153: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:42:34.06 ID:5HbT9nK2O
背後からがりっという硬く耳障りな音がして振り向くと、手術室の中を見通せる見学室とのあいだに設置されたガラスに爪痕のような四本の線があった。このガラスは強化ガラスだった。ガラスの向こうにいる人物は影になっていて、そのうちの一人の腕が上がりスピーカーのスイッチを入れた。『どうした?』という声に研究員は聞き返した。
研究員3「いや……ガラスの傷、最初からありましたっけ?」
『ああ、最初からあったが?』
スピーカーの声はとぼけるような調子だった。
研究員3「そうですか。すみません」
研究員はとくに気にするでもなくふたたび実験に戻った。ガラスの向こうの見学室では亜人管理委員会のメンバー、もっとも高齢の岸博士を中心とする上位の研究員三名、自衛隊のコウマ陸佐、Nisei特機工業の石丸武雄、戸崎と下村も合わせて合計七人が見学室から永井圭の実験の様子を観察している。研究員たちが次々に感嘆の言葉を口にするなか、戸崎は冷ややかに眼を細めながら下村に聞いた。
戸崎「見えるか?」
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