957: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 20:58:36.48 ID:TPJ777ywO
中野「そう、なのかもしれない……」
静かなためらいがちな声で中野は自分自身に吐露するようにつぶやいた。
中野「命がどうのって、言えた口じゃないのかも……」
中野「でも……なんて言ったらいいのかわからないけど……佐藤を止めたいんだよ」
中野はふと口をつぐんだ。アナスタシアは困惑しながら、永井は立ち止まって聴き耳を立てている。数秒が過ぎた。雨の音がおおきい。風も強く吹いている。
中野「電球を替えようとしたんだ」
中野はさっきよりもはっきりした声で話を再開した。
中野「雑誌とか新聞を積んで……踏み台にして……」
中野「で、バランスを崩して、頭から落ちた」
中野「そしたら、からだが動かなかったんだ」
中野「声も出なくて、だれにも見つからなくて、何日もそのままだった……生き返るまで」
中野「たぶん、そのとき初めて死んだんだ」
それまで中野は声の大きさにふさわしく淡々と冷静な調子で話していたが、ふいに息継ぎするかのように一瞬だけ言葉を切ると、今度は最初はまだ大声でこそないが底から湧き上がってくる怒りにまかせてだんだんと声を荒げていった。
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