959: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 21:00:19.66 ID:TPJ777ywO
永井「知るかよ」
永井はそれだけ言い捨てると、その場から立ち去るようにまた歩き出した。
中野「平沢さんも……真鍋さんたちも、みんな……殺されちまった……」
中野は悔しさに涙しながら、途切れ途切れに声を震わせた。
中野「悔しくねえのかよ」
鼻を啜るような声だった。
永井「うるさい」
その一言を言うために永井が一瞬立ち止まったのをアナスタシアは目撃した。耳に届いた声は微かに震えていたと思ったが、激しい雨音に邪魔されたせいかもしれなかった、仮に震えていたとしてアナスタシアには永井を説得する方法などまるでなかった。
結局、アナスタシアは永井の後ろ姿が雨に烟り、完全に見えなくなるまでその場に立ち尽くしているしかなかった。
アナスタシアは中野がさっきから押し黙ったままでいることに気づいた。中野の告白はアナスタシアに高架下の車中で交わした会話を思い出した。修学旅行もクリスマスも正月も、中野は無縁だったと言った。それを聞いた自分の質問があまりにも不用意だったことも思い出したアナスタシアは血の気が引く思いだった。
中野のほうを見るのは怖かった。アナスタシアは祈りを捧げるようにギュッと目を閉じ、意を決し顔を上げた。中野が振り返ってアナスタシアを見ていた。中野の顔は、悲しみを堪えていることがわかるような笑顔だった。
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