新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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949: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 20:44:41.06 ID:TPJ777ywO


永井「死んだよ」


アナスタシアが言葉を発するよりも先に永井が言った。


永井「平沢さんは、死んだ」


永井はフラットな調子で言った。感情を交えない言葉だっただけに中野もアナスタシアも意味を了解するのにしばらく時間を要した。

中野が突然大声で「クソッ!」と叫んだ。堪えきれなかった感情が爆発したかのようだった。眼に涙が浮かんでいた。中野は乱暴に眼元を擦って涙を拭うと、運転に集中するため真っ直ぐ前を見据えた。

一方、アナスタシアはへたり込み、茫然自失の状態に陥っていた。アナスタシアの性格を考えればそれほど見知ってもいない相手の死に悲しみを覚えるのも納得のいく話だが、しかしこれほどのショックを受けるとはアナスタシア自身にとっても意外だった。

平沢の死を告げられた瞬間の頭が真っ白になる感覚には既視感があり、それは夏休み明けの学校に登校したとき友達の死を告げられた瞬間にもたらされた感覚と同一のものだった。なぜそこまでの内心の衝撃をアナスタシアは受けたのだろうか? いくらつい先ほどまで行動を共にした人物とはいえ、知り合い、言葉もほんの二言三言ほどしか交わさなかったのに、友人の死にに匹敵するまでのショックを受けるものなのだろうか?

車が大きく右に振れ、アナスタシアの身体も右側へ傾いた。立ち並べられた中継用の機材に手をつき身体を支えたとき、アナスタシアは平沢の死はある種の決定打だということに気づいた。

アナスタシアが目撃した黒服たちの死。三人が死に、うち二人の死ぬ瞬間を目撃した。彼らの死を悲しむ時間もなく、戦いに身を投じ、そしていま為すすべもなく逃げ回っている。平沢の死を告げれたとき、アナスタシアがそれまで眼をそらし続けてきた感情が一気に噴出した。アナスタシアを激しく揺さぶった衝撃の正体、それは生き残ったことに対する罪悪感だった。



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