635: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:19:57.31 ID:+1M4Crvn0
その時の光景を、少女は今でも覚えている。
自分の見知った人々が。
共に笑いあっていた友人達が。
一緒に布団に入って眠った両親が。
まるで腹を空かせた獣のように、自分に向かって躙り寄ってくる。
地平線に沈み往く太陽。天からこちらを見下ろしている満月。そして夕日に染まった村々。
世界が血の池地獄に沈んだかのように。そこには『紅』しか存在しなかった。
あの時自分がどんな感情を抱いていたのか、今ではもう思い出すことは出来ない。
驚愕。困惑。恐怖。絶望。その何れかもしれないし、全部かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただ『そういうことがあった』という事実のみが、心に焼きついている。
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