135: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2015/05/26(火) 21:41:52.33 ID:9m0+RSJ8O
  
 「……チッ」 
  
 あからさまな舌打ちの後、切彦はダラダラとソファに戻っていった。 
 床に落ちたマフラーを回収して首に巻くと、今度は大きい方のソファの上で再び丸くなった。 
  
 「まったく……」 
  
 真九郎は立ち上がると、切彦が使っていない方のソファを元の位置に戻す作業に取り掛かる。 
 テーブルの上にはカップ麺やお菓子の袋、ジュースのペットボトルなどが散乱していたのでそれも纏めてゴミ箱に放り込む。 
 1年前、とある事情で彼女をこの事務所に引き入れてからというもの、ずっとこの調子である。 
 最初の頃こそ許していた真九郎だが、夏場になって冷房をガンガン効かせるせいで電気代の請求が大変なことになり、流石に見過ごせなくなってきたので給料からの天引きを決意。 
 しかし、暖房をつけなければいけない時期になってもこの有様で、改善は見られない。 
 真九郎は溜息を吐いてから、デスクに戻る。 
 書類とは言っても、依頼の内容を簡単に纏めただけのものだ。 
 内容は、猫探し、近所のコンビニに屯する不良少年を追い払う、人探し、浮気調査は興信所に回すとして……取り敢えずコンビニから始めるか……。 
 そんな具合に思索に耽る真九郎だったが、視界の隅でモゾモゾと蠢く影が気になってしょうがない。 
 横目に視線を送ると、太腿の裏を頻りに擦っている。 
 そんなに寒いならもっと暖かい格好をすればいいのに、と思う真九郎だが、これもいくら言っても聞かないのが斬島切彦なのだ。 
 仕方なく、暖房のスイッチを入れてやる。 
 生温い風が吹き出し、部屋を温める。 
 最低出力なので多少時間はかかったが、暫くすると小さな寝息が聞こえてきた。 
  
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