新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
1- 20
956: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 20:57:37.11 ID:TPJ777ywO

アナスタシア「ケイ、もうやめてください! コウも殴ったりするのは……」

永井「フォージ安全の社長が死んだとき、たいして騒がなかったよな」


アナスタシアの予想に反して永井は中野を殴りつけたり罵倒を重ねたりはしなかった。自分の声が相手の心内に確実に作用させるため、永井は低く沈鬱な感じのする調子で喋り出した。


永井「平沢さんが死んだとき聞いたときはあれだけ感情的になってたのになあ!」


まるでそのときの中野の感情を再現するかのように永井は声を荒げて言った。


永井「すべての人間が無意識に他人の命の重さを秤にかけてる……おまえもだ」


いちど言葉を切ったとき、永井は視界にアナスタシアが映っていることを認めた。その表情は計り知れない痛みのような感情に歪んでいた。いままでは天秤の大きく傾いたほうにばかり心を占められ、その傾き、つまりは感情の流れにのって行動を起こしたし堪えきれず内心を現したりもしてきたアナスタシアは、この永井の指摘によって眼が開かれたかのように傾かなかった上皿のことを鋭敏に意識した。しかし、意識できたのは上皿だけだった。そこにのっているはずの命の重さを計るのは当然誰にだってできないことだった。


永井「それを意識的にやってるだけで僕を批判するじゃねえ!」


永井は中野の胸ぐらから手を離し、言葉を失っているアナスタシアにも背を向けその場から立ち去ろうとまた歩き出した。

雨は激しさを増す一方だった。水分を含んで垂れ落ちてきた前髪がアナスタシアの視界を遮った。額に張り付いた銀色の髪をかきあげもせずアナスタシアは永井の背中をただ見送った。追いかけようにも何を言ったらいいのか全然わからなかった。雨は顔を強く打ち、流れ落ちていった。雨滴をやたらと温く感じた。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice