120: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2015/05/19(火) 20:04:45.20 ID:AAAmLQu+O
  
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 平日というのは学校や仕事があって面倒に感じられるものだが、この時ばかりは休日が近づくのを憂鬱に感じていた。 
 今日は金曜日、時刻は12時30分。 
 昼休みの時間である。 
 ジュウはいつも通りの握り飯を頬張りつつ、窓の外を眺めていた。 
 教室内はかなり賑わっており、特に暖房機の前にたむろしている女子が騒がしさを通り越して喧しい。 
 女子というのはどうしてこう集団になると声高く喋るのだろうか。 
 夏と冬では、断然冬の方が昼の教室内は騒がしくなる。 
 夏は部活に行ったり、外で弁当を食べたりする連中が一挙に教室にやってくるからだ。 
 実際、夏場は窓の外に見られていた運動着の生徒たちも、今は見えない。 
 部活をしている連中を馬鹿馬鹿しいなどとは思わない。 
 彼らはそれに熱中し、やり甲斐と生き甲斐と達成感を得て青春を謳歌しているのだろうし、それはさぞ楽しいことだろう。 
 ジュウも、自分が青春期の中にいることは自覚しているが、所謂世間でいう『青春』とは、自分は無縁であることも自覚している。 
 輪をかけて、最近の自分は何かと傷だらけだ。 
 以前から喧嘩などで生傷は絶えなかったが、夏からこっち、刺されたり、殴られたり、トラックに轢かれかけたりと、生死の狭間を行ったり来たりしている気がする。 
 それもあの自称従者に出会ってからだ。 
 前世の絆に殺される男……などと考えてから、発想があの女に似てきたかもしれない、と自嘲した。 
 そこでジュウは、先程まで騒がしかった教室が静まっているのに気が付いた。 
 何事かと辺りを見回すと、暖房付近の女子集団の視線が、ジュウと廊下の方向をチラチラと往復している。 
 視線の先を追うと、教室の入り口に堕花雨が立っていた。 
  
  
  
  
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