A雑ぼっち部-A雑部室

A雑ぼっち部

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782:名無しA雑民[sage]
2025/07/28(月) 21:36:54.49 ID:b11EoBzso
タイトル：知らない隣人

引っ越してきたばかりのアパート。
隣の部屋に住んでいるのは「サトウさん」という人らしい。
管理人は言った。
「いい人ですよ。ちょっと変わってますけどね。まあ、話せばわかる人です」
しかし、奇妙なことに、男は一度も隣人の姿を見たことがなかった。
顔どころか、声も聞こえない。

けれど——

・宅配便の受取記録はある。
・ゴミはいつも出ている。
・夜になると、部屋の明かりがつく。
・たまに、なぜか男宛の郵便が間違ってサトウさんの部屋に届いている。

ある日、ついにピンポンを押してみた。
何の音も返ってこない。だが、ポストには「いつもお世話になってます」のメモが貼られていた。
それからというもの、日常の中に「サトウさんの痕跡」が増えていった。

・スーパーでレシートを見ると、「納豆（隣）」と印字されている。
・宅配ボックスに自分宛の荷物と一緒に「サトウさん宛」の荷物が入っている。鍵がなぜか開いている。
・ネットで「サトウ」と検索すると、自分の顔写真が出てくる。

不安になって管理会社に聞いてみた。
「あの……隣のサトウさんって、本当にいるんでしょうか？」
管理人は笑った。
「何言ってるんですか、あなたがサトウさんですよ」
男は首をかしげた。
「いえ、自分の名前はタナカですけど……」
管理人は書類を取り出した。
「こちら、入居契約書。ほら、ちゃんと書いてあるでしょ。氏名：サトウヒロユキ」

——そんなバカな。だって、自分の免許証には——

財布を開くと、そこにもこう書かれていた。

サトウヒロユキ

男は、黙って部屋に戻った。

隣の部屋のドアは、静かに閉まっていた。
もちろん、彼の部屋のドアも。

——どちらが“隣”だったのかは、もうよくわからなかった。

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