168:名無しNIPPER[saga]
2016/03/24(木) 23:54:49.42 ID:jhPeExTco
  
 「・・・・・・こんには先輩。はじめまして」 
  
  放課後の図書室に現れた二見さんは、あらかじめクラス委員の子に聞いていたのだろう。 
 それほど緊張している様子もなく僕に挨拶したのだった。そして意外なことに彼女はすご 
169:名無しNIPPER[saga]
2016/03/24(木) 23:57:33.76 ID:jhPeExTco
  
 「君って人の話を聞くの上手みたいだね」 
  
  彼女の友人のエピソードは無視して、僕は敢えて核心に触れてみた。その時、初めて彼 
 女は動揺して迷っている様子で僕の方を覗った。何かある。僕は直感したけど、ここは敢 
170:名無しNIPPER[sage]
2016/03/24(木) 23:58:29.51 ID:jhPeExTco
  
 今日は以上です 
 また投下します 
171:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:37:39.35 ID:q8J8eS9oo
  
  これが、僕と二見さんの最初の出会いだった。 
  
  好奇心から彼女に接近した僕だけれど、話していると彼女に対する好奇心とか、ライバ 
 ル心、それにいい相談役になってあげようという当時の僕の傲慢な考えは、いつのまにか 
172:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:38:12.02 ID:q8J8eS9oo
  
 「変じゃないよ。僕は、生徒会とかの役員でもないし、運動部のキャプテンでもないけ 
 ど」 
  
  僕はむきになって話し続けた。 
173:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:39:13.81 ID:q8J8eS9oo
  
 「それで、先輩。まだ質問に答えてくれてないですよ」 
  
  優は僕を上目遣いに眺めながら、話を蒸し返した。 
  
174:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:40:16.56 ID:q8J8eS9oo
  
  その頃、僕と彼女は校内でお昼を共にしたり、放課後の図書館で一緒に勉強したりして 
 いたけれど、僕と彼女がはっきりと恋人同士になったというわけではなかった。上級生の 
 男と下級生の女がいつも一緒にいたのだから、あいつら付き合ってるという噂はあったら 
 しいけど、僕自身ははきり彼女に告白したわけでもないし、優だって僕のことが好きなん 
175:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:41:05.41 ID:q8J8eS9oo
  
 「僕は、君のために」 
  
 「あたしのために? 先輩もあたしの話ばかり聞かされて飽きちゃったんでしょ」 
  
176:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:41:34.68 ID:q8J8eS9oo
  
  でも、いつまでたってもその関係は変化せず、僕は常に聞き役だった。彼女の話を聞く 
 のが嫌になったわけではないけど、延々と話しを聞かされるだけで、逆に僕のことを何も 
 聞こうとしない彼女の態度に、僕はだんだんと不安になってきたのだった。 
  
177:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:42:03.26 ID:q8J8eS9oo
  
  これでは、あんまりだ。僕の気持ちも副会長の気持ちも救われない。だらだらと続く優 
 の自分語りは、今では僕にとって意味のないお経の詠唱のように意味を失っていた。 
  
  この時の僕は、本心からいらいらしていた。これが彼女以外の相手だったら、僕の本心 
178:名無しNIPPER[saga]
2016/03/27(日) 22:42:56.44 ID:q8J8eS9oo
  
  僕は狼狽した。優の僕への無関心とか副会長への冷淡な態度とか、いろいろ僕が抱いて 
 いた不満なんか、彼女の涙を見た瞬間にどうでもよくなってしまって、このまま彼女に振 
 られたくないという焦りだけが僕の脳裏を占めていった。 
  
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