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社畜兄と義妹 高校編

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161 :社畜辞めた656兄 ◆6t8ZTevFm6 [sage]:2013/09/23(月) 05:49:33.28 ID:HMpuh9Qfo
オレ「…え?」
義妹「こんな長閑な場所で呑気にのびのび育って? 周りの人もあり得ないくらい親切で? そこら中、花と虫と動物だらけ。夜空とかプラネタリウムみたいだし。ご飯も水も空気まで美味しい。私の育った場所と全然違う。なんなの、ここ。ムカつく。おまけに兄さん本人も腹が立つくらいお人好しで優しくて無防備。なんかちょっとドンくさいけど、頭が悪いわけじゃない。実際、学校の勉強も出来るし、弓引いてるところとか集中してる時はカッコいい。そういうとこ全部まとめてムカつくって言ってんのよ」
オレ「えっと… よくわからないんだけど。オレ、いま怒られてるの、ひょっとして?」
義妹「それすら判断つかないんでしょう、このお人好し。いいから黙ってて。でも、勘違いしないで。私なりに自分の気持ちを見つめてみた。腹立つけど」

そこでいったん言葉を切って、うつむく義妹。なんだ、モジモジして。さっきまでの勢いはどこへ行った。なんか目を閉じて、深呼吸してる。そんなに川風が美味いのか。ヘンな生き物。

義妹「…いいですか。これはネガティブな感情じゃないんです。兄さんの人柄は私にとって…とても好ましい。今日、確信した。一緒にいるとなぜか凄く安心。プライド捨てて、本能がそう感じるって言ってあげてるんです。あー、もうムカつく。わかりました? この一週間を一緒に過ごして、私なりにそう感じちゃってるって話です。以上」

そこまで一気にまくしたてて、額をオレの胸に押し付ける義妹。ゴツっ。押し付けるってゆーか、頭突きに近いわけだが。ゴツ、ゴツっ。
いつも澄ましてて感情をあまり見せない端正な顔が、涙と鼻水でいよいよヤバいことになってる。なんだ、面白い子じゃないか。

オレ「ププッ。それで?」
義妹「それでって… つまり、そういうことです。なんで笑ってんの?」
オレ「ぜんっぜんどういうことなのかわからない! ワハハッ!」

パッチン!

橋の上に響く鈍い音。なんか左肩のあたりがじわっと痛いんだけど。え、オレ、叩かれた?

義妹「たったいま兄さんの評価に鈍感の二文字も加わりましたよ。もういいです。さっき言った通り、ちゃんと兄妹になりたい。家族として、兄さんって呼びたい。妹って呼ばれたい。いまはそれだけです」
オレ「オーケーオーケー。じゃ、いまから兄妹スタートね」
義妹「…なんですか、その軽い感じ」
オレ「妹的にはこういう時に何て言って欲しいものなんだ?」
義妹「私の兄貴になるんでしょ。それくらい自分で考えて」
オレ「あのさ」
義妹「はい」
オレ「腹減ったんだけど。あと、ここ川風で寒いし」

パッチン!

義妹「…はぁー こんな人に泣かされるなんて。なんでこんなとこで、こんなことしてるんだろ、私。もうホントあり得ない」

ブツブツ言ってる義妹を橋の上に置いて、サッサと家に足を向ける。わざと速足で。左肩をさする。中三女子の力とはいえ、それなりに痛い。後ろから、慌ててついてくる気配。「ちょっと!」という声と足音が耳に届く。
振り向きざま、頭を上から掴んでガシガシしてやる。髪サラサラ。頭ちぃせーな。こんな頭蓋骨であんなこと考えてたのか。妙なことに感心してる自分が可笑しくて、さらに笑ってしまう。

義妹「あ、兄さん、それナシ! 子どもじゃないんだから!」
オレ「ははっ! そーだな、ヘンな妹!」
義妹「ヘンってなんですか、ヘンって! 年頃の女子に失礼です、そーゆーの!」

薄闇に包まれた橋の上で、オレと義妹の何だかよくわからない関係が始まった。
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