顔を真っ赤にしながら続けて呟いた・・・
385 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:20:52.16 ID:YDdbjRWKo
「ふ、二人で・・・海に・・・行きたい・・・」


うひゃあああああ!!!!!
俺の顔が沸騰して煙りを上げた。ユイも煙りを上げている。
俺達は黙り込んで二人で頭から蒸気を上げ続けていた。
そして、俺が呟いた・・・
386 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:21:45.86 ID:YDdbjRWKo
「い、行こうか・・・」
ユイは黙って頷いた。


「と、泊まりで・・・」


その言葉にユイは益々顔を赤くしたが・・・
俺を見上げ微笑みながら答えた・・・



「・・・うん!」



ありゃりゃりゃりゃー・・・俺・・・大人の階段を・・・昇っちゃうよー・・・

その日から俺はユイとの海の事しか頭に無かった。
387 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:22:43.37 ID:YDdbjRWKo
夏合宿に向井、部長のコンビが来ようがどうだって良い。
ユイと二人で海に行く計画を練る事で頭が一杯だったんだ。
俺達は夜に二人で流星群を見ようと思い、8月の12日に海に行く事を決定した。

ユイは「夏合宿のすぐ後で大丈夫?」と聞かれたが全く問題無い。
奮発して綺麗な温泉付きの旅館に泊まる事にした。
俺も店でのバイト代が良い為に少し金に余裕が有ったからだ。

夜中に二人で海辺で流星群を見よう・・・
いや、あれかな・・・へ、部屋から・・・布団の中で・・・

うっはあああああ!!!!!

仕事中にそんな事を考えていた俺はいつもより包丁捌きが激しかった・・・
388 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:23:50.25 ID:YDdbjRWKo
夏合宿が始まり、俺達は海に向かう。
向井さん達がいつものテンションで騒ぎまくっていたが俺はどうでも良かった。
夏合宿よりも二人で行く海が楽しみでならない。

だからいつもの様に向井さんにドラゴンスープレックスで海に投げられ様が、部長に怖い話をされ様が俺は仏の様な笑みを浮かべていたんだ。
夏合宿中も指折り数えて海に行く日を楽しみにする。
夏合宿で夜に寝る際にヨウイチに言われる。
「なんか、嬉しそうだなお前」
その言葉に俺はドキッとしたが、気持ち悪い笑みを浮かべてヨウイチを見るだけだった。
389 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:24:31.59 ID:YDdbjRWKo
フフフ・・・俺・・・大人の階段、上がっちゃうんだ・・・

ヨウイチにそう言いたかったが何とか押し止めた。
ヨウイチは気持ち悪そうな表情で俺をみつめていた・・・

皆が眠りにつくが俺は中々眠れない。
寝床から見える月を見る。

ユイ・・・もうすぐ帰るからね・・・帰ったらすぐに・・・二人で海だ・・・!

俺は月明かりに照らされながら・・・ユイの事を考えていた・・・

390 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:25:06.76 ID:YDdbjRWKo
だが・・・



結局俺達は海に行く事は無かった・・・


ユイのお母さんの容態が悪くなったからだ・・・








そして、それは俺達二人の運命を大きく変える、キッカケになったんだ・・・

391 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 11:26:20.78 ID:YDdbjRWKo
とりあえず、ここまでっす

まあ何時も通りんに中途半端なんでww
もし可能ならば今日中にもう一回書きたいと思います

じゃあ!
392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 11:28:15.09 ID:4hb0+NMso
なんてこった!シット!
寸domeかよ!
393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/22(金) 11:29:35.98 ID:+rBN+fFwo
ふう・・・青春か、楽しかったよな
顔も思い出せないほど昔のことだけどww

つづき楽しみに待ってるぜ!
394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 11:29:55.70 ID:AqXUEGFDO
いつも楽しみに見てます。乙。
395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/22(金) 11:51:42.11 ID:dHfBmUCro
こっから鬱展開か…
恐いよおおおおおおおおおおおお
396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 12:05:39.45 ID:hE6NJpbZo
やっぱりか…
397 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 12:08:30.75 ID:o5OmZ2uDO
変態成分たりない
398 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 12:26:35.84 ID:SG/0TkbpP
ふぅ・・・
399 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/22(金) 14:48:35.79 ID:hF4ymVkGo
楽しい嬉しいから、いよいよ鬱展開か…
いやぁぁぁぁぁー

気になるけど無理なく書いてね
おつかれさま
400 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/22(金) 14:53:13.20 ID:foIwIXkvo
ハイジに例えたらロッテンマイヤーさんが活躍する辺りに突入か…
401 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:00:02.38 ID:YDdbjRWKo
お待たせ!!
とりあえず書き上げたから投下します!
疲れた〜
402 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:02:25.96 ID:YDdbjRWKo
お母さんの容態の悪化でユイから海に行けない旨を伝えられたのは夏合宿から帰って来た日だった。
ユイは病院から「ゴメンね・・・」と元気が無い声で言う。
俺は凄く残念では有ったが、仕方が無い。
「俺も病院に行くよ」そう言うがユイは「大丈夫」それだけ答えた。
ユイに何か有ったらすぐに連絡をしてくれ、と言い俺は電話を切る。
海に行けないのは残念だが、それ以上に俺はユイが心配だったんだ・・・
403 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:03:30.52 ID:YDdbjRWKo
お盆は店が休みになり、俺は警備のバイトに入る。
ユイは病院でお母さんに付きっ切りなので家に居ても仕方が無いからだ。

何度か夜にユイの家に電話を入れたが虚しくコール音が響くだけでユイは電話に出る事が無かった。
警備の仕事も無い日は一日家で勉強をしながら、高校野球をボーッと眺める。
正直、勉強に手がつかない。
それは料理人になる、と言う夢が出て来た事とユイの事が頭に引っ掛かっていたからだ。

お盆が過ぎ、高校野球も終わりを告げる頃に向井さんから電話があった。
「皆で花火を見に行くけど・・・お前どうする?」
向井さんの遠慮がちな声を聞いたのは初めてだ。
向井さんもユイの母親の事を聞いているらしい。
俺は「すみません・・・ちょっと行く気持ちになれないっす」そう言う。
向井さんは「そっか・・・何か有ったら連絡くれ」それだけ言ってくれた。
404 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:04:23.72 ID:YDdbjRWKo
それから毎日夏休み中は朝から晩まで店に入った。
ユイと会えないにも関わらず・・・いや、会えないせいなのか、俺は料理に集中していた。
とにかく料理の腕を上げたい・・・それしか考えていなかった。
それには有る理由があった。
だが出来る事なら、その理由は考えたく無い事だった・・・
だが、現実問題として・・・それは考えなければ・・・ならない事であった・・
405 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:05:27.53 ID:YDdbjRWKo
ユイから久しぶりに電話が有ったのは二学期の始業式の日だった。

「久しぶり・・・」
ユイが元気の無い声で、そう言う。
「うん・・・」
二人共に少し黙る。

「なんか・・・ゴメンね・・・あれから電話をして無くて・・・」
「いや、仕方が無いよ・・・」
俺がそう言った後に少し間を置いてユイが呟いた。
「あのね・・・」
「・・・うん」
「一つ・・・お願いが有るんです・・・」
ユイが改まる。

「お母さんに・・・会ってくれない・・・ですか?」
「うん・・・?」
「お母さんがね・・・一度・・・トオル君に・・・会いたいって・・・」

そう言われ俺は少し迷った後に「分かった・・・」そう告げたのであった。

406 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:06:40.30 ID:YDdbjRWKo
俺が病院に行ったのは、その翌日であった。
言われた病室に向かい、部屋の前でノックをする。
すると「はい」と言うユイの声が聞こえてスライド式のドアが開いた。
中からユイが現れて俺を見る。

「・・・ありがとう」
小さな声でユイが呟いた。
ユイはかなり痩せていた。そして、目が赤い。元気が無い。それは当然だ。
自分の母親の体が悪いんだ。元気の訳がない。

「どうぞ」
そう言われ中に入ると病室にはベッドが一つあり、そこには鼻にチューブが差し込まれ、点滴類を腕に差し込まれている一人の女性が横たわっていた。

ユイの母親だ。
407 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:07:41.80 ID:YDdbjRWKo
俺は「失礼します・・・」そう呟き中に入り、ベッドの脇に行くとユイの母親が起き上がろうとした。
ユイが慌ててそれを支えに行く。
するとユイの母親はユイに「大丈夫・・・」そう小さな声で言う。

そして「・・・ちょっとアナタは・・・外にいなさい・・・」そう言った。
ユイは心配そうな表情を浮かべて俺を見る。
俺は小さく頷いてユイを見た。
ユイはまだ心配そうでは有ったが、「何かあったらナースコールして・・・」そう言って外に出て行った。

ユイが部屋から出ると母親は小さな声で「ユイの・・・母でございます・・・」そう言って少し顔を下に向けた。
俺も「始めまして・・・トオルです」そう頭を下げる。
408 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:08:44.14 ID:YDdbjRWKo
母親はベッドの隣の椅子を手で示す。俺はその椅子に腰掛けた。

「・・・早く、お会いしたかったのですが・・・こんな体ですので・・・遅くなりまして・・・申し訳ありません・・・」
力の無い声で母親はそう言った。俺は恐縮して首を振る。
「いえ・・・こちらこそ・・・ご挨拶が遅れまして申し訳ありません・・・」
俺の言葉に母親は微かに笑った。

「ホント・・・好青年ですね・・・ユイからいつも・・・アナタの事を聞いておりました・・・凄く優しくて・・・そして一生懸命な人だって・・・」
なんか恥ずかしくなった。
「それに・・・ご両親が居ないのにしっかり生きてらっしゃる・・・とも」
「そんな・・・普通ですよ・・・あ、すみません、顔は普通以下っすけど・・・」
俺の言葉に母親はまた笑った。
409 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:09:57.11 ID:YDdbjRWKo
「良い顔をしてらっしゃいますよ・・・」
母親はそう褒めてくれる。それは世辞が過ぎます。
俺は母親を見た。凄くやせ細り、顔色が凄く悪い。だが、ユイの面影があり、元気な時はかなりの美人だったはず。

「トオル・・・さんなんですよね・・・?」
突然そう言われ俺は母親を見る。

「ユイに・・・お金を貸してくれたのは・・・」
「あ・・・」

俺は顔を下に向ける。ユイから聞いていた。
母親に心配掛けない様に、バイト先から借金をした事にしていると・・・
俺もそれの方が良かった。変に感謝されたら面倒くさかったからだ
410 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:10:53.72 ID:YDdbjRWKo
だけど・・・

「あの子が嘘をついている事はすぐに分かりました・・・でも、リコちゃんからね・・・聞いたんですよ・・・リコちゃんは昔から、よくお喋りする子だから・・・ウフフ・・・」
母親が悪戯っぽく笑う。俺も笑った。
母親は笑いを止めると俺を見て、そして頭を下げた。

「・・・本当に・・・感謝してもしきれません・・・ありがとうございます・・・もっと早くにお礼を言うべきでしたが・・・諸事情で遅くなってしまった事をお詫び致します・・・」

その言葉に俺は慌てて首を振る。
「いえ・・・俺が勝手にした事なんで・・・その・・・辞めてください・・・」
俺の言葉にやっと母親は頭を上げた。
411 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:11:59.73 ID:YDdbjRWKo
「今日は・・・その感謝とそして・・・もう一つだけ・・・お願いがありまして・・・」
母親は俺にそう言って俺の手を取った。

「ユイと・・・仲良くしてあげてやってください・・・」

その言葉に俺も母親の手を取る。
「もちろんです・・・ずっと仲良くしていきますよ・・・」
俺の言葉に母親は笑った。
「あの・・・それで俺からも一つだけ・・・」
俺がそう言うと母親は「?」と首を傾げる。

「あ、あの・・・病室に、こんなもの持ち込んで良いのか分からないんですけど・・・」
俺はカバンからタッパーを出した。
「これは・・・?」
「あ、これ・・・俺が作ったナポリタンなんです・・・俺・・・」
412 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:13:07.01 ID:YDdbjRWKo
そう言って少し迷って続けた・・・
「俺・・・将来・・・料理人になりたいんですよ・・・!」
そう母親の目を見て言う。
「あ、だけど・・・まだユイには言ってなくて・・・その・・・これは・・」
俺の言葉に母親は目を細める。
「分かりました・・・内緒って事ね」
「あ、すみません・・・」
「いえいえ・・・なんかワクワクしちゃうww」
母親は又もや悪戯っぽく笑う。

「あ、それでですね、お母さんのお見舞いを、と思い作って来ました・・・」
「まあ・・・私に・・・?」
「はい、一応、全て柔らかくして塩分や味付けも薄くしてますけど・・・それでも、ちゃんと味は付いてますので・・・」
413 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:14:09.97 ID:YDdbjRWKo
「あ、じゃあ・・・頂いちゃおうかしら」
「あ、でも・・・お医者さんの許可を・・・」
母親は首を横に振る。
「大丈夫ww内緒でね・・・!」
母親がそう言って笑った。凄くお茶目な人だった。
俺はフォークを渡す。
母親はゆっくりとナポリタンを食べる。

どうだろう・・・?
母親は俺を見てビックリした表情を浮かべた。

「凄く・・・美味しい・・・」
俺はホッとする・・・
俺は母親の細い腕を見た。

彼女は今まで一生懸命ユイを育てて来たんだ・・・
414 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/22(金) 16:14:55.97 ID:D5FvikU4o
もう泣きそう
415 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:15:07.79 ID:YDdbjRWKo
色んな事が有ったんだろう。
そして病気になってもユイの事を一番に考えてきた・・・
ユイの幸せを願い続けて来たんだ・・・

そして今も・・・

俺は親の愛を考えた。
シゲルさんが言っていた『世界一の料理人』と言う言葉・・・
正に・・・

母親の愛はその子供に取って『世界一』なんだな・・・
416 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:15:59.62 ID:YDdbjRWKo
病室を出るとユイが見送りに来てくれた。
母親は「今日はトオルさんとユックリして来なさい」そうユイに告げたんだ。

ユイと二人で歩く。九月の夕方はまだ空に入道雲が広がり、夏を感じさせてくれた。
俺とユイは黙って公園のベンチに座る。
ツクツクホウシが鳴きユイが突然下を向きながら呟いた。

「お母さんね・・・もう駄目なの・・・」

その言葉に俺は何も言えずに下を向く。
「そしてね・・・本当はずっと前からお母さんはお医者さんから聞いてて・・・それを私に黙ってたんだ・・・」
417 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:16:54.94 ID:YDdbjRWKo
だろうな・・・何となく分かった。
母親が俺を呼んだ事も、ユイがそれに応じた事も・・・
「お母さんは・・・ユイがその事を知っている事は・・・?」
俺の言葉にユイが首を横に振る。
「お母さんがお医者さんに言ったの・・・私に黙っている様にって・・・でも、お医者さんも、私を不憫に思ったらしくて・・・言ってくれた・・・」
「そっか・・・」

俺は再び黙る。ユイも沈黙した。
ツクツクホウシの鳴き声が耳に入る。
夕日が辺りを赤く染め上げている。


ズッ・・・そう鼻を啜る音が聞こえた。
418 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:17:56.87 ID:YDdbjRWKo
俺がユイを見るとユイは泣いていた。
「ユイ・・・」
「お母さんは・・・!」
ユイは顔を両手で押さえる。

「お母さんは・・・私に・・・私を悲しませない様に・・・私を苦しめ無い様に・・・一人で・・・一人で・・・」

ユイ嗚咽をあげた。
「・・・ユイ・・・」
俺も下唇を噛み締める。


「お母さん・・・おかあさーん・・・うああああああ!!!」


火がついた様にユイは泣き始めた。
そして俺の肩に顔を付ける。
俺もユイを抱きしめた。ユイは泣きじゃくる。ずっと泣いていた。

419 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:19:23.61 ID:YDdbjRWKo
「ユイ・・・」
俺はユイを抱きしめる事しか出来なかった。

ユイは一人で堪えていたんだ・・・
自分の母親が自分に長く無い事を隠している・・・だから母親の前では泣けない。
ずっと一人で苦しんでいたんだ・・・
ずっと一人で堪えていたんだ・・・

母親は娘に対して悲しませたく無いと言って沈黙をする・・・
娘も母親を悲しませたく無い為に沈黙をする・・・
お互いがお互いを思い・・・そしてそれは結果として両者に辛くなっていたんだ・・・

ユイはずっと・・・俺の胸で・・・泣き続けていた・・・

ただ、ツクツクホウシの鳴き声だけが俺の耳に残っていた・・・
420 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:20:33.76 ID:YDdbjRWKo
ユイの母親が亡くなったのは、それから二週間後だった。
享年四十五歳。若すぎる死であったと思う。

葬儀の朝、ヨウイチが俺を迎えに来た。
「うっす・・・」
制服姿のヨウイチがそう言う。
「うっす」
俺も制服を着てそう応えた。
途中でサモハンと合流して俺達は葬儀会場に向かう。
会場に到着すると、既に向井さんと部長が濃いスーツと黒ネクタイを締めて待っていた。
「おはようございます」
「うっす」
二人も元気がない。後からケンタ、マルオ、タカコ、マリの四人も現れた。
そこにリコさんが現れ「先に・・・ユイの所に行こうか・・・」そう言って皆でユイの元へ行く。
421 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:21:42.15 ID:YDdbjRWKo
ユイは俺達を見ると一礼をした。思ったよりも気丈に振舞っている。
「本日はお忙しい所・・・ありがとうございます」
そう言う。
俺達も挨拶をすると、手分けして受付係等を行った。

俺も自分の両親の葬儀を思い出す。
あの時は小学生で何をどうすれば良いか分からなかった。
そして、まだ自分の親が死んだ事に実感が湧かない。
棺の中の両親を見てもただ眠っているだけなんじゃないかと思う。
慌しく葬儀が終わり、初七日の法要をすまし、一週間が過ぎた頃位から・・・実感が湧く。

あ、俺の親・・・死んじゃったんだなって・・・
俺があの時一番最初に思った事は・・・

あ、もう俺普通の生活が送れないんだな・・・だったんだ。
422 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:22:41.08 ID:YDdbjRWKo
ユイは恐らく既に実感が湧いているんだろう。
ユイの今の目の色が、あの時の俺と同じだからだ。
俺は受付をしながらユイを見る。ユイは葬儀に参列している人に頭を下げている。
ユイ・・・
俺はずっとユイを見つめていたのであった・・・


葬儀が終わると、向井さんが「側にいてやれ」そう言って俺に言う。
俺は黙って頷いてユイが焼き場から帰るのを待った。
焼き場からユイが戻って来るまで俺は葬儀場にいた。

ユイが焼き場から戻り来訪者に挨拶を終えると、お母さんの骨壷を抱きながら一人葬儀場の椅子に座った。
そして祭壇にある自分の母親の写真を見つめていたのであった。
423 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:23:49.09 ID:YDdbjRWKo
俺はジッと葬儀場の入り口からユイを見る。
ユイの背中が小さく見えた。
ユイはしばらく母親の写真を眺め続けた後に、クスン・・・と泣き始め・・・

そして小さな嗚咽を漏らしながら泣いた。
顔を押さえ泣き続ける。
背中が小刻みに揺れていた。
その小さな背中はずっと震えていたのであった。

俺はユックリとユイに近づき、そして隣に腰掛ける。
ユイは俺に気が付き一旦顔から手を離すが、再び泣く。
俺はユイの母親の写真を見た。
まだ病気になる前の写真なんだろう。とても綺麗な女性が写っていたのであった。

しばらく泣いたユイは顔を上げると・・・俺を見て呟いた・・・


「一人ぼっちに・・・なっちゃった・・・」


そして哀しく微笑んでいた・・・
424 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:24:38.47 ID:YDdbjRWKo
初七日が終わった頃、九月も終わりとなっていた。
俺は店で働き続ける。

懸命に働いた。
俺にはある決意があった。それを実行する為にも必死で働く必要があったのだ。

葬儀から俺は毎晩ユイの家に料理を作りに行く。
最初は食欲がなかったユイだが、次第に食べるようになってきた。
そしてそれに伴いユイの元気も出てきた様だった・・・

そんなある日、俺がユイの家に料理を作りに行くとユイが「星・・・見に行こうか・・・」そう呟いた。
俺は頷き、二人で望遠鏡を持って高台に向かう。
425 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:25:37.96 ID:YDdbjRWKo
高台から二人で星を眺める。
カシオペア座が綺麗に見えた夜だった。

「トオル君・・・」
「うん・・・?」

星を見た後に二人でそのまま芝生に寝転んでいた時だった。
ユイの言葉に俺が反応する。

「ごめんなさい・・・最初に謝っておくね・・・」

ユイがそう呟く。
俺はユイが何を言い出すか予想がついていた。
俺は夜空を見つめていたままだった。


「私・・・大学を・・・辞める・・・」


俺は驚かない。
426 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:26:40.71 ID:YDdbjRWKo
「お母さんが死んで・・・一人で大学は中々行けない・・・難しいから・・・だから・・・」
ユイの言葉に俺は下唇を噛み締める。
「トオル君にも・・・早くお金を返さないといけないし・・・大学でのほほんと生活する訳にはいかない・・・」
「行けるよ・・・」
俺はユイの言葉を遮る様に言った。
「え?」
ユイは俺を見る。
「行けるよ・・・だって俺、親が居ないのに高校に行ってるもん」
俺の言葉にユイは下を向く。
「私は・・・トオル君みたいに強くない・・・」
「じゃあ」
再び俺はユイの言葉を遮る。
427 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:27:27.33 ID:YDdbjRWKo
「じゃあ・・・夢は・・・諦めるの?」

俺の言葉にユイが黙る。
「俺さあ・・・俺は中学を出るとすぐに働きに出た。両親が居ないし、働くしか無い、そう思ったんだ」
ユイは俺を見た。
「夜間学校や通信制の高校が有る事を知っていた・・・だけどそれに行く気持ちが全く無かったよ・・・だって・・・」
俺はユイを見る。

「だって・・・何の目標も無かったから・・・」

ユイは俺を黙って見つめていた。
428 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:28:41.91 ID:YDdbjRWKo
「何の目標も持たずに・・・ただ生きているだけ・・・毎日を無駄に過ごすだけの日々ってさ・・・」
俺は芝生の草を触る。

「何にも・・・楽しくないよ・・・何にも感じないよ・・・ただ、思うのは・・・周りを羨むだけ。同い年で高校に何も考えずに行けている事を羨むだけ・・・親に肩車をされて喜んでいる子供を見て羨むだけ・・・いや、少し憎しみすら覚えてしまうんだ・・・」

ユイが俺を見つめていた。
「そんな・・・日々なんだよ・・・」
俺はユイを見る。


「俺が・・・ユイに出会うまで・・・俺が君に出会うまで・・・そんな生活だったんだ」


ユイは俯いた。
429 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:29:27.32 ID:YDdbjRWKo
「俺は君に出会って・・・高校に入って・・・初めて人生を生きる事が出来た・・・初めて幸せを感じる事が出来た・・・それは・・・『夢』が出来たからなんだ・・・」

俺はユイを見つめる。ユイは俯いていた。

「君と・・・一緒に・・・生きて行きたい・・・そんな『夢』が・・・」

ユイが顔を上げた。

「君とね、一緒に生きて・・・そして子供を作って・・・俺の・・・俺達だけの・・・『家族』を作る・・・」

ユイは俺を見つめ続ける
430 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:30:33.66 ID:YDdbjRWKo
「そして、普通の生活を送るんだ・・・」
ユイが顔を前に戻し夜空を見上げた・・・

「春には・・・家族でお花見に行って・・・?」
ユイの言葉に頷く。
「キャンプに行って・・・子供の運動会に出て・・・秋には芋ほりに行って・・・」
俺の言葉にユイが続ける。
「そこに、花火も加えて・・・」
「もちろん、プラネタリウムにも行くんだ」
「海にも行ってね・・・楽しい事を一杯経験させて上げたい・・・」

ユイが呟く。
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 16:30:59.16 ID:SG/0TkbpP
リロードリロードリロードリロード
432 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:32:23.58 ID:YDdbjRWKo
「そう普通の子供の人生を送らせる・・・」
「でも中学生になったら普通の子供みたいに・・・少し鬱陶しがられてね・・・」
「そう・・・反抗期の子供に俺が叱る・・・」
「でも、言う事を聞かないんだよね?」
「そうそうwwそれで俺がユイに泣きつく・・・」
「泣きついちゃ駄目でしょww」

俺達は笑った。


「・・・そんな・・・そんな普通の家庭を・・・俺達が味わう事が出来なかった・・・普通の家庭を築くのが・・・俺の『夢』だよ・・・」
「・・・うん」


ユイは夜空を見ながら頷く。
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/22(金) 16:33:09.42 ID:5y/oLqavo
俺が許す
童貞処女のまま今すぐプロポーズしろ
434 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:33:27.11 ID:YDdbjRWKo
俺は少しユイを見た後に続けた。

「・・・でさ・・」
「え?」
「俺・・・もう一つだけ・・・夢が増えたんだよ・・・」
「・・・何?」

俺はユイを見つめた。

「俺・・・ユイと同じ大学に・・・行かない・・・」
「・・・うん・・・」

ユイは普通に頷いた。

「あれ・・・?驚かない・・・?」
「分かるよ・・・だってそんな気がしてた・・・」

ユイは俺に微笑む
435 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:34:18.24 ID:YDdbjRWKo
「そっか・・・うん・・・俺は・・・料理人に・・・なりたいんだ・・・!」
「・・・うん」
「うん・・・そして、いつか俺はね・・・店を持ちたいんだ、自分の店・・・自分が料理を作ってお客さんに喜んで貰う・・・」
「トオル君なら叶えられるよ」
「ありがとう・・・それでね・・・高校出たら・・・すぐに今の店で雇って貰う事になった」
「そう・・・なの・・・?」
「うん・・・オーナーのシゲルさんが『お前なら雇ってやる』って言ってくれて」
「そっかぁ・・・良かったね・・・!」
436 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 16:35:02.33 ID:SG/0TkbpP
>>433
> 俺が許す
> 童貞処女のまま今すぐプロポーズしろ


すでにしてる
437 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:35:16.86 ID:YDdbjRWKo
「だからさ・・・」
俺は起き上がりユイを見つめた。




「だから・・・卒業したら・・・俺と・・・俺と結婚してください・・・!」
「え・・・?」





ユイは驚いて俺を見つめる・・・
438 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:36:19.32 ID:YDdbjRWKo
「俺が一生懸命働くから・・・ユイはそのまま大学に行って欲しい・・・そして自分の『夢』を叶えて欲しいんだ・・・!」
「トオル君・・・」

「一人ぼっちじゃ・・・無かったら・・・大丈夫だろ・・・?二人で支えあって・・・そして家族を持って・・・お互いの『夢』を叶えるんだよ・・・」

ユイは顔を下に向けた。


「結婚してください・・・必ず・・・必ず俺は君を支えます・・・そして・・・幸せにしてみせます・・・」



439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 16:36:19.34 ID:SG/0TkbpP
2回目キター
440 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:37:29.92 ID:YDdbjRWKo
俺の言葉にユイは鼻を啜り始める。

「・・・だめ・・・」
「え??」

俺はユイの言葉に焦る。
するとユイは俺に泣きながら笑って俺を見た・・・



「二人で支え合うんでしょ・・・?だから私が幸せになるんじゃなくて・・・二人で幸せになるの・・・!」
「ユイ・・・」


ユイはそのまま俺の胸に顔を付けると呟いた・・・
441 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:38:18.79 ID:YDdbjRWKo
「一人ぼっちじゃ・・・無くなった・・・」

俺はユイを抱きしめる。

「うん・・・もう一人ぼっちじゃないよ・・・俺も」
「うん・・・」

ユイは俺に顔を向けると笑いながら言った。

「ふつつか者ですが・・・末永く・・・よろしくお願いします・・・!」

俺達笑う。そして、抱き締め合った・・・




秋の夜空の下で・・・互いにに『家族』が生まれたんだ・・・

442 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/22(金) 16:39:02.57 ID:YDdbjRWKo
今日は以上です

すみませんがまだ続きますねww
長々申し訳ないっす

それではアッシはこれで!
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 16:39:42.90 ID:SG/0TkbpP
これだけ新着連打したのは久しぶりだ
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/22(金) 16:40:15.28 ID:avHKPkXOo
目から汁が、、、
乙!
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/22(金) 16:41:05.92 ID:+rBN+fFwo
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                               _,-'"|.   |ミ|   |ミミミ|
             _,. -'' " ̄~゙三=-_、_    _,.-'"   |.   |ミ|   !ミミミ|
          ,,.-''" r _、      三三タ_,.-''"      |   |ミ|  ,.彡ヾミ|
        /    i {ぃ}}       _ニ/        -=三|  」ミヒ彡彡イミヾ
       /,.、     `--"      ニl     -=ニ三=-''レ彡ミミr'"   |ミミミ|
       l {ゞ}    i        .ニl==三三ニ=''"   ,>'"|ミ|    |ミミミ|
      .l `" i_,,...-''|           ニ`=-=i'"       |   |ミl,..-=彡ヾミ|
     _,.-!    !  i         -ニ三三/         L.. -ニヾ|ヾ彡'='''"
      l´,.- l    \/        -ニ三三/        ヾ-‐''"
  _.  ! ri l\       __--三三三='"
  j'‘´l `´ | !  ` ミ三三三三三=''"
 i',.. '´}  | |
  l,.. r´   '´
   }
すげえぇ、ていうか泣いちゃったじゃないか。

連投お疲れ様、
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/22(金) 16:43:52.05 ID:D5FvikU4o
もう空島は越えてるよね?
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 16:47:12.64 ID:/nNI0I4Lo
普段ROM専なんだが・・・・
号泣してカキコだーーーーーーー
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/22(金) 16:51:30.27 ID:FtWBMCyIO

そして、ありがとう
449 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 17:00:48.54 ID:TOslYd5po
いい話すぎて泣けた
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 17:13:45.63 ID:Pzr0Q9g2o
いつも期待してるよトオルのナポリタン食べたい!
ていうかワンピースはまだ完結してないから、あ、トオルの人生まだ続いてるからあってるっちゃあってるのか
ちなみに最新刊62巻で空島は32巻で終わりだ
まだ、半分…
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/22(金) 17:38:14.76 ID:bJYS16i2o
そりゃ楽しみだw

いつも楽しませていただいています。ありがとうございます。

どうかご無理のないペースで・・・と言いつつ、続きがたのしみでしようがないです。
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/22(金) 19:06:08.64 ID:HvSQiHujo
オッサン泣いちゃったよ

まだまだ続けてくださいww
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/22(金) 19:54:49.04 ID:7X0imDYIO
夢っていいよな
俺もう27…

戻りてーぜちくしょー
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 20:47:30.37 ID:Ov4C5YjDO
オバチャンもほんわかしたわ
トオルもユイもいい
あとその他のみなさんも
455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/22(金) 20:51:07.65 ID:oxtBdtUBo
今年30だってのに涙が止まらないよぼー!!!!!
旦那、家、安定した生活
すべてを捨てさせて、そのすべてを俺は奪った
そんな彼女と俺は今、同棲してる

うわぁぁあ!!
純愛で涙が止まらない…
456 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/22(金) 20:55:34.81 ID:Y4i6DSjIO
それはそれでいいんじゃないか
おまいさんも彼女も後ろめたいところはあっても幸せなんだろ?
その気持ちが純愛なんじゃないか
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/22(金) 23:46:32.17 ID:3yPM+5I/o
つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚
458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/23(土) 00:16:23.75 ID:3dDrtgIto
くそっ!目から汗が…
トオルもユイも今現在幸せな生活が続いてることを願うよ
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/23(土) 00:18:44.52 ID:d5595tSDO
>>455の話も聞いてみたいわ
460 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/23(土) 06:58:34.96 ID:XICUqEoEo
>>459
機会があれば話すよ
彼女が働きだしたら時間できるだろうから、そん時にでも
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/23(土) 07:38:23.39 ID:V45nbNcTo
トオル召喚
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/23(土) 07:44:14.66 ID:msRXcQa4o
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
                       ::          ,′
                       ::i  :;     :;  i::
                       ::|          |::
                       ::l         |::
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昨日は連投でお疲れだと思うので、ゆっくり待ってやってください。
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/23(土) 07:47:35.49 ID:ojUXykGXP
>>461
お前誰だ
464 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/23(土) 08:00:55.52 ID:V45nbNcTo
>>463
あ、同一人物だったのかwwwwwwなんかごめんwwwwww
465 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/23(土) 16:57:29.75 ID:nXFOEcj/0
トオル召喚

466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/23(土) 17:19:15.16 ID:QYctMA/IO
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
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           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
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                       ::/    〉┴r      ::
                       ::,′    /:: ::|     |::
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/23(土) 17:23:26.08 ID:/aBBnm7bo
次にトオル来るのは明日かな?
毎日楽しみにしてるから、ゆっくりまったりじわじわとお願いします。
468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/23(土) 18:01:57.76 ID:clytZB2AO
土日は来ない事もあったような……。
まぁトオルのペースでゆっくり頼むわぁ。
469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/24(日) 11:35:26.04 ID:H7Fq4Z580
トオル召喚
470 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/24(日) 11:36:29.35 ID:iS5JBQbwo
飲食業は土日がかきいれ時だろうから。
じっくりと降臨を待ちますか。
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/24(日) 11:37:12.72 ID:iS5JBQbwo
なんかゴメン…
幼女st
472 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/24(日) 11:47:32.99 ID:0uV0lxlWo
 (;`・ω・)  。・゚・⌒) ナポリタン作るよ!!
 /   o━ヽニニフ))
 しー-J
473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/24(日) 13:01:12.51 ID:rPCN8dUIO
鉄壁の流れがw
474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/24(日) 13:01:38.49 ID:rPCN8dUIO
鉄壁の流れがw
475 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/24(日) 13:02:04.96 ID:rPCN8dUIO
鉄壁の流れがw
476 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/24(日) 13:02:33.81 ID:rPCN8dUIO
鉄壁の流れがw
477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/24(日) 13:14:21.48 ID:Ka6UJbMLo
鉄壁の流れがw
478 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/24(日) 13:20:14.87 ID:O50FWrY+o
ほんまゴメン…
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/24(日) 15:20:44.55 ID:DgLEAiL0o
あんま気にすんなよ
どんまい
480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/24(日) 22:37:29.80 ID:VnlcsysTo
2日見ないと流石に待ち遠しいなww
481 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:19:44.34 ID:+Tn8n/c3o
お待たせしました・・・
ちょっとトラブルがございまして・・・

では続きをどぞ
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/25(月) 00:20:46.53 ID:SijdNaPgo
おおう
みたら丁度来たーーーーー
wwktk
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 00:21:19.06 ID:zx3hCh5Yo
おお この時間までいて良かった
484 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:21:56.30 ID:+Tn8n/c3o
「え??!!!」
全員がそう叫び固まる。

俺の部屋に向井さん、部長、ヨウイチ、サモハンにケンタとマルオと言った旧天文部男子メンバーで居る時だった。
俺は再度皆に告げた。

「いや、その・・・卒業したら・・・俺、結婚します・・・」

その言葉に向井さんが、ポコッと俺の頭を叩いた。
「あ、いや・・・」
俺が頭を押さえながら言うと、部長がポコッと頭を叩いた。
「え・・・あの・・・」
ポコッ。ヨウイチが俺を叩き、そのままサモハンも叩いて来る。
「いや、だから・・・」
再び向井さんが叩き、部長が叩いて・・・いつの間にか皆に俺は目茶苦茶に叩かれる。

「・・・よーし!分かった!!もう・・・もう良い・・・」

俺がそう声を上げた時にマルオがタイミングを外して俺に蹴りを入れたので、キレてみた。
マルオが泣く。
485 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:23:45.03 ID:+Tn8n/c3o
「マジでか!!!!」
向井さんの第一声がその声だった。
「は、はい・・・」
「ユイさんも・・・OKくれたのか・・・?」
「うん・・・」
ヨウイチの言葉に俺は頷いた。
すると全員が顔を見合わせて「やったな、おい!」そう言って向井さんが俺の頭を叩く。
「おめでとう!」
部長も叩いた。
そしてヨウイチ、サモハンが叩き始め・・・又もや俺は皆からボコボコに叩かれる。
「よ、よーし・・・わ、分かった・・す、ストーップ!!!」
俺の声に又もやマルオがタイミングを外して蹴りを入れた。
俺はマルオのケツを何度も蹴り上げる。
マルオが再び泣いた
486 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:25:42.54 ID:+Tn8n/c3o
向井さんが突然言う。
「よーし、こうなったら・・・アレだな・・・」
「え?なんすか?」
ケンタが向井さんに尋ねる。
「宴じゃああああああ!!!!」
あ、やっぱり。

結局、その場にユイが呼び出され、リコさん、タカコ、マリもやって来た。
タカコは「おべでどうごじゃいまず〜」と泣きながら飲んでユイに言っていた。
部長は小声で俺に「やった?ねえやった?やったの?ねえやった?」と聞いて来る。
ヤダ・・・超ウザいこの人。

向井さんは大声で俺達に聞く。
「でー??子供はいつ作るんだー???」
その瞬間にユイの顔が沸騰した
487 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:27:09.23 ID:+Tn8n/c3o
「そーよねー、子供を作らなきゃねえ」
リコさんが乗ってきた。ユイは益々顔が爆発する。
「卒業してすぐだと・・・早くて来年ですね」
マリが眼鏡を光らせながら、そう言う。
ユイは既に溶け出していた。

「あ、いや・・・まだ・・・ちょっと・・・」
俺がそう言うとマルオが笑った。
「あれ?作り方知らないんすか?」
俺はマルオのケツを何度も蹴り上げた。
マルオが泣きながら転がって行く。

全員が俺達を祝ってくれた。
全員が俺達の結婚を喜んでくれたのであった・・・
488 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:28:45.52 ID:+Tn8n/c3o
警備の社長にも結婚する旨を告げた。
社長は「おめでとう!」そう言って喜ぶ。
石田さんも俺の肩を抱き喜んでくれる。
石田さんは「飲みに行くぞ!」そう言って俺を連れて店を回った・・・

シゲルさんにも結婚する報告をした。
シゲルさんは俺の報告を聞くと頷いて言う。
「前にも言った様に、俺の料理の基本は『愛情』だ。愛が無い奴の料理は上手く無い」
そう言って俺を見ると「しっかり、嫁さんを養えよ!」そう言って笑った。
哀川さんは「俺も結婚したのは高校を出てすぐだった」そう言う。
「家庭を持つ、と言うのは大変な事だぞ、しっかり働けよ!」
哀川さんは俺の頭をポンポンと叩きながら笑ったのだった・・・
489 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:30:14.07 ID:+Tn8n/c3o
学校行事も体育祭が終わり、文化祭も終わり日々が流れていく・・・
秋が過ぎて冬になる。

俺とユイで初めてのクリスマスを過ごそうと思っていたが、クリスマスは店が忙しくそれ所では無い。
ユイにその旨を伝えると「お仕事を頑張って」と言ってくれた。
淋しい思いをさせて申し訳ない、そう思いながらクリスマスディナーの地獄の様な忙しさを終えて家に帰ると、向井さんを始め、全員が俺の家でクリスマスパーティーを行っていたのであった。
全く、ここを誰の家だと思っているんだよ・・・そう思うが俺は嬉しかった。

結局、高校三年間、俺はクリスマスに淋しい思いをする事は無かったからだ。
490 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:31:48.59 ID:+Tn8n/c3o
そして、日々は流れて行く・・・

俺は全力で一人前に成るべく頑張った。
段々料理も色んな物を作らせて貰える様になる。
もちろん、まだまだシゲルさんに怒られるし、哀川さんにも注意を受ける。
だが、それすらも俺に取ってはありがたかった。
自分をドンドン磨いて行けるからだ。
あの頃の俺は本当に真綿の様な吸収力で色んな物を吸収していったんだ・・・

年が明け1月を終えると学校が休みになる。
ヨウイチ、サモハンは入試を控え大変そうだった。
俺は二人の為に合格祈願のお守りを購入する。
そして試験の日に二人の為に仕事をしながら祈った。

二人は見事に第一志望の大学にそれぞれ合格を果たしたのであった・・・
491 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:33:21.06 ID:+Tn8n/c3o
二月も終わりに近くなり、柔らかで暖かい風が吹く頃、俺達の卒業式が行われた。

卒業式を終えて教室に行き、卒業証書を貰い外に出る。
すると、「トオルさーん!!」と言う元気な声が聞こえた。
そこには天文部の一、二年が俺を出迎えてくれた。

「ご卒業、おめでとうございまーす!!」

そう言って後輩達が頭を下げる。
俺は照れながら、「あ、ありがとう・・・」そう言って返礼をした。
ヨウイチ、サモハンも現れ皆が俺達を祝う。

「トオルさんは、もう社会人か・・・」
マリがそう呟く。
「まあ、一足先に税金を払う立場になっとくよ」
俺がそう言って笑った。
492 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:35:16.26 ID:+Tn8n/c3o
「トオルさん・・・」
その言葉に振り返るとタカコが目をウルウルさせながら俺を見ていた。
「おう、タカコ・・・」
俺はタカコに微笑む。
「し、幸せに・・・なって下さい・・・」
タカコの言葉に俺は頷いた。
「ああ・・・ありがとう・・・タカコも・・・」
俺はそう言って一瞬、言葉を止めて再びタカコを見る。

「タカコも・・・幸せになれよ・・・!」

その言葉にタカコは少し泣き、そして笑顔を俺に向けると・・・

「はい・・・!」

そう返事した。
493 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:36:50.10 ID:+Tn8n/c3o
皆で騒ぎながら校門を出る。
校門を出た時に、俺は振り返った。

もう・・・ここに来る事は・・・無いんだな・・・

その時、色んな思いが走馬灯の様に駆け巡る・・・
最初にこの学校に入学した日・・・
そしてヨウイチとの出会い・・・
天文部への入部・・・
ユイとの再会・・・
初めてのキャンプ・・・
皆と過ごした日々・・・

いつも、ダラダラしていて・・・そして下らない事で笑っている日々だった・・・

だけど、だけどそれは・・・

掛け替えの無い・・・そして大切なダイヤモンドの様な日々だった・・・
494 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:38:39.68 ID:+Tn8n/c3o
俺は下唇を噛んだ。
すると、ヨウイチが俺の肩をポンと叩く。
「ん?」
俺が涙目になりながら振り返るとヨウイチが両目を閉じている。
そして親指で有る方向を指差した。
そちらを見ると・・・

何故か向井さんと部長が酒を両手に持ちながら俺達を見ていた・・・

「どんだけ暇なんだよ・・・」
俺の言葉にヨウイチは「絶対に来ると思ったよ・・・」そう言って溜息をつき俺を見る。
「まあ・・・俺も思った」
俺の言葉に俺とヨウイチは顔を見合わせ吹き出した。

最後まで・・・俺達らしい・・・高校生活だったよ・・・!
495 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:40:11.30 ID:+Tn8n/c3o
その晩の飲み会は凄まじかった。
ユイとリコさんも現れ、何故か全員で夜の高台へと酒を持って行く。
そこで酒を飲みながら芝生に寝転がり、そして何故か歌を歌った

。誰が歌い出したかは分からないが、チェッカーズの『星屑のステージ』
この話が少し古い話と言えども、あの当時ですら、その歌は既にかなり古い歌だった。
だから何故、その歌を歌ったのか覚えていない。
ただ、歌詞が俺とユイにリンクされて俺はユイを見て泣きそうになった。

そして誓ったんだ・・・絶対にユイを幸せにする・・・と。
何が有っても、あの小さな手を離す事は無い・・・と。

そう夜空の星に誓いを立てたんだ・・・
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/25(月) 00:40:48.62 ID:1bLfXlVqo
今日は以上です
497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/25(月) 00:42:09.71 ID:W/BhhjnO0
>>496
勝手に終わらすなwwwwww
498 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:42:19.16 ID:+Tn8n/c3o
三月に入り、俺とユイは二人で住む為の新しい家を借りた。
2Kの小さなアパート。
家を借りる際の保証人には警備の社長とシゲルさんがなってくれた。
本当に二人には世話になりっぱなしだ。

「おい、このエロビデはもう要らねーだろ!」
向井さんが大量のエロビデを抱えながら、俺にそう叫ぶ。
「ぬあああああ!!!出すなああああ!!!!」
俺は向井さんに叫んだ。
荷造りをしているユイはそれを見て顔を赤くして固まる。
「あら、ご主人、あんなエロい物を大量に持ってらっしゃるわよ
」リコさんが皿を詰めながらユイにニヤニヤ笑う。
「あんな物は必要無いですよねぇ、もう」
マリが眼鏡を光らせてユイに意味深に話し掛けていた。
「え?もうって事は・・・」
タカコが顔を赤くしながらユイを見る。
ユイは真っ赤な顔をしてプルプルと横に顔を振る。
499 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/25(月) 00:43:26.90 ID:F/koFjHDO
今日は以上って言った瞬間に我が人生を終えますwwwwwwwwwwwwwwwwww
500 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:43:55.59 ID:+Tn8n/c3o
「仕方が無い・・・それは僕が預かっておこう」
何故か部長が鼻血を垂らしながら言う。
「じゃ、ジャンケンしませんか・・・?」
マルオも鼻血を垂らしながら言う。

「そんなもん別にイランでしょ」
「だよな」
ケンタとヨウイチの言葉に部長とマルオが二人を睨みつけていた。
サモハンは俺の家に有った食材を吟味している。

俺とユイの引っ越しを皆が手伝いに来てくれていた。
皆でワイワイガヤガヤしながら引っ越しを終えると、全員で向井さんと部長の奢りで焼肉を食べに行く。

俺とユイが「いや、俺達が・・・」そう言うが二人は「るせー!!黙れ、この親無しが!!」と酷い事を言いながら払う。
だが、それが照れ隠しなのは全員が分かっていたんだ・・・
501 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:46:20.14 ID:+Tn8n/c3o
新居に引っ越したのは俺だけでユイはまだ、前の家に住む。
何と無く式が終わるまでのケジメかと、俺は勝手に考えていた。

そして・・・桜が舞い散る四月の第一土曜日・・・

「おい、用意出来たか??」
ヨウイチが俺の家のドアを開けた。
「あ、いや・・・ネクタイが・・・」
俺は慣れないネクタイ結びに手間取る。
「しかたねーな、おい」
そう言ってサモハンが俺のネクタイを結ぶ。
「す、すまん・・・」
「シャキッとしろよ、一世一代の晴れ姿なんだから」
「は、はい・・・」
俺は物凄く緊張をしていたんだ。

家から出ると、スーツ姿の向井さんと部長が車で迎えに来てくれていた。
「ほれ、早く乗れ」
二人に促され俺は車に乗る。
「ユイは?」
「あ、先にリコさん達と式場に入ってます・・・」
「よし、飛ばすぜえええ!!!」

向井さんがアクセルを全開にぶっ飛ばして式場へと向かった・・・
502 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/25(月) 00:47:46.12 ID:1bLfXlVqo
ちくしょう…寝られねぇじゃねぇか
503 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:48:16.05 ID:+Tn8n/c3o
三ヶ月前の1月の事だった。
警備の社長から呼び出され俺は警備会社に向かう。
社長は「まあ、座りなさい」そう言って俺を応接室のソファへ促す。
すると社長は俺に聞いた。
「結婚はいつするんだ?」
その言葉に「あ、いや、式はしないです・・・金も有りませんし、それに未成年なので婚姻届も二人が成人してから出そうと思っています」
「ふむ・・・まあ、婚姻届に関しては私もそれで良いと思うよ・・・だが」

社長はそう言って俺を見ると懐から封筒を取り出した。

「これで・・・披露宴とは言わなくても、式だけはしなさい。ユイ君にせめてウェディングドレスを着せてあげるんだ」

504 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:49:32.35 ID:+Tn8n/c3o
「え・・・あ、いや・・・良いっすよ・・・そんな」
「トオル君・・・」
社長が俺の目を見る。

「婚姻届も出さない、式も上げないじゃあ・・・ケジメがつかないよ。それじゃあただの同棲と変わらない」
「・・・でも・・・」
「式を上げなさい。そして自覚を持ちなさい。ちゃんと夫婦に成ると言う事を・・・『家族』に成ると言う事を・・・!」

社長はそう言って俺に金を強引に押し付けた。
俺は断り切れずに社長の好意を受けとったのだった・・・
505 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:50:51.74 ID:+Tn8n/c3o
俺達を乗せた向井号がチャペルに到着する。
俺は着替える為に控室に向かった。
着替えを終えて花嫁の控室に向かう。
ドアをノックすると、リコさんが現れ俺のモーニング姿を見て「おー・・・よく似合ってるじゃんトオル君!」そう言って笑う。
俺は照れながら「あっざっす」そう言って中に入ろうとするとタカコが出て来て「ストップ!」と言った。
「え?」
「まだ着替え中です!新郎さんはちょっと、お待ち下さい!」
そう言ってドアを閉められた。
506 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:51:58.14 ID:+Tn8n/c3o
仕方なく俺は阿保面を晒して一人控室の前で待つ。
しばらくしてマリがドアを開け「どうぞ」せう笑いながら言われ中に入る。
中に入ると白いウェディングドレスの裾が見え・・・

そしてドレスに身を包んだ・・・ユイが現れた・・・

俺はユイのドレス姿に目を見開き呼吸をするのを忘れる位に見とれてしまった・・・

「・・・どうですか・・・?」

ベールに包まれた顔を赤く染めてユイが俺に尋ねる。
俺は気の利いた返事も碌に出来ずにただ、首を縦に振るだけ。

その姿を女子三人がニヤニヤしていて眺めていた・・・
507 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:53:10.64 ID:+Tn8n/c3o
チャペルには皆が集合している。
警備会社の社長を始め、シゲルさん、哀川さんに店のスタッフ一同。

皆が集まる中で石田さんがユイの父親代わりとしてバージンロードを歩いて来た。
そして石田さんより俺に引き渡され、俺とユイが二人で神父さんの前に歩いて行く・・・
俺は物凄く緊張していた。
指輪の交換をした後に、ユイの顔を覆っているベールをゆっくり、めくり上げた・・・

そして、俺達は永遠を誓う為の・・・キスをしたんだ・・・
508 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:54:50.48 ID:+Tn8n/c3o
チャペルから俺達が出ると盛大なフラワーシャワーに出迎えられる。
そしてユイの投げたブーケは・・・タカコの元へ行ったのであった・・・
何故か部長が「きぃぃぃ!!!アタイが欲しかったのにぃ!!」そう悔しがる。
キモいから辞めろよ。
皆からの祝福の中・・・俺達の結婚式は終わりを告げたのであった・・・


その後、俺達は向井さん主催のパーティーを開いて貰い、皆からグイグイと飲まされる。
俺は二回程、トイレに吐きに行った。
そしてドチラも肉食恐竜の匂いがプンプンする向井、哀川の二人が飲み対決を行っていた。
軍配は年の功か哀川さんの僅差勝利で終わる。
だが、それにより向井さんと哀川さんの仲が良くなったのが俺の不安の種になったのであった・・・
509 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:56:44.48 ID:+Tn8n/c3o
パーティーがお開きとなり、俺とユイの二人は皆に見送られ新居へと到着した。
別れ際に「程々にな」ヨウイチがそう言う。
「ネットリだぞ、ネットリ」部長が俺に親指を立てた。
「明日、感想を聞かせてね〜」最後のリコさんの一言で顔がマグマ化したユイがカチコチのまま家に入る。

いざ、二人キリで家の中に入ると、凄く緊張して来た。
「あ、えと・・・あ、明日はお互いに・・・ゆ、ユックリしような・・・」
「う、うん・・・や、休みだもんね・・・」
ぎこちない会話。
「あ、さ、先に・・・風呂・・・は、入る?」
「え、あ、ト、トオル君・・・さ、先にど、どうぞ・・・」
俺達のぎこちなさは臨界点を突破していた
510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/25(月) 00:57:52.72 ID:1bLfXlVqo
ふぅ…
511 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:58:13.22 ID:+Tn8n/c3o
風呂上がりに俺が髪を乾かしながら外に出るとパジャマ姿のユイが部屋の真ん中でペタンと座りドライヤーで髪を乾かしている。
俺はドキドキしながら、その隣に腰掛けた。
ユイは髪を乾かしながら俺を見て言った。
「ちょっと待ってね・・・後で貸すから」
「あ、俺は髪が短いから大丈夫だよ」
「え?そうなの?」
ユイにそう言われ俺は酔い醒ましを兼ねて夜風に当たる為にベランダに出た。
しばらくするとドライヤーの音が止まったので、ユイに声を掛ける。
512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/25(月) 00:59:24.82 ID:W/BhhjnO0
>>510
お前は色々な意味で自重しろwwwwww
513 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 00:59:58.37 ID:+Tn8n/c3o
「終わった?」
「う・・・うん・・・」
「じゃあ、ちょっと電気を消してくれないか?」
「え?で、電気を・・・」
「うん」

俺の言葉にユイは恐る恐る電気を消した。
俺はユイを手招きする・・・そしてユイがベランダに出て来た。

俺はユイに笑顔で夜空を指差した・・・
ユイがユックリ夜空を見上げると・・・

そこには、春の満天の星空が広がっていた・・
514 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 01:01:13.31 ID:+Tn8n/c3o
ユイが呟く。

「綺麗・・・」
「だろ・・・実は、このアパートを決める時にさ・・・周りの夜の明かりを確認しに来たんだ・・・そしたら暗かったから・・・だから、ここに決めたんだよ」

俺が夜空を見つめながら、そう言った。

「凄い・・・!」

そう言ってユイは目を輝かせる。
「結構、やるっしょ」
俺の言葉にユイは「・・・うん・・・!」

そう言って俺の左腕に手を回す。
俺達は二人で星空を見つめ続けた・・・
515 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 01:02:52.62 ID:+Tn8n/c3o
「・・・私達・・・」
「・・・うん?」
「私達・・・家族に・・・なったんだね・・・!」
「うん・・・!」

そう言うとユイは俺の肩にもたれかかった。

「ずっと・・・一緒だね・・・」
「ああ・・・ずっと一緒だ・・・!」

俺達は・・・ずっと夜空を見つめていた・・・
そして、家族になった幸せを・・・

いつまでも噛み締めていたんだ・・・

516 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 01:05:11.80 ID:+Tn8n/c3o
今日は以上です
現在はわたるがぴゅんで言う所の、がっぱいが、カマキリを鼻に入れていた所らへんでしょうか?

まあ、それじゃあまた!
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 01:07:00.16 ID:pu+Kyr/Lo
わたるがぴゅんわからんwwwwwwww
トオルおつ!おめでとう!
そうだよな、漫画みたく両思いでハッピーエンドじゃぁないわな!
期待してるぜー
518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/25(月) 01:09:17.32 ID:1bLfXlVqo
寸止め?また寸止めなの? 乙
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/25(月) 01:14:50.14 ID:SijdNaPgo
>>516
わたるがぴゅんwwwwww
確実に俺より年上なのはわかった
いろいろ安心した
wwktk100%で楽しみにしてる
520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/25(月) 01:35:03.76 ID:W/BhhjnO0
星屑のステージ('84)がかなり古い歌か…という詮索は野暮だなwwwwww
ちなみにオレは『ミセス・マーメイド』『Blue Moon Stone』『鳥になった少年の唄』『I Have A Dream #2』が好きだ

続き楽しみにしてます
521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/25(月) 01:38:30.81 ID:Qn/xhScho
寸止め上等wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/25(月) 07:05:35.14 ID:cVp0Wu/co
うはwwwwwwwwwwww
おつかれさま!
まだもうちょい続くのね
楽しみにしてる!
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 08:50:51.10 ID:s1uKTg7HP
トオル召喚
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/25(月) 09:14:00.22 ID:QVPbRJEFo
 (;`・ω・)  。・゚・⌒) ナポリタン作るよ!!
 /   o━ヽニニフ))
 しー-J
525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/25(月) 09:15:09.43 ID:1enl6V1io
>>523->>524
新しいパターンかwww
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/25(月) 09:15:45.05 ID:92Z+uKHho
埼玉、頑張れよwww
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 09:19:52.96 ID:ZfPVxODIO
新しいパターンわらたwwwwww
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/25(月) 10:08:24.88 ID:2/WHshdNo
オハヨウジョ

会社のTV有線放送代わりに流していたのが砂嵐ナリ、チューナー物色中ナウ
529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 11:30:50.39 ID:PUQcEm5ko
おはようじょの人がずっと一緒だって昨日まで気付かなかった
トオル召還↓の人も同一人物?
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 11:44:12.99 ID:s1uKTg7HP
>>529
先週金曜までは
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 12:04:43.64 ID:PUQcEm5ko
>>530
ありがとう
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 15:24:08.93 ID:j8GI35Vvo
>>530
ほんとごめん
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage ]:2011/07/25(月) 20:23:31.87 ID:ld4lplSho
わたるがぴゅんわかんねぇwww
折り返し越えた感じ?
534 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 22:56:14.40 ID:+Tn8n/c3o
乙です
わたるがぴゅん分かりにくかったですねww
現在は・・・まあ辞めときますねww

とにかく、折り返しは過ぎてます

それでは、続きをどうぞ
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/25(月) 22:56:46.30 ID:XgTCTXiyo
>>1,きたか…!!

  ( ゚д゚ ) ガタッ
  .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
  \/    /
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 22:57:22.15 ID:j8GI35Vvo
wwktk−
537 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 22:58:00.35 ID:+Tn8n/c3o
よくドラマ等で結婚が二人のゴールみたいに描かれているシーンがある。
結婚して初めて、それが嘘だと言う事が分かった。
結婚はゴールでは無く、スタートなんだ。

俺達二人は朝はユイが早くて夜は俺が遅い。
なので俺が朝ご飯を作り、掃除、洗濯干しを俺が行い、夕飯と洗濯取り入れ、洗濯畳み、洗い物はユイが担当する事になった。

「ほい、朝飯出来たぞー」
俺がそう言ってハムエッグとフレンチトースト、サラダとコーヒーを用意する。
ユイは「ありがとー♪」そう言って食卓につく。
すると「あ・・・」そう言う呟きをあげる
538 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 22:59:37.05 ID:+Tn8n/c3o
「ん?どーした?」
俺の言葉にユイは「ううん、美味しそう〜頂きまーす」そう言って食べ始めたのだった・・・

ユイが出掛けた後に俺は洗濯物を回し、その間に掃除機をかける。
ま、こんなモンでしょ。
掃除を終えた俺は洗濯物を干す。
するとユイの下着が出て来た。
うはwwユイの下着wwww俺はそう思いニヤニヤしながら下着を干す。
自分の奥さんの下着をニヤニヤしながら干す旦那は気持ち悪い限りだ。
干し終わった後に、自分の身支度を終えて店に出掛ける毎日であった
539 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:01:18.51 ID:+Tn8n/c3o
店に行き俺は張り切って仕事をする。
「おら!トオル!!こっちの仕込みを終わらせろ!!」
「あ、はい、すみません!!」
そう言ってシゲルさんに、いつもの様に怒鳴られる。
「ほれほれ、新婚のスイーツな生活に浸るのも良いが、ちゃんと仕事をしろよ」
哀川さんがそう笑いながら言った。
「いや、それは関係無いっすよ!」
俺は笑って答えていた・・・

目一杯働いてクタクタになりながら家に帰る。
玄関を開けると「お帰りなさーい」そう言ってユイが玄関に出迎えてくれる。
俺はその言葉に照れる。ユイも照れている様だ。
家に誰かが居て、自分を迎えてくれる、と言うのは最高に気持ちが良い物であった。
540 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:03:25.91 ID:+Tn8n/c3o
「晩御飯、出来てるよ」
「そっか・・・じゃあ頂くよ」
「・・・うん!」
ユイはそう言って俺を食卓へと促した。
テーブルの上にはトンカツと味噌汁、サラダにキンピラゴボウが並んでいる。
「あ・・・」
俺がそう呟く。
「え?何?」
「あ、いや・・・美味そう・・・頂くよ」
俺は食卓につく。

トンカツか・・・重いな・・・ただでさえ、俺は店で賄いを食べて帰る。
賄いは明日への新たなメニューとなるので、皆で食べなければならない。
それに俺は帰るのが遅い。余り夜遅くにコッテリした物を食べると胃がもたれてしまう。
料理人にとって食欲が無いと料理に差し支えが出て来てしまうのだ。
541 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:04:45.99 ID:+Tn8n/c3o
だが・・・ニコニコして一生懸命に俺の為に料理を作ってくれたユイを見ると・・・
俺は「美味い、美味い」と言いながら完食してしまったのであった・・・

食後にユイの皿洗いを見た。
丁寧に一枚、一枚洗っているのだが・・・段取りが悪い。
だから後片付けに時間をかけてしまっている。
いや、まあ、別に良いんだけど、その分、ユイの寝る時間や勉強の時間を割いてしまうんじゃ無いかと心配だった。
だけど分業制にしたし、ユイも一生懸命にやっている為に何も言う事が出来なかったのであった・・・
542 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:07:31.26 ID:+Tn8n/c3o
俺達は布団を二組敷いて寝床にしていた。
俺は当然ながらずっと一人で寝る生活をしていた。
布団を二組敷くとは言え隣に別の人が眠っている、と言う生活は変に気を使う。
だからユイが眠っている左側の肩が結婚当初、違和感があった。
そして中々熟睡が出来ない。
それは恐らくユイも同じだったと思う。
ユイも右肩をよく自分で触っていたからだ。

ユイは毎晩肉類を作ってくれる。
俺はコッテリした食べ物を連日に渡り食べた為に少し胃の調子が悪くなっていた・・・
543 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:09:29.47 ID:+Tn8n/c3o
「あ〜・・・」
俺は店の厨房で首を回す。
「どうした?新婚でやり過ぎか?」
シゲルさんがニヤニヤしながら、そう言って来た。
「いや、ちょっとはオブラートに包んで下さいよ・・・」
「なーに、言ってんだ!新婚の時は、やって、やって、やりまくるのが普通なんだよ!」
いや、なんか辞めて。

「まあ、あれだろ・・・」
哀川さんがスープの味見をしながら言った。
「他人と暮らす、ってのは大変だろ」
「あ、そうなんすよ・・・今まで俺は一人暮らしをしてたんで・・・慣れて無いんすよね」
544 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:11:09.56 ID:+Tn8n/c3o
「まあ、特に一人暮らしをしていた奴は自分のペースが有るからな・・・慣れるまでは大変だよ」
哀川さんの言葉に俺は頷く。正にそうだった。
「人間誰もが一人の方楽だ・・・」
哀川さんが呟く。
「だが、一人では味わえ無い物がな・・・二人で味わう事も出来るんだよ・・・」
「セックスだ」
哀川さんの言葉にシゲルさんが乗っかって来た。

ゲスいよホント・・・
545 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:12:28.39 ID:+Tn8n/c3o
日曜日、ユイが学校が休みであった。
だが俺は仕事。
ユイが「休みだから、私が家事をするね」そう言われユイに任せる。
ユイは朝食に和食を作ってくれた。

和食か・・・俺は朝はパンの方が良いんだよな・・・
俺はそう思うが言えない。
ユイは掃除機も丁寧にする。
俺からしたら、その辺は誰も見ないから良いんでないの?と思う所までキチンとやっていた。

洗濯物の干し方も違う。
俺がユイを見ているとユイは恥ずかしそうにしていた・・・
546 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:14:57.82 ID:+Tn8n/c3o
ある日俺の仕事終わりに店を出ると向井さんと部長、ヨウイチにサモハンと言うメンバーが店の前で手を振っていた。
「どうしたんすかww」
俺は久しぶりに会ったので嬉しくなる。
「ちょっとは、お前のノロケでも聞いてやろうかと思ってな
」ヨウイチがそう言う。
「正直に言おう・・・」
向井さんが言う。
「お前のノロケは聞きたくも無い、だが、お前をからかいたいんだ」
はいはい。
俺はそう言われ久しぶりに皆で飲みに行く事になった。俺はユイに電話を入れる。

「もしもし、ユイ?俺」
「あ、トオル君、お仕事終わった?」
「あ、うん・・・けど、今から向井さん達と飲みに行く事になっちゃってさ・・・」
「え?あ・・・そうなんだ・・・」
「うん、だから、帰りが遅くなるよ」
「晩御飯は・・・?」
「あ、良いや今日は・・・」
「そっか・・・うん、じゃあ気をつけてね」

そう言って電話を切った。
547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 23:16:56.95 ID:RAMnLNlIO
嫌な予感がするお…
548 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:17:18.73 ID:+Tn8n/c3o
「結婚って・・・結構大変なんすよね・・・」
俺は飲みながら、そう言う。
「なんだー?もう離婚かよ?」
向井さんがビールを飲みながら言った。
「いや、それは無いんすけど・・・なんかしんどいっちゅうか・・・一人の方が楽、と言うか・・・」
「贅沢言うな、お前ごときと結婚してくれる人が居ただけでも、ありがたいと思え」
サモハンが焼鳥を食べながら言う。
まあ、確かにそうなんだけどさ。
その時部長の眼鏡が光った。
「え?性の不一致?どんな感じ?トオル君はバックからが好きなのに、ユイ君は正常位が好きとか?」
ヤダ・・・気持ち悪い、この人・・・
549 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:18:53.18 ID:+Tn8n/c3o
「なんなんだよ?言ってみろよ」
ヨウイチの言葉に俺が語り始めた。
食事の事、寝床の事、家事全般の事。
語り終えた俺は溜息をつきビールを飲んだ。

「はあ・・・付き合ってる時の方が楽だったな・・・」

俺がそんな話をしていると「久しぶり〜!」そう言ってリコさんが現れた。
「おう、リコ遅かったなー」
向井さんが、そう言う。
「もう、急に呼び出すんだもん・・・」
そう言ってキョロキョロと周りを見る。
「あれ?ユイは来てないの?」
そう俺に尋ねる。
550 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:20:47.02 ID:+Tn8n/c3o
「え?いや・・・今日は居ないっすけど・・・」
「え?なんで?」
「あ、なんでって・・・リコさんが来るとは思わなかったんで・・・」
「え?ちゃんと誘った?」
「え・・・?あ、いや・・・」
俺が口ごもると、向井さんが言う。

「なんか、コイツ結婚生活に不満が有るみたいなんだよ」

その言葉にリコさんの眉毛がピクリと持ち上がった。
「いや、不満て言うか・・・」
「ト〜オ〜ル〜く〜ん・・・」
見るとリコさんが夜叉の様な顔をしている。
「は・・・はひ・・・」
「ど〜い〜う〜こ〜と〜・・・?」
「あ・・・は、はひ・・・えっと・・・ですね・・・」

俺以外の全員は寝た振りをしていた・・・
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/25(月) 23:22:09.36 ID:1bLfXlVqo
初々しい初夜の件が無いとは…
552 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:22:25.76 ID:+Tn8n/c3o
バーンッ!!!!

リコさんがテーブルを叩き飲み物や食べ物が揺れた。
「ふざけないで!!!!」
「ひっ!!!」
全員がビビり身をすくめる。
「一人の方が気が楽ー???じゃあ、今すぐ別れて一人で一生生活しなさいよ!!!!」
再びバーンっ!!!と言う音と共にテーブルを叩いた。
「他人同士が一緒に住むんだから、色んな問題が有るのは当然でしょ???!!!今更何を言ってんのよ!!!」
「は、はい・・・」
「それにね、トオル君だけが、我慢してる訳じゃ無いでしょ!!!ユイだって我慢してるに決まってるでしょうが!!!」
553 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:24:24.15 ID:+Tn8n/c3o
「え・・・そ、そうなの・・・?」
リコさんの顔が般若と化した。
「ト〜オ〜ル〜く〜ん・・・!」
「ひっ!!」

俺以外の全員は完全に違う世界の住人となっていた。皆、目がウツロだ。

「アンタ達二人、ちゃんと話し合ってる???大丈夫なの???」
「え・・・?」
「ちゃんと話し合わない夫婦はダメになるよ???みのさんも、そう言ってるでしょ??」
「いや、俺、いいとも派なんで・・・」
リコさんの顔が鬼に変わった。

「とにかく・・・あれだ・・・今日も、あれだぞ・・・うん、急に飲みに来たりして・・・うん」
向井さんがそう人事の様に言う。いや、お前らが誘ったんだろうが・・・
554 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:26:12.09 ID:+Tn8n/c3o
「トオル君!!!」
「は、はひ・・・」
「今から、アンタの家に行くわよ!!ユイに電話をしなさい!!」
「は、はい!!!」
俺は慌てて立ち上がり電話へと走った。

「じゃあ、リコ頼むな〜」
「うん、リコ君は頼りになるな〜」
向井さんと部長がビールを飲みながら、そう言う。
「は?アンタらも来るに決まってるでしょうが」

全員が下を向いていた・・・
555 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:28:31.23 ID:+Tn8n/c3o
「ユイー!!!居るー???!!」
ドアを開けながらリコさんが大声で叫んだ。
「あ、リコ・・・どうしたの・・・?」
「ほら!トオル君もこっちに来る!!!」
「は、はあ・・・」
俺はリコさんに手を引っ張られて、ユイと向き合う形で座らされた。

「あ、リコさん・・・俺らは・・・」
ヨウイチが恐る恐る尋ねる。
「アンタらは、ここに全員正座!!!」
「は、はい!!!」
そう言って男四人が正座をした。
「コホン」リコさんが咳ばらいをすると俺達を見る。

「今日はね、二人に思っている事を話して貰います・・・」
「え?今からっすか?」
俺が言う。
「今日は・・・もう遅いよ・・・」
ユイもそう呟く。
556 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:30:33.56 ID:+Tn8n/c3o
リコさんは悪魔の形相で俺達を睨みつける。
「今、話さなくて、いつ話すの!!!」
俺とユイはシュンと下を向く。
リコさんの後ろに控える四人は下を向いて正座していた。

「ほら、ユイ!アンタも何か言いたい事は無いの??トオル君に!!」
「え?わ、私は・・・な、何も・・・」
その言葉にリコさんが魔王の形相でユイの頭をクシャクシャにする。
「わ、や、辞めてよ〜・・・リコ〜・・・」
ユイが半泣きでリコさんに言う。

後ろの四人から小声で「しまうま・・・」「ま・・・マントヒヒ・・・」「ヒ・・・飛行機」と言う声が聞こえて来た。
リコさんがスリッパで四人の頭を叩き始める
557 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:32:02.83 ID:+Tn8n/c3o
そして俺達二人を見た。
「良い?あのね・・・夫婦と言うのはね・・・今まで別の家族だった二人が、新しい家族を作る事なのよ・・・?」
リコさんが俺達を見つめる。
「要はね、新しい国を作るのと一緒なのよ?そして、いつかアナタ達二人の国に新しい国民が生まれるの・・・その時に、なんの決まりも無い国で、やって行けると思う?」
俺達二人は少し目を合わすと、二人揃って首を横に振った。
「長い間、別々に育った二人が一緒に暮らせば、色んな弊害が有るのは当然でしょ!それをアナタ達、二人で過ごす間に解消しておくの!じゃないと、新しい国民は、どうするの??どちらに合わせるの???」
俺達二人は黙って下を向いた。

後ろの四人は部長が小声で言った「紫乳首祭り」と言う言葉がツボに嵌まり笑いを堪えている。
リコさんが再び四人をスリッパで殴る。
558 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:34:36.13 ID:+Tn8n/c3o
俺とユイはお互いに顔を見合わせた。
「ユイ・・・」
俺がユイに言う。

「お、俺・・・ちゃんと言うから・・・ユイも・・・言って欲しい・・・」
「トオル君・・・」

俺の言葉にユイが反応した。
「じゃ、じゃあ・・・」
ユイが挙手をする。
「はい、ユイさん!」
リコさんが議長となっていた。
「あ、えっと・・・朝ご飯なんだけど・・・」
「うん」
俺がユイを見る。
「わ、私はどちらかと言うと・・・和食が好きなので・・・たまには、和食が良いかなって・・・あ、もちろん洋食でも良いんだけど・・・」
「はい、ユイ、遠慮しない!」
リコさんがユイに言う。
「あ、えっと・・・出来れば一日交代位で・・・」

そうだったのか・・・俺はユイに笑う。
559 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:36:34.64 ID:+Tn8n/c3o
「なんだ・・・言ってくれたら良いのに・・・」
「あ、でも・・・トオル君は洋食が好きなんだなって・・・思ったから・・・」
「うん、分かった。じゃあ一日交代で作るよ!」
「ありがと〜・・・」
ユイが笑った。
「もう無い?ユイ」
「あ、えっとね」
リコさんの言葉にユイが続ける。後ろの四人は小声で議論をしていた。
「違うって、イクラちゃん女の子なんだって」
「いや、それは無いでしょ男の子ですって!風呂場でチンチン付いてるの見た事有りますもん」
リコさんがスリッパを四つ投げ付けた。
560 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:38:19.09 ID:+Tn8n/c3o
「洗濯物を干す時にね・・・」
「うん」
ユイの言葉に俺は頷く。
「し、下着類は・・・出来れば、見えない様に真ん中の方に干して欲しい・・・」
「そ、そうなのか・・・」
「う、うん・・・」

後ろの四人が集中して俺達の話を聞いていた。
するとリコさんがスリッパで四人を叩く。
「なんで、こんな時だけ集中して聞いてんの!!!サザエさんの話でもしてろ!!!」
その言葉にユイは顔を赤くして下を向いていた。

俺達はその後もお互いの要望を出し合い、それを解消して行ったのであった・・・

561 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:40:01.94 ID:+Tn8n/c3o
翌日、俺は仕事中に前日の事を考えていた。

結局、俺達二人は互いに遠慮をしていて、ちゃんと向き合って無かったんだ。
だからと言ってお互いの粗探しをしても仕方が無い。
言いたい事をキチンと告げて、それをフォローして行かなければならないんだ・・・
俺はそう思いながら一日を過ごした。

帰宅途中に俺はユイが好きな店のプリンを買った。
前に二人で買った事が有り美味しかったからだ。
別にユイの機嫌を取ろうとした訳では無い。
ただ、気持ちとして、言いたい事を言うだけで無く、互いを思う気持ちが無ければダメだ・・・そう思ったからだ。

家のドアの前で俺は軽く深呼吸をする。そしてドアを開けた。
562 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:41:55.57 ID:+Tn8n/c3o
「ただいま!」
そう元気よく言うと、ユイが中から出て来た。
そして・・・「お帰りなさい・・・!」そう照れた笑顔で俺に言う。
俺も少し照れた様に笑った。
そのまま買って来たプリンを出す。

「はい・・・お土産!」
すると、ユイは「あっ」と小さな声で驚いた様に呟いた。
「ん?どうした?」
「ううん、何でも・・・無いよ・・・」
ユイがそう言ったので俺はユイの頭をポンと軽く叩いた。
「ダメだろ・・・?ちゃんと言わないと・・・!」
俺の言葉にユイは照れた様に笑い、そして俺を手招きした。
563 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:43:17.74 ID:+Tn8n/c3o
「実は・・・ね・・・」

そう言って冷蔵庫を開ける・・・
中には俺が買って来た店と同じプリンが入っていた。

「二人で・・・食べようと思って・・・」

そう言った瞬間に二人で顔を見合わせる。
そして次の瞬間、互いに笑った。
二人で笑い合う・・・その時だけは互いに何も言わなくても・・・気持ちが通じたんだ・・・

互いが互いに互いの事を・・・深く思っている事に・・・!


哀川さんが言っていた事を思い出した。
一人では味わえない物が、二人では味わえる・・・

確かに、こんな素敵な偶然は・・・一人では味わえないな・・・!

564 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/25(月) 23:44:26.27 ID:+Tn8n/c3o
今日は以上ですww
また明日ね!
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/07/25(月) 23:46:12.18 ID:5FHJHjF/o
お疲れ
ぼくもともだちがほしいです
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 23:46:43.13 ID:XgTCTXiyo
お疲れ!

どうなるかと思ったが、リコさんナイスです。
つづき楽しみに待ってます。。。
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/25(月) 23:46:53.34 ID:W/BhhjnO0
乙です

…しかし「紫乳首祭り」って結局一体何なんだwwwwwwww
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/25(月) 23:47:17.49 ID:1bLfXlVqo
リア充氏ね!でいいのかな今日は 乙
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/25(月) 23:51:11.97 ID:MTjf9srIO
でも遠慮がなくなってもいけないんだぜ。
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/25(月) 23:51:50.33 ID:Qn/xhScho
リコさんは俺の嫁
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/26(火) 01:02:21.86 ID:1iWeVx16o
ここ読んで、嫁に挑みにいったら…
生理中で拒絶された…orz
572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/26(火) 05:50:45.91 ID:LyFGYihIO
>>571
奇遇だな
先日からうちもそうだ

でもほんと他人と暮らすってのは様々な弊害が出るもんだ
しんどくなるよ
でも解決も出来るんだよな
亀裂や確執が大きくなる前にちゃんと話し合うのが大切だよ
…しんどいけどなwwwwww

おつかれさま
次回も期待
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/26(火) 07:47:11.85 ID:En+cI0cdo
トオルは本当にいい仲間を持ったなぁ。
ここまで他人を大事に思ってくれる人も珍しいぞ。
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/26(火) 07:56:43.74 ID:AYt9Lh/NP
トオル召喚
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/26(火) 08:05:44.90 ID:mk+NUbw1o
     。      .     。          '           ☆       . ゚   。   ゚
         ゚  .    。            ゜    +   ゜      。     。    ゚  。
  。   ' o ゜          ☆          ゜    +.      ;    ゜         。
    ゜     。            ゜   。  o      ゚    ゚'        ☆  .  '
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  。      +       。     *  .    ゜        ゜      ゜    。     。
     ゚   ,;    。   .          +      。  .     '
    。   ゚   。.     +         。         .  ' ゚ 。     *  . ゜   +  ゜
       。          ,;   '   ゜             o     ゚   ゚   ☆     .
   。             *''          *       .゜     。    ゜       。
  '      ゜       。   ゚   ☆   ゚   ゜
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           (,,*゚ヮ)    (,  ゚)
             |  U     |  U
           (  |    (  |
    ,,....,.,..,...,.,,..,.,......,,...U"U...,,....,,,..U"U..,,,,,,,,..................,,,..,.,,,..,,........

  ┌──────ヘ─────
  |とっても綺麗な星空ね
  └──────────ヘ────
              | そうだな
              └──────‐
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/26(火) 08:08:35.73 ID:AYt9Lh/NP
どうした埼玉
577 :535 [sage]:2011/07/26(火) 08:19:10.82 ID:GNNdxFCyo
オハヨウジョ
朝から来るとは思えなくて・・・
昨日の夜のaa貼れたんで十分ですよ。(なぜか家だと埼玉県が出ない)wwww
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/26(火) 08:25:32.94 ID:GNNdxFCyo
IDかぶってるしwwwwww
579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/26(火) 08:26:15.29 ID:GNNdxFCyo
あっ勘違い。すまない
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/26(火) 08:57:21.16 ID:AYt9Lh/NP
朝から元気いいな
581 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/26(火) 22:27:12.10 ID:SOMkEaVKo
             ∧,,∧
            (;`・ω・)  栗
 クル━━━━━━/   o━ヽニニフ))━━━━━━ !!
            しー-J  ^^^^^^^^
582 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:05:41.97 ID:i9smHq4ho
乙です
手がちょっと痛いすな・・・

では続きをどうぞ
583 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:08:51.54 ID:i9smHq4ho
結婚生活にも慣れて、大体毎日のルーティンワークが互いに決まって来た。
ユイは日曜日が休みだが、俺は水曜日が休みなので、休みが合わない。
だが、日曜日は朝に二人で散歩に行き、水曜日はユイの大学に俺が迎えに行き、帰り道に二人で散歩する。
よくよく考えると散歩ばかりだが、俺達はその散歩が楽しかった。

二人で色んな話をしながら歩くのだ。
584 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/07/27(水) 00:08:54.17 ID:YbGKna/zo
wwktk
585 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:11:03.43 ID:i9smHq4ho
七月を迎え夏本番となった頃に俺が家に帰るとユイが言って来た。
「あのね、大学のお友達が・・・一回、トオル君のお店に食べに行きたいって言ってるの・・・」
そう言われたので「うん!良いよ。連れておいでよ」俺がそう言う。
「良い・・・?私も、トオル君の料理を皆に食べて欲しくて・・・」
ユイがホッとした様に言う。
ユイの心配事は分かった。
ウチは俺も給料が高くは無い。
だからユイもアルバイトをしている。
二人のお金で、やっと生活をしていけるレベルだ。そして、ウチの店は値段が安くは無い。
だから、ユイからしたら、無駄遣いになる、そう思ったんだろう。
586 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:13:21.78 ID:i9smHq4ho
それと、話は逸れるがユイは今だに俺への借金の事を必ず返す・・・そう言っている。
俺からしたら結婚して二人のお金に成ったんだから、要らない。
そう言っているのだが、聞かない。

「いつかトオル君に二百万円を好きな物に使って貰いたい」
そう言って聞かない。
俺は「じゃあ、それを使って車でも買おうね」そう言っていた。

ちなみに社長への借金は返済が出来た。
だが、結婚式費用として頂いたお金はまだ返済が終わってはいない。
社長は「あげたお金だから」と言って聞かないので、一括で返そうと少しずつ二人で貯めているのだ。

だからユイからしたら、余りお金を使いたく無い。そう思っている様だ。
だから二人で出掛けるのも散歩ばかりだ。
ユイは「楽しい」とは言っているが、俺は同年代のカップルの様なデートにも連れて行ってやりたい・・・そう思っていた・・・
587 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:14:42.23 ID:i9smHq4ho
ユイが、そんな話をしていた後日、ユイとユイの友達が、俺の店にやって来た。
俺が厨房から客席を見るとユイと、女の子が三人の合計四人で店に来ていた。

「何を注文しました?」
俺はホールスタッフに聞く。
「ハンバーグランチだね」
その言葉に俺はシゲルさんを見る。
「作ってやれ」
そう言われたので俺は誠心誠意、心を込めて料理を作った。
そして出来た料理が運ばれるとユイの友達が「美味しいー♪」と言って喜んでいるのが分かる。

するとシゲルさんに背中を押されたので俺は照れながらユイ達の元へ向かった。
588 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:16:17.94 ID:i9smHq4ho
コホン、と咳ばらいをしてユイ達の席に立つ。

「気に入って頂けましたでしょうか・・・?」
俺がそう言うと友達三人が俺を見た。
ユイは少し照れた表情で俺を手の平で指し示し「しゅ・・・主人です・・・」そう言った。
な、何、その、は、恥ずかしい紹介・・・俺は一瞬照れたがすぐに笑顔を向ける。
「あ、い、いつも・・・妻がお世話になっております・・・」
自分で言ってなんだが・・・凄く照れた。
友達三人は「キャアア・・・!」と笑いながら顔を見合わせて「いつも、お世話になってまーす♪」と声を揃えて言った。

一人の女の子が「すっごく、美味しいです!ビックリしました」そう言って笑う。
他の子達も「ホント、ホント、凄く美味しい♪」と言ってくれている。
589 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:18:34.63 ID:i9smHq4ho
ユイも俺を見て目で「良かった!」と言ってくれていた。
俺はホッとすると「喜んで頂けて、幸いです・・・ごゆっくり、お食事をお楽しみ下さい・・・」そう言って立ち去ろうとすると一人の女の子が声をかける。

「あ、旦那さん・・・」
「・・・はい?」
俺が振り返る。
「あ、えっとですね・・・来月の頭にね、ゼミで夏合宿があるんですよ」
ん?そんなの俺は聞いてないぞ。
ユイが慌てて、その女の子に言う。
「ケイコ・・・!」
「良いから・・・!でね、ユイがそれには参加しないって言ってるんですけど・・・ユイも行って良いですよね・・・?」
「ケイコ、ホントに良いって・・・辞めて!」
ユイが、そのケイコに口を尖らせる。

「夏合宿・・・ですか・・・?」
「はい、一泊二日で海に行きます」

学校の合宿で、なんで海?そう思ったが自分も高校時代に同じ事をしていたので言えない。
590 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:21:17.66 ID:i9smHq4ho
俺はチラリとユイを見る。
ユイは俺を見て首を振っている。
「いつなんですか?」
俺は、ケイコに尋ねた。
「あ、8月の2日に出発です」
そうか・・・すると別の女の子が言った。

「あ、もし、良ければ旦那さんも来られます?」
「あ、ホントだ!それが良いよね!」
ユイの友達が騒ぎ出す。
「あ、いや・・・それは・・・恥ずかしいから良いです・・・」
そんな公開処刑の場に行きたく無い。
俺の友達の基準が向井さん達なので、そう思ったんだろう。

「なんですか?結構彼氏彼女を連れて来たりしますよ」
よく行くな。
「あ、いや・・・俺は仕事が有りますんで・・・それはちょっと・・・」
「えー・・・そうなんですか・・・」
「あ、でも・・・」

そう言って俺はユイを見る
591 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:23:31.06 ID:i9smHq4ho
「ユイ、行って来なよ」
「え?」
ユイが驚いた表情で俺を見る。
「友達との付き合いも大事だよ・・・行って来なよ」
俺がそう言うと他の友達が「おおー・・・大人ー」そう言って目を大きくした。
フフフ・・・俺は大人だぜい。

ユイは困った表情で俺を見ていたが、俺は友達に言った。
「ユイを宜しくお願いします・・・あ、それと、デザートを何か一個選んで下さい・・・俺からのサービスです」
俺の言葉に友達はキャッキャッと喜んでいた・・・

俺が厨房に戻るとシゲルさんが呟いた。
「デザート・・・出すんだ・・・」
その言葉に俺はシゲルさんを振り返り言った。
592 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:24:42.70 ID:i9smHq4ho
「きゅ・・・給料からの・・・天引き、お願いします・・・」
「毎度ありぃ♪」

ユイ達の帰り際、一人の女の子が俺をコッソリ呼んだ。
「あ、あの・・・ホントに旦那さん、来られた方が良いかも・・・」
そう小声で俺に言う。
「え・・・何故ですか?」
「ウチのゼミに・・・ユイを狙ってる男子が三人位、居ますから・・・」
なんだと???
「だから・・・注意して下さい・・・」

それだけ言うと、その子は去って行った・・・
593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/27(水) 00:27:49.82 ID:2+WljZCEo
8月2日って来週じゃん、トオル一緒に行ってやれよ・・・とボケてみるw
594 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:28:02.83 ID:i9smHq4ho
「今日はどうもありがとう」

家に帰るとユイが俺にそう言って来た。
「ああ・・・友達は満足してくれた?」
「うん!とっても美味しいし・・・それに、素敵な・・・旦那さん・・・だって・・・」
なんにも出ねえぞ〜おいおい♪俺はニヤけた。

「でも・・・」
ユイは突然、顔を曇らせる。
「夏合宿は・・・行かないよ・・・」
そう言う。
「え?なんで?」
「だって・・・お金が勿体ないよ・・・」
ユイの言葉に俺は笑った。
「大丈夫だよ・・・それ位の蓄えは有るだろう?」
「でも・・・じゃあ、そのお金で、私はトオル君と海に行きたい・・・」
嬉しい事を言ってくれるじゃない。
595 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:30:20.05 ID:i9smHq4ho
「でも、俺の休みが・・・お盆過ぎだから海には行けないよ」
「じゃあ、二人で別の所に行こう?」
ユイは尚もそう言う。俺はユイを見て再び笑う。

「ユイ・・・俺達はこれから二人でいつでも、一緒にどこへでも行けるんだよ」
俺はそう言って続けた。
「でも、大学のゼミの仲間とは今回しか行けないんだろう?ユイだけ行かなくてさ・・・ユイだけ仲間外れになったりしたら俺は嫌だよ」
「・・・そんな事は、皆しないよ・・・」
「いや、でも新学期になってさ、皆が夏合宿の事を話してたらユイは入りづらいだろ?だから行けって」
「・・・トオル君・・・」

「俺はユイに出来れば同年代の女の子と同じ事を味わって欲しいんだよ・・・な?」

俺の言葉にユイは尚も納得して居なかったが俺は強引に行かせる事にした。
だが、最後にユイの友達に言われた一言が引っ掛かっていた事も確かであった・・・

「ユイを狙ってる男子が三人位居ますよ・・・」
まさか・・・ね
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/27(水) 00:31:51.26 ID:FE38Op4Lo
寝取られキタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
597 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:31:58.87 ID:i9smHq4ho
夏の暑さは益々激しくなり、セミの鳴き声が響いて来た。

「え??それで、お前行かす事にしたの??」
ヨウイチが水を飲みながら俺に言った。
「そう、中々大人っしょ?俺・・・」
俺はそう言って皆にメニュー表を配る。

ヨウイチ、向井さん、部長、サモハンの四人がウチの店に食べに来ていた。
ウチは一応カウンター席があり、この四人はいつもそこに座る。
俺の言葉に四人が溜息をついた。
え?なんで?

「お前は・・・馬鹿だのう・・・」
サモハンがメニュー表を眺めながら呟く。
「馬鹿だと思ってはいたけど、そこまでだとはね!」
部長が眼鏡を光らせて俺を見る。なんかアンタに言われたらムカつく。
598 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:34:06.94 ID:i9smHq4ho
「お前なあ・・・そんなもん、浮気しに行って来い、って言うのと同義語だぞ」
向井さんがメニュー表で俺の頭をペシペシと叩く。
え???
「大体、大学生の男の脳内が何を考えているか分かるか?」
「な、なに・・・?」
「95%は女とヤる事しか考えてねえ」
「割合たかっ!!」
「当たり前だろ」
「ちなみに・・・残り5%は・・・?」
「遊ぶ事」
「馬鹿じゃん!大学生馬鹿じゃん!・・・てか、アンタら四人共馬鹿じゃん!!」

俺の顔にメニュー表がブーメランの様に飛んで来た。
「て言う、ユイ君を狙ってる男が三人も居るんだろ?」
「ユイさんモテるもんなー」
「旦那はショボいけどな」

余計なお世話だ。
599 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:36:14.77 ID:i9smHq4ho
「とにかく・・・お前も行った方が良いんじゃないか?誘って貰ってるんなら」
「え・・・?でも、仕事有るし・・・」
「休めよ!こんな店!」
その発言にシゲルさんと哀川さんが四人を睨みつける。
四人は下を向いた。

「ったく・・・馬鹿だねえ」
「あーあ・・・これでユイさんヤられたな」
「ひと夏のアバンチュールですな」
「ダセー旦那だな」
皆がそう言う。
え???マジ???マジで???そうなの???
俺は放心状態で虚空を見ていた。

「おーい、そこの四人、そろそろ注文を決めとくれい」
シゲルさんが呆れた声で俺達に言う。
600 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:37:37.41 ID:i9smHq4ho
「あ、じゃあ・・・俺タコ焼き」
「あ、俺は豚玉で」
「じゃあ僕はウニでも握って貰おうかな?」
「俺は水で良いや・・・」

四人の言葉に俺は虚空を見つめたまま、何も言わない。
「おい・・・!」
ヨウイチが俺の目の前でパチンと両手を叩いた。
「あ、うん・・・あ、注文ね・・・」
俺は振り返り叫んだ。

「チキンラーメン四つ」
「うおおおおおいいボケ殺しすなあああ!!!!」

四人が叫んでいた・・・
601 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:39:22.64 ID:i9smHq4ho
つーか・・・そんなにヤバい事なんだろうか?
そして俺の判断は良く無かったんだろうか・・・?
俺がそう思いながら野菜を切っているとシゲルさんがニヤニヤしながら言って来た。
「店、休むか?」
その言葉に俺は慌てて首を振る。
「いや・・・俺は修業中の身っすから・・・」
そう言って忘れようと思い野菜を切っていた・・・


ある日、リコさんに、タカコ、マリの三人が店に来た。
「あれ?どうしたんすか?」
俺が尋ねる。
「私とマリがリコさんの大学に入ろうと思ってキャンパスを案内して貰ってたんです」
「で、リコさんがトオルさんのお店でご馳走してくれるって」
「トオル君!活きの良い所、頼むよ!」

三人がカウンター席に座る。いつの間にか、この席は天文部の席になっていた
602 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:41:23.85 ID:i9smHq4ho
「え?ユイが海に??」
「そうなんすよ・・・向井さん達は馬鹿な事を・・・みたいな事を言うんですけど・・・」
俺がリコさん達の前に食事を置く。
「えー?私は良いと思いますよー、度量が大きい旦那さん、素敵ですぅ」
マリがそう言う。
だよね?

「私は・・・でも、ちょっと束縛して欲しい・・・かな?」
タカコがそう呟く。
え?マジ?

「ん〜・・・時と場合によるわね・・・」
リコさんがそう言う。
「まあ、トオル君の心配は杞憂に終わると思うよ・・・ユイはトオル君ラブだから」
リコさんの言葉に俺はニヤけた。

「ただ・・・」
え?
「大学生の男のヤリタイ度は凄まじいわね・・・特に海なんか行った日には・・・」
はい?
「海辺で見る夕日・・・そして皆でする花火・・・その後・・・皆がドンドンカップルに成って行って・・・ユイもいつの間にか男と二人きり・・・」
「きゃあああ♪」

リコさんの言葉にマリが反応する。
603 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:42:53.44 ID:i9smHq4ho
「そして、お酒を飲む二人・・・星明かりに照らされて・・・」
「やだ・・・私・・・」
何故かマリが顔を赤らめる。何を考えてるんだコイツ。

「な・・・無いっすよ・・・た、多分・・・」
俺は精一杯強がる。
「普段ならね・・・でも、夏の海の魔翌力は強いわよ〜・・・」
「砂に書いた名前消して・・・」
マリが顔を赤くしながら呟く。何を言っている・・・

「だ、大丈夫ですよ・・・トオルさん・・・ユイさんなら・・・」
タカコが慰めてくれるが、俺は半泣きだった・・・
604 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:44:50.40 ID:i9smHq4ho
マジかよ・・・夏の海の魔翌力はそんなに大きいんだ・・・

確かに・・・俺達も海に行った時に、ユイと急接近したな・・・う、うわああああああああ!!!!!!
俺は野菜を切りながら頭を抱えた。
「どうするぅ?トオルー?休むぅ?」
シゲルさんがニヤニヤする。
「結構です!!!」
俺はそう言って頭を振っていた・・・

8月に入りいよいよ、ユイが夏合宿に行く前日が来た。
俺が家に帰るとユイが荷物の準備をしている。
「わ、忘れ物は無い?」
俺は心の心配を消しながらそう聞く。
「うん・・・でも、本当に良いの・・・?」
ユイが不安そうに尋ねる。
「い、良いに決まってるじゃ無いか・・・」
「そう・・・じゃあこれ一応、宿の住所と連絡先・・・何か有ったら・・・」
605 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:46:36.47 ID:i9smHq4ho
本音を言うと・・・嫌だった。

ユイは俺と海に行くんだい!!

そう言って駄々をこねたい気持ちではあった。
だが、ユイを俺は信じているし何よりも、ユイには普通の大学生の生活を味わせてやりたかったんだ。
結婚する事でユイにマイナスな生活をさせたくない・・・そんな気持ちが強かったんだよ。

翌日、心配そうな表情でユイは夏合宿へと向かった。
俺は不安を打ち消して必死に笑顔で見送ったのであった・・・


「そっか・・・ユイさん、行っちゃったのか・・・」
ヨウイチがそう言ってアイスコーヒーを飲む。
「今頃、男がちょっかいを掛けてんだろうな・・・アイスコーヒーお代わり」
向井さんが、そう言ってグラスを差し出した
606 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:48:36.65 ID:i9smHq4ho
「夏の男はエロいからね〜」
部長はシロップを山の様にアイスコーヒーに入れる。
「アバンチュールか・・・」
サモハンはコーラを飲んでいた。

「あの・・・ですね」
俺はカウンターの前に立ち四人を見た。
「んー?」
「飲み物ばっかりじゃ無くて・・・食べ物を頼んで下さい!ここはレストランです!」
「だって金無いもーん」
「良いじゃん、ファミレスだと思えばさ」
ヨウイチの言葉にヌッと現れたシゲルさんが言った。

「ここはファミレスじゃねー」
四人はシゲルさんと哀川さんにつまみ出される。

「ったく・・・」
俺はそう呟きながら野菜を切る。
だが、俺の心はココに在らずであった。
ユイの事ばかり考えて集中出来ない。

くそー・・・こんなに後悔するなら・・・行かさなきゃ良かった・・・そう思うが今更遅い。
607 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:50:17.11 ID:i9smHq4ho
そんな事を思っていると・・・サクッ。
「いてっ!!!」
指を切った。
「あー、クソっ!!!」
俺が叫びながら切った指を口に入れる。
「おい、トオル!」
シゲルさんが俺に叫んだ。
「はーい!!」
「お前なあ、その集中力じゃ、今日と明日は給料やんねーぞ!!」
そう言われ俺は慌てて頭を下げる。
「す、すみません!集中します!」
608 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:54:27.62 ID:i9smHq4ho
シゲルさんは俺をチラリと見る。
「ばーか、そうじゃねえ・・・どうせ、出ねえなら・・・とっとと失せろ、って事だ」
え?

「とっとと失せて、気晴らしに海にでも行って来い、つってんだよ!!」

「え・・・?」
「ほれ、表に馬鹿共が待ってる、とっとと行け!!!」
その言葉に俺がドアを開けて表を見た。
すると、そこには向井さんの車の前で四人がサングラスをして立っていた。
「・・・え?」

「おら!!行くぞトオル!!!ユイ救出作戦だ!!!」

向井さんが、そう叫ぶ。
609 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:56:03.69 ID:i9smHq4ho
俺はシゲルさん見た。
シゲルさんは手の平でシッシと俺を追い払う様に仕込みをしている。
俺はシゲルさんに一礼をすると、すぐに着替えて表に出た・・・

向井さんの車に行くと、「さあー行くぜえぇぇぇぇ!!!!」皆が車に乗り込んだ。
ワゴン車の中は、浮翌輪や水中眼鏡で一杯だ。
「うわ、海に遊びに行く気、満々だ!」
俺の言葉に全員が笑った。

「さーて、しゅっぱーーつ!!!」

向井さんがアクセルを踏み込み車が急発進した。

俺達は何故か笑っていた・・・なんか高校時代に戻ったみたいだからだ・・・!
610 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 00:58:24.14 ID:i9smHq4ho
向井さんはガンガンに車を飛ばす。
大丈夫かいな・・・そう思い俺は向井さんに聞いた。
「大丈夫っすか?そんなに飛ばして・・・」
「速く行かねーと、ユイさんの水着姿を他の奴らに見られるぞ」
ヨウイチがそう言う。
は・・・!ユイの水着姿・・・!!

「向井さん!!!!飛ばしてえええええ!!!!!!」
俺の叫びと共に向井さんの車の速度が上がって行った・・・

山を抜けると、真っ青な夏の海が見えて来た。
「おおー!!!海だ、海だぜー!!!」
全員のテンションが急上昇する。
「とりあえず向井君、適当に停めてくれるかい?」
部長が海パン一丁で水中眼鏡とシュノーケル姿で言う。
「用意はえええ!!!」
611 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:01:04.67 ID:i9smHq4ho
「で?ユイの宿はどこだ?」
向井さんが尋ねる。
「えっと・・・」
俺はユイから貰った宿の住所を伝えた。

「この辺かな?」
ヨウイチが辺りを見回す。
「あ、あの宿じゃねーの?」
サモハンが指差す。あ、確かに、あれだ。
「て、事は、この辺の海辺に居るんじゃね?」
「よし、じゃあ俺達も車停めて海に繰り出すぞー!!」
向井さんが服を脱ぐと海パン一丁だった。
「っしゃあ!!行きますか!!」
ヨウイチとサモハンも海パンを着込んでいた。
「あ、すみません・・・俺、海パン持って来てねーっす・・・」

全員が俺を冷めた目で見て唾を吐いた。
「チッ、ノリが悪い奴」
「空気読めよな馬鹿が」
「なんならパンツで行けって」

えらい言われ様だな。
612 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:03:18.38 ID:i9smHq4ho
俺が海パンを購入し、早速海に向かう。
向井さんは「ナトリウムうううう!!!!」そう言って海に飛び込む。
サモハンは胸にピチャピチャと水を当て出した。
相変わらずだなって・・・ちょい、主旨変わってるし。
部長が「あっ」と呟いたので、俺とヨウイチは全力で海に向かった。

だが、向井さんに後ろを取られて海に投げっ放しジャーマンで落とされた。
慌てて海水から上がると、いきなり部長が俺の真後ろに立ち呟いた。
「この辺の海には変わった潮流が有って、いつの間にか死体が浜に打ち上げ・・・」
「聞きたくねええええ!!!!」

俺は沖に逃げる
613 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:04:45.54 ID:i9smHq4ho
「トオルを発見!!!追尾します!!!」
サモハンがボディボを上手く操り俺を追い掛けて来る。
なんて運動神経が良い[ピザ]なんだ。
俺はサモハンに捕まるまいと「撃墜!!」そう言ってボディボをひっくり返す。
俺が笑っているといきなり海中で俺の海パンを脱がされる感触がした。

ヤバい!!!
向井さんが海上に顔を出して「海パンげっっとおおお!!!」そう俺の海パンを掴んで叫んだ。
「や、辞めろおおお!!!!」
俺が向井さんから海パンを奪い返そうとして近付くが「へいっ!」そう言って海パンをサモハンに投げる。
614 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:06:53.09 ID:i9smHq4ho
サモハンは受け取るとボディボの上に仰向けに乗っかり頭上に投げた。
「行くぞ和夫!」
部長がそう叫びサモハンの上に乗っかる。
「おう!兄ちゃん!」
サモハンは叫び、足の上に部長を乗っけた。

「スカイラブ・・・はりけえええええん!!!!!」

部長はタイミングを合わせてジャンプをして俺の海パンを砂浜に蹴った。
なんちゅう大技をするんだ・・・海パンは波に乗って砂浜に到達した。
「砂浜は辞めろよおおおお!!!!!」

俺は股間を押さえて砂浜に走った。
そんな、すっかり海遊びに夢中になっている俺達は油断していた。
俺パンを手にすると、突然声が掛かった。

「トオル・・・君・・・」
え?俺が顔を上げるとそこにはパーカーを羽織ったユイが驚いた表情で俺を見ていた・・・
615 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:09:00.89 ID:i9smHq4ho
「あ・・・ユイ・・・」

ユイの周りを見ると、今到着したばかりであろう、大学生の集団20人位が俺達を見ていた。
後ろの四人も呆然として立っている。
俺は慌てて海パンを履いてユイに向き直った。

そして・・・
「か、カリフォルニア・・・どっち・・・かな?」
「え?」
「か、カリフォルニア・・・」
「あ、あっちだと思う・・・」
ユイが恐る恐る、そう言った。
「む、向井さん!!!か、カリフォルニアはあっちだそうです!!!」
「そ、そうか!!おらっ!!!お前ら頑張れ!!ここまで来たら、あと少しだぞ!!」
そう言って向井さんがバタフライをする。
「よ、よーし!!バ、バタフライで世界一周は疲れるな!!!」

そう言って全員でバタフライを始めた。
616 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:10:27.43 ID:i9smHq4ho
俺は恥ずかしかったんだ。
ユイの友達の前であんな赤っ恥を・・・

すると後ろから「トオル君!!!」そう大声で呼ばれる。
俺が恐る恐る振り返ると・・・

ユイが凄く嬉しそうな笑顔で俺に手を振っていた・・・


ユイの友達連中に俺達が紹介される。
向井さんと部長の自己紹介には殆どの連中がウケていた。
大体の奴ら男女共に良い人ばかりだ。
だが、明らかに俺を見て不機嫌そうな顔で見ている男が数人いたのも確かだ。
不機嫌と言うか俺を見て鼻で笑ってる感じ?

多分、ユイの旦那がショボい奴だからだろう。
617 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:11:41.36 ID:i9smHq4ho
ユイの友達からの提案で皆で遊ぶ事になった。
俺達、と言うか向井、部長が張り切り出す。
なんでこの人達は大勢の前で強いんだよ。
だが、明らかに数人の男が嫌そうな表情で俺達を見ているのが辛かった。
なんか・・・すみませんね・・・


夕日が沈む頃に宿に帰る事になり、ユイの友達の一人が聞いて来た。
「どこの宿に泊まるんですか?」
そう言われ俺達は顔を見合わせる。

そ、そー言えば・・・どこに泊まるの俺達・・・?
618 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:13:43.07 ID:i9smHq4ho
「薪、こんだけで良いっすか?」
ヨウイチが向井さんに言う。
「よし、火を点けろ!」
サモハンが新聞紙に火を点けて即席の釜戸に火をくべた。
「扇げー!!!」
部長がウチワで必死に火に酸素を送り太薪に火がついた。
「よっしゃ!!点火かんりょー!!」
向井さんが、そう言って俺に先程、市場で買った魚を渡して来た。
ハイハイ、捌きますよー。

俺は魚を捌き、刺身と焼き魚、そして味噌を買ったので、鍋に魚と海藻類を入れて味を付ける。
「わあー美味しそうww」
ユイがワクワクした声を出す。
「ホント!流石はプロですね!」
ユイの友達が言った。

俺は面目を保つ事が出来てホッとしていた・・・
619 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:15:25.11 ID:i9smHq4ho
先程、俺達が泊まる所が無い。
そう言っていると向井さんがテントを出して来て「これ」そう言った。
俺達がガックリ来ていると、ユイの友達が「じゃあ、後で皆で差し入れ持って行きます」そう言ってくれたので、俺達も何かを振る舞う事になった。

貝をバターで炒めた物を作った時は女子達が「おおー・・・無人島に連れて行きたい人、No.1ですね」そう言う。
いや、無人島ならバターや鍋とかも無いから、向井さんが良いと思うよ。
それでもユイは鼻が高そうな顔をしていて俺も嬉しかった。
620 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:18:04.04 ID:i9smHq4ho
皆で酒を飲み騒いだ後、友達が宿に帰る。
その時、ユイがジッと俺を見ると友達に向かって言った。

「ゴメン・・・もうしばらく私、コッチにいるね・・・」
え?
「だって・・・旦那様と一緒に居たいから・・・!」
ユイはそう言って俺の腕に自分の腕を回した。

エエエ!!!!

ユイの友達はニヤニヤしながら、「じゃあごゆっくり!」そう言う。
先程、俺を鼻で笑っていた数人が明らかにガックシとした表情をしたのが分かった。
いや、なんか・・・すみません。

「ひゅーひゅー熱いね、お二人さん」
いつもの四人がそう言う。
アンタらはガキかよ。
621 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:20:30.80 ID:i9smHq4ho
「あれが・・・天の川だね」
「そう・・・!」

波の音が聞こえる中、俺とユイが砂浜に寝転がり満天の星空を見つめていた。
「今日は来てくれて・・・ありがとう」
ユイがそう呟く。
「あ、いや・・・なんか、大人ぶってユイを行かせたけど不安になっちゃって」
俺の言葉にユイはクスクス笑う。
「あのね、私は別に普通の大学生の生活なんか、どうだって良いの」
「え?」

「私は・・・トオル君と二人で生きて行く事に決めたから・・・他の楽しさなんか要らない・・・トオル君と二人の生活が良い・・・!」
「ユイ・・・」

俺は寝転びながらユイを見た。
622 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:22:45.52 ID:i9smHq4ho
「それにね・・・仲間で海って・・・高校生の時に充分に味わったじゃない!」
「確かに・・・!」
二人で笑う。
波音が聞こえ、海から優しい風が吹く。

「ねえ・・・トオル君・・・」
「うん・・・?」
「昔にトオル君が言った事・・・覚えてる・・・?」
「昔に?」
「うん・・・宇宙が広くなり続けるが為に生物には死があるって・・・」
「ああ・・・何かの本で読んだんだよな」
「だから一個の個体では進化が完了しないで、生物は死ぬことによって種の伝道を行うって」
「だね」

俺は頷く。
623 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:24:20.76 ID:i9smHq4ho
「私達の両親も・・・そうやって私達に託したんだよね・・・種の伝道を・・・」
「うん」
「ねえ、例えばね・・・」
ユイは起き上がり俺を見た。
「一個の生命体で・・・何度も伝道を繰り返すって・・・有り得る・・・かな?」
「それは、例えば俺が何回も同じ人生を繰り返すって・・・事?」
ユイは黙って頷く。
俺は夜空を見つめ呟いた。
「有り得ないな・・・人は死ぬ事以外に進化の道筋が無いと思うよ・・・」
俺の答えにユイは少し考えて「だよね・・・」と淋しそうに呟いた。

「けど・・・」
俺も起き上がる。
624 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:26:01.52 ID:i9smHq4ho
「もしも、それが可能なら・・・俺は何度繰り返しても・・・」
俺はユイを見つめた。

「必ず・・・ユイを探しに行くよ・・・例え地の果てに居たとしても・・・!」

そう言うと自分の言葉に俺は照れてしまった。
ユイも照れる。そして俺達は見つめ合って笑った。

「ねえ・・・」
ユイが呟く。
「うん?」
「私達も・・・種の伝道をしない・・・?」
「え?」
ユイは俺を恥ずかしそうに俺を見上げて言った。

「トオル君の・・・赤ちゃんが欲しい・・・です・・・」

俺はその言葉にノックアウトした。
625 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:27:10.40 ID:i9smHq4ho
顔から湯気が出るかと思った。
このままユイを襲ってしまいそうだったが、後ろのザクッと砂を踏む音に後ろを向く。
そして岩場に走ると言った。
「何をしてんすか・・・」
岩場の陰には四人がソッと退散する所だった。

「あ、いや・・・アオカンでもするかと思ったんだけど・・・思った以上に、こっぱずかしい会話をしてたから帰ろうかと・・・」
そう言って四人は顔を赤らめてる。
まあな・・・

ユイも顔を赤らめ下を向いていた・・
626 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:29:08.92 ID:i9smHq4ho
ユイを宿に送り、俺達は狭いテントにギュウギュウに入り込んだ。

「狭い〜」
「向井さん足が臭いっす」
「おい、サモハン腹が邪魔だ」
「いてっ!部長蹴らないで下さいよ」
口々に皆がそう言う。


「よーし、寝るぞー」
「ういー」
そう言って皆が黙る。テント内はシーンと静まり返った。

「プー」誰かが屁をこいた。
「くせっ!誰だ!ww」
皆が爆笑しながら言う。

「よし、今度こそ寝るぞー」
「ういー」
皆が黙る。再びシーンと静まり返った。

「・・・種の伝道・・・」
部長がボソッと呟く。
皆が顔を押さえ笑いを堪える。
627 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:30:43.28 ID:i9smHq4ho
「や、辞めて下さい・・・」
再びシーンとする。

「・・・必ずユイを探しに行くよ・・・」
全員が爆笑した。
「いい加減にしろおおおおお!!!!!」
俺達はいつまで経っても寝る事が出来なかった。

ガキの修学旅行かよ・・・
そう思ったが、いつもの俺達に楽しんでいる自分が居たのであった・・・

628 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 01:31:22.05 ID:i9smHq4ho
今日は以上です

それでは、お休みなさい!
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/27(水) 01:33:53.98 ID:wi4PQmSFo
乙です、楽しい時間だった
630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/07/27(水) 01:34:51.48 ID:YbGKna/zo

明日も楽しみにしてます
631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/27(水) 01:42:04.11 ID:eAH9RVDDO
トオルさんが話を書いてくれるたび必ず読みにくるよ。 明日も楽しみにしてます。
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/27(水) 01:43:07.86 ID:olWACRMro
乙!
また頼むよ!
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/27(水) 02:52:17.84 ID:G+9TZZ0ho
小ネタがわかるおいらはおっさんなんだなぁorz
毎度ほっこりさせてもらってます
ユイちゃん今専業主婦だったらちゃんと検診行かせるようにね!
自治体のなら安心料まで持ってくれるから
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/27(水) 06:46:53.06 ID:sY0pOYYMo
俺は30だが、たまーに分からないネタがあるなぁと
トオル先輩おつかれさま
次回も楽しみにしてますねー
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/27(水) 10:01:52.84 ID:+Si9tHLIP
トオル召喚
636 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/27(水) 10:25:44.14 ID:abq9IMiVo
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
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637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/27(水) 10:43:54.64 ID:+Si9tHLIP
だが最近トオル深夜にくるんだよな
638 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:31:57.64 ID:i9smHq4ho
どうもです
早速行きますか
639 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:33:01.77 ID:i9smHq4ho
八月も終わりに近付く頃、今年は皆で花火を見に行った。
去年はユイの母親の容態が悪くなった為に見る事が出来なかったが、今年は勢揃いで見る事が出来たんだ。
いつもの高台で向井さんは何故か海パン一丁で踊り出していた・・・


九月に入ると仕事前にシゲルさんが俺に言って来た。
「今日から新人が入る。トオル、お前に新人の教育を任せるぞ」
そう言われた。
「え?どうしたら良いんですか?」
「それも全てお前に任せるから、早く一人前にしろ」
シゲルさんはそれだけ言うと自分の作業に移る
640 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:34:51.17 ID:i9smHq4ho
マジかよ・・・
俺がそう思っていると哀川さんが「ズブの素人で24歳の奴らしいから、頑張れよ」そう言った。
参ったな年上かよ・・・まだ俺自身が一人前じゃ無いのに・・・
だが、命令なので仕方が無い。
俺がそう思い少し緊張しながら新人を待つが、いつまで経っても新人が現れない。

「遅いっすね」
俺が仕込みをしながら哀川さんに言う。
「ん〜ひょっとして来ないかもな」
「え?来ない?」
「ああ、たまに居るんだよな。そう言う奴」
じゃあ、何故働こうと思うんだよ。
俺は不思議に思った。
時計をチラリと見る。
641 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:36:55.91 ID:i9smHq4ho
新人にさせる為に野菜の皮剥きをやっていない。
だが、早くしないと仕込みが間に合わない。
俺は溜息をつきながら皮剥きを始めようと、裏口に向かうと裏口の向こうに人影が見えた。

業者かな?そう思いダンボールを開けていると、いつまで経っても、裏口の人影は動かない。
幽霊?俺はそう思い恐る恐る裏口のドアを開けた。
すると、そこには髪の毛がボサボサで鼻毛が飛び出て、オマケに顔のホクロから毛が生えている、野暮ったい服装をした20代前半の男が立っている。
あら、やだ気持ち悪い子。

俺はそう思いながら、ソイツに言った。
「あ、開店はまだなんですが・・・」
すると彼は「あ、」とか「う、」とか訳の分からない呻き声を上げて俺を見た後に、「・・・ココで・・・あの・・・」そう呟く。
俺は少し考えた後に聞いた。
「あ、ひょっとして今日から働かれる方ですか?」

その言葉に、彼は「そ、そ、そ、そ、そ、そ、そ・・・」そう言って何度も首を縦に降り続けていたのであった・・・
何回「そ」って言うんだよ・・・
642 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:38:37.37 ID:i9smHq4ho
新人は自己紹介もせずに、突っ立っているだけだった。
基本この店ではシゲルさんが新人を紹介したりしない。
俺も最初は一人一人に周り自己紹介をした。
恐らく料理人の世界では、それが普通なのだろう。

シゲルさんが、チラリと俺を見た。
あ、そこからも俺の役目なんすね・・・俺は新人に近付いて言った。
「あの・・・一人一人に周って自己紹介をした方が良いですよ」
そう言うと新人は「・・・は、はい・・・」そう言って哀川さんの近くに行き、その場で突っ立っている。
何をしてるんだよ。コイツ。

哀川さんの表情が少しイラついているのが分かる。
ただでさえ、料理人は気が短い人が多い。
哀川さんはかなり優しい方だが、その哀川さんがイライラしているのが分かった。
そりゃそうだ。俺でもイラつくわい。

俺は新人の側に行った。
643 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:41:33.00 ID:i9smHq4ho
「いや、何してんすか・・・?」
俺が聞く。
「あ、その・・・タイミングが・・・」
うわ、超口臭い。俺は激臭に堪えながら言った。
「いや、あのね、『お忙しい所、失礼します・・・私は・・・』みたいな感じで入ったら良いんじゃないっすか?」
「あ、ああ・・・」
彼はそう呟くと哀川さんの後ろで囁く様な声で言っていた。

「お忙し・・・私・・・で・・・ます・・・」
ちっさー!!!!
哀川さんの後ろ姿が益々苛立っているのが分かった。
ソイツは哀川さんへの紹介をそれで済ませ、次の人への自己紹介に移っていた。
だが、勿論聞こえて無い。
次のスタッフは大声で「何言ってるか分かんねーよ!!!邪魔だからドケ!!!」
そう怒鳴られていたのであった・・・

ハア・・・俺は溜息をついた。
てか、アンタまだ俺への自己紹介もしてないし・・・
644 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage ]:2011/07/27(水) 15:42:02.71 ID:wz0bmMwro
昔のトオルタイプかあ
645 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:43:24.64 ID:i9smHq4ho
「・・・て、事でさ・・・参ったよ」

俺はユイの料理を食べながら、そう言った。
「その人はなんで料理人に成ろうとしたのかな?」
ユイが尋ねる。
「なんかシゲルさんの話だと、シゲルさんの知り合いの息子さんで、高校を出てから働いた事が無くてさ・・・で、料理人に成りたいみたいな事を親に言って親がシゲルさんに泣きついて来たらしいよ」
「ふーん・・・じゃあ料理は上手いの?」
「いや・・・皮剥きが全く出来なかった・・・あれならサモハンの方が上手い」
「あらら・・・」
ユイは困った顔でそう言う。
「あーあ・・・こっちも仕事があるのに・・・あの・・・あっ!」
「どうしたの?」

ユイが尋ねる
646 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:44:53.51 ID:i9smHq4ho
「そういや・・・奴の名前・・・まだ聞いて無かった・・・」
「ハハ・・・」

ユイが困った顔で笑う。
「あーくそ、面倒くせーなー、なんでシゲルさんは俺に押し付けたんだよ」
俺の言葉にユイが「ん〜」と考え込んだ。

そして・・・
「多分、シゲルさんも、何か考えが有っての事だと思うよ」
「え?」
「多分トオル君の成長を考えて・・・そうしたと思う」
「そうなの・・・?」
「うん、人を教える事で自分も成長するって・・・事かと」
ユイの言葉に俺は天井を見上げる。

そうなのかな・・・?
647 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:46:35.43 ID:i9smHq4ho
翌日、新人は普通の時間にやって来たが、又もや何もしない。
俺は新人に「皮剥きをして下さい」そう言うと、やっと動き始めた。

ったく、一々言わなくても昨日やったから分かるだろうに。
俺はそう思いながら新人を見た。
彼はジャガ芋の皮を剥くのに手間取っている。
このままでは仕込みが終わらない。俺は仕方なく新人に近付いた。

「あ、ちょっと・・・」
俺はそう言って自分の包丁を持って行き、新人を手伝い始めた。
新人はボーッと俺の皮を剥く所を眺めている。俺は少し苛立って来た。
「手を休めずに皮を剥いて貰えますか?」
そう新人を見ずに言うと彼は慌てて皮を剥き始める。
俺は溜息をついたのだった・・・

皿洗いをさせると彼は気前良く五枚の皿を割る。
「中々、五枚は割れないっすよね」
「だな・・・」

俺と哀川さんは溜息をついていた
648 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:48:19.53 ID:i9smHq4ho
その翌日も彼は出勤していた。
正直、前日にシゲルさんにこっぴどく叱られたので、もう来ないかと思ったが彼は普通に来た。
余りに普通過ぎて反省もしていない様に見える。

又もや彼はすぐには何もしない。ただボーッと突っ立っているだけだ。
俺は溜息をついて新人に言った。
「皮剥き」
「え?」
彼はトボけた様な声を出す。
俺はその表情にイラっと来て思わず大声を出した。

「皮剥きをするって、そろそろ覚えて下さいよ!!!何回同じ事を言わせるんすか!!!朝来たら皮剥き!!その後は皿洗い!!」

その言葉に新人はうろたえる。そして硬直したまま動かない。
俺は更にキレた。

「何してんだ!!!とっとと動けえ!!!!!」

新人は無言で慌てて野菜のダンボールに向かう。
返事位・・・しろよな・・・
俺が再び溜息をつくと哀川さんが少し笑いながら俺の肩を叩いたのであった・・・
649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/27(水) 15:50:42.58 ID:7j2ncmr6o
きゃーーーーー
トオルちゃん来てるぅぅぅぅぅぅううううううう
650 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:50:51.15 ID:i9smHq4ho
俺はその夜、家で一人で紙にスケジュールを書いていた。
「何してるの?」
ユイがそう言って俺の前にコーヒーを置いた。
「ありがとう・・・いや、新人に一日のやる事を紙に書いて貼っておいてやろうと思って」
「へー・・・」
「けどな・・・甘やかし過ぎかな?」
「んー・・・どうだろう?人それぞれ能力が違うからね・・・」
ユイが困った表情で笑う。俺も苦笑いで応えた・・・

翌日、俺は壁に昨日書いた紙を貼った。
「これを見て一日、行動して下さい。左側が俺達の動き、右側がそれに対するアナタの動きです」

俺はそう言って、やっと自分の作業に集中出来る・・・
そう思い仕事をしようと思うと新人は壁の前から離れない。
651 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:52:13.91 ID:i9smHq4ho
「何してんすか・・・?」
「あ、いや・・・あ・・・」
俺の言葉に新人はオドオドしながら呟く。
「何?」
「あ・・・お、覚えよう・・・と思って・・・」

俺はイラッと来た。
「わざわざ、覚え無くても良い様に紙に書いて貼ったんだよ!!!てか、覚えるなら時間外に覚えろ!!!」
俺はバーンっ!!と壁を叩いた。
彼は飛び上がり、そのまま慌ててダンボールに向かったのであった・・・

なんなんだよ・・・アイツは・・・
シゲルさんと哀川さんが笑いを堪えながら俺を見ているのがムカついた
652 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:54:32.94 ID:i9smHq4ho
ある日の朝の事。

店の裏番号の電話が鳴る。
これは店員しか知らない番号だ。
シゲルさんが電話に出ると「おう・・・待て、トオルに変わる・・・」そう言ってシゲルさんが俺を呼んだ。
誰だ?そう思い電話を代わると「あ、あの、えと・・・」その吃り方はすぐに分かった。奴だ。

「どうしました?」
「あ、あの・・・ま、豆が・・・豆・・・豆・・・」
豆、豆うるせーな。
「要点だけを短く言って下さい」
「あ、あの・・・て、手にま、豆が出来たから・・・や、休ませて・・・」
ハハハハ・・・

「10分で来い!!!このやろおぉぉぉ!!!!!」

俺はそう叫ぶと電話を切った。
どこの世界に豆が出来て休む料理人が居るんだよ・・・てか、料理人に限らず、一般社会でもねーわ。

結局、彼は30分の遅刻で現れた。
だが、始終自分の豆を気にしながら包丁を使っていた・・・
653 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:56:21.97 ID:i9smHq4ho
俺は新人の扱いに非常に疲れていた。
いつまで経っても成長しない・・・いや、成長云々よりもまずは働く姿勢が出来ていないんだ。
正直・・・高校生でも、もっと仕事が出来んぞ・・・

そう思っていたある日、事件が起きた。
相変わらず皮剥きが遅い新人にヤキモキした俺は「とりあえず皿洗いに行って!」そう言って新人と皮剥きを交代した。その時だった。
焦った新人が調理台のギリギリの所に包丁を置いたのを見つけた。

マズイ・・・!
俺はそう思い慌てて調理台に駆け寄ろうとすると、そこに食材を抱えた哀川さんが現れる。
哀川さんは食材を抱えているので包丁が見えていない・・・
654 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:57:47.88 ID:i9smHq4ho
「哀川さん!!!」
俺が叫ぶと同時に哀川さんの腰が包丁の柄に辺り、包丁が回転しながら床に落ちた・・・

幸い、誰も怪我はしなかった・・・
だが・・・

「待てこらああああ!!!!!!」
俺は新人に駆け寄ると新人の胸倉を掴んだ。
「何回も言わすな!!!!包丁は絶対に調理台に置きっぱなしにすんじゃねえええ!!!!!危険だろおがあああ!!!!」
その言葉に新人は「ひっ!!」と声を上げる。
「包丁だけじゃねええ!!!商売道具を置きっぱなしにして、どうする気だ!!!!大切な道具だぞ!!!道具を大切にしねえ奴が料理なんか作れる訳ねーだろうが!!!!」

俺は今までに無い位の大声で新人を胸倉を掴んでいた
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/27(水) 15:58:09.51 ID:yy2JEXrNo
豆ワロタw オレも調理師だけど豆作って休む発想はなかったわwww
656 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 15:59:05.33 ID:i9smHq4ho
そして胸倉から手を外す。
「もう、二度と言わんからな・・・包丁は必ずしまえ、道具は大切に・・・うん・・・?」
見ると新人がうずくまりガタガタ震えている。

「・・・どうした・・・?」
俺が新人を引き起こそうとすると新人は小声で何かを呟いていた。
「すみません・・・許してください・・・もう・・・やめてください・・・」
そう小声で言いながら彼は震えている。

そして・・・目から大量の涙を流し・・・額には玉の様な汗があった。
「お・・・おい・・・」
俺は彼を起こすと声をかける。だが彼はずっと小声で謝罪の言葉を言いながら泣いているだけだった。
シゲルさんが「トオル!外へ連れて行け!!!」そう叫んだので、俺は彼を外へ連れて行ったのであった・・・
657 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:01:22.26 ID:i9smHq4ho
「はい・・・コーヒーっす」

俺はそう言って少し落ち着いた彼に缶コーヒーを渡した。
「・・・す、すみません・・・」
彼はやや小さめの声でそう答えコーヒーを受けとった。
俺達は店の裏にある公園にいた。

「大丈夫・・・すか?」
俺の言葉に彼は頷くと・・・
「ホントに・・・すみませんでした・・・」
そう言う。
「いや、まあ・・・こっちも強く怒鳴って・・・」
「違うんです・・・!」
俺の言葉を遮る様に彼は言った。

え?
俺は彼を見る。彼は少し缶コーヒーを見つめると、ゆっくりと話し始めた・・・
658 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:02:56.69 ID:i9smHq4ho
「僕は・・・小さい頃から・・・すぐにパニックになるんです・・・」

俺は彼を見る。

「元々、頭が悪くて、要領が悪いから・・・人より何でも遅かったんです・・・だから、それに追い付こうとして早くやろうとすると・・・焦って・・・」
「パニックに・・・なる?」
俺の言葉に彼は頷く。

「こんな僕なんで、小さい頃から・・・学校には友達が出来ずに・・・そしてイジメられていました・・・」
俺は何も言わずにコーヒーを見つめた。
「イジメられて・・・よく胸倉を捕まれて・・・それで、蹴られたり、殴られたり・・・どんなに謝っても許してくれなくて・・・だから、さっき・・・トオルさんに胸倉を捕まれて・・・その・・・」

彼は俺を見る。
659 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:04:10.87 ID:i9smHq4ho
そして・・・

「すみません・・・」
そう言って彼は謝った。

「一応、中学を出ても・・・高校に行ったら・・・何とかなるんじゃ無いかって・・・そう思って高校に行きました・・・だけど・・・そこでも同じ様に・・・イジメられて・・・」
彼はそう言って下を向く。
「人付き合いも苦手で・・・挨拶や返事をしよう・・・そう思うんですけど・・・どこにも就職が出来ずに・・・かれこれ六年が経って・・・」
俺は缶コーヒーを握りしめていた。
660 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:05:23.84 ID:i9smHq4ho
「でも、このままじゃダメだって・・・このままじゃ・・・そう思って・・・小さい頃から・・・料理か好きだったから・・・だから・・・料理人に・・・」
彼はそこまで言うと押し黙ってしまった。
俺はずっと缶コーヒーを見ていた。

多分・・・他の人間が聞いたら・・・どう思うかは分からない。
だが、俺は・・・
俺は彼を見た。

彼は・・・俺だ。
俺そのものなんだ・・・
昔の、ただ日々を逃れる為に生きていた・・・

俺自身なんだ・・・
661 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:06:36.05 ID:i9smHq4ho
彼と俺の違いは・・・

俺はあの仲間達に巡り会えた・・・
警備の社長に巡り会えた・・・
石田さんに・・・
そしてユイに会えた・・・

だから、今の俺がいる。
彼には無かったんだ・・・俺は運が良かっただけなんだ・・・

俺はそう思うと缶コーヒーをごみ箱に捨て、彼を見た。
「とりあえず・・・良いですか?」
彼も顔を上げる。

「まずは・・・挨拶をしましょう。そして・・・笑いましょう・・・!」

彼が少し驚く。
662 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:07:59.27 ID:i9smHq4ho
「それから、ゆっくりで良いです・・・まずは皮剥きを覚えましょう・・・」
彼は俺の目を見て慌てた様に頷く。だが俺は首を振った。
「違うでしょ」
俺がそう言うと彼は少し考える。俺は彼が考えている間、ゆっくり待った。
彼はハッとした表情をすると慌てて言った。

「は、はい!分かりました!」
「OKです!・・・最後に」

俺はそう言って笑う。
「名前・・・まだ聞いて無いんすよ・・・」
俺の言葉に彼も照れた様に笑い答えた。

「さ、佐々木・・・ヒロシ・・・です」

あ、そんな名前だったんだね。俺は笑った・・・

663 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/27(水) 16:09:19.35 ID:TMopwndeo
こんな上司欲しい…
664 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:09:55.64 ID:i9smHq4ho
ヒロシさんは、それから頑張った。
成長は遅いが、それでも、それをカバーする様に一番に店に来て皮剥きをする。
段々他の人達とも話す事も出来る様になる。
そして、鼻毛も切り、髪型を整え、ホクロ毛も切った。
何故か口臭も治ったみたいだった・・・

人が成長するのは嬉しい。
正直、俺も成長が出来た・・・そう思えた・・・

665 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/27(水) 16:10:43.76 ID:7j2ncmr6o
今日はここまでじゃないよな????
666 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:11:24.93 ID:i9smHq4ho
そして季節は秋が過ぎ冬になった。

ある日俺が家に帰るとユイがトコトコと俺の側に寄って来て何かモジモジしている。
「どうした?」
俺が尋ねるとユイは顔を赤くしながら言った。
「トオル君・・・あ、明日休み・・・だよね?」
「え?うん」
「ちょっと・・・付き合って欲しい所があって・・・」
「良いよ。どこ?」
「え・・・あ、あの・・・び、病院・・・」

病院?なんでまた・・・
「どうした?体調が悪いの?」
俺の言葉にユイは首を横に振る。
667 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage ]:2011/07/27(水) 16:11:29.46 ID:wz0bmMwro
まだまだ続きます
668 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/27(水) 16:12:10.43 ID:TQb4OEiao
デキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
669 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage ]:2011/07/27(水) 16:12:42.48 ID:wz0bmMwro
まさかッ!
670 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:13:00.71 ID:i9smHq4ho
「あ、内科じゃ無くて・・・その・・・さ、産婦人科・・・」

産婦人科・・・?え?・・・
俺はユイを見つめた。


「で・・・出来ちゃった・・・かも知れない・・・」
「・・・て、事は・・・」
俺が生唾を飲む。



「私達の・・・赤ちゃん・・・!」
・・・!!!!


「ぃ・・・・やっほおおおおおお!!!!!!!」
そう叫ぶと俺はユイを抱きしめる。
「マジ???マジで????」
「う、うん・・・多分・・・!」
「でかしたああああ!!!!ユイいいいい!!!!!」

俺は近所迷惑を考えずに・・・思い切り叫んでいたんだ・・・




翌日。ユイの妊娠八週目が分かったのであった・・・

671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/27(水) 16:14:15.06 ID:7j2ncmr6o
エロ描写も無しに妊娠だと!!!
672 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:15:31.02 ID:i9smHq4ho
すみませんww今日はここまでっすww

赤ちゃんが出来ましたww

ちなみに現在はいよいよ最終章に入る手前位でしょうか?

ではまた明日!
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/07/27(水) 16:15:35.49 ID:6R5cB7pxo
タカコ「中に誰もいないじゃないですか・・・」
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/27(水) 16:16:07.52 ID:TMopwndeo
俺の人生で二番目に嬉しかった日と同じだ。
675 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/27(水) 16:16:57.40 ID:i9smHq4ho
>>671
ちなみに、俺達の初夜は正に結婚初夜の日でしたなww
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/27(水) 16:26:12.28 ID:OTOdMABNo
てめぇ!!!!!!!!!脱ぎっぱなしのパンツ履かせろや!!!!!!!!!!!
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/07/27(水) 16:29:41.59 ID:UoH4y8czo
学生結婚で妊娠か
ユイの夢は…
ま、ユイが子供欲しいって言ったんだからそれもまた夢か
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/07/27(水) 16:30:15.25 ID:7j2ncmr6o
>>675
最後でも良いからそこの所をkwwsk
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/27(水) 16:37:59.93 ID:olWACRMro
逆にエロ描写がないほうがいい気がする…
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/27(水) 16:41:36.35 ID:FE38Op4Lo
全く金が貯まらんなwwww
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/27(水) 17:13:29.36 ID:TMopwndeo
>>677
続きをwktkしながら待とうず
682 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/27(水) 18:21:24.14 ID:CsKZGZHzo
鬱展開もう一回くらいありそうで怖い
683 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/27(水) 18:29:03.95 ID:a5c7eRKTo
おい





おい なんだこのリア充wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwばくはつしろwwwwwwwwwwww
684 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/27(水) 18:29:27.55 ID:wi4PQmSFo
まとめに転載されそうで怖いなぁ
トオル自身はその事についてどう思ってる?
685 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/27(水) 18:56:30.27 ID:abq9IMiVo


-------------この物語は、フィクションです。

登場人物その他背景店舗など実在しません--------------
686 : ◆IlyqRd8LUe.a [sage]:2011/07/27(水) 19:25:05.30 ID:+Si9tHLIP
予想第二弾やっとくか
687 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/27(水) 20:26:05.91 ID:UZLJqaDRo
おつかれさま
あらま。妊娠か!
エロ描写は別にいらないけど、それはつまり…
だいぶやってたんだなwwwwww
俺も経験あるけど、ほんといつ?何時の間に!?みたいな感じだよな
次回も期待!
688 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/27(水) 20:27:26.17 ID:wi4PQmSFo
ビアンカがいつの間にか妊娠してたみたいな気分だ
689 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/27(水) 20:35:35.83 ID:3goSnOfMo
まさか初夜の一発がホームランだったとか・・・??
690 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/27(水) 20:52:00.26 ID:45kYrEXIO
kwskとは言わないが、どんな雰囲気、流れだったかくらいは知りたいなww
691 :名無しのパー速民 [sage]:2011/07/27(水) 22:26:30.86 ID:1w/j3SDAO
エロはいらんがピロートーク聞いてニヤニヤしたいww
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/28(木) 07:42:40.48 ID:qeLF+mq6P
トオル召喚
693 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/28(木) 07:51:47.79 ID:5bP8l8Uwo
    /⌒\
   /   \__
 _∧/  /\  )
 \__/ヽ/⌒ヽ/
  / ● ● ⌒)
  |  〈  
  \_o__/―、
  / 丶/\/ _ |
  \<|    //
   ヒ|―――-ヒ)
    |__|__|
    H  H
    U  U
694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/28(木) 08:08:56.36 ID:Bqwgwzago
かざまくんwwwwwwwwwwwwwwww
695 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/28(木) 09:35:29.12 ID:FUrF0H+IO
>>693
トオル違いwwwwwwwwww
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/28(木) 09:38:49.36 ID:qeLF+mq6P
>>693
なんかしゃべれ
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/28(木) 10:16:35.88 ID:k018f9mWo
かざまくん人気に嫉妬wwwww
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/28(木) 10:27:04.26 ID:hHCgd1OIO
わろたwwwwwwwwww
699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/28(木) 17:45:12.85 ID:0X7KsRPKo
どーした埼玉!
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/28(木) 21:40:36.81 ID:wwcjTy9Zo
家だと埼玉県表示しないんだよねぇ・・・
トオルのレス間に1個のaaでいいと思うのです。
今日は呼ばれたので・・・





               >┴<
                ‐(,゚∀゚,)‐ < サイタマサイタマ
               >┬<
              ,、,、         ,、,、
   サイタマ〜! > ((∀゚,)')    (`(,゚∀)') < サイタマサイタマサイタマ
             〉 , <     `i ,、 〈
           (,/ '‐'     '‐' .ヾ,)



トオルのレストランは何処にあるんだろう、埼玉県だといいなあ
701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/07/28(木) 21:43:46.86 ID:iaFsMK2go
      \       ヽ           |        /        /
          \      ヽ               /      /
‐、、         殺 伐 と し た ス レ に 鳥 取 県 が ! !      _,,−''
  `−、、                  __/\            _,,−''
      `−、、              _|    `〜┐         _,,−''
                      _ノ       ∫
                  _,.〜’        /
───────‐     ,「~             ノ    ───────‐
               ,/              ` ̄7
                |     島 根 県     /
           _,,−'   ~`⌒^7            /    `−、、
        _,,−''            丿            \,      `−、、
 ,'´\           /  _7       /`⌒ーへ_,._⊃         /`i
 !   \       _,,-┐    \    _,.,ノ          r‐-、、      /   !
 ゙、   `ー--<´   /      L. ,〜’             ゙、  >−一'′   ,'
  y'  U      `ヽ/     /            ヽ      ヽ '´     U   イ
                                ____
         /      __        |       \____\
    ___/__ / ̄    ____|____ \ \____\
       //ヽ   /___         /|\       \ \____\
     / / ヽ  / /__     /  |  \       \_______
   /  /   / /   /     /    |    \          |    \
  /   /  / /  _/   __/      |      \__      |     \  ̄―
702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(青森県) [sage]:2011/07/28(木) 21:49:26.07 ID:VDV1YiKGo
>701
何でどれも一致してないんだよwwww
703 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/28(木) 22:04:56.09 ID:dklCmgkOo
>>701 ワロタwwwwwwww
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/29(金) 00:46:34.26 ID:R6yXmhKJo
>>701
秀逸すぎwwwwww
705 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:07:20.19 ID:PDxK5LNxo
こんばんワニ
いやあ眠いけど書いて行きますね
706 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:08:53.75 ID:PDxK5LNxo
ピンポーンとインターフォンンの音が響き、ユイが出ようとしたのでそれを止め、俺が玄関に向かう。
ドアを開けると「おめでとうごさいまーす!」そう言ってリコさんと、タカコ、マリの三人が家に入って来た。
「あ、ありがとうございます」
俺はそう言って礼をした。
「あ、わざわざありがとう」
ユイが出て来て三人に礼を言う。

「はい、お祝いに花束です♪」
タカコが花束を渡して来た。
「いや、まだ妊娠が分かっただけだから・・・」
俺が苦笑いをする。

「何を言ってんの、新しい生命が出来たお祝いじゃない!」
リコさんが、そう言って俺の肩を叩いた。
まあ、確かに・・・
707 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:10:17.55 ID:PDxK5LNxo
「あれ?バカと書いて男子軍団は?」

マリがサラリと酷い言い様だ。
「あ、もう来ると思うけど・・・」
その時、家のベランダがドタンと言う音を立てた。
「ん?」
俺が見るとベランダに向井さんと部長が転がっている。
何してんだ、この人ら。俺がベランダを開けて聞く。
「・・・どっから入るんすか・・・」
「いってー・・・せっかく驚かしてやろうと思ったのに・・・」
いや、妊婦が居るから辞めろよ。

見るとベランダの横に梯子を立てかけている。
下からヨウイチが梯子を昇っている最中で下にはサモハン、ケンタ、マルオが順番を待っていた。
708 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:11:58.26 ID:PDxK5LNxo
「わざわざ・・・持って来たの?」
俺が昇って来ているヨウイチに尋ねた。
「こ、怖い・・・」
ヨウイチが震えながら昇っている。怖いなら辞めろよ。
「これ、揺らしたらヤバい?」
俺が梯子の上を持ってヨウイチに尋ねた。
「や、やめろおおおお!!!」
必死のヨウイチを久しぶりに見た。

「あー、梯子を持って来るだけ面倒臭かっただけだな」
「そうだねー」
向井さんと部長が土足で家に入る。
「くつー!!!!」
「ああ、大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃねえええ!!!!」
二人は舌打ちしながら靴を脱いだ。
709 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:13:05.22 ID:PDxK5LNxo
「てか、梯子、近所迷惑なんでちゃんと片付けて下さいよ」
「あ、明日、ウチの実家に戻しといて」
「俺がかよ!!!」

ヨウイチ、サモハン、ケンタが昇って来た所で俺はベランダの窓を閉めた。
「さあ、なんにせよ全員揃ったな!」
向井さんが言った時にベランダをコン、コンと叩く音がする。
マルオが半泣きでベランダを叩いていた。
まあ、お約束と言う事で。

710 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:14:59.22 ID:PDxK5LNxo
「よし、じゃあグラスを持って」
部長がそう言って皆を見回す。
「じゃあ・・・トオル、ユイ夫妻の新しい生命の誕生に・・・」
おおー、部長がまともだ。
部長は眼鏡を光らせると嬉しそうに叫んだ。

「カンガルー!!!」
「カンパーイー」
俺達も乾杯する。
「うおおおい、ツッコミ無しかよおおお!!!」
「いや、なんにせよめでてえな」
「ですね」
部長は窓の外を見はじめた。

「え?今妊婦何ヶ月?」
ヨウイチが尋ねる。
「二ヶ月かな?」
711 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:21:00.97 ID:PDxK5LNxo
「ほー・・・て、事は・・・」
サモハンが数え始める。向井さんがハッとした表情をした。

「十月に皆でキャンプに行った時かあああ!!!!」
「違うわああああ!!!!」

俺が否定をする。ユイが顔を真っ赤にして下を向く。
「ま、まさか・・・二人で薪を取りに行った時に・・・」
ヨウイチが呟く。
「違うっつってんだろ!!!」
「あ、なんかあの時長かったもんね・・・」
リコさんが思い出しながら言った。
「きゃあ!キャンプ場で・・・星を見ながら・・・」
マリがなんかテンションを上げる。
ユイは否定する為に顔を真っ赤にしながら叫んだ・・・

「違いますっ!!!キャンプから帰った夜です!!!!」

全員がユイを見た。
自分の言葉に気が付いたユイは溶け出してしまう・・・
俺も顔を赤くしてしまった・・・
712 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:23:02.66 ID:PDxK5LNxo
「ねえ、男の子?女の子?どっちかな?」

酒に酔ってきたリコさんが興奮する。
「あ、いやまだ分からないんすよ。でも、エコーの写真は貰いましたよ」
「あ、見たいでーす」
タカコとマリが声を揃える。ユイがエコーの写真を持って来て見せた。
「え?どこ?」
「これ、この点みたいな奴」
「あ、これかー!!」
「ちゃんと動いてて、心臓も有るんだって」
「すげえ・・・なんか、すげえ・・・」
「ホントに・・・子供って出来るんだねえ・・・」
「神秘的だ・・・」

皆が感心した声を出す。
713 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:24:48.70 ID:PDxK5LNxo
「そっか・・・二人も親になるんだね・・・」
リコさんが呟く。
「去年まで一緒に机並べてたのにな・・・親なんだ・・・」
ヨウイチが天井を見た。
「なんか、スゲエ不思議っすね・・・」
ケンタは何故か泣きそうになっていた。
「なんか感動・・・」
タカコもそう言う。向井さんがその言葉に頷いた。
「セックスしただけなんだけどな」
まあ、そうなんだけどね・・・

「え?ユイさん大学はどうするんすか?」
「あ、一応休学しようかと思って・・・」
「え?でも天文台に行く夢は・・・?」

マリが聞く。
714 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:25:54.73 ID:PDxK5LNxo
「うん・・・ちゃんと叶えるよ・・・でも・・・」
ユイはそう言って俺を見る。

「それはいつでも叶えられるから・・・今はせっかく誕生してくれた・・・私達の家族を生みたいんだ・・・!」

そう言って俺に「ね?」と聞いて来た。
俺もユイの目を見て頷いた。

「そっか・・・なんか幸せそうだな・・・」
柄にも無く部長が呟く。
「はい、幸せですよ!」
ユイは笑顔で応えたのでリコさんがユイの頭をクシャクシャにしたのであった・・・
715 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:27:45.74 ID:PDxK5LNxo
年末の慌ただしさが終わり俺達は初めての正月を迎えた。
二人で初詣に出掛ける。
「何を願い事したの?」
俺が尋ねるとユイは照れた様に言う。
「赤ちゃんが無事に生まれて来ます様に・・・って」
「あ、俺も」
「あと・・・」
「まだ有るんかいww」

「家族が・・・いつまでも幸せで有ります様に・・・!」

その言葉に俺はユイの頭をポンと叩いた。
ユイは俺の肩に頭をもたれかけ笑っていた・・・


正月が終わり俺とユイは成人式を迎えた。
だが、俺は仕事で勿論出ない。ユイもその頃からツワリが出始めたので家にいた。
やっと大人になった俺達だが、既にユイの誕生日を迎えた時点で二人で婚姻届を出していた。
だから形も実際にも夫婦に成ってからの妊娠で俺は少しホッとしていたんだ。
716 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:29:23.36 ID:PDxK5LNxo
1月を越えるとユイのツワリは益々酷くなっていた。
中々物が食べる事が出来ない。
俺は何とか工夫してユイの食べやすい物を作るがユイは受け付け無かった。
ユイは動かずに布団の上で過ごす事が増える。
俺もユイの側に居てやりたかったが、仕事が有るのでそうはいかない。

「大丈夫・・・だから、トオル君は仕事に行って・・・」
ユイは少しやつれた顔でそう言う。
こんな時に両親が居れば付いていて貰う事が出来るんだろう。
だが、それが出来ない自分の運命がもどかしく感じた。

だけどね・・・
俺達には両親が居なかったが、仲間が居たんだ・・・

「さあ、後は私に任せてトオル君はさっさと仕事に行きなさい!」
リコさんがそう言って俺をドアに押しやる。
717 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:30:21.34 ID:PDxK5LNxo
「す、すみません・・・後は頼みます・・・」
俺はリコさんに礼を言って仕事に行く。
リコさんが調度大学が休みなので毎日、付きっ切りでユイの側に居てくれたんだ。
また、二月の中旬には入試を終えたタカコ、マリが交代でユイの側に居てくれる。
ホントに女子軍団には助けられた。

「こう言う時に男は役立たんな・・・」
そう淋しそうに呟く男子軍団だったが、その思ってくれる気持ちで充分であった。

俺はユイの唯一食べる事が出来る柑橘類を使い、色んな料理を作る。
ユイはそれを嬉しそうに食べてくれていた・・・
718 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:32:03.34 ID:PDxK5LNxo
4月に入るとユイのツワリは治まる。
安定期に入った様だ。
今度はユイは色んな物を食べ始めた。夜中に起きてピザを食べていた時は引いたよ。
お腹も大きくなり、マタニティ姿のユイはツワリ期間を取り戻すかの様に家事に勤しみ始めたんだ・・・

そんな順調な毎日の中、俺に転機が訪れた。
ある日仕事終わりにシゲルさんが俺を呼んだ。
「トオル、ちょっと来い」
そう言って俺を奥のオーナー室に呼ぶ。
719 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:33:43.59 ID:PDxK5LNxo
そこにはスーツを着たシゲルさんと同い年位のオッサンが居た。
「座れ」
そう言って俺を、そのオッサンの前に座らせる。
「紹介しよう、この方はAホテルの料理長をされている山本さんだ」
「え?」
Aホテルと言えばかなり有名なホテルだった。
山本さんは俺に笑顔で頭を下げる。俺も慌てて頭を下げた。
「今な、Aホテルで少し人材不足でな・・・お前来週から一ヶ月、Aホテルに行け」
「え?俺がっすか??」
俺は驚いてシゲルさんを見る。
「ああ、山本さんもOKしてくれた」
山本さんは頷くと俺に言う。
「今日、君の料理を食べさせて貰った。君は充分にウチのホテルで働ける、そう思ったよ」
マジで???俺は目をパチクリとさせる。
720 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:37:07.56 ID:PDxK5LNxo
「まあ、修業だと思って行って来い・・・良い経験に成るから!」
シゲルさんの言葉に俺は頷いた。
正直、嬉しかった。そして自分の力を試してみたい、そう思ったよ。
だから俺はすぐにOKをしたんだ・・・だが、心配は有った。
今はシゲルさんの計らいでユイに何か有ったらすぐに帰れる様にしてくれていた。
だが、Aホテルと成ったらそうはいかない。朝から晩まで忙しくなるし、家から少し遠い。
大丈夫かな・・・?そう思いながら俺は帰宅してユイに、その旨を伝える。
すると・・・

「すっごーい!!!やったね!トオル君!!」
そう言って喜んでくれた。
「でも、大丈夫?なんか有っても、すぐに帰れるかな?」
「大丈夫だよ。もう安定期に入ってるし、出産は八月だし・・・それに何か有ったらリコにすぐに連絡するから」
そう言われ俺はホッとした。
俺からリコさんに連絡をしてお願いをする。リコさんも喜んでくれて、OKしてくれたんだ・・・
721 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:38:32.78 ID:PDxK5LNxo
翌週から俺はAホテルに修業に出た。
そこの厨房には常時20名位のスタッフが常駐している。
厨房は戦場さながらの光景だった。
俺は新人として皮剥き、皿洗いから始め皆の動きをよく見た。
少しでもシゲルさんの店に役立つ情報や技術を身につけようと必死で働いた。
毎日クタクタになり家に帰る。
ユイに寝ながら、その日に有った事を話した。
ユイは楽しそうに俺の話を聞いてくれていた・・・

一ヶ月の修業期間に終わりを告げ俺はシゲルさんの店に戻った。
修業の最後の方は俺も何品かの料理を作らせて貰う事が出来た。
俺は店に行くと哀川さんや他のスタッフにその事を嬉しそうに話をする。
そして、Aホテルでの刺激を受けた俺は更に料理に力を入れて全力で働く。
722 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:40:05.27 ID:PDxK5LNxo
店に戻り一週間が過ぎた頃、再び山本さんが俺の前に現れた。

「正式に・・・Aホテルで働いて欲しい・・・」

山本さんは挨拶もソコソコに俺に、そう告げる。
はい?
俺は少し自分の耳がおかしく成ったかと思う。
「お前の腕が認められたってこった」
シゲルさんの言葉に俺は驚いた。山本さんは俺に話す。

「実は、この前、君を借りた時にね、本当は哀川君をお借りしようと思っていたんだよ」
「哀川は何度か貸してるからな」
シゲルさんは笑う。
「だが、シゲルさんが、私に君を奨めて来た。正直、私達としてはね、余り期待をしていなかったんだが・・・前にも言った様に君の料理を食べて、これならば大丈夫、そう思ったんだ」
723 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:41:11.30 ID:PDxK5LNxo
山本さんはそう言うとチラリとシゲルさんを見る。
シゲルさんは、ソッポを向いていた。

「その時に・・・シゲルさんは、有る条件を出した。もしも君が全く使えなかったり、才能を感じられ無かったら給料は要らない・・・と」

え?
俺はシゲルさんを見る。シゲルさんは、まだソッポを向いている。

「だが、もし君に才能や能力が有れば・・・Aホテルで雇って欲しい・・・そう言って来たんだ」

え???!!!!俺は目を丸くする。
「私達は君を充分に出来る人間だと感じた。そしてすぐに稟議を掛けて、君の正式入社の了解を上から得たので迎えに来た」
724 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:43:01.99 ID:PDxK5LNxo
俺は少しパニックに成りはじめる。
え?俺が?で、でも・・・
俺はソッポを向いているシゲルさんを見る。

俺は・・・このマルセイユが好きだ・・・
そしてシゲルさんにも恩義が有る。
シゲルさんは俺を育ててくれた師匠だ。
だから裏切れない・・・

だが、その師匠が俺をAホテルに推薦した。どう言う事だ?
俺がそう思って黙っていると山本さんが俺に紙片を出して来た。
「これが、君への報酬だ」
その紙片を見るとビックリした。家族三人で充分に食べていける金額なのだ。
「え???こ、こんなにですか???」
「君を即戦力として雇いたい。君ならば、これ位支払おう」

マジかよ・・・!
俺はシゲルさんを見る。シゲルさんは尚もソッポを向いていた。
俺はしばらく黙った後に呟いた・・・

「少し・・・考えさせて頂けませんでしょうか・・・」

・・・・
・・・・
725 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:44:30.90 ID:PDxK5LNxo
「何を考える。即答してAホテルに入るだろ」

山本さんが帰った後にシゲルさんが、そう言う。
「でも・・・俺はマルセイユが好きなんで・・・」
俺の言葉にシゲルさんは溜息をついた。
「あのなあ、普通料理人は中々、上の店には上がれないんだぞ?よっぽどのコネが無い限りな!」
「でも・・・」
煮え切らない俺にシゲルさんはグラスを持って来てビールを注いだ。
「飲め」
「ありがとうございます・・・」

俺とシゲルさんは黙ってビールを飲む。
キンキンに冷えたビールが喉を通って行った。
726 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:45:45.11 ID:PDxK5LNxo
「俺と山本はな・・・同期なんだよ」

シゲルさんが突然に呟いた。
「俺も昔にAホテルにいた。だけど俺は自分の店を持ちたくて独立して、この店を持った」
俺は黙ってシゲルさんの話を聞く。
「お前も・・・いつか店を持ちたいんだよな?」
その言葉に俺は頷いた。
「なら、一度はデカイ厨房を経験しておいた方が良い・・・料理人はそうやって修業して行くんだよ」
俺は下を向く。

「それとな・・・」
シゲルさんはビールをグビッと飲む。
727 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:47:06.38 ID:PDxK5LNxo
「お前・・・子供が生まれるだろ」
「・・・はい」
「じゃあ、今の給料で、ユイちゃんと子供を養っていけるか?」

そう言われ俺は黙る。
「無理だろう。俺はお前に子供が出来ると聞いてからな、どうにか給料を上げれないか考えた・・・だが、ウチには哀川にも家族が居る。他の連中もな・・・金は必要だ」
そりゃそうだ。
「そうなった場合・・・お前は必ず破綻するよ・・・いつか料理人を辞めて稼げる仕事に移っちまう」
「そんな・・・」

俺の言葉にシゲルさんが俺を睨む。
728 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:48:51.22 ID:PDxK5LNxo
「じゃあ、どうするんだ??お前は家族を路頭に迷わせるのか???良いか?家族を持つってのはな、家族を養うって事だそ???」

俺は下を向いた。

「家族を幸せに出来ねえ奴がなあ!美味い料理を作れる訳ねーだろうが!!!愛の無い人間に美味い料理は作れねーんだよ!!!」

シゲルさんの言葉に俺は何も言えなかった。
シゲルさんも少し鼻息を漏らしビールを飲む。

「俺は・・・お前に料理人を辞めて欲しく無いんだよ・・・」
俺は顔を上げた。
「最初にお前が来た時はな・・・正直、余り使えねーかと思った・・・だが・・・」
シゲルさんは俺を見る。
729 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:49:55.81 ID:PDxK5LNxo
「お前は誰より・・・頑張った・・・!」


シゲルさんが真っすぐに俺を見つめていた。
「センスが有る奴は、この世に腐る程居る・・・だが、成功する人間は必ず一つ、持っている物が有るんだ・・・」
俺もシゲルさんを見つめた。

「それは・・・常に努力をする気持ちだ・・・!」

ビールのグラスから水滴が落ちた。
730 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:50:50.24 ID:PDxK5LNxo
「お前には、それが有る。だからお前は必ず成功する・・・!だから、絶対に料理人を辞めちゃダメだ!その為に、お前は家族を養える場所で料理人を続けろ・・・!」

俺は下唇を噛み締めた。



「それが・・・師匠としての・・・最後の命令だ・・・!」



俺はいつの間にか泣いていた。
勝手に涙が流れていた。

シゲルさんの思いに・・・俺は涙を流して居たんだ・・・
731 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:51:55.11 ID:PDxK5LNxo
その夜、ユイにAホテルの事、そしてシゲルさんの話をした。
ユイは笑顔で「トオル君が何を選ぼうと、私達はトオル君に付いて行くよ」そう言ってくれた。

俺は一晩考えた後に、翌日、山本さんにお世話に成る旨を伝えた・・・


マルセイユでの最後の日。
俺は朝一で店に行った。そして、朝からいつもの様に仕込みをする。
手が空いた俺は厨房の清掃もした。

最後の仕事を終えた後、皆が俺の為に店で送別会を開いてくれた。
732 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:53:17.82 ID:PDxK5LNxo
新人のヒロシさんは俺に泣きながら感謝の意を話していた。
哀川さんは「絶対に負けるなよ」そう言ってくれていた。
他のスタッフも俺に激励を贈ってくれたんだ・・・

送別会を終えて店を出る際に俺は再度シゲルさんに挨拶に行く。
シゲルさんは俺の謝辞を照れた様に手を振って「うるせー馬鹿」そう言って笑った。
そして最後に一言だけ俺に言ったんだ。


「お前が独立した時は・・・最初の客にしてくれ・・・!」


俺はその言葉に涙しながら頭を下げていた・・・

733 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 02:54:47.06 ID:PDxK5LNxo
今日は以上です
夜中なので誰も居ないみたいですね

じゃあさいならっきょ
734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県) [sage]:2011/07/29(金) 02:55:02.59 ID:IVDi8G++o
深夜に乙です‼
シゲルさん、カッコいいです。
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/29(金) 02:56:45.39 ID:nWKMWINIO
読んでたよ!また明日楽しみに待ってます。
736 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 02:56:51.95 ID:5rLgROlOo
いたよ おつ
737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/29(金) 02:57:13.51 ID:D/SMBkrw0
実はROMってたんだぜww
こんな遅い時間に乙でした

そして初登場時からリコさん萌えだった俺に死角は無かったwwww
738 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(島根県) :2011/07/29(金) 03:00:18.51 ID:zNdFEhtqo
初夜は結婚初夜で
GET GOALがキャンプの日の夜?
739 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 03:02:00.37 ID:PDxK5LNxo
びっくりしたww人が居たんだww
じゃあ、また明日ww

>>737
ちなみにリコさんは可愛いよww
美人さんじゃなくて可愛いタイプ
740 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/29(金) 03:06:16.12 ID:R6yXmhKJo
いたよ
乙です
741 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/29(金) 03:14:59.04 ID:D/SMBkrw0
>>739
なん…だと?

ユイの旧友且つ親友で、
色々面倒見が良くて、
常識人だけどノリは良くて、
美人というよりは可愛いタイプで、
胸のサイズは主要女性陣の中で最大…

なにこのチートww
益々リコさんに萌えたwwww



…ところで、十月のキャンプ(>>711参照)では特筆する程のイベントが無かった、という解釈でおk?
742 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/29(金) 07:19:11.22 ID:7SIFYiRHo
さいならっきょ…
久しぶりに聞いたwwwwww
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 09:54:51.86 ID:pkMakTVdP
18時間後にトオル召喚
744 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 10:01:21.92 ID:GX5DM5GVo
やっぱり夏は客が多くて忙しいんだろうなあ
745 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:38:10.67 ID:PDxK5LNxo
>>743
早い登場で申し訳ないっすww

>>741
そう言うチート仕様で申し訳ないww
一応キャンプは普通に楽しかったんですけどね
まあ、その話は別の機会に・・・

で、この話ももうすぐ最終章を迎えます・・・と言っても多分、このスレでは収まらないかも・・・

まあ続きを書きますね
746 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:40:19.74 ID:PDxK5LNxo
季節はセミがやかましく鳴く八月となった。
ホテル勤務が少し慣れ始めた頃、ユイがとうとう臨月を迎えた。

「お腹大きいっすね」
ケンタがそう言ってユイの腹を見る。
「だいぶ動くよ、触る?」
「良いんすか?じゃあ・・・」
ユイの言葉にケンタが触る。
「うわっ!スゲエ!動いた!」
「たまに蹴ったりする時はね、本当に足の形が分かるんだよ」
「へえー・・・なんか感動っすね・・・」
ケンタが驚いた表情を浮かべる。

今日はケンタとマルオが遊びに来ていた。
二人共、大学に入り大学生活も慣れた様だった。
747 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:41:47.83 ID:PDxK5LNxo
その時、マルオが手を上げながらユイに近付いた。
「じゃ、じゃあ・・・俺も・・・さ、触らせて・・・」
俺はマルオを蹴った。
「な、何をするんすか・・・」
マルオが呻く。
「なんか、お前はエロい」
マルオが泣いた。
「もう!良いじゃない・・・マルオ君、触っても良いよ」
ユイの言葉にマルオが泣きながら触っていた・・・なんかエロいんだよな。コイツは。


臨月になり、ユイのお腹ははち切れんばかりに成っていた。
そして生まれて来る子供は女の子、と言う事が分かった。
それを聞いた向井さんは「下手くそww」と嫌らしく笑う。

何がだ!
748 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:43:19.19 ID:PDxK5LNxo
俺は毎日仕事に取り組みながらも考える事があった。
それは名前だ。
どんな名前にすべきか・・・候補は色々思い付くが、中々決まらない。

ある晩俺はユイが眠ってから一人で名前を考えていた。
ユイの顔が月明かりに照らされている。
俺はそんなユイを見つめて頬を優しく触った。
ふと、ユイが目を覚ます。

「あ、ゴメン・・・起こした?」
俺が尋ねるとユイは微笑みながら「大丈夫・・・」そう言う。
俺も笑いながらユイの頬にキスをする。
「・・・名前、考えてるの?」
「ああ、うん・・・けど、なんか決まらないんだよな・・・」
「大事な名前だもんね・・・」
749 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:45:17.86 ID:PDxK5LNxo
「そう、大事な家族の名前」
俺達二人は妊娠が分かると男の子ならユイ、女の子なら俺が考える、と決めていた。

「パパの初仕事だからね・・・」
ユイが微笑む。
「悩むよー、ホントに」
俺は頭を抱えた。

「ねえ?」
「うん?」
「トオル君は・・・どんな子に育って欲しい・・・?」
「どんな子・・・?」
「うん・・・」
俺は窓の外から差し込んで来る月明かりを見た。
「ん〜・・・正直ね、どんな子って言うのは・・・分からないんだな・・・」
「そうなの・・・?」
「うん・・・ただ、一つだけ・・・望みがある・・・」
「どんな・・・?」

ユイが俺を見つめた
750 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:46:38.63 ID:PDxK5LNxo
「たくさんの仲間を・・・作って欲しい・・・!」

「・・・仲間?」
「うん。俺達みたいに、あんな楽しくて最高の仲間・・・そして、目一杯、楽しんで欲しいな・・・」
俺の言葉にユイは頷いた。
「うん・・・そうだね・・・最高の仲間に巡り会って欲しいね・・・!」
「だろ・・・?」
俺も横向きに寝転がりユイを見る。

「後は・・・」
「なんだ、まだ有るの?」
ユイが笑う。俺も笑いながら言った
751 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:51:39.37 ID:PDxK5LNxo
「いや、俺の・・・いや、俺達の夢を叶えて・・・欲しいな・・・!」

その言葉にユイは俺を見る。そして微笑んだ。

「うん・・・叶えて欲しい・・・普通の生活を・・・送って欲しい・・・」

俺はユイを見つめて笑いながら言う。
「えーっと?春は・・・家族でお花見!」
「そう、キャンプに行ったり・・・」
「プラネタリウムにも行かないとね!」
「紅葉見たりさ」
「スキーにも連れて行って上げたいね!」
「あと・・・絶対にしないといけないのは・・・」
「そう、あれ!」
二人で声を揃える。


「家族で・・・花火・・・!」


そして笑った。
752 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:53:24.59 ID:PDxK5LNxo
「俺は肩車をするね」
「私は花火より、二人を見ちゃうかも・・・」
「あー・・・早く会いたいな・・・」
「うん・・・会いたい・・・私達の『アルデバラン』に・・・」
「アルデバラン?」
「そう、アルデバラン・・・牡牛座の星なんだけど・・・アラビア語でね・・・『後に続くもの』って意味が有るの」
「後に続くもの・・・か」
「なんか、カッコイイでしょ?」
「うん・・・そして、後に続いて欲しいな・・・俺達の夢の・・・」
「うん・・・!」

俺達は月明かりに照らされながら、いつまでも話をしていた・・・
753 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:55:08.39 ID:PDxK5LNxo
「そろそろ・・・予定日でしょ?」

リコさんがユイのお腹を摩りながら言う。
「でも初産は予定日より遅れるのが殆どなんだって」
ユイが答える。
「早く見たいな〜・・・ねえ・・・」
そこまで言いかけてリコさんが止まった。
「ちょっと、トオル君、早く名前決めなさいよ・・・なんて呼べば良いか分からないじゃない!」
「まあ、好きな様に呼んで下さい・・・」
「じゃあペス!」
「いや、ウチの子は犬じゃないんで・・・」
「それよりさー、ユイ歩いた方が良いらしいよ」

俺のツッコミを無視してリコさんがそう言う。
「あ、先生にも言われた。その方が早く下がるって」
「じゃあ、そうしなよ、ほら、トオル君も一緒に歩いてやんなよ」
「分かりやした・・・じゃあ、ユイ暑いけど散歩に行こうか」
「うん!」
754 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:56:40.07 ID:PDxK5LNxo
そこから毎朝俺とユイは涼しい内に歩く。
二人で生まれて来る子供の事を話ながら。

新しい職場にも俺は大分慣れて来た。同年代の人達とも仲良くして貰える。
忙しく大変であったが、頑張って働いた。
生まれて来る子供の為に・・・そしてユイの為に・・・


八月も終わりに近付いた26日の朝だった。
「じゃあ、行って来るよ」
「うん、行ってらっしゃい」
ユイはそう言って俺に手を振る。
俺はその時ユイの顔を見ると・・・
いつもより、とても綺麗に見えた。

俺はユイに見とれる・・・
755 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:58:03.59 ID:PDxK5LNxo
「ん?どうしたの?」
ユイの言葉に俺は少し照れた様に下を向き言った。
「あ、いや・・・とても・・・綺麗だなって・・・」
そう言うとユイは「辞めてよ・・・!」恥ずかしそうに下を向く。
「あ、お腹は・・・どう?」
「うん、なんか・・・たまに痛くなるけど・・・まだ10分間隔じゃ無いの・・・」

医者から10分間隔で痛みが来れば陣痛なので、連れて来て下さい、そう言われていた。
「そっか・・・まあ、でも何か有ったらすぐに事務所に連絡をくれよ・・・」
「うん、それに昼からリコが来るから、大丈夫!」
「そうだな・・・じゃあ、行って来るよ!」
「うん・・・行ってらっしゃい!」

ユイが玄関からいつまでも手を振っていた・・・
756 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 13:59:27.76 ID:PDxK5LNxo
その日は非常に暑い日だったのを覚えている。
ホテルの宿泊客は非常に多い様でレストランに引っ切りなしに客が来る。
俺は汗を垂らしながら、始終動き回っていた。

ランチのピークを終えて一息付いた頃に事務所の人が急ぎ足で厨房にやって来た。
そして俺を見るなり叫ぶ。

「大変だ!奥さんが破水をしたそうだ!」
え?
俺の顔色が変わったと思う。
「今、お友達の人と一緒に病院へ向かってる!」
その言葉に俺はチーフを見た。
チーフに「すぐに帰ってやれ!」そう言われ俺は急いで着替えを済ませ、スタッフに詫びを入れる。
スタッフは「早く行け!」そう言って俺を快く送ってくれた。
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/29(金) 13:59:34.43 ID:S0v6Xoluo
あ…え…?気のせい??
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/29(金) 13:59:59.15 ID:N8Tma9Nko
嫌な予感がしたが気のせいだろう
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/29(金) 14:00:43.73 ID:S0v6Xoluo
>>758
だよな
760 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:01:25.36 ID:PDxK5LNxo
俺は急いで病院に向かう。
電車を乗り継ぎいつも通っている病院に到着した時は夕方をまわっていた。
病院の控室ではリコさんが椅子に座り手を合わせて目を閉じている。

「リコさん!」
俺がそう言うとリコさんは顔を上げて俺を見た。そしてホッとした表情をする。
「・・・トオル君・・・」
「ユイは・・・?子供は・・・?」
「まだ・・・」
「そっか・・・でも破水したんだろ?」
「うん・・・2時位に・・・でもまだ微弱陣痛らしくて、産まれないみたい」
「ユイは?」
「今、陣痛室に居る・・・」
「分かった・・・」

俺は陣痛室に入る。
761 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:03:05.07 ID:PDxK5LNxo
ユイはベッドに横になり苦しそうにしていた。
「ユイ・・・」
俺が声を掛けるとユイは額を汗で湿らせながら俺を見て笑った。

「・・・トオル君・・・」
「大丈夫か?苦しく無いか?」
「今は・・・大丈夫な時間みたい・・・中々、陣痛がちゃんと来ないみたい・・・」
俺はユイの背中を摩ってやる。
ユイは目を閉じて眠っているかの様だった。
だが、突然、ピクッと体を動かし「う・・・」と苦しがる。
「ユイ・・・!」
俺は焦りながらユイの腰を摩る。看護婦が通り掛かり俺は看護婦に言った。
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/29(金) 14:04:14.86 ID:S0v6Xoluo
頑張れユイ
頑張れアルバラデホ
763 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:05:35.75 ID:PDxK5LNxo
「すみません、妻が苦しんでるんですが・・・まだですか?」
俺がそう言うと看護婦さんは、「まだ、間隔が長いんです・・・ただ、破水をしているんで、先生に陣痛促進剤を使用するかどうか聞いてみますね」
いや、早く聞けよ!!!

俺はそう怒鳴りたい気分であったが、何とか抑える。
とにかく無事に・・・俺はユイの腰を摩りながら祈った。

夜中に成っても状況は変わらない。
ユイの陣痛はまだらしい。だが、ユイにかなりの疲れが見え始める。
俺はリコさんに帰って貰おうと控室に行った。
控室に入るとリコさんだけで無く、向井さんとヨウイチ、タカコの三人がいた
764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/29(金) 14:05:43.04 ID:GX5DM5GVo
これだから出産は怖い。まさかトオル夫妻に起こるとは思わなかった
765 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:07:18.85 ID:PDxK5LNxo
「あ、どうしたんすか・・・」
俺の言葉を無視して向井さんが聞く。
「おう、どんな状況だ?」
「いや・・・まだなんですよ・・・」
「でも、破水したら早く産まないとマズイんだろ」
ヨウイチが尋ねる。
「だから陣痛促進剤を使ってるんだけど・・・まだ・・・」
「ユイさんの体は大丈夫なんですか?」
タカコが心配そうに聞く。
「うん・・・だけど、かなり疲れてる・・・」
皆が「そうか・・・」と呟いた。

「いや、すみません・・・わざわざ来て頂いて・・・」
「俺は一番最初にお前の子供を抱っこしてやろうかとww」
向井さんが軽口を叩く。俺は笑っていた・・
766 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:08:40.87 ID:PDxK5LNxo
ユイは陣痛室で朝を迎えた。
俺はユイの側でいつの間にか眠ってしまっていた。
ユイが苦しそうな表情を浮かべている。俺は慌てて腰を摩った。

おいおい・・・母ちゃんが苦しんでるんだぞ・・・早く出て来てくれよ・・・

俺はお腹の子供に、そう呼び掛ける。
再び痛みが治まったユイはそのまま目を閉じて眠りについた。

俺は陣痛室を出て控室に行く。
控室には部長とサモハンが増えて皆で肩を寄せ合いながら、ベンチで眠っていた。
俺は人数分の缶コーヒーを買い、目の前のテーブルに置いて再び陣痛室に入ったのであった・・・
767 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:10:02.20 ID:PDxK5LNxo
担当医から呼び出しがあり、俺は医者の前に行く。

「ご主人に帝王切開の御同意を得たいんです」

医者は単刀直入に話を切り出した。
「帝王切開・・・」
「はい・・・破水が起きているのに、微弱陣痛しか有りません。陣痛促進剤も効果が出ませんので・・・」
医者の言葉に俺は少し焦る。
「あ、あの・・・それで、妻も子供も・・・大丈夫なんですか・・・?」
「もちろんです・・・いや、逆に今のままですと、お子さんの生命に関わります・・・そして母体にも負担が掛かります」
俺はその言葉を聞いて即断した。
768 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:11:19.94 ID:PDxK5LNxo
「お願いします・・・」
そう言うと立ち上がり医者に頭を下げる。

「どうか・・・どうか、お願いします!先生・・・二人を・・・お願いします!!!」

医者は慌てて立ち上がった。
「大丈夫ですよ、ご主人・・・必ずお子さんを無事に取り上げますから・・・!」
そう言って笑ってくれた・・・


ユイの元に戻るとユイは再び苦しんでいた。
俺は腰を摩ってやる。
それから再び楽になり、ユイが息を切らせながら眠ろうとする。
それから又もや苦しみが来た。俺は再び腰を摩る・・・
769 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:13:05.36 ID:PDxK5LNxo
・・・ん?

俺は気が付いた。
あれ?波が早くないか?
俺は時計を計ってみた。すると間隔が8分間隔に成っている。
俺は慌てて看護婦さんを呼んだ。

「すみません!妻の波が8分間隔に成っています!」
すると看護婦は慌ててユイの下半身を確認する・・・

「子宮口が・・・開いてる・・・すぐに先生を!!!」

え?
「ご主人、陣痛が来ました!子宮口が開いてます!分娩室に入ります!!」
俺は頷いた。ユイが起き上がらされ、分娩室に歩いて行く。


「もうすぐ・・・赤ちゃんに会えますよ・・・!」


看護婦さんはそう言って俺に笑った・・・
770 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:14:39.38 ID:PDxK5LNxo
控室に入り皆と合流をした。
マリにケンタ、マルオも駆け付けてくれていた。
皆でベンチに座りユイの出産を待つ。
全員が押し黙り貧乏揺すりをしていた。

「昔さ・・・」
ヨウイチが突然、口を開いた。
「昔・・・夏合宿の時・・・皆で流星群を見たじゃないですか・・・」
「ああ・・・見たな」
向井さんが答えた。

「あの時・・・二十年後の俺達は・・・どうしてるのかな、って話をしましたよね?」
ヨウイチが天井を見上げる。

「あの時から・・・二十年経ったら・・・今日産まれて来る・・・子供が、調度・・・高校生なんすよね・・・」

俺はヨウイチを見た。
771 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:16:57.63 ID:PDxK5LNxo
・・・確かに・・・俺達の子供は俺達と同じ高校生になる・・・

「どんな・・・感じなんだろうな・・・その頃の・・・高校生は?」
サモハンが呟く。
「あんまり変わらないんじゃ無いですか?俺達と・・・」
ケンタが答えた。
「皆で適当に部室で過ごして?それからお菓子を食べる・・・」
マリが呟く。
「皆でキャンプに行って、海に行って・・・体育祭や文化祭で馬鹿な事をしたりね・・・」
リコさんが頬杖をついた。

「楽しい高校生活を送って欲しいな・・・」
俺も答えた
772 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:18:12.41 ID:PDxK5LNxo
「そんで遊び過ぎて留年したりね」
部長が眼鏡を光らせながら言った。
「アンタだけだww」
「そんな奴はいねーよww」
皆が笑う。
俺は笑った後に呟いた。

「でも・・・何より・・・仲間を作って欲しいな・・・」
「え?」

皆が俺を見た。


「こんな時に・・・側に居てくれる・・・仲間を・・・!」


その言葉に皆が照れた様に下を向いた・・・
773 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:19:03.39 ID:PDxK5LNxo
その時、控室のドアが開き看護婦が入って来た。

そして・・・



「生まれましたよ!元気な女の子が!!お母さんも元気です!」




その瞬間に全員が抱き合い喜んだ。
だが看護婦さんに「静かに!!」そう言ってたしなめられて全員が静まる。
774 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:20:33.20 ID:PDxK5LNxo
「お父さん、内線がお母さんと繋がってます・・・お声を掛けてあげて下さい!」
そう言って看護婦さんが内線を持ち上げ俺に向けた。

「コホン・・・」
そう言って部長が向かおうとしたので、他の全員に止められた。
俺は受話器を取り、「もしもし・・・」そう呟いた。

「・・・トオル君・・・やったよ・・・」

その声を聞いた時に俺は一気に涙が溢れた。
「・・・うん!頑張ってくれたんだね・・・!」
「・・・うん・・・頑張った・・・!」
「ありがとう・・・な!」
「赤ちゃん・・・しわくちゃwwお猿さんみたい・・・」
「そうか・・・そうか・・・!」

「でも・・・カワイイよ・・・!」

俺は泣きながら頷いていた・・・
775 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:22:02.08 ID:PDxK5LNxo
その後、俺は看護婦さんに案内されてリコさんと共にユイの元へ行った。
ユイは凄く柔らかな表情で俺に笑い掛けていた。
なんか凄く綺麗に見えた・・・あの朝に感じたユイへの思いは、この兆候だったのか・・・
俺はそう思った。

「はーい、お父さーん、抱っこして上げて下さーい」
俺は慣れない手つきで子供を抱く。
看護婦さんに教えられて首に手を回し、そっと抱きしめた。
「わー・・・ちっさいー・・・」
リコさんは子供を見て目を細めながら、そう言う。
本当に小さかった。そして猿みたいに顔を赤くして目を閉じている。

だが・・・とてつもなく大切な存在に思えた。
776 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:23:36.88 ID:PDxK5LNxo
「あら、お父さんに似てますね」
看護婦さんが笑いながら、そう言う。
「うん・・・トオル君にそっくりww」
ユイも笑った。
「え?本当に?似てる?」
自分ではよく分からない。リコさんも頷いた。
「似てるww似てるww」
そっか・・・だけど俺に似たらマズイんじゃ無いか?出来ればユイに似てほしかった。

「じゃあ、トオル君写真、撮ろう!はい、こっち見て笑って!」
俺はリコさんにぎこちない抱き方で、ぎこちない笑顔を向ける。
「はい、もう一枚!今度はユイも入って!」
「えー、私は顔を写さないでぇ〜・・・恥ずかしい〜」
「フフフ・・・顔を見せろ〜、スッピンのユイを記録するんだい!」
リコさんがノリノリでストロボを光らせパシャッと写す。

俺達家族三人のアルバムの・・・一枚目の写真が記録された瞬間だった・・・
777 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:25:02.34 ID:PDxK5LNxo
大部屋に移り、皆からユイは祝福をされる。
部長は何故か大量のオムツを買い込んでくれていた。
だが何故か皆に笑われていたんだ・・・

皆が帰った後に、俺は病室に残る。そしてユイに言った。

「本当に・・・お疲れ様・・・」
「ありがとう・・・」
俺の言葉にユイが答えた。

「でさ・・・俺もやっと名前が決まったよ・・・」
「え?何にしたの??」
「んとね・・・この子が生まれたのが、8月28日・・・星座はなーんだ?」
俺の質問にユイは笑って答える。
778 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:26:09.95 ID:PDxK5LNxo
「乙女座でしょ・・・?」
「さっすが・・・でさ、乙女座で有名な星は・・・何でしょう?」
俺が又もや質問をする。
「あら、私にその質問をするの?」
「分かるかな〜?」
俺はニヤニヤした。ユイは笑って答えた。

「私達の・・・思い出の星・・・でしょ?」
「そう・・・俺達の思い出の星・・・『スピカ』だ・・・!」

俺は笑いながら続ける
779 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:28:06.96 ID:PDxK5LNxo
「スピカをもじってね・・・『スミカ』にしようと思うんだよ・・・!字は『澄香』」

「スミカ・・・うん!良い名前・・・!」
「だろ?」
「うん!スミカちゃん・・・カワイイ名前・・・!」

俺達二人は笑い合った・・・



こうして・・・8月28日・・・俺達にアルデバランが誕生した・・・
名前は・・・スミカ・・・だった・・・

780 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/29(金) 14:29:17.29 ID:PDxK5LNxo
今日は以上っすww
さっきから、呼び出しを何回も食らってるので行きますね!

じゃあ!
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/29(金) 14:32:19.88 ID:N8Tma9Nko
8/26に破水して翌日産まれたように見えるんだが、俺の読解力不足か?
何が言いたいかというとあと一日後なら俺と同じ誕生日だったのにww

俺も2晩ほぼ徹夜で付き添ったなー
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/29(金) 14:32:33.18 ID:S0v6Xoluo
トオル先輩、乙っす!!
今日は一番泣けた〜
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 14:40:06.57 ID:9ieOclMIO
スレタイを聖闘士星矢ネタだと思ってた俺が恥ずかしい
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/29(金) 14:44:06.74 ID:fftFRPdbo
一瞬、DQNネームで全てが台無しになる恐怖を味わったぞwwwwww
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/29(金) 14:45:48.00 ID:GX5DM5GVo
俺も星の名前をもじらずにスピカちゃんそのままかと思って少し焦った
786 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/29(金) 14:57:52.28 ID:6aI5J74Fo
釣りじゃないなら仮名でしょ
本当の名前はそのままスピカなのかもよ
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 15:11:10.51 ID:pkMakTVdP
>>755みたいな死亡フラグは心臓に悪い
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 15:14:35.16 ID:9ieOclMIO
ということは第二子は三つ子なのか?
そういや流星群見えなかったな
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/29(金) 15:55:17.07 ID:I90MCL4Eo
  |    ⊂二⊃                    
  |    | l    |                    
  |    |_l__|   へい、おまち!                 
  |   ( ´_ゝ`)          
  |   /  |:  ヾ        ∧_∧ おそいよ!
  |  / /  |: l、  l       (´<_`  ).、     
  |__(__コつ| ̄|С,ノ __ (二二つ二ノ _
  |   /⌒\**                       
  | .ゝ二二二ノ                                  
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 16:23:32.13 ID:cMObzbrIO
まぁ今の時代出産で死ぬなんてことはほぼ無いから安心して見てたぜ。
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/29(金) 17:54:28.42 ID:xXbZQg2Wo
そろそろ娘さんも嫁に行く歳頃なのかな?
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/29(金) 18:46:49.56 ID:94n0zPhdo
すっげー感動した
俺が産まれる時、かーちゃんに凄く負担掛けたから今日はかーちゃんの好きな饅頭でも買って帰る
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 18:55:16.35 ID:8/KSmEcIO
久しぶりにパー速で泣いたぜ
やっぱパー速はいいな
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/29(金) 19:39:26.35 ID:CaBoT7UVo
>>791
嫁に行くことになって、しみじみ振り返りながらスレ立てたと俺は予想する。
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/29(金) 20:03:57.54 ID:94n0zPhdo
エスパーが多いとトオルも書きにくいからほどほどに
796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/29(金) 22:13:31.31 ID:gSrQ0/Wao
サダルスウドはまさかのお孫さんとか
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/29(金) 22:32:54.40 ID:erIQOBnIO
ネタと当時の年齢的に三十代前半と思ってた
ちょい上って五つも十もわからない
798 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/30(土) 02:27:53.46 ID:9t6ylVXg0
ちょっと遅刻で酒飲みながらほくそえんでますwwww
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/30(土) 07:06:20.31 ID:mKn0o+1Qo
先輩おつかれさま!
ほんと心が温かくなるいい話だあ
なんか優しい気持ちになれるよ
うちは子どもいないから余計思うのかも
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/30(土) 07:47:29.33 ID:YJi1eMd0P
トオル召喚
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/30(土) 08:16:41.43 ID:fPEwoWeXo
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
                       ::          ,′
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802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/30(土) 08:23:09.16 ID:jy8dN64no
ようじょが居ると聞いて

       ,. -ー冖'⌒'ー-、
       ,ノ         \
       / ,r‐へへく⌒'¬、  ヽ
       {ノ へ.._、 ,,/~`  〉  }    ,r=-、
      /よ ̄`y'¨Y´ ̄ヽ―}j=く    /,ミ=/
    ノ /う'>-〈_ュ`ー‐'  リ,イ}    〃 /
   / _勺 じ;;∵r;==、、∴'∵; シ    〃 /
  ,/ └' ょ \   こ¨`    ノ{ー--、〃__/
  人__/ー┬ 个-、__,,.. ‐'´ 〃`ァーァー\
. /   |/ |::::::|、       〃 /:::::/    ヽ
/   |   |::::::|\、_________/'   /:::::/〃

803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/30(土) 09:32:05.65 ID:YJi1eMd0P
>>802
中学時代のトオルだ
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/30(土) 17:46:21.73 ID:cME79t44o
てす
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/30(土) 21:34:16.59 ID:hxarcjmSO
サダルスウドを調べたら意味に「幸運の中の幸運」と書いてる。。。て、事は。。。
806 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:04:11.47 ID:Q/DeQ6qho
乙です
いや〜夏休みは忙しいっす
ちなみに、娘の本名もDQNネームでは有りませんのでご安心をww

じゃあ行きますねー
807 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:05:49.73 ID:Q/DeQ6qho
乙です
いや〜夏休みは忙しいっす
ちなみに、娘の本名もDQNネームでは有りませんのでご安心をww

じゃあ行きますねー

808 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:06:27.92 ID:Q/DeQ6qho
乙です
いや〜夏休みは忙しいっす
ちなみに、娘の本名もDQNネームでは有りませんのでご安心をww

じゃあ行きますねー

809 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:06:40.85 ID:Q/DeQ6qho
乙です
いや〜夏休みは忙しいっす
ちなみに、娘の本名もDQNネームでは有りませんのでご安心をww

じゃあ行きますねー

810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/31(日) 00:09:19.96 ID:0EOzAxEe0
寝ようと思ったら、トオル先輩降臨!
今日も、よろしくお願いしまーす
811 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:10:56.75 ID:Q/DeQ6qho
ヤバイwwwwww
失敗したかと思って何回も書き込みを・・・
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 00:11:23.63 ID:eeF2Q407o
大事なことなので(ry
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 00:13:56.30 ID:LHU6A6Dyo
大事なことなので(ry
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 00:14:21.51 ID:LHU6A6Dyo
大事なことなので(ry
815 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:14:23.83 ID:Q/DeQ6qho
「はにゃ〜・・・赤ちゃんカワイイ・・・」

リコさんがヘニャーとした表情でスミカを見つめる。
「ヤバいわ〜・・・これが母性本能なんですね〜」
「いやん!動いた〜」
タカコとマリもヘニャーとした表情でスミカを見つめていた。

スミカが生まれた一週間後にユイは退院した。
家には向井さんが自作したベビーベッドを始め、リコさんら女子軍団が選んだベビー服、ヨウイチ、サモハンが用意したベビー用品、ケンタ、マルオの子供用のオモチャ。
そして何故か更に大量に用意された部長のオムツで家が溢れ返った。
816 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:16:34.34 ID:Q/DeQ6qho
そして毎日の様に皆がスミカを見に来る。
一番ビックリしたのは向井さんだった・・・

「スミカちゃーん♪ばぁ〜」
向井さんがスミカに付きっ切りだった・・・
まだ目もよく見えて無いし耳も聞こえ無いんだが・・・

「あ、笑った!!!俺の顔を見て笑ったぞ!!!」
「いや、ただの顔の動きっすよ・・・」
ヨウイチがそう言う。
「違う!!!違いまちゅよね〜スミカちゃ〜ん」
「アンタ、誰だよ」

ヨウイチが少し不気味そうにしていた。
817 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:18:19.39 ID:Q/DeQ6qho
俺はそれを見て笑っていた。
向井さんが、こんなに子供好きだとは全く思わなかったからだ・・・
部長はよくスミカを見て難しそうな表情をしていた。
そして呟く。「なんて・・・精密なんだ・・・!」
うん、まあオモチャじゃ無いからね。

サモハンが一度スミカの足に食いついた時は俺が止める前に向井さんに蹴られていた。
スミカは生まれたばかりにして最強のボディーガードを手に入れた様だった・・・

まあ、皆が皆、スミカを可愛がってくれる。
お陰で祖父母が居ない寂しさを味わせる事も無い様であった・・・

だが、見るだけと実際に育てるのは大きく違う・・・俺はそれを切実に思った。
818 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:21:13.07 ID:Q/DeQ6qho
スミカは母乳で育てていた。
ユイは4時間置き位にスミカに母乳をあげる。
いや、別に時計を見た訳じゃ無いんだが、それ位にアラームが鳴るんだ、泣き声と言うアラームが。

ユイは夜中でも起きて母乳を上げる。
俺もスミカが泣くもんだから、中々熟睡が出来ない。
一度、スミカがずっと夜中に泣き止ま無い事があった。
ユイが母乳を上げても飲まない。オシメかと思いオシメを替えても泣き止まない。

眠いのか・・・そう思い二人で交代で抱っこをしながら寝かそうとするが、寝る気配が全く無かった。
スミカはひたすら「ホンギャア、ホンギャア!」と泣いていた。
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 00:21:29.14 ID:eeF2Q407o
向井はトオツの父親がわりだったからなぁ
孫が出来たようで嬉しかったんだろう…
820 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:24:11.29 ID:Q/DeQ6qho
流石に朝の4時を過ぎた頃には良い加減、俺も眠気がヤバい。
ユイは抱っこをしながらウトウトしていた。
俺もウトウトしていたが、ユイと交代してスミカのお尻をポンポンと優しく叩くが寝ない。
もういい加減マズイ・・・そう思い、もう一回だけオシメを替えようとオシメを外すが、オシメには何も出ていない・・・

違うのか?そう思ってお尻を念のために拭くと・・・
泣き止んだ・・・
え?お尻を拭いたウェットティッシュを見ると・・・黄色い物が付着していた。
どうやらスミカはちょっとだけウンチを漏らして、それをお尻に挟んでいて気持ち悪かった様だった・・・
スミカはスヤスヤと眠り始めた・・・

俺は翌日睡眠不足で仕事に出掛ける。
ユイも寝不足の表情で俺を見送っている。

スミカは一人気持ち良さそうに眠っていた・・・
821 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:26:36.32 ID:Q/DeQ6qho
毎日、スミカに睡眠を邪魔されて寝不足になりながらも、ユイも俺も頑張った。

正直、俺は昼間の時間に仕事に行けるから良いが、ユイはずっと付きっ切りだ。
家事をしながら、スミカの世話をする・・・俺には無理だ、そう思った。

子供を育てると言うのは本当に難しいと思う。
仕事や家事だけならば自分の思い通りに事を運ばせる事が出来る。
だが、子供に対してはそうは行かない。
突然、むずかるし、理由が分からずに泣いたりする。
特に大変なのが寝かしつける事だ。
822 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:28:44.71 ID:Q/DeQ6qho
抱っこしてようやく、寝かしつけても、ベッドに置くとすぐに泣く・・・
まだ慣れないのでベッドへの置き方が難しかったんだよ。
だが、それはユイが添え乳をする事で解消された。
横になりながら母乳を上げると、そのまま眠りについてくれる様になった。
でも、俺が寝かしつける時はそれが出来ないので大変だった。

俺にオッパイが有れば・・・つくづく痛感したよ。
だが・・・それでも家に帰ってスミカの顔を眺めると気持ちが安らいだのだった・・・
823 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:30:14.31 ID:Q/DeQ6qho
「ほら!ニッコリ笑いながら、そのまま歩く!」

リコさんがビデオを回しながら俺達に言う。
「ダメだ!トオルの笑顔が固い!テイク2!」
向井さんが俺にダメ出しをして再びビデオを撮り直す。

今日はスミカのお宮参りに来ていた。
スミカも大分とふっくらして赤ちゃんらしくなって来た。
それに伴い、リコさん、向井さんが益々スミカに夢中になり、二人がスミカの為にビデオを撮ってやる、とうるさかった。

「良いよ〜、笑顔良いよ〜」
リコさんがビデオカメラ越しに俺達に言って来る。
どこの監督さんだよ。
824 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:32:05.00 ID:Q/DeQ6qho
向井さんが真剣な表情で俺達に言う。
「はい、キャメラ、こっち!」
キャメラって言ってんぞ、この人。
「ん〜?まだトオル君の笑顔が固いわね〜」
リコさんが難しそうな表情で俺に言う。
「あ、いや別にそこまで凝らなくても・・・」
「何を言ってんだ!!!大切なスミカのお宮参りだろうが!!」
「そうよ!一生の思い出になるのよ!!」
もうアンタら二人で子供作りなよ・・・

「ダメだ、トオル外れろ」
「そうね、大根にはこの作品に入って欲しく無いわ」

いや、もう意味が分かんねーよ・・・
825 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:33:39.67 ID:Q/DeQ6qho
お宮参りからしばらくした後の事であった。

慌ただしく朝の用意をしながら俺はスミカの寝顔を見てから出かけようとしているとユイの姿が無かった。
「あれ?ユイ?」
俺がそう呼ぶとユイがトイレから出て来て青い顔をしている。
「どうした体調悪いのか?」
「うん・・・なんか吐き気が治まらなくて・・・」
「おいおい、大丈夫かよ・・・最近寝不足で疲れてるんじゃ無いか?」
「ううん、大分前から・・・空腹時だけなの・・・なんか胃がおかしくて・・・」
「大丈夫かよ?早く言えよ・・・」
「なんか先生が妊娠したら体調が変わるからって・・・言ってたから・・・何かお腹に入れればマシになるから」

それで妊娠中もよく食べていたのか・・・
826 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:35:16.40 ID:Q/DeQ6qho
「どうする?病院に行くか?」
「あ、明日スミカちゃんの一ヶ月検診に行くから、その時に先生に聞いてみるね」
そう言ってユイは青い顔で俺に笑い掛けていた・・・

その時は特に深い心配はしていなかったんだ・・・


翌日、ユイはスミカの検診を受けに行った。
俺はいつも通りに仕事に行く。
すっかり職場にも慣れた俺は仕事の段取りも覚えて順調だった。
正直、同年代の人達よりも任せられる仕事が増えて来たので俺は更に努力をする。
夜も遅くまで自分の料理を研究する。

シゲルさんに言われた様に、俺は誰よりも努力をしていた・・・
827 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:36:46.39 ID:Q/DeQ6qho
その晩、いつもの様に俺は遅くに家に帰る。

家に到着するとユイが「お帰り・・・」そう少し元気の無い声で俺に言って来た。
俺はすぐに今日の検診の事を聞いた。

「あ、スミカちゃんは、問題無いって・・・体重も増えたし、健康だって・・・」
スミカ・・・は?

「分かった・・・だけどユイはどうだったんだ?」
その言葉にユイが下を向く。

え・・・?

「先生がね・・・一度ちゃんとした病院で診て貰いなさいって・・・」
「マジかよ・・・なんか言ってた?」
「私の症状から・・・胃の病気かも知れないって・・・」

え????
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/31(日) 00:37:13.14 ID:4AUg5JC50
「その時は」って。。
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 00:37:55.14 ID:FiH5TSQgo
とおるお疲れ

嫌な振りだ・・・
830 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:37:59.90 ID:Q/DeQ6qho
俺は顔を青くする。
「とにかく・・・一度病院に行けって言われた・・・」
「うん・・・早く行った方が良いな・・・明後日、俺休みだから、スミカを見ておくから一緒に行こう」
俺の言葉にユイが首を横に振る。

「あ、出来れば家でスミカちゃんとお留守番しといて・・・あんまりスミカちゃんを病院に連れて行きたく無いの・・・風邪がうつったりしたら嫌だし・・・」
「あ、病院だもんな・・・分かった家で見ておくよ・・・」

俺はそう言って頷いた。

ユイはスミカを抱き上げ「何とも無い・・・よね・・・」そう呟いていた・・・
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/31(日) 00:38:19.26 ID:m4EJyvMPo
まさかね・・・
832 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:39:07.81 ID:Q/DeQ6qho
翌日、仕事中に俺はユイの事を考えた。

大丈夫・・・だよな?何とも無いよな・・・?
俺は何故か嫌な予感がしていた。
理由は分からない。

ユイが出産の朝に嫌に綺麗に見えた。
あの時は後からその日に破水をして子供を産む、と言う予感からかと考えた。
だけど・・・もしも・・・あれがユイに取って・・・最後の仕事だから・・・

そう考えた瞬間に一気に俺の体に寒気が走る・・・

や、辞めてくれよ・・・ユイが居なくなるなんて・・・そんなの・・・そんなの考えられない・・・
俺は仕事が手につかなかった
833 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:40:32.09 ID:Q/DeQ6qho
昼休みになり、俺はヨウイチに電話をしてみた。

ヨウイチは今、国立大学で医者を目指している。
だから、医学的な知識があるかも知れない・・・そう思い電話をした。
幸いヨウイチは家にいた。
「おう、どーした?今日は仕事が休みか?」
ヨウイチが、そうノンビリした声で言う。俺は適当に話を合わした後に本題を切り出した。

「いや、実はさ・・・ウチの職場の人がさ・・・胃の調子が悪いみたいで・・・」
そう言って俺はヨウイチに話す。ユイと言うと、後で何も無くて大事になると嫌だ、そう思ったからだ。
するとヨウイチは声のトーンを変えてすぐに言った。

「いや、それはすぐに病院に行って検査をした方が良いぞ」
え・・・?
834 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:41:29.04 ID:Q/DeQ6qho
「それだけじゃ分からんが・・・最悪は・・・」
「・・・最悪は?」

「末期の胃がんの症状に似てる・・・」
・・・!!

俺は受話器を落とした・・・
え?胃がん?末期の???

俺は公衆電話の前で呆然としていた。
ヨウイチの声が受話器から聞こえて来ているが、俺の耳には全く届いていない・・・

俺はしばらくその場に立ち尽くしていたんだ・・・
835 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:42:54.00 ID:Q/DeQ6qho
仕事を終えて家に帰るとユイが「お帰り!」そう元気に出迎えてくれた。
俺はユイを見つめる。
ユイに何かしらの儚さを感じた。

ユイ・・・

俺は玄関で立ち尽くす。
ユイは首を傾げ「どうしたの・・・?」そう言って来た。
俺はそんなユイを見ていると我慢が出来なかった・・・
俺はそのままユイを抱きしめる・・・

「ど、どうしたの・・・?」
ユイが慌てた。俺は何も言わずにユイを抱きしめ続けた。

嫌だ・・・嫌だ・・・ユイを失いたくない・・・
俺が何も言わずに抱きしめていると、突然スミカが泣き始めた。
「あ、ちょっと・・・」
ユイは俺を離してスミカの元に駆け付ける。
俺はスミカの元に行きスミカを抱き上げ、あやしているユイを見つめた。
836 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:44:12.06 ID:Q/DeQ6qho
ユイ・・・
俺がユイを見つめているとユイは恥ずかしそうに俺を見て呟いた。

「・・・ゴメンなさい・・・」
え?俺はドキッとしてユイを見る。

「ま、まだ・・・怖くて・・・ちょっと・・・出来ない・・・かも・・・」
そう言って顔を赤くして、下を見る。
・・・え?
「な、なんか・・・さ、裂けそうで・・・怖いの・・・」

そう言われ、やっと分かった。
ユイは俺が体を求めていると勘違いしたらしい。俺は軽く笑った。

体なんか・・・ユイさえ無事で居てくれたら、それで良いよ・・・
俺はそう思いながら家に入って行った・・・
837 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:45:39.69 ID:Q/DeQ6qho
翌日、ユイが朝から病院に出掛けた。

「じゃあ、スミカちゃんをお願いね・・・」
そう言って俺に手を振る。
又もやユイが儚く見えた。
俺はスミカを抱きながらユイの手を握った。
ユイも握り返す・・・

ユイの手が微かに震えているのが分かった。
ユイ・・・俺はユイを見つめる

「・・・大丈夫だよ・・・!」
ユイがそう呟き俺を見る。

「私は・・・スミカちゃんやトオル君を残したり・・・しないから・・・」
そう言って微笑んだ。俺はユイを見つめると頷いた。

「待ってる・・・!」
「うん・・・!」

ユイは手を離すと・・・そのまま玄関を出て行ったのであった・・・
838 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:47:23.43 ID:Q/DeQ6qho
その日一日は長い一日だった。
スミカにユイの凍らせていた母乳を上げ、寝かしつける。
そして家事を行う。だが全く落ち着かない。
スミカが起きてオシメを替えたり、公園に散歩しながらもユイの事を考える。

まだか・・・
お昼を過ぎてもユイは帰って来ない。俺は不安で胸が張り裂けそうであった。
家でテレビも点けずにスミカを抱きしめ部屋の隅に座る。

ユイ・・・もしも、ユイが居なくなってしまったら・・・
俺はスミカと二人でこの家に・・・

俺はスミカを見た。スミカはスヤスヤと眠っている。

ユイ・・・嫌だよ・・・ユイ・・・!

俺はスミカをギュッと抱きしめた・・・
839 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:48:17.24 ID:Q/DeQ6qho
ユイが帰って来たのは午後の2時を回った頃だった。
インターフォンが鳴り俺はすぐに玄関に走る。
そしてドアの鍵を開けた・・・ユイが下を向いて立っていた・・・

「・・・ユイ・・・」
俺の声が震える。ユイは下を見たまま動かない・・・

「・・・ユイ・・・」
俺は震える声で再びユイの名前を呼ぶ。ユイは俺を見ると呟いた・・・

「・・・入院・・・しないといけないかも・・・」

え・・・!俺の目の前が真っ暗に成りそうだった・・・
840 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:49:21.65 ID:Q/DeQ6qho
その時にユイが再び呟いた・・・

「・・・胃潰瘍で・・・」

え!!!

・・・・うん、胃潰瘍・・・?
俺は崩れそうな体を持ち直しユイに言った。

「え・・・?胃潰瘍?」
「そう・・・先生に・・・食生活を気をつけなさい・・・って・・・もう、超恥ずかしい〜・・・」

そう言ってユイは顔を覆った。
俺は一気に肩の力が抜けて、その場にへたりこんだ・・・

な、なんだ・・・そりゃ・・・
ユイは恥ずかしそうに顔を覆っていた・・・
841 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:50:53.04 ID:Q/DeQ6qho
「で?入院するの?」

「うん、まだ分からないんだけど、次回にカメラで中を診る診て、それから決めましょうって」
「手術は?」
「有るかも知れないけど・・・安心して下さいって」

俺もホッとしながら笑う。
まあ、癌じゃ無くて良かったよ・・・
俺は心の底からホッとしたんだ・・・


翌日だったか、俺はヨウイチに電話を入れた。
全てのネタバラシをした後に「お前は、まだまだ、だのお」そう言うとヨウイチがムッとした声で言う。

「俺も胃潰瘍の可能性が有るって言ったけど、お前聞いて無かったじゃねーか!」
「あ、そうだっけ?」
842 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:53:33.61 ID:Q/DeQ6qho
「そうだよ!まあ・・・良かったな胃潰瘍で」
「うん・・・俺もホッとしたよ」
「まあ、胃潰瘍でも病気だからな、しっかり養生させろよ」
「ああ、分かった」
「料理人の奥さんが、食生活が悪いじゃ、シャレにならんぜ」
「うっせーww」
俺達は笑いながら電話を切った。


一週間後にユイは再び病院に行った。
その日はリコさんがスミカを見てくれたので俺は仕事に行く。

仕事から帰るとリコさんも交え鍋をした。
リコさんはユイの胃潰瘍に馬鹿ウケしていた。
ユイはリコさんの頭をクシャクシャにして恥ずかしがっていた・・・
843 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:54:54.33 ID:Q/DeQ6qho
その三日後、俺が家に帰るとユイが俺に言う。

「やっぱり胃潰瘍だって・・・」
「そうか、入院は?」
「とりあえず検査入院をして下さい、って・・・」
「まあ、仕方ないよな」
「でね、トオル君の手が空いてる時に病院に来て欲しいって。私の病状と、これからの食生活について・・・私が『夫が料理人です』って言ったら、『絶対に来て貰って』って」

俺は苦笑いをした。

「分かったよ、じゃあ明日俺、遅番だから病院行ってから仕事に行くよ」
「ゴメンね」
「いや・・・料理人に夫としては、妻の食生活を言われたら立つ瀬が無いからねww」
「辞めて〜・・・」

ユイは恥ずかしがっていた・・・
844 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 00:54:59.48 ID:eeF2Q407o
なんかムカッときた
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/31(日) 00:56:13.95 ID:JhgZi0Foo
お、先輩来てた♪
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(チベット自治区) :2011/07/31(日) 00:56:29.65 ID:m4EJyvMPo
本人には本当の事は言えないってパターンか
847 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:56:46.24 ID:Q/DeQ6qho
翌日、俺は朝に病院に一人で行った。
待合室でしばらくボーッと待った後に名前が呼ばれ俺は中に入った。

担当医は少し神経質そうな人で丁寧に挨拶をされ、俺も挨拶をする。
医者はいきなりレントゲン写真の様な物を取り出して俺に見せる。
わっ、なんかドラマみたい。
俺はそんな馬鹿な事を思っていた。

そして医者は淡々と語り始めたんだ・・・
848 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:57:49.10 ID:Q/DeQ6qho
「当初、奥様の病状を聞いて検査をすると胃に潰瘍が出来ておりました」

俺は頷く。

「ですが、再度検査をして、胃の内部を確認しました所、癌を発見致しました」

え・・・?
俺はその言葉をよく理解が出来ずに医者を見る。

「スキルス胃癌です。非常に発見が難しく、内部が固まる癌の為に、スキルスと呼ばれます」

はい・・・?
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/31(日) 00:58:27.75 ID:JhgZi0Foo
え…
850 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:58:46.88 ID:Q/DeQ6qho
俺はまだよく理解が出来ない。

「スキルス胃癌を発見された時点で殆どの方は末期です・・・それは奥様も同じでした」

いつ・・・出て来るんだ・・・?

「正直、手術を行っても手の施し様が有りません」

ドッキリと書いたプラカードを持って向井さんがカーテンの影に隠れてるんだろ?
それとも部長か?
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/31(日) 00:59:25.50 ID:fKxMOLVTo
おい








おい
852 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 00:59:53.35 ID:Q/DeQ6qho
「はっきりと申し上げる事は困難では・・・有りますが・・・」

ヨウイチに聞いてもっともらしくしやがって・・・
面倒臭い奴らだな。ホントに。

「通常の方との進行具合を考えて・・・三ヶ月位が・・・考えられます・・・」

俺は顔を上げて医者に聞いた。

「何が・・・ですか?」

俺の言葉に医者は俺の目を逸らさずに答える・・・
853 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/31(日) 00:59:54.07 ID:4AUg5JC50
リロードすんのがこわくなるな....
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/31(日) 01:01:10.42 ID:JhgZi0Foo
サダルスウド…
855 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 01:01:31.43 ID:Q/DeQ6qho
「奥様の・・・余命です・・・」


早く・・・出て来いよ・・・何してんだよ・・・
俺は充分に驚かされたよ・・・だから、もう良いよ・・・

「・・・奥様に・・・告知をされますか・・・?」

分かったから・・・

早く誰か言えよ・・・!!!!
これがドッキリだと言う事を!!!!!

俺の心とは裏腹に俺の手は震えていた。
足も震えていた。
体中が震え出す。

嫌なドッキリだよ・・・マジで・・・!

そして・・・誰もドッキリのプラカードを持って出て来る事は無かったんだ・・・

856 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 01:02:20.72 ID:eeF2Q407o
ネタ師があまりの高評価に調子に乗ってベタ過ぎるネタを持ってきたと信じよう

うん、そうに違いない!
857 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/07/31(日) 01:02:22.77 ID:Q/DeQ6qho
今日は以上です
えっと・・・衝撃的な内容だとは思いますが、出来れば最後まで見て欲しいです
医学的な部分で間違いが有るかも知れませんが・・・なにぶんかなり前の話ですから、ちょっと記憶違いも有るかもです

ただ、誰かが書いていた様に敢えて俺は「サダルスウド」とタイトルに付けました

まあ、これ以上はネタバレに繋がりますから言いません
それでは、また・・・!

858 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/07/31(日) 01:04:42.25 ID:JhgZi0Foo
先輩、乙っす!!
うん、サダルスウド。
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 01:05:17.38 ID:eeF2Q407o
タカコ√クル━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
860 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 01:08:25.97 ID:LHU6A6Dyo
どういう意味でのサダルスウドなんだよ!?
トオル乙!!
861 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 01:12:33.68 ID:1hPdy9Obo
トオルー!ユイー!
おつ!
先が気になるけどどう転んでもこれ泣く
862 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 01:14:58.57 ID:bJ4XY8JDO
仲間全員サダルスウドだよな? 鬱展開なら号泣すんぞ!!
863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海) [sage]:2011/07/31(日) 03:47:02.49 ID:Wh9Kg1WAO
CLANNAD思い出したよ…

だけど俺はトオル先輩が言ったサダルスウドを信じる!
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 05:39:57.66 ID:ZuqZr21IO
おつかれさま
なんかまた泣けてきた…
でも最後まで読むから!
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 06:48:54.21 ID:9zXInTEIO
>>846
本人が書くまで思っても黙っとけよ
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 08:19:00.86 ID:mnIApAyiP
ぎゃあああああああああああああああ
867 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/31(日) 13:00:24.33 ID:G5ES0/7No
サダルスウド = 最高の幸運

きっと大丈夫
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/07/31(日) 15:38:55.33 ID:BR6+k6EAo
アルデバラン=後に続くもの

ザッハトルテ=オーストリアの代表的な菓子
869 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/31(日) 18:23:53.15 ID:OGUlDzi30
続きは見たいが続きが怖い

…でも、タイトルの事もあるし
トオル自身が何処かで「今は幸せだ」と言ってたし
それを信じて続きを待とう
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/31(日) 22:49:06.94 ID:S6EgNMhgo
  /⌒ヽ
 く/・ ⌒ヽ
  | 3 (∪ ̄] 召喚してくれないから、ヨウジョも出て来れないんだお
 く、・ (∩ ̄]          明日も仕事だから寝るんだお・・・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
871 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/07/31(日) 22:50:17.09 ID:S6EgNMhgo
  /⌒ヽ
 く/・ ⌒ヽ
  | 3 (∪ ̄] 召喚してくれないから、ヨウジョも出て来れないんだお
 く、・ (∩ ̄]          明日も仕事だから寝るんだお・・・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
872 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 22:55:49.83 ID:S6EgNMhgo
うわあぁあぁぁぁぁ・・・ごめん
873 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/07/31(日) 23:02:06.13 ID:nRQ4WLpAo
トオル召喚
874 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/07/31(日) 23:04:38.97 ID:S6EgNMhgo
 うるせえさいたまぶつけるぞ


               ━╋ 
 ━╋━┃ ┓ ╋    ━╋ 
 ┏┛  ┃ ┃ ┃  ━ ┏╋
 ┗━  ┗   ┗  ━ ┗┛
      ヽ(´・ω・)ノ
        |  /
        UU  今日は店じまいだ!
875 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) :2011/08/01(月) 00:51:41.73 ID:F/+kEcV9o
癌かよ…
奇跡よ起きてくれ‼
876 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/08/01(月) 02:49:45.52 ID:kHSlEO0co
前に比嘉愛未の名前出た時に
トオルが、初めて見た時ドキッとしたって言ったから
何か嫌な言い方だなぁ…って
ちょっと不安になったんだよなぁ

当たらなきゃ良いなぁ
877 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 08:32:29.61 ID:+hmHn5BeP
トオル召喚
878 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 08:50:36.84 ID:n4Y4UycRP
(^q^)ノ
879 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/08/01(月) 09:06:29.37 ID:BDG9dghzo
癌は遺伝するっていうから、トオルの思わせ振りなレスで嫌な予感はしていたが・・・
880 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 09:16:55.68 ID:+hmHn5BeP
>>878
手抜きすぎ
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/01(月) 09:46:56.99 ID:IjazijZ4o
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
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                         ::/           |::
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                       ::,′    /:: ::|     |::
882 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/01(月) 11:29:18.89 ID:SYxUUjpwo
新生児には背中スイッチがあるからなぁ
癌は遺伝するからなぁ
883 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:47:04.63 ID:UEJWPVEpo
おはようございます

続きを書きますね
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/08/01(月) 11:48:12.27 ID:a6yI5yzAo
きたー
885 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:48:27.71 ID:UEJWPVEpo
俺は病院を出ると何か現実感の無い空気にフラフラしていた。

11月の柔らかい日差しを感じた。
空はどこまでも高く、天気の良い日だった。

町の中を歩くサラリーマンが仕事に追われる様に足早に歩いている。
信号待ちの車にはカップルが見えた。彼等は車の中で楽しそうに語らっている。
トラックの運転手が信号が青に変わっても進まないカップルの車にクラクションを鳴らしていた。
カップルの車が慌てて進んで行く・・・いつもと変わらない風景が目の前に有った。
俺だけが別世界に居る気がしていた
886 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:49:32.50 ID:UEJWPVEpo
ユイが・・・死ぬ?

ふと頭にその言葉が過ぎり俺は呼吸が苦しくなった。
あれ?呼吸が出来ない・・・
俺はその場に座り込んだ。
呼吸が上手く出来ない。あれ?おかしいぞ・・・
道端に座り込む俺を行き交う人達が心配そうに見て行く。
しばらく道端でうずくまっていると、やっと呼吸が整い始めた。
俺はユックリ立ち上がり、その場で立ち尽くす。
自分で焦りがある・・・だが、その焦りが何なのかは分からない。
ただ、俺は焦っていたんだ・・・
887 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:50:46.74 ID:UEJWPVEpo
よく、ドラマとかで、こう言う時は自暴自棄になって、喧嘩をしたり、壁を殴ったり、川を眺めたりする物だと思っていた。
だが、俺は普通に職場に向かい、そしていつも通り仕事をしていたんだ。
医者から告知をした方が良い。そう言われた。
あの当時はスキルス胃癌に関しての抗がん剤治療は、まだ確立されていなかった様だ。
手術をしようにも腹膜播腫という特徴的な転移があり、他に癌細胞を散りばめて、手術自体が困難らしい。
・・・スマン、俺には医学的知識が皆無なので、よく分からない。

とにかく医者が言うには回復が困難で有れば、ユイに残り僅かな人生を有意義に過ごさせて上げた方が良い・・・そう言われたのだ。
888 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:52:43.42 ID:UEJWPVEpo
だが、俺はユイに何と言えば良いか分からなかった・・・いや、怖かったんだ。
俺自身が怖かった。
そして・・・俺はまだ疑っていた。
ユイが癌だと言う事自体が嘘であり、それは向井さんが仕組んだドッキリだと言う気持ちが、未だに有ったんだ。


俺は休憩時間になると公衆電話に向かった。
受話器を取ると、すぐにヨウイチの家の番号を回す。
だが、ヨウイチは居なかった。ヨウイチの母親が「帰ったら、電話させようか?」と言われたが俺は断る。
そのまま向井さんに電話をする。
向井さんも居なかった。リコさんに電話をした。だが居ない。
サモハン、部長にも電話をしたが誰も出ない。

俺は受話器を叩く様に置いた。
何で誰も出ないんだ・・・誰か知ってるんだろ?このドッキリのからくりを・・・

俺は休憩時間中、ずっと公衆電話の前で立ち尽くしていた・・・
889 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:54:06.03 ID:UEJWPVEpo
仕事があっという間に終わってしまった。
気がつけば退社時間になっている。

皆が既にロッカールームに消えてしまっていた。
俺もトボトボとロッカールームに歩いて行く。
着替えをしながら、ロッカールームで残っている人達がテレビを見て笑っているのを見た。
俺も昨日まで・・・いや、今朝までは何も考えずに皆と同じ様に、ああやって笑っていたんだ。

俺は上手く着替える事が出来ない。服のボタンが上手く留める事が出来なかった。
何度も失敗する。やっと服を着替え終わり残っている人達に挨拶もせずに外に出て行った。

外に出ると肌寒い空気が俺を包んだ。空気が少し痛く思えた。
風が吹き空気が自分に纏わり付くと肌が痛く感じた。
890 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:55:55.86 ID:UEJWPVEpo
駅のホームで酔ったサラリーマン達が騒いでいる。
この人達も大事な人を失った事が有るんだろうか・・・?
いや、これから失う事が有るんだろうか・・・?

有るんだろうな。いつか誰もが死ぬんだし。
だけど、こんなに早く人は死ぬ物なのか?

電車がホームに入り俺は電車に乗る。
窓際に立った俺は外の流れる景色を見つめた。
だが、外の景色の前に気持ち悪い顔をした俺が窓に映り込み、外の景色が分からない。

キモい顔をしやがって・・・俺はそう思いながら自分の顔を睨みつけた。
向こうも俺を睨んでいる。

ふと窓を割りたい衝動に駆られた。
だが、それは自分勝手な考えだとも、すぐに思えた。

俺の大事な人が居なくなろうが、この世の中は・・・動き続けるんだ・・・
俺は下を向き自分の額を冷たい窓にくっつけていた・・・
891 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:57:11.23 ID:UEJWPVEpo
駅に到着して俺は何故か家に向かう事が出来なかった。
ユイに会うのが怖かったんだ。そして確認をしたかった。
医者が言っている事が本当なのか・・・はたまた、ただの質の悪いドッキリなのか・・・

ドッキリであって欲しい。もしも、今向井さんが出て来ても俺は怒らない。
抱きしめてキスをしても良い。何だったら俺を裸にして町中を駆けずり回しても良い。

だから・・・
だから・・・頼むから・・・頼むから誰か嘘だよ、って言ってくれ・・・

頼むよ。本当に頼むよ・・・
892 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 11:58:37.42 ID:UEJWPVEpo
気が付くと俺はヨウイチの家の前に到着した。
そしてインターフォンを押す。家からは母親の声が聞こえ、限界のドアを母親が開く。

「夜分にすみません・・・ヨウイチは・・・?」
俺がそう言うと母親は俺の顔を見て聞いた。

「・・・どうしたの?何か有ったの・・・?」
そう心配そうに言う。
俺は「いえ・・・」そう小さく呟くと、しばらく母親は俺の顔を見つめた後に「ちょっと・・・待っててね・・・」そう言ってヨウイチを呼びに言ってくれた。


ヨウイチが現れ、ヨウイチも俺の顔を見るなり「ちょっと・・・公園でも、行くか・・・」そう言って俺を公園に連れて行く。
893 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:00:24.43 ID:UEJWPVEpo
公園に行くなりヨウイチは俺に聞く。

「何が・・・あった?」
「え?」
「顔色は悪いし、頬を切ってるぞ・・・」

え?そう言われ俺は頬を触った。するとカサブタが有る。
本当だ・・・いつの間に・・・

「大丈夫か?」
「・・・分からない」
俺の答えにヨウイチは黙って俺を見る。俺はヨウイチを見つめた。

ヨウイチから言って欲しかった。
「どうだ?ビックリしたか?」
そう言って公園の木の陰から皆が出て来て「ビックリしたか?」そう言って欲しかった。

だが、そんな気配は全く無い。俺は吐き気を覚えた。

何だよ・・・マジなのかよ・・・
「・・・トオル・・・?」

ヨウイチがそう言った瞬間に俺はその場で吐いた。
894 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:01:54.39 ID:UEJWPVEpo
「おい、トオル!!!」
ヨウイチが慌てて俺の側に来て、背中を摩る。
俺は胃の中の物を全て吐き、更に胃液までも吐いた。

ヨウイチはずっと俺の背中を摩り、しばらくすると「待ってろ」そう言って自販機に行き飲み物を買ってくれた。
「まずは口をゆすげよ」
俺にそう言って飲み物を渡し、俺は頷いて口をゆすいだ。
しばらくすると少し落ち着いて来た。

「大丈夫か・・・?何が有った・・・?」
ヨウイチは心配そうに俺を見て来る。俺の体は微かに震えていた。

「寒いのか?家に戻るか?」
ヨウイチの言葉に俺は首を振りながら言う。
895 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:03:22.01 ID:UEJWPVEpo
「なあ・・・スキルス胃癌って・・・なんだ・・・?」

俺の言葉にヨウイチの顔色が一気に変わった。
「スキルス・・・おい・・・まさか・・・」
「なあ・・・治るよな・・・?誤診て事はよく有るよな・・・?」
俺の言葉にヨウイチは少しフラついた。そして、その場に座り込んだ。

「ヨウイチ・・・」
俺はヨウイチを見る。ヨウイチは下を向いたまま座り込んでいる。

「なあ・・・ヨウイチ・・・」
「・・・無い」
ヨウイチは俺の言葉を遮る様にそう言うと首を横に振る。

「・・・え?」
「スキルス胃癌自体・・・発見が難しい・・・それを発見した事、自体で・・・その医者は優秀だ・・・」
896 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:05:14.91 ID:UEJWPVEpo
「・・・治るよな・・・?」
「・・・・」

ヨウイチは何も答えない。

「・・・ヨウイチ・・・」
「・・・医者は・・・?医者は何と言ってる・・・?」
ヨウイチは俺を見ずに、そう言った。
「・・・腹膜播腫という転移が認められますって・・・だから手術は無理だって・・・」
「・・・そうか・・・」
ヨウイチは押し黙る。

「おい・・・ヨウイチ・・・」
ヨウイチは何も答えずに下を向いた。
897 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:06:46.51 ID:UEJWPVEpo
「ヨウイチ・・・おい・・・」
「・・・無理だ・・・」
「え?」
ヨウイチは泣き出した。
鼻を啜りながら泣き出した。

「・・・ヨウイチ・・・頼むよ・・・」
俺は目の前がチカチカし始めた。

何でお前が泣くんだよ・・・お前が泣いちゃダメだろ・・・俺はそう思いながらヨウイチを見る。
目の前がチカチカする。
ヨウイチは声を上げて泣きはじめた。

辞めろよ・・・泣くなよ・・・嘘だって言えよ・・・
ドッキリだって言えよ・・・あの医者は、お前の仕込みなんだろ・・・?

頼むよ・・・

それでもヨウイチは泣いていた。
898 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:08:16.64 ID:UEJWPVEpo
ヨウイチと別れ俺は自宅へ向かった。
家の前に到着して玄関の前に立つ。
しばらく家の中に入る事が出来ない。

ユイに会うのが辛かった。ユイの笑顔を見るのが辛かったんだ。
だが、ユイの顔を見る事が出来ないのは、もっと辛い。

俺は何度も玄関のドアノブを触り、その後、やっとドアの鍵を開けた。
ドアを開けると家の中は静かであった。俺はユックリ家の中に入る。
風呂場からシャワーの音が聞こえる。どうやら風呂場に居る様だった。
俺は少しホッとしてユイに言った。

「た、ただいま・・・」
シャワーの音が止まり「あ、お帰りー」ユイはいつもと変わらない明るい声で俺に言う。
899 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:09:28.20 ID:UEJWPVEpo
俺は自分の顔色が悟られない様にユイが気が付く前に言った。
「な、なんか俺、風邪ひいたっぽいから・・・もう寝るよ」
「え?大丈夫?」
ユイが心配そうな声を出す。
「あ、大丈夫・・・」
俺はそう言うと慌てて着替えて布団に入り・・・目を閉じたのであった・・・

夜中に目を開けたまま俺は天井を見つめていた。
ユイは微かな寝息を立てている。その向こう側にはスミカもスヤスヤと眠っていた。

俺はずっと眠る事が出来なかった。
寝て起きると・・・悪い夢が現実の物に成りそうだったからだ。

悪い夢で有って欲しい・・・俺はずっとそればかり考えていたんだ。
900 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:12:57.66 ID:UEJWPVEpo
翌朝、ユイはいつも通りに朝早く目を覚まし家事や育児に励む。
俺は目を開けてユイが家事をしているのを見つめていた。
ユイは俺に気が付き笑いかける。

「おはよう。体調は大丈夫?まだ顔色が悪いみたい」
そう言われ俺はユイから目を逸らした。
「あ、うん・・・大丈夫・・・」
「そっか・・・あんまり無理しないでね」
「あ、うん・・・」

俺はそう言うと手早く支度を済ませ家を出て行く。
玄関でユイがスミカを抱きながら笑顔で手を振っていた・・・
901 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:14:30.47 ID:UEJWPVEpo
どうすれば良いのかが分からない。

ユイに事実を告げるべきなのか、それとも黙っているべきなのか。
2011年の現在ならば、殆どの癌患者は告知されているらしい。
それは有効な抗がん剤が有るからだ。だが当時は無かった。
だから、無治療でそのまま逝ってしまう人も珍しく無かったそうだ。

いや、ユイに対しての告知の云々の問題では無かったかも知れない。
俺自身が怖かった。そして信じたく無かった。現実感すらも無かったんだ・・・

俺の中でユイに対して告知をする事で、それが現実になってしまう・・・
その恐怖感があった。
俺はまだ信じられ無かった。ユイが末期癌だと言う事を。

ユイはあんなに綺麗で元気じゃ無いか・・・痩せてもいない・・・だから信じられ無い。
ユイの命の灯が後、僅かだなんて。
902 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:16:58.95 ID:UEJWPVEpo
俺は仕事中に何度か吐き気がした。
朝食も碌に食べる事が出来なかった。

俺は思い切り泣きたい・・・そう思う。
だが泣けない。泣いたら、それが現実に成りそうで怖かったからだ。
そんな無為な時間が流れて行く・・・こうしている間にも貴重なユイの命の時間が流れていると言うのに・・・
俺は何の行動も起こせずにいた。
ただ、現実から逃げるだけ・・・ただ、間違いであって欲しいと祈るだけの時間であった・・・


仕事が終わり、俺は職場を出る。
繁華街の明かりが歪んで見えた。
行き交う人の楽しげな会話が全て夢の中の世界に感じられた。

そうか、夢なんだな、これは。
時間が経過するに連れて俺は益々現実逃避をしていた。
何故か全てが非現実的に思えた。
どこを、どう帰ったのか記憶に残らずに家に帰り眠りについていた。
記憶に残って無いんだよ。家に帰ってユイと会話をしたかも。
903 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:18:21.69 ID:UEJWPVEpo
翌朝、目が覚めるとユイが笑顔の普通の朝だった。

だから、俺は思った。ああ、やっぱり悪い夢だったんだって。

そして仕事に向かう。
だが風景が霞んで見えていた。現実的じゃ無いんだ。
仕事中も全て上の空だった。
本当に夢の中に居る気分なんだよ。

俺がその夢想の世界から抜け出したのは、その夜だった。


・・・気がつけば俺の目の前向井さんの泣き顔とリコさんの泣き顔があったからだ。
904 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:19:42.26 ID:UEJWPVEpo
本当に突然だったんだ。
何故、いきなり二人が現れたのかは分からなかった。
俺は仕事中だったと自分では思っていたが、気が付けば夜で俺は駅の近くに居た。

「言えよ、馬鹿!!!」
向井さんが泣きじゃくりながら、俺の胸倉を掴んでいる。
ヨウイチが泣きながら向井さんの後ろから向井さんを止めている。

リコさんがしゃがみ込みながら泣いているのが分かった。
駅前はシーンと静まり返っている。

広場の時計は夜中の3時を回っていた。

え?なんで・・・?

俺はビックリしていた
905 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:20:45.00 ID:UEJWPVEpo
後で聞いたんだが・・・俺はその日、仕事にも行かず徘徊していたらしい。

ユイに職場から連絡があり、ユイは慌てて向井さんとリコさんに連絡を入れて俺を探して貰ったそうだ。
そして夜にヨウイチが帰って来た際にヨウイチからユイに関する事を聞いて俺を探し回り・・・俺を見つけた。

俺は本当におかしく成っていたみたいだ。
現実から完全に逃避をしていたみたいであった。

リコさんは俺に抱き着いて来た。そして泣く。
906 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:22:07.49 ID:UEJWPVEpo
向井さんは尚も興奮しながら俺に怒鳴っていた。

「なんで一人で抱えるんだよ!!!!なんで言わないんだよ!!!仲間だろうが!!!!親友だろうが!!!!」

向井さんを止めているヨウイチも泣いている。
俺は空を見上げた。夜空には星が有る。

仲間・・・

その時、頭にある言葉が浮かぶ・・・


『可哀相に、一人で悩んでたんだね・・・』


え・・・?
907 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:23:16.68 ID:UEJWPVEpo
それはユイが言った言葉だ・・・
あれは・・・そうだ、高二の春のキャンプで、タカコがネックレスを無くした時だ・・・

『よしよし・・・大丈夫だよ・・・仲間なんだから、言ってね』
ユイはそう言ってタカコを慰めていた・・・

ユイ・・・
夜空にカシオペア座が見える。

『・・・今度、また教えて下さいよ・・・カシオペア座が全く分からないんすよ・・・』

あれは・・・いつだったか・・・そうだ、一年の文化祭だ・・・
908 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:24:10.92 ID:UEJWPVEpo
「向井さんに聞いたら『オペラ座?』とか訳の分かんない事言うし」
俺の言葉にユイが笑う。
「言いそうwwww」
「でしょ?」
二人で笑い合った・・・



ユイ・・・
909 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:25:10.74 ID:UEJWPVEpo
『うん!好きなんだ星!将来ね国立天文台の職員になりたいの』

ユイ・・・!
ユイの夢が・・・


『普通に・・・生きるって、羨ましいよね・・・』


ユイ・・・!!


ユイの笑顔が胸に広がる・・・ユイとの全ての場面が・・・俺の胸に広がった・・・

ユイ・・・
910 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:26:26.92 ID:UEJWPVEpo
俺の胸の奥からせり上がる物を感じた。
それは俺の胸を壊して洪水の様に・・・溢れ返った・・・

涙が流れ始めた。
それが流れ始めると俺は嗚咽を漏らしながら泣いた。初めて涙が出て来たんだ・・・
止めどなく涙が流れた。

「まだ・・・生きてる・・・!」
向井さんが呟いた。俺は顔を上げる。
「ユイは・・・まだ生きてるぞ・・・!」
俺は向井さんを見つめた。

「最後まで向き合えよ!!!!!!最後まで愛し抜きやがれ!!!!!」

そう言われ俺は声を上げて・・・泣いたんだ・・・
911 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:28:18.63 ID:UEJWPVEpo
家に帰るとユイが起きて待っていてくれた。
ユイは俺を見ると、俺を抱きしめて泣いた。

「・・・心配した・・・」
ユイはそう一言だけ言う。
「・・・ゴメンな・・・」
俺もそう呟く。
俺達はしばらく何も言わずに抱きしめ合っていた。
お互い、何も喋れなかった。


先程、向井さんに車で送って貰う際に、リコさんが俺に言った。
「私・・・ユイにトオル君を発見した、って・・・言った時に・・・泣いちゃったの・・・」
リコさんが下を向く。俺はリコさんの手を握り笑った。

「良いっすよ・・・俺が今からちゃんと話しますから・・・」
リコさんは再び泣き始める。俺はリコさんを抱きしめた。
運転する向井さんも泣く。助手席のヨウイチも外を見ながら泣いていた。

俺の家の前に到着して向井さんが言う。
「・・・待ってようか?」
その言葉に俺は首を横に振った。

「大丈夫です・・・」
「そっか・・・」

彼らはそのまま車を走らせて行った・・・
912 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:29:30.13 ID:UEJWPVEpo
ユイは俺を抱きしめる手が強くなる。

恐らく・・・最近の俺の行動と・・・リコさんの涙でユイは何かを理解していると思う。

だが、ちゃんと俺の口から言わなければならない・・・
その時、スミカが泣き声を上げた。
ユイが慌ててスミカに駆け寄り母乳を上げる。
俺はユイが座る真正面に座りユイを見た。
ユイは下を向いてスミカを見つめている。
俺は軽く深呼吸をして・・・口を開いた。

「この前・・・ユイの担当医に会った・・・」
その言葉にユイが体をピクリと動かす。俺は再び深呼吸をする・・・
913 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:30:53.19 ID:UEJWPVEpo
「胃潰瘍じゃ・・・無いんだ・・・」
俺の言葉にユイが俺を見つめる。ユイの唇が微かに震えているのが分かる。
「末期のスキルス胃癌だ・・・」
その瞬間にユイは顔を下げる。スミカを持つ手が震えている。
「あと・・・・・・」
俺は下唇を噛んで下を向く。そして涙が出て来た・・・

ダメだ。泣くな。
まだだ・・・まだ、ダメだ・・・!
ちゃんと言え!ユイに言え・・・!
それが、それが・・・愛する人への・・・誠意だろ!!!

「あと・・・三ヶ月が・・・ユイの命・・・!!」

そう言った瞬間に俺はユイを見つめた
914 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:31:57.85 ID:UEJWPVEpo
受け止めろ・・・ちゃんと最後まで見ろ・・・!
俺はそう思いながらユイを見つめる。ユイは下を向いたままだった。

そして・・・

「・・・ありがとう・・・」

そう呟いた。
え・・・?
ユイは俺を見て微笑む。

「言ってくれて・・・嬉しい・・・そして・・・ゴメンね・・・」
ユイはそう言って照れた様に笑う。


「トオル君を・・・一人で苦しめて・・・一人で悩ませて・・・!」


ユイ・・・
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/08/01(月) 12:32:44.26 ID:HxoESe5Do
今日は以上です
916 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:33:15.04 ID:UEJWPVEpo
「薄々・・・分かってた・・・お母さんも・・・癌だったから・・・私も感じたの・・・」
ユイはそう言ってスミカを見つめる。
ユイ・・・
俺は顔を下げる・・・

「ゴメンね・・・スミカちゃん・・・」
ユイはそう言ってスミカを見つめた。


「スミカちゃんと・・・ずっと一緒に居てあげられなく・・・なっ・・・」


ユイは言葉を止める。そして肩を震わせ始めた。スミカを抱きしめる。


「ゴメンね・・・ゴメン・・・なさい・・・お母さんで・・・居てあげられなくて・・・スミカちゃん・・・!」


そう言うとユイは声を上げて泣きはじめた。俺はユイを抱きしめる
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:34:21.38 ID:n4Y4UycRP
(;つД`)
918 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:34:32.27 ID:UEJWPVEpo
力一杯ユイとそしてスミカを抱きしめた。

「怖いよ・・・トオル君・・・怖いよ・・・」

ユイが泣きじゃくりながら声を上げる。俺も泣きながらユイを抱きしめる。

・・・なんでだよ・・・なんで・・・なんでユイがこんな目に合うんだよ・・・!
なんでユイは普通に生きる事が出来ないんだよ・・・!
なんで・・・なんで・・・俺達は・・・俺達は家族を持つ事が許されないんだよ!!!!
なんでだよ!!!なんで大切な人を無くさきゃいけないんだよ!!!!
スミカにも家族が無い生活をさせるんだよ!!!!

俺は神を恨んだ。有り得ない。意味が分からない。
どんだけ俺達の人生はハードモードなんだよ!!!!

ふざけんなよ。マジで・・・
919 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:35:56.06 ID:UEJWPVEpo
翌朝、俺を揺り起こす声が聞こえた。
ユイだった。

「おはよう!!」
ユイは笑顔でそう言ってカーテンを開ける。
俺はよく分からないまま起き上がりユイを見つめた。

「ほらっ!トオル君、遅れるよ!昨日は無断欠勤したんだから・・・今日はちゃんと皆に謝りなさい!」
ユイは笑顔で俺を引き起こす。

「・・・ユイ・・・」
俺はユイを見つめる。ユイは一瞬下を向くと・・・俺を見た。

「・・・笑顔で・・・」
「え?」


「笑顔で・・・過ごそう?泣かずに・・・笑顔で・・・最後まで・・・!」
「ユイ・・・」

俺はユイを見つめる。
920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:37:05.71 ID:n4Y4UycRP
支援
921 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:37:33.01 ID:UEJWPVEpo
ユイは少しムクれた顔をすると俺に言った。
「ほら!笑いなさい!」
そう言って俺の頬をつねる。
「ほら、笑わないと・・・」
そう言って俺をこちょばす。
「や、辞めろ、って・・・ウハハハハ!!!ダメだって!!!キャハハハ!!!」
ユイは俺に抱き着いて言う。

「・・・お願いだから・・・最後まで・・・笑顔で・・・ね?」
「・・・ああ、分かった・・・」
俺はユイに笑いかけた。ユイも笑い返す。

「さあ、起きて!早くお仕事に行って・・・怒られて来なさいww」
俺は笑いながら支度をする。
「じゃあ行ってくる・・・!」
「うん、いってらっしゃい・・・スミカちゃん、パパにいってらっしゃい〜」

スミカがキョトンとした表情で俺を見ていた。

そしてユイは・・・俺を笑顔で見送ったんだ・・・

922 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/01(月) 12:38:24.89 ID:UEJWPVEpo
今日は以上です
正直書きながら、あの当時を思い出していました。
あの時の感情や思いを中々、俺の文才では現せないっすね

頑張って書き続けますから、皆さん、どうか読んでやって下さい。
今日は、これで・・・

それじゃあまた!

923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:39:03.81 ID:z7pra7rDO
死んじゃいやあああああああ
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/08/01(月) 12:39:52.49 ID:midIsgN3o
星になっちゃいやあああああああ
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東海) [sage]:2011/08/01(月) 12:39:53.71 ID:y0Q8ABbAO
乙です!


ていうか>>915お前…
926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:40:32.75 ID:D/DrysmWo
(;つД`)
927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:43:19.04 ID:/7gwdkkIO
まぁ実際ガンで余命が残り3ヶ月だったらこんなに元気じゃないんだけどな。
ソースは自分の2年間ガンで闘病して亡くなった身内。
928 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:45:18.59 ID:+hmHn5BeP
ハム速潰れろ
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/01(月) 12:45:41.91 ID:IjazijZ4o
会社で飯食いながら読んでた。あれ、なんで俺泣いてるんだろう・・・

どこからがフィクションでどこからが本当なのか判らないけど
最後まで書いてください、待ってます。乙
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/01(月) 12:46:37.89 ID:IjazijZ4o
>>928
どうした?
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/08/01(月) 12:46:52.85 ID:HxoESe5Do
誤診だったんだ・・・実は別の人の検査結果だったんだ・・・
932 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:47:35.00 ID:+hmHn5BeP
>>927
そりゃあんたの身内の場合だろ
お前が知っていることだけが世間一般で起こると思うなアホ
933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:48:21.63 ID:+hmHn5BeP
>>930
いや 書いといたほうがいいかなと
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:48:52.86 ID:U1L52R90o
うわわわん
ユイイイイイ
935 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 12:55:48.85 ID:oHN0vbrIO
最後まで読むよ!
おつかれさま
936 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/08/01(月) 12:59:58.45 ID:seH8nBoIO
大丈夫。ちゃんとトオルさんの気持ちは伝わってきます。
正直、読むのが辛かったですが、頑張って最後までお付き合いさせて頂きます。
937 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/08/01(月) 18:54:48.26 ID:pFdSxcrDO
頼むから夜も来てくれ。気になって眠れん
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(北海道) [sage]:2011/08/01(月) 19:02:52.55 ID:TAVh3Qr2o
ユイのこはまぁアレだけど、トオルも無理して体壊すなよ
939 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 19:04:19.20 ID:RlCBGWuUo
医者もユイ本人も含めた盛大なドッキリだろ?
そうだったんだろ?本当はただの胃潰瘍で、すぐ治って、みんなで笑ってたんだろ?

たのむからそう言ってくれって…
940 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/01(月) 23:39:56.92 ID:pXoHQQ9DO
ここからヨウイチがチート使って名外科医になってユイは完治することにしてくれよ
941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(千葉県) :2011/08/02(火) 00:59:59.27 ID:W7EqoF1Lo
おまえらバカか
ユイみたいないい子が死ぬわけないだろ

天文部→星→ナメック星→ドラゴンボール
→シェンロン→願い事→ユイ完治

こうなるはず

942 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 01:41:08.70 ID:JCdgxGsLo
トオルが、今は幸せですって何処かで書いてたけど、ユイが亡くなったあと
後追いして、天国でまた一緒に成れたから、楽しく暮らしてますよと言うことかな
子供を一人にはしないと言ってたから、道づれでね

じゃあ、誰がこれ書いてんだろう・・・・・・
この物語が完結したら、サダルスウドの方に向かって合掌しておこう
943 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 07:47:00.14 ID:EHh594+cP
トオル召喚
944 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 08:37:21.09 ID:cL3BpvZSO
半分フィクション半分ノンフィクです

詳しく書くとユイが死んだのはガチで嘘 つかそもそもいない
料理人ってとこだけは本当に嘘 むしろニート
天文部のメンバーはマジで嘘 卓球部だし
小学〜中学時代の俺は本当にガチ リコーダーうめえwwwwww



こんな落ちでも許す
945 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 08:44:58.55 ID:EHh594+cP
トオル召喚
946 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/08/02(火) 09:53:25.62 ID:7yL6ZdgRo
aa阻止
947 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/08/02(火) 10:55:04.01 ID:9cNDk3SOo
谷山浩子さんの銀河通信って歌を思い出した
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 11:05:30.64 ID:EHh594+cP
トオル召喚
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2011/08/02(火) 11:36:33.76 ID:Tb41s19IO

       /ニYニヽ
   (ヽ   /( ゚ )( ゚ )ヽ   /)
  (((i ) /::::⌒`´⌒::::\  ( i)))  でっていうwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
 /∠_| ,-)___(-,|_ゝ \
( ___、  |-┬-|    ,__ )
    |    `ー'´   /´
    |         /
950 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:17:19.94 ID:vGUVfJaZo
乙です
一応新スレ立てました

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1312258578/
951 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/02(火) 13:19:16.25 ID:A1swJfxRo
実はトオルとして書いてるのはスミカで両親の事を書いているんだな
952 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:20:29.74 ID:vGUVfJaZo
ユイは毎日笑顔で過ごした。

ヨウイチ曰く、余命宣告はあくまで目安でしか無い。
だから、ひょっとしてもっと生きる事が出来るかもしれない・・・
そう言われたが俺は余り気にしていなかった。

ただ、ユイの側に居たい。
ユイと共に残り僅かな日々を過ごしてやりたかったんだ。

11月は皆が集まり、向井さん、ヨウイチの車に別れて乗車をして全員で紅葉を見に行った。
ユイは小さいスミカを連れ出す事に躊躇をしたが、俺は強引にユイを連れていく。

家族が揃う時間に限りがある。
だから俺はスミカを連れ出した
953 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:21:58.69 ID:vGUVfJaZo
皆がハシャグとユイも楽しんだ。
その時は既に全員が知っていた。
ユイの命の残りの灯を。

だが、皆はそんなのをおくびに出さずに騒ぐ。
とにかく笑顔で・・・ユイを送りたい。
俺は皆にお願いした。皆はそれを心がけてくれる。

俺は常にユイに色んな笑える話を持って帰った。
そして夜遅くまで話をする。ユイは腹を抱えて笑ってくれた。

俺達はずっと笑いながら過ごしていたんだ・・・
954 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:23:17.75 ID:vGUVfJaZo
だが、一人になると急激に悲しくなる。
俺は職場で、風呂で、トイレで・・・一人になると泣いた。
泣き続けた。悲しくて堪らなかった。辛くて堪らなかった。
ユイがこの世界から消えてしまう事が堪らなく悲しかった。

ユイとの色んな思い出を頭に描いてしまう。
最初の出会いから・・・そして結婚生活まで・・・思い出し、そして一人で又、泣いてしまうんだ・・・

だが、ユイが一番辛かったと思う。
ある日俺が家に帰るとユイが苦しそうにしている。
だが、俺が帰ったと分かると、いつもの笑顔を俺に向けるのだ
955 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:24:36.42 ID:vGUVfJaZo
ユイは既に体がかなり辛かったんだろう・・・
痛かったんだろう・・・

だが、俺の前では、そんな辛さを一切見せない。
ただ笑顔を俺に向けてくれていた。
俺が辛く為らない様に、俺が心配しない様に・・・
一番辛いのは自分の癖に、自分より俺を、そしてスミカを思う。

医者に痛み止めを貰ったがユイは飲んでいなかったのだ。
母乳でスミカを育てているので、スミカに悪い影響が出たらダメ・・・
そう言い張って飲まない。

「母乳を辞めて粉ミルクに変えよう」
俺がそう言ってもユイは聞かなかった。

「せめて、スミカちゃんにギリギリまで母乳を上げたいから・・・」

そう言うのであった・・・
956 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:26:06.08 ID:vGUVfJaZo
12月になり寒さが増すに連れてユイの体に異変が起きた。
夜中に苦痛を訴える事が多くなったのだ。俺はユイの体を摩る。

ユイは辛そうな表情を浮かべながら「ごめんね・・・」そう呟く。
俺はその度に泣きそうになっていた。
だが、ユイは俺のそんな顔を見る度に「笑って・・・」そう言う。
俺は泣きながら無理に笑うのであった・・・


ユイの食欲が減り病院に相談に行くが医者は入院させては?それしか言わない。
だがユイは入院を拒否していた。
少しでもスミカと一緒に居て上げたいから・・・ユイはそう言う。
医者も無理には入院を勧めなくなった。

「だが、本当に辛くなったら必ず病院に来て下さい・・・」
それだけを俺達に言った
957 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:26:57.25 ID:vGUVfJaZo
それと同時に、まだユイが動き回れる間に何かをしてあげたかった。
ユイの夢見た「普通の家族」が行う事を。

だが、何をすれば良いか分からない。
向井さんやリコさん達、皆が家に来て話題を提供する。
そして天気の良い日は俺達家族をドライブに連れて行ってくれた。

皆が皆、ユイに笑顔を・・・
それを合言葉の様に皆がユイを楽しませてくれていた・・・
958 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:28:07.35 ID:vGUVfJaZo
「なぐごはいねーがー」

ドアを開けると向井さんが上半身、裸の姿でサンタの格好をしている。
部長、ヨウイチ、サモハンがその横で同じく上半身、裸でトナカイの着ぐるみを着てドアの前で立っていた。
「な、何を・・・してんすか・・・」
「はあ???サンタの着ぐるみに決まってんだろうが!!!」
「さ、寒いから・・・早く・・・中へ・・・」
ヨウイチが震えた声で言う。
「意味が分からんし、そして、ナマハゲは関係ねーし」

クリスマスパーティーをウチで開いた。
リコさん、タカコ、マリが食事の用意をしてくれていた。
先に来ていたケンタとマルオが飾り付けをする。
959 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:29:57.68 ID:vGUVfJaZo
「スミカぁ〜・・・元気だったかい〜??向井のおじちゃんだよぉ〜」
向井さんは入って来るなりスミカの側に行き抱っこをする。
「いや、アンタ、一昨日も来てたじゃん・・・」
俺の言葉を無視して向井さんはスミカにご執心だ。

「むかいのおじちゃん、くちゃい!くちがくちゃい!」
「うお!!!スミカが喋ったあ!!!」
いや、アンタの後ろに居る部長の腹話術だよ。

「さあ、皆、乾杯するわよー!!」
リコさんがシャンパングラスを持って皆の前に行く。
「ユイさん、痛み止め飲んで無いですよね?」
ヨウイチが心配そうに聞く。
「うん、大丈夫。だから、ちょっとお酒飲んじゃうww」
ユイの言葉にサモハンがシャンパンを注いだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうww」

ユイは笑顔でサモハンからシャンパンを受けとった
960 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:31:53.28 ID:vGUVfJaZo
「コホン・・・それでは!」

部長がグラスを持ち立ち上がった。
「お、部長が仕切るぞ」
「これは何かしてくれんぞ」
「楽しみ〜」

全員からハードルを上げられて部長が固まる。
「・・・ぇと・・・ぃ・・・ゃ・・・ぱぃ・・・」
「声、ちっさああああ!!!!」
部長は窓の外を見始めた。

「あ、ダメだ、逃避に入った」
「おーい、誰か代わり!」
「向井さん?」
「スミカ〜・・・ばぁ!」
「あ、ダメだ、コイツも使いもんになんねえ」
「誰?トオルさん?」
「え?俺かよ」
「じゃあどうすんだよ」
961 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:34:14.83 ID:vGUVfJaZo
「じゃあ・・・ユイで!」

リコさんの一言で全員がユイを見つめる。
ユイはビックリして顔を赤らめた。
「え?私?」
ユイが目をパチクリさせる。
「ああ・・・ユイ、頼むよ」
俺もそう言ってユイに笑いかける。
「じゃ・・・じゃあ・・・」
ユイは立ち上がりグラスを前に出した。

「えと・・・」
ユイは少し下を向いた後に・・・笑って言った・・・

「来年の・・・クリスマスは・・・私は幽霊になって・・・参加しちゃうかも・・・ww」

そう言った瞬間に全員が固まる・・・ユイは皆の顔を見てハッとした
962 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:35:51.53 ID:vGUVfJaZo
「ち、違うの・・・そんな、気持ちで・・・い、いや・・・」
ユイは焦った後に頭を抱え始めた。
「ちょ、ちょっとした・・・冗談だったのに〜・・・」
そう言った瞬間にリコさんがユイの肩に腕を回して抱きしめる。
「・・・リコ・・・」
ユイが呟いた。
タカコが少し鼻を啜った後に言った。

「必ず・・・来て下さい・・・」
「ああ・・・待ってます・・・」

ヨウイチも笑って言う。
「暇なら・・・私の所に・・・毎晩来て下さい・・・!」
マリが涙を溜めながら笑顔で、そう言う。
「俺ん所にも・・・」
ケンタが笑う
963 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:37:16.32 ID:vGUVfJaZo
「僕がトイレに居る時、以外ならOKだよ!」
部長が笑いかける。
「馬鹿、お前らん所より、スミカの所に行くだろww」
向井さんが笑った。

みんな・・・俺はみんなを見る。
ユイはリコさんに抱かれながら鼻を啜る。

「あ、僕は・・・で、出来れば・・・よ、夜中に・・・僕の部屋に・・・」
マルオがそう言った瞬間に俺はマルオを蹴った。
「な、何するんすかあ!!!」
「お前はなんかエロい」
マルオが泣いた。
皆が笑っていた。ユイも笑う。
964 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:38:41.56 ID:vGUVfJaZo
「・・・ユイ」

皆が酒に酔った頃、向井さんが呟く。
「なんか・・・したい事は・・・ねーか?キャンプとか・・・スキーとか・・・」
向井さんの言葉にユイは首を振る。
「大丈夫・・・今も皆に沢山、色んな事をして貰ってるから・・・!」
「そっか・・・」
向井さんはビールを飲んだ。リコさんがユイの顔を見る。
「本当に無いの?何でも良いよ?部長と向井君の裸踊りでも?」
「見たく無いww」
全くだよ。
部長が脱ごうとしていたので俺は全力で止める。
965 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:40:46.26 ID:vGUVfJaZo
「うーん・・・あ、・・・」
ユイが何かを思い出した様に顔を上げる。
「何、何?見つかった?」
「あ、でも・・・これは・・・」
「何ですか?言って下さいよ」
皆がユイを見つめて尋ねる。
「あ、いや・・・あの・・・」
「言えよ、ユイ」
俺はユイにそう言う。
「あ、えっと・・・」
ユイは恥ずかしそうに下を向いた後に笑って言った・・・

「は、花火大会を・・・皆で・・・見たい・・・な」

花火大会・・・?
「花火大会は・・・来年の・・・夏だな・・・」
皆が下を向く。
「あ、だから・・・良いの!うん・・・今で充分だから・・・!」
ユイが慌ててそう言った時に俺が言った。

「いや、見よう・・・!」
「え?」
966 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:42:42.99 ID:vGUVfJaZo
「皆で・・・花火を見よう・・・な?」

俺の言葉に全員が、ハッと気が付きユイを見た。
「・・・そうだ、見ようよ・・・!」
リコさんが、そう言ってユイの手を握る。

「見よう・・・だから、ユイ・・・八月まで・・・生きろ・・・!」
「・・・え?」

向井さんの言葉にユイが反応する。
「そうだ、頑張ろう・・・頑張って、ユイ・・・八月に皆で花火を見るんだよ・・・!」
俺の言葉に皆が頷いた。ユイは少し下を向いて、そして笑った。

「うん・・・頑張る・・・!皆で・・・花火を・・・見よう・・・!」

ユイの言葉に皆が笑った。
「よし、じゃあ約束だよ」
そう言って部長が小指を立てる。
そこにマリが乗っかって部長の小指に自分の小指を絡めた。
「え?全員でやんの?」
俺は少し笑う。
「当たり前!全員でやるよ!」
リコさんが小指を絡めた。
967 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:44:16.52 ID:vGUVfJaZo
「しゃーねーな」
向井さんも小指を絡める。それに呼応する様に次々と皆が小指を絡め出した。
「いや、すんげぇ、多いしww」
ケンタが笑う。
「良いから!ほれ、ユイ、お前がしないでどうすんだよ!」
向井さんの言葉にユイが笑いながら、自分の細い指を絡めた。

「おい、押すな狭いよ!」
「仕方ないでしょ、11人も居るんだから」
「よっしゃ、行くぞー」
皆が声を揃えて歌いだす。

「指切りゲンマン、嘘ついたら〜♪・・・」
「・・・どうする?」
「嘘ついたら・・・俺がスミカのファーストキスを奪う!」
向井さんの言葉にユイが首を横に振る。

「いやあああ〜・・・それだけは辞めて〜・・・」
「じゃあ、頑張るしか無いわね♪」
「だなww」

俺達はいつまでも・・・笑っていた・・・
968 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:46:20.37 ID:vGUVfJaZo
年が明けて、1月になると寒さが本番を迎える。

年越しを家族三人で過ごした後に・・・ユイが入院をした。
体調が急変して、体の苦痛を訴えたからだ。
ユイが入院した為に、俺は仕事を休む。
スミカはリコさん、タカコ、マリが交代で見てくれていた。
本当に彼女達が居てくれて助かったよ。

1月のユイは苦しみ続けた。流石に痛み止めを使用して貰える様に俺は医者に言う。
その時は落ち着いた表情でユイは眠りについた。俺はユイの痩せた手を握り祈った。

このまま逝かせたく無い・・・神様・・・お願いします・・・!

その願いが聞き届けられたか、どうかは分からない。
だが、2月に入るとユイの体調が回復する。
勿論・・・回復すると言っても治った訳では無い。ただ、病気が小康状態になり、一時的に安定しただけだ。
ただ、それでも少し元気になったユイを見た時にはホッとしたのであった。

俺は益々ユイの側に居続けた。
スミカを連れてリコさんや、他の皆も交代で見舞いに来てくれていた。

その時のユイは本当に楽しそうだったんだ・・・
969 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:47:30.70 ID:vGUVfJaZo
俺は毎日、奇跡を祈り続ける。
あんなに恨んでいた神に祈る・・・

お願いします・・・どうか・・・どうか・・・ユイに・・・花火を見せて上げて下さい・・・
ほんの少しだけで良い・・・多くは望みません・・・どうかお願いします・・・

ユイに・・・最後に花火を見せてやって下さい・・・!
あんなに・・・一生懸命に生きてたんだ・・・!
あんなに一生懸命に夢を追い続けても・・・どれも叶えられて無いんだ・・・!

一つ位・・・一つだけでも・・・ささやかな願いを・・・
彼女の願いを叶えてくれても良いじゃないか!!!

頼むよ!!!本当に頼むよ!!!

・・・・
・・・・
970 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:48:40.90 ID:vGUVfJaZo
2月が終わりに近付く頃だった・・・俺は仕事を辞めた。

これ以上、休みを取る事は会社として、困る・・・そう言われたのであった。
仕方がない・・・そう思った。会社も、大変なんだ・・・

貯金は僅かでは有ったが何とかなると思った。
それに呼応する様に、ユイの体調は再び悪くなった。

医者が「そろそろかも知れません」そう俺に告げた。
俺はその言葉に黙って頷く以外無かった・・・・
971 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:50:34.72 ID:vGUVfJaZo
病室に眠るユイを俺は見つめた・・・

季節は夏を迎えない。
あの・・・入道雲が沸き立ち、うるさくセミが鳴く夏・・・
俺達が出会った・・・あの夏の日・・・

俺は頭を抱える。そして鼻水を啜りながら泣いた。
目を閉じて俺は泣いていた。目を閉じると、目の前に大きな花火が広がる。

15歳の俺達が二人で初めて見た大きな花火・・・
俺の手はユイの痩せた手を握り締める・・・

もう一度・・・あの夏の日に・・・!

しばらくすると・・・痛み止めが効いているユイが目を覚まし俺を見て微笑む。
俺は慌てて涙を拭い、ユイに微笑みかけていた・・・
972 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:52:24.60 ID:vGUVfJaZo
何かを・・・してあげたい・・・俺は四六時中それを思う。

ユイの為に何が出来るんだ・・・?
もうすぐ命が尽きようとしているユイに・・・

だが、俺には何も出来なかった・・・何一つ役に立つ事が出来ないんだ。
なんて無力なんだ・・・俺は。
最愛の人がこの世を去ろうとしているのに・・・俺は何も出来ないのか・・・
そう思った時に、何かが頭に浮かんだ・・・

出来る。俺に出来る事がある・・・!



ユイが眠りから覚めた時に俺はユイの手を握った。
ユイは俺に微笑みかける。
「・・・ユイ・・・」
「・・・ん?」
ユイは力の無い声で俺に返事をする。

「何か・・・食べたい物は・・・無いか?何でも・・・良いぞ」

俺はゆっくりユイの目を見て話す。
ユイは少し考えた後に、小さな声で答えた・・・


「トオル君の・・・ナポリタン・・・」


俺はユイの手を握り・・・力強く頷いたのであった・・・
973 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:54:19.42 ID:vGUVfJaZo
俺は家でパスタを作り始める。
小麦粉から吟味して、何度も、何度も作り直した・・・
昔、シゲルさんに言われた。

「もしも・・・自分の愛する人が、この世で最後に一度だけ、料理を食べる事が出来るとしたら・・・お前はどうする?」

俺はあの時、一瞬だけ考えた。
それは・・・ユイの事を考えたからだ・・・
そして今、俺の目の前で正にそのシーンが有るのだ。

俺は最愛のユイの為に・・・今までの身につけた全ての事を・・・目の前の料理に捧げた。

俺は今、この時の為に・・・天から授かったのかもしれない・・・
料理と言う才能を・・・!

俺はひたすら・・・ユイを思い、最愛の人の為に・・・料理を作ったのであった・・・
974 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:56:01.43 ID:vGUVfJaZo
目の前にナポリタンを置いた時に、ユイは驚いた顔をして、そして俺に笑いかける。
俺もユイに笑った後でユイの為にフォークでパスタを巻き付けた。
そして、ユイの口の中に入れてあげた。

ユイはユックリと・・・そして味わう様にパスタを噛み締める。
パスタはギリギリの火加減で茹でた。
これ以上茹でたら柔らかくなりすぎる、そして、これ以下ならば病人には固すぎる・・・
俺はドキドキしていた。
今までの、どの客に出した時よりも・・・緊張していた。
ユイは俺のナポリタンを噛み締めると・・・喉の奥に送る・・・

そしてユイの瞳から涙が・・・流れた・・・

「・・・美味しい・・・美味しいよ・・・」

ユイはそう言う。俺は下唇を噛み締める・・・涙が出る。
どんなに我慢をしても俺の目からは涙が溢れていた。
ユイにナポリタンを食べさせる。
ユイも泣きながらそれを食べ続けていた。
恐らく食べるのも辛い筈だった。

だがユイは・・・涙を流しながら食べ続けていたんだ・・・
975 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:57:34.00 ID:vGUVfJaZo
この年の冬は長かった。
寒く長い冬・・・まるで春になる事を拒む様な寒い冬だった。
三月に入っても暖かくならない。

明けない冬・・・
ユイが春を越す事を拒む冬。

俺は病院から帰り家でスミカを抱きしめながら毎日泣いていた。
なんで春は来ない・・・?
なんで冬が終わらない・・・?
なんで夏が・・・来ないんだ・・・!!

どうしようも無い絶望感に包まれていた。
奇跡が起きない。起きる気配は無い。
日に日にユイは衰弱している。

もう・・・最期の瞬間が迫っている・・・
なのに・・・夏が来ない・・・花火を・・・花火を見せてやる事が・・・出来ない・・・

俺は泣いているスミカを抱きしめ・・・俺も泣いた。
976 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:58:32.94 ID:vGUVfJaZo
ある日、マルオが病院に来た。
マルオは慌てた様子で俺を見ると・・・俺に耳打ちをした。
俺はビックリしてマルオを見る。
「・・・明後日・・・?」
俺の言葉に・・・マルオは頷いていた・・・


医者に許可を取り、俺はユイを車椅子に乗せて病院を夕方に出た。
スミカも連れていく。
病院の前にはヨウイチの車が停まっていた。

「・・・どこへ・・・?」

ユイが弱々しい声で俺達に聞いて来た。
俺達は黙ってユイに優しく笑いかけるだけであった・・・
977 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 13:59:36.41 ID:vGUVfJaZo
車は俺達が星を見ていた高台に到着する。

俺達が毎晩の様に星空を見た高台・・・
卒業式の日に皆で騒いだ高台・・・
俺がユイにプロポーズをした高台・・・

そして・・・


皆で・・・花火を見た・・・高台・・・
978 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 14:00:50.51 ID:vGUVfJaZo
「ここ・・・?」
ユイが車椅子に座り俺に尋ねた。
俺はスミカが寒く無いように、もう一度防寒を確かめながらユイに頷いた。
その時、後ろから大きな声が聞こえて来た・・・

「ああ〜暑い!!夏だな、おい!!!」

そう言って向井さんは海パン一枚の姿で現れる。
「・・・え・・・?」
ユイが向井さんを見た。
「本当だね〜・・・暑い限りだよ・・・」
部長も海パン一枚姿で現れた。

二人共、鳥肌を立てている。
当たり前だ。今は三月上旬の夜だ。寒いに決まっている。
979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(熊本県) [sage]:2011/08/02(火) 14:02:43.02 ID:LVaAl/SOo
ある日、私は森に迷ってしまった。
夜になりお腹も減ってきた。
そんな中、一軒のお店を見つけた。
「ここはとあるレストラン」
変な名前の店だ。
私は人気メニューの「ナポリタン」を注文する。
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。
……なんか変だ。しょっぱい。変にしょっぱい。頭が痛い。
私は苦情を言った。
店長:「すいません作り直します。御代も結構です。」
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。今度は平気みたいだ。
私は店をでる。
しばらくして、私は気づいてしまった……
ここはとあるレストラン……
人気メニューは……ナポリタン……
980 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 14:03:00.26 ID:vGUVfJaZo
「先輩達〜、今日も暑いっすね〜!!!」
そう言ってヨウイチ、サモハン、ケンタ、マルオも海パン一枚で震えながら現れた。

「・・・みんな・・・?」
ユイが呟く。
「あら〜夏らしい格好ね〜・・・」
リコさん、タカコ、マリが浴衣姿で現れた。
「・・・え・・・?」
ユイが首を傾げる。俺はずっとスミカを抱きながら下を向いていた。

「・・・トオル・・・君・・・?」
ユイが不安そうに俺を見る。俺は何も答えずに笑う。
ユイは海パン姿の男達と浴衣姿の女子達が俺達の横に並んで立つの見ていた・・・
981 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 14:04:32.43 ID:vGUVfJaZo
「・・・始まる・・・よ・・・」

俺がユイに呟くとユイがその声に併せて前を見つめる・・・
目の前には高台からの町の夜景が広がっていた・・・
そして、その夜景の隙間から・・・
一筋の光りが・・・シュルシュルと音を立てて夜空へ向かい・・・上がって行く・・・

そして、その光りは一瞬消え、その後に・・・大きな大輪を咲かせた・・・!


ドーンッ・・・!!!


大輪の花の光りの後に大きな音が俺達に届く・・・!
982 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 14:05:48.70 ID:vGUVfJaZo
ユイが声を漏らした・・・


「・・・はな・・・び・・・!」


再びシュルシュルと光りが舞い上がり・・・
大きな光りの花を咲かせて音が響いて来る・・・

「・・・う・・・そ・・・」

ユイは震える声で呟く。
ユイの肩が震える。
俺もスミカを抱きながら震えていた。

花火は次々と打ち上げられる。
大きな光りの花が夜空に広がり・・・それと共に大きな音が上がる・・・
983 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 14:07:03.68 ID:vGUVfJaZo
「ユイ・・・」

俺は震える声でユイに言う。

「見えてる・・・か?花火だぞ・・・俺達・・・今・・・」

俺は喉の奥が詰まる・・・
そして、声と共に・・・涙を流して・・・言った・・・


「家族で・・・花火を見てるんだぞ・・・!」


ユイは頷く。ユイの肩は震えている。ユイは口元に手を当てた。
そして・・・嗚咽を漏らしながら・・・
泣いていた・・・


「・・・見てる・・・今・・・・花火を・・・見てる・・・」
984 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 14:08:28.61 ID:vGUVfJaZo
横を向くと皆が泣いている。
花火を見ながら肩を震わせて泣いていた・・・

花火は上がり続けた・・・
その花火は・・・向井さん達が、花火師に頼み打ち上げて貰った・・・花火だった・・・

恐らく、かなりのお金が掛かった筈だった・・・
準備や根回しとかも大変だったに違いない・・・

だけど、皆がユイの為に打ち上げてくれた・・・心のこもった・・・最高の花火だったんだ・・・!





その花火は俺達の町の珍事として話題になった・・・
その年の冬の終わり・・・


俺達の町に・・・花火が夜空に上がった・・・

985 :トオル ◆6QvXJyw6Y9Xg :2011/08/02(火) 14:09:49.71 ID:vGUVfJaZo
今日は以上です
あともう少しで終わりの予定です

もう少しだけ、お付き合いを下さい
986 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/08/02(火) 14:10:58.49 ID:+rmKbix5o
>>985
今日もオレを泣かせやがって!!!
987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/08/02(火) 14:12:06.52 ID:2rIhmCkao
涙腺が…
988 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/08/02(火) 14:12:13.77 ID:9cNDk3SOo
そうか・・・奇跡は起きないんだな
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/02(火) 14:13:18.82 ID:FXKKaIJgo
>>985

 。・。∧_∧。・。
。゚  ( ゚´Д`)  ゚。 終わっちゃらめえぇぇ〜!!
  o( U U
   'ー'ー'
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 14:14:30.53 ID:c81ITteuo

すごく悲しい気持ちになった
今のトオルさんが幸せであることを願う

ところで一つ質問があるんだけど、この時点でトオルさんは何歳なの?
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 14:15:49.71 ID:LABg+SwMo
読んでたらiPodからクリスタル・ケイのマザーランドが流れてきた
どうやらiPodがトオルと手を組んだようだ
最後まで読むよ!
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 14:19:27.11 ID:EHh594+cP
なんとか堪えた あぶねえ
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/02(火) 14:35:51.89 ID:eWnRdBi7o
.          \\      ,土ヽ l 十  ├  ゝ‐、ヽ ll               尸  //
            \\  (ノ ) | Cト、.Cト、   ノ l_ノ よ  ̄ ̄ ̄ (⌒/   //
                   .....       .:_ -― ─- 、:.    ......
                  ..::⌒>.、:: ...::/::.::/::.:: ヽ::.::.\::....::x<⌒::.
              ::x-=≦.::.-=`ミO.:/:/:/|:./.:ハ::ヽ::`O::-=ミて`く⌒ヽ::
            ::, イ::ノ⌒'Z _⌒ Y彡::./V  j/ヽ::ハ.::.V::Y⌒/;^)- 入 \:
           ::/ :/八  '(:::::':,\ トV::./⌒     ⌒ヽ.::∨/,.::'::/  /:::∧  '\::
           ::/ `V::/ヽ\ \ :':, 八W __    __ jハ:::l, :':::::, ′ /:::/   ̄ ノ\::
        ::〈   ,.:'::/   ヽ \ \:l:ハ| 〃⌒    ⌒ヾ ハ:|::::/  ,.イ:::/     ∠.::勹::
       ::/ ! :.'::::∧   |  ヽ  \ム .:::::  r ┐ ::::.,'ノ/  / /::/   |__:/::
     ::∠._jハ_ん:ヘ/}ノ /ヘ  ヽゝ_  ヽ ノ   イ/  /⌒ん'⌒)_>::
                     ̄   ̄`ヽ   `=≧r ‐i彡''´  /::     ̄
                      ::\ヽ   ` ´   / /::
                       ::          ,′
                       ::i  :;     :;  i::
                       ::|          |::
                       ::l         |::
                         ::j            ::
                        ::,′           l::
                         ::/           |::
                     ::/              !::
                       ::/    〉┴r      ::
                       ::,′    /:: ::|     |::


>>1000なら、みんな幸せになる。
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋) [sage]:2011/08/02(火) 14:46:52.41 ID:2rIhmCkao
>>993
おせーよwww
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 15:19:10.74 ID:mUL9bdCIO
泣いた
仕事中に泣いた


そして>>993でわろたwwwwww


読むよ!最後まで読むから!
あう…
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(埼玉県) [sage]:2011/08/02(火) 16:29:08.15 ID:eWnRdBi7o
朝来れなかったけど、結局>>992ID:EHh594+cPの次だったでござる
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2011/08/02(火) 16:53:42.80 ID:EHh594+cP
実は埼玉は俺の自演
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/08/02(火) 16:59:11.49 ID:+rmKbix5o
1000ならユイ復活でハッピーエンド
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(東京都) [sage]:2011/08/02(火) 17:04:01.57 ID:9cNDk3SOo

            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ,,,,,,,,,  <  いくわよトオルくん
    |;;;;;;;;;|   \________________
    |;;;;;;;;;|
   ノゝ・_・)_√ ̄i_  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ノノ'"'πヾ (゚Д゚ ) <いつも一緒だぜ
  _ノノU;;;;;;;| ノ# ̄ヽ   \_____________
 |__|];;;;;;;;|ノ__#_ヾ
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(徳島県) [sage]:2011/08/02(火) 17:05:02.06 ID:+rmKbix5o
1000ならユイ復活でハッピーエンド
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
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パー速@VIPService
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ローカルルール変更に伴い、1000到達の報告が不要になりました。

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【避難】今日も会社でVIP【避難】 @ 2011/08/02(火) 17:03:14.49 ID:rlpnRgwto
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物凄く過疎な携帯ゲーム @ 2011/08/02(火) 16:33:08.85 ID:UVmsCxWAO
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VIPでチビクエやろうずwwwwwwwwwwww @ 2011/08/02(火) 15:54:21.11 ID:f7iAf/qm0
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【ついに】そこのメンズちょっと来い!あ、レディースも100【キター!】 @ 2011/08/02(火) 15:35:45.96 ID:uVk+J8hco
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魔王「勇者はまだか」 @ 2011/08/02(火) 14:19:21.76 ID:wT5TYfRSO
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昔懐かしの面白かったスレを晒すスレ @ 2011/08/02(火) 14:07:44.27 ID:EO4lY1PAO
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一方通行「安価で【神ならぬ身にて天上の意思にたどり着くもの】にたどり着く」 @ 2011/08/02(火) 13:50:50.49 ID:NimWk3Mpo
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VIP落ちたwwwwww @ 2011/08/02(火) 13:16:34.20 ID:Zo/GIv4co
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