499:名無しNIPPER[saga]
2018/10/22(月) 02:27:54.67 ID:CBLTsuLG0
 ガシャッ! 
  
 コブラは全身に衝撃を受け、石床に転がり… 
  
 ガゴオーーン!!! 
  
  
 破城槌はコブラの頭を砕くことなく、石床を粉砕して大広間をまたも揺さぶった。 
 一瞬コブラは自分が死んだ光景を垣間見たが、その未来をジークマイヤーの体当たりが制したのだ。 
  
  
 ジークマイヤー「立てコブラ!貴公らしくもない!」グッ 
  
 コブラ「イテテ…傷口が開いちまった…」 
  
  
 ジークマイヤーに肩を借り、コブラはフラつきつつも立ち上がり、頭を振るう。 
 思考の靄はいくらか取り去れたが、戦える状態に戻るにはしばしの時間が必要なようだった。 
  
  
 ジークマイヤー「ビアトリス!貴公はレディと共に獅子を抑えてくれ!遅い方なら私も戦える!」 
  
 ビアトリス「あ、ああ!分かった!」 
  
 レディ「早く行きましょう!彼がまた槍を構えたわ!」 
  
  
 ジークマイヤーからの激励に、完全に浮き足立っていたビアトリスは辛うじて、心身を戦える態勢に整える事ができた。 
 だが、彼女に指示を出したジークマイヤーも内心、恐怖で竦む心を自身の大声で隠すのが精一杯だった。 
 相手はおとぎ話の如く忘れられた太陽信仰の偶像にして、この世にいるはずもなかった戦神。 
 自分が古い世に生まれていたら、間違いなく信仰したであろう勝利と殺戮の化身なのだ。 
  
  
 チャキッ! 
  
 レディ「!」 
  
  
 その戦神は、不死達の会話が聞こえているにも関わらず、あえてコブラではなくレディへ槍を向けた。 
 レディは金獅子の騎士が放つであろう、正体が分からぬ攻撃を警戒して、フランベルジュを横に構え、瞬時に防御の姿勢をとった。 
  
 ビアトリス「やめろっ!」ビシューッ! 
  
 レディへの攻撃を防ぐため、ビアトリスはソウルの矢を放つ。 
 ソウルの矢は一直線に金獅子の胴体に向かうが… 
  
 ビアトリス「あっ!?」 
  
 ソウルの矢を振り切るほどの速度で駆け出す金獅子を、ソウルの矢が捉えることができるはずもなかった。 
  
  
 レディ「!?」バキィン!! 
  
  
 正体不明の攻撃を防ぐ瞬間、レディの銀色の瞳には確かに映った。 
 叩き割られたフランベルジュの破片と、フランベルジュを貫いた白金色の槍先が… 
  
  
 レディ「うぐぅ!」ドシャーッ! 
  
  
 吹き飛ばされ、石床の上を滑り、壁に背中を打ち付けたレディは、胸元に生じた痛みに声を漏らした。 
 破壊された大剣が衝撃をいくらか逃しはしたものの、それでもなお彼女を襲った衝撃は大きく、彼女の思考にはハンマーボルト・ジョーの拳が思い起こされた。 
  
 ビアトリス「くそっ!」ヒュイイン… 
  
 攻勢にも救助にも移れないと見るや、ビアトリスは浮遊するソウルの光球群を展開し、金獅子を迎え撃つ態勢に入った。 
 回避するという選択肢も取れない以上、それ以外に成すすべが無いのだ。 
 金獅子は今度はそんなビアトリスを完全に無視し、行動不能に陥っているレディへ向け歩き出す。 
  
 ビアトリス「っ!?  こっちを見ろ!何故私を襲わない!」 
  
 ビアトリスは金獅子の騎士を挑発するが、金獅子の歩みは止まらない。 
 しかし、ビアトリスは攻撃に移る事ができない。レディが殺される前に金獅子を撃ち抜くような攻撃手段など、彼女は持っていないのだ。 
  
 コブラ「ジーク…離してくれ…レディがやられるぞ…」 
  
 ジークマイヤー「し、しかし…!」 
  
 ジークマイヤーは手傷を、それも深手を負ったコブラを置いていく事も出来ず、鈍足ゆえにレディへ加勢することもできない。 
 コブラへの体当たりが間に合ったことが、そもそも奇跡だったのだ。 
  
 ボゴゴン… 
  
 石床に深くめり込んだ大鎚が、砂煙を上げながら再び持ち上げられた。 
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