新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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947: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 20:42:36.03 ID:TPJ777ywO

潰れる音と砕ける音が混ぜ合わさった人間が本能的に忌避する不快な落下音が背後から響き、落下物の周囲にいる記者やカメラマンたちの背筋に蜘蛛が駆け抜けていくような寒気が走った。

落下音は周囲の人間の心象に赤い血が広がる様子を喚起させ、事実近くにいた人間の靴やズボンの裾には飛び散った血が付着しており、そこからカメラや視線を上げると大きな血だまりの中に落下の衝撃によって、砕けて折れて潰れて捻れた人体があった。

何人かは眼を背けたが、カメラマンのうちの半数はカメラを向けたままでいた。シャッター音が鳴り渡り、もっと近くで撮影するため前方の人を押しのけようと怒声があがった。

一眼レフを持った若い男が血だまりに気をつけながら死体に近寄り膝をついて構図の中心に収める。

そのとき、永井が息を吹き返す。

記者たちはまずはじめに眼の前で死んだ人間が生き返ったこと自体に驚きの声をあげ、復活したのが永井圭だとわかると緊張感を宿した警戒の声を発した。永井のことを佐藤の仲間だと思い込んでいる記者とカメラマンたちは永井から数歩退いたが、撮影や中継は続行されたままだった。

永井はすぐに現状を把握しようと顔を上げた。フォージ安全ビルが聳え立つ姿が眼に入った。距離感からしてかなり離れた位置にある。車の走行音が後方から聞こえ振り向くと、すぐ背後は車道だった。


「下がって!」「道をあけて!」


ビルの前で警備していた警官が騒ぎを聞きつけ、永井に迫っていた

永井は亜人の声を使おうと息を吸い込む。警官は耳栓を装備しているだろうが、道を塞ぐ記者たちの動きを止めれば足止めになるはず。

最も効果的なタイミングを見計らって、亜人の声を発しようとしたそのとき、一台の中継車が猛スピードで突っ込んできて永井のすぐ背後で急停車した。



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