新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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7: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:10:14.25 ID:5kzXp0UHO



美波「ほんとうのお母さんじゃないくせに」


美波の口から突然そんな言葉が飛び出した。人を傷つける言葉を口にしたのはそれがはじめてだった。義母がどんな顔をしているのか眼に映るまえに、美波は椅子を倒し、父親が制止するのも無視して二階にある自分の部屋へ逃げ込んでいた。心臓が逸っていたのは、階段を駆け上がったせいばかりではなかった。

あんなことを言うつもりはなかった。美波は誰に言うでもなく、心のなかで自分に向かって言い訳をした。

義母の律は、世間一般的にみれば優しい母親ではなかったが、愛情がないわけでなかった。合理的で厳しくはあったが、それは、母親として、という形容が前につく類いのものだった。だから、ちゃんと説明さえすれば娘である自分の気持ちもわかってくれるはず、と美波は思ったのだ。夫婦のことはわからないけれど、家族のことは十一歳の子供なりにわかっているつもりだった。だが、うまくいかなかった。子供の論理と大人の論理は、それぞれ別の機能で働いていて、そしてよくあることだが、違いがあることを忘れたまま互いに論理をすり合わせようとする。そういうとき、たいていの場合は互いに相手を思いやっていたりする。だがその結果生まれるのは、相互不信だけだ。

美波は床に座って、ベッドの端に頭を沈み込ませていた。左腕をベッドに置き、その上に右腕を交差させる。瞼を閉じた両目を上になったほうの腕で押さえ込む。左右の手はそれぞれ反対側の肘をつかんでいて、かなり力を込めていたのでつかんだところが白っぽくなっていた。




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