636: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2016/05/23(月) 01:20:51.72 ID:+1M4Crvn0
その地獄を経験しながら、彼女がこれまで正気を保っていられたのは。
村の皆が最後まで少女の身を案じていてくれていたと言うことだろう。
己の内から沸き上がる吸血衝動。『吸血殺し』によって制御不能となっていたはずのそれを、
彼等は最後の最後まで理性によって押さえつけようとしていた。少女を傷付けまいとしていた。
結局我慢できずに、少女の血を吸って皆が皆灰になってしまったけれど、
そのことだけが彼女にとって唯一の救いであり――――同時に、心を抉る楔にもなっていた。
本当は自分達を助けて欲しかったはずなのに、少女の身を心配していた村人達。
彼女の肢体に食らいつく末期、何度も何度も謝罪を口にしていた人達。
そんな心優しい彼等を、彼女は自らの手で殺してしまった。
『吸血殺し』は自身の意志で調節することが出来ない超能力だ。
それは誘蛾灯のように吸血鬼を際限なく誘き寄せ、そして血を吸った吸血鬼を例外なく滅ぼしてしまう。
当時は能力の自覚すらなかった彼女。そんな彼女を責めることなど、一体誰が出来ようか。
しかし、例え自身に責任が無いのだとしても。
彼女はその罪から逃れることは出来ない。いや、そもそも逃げようなどとは思わない。
どのような理由であれ、彼等の命を摘み取ったのは紛れもなく己自身。
そればかりは否定しようのない事実なのだから。
だから彼女は、赦されることを望まない。
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