561:名無しNIPPER[saga]
2019/01/18(金) 06:18:40.59 ID:HyP25ayL0
 オーンスタイン「スモウ…お前はなんということを…」 
  
  
 スモウ「………」 
  
  
 オーンスタインの嘆きを知ってか知らずか、スモウは竜狩りへは振り返らず、大広間の隅まで飛んだ仮面の騎士を一点に見つめている。 
 竜狩りがスモウに成せる事と言えば、神の奇跡をスモウの足首へ注ぎ、矢傷を癒すことだけだった。 
  
  
 オーンスタイン「貴公に王の導きあれ」 
  
 ダガッ! 
  
  
 石床を蹴ったオーンスタインの向かう先は、手負いの仮面騎士ではない。 
  
  
 ブワッ! 
  
 レディ「!」 
  
 ジークマイヤー「あっ!」 
  
 グウィンドリン「まさか…」 
  
  
 霧から飛び出たオーンスタインは十字槍を背負うと… 
  
  
 ガッ 
  
 ジークマイヤー「!?」 
  
 ビアトリス「わっ!?」 
  
  
 右手にビアトリス掴み、右脇にジークマイヤーを抱え… 
  
  
 ガッ 
  
 グウィンドリン「な…なにを…」 
  
  
 左脇にグウィンドリンを抱えた。 
 そしてオーンスタインは跪き、無言の促しをレディに漂わせた。 
 レディは一瞬ためらった。誰の眼にも明らかに、一団にとって大きな存在であるはずの者が欠けている。 
 その事実をどう受け止め、この促しにどう答えるべきかを迷った。 
  
  
 レディ「………分かったわ。行きましょう」 
  
  
 だが、レディはその一瞬で決断した。 
 レディはオーンスタインの、そしてスモウの意志を汲むことを選んだのだ。 
 剣を納め、コブラを右手で胸に抱き寄せ、レディは左手でオーンスタインの背中にしがみついた。 
 彼女の両脚は竜狩りの腰に回された。 
  
  
 グウィンドリン「…やめよオーンスタイン…これでは誓いを違えるではないか…」 
  
 オーンスタイン「グウィンドリン様」 
  
 グウィンドリン「気迷うな!あのような騎士ごときに、我らが遅れをとるなどあり得ぬ!我を降ろし槍を持…」 
  
 オーンスタイン「グウィンドリン様!!」 
  
 グウィンドリン「っ…!」 
  
 オーンスタイン「今より駆けます。あなた様はどうか、スモウが王の導きに浴せる事をお祈りください」 
  
 オーンスタイン「そしてこの亡都より生き延び、暗月の君主を守りし輝ける大鎚の名を、新たな神代にお伝えください」 
  
  
 グウィンドリン「…………」 
  
  
 ドガッ!! 
  
  
  
 オーンスタインは正門に向かって駆けた。 
 かつての友を棄て、多くの神話に彩られた大いなる家を飛び出し、黄金の矢のように。 
 霧からは金属がぶつかる音が響く。それはスモウの鎧が切り裂かれる音だった。 
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